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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098861
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240717BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240717BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60C11/12 A
B60C11/12 C
B60C11/03 300A
B60C11/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002628
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】山岡 宏
(72)【発明者】
【氏名】溝川 浩輝
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA03
3D131BB11
3D131BC18
3D131BC34
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB27V
3D131EB31V
3D131EB31X
3D131EB83V
3D131EB83X
3D131EB84V
3D131EB87V
3D131EB87X
3D131EC12V
3D131EC12X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】氷上性能を向上しつつ偏摩耗を抑制したタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部2は、トレッド端Teと、3本の周方向溝3と、4つの陸部4とで構成されている。周方向溝は、1本のショルダー周方向溝5と、1本のクラウン周方向溝6とを含み、陸部は、1対のショルダー陸部9と、1対のクラウン陸部10とを含んでいる。ショルダー陸部は、ショルダーサイプが設けられたショルダーブロックを含んでいる。ショルダーサイプのタイヤ軸方向の内端は、ショルダーブロックの接地面で閉じている。クラウン陸部は、クラウンサイプ群が設けられたクラウンブロックを含んでいる。クラウンサイプ群は、一端がショルダー周方向溝に連通し、かつ、他端がクラウンブロックの接地面で閉じている第1クラウンサイプと、一端がクラウン周方向溝に連通し、かつ、他端が閉じている第2クラウンサイプと、両端が閉じている第3クラウンサイプとを含んでいる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、一対のトレッド端と、前記一対のトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる3本の周方向溝と、前記3本の周方向溝に区分された4つの陸部とで構成されており、
前記3本の周方向溝は、1本のショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向内側に隣接する1本のクラウン周方向溝とを含み
前記4つの陸部は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に区分された1つのショルダー陸部と、前記ショルダー周方向溝と前記クラウン周方向溝との間に区分された1つのクラウン陸部とを含み、
前記ショルダー陸部は、前記ショルダー陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のショルダー横溝によって区分された複数のショルダーブロックを含み、
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のショルダーサイプが設けられており、
前記複数のショルダーサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の内端は、前記ショルダー周方向溝に連通することなく前記ショルダーブロックの接地面で閉じており、
前記クラウン陸部は、前記クラウン陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のクラウン横溝によって区分された複数のクラウンブロックを含み、
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に並んだ複数のクラウンサイプを含むクラウンサイプ群がタイヤ周方向に複数設けられており、
前記クラウンサイプ群のそれぞれは、一端が前記ショルダー周方向溝に連通し、かつ、他端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている1本の第1クラウンサイプと、一端が前記クラウン周方向溝に連通し、かつ、他端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている1本の第2クラウンサイプと、両端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている少なくとも1本の第3クラウンサイプとを含む、
タイヤ。
【請求項2】
前記複数のショルダーサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅の60%未満である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、タイヤ周方向に4~6本の前記ショルダーサイプが並んでいる、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、前記ショルダー周方向溝側で前記ショルダーサイプがタイヤ周方向に複数並んだ第1サイプ群と、前記トレッド端側で前記ショルダーサイプがタイヤ周方向に複数並んだ第2サイプ群とが設けられている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数のショルダーサイプは、前記内端から前記ショルダー周方向溝までのタイヤ軸方向の距離が1~5mmであるものを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項6】
