(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098752
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】バンプラバー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
F16F 9/58 20060101AFI20240717BHJP
B60G 15/06 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F16F9/58 B
B60G15/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002418
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】599148226
【氏名又は名称】株式会社エンドレスアドバンス
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】花里 功
(72)【発明者】
【氏名】渡海 正雄
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA69
3D301AA74
3D301CA09
3D301DA84
3D301DA86
3J069AA50
3J069CC06
(57)【要約】
【課題】所望するばね定数のプログレッシブ特性と圧縮ストローク量とを容易に得ることができるバンプラバーを提供する。
【解決手段】車両のサスペンションに用いられるバンプラバーであって、ばね定数の調整のための複数の調整孔を有し、前記複数の調整孔は、前記バンプラバーに対する荷重印加方向と略平行に延在する。前記バンプラバーが略回転体又は略回転対称体であり、前記複数の調整孔は、前記略回転体又は略回転対称体の中心軸と略平行に延在する。複数の調整孔が、略円柱体の中心軸の周りに均等に分布して配置されている。前記バンプラバーの荷重印加方向における長さが、荷重印加方向に垂直な断面の平均外径の50~70%である。天然ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムからなる群のうちのいずれかを材料とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサスペンションに用いられるバンプラバーであって、
ばね定数の調整のための複数の調整孔を有し、
前記複数の調整孔は、前記バンプラバーに対する荷重印加方向と略平行に延在することを特徴とするバンプラバー。
【請求項2】
前記バンプラバーが略回転体又は略回転対称体であり、前記複数の調整孔は、前記略回転体又は略回転対称体の中心軸と略平行に延在することを特徴とする請求項1に記載のバンプラバー。
【請求項3】
前記複数の調整孔が、前記略回転体又は略回転対称体の中心軸の周りに均等に分布して配置されていることを特徴とする請求項2に記載のバンプラバー。
【請求項4】
前記バンプラバーの荷重印加方向における長さが、荷重印加方向に垂直な断面の平均外径の50~70%であることを特徴とする請求項2に記載のバンプラバー。
【請求項5】
前記複数の調整孔の数が3個以上であることを特徴とする請求項1に記載のバンプラバー。
【請求項6】
前記調整孔が、その内部において、直径が拡張された1又は複数の拡径部を有することを特徴とする請求項1に記載のバンプラバー。
【請求項7】
前記拡径部が球面で形成されることを特徴とする請求項6に記載のバンプラバー。
【請求項8】
天然ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムからなる群のうちのいずれかを材料とすることを特徴とする請求項1に記載のバンプラバー。
【請求項9】
