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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098781
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】炊飯器および炊飯器システム
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A47J27/00 109B
A47J27/00 109M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002485
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱森 雅之
(72)【発明者】
【氏名】木村 智志
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 紀子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA40
4B055CD02
4B055CD73
4B055GA01
4B055GB10
4B055GB50
4B055GC22
4B055GD02
4B055GD05
4B055GD06
(57)【要約】
【課題】炊飯準備状態が所定時間経過した後で自動的に炊飯を開始する炊飯器を提供する。
【解決手段】本発明の炊飯器100では、情報端末73と通信可能な送受信手段74と、被炊飯物の炊飯を制御する炊飯制御手段81と、時間を計測する計時手段79と、を備え、計時手段79は、遠隔操作炊飯許可の信号を送出して被炊飯物の炊飯準備がされてからの炊飯準備時間としての経過時間を計測し、炊飯制御手段81は、経過時間が所定時間T未満のときに情報端末73からの遠隔操作での炊飯開始の信号を受信した場合には、当該遠隔操作での炊飯開始の信号により炊飯工程を開始し、情報端末73からの遠隔操作での炊飯開始の信号を受信しない場合には、所定時間T経過時に炊飯工程を開始する構成としている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置と通信可能な通信手段と、
被炊飯物の炊飯を制御する制御手段と、
時間を計測する計時手段と、を備え、
前記計時手段は、前記被炊飯物の炊飯準備がされてからの炊飯準備時間を計測し、
前記制御手段は前記炊飯準備時間が所定時間未満のときに、
前記外部装置からの炊飯開始指示を受信した場合には、前記炊飯開始指示により炊飯工程を開始し、
前記外部装置からの炊飯開始指示を受信しない場合には、前記所定時間経過時に前記炊飯工程を開始することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記炊飯工程の実施後に保温工程を開始することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記被炊飯物の温度を検知する温度検知手段を備え、
前記温度検知手段が検知した前記炊飯工程の開始前の前記被炊飯物の温度に基づいて、前記所定時間を変更することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記被炊飯物の種類に基づいて、前記所定時間を変更することを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記被炊飯物を収容する鍋内を減圧脱気する減圧脱気手段を備え、
前記減圧脱気手段は、前記保温工程中に前記減圧脱気を実行することを特徴とする請求項2に記載の炊飯器。
【請求項6】
外部装置と通信可能な通信手段と、
被炊飯物の炊飯を制御する制御手段と、
前記外部装置から炊飯に関する炊飯情報を受信する炊飯指示受付部と、
前記外部装置と炊飯器との距離情報を受信する距離情報受付部と、を備え、
前記制御手段は、前記炊飯指示受付部で前記炊飯情報を受信すると、前記距離情報受付部で受信した前記距離情報に基づいて、前記炊飯情報に基づいた炊飯制御を行うか否かを判断する炊飯可否判断部を備えることを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
外部装置と通信可能な通信手段と、
被炊飯物の炊飯を制御する制御手段と、
前記外部装置から炊飯に関する炊飯情報を受信する炊飯指示受付部と、
予約炊飯を受け付ける予約炊飯受付部と、を備え、
前記制御手段は、前記予約炊飯受付部により予約炊飯を受け付けた状態で、前記炊飯前に前記炊飯指示受付部が前記炊飯情報を受信すると、前記炊飯情報に基づいて炊飯制御を行なうことを特徴とする炊飯器。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の炊飯器と、前記外部装置と、を含む炊飯器システムであって、
前記外部装置は、前記炊飯器のユーザが操作する携帯端末であることを特徴とする炊飯器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報端末など他の外部機器と通信可能な炊飯器および炊飯器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような炊飯器として、情報端末により遠隔操作で炊飯を開始可能な炊飯器が知られており、例えば特許文献1では、ユーザが外部機器端末を操作することにより炊飯が開始されるものが開示されている。
【0003】
また例えば、引用文献2には、電気炊飯器と、インターネットを介して当該電気炊飯器にアクセスが可能な情報端末機器とを備え、当該情報端末機器にアプリケーションプログラムをダウンロードして、情報端末機器の表示や操作ボタンを用いて炊飯予約等の設定操作を行なうことができるものが開示されている。ユーザにより予約時間等の設定が完了すると設定情報がインターネットを介して電気炊飯器に送信され、電気炊飯器のマイクロコンピュータは、設定された予約時間に到達したことを検出すると、電気炊飯器の炊飯を開始させる制御を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-123569号公報
【特許文献1】特開2006-271460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、遠隔操作で炊飯や予約炊飯を開始する際にお米や水を鍋内に入れて炊飯準備がされて長時間が経過してから操作することが多いため、ユーザがうっかり遠隔操作を忘れてしまった場合や、外部機器端末や情報端末機器を忘れてしまった、バッテリー切れになってしまった、周囲で電波障害が発生してしまったなど、外部機器端末や情報端末機器でトラブルが発生して炊飯器本体や電気炊飯器の遠隔操作ができなくなった場合は、トラブルが解決するまで、またはユーザが帰宅するまで炊飯開始がされず、お米のひたしが長時間になってしまうことに起因して、鍋内の米や水などの材料が変質してしまう虞があった。
【0006】
また遠隔操作で炊飯を開始する際に、ユーザと炊飯器との距離があまりにも離れている場合は、ユーザが炊飯完了までに炊飯器のある自宅に到達することができずに炊飯完了から時間が経過してしまい、炊飯完了の時間と帰宅時間とが同時期でないと炊き立てのご飯が食べられないため、炊き立てのご飯が食べられない虞があった。
【0007】
またお米や水を鍋内に入れて予約した後、外出先などで予約内容を変更したい場合があるが、特許文献2の電気炊飯器では、情報端末機器を用いて遠隔操作で炊飯予約等の設定操作を行ない、予約炊飯を行なうことが開示されている一方で、予約内容を遠隔操作で変更することについては開示されていない。
【0008】
そこで本発明は、炊飯準備状態が所定時間経過した後で自動的に炊飯を開始する炊飯器を提供することを目的とする。
【0009】
また本発明は、炊飯器と外部機器との距離に基づく炊飯制御が可能な炊飯器を提供することを目的とする。
【0010】
また本発明は、開始前の予約内容を遠隔操作で変更可能な炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の炊飯器は、外部装置と通信可能な通信手段と、被炊飯物の炊飯を制御する制御手段と、時間を計測する計時手段と、を備え、前記計時手段は、前記被炊飯物の炊飯準備がされてからの炊飯準備時間を計測し、前記炊飯準備時間が所定時間未満のときに前記外部装置からの炊飯開始指示を受信した場合には、前記炊飯開始指示により炊飯工程を開始し、前記外部装置からの炊飯開始指示を受信しない場合には、前記所定時間経過時に前記炊飯工程を開始することを特徴とする。
【0012】
また本発明の炊飯器は、外部装置と通信可能な通信手段と、被炊飯物の炊飯を制御する制御手段と、前記外部装置から炊飯に関する炊飯情報を受信する炊飯指示受付部と、前記外部装置と炊飯器との距離情報を受信する距離情報受付部と、を備え、前記制御手段は、前記炊飯指示受付部で前記炊飯情報を受信すると、前記距離情報付部で受信した前記距離情報に基づいて、前記炊飯情報に基づいた炊飯制御を行うか否かを判断する炊飯可否判断部を備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明の炊飯器は、外部装置と通信可能な通信手段と、被炊飯物の炊飯を制御する制御手段と、前記外部装置から炊飯に関する炊飯情報を受信する炊飯指示受付部と、予約炊飯を受け付ける予約炊飯受付部と、を備え、前記制御手段は、前記予約炊飯受付部により予約炊飯を受け付けた状態で、前記炊飯前に前記炊飯指示受付部が前記炊飯情報を受信すると、前記炊飯情報に基づいて炊飯制御を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炊飯器によれば、所定時間が経過すると、遠隔操作や予約炊飯をすることなく炊飯が開始するので、お米のひたしが所定時間を超えることが無く、内釜内の材料の変質を抑制することができる。
【0015】
また本発明の炊飯器によれば、ユーザが所有する外部装置と炊飯器との距離情報に応じて炊飯開始の可否を判定するため、炊飯完了時間とユーザの帰宅時間との隔たりを抑制することができる。
【0016】
