(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098833
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】走行計画算出装置及び自動列車運転装置
(51)【国際特許分類】
B61L 27/14 20220101AFI20240717BHJP
B60L 15/40 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B61L27/14
B60L15/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002579
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 純子
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 創
(72)【発明者】
【氏名】服部 陽平
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125EE52
5H125EE55
5H161AA01
5H161JJ01
5H161JJ24
(57)【要約】
【課題】臨時速度制限が設定される場合に、臨時速度制限の設定範囲の次の駅への到着(または駅の通過)の遅れを最小限とする。
【解決手段】実施形態の走行計画算出装置は、列車の現在地における次駅より先の臨時速度制限の設定される駅間を走行計画算出範囲として決定する走行計画算出範囲決定部と、走行計画算出範囲とした駅間の目標走行時間を運行情報に基づいて決定する目標走行時間算出部と、走行計画算出範囲の駅間を所定の条件の下で最短の時間で走行するための最速走行計画を仮計画として算出する仮計画算出部と、目標走行時間と仮計画に対応する目標走行時間と、を比較して仮計画の採否を判定する仮計画採否判定部と、を備え、目標走行時間算出部は、仮計画に対応する目標走行時間が運行情報に基づいて決定された目標走行時間を超過する超過時間を算出し、当該駅間より手前の駅間の所定の走行時間から超過時間の少なくとも一部を減じて手前の駅間での目標走行時間とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の現在地における次駅より先の臨時速度制限の設定される駅間を走行計画算出範囲として決定する走行計画算出範囲決定部と、
前記走行計画算出範囲とした駅間の目標走行時間を運行情報に基づいて決定する目標走行時間算出部と、
前記走行計画算出範囲の駅間を所定の条件の下で最短の時間で走行するための最速走行計画を仮計画として算出する仮計画算出部と、
前記目標走行時間と前記仮計画に対応する目標走行時間と、を比較して仮計画の採否を判定する仮計画採否判定部と、を備え、
前記目標走行時間算出部は、前記仮計画に対応する目標走行時間が前記運行情報に基づいて決定された目標走行時間を超過する超過時間を算出し、当該駅間より手前の駅間の所定の走行時間から前記超過時間の少なくとも一部を減じて手前の駅間での目標走行時間とする、
走行計画算出装置。
【請求項2】
前記所定の条件とは、算出した最速走行計画の力行部分とブレーキ部分の間に所定時間以上の惰行を追加し、乗り心地を考慮することである、
請求項1に記載の走行計画算出装置。
【請求項3】
目標走行時間算出部は、次駅より先の駅間での所定の駅間走行時間に対する最速走行計画の超過時間を、当該駅間より手前の駅間の所定の走行時間から、所定の走行時間に含まれる余裕時間を超えない範囲で減じる、
請求項1に記載の走行計画算出装置。
【請求項4】
前記目標走行時間算出部は、次駅より先の駅間での所定の駅間走行時間に対する最速走行計画の超過時間を、当該駅間より手前の複数の駅間に、当該駅間に近い方の駅間で多くなるように、それぞれの駅間の所定の走行時間に含まれる余裕時間を超えない範囲で配分して減じる、
請求項1に記載の走行計画算出装置。
【請求項5】
走行計画算出範囲決定部は、対応する列車の種別にかかわらず、次の優等列車の停車駅までの範囲で、次駅より先の臨時速度制限の設定される駅間を、走行計画算出範囲として決定する、
請求項1に記載の走行計画算出装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の走行計画算出装置と、
列車の速度と位置を検出する速度位置検出部と、
