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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098723
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】回転伝達機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 35/00 20060101AFI20240717BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20240717BHJP
   F16H 31/00 20060101ALI20240717BHJP
   F16D 41/12 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F16H35/00 G
F16H19/04 A
F16H31/00 A
F16D41/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002374
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】500308705
【氏名又は名称】平良 徳弘
(72)【発明者】
【氏名】平良 徳弘
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA60
3J062AB05
3J062AB36
3J062AC09
3J062CA36
(57)【要約】
【課題】正逆回転運動を一方向の連続的な回転運動に変換する回転伝達機構を提供する。
【解決手段】回転伝達機構17は、ループベルト16により正転方向及び正転方向と反対の逆転方向へ交互に回転する第1回転体41と、外周部に突爪部47およびラックギア43が設けられた第2回転体48と、第1回転体41と同期的に移動して第2回転体48の突爪部47に引っ掛かり可能なレバー42と、レバー42に回転自在に設けられたピニオンギア44とを備える。第1回転体41の正転方向の回転時には、レバー42が突爪部47に引っ掛かることで、第2回転体48が第1回転体41と同じ正転方向へ強制的に回転する。第1回転体41の逆転方向の回転時には、ラックギア43に噛み合ったピニオンギア44が回転することで、第2回転体48が正転方向へ積極的に回転する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(23)に回転可能に設けられ、駆動手段(16)により正転方向及び正転方向と反対の逆転方向へ交互に回転する第1回転体(41)と、
第1回転体(41)と並んで回転軸(23)に固定され、外周部に突爪部(47)および第1係合部(43)が設けられた第2回転体(48)と、
回転軸(23)を中心として第1回転体(41)が回転する方向へ同期して移動する支点軸(49)に揺動可能に設けられ、第2回転体(48)の突爪部(47)に引っ掛かり可能なレバー(42)と、
レバー(42)に回転自在に設けられ、第1係合部(43)に係合可能な第2係合部(44)を備え、
第1回転体(41)の正転方向の回転時には、レバー(42)が突爪部(47)に引っ掛かることで、第2回転体(48)及び回転軸(23)を第1回転体(41)と同じ正転方向へ回転させ、
第1回転体(41)の逆転方向の回転時には、突爪部(47)に対するレバー(42)の引っ掛かりが解消されると共に、第1係合部(43)に係合した第2係合部(44)が回転し、この第2係合部(44)の回転により第2回転体(48)及び回転軸(23)を正転方向へ回転させるよう構成した
ことを特徴とする回転伝達機構。
【請求項2】
レバー(42)を、常に第2回転体(48)に向けて押す付勢手段(50)を備え、
第1回転体(41)が正転方向へ回転する際には、レバー(42)に設けた第2係合部(44)が突爪部47に引っ掛かり、第1回転体(41)が逆転方向へ回転する際には、レバー(42)に設けた第2係合部(44)が第1係合部(43)と係合するよう構成した請求項1記載の回転伝達機構。
【請求項3】
第1係合部(43)はラックギアであり、第2係合部(44)は、ラックギア(43)に噛み合い可能なピニオンギアであり、
突爪部(47)には、逆転方向へ向けて開口して、ピニオンギア(44)が嵌り得る凹部(51)が設けられ、
第1回転体(41)が正転方向へ回転する際には、ピニオンギア(44)が凹部(51)に嵌ることで、第1回転体(41)の回転と同期するよう第2回転体(48)を正転方向へ強制的に駆動回転させ、
第1回転体(41)が逆転方向へ回転する際には、ピニオンギア(44)が凹部(51)に嵌らずにラックギア(43)と噛み合いながら回転することで、このピニオンギア(44)の回転慣性力により第2回転体(48)を正転方向へ積極的に駆動回転させるよう構成した請求項1または2に記載の回転伝達機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転伝達機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第1回転体及び第2回転体が同一の回転軸に並んで設けられて、第1回転体は、回転軸に回転自在に設けられ、回転軸を中心として正転方向及び逆転方向へ回転する駆動力が付与され、第2回転体は回転軸に対し回転不能に固定され、第1回転体が正転方向へ回転する際には、第2回転体は第1回転体に同期して同一の正転方向へ回転し、第1回転体が正転方向と反対の逆転方向へ回転する際には、第2回転体がフリーとなって回転しないよう構成した回転伝達機構がある。このような回転伝達機構は、いわゆるラチェット機構を採用したものであり、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭55-74922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したラチェット機構を備えた従来の回転伝達機構は、第1回転体が正転方向へ駆動回転する際は、第1回転体の駆動力が第2回転体に付与されて第2回転体が正転方向へ強制的に回転するが、第1回転体が逆転方向へ駆動回転する際は、第1回転体の駆動力が第2回転体に付与されず、第2回転体がフリーになるものである。すなわち、従来の回転伝達機構は、第1回転体が正転方向へ回転する際だけ第2回転体が正転方向へ回転するだけであり、第1回転体が正転方向及び逆転方向へ交互に回転する場合には、第2回転体は断続的に正転方向へ回転するだけである。すなわち、第1回転体が逆転方向へ回転する時には、第2回転体を正転方向へ積極的に回転させ得るように構成されていなかった。
【0005】
本発明は、一方の第1回転体が正転方向及び逆転方向の両方向へ交互に回転しても、第2回転体が常に正転方向へ積極的に連続回転するよう構成した回転伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1の発明は、回転軸(23)に回転可能に設けられ、駆動手段(16)により正転方向及び正転方向と反対の逆転方向へ交互に回転する第1回転体(41)と、
第1回転体(41)と並んで回転軸(23)に固定され、外周部に突爪部(47)および第1係合部(43)が設けられた第2回転体(48)と、
回転軸(23)を中心として第1回転体(41)が回転する方向へ同期して移動する支点軸(49)に揺動可能に設けられ、第2回転体(48)の突爪部(47)に引っ掛かり可能なレバー(42)と、
レバー(42)に回転自在に設けられ、第1係合部(43)に係合可能な第2係合部(44)を備え、
第1回転体(41)の正転方向の回転時には、レバー(42)が突爪部(47)に引っ掛かることで、第2回転体(48)及び回転軸(23)を第1回転体(41)と同じ正転方向へ回転させ、
第1回転体(41)の逆転方向の回転時には、突爪部(47)に対するレバー(42)の引っ掛かりが解消されると共に、第1係合部(43)に係合した第2係合部(44)が回転し、この第2係合部(44)の回転により第2回転体(48)及び回転軸(23)を正転方向へ回転させるよう構成したことを特徴とする。
請求項1の発明によれば、第1回転体が正転方向へ回転する際は、第2回転体は正転方向へ回転し、第1回転体が逆転方向へ回転する際も、第2回転体は正転方向へ積極的に回転するため、第1回転体が正転方向及び逆転方向へ交互に回転しても、第2回転体を正転方向へ連続的に回転させることができる。
【0007】
本願の請求項2の発明は、レバー(42)を、常に第2回転体(48)に向けて押す付勢手段(50)を備え、
第1回転体(41)が正転方向へ回転する際には、レバー(42)に設けた第2係合部(44)が突爪部47に引っ掛かり、第1回転体(41)が逆転方向へ回転する際には、レバー(42)に設けた第2係合部(44)が第1係合部(43)と係合するよう構成したことを特徴とする。