また本発明の炊飯器によれば、予約炊飯による被炊飯物の炊飯が開始されるまでは予約時間を変更することができるため、ユーザの利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態における炊飯器の縦断面図である。
図2】同上、炊飯器の上面図である。
図3】同上、電気的構成を示すブロック図である。
図4】同上、情報端末により遠隔操作を開始したときの流れを示す説明図である。
図5】同上、情報端末による遠隔操作が許可されたときの、その後の流れを示す説明図である。
図6】同上、待機時間が所定時間経過した後に行なわれる自動炊飯での炊飯工程および保温工程における、内釜温度センサの検知温度と、加熱コイルの炊飯工程における出力と、加熱コイルの保温工程における出力と、減圧ポンプの出力Wとの経時的な推移を示しているグラフである。
図7】同上、図6の保温工程における内釜温度センサの検知温度と、加熱コイルの保温工程における出力と、減圧ポンプの出力との経時的な推移を示しているグラフである。
図8】本発明の第1の実施形態の変形例における炊飯器システムの概略図である。
図9】同上、情報端末による遠隔操作が許可されたときの、その後の流れを示す説明図である。
図10】本発明の第2の実施形態における炊飯器の、情報端末により遠隔操作を開始したときの流れを示す説明図である。
図11】本発明の第3の実施形態における炊飯器システムの概略図である。
図12】同上、情報端末による遠隔操作が許可されたときの、その後の流れを示す説明図である。
図13】同上、(A)情報端末による遠隔操作が許可されたときの情報端末の上面図、および(B)情報端末による遠隔操作が拒否されたときの情報端末の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明における炊飯器の各実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
【実施例0019】
図1図7は、本発明における炊飯器100の第1の実施形態を示している。先ず、図1に基づき、例えばキッチン台や床面などに載置される炊飯器100の構成を説明すると、1は米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の内釜である。この内釜1は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材とし、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体2が外面の側面下部から底部にかけて接合してある。炊飯器100の外郭をなす胴体3は、その上部と上側面部を構成する上枠4と、側底面部を構成する外枠5とを主な構成要素とする。その際、上枠4や外枠5は、PPやABSポリカなどの合成樹脂で形成されている。
【0020】
胴体3の中央部には、凹状の内釜収容部6が形成される。この内釜収容部6の上端にはコードヒータ7が設けられており、コードヒータ7は熱伝導がよいアルミ板などの金属板部8で覆われている。これらのコードヒータ7と金属板部8は、発熱手段としてのフランジヒータ9を構成している。
【0021】
フランジヒータ9には、内釜1の略中央部から外周方向全周に延出させた内釜リング部11の下面が載置し、内釜1が吊られた状態で内釜収容部6に収容される。フランジヒータ9は、炊飯時と保温時に内釜リング部11および内釜1の側面を加熱すると共に、蓋体12と胴体3との隙間及び内釜1と内釜収容部6との隙間に金属板部8から熱放射して、内釜1の冷えを抑制し、加熱により発生する水分が、内釜1の上部内面へ結露するのを防止する構成となっている。
【0022】
内釜収容部6の底部外面の、発熱体2に対向する内釜収容部6の側面下部と底部には、内釜1を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル14が配置される。また、内釜1の底部外面にはサーミスタ式の内釜温度センサ15が当接し、これが内釜1の底部温度を検知して、加熱コイル14による内釜1の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
【0023】
そして炊飯時と保温時には、内釜1を加熱手段で加熱するが、保温時は、内釜1の外底面に接触させた内釜温度センサ15の検出温度に応じて、加熱手段となる加熱コイル14を加熱調節し、内釜1を一定温度に保持する。また炊飯後、内釜1内のご飯の温度が保温温度に低下するまで(約100℃→約73℃)、及び保温安定時(約73℃)に、発熱手段となるコードヒータ7を発熱させ、蓋体12と胴体3との隙間に金属板部8から熱放射して、その隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、内釜1を加熱する。さらに保温時に、内釜1内のご飯を再加熱するあつあつ再加熱を実行している期間にも内釜1を加熱し、加熱により発生する水分が、内釜1の上部内面へ結露するのを防止する構成になっている。
【0024】
なお内釜収容部6に、例えば光学センサやタクトスイッチで構成され、内釜1が内釜収容部6にセットされているか否かを検知する内釜有無検知手段を設けるように構成してもよい。
【0025】
12は、胴体3の上部に回動可能に設けられ、胴体3と共に炊飯器100の外郭をなす蓋体である。内釜1の上方開口部を覆う蓋体12には、蓋体12の内蓋36の温度を検知するサーミスタ式の蓋温度センサ16と、コードヒータなどの蓋加熱手段17が備えてあり、主に蓋加熱手段17による内蓋36の温度管理を行なうようになっている。また、内釜リング部11の上方にあって、内釜1の外側面に対向する蓋体12の内側面部には、蓋加熱手段17とは別のコードヒータ18が備えられている。コードヒータ18は、ステンレスやアルミニウムなどの金属板からなる内蓋リング19にアルミ箔テープなどにより固定され、これらのコードヒータ18と内蓋リング19とにより、蓋側面加熱手段としての内蓋リングヒータ20を構成している。
【0026】
21は、炊飯時と保温時に内釜温度センサ15と蓋温度センサ16の温度検知にて、内釜1の底面、下部側面、及び上部側面への加熱と、蓋体12の下面及び側面への加熱を、それぞれ温度制御して行なうための加熱制御手段である。加熱制御手段21は、内釜温度センサ15や蓋温度センサ16からの検知信号を受信し、加熱手段たる加熱コイル14、フランジヒータ9、内蓋リングヒータ20、及び蓋加熱手段17の各動作を調節するもので、後述する制御部71の一部を構成する。
【0027】
図2は、炊飯器100の上面図を示している。同図を参照して説明すると、23は表示操作ユニットであり、蓋体12の上面部前方に設けられている。表示操作ユニット23は、時間や選択した炊飯コ-スを表示するLCD24や、現在の行程を表示するLED25の他に、炊飯開始や炊飯コ-スの選択を操作する押動式のスイッチ26を、蓋体12の内部に装備した基板27の上部に配置して構成される。表示操作ユニット23の上方には、スイッチ26の名称などが表示される操作パネル29が配置される。この操作パネル29は、電子部品であるLCD24や、LED25や、スイッチ26や、基板27に、ほこりや水・蒸気などが付着することも防止している。また基板27上に配置される押動式のスイッチ26とは別に、操作パネル29にも、LCD24の表面となる上面に非押動式のスイッチとしてタッチセンサ30が設けられており、LCD24に表示された表示体に合わせて、タッチセンサ30を直接タッチ操作することが可能となっている。そのためタッチセンサ30は、LCD24などの電子部品を実装する基板27に接続されることでタッチキーとして機能している。
【0028】
本実施形態では、スイッチ26の一つであるスタートキー26Aへの操作により炊飯開始を指示すると、内釜1内の米に対する吸水を促進させるために、内釜温度センサ15による内釜1の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル14とコードヒータ7で内釜1の底部と側面部をそれぞれ加熱し、水温を約45~60℃に所定時間保持するひたし炊き工程が行われる。その後、加熱コイル14からの加熱量を増やして内釜1を強加熱し、内釜1内の被炊飯物を沸騰まで加熱する沸騰加熱工程が行なわれる。この沸騰加熱工程時に、内釜温度センサ15や蓋温度センサ16からの検知温度に基づいて、内釜1の底部温度が所定温度以上になり、内蓋36の温度が所定温度以上で安定(温度上昇率検知)したら、加熱制御手段21は沸騰を検知したと判定し、次の行程である加熱コイル14の加熱量を低減して沸騰を継続させる沸騰継続工程が行なわれる。この沸騰の検知において、加熱制御手段21は内釜温度センサ15と蓋温度センサ16とにより、内釜1の底部および蓋体12がいずれも90℃以上になったことを検知することで沸騰を検知したと判定するため、内釜1内の被炊飯物が完全に沸騰したことを精度よく検知することができる。
【0029】
ここで加熱制御手段21は、内釜温度センサ15や蓋温度センサ16の検知温度から、内釜1の底部と蓋体12のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない温度になったことを検知すると異常と判定し、炊飯加熱における加熱コイル14の加熱量を低減するか、加熱コイル14の全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらし工程に移行するか、保温工程に移行を行ない、異常加熱を防止する。また加熱制御手段21は、内釜温度センサ15や蓋温度センサ16の検知温度から、内釜1の底部と蓋体12の一方が90℃以上に達してから、例えば5分など所定時間が経過している一方で、内釜1の底部と蓋体12の他方が90℃未満の低い温度であることを検知した場合、内釜温度センサ15と蓋温度センサ16のいずれかが、例えば汚れや傾き、接触不良などの、何らかの理由で温度検知精度が悪化していると判定し、炊飯加熱における加熱コイル14の加熱量を低減するか、加熱コイル14の全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらし工程に移行するか、保温工程に移行を行ない、異常加熱を防止する。
【0030】
