(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098862
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240717BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240717BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360G
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002635
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 圭太郎
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093DA02
4C093FF16
4C093FF20
4C093FF28
4C093FF42
5L096AA09
5L096EA31
5L096FA10
5L096FA60
5L096FA67
(57)【要約】
【課題】心臓の血流動態の把握するための指標を正確かつ効率的に計測する。
【解決手段】実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、第1特定部と、第2特定部と、第3特定部と、第4特定部と、算出部とを備える。取得部は、心臓を含む三次元医用画像データを取得する。第1特定部は、三次元医用画像データに表された左心房領域と、左心室領域と、大動脈弁領域とに基づいて、当該領域を横断する三腔長軸断面を特定する。第2特定部は、三次元医用画像データに表された僧帽弁領域に含まれる第1弁輪領域と、三腔長軸断面とに基づいて、僧帽弁軸を特定する。第3特定部は、僧帽弁領域に含まれる前尖領域と、大動脈弁領域に含まれる第2弁輪領域とを三腔長軸断面から特定する。第4特定部は、三腔長軸断面上での前尖領域と第2弁輪領域との位置関係に基づいて、大動脈弁軸を特定する。算出部は、僧帽弁軸と大動脈弁軸とに基づく角度を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓を含む三次元医用画像データを取得する取得部と、
前記三次元医用画像データに表された左心房領域と、左心室領域と、大動脈弁領域とに基づいて、当該領域を横断する三腔長軸断面を特定する第1特定部と、
前記三次元医用画像データに表された僧帽弁領域に含まれる第1弁輪領域と、前記三腔長軸断面とに基づいて、僧帽弁軸を特定する第2特定部と、
前記僧帽弁領域に含まれる前尖領域と、前記大動脈弁領域に含まれる第2弁輪領域とを前記三腔長軸断面から特定する第3特定部と、
前記三腔長軸断面上での前記前尖領域と前記第2弁輪領域との位置関係に基づいて、大動脈弁軸を特定する第4特定部と、
前記僧帽弁軸と前記大動脈弁軸とに基づく角度を算出する算出部と、
を備える医用画像処理装置。
【請求項2】
前記第1特定部は、前記左心房領域の重心座標と、前記左心室領域の先端の座標と、前記大動脈弁領域の重心座標とに基づいて、前記三腔長軸断面を特定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記第2特定部は、前記三腔長軸断面と前記第1弁輪領域とが交わる2つの交点を通る直線を導出し、前記直線に直交し、前記2つの交点の座標の中点を通る直線を前記僧帽弁軸として特定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記第4特定部は、前記第2弁輪領域と前記三腔長軸断面とが交わる2つの交点の中点と、前記三腔長軸断面と前記前尖領域との複数の交点の座標に基づく近似直線とを導出し、前記中点を通る前記近似直線に平行な直線を前記大動脈弁軸として特定する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記第4特定部は、前記複数の交点の座標のうち、前記前尖領域の基部側に近い複数の座標に基づく近似直線を導出する、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記僧帽弁領域には、僧帽弁にデバイスを留置した場合における、当該デバイスの留置前に僧帽弁が存在していた領域が含まれる、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
医用画像処理装置による医用画像処理方法であって、
心臓を含む三次元医用画像データを取得する取得ステップと、
前記三次元医用画像データに表された左心房領域と、左心室領域と、大動脈弁領域とに基づいて、当該領域を横断する三腔長軸断面を特定する第1特定ステップと、
前記三次元医用画像データに表された僧帽弁領域に含まれる第1弁輪領域と、前記三腔長軸断面とに基づいて、僧帽弁軸を特定する第2特定ステップと、
前記僧帽弁領域に含まれる前尖領域と、前記大動脈弁領域に含まれる第2弁輪領域とを前記三腔長軸断面から特定する第3特定ステップと、
前記三腔長軸断面上での前記前尖領域と前記第2弁輪領域との位置関係に基づいて、大動脈弁軸を特定する第4特定ステップと、
前記僧帽弁軸と前記大動脈弁軸とに基づく角度を算出する算出ステップと、
を含む医用画像処理方法。
【請求項8】
医用画像処理装置のコンピュータに、
心臓を含む三次元医用画像データを取得する取得ステップと、
前記三次元医用画像データに表された左心房領域と、左心室領域と、大動脈弁領域とに基づいて、当該領域を横断する三腔長軸断面を特定する第1特定ステップと、
前記三次元医用画像データに表された僧帽弁領域に含まれる第1弁輪領域と、前記三腔長軸断面とに基づいて、僧帽弁軸を特定する第2特定ステップと、
