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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098758
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/07 20060101AFI20240717BHJP
   H03M 1/12 20060101ALI20240717BHJP
   H03M 1/08 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H02M3/07
H03M1/12 A
H03M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002431
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】上原 弘大
【テーマコード(参考)】
5H730
5J022
【Fターム(参考)】
5H730AA15
5H730AS04
5H730BB02
5H730BB57
5H730FG01
5J022AA01
5J022BA02
5J022BA10
5J022CA10
5J022CE01
5J022CF08
5J022CG01
(57)【要約】
【課題】クロック信号のエッジに起因するノイズがA/D変換部の動作に影響を及ぼすことを抑制しつつチャージポンプ回路の回路面積を小さく抑える。
【解決手段】クロック生成回路8は、チャージポンプ回路9のクロック信号として、最も出力ノード側に設けられた最終段のキャパシタ以外のキャパシタである他のキャパシタのうち少なくともいずれか1つに与える第1クロック信号CLK1と、少なくとも最後段のキャパシタに与えるものであり且つ第1クロック信号CLK1よりも周波数が低い第2クロック信号CLK2と、を生成する。AFE7は、第2クロック信号CLK2が第1レベルから第2レベルへと変化した後であり、且つ、その後に第2クロック信号CLK2が第2レベルから第1レベルへと変化する前のタイミングで入力信号をサンプリングするサンプリング動作を終了するようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ノード(Ni)を介して入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧を生成するとともに出力ノード(No)を介して前記昇圧電圧を出力するものであり、前記入力ノードと前記出力ノードとの間に直列に接続された複数のスイッチング素子(D1~D6)と、前記スイッチング素子同士が接続された各接続ノード(N1~N5)に一方の端子が接続されるとともに2値のクロック信号が他方の端子に与えられる複数のキャパシタ(C1~C6)と、を備えたチャージポンプ回路(9)と、
入力信号をサンプリングしてA/D変換するA/D変換部(7)と、
前記クロック信号を生成するクロック生成回路(8)と、
を備え、
前記複数のキャパシタのうち、最も前記出力ノード側に設けられたキャパシタ(C6)を最後段のキャパシタとするとともに、前記最後段のキャパシタ以外のキャパシタ(C1~C5)を他のキャパシタとすると、
前記クロック生成回路は、前記クロック信号として、前記他のキャパシタのうち少なくともいずれか1つに与える第1クロック信号と、少なくとも前記最後段のキャパシタに与えるものであり且つ前記第1クロック信号よりも周波数が低い第2クロック信号と、を生成し、
前記A/D変換部は、前記第2クロック信号が第1レベルから第2レベルへと変化した後であり、且つ、その後に前記第2クロック信号が前記第2レベルから前記第1レベルへと変化する前のタイミングで前記入力信号をサンプリングするサンプリング動作を終了するようになっている半導体装置。
【請求項2】
前記A/D変換部は、前記サンプリング動作が行われるサンプリング期間の後半における所定のタイミングから前記サンプリング動作が終了する終了タイミングまでの変化禁止期間に、前記第2クロック信号のレベルが変化しないように前記サンプリング動作を行うようになっている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
さらに、前記チャージポンプ回路から出力される前記昇圧電圧の供給を受けて動作するマルチプレクサ(6)を備え、
前記入力電圧は、複数の電池セル(Cb)が直列接続された構成の組電池(2)の電圧であり、
