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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098817
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】替芯ケース
(51)【国際特許分類】
   B43K 19/14 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B43K19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002555
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514004426
【氏名又は名称】株式会社小林スプリング製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】大場 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】川端 慎大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂義
(57)【要約】
【課題】ケース本体とカバー部材との間の相対的なスライド操作において、明確なクリック感を伴う操作感触を得ることができ、長期にわたって適切なクリック機能を維持することが可能な替芯ケースを提供する。
【解決手段】背面板1cと左右の脚板1dにより囲まれて長尺状に形成された替芯収容室1aの長手方向の一端部に形成された芯取り出し口1bに、蓋体2を開閉可能に取り付けたケース本体1と、ケース本体の背面板との間に所定の間隔をおいて、替芯収容室を覆う前面板5aを有し、ケース本体との間で替芯収容室の長手方向に沿ってスライド動作が可能なカバー部材5を備える。カバー部材のケース本体側に対峙する内面には、スライド動作によって、ケース本体側との間でクリック動作を発生させるクリック突起5d1が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面板と左右の脚板により囲まれて長尺状に形成された内側空間を、替芯収容室にすると共に、前記替芯収容室の長手方向の一端部に形成された芯取り出し口に、蓋体を開閉可能に取り付けたケース本体と、
前記ケース本体の背面板との間に所定の間隔をおいて、前記替芯収容室を覆う前面板を有し、ケース本体との間で前記替芯収容室の長手方向に沿ってスライド動作が可能なカバー部材を備え、
前記カバー部材の前面板におけるケース本体側に対峙する内面には、前記スライド動作によって、ケース本体側との間でクリック動作を発生させるクリック突起が形成され、
前記ケース本体に対して、前記カバー部材を他端部に向かって後退させるスライド動作に伴い、前記芯取り出し口を覆う前記蓋体が開放されることを特徴とする替芯ケース。
【請求項2】
前記ケース本体の替芯収容室を覆うようにして、ウォール部材がケース本体に配置されると共に、前記ウォール部材と前記カバー部材との間には、板バネがケース本体側に取り付けられて配置され、
前記板バネの前記カバー部材に対峙する面には、前記スライド動作において、前記カバー部材に形成されたクリック突起を乗り越えてクリック動作がなされるバネ側突起が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の替芯ケース。
【請求項3】
前記ケース本体、蓋体、カバー部材、ウォール部材及び板バネは、それぞれ金属素材により構成されていることを特徴とする請求項2に記載の替芯ケース。
【請求項4】
前記カバー部材に形成されたクリック突起は、前記ケース本体とのスライド方向に沿って所定の長さを有し、前記スライド動作によって、ケース本体に対してカバー部材が最も前進して、前記蓋体が閉じた第1状態と、ケース本体に対してカバー部材が最も後退して、前記蓋体が解放した第2状態において、前記バネ側突起が前記クリック突起を乗り越えることを特徴とする請求項2に記載の替芯ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャープペンシル等に用いられる筆記芯を収容する替芯ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
