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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098749
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】芳香性除湿器
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20240717BHJP
   A61L 9/12 20060101ALI20240717BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B01D53/26 210
A61L9/12
B65D83/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002415
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】古舘 由布子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優里
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
【テーマコード(参考)】
4C180
4D052
【Fターム(参考)】
4C180AA03
4C180AA16
4C180AA19
4C180BB11
4C180BB15
4C180CA07
4C180CA09
4C180EA23Y
4C180EA24Y
4C180EB18Y
4D052AA08
4D052AA09
4D052CA03
4D052CA04
4D052CA06
4D052GA04
4D052GB12
4D052HA11
4D052HA12
4D052HA13
4D052HA14
4D052HA15
(57)【要約】
【課題】
除湿機能および芳香機能を併せ持ち、使用開始時から香り立ちが十分であり、かつ廃棄時に潮解液および担体を分別する分別作業を要しない除湿容器を提供する。
【解決手段】
芳香性除湿器100は、透湿防水性の通気側面24および潮解性薬剤を収容可能な収容部26を備える容器と、収容部26に収容された粒状の潮解性薬剤12の集合体および香料と、を有し、香料が潮解性薬剤14に担持されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透湿防水性の通気側面および潮解性薬剤を収容可能な収容部を備える容器と、
前記収容部に収容された粒状の潮解性薬剤の集合体および香料と、を有し、
前記香料が、潮解性薬剤に担持されていることを特徴とする芳香性除湿器。
【請求項2】
前記集合体を構成する潮解性薬剤と、
前記香料を担持した潮解性薬剤と、が同一の薬剤である請求項1に記載の芳香性除湿器。
【請求項3】
前記香料を担持した潮解性薬剤が複数の粒状の潮解性薬剤の接合体である請求項1または2に記載の芳香性除湿器。
【請求項4】
前記香料を担持した潮解性薬剤は、複数の粒状の潮解性薬剤の接合体であり、
当該接合体に担持された香料と水の担持割合が、香料:水=1:0.1~1:3である請求項1または2に記載の芳香性除湿器。
【請求項5】
前記容器が、
底面部、側面部および天面が開口してなる天面開口部を有する防水性の容器本体と、
前記側面部の上端から延在するフランジ部と、
前記天面開口部を覆い前記フランジ部の上面側に接着された透湿防水シートと、
前記透湿防水シートを覆う非透湿性の蓋シートと、
を備え、
前記粒状の潮解性薬剤の集合体および前記香料を担持した潮解性薬剤が収容された状態で、前記収容部の気体が脱気されている請求項1または2に記載の芳香性除湿器。
【請求項6】
前記容器が、非透湿シートと、透湿防水シートとを対面させ、シートの外縁部を接合することによって袋状に構成され内部に収容部を備える容器であり、
前記収容部に前記粒状の潮解性薬剤の集合体および前記香料を担持した潮解性薬剤が収容されている請求項1または2に記載の芳香性除湿器。
【請求項7】
前記香料を担持する潮解性薬剤は、複数の粒状の潮解性薬剤の接合体であり、
前記接合体は、前記集合体の中間部に配置され、または前記収容部の底面に接触している請求項1または2に記載の芳香性除湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に潮解性薬剤が収容された芳香性除湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローゼット、押入れ、あるいは下駄箱などの収納空間の湿気取りとして、塩化カルシウムなどの潮解性薬剤を用い、空気中の水分を吸収することで液化させ、これを容器内に貯めるタンクタイプの除湿器が広く提案されている。
【0003】
またクローゼットや押入れ、下駄箱等の収納空間は、湿気だけでなく、収納空間内にこもった臭いが問題になる場合がある。具体的には、それぞれの収納空間に収納する衣類や布団、靴から発生する汗臭や体臭のほか、収納空間内に発生するカビによるカビ臭などがある。したがって、収納空間にこもる湿気と臭いの対策として、除湿機能と芳香機能とを併せ持つ除湿器が求められている。芳香機能を併せ持つことにより、芳香による悪臭のマスキング効果を得られるほか、製品の使用実感にもつながる。
【0004】
たとえば、下記特許文献1には、湿気を透過する袋体に除湿剤と香料担体が収容された除湿パックと、該除湿パックを収容する収容部及び外気を導入して排出するファンを備えた装置本体と、該装置本体を閉鎖する蓋体とを備える除湿装置(以下、従来技術1ともいう)が開示されている。同文献には、香料を担持する担体としてケイ酸カルシウムおよびエチレン-酢酸共重合体樹脂が開示されており、香料は当該担体に担持された状態で除湿パックに収容される。
【0005】
