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特開2024-98755樹脂、樹脂組成物、印刷画像、静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098755
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】樹脂、樹脂組成物、印刷画像、静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/30 20060101AFI20240717BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240717BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240717BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C08F20/30
G03G9/087 325
G03G9/08 381
C08L33/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002423
(22)【出願日】2023-01-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「リグニンからの芳香族ポリマー原料の選択的生産」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 和也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大介
【テーマコード(参考)】
2H500
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500BA12
2H500BA22
2H500CA03
2H500CA44
2H500EA41B
4J002BC021
4J002BG031
4J002GT00
4J100AB02Q
4J100AJ02T
4J100AL03R
4J100AL04S
4J100AL08P
4J100BA02P
4J100BA20P
4J100BC43P
4J100CA03
4J100CA06
4J100JA09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、熱的特性及び電気的特性に優れたバイオマス由来の樹脂、並びに当該樹脂を用いた樹脂組成物、印刷画像、静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位を有する。

[前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造単位を有する
ことを特徴とする樹脂。
【化1】
[前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)中のR、及びRが、メチル基であり、Rが、水素原子である
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂。
【請求項3】
前記一般式(1)中のnが、2である
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂。
【請求項4】
下記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体と、当該第1の重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体との共重合体である
ことを特徴とする請求項1に記載の樹脂。
【化2】
[前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【請求項5】
前記第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有率が、当該樹脂を構成する全構造単位(100質量%)に対して、10~40質量%の範囲内である
ことを特徴とする請求項4に記載の樹脂。
【請求項6】
前記他の重合性単量体が、少なくともスチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される
ことを特徴とする請求項4に記載の樹脂。
【請求項7】
前記他の重合性単量体が、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、から1種以上選ばれる
ことを特徴とする請求項6に記載の樹脂。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の樹脂を含有する
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の樹脂を含有する
ことを特徴とする印刷画像。
【請求項10】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の樹脂を含有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
請求項10に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
下記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行い、トナーバインダー粒子分散液を調製する工程を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【化3】
[前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、樹脂組成物、印刷画像、静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。特に、熱的特性及び電気的特性に優れたバイオマス由来の樹脂等に関する。
【背景技術】
【0002】
非可食バイオマスからの産業に有用な化成品の生産は、低炭素社会の実現に貢献しうる技術の一つである。これまでに工業化されてきたバイオマス由来の化成品は脂肪族素材が中心であり、ポリマーに熱安定性や剛直性等の機能性を与える芳香族素材の製造は実現できていない。非可食バイオマスであり、現状有効活用されていない物質として、リグニンが挙げられる。リグニンは、木材中にセルロースに伴って20~30%存在する高分子のヒドロキシフェニルプロパンを基本単位とする重合化合物である。このリグニンを利用できれば、石油由来の芳香族高分子素材の代替や新たな機能性材料の開発が期待できる。これらの開発によって、低炭素社会創出を大きく進展させることができると考えられる。
【0003】
具体的には、以下のようにリグニンを利用して高分子材料を生産することで、低炭素社会の実現を現実のものとすることができると考えられる。
(1)リグニンから生成する低分子のフェノール類の中から、化成品原料としての活用に可能性が高いフェノール類を見出す。
(2)上記フェノール類を、産業に有用な芳香族モノマーに誘導する。
(3)上記芳香族モノマーから、所望の性能を有する高分子材料を生産する。
【0004】
近い将来に工業化が見込まれている脂肪族のバイオマス由来の化成品として、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、アクリル酸、n-ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル系樹脂原料を挙げることができる。バイオマス由来の化成品を樹脂材料の原料として用いることで、炭素を樹脂として固定化でき、脱炭素社会の実現に貢献できる。しかし、その一方で、バイオマス由来の化成品の利用には、樹脂材料に要求される機能の実現が困難であるといった問題があった。
【0005】
また、樹脂材料の一つの用途として、デジタル印刷に使用されるトナーを挙げることができる。トナーは、熱、圧力等によって、媒体である紙に定着され画像として出力されるが、定着時に熱として消費される電力量は、トナー画像形成装置全体の消費電力量の7割も占める。そのため、トナー画像形成の低消費電力化のために、トナーの熱定着時の消費電力量の削減が大きな継続課題としてあった。
【0006】
従来、このような消費電力量の削減の課題に対して、低エネルギー量にて紙等の媒体に定着することが可能なトナーの開発が検討されてきた(例えば、特許文献1~3参照。)。具体的には、トナーバインダー樹脂の低ガラス転移温度化や、トナーバインダー樹脂の分子量分布制御によるトナーの低溶融粘度化が検討されてきた。