請求項2の発明によれば、第1回転体が正転方向へ回転する際は、第2係合部が突爪部に引っ掛かるので、第2回転体を正転方向へ確実に回転させることができる。また、第1回転体が逆転方向へ回転する際は、第2係合部の回転が第2回転体に伝達されるので、第2回転体を正転方向へ積極的に回転させることができる。
【0008】
本願の請求項3の発明は、第1係合部(43)はラックギアであり、第2係合部(44)は、ラックギア(43)に噛み合い可能なピニオンギアであり、
突爪部(47)には、逆転方向へ向けて開口して、ピニオンギア(44)が嵌り得る凹部(51)が設けられ、
第1回転体(41)が正転方向へ回転する際には、ピニオンギア(44)が凹部(51)に嵌ることで、第1回転体(41)の回転と同期するよう第2回転体(48)を正転方向へ強制的に駆動回転させ、
第1回転体(41)が逆転方向へ回転する際には、ピニオンギア(44)が凹部(51)に嵌らずにラックギア(43)と噛み合いながら回転することで、このピニオンギア(44)の回転慣性力により第2回転体(48)を正転方向へ積極的に駆動回転させるよう構成したことを特徴とする。
請求項3の発明によれば、第1回転体が正転方向へ回転する際は、第2回転体が正転方向へ強制的に回転し、第1回転体が逆転方向へ回転する際は、第2回転体が正転方向へ積極的に回転するため、第1回転体が正転方向及び逆転方向へ交互に回転しても、第2回転体を正転方向へ連続的かつ積極的に駆動回転させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の回転伝達機構によれば、第1回転体が正転方向及び逆転方向へ交互に回転しても、第2回転体及び回転軸を、常に正転方向へ連続して駆動回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例の回転伝達機構の斜視図である。
図2図1の回転伝達機構の作動状態を説明する図であり、(a)は第1回転体が第1方向へ回転する状況を示し、(b)は第1回転体が第1方向と反対の第2方向へ回転する状況を示す図である。
図3】(a)は、回転伝達機構を後方から見た背面図であり、(b)は、回転伝達機構を、ローター回転軸の軸心方向と直行する方向から見た図面である。
図4】実施例の回転伝達機構を実施した発電装置の全体構成図である。
図5】実施例の回転伝達機構を実施した発電装置について、 (a)は、第2コイルばねが伸び変形すると共に第1コイルばねが弱体化して第2コイルばねによって圧縮されて縮められた状態を示す説明図であり、(b)は、第1コイルばねが伸び変形すると共に第2コイルばねが弱体化して第1コイルばねによって圧縮されて縮められた状態を示す説明図である。
図6】実施例の回転伝達機構を実施した発電装置について、第1~第3仕切壁が密閉槽の前壁及び後壁の溝に嵌り込んで可動する形態を示す断面図である。
図7】実施例の回転伝達機構を実施した発電装置について、(a)は、密閉槽を第1仕切壁の右側位置で破断した部分平断面図であり、(b)は、(a)のX―X線位置で破断した部分断面図である。
図8】変更例の回転伝達機構の構成を示す図であり、(a)は、第2回転体側から見た図面であり、(b)は、第1回転体側から見た図面であり、(c)は、左側方から見た図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の回転伝達機構について、図面を参照しながら説明する。なお、実施例では、回転伝達機構を発電装置に実施した場合について例示して説明する。なお、以下の実施例では、図4における左右方向を発電装置CUの「左右方向」、この左右方向と水平に直交する方向を「前後方向」、左右方向及び前後方向とそれぞれ直交する方向を「上下方向」とする。また、以下の説明において例示した各部材のサイズ・寸法は、あくまで一例であって、これに限定されるものではない。
【実施例0012】
図4は、本発明の発電装置CUの全体構成を示した図面である。発電装置CUは、内部に空間が形成された密閉槽1内に往復移動可能に設けられた第1仕切壁4と、一端が密閉槽1の内壁に固定されると共に他端が第1仕切壁4に連結され、所定の閾温度T以上に加熱すると伸び変形し、閾温度T未満に冷却すると弱体化する形状記憶合金からなる第1コイルばね2と、第1仕切壁4を挟んで第1コイルばね2と反対側に位置して、一端が密閉槽1の内壁に固定されると共に他端が第1仕切壁4に連結され、所定の閾温度T以上に加熱すると伸び変形し、閾温度T未満に冷却すると弱体化する形状記憶合金からなる第2コイルばね3と、第1仕切壁4に連結され、この第1仕切壁4の往復移動に伴って往復移動するループベルト(駆動手段)16と、ループベルト16とローター回転軸(回転軸)23が連係され、ループベルト16の往復移動をローター回転軸23の一方向への回転に変換する回転伝達機構17とを備える。これにより発電装置CUは、第1コイルばね2の伸び変形及び第2コイルばね3の弱体化と、第1コイルばね2の弱体化及び第2コイルばね3の伸び変形とを交互に実行することで、第1仕切壁4が往復移動すると共に該第1仕切壁4の往復移動に連動してループベルト16が往復移動し、回転伝達機構17によりローター回転軸23を同一方向へ継続的に回転させて発電機20による発電が実行されるよう構成されている。
【0013】
すなわち、図4の発電装置CUは、密閉槽1の内部で、一つの壁である第1仕切壁4を境界として、この壁の左側及び右側のそれぞれに、形状記憶合金製の第1コイルばね2及び第2コイルばね3が取り付けられている。これら第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、密閉槽1の上壁の上面に設置された蓄電池(バッテリー)27から電気を得た小型高性能の電熱ヒーター(第2温度調整手段)8、超小型高性能の冷却機(第1温度調整手段)9、及び床上ファン28、天井ファン29により、伸び変形および弱体化が交互に発生するようになる。例えば、左側の縮まった第1コイルばね2が温められて右に伸びる際には、伸びていた右側の第2コイルばね3は、冷やされて弱体化しているので、伸びる第1形状記憶合金コイルばね2に圧縮されて縮まる。また、右側の縮まった第2コイルばね3が温められて左に伸びる際には、伸びていた左側の第1コイルばね2は、冷やされて弱体化しているので、伸びる第2コイルばね3に圧縮されて縮まる。これら各コイルばね2、3が一連の伸縮稼働を繰り返すことにより、最終的にローター回転軸23を連続的に回転させて発電機20による発電に至るよう構成されている。
【0014】
(密閉槽1について)
まず、図4の密閉槽1の直方体の箱から説明する。密閉槽1は、密閉槽1内にスライド移動可能に設けられた第1仕切壁4と、その第1仕切壁4に固定されスライド移動可能に設けられた第2仕切壁5と、密閉槽1内にスライド移動可能に設けられ第1仕切壁4と接触している第3仕切壁6とにより、内部が第1空間R1及び第2空間R2に区画されるようになっている。密閉槽1は、前壁、後壁、左壁、右壁、上壁及び下壁からなる直方体で断熱構造の中空箱であり、大きさも材質も任意に選択できるが、さし当りここでは、各壁が、超強力合成樹脂でできた厚さ3センチの箱とする。その容積は、形状記憶合金ばねのマックスに伸びる長さに合わせて説明の都合上、例えば縦(上下幅)25cm、横(左右幅)41.6cm、奥行(前後幅)24cm、とする。密閉槽1の内部には、密閉槽1の内部を左右二つの領域に分ける第1仕切壁4(例えば、縦3cm、横3cm、奥行き24cm)を設ける。この第1仕切壁4を境界として、第1コイルばね2及び第2コイルばね3が左右に伸び縮みする領域が生ずる。これら第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、第1仕切壁4の左右に同じ水平位置で同じ数のコイルばねの片方ずつを取り付け、もう片方は、先に取り付けたそれぞれのコイルばねと対面するように同じ水平位置で密閉槽1の内部において左壁または右壁に取り付ける。
【0015】
(各ガイド溝60、61、62について)
密閉槽1には、図6に示すように、前後方向で向かい合う前壁および後壁の内壁面に、第1~第3のガイド溝60、61、62が、左右方向へ水平に延びた状態に形成されている。前壁に形成された第1ガイド溝60には、第1仕切壁4の前端に形成された突起4aがほぼ隙間なく嵌り、後壁に形成された第1ガイド溝60には、第1仕切壁4の後端に形成された突起4aがほぼ隙間なく嵌る。すなわち第1ガイド溝60、60は、前端及び後端の各突起4a、4aが嵌った第1仕切壁4の左右方向への安定した往復スライド移動を実現する。前壁に形成された第2ガイド溝61には、第2仕切壁5の前端がほぼ隙間なく嵌り、後壁に形成された第2ガイド溝61には、第2仕切壁5の後端がほぼ隙間なく嵌る。すなわち第2ガイド溝61、61は、前端及び後端が嵌った第2仕切壁5の左右方向への安定した往復スライド移動を実現する。前壁に形成された第3ガイド溝62には、第3仕切壁6の前端がほぼ隙間なく嵌り、後壁に形成された第2ガイド溝62には、第3仕切壁6の後端がほぼ隙間なく嵌る。すなわち第3ガイド溝62、62は、前端及び後端が嵌った第3仕切壁6の左右方向への安定した往復スライド移動を実現する。なお、第1~第3のガイド溝60、61、62は、前壁または後壁の内面からの深さが、1.0cmとなっている。