前記僧帽弁領域に含まれる前尖領域と、前記大動脈弁領域に含まれる第2弁輪領域とを前記三腔長軸断面から特定する第3特定ステップと、
前記三腔長軸断面上での前記前尖領域と前記第2弁輪領域との位置関係に基づいて、大動脈弁軸を特定する第4特定ステップと、
前記僧帽弁軸と前記大動脈弁軸とに基づく角度を算出する算出ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項9】
心房及び心室と、前記心房と前記心室との間に位置する第1弁と、前記心室と動脈との間に位置する第2弁とを含む三次元医用画像データを取得する取得部と、
前記三次元医用画像データに表された心房領域と、心室領域と、第2弁領域とに基づいて、当該領域を横断する長軸断面を特定する第1特定部と、
前記三次元医用画像データに表された第1弁領域に含まれる第1弁輪領域と、前記長軸断面とに基づいて、第1弁軸を特定する第2特定部と、
前記第1弁領域に含まれる前尖領域と、前記第2弁領域に含まれる第2弁輪領域とを前記長軸断面から特定する第3特定部と、
前記長軸断面上での前記前尖領域と前記第2弁輪領域との位置関係に基づいて、第2弁軸を特定する第4特定部と、
前記第1弁軸と前記第2弁軸とに基づく角度を算出する算出部と、
を備える医用画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラムに関する。
【0002】
従来、X線CT装置等の医用画像診断装置により取得された医用画像を用いて、心臓の血流動態を把握するための種々の指標の計測が行われている。例えば、左心室から大動脈弁への血流路である左室流出路(以下、LVOTともいう)の狭窄の状態を示す指標として、三腔(Three Chamber)長軸断面上における僧帽弁弁輪を結ぶ直線の垂線(以下、僧帽弁軸ともいう)と、大動脈弁弁輪を結ぶ直線の垂線(以下、大動脈弁軸ともいう)との角度であるAMA(Aorto-Mitral Angle)が計測されている。
【0003】
また、医用画像から僧帽弁軸や大動脈弁軸を特定しAMAを自動的で計測することも行われている。しかしながら、左心室やLVOTの形状によっては、医師の意図する血流の流れを意識した大動脈弁軸を特定することができない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、心臓の血流動態の把握するための指標を正確かつ効率的に計測することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、第1特定部と、第2特定部と、第3特定部と、第4特定部と、算出部とを備える。取得部は、心臓を含む三次元医用画像データを取得する。第1特定部は、三次元医用画像データに表された左心房領域と、左心室領域と、大動脈弁領域とに基づいて、当該領域を横断する三腔長軸断面を特定する。第2特定部は、三次元医用画像データに表された僧帽弁領域に含まれる第1弁輪領域と、三腔長軸断面とに基づいて、僧帽弁軸を特定する。第3特定部は、僧帽弁領域に含まれる前尖領域と、大動脈弁領域に含まれる第2弁輪領域とを三腔長軸断面から特定する。第4特定部は、三腔長軸断面上での前尖領域と第2弁輪領域との位置関係に基づいて、大動脈弁軸を特定する。算出部は、僧帽弁軸と大動脈弁軸とに基づく角度を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る医用画像処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る三腔長軸断面の特定処理の一例を説明する図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る僧帽弁軸の特定処理の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る大動脈弁軸の特定処理の一例を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るAMAの算出処理の一例を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る医用画像処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る医用画像処理装置によるAMAの算出結果の一例を説明する図である。
【
図9】
図9は、実施形態とは別の処理に係るAMAの算出結果の一例を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施形態とは別の医用画像処理装置に係るAMAの算出結果の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、医用画像処理装置、医用画像処理方法及びプログラムの実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態では、医用画像診断装置の一例であるX線CT装置と医用画像処理装置とを含んだ医用画像処理システムを例に説明する。また、X線CT装置で収集された投影データに基づいて後述の各処理が実行されるものとして説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る医用画像処理システムSの構成の一例を示すブロック図である。X線CT装置1及び医用画像処理装置2は、ネットワークNWを介して相互に接続される。
【0010】
なお、ネットワークNWを介して接続可能であれば、X線CT装置1及び医用画像処理装置2が設置される場所は任意である。例えば、X線CT装置1及び医用画像処理装置2は、病院等の同一の施設内に設置されてもよいし、互いに異なる施設内に設置されていてもよい。即ち、ネットワークNWは、施設内で閉じたローカルネットワークにより構成されてもよいし、インターネットを介したネットワークであってもよい。