シャープペンシル等に用いられる筆記芯を収容する替芯ケースは、縦長に成形された有底状のケース本体と、このケース本体の開口部に着脱可能に装着される蓋体との二部品により構成される例が多い。
例えば特許文献1に開示された替芯ケースは、樹脂素材によるケース本体と、樹脂素材による蓋体との二部品により構成されており、前記蓋体は替芯ケースの長手方向に直交する方向にスライドさせることで、ケース本体の開口部(替芯の取出し口)が開放される。
この場合、ケース開口部に対する蓋体のスライド位置が、例えば2段階に設定できるように構成されており、これにより、ユーザは替芯を取り出すのに適した広さの開口を設定することができる。
【0003】
また、特許文献2に開示された替芯ケースは、同じく樹脂素材によるケース本体と、樹脂素材による蓋体との二部品により構成されており、有底状のケース本体の開口部に、蓋体が着脱可能に取り付けられる。
ケース本体に形成された前記開口部(替芯の取出し口)は、前面側において斜めにカットされており、これにより、ユーザは替芯を指先で摘むことができるように構成され、使い易い替芯ケースを実現させている。
【0004】
しかし、前記した特許文献1及び2に開示された替芯ケースにおいては、いずれも替芯取出し口を開けた状態で、取出し口が若干下に向くようにケース本体を傾ける操作が必要となる。そして、替芯が自身の重力によって、ケース本体内から取出し口に出ることを利用して、必要とする替芯を取り出すものとなる。
これによると、ケース本体の傾きを調整しつつ、ケース本体を揺り動かすなどの微妙な操作が要求される。この操作を誤ると、必要以上の替芯、あるいはケース本体内の全ての替芯が取出し口から飛び出して、床面に散乱することもあり、床面に散乱した替芯を拾い戻す作業が強いられる場合も発生する。
【0005】
そこで、本件出願人は、前記した替芯ケースの問題点を解消するために、芯の取出し口を下向きにすることなく必要とする替芯を容易に取り出すことができる替芯ケースについて先に提案をしており、これは特許文献3に開示されている。
【0006】
この特許文献3に開示された替芯ケースによると、縦長に形成された背面側のケース本体に対して、縦長に形成された前面側のカバー部材を手前に引いて、背面側のケース本体を相対的に前方にスライドさせて繰り出すことにより、ケース本体の先端部に一体成形された蓋体が、背面側に反って回動するように動作する。これにより、ケース内に収容された替芯の先端部が、広口の芯取り出し口から突出した状態で芯取り出し口が開口される。
従って、芯の取出し口を下向きにすることなく必要とする替芯を、指先で摘んで容易に取り出すことができるので、前記した従来の替芯ケースが有する多量の替芯がケースから同時に飛び出すなどの問題点を解消した替芯ケースを提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-30136号公報
【特許文献2】特開2010-173248号公報
【特許文献3】特開2022-96637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献3に開示された替芯ケースによると、相対的にスライド可能なケース本体とカバー部材との間にはクリック機構が施され、これにより替芯を収容した替芯ケースの保管状態においては、蓋体が確実に閉じた状態を保つことができるように配慮されている。
【0009】
しかし、特許文献3に開示された替芯ケースにおいては、互いに扁平状に形成されたケース本体とカバー部材のそれぞれの左右の厚み方向に形成された脚板に、リブ状の突起を施してクリック機構を形成しているために、リブ状突起の成形幅に制限が加わる。
このためにケース本体とカバー部材との間のスライド操作において、明確なクリック感を伴う操作感触を得ることが難しく、しかもケース本体とカバー部材を樹脂素材により形成した場合には、リブ状突起の成形幅が狭いためにリブ状突起の摩耗が進み易い。従って、長期にわたるクリック機構の維持が困難になるために、商品価値を落とす要因になる。
【0010】