【0007】
トナーバインダー樹脂のガラス転移温度は、例えばスチレン・アクリル系樹脂においては、モノマーの比率により調整できる。具体的には、スチレン等のハードセグメント(高ガラス転移温度成分)となるモノマーと、n-ブチルアクリレート等のソフトセグメント(低ガラス転移温度成分)となるモノマーとの比率により、調整できる。
【0008】
しかしながら、樹脂中のソフトセグメントの比率を高めることは、トナーの低温定着化を実現できる一方で、トナーの定着分離性を悪くするという問題を有する。また、ソフトセグメントとなるモノマーとして汎用なn-ブチルアクリレートは、電荷漏洩性の指標である誘電正接(tanδ)が高い。そのため、n-ブチルアクリレートを用いた場合には、トナーの電荷保持性を低くするという問題もあった。電荷保持性の低さは、トナーの低帯電量化を招いてしまうため、結果として、トナー飛散による機内汚染や、画像不良の発生等の問題が顕在化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-279714号公報
【特許文献2】特開2008-287229号公報
【特許文献3】特開2010-15159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものである。その解決課題は、熱的特性及び電気的特性に優れたバイオマス由来の樹脂、並びに当該樹脂を用いた樹脂組成物、印刷画像、静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、バイオマス由来の特定の構造単位を有する樹脂が熱的特性及び電気的特性に優れていることを見いだした。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.下記一般式(1)で表される構造単位を有する
ことを特徴とする樹脂。
【0013】
【化1】
【0014】
[前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【0015】
2.前記一般式(1)中のR、及びRが、メチル基であり、Rが、水素原子である
ことを特徴とする第1項に記載の樹脂。
【0016】
3.前記一般式(1)中のnが、2である
ことを特徴とする第1項に記載の樹脂。
【0017】
4.下記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体と、当該第1の重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体との共重合体である
ことを特徴とする第1項に記載の樹脂。
【0018】
【化2】
【0019】
[前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【0020】
5.前記第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有率が、当該樹脂を構成する全構造単位(100質量%)に対して、10~40質量%の範囲内である
ことを特徴とする第4項に記載の樹脂。
【0021】
6.前記他の重合性単量体が、少なくともスチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択される
ことを特徴とする第4項に記載の樹脂。
【0022】
7.前記他の重合性単量体が、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、から1種以上選ばれる
ことを特徴とする第6項に記載の樹脂。
【0023】
8.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の樹脂を含有する
ことを特徴とする樹脂組成物。
【0024】
9.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の樹脂を含有する
ことを特徴とする印刷画像。
【0025】
10.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の樹脂を含有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0026】
11.第10項に記載の静電荷像現像用トナーを製造する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
下記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行い、トナーバインダー粒子分散液を調製する工程を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0027】
【化3】
【0028】
[前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【発明の効果】
【0029】
本発明の上記手段により、熱的特性及び電気的特性に優れたバイオマス由来の樹脂、並びに当該樹脂を用いた樹脂組成物、印刷画像、静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することができる。
【0030】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は下記メカニズムに何ら制限されるものではない。
【0031】
アクリル系樹脂の熱特性制御は、一般的に2種以上のモノマーを共重合することによって調整することができる。具体的には、ガラス転移温度の高いハードセグメントと、ガラス転移温度の低いソフトセグメントの比率を調整することによって、熱的特性の制御が可能である。例えば、バイオマス由来の(メタ)アクリル系樹脂原料として、ガラス転移温度の高いメタクリル酸メチルと、ガラス転移温度の低いn-ブチルアクリレートの共重合にて、樹脂を作製することが可能である。しかし、この場合、ミクロに見ると部分的にホモポリマー部位が形成されるために、得られた樹脂の分子鎖間の相互作用が結果として大きくなる。そのため、このような従来の樹脂では、トナーバインダーとして使用した際に、トナーに要求されるシャープメルト性が実現できない。
【0032】
一方で、本発明の樹脂は、嵩高い側鎖構造を有しているために、分子鎖間の相互作用を抑えることができる。これによって、本発明の樹脂は、トナーで要求されるシャープメルト性を実現することができたと考えられる。
【0033】
また、上記した理由と関連して、本発明の樹脂では、分子鎖間の相互作用が弱いために、トナーにて要求される帯電特性に関して、電荷の漏洩経路を少なくすることができる。その結果として、本発明の樹脂において十分な電荷保持性能を確保できたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施例で用いた帯電量を測定するための装置を示した図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の樹脂は、上記一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0036】
本発明の樹脂の実施形態としては、前記一般式(1)中のR、及びRが、メチル基であり、Rが、水素原子であることが好ましい。これによって、熱的特性及び電気的特性がより良好となる。
【0037】
本発明の樹脂の実施形態としては、前記一般式(1)中のnが、2であることが好ましい。これによって、熱的特性及び電気的特性がより良好となる。
【0038】
本発明の樹脂の実施形態としては、上記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体と、当該第1の重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体との共重合体であることが好ましい。これによって、本発明の効果をより一層効率よく発揮させることができる。
【0039】
本発明の樹脂の実施形態としては、前記第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有率が、当該樹脂を構成する全構造単位(100質量%)に対して、10~40質量%の範囲内であることが好ましい。これによって、熱的特性及び電気的特性がより良好となる。
【0040】
