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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098728
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
H01L21/265 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002385
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大坪 弘明
(57)【要約】
【課題】 SiC基板に生じた反りを効果的に緩和する。
【解決手段】 半導体装置の製造方法であって、SiC基板の第1表面にドーパントをイオン注入する第1イオン注入工程と、前記第1イオン注入工程よりも後に、前記SiC基板の前記第1表面の反対側に位置する第2表面に、1×1019cm-3よりも高い濃度で元素をイオン注入する第2イオン注入工程、を有する。前記第1イオン注入工程では、前記第1表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じる。前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記反りが緩和される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
SiC基板(12)の第1表面(12a)にドーパントをイオン注入する第1イオン注入工程と、
前記第1イオン注入工程よりも後に、前記SiC基板の前記第1表面の反対側に位置する第2表面(12b)に、1×1019cm-3よりも高い濃度で元素をイオン注入する第2イオン注入工程、
を有し、
前記第1イオン注入工程では、前記第1表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じ、
前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記反りが緩和される、
製造方法。
【請求項2】
前記第2イオン注入工程では、1×1020cm-3よりも低い濃度で元素をイオン注入する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2イオン注入工程では、前記第1イオン注入工程において前記第1表面に注入されたドーパントの濃度よりも高い濃度で元素をイオン注入する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲内に、炭素の凝集層が形成される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記SiC基板が、4H-SiCまたは6H-SiCにより構成されており、
前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲内に、3C-SiCが形成される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第2イオン注入工程よりも後に、前記第1表面にドーパントをイオン注入する第3イオン注入工程をさらに有し、
前記第2イオン注入工程では、前記第2表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じ、
前記第3イオン注入工程では、前記第1表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じる、
請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2イオン注入工程よりも後に、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲を除去する工程をさらに有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、SiC(すなわち、炭化ケイ素)により構成された半導体基板(以下、SiC基板という)から半導体装置を製造する方法が開示されている。この製造方法では、SiC基板のおもて面にボロン、リンなどのドーパントをイオン注入する。SiC基板のおもて面にドーパントをイオン注入すると、SiC基板に反りが生じる。次に、SiC基板の裏面に反り解消イオンを注入する。これによって、SiC基板に生じた反りを緩和する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-153954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、SiC基板に生じた反りを効果的に緩和する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、第1イオン注入工程と第2イオン注入工程を有する。前記第1イオン注入工程では、SiC基板の第1表面にドーパントをイオン注入する。前記第2イオン注入工程では、前記第1イオン注入工程よりも後に、前記SiC基板の前記第1表面の反対側に位置する第2表面に、1×1019cm-3よりも高い濃度で元素をイオン注入する。前記第1イオン注入工程では、前記第1表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じる。前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記反りが緩和される。