路線情報、制限速度情報、運行情報、車両情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された路線情報、制限速度情報、運行情報、車両情報と、前記速度位置検出部の検出結果とに基づいて、駅間の走行計画を算出する走行計画算出部と、
前記速度位置検出部の検出結果と、前記走行計画算出部の算出した走行計画に基づいて、駆動/制動制御装置への制御指令を算出する制御指令算出部と、を備えた、
自動列車運転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、走行計画算出装置及び自動列車運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動列車運転(ATO)装置には、制限速度、停止位置及び運行ダイヤを守るように、列車を走行させることが要求される。
【0003】
運転種別が優等列車の場合は、停車駅への到着時刻だけでなく、通過駅での通過時刻も守る必要がある。駅通過が遅れると、自列車に追い抜かれるのを待っている普通列車の出発進路構成が遅れ、遅延が伝播する。駅通過が早すぎると、抜かれる予定の普通列車が副本線に待避完了して自列車用の場内進路が構成される前に、駅構内入口に達し、停止信号を受けてブレーキを掛けることとなり、乗り心地が悪化し、無駄な電力を消費してしまう。そこで、駅通過時刻を守るように列車を走行させるために、通過駅間の走行時間が目標走行時間に合うように走行計画を立てる方法が複数提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-251953号公報
【特許文献2】特開2019-142292号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、路線の一部での工事計画や強風予報などに基づき、路線の一部に臨時速度制限が一時的に設定される場合がある。
臨時速度制限の制限速度が低く、制限区間の範囲が広いと、臨時速度制限の前後の駅間を所定の駅間走行時分内に走行できなくなり、ATO装置が、通過駅毎に通過時刻を守りながら列車を走行させようとしても、臨速の設定範囲の次の駅への到着(または駅の通過)が遅延してしまう虞があった。
【0006】
これを回避するため、地上の運行管理装置で、駅間毎の時間配分を変更した運行ダイヤを作成し、変更内容を各列車に通知すれば、遅延とはならない。しかし、数時間程度の臨時速度制限に対して運行ダイヤを変更するのは、運行管理部門の負担が大きいという問題点が生じる。
【0007】
また、悪天候などの要因により、急遽、臨時速度制限を設定する場合は、運行ダイヤの変更が間に合わない虞があった。さらに、軌道回路と列車無線を介して車上に情報を送る路線では、送れる情報量に限りがあり、各列車に修正した運行ダイヤ情報を通知するのは困難であった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、臨時速度制限が設定される場合に、臨時速度制限の設定範囲の次の駅への到着(または駅の通過)の遅れを最小限とすることが可能な走行計画算出装置及び自動列車運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の走行計画算出装置は、列車の現在地における次駅より先の臨時速度制限の設定される駅間を走行計画算出範囲として決定する走行計画算出範囲決定部と、走行計画算出範囲とした駅間の目標走行時間を運行情報に基づいて決定する目標走行時間算出部と、走行計画算出範囲の駅間を所定の条件の下で最短の時間で走行するための最速走行計画を仮計画として算出する仮計画算出部と、目標走行時間と仮計画に対応する目標走行時間と、を比較して仮計画の採否を判定する仮計画採否判定部と、を備え、目標走行時間算出部は、仮計画に対応する目標走行時間が運行情報に基づいて決定された目標走行時間を超過する超過時間を算出し、当該駅間より手前の駅間の所定の走行時間から超過時間の少なくとも一部を減じて手前の駅間での目標走行時間とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態の自動列車運転装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の制御指令算出部の制御処理フローチャートである。
【
図3】
図3は、走行計画算出部の機能構成ブロック図である。
【