前記バンプラバーが、ショックアブソーバのピストンロッドを挿通させるための中心孔を有することを特徴とする請求項1に記載のバンプラバー。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のバンプラバーを軸方向に複数個積み重ねて使用することを特徴とするバンプラバーの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションに用いるバンプラバー及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図13(a)は、従来の車両のサスペンションの一例を概略的に示す図である。サスペンション100は、一例として、オイルダンパーであるショックアブソーバとコイルスプリング(断面で示す)が一体化された形態である。ショックアブソーバとコイルスプリングが分離した形態も公知である。ショックアブソーバは、下方から車輪側固定部材20、シリンダ21、ピストンロッド22、車体側固定部材26、及びロッド固定具27を有する。コイルスプリング23は、ロアシート24とアッパーシート25の間に保持されている。図示の例では、ロアシート24はシリンダ21の側面周囲に設けられている。シリンダ21から突出するピストンロッド22の長さは、車体側及び車輪側から負荷される荷重により変化する。
【0003】
バンプラバー110は、ピストンロッド22を挿通させてアッパーシート25の下側に装着される。
図13(b)は(a)のバンプラバー110を拡大した部分断面図である。従来のバンプラバー110は、ウレタンゴム又は発泡ウレタン等からなる柱状本体111と、ピストンロッドを挿通させる中心孔112とを有する。図示のように下方から上方に段階的に外径を増した形状、外周面上に複数の環状溝113を設けた形状は一般的である。これらの形状は、後述するばね定数のプログレッシブ特性を得るためのものである。必要に応じて、バンプラバーを適切な軸方向長さに切断して用いることも一般的である。
【0004】
バンプラバー110は、例えば荷重によりピストンロッド22が大きく収縮したときにシリンダ21の上面と接触(バンプタッチ)し、さらにバンプラバー110が圧縮されることで荷重を緩和しピストンロッド22の底付きや車体とサスペンションの接触等を防止(バンプストップ)する。
図13(a)に、圧縮荷重の印加方向を白矢印で模式的に示している。このようなバンプラバーは、例えば特許文献1、2等多数の先行技術がある。
【0005】
一般車両におけるバンプラバーの主な役割は、上述したように過度なストローク発生時の車両(及び部品)ダメージの軽減である。基本的に通常の走行中はバンプラバーで荷重を受けることはないが、近年では車両重量の増加に伴い走行中にコイルスプリングの補助として用いられることもある。
【0006】
モータスポーツ用車両においては、車体姿勢の制御と同時に過渡的な荷重移動量(タイヤと路面の接触面圧)を制御する目的でバンプラバーが積極的に使用される。車体を路面に押し付けるダウンフォースを一定に保つために車高を一定に保つ必要があり、バンプラバーは、速度の増加に伴うダウンフォースの増加に対して車高の低下を抑制する働きもする。モータスポーツ用車両におけるバンプラバーは、一般車両の場合と同様にバンプストップの機能も有するが、コイルスプリングの補助の機能を発揮する時間が長いといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-74919号公報
【特許文献2】特開平11-294517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バンプラバーに用いられる材料は、コスト・生産性・反発力等の観点からウレタン系材料が一般的である。例えば発泡ウレタンの特徴は、バネ定数が小さい(柔らかくストロークが大きく反発力が小さい)こと、及び浸食性が高い(耐油性が低く寿命が短い)ことである。ウレタン系ゴムも同様である。ウレタン系以外のゴム系材料は、ウレタン系材料に比べてばね定数が大きい(硬くストロークが小さく反発力が大きい)ため、現状ではあまり用いられていない。
【0009】
また、バンプラバーのばね定数にはプログレッシブ特性が要求される。プログレッシブ特性とは、圧縮ストローク量に対してばね定数が二次関数的に変化する特性である。このプログレッシブ特性により、作動の初期では小さいばね定数で機能し、圧縮ストローク量の増加に伴い大きいばね定数に移行することで大きな荷重に対応可能となる。ウレタン系素材はばね定数が小さいため、このようなプログレッシブ特性を実現するために
図13(b)に示したような形状面での工夫を行っている。一方、ウレタン系以外のゴム材料は、ばね定数が大きいため圧縮ストローク量の確保が難しい。
【0010】
以上の現状に鑑み、本発明の目的は、所望するばね定数と圧縮ストローク量とを容易に得られるバンプラバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を提供する。