この発明は、従来の替芯ケースにおける前記した問題点に着目してなされたものであり、ケース本体とカバー部材との間の相対的なスライド操作において、明確なクリック感を伴う操作感触を得ることができ、長期にわたって適切なクリック機能を維持することが可能な替芯ケースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る替芯ケースは、背面板と左右の脚板により囲まれて長尺状に形成された内側空間を、替芯収容室にすると共に、前記替芯収容室の長手方向の一端部に形成された芯取り出し口に、蓋体を開閉可能に取り付けたケース本体と、前記ケース本体の背面板との間に所定の間隔をおいて、前記替芯収容室を覆う前面板を有し、ケース本体との間で前記替芯収容室の長手方向に沿ってスライド動作が可能なカバー部材を備え、前記カバー部材の前面板におけるケース本体側に対峙する内面には、前記スライド動作によって、ケース本体側との間でクリック動作を発生させるクリック突起が形成され、前記ケース本体に対して、前記カバー部材を他端部に向かって後退させるスライド動作に伴い、前記芯取り出し口を覆う前記蓋体が開放されることを特徴とする。
【0012】
この場合、前記ケース本体の替芯収容室を覆うようにして、ウォール部材がケース本体に配置されると共に、前記ウォール部材と前記カバー部材との間には、板バネがケース本体側に取り付けられて配置され、前記板バネの前記カバー部材に対峙する面には、前記スライド動作において、前記カバー部材に形成されたクリック突起を乗り越えてクリック動作がなされるバネ側突起が形成されていることが望ましい。
【0013】
また、前記ケース本体、蓋体、カバー部材、ウォール部材及び板バネは、それぞれ金属素材により構成されていることが望ましい。
【0014】
そして、好ましい実施の形態においては、前記カバー部材に形成されたクリック突起は、前記ケース本体とのスライド方向に沿って所定の長さを有し、前記スライド動作によって、ケース本体に対してカバー部材が最も前進して、前記蓋体が閉じた第1状態と、ケース本体に対してカバー部材が最も後退して、前記蓋体が解放した第2状態において、前記バネ側突起が前記クリック突起を乗り越えるように構成される。
【発明の効果】
【0015】
前記したこの発明に係る替芯ケースによると、ケース本体との間でスライド動作がなされるカバー部材側には、カバー部材の前面板におけるケース本体側に対峙する内面に、スライド動作によって、ケース本体側との間でクリック動作を発生させるクリック突起が形成される。
替芯ケースは、一般に後で説明する実施の形態のように、替芯を収容するために細長い扁平状の直方体に形成されるので、クリック動作を発生させるためのクリック突起を、カバー部材の前面側の内面に形成することで、より広い幅を有するクリック突起とすることができる。
これにより、ケース本体とカバー部材との間の相対的なスライド操作において、明確なクリック感を伴う操作感触を得ることができ、長期にわたってクリック突起の摩耗を阻止して、適切なクリック機能を維持することが可能な替芯ケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】替芯ケースを構成する各部材を展開した状態で示した斜視図である。
図2】替芯ケースの蓋体を閉じた状態の斜視図である。
図3】替芯ケースの蓋体を開放した状態の斜視図である。
図4】この発明に係る替芯ケースの平面図である。
図5】同じく替芯ケースの正面図である。
図6】同じく替芯ケースの底面図である。
図7】同じく替芯ケースの背面図である。
図8図4におけるa-a線より矢印方向に見た替芯ケースの断面図である。
図9図8における一部の拡大断面図である。
図10】蓋体を開放した状態の替芯ケースの平面図である。
図11】同じく替芯ケースの正面図である。
図12図10におけるb-b線より矢印方向に見た替芯ケースの断面図である。
図13図12における一部の拡大断面図である。
図14A】ケース本体の単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(A)におけるc-c線より矢印方向に見た断面図、(D)は底面図である。
図14B】ケース本体の単品構成を示し、(A)は内側から見た斜視図、(B)は左側面図、(C)は右側面図である。
図15】蓋体の単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(A)におけるd-d線より矢印方向に見た断面図、(D)は底面図、(E)は背面側から見た斜視図、(F)は内側から見た斜視図である。
図16A】ウォール部材の単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(A)におけるe-e線より矢印方向に見た断面図、(D)は底面図である。
図16B】ウォール部材の単品構成を示し、(A)は内側から見た斜視図、(B)は左側面図、(C)は右側面図である。