沸騰継続工程に移行すると、蓋加熱手段17や内蓋リングヒータ20で蓋体12の特に内蓋36への加熱を開始する。蓋体12への加熱は、蓋体12の温度が100~110℃になるように、蓋温度センサ16の検知温度により管理される。ここで加熱制御手段21は、内釜温度センサ15での温度検知により内釜1の底部が所定の温度上昇になったことを検知すると、内釜1内の被炊飯物に水が無くなったドライアップを検知したと判定して、むらし工程に移行する。
【0031】
むらし工程中では、蓋体12への加熱による温度管理により内釜1の上部内面へのつゆ付きを防止し、内釜1の底部の温度は、例えば98~100℃などご飯が焦げない程度に高温を保持するように温度管理される。そして所定時間のむらし工程が終了して、被炊飯物がご飯に炊き上がったら、保温工程に移行する。
【0032】
保温工程では、加熱コイル14により内釜1の底部と側面下部を加熱しながら、蓋加熱手段17により蓋体12の下面となる内蓋36をご飯の温度よりわずかに高く加熱し、さらに内釜1の側面をフランジヒータ9および内蓋リングヒータ20でご飯が乾燥せず、かつ、つゆが多量に付着しないように温度管理する。内釜1内のご飯は、70~76℃に温度保持する一方で、保温時においても前述のように2つのセンサが相互に異常に高かったり、低かったりした場合は、加熱制御手段21が異常と判定して異常加熱を防止する。以上の動作を、加熱制御手段21が行なうように構成される。
【0033】
蓋体12は、外観部品となる外蓋33と、外蓋33の下方を形成する外蓋カバー34とにより主に構成される。外蓋カバー34にはステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属製の放熱板35が設けられており、この放熱板35には蓋加熱手段17が設けられている。蓋加熱手段17はコードヒータなどの電熱式ヒータでも、電磁誘導加熱式コイルでもよい。放熱板35の外側には、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした金属製の内蓋36が配設されている。蓋体12の下面を形成する内蓋36の外側には、内釜1と内蓋36の隙間を塞ぐシリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材からなりシール部材となる蓋パッキン37が設けられ、蓋体12が閉められたときに蓋パッキン37が内釜1の上面に当接するように構成される。内蓋36および蓋パッキン37はパッキンベース38により一体化されて内蓋組立ユニット39を構成し、この内蓋組立ユニット39が外蓋カバー34の内面に着脱可能に備えられる。
【0034】
上枠4の後方には、蓋体12と連結するヒンジ部31が設けられる。このヒンジ部31は、ねじりコイルバネ等で形成したヒンジバネ(図示せず)や、ヒンジ羽根同士を連結しているヒンジ軸41を有している。蓋体12の前方上面には、蓋開ボタン32が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン32を押すと、蓋体12と胴体3との係合が解除され、ヒンジ軸41を回動中心として蓋体12が自動的に開く構成となっている。
【0035】
ヒンジ軸41は胴体3と蓋体12とを開閉自在に軸支しており、前述のヒンジバネは外蓋カバー34に引掛けられ、蓋体12を常時開方向へ付勢している。蓋体12の回動中心となるヒンジ軸41の略反対側には、蓋開ボタン32に連動するクランプ42が配置される。クランプ42はクランプ軸43により外蓋カバー34に軸支され、上枠4のヒンジ部31と略反対側には、クランプ42と係合するクランプ受け(図示せず)が設けられる。
【0036】
蓋体12に設けたクランプ42は、クランプ軸43を中心軸として回転し、胴体3に設けたクランプ受けと係合する。このクランプ42とクランプ受けとの係合により、胴体3と蓋体12は閉状態を保持している。反対に、蓋体12を開く場合には、蓋開ボタン32を押動操作してクランプ42を逆方向に回転させ、クランプ42とクランプ受けとの係合を解除する。
【0037】
内蓋組立ユニット39には、炊飯器100の内部に形成された内部空間44の圧力を調整する調圧部45が配設される。調圧部45は、調圧弁46と調圧弁ホルダ47と調圧弁カバー48とにより主に構成される。調圧弁46は、耐食性に優れた材料である程度の重量を有する部品であればよく、例えばオーステナイト系のステンレス球で構成される。ここでいう内部空間44とは、胴体3に対して蓋体12を閉じたときに、内釜1の内面と内蓋組立ユニット39の下面とにより囲まれた、被炊飯物を収容するための空間である。
【0038】
調圧弁46は、調圧弁ホルダ47で保持される。調圧弁ホルダ47には、調圧弁46の下方に位置して、炊飯器100の内部空間44と蓋体12の外部とを連通する調圧孔49を設けてある。そのため内釜1内の内部空間44で被炊飯物から発生する蒸気は、この調圧孔49を通過して外気へと放出されることになる。調圧弁46は調圧孔49を閉塞するように保持されており、調圧孔49の開口面積と調圧弁46の重量により、内部空間44の圧力を調整することができる。
【0039】
調圧弁ホルダ47で調圧弁46を保持し、それらの上方から調圧弁カバー48を被せる。調圧弁ホルダ47を内蓋36に差込み、内蓋36の下側に突出した調圧弁ホルダ47の取付け部を、調圧弁ホルダ支持部材50で保持することにより、内蓋36に装着された調圧部45を構成する。調圧弁カバー48は、調圧弁46の移動範囲を規制するためのもので、調圧孔49から放出する蒸気を、蓋体12の上部に設けた蒸気口51に導く複数の孔が設けられている。
【0040】
外蓋カバー34には、ソレノイド54を駆動源として可動するフレーム55と調圧パッキン56がそれぞれ配設される。フレーム55は常時、調圧弁46を押して調圧孔49を開放する位置にあり、内釜1内の内部空間44を非加圧状態としている。この時のフレーム55の位置を、第1のフレーム位置とする。こうすることで、蓋体12の開閉時は、内部空間44の負圧の影響を受けることなくスムーズな動作を得られる。なお、フレーム55の調圧弁46を操作する突出した部分を、調圧弁操作部57とし、フレーム55の調圧弁操作部57の略反対側には、クランプ動作規制部58を設けておく。第1のフレーム位置では、クランプ42の回動を規制しない位置にクランプ動作規制部58が移動する。
【0041】
被炊飯物への炊飯を開始すると、フレーム55は第1のフレーム位置から第2のフレーム位置へ移動する。この時、フレーム55の調圧弁操作部57は調圧弁46から離れて、調圧弁46への押しを解除し、それにより調圧弁46は調圧孔49を閉塞する。また、フレーム55のクランプ動作規制部58はクランプ42の下方に潜り込む。フレーム55は下方に潜り込まなくても、クランプ42の動作を規制する位置や形状であれば構わない。こうすることで、第2のフレーム位置ではクランプ42の回動が規制され、蓋開ボタン32を押動操作しようとしても、クランプ42とクランプ受けとの係合がロックされるので、蓋体12が開かないようになる。
【0042】
蓋体12の上面後方部には、炊飯時に内釜1内で発生した蒸気を機外へ排出する蒸気口51が設けられる。炊飯時に内釜1内の内部空間44で被炊飯物から発生する蒸気は、調圧孔49が開放された状態で内蓋36の調圧部45から排出され、蓋体12の内部で外蓋カバー34に設けられた蒸気通路59を通って、蒸気口51から機外へ排出する構成となっている。なお本実施形態では、蒸気口51が蓋体12から着脱可能に構成されている。
【0043】
外蓋33に設けられた表示操作ユニット23は、LCD24やLED25からなる表示部61と、スイッチ26やタッチセンサ30からなる操作部62とを備えている。表示部61となるLCD24は外蓋33の略中央に配置されており、タッチセンサ30は、LCD24に表示される表示体を選択することで、炊飯コースや時刻設定などを指先やペン先のタッチ操作で行なうことができるように構成される。
【0044】
本実施形態では、表示部61上のタッチセンサ30で行なう操作内容は、各種炊飯コースの選択、設定や、時刻及び予約時間の設定などとしている。その一方で、切状態から炊飯の開始を指示するのに操作されるスタートキー26Aや、保温や予約を取り消して切状態にするのに操作される切キー26BなどはLCD24の表示体で表示せず、表示部61以外の箇所に、タッチでは操作することができないタクトスイッチによる押動型の操作部62として設置している。
【0045】
また、炊飯や保温、予約などの工程を表示するためにスイッチ26に設けられたLED25を点灯させる押動型の操作部62として、スタートキー26A以外に、切状態から保温を開始したり、保温時に被炊飯物を再加熱したりするのに操作される保温キー26Cや、予約時刻に被炊飯物を炊き上げるのに操作される予約キー26Dなどが、表示部61以外の箇所に設置される。その他、短時間で被炊飯物を炊き上げる早い炊き上がりの炊飯コースを選択する場合に操作されるそくうまキー26Eも、表示部61以外の箇所に設置される。押動型の操作部62は、点灯したLED25で照明されるスタートキー26Aや、保温キー26Cや、予約キー26Dの他に、LED25で照明されない切キー26Bや、そくうまキー26Eにより構成され、前述した非押動型の操作部62と併せて、表示操作ユニット23のスイッチ26が構成される。
【0046】
操作パネル29は意匠やエンボス加工され、操作部62が蓋体12の上面前側に配置されている。また操作パネル29には、各スイッチ26に対応してスイッチ26の名称などを印刷すると共に、LCD24が配置される表示部61上には意匠の印刷が無い透明窓部68を形成している。この透明窓部68の下方にタッチセンサ30を配置し、LCD24に表示された炊飯コースなどの表示体の上で、非押動型の操作部62となるタッチセンサ30に触れることで、タッチキーとしての操作を可能にしている。なお、上述の表示部61や操作部62を含む表示操作ユニット23は、蓋体12の上面にではなく、胴体3の前面に設ける構成としてもよい。
【0047】