【0006】
なお、第2イオン注入工程においてSiC基板にイオン注入される元素は、ドーパントであってもよいし、ドーパント以外の元素であってもよい。
【0007】
また、第2イオン注入工程でSiC基板の反りが緩和されることは、第1イオン注入工程で生じたSiC基板の反り(すなわち、第1表面が凸となる向きの反り)が緩和されることを意味する。したがって、第2イオン注入工程で、第2表面が凸となる向きの反りが生じてもよい。
【0008】
第1イオン注入工程で第1表面にドーパントをイオン注入すると、第1表面が凸となる向きでSiC基板に反りが生じる。第2イオン注入工程でSiC基板の第2表面に元素をイオン注入すると、SiC基板が、第1イオン注入工程で生じた反りを緩和するように変形する。第2イオン注入工程において第2表面に1×1019cm-3よりも高い濃度で元素をイオン注入すると、第2イオン注入工程においてSiC基板を効率的に変形させることができる。したがって、この製造方法によれば、第1イオン注入工程でSiC基板に生じた反りを効果的に緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】イオン注入前のSiC基板12の断面図。
図2】電界緩和領域18に対するイオン注入工程の説明図。
図3】第2ドリフト領域20のエピタキシャル成長工程の説明図。
図4】第1イオン注入工程の説明図。
図5】第1イオン注入工程後のSiC基板12の反りの説明図。
図6】第2イオン注入工程の説明図。
図7】第2イオン注入工程後のSiC基板12の反りの説明図。
図8】第2イオン注入工程における反り量とイオン注入濃度との関係を示すグラフ。
図9】第3イオン注入工程の説明図。
図10】トレンチ形成工程の説明図。
図11】結晶欠陥領域除去工程の説明図。
図12】実施形態の製造方法により製造されるMOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示する製造方法では、前記第2イオン注入工程では、1×1020cm-3よりも低い濃度で元素をイオン注入してもよい。
【0011】
第2イオン注入工程において1×1020cm-3以上の濃度で元素をイオン注入すると、第2イオン注入工程において生じる変形の量が減少することが判明した。第2イオン注入工程で1×1020cm-3よりも低い濃度で元素をイオン注入することで、第1イオン注入工程で生じた反りをより効果的に緩和できる。
【0012】
本明細書が開示する製造方法では、前記第2イオン注入工程では、前記第1イオン注入工程において前記第1表面に注入されたドーパントの濃度よりも高い濃度で元素をイオン注入してもよい。
【0013】
この構成によれば、第1イオン注入工程で生じた反りをより効果的に緩和できる。
【0014】
本明細書が開示する製造方法においては、前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲内に、炭素の凝集層が形成されてもよい。
【0015】
この構成によれば、第1イオン注入工程で生じた反りをより効果的に緩和できる。
【0016】
本明細書が開示する製造方法においては、前記SiC基板が、4H-SiCまたは6H-SiCにより構成されていてもよい。前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲内に、3C-SiCが形成されてもよい。
【0017】
この構成によれば、第1イオン注入工程で生じた反りをより効果的に緩和できる。
【0018】
本明細書が開示する製造方法は、前記第2イオン注入工程よりも後に、前記第1表面にドーパントをイオン注入する第3イオン注入工程をさらに有していてもよい。前記第2イオン注入工程では、前記第2表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じてもよい。前記第3イオン注入工程では、前記第1表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じてもよい。
【0019】
この製造方法によれば、第2イオン注入工程によって、第1イオン注入工程と第3イオン注入工程における反りを緩和できる。
【0020】