図4】
図4は、走行計画算出部の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の自動列車運転装置について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態の自動列車運転装置の構成を示す図である。
図1において、列車10には、速度位置検出部11、ATC車上装置12、自動列車運転装置13及び駆動/制動制御装置14が設置されている。
【0012】
速度位置検出部11は、速度発電機(TG)15のパルスや、地上子21から車上子16を介して受信する地上子検知情報に基づいて、列車10の速度と位置を検出する。
【0013】
ATC車上装置12は、列車10を先行列車10Pに衝突したり脱線したりさせないためのブレーキ指令を出力するものである。ATC地上装置22は、レール(軌道回路)RLを介して各閉塞区間の列車の在線有無を検知し、在線状況に応じて各閉塞区間の信号現示を決定し、各閉塞区間のレールRLを介してATC車上装置12に送信する。
【0014】
ATC車上装置12は、ATC地上装置22からの信号現示を受電器20を介して受信すると、この信号現示に基づく制限速度と、速度位置検出部11で検出した列車速度とを比較し、列車速度が制限速度を超過している場合に、駆動/制動制御装置14にブレーキ指令を出力する。
自動列車運転装置13は、列車10が制限速度を守りながら所定の走行時間で駅間を走行し、駅の所定位置(停止目標位置)に停止するための力行指令・ブレーキ指令を算出する。
【0015】
駆動/制動制御装置14は、ATC車上装置12からのブレーキ指令と、自動列車運転装置13からの力行指令・ブレーキ指令と、図示しない運転士の操作する図示しない主幹制御器(マスコン)からの力行指令・ブレーキ指令とに基づいてモータ17とブレーキ装置18を制御する。
列車10は、モータ17とブレーキ装置18により車輪が駆動/制動されてレールRL上を走行する。
【0016】
自動列車運転装置13は、記憶部13A、走行計画算出部13B及び制御指令算出部13Cを備えている。
【0017】
記憶部13Aには、路線情報として、路線の勾配と曲線(曲率半径)が記憶されている。また記憶部13Aには、制限速度情報として、各閉塞区間の制限速度情報と閉塞長(閉塞区間の距離)、線形情報(閉塞区間の並び)が、記憶されている。また記憶部13Aには、運行情報として、各駅の停止目標位置、運転種別ごとの停車駅と各駅間の所定走行時間が記憶されている。
【0018】
また記憶部13Aには、車両情報として、列車10の列車長、列車重量、力行指令・ブレーキ指令に対応した加速度・減速度の特性、空気抵抗・勾配抵抗・曲線抵抗の特性、電空切換開始速度・終了速度が記憶されている。
【0019】
走行計画算出部13Bは、制御指令算出部13Cから受信した列車速度と位置と、記憶部13Aから読み出した情報(路線情報、制限速度情報、運行情報及び車両情報)と、列車無線装置19を介して受信した臨時速度制限情報と、に基づいて、列車10が駅間を所定の走行時間で走行するための走行計画を算出する。
【0020】
制御指令算出部13Cは、速度位置検出部11で検出した列車10の速度と位置と、記憶部13Aから読み出した情報(路線情報、制限速度情報、運行情報及び車両情報)と、走行計画算出部13Bから受信した走行計画と、ATC車上装置12から受信した信号情報とに基づいて、列車10を次駅まで走行させるための力行指令・ブレーキ指令を算出する。
【0021】
次に実施形態の動作を説明する。
自動列車運転装置13は、走行制御の開始が指示されると、走行制御を開始する。
この場合において、走行制御の開始の指示としては、例えば、以下のような場合が考えられる。
(1)運転士が図示しない出発ボタンを押し下げた場合。
(2)停車位置に設置された地上子21を介して駅装置から出発指令を受信した場合。
(3)モニタ装置やICカードから入力された列番情報と運行ダイヤ情報と図示しない計時部からの時刻情報に基づいて出発時刻に達したと判断した場合。
【0022】
走行制御中において、制御指令算出部13Cは、列車10を次駅まで走行させるための力行指令・ブレーキ指令(ノッチ)を算出する。
【0023】
図2は、実施形態の制御指令算出部の制御処理フローチャートである。
まず、制御指令算出部13Cは、ATC車上装置12から受信した信号情報に基づいて、現在位置での制限速度を把握する(ステップS11)。