本発明の態様は、車両のサスペンションに用いられるバンプラバーであって、ばね定数の調整のための複数の調整孔を有し、前記複数の調整孔は、前記バンプラバーに対する荷重印加方向と略平行に延在することを特徴とする。
上記態様において、前記バンプラバーが略回転体又は略回転対称体であり、前記複数の調整孔は、前記略回転体又は略回転対称体の中心軸と略平行に延在することが好適である。
上記態様において、前記複数の調整孔が、前記略回転体又は略回転対称体の中心軸の周りに均等に分布して配置されていることが好適である。
上記態様において、前記バンプラバーの荷重印加方向における長さが、荷重印加方向に垂直な断面の平均外径の50~70%であることが好適である。
上記態様において、前記複数の調整孔の数が3個以上であることが好適である。
上記態様において、前記調整孔が、その内部において、直径が拡張された1又は複数の拡径部を有することが好適である。
上記態様において、 前記拡径部が球面で形成されることが好適である。
上記態様において、天然ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴムからなる群のうちのいずれかを材料とすることが好適である。
上記態様において、前記バンプラバーが、ショックアブソーバのピストンロッドを挿通させるための中心孔を有することが好適である。
本発明の別の態様は、上記いずれかのバンプラバーを軸方向に複数個積み重ねて使用するバンプラバーの使用方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所望するばね定数のプログレッシブ特性と圧縮ストローク量とを容易に得られるバンプラバーを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は、車両のサスペンションに本発明のバンプラバーを適用した一例を概略的に示す図である。(b)は(a)のバンプラバーの拡大展開図である。
【
図2】
図2(a)は
図1に示した本発明のバンプラバーの概略斜視図、(b)は概略平面図、(c)は(b)の概略的なI-I断面図である。
【
図3】
図3(a)(b)(c)は、バンプラバーの変形形態の例を示す概略平面図である。
【
図4】
図4(a)(b)は、バンプラバーの変形形態の別の例を示す概略断面図である。
【
図5】
図5(a)(b)(c)は、バンプラバーの変形形態の別の例を示す概略断面図である。
【
図6】
図6(a)(b)(c)は、バンプラバーの変形形態の別の例を示す概略断面図である。
【
図7】
図7(a)(b)は、バンプラバーの変形形態の別の例を示す概略斜視図及び概略断面図であり、(c)(d)はさらに別の例を示す概略断面図である。
【
図8】
図8(a)(b)は、バンプラバーの変形形態の別の例を示す概略斜視図である。
【
図9】
図9(a)は、ピストンロッドに装着しないバンプラバーの例を示す概略斜視図であり、(b)その概略断面図である。(c)は、ピストンロッドに装着しないバンプラバーの別の例を示す概略斜視図であり、(d)その概略断面図である。
【
図11】
図11は、本発明のバンプラバーの圧縮試験結果を示すグラフである。
【
図12】
図12は、本発明のバンプラバーの別の圧縮試験結果を示すグラフである。
【
図13】
図13(a)は、車両のサスペンションの従来技術の一例を概略的に示す図である。(b)は(a)のバンプラバーを拡大した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例を示した図面を参照して本発明の実施形態を説明する。各図において共通する構成要素は、同じ又は類似の符号を用いて示す。
【0015】
図1(a)は、上述した
図13(a)と同様の、車両のサスペンション10に適用した本発明のバンプラバーの一例を概略的に示す図である(コイルスプリング23とアッパーシート25は断面で示す)。バンプラバー1は、ショックアブソーバのピストンロッド22を挿通させてコイルスプリング23のアッパーシート25の下側に装着されている。バンプラバー1の装着方法は、従来のバンプラバーと同様である。図示の例では、バンプラバー1は、アッパーシート25の下面に当接している。
【0016】
本発明のバンプラバー1は、単体を1個のみ、又は、好適には複数個を軸方向に積み重ねて使用することができる。
図1の例では、3個のバンプラバー1を積み重ねて使用している。