【0011】
また、X線CT装置1と医用画像処理装置2との間の通信は、画像保管装置等の他の装置を介して行なわれてもよいし、他の装置を介さず直接的に行なわれてもよい。このような画像保管装置の例としては、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)のサーバが挙げられる。
【0012】
まず、X線CT装置1について、
図2を用いて説明する。
図2は、実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と寝台装置30とコンソール装置40とを有する。
【0013】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸の長手方向をZ軸、Z軸に直交し、かつ回転中心から回転フレーム13を支持する支柱に向かう方向をX軸、Z軸及びX軸に直交する方向をY軸とそれぞれ定義する。
【0014】
架台装置10は、診断に用いられる医用画像を撮影するための撮影系19を有する。撮影系19は、例えば、X線管11、X線検出器12、ウェッジ16、及びコリメータ17で構成される。すなわち、架台装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線の検出データから投影データを収集する撮影系19を有する装置である。
【0015】
また、架台装置10は、被検体Pを収容するための開口部を有する。被検体Pが載置された天板33は、寝台装置30が設けられる側を入り口として開口部へ収容される。
【0016】
架台装置10は、X線管11と、ウェッジ16と、コリメータ17と、X線検出器12と、X線高電圧装置14と、DAS(Data Acquisition System)18と、回転フレーム13と、制御装置15と、寝台装置30とを有する。
【0017】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管である。例えば、X線管11には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0018】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。
【0019】
ウェッジ16は、例えばウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0020】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0021】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をデータ収集装置(DAS18)へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャンネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。なお、チャンネル方向は、回転フレーム13の円周方向を意味する。
【0022】
X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として一つの円弧に沿ってチャンネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャンネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(体軸方向、列方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0023】
また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽版を有する。
【0024】
光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0025】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。
【0026】
なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。なお、固定フレームは、回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。
【0027】
DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。検出データは、例えば、サイノグラムである。
【0028】
サイノグラムとは、X線管11の位置(以下、ビュー角度ともいう)ごとに、且つX線検出素子ごとに生成される投影データを、ビュー方向とチャンネル方向とに対応付けて示すデータである。ここで、ビュー方向は、ビュー角度に対応し、X線の照射方向を意味する。
【0029】
なお、X線検出器12における1つの検出素子列のみを用いてシングルスキャンを実行した場合、1つのスキャンに対して1つのサイノグラムを生成することができる。また、X線検出器12における複数の検出素子列を用いてヘリカルスキャン又はボリュームスキャンを実行した場合、1つのスキャンに対して複数のサイノグラムを生成することができる。
【0030】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に支持する。
【0031】
回転フレーム13は架台装置の非回転部分(例えば固定フレーム。