この場合において、列車10が在線中の閉塞区間に臨時速度制限が掛かっている場合は、受信した信号情報に臨時速度制限が反映されている。
次に、制御指令算出部13Cは、駅停止制御領域に達したか否かを判断する(ステップS12)。
この場合において、駅停止制御領域に達したか否かは、TASC(Train Automatic Stop-position Controller)開始地上子である地上子21を検知したか否か、駅停止パターンが逆引きで制限速度に達する位置から一定距離だけ手前の位置に達したか否か、等の方法で判断することができる。
ステップS12の判断において、駅停止制御領域に達していない場合には(ステップS12;No)、制御指令算出部13Cは、走行計画算出部13Bから受信した走行計画があるか否かを判断する(ステップS13)。
ステップS13の判断において、未だ走行計画算出部13Bから受信した走行計画がない場合は(ステップS13;No)、制御指令算出部13Cは、走行計画算出部13Bに走行計画の算出を要求する(ステップS14)。
【0024】
制御指令算出部13Cは、走行計画算出部13Bから新たな走行計画が得られるまでは、ステップS11において把握した制限速度から一定速度だけ低い速度を目標にノッチを選択する(ステップS15)。
【0025】
ステップS15において、ノッチの選択を行う場合に、制限速度が下がる位置において、一時的に制限速度超過を許容する「当て運転」ではなく、制限速度を超過しないようにする「くぐり抜け運転」を行う場合は、制限速度が下がる箇所で、手前に設置された地上子21を検知したらブレーキノッチを選択したり、記憶部13Aから読み出した制限速度情報に基づいて引いた減速パターンに追従するようにノッチ選択したりする、等の方法により、制限速度を超過しないように制御する。
【0026】
つぎに、制御指令算出部13Cは、実効的に停止目標位置に停車したか否かを判断する(ステップS16)。ここで、実効的にとは、停止目標位置において停車したと見なせる状態という意味である。
この場合においては、ステップS12の判断において、未だ駅停止制御領域に達していない状態であるので、ステップS16の判断において、かならず、未だ停止目標位置に停車していない場合(ステップS16;No)となるので、処理を再びステップS11に移行し、上述した処理を行うこととなる。
【0027】
ステップS13の判断において、既に走行計画算出部13Bから受信した走行計画がある場合(ステップS13;Yes)、制御指令算出部13Cは、前回の走行計画の要求後に制限速度、臨時速度制限の情報である臨速情報、駅間の目標走行時間などの走行条件が変化したか否かを判断する(ステップS18)。
【0028】
この場合において、臨速情報は、例えば、臨時速度制限の開始時刻/終了時刻情報と、始端位置/終端位置情報と、を含む。列車無線を介して受信したら臨速情報記憶部36に記憶しておき、終了時刻の過ぎた臨速情報は消去しておく。
【0029】
ステップS18の判断において、前回の走行計画の要求後に走行条件が変化していない場合には(ステップS18;No)、処理をステップS20に移行する。
【0030】
ステップS18の判断において、前回の走行計画の要求後に走行条件が変化した場合には(ステップS18;Yes)、制御指令算出部13Cは、走行計画算出部13Bに走行計画の算出を再度要求する(ステップS19)。
この場合において、当該再要求に対する走行計画が得られないまま走行条件変化から一定時間が経過したら、条件に合わなくなった走行計画を破棄するようにしてもよい。
【0031】
次いで、制限速度と、記憶部13Aから読み出した車両情報と、最新の走行計画に基づいて、ノッチを選択する。ノッチの選択は、走行計画の走行曲線に追従する、走行計画で指定された走行モード(力行・定速走行・惰行・ブレーキ)に従う、などの方法で行えばよい。ただし、制限速度を超えないようにノッチを選択する(ステップS20)。
つぎに、制御指令算出部13Cは、停車したか否かを判断する(ステップS16)こととなるが、この場合においても、ステップS12の判断において、未だ駅停止制御領域に達していない状態である。
したがって、ステップS16の判断においては、かならず、未だ停止目標位置に停車していない場合(ステップS16;No)となるので、処理を再びステップS11に移行し、上述した処理を行うこととなる。
【0032】