図1(b)は(a)の3個のバンプラバー1を拡大し、展開した側面図である。バンプラバー1の本体は、略円柱体である。
図1のバンプラバー1は、中心軸Cを中心とする所定の直径の中心孔3と、中心軸Cの周りに配置された複数の調整孔6とを有する。中心孔3は、ピストンロッド22を挿通させるための貫通孔である。調整孔6は、バンプラバー1のばね定数を調整するためのものである。調整孔6自体の形状は、略円柱状が好ましい。各調整孔6の向きは、中心軸Cと略平行であり、すなわちバンプラバー1に対する荷重印加方向に対し略平行である。
図1(a)に荷重印加方向を白矢印で模式的に示している。荷重は、車輪側及び/又は車体側から印加される圧縮荷重である。
図1の例では、3個のバンプラバー1のうち、最上位置の1個は他の2個に比べて若干外径が大きい。
【0017】
図2(a)は
図1に示した本発明のバンプラバー1の概略斜視図、(b)は概略平面図、(c)は(b)の概略的なI-I断面図である。略円柱体の本体2は、ピストンロッドを挿通させるための中心孔3を備えている。「略円柱体」とは、外郭形状が幾何学的に正確な円柱体である必要はなく、ある程度の変形形状も含む意味である。本明細書において他の用語に「略」を付した場合も同様である。
図2(a)に示すように、上面4と下面5の各周縁に破損や摩耗の防止のために設けた段状の面取り部7も変形形状の一例である。本明細書での「上面」及び「下面」は、添付の図面上での上下に合わせた表現であり、バンプラバー1の実装状態における鉛直方向の上下に対応する必要はなく、略円柱体の両端面を形成する「第1の面」及び「第2の面」の意味である。
【0018】
図2に示すように、バンプラバー1は、中心孔3以外に複数の調整孔6を有する。一例として、複数の調整孔6は、本体2の上面4と下面5との間に全長に亘ってそれぞれ延在している貫通孔である。1つの調整孔6は、柱状であり好ましくは略円柱状である。調整孔6は、バンプラバー1のばね定数を調整するために形成される。ばね定数は、バンプラバー1の圧縮され難さ(体積変化の生じ難さ)や反発力の大きさを示す弾性定数である。ばね定数は、材料自体の弾性定数ではなく形状要素も含めた物体の特性を表している。
【0019】
本発明のバンプラバー1の材料は、ウレタン系材料(発泡ウレタン、ウレタンゴム等)以外の工業系ゴムとすることが好ましい。例えば、天然ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム等である。これらの工業系ゴムはウレタン系材料に比べて硬いため、材料自体の弾性定数が大きく反発力が大きいが、圧縮荷重に対する体積的な変化を生じ難い。したがって、ブロック固体のままではプログレッシブ特性を得ることが難しい。プログレッシブ特性は、圧縮ストローク量の小さい初期ではばね定数が小さく、圧縮ストローク量が大きくなるとばね定数が大きくなるように二次関数的に推移する非線形特性である。そこで本発明では、バンプラバーのばね定数がプログレッシブ特性を有するように、バンプラバー1に体積変化し難い部位と体積変化しやすい部位を設けることとした。バンプラバー1の本体自体は比較的体積変化し難い材料で作製し、体積変化しやすい部位として調整孔6を設ける。
【0020】
図2(b)に示すように、一例として4個の調整孔6が設けられている。4個の調整孔6は、好適には、中心孔3と同心の円周(鎖線で示す)に沿って等角度間隔で配置されている。すなわちこの場合、90度間隔である。但し、複数の調整孔6が正確に等角度間隔で配置されることに限定しない。複数の調整孔6は、略円柱体の中心軸Cの周りにほぼ均等に分布して配置されていることが好ましい。
【0021】
図2(c)の断面図に示すバンプラバー1の外径D1と軸方向長さLは必要に応じて設定される。外径D1及び/又は軸方向長さLが異なる多種のバンプラバー1を作製し、適宜組み合わせることができる。バンプラバー1は、複数個を軸方向に積み重ねて用いることができる。したがって、縦長であるよりもむしろ横長の平坦な円柱体とすることが、組合せの自由度が大きくなるので好ましい。例えば、軸方向長さLが、本体2の外径(又は平均外径)D1の50~70%である。言い換えると、バンプラバー1の荷重印加方向における長さLが、荷重印加方向に垂直な断面の平均外径の50~70%である。但し、この範囲に限定しない。
【0022】