図17A】板バネの単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(A)におけるf-f線より矢印方向に見た断面図、(D)は底面図である。
図17B】板バネの単品構成を示し、(A)は正面側から見た斜視図、(B)は左側面図、(C)は右側面図である。
図18A】カバー部材部材の単品構成を示し、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(A)におけるg-g線より矢印方向に見た断面図、(D)は底面図である。
図18B】カバー部材の単品構成を示し、(A)は内側から見た斜視図、(B)は左側面図、(C)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明に係る替芯ケースについて、図に基づいて説明する。
なお、以下に示す各図においては、同一部分を同一符号で示しているが、一部の図面においては紙面の都合により代表的な部分に符号を付けて、その細部については各部品の単品構成で示したそれぞれの図面に付けた符号を引用して説明する。
【0018】
図1は、替芯ケースを構成する各部材を展開した状態で示しており、この替芯ケースはケース本体1、蓋体2、ウォール部材3、板バネ4、カバー部材5より構成されており、これらの各部材は好ましくは、ステンレス鋼などの金属素材をプレス成形することで構成される。
ケース本体1には、長尺状に形成された内側空間が形成され、この長尺状の内側空間が替芯収容室1aを構成している。替芯収容室1aの長手方向の一端部が芯取り出し口1bを構成しており、この芯取り出し口1bを開閉可能にする蓋体2が、ケース本体1に対して回動可能に取り付けられている。
【0019】
前記ケース本体1の替芯収容室1aを覆うようにして、ウォール部材3がケース本体1内に配置されると共に、ウォール部材3の上には、板バネ4がケース本体1側に取り付けられて配置されている。
そして、ウォール部材3と板バネ4をケース本体1側に収容した状態で、その上部にケース本体1の長手方向に沿ってカバー部材5がスライド可能となるように、ケース本体1に取り付けられている。
【0020】
図2及び図3は、前記した各部材が組み上げられて替芯ケースを構成した外観構成を斜視図で示している。すなわち、図2はケース本体1に対するカバー部材5のスライド動作により、ケース本体1に対してカバー部材5が最も前進して、前記蓋体2が閉じた第1状態を示している。また、図3は前記スライド動作により、ケース本体1に対してカバー部材5が最も後退して、前記蓋体2が解放した第2状態を示している。
そして、図4乃至図9は前記した第1状態における替芯ケースを、基本六面図の一部及び断面図で示しており、図10乃至図13は前記した第2状態における替芯ケースを、基本六面図の一部及び断面図で示している。
なお、以下においては説明の便宜上、ケース本体2に取り付けられた蓋体2側、すなわち、芯取出し口1b側を替芯ケースの一端又は前端と呼び、その反対側を替芯ケースの他端又は後端と呼ぶことにする。
【0021】
図14図18に、前記したケース本体1、蓋体2、ウォール部材3、板バネ4、カバー部材5の各単品構成が示されており、先ずはこれらの単品構成を示す各図に基づいて、各部材の構成について説明する。
図14A及び図14Bに示すケース本体1は、矩形状の背面板1cと左右の脚板1dとにより、長手方向に直交する断面がコ字状に成形されており、左右の脚板1dと後端を塞ぐ後端閉塞板1eの三方で囲まれた内側が、背面板1cを底面とする前記した替芯収容室1aを構成している。また、前端部側は開放されて前記した芯取り出し口1bを構成している。
【0022】
前記した左右の脚板1dには、それぞれ長手方向に沿って、互いに外側から内側に向かって凹む直線溝1fが、平行した状態でプレス加工によって成形されている。なお、この直線溝1fは後述するカバー部材5を、長手方向に沿ってスライド可能に支持する機能を果たす。
また、左右の脚板1dの前端部側には支軸孔1gがそれぞれ対向して形成されており、この一対の支軸孔1gは、後述する蓋体2を芯取り出し口1bにおいて回動可能に取り付けるために利用される。
【0023】
図15に示す蓋体2は、背面板2aの左右に折り曲げ形成された脚板2bと、背面板2aの前端部において前記脚板2bと同方向に折り曲げ形成された前端閉塞板2cを有し、前記一対の脚板2bと前端閉塞板2cで囲まれた部分が、蓋体2の内側を構成する。