65は、蓋体12を胴体3に閉じた状態で、内釜1の内部を通常の大気圧よりも低くするための減圧手段である。減圧手段65は、内釜1を鍋収容体3に収容し、蓋体12を閉じた後にソレノイド54を通電させて調圧弁46が調圧孔49を塞いだ状態で、密閉した内釜1の内部圧力を低下させる。また、内釜1内部の圧力が大気圧よりも一定値下がった場合には、減圧手段65の動作源となる減圧ポンプ66の動作を停止し、内釜1内部を減圧状態に保っている。さらに、内釜1内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す場合には、減圧ポンプ66の動作を停止し、減圧ポンプ66と内釜1の内部との間を連通する図示しない経路を開放する。つまり減圧手段65は、内釜1内部を減圧状態から外気と同じ圧力に戻す圧力戻し手段としての構成を兼用している。
【0048】
次に、上述の炊飯器100を含む炊飯器ユニットの電気的構成について、図3を参照して説明する。
【0049】
先ず、実質的な炊飯器となる炊飯器100の電気的構成から説明すると、71は炊飯器100の内部に組み込まれ、マイクロコンピュータや、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能なメモリなどの記憶手段76や、時刻や炊飯に関する計時を行なう計時手段79や、各部の駆動素子などを含んで構成される制御部である。制御部71の入力ポートには、スイッチ26やタッチセンサ30を含む操作部62と、内釜温度検知手段としての内釜温度センサ15と、蓋温度検知手段としての蓋温度センサ16と、蓋体12の開閉を検知する蓋開閉検知手段63と、送受信手段74と、がそれぞれ電気的に接続される。また、制御部71の出力ポートには、LCD24やLED25を含む表示部61と、加熱手段としての加熱コイル14、コードヒータ7,18および蓋加熱手段17と、ソレノイド54と、送受信手段74と、減圧手段65と、報知部となるブザー75と、がそれぞれ電気的に接続される。
【0050】
蓋開閉検知手段63は蓋体12の開閉を検知するものであり、蓋体12内のヒンジ部31近傍に設けられる。ここで蓋開閉検知手段63は、光学式、機械式、磁石式など、どのような検知方式のものでもよく、蓋体12の開閉に応じた検知信号を出力できればよい。また送受信手段74は、有線や無線のネットワーク網などの通信手段72を介して、ユーザが保有する情報端末73との情報の送受信を可能にするものである。
【0051】
遠隔操作体となる外部端末としての情報端末73は、炊飯器100とは別体の、例えばスマートフォンやタブレット端末などにより構成され、炊飯器100の表示操作ユニット23と同様に、LCDなどの画面表示を可能にする表示部77や、表示部77の表面に設けられたタッチセンサによる操作部78などを主に備えている。そして情報端末73の記憶媒体に、例えばアプリケーションプログラムなどの情報処理プログラムを記憶させ、当該情報処理プログラムを立ち上げることで機能させることにより、通信手段72を介して送受信手段74との情報の送受信を行なっている。なお情報端末73と炊飯器100は、通信手段72により直接送受信できる構成としてもよいし、情報端末73と炊飯器100の送受信手段74を何れも通信手段72となるネットワークに接続し、そのネットワークに同じく接続する管理サーバ(図示せず)を介して、お互いが送受信できる構成としてもよい。また情報端末73の代わりに、例えばパソコンなどの、屋内などに設置されてネットワークに接続可能なものを外部端末として使用してもよい。
【0052】
制御部71は、操作部62からの操作信号や送受信手段74からの情報と、内釜温度センサ15や蓋温度センサ16からの温度検知信号と、蓋開閉検知手段63からの検知信号とを受けて、計時手段79からの計時に基づく所定のタイミングで、表示部61と、加熱コイル14と、コードヒータ7,18と、蓋加熱手段17と、ソレノイド54と、減圧手段65と、ブザー75と、に制御信号を各々出力し、送受信手段74から情報を送信する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての記憶手段76に記憶されたプログラムを制御部71が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、炊飯時に内釜1内の被炊飯物である米や水を炊飯加熱してご飯に炊き上げる炊飯制御手段81と、保温時に内釜1内の被炊飯物であるご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段82と、操作部62からの予約炊飯開始の指令を受けて、予め設定された予約時刻に内釜1内の被炊飯物をご飯に炊き上げるように、炊飯制御手段81を制御する予約炊飯制御手段83として、制御部71を機能させるプログラムを備えている。
【0053】
炊飯制御手段81は、炊飯開始指示手段となるスタートキー26Aからの炊飯開始の指示を受けて、内釜1に投入した被炊飯物の中で米の吸水を促進させるひたし工程と、被炊飯物の温度を短時間に沸騰まで上昇させる沸騰加熱工程と、被炊飯物の沸騰状態を継続させて、水の無いドライアップ状態にする沸騰継続工程と、ドライアップ状態になった被炊飯物を焦がさない程度の高温に維持して、ご飯に炊き上げるむらし工程の各工程を順に実行して、内部空間44に収容される被炊飯物を所望の圧力で炊飯加熱する炊飯工程を行なうものである。特に本実施形態では、炊飯器100で炊飯加熱が可能な全ての炊飯コースについて、表示部61や、加熱コイル14や、コードヒータ7,18や、蓋加熱手段17や、ソレノイド54や、ブザー75を、各々どのように動作させるのかという制御パターンが記憶手段76に予め記憶保持されており、そくうまキー26Eやタッチパネル30への操作により、複数の炊飯コースの中からユーザが所望する任意の炊飯コースが設定、選択された後に、スタートキー26Aへの操作により炊飯開始が指示されると、その設定、選択された炊飯コースの設定を記憶手段76に記憶させると共に、当該炊飯コースの制御パターンを、炊飯制御手段81が記憶手段76から読み出して、表示部61や、加熱コイル14や、コードヒータ7,18や、蓋加熱手段17や、ソレノイド54や、ブザー75を適切に制御することにより、内釜1に入れられた被炊飯物への炊飯動作を行ないながら、表示部61からの表示やブザー75からの報知を行なう構成となっている。
【0054】
保温制御手段82は、内釜1内のご飯を所定の保温温度に保つように制御するもので、選択した炊飯コースに拘わらず、炊飯制御手段81による被炊飯物への炊飯加熱が終了すると、自動的に保温制御手段82による保温が行われる構成となっている。また保温制御手段82は、保温中に保温キー26Cが操作されると、内釜1内のご飯が保温温度よりも一時的に高くなるように、加熱コイル14の動作を制御する再加熱の機能を有する。さらに、炊飯器100に電源を投入した直後の切状態で、保温キー26Cが操作された場合にも、保温制御手段82により内釜1に入れられた被炊飯物を保温できるようになっている。また本実施形態では、保温制御手段82は、保温工程で内釜1内を減圧状態にする機能を有している。
【0055】
予約炊飯制御手段83はタイマー機能を備え、操作部62への操作により、炊飯終了時刻に相当する予約時刻や炊飯コースなどの予約炊飯の設定を行なって炊飯開始を指示すると、予約炊飯制御手段83は、設定された予約炊飯の設定を記憶手段76に記憶すると共に、タイマー機能により設定された予約時刻にご飯が炊き上がるように、予約時刻の所定時間前になると、炊飯制御手段81により炊飯を自動的に開始させ、予約時刻には被炊飯物がご飯に炊き上がって、炊飯が終了して保温工程に移行するように制御する予約炊飯工程を行なうものである。本実施形態では、制御部71に内蔵する計時手段79が現在時刻をカウントして、現在時刻が設定された予約時刻に達したときに炊飯が終了するように、予約炊飯制御手段83が炊飯制御手段81による炊飯加熱の動作を制御するが、操作部62への操作により炊飯開始を指示したときに、現在時刻から設定された予約時刻までの間の予約時間が、予め選択された炊飯コースに応じた予約可能時間(例えば60分~65分)よりも短い場合には、炊飯制御手段81が設定された予約時刻を受け付けずに、直ちに炊飯加熱の動作を開始する。つまり予約炊飯制御手段83は、現在時刻から設定された予約時刻までの間の予約時間が、炊飯コースに応じて予め設定された予約可能時間以上である場合にのみ、炊飯制御手段81により予約時間後(すなわち予約時刻)に、被炊飯物をご飯に炊き上げる構成となっている。
【0056】
次に図4図7を参照しつつ、上記構成の炊飯器について、特に遠隔操作で炊飯を行なう際の作用を詳しく説明する。なお、ここからは説明の都合上、遠隔操作による炊飯に関する説明についてのみ言及する。ここで図4は、情報端末73により遠隔操作を開始したときの流れが示されており、図5は、情報端末73による遠隔操作が許可されたときのその後の流れが示されており、図6は、待機時間が所定時間T経過した後に行なわれる自動炊飯での炊飯工程および保温工程における、内釜1の温度としての内釜温度センサ15の検知温度tと、鍋加熱手段としての加熱コイル14の炊飯工程における出力Wと、加熱コイル14の保温工程における出力Wと、減圧ポンプ66の出力Wとの推移をあらわしたグラフが示されており、図7図6の保温工程における内釜温度センサ15の検知温度tと、加熱コイル14の保温工程における出力Wと、減圧ポンプ66の出力Wとの推移をあらわしたグラフが示されている。
【0057】
図4を参照して、遠隔操作による炊飯開始までの炊飯器100および情報端末73の動作を説明すると、内釜1内に被炊飯物、例えば白米を炊飯する場合は米と水を入れ、これを胴体3の内釜収容部6にセットした後に、蓋体12を閉じる。それと前後して、炊飯器100の電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、炊飯器100は炊飯工程や保温工程が行われていない初期の切(待機)状態となる。そして、このときに操作部62により炊飯コースの選択、設定を行なうと、これらの炊飯コースの設定が記憶手段76に記憶される。
【0058】
ここでユーザが情報端末73の操作部78を操作して情報処理プログラムを立ち上げると、情報端末73から通信手段72を介して炊飯器100に遠隔操作信号が送出される。そして制御部71が、送受信手段74を介してこの遠隔操作信号を受信するとステップS0に移行し、制御部71は、遠隔操作可否の判定を行なうためにステップS1に移行する。
【0059】