前記マルチプレクサは、前記複数の電池セルの電圧を入力し、それら入力された電圧のうちいずれかの電圧を選択して出力するようになっており、
前記A/D変換部は、前記マルチプレクサから出力される電圧を前記入力信号として入力するとともに前記入力信号をサンプリングしてA/D変換するようになっている請求項1または2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ回路およびA/D変換部を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のチャージポンプ回路では、複数のキャパシタのそれぞれの端子に対して同一のクロック信号を与える構成が一般的である。このような従来のチャージポンプ回路と、入力信号をサンプリングしてA/D変換するA/D変換部と、を備えた半導体装置を構成する場合、次のような問題が生じるおそれがある。すなわち、チャージポンプ回路について、所望する電流能力を確保しつつ小型化を図るためにクロック信号の周波数を高めることが考えられる。
【0003】
しかし、クロック信号の周波数をA/D変換器におけるサンプリング周波数より高くすると、クロック信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジとA/D変換部によるサンプリングのタイミングとが一致または近接する可能性が高まる。そうすると、A/D変換部の入力信号にクロック信号のエッジに起因するノイズが混入してしまい、A/D変換部の動作の精度、ひいてはA/D変換部から出力されるデジタル信号を用いて行われる各種の処理の精度が低下する。
【0004】
このような事情から、従来のチャージポンプ回路とA/D変換部とを備えた半導体装置においては、クロック信号の周波数をA/D変換部におけるサンプリング周波数より低い周波数にする必要があった。このようにクロック信号の周波数に制約があることから、従来の構成では、チャージポンプ回路について、所望する電流能力を確保するためにはキャパシタの静電容量を大きくせざるを得ず、その結果、回路面積が大きくなるという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1には、サンプルホールド回路およびチャージポンプ回路を備えた半導体装置において、チャージポンプ回路のスイッチング動作がサンプルホールド回路に影響を及ぼすことを抑制するための技術が開示されている。以下、特許文献1に記載された従来技術のことを第1従来技術と称することとする。第1従来技術では、チャージポンプ回路の動作クロックとして、2つのクロック信号である第一遅延クロック信号および第二遅延クロック信号を用いるようになっている。
【0006】
第一遅延クロック信号および第二遅延クロック信号は、いずれもサンプルホールド回路の動作クロック信号に同期した信号であるとともに動作クロック信号に対して同一時間だけ遅延させた信号である。また、第一遅延クロック信号は、動作クロック信号と同じ周波数を有し、第二遅延クロック信号は、動作クロック信号のn倍を周波数を有する。このような構成の第1従来技術によれば、チャージポンプ回路のクロック信号のエッジに起因するノイズの発生タイミングと、サンプルホールド回路の動作タイミングと、にずれが生じることから、ノイズの影響を受けることなくサンプリングを行うことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-41922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1従来技術では、チャージポンプ回路の通常の動作クロックとしては、サンプルホールド回路の動作クロックと同一の周波数を有する第一遅延クロック信号が用いられている。そのため、第1従来技術では、クロック信号のエッジに起因するノイズがサンプルホールド回路の動作に影響を及ぼすことは抑制できるものの、チャージポンプ回路の小型化を実現することは困難であった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クロック信号のエッジに起因するノイズがA/D変換部の動作に影響を及ぼすことを抑制しつつチャージポンプ回路の回路面積を小さく抑えることができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の半導体装置は、チャージポンプ回路(9)と、A/D変換部(7)と、クロック生成回路(8)と、を備える。前記チャージポンプ回路は、入力ノード(Ni)を介して入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧を生成するとともに出力ノード(No)を介して前記昇圧電圧を出力するものである。前記チャージポンプ回路は、前記入力ノードと前記出力ノードとの間に直列に接続された複数のスイッチング素子(D1~D6)と、前記スイッチング素子同士が接続された各接続ノード(N1~N5)に一方の端子が接続されるとともに2値のクロック信号が他方の端子に与えられる複数のキャパシタ(C1~C6)と、を備える。前記A/D変換部は、入力信号をサンプリングしてA/D変換する。前記クロック生成回路は、前記クロック信号を生成する。
