(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098766
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】生地の湿潤冷却効果測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 25/00 20060101AFI20240717BHJP
G01N 33/36 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01N25/00 Z
G01N33/36 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002445
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】田島 和弥
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB12
2G040BA14
2G040BA26
2G040CA01
2G040CB02
2G040CB09
2G040CB12
2G040DA02
2G040DA12
2G040FA07
2G040GA05
2G040HA05
(57)【要約】
【課題】生地の湿潤冷却効果を的確に評価できる測定装置を提供する。
【解決手段】湿潤繊維生地22に通気して繊維生地の冷却効果を測定する装置1であって、本体空洞部3と、本体空洞部の後部に送風機構と、本体空洞部の前部に開口部を備え、開口部には繊維生地を挟んでセットする内側枠部材3及び外側枠部材4が合体可能であり、内側枠部材3及び外側枠部材4は中央部が窓部となっており、送風機構から開口部に向けて送風し、窓部の湿潤繊維生地22を通気させ、窓部の前側で湿潤繊維生地22の冷却性又は冷却温度が測定可能である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿潤繊維生地に通気して繊維生地の冷却性を測定する装置であって、
本体空洞部と、前記本体空洞部の後部に送風機構と、前記本体空洞部の前部に開口部を備え、
前記開口部には繊維生地を挟んでセットする内側枠部材及び外側枠部材が合体可能であり、
前記内側枠部材及び外側枠部材は中央部が窓部となっており、
前記送風機構から開口部に向けて送風し、前記窓部の湿潤繊維生地を通気させ、前記窓部の前側で湿潤繊維生地の冷却性又は冷却温度が測定可能であることを特徴とする湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【請求項2】
前記本体空洞部、前記内側枠部材及び前記外側枠部材から選ばれる少なくとも一つ枠部にはマグネットが埋め込まれており、前記内側枠部材と外側枠部材との間に生地を挟んでセットし、かつ前記マグネットにより前記内側枠部材と外側枠部材は前記本体空洞部の開口部に合体できる請求項1に記載の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【請求項3】
前記外側枠部材の厚さ5mm以上20mm以下である請求項1又は2に記載の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【請求項4】
前記本体空洞部、前記内側枠部材及び外側枠部材の横断面外形はいずれも矩形である請求項1又は2に記載の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【請求項5】
前記開口部から見て、外側枠部材の窓部は内側枠部材の窓部より周囲に広い部分がある請求項1又は2に記載の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【請求項6】
前記内側枠部材の直交する2辺の窓枠の外側は外側枠部材側に向けて突出しており、外側枠部材の2辺の窓枠を合体できる請求項1又は2に記載の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【請求項7】
前記外側枠部材は上辺が本体空洞部を構成する筒体に向かって突出した庇(ひさし)部となっている請求項1又は2に記載の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【請求項8】
