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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098731
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両用シートの固定構造
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/015 20060101AFI20240717BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60N2/015
B60N2/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002390
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 友朗
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CD03
3B087DA09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】車両の衝突時における車両用シートの変位を抑える。
【解決手段】車両10は、キャビン側ブラケット20、シート側ブラケット40、締結固定部材50、シートレール132を有する。キャビン側ブラケット20は、第1固定部21と、第1固定部21よりも下方に設けられた第1締結孔とを有する。シート側ブラケット40は、第2固定部41と、第2固定部41よりも車両下方に設けられた第2締結孔とを有する。締結固定部材50は、第1締結孔および第2締結孔を貫通する態様で車幅方向に延びる棒状部51と、各ブラケット20,40を挟み込む態様で棒状部51に設けられる締結部52とを有する。シートレール132は、棒状部51における壁側部分51Wの車両上方側に配置される。シートレール132は、車両10の衝突時において棒状部51の端部511が車両上方に移動する場合に、同端部511によって押圧されるようになる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のキャビンの側壁に車両用シートの側部が固定される車両用シートの固定構造であって、
車両上下方向に延びる形状をなすとともに、前記側壁に固定される第1固定部、および、同第1固定部よりも車両下方に設けられた締結固定用の第1締結孔、を有するキャビン側ブラケットと、
車両上下方向に延びる形状をなすとともに、前記側部に固定される第2固定部、および、同第2固定部よりも車両下方に設けられた締結固定用の第2締結孔、を有するシート側ブラケットと、
棒状をなすとともに前記第1締結孔および前記第2締結孔を貫通する態様で車幅方向に延びる棒状部、および、前記キャビン側ブラケットおよび前記シート側ブラケットを挟み込む態様で前記棒状部に設けられる締結部、を有する締結固定部材と、
前記側壁の一部を構成する態様で、前記棒状部における前記第2締結孔よりも前記側壁の側の部分の車両上方側の位置であって、且つ、前記車両の衝突時における変形モードが、前記棒状部における前記側壁の側の端部が車両上方側に移動する変形モードである場合に、前記棒状部の前記部分によって押圧されるようになる位置に配置された変形規制部材と、
を備える車両用シートの固定構造。
【請求項2】
前記変形規制部材の下端には、車両下方に向けて突出する凸部が設けられている
請求項1に記載の車両用シートの固定構造。
【請求項3】
前記変形規制部材は、前記側壁を補強する補強部材である
請求項1または2に記載の車両用シートの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両では、キャビンの内部に、乗員が着座するための車両用シートが固定されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の車両では、キャビンの側壁の一部を構成する骨格部材に、車両用シートの側部が固定されている。
【0003】