【0011】
ここで、前記複数のキャパシタのうち、最も前記出力ノード側に設けられたキャパシタ(C6)を最後段のキャパシタとするとともに、前記最後段のキャパシタ以外のキャパシタ(C1~C5)を他のキャパシタとする。そうすると、前記クロック生成回路は、前記クロック信号として、前記他のキャパシタのうち少なくともいずれか1つに与える第1クロック信号と、少なくとも前記最後段のキャパシタに与えるものであり且つ前記第1クロック信号よりも周波数が低い第2クロック信号と、を生成する。前記A/D変換器は、前記第2クロック信号が第1レベルから第2レベルへと変化した後であり、且つ、その後に前記第2クロック信号が前記第2レベルから前記第1レベルへと変化する前のタイミングで前記入力信号をサンプリングするサンプリング動作を終了するようになっている。
【0012】
上記構成によれば、少なくともチャージポンプ回路の最終段のキャパシタに与えられる第2クロック信号のエッジとA/D変換部によるサンプリングのタイミングとが一致または近接する可能性を低く抑えることができ、その結果、第2クロック信号のエッジに起因するノイズ、言い換えるとチャージポンプ回路の最終段のスイッチングに起因するノイズがA/D変換部の動作に及ぼす影響が低減される。
【0013】
また、この場合、チャージポンプ回路の他のキャパシタに与えられる第1クロック信号の周波数を第2クロック信号の周波数に比べて高めることが可能となるため、その分だけキャパシタの静電容量が小さく抑えられ、その結果、チャージポンプ回路の回路面積が低減される。このように、上記構成によれば、クロック信号のエッジに起因するノイズがA/D変換部の動作に影響を及ぼすことを抑制しつつチャージポンプ回路の回路面積を小さく抑えることができるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る電池監視装置の構成を模式的に示す図
図2】一実施形態に係るチャージポンプ回路の具体的な構成例を示す図
図3】一実施形態に係る各部の動作タイミングの具体例を示すタイミングチャート
図4】一実施形態に係るサンプリング期間の前半のタイミングでクロック信号のエッジに起因するノイズが重畳した場合における各部の動作波形を模式的に示す図
図5】一実施形態に係るサンプリング期間の後半のタイミングでクロック信号のエッジに起因するノイズが重畳した場合における各部の動作波形を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、チャージポンプ回路およびA/D変換部を備えた半導体装置の実施形態について図面を参照して説明する。
<全体構成>
図1に示すように、本実施形態の電池監視装置1は、例えば自動車などの車両に搭載されるものであり、組電池2の電圧などの各種状態を検出して組電池2の状態を監視する装置である。
【0016】
電池監視装置1は、電池監視のための各種の動作を行う回路が集積化された集積回路である電池監視IC3と、電池監視IC3の外部に設けられる複数の外付けの素子と、を備えている。なお、ICは、Integrated Circuitの略称である。本実施形態において、電池監視IC3は、半導体装置の一例である。
【0017】
組電池2は、例えば自動車などの車両に搭載されるものであり、一対の直流電源線L1、L2間に、複数個、例えば24個の電池セルCbが多段に直列接続された構成となっている。この場合、電池セルCbは、例えばリチウムイオン電池などの二次電池、燃料電池などである。なお、図1では、24個の電池セルCbのうち4個の電池セルCbが示されており、それら4個の電池セルCbを区別するために、符号の末尾に数字を付している。
【0018】
この数字は、組電池2における電池セルCbの配置に対応するものであり、最も低電位側に配置される電池セルCbには1が付与され、高電位側に進むにつれて2、3、4、…と付与される数字が大きくなってゆき、最も高電位側に配置される電池セルCbには24が付与される。したがって、図1には、最も低電位側に配置される電池セルCb1と、2番目に低電位側に配置される電池セルCb2と、2番目に高電位側に配置される電池セルCb23と、最も高電位側に配置される電池セルCb24と、が示されている。