前記測定装置は複数列並列に配置し、各列の間には遮蔽板を設け、複数の湿潤繊維生地の冷却効果の同時測定が可能である請求項1又は2に記載の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ衣類、暑い時期に着用する衣類等の生地の測定に好適な生地の湿潤冷却効果測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生地の通気度の測定はJIS L1096 8.27.1 A法のフラジール形法が一般的に使用されてきた。この方法は、生地組織の隙間を通る空気量(cm3/cm2・s)を求める方法である。特許文献1~2には、このフラジール形法で測定される初期通気度により、生地特性を特定することが記載されている。また、透湿防水性生地はJIS L1099 A-1法等が一般的であり、特許文献3には、この方法を使用することが記載されている。また、本発明者らは特許文献4において、乾燥生地と湿潤生地に可視ガスを通気させて通気性を測定することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-218708号公報
【特許文献2】特開2002-220759号公報
【特許文献3】特開2014-100843号公報
【特許文献4】特許第7137416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、猛暑や酷暑などといった過酷な暑熱環境においてもパフォーマンスや快適性を保つことができる新しい機能性素材などが開発されてきており、大量発汗状態において、生地を通って衣服内に取り込まれる空気を湿潤冷却することで、パフォーマンスおよび快適性を向上することができる機能性素材が近年開発された。しかし、生地を通過する空気がどのレベルまで湿潤冷却できているのかを的確に測定する評価装置は提案されていないのが実状である。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、生地の湿潤冷却効果を的確に評価できる測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、湿潤繊維生地に通気して繊維生地の冷却性を測定する装置であって、本体空洞部と、前記本体空洞部の後部に送風機構と、前記本体空洞部の前部に開口部を備え、前記開口部には繊維生地を挟んでセットする内側枠部材及び外側枠部材が合体可能であり、前記内側枠部材及び外側枠部材は中央部が窓部となっており、前記送風機構から開口部に向けて送風し、前記窓部の湿潤繊維生地を通気させ、前記窓部の前側で湿潤繊維生地の冷却性又は冷却温度が測定可能である湿潤繊維生地の冷却効果測定装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、湿潤繊維生地へ通気し、水の気化熱(蒸発潜熱)による通気温度の低下を測定することにより、湿潤繊維生地の冷却性又は冷却温度を的確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態の生地の湿潤冷却効果測定装置の正面側から見た模式的斜視図である。
【
図3】
図3は同、裏面側から見た模式的斜視図である。
【
図4】
図4Aは同、内側枠部材の模式的正面図、
図4Bは同、内側枠部材の模式的断面図、
図4Cは同、内側枠部材の模式的裏面図、
図4Dは同、外側枠部材の模式的正面図、
図4Eは同、外側枠部材の模式的断面図、
図4Fは同、外側枠部材の模式的裏面図である。
【
図5】
図5Aは同、内側枠部材と外側枠部材の間に生地サンプルを挟んで一体化する模式的組立図、
図5Bは組立後の模式的斜視図である。
【
図6】
図6Aは同、組立後の内側枠部材側から見た模式的正面図、
図6Bは同、組立後の外側枠部材側から見た模式的正面図である。
【
図7】
図7は同、生地サンプルに前方からスプレーで水滴を振りかけて湿潤させている状態を示す模式的斜視図である。
【
図8】
図8Aは同、人体の手で官能検査により湿潤冷却性測定方法を示す模式的斜視図、
図8Bは同、温度センサーにより湿潤冷却温度測定方法を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の湿潤繊維生地の冷却効果測定装置は、湿潤繊維生地に通気して水の気化熱(蒸発潜熱)による通気温度の低下を測定する。このため、本体空洞部と、本体空洞部の後部に送風機構と、本体空洞部の前部に開口部を備え、開口部には繊維生地を挟んでセットする内側枠部材及び外側枠部材が合体可能である。内側枠部材及び外側枠部材は中央部が窓部となっており、送風機構から開口部に向けて送風し、窓部の湿潤繊維生地を通気させ、窓部の前側で水の気化熱(蒸発潜熱)による通気温度の低下を測定する。