【0016】
(コイルばねについて)
第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、形状記憶合金から形成されたコイルばねである。第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、例えば、線径が1.2mm、コイルばねの外径は20mm、総巻数は30巻とし、せん断歪は1.0%とする。第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、最も縮まった状態(この状態の第1コイルばね2及び第2コイルばね3の長さは、例えば3.6cmとする。)から、温められて発生力が強まる所定の温度(閾温度T)に達すると急激に最も伸びた状態(この状態の第1コイルばね2及び第2コイルばね3の長さは、例えば35cmとする。)になり、また冷やされて所定の温度(閾温度T)未満まで冷やされると、発生力が極端に弱まって弱体化する特性に設定する。本願で定義する「弱体化」とは、第1コイルばね2及び第2コイルばね3を構成する形状記憶合金が、所定の閾温度T未満の温度(閾温度Tより低い温度)に冷えている場合に、この形状記憶合金の特性として、自体では積極的な縮み変形をせず、かつ、ばねに軸方向から力が加わった場合には殆ど抵抗なく押し縮められることを意味する。
【0017】
実施例では、図4に示すように、発電装置CUの左右方向へ延びて、左右方向に直列に配置した第1コイルばね2及び第2コイルばね3を1対とした場合に、前後方向に間隔をおいて2対の第1コイルばね2及び第2コイルばね3を備えた場合を示している。但し、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の対の数は、1対であってもよいし、3対以上であってもよい。
【0018】
(形状記憶合金について)
実施例の第1コイルばね2及び第2コイルばね3をなす形状記憶合金は、次のような物性及び特性となっている。この形状記憶合金は、Ti(チタン)、Ni(ニッケル)からなる形状記憶合金で、温められて伸び、冷やされて弱体化する物性をもっている。そして、実施例の形状記憶合金は、昇温時動作完了温度(Af点)は35℃以上、降温時動作完了温度(Mf点)は35℃未満に設定されている。よって実施例では、閾温度Tが35℃となっている。なお、形状記憶合金のTi(チタン)、Ni(ニッケル)などの配合比率を調整することにより、閾温度Tを調節することが可能である。なお、第1コイルばね2および第2コイルばね3の原形サイズは、図5に示す伸びた状態よりも更に長い形状である。
【0019】
このような形状記憶合金から構成された第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、閾温度T以上の温度に形状記憶合金が温まると、ばねの軸方向へ積極的に伸びて、軸方向から力が加わっても伸びる。一方、閾温度T未満の温度に形状記憶合金が冷えると弱体化し、ばねの軸方向へ積極的に伸び変形及び縮み変形が生じず、かつ軸方向から力が加わると縮むようになる。従って、左右方向へ直列に対をなす第1コイルばね2及び第2コイルばね3において、第1コイルばね2が閾温度T以上に温まると共に第2コイルばね3が閾温度T未満に冷えた場合には、第1コイルばね2が伸びると共に第2コイルばね3が第1コイルばね2に押されて縮むようになる。一方、第2コイルばね3が閾温度T以上に温まると共に第1コイルばね2が閾温度T未満に冷えた場合には、第2コイルばね3が伸びると共に第1コイルばね2が第2コイルばね3に押されて縮むようになる。
【0020】
ここで、形状記憶合金製のばねにおける最大の課題は、その伸縮において歪みが生じ、それによってばねの利用効果が下がることである。すなわち、形状記憶合金製のばねにおいて歪みが生ずる主な原因は、その伸び縮みにおいて余計に伸びてしまったり縮んでしまったりすることである。これを(1)の歪みとする。次に、形状記憶合金製のばねが伸びるときの撓みである。それはその長さが長くなればなるほどばねの撓みが生じやすく、この撓みで起こる歪みを(2)の歪みとする。3番目に形状記憶合金製のばねが温度の関係でタイミングよく伸び縮みしないことで起こる歪みを(3)の歪みとする。
【0021】
これに対し、実施例の発電装置ではCUは、第1コイルばね2及び第2コイルばね3が直方体をなす密閉槽1の内部空間に配置されていることから、前述した(1)~(3)の歪が第1コイルばね2及び第2コイルばね3に生じることを防ぐことが可能である。
まず、(1)の歪については、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の伸び縮みは密閉槽1の内部空間で行われることから、その伸び縮みにおいても密閉槽1の左右の壁と第1仕切壁4に阻まれて余計に伸びたり縮んだりしないということである。例えば、伸びた時の長さが35cm、縮んだ時の長さが15cmだとすると横50cmとなるが、第1コイルばね2及び第2コイルばね3を取り付ける第1仕切壁4の厚さを3cmだとすると横(内壁の左右の壁の距離が)53cmの密閉槽にするということである。
次に、(2)の歪みについては、第1コイルばね2及び第2コイルばね3が温められて伸びるとき、第3仕切壁6が、第1コイルばね2及び第2コイルばね3が伸びるのに合わせて軽く下から擦り動しながら可動し下から支える形になっているばかりでなく、第3仕切壁6の上面に形成されたばね歪防止部としてのばね歪防止溝63(図6図7の半円形の溝63)に第1コイルばね2又は第2コイルばね3が嵌って伸び縮みする状況となるため、下に撓みが生じないばかりでなく左右にも撓みが生じない。
更に、(3)の歪みについては、第1コイルばね2及び第2コイルばね3が密閉槽1の内部空間で伸び縮みするとき、第2空間R2の暖気と第1空間R1の冷気が第1~第3の仕切壁4、5、6によって遮断されるため、密閉槽1内で暖気と冷気が混じりあうことが極端に少ない。そして、天井ファン29が第1空間R1で勢いよく回り、床上ファン28が第2空間R2で勢いよく回るため、第1空間R1内の冷気及び第2空間R2内の暖気は温度管理がほぼ完璧になされる(第1空間R1内の冷気は閾温度T以下の温度に保たれ、第2空間R2内の暖気は閾温度T以上の温度に保たれる)ため、第1コイルばね2及び第2コイルばね3がタイミングよく伸び縮みするということである。
前に述べた点については、密閉槽1の第1~第3の仕切壁4、5、6の範囲に収まる数の第1コイルばね2及び第2コイルばね3について可能なので、数多くの第1コイルばね2及び第2コイルばね3を、(1)~(3)の歪なく同時に使用することが可能ということである。
【0022】
(仕切壁について)
実施例の密閉槽1は、密閉槽1の内部を第1空間R1及び第2空間R2に区画するため、前述した第1仕切壁4、第2仕切壁5、および第3仕切壁6を備えている。第1仕切壁4は、先に述べた密閉槽1の中の領域を左右に分ける。この第1仕切壁4は、密閉槽1の内部で上下の内壁からの距離が例えば11cmの等位置で垂直に立ち、上下中間に、例えば縦2cm横1cm、奥行き3cmで前壁後壁の内壁の第1ガイド溝60に嵌り込んでスライドする突起4aが設けられ、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の伸び変形及び弱体化に応じて左右に可動する。
【0023】
第2仕切壁5は、垂直に立った第1仕切壁4の真上を、第1仕切壁4と一体となって左右に隙間なく水平にスライドしながら動く(この時、密閉槽1に接する面は、前壁及び後壁の内壁の第2ガイド溝61に、例えば1cm以上入り込んでスライドする)。第2仕切壁5は、例えば、縦(厚さ)3cm、横12.2cm、奥行き26cmの板状の壁である。第2仕切壁5は、左の縮まった第1コイルばね2が右に伸びるときは左側から右側に例えば31.4cm移動して、圧縮されて縮まった右側の第2コイルばね3を上から覆うと共に、左側の伸びた第1コイルばね2の上に、例えば30.4cmの隙間を作る。反対に右側の縮まった第2コイルばね3が左に伸びるとき、今度は右側から左側に例えば31.4cm移動し、圧縮されて縮まった左側の第1コイルばね2を上から覆うと共に、伸びた右側の第2コイルばね3の上に例えば30.4cmの隙間を作る。この第2仕切壁5は、第1仕切壁4と一体となって動く必要があることから、第1仕切壁4と固定する必要がある。その位置は、第1仕切壁4の上部横3cmを真ん中に挟んで左右等距離の長さに固定する。
【0024】
