(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098729
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】超音波探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/44 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01N29/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002387
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】山口 祥
(72)【発明者】
【氏名】北澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】江原 和也
(72)【発明者】
【氏名】仁平 泰広
(72)【発明者】
【氏名】大内 弘文
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB01
2G047BA03
2G047BB02
2G047BC02
2G047BC03
2G047BC09
2G047CA01
2G047EA04
2G047GG27
(57)【要約】
【課題】探傷画像から内面エコーを的確に除去することができる超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】超音波探傷装置は、配管1の外面2に配置され、複数の圧電素子16a~16dを有する超音波センサ11と、制御装置12と、コンピュータ13とを備える。制御装置12は、複数の圧電素子16a~16dのうちの送信素子と受信素子の組合せに対応する複数の波形信号Waa~Wddを取得する。コンピュータ13は、複数の波形信号Waa~Wddを用いて探傷画像24を構築する。コンピュータ13は、探傷画像24上で指定された配管1の内面3の位置に基づき、複数の波形信号Waa~Wddから内面エコーを抽出して削除するように補正し、補正された複数の波形信号Waa~Wddを用いて探傷画像24Aを再構築する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の外面に配置され、複数の圧電素子を有する超音波センサと、
前記複数の圧電素子のうちの送信素子と受信素子の組合せを選択して、前記送信素子から前記被検体へ超音波を送信させると共に、反射された超音波が前記受信素子で受信されて変換された波形信号を取得することにより、前記送信素子と前記受信素子の組合せに対応する複数の波形信号を取得する制御装置と、
前記被検体の内部の位置毎に、前記位置で超音波が反射されたと仮定した場合の前記送信素子と前記受信素子の組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、前記複数の波形信号の強度を抽出して合算し、合算した強度の分布を示す探傷画像を構築するコンピュータと、を備えた超音波探傷装置において、
前記コンピュータは、前記探傷画像上で指定された前記被検体の内面の位置で超音波が反射された場合の前記送信素子と前記受信素子の組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、前記被検体の内面で反射された超音波に相当する内面エコーを前記複数の波形信号から抽出して削除するように補正し、補正された前記複数の波形信号を用いて探傷画像を再構築することを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波探傷装置において、
前記コンピュータで構築された探傷画像を表示する表示装置と、
作業者の操作により、前記表示装置で表示された探傷画像上で前記被検体の内面の位置を指定する入力装置とを備えたことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波探傷装置において、
前記コンピュータは、前記探傷画像上で前記被検体の深さ方向にて強度の最大値を示す位置を、前記被検体の内面の位置として指定することを特徴とする超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラント設備では、安全性の担保のため、被検体の欠陥の位置や寸法に基づいて余寿命の評価が行われる。被検体の欠陥を検出する非破壊検査装置の一つとして、超音波探傷装置がある。
【0003】
特許文献1の超音波探傷装置は、その本体部と、本体部にケーブルを介して接続されたトランスデューサとを備える。トランスデューサは、鋼材(被検体)の表面に配置され、複数の圧電素子を有する。
【0004】