加えて、左右の脚板2bにそれぞれ連続して、後端側に延びる細長い一対の脚部2dが、ほぼ同一寸法の長さに形成されており、この脚部2dの端部には、互いに内側に向かって突出するように成形された短小な突出軸2eが、それぞれプレス加工により成形されている。
【0024】
左右の脚部2dに形成された互いに内側に向かう突出軸2eは、前記したケース本体1の前端部側に形成された一対の支軸孔1gに対して、それぞれ両外側から挿入され、蓋体2はケース本体1の前端部に回動可能に取り付けられる。
これにより、図2に示すようにケース本体1に対してカバー部材5が最も前進して、蓋体2が閉じた第1状態にされた場合おいては、蓋体2の背面板2aはケース本体1の背面板1cと面一の状態になされる。また、図3に示すようにケース本体1に対してカバー部材5が最も後退して第2状態にされた場合おいては、蓋体2は自重により垂下して、芯取り出し口1bが解放した状態となる。
【0025】
図16A及び図16Bはウォール部材3を示している。このウォール部材3は細長い天板3aの長手方向の左右両辺に、一対の側板3bが同一方向に折り曲げ成形されて、長手方向に直行する断面がコ字状に形成されている。
そして、ウォール部材3の前端部には前記側板3bが延長されて、互いに斜めの両外側に開くようにして、一対の保護板3cが形成されている。またウォール部材3の後端部には前記側板3bが延長されて、側板3bに直交するように互いに外側に折り曲げられて、一対の係止片3dが形成されている。
さらに、前記した天板3aの前端部には、起立片3eが前記した一対の側板3bの折り曲げ方向とは逆方向に折り曲げられて形成されている。
【0026】
前記したように構成されたウォール部材3は、天板3aを上にして、ケース本体1の替芯収容室1aを覆うようにして装着される。これにより、替芯収容室1aはウォール部材3の天板3aと左右両側板3bによって囲まれて構成されている。
なお、ウォール部材3をケース本体1に装着するに際しては、ウォール部材3の後端部に形成された一対の係止片3dを、ケース本体1における後端閉塞板1eと左右の脚板1dとの間に形成された隙間にそれぞれ挿入する。これにより、ウォール部材3がケース本体内1で長手方向に移動するが阻止される。
【0027】
前記したようにケース本体1にウォール部材3を装着したことで、ケース本体1の芯取り出し口1bの左右には、図3に示すようにウォール部材3の保護板3cが位置することで、替芯容室1aに収容された替芯の先端部が替芯ケースの長手方向に向くように規制される。これにより、前記したケース本体1に対するカバー部材5のスライド動作に伴い、図2に示すように蓋体2が閉じられるように操作した場合、替芯収容室1aに収容された替芯の先端部が、蓋体2とケース本体1の先端部との間に挟まれて、折損するなどの問題が生ずるのを防止するように作用する。
また、ウォール部材3に設けられた起立片3eは、ウォール部材3の天板3aと後述するカバー部材5の前面板5aとの間の隙間を閉塞して、替芯が誤挿入されるのが防止できるように作用する。
【0028】
図17A及び図17Bは、板バネ4の単品構成を示しており、これは矩形状の板体によって構成される。すなわち、矩形状の板体は長手方向の中央部が上部に向かって凸となるように塑性変形されて湾曲板4aを構成しており、この湾曲板4aの中央部には、前記長手方向に直交する方向に細長く突出する突起4b(以下、これをバネ側突起と称する。)が形成されている。この細長いバネ側突起4bの上面は、ほぼ平坦になされており、バネ側突起4bを囲むようにして湾曲板4aとの間に傾斜面4b1が形成されている。
また、板バネ4の後端部には、前記バネ側突起4bの突出方向とは反対面に向かって、湾曲板4aの端部がほぼ直角に折り曲げられて後端屈曲片4cを形成している。また、板バネ4の先端部には、バネ側突起4bの突出方向と同方向に、湾曲板4aの端部がほぼ直角に折り曲げられて前端起立片4dを形成している。
【0029】
前記した板バネ4は、バネ側突起4bが上となるようにして、ケース本体1の替芯収容室1aを覆うウォール部材3上に載置される。この場合、板バネ4の後端屈曲片4cを、ケース本体1の後端閉塞板1eとウォール部材3の天板3aとの間に形成された隙間に挿入することで、板バネ4は長手方向への移動が阻止された状態で、ケース本体1側に取り付けられる。
なお、ケース本体1側に配置された板バネ4の前端起立片4dは、ウォール部材3に形成された起立片3eの直後に、平行した状態で配置(図8図12参照)される。