本明細書が開示する製造方法は、前記第2イオン注入工程よりも後に、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲を除去する工程をさらに有していてもよい。
【0021】
実施形態の製造方法では、図1に示すSiC基板12から半導体装置を製造する。SiC基板12は、4H-SiCまたは6H-SiCにより構成されている。SiC基板12は、n型のドレイン領域14と、n型の第1ドリフト領域16を有している。第1ドリフト領域16は、ドレイン領域14の上部に配置されている。第1ドリフト領域16のn型不純物濃度は、ドレイン領域14のn型不純物濃度よりも低い。
【0022】
まず、図2に示すように、SiC基板12の上面12aにマスクを介して選択的にp型不純物をイオン注入することによって、第1ドリフト領域16内に複数のp型の電界緩和領域18を形成する。次に、図3に示すように、第1ドリフト領域16の上部にn型の第2ドリフト領域20をエピタキシャル成長させる。第2ドリフト領域20のn型不純物濃度は、第1ドリフト領域16のn型不純物濃度とほぼ等しい。この段階では、SiC基板12に大きい反りは生じていない。
【0023】
(第1イオン注入工程)
次に、第1イオン注入工程を実施する。第1イオン注入工程では、図4に示すように、SiC基板12の上面12aにマスクを介して選択的にp型不純物をイオン注入することによって、第2ドリフト領域20内にp型のボディ領域22を形成する。ここでは、1×1018cm-3未満の濃度でp型不純物をイオン注入する。また、ここでは、上面12aに露出する広い範囲にボディ領域22を形成する。また、ここでは、注入深さを変えながら複数回p型不純物をイオン注入することによって、厚いボディ領域22を形成する。また、ボディ領域22の下部には、第2ドリフト領域20を残存させる。上面12aにp型不純物をイオン注入すると、上面12a近傍のp型不純物が注入された領域(すなわち、ボディ領域22)でSiC基板12が膨張する。ボディ領域22を形成する範囲が広いので、上面12a近傍でSiC基板12が大きく膨張する。他方、第1イオン注入工程では、SiC基板12の下面12b近傍の領域は膨張しない。このため、図5に示すように、SiC基板12に、上面12aが凸となる向きで反りが生じる。以下では、SiC基板12を水平面上に載置したときに、上面12aの外周端12rに対して上下方向において最も変位量が大きい上面12a内の部分を、最大変位部12dという。また、上下方向における最大変位部12dの外周端12rに対する位置(より詳細には、上側を正として測定した位置)を、反り量Sという。反り量Sが正の値であることは上面12aが凸であることを意味し、反り量Sが負の値であることには下面12bが凸であることを意味する。反り量Sの絶対値が大きいと、製造設備(例えば、SiC基板12の搬送装置など)において不具合が生じる。したがって、半導体装置の製造工程においては、SiC基板12の反り量Sの絶対値が基準値Smax以下に管理される。第1イオン注入工程では反り量Sが正の値となる。第1イオン注入工程では、反り量Sは基準値Smaxまでは達しないが、基準値Smaxに近い値まで上昇する。
【0024】
(第2イオン注入工程)
次に、第2イオン注入工程を実施する。第2イオン注入工程では、図6に示すように、SiC基板12の下面12bに反り調整用元素42をイオン注入する。本実施形態では、反り調整用元素42としてp型不純物の一種であるアルミニウム(Al)を用いる。ただし、反り調整用元素42は、特に限定されない。反り調整用元素42は、ドーパント(すなわち、p型不純物またはn型不純物)であってもよいし、その他の元素(すなわち、SiC基板12の導電性に影響を与えない元素)であってもよい。また、ここでは、注入深さを変えることなく、一定の深さに反り調整用元素42をイオン注入する。下面12bに反り調整用元素42をイオン注入すると、下面12b近傍の反り調整用元素42が注入された領域に結晶欠陥が形成される。以下では、反り調整用元素42のイオン注入により結晶欠陥が形成された領域を、結晶欠陥領域40という。結晶欠陥領域40が形成されると、結晶欠陥領域40(すなわち、下面12b近傍の領域)においてSiC基板12が膨張する。他方、第2イオン注入工程では、SiC基板12の上面12a近傍の領域は膨張しない。したがって、SiC基板12が、反り量Sを減少させるように変形する。すなわち、SiC基板12が、第1イオン注入工程で生じた反りを緩和するように変形する。ここでは、反り調整用元素42を第1イオン注入工程で注入したp型不純物よりも高濃度に注入することで、反り量Sを負の値まで減少させる。すなわち、図7に示すように、SiC基板12の下面12bが凸となるようにSiC基板12に反りを生じさせる。第2イオン注入工程の実施後の反り量Sの絶対値は、基準値Smaxよりも低い値に制御される。
【0025】