超音波探傷装置の本体部は、1つの圧電素子を順次選択して、圧電素子から鋼材へ超音波を送信させると共に、反射された超音波が圧電素子で受信されて変換された信号を取得する。これにより、複数の圧電素子にそれぞれ対応する複数の信号を取得する。各信号は、鋼材の底面で反射された超音波に相当する底面エコー(以降、内面エコーという)を含む。更に、鋼材の欠陥が存在すれば、鋼材の欠陥で反射された超音波に相当する欠陥エコーを含む。
【0005】
超音波探傷装置の本体部は、開口合成法に基づき、複数の信号を処理して探傷画像を構築する。開口合成方法は、例えば、各圧電素子を中心とし且つ超音波の片道伝播距離(詳細には、超音波の伝播時間と伝播速度を乗算して二分した値)を半径とした円弧上に反射源が存在するという観点から、反射源の位置を同定する方法である。探傷画像は、被検体の画像上でエコーを示すもの、すなわち、反射源の位置を示すものである。
【0006】
ここで、仮に、複数の信号又は探傷画像に対して内面エコーを除去する処理を行わなければ、探傷画像にて内面エコーが出現するので、内面エコーの近傍で出現する欠陥エコーの識別が困難となる。そのため、超音波探傷装置の本体部は、複数の信号又は探傷画像に対して内面エコーを除去する処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の内面エコーの除去処理では、例えば、内面エコーの強度が比較的大きく、欠陥エコーの強度が比較的小さいという観点から、強度が閾値以上であるエコーを除去する。しかし、被検体の形状や欠陥の形状によっては、内面エコーの強度と欠陥エコーの強度との差分が小さくなり、前述した閾値を設定することが困難になる。この場合、探傷画像から内面エコーを的確に除去することができない。
【0009】
特許文献1の内面エコーの除去処理では、例えば、被検体の形状に基づいて内面エコーの位置を予想できるという観点から、その位置に出現したエコーを除去する。しかし、被検体の形状が不明瞭であれば、内面エコーの位置を予想することが困難である。この場合、探傷画像から内面エコーを的確に除去することができない。
【0010】
本発明の目的は、探傷画像から内面エコーを的確に除去することができる超音波探傷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体の外面に配置され、複数の圧電素子を有する超音波センサと、前記複数の圧電素子のうちの送信素子と受信素子の組合せを選択して、前記送信素子から前記被検体へ超音波を送信させると共に、反射された超音波が前記受信素子で受信されて変換された波形信号を取得することにより、前記送信素子と前記受信素子の組合せに対応する複数の波形信号を取得する制御装置と、前記被検体の内部の位置毎に、前記位置で超音波が反射されたと仮定した場合の前記送信素子と前記受信素子の組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、前記複数の波形信号の強度を抽出して合算し、合算した強度の分布を示す探傷画像を構築するコンピュータと、を備えた超音波探傷装置において、前記コンピュータは、前記探傷画像上で指定された前記被検体の内面の位置で超音波が反射された場合の前記送信素子と前記受信素子の組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、前記被検体の内面で反射された超音波に相当する内面エコーを前記複数の波形信号から抽出して除去するように補正し、補正された前記複数の波形信号を用いて探傷画像を再構築する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、探傷画像から内面エコーを的確に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における超音波探傷装置の構成を表す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態における超音波探傷装置の動作を表すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態における送信素子と受信素子との第1の組合せに対応する超音波の伝播経路及び波形信号を表す図である。
【
図4】本発明の一実施形態における送信素子と受信素子との第2の組合せに対応する超音波の伝播経路及び波形信号を表す図である。
【
図5】本発明の一実施形態における送信素子と受信素子との第3の組合せに対応する超音波の伝播経路及び波形信号を表す図である。
【
図6】本発明の一実施形態における送信素子と受信素子との第4の組合せに対応する超音波の伝播経路及び波形信号を表す図である。
【
図7】本発明の一実施形態における探傷画像を表す図である。
【
図8】本発明の一実施形態における補正後の波形信号を表す図である。
【
図9】本発明の一実施形態における補正後の探傷画像を表す図である。
【