また、下記特許文献2には、除湿薬剤と、シクロデキストリンで包接された香料とを、収容してなる除湿器(以下、従来技術2ともいう)が開示されている。従来技術2では、除湿薬剤に吸湿された水分によってシクロデキストリンが溶解して包接が解かれ、これによってシクロデキストリンに包接されていた香料が徐々に遊離を開始し空中に揮散する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-104443号公報
【特許文献2】実用新案登録第3163557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述する従来技術1、2には、それぞれ以下の問題点があった。
即ち、従来技術1は、水分などを要さず担体に担持された香料を放散可能であるため、使用開始直後から十分な香り立ちが期待される。しかしながら、使用後の従来技術1における除湿パックには吸湿により貯留した潮解液とともに担体が残る。そのため、除湿パックを廃棄する際、潮解液と担体とを分別する作業が必要となり廃棄に手間がかかるという問題があった。
【0008】
一方、従来技術2は、吸湿した水分によってシクロデキストリンが溶解する。そのため、使用後の従来技術2における除湿器には吸湿により貯留した潮解液のみが存在し、従来技術1のように担体が残る虞がない。したがって従来技術2は、廃棄時に貯留された潮解液と担体とを分別する手間を要しない。しかしながら、従来技術2は、上述するとおり、水分の吸湿によりシクロデキストリンが溶解されることによって徐々に香料が放散するため、使用開始直後において香り立ちが期待できない。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明は、除湿機能および芳香機能を併せ持ち、使用開始時から香り立ちが十分であり、かつ廃棄時に潮解液および担体を分別する分別作業を要しない除湿容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の芳香性除湿器は、透湿防水性の通気側面および潮解性薬剤を収容可能な収容部を備える容器と、上記収容部に収容された粒状の潮解性薬剤の集合体および香料と、を有し、上記香料が、潮解性薬剤に担持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を備える本発明の芳香性除湿器は、潮解性薬剤を香料の担体として用いるため、除湿機能および芳香機能を併せ持つ。本発明では、潮解性薬剤が吸湿する前から香料が放散されるため使用開始時から香り立ちが十分であり、かつ吸湿とともに担体として用いられた潮解性薬剤も潮解液となるため廃棄時に潮解液および担体を分別する分別作業を要しない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態にかかる芳香性除湿器の製造工程を説明する説明図である。
図2】本発明の第三実施形態にかかる芳香性除湿器の縦断面図である。
図3】本発明の第二実施形態にかかる芳香性除湿器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。尚、本発明の説明に関し用いる図面は、本発明および本発明に含まれる部材の寸法、寸法比率および形状を限定するものではない。また本発明の説明に関し上下方向とは、特段の断りがない場合には、本発明の芳香性除湿器を使用状態で設置面に設置した際の天地方向を指す。
【0014】
[第一実施形態]
図1を用いて本発明の第一実施形態について説明する。図1Aは、容器本体40に香料および水を含む混合液10を分注した状態を示している。図1Bは、図1Aに示す容器本体40に粒状の潮解性薬剤12を充填し、容器本体40の天面開口部46を透湿防水シート50で覆うとともに、その上からさらに蓋シート52で被覆する中間段階を示している。図1Cは、図1Bにおける中間段階において、容器本体40の内部の空気を吸引して脱気するとともに脱気状態を維持するよう蓋シート52により密封して製造された第一実施形態である芳香性除湿器100の縦断面を示している。
【0015】
まず、図1Cを用いて本発明の第一実施形態の芳香性除湿器100の概要について説明する。
芳香性除湿器100は、透湿防水性の通気側面24および潮解性薬剤12を収容可能な収容部26を備える容器20を有する。容器20に設けられた収容部26には、粒状の潮解性薬剤12の集合体および香料が収容されている。本発明において、香料は、潮解性薬剤14に担持されており、本実施形態では、具体的には、複数の粒状の潮解性薬剤14の接合体30に香料が担持されている。尚、粒状の潮解性薬剤12の集合体とは、収容部26に収容された複数の粒状の潮解性薬剤12の全体を指す。
【0016】
上記構成を備える芳香性除湿器100は、除湿機能および芳香機能を併せ持ち、クローゼットや押入れ、下駄箱等の収納空間において除湿機能だけでなく当該収納空間にこもる臭いの対策にも対応することができる。収容部26に収容された香料は、潮解性薬剤14に担持されているため、使用開始前から容器20の内部において徐々に放散されており、蓋シート52が取り外され使用が開始されると速やかに良好な香りが芳香性除湿器100の外部に放散される。そのため、使用者は開封時から芳香を感知し、芳香機能を併せ持つ芳香性除湿器100の使用実感を得ることができる。
上述のとおり、芳香性除湿器100では、香料を担持する担体として潮解性薬剤14が用いられる。そのため、当該担体である潮解性薬剤14も、芳香性除湿器100の使用により吸湿して徐々に潮解液と化す。その結果、本発明では、使用後、収容部26に潮解液とともに固形の担体が残存することがない。したがって芳香性除湿器100を廃棄する際、収容部26に収容された潮解液と担体とを分別する手間を要さず、容易に芳香性除湿器100を廃棄処理することができる。
以下に芳香性除湿器100の詳細についてさらに説明する。
【0017】
(容器)
芳香性除湿器100における容器20は、透湿防水性の通気側面24および潮解性薬剤を収容可能な収容部26を備える。
通気側面24を介して、収容された潮解性薬剤12が除湿器外部の湿気を吸湿するとともに、潮解性薬剤に担持された香料が通気側面24を介して除湿器外部に放散される。
【0018】