1つの前記クラウンサイプ群に含まれる前記複数のクラウンサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅の60%未満である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1クラウンサイプ、前記第2クラウンサイプ及び前記第3クラウンサイプは、それぞれ、タイヤ軸方向に延びる第1サイプ片と、前記第1サイプ片よりもタイヤ赤道側でタイヤ軸方向に延びる第2サイプ片と、前記第1サイプ片と前記第2サイプ片との間に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が前記第1サイプ片及び前記第2サイプ片よりも大きい第3サイプ片とを含む、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、タイヤ周方向に2~4群の前記クラウンサイプ群が並んでいる、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記クラウンサイプ群のそれぞれは、互いに隣接する前記複数のクラウンサイプがタイヤ軸方向に重複するように配されている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記クラウンサイプ群のそれぞれは、互いに隣接する前記複数のクラウンサイプがタイヤ周方向に重複するように配されている、請求項9に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅は、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅より大きい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、氷上での走行が意図されたタイヤ(例えば、スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤ等)では、トレッド部のブロックに、複数のサイプが設けられている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6286079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなサイプは、エッジ効果等によって氷上性能を高める一方、前記ブロックが路面と接地したときのタイヤ周方向のせん断変形量を大きくし、ひいては、前記ブロックにヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を生じさせるという問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、氷上性能を向上しつつ、偏摩耗を抑制することができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、一対のトレッド端と、前記一対のトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる3本の周方向溝と、前記3本の周方向溝に区分された4つの陸部とで構成されており、前記3本の周方向溝は、1本のショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向内側に隣接する1本のクラウン周方向溝とを含み前記4つの陸部は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に区分された1つのショルダー陸部と、前記ショルダー周方向溝と前記クラウン周方向溝との間に区分された1つのクラウン陸部とを含み、前記ショルダー陸部は、前記ショルダー陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のショルダー横溝によって区分された複数のショルダーブロックを含み、前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のショルダーサイプが設けられており、前記複数のショルダーサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の内端は、前記ショルダー周方向溝に連通することなく前記ショルダーブロックの接地面で閉じており、前記クラウン陸部は、前記クラウン陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のクラウン横溝によって区分された複数のクラウンブロックを含み、前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に並んだ複数のクラウンサイプを含むクラウンサイプ群がタイヤ周方向に複数設けられており、前記クラウンサイプ群のそれぞれは、一端が前記ショルダー周方向溝に連通し、かつ、他端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている1本の第1クラウンサイプと、一端が前記クラウン周方向溝に連通し、かつ、他端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている1本の第2クラウンサイプと、両端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている少なくとも1本の第3クラウンサイプとを含む、タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、氷上性能を向上しつつ、偏摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のショルダー陸部及びクラウン陸部の拡大図である。