図10】本発明の一変形例における超音波探傷装置の構成を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における超音波探傷装置の構成を表す概略図である。なお、本実施形態では、配管の探傷検査を行う場合を例にとって説明する。
【0016】
本実施形態の超音波探傷装置は、配管1(被検体)の外面2に配置された超音波センサ11と、超音波センサ11に配線を介し接続された制御装置12と、制御装置12に配線を介し接続されたコンピュータ13と、コンピュータ13に配線を介し接続された表示装置14及び入力装置15とを備える。コンピュータ13は、図示しないものの、プログラムに従って処理を実行するプロセッサと、プログラムやデータを記憶するメモリとを有する。表示装置14は、ディスプレイ等で構成され、入力装置15は、キーボードやマウス等で構成されている。
【0017】
超音波センサ11は、例えば配管1の軸方向(
図1の左右方向)に配列された複数の圧電素子16a,16b,16c,16dを有する。各圧電素子は、後述する駆動信号によって発振し、配管1へ超音波を送信する。また、各圧電素子は、反射された超音波を受信し、波形信号に変換する。
【0018】
制御装置12は、圧電素子16a,16b,16c,16dのうちの送信素子を選択し、送信素子へ駆動信号を出力するパルサ(図示せず)と、圧電素子16a,16b,16c,16dのうちの受信素子を選択し、受信素子からの波形信号を入力するレシーバ(図示せず)とを有する。制御装置12は、圧電素子16a,16b,16c,16dのうちの送信素子と受信素子の組合せを選択して制御することにより、送信素子と受信素子の組合せに対応する複数の波形信号を取得する。
【0019】
詳しく説明すると、まず、パルサは、送信素子として圧電素子16aを選択し、この圧電素子16aから超音波を送信させる。レシーバは、受信素子として圧電素子16a,16b,16c,16dを選択し、圧電素子16a,16b,16c,16dから入力した波形信号Waa,Wab,Wac,Wadを取得する。次に、パルサは、送信素子として圧電素子16bを選択し、この圧電素子16bから超音波を送信させる。レシーバは、受信素子として圧電素子16a,16b,16c,16dを選択し、圧電素子16a,16b,16c,16dから入力した波形信号Wba,Wbb,Wbc,Wbdを取得する。次に、パルサは、送信素子として圧電素子16cを選択し、この圧電素子16cから超音波を送信させる。レシーバは、受信素子として圧電素子16a,16b,16c,16dを選択し、圧電素子16a,16b,16c,16dから入力した波形信号Wca,Wcb,Wcc,Wcdを取得する。次に、パルサは、送信素子として圧電素子16dを選択し、この圧電素子16dから超音波を送信させる。レシーバは、受信素子として圧電素子16a,16b,16c,16dを選択し、圧電素子16a,16b,16c,16dから入力した波形信号Wda,Wdb,Wdc,Wddを取得する。このようにして送信素子と受信素子の組合せを切替えながら、複数の波形信号Waa~Wddを取得する。レシーバは、複数の波形信号をデジタル化してコンピュータ13へ出力する。
【0020】
コンピュータ13は、配管1の内部の位置毎に、その位置で超音波が反射されたと仮定した場合の送信素子と受信素子の組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、複数の波形信号の強度(振幅)を抽出して合算し、合算した強度の分布を示す探傷画像を構築する。
【0021】
詳しく説明すると、コンピュータ13は、超音波センサ11における圧電素子16a,16b,16c,16dの位置関係を予め記憶する。送信素子16aと受信素子16aの組合せに対応する波形信号Waaに対し、送信素子16aの位置、受信素子16aの位置、及び仮想反射位置に基づき、仮想反射位置を経由した送信素子16aから受信素子16aまでの超音波の伝播距離を演算し、この超音波の伝播距離と伝播速度を乗算して伝播時間を算出する。波形信号Waaから、前述した超音波の伝播時間に対応する強度を抽出する。次に、送信素子16aと受信素子16bの組合せに対応する波形信号Wabに対し、送信素子16aの位置、受信素子16bの位置、及び仮想反射位置に基づき、仮想反射位置を経由した送信素子16aから受信素子16bまでの超音波の伝播距離を演算し、この超音波の伝播距離と伝播速度を乗算して伝播時間を算出する。波形信号Wabから、前述した超音波の伝播時間に対応する強度を抽出する。同様に、波形信号Wac~Wddの強度を抽出する。そして、抽出された波形信号Waa~Wddの強度を合算し、これに対応する画素値を設定する。このようにして仮想反射位置毎に画素値を設定し、探傷画像を構築する。表示装置14は、コンピュータ13で構築された探傷画像を表示する。
【0022】