図2での図示は省略している)により回転可能に支持される。回転機構は例えば回転駆動力を生ずるモータと、当該回転駆動力を回転フレーム13に伝達して回転させるベアリングとを含む。モータは例えば当該非回転部分に設けられ、ベアリングは回転フレーム13及び当該モータと物理的に接続され、モータの回転力に応じて回転フレーム13が回転する。
【0032】
回転フレーム13と非回転部分にはそれぞれ、非接触方式または接触方式の通信回路が設けられ、これにより回転フレーム13に支持されるユニットと当該非回転部分あるいは架台装置10の外部装置との通信が行われる。
【0033】
例えば、非接触の通信方式として光通信を採用する場合、DAS18が生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、さらに送信器により当該非回転部分からコンソール装置40へと転送される。
【0034】
なお、通信方式としては、この他に容量結合式や電波方式等の非接触型のデータ伝送の他、スリップリングと電極ブラシを使った接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0035】
制御装置15は、CPU等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた、後述する入力インタフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。
【0036】
例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インタフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。
【0037】
なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
【0038】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33をその長軸方向(
図2のZ軸方向)に移動させるモータあるいはアクチュエータである。
【0039】
支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0040】
寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、基台31を上下方向に移動させる。また、寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、天板33を長軸方向(Z軸方向)に移動させる。
【0041】
コンソール装置40は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集されたX線検出データからX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インタフェース43と、処理回路45とを備える。
【0042】
メモリ41は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば投影データや再構成画像データを記憶する。また、メモリ41は、撮影プロトコルを記憶する。
【0043】
ここで、撮影プロトコルとは、撮影系19を制御して被検体Pを撮影し画像を取得するための手順等を規定したものである。撮影プロトコルは、例えば、撮影部位、撮影条件、撮影範囲、再構成条件、架台装置10(撮影系19)の動作、寝台装置30の動作等のパラメータ群である。
【0044】
また、メモリ41は、後述するシステム制御機能451、前処理機能452、再構成処理機能453、及び画像処理機能454を実現するための専用プログラムを格納する。
【0045】
ディスプレイ42は、操作者が参照するモニタであり、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路45によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。
【0046】
入力インタフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路45に出力する。例えば、入力インタフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。
【0047】
また、例えば、入力インタフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。また、入力インタフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インタフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0048】
処理回路45は、X線CT装置1全体の動作を制御する。処理回路45は、例えば、システム制御機能451、前処理機能452、再構成処理機能453、及び画像処理機能454を有する。
【0049】
本実施形態では、構成要素であるシステム制御機能451、前処理機能452、再構成処理機能453、及び画像処理機能454にて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路45はプログラムをメモリ41から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。
【0050】
換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路45は、
図2の処理回路45内に示された各機能を有することになる。
【0051】
なお、