本実施形態における容器20は、底面部42、側面部44および天面が開口してなる天面開口部46を有する防水性の容器本体40を備える。天面開口部46は、透湿防水シート50に覆われて通気側面24を構成するとともに、さらに蓋シート52に覆われ密封されている。尚、上記天面とは、容器20を使用状態で設置面に設置した際の容器20の上面を指す。
本実施形態の容器20は、側面部44の上端から延在するフランジ部48が設けられており、透湿防水シート50は、フランジ部48の上面側に接着され固定されている。使用前に潮解性薬剤12による吸湿が開始しないよう、透湿防水シート50は非透湿性の蓋シート52により覆われている。使用者は、蓋シート52を剥がすことによって、芳香性除湿器100の使用を開始することができる。ここで非透湿性とは、気体および液体のいずれの透過も防止する性質を指す。
【0019】
本実施形態の容器20は、図1Cに示すとおり、粒状の潮解性薬剤12の集合体および香料を担持した潮解性薬剤14(接合体30)が収容された状態で、収容部26の内部の気体が脱気されて容器20の容積が減容されている。また通気側面24を蓋シート52により密封することによって、収容部26が脱気された状態が維持されている。この結果、使用開始前の芳香性除湿器100は、嵩が小さく、運搬や保管、収納に有利である。そのため、たとえば業務用の食品庫や業務用倉庫などの広い空間用に多量の潮解材を収容した大きな容器本体を備える除湿器としても好適である。
【0020】
ところで、一般的に除湿器には透湿防水シートとして微多孔膜を含むシートが用いられる。微多孔膜に異物が付着すると、シートの異物が付着した部分に触れた潮解液の表面張力が低下し、潮解液が微多孔膜を通過してしまいシートの防水性能が損なわれる虞がある。そのため、芳香性除湿器において、香料がなるべく微多孔膜である透湿防水シートに付着しないよう配慮されることが好ましい。かかる観点を配慮した本発明の態様としては、例えば後述する図2に示す芳香性除湿器110や図3に示す芳香性除湿器120のように、香料を担持した潮解性薬剤14からなる接合体30が潮解性薬剤12の集合体の中間部に配置された態様(以下、態様Aともいう)が好ましく、図1に示す本実施形態のように、接合体30が収容部26の底面に接している態様(以下、態様Bともいう)がより好ましい。尚、接合体30が集合体の中間部に配置されるとは、接合体30が、収容部の底面に接しておらず、かつ集合体の上面に露出していない状態を指す。
また上記態様Aまたは上記態様Bの状態において、収容部26の気体が脱気されていることがさらに好ましい。収容部26が脱気されて容積が減容されたことによって、収容部26の内部において接合体30が移動し難い状態となり態様Aまたは態様Bの状態が良好に維持されるからである。
【0021】
即ち、図1Cに示すとおり、本実施形態の芳香性除湿器100は、複数の粒状の潮解性薬剤14から構成された接合体30に香料が担持されており、かかる接合体30は収容部26の底面部42に接触して透湿防水シート50から離れた位置に配置されている。そのため香料が透湿防水シート50に付着し難く、上述する防水性の低下の発生が良好に回避される。しかも、上述するとおり本実施形態では、収容部26は脱気されて容積が減容されており、収容部26の内部において、接合体30が移動し難い状態である。したがって、使用前の芳香性除湿器100に対し搬送時などに振動が与えられた場合であっても、使用開始時まで接合体30が底面部42に接触した状態が維持され易い。接合体30の移動をより良好に防止するという観点からは、収容部26に収容された粒状の潮解性薬剤12が透湿防水シート50に接触する程度に収容部26が脱気され密封されていることが好ましい。
尚、図示省略するが、図1Cに示す本実施形態の芳香性除湿器100の変形例として、接合体30が、収容部26の底面部42と接触せず、かつ潮解性薬剤12の集合体の上面側に露出していない状態で、収容部26が脱気され密封されていてもよい。
【0022】
容器本体:
本実施形態に容器20における容器本体40は、底面部42、側面部44および天面開口部46を有する。底面部42は、所定の面積を有し略平板状に構成された部分であり、その形状は特に限定されず、たとえば四方形、円形、楕円形あるいは任意の形状であってもよい。
側面部44は、底面部42の外縁から上方に延在し、容器本体40の内部と外部とを区画する。側面部44の上端側は、開口しており、天面開口部46が形成されている。脱気前の側面部44は、図1Bに参照されるように、シワや折り目のない壁状である。これに対し、図1Cに示す容器本体40は、脱気され密封された状態であり、側面部44が不規則に収縮し容器本体40の容積が脱気前(図1B参照)に比べて減容されている。
ここで脱気とは、容器本体40(特には収容部26)の内部の気体の一部を除去することを意味する。脱気によって、実質的に容器本体40の容積が減容される。特に、収容部26に収容された粒状の潮解性薬剤12が透湿防水シート50の裏面に接触する程度に収容部26の容積が減容されることが好ましい。上述する脱気を可能とするため、容器本体40において、少なくとも本実施形態における側面部44は、潮解液の貯留性を維持しつつ脱気により収縮し容器本体40の減容を可能とする程度に柔軟性のある部材で構成される。具体的には、側面部44の構成部材として、たとえば、適度な厚みと強度を有する樹脂シートが挙げられる。
【0023】
側面部44の構成部材として用いられる樹脂シートは、ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などからなる非透湿性の樹脂シートが挙げられる。上記樹脂シートは、上述する樹脂部材を1種または2種以上の混合樹脂として用いて構成される。柔軟性などを考慮すると、ポリエチレン系樹脂が含まれている樹脂シートが好ましい。また樹脂シートは、単層シートであってもよいし、複数の樹脂層を有する積層シートであってもよい。たとえば、両最外面にポリエチレン系樹脂層を有し、その間に、これ以外の樹脂層を有する積層シートが柔軟性の観点から好ましく、より具体的な例としては、ポリエチレン系樹脂層/ナイロン系樹脂層/ポリエチレン系樹脂層がこの順で積層されてなる積層シートが挙げられる。