第3仕切壁6は、第2仕切壁5に下から対面して、第1仕切壁4の真下を左右に隙間なく水平にスライドしながら動く(この時、密閉槽1に接する面は、前壁及び後壁の内壁の第3ガイド溝62に1cm以上嵌り入り込んでスライドする)。第3仕切壁6は、例えば、縦(厚さ)3cm、横39cm、奥行き26cmの板状の壁である。第1仕切壁4の左側の縮まった第1コイルばね2が右に伸びるとき、第3仕切壁6は右に伸びる第1コイルばね2の下を擦り動きながら4.6cm右から左に移動して伸びた左側の第1コイルばね2を下から覆うと共に、右側の縮まった(弱体化した) 第2コイルばね3の下に例えば3.6cmの隙間を作る。反対に右側の縮まった第2コイルばね3が左に伸びるとき、第3仕切壁6は、今度は左側から右側に例えば4.6cm移動し、右側の伸びた第2コイルばね3を前記と全く同様に下から覆うと共に、左側の縮まった(弱体化した) 第1コイルばね2の下に、例えば3.6cmの隙間を作る。
【0025】
(ばね歪防止溝63について)
第3仕切壁6の上面には、図7に示すように、各第1コイルばね2及び各第2コイルばね3に向かい合う位置に、ばね歪防止溝63が設けられている。このばね歪防止溝63は、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の長手方向に延びると共に下方へ半円状に凹んだ溝状に形成されている。そしてばね歪防止溝63は、第1コイルばね2および第2コイルばね3が伸びた状態(図7(a)の状態)において、らせん状の第1コイルばね2および第2コイルばね3の伸び方向と交差する下方から摺り動くよう設けられている。そして、第1コイルばね2が伸びた状態では、第1コイルばね2の下側部分の一部がばね歪防止溝63に嵌るようになり、第2コイルばね3が伸びた状態では、第2コイルばね3の下側部分の一部がばね歪防止溝63に嵌るようになっている。これにより、段落〔0020〕で説明した(2)の歪が生じることを防止し得る。なお、ばね歪防止溝63の凹面上には、アルミニウム合金製の薄板64が設けられており、第1コイルばね2及び第2コイルばね3はこの薄板64に接触しながら伸縮する。
【0026】
第1仕切壁4、第2仕切壁5、第3仕切壁6は、いずれも第1コイルばね2及び第2コイルばね3が伸び縮みする際に発生する動力をもとに同時に動く仕切壁であるが、これが正確に可動するためには図5に示す仕組みが必要である。図5の上段(a)の図面は、第1仕切壁4が左から右に移動する状態であり、ループを形成する紐Iのたるみは第1仕切壁4が左から右に31.4cm動く時に第2仕切壁5も左から右に31.4cm動くが、第3仕切壁6は右から左に4.6cmしか動けない。その差は26.8cmの差がある。そのためループを形成する紐Iは、26.8cmのたるみを持たせる必要がある。これは、図5の下段(b)にも示すように、第2コイルばね3が右から左に伸びようとする状態の場合も全く同様な方法である。
【0027】
次に、第1仕切壁4及び第2仕切壁5と第3仕切壁6が反対方向に動く仕組みについて説明する。ここでは、第1仕切壁4と第2仕切壁5はくっついて同時に同方向に動くので、第2仕切壁5の説明図は省いた。図5の上段(a)の図面は、第1仕切壁4の奥行の中点を壁の左面の底面からの高さ1cmのところにA、それと反対側の位置にD(底面から例えば1cmの高さ)にとり、第3仕切壁6も奥行の中点を壁の底面から例えば高さ1cmのところを壁の左右にとり、それをB、CとしてA、B、C、Dの4点を結ぶループ紐を形成する。この時、A とDは点で固定、BとCにはミニローラーを設置する。そうすると、第1仕切壁4が左から右に31.4cm動こうとするとき、第3仕切壁6は紐Iの固定点Aの移動に引っ張られて、右から左へ逆方向へと4.6cm動こうとすることを、図5(a)で示している。
【0028】
次に、図5の下段(b)の図面は、第1仕切壁4が右から左へ動こうとするときの状態を示す図で、今度は第1仕切壁4が右から左へ31.4cm動こうとするとき、第3仕切壁6は、紐Iの固定点Dの移動に引っ張られ左から右へと逆方向へ4.6cm動こうとすることを示している。第2コイルばね3が右から左に31.4cm伸びる時、第1仕切壁4、第2仕切壁5も31.4cm右から左に移動する。この時、第3仕切壁6の横の長さは39cmで、左から右に4.6cmしか移動できない。これは、第3仕切壁6の大きさに原因がある。第3仕切壁6は、第2コイルばね3がマックスに伸びるとき、これを下からの熱を遮断する必要がある為、その伸びの長さに合わせて下から覆いつくす必要があるためその大きさになったわけである。このことは第1コイルばね2がマックスに伸びるときも同様である。
【0029】
第1コイルばね2及び第2コイルばね3が伸び縮みするとき、直方体の密閉槽1の内部の第2空間R2の空気温度は、常に所定の閾温度T以上の温度になるように、また密閉槽1の内部の第1空間R1の空気温度は、常に所定の閾温度Tより低い温度になるように保つ必要があることから、この密閉槽1は密閉する必要がある。また、第1空間R1の空気と第2空間R2の空気は、他方の空間に漏れていかないことが望ましいから、両空間R1、R2の間を分ける壁もまた密閉性を確保する必要がある。また、第1仕切壁4及び第2仕切壁5と第3仕切壁6は、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の伸び縮みに応じて可動し、第1コイルばね2及び第2コイルばね3を効率よく温めたり冷やしたりする必要があることから三つの壁が必要である。すなわち、実施例の発電装置CUは、密閉槽1の第1空間R1が、超小型高性能な冷却機(第1温度調整手段)9及び天井ファン29により閾温度T未満の温度に保持されており、第2空間R2は、小型高性能な電熱ヒーター(第2温度調整手段)8及び床上ファン28により閾温度T以上の温度に保持されている。そして、第1仕切壁4が密閉槽1内の一方側(左側)へ移動した状態(図5上段(a)の状態)では、伸び変形した第2コイルばね3が第1空間R1内に位置すると共に、弱体化し圧縮されて縮んだ第1コイルばね2が第2空間R2内に位置する。これにより、閾温度T以上の温度になって伸び変形した第2コイルばね3は、冷えた第1空間R1内に位置することで閾温度T未満に即座に冷やされ、これにより弱体化し圧縮されて縮むことが可能な状態となる。一方、閾温度T未満に冷やされて弱体化し圧縮されて縮んだ第1コイルばね2は、温かい第2空間R2内に位置することで閾温度T以上に即座に温められ、これにより伸び変形するようになる。
【0030】
また、第1仕切壁4が密閉槽1の他方側(右側)へ移動した状態(図5下段(b)の状態)では、伸び変形した第1コイルばね2が第1空間R1に位置する。これにより、閾温度T以上の温度になって伸び変形した第1コイルばね2は、冷えた第1空間R1内に位置することで閾温度T未満に即座に冷やされ、これにより弱体化し圧縮されて縮むことが可能な状態となる。一方、閾温度T未満に冷やされて弱体化し圧縮されて縮んだ第2コイルばね3は、温かい第2空間R2内に位置することで閾温度T以上に即座に温められ、これにより伸び変形するようになる。
【0031】
従って、第1コイルばね2の伸び変形状態から弱体化状態への切り替え及び弱体化状態から伸び変形状態への切り替えが連続的に繰り返され、第2コイルばね3の弱体化状態から伸び変形状態の切り替え及び伸び変形状態から弱体化状態への切り替えが連続的に繰り返される。これにより、第1仕切壁4は、図5の上段(a)の位置及び図5の下段(b)の位置の間を往復移動するようになる。
【0032】
(温度調整について)
次に、密閉槽1の第2空間R2内の空気を温める電熱ヒーター(第2温度調整手段)8と、第1空間R1内の空気を冷やす冷却機(第1温度調整手段)9について説明する。まず、電熱ヒーター8は、密閉槽1の下壁上面(内面)の中央部分に取り付けられ、第2空間R2内に位置する。電熱ヒーター8は、温度設定をしたら自動的にその設定温度を保つヒーターである。電熱ヒーター8は、第2空間R2(密閉槽1の底の内壁と第1~第3の仕切壁4、5、6の三つの壁とで形成された密閉空間)を常に温めるようにする。そして、床上ファン28と電熱ヒーター8のスイッチは常に入った状態にしておく(これは、常に温風が第2空間R2内に吹き荒れている状態である)。なお、密閉槽1には、第2空間R2内の温度を検知する温度センサー(図示しない)が設置されており、この温度センサーの検知温度に基づいて電熱ヒーター8の作動が制御される。
【0033】
冷却機9は、密閉槽1の上壁下面(内面)の中央部分に取り付けられ、第1空間R1内に位置する。冷却機9は、温度設定をしたら自動的にその設定温度を保つクーラーである。冷却機9は、第1空間R1(密閉槽1の天井の内壁と第1~第3の仕切壁4、5、6の三つの壁とで形成された密閉空間)を常に冷やすようにする。そして、天井ファン29と冷却機9のスイッチは常に入った状態にしておく(これは、常に冷風が第1空間R1内に吹き荒れている状態である)。なお、密閉槽1には、第1空間R1内の温度を検知する温度センサー(図示しない)が設置されており、この温度センサーの検知温度に基づいて冷却機9の作動が制御される。