車両用シートを強固に固定するためには、同車両用シートが車両の骨格部材に直接固定されることが好ましい。しかしながら、キャビン内におけるスペースの都合上、車両用シートを固定する固定部分を、骨格部材の下方にオフセットせざるを得ない場合がある。この場合には、図9に例示するように、車両用シート(以下、シート811)をキャビンの側壁813に固定することが考えられる。図9に示すように、車両810は、キャビン側ブラケット820と、シート側ブラケット840とを有している。キャビン側ブラケット820およびシート側ブラケット840は、車両上下方向に延びている。キャビン側ブラケット820は、キャビン812の側壁813(本例では、骨格部材)に固定される第1固定部821と、第1固定部821よりも下方において前記シート側ブラケット840との締結固定に用いられる第1締結孔(図示略)とを有する。シート側ブラケット840は、シート811(本例では、シートフレーム815)の側部に固定される第2固定部841と、第2固定部841よりも下方において前記キャビン側ブラケット820との締結固定に用いられる第2締結孔(図示略)とを有する。この車両810では、雄ねじ部材851が第1締結孔および第2締結孔に挿通されるとともに、同雄ねじ部材851に雌ねじ部材852が螺合される。これにより、キャビン側ブラケット820とシート側ブラケット840とが締結固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3247064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記固定構造を採用することにより、キャビン812内のスペースに制限がある場合であっても、シート811の側部をキャビン812の側壁813に固定することが可能になる。
【0006】
ただし、上記固定構造では、キャビン側ブラケット820における第1固定部821と締結固定用の第1締結孔とが離れている。また、シート側ブラケット840における第2固定部841と締結固定用の第2締結孔とが離れている。そのため、車両810の衝突に際してシート811に力が加わった場合に、それらブラケット820,840の変形を招き易い構造になっている。
【0007】
この場合には、図9中に矢印Dで示すように、キャビン側ブラケット820の第1固定部821とシート側ブラケット840の第2固定部841とが離間する態様で、それらブラケット820,840が変形するおそれがある。そして、この場合にはシート側ブラケット840に固定されたシート811は、キャビン812の内方に倒れ込むように変位してしまう。車両810においては、こうした衝突時におけるシート811の変位を抑えることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための装置の各態様を記載する。
[態様1]車両のキャビンの側壁に車両用シートの側部が固定される車両用シートの固定構造であって、車両上下方向に延びる形状をなすとともに、前記側壁に固定される第1固定部、および、同第1固定部よりも車両下方に設けられた締結固定用の第1締結孔、を有するキャビン側ブラケットと、車両上下方向に延びる形状をなすとともに、前記側部に固定される第2固定部、および、同第2固定部よりも車両下方に設けられた締結固定用の第2締結孔、を有するシート側ブラケットと、棒状をなすとともに前記第1締結孔および前記第2締結孔を貫通する態様で車幅方向に延びる棒状部、および、前記キャビン側ブラケットおよび前記シート側ブラケットを挟み込む態様で前記棒状部に設けられる締結部、を有する締結固定部材と、前記側壁の一部を構成する態様で、前記棒状部における前記第2締結孔よりも前記側壁の側の部分の車両上方側の位置であって、且つ、前記車両の衝突時における変形モードが、前記棒状部における前記側壁の側の端部が車両上方側に移動する変形モードである場合に、前記棒状部の前記部分によって押圧されるようになる位置に配置された変形規制部材と、を備える車両用シートの固定構造。
【0009】
上記構成では、車両衝突時における締結固定部材の変位に際して棒状部の端部が車両上方に移動する場合には、同端部がある程度移動すると、棒状部の上記側壁の側の部分(以下、壁側部分)によって変形規制部材が直接、あるいは間接に押圧されるようになる。上記構成によれば、このとき変形規制部材により、棒状部による押圧に抗する態様で同棒状部を支持することができる。これにより、締結固定部材の棒状部のそれ以上の変位を抑えることができるため、同締結固定部材が設けられたシート側ブラケットおよび車両用シートの変位を抑えることができる。上記構成によれば、このようにして車両の衝突時における車両用シートの変位を抑えることができる。
【0010】
[態様2]前記変形規制部材の下端には、車両下方に向けて突出する凸部が設けられている、[態様1]に記載の車両用シートの固定構造。
上記構成によれば、締結固定部材の棒状部の壁側部分と変形規制部材の下端との隙間の一部を、凸部によって埋めることができる。そのため、車両衝突時における締結固定部材の変位に際して、変位量の小さいタイミングで早期に、同締結固定部材を変形規制部材によって支持することができる。したがって、車両の衝突時における車両用シートの変位を少量に抑えることができる。
【0011】
[態様3]前記変形規制部材は、前記側壁を補強する補強部材である[態様1]または[態様2]に記載の車両用シートの固定構造。