図3図2のショルダーブロックの拡大図である。
図4図2のクラウンブロックの拡大図である。
図5図4のクラウンサイプ群を拡大した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、冬用の乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0010】
図1に示されるように、トレッド部2は、一対のトレッド端Te、Teと、一対のトレッド端Te、Teの間でタイヤ周方向に連続して延びる3本の周方向溝3と、3本の周方向溝3に区分された4つの陸部4とで構成されている。
【0011】
一対のトレッド端Te、Teは、それぞれ、正規状態のタイヤ1に正規荷重の70%が負荷され、トレッド部2をキャンバー角0°で平面に接地させたとき(正規荷重状態)の接地面の端に相当する。
【0012】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0013】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0014】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0015】
「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0016】
3本の周方向溝3は、少なくとも1本のショルダー周方向溝5と、ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向内側に隣接する1本のクラウン周方向溝6とを含む。本実施形態では、2本のショルダー周方向溝5と、それらの間に配された1本のクラウン周方向溝6とが設けられている。本実施形態では、各ショルダー周方向溝5は、一方又は他方のトレッド端Teと、タイヤ赤道Cとの間に設けられている。望ましい態様として、本実施形態のクラウン周方向溝6は、タイヤ赤道C上に設けられている。
【0017】
ショルダー周方向溝5の溝中心線からタイヤ赤道Cまでのタイヤ軸方向の距離L1は、例えば、トレッド幅TWの20%~30%である。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。なお、トレッド幅TWは、前記正規状態における一対のトレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離に相当する。
【0018】
周方向溝3の溝幅W1は、少なくとも3.0mm以上であるのが望ましい。また、周方向溝3の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの3.0%~6.0%である。周方向溝3の深さ(図示省略)は、例えば、5.0~15.0mmである。但し、周方向溝3は、このような態様に限定されるものではない。なお、本明細書において、溝幅は、トレッド部の接地面上において各溝の溝長さ方向と直交する向きに測定される。
【0019】
4つの陸部4は、少なくとも、1つのショルダー陸部9及び1つのクラウン陸部10を含む。ショルダー陸部9は、ショルダー周方向溝5のタイヤ軸方向外側に区分されている。また、クラウン陸部10は、ショルダー周方向溝5とクラウン周方向溝6との間に区分されている。本実施形態の4つの陸部4は、2つのショルダー陸部9及び2つのクラウン陸部10で構成されている。本実施形態の2つのショルダー陸部9のそれぞれは、タイヤ赤道C上に回転中心を有する対称形状で構成されている。また、本実施形態の2つのクラウン陸部10のそれぞれは、タイヤ赤道C上に回転中心を有する対称形状で構成されている。このため、以下で説明される一方のショルダー陸部9の構成は、他方のショルダー陸部9にも適用することができる。クラウン陸部10についても同様である。
【0020】
図2には、ショルダー陸部9及びクラウン陸部10の拡大図が示されている。図2に示されるように、ショルダー陸部9には、複数のショルダー横溝11が設けられている。これらのショルダー横溝11は、ショルダー陸部9をタイヤ軸方向に完全に横断している。これにより、ショルダー陸部9は、複数のショルダー横溝11によって区分された複数のショルダーブロック12を含む。
【0021】
本明細書において、「横溝」とは、タイヤ軸方向に延びる溝であって、その溝幅が1.5mmより大きいものを指す。横溝の溝幅は、望ましくは、周方向溝3の溝幅W1(図1に示す)の60%~80%である。
【0022】
図3には、ショルダーブロック12の拡大図が示されている。図3に示されるように、複数のショルダーブロック12のそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のショルダーサイプ13が設けられている。複数のショルダーサイプ13のそれぞれのタイヤ軸方向の内端13iは、ショルダー周方向溝5の溝縁40に連通することなくショルダーブロック12の接地面で閉じている。
【0023】
本明細書において、「サイプ」とは、切り込みであって、互いに向き合う2つの内壁間の幅が1.5mm以下のものを指す。このようなサイプは、正規荷重負荷状態の接地面において、前記2つの内壁の少なくとも一部が互いに接触するように構成される。このような観点では、サイプの幅は、望ましくは1.2mm以下であり、より望ましくは1.0mm以下である。なお、加硫成形容易性などを考慮するとサイプの幅は、望ましくは0.3mm以上であり、より望ましくは0.5mm以上である。また、本実施形態のサイプは、その全深さに亘って、一定幅で構成されており、かつ、その幅が上述の範囲とされている。なお、サイプには、接地面での開口部に面取り部が設けられても良い。また、サイプの底に、幅が1.5mmよりも拡大した部分(所謂フラスコ底とも呼ばれる。)が付加されても良い。