【0034】
(往復移動手段について)
次に、往復移動手段であるループベルト16について説明する。図4からもわかるように、このループベルト16は、チェーン状ベルト15と、このチェーン状ベルト15の両端にそれぞれ接続された普通ベルト14(14A、14B)とが一体になったベルトである。ループベルト16は、各普通ベルト14A、14Bが、ループローラー11、13に巻き掛けられていて、一方(左側)の普通ベルト14Aが密閉槽1の左壁に設けた穴を通って密閉槽1内に入って第1仕切壁4の左側に連結され、他方(右側)の普通ベルト14Bが密閉槽1の右壁に設けた穴を通って密閉槽1内に入って第1仕切壁4の右側に連結され、ループを形成している。このループベルト16の各普通ベルト14A、14Bは、第1仕切壁4を挟んで第1及び第2コイルばね2、3と並んだ同じ水平位置で、第1仕切壁4の左右の壁の前後中央に取り付ける。このように第1仕切壁4に取り付けられたループベルト16は、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の伸び縮み変形による第1仕切壁4の左右方向への継続的な往復移動に合わせて、左方移動及び右方移動を継続することになる。
【0035】
さらに図4の説明を進めると、第1仕切壁4の左側に固定されたループベルト16の普通ベルト14Aは、密閉槽1の左壁の穴(その位置は、対面する第1仕切壁4への取り付け位置と同じ水平位置にする)を通り抜け、密閉槽1の左壁外側に設置されたループローラー13に巻き掛けられる。また、第1仕切壁4の右側に固定されたループベルト16の普通ベルト14Bは、密閉槽1の右壁の穴(その位置は、対面する第1仕切壁4への取り付け位置と同じ水平位置にする)を通り抜け、密閉槽1の右壁外側に設置されたループローラー11に巻き掛けられる。そして、密閉槽1の外側へ引き出されたそれぞれの普通ベルト14A、14Bに連結されたチェーン状ベルト15が、ローター回転軸23に連結して設置された回転伝達機構17の第1回転体41の外周部の歯にカーブするようにかみ合っている。
【0036】
つまり、第1コイルばね2が伸びるよう変形して第2コイルばね3が弱体化し圧縮されて縮むことで、第1仕切壁4が右方へ移動するときは、ループベルト16の普通ベルト14Aが右に引っ張られて、図4においてチェーン状ベルト15が左回りに移動(左方移動)するようになる。また、第2コイルばね3が伸びるよう変形して第1コイルばね2が弱体化し圧縮されて縮むことで、第1仕切壁4が左方へ移動するときは、ループベルト16の普通ベルト14Bが左に引っ張られて、図4においてチェーン状ベルト15が右回りに移動(右方移動)するようになる。よって、第1コイルばね2の伸び変形及び第2コイルばね3の弱体化と、第1コイルばね2の弱体化及び第2コイルばね3の伸び変形とを交互に実行することで、第1仕切壁4が継続的に往復移動してループベルト16が左方移動及び右方移動を交互に継続的に繰り返す。
【0037】
(回転伝達機構について)
次に、本発明の一実施例の回転伝達機構17について説明する。実施例の回転伝達機構17は、図1図3に示すように、ローター回転軸(回転軸)23に回転可能に設けられ、駆動手段として機能するループベルト16により正転方向及び正転方向と反対の逆転方向へ交互に回転する第1回転体41と、第1回転体41と並んでローター回転軸23に固定され、外周部に突爪部47およびラックギア43が設けられた第2回転体48と、ローター回転軸23を中心として第1回転体41が回転する方向へ同期して移動する支点軸49に揺動可能に設けられ、第2回転体48の突爪部47に引っ掛かり可能なレバー42と、レバー42に回転自在に設けられ、ラックギア(第1係合部)43に噛み合って係合が可能なピニオンギア(第2係合部)44を備える。実施例では、支店軸49は第1回転体41に固定されており、ローター回転軸23を中心として第1回転体41が回転する方向へ同期して移動する。レバー42は、ピニオンギア44が突爪部47に引っ掛かるか、またはピニオンギア44がラックギア43と噛み合うようにねじりばね(付勢手段)50により常に押されている。第1回転体41の正転方向の回転時には、ピニオンギア44が突爪部47に引っ掛かることで、第2回転体48及びローター回転軸23が第1回転体41と同じ正転方向へ強制的に回転する。一方、第1回転体41の逆転方向の回転時には、ラックギア43に噛み合ったピニオンギア44が回転し、このピニオンギア44の回転により第2回転体48及びローター回転軸23が正転方向へ積極的に回転する。すなわち、第1回転体41は正転方向及び逆転方向へ交互に回転するが、第2回転体48及びローター回転軸23は常に正転方向の一方向へ継続的かつ積極的に回転するよう構成されている。
【0038】
回転伝達機構17は、図2に示すように、往復移動手段16が第1方向へ移動する際(図2(a))にローター回転軸(回転軸)23を一方向へ回転させる第1回転伝達手段42と、往復移動手段16が第1方向と反対の第2方向へ移動する際(図2(b))に回転軸23を前記と同一方向へ回転させる第2回転伝達手段44とを備える。なお、回転伝達機構17に関する以降の説明では、図2において、第1回転体41及び第2回転体48の左回転を正転方向の回転とし、右回転を逆転方向の回転とする。
【0039】
突爪部47は、第2回転体48の外周部において、ローター回転軸23を中心とした周方向へ所定の間隔で複数設けられると共に、各突爪部47の間にラックギア43が設けられている。ピニオンギア44が設けられたレバー42は、第2回転体48を囲むように第1回転体41に複数設けられている。従って、第1回転体41の正転回転時には、各ピニオンギア44が突爪部47に引っ掛かるようになり、第1回転体41の逆転回転時には、各ピニオンギア44が各ラックギア43に順次噛み合って同時かつ連続的に回転し、各ピニオンギア44が回転する時に発生する回転慣性力により第2回転体48を正転方向へ回転させるようになっている。以降に具体的に説明する。
【0040】
(第1回転体41について)
第1回転体41は、図3(a)に示すように、円板状に形成されており、その中央には、ローター回転軸23が挿通する穴46が、その厚み方向に貫通して形成されている。第1回転体41は、ローター回転軸23が穴46に挿通することでこのローター回転軸23に取り付けられるが、その第1回転体41を取り付ける前に図3(b)に示すように、前記ローター回転軸23に固定された第2回転体48に接する形で前記ローター回転軸23に軸受ベアリング70を取り付け固定しその軸受ベアリング70の上に第1回転体41を取り付けることで、ローター回転軸23に対し自在回転が可能となっている。すなわち、第1回転体41は、ローター回転軸23の回転方向に関係なく正転方向または逆転方向へスムーズに回転可能である。また、第1回転体41の外周部には、ループベルト16のチェーン状ベルト15が噛み合う歯40が全周に亘って形成されており、第1回転体41はいわゆるスプロケットとなっている。また、第1回転体41の端面には、穴46を中心とする所定直径の円周上の側面に、周方向へ所要間隔をおいて複数(実施例では3つ)の支点軸49が設けられている。支点軸49は、第1回転体41が正転方向へ回転する際はローター回転軸23を中心として正転方向へ同期して移動し、第1回転体41が逆転方向へ回転する際はローター回転軸23を中心として逆転方向へ同期して移動する。支点軸49には、レバー42が揺動可能に取り付けられている。
【0041】
(レバー42について)
第1回転体41の端面に設けられた3つの支点軸49に揺動可能に取り付けられた各レバー42は、図1に示すように、ほぼ「へ」の字形に形成されたシーソータイプであり、長手方向の中間部に位置する屈曲部分に、支点軸49が挿通する穴が、その厚み方向に貫通して形成されている。レバー42は、支点軸49が穴に挿通することでこの支点軸49に取り付けられ、一方の先端部42a及び他方の先端部42bが、第2回転体48の外縁部に近づいたり離れたりするように姿勢が変位する。すなわちレバー42は、一方の先端部42aが第2回転体48の外縁部に近づいた場合には他方の先端部42bが第2回転体48の外縁部から離れ、他方の先端部42bが第2回転体48の外縁部に近づいた場合には一方の先端部42aが第2回転体48の外縁部から離れるように揺動する。そして、レバー42の一方の先端部42a及び他方の先端部42bのそれぞれには、ピニオンギア44、44が回転自在に取り付けられている。すなわち、1つのレバー42には、2つのピニオンギア44、44が取り付けられている。
【0042】
(ねじりばね50について)