図8は、反り量の比S2/S1と、反り調整用元素42のイオン注入濃度Dとの関係を示している。反り量の比S2/S1は、第2イオン注入工程で生じる反り量Sの変化量S2を第1イオン注入工程で生じる反り量Sの変化量S1で除算した値の絶対値を示している。S2/S1>1は、第2イオン注入工程においてSiC基板12の下面12bが凸となることを意味する。S2/S1<1は、第2イオン注入工程においてSiC基板12の上面12aが凸の状態に維持されることを意味する。図8に示すように、第2イオン注入工程におけるイオン注入濃度Dが1×1019cm-3を超えると、比S2/S1が急激に上昇する。したがって、第2イオン注入工程では、1×1019cm-3よりも高い濃度で反り調整用元素42をイオン注入することで、効率的に反り量Sを変化させることができる。特に、イオン注入濃度Dが1×1019cm-3を超えると比S2/S1が1を超えるので、下面12bが凸となるようにSiC基板12に反りを生じさせることができる。
【0026】
第2イオン注入工程におけるイオン注入濃度Dが1×1019cm-3を超えると比S2/S1が急激に上昇する理由は、以下の通りであると考えられる。第2イオン注入工程において1×1019cm-3を超えるイオン注入濃度でイオン注入した場合に、結晶欠陥領域40の断面を解析すると、炭素凝集層と3C-SiC層の少なくとも一方が検出される。炭素凝集層は、SiC基板12中で炭素が凝集した層である。3C-SiC層は、SiC基板12中で結晶構造が変化して3C-SiCの結晶構造となった層である。第2イオン注入工程におけるイオン注入濃度Dが1×1019cm-3を超えると、結晶欠陥領域40内に炭素凝集層や3C-SiC層が形成されることで、結晶欠陥領域40が大きく膨張すると考えられる。このため、イオン注入濃度Dが1×1019cm-3を超えると、反り量の比S2/S1が急激に上昇すると考えられる。
【0027】
また、イオン注入濃度Dが1×1020cm-3より高い場合には、イオン注入濃度Dが上昇するにしたがって比S2/S1が徐々に低下する。したがって、第2イオン注入工程では、1×1020cm-3よりも低い濃度で反り調整用元素42をイオン注入すると、効率的に反り量Sを変化させることができる。
【0028】
(第3イオン注入工程)
次に、第3イオン注入工程を実施する。第3イオン注入工程では、図9に示すように、SiC基板12の上面12aにp型不純物とn型不純物をマスクを介して選択的にイオン注入することによって、複数のn型のソース領域24と複数のp型のコンタクト領域26を形成する。なお、ソース領域24に対するn型不純物のイオン注入とコンタクト領域26に対するp型不純物のイオン注入は、いずれを先に実施してもよい。ここでは、1×1018より高く、1×1019cm-3より低い濃度でn型不純物とp型不純物をイオン注入する。すなわち、ソース領域24にイオン注入するn型不純物の濃度とコンタクト領域26にイオン注入するp型不純物の濃度は、ボディ領域22に注入されたp型不純物の濃度よりも高く、結晶欠陥領域40にイオン注入された元素の濃度よりも低い。また、ここでは、上面12aに露出する広い範囲にソース領域24とコンタクト領域26を形成する。また、ソース領域24とコンタクト領域26の下部にボディ領域22を残存させる。上面12aにn型不純物とp型不純物をイオン注入すると、上面12a近傍の不純物が注入された領域(すなわち、ソース領域24とコンタクト領域26)でSiC基板12が膨張する。ソース領域24とコンタクト領域26を形成する範囲が広いので、上面12a近傍でSiC基板12が大きく膨張する。他方、第3イオン注入工程では、SiC基板12の下面12b近傍の領域は膨張しない。したがって、SiC基板12が、反り量Sを増加させるように変形する。すなわち、SiC基板12が、第2イオン注入工程で生じた反りを緩和するように変形する。ここでは、反り量Sが正の値まで増加する。すなわち、図5と同様に、SiC基板12の上面12aが凸となるようにSiC基板12に反りが生じる。第2イオン注入工程の実施後に下面12bが凸となるようにSiC基板12が反っているので、第3イオン注入工程においてSiC基板12の上面12aが凸となるときに反り量Sが過大となることが防止される。したがって、第3イオン注入工程において反り量Sは基準値Smaxよりも低い値に制御される。
【0029】
次に、SiC基板12をアニールすることにより、SiC基板12にイオン注入されたn型不純物とp型不純物を活性化させる。次に、図10に示すように、SiC基板12の上面12aをエッチングすることにより、ソース領域24、ボディ領域22及び第2ドリフト領域20を貫通して電界緩和領域18に達するトレンチ28を複数形成する。
【0030】
次に、図11に示すように、SiC基板12の下面12bを研磨、エッチング等することによって、結晶欠陥領域40を除去するとともにドレイン領域14の厚みを減少させる。
【0031】