【0024】
図2に示されるように、クラウン陸部10には、複数のクラウン横溝14が設けられている。これらのクラウン横溝14は、クラウン陸部10をタイヤ軸方向に完全に横断している。これにより、クラウン陸部10は、複数のクラウン横溝14によって複数のクラウンブロック15に区分されている。
【0025】
図4には、クラウンブロック15の拡大図が示されている。図4に示されるように、複数のクラウンブロック15のそれぞれには、クラウンサイプ群16がタイヤ周方向に複数設けられている。クラウンサイプ群16は、タイヤ軸方向に並んだ複数のクラウンサイプ17を含んでいる。
【0026】
クラウンサイプ群16のそれぞれは、例えば、第1クラウンサイプ18と、第2クラウンサイプ19と、第3クラウンサイプ20とを含む。第1クラウンサイプ18は、一端がショルダー周方向溝5(図2参照)に連通し、かつ、他端がクラウンブロック15の接地面で閉じている。第2クラウンサイプ19は、一端がクラウン周方向溝6(図2参照)に連通し、かつ、他端がクラウンブロック15の接地面で閉じている。第3クラウンサイプ20は、両端がクラウンブロック15の接地面で閉じている。
【0027】
上述の複数のショルダーサイプ13及び複数のクラウンサイプ群16は、氷上走行時、エッジ効果等によってタイヤ周方向に大きな摩擦力を提供し、氷上性能を高めることができる。
【0028】
他方、一般に、4つの陸部で構成されたトレッド部は、5つの陸部で構成されたものと比較して、1つの陸部が支える荷重が大きい傾向がある。また、トレッド端側のショルダー陸部は、タイヤ赤道側のクラウン陸部に比べて前記荷重の変化量が大きく、その接地長が変化し易い。このため、ショルダー陸部に含まれるショルダーブロックは、制動時等においてタイヤ周方向の滑り量が相対的に大きく、ヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を生じ易い。
【0029】
このような問題に対し、本発明では、図3に示されるように、ショルダーサイプ13のタイヤ軸方向の内端13iは、ショルダー周方向溝5に連通することなくショルダーブロック12の接地面で閉じるように構成される。これにより、ショルダーブロック12のタイヤ周方向剛性が高められることから、制動時等のタイヤ周方向のせん断変形量も小さくなり、ひいては偏摩耗を抑制することができる。
【0030】
図4に示されるように、クラウンサイプ群16は、ショルダー周方向溝5からクラウン周方向溝6まで連続して延びてはいない。これにより、クラウンブロック15のタイヤ周方向剛性も高められることから、制動時等のせん断変形量が小さくなり、クラウンブロック15の偏摩耗も抑制することができる。また、クラウンサイプのうち、第1クラウンサイプ18の一端がショルダー周方向溝5に連通し、第2クラウンサイプ19の一端がクラウン周方向溝6に連通している。これにより、氷上走行時、第1クラウンサイプ18に吸収された水は、ショルダー周方向溝5側に排出される。同様に、第2クラウンサイプ19に吸収された水は、クラウン周方向溝6側に排出される。したがって、氷路上の水膜が効果的に除去され、氷上性能がさらに向上する。以上のように、本実施形態のタイヤ1は、氷上性能を向上しつつ、偏摩耗を抑制することができる。
【0031】
なお、4つの陸部に、隣接するショルダー陸部9及びクラウン陸部10の1つのペアが含まれていれば、上述の作用効果が発揮される。また、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ赤道Cの両側に上記ペアが含まれているので、より効果的に上述の作用効果を発揮することができる。
【0032】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される各構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0033】
[クラウン周方向溝、ショルダー周方向溝]
図1に示されるように、本実施形態のショルダー周方向溝5は、ジグザグ状に延びている。具体的には、本実施形態のショルダー周方向溝5は、複数の縦溝部7と複数の横溝部8とを、タイヤ周方向に交互に含むことにより、ジグザグ状に延びている。縦溝部7は、例えば、タイヤ周方向に対して5~15°で傾斜した2つのエッジ7eで構成された部分である。横溝部8は、タイヤ軸方向に対して10°以下の角度で配された2つのエッジ8eで構成された部分である。このようなショルダー周方向溝5は、その内部で雪を強く押し固めることができる。一方、クラウン周方向溝6は、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。但し、ショルダー周方向溝5及びクラウン周方向溝6は、このような態様に限定されるものではない。
【0034】
図2に示されるように、本実施形態のクラウン周方向溝6は、一定の溝幅でタイヤ周方向に延びている。クラウン周方向溝6の溝幅W2は、望ましくはトレッド幅TW(図1に示す)の4.0%以下であり、より望ましくは3.0%~4.0%である。ショルダー周方向溝5の縦溝部7の溝幅W3は、例えば、トレッド幅TWの4.0%~5.0%である。本実施形態では、クラウン周方向溝6の溝幅W2は、ショルダー周方向溝5の縦溝部7の溝幅W3よりも小さい。これにより、クラウン周方向溝6周辺の偏摩耗が抑制されつつ、ショルダー周方向溝5が優れた氷上性能を発揮し得る。
【0035】
[ショルダー横溝]