【0019】
上記した各電池セルCbのうち電池セルCb1、Cb2、Cb23、Cb24のそれぞれに対応して電池監視装置1に設けられる各構成についても、符号の末尾に同様の数字を付して区別することがある。ただし、これら各構成について、区別する必要がない場合には、末尾の符号を省略して総称することとする。上記構成では、電池セルCbには、コモンモード電圧が重畳されている。このコモンモード電圧は、組電池2の上段側、つまり高電位側に接続される電池セルCbほど高くなり、その最大値は例えば数百ボルト程度の比較的高い電圧となる。
【0020】
<外付け素子の構成>
まず、電池監視IC3の外部に設けられる外付けの素子の構成について説明する。電池セルCb24の高電位側端子は、抵抗RBを介して接続端子BLKに接続されているとともに、抵抗RBを介して接続端子PS25に接続されている。接続端子BLKは、電池監視IC3の監視対象となる複数の電池セルCbが直列接続された構成の組電池2の電圧Vaが与えられる端子である。
【0021】
電池セルCb24の高電位側端子および低電位側端子の間には、抵抗RSおよびキャパシタCSが直列接続されている。抵抗RSおよびキャパシタCSの相互接続ノードであるノードNaは、接続端子PV24に接続されている。電池セルCb24の低電位側端子および電池セルCb23の高電位側端子は、抵抗RBを介して接続端子PS24に接続されている。
【0022】
一部の図示は省略しているが、電池セルCb23の高電位側端子および低電位側端子の間には、抵抗RSおよびキャパシタCSが直列接続されている。抵抗RSおよびキャパシタCSの相互接続ノードであるノードNaは、接続端子PV23に接続されている。図示は省略しているが、電池セルCb23の低電位側端子および図示しない電池セルCb22の高電位側端子は、抵抗RBを介して接続端子PS23に接続されている。
【0023】
図示しない電池セルCb3の低電位側端子および電池セルCb2の高電位側端子は、抵抗RBを介して接続端子PS3に接続されている。電池セルCb2の高電位側端子および低電位側端子の間には、抵抗RSおよびキャパシタCSが直列接続されている。抵抗RSおよびキャパシタCSの相互接続ノードであるノードNaは、接続端子PV2に接続されている。
【0024】
電池セルCb2の低電位側端子および電池セルCb1の高電位側端子は、抵抗RBを介して接続端子PS2に接続されている。電池セルCb1の高電位側端子および低電位側端子の間には、抵抗RSおよびキャパシタCSが直列接続されている。抵抗RSおよびキャパシタCSの相互接続ノードであるノードNaは、接続端子PV1に接続されている。電池セルCb1の低電位側端子は、抵抗RBを介して接続端子PS1に接続されている。
【0025】
上記構成では、各電池セルCbのそれぞれに対応する抵抗RSおよびキャパシタCSにより、低域通過フィルタであるフィルタ4が構成されている。つまり、上記構成では、各電池セルCbのそれぞれに対応するようにフィルタ4が設けられている。抵抗RBは、均等化の際に電池セルCbを放電するための放電用抵抗である。抵抗RBは、均等化時の電流制限抵抗として機能するため、その抵抗値は、フィルタ4を構成する抵抗RSの抵抗値に比べて非常に小さい値、具体的には例えば数十Ω程度となっている。
【0026】
<電池監視ICの内部の構成>
続いて、電池監視IC3の内部の構成について説明する。電池監視IC3は、いずれも図示しない均等化スイッチおよび電池監視IC3の動作全般を制御する制御部5を備えている。上記した均等化スイッチは、複数の電池セルCbのそれぞれに対応して設けられている。均等化スイッチは、例えばMOSトランジスタにより構成されており、抵抗RBとともに放電回路を構成する。均等化スイッチのオンオフは、制御部5により制御される。電池均等化の処理では、各電池セルCbの電圧が、最も低い電池セルCbの電圧と同程度の電圧となるように各放電回路の動作が制御される。
【0027】
電池監視IC3は、マルチプレクサ6、アナログフロントエンド7、クロック生成回路8およびチャージポンプ回路9を備えている。なお、以下の説明および図1では、マルチプレクサのことをMUXと称するとともに、アナログフロントエンドのことをAFEと称することがある。MUX6は、接続端子PV1~PV24のそれぞれに対応する複数のスイッチSVおよび接続端子PS1~PS25のそれぞれに対応する複数のスイッチSSを備えている。スイッチSV、SSは、例えばMOSトランジスタにより構成されている。