【0024】
底面部42は、側面部44と同じ部材で構成されてもよいし、異なる部材で構成されてもよい。製造容易性や廃棄処理などを考慮すると底面部42と側面部44とは同様の部材で構成されることが好ましく、底面部42および側面部44がともに樹脂部材で構成されることがより好ましく、底面部42および側面部44が同一の樹脂部材で構成されることがさらに好ましい。
【0025】
上述する底面部42および側面部44を備える容器本体40は、1枚の樹脂シートから構成されることが好ましい。これによって、底面部42と側面部44との境界が連続的に構成されるため、潮解液が漏れ出ることが良好に防止される。また製造時の部品点数を減らすことができるため、容器本体40を1枚の樹脂シートから構成することは、製造上においても有利である。
さらに、容器本体40およびフランジ部48までが、1枚の樹脂シートで構成されていることがより好ましい。製造工程における部品点数を減らすことができ製造工程上有利である上、接触などによるフランジ部48の脱落や破損が生じ難い。
【0026】
フランジ部:
芳香性除湿器100は、容器本体40の側面部44の上端から延在するフランジ部48が設けられている。フランジ部48は、側面部44の上端から、上下方向に交差する方向に延在しており、上面側が透湿防水シート50との接着面となっている。フランジ部48により、天面開口部46を覆う透湿防水シート50はしっかりと支持されている。本実施形態では、フランジ部48は、図1に示すとおり、側面部44の上端から容器外方向に向かって略水平に延在している。容器外方向に向かって設けられたフランジ部48は、後述する深絞り加工において容器本体40とともに製造しやすい。一方、図示省略する変形例としてフランジ部48を容器内方向(即ち、上面視において容器本体40より外側に突出しない方向)に向かって延在させてもよく、かかる態様は、芳香性除湿器100の形状をよりコンパクト化できる点で好ましい。
フランジ部48は、天面開口部46の少なくとも一部に設けられ、好ましくは、開口全周に設けられる。
【0027】
フランジ部48は、容器本体40とは別体にて構成され側面部44の上端に接着あるいは接合等されてもよいが、好ましくは側面部44と一体的に設けられるとよい。例えば、1枚の非透湿性の樹脂シートを用い側面部44とフランジ部48とを一体的に成形加工することができる。もちろん、底面部42および側面部44を含めた容器本体40とフランジ部48とを一体的に成形加工してもよい。
【0028】
(通気側面)
通気側面24は、容器20の側面の所定箇所において透湿防水性を示す領域を指す。本実施形態では、上面開口の容器本体40の天面開口部46を透湿防水シート50によって覆うことによって通気側面24が構成されている。
【0029】
(透湿防水シート)
容器本体40の天面開口部46を覆う透湿防水シート50は、透湿性であり、かつ防水性(つまり潮解液の通過を防止する性質)のシートである。透湿防水シート50としては、たとえば微多孔膜樹脂シートが好ましい。この微多孔膜樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、たとえば無機充填剤を含有した熱可塑性樹脂シートを成形後に延伸することにより製造可能である。この微多孔膜樹脂シートの成形に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、あるいはポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等があげられる。この微多孔膜樹脂シートからなる透湿防水性フィルムには、住化積水フィルム(株)製の商品名「セルポア」、(株)トクヤマ製の商品名「NFシート」、(株)ニトムズ製の商品名「ブレスロン」、三菱ケミカル(株)製の商品名「エクセポール」等がある。
上記微多孔膜樹脂シートの透湿性を阻害しない範囲で、当該微多孔膜樹脂シートに不織布や他の有孔フィルムを積層して多層シートとしてもよい。
【0030】
透湿防水シート50の外縁領域は、上述するフランジ部48へ接着され固定されている。フランジ部48に対する接着方法は、たとえば超音波溶着法、熱板溶着法、高周波溶着法などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
(蓋シート)
蓋シート52は、透湿防水シート50を覆う非透湿性シートである。蓋シート52は、上面視において、少なくとも天面開口部46の領域を覆う透湿防水シート50を完全に覆うことが好ましい。蓋シート52は、使用前の状態において、容器本体40を密封し、収容部26に収容された潮解性薬剤による吸湿を防止し、使用時には剥離される。さらに本実施形態では、蓋シート52による密封によって、容器20が脱気され減容された状態が維持されている。
【0032】
蓋シート52は、非透湿性(ガスバリヤ性)であればよく、透明または不透明であってよい。非透湿性のシートとしては、たとえば、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデンコートPET(K-PET)、ポリ塩化ビニリデンコートOPP(K-OPP)、シリカ蒸着PET、アルミナ蒸着PET等の樹脂系シートのほか、アルミシート等があげられ、これらの非透湿シートを単層で用いてもよいし、複数層を複合(ラミネート)して用いてもよい。
たとえば、蓋シート52の透湿防水シート50と接する側に易剥離性接着層を設けて透湿防水シート50に対し蓋シート52を積層させ、使用開始時に蓋シート52のみを容易に剥離することができる。
【0033】
(潮解性薬剤)
次に潮解性薬剤12について説明する。
潮解性薬剤12は、吸湿することによって潮解液化する剤を広く含み、具体的な例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、酢酸カリウム、等の潮解性物質が挙げられ、特に塩化カルシウムや塩化マグネシウムが吸湿能力及び価格等の点から好ましい。潮解性薬剤12は、公知の潮解性物質を1種で、または2種以上含有して構成される。たとえば潮解性薬剤12は、上述する潮解性物質を1種または2種以上用い、滴下造粒方式や空冷造粒方式等により粒状に製剤される。