本実施形態では、ショルダー横溝11は、内側溝部21と外側溝部22とを含んでいる。内側溝部21は、ショルダー周方向溝5に連通しており、一定の溝幅W5で延びている。外側溝部22は、内側溝部21のタイヤ軸方向外側に連通しており、少なくとも一方のトレッド端Teまで延びている。外側溝部22は、一定の溝幅W6でタイヤ軸方向に延び、トレッド端Te付近で溝幅が広がっている。外側溝部22の溝幅W6は、内側溝部21の溝幅W5よりも大きい。具体的には、前記溝幅W6は、前記溝幅W5の130%~150%である。このような内側溝部21及び外側溝部22を含むショルダー横溝11は、ショルダー周方向溝5と連通する部分の周辺における、ショルダー陸部9の偏摩耗を抑制できる。
【0036】
[ショルダーサイプ]
図3に示されるように、ショルダーブロック12には、複数のショルダーサイプ13がタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に並んで配置されている。具体的には、ショルダーブロック12には、タイヤ軸方向に並んだ2つのショルダーサイプ13からなるサイプ対23がタイヤ周方向に複数設けられている。
【0037】
上述の複数のサイプ対23により、複数のショルダーブロックのそれぞれには、第1サイプ群24Aと、第2サイプ群24Bとが設けられている。第1サイプ群24Aは、ショルダー周方向溝5側でショルダーサイプ13がタイヤ周方向に複数並んでいる。第2サイプ群24Bは、トレッド端Te側でショルダーサイプ13がタイヤ周方向に複数並んでいる。本実施形態では、第1サイプ群24Aのショルダーサイプ13のそれぞれと、第2サイプ群24Bのショルダーサイプ13のそれぞれとが連通していないため、ショルダー陸部9のタイヤ周方向のせん断変形量が小さくなり、偏摩耗を抑制することができる。
【0038】
本実施形態の第1サイプ群24A及び第2サイプ群24Bのそれぞれは、例えば、4~6本のショルダーサイプ13で構成されている。これにより、1つのショルダーブロック12には、8~12本のショルダーサイプ13が設けられている。
【0039】
タイヤ周方向に並んでいるショルダーサイプ13が4本以上だと、氷上性能が向上する。タイヤ周方向に並んでいるショルダーサイプ13が6本以下だと、ショルダー陸部9のタイヤ周方向のせん断変形量が小さくなり、偏摩耗を抑制することができる。また、複数のショルダーブロック12のそれぞれには、タイヤ周方向に4~5本のショルダーサイプ13が並んでいるのがより望ましい。これにより、偏摩耗をさらに抑制することができる。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではない。
【0040】
ショルダーサイプ13は、第1サイプ群24Aに含まれる複数の第1ショルダーサイプ24と、第2サイプ群24Bに含まれる複数の第2ショルダーサイプ25及び複数の第3ショルダーサイプ26とを含む。
【0041】
第1ショルダーサイプ24は、ショルダー周方向溝5に連通せず、両端が、ショルダーブロック12の接地面で閉じている。
【0042】
複数のショルダーサイプ13は、内端13iからショルダー周方向溝5の溝縁40までのタイヤ軸方向の距離L3が1~5mmであるものを含むのが望ましい。本実施形態では、第1ショルダーサイプ24の内端24iからショルダー周方向溝5の溝縁40までのタイヤ軸方向の距離L4が1~5mmである。前記距離L4が1~5mmであれば、ショルダー周方向溝5の溝縁40周辺での偏摩耗が抑制され、かつ、各サイプの長さを十分に確保できるため、氷上性能を高めることができる。
【0043】
本実施形態では、各第1ショルダーサイプ24の内端24iからショルダー周方向溝5の溝縁40までのタイヤ軸方向の距離L4は、タイヤ周方向の一方側に向かって大きくなっている。前記距離L4のうち、少なくとも一つの距離L4が1~5mmであれば、上述の効果が発揮されうる。望ましくは、全ての距離L4が1~5mmであれば、上述の効果がより効果的に発揮される。
【0044】
また、望ましい態様では、各第1ショルダーサイプ24のトレッド端Te側の端24aについて、タイヤ軸方向の位置が揃っている。具体的には、1つの第1ショルダーサイプ24の前記端24aと、これに隣接する第1ショルダーサイプ24の前記端24aとのタイヤ軸方向の距離が、望ましくは2.0mm以下、より望ましくは1.0mm以下となっている。これにより、各第1ショルダーサイプ24が開き易くなり、氷上走行時に大きな摩擦力を提供することができる。
【0045】
本実施形態の第2サイプ群24Bは、3本の第2ショルダーサイプ25と2本の第3ショルダーサイプ26とで構成されており、これらがタイヤ周方向に交互に配置されている。また、第2ショルダーサイプ25及び第3ショルダーサイプ26は、タイヤ赤道C側の端がショルダーブロック12の接地面で閉じている。また、第2ショルダーサイプ25のトレッド端Te側の端は、トレッド端Te近傍まで延びているが、トレッド端には至っていない。第2ショルダーサイプ25のトレッド端Te側の端からトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離は、例えば、5mm以下である。一方、第3ショルダーサイプ26のトレッド端Te側の端は、少なくともトレッド端Teまで延びており、本実施形態ではトレッド端Teを超えた位置まで延びている(図示省略)。このような第2ショルダーサイプ25及び第3ショルダーサイプ26は、トレッド端Te周辺での偏摩耗を抑制しつつ、ワンダリング性能を向上させることができる。
【0046】
望ましい態様では、各第2ショルダーサイプ25及び各第3ショルダーサイプ26のタイヤ赤道C側の端について、タイヤ軸方向の位置が揃っている。具体的には、1つの第2ショルダーサイプ25の前記端25aと、これに隣接する第3ショルダーサイプ26の前記端26aとのタイヤ軸方向の距離が、望ましくは2.0mm以下、より望ましくは1.0mm以下となっている。これにより、第2ショルダーサイプ25及び第3ショルダーサイプ26が適度に開き易くなり、氷上走行時に大きな摩擦力を提供することができる。
【0047】
本実施形態では、第1ショルダーサイプ24と、第2ショルダーサイプ25又は第3ショルダーサイプ26とのタイヤ軸方向の間隔L5は、2.0~5.0mmである。これにより、ショルダーブロック12のタイヤ軸方向の中央部における偏摩耗を抑制することができる。