一例として、この測定装置は、本体空洞部と、本体空洞部の後部に外部環境に直結した送風機構と、本体空洞部の前部に開口部を備える。本体空洞部は、後部の送風機構から送られてくる風を開口部まで届ける機能がある。送風機構は一例としてモーターとファンで構成され、外部環境の空気を開口部まで送る。
以下において、「湿潤繊維生地」は単に「生地」又は「生地サンプル」と表現する場合もある。
【0010】
開口部には、本体空洞部に接する内側枠部材と、外気側に配置される外側枠部材が取り外し可能に合体できる。内側枠部材及び外側枠部材は中央部が窓部となっている。一例として、本体空洞部、内側枠部材及び外側枠部材から選ばれる少なくとも一つの枠部にはマグネットが埋め込まれており、内側枠部材と外側枠部材との間に生地を挟んでセットし、かつマグネットにより内側枠部材と外側枠部材は本体空洞部の開口部に合体できる。外側枠部材の厚さ(生地サンプルと外側枠部材の前端面との厚さ)は、5mm以上20mm以下であることが好ましく、6mm以上17mm以下であることがより好ましく、7mm以上15mm以下であることがさらに好ましい。厚さが薄すぎると、送風時に生地が外気側に多少膨らむ際に、生地に直接手(掌)や温度センサーが触れてしまうため、正確に測定することができない傾向となる。一方で、厚さが厚すぎると、生地を通過して冷やされた空気が、空間の空気になじんでいってしまい、冷却効果を正確に測定することができない傾向となる。
【0011】
マグネットは一例として、内側枠部材と外側枠部材の窓枠部分のそれぞれ4隅に埋め込む。マグネットの大きさは例えば直径8mm、高さ4mmの円柱状とする。また、マグネットは本体空洞部、内側枠部材及び外側枠部材のそれぞれの枠部に埋め込まれているのが好ましい。これにより、本体空洞部、内側枠部材及び外側枠部材の各接続部からの送風漏れを防止できる。マグネット以外にも、大枠と小枠の組み込み、ストッパー(一例として瓶と蓋のストッパー)等を使用できる。
【0012】
生地サンプルは予め湿潤させておいてもよいし、内側枠部材と外側枠部材との間にセットされた後の生地に、前方からスプレー、スポイトなどで水滴を振りかけて湿潤させてもよい。この状態で送風機構から開口部に向けて送風し、内側枠部材と外側枠部材との間にセットされた湿潤生地を通過させることにより、外側枠部材に接するか又は外側枠部材から所定の距離で生地の湿潤冷却性又は冷却温度が測定可能である。
【0013】
本発明の湿潤冷却効果測定装置の本体空洞部、内側枠部材及び外側枠部材の横断面外形はいずれも矩形であることが好ましい。好ましくは各横断面外形が正方形である。これにより、各部材の取り外しと合体が容易となる。
【0014】
開口部から見て、外側枠部材の窓部は内側枠部材の窓部より周囲に広い部分があるのが好ましい。好ましくは、内側枠部材の窓部は矩形であり、外側枠部材の窓部は内側枠部材の窓部より各辺が外側に張り出しているのが好ましい。張り出し長さは一例として5~15mm程度が好ましい。これにより、前方からスプレー、スポイトなどで水滴を振りかける際に、外側枠部材の張り出し部にも水滴を振りかけることができ、内側枠部材の窓部の部分の生地に均一に水滴を振りかけ、湿潤させることができる。内側枠部材の窓部の部分の生地に均一に湿潤させると、湿潤冷却性又は冷却温度が正確に測定できる。内側枠部材の窓部の部分の生地が不均一湿潤であると、送られてきた風が生地を均一に通過せず、正確な測定は困難となる。
【0015】
内側枠部材の直交する2辺の窓枠の外側は外側枠部材側に向けて突出しており、外側枠部材の2辺の窓枠を合体できることが好ましい。突出長さは一例として1~10mm程度が好ましい。これにより、外側枠部材に内側枠部材を両部材の窓部の位置を正確に合わせた状態で合体させるのが容易となる。
【0016】
外側枠部材は上辺が本体空洞部を構成する筒体に向かって突出した庇(ひさし)部となっていることが好ましい。庇(ひさし)部の長さは一例として5~20mm程度が好ましい。内側枠部材より2~10mm程度突出させるのが好ましい。これにより、外側枠部材に内側枠部材を両部材の窓部の位置を正確に合わせた状態で合体させ、かつ本体空洞部に合体させるのが容易となる。
【0017】
測定装置は空洞部を複数列並列に配置し、各列の間には遮蔽板を設け、複数の湿潤生地の冷却効果の同時測定が可能であることが好ましい。一例として2列並列に配置し、異なった繊維素材の生地を同時測定する。
本体空洞部、内側枠部材、外側枠部材及び遮蔽板は樹脂成形体とするのが好ましい。これにより、全体重量を軽くし、水滴がかかっても錆びることはなく、耐久性の高いものとなる。
【0018】
次に、湿潤冷却効果測定装置を用いた測定方法の一例を説明する。
(1)生地のセット