一方、ステップS12の判断において、駅停止制御領域に達している場合は(ステップS12;Yes)、制御指令算出部13Cは、駅の停止目標位置に列車10を停止させるためのノッチを選択する(ステップS21)。この場合において、ノッチの選択は、停止パターンに追従するようにノッチを選択する、停止位置誤差の予測値が小さくなるようにノッチを選択する、などの方法を利用すればよい。
【0033】
次に制御指令算出部13Cは、列車10が停車したか否かを判断する(ステップS16)。
ステップS16の判断において、未だ停車していない場合には(ステップS16;No)、処理を再びステップS11に移行し、上述した処理を行う。
ステップS16の判断において、停車した場合には(ステップS16;Yes)、転動防止ブレーキを選択し(ステップS17)、走行制御を終了する。
【0034】
ここで、走行計画算出部13Bの詳細について説明する。
図3は、走行計画算出部の機能構成ブロック図である。
走行計画算出部13Bは、走行計画算出範囲決定部31と、制限速度設定部32と、目標走行時間算出部33と、仮計画算出部34と、仮計画採否判定部35と、臨速情報記憶部36と、を備えている。
【0035】
走行計画算出範囲決定部31は、運行情報と列車速度・位置に基づいて走行計画算出範囲を決定する。
制限速度設定部32は、少なくとも制限速度情報と走行計画算出範囲に基づいて計画制限速度を設定する。
目標走行時間算出部33は、運行情報と走行時間と走行計画算出範囲に基づいて目標走行時間を算出する。
【0036】
仮計画算出部34は、路線情報、車両情報、計画制限速度に基づいて仮計画を算出する。
仮計画採否判定部35は、目標走行時間と仮計画を比較して仮計画の採否を判定し、走行計画として採用となるまで、仮計画の算出を要求する。
臨速情報記憶部36は、列車無線装置19を介して受信した臨速情報を記憶するとともに、要求に応じて、走行計画算出範囲決定部31及び制限速度設定部32に出力する。
【0037】
次に、走行計画算出部13Bの動作について説明する。
図4は、走行計画算出部の動作フローチャートである。
まず、走行計画算出部13Bは、列車10の走行状態として、列車10速度と位置、出発からの走行時間、信号情報を、制御指令算出部13Cから受信する(ステップS31)。
また、走行計画算出部13Bは、列車無線装置19を介して臨速情報を受信したときは、走行計画算出部13Bは、臨速情報記憶部36に臨速情報を記憶して、臨速情報の更新を行う(ステップS32)。
さらに、走行計画算出部13Bは、臨速情報記憶部36に記憶されている臨速情報のうち、終了時刻が過ぎた臨速情報については、当該臨速情報を消去する。
【0038】
走行計画算出部13Bの走行計画算出範囲決定部31は、臨速情報に基づいて、臨時速度制限がかけられている地点の範囲と設定時間帯を確認する。そして、走行計画算出範囲決定部31は、次の優等列車停車駅への到着予定時刻までに次の優等列車停車駅までの範囲に臨時制限速度(
図4中、臨速と表記)が設定されているか否かを判断する(ステップS33)。
【0039】
ステップS33の判断において、次の優等列車停車駅への到着予定時刻までに次の優等列車停車駅までの範囲に臨時制限速度が設定されていない場合には(ステップS33;No)、処理をステップS39に移行する。
【0040】
ステップS33の判断において、次の優等列車停車駅への到着予定時刻までに次の優等列車停車駅までの範囲に臨時制限速度が設定されている場合には(ステップS33;Yes)、走行計画算出範囲決定部31は、次駅から次の優等列車停車駅までの各駅間に、各駅への到着/通過予定時刻までに臨速が設定されるか否か、臨速情報の範囲と設定時間帯を確認し、設定される駅間がある場合は、その駅間を、いったん、走行計画算出範囲として決定(設定)する(ステップS34)。
【0041】
制限速度設定部32は、記憶部13Aから読み出した制限速度情報及び臨速情報記憶部36から読み出した臨速情報に基づいて、走行計画算出範囲における計画制限速度を設定する(ステップS35)。
この場合において、制限速度設定部32は、臨速設定範囲の閉塞区間については、制限速度情報に基づく当該閉塞区間における制限速度及び臨速情報に基づく制限速度のうち、低い方を当該閉塞区間の制限速度として設定する。
【0042】
つづいて、目標走行時間算出部33は、記憶部13Aから読み出した運行情報から走行計画算出範囲=臨速の設定される駅間の所定走行時間を抽出し、目標走行時間として設定する(ステップS36)。