上記構成によれば、新たな部材を追加することなく、キャビンの側壁が備える補強部材を利用することで、締結固定部材の変位を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両の衝突時における車両用シートの変位を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の車両用シートの固定構造を示す正面断面図である。
図2】同固定構造の分解正面断面図である。
図3】同固定構造にかかるシートレールおよびキャビン側ブラケットおよびプレートの側面図である。
図4】同固定構造の斜視断面図である。
図5】同固定構造にかかるシートレールおよび凸部の側断面図である。
図6】同固定構造による作用を説明するための作用図である。
図7】他の実施形態の車両用シートの固定構造を示す正面断面図である。
図8】その他の実施形態の車両用シートの固定構造を示す正面断面図である。
図9】従来の車両用シートの固定構造の一例を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態の車両用シートの固定構造について、図1図6を参照して説明する。
<車両>
図1に示すように、本実施形態の車両用シート(以下、シート11)は、車両10のキャビン12に設けられている。本実施形態では、車両10はバスである。上記シート11は、車両10の助手席である。シート11は、キャビン12内における車両右側に配置されている。シート11は、キャビン12の側壁(以下、キャビン側壁13)の近傍に配置されている。
【0015】
シート11は、キャビン側壁13側(車両右側)の部分における2箇所、およびキャビン側壁13から遠い側(車両左側)の部分における2箇所の合計4箇所において、キャビン12の内壁に固定されている。詳しくは、シート11の車両右側においては、同シート11の側部14が、車両前後方向に間隔を置いた2箇所でキャビン側壁13に固定されている。また、シート11の車両左側においては、同シート11の下部が、車両前後方向に間隔を置いた2箇所で、キャビン12の底壁、すなわち車両10のフロアに固定されている。なお図1図6には、4箇所の固定部分のうちの1箇所のみ、具体的にはシート11の車両右側における2箇所の固定部分のうちの車両前方側の固定部分のみを示している。
【0016】
本実施形態の車両10では、キャビン側壁13における上記シート11の足元にあたる部分に小窓(図示略)が設けられている。車両10では、小窓が配置されるスペースにより、シート11を固定するためのスペースが制限されている。本実施形態の車両10では、キャビン12内のスペースに制限がある状況のもとで、シート11の側部14がキャビン側壁13に固定されている。
【0017】
以下、シート11の固定構造について、詳しく説明する。
図1図4に示すように、車両10は、シート11の固定に用いる部材として、キャビン側ブラケット20と、プレート30と、シート側ブラケット40と、締結固定部材50とを有している。
【0018】
<キャビン側ブラケット>
キャビン側ブラケット20は、鋼板によって構成されている。キャビン側ブラケット20は、車両上下方向に延びている。キャビン側ブラケット20は、車両右側(図2の左側)が開口する断面ハット形状をなしている。キャビン側ブラケット20は、第1固定部21を有している。第1固定部21は、キャビン側ブラケット20の上端において車両上方に突出する形状をなしている。第1固定部21は、車両上下方向および車両前後方向に延在する三角板状をなしている。第1固定部21は、キャビン側壁13に溶接(固定)されている。これにより、キャビン側ブラケット20の上部がキャビン側壁13に固定されている。
【0019】
キャビン側壁13は、パネル部131とシートレール132とを有している。パネル部131およびシートレール132は、鋼板によって構成されている。パネル部131は、車両上下方向および車両前後方向に延在する形状をなしている。シートレール132は、車両前後方向に延びている。シートレール132は、車両右側(図2の左側)が開口する断面ハット形状をなしている。シートレール132は、車両右側における開口部分を塞ぐように、パネル部131におけるキャビン12側の部分に溶接(固定)されている。本実施形態では、シートレール132が、キャビン側壁13を補強する補強部材に相当する。
【0020】
キャビン側ブラケット20の第1固定部21は、シートレール132におけるキャビン12内方側の部分に固定されている。キャビン側ブラケット20の下部は、キャビン側壁13におけるキャビン12内方側の部分に溶接(固定)されている。このように本実施形態では、キャビン側ブラケット20の上部と下部とが、キャビン側壁13に固定されている。
【0021】