ステップS1では制御部71が、蓋開閉検出手段からの検出信号により、現在、蓋体12が開けられているか閉じられているかを判定する。ここで制御部71は、現在、蓋体12が閉じられている(ステップS1で「No」)と判定すると、次のステップS2に移行する。
【0060】
その一方で制御部71は、現在、蓋体12が開かれている(ステップS1で「Yes」)と判定すると、ステップS5に移行して、通信手段72を介して情報端末73に遠隔操作炊飯拒否の信号を送出する。情報端末73がこの遠隔操作炊飯拒否の信号を受信すると、例えば表示部77に「現在、遠隔操作炊飯ができません」とポップアップ表示するなど、ユーザに遠隔操作で炊飯を開始することができない旨の報知を行なう。なお、例えば「現在、蓋が開いているために遠隔操作炊飯ができません」など、遠隔操作で炊飯が開始できない理由も共に表示するように構成してもよい。
【0061】
なお内釜有無検知手段が設けられているときは、制御部71が、内釜有無検知手段からの検知信号により、現在、内釜1が内釜収容部6にセットされているか否かを判定するステップを追加してもよい。
【0062】
ステップS2では制御部71が、現在、炊飯器100が保温中か否かを判定する。ここで制御部71は、現在、保温制御手段82として機能しておらず、保温中ではない(ステップS2で「No」)と判定すると、次のステップS3に移行する。その一方で制御部71は、保温制御手段82として機能しており、保温中である(ステップS2で「Yes」)と判定すると、ステップS5に移行して、通信手段72を介して情報端末73に遠隔操作炊飯拒否の信号を送出し、情報端末73が、ユーザに遠隔操作で炊飯を開始することができない旨の報知を行なう。
【0063】
ステップS3では制御部71が、現在、炊飯中か否かを判定する。ここで制御部71は、現在、炊飯制御手段81として機能しておらず、炊飯中ではない(ステップS3で「No」)と判定すると、次のステップS4に移行して、通信手段72を介して情報端末73に遠隔操作炊飯許可の信号を送出すると共に、計時手段71により所定時間Tの計時を開始する。情報端末73がこの遠隔操作炊飯許可の信号を受信すると、例えば表示部77に炊飯開始ボタンの表示体を表示するなど、ユーザに遠隔操作で炊飯を開始することができる旨の報知を行なう。なお遠隔操作で炊飯を開始するときに、炊飯開始の指示の情報だけでなく、炊飯コースの選択、設定などの炊飯に関する設定の情報も同時に送出できるように構成してもよい。その一方で制御部71は、炊飯制御手段81として機能しており、炊飯中である(ステップS3で「Yes」)と判定すると、ステップS5に移行して、通信手段72を介して情報端末73に遠隔操作炊飯拒否の信号を送出し、情報端末73が、ユーザに遠隔操作で炊飯を開始することができない旨の報知を行なう。
【0064】
次に図5を参照して、遠隔操作による炊飯における炊飯器100の動作を説明すると、ステップS4で制御部71が遠隔操作炊飯許可の信号を送出すると、ステップS11に移行する。ステップS11では、制御部71が、現在、タイマー予約中か否かを判定する。ここで制御部71は、現在、予約炊飯制御手段83として機能しておらず、タイマー予約中、すなわち予約炊飯中ではない(ステップS11で「No」)と判定すると、次のステップS13に移行する。その一方で制御部71は、予約炊飯制御手段83として機能しており、予約炊飯中である(ステップS11で「Yes」)と判定すると、ステップS12に移行して、予約炊飯工程を継続して行なうように構成される。
【0065】
ステップS13では、制御部71は、記憶手段76に記憶された炊飯コースの設定から、内釜1内の被炊飯物が炊込みご飯であるか否かを判定する。ここで制御部71は、内釜1内の被炊飯物が炊込みご飯ではない(ステップS13で「No」)と判定すると、ステップS18に移行して炊飯器100が待機状態になる。その一方で制御部71は、内釜1内の被炊飯物が炊込みご飯である(ステップS13で「Yes」)と判定すると、ステップS14に移行し、内釜1内の被炊飯物に対して炊飯が開始されてステップS15に移行する。
【0066】
本実施形態では、選択、設定されて記憶手段76に記憶された炊飯コースが炊込みご飯、または炊込みご飯に準じた腐敗しやすい食肉類や魚介類を食材としたメニューの場合は、直ぐに炊飯を開始する構成にしており、炊込みご飯を炊飯する場合は、白米を炊飯する場合と比較して炊飯開始までの待機時間を短くすることで、米や具材を水に長時間浸すことによる水の変質や水に浸された米や具材の変質を抑制し、白米のご飯よりも変質が生じやすい炊込みご飯の変質を未然に抑制している。またユーザが上述した変質のリスクを承知の上で予約炊飯を行なっていた場合には、ステップS11やステップS12で説明したように予約炊飯を継続する構成にしており、ユーザの希望を阻害することがないようにして、使い勝手が悪くなることを防止している。
【0067】
ステップS15では、炊飯制御手段81が内釜1内の内部空間44に被炊飯物がない状態で内釜1が加熱される空炊きであるか否かを判定する。炊飯工程が開始されると、炊飯制御手段81はひたし工程を行なうが、このとき炊飯制御手段81は、内釜温度センサ15の検知温度により、内釜1の温度上昇率を検知している。ここで内釜1の温度上昇率が所定の温度上昇率以内である(ステップS15で「No」)と判定すると、炊飯制御手段81は、内部空間44に被炊飯物がある状態で空炊きではないと判定してステップS16に移行し、炊飯制御手段81は、引き続き炊飯工程を実行して、炊込みご飯の炊飯を継続する。
【0068】
その一方で、内釜1の温度上昇率が所定の温度上昇率を超えており、通常の炊飯時と比較して急激に温度上昇している(ステップS15で「No」)と判定すると、炊飯制御手段81は、内釜1内が空であり、内部空間44に被炊飯物がない状態で内釜1が加熱される空炊きであると判定してステップS17に移行し、炊飯制御手段81は、空炊き防止のために炊飯工程を中止して炊飯器100を切状態にする。
【0069】
ステップS18では炊飯器100が待機状態となっている。ここでステップS19に移行して、制御部71は、待機状態で所定時間Tが経過したか否か、すなわち計時手段71によりステップS4から計時を開始している経過時間が、例えば13時間など所定時間Tを経過したか否かを判定する。ここで制御部71は、遠隔操作炊飯許可の信号を送出してからの経過時間が所定時間Tを経過していない(ステップS19で「No」)と判定するとステップS21に移行する。その一方で制御部71は、遠隔操作炊飯許可の信号を送出してからの経過時間が所定時間Tを経過した(ステップS19で「Yes」)と判定すると、ステップS20に移行して、炊飯制御手段81が、記憶手段76に記憶された炊飯コースの設定で、直ぐに炊飯工程を行なう自動炊飯を実行するように構成している。
【0070】
本実施形態では、ステップS21で炊飯器100が遠隔操作による炊飯開始の信号を受信するまでの待機期間中に、遠隔操作炊飯許可の信号を送出してからの所定時間Tが経過した場合、当該信号の有無に関わらずに内釜1内の被炊飯物に対する炊飯を開始する自動炊飯を行なう構成としており、米を水に長時間浸すことによる水の変質や水に浸された米の変質を、これらの変質の前に炊飯を行なうことで抑制し、また変質した水や米を使用して炊飯を行なうことを抑制している。なお本発明はこの構成に限定されず、制御部71は、ステップS0の移行前に蓋開閉検出手段63の検出信号により蓋体12が閉じられてからの経過時間を計時して所定時間Tにする構成にしてもよく、情報処理プログラムを立ち上げてからの経過時間を計時して所定時間Tにする構成にしてもよい。また内釜有無検知手段が設けられている場合、制御部71は、内釜有無検知手段の検知信号により内釜1が内釜収容部6にセットされてからの経過時間を計時して所定時間Tにする構成にしてもよい。
【0071】
図6を参照して自動炊飯についての説明をすると、自動炊飯が開始されると、炊飯制御手段81は記憶手段76に記憶された炊飯コースの設定で、先ず沸騰加熱工程を行なう。これは、すでに米が水に、例えば13時間などの所定時間T浸されているため、十分に米の吸水がなされていると推測されるためである。なお自動炊飯でもひたし工程を行なう構成にしてもよい。炊飯制御手段81は、沸騰加熱工程の後で、通常の炊飯工程と同様に沸騰継続工程とむらし工程を順に実行し、炊飯工程が終了したら、保温制御手段82による保温工程に移行する。
【0072】
図7を参照して保温工程について説明すると、保温制御手段82は、計時手段71による計時を開始すると共に、内釜温度センサ15の検知温度tに基づき、被炊飯物としてのご飯の温度が、例えば90℃以上の所定の温度以上に維持されるように加熱コイル14を通断電制御して内釜1の温度を管理する保温初期工程を行なう。そして保温制御手段82は、計時手段71により、例えば10分間など所定の時間が経過したと判定すると、次の保温降下工程に移行する。
【0073】
保温降下工程では、保温制御手段82は、内釜温度センサ15の検知温度tに基づき加熱コイル14を通断電制御して内釜1の温度を管理して、保温工程を開始してから例えば60分などの所定時間Hをかけて、鍋4内部のご飯の温度を、例えば73℃プラスマイナス3℃の保温温度まで降下させる。保温降下工程中では、保温制御手段82は、調圧弁46で調圧孔49を閉塞させるようにソレノイド54を制御し、それと共に、例えば内釜1の温度が95℃のときは内釜1内の内部空間44の圧力を0.9atmにし、内釜1の温度が85℃のときは内釜1内の内部空間44の圧力を0.7atmにするなど、内釜1内のご飯が沸騰しない程度に減圧脱気するように減圧手段65の減圧ポンプ66を制御する。なお炊飯器100に、内釜1内の内部空間44の圧力を検知する圧力センサなどの圧力検知手段を設け、保温制御手段82は、当該圧力検知手段の圧力検知と、内釜温度センサ15の検知温度tとに基づき減圧ポンプ66を制御する構成にしてもよい。保温制御手段82は、計時手段71により、保温工程開始から所定時間Hが経過し、かつ内釜温度センサ15の検知温度tに基づき内釜1内のご飯の温度が保温温度まで降下したと判定すると、次の保温維持工程に移行する。
【0074】