【0028】
複数のスイッチSVの各一方の端子は、対応する接続端子PVにそれぞれ接続されている。具体的には、スイッチSV24、SV23、SV2、SV1の各一方の端子は、接続端子PV24、PV23、PV2、PV1のそれぞれに接続されている。複数のスイッチSVの各他方の端子は、第1出力線Lo1に接続されている。具体的には、スイッチSV24、SV23、SV2、SV1の各他方の端子は、第1出力線Lo1に接続されている。
【0029】
複数のスイッチSSの各一方の端子は、対応する接続端子PSにそれぞれ接続されている。具体的には、スイッチSS25、SS24、SS3、SS2、SS1の各一方の端子は、接続端子PS25、PS24、PS3、PS2、PS1のそれぞれに接続されている。複数のスイッチSSの各他方の端子は、第2出力線Lo2に接続されている。具体的には、スイッチSS25、SS24、SS3、SS2、SS1の各他方の端子は、第2出力線Lo2に接続されている。
【0030】
MUX6は、接続端子PV1~PV24、PS1~PS25の各電圧を入力し、スイッチSV、SSのオンとオフの切り替えにより、それら入力された電圧のうち検出対象の電池セルCbの電圧を検出するために必要となる2つの電圧を選択的に出力する。言い換えると、MUX6は、複数の電池セルCbの電圧を入力し、それら入力された電圧のうちいずれかの電圧を選択して出力するようになっている。このようなMUX6による選択動作、つまりスイッチSV、SSのオンとオフの切り替えは、制御部5により制御される。MUX6は、チャージポンプ回路9から出力される電圧Vbの供給を受けて動作する。
【0031】
AFE7は、入力信号をサンプリングしてA/D変換するA/D変換部の一例である。AFE7は、差動構成のサンプルホールド回路10および差動入力形式のA/D変換器11を備えている。なお、以下の説明および図1などでは、サンプルホールドのことをS/Hと称するとともに、A/D変換器のことをADCと称することがある。S/H回路10は、MUX6から出力される電圧を入力信号として入力するとともに、その入力信号をサンプリングする。ADC11は、S/H回路10によりサンプルホールドされた信号をA/D変換する。
【0032】
このような構成により、AFE7は、MUX6から出力される電圧を入力信号として入力するとともに入力信号をサンプリングしてA/D変換するようになっている。AFE7は、クロック生成回路8から出力される第3クロック信号CLK3をクロックとして動作する。AFE7は、A/D変換の結果として得られるデジタル信号を制御部5に出力する。制御部5は、MUX6、AFE7などの動作を制御するとともに、AFE7から出力されるデジタル信号に基づいて複数の電池セルCbのそれぞれの電圧を時分割で検出する。
【0033】
クロック生成回路8は、いずれも2値の第1クロック信号CLK1、第2クロック信号CLK2および第3クロック信号CLK3を生成する。なお、以下の説明では、第1クロック信号CLK1、第2クロック信号CLK2および第3クロック信号CLK3のことを、信号CLK1、信号CLK2および信号CLK3と省略することがある。信号CLK1、CLK2は、チャージポンプ回路9に与えられ、信号CLK3は、AFE7に与えられる。
【0034】
この場合、信号CLK2は、信号CLK1よりも周波数が低い信号となっている。また、信号CLK3は、信号CLK2と周波数が同じ信号となっている。つまり、この場合、信号CLK1、CLK2、CLK3の各周波数f1、f2、f3は、下記(1)式に示すような関係となっている。
f1>f2=f3 …(1)
【0035】
チャージポンプ回路9は、入力ノードを介して入力される入力電圧を昇圧した昇圧電圧である電圧Vbを生成するとともに出力ノードを介して電圧Vbを出力する。この場合、入力電圧は、組電池2の電圧Vaとなっている。チャージポンプ回路9は、クロック生成回路8から出力される第1クロック信号CLK1および第2クロック信号CLK2をクロックとして動作する。
【0036】
<チャージポンプ回路の具体的な構成例>
チャージポンプ回路9の具体的な構成としては、例えば図2に示すような構成例が挙げられる。図2に示すように、本構成例のチャージポンプ回路9は、ダイオードD1~D6、キャパシタC1~C7、インバータ21、バッファ22、23などを備えている。この場合、チャージポンプ回路9は、入力ノードであるノードNiを介して電圧Vaを入力するとともに、出力ノードであるノードNoを介して電圧Vbを出力する構成となっている。