本発明の樹脂の実施形態としては、前記他の重合性単量体が、少なくともスチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択されることが好ましい。これによって、樹脂のガラス転移温度の調整が容易になる。
【0041】
本発明の樹脂の実施形態としては、前記他の重合性単量体が、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、から1種以上選ばれることが好ましい。これによって、樹脂のガラス転移温度の調整が容易になる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂を含有することを特徴とする。
【0043】
本発明の印刷画像は、本発明の樹脂を含有することを特徴とする。
【0044】
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明の樹脂を含有することを特徴とする。
【0045】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、本発明の静電荷像現像用トナーを製造する方法であって、上記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行い、トナーバインダー粒子分散液を調製する工程を有することを特徴とする。これによって、熱的特性及び電気的特性に優れたバイオマス由来の樹脂を製造できる。
【0046】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0047】
[1.本発明の樹脂]
本発明の樹脂は、下記一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする
【0048】
【化4】
【0049】
[前記一般式(1)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【0050】
の具体例としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基が挙げられる。
【0051】
熱的特性を満足しつつ、良好な電気的特性を得るという点で、R及びRはメチル基が好ましく、Rは水素原子が好ましい。また、同じ観点から、nは2であることが好ましい。
【0052】
一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂は、下記一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体の重合を行うことにより合成できる。
【0053】
【化5】
【0054】
[前記一般式(2)中、Rは、水素原子、又はメチル基を表す。Rは、炭素数1~4のアルキル基を表す。Rは、水素原子、又はメトキシ基を表す。nは、2~4の整数を表す。]
【0055】
一般式(2)におけるR、R及びRは、それぞれ一般式(1)におけるR、R及びRと同義である。
【0056】
第1の重合性単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0057】
第1の重合性単量体の具体例としては、下記の例示化合物M1~M9が挙げられる。なお、第1の重合性単量体はこれらに限定されない。
【0058】
【化6】
【0059】
第1の重合性単量体は、例えば以下の合成スキームで合成できる。
【0060】
〔1〕ヒドロキシ安息香酸エステル類の合成
エステル管を装着した4つ口フラスコ中に、ヒドロキシ安息香酸類565mmol、トルエン565ml、アルコール1130mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物113mmolを添加し、還流条件下反応を実施する。反応溶液を脱イオン水に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出する。有機層を水洗し、MgSOで乾燥する。溶媒を留去し、得られた化合物を、ヘキサン/酢酸エチル溶媒にて、シリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0061】
【化7】
【0062】
〔2〕ヒドロキシ安息香酸エステルのヒドロキシアルキル化
4つ口フラスコ中に、〔1〕で得たヒドロキシ安息香酸エステル類385mmol、炭酸カリウム385mmol、DMF770ml、ブロモアルコール424mmol、ヨウ化カリウム1.0mmolを添加し、110℃にて攪拌下、反応を実施する。反応溶液を脱イオン水に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出する。有機層を水洗し、MgSOで乾燥する。溶媒を留去し、得られた化合物を、ヘキサン/酢酸エチル溶媒にて、シリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0063】
【化8】
【0064】
〔3〕(メタ)アクリルエステル化
4つ口フラスコ中に、〔2〕で得たヒドロキシアルコキシ安息香酸エステル類276mmol、トルエン828ml、(メタ)アクリル酸461mmol、ヒドロキノン12.1mmol、p-トルエンスルホン酸一水和物55.2mmolを添加し、還流条件下反応を実施する。反応溶液を脱イオン水に注ぎ、酢酸エチルで3回抽出する。有機層を水洗し、MgSOで乾燥する。溶媒を留去し、得られた化合物を、ヘキサン/ 酢酸エチル溶媒にて、シリカゲルクロマトグラフィーで精製する。
【0065】
【化9】
【0066】
本発明の樹脂は、一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体のみから得られる重合体でもよい。しかし、本発明の効果をより一層効率よく発揮させるという観点から、本発明の樹脂は、一般式(2)で表される構造を有する第1の重合性単量体と、当該第1の重合性単量体と共重合可能な他の重合性単量体(「第2の重合性単量体」ともいう。)との共重合体であることが好ましい。
【0067】
第2の重合性単量体の例としては、
スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、o-アセトキシスチレン、m-アセトキシスチレン、p-アセトキシスチレン等のスチレン類;
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸イソブチル(アクリル酸iso-ブチル)、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル(メタクリル酸iso-ブチル)、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;
アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、少なくともスチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルからなる群より選択されることが好ましい。また、スチレン、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸、から1種以上選ばれることが好ましい。さらに、スチレン及びアクリル酸n-ブチルの少なくとも一方がより好ましい。このような重合性単量体を用いることで、樹脂のガラス転移温度の調整が容易になる。
【0069】
第2の重合性単量体として、イオン性解離基を有する重合性単量体を用いてもよい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などの基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらのうち、好ましいのはアクリル酸又はメタクリル酸である。
【0070】
第2の重合性単量体は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0071】
本発明の樹脂は、第1の重合性単量体に由来する構造単位の含有率が、当該樹脂を構成する全構造単位(100質量%)に対して、10~40質量%の範囲内が好ましい。これによって、樹脂のガラス転移温度の調整が容易になる。
【0072】
本発明の樹脂において、第2の重合性単量体に由来する構造単位の含有率は、特に制限されず、構造単位の種類によって適宜調整することができる。
【0073】
例えば、第2の重合性単量体がスチレン類である場合、第2の重合性単量体に由来する構造単位の含有率は、当該樹脂を構成する全構造単位(100質量%)に対して、20~80質量%の範囲内が好ましく、30~70質量%の範囲内がより好ましい。