【0034】
粒状の潮解性薬剤12の平均粒径は特に限定されないが、0.1mm以上30mm以下の範囲であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
容器本体40に収容される潮解性薬剤12の量は特に限定されず、脱気前の容器本体40(特には収容部26)の容積、使用が予定される空間の広さなどを勘案して適宜決定することができる。
【0036】
(香料を担持した潮解性薬剤)
次に香料を担持した潮解性薬剤14について説明する。潮解性薬剤14は、吸湿することによって潮解液化する剤から構成される。具体的には、上述する潮解性薬剤12を構成可能な剤と同様の剤から構成される。潮解性薬剤12および潮解性薬剤14は、異なる潮解性物質から構成されてもよいが、芳香性除湿器100の部品点数を減らし、また後述する好ましい製造方法に対応できるという観点から、潮解性薬剤12と、香料を担持した潮解性薬剤14と、は同一の潮解性物質から構成されることが好ましい。ここで潮解性薬剤14が潮解性薬剤12と同一の潮解性物質から構成されるとは、潮解性薬剤12の集合体が一種の潮解性物質から構成される場合には、潮解性薬剤14も当該一種の潮解性物質から構成される。また潮解性薬剤12の集合体が異なる潮解性物質から構成された二種以上の潮解性薬剤12を含む場合には、潮解性薬剤14は上記二種以上の潮解性薬剤12の少なくともいずれか一種と同一の潮解性物質から構成される。
尚、本発明において潮解性薬剤が香料を担持するとは、潮解性薬剤に香料が含浸された態様、潮解性薬剤の表面に香料が付着した態様、またはこれらの組み合わせの態様のいずれでもよい。
【0037】
香料を担持した潮解性薬剤14の第一の例として、粒状の潮解性薬剤を用い、個々の粒子に香料を担持させる態様が挙げられる。かかる態様における香料の担持方法は特に限定されないが、たとえば、香料または香料および水を含む混合液を潮解性薬剤の粒状物にスプレーなどで噴霧して個々の粒子に香料を担持させ乾燥することで、香料を担持した粒状の潮解性薬剤14が得られる。かかる態様では、芳香性除湿器100の収容部26に香料を担持していない粒状の潮解性薬剤12と香料を担持した粒状の潮解性薬剤14とを混合した状態で収容してもよいし、あるいは、香料を担持していない粒状の潮解性薬剤12を用いず収容部26に香料を担持した潮解性薬剤14のみを収容してもよい。尚、上記混合液には、本発明の目的および効果を逸脱しない範囲において香料及び水以外の任意の成分が含まれていてもよい。
【0038】
また香料を担持した潮解性薬剤14の第二の例として、香料を担持した潮解性薬剤14が複数の粒状の潮解性薬剤の接合体30である態様が挙げられる。ここでいう接合体30とは、一の粒状の潮解性薬剤の表面の一部とこれに隣り合う他の粒状の潮解性薬剤の表面の一部とが接合することによって塊になった状態を指す。かかる接合体30は、隣り合う粒状の潮解性薬剤間に空隙が存在し、たとえば、雷おこしのような外観となり得る。したがって接合体30の中心側に存在する潮解性薬剤に担持された香料もスムーズに放散される。塊である接合体30は、1つの芳香性除湿器100において1個または2個以上収容される。
【0039】
第二の例における香料の担持方法は、特に限定されないが、たとえば以下のとおり接合体30を得ることができる。即ち、接合体30は、たとえば、密な状態にある複数の粒状の潮解性薬剤と香料および水を含む混合液とを接触させ上記混合液を潮解性薬剤に担持させることで製造される。より具体的には、混合液に含まれる水分によって当該潮解性薬剤の表面が溶解するとともに隣り合う粒状の潮解性薬剤同士が接触し、その状態で水分が蒸発することによって再結晶化して粒状の潮解性薬剤同士が接合した塊である接合体30が得られる。
【0040】
上述のとおり、香料を担持した潮解性薬剤14が、複数の粒状の潮解性薬剤の接合体30として提供される場合、接合体30に担持された香料と水の担持割合は、少なくとも担持した直後において香料:水=1:0.1~1:3であることが好ましい。香料に対し、水の量が少なすぎると、粒状の潮解性薬剤同士を互いに接合させ難い場合があり、また水の量が多すぎると、接合体30が大きくなり過ぎる場合がある。
【0041】
第二の例では、上述する第一の例に比べ、芳香性除湿器100における香料を担持した潮解性薬剤14の総表面積が小さく抑えられ、その結果、芳香性除湿器100における単位時間あたりの香料の放散量が抑制される。これにより第二の例では、香料の放散をより長く持続させることが可能である。したがって第二の例の芳香性除湿器100の使用者は、使用開始時から良好な香りを実感できるとともに、長期間、香料の効果を実感することができる。
【0042】
より香料の放散を長期に持続可能とするという観点からは、接合体30の長径が0.2mm以上であることが好ましく、5mm以上がさらに好ましい。潮解性薬剤の吸湿が進み潮解液が貯留されたことを確認するために、容器20の少なくとも一部(たとえば容器本体40の側面部44の全部または一部)を透明な部材で構成し内部を可視化する場合がある。このような態様において、粒状の潮解性薬剤12の集合体中に1個または複数個の接合体30を混在させた場合、使用者に外観上の違和感を与え難いという観点からは接合体30の長径は200mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがさらに好ましい。
別の観点では、粒状の潮解性薬剤12の平均粒径が0.1mm以上30mm以下である場合、接合体30の長径は上記平均粒径の2倍以上であることが好ましく、上限については一般的な除湿器に無理なく収容可能な寸法であることがより好ましい。
塊である接合体30の長径は、接合体30の最長部分を実測することにより求められる。
【0043】
(香料)