保温維持工程では、保温制御手段82は、内釜温度センサ15の検知温度tに基づき加熱コイル14を通断電制御して、被調理物の温度が保温温度を維持するようにする。また保温維持工程中では、保温制御手段82は、保温降下工程から引き続き、調圧弁46で調圧孔49を閉塞させるようにソレノイド54を制御し、それと共に、内釜1の温度が保温温度の73℃のときは内釜1内の内部空間44の圧力を0.6atmにするなど、内釜1内のご飯が沸騰しない程度に減圧脱気するように減圧手段65の減圧ポンプ66を制御する。このように、保温工程でも内釜1内の内部空間44を減圧脱気することにより、脱気時に酸素を抜くため炊飯したご飯の酸化を抑制している。また内釜1内は減圧状態を維持するために密閉されているため、ご飯の水分は機外へ放出されず、ご飯の乾燥を抑制して食味の低下を抑制している。
【0075】
図5に戻って説明すると、ステップS21では制御部71は、遠隔操作での炊飯開始の信号を受信したか否かを判定する。ここで制御部71が、送受信手段74を介して遠隔操作での炊飯開始の信号を受信していない(ステップS21で「No」)と判定すると、ステップS18に戻る。その一方で、ステップS4でユーザが情報端末73の操作部78を操作し、情報端末73から炊飯器100に遠隔操作での炊飯開始の信号が送出されており、制御部71が遠隔操作での炊飯開始の信号を受信した(ステップS21で「Yes」)と判定すると、制御部71は、遠隔操作による炊飯開始の可否の判定を行なうためにステップS22に移行する。
【0076】
ステップS22では制御部71は、遠隔操作での炊飯開始の信号が、(1)遠隔操作での炊飯開始の指示の信号であるか、(2)遠隔操作でタイマー予約による予約炊飯の設定の信号、または予約炊飯の設定の変更の信号であるか、を判定する。制御部71は、ステップS21で受信した遠隔操作での炊飯開始の信号が(1)である(ステップS22で「(1)」)と判定すると、ステップS24に移行し、内釜1内の被炊飯物に対して炊飯が開始されてステップS25に移行する。
【0077】
その一方で制御部71は、ステップS21で受信した遠隔操作での炊飯開始の信号が(2)である(ステップS22で「(2)」)と判定すると、ステップS23に移行し、予約炊飯制御手段83は、受信した予約炊飯の設定を記憶手段76に記憶し、あるいは受信した予約炊飯の設定に基づいて記憶手段76に記憶された予約炊飯の設定を変更する。その後、ステップS11に戻り、制御部71が予約炊飯制御手段83として機能しており、予約炊飯中であるためステップS12に移行して、記憶手段76に記憶された予約炊飯の設定で予約炊飯工程を行なうように構成される。
【0078】
ステップS25では、ステップS15と同様に、炊飯制御手段81が内釜1内の内部空間44に被炊飯物がない状態で内釜1が加熱される空炊きであるか否かを判定する。ここで内釜1の温度上昇率が所定の温度上昇率以内である(ステップS25で「No」)と判定すると、炊飯制御手段81は、内部空間44に被炊飯物がある状態で空炊きではないと判定してステップS26に移行し、炊飯制御手段81は、引き続き炊飯工程を実行して炊飯を継続する。その一方で、内釜1の温度上昇率が所定の温度上昇率を超えている(ステップS25で「No」)と判定すると、炊飯制御手段81は、内釜1内が空であり、内部空間44に被炊飯物がない状態で内釜1が加熱される空炊きであると判定してステップS17に移行し、炊飯制御手段81は、空炊き防止のために炊飯工程を中止して炊飯器100を切状態にする。
【0079】
以上のように、本実施形態の炊飯器100では、外部装置としての情報端末73と通信可能な通信手段としての送受信手段74と、被炊飯物の炊飯を制御する制御手段としての炊飯制御手段81と、時間を計測する計時手段79と、を備え、計時手段79は、遠隔操作炊飯許可の信号を送出して被炊飯物の炊飯準備がされてからの炊飯準備時間としての経過時間を計測し、炊飯制御手段81は、経過時間が所定時間T未満のときに情報端末73からの炊飯開始指示としての遠隔操作での炊飯開始の信号を受信した場合には、当該遠隔操作での炊飯開始の信号により炊飯工程を開始し、情報端末73からの遠隔操作での炊飯開始の信号を受信しない場合には、所定時間T経過時に炊飯工程を開始する構成としている。
【0080】
このように構成することにより、遠隔操作炊飯許可の信号を送出してから所定時間Tが経過すると、ステップS20に移行して、炊飯制御手段81が、遠隔操作や予約炊飯をすることなく炊飯を開始させるので、お米のひたしが所定時間を超えることが無く、内釜1内の材料の変質を抑制することができる。
【0081】
また本実施形態の制御部71では、炊飯制御手段81が炊飯工程を実施した後で保温制御手段82が保温工程を開始するため、炊飯された内釜1内のご飯の変質を抑制することができる。
【0082】
また本実施形態の炊飯器100では、被炊飯物が白米のご飯であるときには所定時間Tが、例えば13時間である一方で、被炊飯物が炊込みご飯であるときには所定時間Tが、例えば0分であり、被炊飯物の種類に基づいて所定時間Tを変更する構成にしている。そのため、炊込みご飯、または炊込みご飯に準じた腐敗しやすい食肉類や魚介類を食材としたメニューの場合は、直ぐに炊飯を開始させることで、米や具材を水に長時間浸すことによる水の変質や水に浸された米や具材の変質を抑制し、白米のご飯よりも変質が生じやすい炊込みご飯の変質を未然に抑制することができる。
【0083】
また本実施形態の炊飯器100では、前記被炊飯物を収容する鍋内を減圧脱気する減圧脱気手段としての減圧手段65を備え、減圧手段65は保温工程中に減圧脱気を実行する構成としており、脱気時に酸素を抜くため炊飯したご飯の酸化を抑制することができ、また内釜1内は減圧状態維持のために密閉され、ご飯の水分は機外へ放出されないため、ご飯の乾燥を抑制して食味の低下を抑制することができる。
【0084】
また本実施形態の炊飯器100と情報端末73と、を含む炊飯器システムでは、外部装置は炊飯器100のユーザが操作する情報端末73である構成としており、いつも使用している情報端末73で炊飯器100を遠隔操作できるため、ユーザの利便性が向上する。
【0085】
図8および図9は、第1の実施形態の変形例を示している。本変形例では、自動炊飯するまでの所定時間Tが、内釜1内の被炊飯物の温度である水温に応じて変更される構成としている。また炊飯器100が通信手段72を介してクラウド上のサーバ101やNTP(Network Time Protocol)サーバ102との情報の送受信を可能にしており、かつ、情報端末73の表示部77で炊飯器100の内釜1内の水温を遠隔表示することが可能な構成としている。
【0086】
図8は、本変形例の炊飯器システムの全体構成を概略的に示したものである。同図において、家屋R内に設置された炊飯器100が、通信手段72を介して、情報端末73に加えて、通信手段72と接続するサーバ101やNTPサーバ102との間で相互に各種データのやり取りを行なう構成となっている。
【0087】
サーバ101は、全ての炊飯コースの情報など炊飯に関する情報を記憶している。また炊飯器100の送受信手段74とサーバ101とは、通信手段72を介して、例えば更新された炊飯コースの情報など、炊飯に関する情報の送受信ができるように構成されている。
【0088】
NTPサーバ102は正確な時刻情報を取得・配信しているサーバである。炊飯器100の送受信手段74は、通信手段72を介して、NTPサーバ102から、例えば正確な時刻の情報など時刻に関する情報の受信ができるように構成されている。
【0089】
従来、炊飯器は、例えば水晶発振ICと水晶振動子とを利用した時計用のクロック信号で計時し、また炊飯器に通電されていない停電時はバックアップ用のリチウム電池などで時計の計時を継続する構成が知られている。しかしながら、このような構成は炊飯器の時計の進み方にバラツキを生じさせる虞があり、正確な時刻と炊飯器の時計の時刻との差異が大きくなった場合は、炊飯器に設けられた時計の時刻修正の機能を用いて、ユーザが手動で時計の時刻修正を行なっていた。そのため、時計の時刻がズレて修正されていない状態で予約炊飯を設定した場合、炊飯器の時計の時刻で予約炊飯されるために所望の時刻に被炊飯物が炊き上らない虞がある課題があった。
【0090】
そのため本変形例では、NTPサーバ102を利用して炊飯器の時計の時刻修正を行なう構成にしており、炊飯器100を通信手段72に接続した状態で、自動で炊飯器の時計の時刻合せが行われる構成にしている。ここで、情報端末73には、通信事業者などが公開したNTPサーバを利用して時計の時刻を自動的に合わせる機能が付加してある機種もあり、情報端末73と炊飯器100の時計の時刻を共有させることで、予約炊飯時において情報端末73の時計の時刻と炊飯器100の時計の時刻とを同期させて差異をなくすことができ、また自動炊飯するまでの所定時間Tの計時を誤って、例えば待機時間が12時間なのに13時間と誤って、予期せぬ予約炊飯を行なってしまうという誤操作を抑制することができる。
【0091】
本変形例では、制御部71が遠隔操作炊飯許可の信号を送出した後、制御部71は、内釜温度センサ15の検知温度tに基づいて、被炊飯物の温度である水温の情報を、通信手段72を介して情報端末73に送出しており、情報端末73で情報処理プログラムを立ち上げることにより、情報端末73の表示部77で炊飯器100の内釜1内の水温を遠隔表示することが可能な構成としている。そのためユーザは炊飯器100から離れた場所に居る場合でも情報端末73で内釜1内の被炊飯物の温度である水温を確認することができ、例えば水温が100℃のときには炊飯器100で炊飯工程の最中であるなど、炊飯器100の大まかな状況を把握することができる。
【0092】
図9は、本変形例の炊飯器100において情報端末73による遠隔操作が許可されたときのその後の流れが示されている。本変形例では、ステップS18で炊飯器100が待機状態となったあとで、被炊飯物の温度である水温により、自動炊飯するまでの所定時間Tの長さを変更するように構成されている。
【0093】