キャビン側ブラケット20は、第1締結孔22(図2)を有している。第1締結孔22は、車幅方向においてキャビン側ブラケット20を貫通する貫通孔である。第1締結孔22は、第1固定部21よりも車両下方側の位置に設けられる。第1締結孔22は、シートレール132よりも車両下方側の位置に設けられている。第1締結孔22は、キャビン側ブラケット20とシート側ブラケット40との締結固定に用いられる。
【0022】
<プレート30>
プレート30は、鋼板によって構成される。プレート30は、車両上下方向および車両前後方向に延在する形状をなす。プレート30は、キャビン12の内方側(図2の右側)からキャビン側ブラケット20の第1固定部21およびその周辺を覆う態様で設けられている。プレート30は、キャビン側ブラケット20およびシートレール132の各々に溶接(固定)されている。
【0023】
プレート30は、締結孔31(図2)を有している。締結孔31は、キャビン側ブラケット20の第1締結孔22に対応する位置に設けられている。プレート30がキャビン側ブラケット20に固定された状態では、プレート30の締結孔31とキャビン側ブラケット20の第1締結孔22とが連通される。締結孔31は、キャビン側ブラケット20とシート側ブラケット40との締結固定に用いられる。
【0024】
<シート側ブラケット>
シート側ブラケット40は、金属板によって構成されている。シート側ブラケット40は、車両上下方向に延びている。シート側ブラケット40は、車両左側(図2の右側)が開口する断面コの字状をなしている。シート側ブラケット40では、車両上方側の部分が第2固定部41を構成している。シート側ブラケット40の第2固定部41は、シート11の側部14に固定される部分である。
【0025】
シート11は、その骨格をなすシートフレーム15を有している。シートフレーム15は、パイプ部151を有している。パイプ部151は、シート11の座部111の内部に配置されている。パイプ部151は、座部111の前端部分において車幅方向に延びている。シート側ブラケット40の第2固定部41には、上記パイプ部151における車両右側の端部が一体に固定されている。本実施形態では、このようにしてシート側ブラケット40の上部がシート11の側部14に固定されている。
【0026】
シート側ブラケット40は、第2締結孔42(図2)を有している。第2締結孔42は、車幅方向においてシート側ブラケット40を貫通する貫通孔である。第2締結孔42は、第2固定部41よりも車両下方側の位置に設けられる。第2締結孔42は、シートフレーム15のパイプ部151よりも車両下方側の位置に設けられている。第2締結孔42は、シート側ブラケット40とキャビン側ブラケット20との締結固定に用いられる。
【0027】
<締結固定部材>
図1図2および図4に示すように、締結固定部材50は、棒状部51と締結部52とを有する。
【0028】
棒状部51は、車幅方向に延びる棒状をなしている。棒状部51は、外面に雄ねじが形成されている。棒状部51は、キャビン側ブラケット20の第1締結孔22、プレート30の締結孔31、およびシート側ブラケット40の第2締結孔42を貫通する態様で配設される。本実施形態では、キャビン側ブラケット20とシート側ブラケット40との間にスペーサー32が設けられている。このスペーサー32は、円筒形状をなしている。棒状部51は、このスペーサー32の中心孔を貫通する態様で配設される。
【0029】
締結部52は、一対の雌ねじ部材521,522によって構成されている。雌ねじ部材521,522は、キャビン側ブラケット20、プレート30、およびシート側ブラケット40を挟み込む態様で、棒状部51に螺合される。
【0030】
図2に示すように、車両10では、棒状部51が、キャビン側ブラケット20の第1締結孔22、プレート30の締結孔31、スペーサー32の中心孔、およびシート側ブラケット40の第2締結孔42に挿通される。その状態で、棒状部51と、同棒状部51における一端側(図2の左側)の雌ねじ部材521と、他端側(図2の右側)の雌ねじ部材522とが締められる。本実施形態では、締結固定部材50によって、キャビン側ブラケット20とシート側ブラケット40とが締結固定される。
【0031】
本実施形態では、車両10の衝突時におけるシート11の変位を抑えるために、締結固定部材50の棒状部51とシートレール132との位置関係が、以下のように定められている。
【0032】
締結固定部材50の棒状部51は車幅方向において延びている。棒状部51における上記キャビン側ブラケット20の第2締結孔42よりもキャビン側壁13の側の部分(以下、壁側部分51W)は、キャビン側壁13の一部を構成するパネル部131の近傍まで延びている。棒状部51の壁側部分51Wは、詳しくは、上記パネル部131とシートレール132との固定部分の近傍まで延びている。シートレール132は、棒状部51における壁側部分51Wの車両上方側に配置されている。シートレール132と棒状部51の端部511とは、車両上下方向において間隔を置いて配置される。