中心孔3の直径D2は、ショックアブソーバのピストンロッドを挿通させるために必要な大きさに設定する。調整孔6の直径D3は、バンプラバー1の所望するばね定数と、環状部分の幅Wと、機械的強度とを考慮して適切な大きさに設定する。幅Wは本体2の外径D1と内径D2の差の2分の1となる。調整孔6の直径D3が異なる多種のバンプラバー1を作製し、適宜組み合わせることができる。
【0023】
複数個のバンプラバーを軸方向に積み重ねて用いる場合、各単体におけるピストンロッド挿通用の中心孔3の大きさ(内径D2)は一致させることが好ましいが、各単体における外径D1及び軸方向長さL、並びに、調整孔6の位置及び数は一致していなくてもよい。
【0024】
図3(a)(b)(c)は、バンプラバー1の変形形態の例を示す概略平面図である。
図3(a)では3個の調整孔6が、中心軸Cの周りに120度間隔で設けられている。調整孔6の数は、少なくとも3個であることが好ましい。
図3(b)では8個の調整孔6が、中心軸Cの周りに45度間隔で設けられている。
図3(c)では、中心孔3と同心の2つの円周(鎖線で示す)に沿ってそれぞれ4個の調整孔6が、中心軸Cの周りに90度間隔で合計8個設けられている。このように、複数の調整孔6は、中心軸Cを中心とする同心の複数の円周の各々に沿って均等に分布していてもよい。調整孔6の数の上限は、バンプラバー1に必要なばね定数と機械的強度とを考慮して設定する。調整孔6の数が異なる多種のバンプラバー1を作製し、適宜組み合わせることができる。
【0025】
図4(a)(b)は、バンプラバー1の別の変形形態の例を示す概略断面図である。
図4(a)では、バンプラバー1の調整孔6の内部において、その直径D3が直径D4まで拡張された拡径部6aを有する。拡径部6aは、調整孔6を部分的に拡張した空洞部となっている。直径D4は、例えば直径D3の1.2~2倍程度であるが、これに限定されず必要に応じて設定する。拡径部6aの軸方向長さは、例えば直径D4と同程度であるが、これに限定されず必要に応じて設定する。拡径部6aもまた、ばね定数を調整するために形成される。
【0026】
拡径部6aの有る箇所では、本体2の外面方向への変形を生じやすくなる。図示の例では、拡径部6aは、調整孔6の軸方向の中央に1つのみ形成されている。また図示の例では、拡径部6aが球面で形成されている。なお拡径部6aの形状は球面に限られず、球面以外の曲面でもよく、又は、2つのテーパー状の面の組合せ(断面がくの字状)でもよい。図示しないが別の例として、必要に応じて1つの調整孔6内に2つ以上の拡径部6aを設けてもよい。また、複数の調整孔6のうち一部にのみ拡径部6aを設けてもよい。その場合、拡径部6aを設けた調整孔6が中心軸Cの周りに均等に分布すると共に、拡径部6aを設けていない調整孔6もまた中心軸Cの周りに均等に分布していることが好ましい。
【0027】
図4(b)では、バンプラバー1が、中心孔3内において、その直径D2が直径D5まで拡張された拡径部3aを有する。上記の拡径部6aと同様に、拡径部3aもまた、ばね定数を調整するために形成される。拡径部3aの形状は、球面もしくはそれ以外の曲面でもよく、又はテーパー状の面でもよく、必要に応じて軸方向に2つ以上設けてもよい。
【0028】
図5(a)(b)(c)は、バンプラバー1のさらに別の変形形態の例を示す概略断面図である。これらの変形形態も、ばね定数を調整するために用いることができる。
図5(a)では、略円柱体の本体2の外面2aがテーパー状となっている。このような円錐台形状も略円柱体に含まれるものとする。この場合、本体2の平均外径を外径D1とみなす。
図5(b)では、調整孔6が中心孔3の中心軸Cと正確に平行ではなく傾斜している。
図5(c)では、本体2の外面に環状溝9が形成されている。環状溝9は複数設けてもよい。本体2のこのような形状も略円柱体に含まれるものとする。
【0029】
図6(a)(b)(c)は、バンプラバー1のさらに別の変形形態の例を示す概略断面図である。これらの変形形態も、ばね定数を調整するために用いることができる。
図6(a)では、略円柱体の本体2の上面4と下面5との間に延在する調整孔6の一端が閉鎖部2bにより閉鎖されている。
図6(b)では、調整孔6の両端が閉鎖部2bにより閉鎖されている。
図6(c)では、調整孔6の軸方向の中央付近に閉鎖部2bが形成され、1つの調整孔6が上下に分割されている。
【0030】