各支点軸49には、付勢手段としてのねじりばね50が取り付けられている。ねじりばね50は、支点軸49に装着される環状部と、この環状部から伸びた2つの脚部とを備え、一方の脚部の先端は第1回転体41の端面に固定され、他方の脚部の先端はレバー42に固定されている。そして、ねじりばね50は、レバー42に固定された他方の脚部が、レバー42の一方の先端部42aが、第2回転体48の外縁部へ近づく方向へレバー42を常に押すようになっている。従って、レバー42の揺動により、レバー42に取り付けられたピニオンギア44、44のうち少なくとも1つのピニオンギア44が、第2回転体48の突爪部47またはラックギア43に接触するようになっている。ここで、ねじりばね50の押す力は、第2回転体48の外縁部に設けられた突爪部47にレバー42のピニオンギア44が位置するようになる場合には、レバー42の一方の先端部42a側が第2回転体48の外縁部から離れ、他方の先端部42b側が第2回転体48の外縁部に近づくようにレバー42の姿勢が変位することを許容する強さに設定されている。
【0043】
(ピニオンギア44について)
各レバー42の一方の先端部42a及び他方の先端部42bに取り付けられた第2係合部としての各ピニオンギア44、44は、第2回転体48に設けられたラックギア43の歯と同じモジュールの歯が外周面全周に形成されており、このラックギア43と噛み合い得るようになっている。各ピニオンギア44は、高速回転することが望まれるため、例えば、直径が10mm~20mmの小径のものが採用される。また、各ピニオンギア44は、比重が大きい材料から形成されており、回転速度に応じて回転慣性力が高まるようになっている。ここで、各ピニオンギア44は、例えば鋼鉄、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄などの鉄金属から形成することが望ましい。
【0044】
(第2回転体48について)
第2回転体48は、図3に示すように、第1回転体41と同程度の厚みの板状に形成されており、その中央には、ローター回転軸23が挿通する穴46が、その厚み方向に貫通して形成されている。第2回転体48は、ローター回転軸23が穴46に挿通することでこのローター回転軸23に固定するように取り付けられ、かつローター回転軸23に対して自在回転が不能となっている。すなわち、第2回転体48は、常にローター回転軸23と一体となって正転方向へ回転するようになっている。第2回転体48の外周部には、複数(実施例では9つ)の突爪部47が周方向へ等間隔に設けられており、各突爪部47の間の部分は、相対的に径方向へ凹んだ凹湾曲部となっている。各突爪部47の間に位置する各凹湾曲部は、一方(正転方向)の突爪部47側に凹部51が形成されていると共に、他方(逆転方向)の突爪部47側はなだらかな凹曲線状となっている。
【0045】
(凹部51について)
各突爪部47に設けられた各凹部51には、レバー42の一方の先端部42aに設けたピニオンギア44が嵌り得るようになっている。また、各凹部51には、レバー42の他方の先端部42bに設けたピニオンギア44は嵌らないようになっている。各凹部51は、図1から明らかなように、第2回転体48の逆転方向側へ開口すると共に、第2回転体48の正転方向へ凹んだ凹円弧状のアンダーカット形態をなしている。そして、各凹部51は、第1回転体41に設けられたレバー42の一方の先端部42aに設けられたピニオンギア44が嵌り得る形状及びサイズに形成されている。これにより、第2回転体48に対して第1回転体41が正転方向へ相対的に回転する際には、レバー42の一方の先端部42aに設けられたピニオンギア44が、凹部51に向けて移動してこの凹部51に嵌るようになる。そして、ピニオンギア44が凹部51に嵌った状態(図2(a))においては、第1回転体41の正転方向への回転は、第2回転体48の正転方向への回転より速くなることが規制され、第2回転体48と第1回転体41とが同期して正転方向へ回転することが可能となる。また、ピニオンギア44が凹部51に嵌っている状態において、第2回転体48に対して第1回転体41が逆転方向へ相対的に回転する際には、ピニオンギア44が凹部51から逆転方向へ抜け出るようになり、第1回転体41の逆転方向の回転が可能となる。
【0046】
(ラックギア43について)
第1係合部としての各ラックギア43は、各レバー42に設けたピニオンギア44のモジュールと同じ歯列であり、このピニオンギア44が噛み合い得るようになっている。ラックギア43は、第2回転体48の外周面における各突爪部47の間の凹曲線部に形成されている。従って、図1に示すように、第1回転体41と第2回転体48との相対的に位置関係により、レバー42の一方の先端部42aに設けたピニオンギア44が第2回転体48のラックギア43に噛み合っている際には、他方の先端部42bに設けたピニオンギア44は第2回転体48から離れるようになる。そして、レバー42の一方の先端部42aに設けたピニオンギア44が第2回転体48の突爪部47に位置する際には、レバー42の姿勢が変位して、他方の先端部42bに設けたピニオンギア44が第2回転体48に近づいてラックギア43と噛み合うようになる。また、レバー42の他方の先端部42bに設けたピニオンギア44が第2回転体48の突爪部47に位置する際には、レバー42の姿勢が変位して、一方の先端部42aに設けたピニオンギア44が第2回転体48に近づいてラックギア43と噛み合うようになる。そして、各ピニオンギア44は、ラックギア43に噛み合った状態で第1回転体41が第2回転体48に対して相対的に逆転方向へ回転(右回転)した場合に、図2(b)において右回転するようになる。
【0047】
(ピニオンギア44による第2回転体48の正転方向への回転力付与について)
各ピニオンギア44は、前に述べたように、比重が大きい材料から形成されているため、図2(b)において高速で右回転すると回転慣性力が発生する。高速で右回転することで回転慣性力が発生した各ピニオンギア44には、噛み合っているラックギア43の歯を蹴り出すような力が発生する。すなわち、各ピニオンギア44がラックギア43を蹴り出すことで、第2回転体48には正転方向の回転(左回転)が付与されることになる。言い換えると、第1回転体41が第2回転体48に対して逆転方向に回転(右回転)する際は、各ピニオンギア44の歯がラックギア43の歯を蹴り出す力が各ピニオンギア44に発生するので、第2回転体48を正転方向へ回転(左回転)させ得る。
【0048】
以上のように構成された回転伝達機構17は、ローター回転軸23に回転自在に設けられた第1回転体41と、ローター回転軸23に固定された第2回転体48とが、ローター回転軸23の軸心方向に並んで隣接している。そして、第1回転体41は、ループベルト16のチェーン状ベルト15の左方移動及び右方移動に連動して、ローター回転軸23に対して正転方向及び逆転方向へ交互に継続的に回転する。
【0049】
(第1回転体41が正転方向へ回転する場合)
このような構成の回転伝達機構17は、図2(a)に示すように、ループベルト16のチェーン状ベルト15が左方移動する際には、第1回転体41が正転方向に回転(左回転)するようになり、ねじりばね50で押された各レバー42の一方の先端部42aに設けられたピニオンギア44が、第2回転体48の凹部51に嵌り込むようになる。凹部51に嵌り込んだピニオンギア44は、第1回転体41が正転方向へ回転する間は凹部51から抜け出ることができない。これにより、正転方向へ回転する第1回転体41に押されて、第2回転体48が正転方向へ同じ回転速度で同期して強制的に回転させられるようになり、第2回転体48が固定されているローター回転軸23が、一方向(正転方向)へ継続的に回転する。
【0050】
(第1回転体41が逆転方向へ回転する場合)
一方、回転伝達機構17は、図2(b)に示すように、ループベルト16のチェーン状ベルト15が右方移動する際には、第1回転体41が逆転方向に回転(右回転)するようになり、ねじりばね50で押された各レバー42の一方の先端部42aに設けられたピニオンギア44が、第2回転体48のラックギア43に噛み合うようになる。そして、第1回転体41が第2回転体48に対し相対的に逆転方向へ回転(右回転)することで、ラックギア43に噛み合っている各ピニオンギア44が高速で右回転するようになり、高速回転する各ピニオンギア44によりラックギア43が蹴り出されるようになる。また第1回転体41が第2回転体48に対して相対的に逆転方向へ回転する過程で、レバー42の一方の先端部42aに設けられたピニオンギア44が突爪部47に位置する際には、レバー42の姿勢が変位することで、他方の先端部42bに設けたピニオンギア44が、ラックギア43に噛み合って高速回転するようになる。これにより、ラックギア43が形成された第2回転体48は、各ピニオンギア44、44の回転慣性力により正転方向へ積極的に回転させられるようになり、この第2回転体48が固定されているローター回転軸23が、一方向(正転方向)へ継続的に回転する。
【0051】
