(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098839
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240717BHJP
【FI】
H04N23/60 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002590
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】517224850
【氏名又は名称】株式会社RUTILEA
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 貴文
(72)【発明者】
【氏名】新▲崎▼ 聖峰
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122DA12
5C122EA12
5C122FB03
5C122FH11
5C122FH20
5C122GD11
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】 エリアカメラを用いた合成画像における歪曲収差に起因した品質の低下を抑制する。
【解決手段】 撮像対象に対してエリアカメラを相対的に移動させながら複数の撮像位置で撮像した複数の画像を取得する画像取得部と、画像取得部により取得された複数の画像をつなぎ合わせた形態の合成画像を生成する画像合成処理部とを備え、画像合成処理部は、複数の画像のそれぞれのうちの、それぞれの中心位置を含む所定画像領域だけを用いて、合成画像を生成する。複数の撮像位置は、合成画像に撮像対象全体が含まれるように設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象に対してエリアカメラを相対的に移動させながら複数の撮像位置で撮像した複数の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記複数の画像をつなぎ合わせた形態の合成画像を生成する画像合成処理部とを備え、
前記画像合成処理部は、前記複数の画像のそれぞれのうちの、それぞれの中心位置を含む所定画像領域だけを用いて、前記合成画像を生成する、情報処理装置。
【請求項2】
前記複数の撮像位置は、前記合成画像に前記撮像対象全体が含まれるように設定される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記画像合成処理部により生成された前記合成画像に基づいて、前記撮像対象を検査する検査処理部を更に備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記所定画像領域は、矩形である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記撮像対象に対して前記エリアカメラの相対的な移動方向を第1方向とし、前記エリアカメラの光軸と前記第1方向の双方に直交する方向を第2方向としたとき、前記所定画像領域の前記第1方向の幅は、前記所定画像領域の前記第2方向の幅よりも短い、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記所定画像領域は、前記エリアカメラの光学系に係る歪曲収差が所定閾値以下の領域である、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記撮像対象は、虫を捕捉可能なシート状の物体を含み、
前記検査処理部は、前記合成画像に基づいて、虫を検出する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記検査処理部は、機械学習されたモデルに基づいて、虫を検出し、
前記モデルは、虫の各部位のラベル付けデータに基づく機械学習により構築される、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
1つ以上のユーザ端末、1つ以上のサーバコンピュータ、又は、これらの任意の組み合わせにより実現される、請求項1から8のうちのいずれか1項の情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータを請求項1から8のうちのいずれか1項の情報処理装置として機能させる、コンピュータ読み取り可能なプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学表示パネルがライン状照明装置とエリアカメラとの間を通過している間に、エリアカメラにより、ライン状照明装置から光学表示パネルに射出されて透過された光を受光し、該光学表示パネルを移動させながら、その所定範囲を順次撮像し、撮像された複数の画像データを画像処理部に送って光学表示パネルの全体的な画像に合成し、該エリアカメラが第n(n≧1)回目に撮像した光学表示パネルの画像と第n+1回目に撮像した光学表示パネルの画像とが、光学表示パネルの移動方向に一部重なるようにする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術は、領域の重なりを増やすことで、欠陥検出の漏れを無くそうとする技術であるが、合成方法の如何によっては、歪曲収差に起因して、合成画像の品質が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、エリアカメラを用いた合成画像における歪曲収差に起因した品質の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、