外側枠部材の上に生地サンプルを載せ、その上から内側枠部材を置く。そうするとマグネットの吸着力により、外側枠部材と内側枠部材の間に生地サンプルがセットできる。
(2)本体空洞部への合体
次に、生地サンプルがセットされた外側枠部材と内側枠部材を、外側枠部材の庇部が上となるようにして本体空洞部の開口部に近づける。そうするとマグネットの吸着力により、外側枠部材と内側枠部材は本体空洞部へ合体セットできる。
(3)生地サンプルの湿潤化
次に、生地サンプルの前方からスプレー、スポイトなどで水滴を振りかけ、生地サンプルを均一に湿潤化する。
(4)湿潤冷却効果測定
次に、送風機構から開口部に向けて送風し、内側枠部材と外側枠部材との間にセットされた湿潤生地を通過させ、外側枠部材に接するか又は外側枠部材から所定の距離で生地の湿潤冷却性又は冷却温度を測定する。温度センサーを配置すれば温度測定により冷却温度が定量測定できる。また、人体の手で官能検査すれば定性評価できる。
【0019】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1は本発明の一実施形態の生地の湿潤冷却効果測定装置1の正面側から見た模式的斜視図である。この湿潤冷却効果測定装置1は、本体空洞部2と、本体空洞部2の前部の開口部に内側枠部材3と外側枠部材4が基台6の上に配置されている。内側枠部材3と外側枠部材4の中央部は窓部5となっている。この測定装置は空洞部が2列並列に配置されている例であり、間に遮蔽板7がある。8は裏側にある送風機構のスイッチである。
図2は部分的組立図である。本体空洞部2の開口部9の内側4隅にはマグネット10a-10dが埋め込まれており、内側枠部材3と外側枠部材4の4隅にもマグネットが埋め込まれていることにより、分解と組み立てができる。
【0020】
図3は裏面側から見た模式的斜視図である。本体空洞部の後部にはモーターとファンで構成される送風機構11が配置されており、風を本体空洞部2の前部の開口部に送る。12はファンの安全保護のためのプロテクター、13はモーターに通電する電線、14はコンセントである。
【0021】
図4Aは内側枠部材3の模式的正面図、
図4Bは同、内側枠部材3の模式的断面図、
図4Cは同、内側枠部材3の模式的裏面図である。内側枠部材3の4隅にはマグネット15a-15dが埋め込まれている。内側枠部材3の直交する2辺の窓枠の外側は外側枠部材側に向けた突出部16,17があり、突出部16,17と外側枠部材の2辺の窓枠を正確に合わせた状態で合体できる。これにより、外側枠部材に内側枠部材を両部材の窓部の位置を正確に合わせた状態で合体させるのが容易となる。
図4Dは同、外側枠部材4の模式的正面図、
図4Eは同、外側枠部材4の模式的断面図、
図4Fは同、外側枠部材4の模式的裏面図である。外側枠部材4の4隅にはマグネット18a-18dが埋め込まれている。 外側枠部材4の上辺には本体空洞部を構成する筒体に向かって突出した庇(ひさし)部19がある。これにより、外側枠部材4に内側枠部材3を両部材の窓部の位置を正確に合わせた状態で合体させ、かつ本体空洞部に合体させた枠部材の窓部と空洞部の開口部の位置を正確に合わせた状態で合体させるのが容易となる。また、外側枠部材4の窓部20は内側枠部材3の窓部5より周囲に広い張り出し部21a-21dがある。これにより、前方からスプレー、スポイトなどで水滴を振りかける際に、張り出し部21a-21dにも水滴を振りかけることができ、内側枠部材の窓部4の生地に均一に水滴を振りかけ、湿潤させることができる。
【0022】
図5Aは内側枠部材3と外側枠部材4の間に生地サンプル22を挟んで一体化する模式的組立図、
図5Bは組立後の模式的斜視図である。
図6Aは組立後の内側枠部材3側から見た模式的正面図、
図6Bは組立後の外側枠部材4側から見た模式的正面図である。
図7は生地サンプル22に前方からスプレー23で水滴を振りかけて湿潤させている状態を示す模式的斜視図である。
図8Aは人体の手24で官能検査により湿潤冷却性測定方法を示す模式的斜視図、
図8Bは温度センサー25により温度を測定し、湿潤冷却温度を測定する方法を示す模式的斜視図である。すなわち、送風機構から開口部に向けて送風し、内側枠部材3と外側枠部材4との間にセットされた湿潤生地サンプル22を通過させることにより、外側枠部材4に接するか又は外側枠部材4から所定の距離で生地の湿潤冷却性又は冷却温度が測定できる。
【実施例0023】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
<湿潤冷却効果測定装置>
図1~
図8に示す湿潤冷却効果測定装置を用いた。各部材は次のとおりである。
(1)本体空洞部