図2においては単一の処理回路45にて、システム制御機能451、前処理機能452、再構成処理機能453、及び画像処理機能454にて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路45を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0052】
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0053】
システム制御機能451は、入力インタフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路45の各種機能を制御する。例えば、システム制御機能451は、入力インタフェース43を介し、ログインのためのユーザ情報(例えばユーザID等)、被検体情報等の入力を受け付ける。また、例えば、システム制御機能451は、入力インタフェース43を介し、撮影プロトコルの入力を受け付ける。
【0054】
前処理機能452は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0055】
再構成処理機能453は、前処理機能452により生成された投影データに対して、再構成条件に従ってフィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。生成されたCT画像データは、医用画像処理装置2に送信され、医用画像処理装置2で血流動態を把握するための指標の計測処理が行われる。
【0056】
画像処理機能454は、入力インタフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや三次元画像データに変換する。三次元画像データは、三次元医用画像データの一例である。なお、三次元画像データの生成は再構成処理機能453が行なってもよい。
【0057】
なお、後処理は、コンソール装置40又は医用画像処理装置2のどちらで実施することにしても構わない。また、コンソール装置40と医用画像処理装置2の両方で同時に処理することにしても構わない。
【0058】
ここで定義される後処理とは、CT画像データに対する処理を指す概念である。例えば、後処理は、ノイズの除去、複数の超解像スライス画像のMulti-Planar Reconstruction(MPR)表示、及び、ボリュームデータのレンダリング等を含む処理である。
【0059】
図1に戻り、医用画像処理装置2について説明する。医用画像処理装置2は、X線CT装置1による被検体Pのスキャンによって生成される三次元画像データを用いて、心臓の血流動態の把握するための指標の計測を行なう装置である。本実施形態では、医用画像処理装置2が、心臓を含む領域をスキャンした三次元画像データに基づいて、僧帽弁軸と大動脈弁軸とのなす角度であるAMAの計測を行う例について説明する。AMAは、例えばLVOTの狭窄状態を示す指標として使用される。
【0060】
医用画像処理装置2は、例えば、
図1に示すように、メモリ21、ディスプレイ22、入力インタフェース23及び処理回路24を備える。
【0061】
メモリ21は、各種の情報を記憶する。例えば、メモリ21は、医用画像処理装置2に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、例えば、メモリ21は、X線CT装置1から受信したデータ、及び、処理回路24によって生成されたデータを記憶する。
【0062】
なお、メモリ21は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。また、メモリ21は、医用画像処理装置2とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0063】
ディスプレイ22は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ22は、入力インタフェース23を介してユーザから各種の指示や設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。
【0064】
例えば、ディスプレイ22は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ22は、デスクトップ型でもよいし、医用画像処理装置2本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0065】
入力インタフェース23は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路24に出力する。例えば、入力インタフェース23は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。
【0066】
なお、入力インタフェース23は、医用画像処理装置2本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インタフェース23は、モーションキャプチャによりユーザからの入力操作を受け付ける回路であっても構わない。一例を挙げると、入力インタフェース23は、トラッカーを介して取得した信号やユーザについて収集された画像を処理することにより、ユーザの体動や視線等を入力操作として受け付けることができる。
【0067】
また、入力インタフェース23は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置2とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路24へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース23の例に含まれる。
【0068】