本発明に用いられる香料は、特に限定されず、天然香料、合成香料またはこれらの組み合わせであってもよい。1つの芳香性除湿器100に使用される香料の量は特に限定されず、芳香性除湿器100の用途や対象空間の大きさ等によって調整することができる。たとえば、収容部26に収容される全潮解性薬剤100質量部に対し、香料は0.1質量部以上10質量部以下の範囲で使用されうる。尚、ここでいう全潮解性薬剤とは、潮解性薬剤12および潮解性薬剤14を併せたものをさす。
【0044】
(芳香性除湿器100の製造方法)
以下に、本実施形態にかかる芳香性除湿器100の製造方法の好ましい一例について説明する。
まず所定形状の容器本体40を準備する。容器本体40は、図1Aに示すとおり底面部42、側面部44、天面開口部46を備える上面開口の容器であり、内部が収容部26となる。側面部44の上端外縁には天面開口部46を内方向として外方向に延在するフランジ部48が設けられている。以下では、底面部42、側面部およびフランジ部48が一枚の樹脂シートから構成される態様を例に説明する。
【0045】
容器本体40は例えば以下のとおり製造することができる。
まず上部開口であって底面部42および側面部44に対応する所望形状の凹空間を備える成形型を準備し、上部開口を覆うように容器本体40を構成する1枚の非透湿性の樹脂シートを配置し水平方向(上部開口の面方向)に張った状態で固定する。そして成形型に設置された吸引部から吸引を行うことによって上記樹脂シートが成形型の凹空間を区画する内側面に沿うよう伸長させて深絞り加工を行う。これによって所望形状の容器本体40を得ることができる。
あるいは、上記深絞り加工と並行して、プラグアシストを行うことで容器本体40を製造することもできる。ここでプラグアシストとは、成形型の凹空間に対応する形状のプラグを準備し、上述のとおり成形型に対し配置、固定された樹脂シートを吸引するとともに、凹空間に押し込むように当該プラグを成形型に嵌め込むように下方に移動させることによって、樹脂シートを成形型の凹空間を区画する内側面に沿って伸長させることで所望形状の容器本体40を製造する方法である。上述する深絞り加工によれば、成形型の凹空間に沿わせて樹脂シート(特には樹脂シートの、側面部44に相当する領域)が伸長するため、適度に樹脂シートが薄膜化する。そのため、後述する脱気工程において側面部44を収縮させやすくすることができる。
【0046】
収容工程:
次に容器本体40の収容部26に粒状の潮解性薬剤12と、香料を担持した潮解性薬剤14を収容する収容工程を実施する。収容工程は、収容部26に潮解性薬剤12および潮解性薬剤14を収容可能ないずれの態様で実施してもよいが、たとえば以下の(1)~(3)のいずれかの態様で実施することができる。尚、図1Aは主として下記(3)の態様における分注工程を示す。
【0047】
(1)予め製造された接合体30を用いる方法
香料と水を含む混合液10と複数の粒状の潮解性薬剤とを接触させ、香料を担持した複数の粒状の潮解性薬剤14の接合体30を予め製造する。そして、接合体30および粒状の潮解性薬剤12を充填する充填工程を実施することで収容工程を実施することができる。尚、接合体30および粒状の潮解性薬剤12を充填する順番は特に限定されないが、接合体30と透湿防水シート50との接触防止に配慮するという観点からは、まず接合体30を充填し、その後に潮解性薬剤12を充填するか、またはまず潮解性薬剤12の一部を充填し、次いで接合体30を充填し、さらに残りの潮解性薬剤12を充填するとよい。
【0048】
(2)粒状の潮解性薬剤12を充填する充填工程を実施した後、香料および水を含む混合液10を分注する分注工程を実施する方法
まず、容器本体40の収容部26に対し粒状の潮解性薬剤12を充填する充填工程を実施する。続いて天面開口部46から香料および水を含む混合液10を所定量分注する分注工程を実施する。分注された混合液10と周囲の潮解性薬剤12とが接触することによって集合体30をなす。分注方法は特に限定されず、機械式の分注装置を用いてもよいし、人為的にピペットなどの分注具を用いて分注してもよい。接合体30と透湿防水シート50との接触防止に配慮するという観点からは、分注装置のノズル、ピペット等を容器本体40の中間部より下方(特には底面部42近傍)まで差し込んで混合液10を分注し、周囲の粒状の潮解性薬剤12と接触させるとよい。
【0049】
(3)香料および水を含む混合液10を、容器底面に分注する分注工程を実施した後、粒状の潮解性薬剤12を充填する充填工程を実施する方法
図1Aに示すとおり、容器本体40の収容部26に、天面開口部46から香料および水を含む混合液10を所定量分注する分注工程を実施する。分注方法は特に限定されず、機械式の分注装置を用いてもよいし、人為的にピペットなどの分注具を用いて分注してもよい。上述するとおり分注することによって容器本体40の底面部42に混合液10が存在する状態とする。
次に混合液が分注された収容部26に対し粒状の潮解性薬剤12を充填する充填工程を実施し、充填された潮解性薬剤12によって混合液10が覆われる状態とする。尚、充填工程と、これに続く第一被覆工程および第二被覆工程は図1Bが参照される。充填工程を実施することによって、混合液10と周囲の粒状の潮解性薬剤12とが接触する。(3)の態様では、まず分注工程を実施し、続いて充填工程を実施するため、接合体30が収容部26の底面部42に接して製造される。
【0050】
尚、上述する収容工程において、香料および水を含む混合液10を使用する場合、混合液10において、香料と水との配合割合は香料:水=1:0.1~1:3となるよう調整されることが好ましい。
【0051】
第一被覆工程、第二被覆工程:
収容工程の後、天面開口部46を透湿防水シート50で被覆して封止する第一被覆工程を実施する。これによって通気側面24が構成される。続いて、天面開口部46を被覆して封止するよう取り付けられた透湿防水シート50を非透湿性の蓋シート52で被覆して収容部26を密封する第二被覆工程を実施する。第一被覆工程および第二被覆工程は、独立した工程として実施されてもよいし、一部または全部が重複するよう実施されてもよい。第一被覆工程および第二被覆工程が重複する具体的な態様としては、たとえば、予め透湿防水シート50および非透湿性の蓋シート52が積層された積層シートを準備し、透湿防水シート50が容器本体40側に向く向きで当該積層シートによって天面開口部46を被覆することにより、第一被覆工程および第二被覆工程を同時に実施することができる。