仮計画算出部34は、走行計画算出範囲=臨速の設定される駅間をとして、当該駅間を最短時間で走行する最速走行計画を算出する(ステップS37)。
【0043】
この場合において、仮計画算出部34は、乗り心地を考慮して、力行部分とブレーキ部分の間に最小限(たとえば1秒間)の惰行部分を入れて最速走行計画を算出するようにしてもよい。
これらの結果、目標走行時間算出部23は、算出された最速走行計画の計画走行時間が目標走行時間を超過する時間を、この駅間での超過時間として算出する(ステップS38)。
なお、計画走行時間が目標走行時間以下の場合は、超過時間=0とする。
【0044】
次いで、走行計画算出範囲決定部31は、制御指令算出部13Cから受信した列車10速度と位置、記憶部13Aから読み出した運行情報に基づいて、列車10の現在位置から次駅(停車駅または通過駅)までを、走行計画算出範囲として設定する(ステップS39)。
制限速度設定部32は、記憶部13Aから読み出した制限速度情報と制御指令算出部13Cから受信した信号情報に基づいて、走行計画算出範囲における計画制限速度を設定する(ステップS40)。
【0045】
目標走行時間算出部33は、記憶情報から読み出した運行情報から次駅までの所定走行時間を抽出し、制御指令算出部13Cから受信した出発からの走行時間を差し引き、さらに、目標早着時間を差し引いて、現在位置から次駅までの目標走行時間を算出する(ステップS41)。
【0046】
仮計画算出部34は、まず、初期値として、現在位置から次駅まで最短時間で走行する最速走行計画を算出し、仮計画採否判定部35で仮計画が採用されない間、仮計画の走行時間(計画走行時間)が目標走行時間に近づくよう、仮計画の算出を行う(ステップS42)。
【0047】
仮計画採否判定部35は、算出された仮計画における計画走行時間と目標走行時間と比較し、計画走行時間と目標走行時間との差が許容範囲内であるか否かを判断する(ステップS43)。
ステップS43の判断において、計画走行時間と目標走行時間との差が許容範囲を超えている場合には(ステップS43;No)、再度仮計画を仮計画算出部34に行わせるべく、処理をステップS42に移行する。
【0048】
ステップS43の判断において、計画走行時間と目標走行時間との差が許容範囲内である場合には(ステップS43;Yes)、仮計画を走行計画として採用し、走行計画算出処理を終了する。
これらの結果、得られた走行計画によれば、臨時速度制限による運行ダイヤへの影響を低減できる。
【0049】
次に実施形態の動作例についてより詳細に説明する。
図5は、実施形態の動作例の説明図である。
以下の説明においては、駅Bは、通過駅、駅Cは、停車駅である。
ところで、臨時速度制限のかかっていない場合において、運行ダイヤの駅間走行時間=査定時分には、マージンとして余裕時分が組み込まれており、余裕時分の範囲であれば、運行ダイヤ上の駅間走行時間を短縮可能である。
【0050】
例えば、
図5(A)に示すように、駅A及び駅B間の運行ダイヤの駅間走行時間は、運行ダイヤ走行時間T01で表されており、乗客の乗り心地を考慮した駅間最短走行時間T01Fに対し、余裕時間FT01を加えたものに設定されている。
すなわち、駅A及び駅B間の運行ダイヤ走行時間T01=駅間最短走行時間T01F+余裕時間FT01となっている。
したがって、列車の現在位置から駅Bを通過する迄の時間は、通過予定時間TTG0となっている。
【0051】
同様に駅B及び駅C間の運行ダイヤの駅間走行時間は、運行ダイヤ走行時間T02で表されており、乗客の乗り心地を考慮した駅間最短走行時間T02Fに対し、余裕時間FT02を加えたものに設定されている。
すなわち、駅B及び駅C間の運行ダイヤ走行時間T02=駅間最短走行時間T02F+余裕時間FT02となっている。
【0052】
そこで、本実施形態においては、臨時速度制限の設定される駅間(
図5(B)の例では、駅B及び駅C間)の手前の駅間(列車10在線中の駅間を含む:
図5(B)の例では、駅A及び駅B間)に、各駅間の余裕時間までの範囲で超過時間を割り振り、目標早着時間とするようにしている。
【0053】
より詳細には、
図5(B)に示すように、駅B及び駅C間において臨時速度制限が設定された場合の乗客の乗り心地を考慮した駅間最短走行時間T02F1を算出した結果、駅B及び駅C間の運行ダイヤの駅間走行時間は、運行ダイヤ走行時間T02に含まれる余裕時間FT02で臨時速度制限の影響を吸収しきれず、超過時間Tovが発生したとする。