処理回路24は、取得機能241、第1特定機能242、第2特定機能243、第3特定機能244、第4特定機能245、算出機能246及び表示制御機能247を実行することで、医用画像処理装置2全体の動作を制御する。
【0069】
ここで、取得機能241は、取得部の一例である。また、第1特定機能242は、第1特定部の一例である。また、第2特定機能243は、第2特定部の一例である。また、第3特定機能244は、第3特定部の一例である。また、第4特定機能245は、第4特定部の一例である。また、算出機能246は、算出部の一例である。
【0070】
図1に示す医用画像処理装置2においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ21へ記憶されている。処理回路24は、メモリ21からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路24は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0071】
なお、
図1においては単一の処理回路24にて、取得機能241、第1特定機能242、第2特定機能243、第3特定機能244、第4特定機能245、算出機能246及び表示制御機能247を実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路24を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路24が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0072】
また、処理回路24は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、各機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路24は、メモリ21から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用画像処理装置2とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、
図1に示す各機能を実現する。
【0073】
取得機能241は、三次元画像データを取得する。例えば、取得機能241は、ネットワークNWを介して、X線CT装置1から三次元画像データを受信する。なお、取得機能241は、PACS等の外部装置から三次元画像データを取得してもよい。本実施形態では、三次元画像データは、被検体Pの心臓を含む部位をスキャンした三次元画像データである。なお、三次元画像データは、少なくとも左心房と、僧帽弁と、左心室と、大動脈弁と、大動脈とが描出されていれば被検体Pの心臓全体が描出されていなくてもよい。
【0074】
第1特定機能242は、取得機能241が取得した三次元画像データに基づいて、左心房領域と、左心室領域と、大動脈弁領域とを特定する。また、第1特定機能242は、左心房領域と、左心室領域と、大動脈弁領域とに基づいて、三腔長軸断面を特定する。三腔長軸断面は、例えば、左心房と、左心室と、大動脈とが描出された心臓の断面図である。以下、
図3を用いて、第1特定機能242の動作について説明する。
図3は、三腔長軸断面の特定処理の一例を説明する図である。
【0075】
まず、第1特定機能242は、例えば、公知のセグメンテーション技術を用いて、左心房、左心室、大動脈弁が描画された領域を三次元画像データから特定する。以下、左心房が描画された領域を左心房領域、左心室が描画された領域を左心室領域、大動脈弁が描画された領域を大動脈弁領域ともいう。
【0076】
次いで、第1特定機能242は、左心房領域の特徴点PLAを特定する。一例として、第1特定機能242は、特定した左心房領域の重心座標を特徴点PLAとして特定する。
【0077】
次に、第1特定機能242は、左心室領域の特徴点PLVを特定する。一例として、第1特定機能242は、左心室領域座標を主成分分析し、第一主成分を算出する。次いで、第1特定機能242は、第一主成分が表現する軸に左心室領域座標を投影し、左心室の重心座標から最もL2ノルムが大きい値の座標(左心室の心尖座標)を特徴点PLVとして特定する。
【0078】
次に、第1特定機能242は、大動脈弁領域の特徴点PLOを特定する。一例として、第1特定機能242は、大動脈弁におけるnadir3点の重心座標を特徴点PLOとして特定する。そして、第1特定機能242は、特徴点PLA、PLV、及びPLOの3点を通過する断面を三腔長軸断面TVとして特定する。
【0079】
図1に戻り、説明を続ける。第2特定機能243は、僧帽弁領域を三腔長軸断面上から特定し、当該僧帽弁領域に含まれる第1弁輪領域と三腔長軸断面とに基づいて僧帽弁軸を特定する。以下、
図4を用いて、第2特定機能243の動作について説明する。
図4は、僧帽弁軸の特定処理の一例を説明する図である。
図4は、第1特定機能242で特定した三腔長軸断面が描出された断面画像の一例を表している。
【0080】
まず、第2特定機能243は、三腔長軸断面TVと僧帽弁前尖ALの弁輪領域との交点MP1を特定する。次いで、第2特定機能243は、三腔長軸断面TVと僧帽弁後尖PLの弁輪領域との交点MP2を特定する。僧帽弁前尖AL及び僧帽弁後尖PLの弁輪領域は、第1弁輪領域の一例である。
【0081】
次いで、第2特定機能243は、交点MP1と交点MP2との中点CMを特定する。そして、第2特定機能243は、中点CMを通り、交点MP1と交点MP2とを結ぶ直線MLと直交し、三腔長軸断面TVを横断する直線を僧帽弁軸MAとして特定する。
【0082】