【0074】
第2の重合性単量体がアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルである場合、第2の重合性単量体に由来する構造単位の含有率は、当該樹脂を構成する全構造単位(100質量%)に対して、5~50質量%の範囲内が好ましく、10~40質量%の範囲内がより好ましい。
【0075】
第2の重合性単量体がイオン性解離基を有する重合性単量体である場合、第2の重合性単量体に由来する構造単位の含有率は、当該樹脂を構成する全構造単位(100質量%)に対して、3~8質量%の範囲内が好ましい。
【0076】
第1の重合性単量体や、任意で第2の重合性単量体を用いて、本発明の樹脂を合成する方法は、特に制限されない。しかし、簡便に重合できるという観点から、公知の油溶性又は水溶性のラジカル重合開始剤を使用して単量体をラジカル重合する方法が好ましい。
【0077】
ラジカル重合に使用される油溶性の重合開始剤としては、具体的には、以下に示すアゾ系又はジアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤が挙げられる。必要に応じて例えば、n-オクチルメルカプタン、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0078】
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0079】
過酸化物系重合開始剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
【0080】
また、乳化重合法で本発明の樹脂を合成する場合は、水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。
【0081】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などが挙げられる。
【0082】
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃の範囲内であることが好ましく、55~90℃の範囲内であることがより好ましい。
【0083】
重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、例えば、1~12時間であることが好ましい。
【0084】
本発明の樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算による分子量分布から得られるピーク分子量が、3500~35000の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、10000~30000の範囲内である。このような範囲のピーク分子量であれば、トナーバインダーとして用いた際に、定着時の樹脂の溶融粘度が適正となり、良好な定着性と定着分離性とを両立させることができる。
【0085】
上記ピーク分子量は、分子量分布におけるピークトップの溶出時間に相当する分子量である。分子量分布中にピークが複数存在した場合、ピーク面積比率の一番大きなピークトップの溶出時間に相当する分子量をピーク分子量とする。
【0086】
樹脂のピーク分子量は、以下のような方法で測定できる。具体的には、装置「HLC-8220」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用いる。そして、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流す。測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。THFに溶解させた測定試料を、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して、試料溶液を得る。この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて測定試料の分子量分布を検出する。当該分子量分布から、ピーク分子量を求める。
【0087】
[2.樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、上記一般式(1)で表される構造単位を有する本発明の樹脂を含有することを特徴とする。「樹脂組成物」とは、樹脂を含む2種以上の成分を含有する組成物のことをいう。
【0088】
樹脂組成物の例として、樹脂分散液、樹脂溶解液、混合樹脂等が挙げられる。
【0089】
本発明の樹脂組成物が含有する本発明の樹脂以外の成分の例として、本発明の樹脂以外の樹脂、溶剤、分散剤、酸化防止剤、色材、消泡剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0090】
[3.静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、上記一般式(1)で表される構造単位を有する本発明の樹脂を含有することを特徴とする。
【0091】
本発明において、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。「トナー粒子」は、トナー母体粒子と外添剤とによって構成され得る。「トナー母体粒子」は、トナーバインダー、離型剤、着色剤、荷電制御剤等によって構成され得る。
【0092】
<トナーバインダー>
本発明のトナーは、上述の本発明の樹脂を、トナー母体粒子を構成するトナーバインダーとして含有する。
【0093】
トナーバインダーは、本発明の樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、一般にトナー母体粒子を構成するトナーバインダーとして用いられている樹脂を制限なく用いることができる。
【0094】
具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、又はエポキシ樹脂などが挙げられる。これら他の樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0095】
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる樹脂である。ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
【0096】
多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2である。そのため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
【0097】
ジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0098】
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、及び上記のカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなども用いることができる。
【0099】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0100】
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されない。ポリエステル樹脂は、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより製造できる。
【0101】
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。
【0102】
チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu))、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。アルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0104】
上記ポリエステル樹脂は、ポリエステル重合セグメントとスチレン・アクリル重合セグメントグラフトとのグラフト共重合体構造を有するハイブリッドポリエステル樹脂であってもよい。
【0105】
トナーバインダー中の本発明の樹脂の含有量は、トナーバインダーの全質量を100質量%として、5~50質量%の範囲内が好ましく、10~35質量%の範囲内がより好ましい。