【0030】
図18A及び図18Bは、カバー部材5の単品構成を示している。このカバー部材5は、矩形状に形成された前面板5aの長手方向の左右両辺に、一対の外側脚板5bが同一方向に折り曲げ成形されて、カバー部材5の長手方向に直行する断面が、コ字状に形成されている。そして、前面板5aの後端部も、外側脚板5bと同方向に折り曲げられて後端外側閉塞板5cを構成している。
前面板5aの上面中央部には円形状の窪み5dがプレス加工により成形されている。この窪み5dはケース本体1対してカバー部材5をスライド操作するに際して、この窪み5dに例えば親指の腹を当てることで、親指とカバー部材5との滑りを防止して、スライド操作を円滑になし得ることができる。
【0031】
円形状の窪み5dは前面板5aの背面側において、円形状の突起として形成されており、これは前記したスライド操作において、板バネ4側のバネ側突起4bに接して、両者間でクリック動作がなされるクリック突起5d1として機能する。なお、この時になされるクリック動作については、後で説明する。
また、左右一対の外側脚板5bの長手方向の中央部には、各外側脚板5bの両外側から内側に向かって突出する3つの小突起状のスライダー5eが、それぞれ直線状に配列されている。この小突起状のスライダー5eは、ケース本体1の左右の脚板1dに施された直線状凹み溝1fに対して、それぞれ外側から嵌め込まれることで、ケース本体1に対してカバー部材5が長手方向にスライド可能に支持される。
【0032】
また、左右一対の外側脚板5bの前端部側は、前面板5aに対する外側脚板5bの立ち下がり寸法が小さく成形されており、立ち下がり寸法が小さい外側脚板5b部分には、前方に向かって外側脚板5bから延出する短小なガイドアーム5fが形成されている。これにより、ガイドアーム5fと立ち下がり寸法が小さい外側脚板5bとの間には、ガイド溝5gが形成されている。
前記ガイドアーム5fとガイド溝5gは、ケース本体1に対するカバー部材5のスライド操作において、前記した蓋体2の開閉動作を実現させるものであり、この蓋体2の開閉動作については、後で説明する。
【0033】
以上説明した符号1~5で示した各部材を備えた替芯ケースは、前記したとおりケース本体1の左右の脚板1dに施された直線状凹み溝1fに対して、カバー部材5の外側脚板5bに施された小突起状のスライダー5eを外側から嵌め込むことで、替芯ケースが組み上げられる。
この替芯ケースによると、前記した板バネ4における湾曲板4aの中央部に形成されたバネ側突起4bは、カバー部材5の前面板5aの背面に対して、適度なバネ圧をもって当接した状態になされる。
【0034】
一方、前記カバー部材5に形成されたクリック突起5d1は円形状に構成され、前記したスライド方向(カバー部材5の長手方向)に沿って、前記円形状の直径に相当する所定の長さを有している。
そして、前記したスライド操作により、板バネ4のバネ側突起4bがカバー部材5に形成されたクリック突起5d1に相対的に乗り上げ、クリック突起5d1を乗り越えたクリック突起5d1の端部において、バネ側突起4bがカバー部材5の前面板5a側に落ち込む際に、明確なクリック動作の感触を得ることができる。
【0035】
図8及び図9は、前記したスライド操作によって、ケース替芯本体1に対してカバー部材5が最も前進した前記第1状態(図2参照。)になされた場合におけるカバー部材5側のクリック突起5d1と、板バネ4側のバネ側突起4bの位置関係を示している。
なお、この第1状態においては、カバー部材5の左右の外側脚板5bに形成された最も前端側に位置する小突起状のスライダー5eが、ケース本体1の左右の脚板1dに形成された直線状凹み溝1fの前端部側に位置し、また図8に示すようにカバー部材5の後端外側閉塞板5cは、ケース本体1の後端閉塞板1eに当接した状態となる。従ってケース本体1に対してこれ以上のカバー部材5の前進は阻止された状態となる。
この第1状態においては図9に示すように、カバー部材5側のクリック突起5d1の直後に板バネ4側のバネ側突起4bが、カバー部材5における前面板5aの背面に落ち込んだ状態で位置する。
【0036】
図12及び図13は、前記したスライド操作によって、ケース替芯本体1に対してカバー部材5が最も後退した前記第2状態(図3参照。)になされた場合におけるカバー部材5側のクリック突起5d1と、板バネ4側のバネ側突起4bの位置関係を示している。