【0054】
走行計画算出部13Bは、臨時速度制限の設定された駅B及び駅C間の手前の駅間である駅A及び駅B間に対応する余裕時間FT01で、超過時間Tovを吸収可能か否かを判断する。
すなわち、余裕時間FT01-超過時間Tov≧0となっているか否かを判断する。
【0055】
図5(B)の場合には、余裕時間FT01-超過時間Tov>0となっているので、走行計画算出部13Bは、
図5(C)に示すように、駅A及び駅B間において、余裕時間FT01から超過時間Tovを差し引いた時間を新たな余裕時間FT11に設定し、
図5(A)の場合よりも、駅Bに超過時間Tovに相当する時間だけ早い時刻を目標早着時刻tEとする。
したがって、列車の現在位置から駅Bを通過する迄の時間は、通過予定時間TTG0よりも短い通過予定時間TTG1となっている。
【0056】
この結果、理想的には、客の乗り心地を考慮した駅間最短走行時間T02F1で、駅Cに到着できることとなり、実効的な超過時間Tov=0とすることができ、列車10の遅延を低減することができる。
【0057】
以上の説明においては、列車の現在位置が、駅A及び駅B間に位置する場合であったが、さらに駅Aよりも手前に列車の現在位置があり、駅Aを含め、通過駅が複数ある場合には、割り振るべき超過時間(上述の例の場合、超過時間Tov)を、例えば、臨時制限速度臨速の設定される駅間に近い駅間ほど多く割り振るようにすれば、臨時速度制限による遅延低減のために早着(及び早期通過)する駅を少なくでき、より本来の運行ダイヤへの影響を低減できる。
【0058】
以上の説明においては、他の先行車両を追い抜く場合については、考慮していなかったが、優等列車が目標早着時間を設定する際、普通列車を追い抜く通過駅では、抜かれる予定の普通列車が副本線に待避完了して自列車用の場内進路が構成される前に、次列車が駅構内入口に達してしまわないよう、設定する必要がある。
【0059】
つまり、目標早着時間を余裕時分以下とするだけでなく、自列車の通過時刻が普通列車の到着予定時刻から最小時隔後の時刻以降となるように、目標早着時間を設定する必要がある。
この場合には、臨速の設定される駅間の手前の駅を早通することによる遅延低減の効果は限られることとはなるが、遅延量を減少することができる。
【0060】
一方、普通列車も、次の優等列車の停車駅までの臨時速度制限を考慮して目標早着時間を設定すれば、優等列車に抜かれる駅に早めに到着することができる。したがって、優等列車の場内進路が構成されるタイミングを早めることができる。
【0061】
また、優等列車は、最小時隔を考慮しなくても、普通列車を追い抜く駅への場内進路構成前に構内入口に達してブレーキを掛けなければならないような事態を回避できる。
【0062】
なお、普通列車は、各駅に停車後、早発はしないので、臨速の設定される駅間の手前の駅間にのみ、目標早着時間を設定することとなる。
このように、すべての列車が目標早着時間を設定することにより、臨速の設定される駅間の手前で早通/早着するように列車運行全体が調整され、臨速によるダイヤ遅延を低減することができる。
【0063】
以上の説明のように、本実施形態によれば、臨速の設定される駅間での最速走行計画を算出し、駅間の目標走行時間内に走行できないと判定した場合に、超過時間を手前の駅間に配分して目標早着時間を設定し、駅間の目標走行時間から差し引いて走行計画の目標走行時間とすることにより、各列車が駅通過/到着時刻を調整でき、地上で運行ダイヤを修正することなく、一時的な臨速により発生する遅延を最小限にできる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 列車
10P 先行列車
11 速度位置検出部
12 TC車上装置
13 自動列車運転装置
13A 記憶部
13B 走行計画算出部
13C 制御指令算出部
14 駆動/制動制御装置
16 車上子
17 モータ
18 ブレーキ装置
19 列車無線装置
20 受電器
21 地上子
22 ATC地上装置
23 目標走行時間算出部
31 走行計画算出範囲決定部
32 制限速度設定部
33 目標走行時間算出部
34 仮計画算出部
35 仮計画採否判定部
36 臨速情報記憶部
FT01、FT02、FT11 余裕時間
T01、T02 運行ダイヤ走行時間
T01F、T02F 駅間最短走行時間
T02F1 駅間最短走行時間
RL レール
Tov 超過時間
tE 目標早着時刻