【0048】
各ショルダーサイプ13は、ジグザグ状に延びているのが望ましい。また。各ショルダーサイプ13は、両端を結んだ仮想直線(図示省略)のタイヤ軸方向の角度が0~5°以下であるのが望ましい。また、ジグザグ状に延びるショルダーサイプ13の折れ曲がり角度θ6は、例えば、100~120°である。このようなショルダーサイプ13は、エッジ効果が得られやすく、氷上走行時に、タイヤ軸方向にも摩擦力を提供できる。
【0049】
複数のショルダーサイプ13のそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、ショルダー陸部9の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W7の60%未満であるのが望ましい。より望ましくは、第1ショルダーサイプ24のそれぞれのタイヤ軸方向の長さL6は、ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W7(図2に示され、以下、同様である。)の60%未満である。また、接地面における、第2ショルダーサイプ25のそれぞれのタイヤ軸方向の長さL7、及び、第3ショルダーサイプ26のそれぞれのタイヤ軸方向の長さL8は、ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W7の60%未満である。これにより、ショルダー陸部のタイヤ周方向のせん断変形量が小さくなるので、偏摩耗を抑制することができる。また、複数のショルダーサイプ13のそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、ショルダー陸部9の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W7の20%~50%であるのがより望ましい。これにより、ショルダー陸部9のタイヤ周方向のせん断変形量がより小さくなるので、偏摩耗をより抑制することができる。なお、本明細書において、サイプの長さは、サイプの中心線で測定されるものとする。
【0050】
第1ショルダーサイプ24は、第2ショルダーサイプ25、及び、第3ショルダーサイプ26より、タイヤ赤道C側に設けられている。また、第1ショルダーサイプ24の長さL6は、第2ショルダーサイプ25の長さL7、及び、第3ショルダーサイプ26の長さL8より大きい。このように、より長さの大きいショルダーサイプ13がタイヤ赤道Cに近い位置に設けられているので、エッジ効果が得られやすく、大きな摩擦力を提供することができる。
【0051】
[クラウン横溝]
図2に示されるように、クラウン横溝14は、例えば、一定の溝幅W9でタイヤ軸方向に直線状に延びている。クラウン横溝14の溝幅W9は、例えば、ショルダー横溝11の外側溝部22の溝幅W6よりも小さい。具体的には、クラウン横溝14の溝幅W9は、外側溝部22の溝幅W6の60%~80%である。このようなクラウン横溝14は、クラウン陸部10の偏摩耗を抑制し、かつ、ドライ路面での操縦安定性を向上させることができる。
【0052】
クラウン横溝14は、例えば、タイヤ軸方向に対して僅かに傾斜している。クラウン横溝14のタイヤ軸方向に対する最大の角度θ1は、30°以下であり、望ましくは5~15°である。
【0053】
クラウン横溝14は、ショルダー横溝11とはタイヤ周方向の異なる位置でショルダー周方向溝5に連通しているのが望ましい。具体的には、トレッド平面視において、ショルダー横溝11のショルダー周方向溝5側の端部をタイヤ軸方向に平行に延長した仮想領域27(図2ではドットが施されている)が、クラウン横溝14のショルダー周方向溝5側の端部と重複していない。これにより、ショルダー周方向溝5の周辺での偏摩耗が抑制される。
【0054】
[クラウンサイプ]
図4に示されるように、本実施形態のクラウンブロック15は、複数のクラウンサイプ17がタイヤ軸方向に並んだクラウンサイプ群16をタイヤ周方向に複数含んでいる。
【0055】
1つのクラウンサイプ群16は、例えば、3~6本のクラウンサイプ17で構成されている。本実施形態のクラウンサイプ群16は、1本の第1クラウンサイプ18と、1本の第2クラウンサイプ19と、2本の第3クラウンサイプ20とで構成されている。第1クラウンサイプ18は、ショルダー周方向溝5(図2に示され、以下、同様である。)に連通している。第2クラウンサイプ19は、クラウン周方向溝6(図2に示され、以下、同様である。)に連通している。第3クラウンサイプ20は、両端がクラウンブロック15の接地面で閉じている。
【0056】
複数のクラウンブロック15のそれぞれには、タイヤ周方向に2~4群のクラウンサイプ群16が並んでいるのが望ましい。本実施形態では、タイヤ周方向に3群のクラウンサイプ群16が並んでいる。タイヤ周方向に並んでいるクラウンサイプ群16が2群以上だと、氷上性能が向上する。タイヤ周方向に並んでいるクラウンサイプ群16が4群以下だと、クラウン陸部10(図2に示され、以下、同様である。)のタイヤ周方向のせん断変形量が小さいので、偏摩耗を抑制することができる。
【0057】
クラウンサイプ群16のそれぞれは、互いに隣接する複数のクラウンサイプ17がタイヤ軸方向に重複するように配されているのが望ましい。換言すれば、1つのクラウンサイプ17をタイヤ周方向に平行に延長した仮想領域が、タイヤ軸方向で隣接するクラウンサイプ17と重複している。本実施形態では、互いに隣接する第1クラウンサイプ18と第3クラウンサイプ20とが、タイヤ軸方向に重複するように配されている。また、互いに隣接する第2クラウンサイプ19と第3クラウンサイプ20とが、タイヤ軸方向に重複するように配されている。そして、互いに隣接する第3クラウンサイプ20同士が、タイヤ軸方向に重複するように配されている。このようなクラウンサイプ17の配置は、氷上性能を高めるのに役立つ。