【0033】
車両10の衝突時における変形モードのうち、棒状部51における上記キャビン側壁13の側の端部511が車両上方側に移動するようになる変形モードを「特定変形モード」とする。シートレール132は、特定変形モードである場合において上記棒状部51の壁側部分51W(本実施形態では、端部511)によって同シートレール132の下部が押圧されるようになる位置に配置されている。
【0034】
本実施形態では、締結固定部材50の棒状部51とシートレール132との位置関係として、車両10の衝突時における棒状部51の変位、ひいてはシート11の変位が適度に抑えるようになる関係が定められている。上記位置関係は、発明者等による各種の実験やシミュレーションの結果をもとに、予め求められて定められている。なお本実施形態では、シートレール132が変形規制部材に相当する。
【0035】
<凸部>
図1図4および図5に示すように、シートレール132には、凸部60が設けられている。凸部60は、シートレール132の下端から車両下方に向けて突出する形状をなしている。凸部60は、車両前後方向における中央部分の突出量が大きく、且つ車両前後方向における前方部分の突出量と後方部分の突出量とが比較的小さい階段形状をなしている。凸部60は、シートレール132における上記棒状部51の車両上方側にあたる位置に設けられている。
【0036】
凸部60は、2枚の鋼板が重ね合わせられた構造をなしている。詳しくは、シートレール132における上記凸部60が設けられる部分において、断面ハット形状における内方にあたる部分には、補強部61が固定されている。補強部61は、鋼板によって構成されている。補強部61は、断面コの字形状で車両前後方向に延びている。補強部61は、凸部60に対応する形状の凸部を有している。そして、この補強部61は、シートレール132における上記凸部60が設けられる部分およびその周辺が2枚の鋼板が重ね合わせられた構造になる態様で、シートレール132の内部に溶接(固定)されている。本実施形態では、こうした補強部61を設けることにより、凸部60が補強されている。
【0037】
<作用>
本実施形態の固定構造による作用について説明する。
図6に示すように、車両10の衝突に際して、シート11の前部を車両下方に押し下げる力(図6中に矢印Aで示す力)が作用する場合がある。この場合には、図6中に矢印Bで示すように、シート11とともにシート側ブラケット40が、締結固定部材50による固定部分を支点に、キャビン12の内方側に倒れる態様で変位するようになる。そして、こうしたシート側ブラケット40の変位に際して、図6中に矢印Cで示すように、締結固定部材50は、同締結固定部材50による固定部分を支点に、棒状部51の端部511が車両上方側に移動する態様で変位するようになる。
【0038】
本実施形態によれば、棒状部51の端部511が車両上方側にある程度移動すると、同端部511がシートレール132の下面、詳しくは同シートレール132に設けられた凸部60の下面に突き当たるようになる。そして、このときには、棒状部51の端部511によって凸部60およびシートレール132の下部が押圧されるようになる。
【0039】
本実施形態によれば、このときシートレール132により、棒状部51の端部511による押圧に抗する態様で同棒状部51を支持することができる。本実施形態では、凸部60が補強部61によって補強されているため、この凸部60によって締結固定部材50の棒状部51をしっかりと支持することができる。
【0040】
このように、凸部60およびシートレール132によって締結固定部材50の棒状部51が支持されるため、同棒状部51の端部511のそれ以上の車両上方への変位を抑えることができる。これにより、締結固定部材50によって締結固定されたシート側ブラケット40の変位を抑えることができるため、同シート側ブラケット40に固定されたシート11の変位を抑えることができる。本実施形態によれば、このようにして車両10の衝突時におけるシート11の変位を抑えることができる。
【0041】
<作用効果>
本実施形態の固定構造によれば、以下に記載する作用効果が得られるようになる。
(1)車両10の衝突時における変形モードが車両上方側に棒状部51の端部511が移動する特定変形モードである場合において、端部511によってシートレール132が押圧されるようになる位置に、同シートレール132が配置されている。そのため、車両10の衝突時におけるシート11の変位を抑えることができる。
【0042】