このように、実施例の回転伝達機構17は、第1回転体41が正転方向へ回転する際には第2回転体48は正転方向へ継続的に強制的に回転し、第1回転体41が逆転方向へ回転する際にも第2回転体48は正転方向へ継続的かつ積極的に回転することになり、この第2回転体48が固定されたローター回転軸23が常に正転方向の一方向へ連続的(継続的)に駆動回転するようになる。すなわち、第1回転体41が正転方向及び逆転方向へ交互に回転しても、第2回転体48が常に正転方向の一方向へ継続的に回転するようになり、ローター回転軸23も正転方向の一方向へ連続的に回転することで発電機20の継続的な発電を実現することができる。
【0052】
(発電機20について)
発電機20は、既に実用化されている公知のものが使用されており、ここでは詳細な説明は省略する。発電機20は、図4に示すように、ローター回転軸23と、このローター回転軸23に固定されたローター21と、このローター21を取り巻く形でローター回転軸23に固定された軸受ベアリング26の上に設置されたコイル層19とから構成されている。この構造は、自転車のマグネット発電機と同じであり、磁石層であるローター21が回転すると、それを取り巻くコイル層19に電気が発生する。
【実施例の作用】
【0053】
以上のように構成された実施例の回転伝達機構17を備えた発電装置CUについて、実際にどの様に作動して発電が実現されるかについて説明する。
【0054】
発電装置CUは、初期状態(作動していない状態)では、例えば図5(a)の状態となっている。すなわち、第1コイルばね2は縮んでおり、第2コイルばね3は伸びている。これにより、第1仕切壁4は、密閉槽1の左壁に近づいた位置に停止しており、第2仕切壁5は、左壁に接触した位置で停止している。また、第3仕切壁6は、右壁に接触した位置で停止している。そして、密閉槽1の第1空間R1内に、伸びた第2コイルばね3が位置しており、第2空間R2内に、縮んだ第1コイルばね2が位置している。なお、初期状態においては、第1空間R1内及び第2空間R2内は何れも閾温度T未満の温度に保持されており、第2コイルばね3は伸びたままで弱体化しており、第1コイルばね2は縮んだままで弱体化しており、第1コイルばね2及び第2コイルばね3は伸びる力は発生していない。
【0055】
初期状態で停止している発電装置CUのメインスイッチ(図示せず)をONとすると、予め充電してあった蓄電池27から、電熱ヒーター8、冷却機9、床上ファン28及び天井ファン29のそれぞれに電気が供給される。これにより、密閉槽1の第1空間R1内の空気は、天井ファン29により対流すると共に冷却機9により徐々に冷やされる。そして、第1空間R1内の空気は、所要時間後に閾温度T未満の温度に冷却された冷気となり、第1空間R1内全体が閾温度T未満に維持される。一方、密閉槽1の第2空間R2内の空気は、床上ファン28により対流すると共に電熱ヒーター8により徐々に温められる。そして、第2空間R2内の空気は、所要時間後に閾温度T以上の温度に加熱された暖気となり、第2空間R2内全体が閾温度Tの温度以上に維持される。
【0056】
密閉槽1内の第1空間R1内が閾温度T未満の温度に冷やされることで、伸びた第1空間R1内に位置していた第2コイルばね3は、閾温度T未満の温度に冷やされた状態が維持され、伸びる力が生じずに弱体化した状態に維持される。一方、密閉槽1内の第2空間R2内が閾温度T以上の温度に温められることで、縮んで弱体化したまま第2空間R2内に位置していた第1コイルばね2は、閾温度T以上の温度に温められるため、伸びる力が発生するようになる。
【0057】
これにより、第2コイルばね3が弱体化して縮められることが可能となるので第1コイルばね2が伸びることが可能となり、第1コイルばね2の伸び変形及びこれに伴う第2コイルばね3の圧縮変形により、第1仕切壁4及び第2仕切壁5が右方向へ押され、第1仕切壁4及び第2仕切壁5が第1及び第2ガイド溝60、61に沿って右方向へスライド移動する。
【0058】
第1仕切壁4及び第2仕切壁5がガイド溝60、61に沿って右方向へスライド移動するに伴い、ループを形成する前述した紐Iが突っ張るまでは第3仕切壁6は密閉槽1の右壁に接触した状態で停止している。そして、第3仕切壁6は、紐Iが突っ張った以降では、第3ガイド溝62に沿って左方へ移動するようになる。そして、第2仕切壁5が密閉槽1の右壁に接触したタイミングで、第1仕切壁4及び第2仕切壁5が停止し、第3仕切壁6は、密閉槽1の左壁に接触したタイミングで停止する。これにより、第1~第3の仕切壁4、5、6による第1空間R1と第2空間R2との区画状態がほぼ維持される。
【0059】
第2仕切壁5が密閉槽1の右壁に当たり、第3仕切壁6が密閉槽1の左壁に当たった状態(図5(b))となると、閾温度T以上の温度に加熱されていた第1コイルばね2は、閾温度T未満の温度に冷やされている第1空間R1内に位置するようになるので閾温度T未満の温度に急速に冷やされ、弱体化する。一方、閾温度T未満の温度に冷やされていた第2コイルばね3は、閾温度T以上の温度に温められている第2空間R2内に位置するようになるので閾温度T以上の温度に急速に温められ、伸びる力が発生するようになる。
【0060】
これにより、第1コイルばね2が弱体化して縮められることが可能となるので第2コイルばね3が伸びることが可能となり、第2コイルばね3の伸び変形及びこれに伴う第1コイルばね2の圧縮変形により、第1仕切壁4及び第2仕切壁5が左方向へ押され、第1仕切壁4及び第2仕切壁5が第1及び第2ガイド溝60、61に沿って左方向へスライド移動する。
【0061】
第1仕切壁4及び第2仕切壁5がガイド溝60、61に沿って左方向へスライド移動するに伴い、ループを形成する前述した紐Iが突っ張るまでは第3仕切壁6は密閉槽1の左壁に接触した状態で停止している。そして、第3仕切壁6は、紐Iが突っ張った以降では、第3ガイド溝62に沿って右方へ移動するようになる。そして、第2仕切壁5が密閉槽1の左壁に接触したタイミングで、第1仕切壁4及び第2仕切壁5が停止し、第3仕切壁6は、密閉槽1の右壁に接触したタイミングで停止する。これにより、第1~第3の仕切壁4、5、6による第1空間R1と第2空間R2との区画状態がほぼ維持される。
【0062】
よって実施例の発電装置CUは、密閉槽1の第1空間R1内を閾温度T未満の温度に維持すると共に、第2空間R2内を閾温度T以上の温度に維持しておくことにより、第1コイルばね2の伸び変形及び第2コイルばね3の圧縮変形と、第2コイルばね3の伸び変形及び第1コイルばね2の圧縮変形とが、交互に継続的に発生するようになり、これによって第1仕切壁4及び第2仕切壁5を、密閉槽1内で左右方向へ交互に継続的に往復移動させることとなる。
【0063】
なお、第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、伸び変形する際及び縮み変形する際に、下側で対応するばね歪防止溝63、63に下側部分がほぼ嵌っているため、これらコイルばね2、3の中間部分が、伸縮方向と交差する下方や、前方及び後方へ撓み変形することが規制される。従って、第1コイルばね2及び第2コイルばね3は、段落〔0020〕で説明した(2)の歪の発生が規制された状態で伸縮変形する。
【0064】
第1コイルばね2及び第2コイルばね3の交互の伸縮変形による第1仕切壁4の左右方向への往復スライド移動に伴い、第1仕切壁4に連結されてループローラー11、13に巻き掛けられたループベルト16が左回り及び右回りに移動し、チェーン状ベルト15が左方移動及び右方移動を交互に継続的に繰り返す。すなわち、第1仕切壁4が密閉槽1内を右方へスライド移動する際にはループベルト16は左回りに移動(左方移動)し、第1仕切壁4が密閉槽1内を左方へスライド移動する際にはループベルト16は右回りに移動(右方移動)する。
【0065】
ループベルト16のチェーン状ベルト15の左方移動及び右方移動に伴い、発電機20のローター回転軸23に設けられた実施例の回転伝達機構17において、ループベルト16が巻き掛けられた第1回転体41が、ローター回転軸23を中心として正転方向への回転及び逆転方向への回転を交互に継続的に繰り返す。すなわち、ループベルト16が左回りに移動する際に第1回転体41は、図2(a)において左回転となる正転方向へ回転し、ループベルト16が右回りに移動する際に第1回転体41は、図2(b)において右回転となる逆転方向へ回転する。
【0066】
ここで、実施例の回転伝達機構17では、ループベルト16のチェーン状ベルト15の左方移動に伴って第1回転体41が正転方向へ回転する際には、第1回転体41に設けられた各レバー42の一方の先端部42aに設けられたピニオンギア44が、第2回転体48に設けられた何れかの凹部51に嵌り込む。これにより、第2回転体48は、第1回転体41に押されて第1回転体41と同じ回転速度で正転方向へ回転し、第2回転体48が固定されたローター回転軸23を正転方向へ強制的に回転させる。
【0067】