【0058】
また、クラウンサイプ群16のそれぞれは、互いに隣接する複数のクラウンサイプ17がタイヤ周方向に重複するように配されているのがより望ましい。換言すれば、1つのクラウンサイプ17をタイヤ軸方向に平行に延長した仮想領域が、タイヤ軸方向で隣接するクラウンサイプ17と重複している。本実施形態では、互いに隣接する第1クラウンサイプ18と第3クラウンサイプ20とが、タイヤ周方向に重複するように配されている。また、互いに隣接する第2クラウンサイプ19と第3クラウンサイプ20とが、タイヤ周方向に重複するように配されている。そして、互いに隣接する第3クラウンサイプ20同士が、タイヤ周方向に重複するように配されている。このようなクラウンサイプ17の配置は、氷上性能を高めるのに役立つ。
【0059】
図5は、クラウンサイプ群16の一例を拡大した模式図である。図5では、各クラウンサイプ17が実線で示されている。図5に示されるように、第1クラウンサイプ18、第2クラウンサイプ19及び第3クラウンサイプ20は、それぞれ、第1サイプ片28と、第2サイプ片29と、第3サイプ片30とを含んでいる。第1サイプ片28は、タイヤ軸方向に延びている。第2サイプ片29は、第1サイプ片28よりもタイヤ赤道C側でタイヤ軸方向に延びている。第3サイプ片30は、第1サイプ片28と第2サイプ片29との間に連なっている。さらに、第3サイプ片30のタイヤ軸方向に対する角度θ2が、第1サイプ片28のタイヤ軸方向に対する角度θ3及び第2サイプ片29のタイヤ軸方向に対する角度θ4よりも大きい。第3サイプ片30のタイヤ軸方向に対する角度θ2は、例えば、60~80°である。このような各クラウンサイプ群16は、多方向に摩擦力を提供でき、エッジ効果等によって氷上走行時のトラクション性能及び旋回性能を高めることができる。
【0060】
クラウンサイプ群16に含まれるクラウンサイプ17は、上述の態様に限定されるものではない。例えば、図4に示されるクラウンブロック15のタイヤ周方向中央部に配されたクラウンサイプ群16の第1クラウンサイプ18のように、クラウンサイプ17は、上述のサイプ片を含まずに直線状に延びるものでも良い。
【0061】
クラウンサイプ17の端部には、タイヤ軸方向に対して第1サイプ片28又は第2サイプ片29よりも大きい角度で延びる傾斜片31が構成されている。傾斜片31のタイヤ軸方向に対する角度θ5は、例えば、60~80°であり、本実施形態では第3サイプ片30の前記角度θ2と実質的に同じである。このような傾斜片31は、クラウンサイプ17が過度に開くのを抑制でき、クラウンサイプ17周辺での偏摩耗を抑制することができる。
【0062】
図4に示されるように、本実施形態では、第1クラウンサイプ18において、タイヤ赤道C側の端部に傾斜片31が構成されており、その反対側の端部には傾斜片31が構成されていない。第2クラウンサイプ19において、トレッド端Te側の端部に傾斜片31が構成されており、その反対側の端部には傾斜片31が構成されていない。第3クラウンサイプ20において、タイヤ軸方向の両側の端部に傾斜片31が構成されている。このような傾斜片31の配置は、耐偏摩耗性能と氷上性能とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0063】
1つのクラウンサイプ群16に含まれる複数のクラウンサイプ17のそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、クラウン陸部10(図2に示され、以下、同様である。)の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W8(図2に示され、以下、同様である。)の60%未満であるのが望ましい。本実施形態では、タイヤ軸方向の、第1クラウンサイプ18の長さL9、第2クラウンサイプ19の長さL10、及び、第3クラウンサイプ20の長さL11は、クラウン陸部10の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W8の60%未満であるのが望ましい。これにより、クラウン陸部10のタイヤ周方向のせん断変形量が小さくなるので、偏摩耗を抑制することができる。また、複数のクラウンサイプ17のそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、クラウン陸部10の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W8の20%~50%であるのがより望ましい。これにより、クラウン陸部10のタイヤ周方向のせん断変形量がより小さくなるので、偏摩耗をより抑制することができる。
【0064】
図2に示されるように、本実施形態では、ショルダー陸部9の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W7は、クラウン陸部10の接地面のタイヤ軸方向の最大幅W8より大きい。具体的には、前記最大幅W7は、前記最大幅W8の105%以上であるのが望ましい。また、前記最大幅W7は、前記最大幅W8の105%~120%であるのがより望ましい。これにより、ショルダー陸部9の剛性が高くなり、タイヤ周方向のせん断変形量が小さくなって、偏摩耗を抑制することができる。
【0065】
図1に示されるように、トレッド部2を構成するトレッドゴムの0℃における複素弾性率E*は、5.0~9.0MPaである。これにより、氷上での旋回性能と耐偏摩耗性能とがバランス良く向上する。なお、前記複素弾性率E*は、JIS-K6394の規定に準じて、次に示される条件で、粘弾性スペクトロメータを用いて測定された値である。
初期歪み:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:引張り
測定温度:0℃