(2)シートレール132の下端には、車両下方に向けて突出する凸部60が設けられている。本実施形態によれば、棒状部51の壁側部分51Wとシートレール132の下端との隙間(図1中にWで示す)の一部を、凸部60によって埋めることができる。これにより、車両10の衝突時における締結固定部材50の変位に際して、変位量の小さいタイミングで早期に、棒状部51の端部511によってシートレール132が押圧される状態(図6に示す状態)になる。そのため、締結固定部材50の変位量が小さいタイミングで早期に、同締結固定部材50をシートレール132によって支持することができる。したがって、凸部60が設けられない固定構造と比較して、車両10の衝突時におけるシート11の変位を少量に抑えることができる。
【0043】
(3)キャビン側壁13を補強する補強部材であるシートレール132を、締結固定部材50の変位を抑えるための変形規制部材として用いるようにした。本実施形態によれば、新たな部材を追加することなく、キャビン側壁13が備える補強部材を利用することで、締結固定部材50の変位を抑えることができる。
【0044】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・キャビン側ブラケット20の形状やシート側ブラケット40の形状は、断面L字状で車両上下方向に延びる形状にしたり、補強用の凸部あるいは凹部を有する形状にしたりするなど、任意に変更することができる。
【0046】
・プレート30を省略したり、スペーサー32を省略したりすることができる。
・凸部60の形状は、円柱形状にしたり直方体形状にしたりするなど、任意に変更することができる。
【0047】
・補強部61を省略することができる。
・凸部60を省略することができる。同構成においては、シートレール132と締結固定部材50の棒状部51との位置関係を以下のように定めればよい。シートレール132を、棒状部51の壁側部分51Wよりも車両上方側の位置に配置すればよい。詳しくは、車両10の衝突に伴う棒状部51の変位に際して同棒状部51の端部511がシートレール132の下面に突き当たるようになる位置に、同シートレール132を配置すればよい。
【0048】
図7に一例を示すように、棒状部51の壁側部分51Wに、シートレール132側に突出する形状をなす突出部材70を設けるようにしてもよい。図7に示す例では、棒状部51の端部511に、リング状をなす突出部材70が、中心孔に棒状部51が挿入される態様で設けられている。同構成によれば、突出部材70によって、棒状部51の壁側部分51Wとシートレール132の下端との隙間(図7中にWで示す)の一部を埋めることができる。そのため、突出部材70が設けられない固定構造と比較して、車両10の衝突時におけるシート11の変位を少量に抑えることができる。
【0049】
図8に一例を示すように、シートレール132と棒状部51の壁側部分51Wとの間に、中間部材75を配置するようにしてもよい。中間部材75としては、板状をなすものや四角柱状をなすものなど、任意の形状のものを採用することができる。上記構成によれば、中間部材75によって、棒状部51の壁側部分51Wとシートレール132の下端との隙間(図8中にWで示す)の一部を埋めることができる。
【0050】
・変形規制部材として、シートレール132を利用することに代えて、シートレール132以外の補強部材を利用することができる。また、変形規制部材としては、シートレール132等の補強部材を利用することの他、車両10の骨格部材を利用することなども可能である。
【0051】
・締結固定部材50は、任意に変更することができる。例えば、締結固定部材として、ボルトとナットとを有するものを用いることができる。同構成では、ボルトの雄ねじ部が棒状部に相当するとともに、ボルト頭部およびナットが締結部に相当する。
【0052】
・上記実施形態にかかる車両用シートの固定構造は、乗用車やトラックなど、バス以外の車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 車両
11 シート
111 座部
12 キャビン
13 キャビン側壁
131 パネル部
132 シートレール
14 側部
15 シートフレーム
151 パイプ部
20 キャビン側ブラケット
21 第1固定部
22 第1締結孔
30 プレート
31 締結孔
32 スペーサー
40 シート側ブラケット
41 第2固定部
42 第2締結孔
50 締結固定部材
51 棒状部
511 端部
51W 壁側部分
52 締結部
521,522 雌ねじ部材
60 凸部
61 補強部
70 突出部材
75 中間部材
810 車両
811 車両用シート
812 キャビン
813 側壁
815 シートフレーム
820 キャビン側ブラケット
821 第1固定部
840 シート側ブラケット
841 第2固定部
851 雄ねじ部材
852 雌ねじ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9