図1に戻り、説明を続ける。第3特定機能244は、三腔長軸断面から各弁領域における解剖学的構造を特定する。例えば、第3特定機能244は、僧帽弁領域に含まれる前尖領域と、大動脈弁領域に含まれる第2弁輪領域とを、第1特定機能242が特定した三腔長軸断面から特定する。
【0083】
第4特定機能245は、大動脈弁軸を特定する。例えば、第4特定機能245は、第3特定機能244が特定した三腔長軸断面上での前尖領域と第2弁輪領域との位置関係に基づいて、大動脈弁軸を特定する。以下、
図5を用いて、第3特定機能244及び第4特定機能245の動作について説明する。
図5は、大動脈弁軸の特定処理の一例を説明する図である。
【0084】
例えば、第3特定機能244は、三次元画像データ上での僧帽弁前尖領域と、三腔長軸断面とに基づいて、僧帽弁前尖領域と三腔長軸断面との交点を特定する。
図5では、僧帽弁前尖領域と三腔長軸断面TVとの交点としてCV1乃至CV11が特定された例を示している。次いで、第4特定機能245は、交点CV1乃至CV11の近似直線ACを導出する。以下の説明では、交点CV1が位置する側を基部側、交点CV11が位置する側を先端側というものとする。
【0085】
次いで、第4特定機能245は、三腔長軸断面TVと大動脈弁の左半月弁(図示しない)の弁輪領域との交点AP1を特定する。次いで、第2特定機能243は、三腔長軸断面TVと大動脈弁の右半月弁(図示しない)の弁輪領域との交点AP2を特定する。大動脈弁の左半月弁の弁輪領域及び大動脈弁の右半月弁の弁輪領域は、第2弁輪領域の一例である。
【0086】
なお、第2特定機能243は、大動脈弁の左半月弁の弁輪領域又は大動脈弁の右半月弁の弁輪領域に代えて、三腔長軸断面TVと大動脈弁の後半月弁の弁輪領域を第2弁輪領域として特定してもよい。
【0087】
次いで、第4特定機能245は、交点AP1と交点AP2の中点CAを特定する。そして、第4特定機能245は、中点CAを通り、近似直線ACに平行で三腔長軸断面TVを横断する直線を大動脈弁軸AAとして特定する。
【0088】
上述のように、本実施形態の大動脈弁軸は、僧帽弁前尖の形状に基づいて特定されるものである。例えば、肥大型心筋症等でLVOTの狭窄が生じている場合、僧帽弁前尖は、大動脈弁が位置する側に引っ張られたような形状を示すことになる。このため、僧帽弁前尖の形状に基づいた大動脈弁軸は、LVOTの状態(例えば、狭窄の度合い等)を反映したものとなる。
【0089】
なお、
図5の例では、第4特定機能245は、特定した交点全て(交点CV1乃至CV11)の近似直線を特定しているが、第4特定機能245は、基部側の複数の交点(
図5の例で、CV1乃至5まで等)の近似直線を特定してもよい。
【0090】
これは、僧帽弁の先端部は、僧帽弁の動きによって曲がった形状になる場合があるため、近似直線の特定に先端側の交点を用いると、僧帽弁の動きの影響を受けてしまい、特定される大動脈弁軸がLVOTの状態を反映したものでなくなる可能性があるためである。言い換えると、第4特定機能245は、基部側の交点を用いて近似直線を特定することで、LVOTの状態を反映した大動脈弁軸を特定できる。
【0091】
図1に戻り、説明を続ける。算出機能246は、僧帽弁軸と大動脈弁軸とに基づく角度を算出する。以下、
図6を用いて、算出機能246の動作について説明する。
図6は、AMAの算出処理の一例を説明する図である。
図6に示すように、算出機能246は、第2特定機能243で特定された僧帽弁軸MAと第4特定機能245で特定された大動脈弁軸AAとがなす角をAMAとして算出する。
【0092】
AMAは、
図5の大動脈弁軸AAを用いて導出した角度であり、上述のように、大動脈弁軸AAは、LVOTの状態を反映したものである。このため、算出機能246で算出されるAMAは、LVOTの状態を示す適正な指標であると言える。
【0093】
図1に戻り、説明を続ける。表示制御機能247は、各種情報を表示させる制御を行う。例えば、表示制御機能248は、算出機能246で算出したAMAを表示する表示画面をディスプレイ22に表示させる制御を行う。
【0094】
なお、表示制御機能248は、AMAの導出に係る画面(上述の
図4乃至6を表示する画面)をディスプレイ22に表示させてもよい。
【0095】
次に、医用画像処理装置2が実行する処理について説明する。
図7は、医用画像処理装置2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0096】
まず、取得機能241は、三次元画像データを取得する(ステップS101)。例えば、取得機能241は、X線CT装置1から、ネットワークNWを介して、被検体Pの心臓を含む三次元画像データを受信する。
【0097】
次いで、第1特定機能242は、左心房領域、左心室領域、大動脈弁領域を三次元画像データから特定する(ステップS102)。例えば、第1特定機能242は、公知のセグメンテーション技術を用いて、左心房領域、左心室領域、大動脈弁領域を三次元画像データから特定する。
【0098】
次いで、第1特定機能242は、左心房領域の特徴点を三次元画像データから特定する(ステップS103)。例えば、第1特定機能242は、左心房領域の重心座標を算出し、当該重心座標を、左心房領域の特徴点として特定する。
【0099】
次いで、第1特定機能242は、左心室領域の特徴点を三次元画像データから特定する(ステップS104)。例えば、第1特定機能242は、左心室領域座標を主成分分析し、分析結果に基づいて、左心室の心尖座標を算出し、当該心尖座標を、左心室領域の特徴点として特定する。
【0100】
次いで、第1特定機能242は、大動脈弁領域の特徴点を三次元画像データから特定する(ステップS105)。例えば、第1特定機能242は、大動脈弁におけるnadir3点の重心座標を、大動脈弁領域の特徴点として特定する。