次に、図12に示すように、トレンチ28内にゲート絶縁膜30とゲート電極32を形成する。また、SiC基板12の上面12aにソース電極34を形成する。さらに、SiC基板12の下面12bにドレイン電極36を形成する。以上の工程により、図12に示すMOSFETが完成する。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態では、第2イオン注入工程において、1×1019cm-3よりも高い濃度で下面12bに元素をイオン注入する。したがって、第2イオン注入工程において効率的にSiC基板12の反り量Sを減少させることができる。また、第2イオン注入工程において1×1020cm-3よりも低い濃度で下面12bに元素をイオン注入するので、イオン注入量の過多による反り量Sの変化効率の悪化を防止することができる。
【0033】
また、本実施形態では、第2イオン注入工程では、第1イオン注入工程においてイオン注入されるp型不純物の濃度よりも高い濃度で元素をイオン注入する。したがって、第1イオン注入工程では上面12aが凸となり、第2イオン注入工程では下面12bが凸となる。さらに、第2イオン注入工程の後の第3イオン注入工程では、上面12aが凸となる。したがって、第2イオン注入工程で生じる反りによって、第1イオン注入工程で生じる反りと第3イオン注入工程で生じる反りの両方を相殺することができる。したがって、下面12bに対する元素のイオン注入の回数が少なくても、SiC基板12の反り量Sを低い値に管理することができる。
【0034】
なお、上述した実施形態では、下面12bに元素をイオン注入する工程が1回のみであった。しかしながら、上面12aにドーパントをイオン注入する工程と下面12bに元素をイオン注入する工程とを交互に複数回繰り返してもよい。
【0035】
なお、上述した実施形態では、第2イオン注入工程において反り量Sを負の値まで減少させた。しかしながら、他の例においては、第2イオン注入工程実施後の反り量Sが正の値であってもよい。この構成でも、第1イオン注入工程で生じた反りを第2イオン注入工程で緩和できる。
【0036】
以下に、本明細書に開示の技術の構成を列記する。
(構成1)
半導体装置の製造方法であって、
SiC基板の第1表面にドーパントをイオン注入する第1イオン注入工程と、
前記第1イオン注入工程よりも後に、前記SiC基板の前記第1表面の反対側に位置する第2表面に、1×1019cm-3よりも高い濃度で元素をイオン注入する第2イオン注入工程、
を有し、
前記第1イオン注入工程では、前記第1表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じ、
前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記反りが緩和される、
製造方法。
(構成2)
前記第2イオン注入工程では、1×1020cm-3よりも低い濃度で元素をイオン注入する、構成1に記載の製造方法。
(構成3)
前記第2イオン注入工程では、前記第1イオン注入工程において前記第1表面に注入されたドーパントの濃度よりも高い濃度で元素をイオン注入する、構成1または2に記載の製造方法。
(構成4)
前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲内に、炭素の凝集層が形成される、構成1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
(構成5)
前記SiC基板が、4H-SiCまたは6H-SiCにより構成されており、
前記第2イオン注入工程では、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲内に、3C-SiCが形成される、構成1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
(構成6)
前記第2イオン注入工程よりも後に、前記第1表面にドーパントをイオン注入する第3イオン注入工程をさらに有し、
前記第2イオン注入工程では、前記第2表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じ、
前記第3イオン注入工程では、前記第1表面が凸となる向きで前記SiC基板に反りが生じる、
構成1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
(構成7)
前記第2イオン注入工程よりも後に、前記SiC基板の前記第2イオン注入工程における元素の注入範囲を除去する工程をさらに有する、構成1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【0037】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
12:SiC基板、22:ボディ領域、24:ソース領域、26:コンタクト領域、40:結晶欠陥領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12