【0066】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0067】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0068】
[本発明1]
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、一対のトレッド端と、前記一対のトレッド端の間でタイヤ周方向に連続して延びる3本の周方向溝と、前記3本の周方向溝に区分された4つの陸部とで構成されており、
前記3本の周方向溝は、1本のショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向内側に隣接する1本のクラウン周方向溝とを含み
前記4つの陸部は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向外側に区分された1つのショルダー陸部と、前記ショルダー周方向溝と前記クラウン周方向溝との間に区分された1つのクラウン陸部とを含み、
前記ショルダー陸部は、前記ショルダー陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のショルダー横溝によって区分された複数のショルダーブロックを含み、
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に延びる複数のショルダーサイプが設けられており、
前記複数のショルダーサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の内端は、前記ショルダー周方向溝に連通することなく前記ショルダーブロックの接地面で閉じており、
前記クラウン陸部は、前記クラウン陸部をタイヤ軸方向に完全に横断する複数のクラウン横溝によって区分された複数のクラウンブロックを含み、
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、タイヤ軸方向に並んだ複数のクラウンサイプを含むクラウンサイプ群がタイヤ周方向に複数設けられており、
前記クラウンサイプ群のそれぞれは、一端が前記ショルダー周方向溝に連通し、かつ、他端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている1本の第1クラウンサイプと、一端が前記クラウン周方向溝に連通し、かつ、他端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている1本の第2クラウンサイプと、両端が前記クラウンブロックの接地面で閉じている少なくとも1本の第3クラウンサイプとを含む、
タイヤ。
[本発明2]
前記複数のショルダーサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅の60%未満である、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、タイヤ周方向に4~6本の前記ショルダーサイプが並んでいる、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記複数のショルダーブロックのそれぞれには、前記ショルダー周方向溝側で前記ショルダーサイプがタイヤ周方向に複数並んだ第1サイプ群と、前記トレッド端側で前記ショルダーサイプがタイヤ周方向に複数並んだ第2サイプ群とが設けられている、本発明1ないし3のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明5]
前記複数のショルダーサイプは、前記内端から前記ショルダー周方向溝までのタイヤ軸方向の距離が1~5mmであるものを含む、本発明1ないし4のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明6]
1つの前記クラウンサイプ群に含まれる前記複数のクラウンサイプのそれぞれのタイヤ軸方向の長さは、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅の60%未満である、本発明1ないし5のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明7]
前記第1クラウンサイプ、前記第2クラウンサイプ及び前記第3クラウンサイプは、それぞれ、タイヤ軸方向に延びる第1サイプ片と、前記第1サイプ片よりもタイヤ赤道側でタイヤ軸方向に延びる第2サイプ片と、前記第1サイプ片と前記第2サイプ片との間に連なり、かつ、タイヤ軸方向に対する角度が前記第1サイプ片及び前記第2サイプ片よりも大きい第3サイプ片とを含む、本発明1ないし6のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明8]
前記複数のクラウンブロックのそれぞれには、タイヤ周方向に2~4群の前記クラウンサイプ群が並んでいる、本発明1ないし7のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明9]
前記クラウンサイプ群のそれぞれは、互いに隣接する前記複数のクラウンサイプがタイヤ軸方向に重複するように配されている、本発明1ないし8のいずれかに記載のタイヤ。
[本発明10]
前記クラウンサイプ群のそれぞれは、互いに隣接する前記複数のクラウンサイプがタイヤ周方向に重複するように配されている、本発明9に記載のタイヤ。
[本発明11]
前記ショルダー陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅は、前記クラウン陸部の接地面のタイヤ軸方向の最大幅より大きい、本発明1ないし10のいずれかに記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0069】
1 タイヤ
2 トレッド部
Te トレッド端
3 周方向溝
4 陸部
5 ショルダー周方向溝
6 クラウン周方向溝
9 ショルダー陸部
10 クラウン陸部
図1
図2
図3
図4
図5