ここで、仮に、複数の波形信号Waa~Wddに対して内面エコーを除去する処理を行わなければ、探傷画像にて内面エコーが出現するので、内面エコーの近傍で出現する欠陥エコーの識別が困難となる。そのため、コンピュータ13は、複数の波形信号Waa~Wddに対して内面エコーを除去する処理を行う。
【0023】
次に、上述した内面エコーの除去処理を含め、本実施形態の超音波探傷装置の動作を説明する。
図2は、本実施形態における超音波探傷装置の動作を表すフローチャートである。
【0024】
ステップS1にて、制御装置12は、送信素子と受信素子の組合せに対応する複数の波形信号Waa~wddを取得する。具体例として、波形信号Waa~wadについて説明する。
【0025】
図3(b)で示す波形信号Waaは、送信素子16aと受信素子16aの組合せに対応するものであり、配管1の内面3で反射された超音波(
図3(a)の矢印A1で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する内面エコー21aと、配管1のき裂4(欠陥)の先端で反射された超音波(
図3(a)の矢印B1で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する端部エコー22aと、配管1のき裂4の根元で反射された超音波(
図3(a)の矢印C1で示す超音波の伝播経路を参照)に相当するコーナーエコー(図示せず)とを含む。
【0026】
図4(b)で示す波形信号Wabは、送信素子16aと受信素子16bの組合せに対応するものであり、配管1の内面3で反射された超音波(
図4(a)の矢印A2で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する内面エコー21bと、配管1のき裂4の先端で反射された超音波(
図4(a)の矢印B2で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する端部エコー22bと、配管1のき裂4の根元で反射された超音波(
図4(a)の矢印C2で示す超音波の伝播経路を参照)に相当するコーナーエコー(図示せず)とを含む。
【0027】
図5(b)で示す波形信号Wacは、送信素子16aと受信素子16cの組合せに対応するものであり、配管1の内面3で反射された超音波(
図5(a)の矢印A3で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する内面エコー21cと、配管1のき裂4の先端で反射された超音波(
図5(a)の矢印B3で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する端部エコー22cと、配管1のき裂4の根元で反射された超音波(
図5(a)の矢印C3で示す超音波の伝播経路を参照)に相当するコーナーエコー(図示せず)とを含む。
【0028】
図6(b)で示す波形信号Wadは、送信素子16aと受信素子16dの組合せに対応するものであり、配管1の内面3で反射された超音波(
図6(a)の矢印A4で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する内面エコー21dと、配管1のき裂4の先端で反射された超音波(
図6(a)の矢印B4で示す超音波の伝播経路を参照)に相当する端部エコー22dとを含む。
【0029】
ステップS2にて、コンピュータ13は、複数の波形信号Waa~wddを用いて探傷画像24(
図7参照)を構築し、表示装置14で表示する。この段階では、内面エコーの除去処理を行っていない。そのため、探傷画像24は、配管1の軸方向断面の座標系にて、配管1の内面3で反射された超音波に相当する内面エコー21eと、配管1のき裂4の先端で反射された超音波に相当する端部エコー22eと、配管1のき裂4の根元で反射された超音波に相当するコーナーエコー23eとを示す。内面エコー21eの近傍でコーナーエコー23eが出現するため、コーナーエコー23eの識別が困難である。
【0030】
ステップS3にて、作業者は、表示装置14で表示された探傷画像24の内面エコー21eを参照しつつ、入力装置15を操作して例えば線25を描くことにより、探傷画像24上で配管1の内面3の位置を指定する。
【0031】
ステップS4にて、コンピュータ13は、探傷画像24上で指定された配管1の内面3の位置に基づき、複数の波形信号Waa~Wddから内面エコーを抽出して除去するように補正する。具体例として、波形信号Waa~wadについて説明する。
【0032】
波形信号Waaの内面エコー21aに関し、探傷画像24上で指定された配管1の内面3の位置のうち、例えば超音波の反射点を経由した送信素子16aから受信素子16aまでの超音波の伝播距離が最も短くなるか、若しくは超音波の入射角と反射角が同じになる超音波の反射点26a(上述の