【0052】
脱気工程:
上述する収容工程後、第二被覆工程が完了する前に、収容部26の気体を脱気する脱気工程が行われ、図1Cに示す芳香性除湿器100が製造される。脱気は、収容部26に収容された粒状の潮解性薬剤12の集合体の上面が透湿防水シート50に当接するまで行われ、その後速やかに第二被覆工程を完了することよって脱気した状態が維持される。
ここで脱気の方法は、容器本体40の側面部44を物理的に収縮させて容積を減容させることができる方法であればいずれの方法でもよい。たとえば、吸引機により容器本体40の内部の気体を吸引してもよいし、あるいは、上下方向から圧力をかけて容器本体40が適度な高さになるまで物理的に押しつぶしても良い。
【0053】
尚、上記(2)または(3)における分注工程において分注された混合液10は、周囲の粒状の潮解性薬剤12に接触し、時間が経過するとともに潮解性薬剤12の表面を溶解させて隣り合う潮解性薬剤12同士を接合させる。これによって、図1Cに示される香料を担持した潮解性薬剤14からなる接合体30が収容部26に製造される。塊状の接合体30が製造されるタイミングは、分注工程後、混合液10と周囲の潮解性薬剤12とが接触してから、脱気工程終了前または脱気工程終了後のいずれであってもよい。
【0054】
上述する製造方法によれば、集合体30を潮解性薬剤12の集合体の中間部に配置する態様または集合体30が容器本体40の底面部42に接触する態様を容易に実現できる。また、脱気工程によって収容部26内の潮解性薬剤12および接合体30の移動が制限されるため、接合体30が集合体の中間部に配置された状態または底面部42に接する状態を良好に維持することができる。そのため香料が透湿防水シート50に付着し難く、上述する防水性の低下の発生が良好に回避される。
また、本実施形態における芳香性除湿器は、廃棄時に潮解液および担体の分別作業を要しないことに加え、容器自体の廃棄が容易であり、ゴミの削減にも寄与できる。つまり、本実施形態は、脱気により側面部44が収縮可能な程度に柔軟性のある肉薄の樹脂部材などで容器本体40が構成されているため、廃棄時は容器本体40をハサミなどで切断し、あるいは押し潰すなどして減容させて廃棄することが容易である。
【0055】
ただし、上述する製造方法の例は、芳香性除湿器100の製造の一例であり、本発明の芳香性除湿器の製造方法を何ら限定するものではない。たとえば、上述する製造方法の変形例として、容器本体40を比較的硬度の高い樹脂部材等から構成し、図1Bに示す状態から脱気工程を割愛して第二被覆工程を完了することによって、タンクタイプの芳香性除湿器100を製造することもできる。
【0056】
また本実施形態では、内部全体が収容部26である容器本体40を備える容器20を用いる例を説明したが、本発明における容器20は、通気側面24および収容部26を備えるものであればよく、たとえば箱状や袋状などの種々の態様の容器20を本発明は包含する。
【0057】
[第二実施形態]
以下に、本発明の第二実施形態の芳香性除湿器120について、図3を用いて説明する。
図3に示す芳香性除湿器120は、透湿防水性の通気側面24および潮解性薬剤を収容可能な収容部26を備える容器20と、収容部26に収容された粒状の潮解性薬剤12の集合体および香料を有し、当該香料が、複数の粒状の潮解性薬剤14から構成された接合体30に担持されている点で、第一実施形態と共通する。
以下では、第二実施形態の芳香性除湿器120に特徴的な構成について主として説明し、芳香性除湿器100と同様の構成については適宜第一実施形態の説明を参照するものとする。
【0058】
芳香性除湿器120における容器20は、2枚のシートを貼り合わせて袋状に構成されており、これによって内部に収容部26が設けられている。具体的には、本実施形態における容器20は、非透湿シート70と、通気側面24を構成する透湿防水シート50とを対面させ、シートの外縁部を接合することによって袋状となるよう構成されている。透湿防水シート50には、第一実施形態と同様に蓋シート52が積層されていてもよい。尚、シートの接合の方法は特に限定されず、熱融着、ヒートシール融着、接着剤に拠る接着などの種々の手段で実施される。
【0059】
芳香性除湿器120では、たとえば、袋状の容器20を完全に封止する前に、非透湿シート70と透湿防水シート50とが未接合の領域を収容口として、収容部26に粒状の潮解性薬剤12および香料を担持した接合体30である潮解性薬剤14を供給することで収容工程を実施することができる。このように供給される場合には、第一実施形態において説明した収容工程の(1)の態様と同様に予め製造された接合体30と粒状の潮解性薬剤12とを、上記収容口から収容部26に供給するとよい。あるいは、第一実施形態において説明した収容工程の(2)の態様を実施してもよい。上記供給が終了した後、最終的に容器20が完全に封止されることによって芳香性除湿器120が完成される。
本実施形態における芳香性除湿器においても、第一実施形態と同様に、廃棄時に潮解液および担体を分別する分別作業を要しないことに加え、容器自体の廃棄も容易であり、ゴミも削減できる。
【0060】
本実施形態では、透湿防水シート50および非透湿シート70の互いの外縁全周を貼り合わせて袋状に構成された例を用いて説明した。しかしかかる説明は本実施形態を限定するものではなく、本実施形態は、たとえば、透湿防水シート50と非透湿シート70とが対向して配置された2層の間隙に、水平方向に拡張可能に折りたたまれた非透湿性の底部シートを配置し、その他の外縁部をシールした底ガゼット方式のスタンディングパウチ容器の内部に潮解性薬剤12の集合体と、接合体30が収容された態様を包含する。
【0061】
[第三実施形態]