【0106】
<離型剤>
本発明のトナーは、トナー母体粒子が離型剤を含有することが好ましい。当該離型剤は、脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0107】
脂肪酸エステルの例としては、例えば、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)、ステアリルステアレート(ステアリン酸ステアリル)、ベヘニルステアレート、ステアリルベヘネート、ブチルステアレート、プロピルオレエート、ヘキサデシルパルミテート(パルミチン酸ヘキサデシル)、メチルリグノセレート(リグノセリン酸メチル)、グリセリンモノステアレート(ステアリン酸グリセリル)、ジグリセリルジステアレート(ジステアリン酸ジグリセリル)、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル)、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ソルビタンモノステアレート、コレステリルステアレート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、トリステアリルトリメリテート(トリメリット酸トリステアリル)、ジステアリルマレエート、メチルトリアコンタネート(トリアコンタン酸メチル)等が挙げられる。これら脂肪酸エステルは、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。
【0108】
脂肪酸エステルは、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0109】
本発明の樹脂との相互作用の観点から、脂肪酸エステルは、炭素数16~24の範囲内の脂肪酸エステルを含むことが好ましい。このような脂肪酸としては、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0110】
より好ましい離型剤は、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル、脂肪酸エステルの炭素数は22)及びペンタエリスリトールテトラベヘネート(ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル、脂肪酸エステルの炭素数は22)、エチレングリコールジステアレート(エチレングリコールジステアリン酸エステル、脂肪酸エステルの炭素数は18)、リグノセリン酸メチル(脂肪酸エステルの炭素数は24)、パルミチン酸ヘキサデシル(脂肪酸エステルの炭素数は16)の少なくともひとつである。特に、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)、ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル又はエチレングリコールジステアリン酸エステルであることが好ましい。
【0111】
離型剤は、脂肪酸エステル以外のワックスであってもよい。脂肪酸エステル以外のワックスの例としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等の脂肪酸アミドワックス等が挙げられる。
【0112】
離型剤の含有割合は、定着性及び耐オフセット性のバランスの観点から、本発明の樹脂の合計質量を100質量%として、1~25質量%の範囲内であることが好ましい。より好ましくは、5~20質量%の範囲内である。
【0113】
<着色剤>
本発明のトナーは、トナー母体粒子が着色剤を含んでもよい。着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
【0114】
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が挙げられる。前記カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。また、磁性体としては、フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0115】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等の顔料が挙げられる。
【0116】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等の染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等の顔料が挙げられる。
【0117】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等の染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76等の顔料が挙げられる。
【0118】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0119】
着色剤の含有割合は、トナー母体粒子の全質量を100質量%として、0.5~20質量%の範囲内が好ましく、2~10質量%の範囲内がより好ましい。
【0120】
<荷電制御剤>
本発明のトナーは、トナー母体粒子が荷電制御剤を含有してもよい。
【0121】
使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されない。したがって、前記荷電制御剤としては、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0122】
具体的には、正帯電性の荷電制御剤としては、例えば「ニグロシンベースEX」(オリエント化学工業株式会社製)などのニグロシン系染料、「第4級アンモニウム塩P-51」(オリエント化学工業株式会社製)、「コピーチャージPX VP435」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、及び「PLZ1001」(四国化成工業株式会社製)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。
【0123】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、「ボントロン(登録商標)S-22」、「ボントロン(登録商標)S-34」、「ボントロン(登録商標)E-81」、「ボントロン(登録商標)E-84」(以上、オリエント化学工業株式会社製)、「スピロンブラックTRH」(保土谷化学工業株式会杜製)などの金属錯体、チオインジゴ系顔料、「コピーチャージNX VP434」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、「ボントロン(登録商標)E-89」(オリエント化学工業株式会社製)などのカリックスアレーン化合物、「LR147」(日本カーリット株式会社製)などのホウ素化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カーボンなどのフッ素化合物などが挙げられる。
【0124】
負帯電性の荷電制御剤として用いられる金属錯体としては、上記に示したもの以外に、オキシカルボン酸金属錯体、ジカルボン酸金属錯体、アミノ酸金属錯体、ジケトン金属錯体、ジアミン金属錯体、アゾ基含有ベンゼン-ベンゼン誘導体骨格金属錯体、アゾ基含有ベンゼン-ナフタレン誘導体骨格金属錯体などの各種の構造を有したものなどを使用することができる。
【0125】
このようにトナー母体粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの帯電性が向上される。
【0126】
荷電制御剤の含有割合は、トナー母体粒子の全質量を100質量%として、0.01~30質量%の範囲内が好ましく、0.1~10質量%の範囲内がより好ましい。
【0127】
<トナー母体粒子の形態>
トナー母体粒子の形態は特に制限されず、例えば、いわゆる単層構造、コア・シェル構造、3層以上の多層構造、ドメイン-マトリックス構造等の形態をとることができる。なお、前記単層構造とは、コア・シェル型ではない均質な構造をいう。
【0128】
<外添剤>
前記トナー母体粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。このような外添剤を添加することで、トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良することができる。