図6に示すように、略円柱体の本体2の上面4と下面5との間の一部に亘って延在する調整孔6も、本発明に含まれる。この場合も、1つの調整孔6は柱状であり好ましくは略円柱状である。閉鎖部2bの厚さtは、調整孔6のばね定数調整機能に影響しない程度とする。あるいは、閉鎖部2bの厚さtもまた、バンプラバー1のばね定数の調整要素の一つとして考慮してもよい。限定しないが、一例として、閉鎖部2bの厚さtを本体2の軸方向長さLの10分の1以下としてもよい。閉鎖部2bは薄膜状でもよい。閉鎖部2bは、本体2と同じ材料で一体に形成できる。別の例として、閉鎖部2bを別途作製して本体2に接合してもよい。
【0031】
図7(a)(b)は、バンプラバーの変形形態の別の例を示す概略斜視図及び概略断面図である。
図7では、上述した略円柱体以外の略回転体の本体2を有する。略回転体は、中心軸Cを回転の軸として得られる立体である。但し、幾何学的に正確な回転体である必要はない。
【0032】
図7(a)のバンプラバー1の本体2は、軸方向中央部の外面2a1が円筒周面であり、円筒周面の上側の外面2a2と下側の外面2a3がそれぞれ球面である。図示の例では、8個の調整孔6が設けられている。各調整孔6の向きは上述した実施形態と同様に中心軸Cと略平行であり、すなわちバンプラバー1に対する荷重印加方向に対し略平行である。複数の調整孔6は、中心軸Cの周りに均等に分布して配置されている。この場合、各調整孔6の両端は、球面である外面2a2、2a3上に開口している。本体2の軸方向両端には平坦面である上面4と下面5が設けられている。上面4と下面5との間にはピストンロッド用の中心孔3が貫通している。
【0033】
図7(c)(d)は、略回転体の本体2を有するさらに別の例を示す概略断面図である。
図7(c)では、本体2がほぼ全体的に球体であり、外面2aが球面である。
図7(d)では、本体2がほぼ全体的に楕円体であり、外面2aが楕円体表面である。
【0034】
図8(a)(b)は、バンプラバーの変形形態の別の例を示す概略斜視図である。
図8では、略回転対称体の本体2を有する。ここでも、幾何学的に正確な回転対称体である必要はない。
図8(a)のバンプラバー1の本体2は、4回対称の略四角柱である。図示の例では4個の調整孔6と中心孔3が設けられている。
図8(b)のバンプラバー1の本体2は、6回対称の略6角柱である。図示の例では6個の調整孔6と中心孔3が設けられている。各調整孔6の向きは上述した実施形態と同様に中心軸Cと略平行であり、すなわちバンプラバー1に対する荷重印加方向に対し略平行である。複数の調整孔6は、中心軸Cの周りに均等に分布して配置されている。
【0035】
図2~
図8に示したバンプラバー1の単体における種々の特徴は、必要に応じて互いに組み合せることもでき、それらの特徴を組み合わせた単体もまた本発明に含まれる。
【0036】
図9(a)は、ピストンロッドに装着しないバンプラバー1Aの例を示す概略斜視図であり、(b)その概略断面図である。
図9(a)(b)のバンプラバー1Aはピストンロッドに装着しないため、中心軸C上のピストンロッド挿通孔が設けられていない。中心軸Cの周りに均等に分布して配置された4個の調整孔6のみが設けられている。このバンプラバー1Aは、ショックアブソーバとコイルスプリングが別個に設置されたセパレートタイプのサスペンションにおいて、コイルスプリングに装着する場合に用いられる。
【0037】
図9(c)は、ピストンロッドに装着しないバンプラバー1Aの別の例を示す概略斜視図であり、(d)その概略断面図である。
図9(c)(d)のバンプラバー1Aは、中心軸Cを中心とする1つの調整孔6と、中心軸Cの周りに均等に分布して配置された8個の調整孔6が設けられている。中心軸C上に位置する調整孔6は、ピストンロッド挿通用中心孔ではなく、ばね定数の調整のために設けられている。
【0038】
図9に示したバンプラバー1Aにおいても、可能であれば、
図3~
図8に示したバンプラバー1の単体における種々の特徴を組み合せることができ、それらの特徴を組み合わせた単体もまた本発明に含まれる。
【0039】
図10は、
図9に示したバンプラバー1Aの使用例を概略的に示す図である。サスペンション10Aは、シリンダ21及びピストンロッド22を有するショックアブソーバと、コイルスプリング23とが、別個に設置されたセパレートタイプである。ピストンロッド挿通用中心孔のないバンプラバー1Aは、コイルスプリング23に装着される。図示の例では、バンプラバー1Aは、アッパーシート25(断面で示す)の下面に設けた装着用凹部25aに押し込まれている。図示の例では、アッパーシート25は適宜の車体側固定部材26に取り付けられ、ロアシート24は適宜の車輪側固定部材20に取り付けられている。