同図を参照して詳しく説明すると、ステップS18では炊飯器100が待機状態となっている。本変形例では、ここでステップS31に移行して、制御部71は、現在の、内釜温度センサ15の検知温度tに基づく水温が、例えば25℃など所定の温度以下か否かを判定する。ここで制御部71は、当該水温が所定の温度以下(ステップS19で「Yes」)と判定するとステップS19に移行して、制御部71は、計時手段71によりステップS0から計時を開始している経過時間が、例えば13時間など所定時間Tを経過したか否かを判定する。その一方で制御部71は、当該水温が所定の温度を超えている(ステップS19で「No」)と判定するとステップS32に移行する。
【0094】
ステップS32では、制御部71は、計時手段71によりステップS0から計時を開始している経過時間が、所定時間Tよりも短い時間である、例えば8時間など所定時間Tsを経過したか否かを判定する。ここで制御部71は、情報処理プログラムを立ち上げてからの経過時間が所定時間Tsを経過していない(ステップS32で「No」)と判定するとステップS21に移行する。その一方で制御部71は、情報処理プログラムを立ち上げてからの経過時間が所定時間Tsを経過した(ステップS32で「Yes」)と判定すると、ステップS20に移行して、炊飯制御手段81が、記憶手段76に記憶された炊飯コースの設定で、直ぐに炊飯工程を行なう自動炊飯を実行するように構成している。
【0095】
このように本変形例の炊飯器100では、遠隔操作による炊飯の待機期間中に、内釜温度センサ15の検知温度tに基づく水温を情報端末73で遠隔表示すると共に、当該水温が所定の温度よりも高い場合は、水温が所定の温度以下の場合と比較して、待機状態での経過時間を所定時間Tから所定時間Tsに短縮する構成にしており、特に夏場など水温が高く、早期に水の変質や水に浸された米の変質が生じる虞があるが、これらの変質の前に炊飯を行なうことで当該変質を未然に防止している。また本変形例では、情報端末73で内釜1内の被炊飯物の温度である水温を確認可能であり、炊飯器100の大まかな状況を把握することができるため、炊飯器100で自動炊飯が行なわれたことを情報端末73でユーザに報知することができ、自動炊飯が行なわれたことは水温が高く腐敗防止のためであり、誤使用ではないことをユーザが容易に把握することができる。
【0096】
以上のように、本変形例の炊飯器100では、内釜1の温度に基づく被炊飯物の温度を検知する温度検知手段としての内釜温度センサ15を備え、内釜温度センサ15が検知した炊飯工程の開始前の被炊飯物の温度としての水温に基づいて、所定時間Tから所定時間Tsに変更する構成としており、水の変質や水に浸された米の変質が生じる前に炊飯を行なうことで当該変質を未然に防止することができる。
【実施例0097】
図10は、本発明における炊飯器100の第2の実施形態を示している。本実施形態では、予約炊飯における待機状態中に限って、遠隔操作炊飯を可能とした構成としている。
【0098】
電源プラグをコンセントに差し込んで、通電状態になった炊飯器100の主な状態は、炊飯工程や保温工程が行われていない「切状態」(待機状態)、予約炊飯工程において、予約炊飯の設定を行なって炊飯開始を指示されてから炊飯制御手段81により炊飯を開始させるまでの待機状態である「予約炊飯待機状態」、炊飯制御手段81による炊飯工程が行なわれる「炊飯状態」、保温制御手段82による保温工程が行なわれる「保温状態」がある。また遠隔操作時では、情報端末73で炊飯器100の動作状態、例えば内釜1内の被炊飯物の温度である水温を確認することにより、ユーザは「切状態」、「予約炊飯待機状態」、「炊飯状態」、「保温状態」の何れかの状態であるかを容易に把握することができる。また「炊飯状態」、「保温状態」または「予約炊飯待機状態」のときは、例えば上述したステップS15やステップS25のように内釜1を一時的に加熱し、内釜温度センサ15の検知温度により内釜1の温度上昇率を検知して、内釜1内に米と水またはご飯などの被炊飯物がある状態か否かを把握できる。その一方で「切状態」のときには、内釜1内に被炊飯物がある状態か否かを把握できない。
【0099】
また「切状態」は、(1)内釜1内の内部空間44に何もない状態、(2)内部空間44に炊飯後のご飯がある状態、(3)内部空間44に、例えばお米と水などの炊飯前の被炊飯物がある状態、の3つの状態がある。ここで(1)の状態は、内釜1が加熱されると空炊きになってしまうため「切状態」を継続すべき状態であり、(2)の状態は、ユーザの意思で炊飯後のご飯の保温を中止して、敢えて「切状態」にした状態と推測されるため、「切状態」を継続すべき状態である。その一方で(3)の状態は、ユーザの意思で、遠隔操作で炊飯開始可能、またはタイマー予約を設定して予約炊飯を開始可能な状態である。
【0100】
炊飯器100が「切状態」のときに内釜1内に被炊飯物がある状態か否かを把握する方法として、例えば上述の様に内釜1を一時的に加熱して内釜1の温度上昇率を検知する方法だと、加熱を必要としない「切状態」を継続すべき(1)または(2)では、一時的にでも内釜1を加熱することにより、一時的にでも空炊き状態になってしまう虞や、無用に炊飯器100が熱くなる虞、内釜1内のご飯が焦げる虞などがある。また、例えばCCDカメラなどの監視手段で内釜1内を監視する方式や、例えば重量センサなどの重量検知手段で内釜1の重量を検知する方法が知られているが、炊飯器100の大きさが増大する、構造が複雑化する、費用が嵩んでしまうという課題があった。また重量検知手段で内釜1の重量を検知する方法だと、内釜1内の被炊飯物が炊飯前の米と水なのか、炊飯後のご飯なのかを判別して把握することが困難であった。そのため本実施形態では、予約炊飯における待機状態中に限って、遠隔操作炊飯を可能とした構成としている。
【0101】
図10は、情報端末73により遠隔操作を開始したときの流れが示されている。同図を参照して、遠隔操作による炊飯開始までの炊飯器100および情報端末73の動作を説明すると、内釜1内に被炊飯物を入れ、これを胴体3の内釜収容部6にセットした後に蓋体12を閉じる。それと前後して、炊飯器100の電源プラグをコンセントに差し込んで通電すると、炊飯器100は切状態となる。そして、このときに操作部62により予約時刻や炊飯コースなどの予約炊飯の設定を行なった後でスタートキー26Aを操作すると、予約炊飯制御手段83は、設定された予約炊飯の設定を記憶手段76に記憶すると共に、タイマー機能により設定された予約時刻にご飯が炊き上がるように、予約時刻の所定時間前までの待機状態となる予約待機状態に移行する。したがって予約炊飯制御手段83は、予約炊飯を受け付ける予約炊飯受付部としての機能も有している。
【0102】
ここでユーザが情報端末73の操作部78を操作して情報処理プログラムを立ち上げると、第1の実施形態で上述したように情報端末73から炊飯器100に遠隔操作信号が送出され、制御部71が遠隔操作信号を受信するとステップS0に移行し、制御部71は、計時手段71による計時を開始すると共に、遠隔操作可否の判定を行なうためにステップS41に移行する。
【0103】
ステップS41では制御部71は、炊飯器100が現在、切状態か否かを判定する。ここで制御部71は、現在、炊飯制御手段81、保温制御手段82、予約炊飯制御手段83のいずれかとして機能しており、炊飯器100が切状態ではない(ステップS41で「No」)と判定すると、次のステップS2に移行する。その一方で制御部71は、炊飯制御手段81、保温制御手段82、予約炊飯制御手段83のいずれとしても機能しておらず、炊飯器100が切状態である(ステップS41で「Yes」)と判定すると、ステップS5に移行して、通信手段72を介して情報端末73に遠隔操作炊飯拒否の信号を送出し、情報端末73が、ユーザに遠隔操作で予約炊飯の設定、変更をすることができない旨の報知を行なう。
【0104】
ステップS2では、第1の実施形態と同様に制御部71が、現在、炊飯器100が保温中か否かを判定する。ここで制御部71は、保温中ではない(ステップS2で「No」)と判定すると次のステップS3に移行し、保温中である(ステップS2で「Yes」)と判定するとステップS5に移行する。
【0105】
ステップS3でも、第1の実施形態と同様に制御部71が、現在、炊飯器100が炊飯中か否かを判定する。ここで制御部71は、炊飯工程中ではない(ステップS3で「No」)と判定すると次のステップS42に移行し、炊飯中である(ステップS3で「Yes」)と判定するとステップS5に移行する。
【0106】
ステップS42では制御部71は、炊飯器100が現在、予約炊飯待機状態か否かを判定する。ここで制御部71は、現在、予約炊飯制御手段83として機能している一方で、炊飯制御手段81により炊飯開始させておらず、炊飯器100が予約炊飯待機状態である(ステップS42で「Yes」)と判定すると、次のステップS4に移行して、通信手段72を介して情報端末73に遠隔操作炊飯許可の信号を送出する。その一方で制御部71は、予約炊飯制御手段83として機能していない、あるいは予約炊飯制御手段83として機能しており、炊飯制御手段81により炊飯開始しているため、炊飯器100が予約炊飯待機状態ではない(ステップS42で「No」)と判定すると、ステップS42に移行するまでに炊飯器100の状態が変更した可能性があると判定して、ステップS41に戻り、再度ステップS41、ステップS2、ステップS3で判定を実施する。なお、例えば3回など何度もステップS41に戻ってしまう場合、ステップS5に移行し、制御部71は、通信手段72を介して情報端末73に遠隔操作炊飯拒否の信号を送出するように構成してもよく、この場合に、例えば「炊飯器の状態が確認できません」など、遠隔操作で炊飯が開始できない理由も共に表示するように構成してもよい。
【0107】
その後、ステップS4でユーザが情報端末73の操作部78を操作し、情報端末73から炊飯器100に、第1の実施形態で説明した(2)予約炊飯の設定の変更の信号が送出されて、制御部71が、送受信手段74を介して(2)予約炊飯の設定の変更の信号が受信したと判定すると、ステップS23で説明したように、予約炊飯制御手段83は、受信した予約炊飯の設定に基づいて記憶手段76に記憶された予約炊飯の設定を変更する。その後、予約炊飯制御手段83は、記憶手段76に記憶された予約炊飯の設定で予約炊飯工程を行なうように構成される。
【0108】