撮像対象に対してエリアカメラを相対的に移動させながら複数の撮像位置で撮像した複数の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記複数の画像をつなぎ合わせた形態の合成画像を生成する画像合成処理部とを備え、
前記画像合成処理部は、前記複数の画像のそれぞれのうちの、それぞれの中心位置を含む所定画像領域だけを用いて、前記合成画像を生成する、情報処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エリアカメラを用いた合成画像における歪曲収差に起因した品質の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例による情報処理装置を利用した検査システムの一例を示した概略図である。
【
図2】エリアカメラによる撮影の方法を示す図である。
【
図3】撮像対象の形状と、エリアカメラによる撮影範囲との関係を示す図である。
【
図4】情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】光学ディストーションの定義にしたがって、Nを算出する方法について例示する図である。
【
図8】特徴量として特定される虫の各部位を示す図である。
【
図9】比較的サイズの小さな合成画像を例示する図である。
【
図9A】比較的サイズの大きな合成画像を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施例による情報処理装置を利用した検査システムの一例を示した概略図、
図2は、エリアカメラによる撮影の方法を示す図である。
【0011】
図1に示すように、検査システム1は、コンピュータを含んで構成される情報処理装置10と、エリアカメラ20と、駆動装置30と、を含む。
【0012】
情報処理装置10は、撮像対象50(
図2)に対してエリアカメラ20を相対的に移動させながら複数の撮像位置で撮像した複数の画像を取得する画像取得部11と、画像取得部11により取得された複数の画像をつなぎ合わせた形態の合成画像を生成する画像合成処理部12と、画像合成処理部12により生成された合成画像に基づいて、撮像対象50を検査する検査処理部13と、情報処理装置10の各部、エリアカメラ20および駆動装置30を制御する制御部15と、を備える。
【0013】
情報処理装置10は、例えば、所定のプログラムが実装された1つ以上のユーザ端末、所定のプログラムが実装された1つ以上のサーバコンピュータ、又は、これらの任意の組み合わせにより構成することができる。
【0014】
図2に示すように、Z方向の光軸を有するエリアカメラ20は、制御部15により制御される駆動装置30によって、
図2におけるX方向(右方向、第1方向)に平行移動される。また、エリアカメラ20は制御部15による制御に従って、一定の移動幅dごとに撮像対象50を撮影し、撮影された画像が、順次、画像取得部11により取得される。
【0015】
なお、
図2では、エリアカメラ20を移動させる例を示しているが、エリアカメラ20を固定し、撮像対象50を移動させてもよい。
【0016】
図3は、撮像対象の形状と、エリアカメラによる撮影範囲との関係を示す図である。
【0017】
図3に示すように、撮像対象50は、X方向の幅Lxと、Y方向(第2方向)の幅Lyとを有する矩形形状を呈する。エリアカメラ20による撮影範囲は、X方向における幅d0を有する略矩形状の撮影領域20Aとして示されている。本実施例では、幅d0よりも短い移動幅dごとにエリアカメラ20をX方向に平行移動しながら、撮影をN回行う。そして、領域20AのうちのX方向の移動幅dに相当する領域20Bの画像のみを用い、これらのN個の領域20Bの画像を画像合成処理部12によりX方向につなぎ合わせ、幅Lxを有する撮像対象50全体の合成画像を生成している。
図3に示すように、領域20Bは、X方向における撮影領域20Aの中心位置を含むように設定され、Y方向を長手方向とする矩形形状とされている。
【0018】
本実施例では、エリアカメラ20による撮影画像のうち、歪曲収差の影響が少ない撮影領域20Aの中央部の領域20Bの画像を繋ぎ合わせて合成画像を生成することにより、歪みの少ない高品質な合成画像が得られる。
【0019】
図4は、情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
図4に示す処理は、制御部15を主体とする制御に従って実行される。
【0020】
図4のステップS102では、制御部15は、駆動装置30を制御して、エリアカメラ20を初期位置に設定する。このときのエリアカメラ20の初期位置のX座標を、X=X0とする。
【0021】
ステップS104では、制御部15は、kの値を1に設定する。
【0022】
ステップS106では、制御部15は、駆動装置30を制御して、エリアカメラ20をX方向に移動幅dだけ移動させる。移動後のエリアカメラ20のX座標は、X0+k×移動幅d となる。
【0023】
ステップS108では、制御部15は、エリアカメラ20による撮影を行い、撮影された画像を画像取得部11に取得させる。取得された画像は、画像取得部11に保存される。
【0024】
ステップS110では、制御部15は、k=Nか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS114へ進め、判断が否定されれば処理をステップS112へ進める。
【0025】
ステップS112では、制御部15は、kの値に1を加算し、処理をステップS106へ進める。
【0026】
ステップS114では、制御部15は、画像取得部11に保存されているN個の画像を画像合成処理部12を介し画像合成する。