【0040】
一方、ピストンロッド22には、ピストンロッド挿通用中心孔をもつバンプラバー1が2個装着されている。バンプラバー1は、適宜の車体側固定部材26に当接している。シリンダ21は適宜の車輪側固定部材20に取り付けられている。
【0041】
別の例として、セパレートタイプのサスペンションでは、ピストンロッド22のみにバンプラバーが取り付けられる場合もある。
【0042】
図11は、本発明のバンプラバーの圧縮試験結果を示すグラフである。バンプラバーの軸方向に圧縮荷重を負荷し、軸方向長さの変化(圧縮ストローク量)と荷重とを計測した。横軸は圧縮ストローク量(mm)、縦軸は荷重(kgf)である。荷重の変化は、ばね定数の変化に相当する。
【0043】
試験に用いた以下の5種のバンプラバー試験体は、ピストンロッド挿通用中心孔をもつ単体であり、外径と調整孔の数が異なる。
外径 調整孔の数
試験体(0H) :40mm 0
試験体(4H大):40mm 4
試験体(8H大):40mm 8
試験体(4H小):35mm 4
試験体(8H小):35mm 8
【0044】
図11のグラフを参照すると、調整孔が無い場合はばね定数が大きく、調整孔の数が多い方がばね定数が小さくなる。また、外径が大きい方がばね定数が大きく、小さい方がばね定数が小さい。さらにまた、単体であってもばね定数がプログレッシブ特性を有している。したがって、適切に組み合わせることで所望するばね定数を得ることができる。ばね定数が小さいバンプラバー単体は、複数個を組み合わせるときの組合せの自由度が特に大きいといえる。
【0045】
図12は、本発明のバンプラバーの別の圧縮試験結果を示すグラフである。試験方法は
図11と同じである。横軸は圧縮ストローク量(mm)、縦軸は荷重(kgf)である。荷重の変化は、ばね定数の変化に相当する。
【0046】
試験に用いた以下の4種のバンプラバー試験体は、いずれもピストンロッド挿通用中心孔と4個の調整孔とを有する。単体の試験体と、外径の異なる複数個の単体を積み重ねた試験体とを用いた。
外径と組合せ
試験体(4H大) :40mm
試験体(4H小) :35mm
試験体(4H大+4H小) :40mm+35mm
試験体(4H大+4H小+4H小):40mm+35mm+35mm
【0047】
図12のグラフを参照すると、複数個のバンプラバー単体を組み合わせることで、単体のときよりもばね定数が小さくなり、その変化が緩やかとなることが判る。ここでは調整孔の数は同じとしたが、調整孔の数と外径の異なるバンプラバー単体を様々に組み合わせることによって、所望する圧縮ストローク量とばね定数の関係を自在に得ることができる。
【0048】
以上述べた本発明のバンプラバーは、ばね定数調整のための複数の調整孔を設けたことによって、単体においてプログレッシブ特性を有しかつ圧縮ストローク量を大きく取ることを実現できた。その結果、組み合わせるバンプラバー単体の個数、各単体の外径及び軸方向長さ、並びに、各単体の調整孔の数、形状及び配置等によって、ばね定数の特性を自在に調整することが可能である。さらに、サスペンションに設置する初期高さ(軸方向長さ)の制約が小さくなり、省スペースで設置することができる。
【0049】
また、好適にはウレタン系材料以外の工業系ゴムを用いることで、ウレタン系材料に比べて耐久性があり劣化や風化に対するばね定数の変化も少なくなるので、バンプラバーの寿命が延びる。また、ばね定数の大きい工業系ゴムを用いることで、バンプラバーが直接的にサスペンションのコイルスプリングを補助するように機能することができる。このことは、特にモータスポーツ用車両において有用である。また、ばね定数の大きい工業系ゴムを用いながら、十分な圧縮ストローク量も確保できる。
【0050】
以上に述べた本発明の各実施形態は、本発明の主旨に沿う限りにおいて多様な変形形態が考えられ、それらについても本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 バンプラバー
2 本体(略円柱体)
2a 外面
2b 閉鎖部
3 中心孔
4 上面
5 下面
6 調整孔
6a 拡径部
7 面取り部
9 環状溝
C 中心軸
20 車輪側固定部材
21 シリンダ
22 ピストンロッド
23 コイルスプリング
24 ロアシート
25 アッパーシート
25a 装着用凹部
26 車体側固定部材
27 ロッド固定具