【0129】
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0130】
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
【0131】
外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05~5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0132】
<トナー粒子のメジアン径>
トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、4~10μmの範囲内であることが好ましく、5~9μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0133】
本発明において、トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
【0134】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mLに添加して馴染ませる。前記界面活性剤溶液は、トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液である。
その後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出する。そして、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
【0135】
[4.トナーの製造方法]
トナーを製造する方法は、特に限定されない。例えば下記の乳化凝集法によってトナーを製造できる。他にも、本発明の樹脂及び必要に応じて離型剤、着色剤等を溶融混練し、その後粉砕、分級等を行ってトナーを製造することもできる。
【0136】
乳化凝集法としては、特開平5-265252号公報、特開平6-329947号公報、特開平9-15904号公報等に記載の方法を採用することができる。さらに、特開2010-191043号公報に記載の懸濁重合法を用いた製造方法であってもよい。中でも、粒子径及び形状の制御が容易であり、生産時のエネルギーコストが削減できるという観点から、乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。
【0137】
このような乳化凝集法を利用した製造方法は、下記に示す各工程を含むことが好ましい。
(1A)トナーバインダー粒子の分散液を調製するトナーバインダー粒子分散液調製工程
(1B)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(1C)離型剤粒子の分散液を調製する離型剤粒子分散液調製工程
(2)トナーバインダー粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー母体粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー母体粒子を濾別し、当該トナー母体粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー母体粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー母体粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
【0138】
以下、(1A)~(1C)の工程について説明する。
(1A)トナーバインダー粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させてトナーバインダー粒子を形成する。一例として、トナーバインダーを構成する重合性単量体(前記第1の重合性単量体や第2の重合性単量体)を水系媒体中へ投入、分散させ、重合開始剤によりこれら重合性単量体を重合させる。これにより、トナーバインダー粒子の分散液を調製する。
【0139】
また、トナーバインダー粒子分散液を得る方法として、上記の水性媒体中で重合開始剤により重合性単量体を重合させる方法の他に以下の方法がある。例えば、溶媒を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法がある。又は、重合体を酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法などが挙げられる。
【0140】
この際、必要に応じ、トナーバインダーには離型剤を予め含有させておいてもよい。また、分散のために、適宜公知の界面活性剤の存在下で重合させることも好ましい。前記公知の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0141】
分散液中のトナーバインダー粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmの範囲内が好ましい。当該メジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0142】
(1B)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、10~300nmの範囲内であることが好ましく、50~200nmの範囲内であることがより好ましい。
分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、上記と同様に「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0143】
(1C)離型剤粒子分散液調製工程
この離型剤粒子分散液調製工程は、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、100~1000nmの範囲内であることが好ましく、200~700nmの範囲内であることがより好ましい。分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定器LA-750(株式会社堀場製作所製)によって測定することができる。
【0144】
(水系媒体)
(1A)~(1C)の工程で用いられる水系媒体は、水、又は水を主成分(50質量%以上)として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体等が挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
【0145】
上記の水溶性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、重合体を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類が好ましい。
【0146】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
【0147】
このような界面活性剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムが使用される。
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部の範囲内、より好ましくは0.04~2質量部の範囲内である。
【0148】
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。
【0149】
金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。
具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、ポリ塩化アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価又は三価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0150】
[5.現像剤]
本発明のトナーは、トナー単独で一成分現像剤として使用することも、キャリア粒子と混合して二成分現像剤として使用することもできる。
【0151】
一成分現像剤として使用する場合、トナーは、磁性体を含有する磁性トナーでも、磁性体を含有しない非磁性トナーでもよい。前記磁性体としては、例えば、マグネタイト、γ-ヘマタイト、又は各種フェライトなどを使用することができる。