【0027】
ステップS116では、制御部15は、画像合成処理部12により得られた合成画像に対し、検査処理部13による検査を実行させ、処理を終了する。
【0028】
次に、移動幅dの設定方法の一例について説明する。
【0029】
図5は、撮影画像における歪を示す図、
図6は合成画像を例示する図である。
【0030】
例えば、
図5に示す矩形100をエリアカメラ20で撮影した場合、レンズを含む光学系の歪曲収差により、その撮影画像は、糸巻型形状101や樽型形状102を示すのが一般的である。
【0031】
仮に、樽型形状102に相当する撮影画像をX方向に並べて合成すると、例えば、実際にはX方向に延びている直線が、
図6に示す合成画像200では波打った曲線201として現れる。曲線201の曲がりの程度は、移動幅dに依存し、移動幅dが小さいほど曲線201は直線に近づく。歪曲収差の影響は、合成画像における個々の撮影画像どうしの境界でも発生し、正しい画像合成の支障となる。このような歪曲収差の影響を抑制するためには、移動幅dを小さくする必要がある。
【0032】
図7は、光学ディストーションの定義にしたがって、Nを算出する方法について例示する図である。以下の方法では、樽型形状102の歪曲収差を有する場合に、歪みの比率を所定閾値α未満に抑制するようなNを算出している。
【0033】
撮影画像の縦幅(Y方向の幅)をh、横幅(X方向の幅)をwとする。
【0034】
また、Y軸とCOGの角度をθ、OEの長さをH、光学ディストーション(歪の比率)をDとする。このとき、
【0035】
【0036】
【0037】
【数3】
仮に、
図3に示すように、撮像対象50のX方向の幅Lxを500mm、エリアカメラ20と撮像対象50との距離を100mm、エリアカメラ20の垂直画角を21.8度、エリアカメラ20の水平画角を29度とすると、
110.577<N
となる。
【0038】
なお、Nないしdを決める方法は任意であり、例えば、エリアカメラ20により格子状パターンを撮影し、撮影画像に現れる実際の歪みの歪み率に基づいて、Nないしdを決定してもよい。
【0039】
次に、検査処理部13の動作について説明する。
【0040】
本実施例では、虫を捕捉するシート状の補虫紙が撮像対象50である例を示す。検査処理部13は、画像合成処理部12により生成された上記の合成画像に基づいて、補虫紙上に捕捉された虫を検出する。
【0041】
図1に示すように、検査処理部13は、機械学習された学習済みモデル40に基づいて、虫を検出する。学習済みモデル40は、虫の各部位のラベル付けデータに基づく機械学習により構築される。学習済みモデル40を用いた検査処理部13での検査に適用されるアルゴリズムとして、元来、人の顔のような1つの画像の中に多数の検出対象を認識するために開発された種のアルゴリズムを採用できる。この種のアルゴリズムは、捕虫紙に付着した虫のような1つの画像の中に多数の検出対象が存在する場合に、例えば、YOLO等と比較して高精度の検出ができるというメリットがある。したがって、この種のアルゴリズムは、補虫紙に多数の虫が存在する撮像対象50に対する相性がよく、この種のアルゴリズムを用いることで、捕虫紙に付着しうる複数の各種虫を高精度に検出できる。
【0042】
図8は、特徴量として特定される虫の各部位の位置を示す図である。
【0043】
図8の例では、虫の特徴量として、頭の先を示す位置71と、頭と胸の間を示す位置72と、腹の先を示す位置73とを入力している。この例では、目視で判断された虫の種類を示すラベルを、特徴量としての各位置71~73とともに入力し、機械学習を実行することにより学習済みモデル40を構築している。このような学習済みモデル40を用いることで、検査処理部13により、虫を高精度に検出できるとともに虫の種類を高精度に判別することが可能となる。
【0044】
また、本実施例では、検査処理部13に入力する合成画像のサイズを複数、用意している。
【0045】
図9は、比較的サイズの小さな合成画像を例示する図である。
図9Aは、比較的サイズの大きな合成画像を例示する図である。
【0046】
すなわち、大きな虫を判別するために適する比較的サイズの小さな合成画像(
図9)を検査処理部13に入力する。また、より小さな虫を判別するために適する比較的サイズの大きな合成画像(
図9A)を検査処理部13に入力する。この場合、機械学習においても、サイズの異なる画像に対して、ラベリングと学習を行ってもよい。
【0047】
このように、
図9および
図9Aに示すような複数段階のサイズの合成画像を検査処理部13に入力することにより、共通のアルゴリズムを使用しつつ、大きさの異なる複数の虫を高精度に検出できる。また、大きさの異なる複数の虫の種類を高精度に判別することが可能となる。
【0048】
以上説明したように、本実施例の情報処理装置10によれば、画像合成処理部12は、エリアカメラ20により撮影された複数の画像のそれぞれのうちの、それぞれの中心位置を含む所定画像領域だけを用いて、合成画像を生成している。このため、エリアカメラ20を用いた合成画像における歪曲収差に起因した品質の低下を抑制することが可能となる。すなわち、ラインセンサで撮影された1次元の画像を繋ぎ合わせた場合と実質的に同等の、高品位な合成画像を得ることができる。また、ラインセンサを用いる場合よりも撮影回数を抑制できるとともに、汎用的なエリアカメラ20の使用を可能とすることによりコストダウンを図ることができる。
【0049】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 情報処理装置
11 画像取得部
12 画像合成処理部
13 検査処理部
40 学習済みモデル