以上のように、本実施形態の炊飯器100では、外部装置としての情報端末73と通信可能な通信手段としての送受信手段74と、被炊飯物の炊飯を制御する制御手段としての炊飯制御手段81と、情報端末73から炊飯に関する炊飯情報としての(2)予約炊飯の設定の変更の信号を受信する炊飯指示受付部としての送受信手段74と、予約炊飯を受け付ける予約炊飯受付部としての予約炊飯制御手段83と、を備え、制御部71は、予約炊飯制御手段83により予約炊飯を受け付けた状態で、炊飯制御手段81により炊飯工程が行なわれる炊飯前に送受信手段74が(2)予約炊飯の設定の変更の信号を受信すると、(2)予約炊飯の設定の変更の信号に基づいて予約炊飯の設定を変更して炊飯制御を行なう構成としている。
【0109】
このように構成することにより、予約炊飯による被炊飯物の炊飯が開始されるまでは予約時間を変更することができるため、ユーザの利便性が向上する。
【実施例0110】
図11図13は、本発明における炊飯器100の第3の実施形態を示している。従来、タイマー機能を使用した予約炊飯は、例えば朝食時や夕食時など、所定のタイミングに炊飯工程が完了するようにする目的で主に使用されており、すなわち予約炊飯が行なわれるときには、炊飯完了からユーザが被炊飯物であるご飯を食べるまでの間はそれほど時間がかからないことが多い。しかしながら遠隔操作で炊飯を開始する場合や、遠隔操作で炊上り時刻の設定、変更を行なう場合は、例えば外出先の屋外や、自宅から離れた家屋など、主に炊飯器100から離れた場所から情報端末73を操作することにより行われる一方で、炊飯器100からあまりにも遠く離れた場所から遠隔操作で炊飯開始や炊上り時刻を設定した場合では、炊飯完了のタイミングでは帰宅できずに炊飯器100が設置された家屋Rに到着するのが遅れてしまい、炊き立てのご飯が食べられない虞や、炊飯後に被炊飯物であるご飯をほぐす動作が遅れることによる、当該ご飯のご飯粒同士がくっついてしまう虞があり、当該ご飯の食味低下を招く虞が想定される。
【0111】
そのため本実施形態では、炊飯器100から情報端末73’までの距離が所定の距離Dを超過している場合は、遠隔操作で炊飯が開始できない構成としている。
【0112】
図11は、本実施形態の炊飯器システムの全体構成を概略的に示したものである。本実施形態の情報端末73’は、複数の人工衛星Gからの電波であるGPS信号を受信するGPS信号受信部と、当該GPS信号から情報端末73’の三次元位置(経度、緯度および標高)などの位置情報を計測する位置計測部とを有するものであり、この位置計測部の計測により情報端末73’の現在位置を取得している。また本実施形態の炊飯器100では、当該炊飯器100の位置情報が記憶手段76に記憶されている。なお炊飯器100の位置情報は、通信手段72を介してクラウドサーバや所定のホームページなどから家屋Rの位置情報を炊飯器100の位置情報としてダウンロードするように構成してもよく、ユーザが手動で入力するように構成してもよい。また炊飯器100も情報端末73’と同様に、GPS信号受信部と位置計測部とを有する構成にしてもよい。
【0113】
図12は、情報端末73’により遠隔操作を開始したときの流れが示されている。本実施形態では、ステップS3の後に移行するステップS51が追加された点が、図4に示された第1の実施形態の流れと相違している。
【0114】
ユーザが情報端末73’の操作部78を操作して情報処理プログラムを立ち上げると、情報端末73’の現在位置の情報が遠隔操作信号と共に、通信手段72を介して炊飯器100に送出される。そして制御部71が、送受信手段74を介して情報端末73’の現在位置の情報および遠隔操作信号を受信するとステップS0に移行する。そして第1の実施形態で説明したように、その後、ステップS1~S3に移行し、ステップS3で制御部71が、現在、炊飯中ではない(ステップS3で「No」)と判定すると、次のステップS51に移行する。
【0115】
ステップS51では、制御部71は、炊飯器100と情報端末73’との間の距離を算出し、この距離が、例えば4kmなど所定の距離Dを超過しているか否かを判定する。制御部71は、ステップS0に移行する際に受信した情報端末73’の現在位置の情報と、記憶手段76に記憶された炊飯器100の位置情報と、を比較することにより、情報端末73’と炊飯器100との間の距離を算出する。この場合、当該距離は情報端末73’と炊飯器100との間の直線距離でもよく、当該直線距離に所定の係数を掛け合わせたものでもよく、特に限定されない。そして制御部71は、算出した距離が、例えば4kmなど所定の距離Dを超過しているか否かを判定する。したがって制御部71は、送受信手段74で受信した情報端末73’の現在位置の情報に基づいて、遠隔操作による炊飯開始の信号に基づいた炊飯制御を行うか否かを判断する炊飯可否判断部としての機能も有している。
【0116】
ここで制御部71は、算出した距離が所定の距離Dを超過していない(ステップS51で「No」)と判定すると、次のステップS4に移行して、通信手段72を介して情報端末73’に、例えば記憶手段76に記憶された予約時刻などの予約炊飯に関する情報や遠隔操作炊飯許可の信号を送出する。情報端末73’がこれらの予約炊飯に関する情報や遠隔操作炊飯許可の信号を受信すると、図13(A)に示されるように、情報端末73’の表示部77に、例えば記憶手段76に記憶された予約時刻を表示する炊上り予約時刻の表示体D1や、記憶手段76に記憶された予約時刻の設定を変更する際に操作される「予約時刻変更」のボタン表示体D2や、遠隔操作でタイマー予約による予約炊飯を開始する際に操作される「予約開始」のボタン表示体D3や、遠隔操作での炊飯を開始する際に操作される「炊飯開始」のボタン表示体D4を表示して、ユーザに遠隔操作で炊飯を開始することができる旨の報知を行なう。なお、これらの表示部77の表示は一例であり、本発明はこれらに限定されない。
【0117】
その一方で制御部71は、算出した距離が所定の距離Dを超過している(ステップS51で「Yes」)と判定すると、ステップS5に移行して、通信手段72を介して情報端末73に、例えば当該算出した距離や遠隔操作炊飯拒否の信号を送出する。情報端末73’がこれらの算出した距離や遠隔操作炊飯拒否の信号を受信すると、図13(B)に示されるように、情報端末73’の表示部77に、「炊飯できません」のテキスト表示要素D5や、算出された距離を表示する距離表示体D6や、遠隔操作不可であることを連想させる禁止マークの表示体D7や、遠隔操作が可能になる所定の距離Dを表示する遠隔操作可能距離表示体D8を表示して、ユーザに遠隔操作で炊飯を開始することができない旨の報知を行なう。なお、これらの表示部77の表示は一例であり、本発明はこれらに限定されない。
【0118】
なお本発明はこれらに限定されず、これらの構成は一例である。例えば第1の実施形態のステップS22で説明したように、遠隔操作での炊飯開始の信号は(1)遠隔操作での炊飯開始の指示の信号と(2)遠隔操作でタイマー予約による予約炊飯の設定の信号または予約炊飯の設定の変更の信号と、があり、予め食事をする時間に合わせて予約炊飯の設定、変更を行なう(2)のタイマー予約の予約炊飯と、外出先などからその時々の状況や都合に応じて炊飯を行なう(1)の遠隔操作炊飯では、使用する目的が異なる。特に(1)遠隔操作炊飯では、(2)タイマー予約の予約炊飯と比較して、炊飯完了時刻とユーザが家屋Rに到着してご飯を食べる時刻に差異が生じる可能性が高いことが想定されるため、(1)遠隔操作炊飯では、炊き立ての美味しいご飯を食べることができない可能性が高くなると想定される。そのため、例えばステップS4で説明した情報端末73’の表示部77に「炊飯開始」のボタン表示体D4を表示しないように構成するなど、炊飯器100から情報端末73までの距離が所定の距離Dを超過している場合に(1)遠隔操作炊飯のみができず、(2)タイマー予約の予約炊飯はできるように構成してもよい。
【0119】
また所定の距離Dを変更できるように構成してもよく、例えば炊飯工程の全時間が45分の場合は、移動時間を30分として帰宅可能な距離である、徒歩なら2km、自転車なら4km、自動車なら10kmとして、これらの数値から所定の距離Dを選択できるように構成してもよい。
【0120】
さらに炊飯器100から情報端末73’までの距離が所定の距離Dを超過している場合に遠隔操作で炊飯が開始できない構成を、適量の米と水を炊飯直前に鍋に自動投入して炊飯を行なう構成の自動式の炊飯器や、南瓜の煮物、豚の角煮、煮豚、スープなどの各種の調理メニューを自動調理する構成の、電気式鍋や圧力調理器に応用してもよく、被炊飯物も白米炊飯に限定されず玄米の炊飯に応用してもよい。
【0121】
以上のように、本実施形態の炊飯器100では、外部装置としての情報端末73’と通信可能な通信手段としての送受信手段74と、被炊飯物の炊飯を制御する制御手段としての炊飯制御手段81と、情報端末73’から炊飯に関する炊飯情報としての遠隔操作による炊飯開始の信号を受信する炊飯指示受付部としての送受信手段74と、情報端末73’と炊飯器100との距離情報としての情報端末73’の現在位置の情報を受信する距離情報受付部としての送受信手段74と、を備え、制御部71は、送受信手段74で遠隔操作による炊飯開始の信号を受信すると、送受信手段74で受信した情報端末73’の現在位置の情報に基づいて、遠隔操作による炊飯開始の信号に基づいた炊飯制御を行うか否かを判断する構成としている。
【0122】
このように構成することにより、制御部71は、ユーザが所有する情報端末73’と炊飯器100との距離Dに応じて炊飯開始の可否を判定するため、炊飯完了時間とユーザの帰宅時間との隔たりを抑制することができる。
【0123】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば第1~第3の実施形態および変形例を組み合わせて構成してもよい。また実施形態中で例示した数値などはあくまでも一例にすぎず、炊飯器の仕様などに応じて適宜変更してかまわない。
【符号の説明】
【0124】
1 内釜
15 内釜温度センサ(温度検知手段)
65 減圧手段(減圧脱気手段)
73,73’ 情報端末(外部装置)
74 送受信手段(通信手段、炊飯指示受付部、距離情報受付部)
79 計時手段
81 炊飯制御手段(制御手段)
83 予約炊飯制御手段(予約炊飯受付部)
100 炊飯器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13