【0037】
インバータ21は、信号CLK1を入力するとともに、信号CLK1とは論理が逆の信号、つまり信号CLK1を反転した信号を出力する。バッファ22は、信号CLK1を入力するとともに、信号CLK1と同じ論理の信号を出力する。バッファ23は、信号CLK2を入力するとともに、信号CLK2と同じ論理の信号を出力する。
【0038】
ダイオードD1、D2、D3、D4、D5およびD6は、ノードNiとノードNoとの間に、この順番で順方向に直列に接続されている。本構成例において、ダイオードD1~D6は、入力ノードと出力ノードとの間に直列接続された複数のスイッチング素子の一例である。キャパシタC1の一方の端子はノードNiに接続され、その他方の端子はインバータ21の出力端子に接続されている。キャパシタC2の一方の端子はダイオードD1、D2同士が接続された接続ノードであるノードN1に接続され、その他方の端子はバッファ22の出力端子に接続されている。キャパシタC3の一方の端子はダイオードD2、D3同士が接続された接続ノードであるノードN2に接続され、その他方の端子はインバータ21の出力端子に接続されている。
【0039】
キャパシタC4の一方の端子はダイオードD3、D4同士が接続された接続ノードであるノードN3に接続され、その他方の端子はバッファ22の出力端子に接続されている。キャパシタC5の一方の端子はダイオードD4、D5同士が接続された接続ノードであるノードN4に接続され、その他方の端子はインバータ21の出力端子に接続されている。キャパシタC6の一方の端子はダイオードD5、D6同士が接続された接続ノードであるノードN5に接続され、その他方の端子はバッファ23の出力端子に接続されている。キャパシタC7の一方の端子はノードNoに接続され、その他方の端子は回路の基準電位が与えられるグランドに接続されている。
【0040】
本構成例において、キャパシタC1~C6は、スイッチング素子同士が接続された各接続ノードに一方の端子が接続されるとともに2値のクロック信号が他方の端子に与えられる複数のキャパシタの一例である。上記構成では、キャパシタC1~C5には、信号CLK1または信号CLK1の反転信号が与えられ、キャパシタC6には、信号CLK2が与えられる。なお、キャパシタC7は、ノードNoから出力される電圧Vbを平滑することなどを目的として設けられたものである。
【0041】
キャパシタC1~C6のうち、最もノードNo側に設けられたキャパシタC6を最終段のキャパシタとするとともに、最終段のキャパシタ以外のキャパシタC1~C5を他のキャパシタとすると、他のキャパシタには信号CLK1または信号CLK1の反転信号が与えられ、最終段のキャパシタには信号CLK2が与えられている。つまり、クロック生成回路8は、チャージポンプ回路9のクロック信号として、他のキャパシタに与える信号CLK1と、最後段のキャパシタに与える信号CLK2を生成するようになっている。
【0042】
次に、上記構成における各部の動作タイミングについて説明する。なお、以下の説明では、信号CLK1、CLK2などの2値の信号について、相対的に高いレベルをハイレベルと称するとともに、相対的に低いレベルをロウレベルと称することとする。本実施形態では、信号CLK1、CLK2などの2値の信号について、ハイレベルおよびロウレベルのうち一方が第1レベルに相当するとともに、ハイレベルおよびロウレベルのうち他方が第2レベルに相当する。
【0043】
AFE7は、信号CLK2が第1レベルから第2レベルへと変化した後であり、且つ、その後に信号CLK2が第2レベルから第1レベルへと変化する前のタイミングで入力信号をサンプリングするサンプリング動作を終了するようになっている。言い換えると、AFE7は、サンプリング動作が行われるサンプリング期間の後半における所定のタイミングからサンプリング動作が終了する終了タイミングまでの変化禁止期間に、信号CLK2のレベルが変化しないようにサンプリング動作を行うようになっている。
【0044】
<各部の動作タイミングの具体例>
このような各部の動作タイミングの具体例としては、例えば図3に示すようなタイミング例が挙げられる。図3などのタイミングチャートでは、AFE7においてサンプリング動作が行われるサンプリング期間を「Sample」と表すとともに、AFE7においてホールド動作が行われるホールド期間を「Hold」と表している。AFE7は、信号CLK3の1周期毎にサンプリング動作およびホールド動作を交互に行うようになっている。つまり、サンプリング期間およびホールド期間のそれぞれの長さは、信号CLK3の1周期の長さと同じになっている。AFE7では、信号CLK3の1周期毎にサンプリング期間およびホールド期間が交互に繰り返されるようになっている。