外辺80mm、厚さ3mm、長さ100mmの断面が正方形の樹脂成形体とした。開口部の内側4隅にはマグネットが埋め込まれている。
(2)内側枠部材
外辺80mm、内辺50mm(窓部)、厚さ8mm、断面が正方形、直交する2辺が外側枠部材に向かって4mm突出させ、4隅にはマグネットが埋め込まれている樹脂成形体とした。
(3)外側枠部材
外辺80mm、内辺は内側枠部材の窓部に相当する部分より各辺外側に12mm突出させた。厚さ8mm、断面が正方形、上辺が本体空洞部に向かって13mm突出させ、4隅にはマグネットが埋め込まれている樹脂成形体とした。
(4)遮蔽板
奥行き135mm、高さ180mm、厚さ3mmの透明アクリル樹脂板を使用した。
(5)送風機構
・ファン寸法:タテ80mm、ヨコ80mm、奥行き25mm
・ファン効率:72m
3/h
・ファン種類:軸流
・ファン回転数:3400r.p.m
(6)本体空洞部の風速
サンプル生地をセットしない状態で生地セット部の外気側の風速は4.6m/sであった。風速センサーはホルトプラン合同会社製、HWS-19-ONEを使用した。
<測定方法>
(1)温度20.8℃、相対湿度30%RHの環境下で測定を実施した。
(2)生地セット部の中央部であって外側枠部材の接する位置に温度センサーを設置した。
(3)標準状態の生地を生地セット部にセットし、測定器本体に設置し、水分を充填したスポイトを使用して生地に飽和保水量を超える水滴を付与して湿潤した。
(4)送風機を稼働させ、風速4.6m/秒で送風し、湿潤した生地を通過した後の空気の温度を温度センサーにて測定した。湿潤した生地を通過する前の空気の温度は環境温度(室内温度)と同じである。
(5)被服用生地の湿潤時の冷却温度を下記数式にて算出した。
冷却温度(℃)=T
0-T
1
但し、T
0:環境温度(室内温度)、T
1:湿潤した生地を通過した後の空気の温度
<生地サンプル>
ポリエステルマルチフィラメント仮より加工糸、総繊度84decitex,フィラメント数72本、及び総繊度84decitex,フィラメント数48本の親水加工した糸のダブル丸編み生地を測定した。
【0024】
(実施例2)
生地サンプルとして、ポリエステルマルチフィラメント仮より加工糸、総繊度110decitex,フィラメント数72本の撥水加工した糸と、ポリエステルマルチフィラメント仮より加工糸、総繊度84decitex,フィラメント数72本、及び総繊度44decitex,フィラメント数36本の親水加工した糸のダブル丸編み生地を測定した以外は実施例1と同様に実施した。
【0025】
(実施例3)
生地サンプルとして、ポリエステルマルチフィラメント仮より加工糸、総繊度71decitex,フィラメント数48本の撥水加工した糸と、ポリエステルマルチフィラメント仮より加工糸、総繊度56decitex,フィラメント数36本の親水加工した糸のダブル丸編み生地を測定した以外は実施例1と同様に実施した。
以上の結果を表1に示す。
【0026】
【0027】
また、生地セット部の中央部であって外側枠部材の接する位置に手をかざし、官能検査をしたところ、実施例3の生地サンプルは最も冷感が高く、実施例1の生地サンプルは最も冷感が低く、実施例2の生地サンプルは中間の冷感であった。このことから、表1と合致する評価結果が得られた。
【0028】
次に、実施例品1及び3の各生地を用いてシャツを縫製し、着用試験を行った。着用試験は、9月から10月初旬の関西エリアにて、開発品および比較品を着用し運動。大量発汗時の着心地を官能検査(SD法、両極尺度、7段階)で評価した。被験者は健常な10~20代の日本人男性10名である。評点は、実施例1を着用時の感覚を基準(ふつう)にして評価した。モニターは、30分以上のランニングで行った。被験者は前記シャツより肌側には何も着用しなかった。
評価は、(1)通気感。(2)清涼感。(3)汗処理感で行い、評価基準は、-3(かなり悪い)、-2(悪い)、-1(やや悪い)、0(ふつう)、1(やや良い)、2(良い)、3(かなり良い)とした。
以上の結果を表2に示す。
【0029】
【0030】
以上の結果から、本実施例の湿潤冷却効果測定装置の冷却温度と、着用試験の通気感、清涼感、汗処理感はよく一致していた。このことから、本実施例の湿潤冷却効果測定装置は、水の気化熱(蒸発潜熱)による湿潤繊維生地の通気温度の低下を的確に測定することができることを確認できた。
本発明の湿潤冷却効果測定装置は、織物、編み物、不織布、組み物などの繊維生地の湿潤冷却効果を的確に評価でき、定量評価及び定性評価が可能である。また、試験室で測定できるのはもちろんであり、持ち運びも容易であることから店頭、展示会、競技場などでも測定できる。