一方、ループベルト16のチェーン状ベルト15の右方移動に伴って第1回転体41が逆転方向へ回転する際には、第1回転体41に設けられた各レバー42の一方の先端部42aに設けられたピニオンギア44又は他方の先端部42bに設けられたピニオンギア44の何れかが、第2回転体48に設けられたラックギア43に噛み合う。そして、第1回転体41が逆転方向に回転することで、第2回転体48は第1回転体41に対して相対的に正転方向へ回転することになり、この際に、ラックギア43に噛み合う各ピニオンギア44が高速で回転して回転慣性力が発生する。これにより、ピニオンギア44に噛み合っている各ラックギア43は、高速で回転することで第2回転体48を正転方向へ押し出すようになり、よって第2回転体48は正転方向の積極的な回転が維持されるようになる。そして、第2回転体48が固定されたローター回転軸23を正転方向へ積極的に回転させる。
【0068】
すなわち、実施例の回転伝達機構17では、第1回転体41が正転方向へ回転する間及び第1回転体41が逆転方向へ回転する間の何れの場合も、第2回転体48が正転方向へ継続的かつ積極的に回転する(一方向へ連続的に回転)ようになるから、ローター回転軸23が一方向へ継続的に回転するようになる。ローター回転軸23が一方向へ継続的に回転することで、発電機20が連続的に駆動されて連続的な発電が行われる。
【0069】
発電機20の作動により発生した電気は、その一部が蓄電池27に供給されるようになっており、発電装置CUの作動中は、蓄電池27が常に充電されるようになっている。これにより、発電装置CUの作動中に、電熱ヒーター8、冷却機9、床上ファン28及び天井ファン29への電気供給が滞ることはなく、密閉槽1の第1空間R1及び第2空間R2の温度管理が適切になされ、第1及び第2のコイルばね2、3が交互に適切に伸縮変形するようになるので、結果として発電機20により適切な発電が連続的に行われる。
【0070】
このように、実施例の回転伝達機構17を備えた発電装置CUは、密閉槽1の第1空間R1を閾温度T未満の温度に維持すると共に、第2空間R2を閾温度T以上の温度に維持することで、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の継続的な伸び縮み変形が発生し、これによりループ状ベルト16及び回転伝達機構17を介して発電機20を継続的に作動させることができるので、安定的かつ連続的な発電が可能である。特に、第1コイルばね2および第2コイルばね3の温度調整を適切に行うことができるので、第1仕切壁4およびループ状ベルト16を適切に継続的に往復移動させることができ、これによって発電機20を安定的かつ連続的に駆動させることができる。また、実施例の回転伝達機構17により、ループ状ベルト16の往復移動を、ローター回転軸23の同一方向への継続的(連続的)な回転に適切に変換することができる。また、伸び縮みする第1コイルばね2及び第2コイルばね3の変形時の歪みの発生を規制することができるので、各コイルばね2、3の繰り返し寿命が長くなることも期待できる。
【0071】
(変更例)
図8は、変更例の回転伝達機構100を示す図面である。この回転伝達機構100と実施例の回転伝達機構17との違いは、第1回転体41の外径が、第2回転体48の外径より小径であることと、第1回転体41と第2回転体48との間に、第2回転体48の外径より大径である円形の支持板101を設けたことである。そして、レバー42を揺動可能に支持する支点軸49を、支持板101における第2回転体48側の側面に固定した形態となっている。支持板101は、ローター回転軸23に回転自在に設けられていると共に、第1回転体41に固定または一体的に形成されており、第1回転体41と一体的に正転方向及び反転方向へ回転するようになっている。すなわち、支持板101は第1回転体41と一体的に回転するだけで、第1回転体41と逆方向へ回転したり異なる回転速度で回転したりすることはない。
【0072】
変更例の回転伝達機構100では、レバー42を支持する支点軸49を支持板101に固定した構成であるため、第1回転体41の外径を第2回転体48の外径より小径化することを可能とする。そして、第1回転体41の小径化に伴い、ループ状ベルト16の往復移動に対する第1回転体41の回転速度を、実施例の回転伝達機構17よりも高め得るので、第2回転体48及びローター回転軸23の回転の高速化が可能である。
【0073】
変更例の回転伝達機構100においても、第1回転体41が正転方向へ回転する際は、ピニオンギア44が突爪部47に引っ掛かるので、第2回転体48を正転方向へ確実に回転させることができる。また、第1回転体41が逆転方向へ回転する際は、ピニオンギア44の回転が第2回転体48に伝達されるので、第2回転体48を正転方向へ積極的に回転させることができる。すなわち、第1回転体41が正転方向へ回転する間及び第1回転体41が逆転方向へ回転する間の何れの場合も、第2回転体48が正転方向へ継続的かつ積極的に回転する(一方向へ連続的に回転)ようになるから、ローター回転軸23が一方向へ継続的に回転するようになる。ローター回転軸23が一方向へ継続的に回転することで、発電機20が連続的に駆動されて連続的な発電が行われる。
【0074】
(1)実施例では、発電装置CUの各構成部分や回転伝達機構17の各構成部分の具体的な寸法、サイズを示したが、これら寸法、サイズはこれに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
(2)第1コイルばね2及び第2コイルばね3の対数は、実施例で示した2対に限らず、1対または3対以上であってもよい。
(3)各コイルばね2、3を形成する形状記憶合金は、実施例で例示した物性に限定されるものではなく、様々な物性の形状記憶合金を採用することが可能である。
(4) 対をなす第1コイルばね2及び第2コイルばね3の設置態様は、水平に限定されるものではなく、密閉槽1の内部構造を変更することを前提として、垂直であってもよいし、所要角度で斜めに傾いていてもよい。
(5)回転伝達機構17は、実施例で例示した構成に限定されるものではなく、往復移動を一方向の回転移動へ変換可能な構成であればよい。
(6)第3仕切壁6は、作動制御される流体圧アクチュエーターやモーターなどでスライドさせる構造であってもよい。この場合には、紐Iによる連携構造を省略することができる。
(7)往復移動手段16は、実施例で示したチェーン状ベルトを備えたループ状ベルトに限らない。例えば、回転伝達機構17の第1回転体41を、外周全周に歯型を設けた歯付プーリーとすれば、往復移動手段16は、この第1回転体41の歯型に噛み合う歯型が内周に形成された歯付ベルトとすることができる。
(8)往復移動手段16は、弾性変形しない細長のラックギア形態として、長手方向の一端部を第1仕切壁4に固定すると共に、密閉層1の壁部に設けた開口から外方へ延びるように設け、第1仕切壁4の往復移動に連動して往復移動する形態としてもよい。この形態では、回転伝達機構17の第1回転体41を、密閉層1の外側へ延びた往復移動手段16のラックギアに噛み合うスパーギア(平歯車)として、この第1回転体41を往復移動手段16に噛み合った形態とする。このような形態であっても、第1仕切壁4の往復移動に連動して往復移動手段16が往復移動することで、回転伝達機構17の第1回転体41が正転方向及び逆転方向へ往復回転し、実施例と同等の作用が得られる。
(9)第3仕切壁6の上面に設けられるばね歪防止部としてのばね歪防止溝63は、図面及び上記実施例で例示した溝状形態に限定されるものではない。例えば、第3仕切壁6の上面に、ばねに沿う溝部は設けず、第1コイルばね2及び第2コイルばね3の短手方向の両側に、該ばね2、3の長手方向へ延びる2つの突部を設けた形態としてもよい。この変更例のばね歪防止部としてのばね歪防止溝63は、第3仕切壁6の上面と、2つの突部の外面とにより、第1コイルばね2及び第2コイルばね3を囲むようになり、これらばね2、3の歪を防止することができる。
(10)発電機20は、実施例で示した構造のものに限定されず、公知の様々な形態のものが採用可能である。
(11)実施例の回転伝達機構17及び変更例の回転伝達機構100においては、ローター回転軸23と発電機20との間に増速機構を設けて、ローター回転軸23の回転数よりも発電機20の回転速度を増速するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
発電装置CUを極めてコンパクトに構成して10kw以上の発電ができれば、この発電装置CUを車に搭載して夢の電気自動車が実現する可能性がある。
【符号の説明】
【0076】
16 ループベルト(駆動手段)
23 ローター回転軸(回転軸)
41 第1回転体
42 レバー
43 ラックギア(第1係合部)
44 ピニオンギア(第2係合部)
47 突爪部
48 第2回転体
49 支点軸
50 ねじりばね(付勢手段)
51 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8