図3(a)参照)の位置を、送信素子16aの位置及び受信素子16aの位置に基づいて抽出する。そして、送信素子16aの位置、受信素子16aの位置、及び超音波の反射点26aの位置に基づいて超音波の伝播距離を演算し、超音波の伝播距離と伝播速度を乗算して伝播時間taを算出する。そして、
図8(a)で示すように、波形信号Waaにおいて、超音波の伝播時間taを基準とした所定の範囲に出現する内面エコー21aを抽出して除去する(すなわち、強度をゼロとする)。
【0033】
波形信号Wabの内面エコー21bに関し、探傷画像24上で指定された配管1の内面3の位置のうち、例えば超音波の反射点を経由した送信素子16aから受信素子16bまでの超音波の伝播距離が最も短くなるか、若しくは超音波の入射角と反射角が同じになる超音波の反射点26b(上述の
図4(a)参照)の位置を、送信素子16aの位置及び受信素子16bの位置に基づいて抽出する。そして、送信素子16aの位置、受信素子16bの位置、及び超音波の反射点26bの位置に基づいて超音波の伝播距離を演算し、超音波の伝播距離と伝播速度を乗算して伝播時間tbを算出する。そして、
図8(b)で示すように、波形信号Wabにおいて、超音波の伝播時間tbを基準とした所定の範囲に出現する内面エコー21bを抽出して除去する(すなわち、強度をゼロとする)。
【0034】
波形信号Wacの内面エコー21cに関し、探傷画像24上で指定された配管1の内面3の位置のうち、例えば超音波の反射点を経由した送信素子16aから受信素子16cまでの超音波の伝播距離が最も短くなるか、若しくは超音波の入射角と反射角が同じになる超音波の反射点26c(上述の
図5(a)参照)の位置を、送信素子16aの位置及び受信素子16cの位置に基づいて抽出する。そして、送信素子16aの位置、受信素子16cの位置、及び超音波の反射点26cの位置に基づいて超音波の伝播距離を演算し、超音波の伝播距離と伝播速度を乗算して伝播時間tcを算出する。そして、
図8(c)で示すように、波形信号Wacにおいて、超音波の伝播時間tcを基準とした所定の範囲に出現する内面エコー21cを抽出して除去する(すなわち、強度をゼロとする)。
【0035】
波形信号Wadの内面エコー21dに関し、探傷画像24上で指定された配管1の内面3の位置のうち、例えば超音波の反射点を経由した送信素子16aから受信素子16dまでの超音波の伝播距離が最も短くなるか、若しくは超音波の入射角と反射角が同じになる超音波の反射点26d(上述の
図6(a)参照)の位置を、送信素子16aの位置及び受信素子16dの位置に基づいて抽出する。そして、送信素子16aの位置、受信素子16dの位置、及び超音波の反射点26dの位置に基づいて超音波の伝播距離を演算し、超音波の伝播距離と伝播速度を乗算して伝播時間tdを算出する。そして、
図8(d)で示すように、波形信号Wadにおいて、超音波の伝播時間tdを基準とした所定の範囲に出現する内面エコー21dを抽出して除去する(すなわち、強度をゼロとする)。
【0036】
ステップS5にて、コンピュータ13は、補正された複数の波形信号Waa~Wddを用いて探傷画像24A(
図9参照)を再構築し、表示装置14で表示する。探傷画像24Aは、内面エコー21eが出現しないため、コーナーエコー23eの識別が容易である。したがって、作業者は、探傷画像24Aの端部エコー22eとコーナーエコー23eにより、き裂4の位置及び寸法を評価することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態においては、探傷画像24の内面エコー21eにより、配管1の内面3の位置を指定することができる。そして、探傷画像24上で指定された配管1の内面3の位置に基づき、複数の波形信号Waa~Wddから内面エコーを抽出して除去するように補正し、補正された複数の波形信号Waa~Wddを用いて探傷画像24Aを再構築する。そのため、探傷画像から内面エコーを的確に除去することができる。
【0038】
なお、上記一実施形態においては、探傷画像24上で配管1の内面3の位置を指定する方法として、作業者が入力装置15を操作して線25を描く場合を例にとって説明したが、これに限られない。コンピュータ13が、圧電素子の配列方向の位置(X座標)毎に、配管の深さ方向にて強度の最大値を示す位置(Z座標)を抽出し、抽出された位置に基づいて近似線を描いてもよい。
【0039】
また、上記一実施形態においては、配管1(被検体)の内面3が圧電素子の配列方向に曲率を有さない場合を例にとって説明したが、これに限られない。
図10で示す変形例のように、被検体1の内面3が圧電素子の配列方向に曲率を有してもよい。この変形例においても、上記一実施形態と同様、探傷画像から内面エコーを的確に除去することができる。
【符号の説明】
【0040】
11 超音波センサ
12 制御装置
13 コンピュータ
14 表示装置
15 入力装置
16a~16d 圧電素子