なお、この第2状態においては、カバー部材5の左右の外側脚板5bに形成された最も後端側に位置する小突起状のスライダー5eが、ケース本体1の左右の脚板1dに形成された直線状凹み溝1fの後端部側に位置した状態となる。従ってケース本体1に対してこれ以上のカバー部材5の後退は阻止された状態となる。
この第2状態においては図13に示すように、カバー部材5側のクリック突起5d1の直前に板バネ4側のバネ側突起4bが、カバー部材5における前面板5aの背面に落ち込んだ状態で位置する。
【0037】
従って、この替芯ケースによると、前記した第1状態から第2状態に至る際、また第2状態から第1状態に至る際に、それぞれ明確なクリックの感触を伴うスライド操作が実現される。
そして、前記したクリック突起5d1は、カバー部材5の前面板5aの内面に形成され、長手方向に直交する広い幅を有するクリック突起5d1とすることができる。これにより、ケース本体1とカバー部材5との間の相対的なスライド操作において、明確なクリック感を伴う操作感触を得ることができると共に、長期にわたってクリック突起5d1の摩耗を阻止して、適切なクリック機能を維持することが可能な替芯ケースを提供することができる。
【0038】
一方、替芯ケースの前端部に位置する蓋体2は、前記したスライド操作に伴って、芯取り出し口1bにおいて開閉動作が行われる。
すなわち、図2に示す第1状態においては、蓋体2の脚部2dはカバー部材5に設けられたガイド溝5g(図18A参照。)内に収容されて、脚部2dはカバー部材5の長手方向と同方向の姿勢を保つように拘束される。これにより、蓋体2は芯取り出し口1bを閉じた状態を維持する。
また、図3に示す第2状態においては、カバー部材5はケース本体1から後退し、蓋体2の脚部2dはカバー部材5に設けられたガイド溝5gによる拘束が解かれる。これにより、ケース本体1の軸支孔1bに支持された突出軸2eによって、蓋体2は回動可能となり、蓋体2は自重により下向きに垂下し、芯取り出し口1bは開放される。
【0039】
さらに、図3に示す第2状態から図2に示す第1状態に戻る際には、ケース本体1に対するカバー部材5の前進に伴って、蓋体2を回動可能に支持する突出軸2eが、カバー部材5に施されたガイド溝5gに入り込み、蓋体2の脚部2dが前記ガイド溝5gに侵入する。これにより、蓋体2の脚部2dはカバー部材5に設けられたガイド溝5g内に収容されて、脚部2dはカバー部材5に向かって回動し、脚部2dはカバー部材5の長手方向と同方向の姿勢を保つように、ガイド溝5gによって拘束される。従って、蓋体2は図2に示すように芯取り出し口1bを閉じた状態になされる。
【0040】
以上のとおり、この実施の形態に係る替芯収容ケースによると、ケース本体1に対するカバー部材5のスライド操作により、適切なクリック動作がなされると共に、蓋体2が連動して芯取出し口1bを開閉するので、ユーザにとって使い易い替芯ケースを提供することができる。
【0041】
以上説明した実施の形態においては、替芯ケース内にウォール部材3が備えられているが、このウォール部材3は必ずしも必要ではない。
実施の形態においては、ウォール部材3は天板3aにおいて板バネ4の前端部を支持する機能を果たすが、板バネ4の前端部側をケース本体1の一部に係止させて、板バネ4によって芯取り出し口1bを塞ぐことがないように構成することで、ウォール部材3は省略することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ケース本体
1a 替芯収容室
1b 芯取り出し口
1c 背面板
1d 脚板
1e 後端閉塞板
1f 直線状凹み溝
1g 軸支孔
2 蓋体
2a 背面板
2b 脚板
2c 前端閉塞板
2d 脚部
2e 突出軸
3 ウォール部材
3a 天板
3b 側板
3c 保護板
3d 係止片
3e 起立片
4 板バネ
4a 湾曲板
4b バネ側突起
4b1 傾斜面
4c 後端屈曲片
4d 前部起立片
5 カバー部材
5a 前面板
5b 外側脚板
5c 後端外側閉塞板
5d 窪み
5d1 クリック突起
5e スライダー
5f ガイドアーム
5g ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9
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図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B