以下に、本発明の第三実施形態の芳香性除湿器110について、図2を用いて説明する。
図2に示す芳香性除湿器110は、透湿防水性の通気側面24および潮解性薬剤を収容可能な収容部26を備える容器20と、収容部26に収容された粒状の潮解性薬剤12の集合体および香料を有し、当該香料が、複数の粒状の潮解性薬剤14から構成された接合体30に担持されている点で、第一実施形態と共通する。
以下では、第三実施形態の芳香性除湿器110に特徴的な構成について主として説明し、芳香性除湿器100と同様の構成については適宜第一実施形態の説明を参照するものとする。
【0062】
芳香性除湿器110における容器20は、底面部42、側面部44および天面開口部46を備える容器本体40と天面開口部46を被覆する透湿防水シート50(通気側面24)と蓋シート52とを有して構成されている。
第三実施態様では、容器本体40の内部において、上下方向中間部において略水平方向に延在する仕切り部材60が設けられている。仕切り部材60より上方の空間が収容部26となっており、粒状の潮解性薬剤12および香料を担持した潮解性薬剤14(接合体30)が収容されている。仕切り部材60より下方は、潮解液を貯留する貯水部62として機能する。仕切り部材60は滴下孔を有する透水性の中棚であり、収容部26に収容された潮解性薬剤が吸湿することによって生じた潮解液は、仕切り部材60を通過して貯水部62に貯留される。
【0063】
芳香性除湿器110は、上述のとおり仕切り部材60が透水性であるため、第一実施形態の製造方法における収容工程の(2)または(3)の態様において説明した分注工程を実施すると、混合液10の一部または全部が仕切り部材60を通過してしまう虞がある。したがって当該分注工程は実施できない。そこで第三実施形態では、第一実施形態の製造方法における収容工程の(1)の態様のとおり、予め製造された接合体30と粒状の潮解性薬剤12とを、芳香性除湿器110の収容部26に収容するとよい。
【0064】
尚、芳香性除湿器110の容器本体40は、フランジ部48を有しておらず、容器本体40の上端またはその近傍に直接に透湿防水シート50が固定されているが、変形例として、第一実施形態と同様に、芳香性除湿器110の容器本体40にフランジ部48を設け、フランジ部48の上面側に透湿防水シート50を積層させ固定してもよい。
【0065】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)透湿防水性の通気側面および潮解性薬剤を収容可能な収容部を備える容器と、
前記収容部に収容された粒状の潮解性薬剤の集合体および香料と、を有し、
前記香料が、潮解性薬剤に担持されていることを特徴とする芳香性除湿器。
(2)前記集合体を構成する潮解性薬剤と、
前記香料を担持した潮解性薬剤と、が同一の薬剤である請求項1に記載の芳香性除湿器。
(3)前記香料を担持した潮解性薬剤が複数の粒状の潮解性薬剤の接合体である上記(1)または(2)に記載の芳香性除湿器。
(4)前記香料を担持した潮解性薬剤は、複数の粒状の潮解性薬剤の接合体であり、
当該接合体に担持された香料と水の担持割合が、香料:水=1:0.1~1:3である上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の芳香性除湿器。
(5)前記容器が、
底面部、側面部および天面が開口してなる天面開口部を有する防水性の容器本体と、
前記側面部の上端から延在するフランジ部と、
前記天面開口部を覆い前記フランジ部の上面側に接着された透湿防水シートと、
前記透湿防水シートを覆う非透湿性の蓋シートと、
を備え、
前記粒状の潮解性薬剤の集合体および前記香料を担持した潮解性薬剤が収容された状態で、前記収容部の気体が脱気されている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の芳香性除湿器。
(6)前記容器が、非透湿シートと、透湿防水シートとを対面させ、シートの外縁部を接合することによって袋状に構成され内部に収容部を備える容器であり、
前記収容部に前記粒状の潮解性薬剤の集合体および前記香料を担持した潮解性薬剤が収容されている上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の芳香性除湿器。
(7)前記香料を担持する潮解性薬剤は、複数の粒状の潮解性薬剤の接合体であり、
前記接合体は、前記集合体の中間部に配置され、または前記収容部の底面に接触している上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の芳香性除湿器。
(8)天面開口部と潮解性薬剤を収容可能な収容部を有する容器の、当該収容部に粒状の潮解性薬剤と香料を担持した複数の粒状の潮解性薬剤の接合体を収容する収容工程と、
前記天面開口部を透湿防水シートで被覆する第一被覆工程と、
前記天面開口部を被覆する前記透湿防水シートを非透湿性の蓋シートで被覆する第二被覆工程と、を有する芳香性除湿器の製造方法。
(9)前記収容工程が、
天面開口部と潮解性薬剤を収容可能な収容部を有する容器の、当該収容部に香料および水を含む混合液を分注する分注工程と、
前記混合液が分注された前記収容部に対し粒状の潮解性薬剤を充填する充填工程と、を備え、
前記混合液における香料と水との割合が、香料:水=1:0.1~1:3の範囲である上記(9)に記載の芳香性除湿器の製造方法。
(10)前記収容工程を実施後、前記第一被覆工程および前記第二被覆工程とともに前記収容部の気体を脱気する脱気工程を行う上記(8)または(9)に記載の芳香性除湿器の製造方法。
【符号の説明】
【0066】
10・・・混合液
12・・・潮解性薬剤
14・・・香料を担持した潮解性薬剤
20・・・容器
24・・・通気側面
26・・・収容部
30・・・接合体
40・・・容器本体
42・・・底面部
44・・・側面部
46・・・天面開口部
48・・・フランジ部
50・・・透湿防水シート
52・・・蓋シート
60・・・仕切り部材
62・・・貯水部
70・・・非透湿シート
100、110、120・・・芳香性除湿器
図1
図2
図3