【0045】
図3に示すように、本タイミング例では、AFE7は、信号CLK2がハイレベルからロウレベルへと変化した後であり、且つ、その後に信号CLK2がロウレベルからハイレベルへと変化する前のタイミングでサンプリング動作を終了するようになっている。言い換えると、AFE7は、サンプリング期間の後半における所定のタイミングtaからサンプリング動作が終了する終了タイミングtbまでの変化禁止期間Taに、信号CLK2のレベルが変化しないようにサンプリング動作を行うようになっている。
【0046】
タイミングtaは、次のような考え方に基づいて設定することができる。なお、以下の説明では、信号CLK2などの2値の信号がロウレベルからハイレベルに変化するタイミングを立ち上がりエッジと称することがあるとともに、ハイレベルからロウレベルに変化するタイミングを立ち下がりエッジと称することがある。また、以下の説明では、立ち上がりエッジおよび立ち下がりをエッジと総称することがある。
【0047】
チャージポンプ回路9から出力される電圧Vbには、その最終段におけるスイッチングを制御する信号CLK2の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの影響によるノイズ、つまり信号CLK2のエッジに起因するノイズが重畳する。電圧Vbに重畳するノイズは、直接的にはMUX6の動作に影響を及ぼすが、間接的にAFE7の動作にも影響を及ぼすことになる。その理由は、次の通りである。
【0048】
まず、上記構成では、電池セルCbの電圧が、MUX6を介してAFE7に入力されるようになっている。そのため、MUX6を経由する際に電池セルCbの電圧にノイズが重畳する可能性があり、そうすると、AFE7の動作にもノイズの影響が及ぶことになり得る。また、上記構成では、AFE7は、チャージポンプ回路9などと同一の電池監視IC3に搭載されている。そのため、電圧Vbに重畳するノイズが半導体基板などを介してAFE7に伝搬する可能性があり、そうすると、AFE7の動作にもノイズの影響が及ぶことになり得る。
【0049】
電圧Vbに重畳するノイズがAFE7によるサンプリング動作に影響を及ぼすと、電池セルCbの電圧検出の精度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、電圧Vbに重畳する信号CLK2のエッジに起因するノイズがAFE7によるサンプリング動作に影響を及ぼさないように、タイミングtaを設定するようになっている。まず、図4および図5に示すように、AFE7によるサンプリング動作では、終了タイミングtbよりも所定時間だけ前の時刻tcにおいてサンプリング値が期待値、つまり検出対象の電池セルCbの電圧に相当する値に収束することになる。
【0050】
そのため、図4に示すように、信号CLK2のエッジに起因するノイズが、時刻tcよりも十分に前のタイミング、例えばサンプリング期間の前半のタイミングで重畳した場合、そのノイズはサンプリング動作、ひいてはサンプリング値に影響を及ぼすことはない。したがって、この場合、AFE7において、サンプリング値が期待値に収束し、電池セルCbの電圧を精度良く検出することが可能となる。
【0051】
一方、図5に示すように、信号CLK2のエッジに起因するノイズが、時刻tcに近いタイミング、例えば時刻tcの直後のタイミングで重畳した場合、そのノイズはサンプリング動作、ひいてはサンプリング値に影響を及ぼすことになる。したがって、この場合、AFE7において、サンプリング値が期待値に収束せず、その結果、電池セルCbの電圧の検出結果に誤差が生じるおそれがある。
【0052】
このようなことから、タイミングtaは、仮にその時点で電圧Vbにノイズが重畳したとしても、AFE7においてサンプリング値が期待値に正しく収束することができるようなタイミングに設定する必要がある。すなわち、タイミングtaは、サンプリング期間の後半における時刻tcよりも所定のマージン時間だけ前の時点、例えばサンプリング期間の後半の開始直後のタイミングなどに設定することができる。この場合、サンプリング期間の後半の開始直後のタイミングから終了タイミングtbまでの期間が、前述した変化禁止期間Taとなる。
【0053】
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られる。