【0152】
二成分現像剤を構成するキャリア粒子としては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
【0153】
キャリア粒子としては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリア粒子や、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリア粒子を用いることが好ましい。
【0154】
被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、又はフッ素樹脂などが用いられる。
【0155】
樹脂分散型キャリア粒子を構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。このような樹脂として、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0156】
キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~60μmの範囲内であることがより好ましい。
【0157】
キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。前記レーザー回折式粒度分布測定装置としては、「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)が挙げられる。
【0158】
トナー粒子のキャリア粒子に対する混合量は、トナー粒子とキャリア粒子との合計質量を100質量%として、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0159】
[6.トナーを用いた画像形成方法]
本発明のトナーは、圧力を付与すると共に加熱することができる熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法に好適に用いることができる。特に、定着工程における定着温度が、比較的低温で定着する画像形成方法に好適に使用することができる。前記定着温度は、定着ニップ部における加熱部材の表面温度において115~140℃、好ましくは115~130℃の範囲内となる温度である。
【0160】
本発明のトナーは、定着線速が200~600mm/secの範囲内である高速定着の画像形成方法にも好適に使用できる。
【0161】
熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法においては、例えばまず、感光体上に形成された静電荷像をトナーで現像して、トナー像を得る。このトナー像を感光体上から画像支持体に転写する。その後、画像支持体上に転写されたトナー像を、熱圧力定着方式の定着処理によって画像支持体に定着させる。これにより、可視画像が形成された印画物が得られる。
【0162】
また、本発明のトナーは、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法に適用することができる。また、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法にも適用することができる。本発明のトナーは、前記画像形成方法のいずれにも適用することができる。
【0163】
[7.インク]
上記一般式(1)で表される構造単位を有する本発明の樹脂は、インクに含有させることもできる。当該インクは、本発明の樹脂の他に、色材、溶剤、その他の樹脂、各種添加剤等を含有し得る。
【0164】
本発明の樹脂を含有するインクは、耐光性及びメディアとの接着性に優れた画像を形成できる。
【0165】
本発明の樹脂は芳香環を有するため、紫外線吸収能が高い。そのため、当該樹脂を含有するインクを用いて形成した画像においては、樹脂が紫外線を吸収することで、色材が紫外線の影響を受けにくくなる。このような作用により、本発明の樹脂を含有するインクを用いて形成された画像は、耐光性が良好となる。
【0166】
また、本発明の樹脂は極性基を有するため、本発明の樹脂を含有するインクを用いて形成された画像は、紙等のメディアとの接着性が良好となる。
【0167】
インクを用いた画像形成におけるインクの付与方式の例としては、スプレー方式、マングル方式(パッド方式又はディッピング方式)、コーティング方式、インクジェット方式等が挙げられる。高精度な画像を形成する場合は、インクジェット方式が好ましい。
【0168】
[8.印刷画像]
本発明の印刷画像は、上記一般式(1)で表される構造単位を有する本発明の樹脂を含有することを特徴とする。
【0169】
当該印刷画像は、上述のトナーやインクを用いて形成できる。
【0170】
当該印刷画像は、本発明の樹脂を含有することによって、耐光性及びメディアとの接着性に優れている。
【実施例0171】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0172】
[重合性単量体]
一般式(2)で表される構造単位を有する第1の重合性単量体として、上記の例示化合物M1~9を用いた。
【0173】
また、比較化合物として、下記の構造を有するM10を用いた。
【0174】
【化10】
【0175】
M1~10における一般式(2)中のR1、R、R及びnは、下記表に示すとおりである。
【0176】
【表1】
【0177】
表Iに記載の略称は、それぞれ以下の原子又は置換基を表す。
H :水素原子
Me :メチル基
Et :エチル基
i-Bu :iso-ブチル基
n-Pr :n-プロピル基
n-Hex :n-ヘキシル基
OMe :メトキシ基
OEt :エトキシ基
【0178】
また、第2の重合性単量体として、以下の化合物を用いた。
St :スチレン
MMA :メタクリル酸メチル
nBA :アクリル酸n-ブチル
iBA :アクリル酸iso-ブチル
2EHA :アクリル酸2-エチルヘキシル
MAA :メタクリル酸
AA :アクリル酸
【0179】
[樹脂の合成]
ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた界面活性剤溶液を調製した。撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた5Lのステンレス釜(SUS釜)に、上記界面活性剤溶液を仕込んだ。そして、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、液温80℃に昇温した。
【0180】
この界面活性剤溶液に、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を80℃とした。その後、重合性単量体を下記表II~IVに示す添加量で添加した混合液をそれぞれ調製し、これを上記界面活性剤溶液に100分間かけて滴下した。この系を80℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより、重合性単量体の重合を行った。
【0181】
表II~IVに記載の重合性単量体の添加量は、第1及び第2の重合性単量体の合計添加量を100質量%としたときの各添加量を表す。
【0182】
このようにして、樹脂粒子分散液1~15をそれぞれ調製した。樹脂粒子分散液1~15が含有する樹脂を、それぞれ樹脂1~15とする。
【0183】
樹脂1~15のピーク分子量は表II~IVに示すとおりである。当該ピーク分子量は、以下のようにして測定した。装置「HLC-8220」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用いた。カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流した。次いで、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得て、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入した。そして、屈折率検出器(RI検出器)を用いて測定試料の分子量分布を検出した。当該分子量分布から、ピーク分子量を求めた。
【0184】
樹脂粒子分散液1~15中の樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、いずれも128nmであった。当該メジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定した。
【0185】
[トナーの調製]
樹脂粒子分散液1~15をトナーバインダー粒子分散液として用いて、下記のとおりトナーを調製した。
【0186】
<着色剤分散液の調製>
着色剤:カーボンブラック(Mogul(登録商標)L キャボット社製)
10質量部
アニオン性界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20%水溶液)
1.5質量部
イオン交換水 90質量部
【0187】
上記成分を混合しSCミルにて分散させ、着色剤分散液を得た。
【0188】
着色剤分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、154nmであった。当該メジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定した。
【0189】
<離型剤分散液の調製>
ベヘン酸ベヘニル 100質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 5質量部
イオン交換水 240質量部
【0190】
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー「ウルトラタラックス(登録商標)T50」(IKA社製)を用いて10分間分散させた。その後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤分散液を得た。
【0191】
離型剤分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、530nmであった。を、レーザー回折式粒度分布測定器LA-750(株式会社堀場製作所製)によって測定した。
【0192】
<トナー母体粒子分散液1の調製>
トナーバインダー粒子分散液1 237質量部
着色剤分散液 42質量部
離型剤分散液 18質量部
ポリ塩化アルミニウム 1.8質量部
イオン交換水 600質量部
【0193】
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー「ウルトラタラックス(登録商標)T50」(IKA社製)を用いて混合し、分散した。その後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら55℃まで加熱した。55℃で30分間保持した後、溶液中に体積基準におけるメジアン径(D50)が4.8μmの凝集粒子が生成していることを確認した。
【0194】
さらに加熱用オイルバスの温度を上げて56℃で2時間保持すると、体積基準におけるメジアン径(D50)は5.9μmとなった。
【0195】
その後、系内に1mol/Lの水酸化ナトリウムを追加して系のpHを5.0に調整した。その後、ステンレス製フラスコを、磁気シールを用いて密閉し、撹拌を継続しながら98℃まで加熱した。6時間撹拌を継続することによりトナーバインダー粒子間の融着(融合)を完了させ、トナー母体粒子分散液を調製した。分散液中のトナー母体粒子の体積基準におけるメジアン径(D50)は、6.0μmであった。
【0196】
<洗浄・乾燥工程>
トナー母体粒子分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械販売株式会社製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。
【0197】
該ウェットケーキを、上記のバスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄した。その後「フラッシュジェットドライヤー」(株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥し、トナー母体粒子1を得た。
【0198】
<トナー母体粒子2~14の調製>
トナー母体粒子1の調製において、トナーバインダー粒子分散液1をそれぞれトナーバインダー粒子分散液2~15に変更した以外は同様にして、トナー母体粒子2~15を調製した。
【0199】
<トナー母体粒子の外添剤処理>
上記で得られたトナー母体粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)を1質量部、及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)を0.3質量部添加した。そして、ヘンシェルミキサー(登録商標)により混合して外添剤処理を行い、トナー1~15を製造した。
【0200】
[二成分現像剤の調製]
以下の成分を、水平撹拌羽根式高速撹拌装置に入れ、撹拌羽根の周速:8m/s、温度:30℃の条件で15分間混合した。
フェライト粒子(体積基準のメジアン径:50μm(パウダーテック株式会社製))
100質量部
メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂(一次粒子の体積基準のメジアン径:85nm) 4質量部
【0201】
次いで、系を120℃まで昇温して、撹拌を4時間継続した。その後、系を冷却し、200メッシュの篩を用いてメチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂の破片を除去した。これにより、樹脂被覆キャリアを作製した。
【0202】
この樹脂被覆キャリアを、上記のトナー1~15の各々に、トナーとキャリアとの合計質量に対してトナーの濃度が7質量%になるよう混合し、二成分現像剤1~15を調製した。
【0203】
【表2】
【0204】
【表3】
【0205】
【表4】
【0206】
[評価]
二成分現像剤1~15を用いて、下記のとおり定着性と帯電性を評価した。評価結果は表II~VIIに示すとおりである。
【0207】
(1)定着性
画像形成装置として、市販の複合機「bizhub PRO C6500」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)を用いた。この装置に現像剤として、上記二成分現像剤を搭載した。そして、熱ロール定着方式の定着手段における定着加熱部材の表面温度を、80~150℃の範囲において5℃刻みで変更した。各温度について、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、画像支持体として秤量350g/mの厚紙を用いて画像形成を行い、画像濃度が0.8のベタ画像を可視画像として得た。その後、定着ベタ画像を折り機を用いて折り、これに0.35MPaの空気を吹きつけた。折り目の状態を、画像濃度の保持率にて下記の評価基準で5段階に評価し、ランク3の定着温度を最低定着温度とした。ランク3レベルを示す最低定着温度が130℃以下であれば、充分な低温定着性を示す。
【0208】
〔評価基準〕
ランク5:画像濃度の保持率が90%以上
ランク4:画像濃度の保持率が75%以上90未満
ランク3:画像濃度の保持率が60%以上75%未満
ランク2:画像濃度の保持率が45%以上60%未満
ランク1:画像濃度の保持率が45%未満
【0209】
(2)帯電性
トナーの帯電量測定するにあたって、図1に示す装置を用いて測定した。
まず、精密天秤で計量した現像剤1gを導電性スリーブ(31)の表面全体に均一になるように乗せた。バイアス電源(33)からスリーブ(31)に2kVの電圧を供給すると共に、導電性スリーブ(31)内に設けられたマグネットロール(32)の回転数を1000rpmにした。この状態で30秒間放置して、トナーを円筒電極(34)に収集した。30秒後に円筒電極(34)の電位Vmを読み取ると共に、トナーの電荷量を求めた。さらに収集したトナーの質量を精密天秤で測定し、平均帯電量を求めた。平均帯電量を混合時間(振とう機(ヤヨイ式 New-YS)を用いて振り角30°、振とう数200ストローク/minで10分間混合)で割った値を帯電性指標とした。
帯電性指標が6.5μC/g/min以上であれば、高速なプリント出力時においても、問題のない十分な帯電量を示す。
【0210】
上記の評価結果から、一般式(1)で表される構造単位を有する樹脂を含有する本発明のトナーは、比較例と比べて定着性及び帯電性が良好であることが分かる。
【0211】
また、このことから、一般式(1)で表される構造単位を有する本発明の樹脂は、熱的特性及び電気的特性に優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0212】
31 導電性スリーブ
32 マグネットロール
33 バイアス電源
34 円筒電極
図1