電池監視IC3は、AFE7、クロック生成回路8およびチャージポンプ回路9を備える。クロック生成回路8は、チャージポンプ回路9のクロック信号として、他のキャパシタに与える信号CLK1と、最後段のキャパシタに与えるものであり且つ信号CLK1よりも周波数が低い信号CLK2と、を生成する。AFE7は、信号CLK2がハイレベルからロウレベルへと変化した後であり、且つ、その後に信号CLK2がロウレベルからハイレベルへと変化する前のタイミングでサンプリング動作を終了するようになっている。
【0054】
言い換えると、AFE7は、サンプリング動作が行われるサンプリング期間の後半における所定のタイミングtaからサンプリング動作が終了する終了タイミングtbまでの変化禁止期間Taに、信号CLK2のレベルが変化しないようにサンプリング動作を行うようになっている。上記構成によれば、チャージポンプ回路9の最終段のキャパシタに与えられる信号CLK2のエッジとAFE7によるサンプリングのタイミングとが一致または近接する可能性を低く抑えることができ、その結果、信号CLK2のエッジに起因するノイズ、言い換えるとチャージポンプ回路9の最終段のスイッチングに起因するノイズがAFE7の動作に及ぼす影響を抑制することができる。
【0055】
また、この場合、チャージポンプ回路9の他のキャパシタであるキャパシタC1~C5に与えられる信号CLK1の周波数を最終段のキャパシタであるキャパシタC6に与えられる信号CLK2の周波数に比べて高めることが可能となるため、その分だけキャパシタC1~C5の静電容量が小さく抑えられ、その結果、チャージポンプ回路9の回路面積が低減される。このように、本実施形態によれば、クロック信号である信号CLK2のエッジに起因するノイズがAFE7の動作に影響を及ぼすことを抑制しつつチャージポンプ回路9の回路面積を小さく抑えることができるという優れた効果が得られる。
【0056】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0057】
チャージポンプ回路9は、複数のスイッチング素子としてダイオードD1~D6を採用した構成となっていたが、複数のスイッチング素子として、MOSトランジスタなど、各種の半導体スイッチング素子を採用することもできる。チャージポンプ回路9の段数、つまりスイッチング素子およびキャパシタの数は、上記実施形態で示したものに限らずともよく、2以上であればよい。
【0058】
つまり、チャージポンプ回路9は、ノードNiと出力ノードNoとの間に直列に接続された複数のスイッチング素子と、それらスイッチング素子同士が接続された各接続ノードに一方の端子が接続されるとともに2値のクロック信号が他方の端子に与えられる複数のキャパシタと、を備えた構成であればよい。このような構成であれば、上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0059】
チャージポンプ回路9のキャパシタC1~C6の他方の端子に与えられるクロック信号は、上記実施形態において示したものに限らずともよく、次のように変形することができる。すなわち、チャージポンプ回路9は、他のキャパシタであるキャパシタC1~C5のうち少なくともいずれか1つのキャパシタに信号CLK1が与えられるとともに、それ以外のキャパシタに信号CLK2または信号CLK1、CLK2とは異なる別のクロック信号が与えられていてもよい。
【0060】
つまり、チャージポンプ回路9は、他のキャパシタのうち少なくともいずれか1つに信号CLK1または信号CLK1の反転信号が与えられ、少なくとも最終段のキャパシタであるキャパシタC6に信号CLK2が与えられていてもよい。言い換えると、クロック生成回路8は、チャージポンプ回路9のクロック信号として、他のキャパシタのうち少なくともいずれか1つに与える信号CLK1と、少なくとも最後段のキャパシタに与えるものであり且つ信号CLK1よりも周波数が低い信号CLK2と、を生成するものであればよい。このような構成によっても、チャージポンプ回路9の他のキャパシタのうち信号CLK1が与えられるキャパシタの静電容量が小さく抑えられ、その結果、チャージポンプ回路9の回路面積が低減される。
【0061】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0062】
1…電池監視装置、2…組電池、3…電池監視IC、6…マルチプレクサ、7…アナログフロントエンド、8…クロック生成回路、9…チャージポンプ回路、C1~C6…キャパシタ、Cb…電池セル、D1~D6…ダイオード、N1~N5…ノード、Ni…ノード、No…ノード。
図1
図2
図3
図4
図5