【0101】
次いで、第1特定機能242は、三腔長軸断面を三次元画像データから特定する(ステップS106)。例えば、第1特定機能242は、ステップS103乃至S105で特定した、左心房領域の特徴点、左心室領域の特徴点、及び大動脈弁領域の特徴点を横断する断面を三腔長軸断面として特定する。
【0102】
次いで、第2特定機能243は、三腔長軸断面と僧帽弁弁輪領域との交点を特定する(ステップS107)。例えば、第2特定機能243は、公知のセグメンテーション技術を用いて、僧帽弁前尖の弁輪領域と僧帽弁後尖の弁輪領域とを三次元画像データから特定する。そして、第2特定機能243は、三腔長軸断面と僧帽弁前尖の弁輪領域との交点及び三腔長軸断面と僧帽弁後尖の弁輪領域との交点を特定する。
【0103】
次いで、第2特定機能243は、三腔長軸断面と僧帽弁弁輪領域との交点の中点を特定する(ステップS108)。例えば、第2特定機能243は、ステップS107で特定した2つの交点間の距離を算出し、2つの交点の中点を特定する。
【0104】
次いで、第2特定機能243は、僧帽弁軸を特定する(ステップS109)。例えば、第2特定機能243は、ステップS107で特定した2つの交点を結ぶ直線の垂線であって、ステップS108で特定した中点を通り、三腔長軸断面を横断する直線を僧帽弁軸として特定する。
【0105】
次いで、第3特定機能244は、三腔長軸断面と僧帽弁前尖領域との交点座標を特定する(ステップS110)。例えば、第3特定機能244は、公知のセグメンテーション技術を用いて、三腔長軸断面と僧帽弁前尖領域との複数の交点を三腔長軸断面から特定する。次いで、第4特定機能245は、ステップS110で特定した複数の交点の近似直線を特定する(ステップS111)。
【0106】
次いで、第4特定機能245は、三腔長軸断面と大動脈弁弁輪領域との交点を特定する(ステップS112)。例えば、第3特定機能244は、公知のセグメンテーション技術を用いて、大動脈弁の弁輪領域を三次元画像データから特定する。そして、第4特定機能245は、三腔長軸断面と大動脈弁の左半月弁の弁輪領域との交点及び三腔長軸断面と大動脈弁の右半月弁の弁輪領域との交点を特定する。
【0107】
次いで、第4特定機能245は、三腔長軸断面と大動脈弁輪領域との交点の中点を特定する(ステップS113)。例えば、第4特定機能245は、ステップS112で特定した2つの交点間の距離を算出し、2つの交点の中点を特定する。
【0108】
次いで、第4特定機能245は、大動脈弁軸を特定する(ステップS114)。例えば、第4特定機能245は、ステップS111で特定した近似直線に平行な直線であって、ステップS113で特定した中点を通り、三腔長軸断面を横断する直線を大動脈弁軸として特定する。
【0109】
次いで、算出機能246は、ステップS109で特定した僧帽弁軸と、ステップS114で特定した大動脈弁軸とがなす角をAMAとして算出し(ステップS115)、本処理を終了する。
【0110】
以上に述べた実施形態に係る医用画像処理装置2は、三次元画像データから、三腔長軸断面を特定し、三腔長軸断面上で僧帽弁の弁輪領域に基づいて、僧帽弁軸を特定し、三腔長軸断面上で僧帽弁の前尖領域を特定し、三腔長軸断面上の大動脈弁の弁輪領域と、三腔長軸断面と、前尖領域とに基づいて、大動脈弁軸を特定し、僧帽弁軸と大動脈弁軸とに基づく角度を算出する。
【0111】
これにより、本実施形態に係る医用画像処理装置2は、三腔長軸断面上で僧帽弁前尖の形状を反映した大動脈弁軸を特定できる。僧帽弁前尖の形状は、LVOTの状態(狭窄の度合い等)に応じて変化するため、本実施形態に係る医用画像処理装置2によれば、LVOTの状態を反映したAMAを計測することが可能である。
【0112】
ここで、
図3乃至
図6に示した本実施形態のAMAの算出(計測)処理と対比するため、本実施形態とは別の処理によるAMAの計測結果の一例を
図9及び
図10に示す。
図9は、実施形態とは別の処理によるAMAの計測結果の一例を説明する図である。
【0113】
図9は、医師が目視で三腔長軸断面上における僧帽弁軸MA2及び大動脈弁軸AA2を設定し、僧帽弁軸MA2と大動脈弁軸AA2とがなす角であるAMA2を計測した場合の一例である。
図9の例では、医師が目視で僧帽弁軸MA2及び大動脈弁軸AA2を設定しているため、設定された大動脈弁軸AA2は、医師の意図する血流を表現したものであるといえる。
図9の例ではAMA2は、43.6°である。
【0114】
また、
図10は、実施形態とは別の構成の医用画像処理装置によるAMAの算出結果の一例を説明する図である。
図10は、本実施形態とは異なる構成の別の医用画像処理装置で、
図9と同じ被検体Pの同じ三腔長軸断面上で、僧帽弁軸MA3及び大動脈弁軸AA3を設定し、僧帽弁軸MA3と大動脈弁軸AA3とがなす角であるAMA3を計測した場合の一例である。
【0115】
図10の例では、別の医用画像処理装置の処理回路(以下、別の処理回路ともいう)は、三腔長軸断面上で、三腔長軸断面上の僧帽弁弁輪を結ぶ直線を特定し、当該直線の垂線を僧帽弁軸MA3として特定する。
【0116】
また、別の処理回路は、三腔長軸断面上で、三腔長軸断面上の大動脈弁弁輪を結ぶ直線を特定し、当該直線の垂線を大動脈弁軸AA3として特定する。そして、別の処理回路は、僧帽弁軸MA3と大動脈弁軸AA3とがなす角であるAMA3を計測する。
図10の例ではAMA3は、58.0°である。
【0117】
図9のAMA2と
図10のAMA3との差の絶対値は、14.2°であり、
図10のAMA3は、医師の意図する血流を表現したものであるとは言えないと考えられる。ここで、医師は、LVOTの状態を考慮して、血流を思い描くと考えられるため、
図9の大動脈弁軸AA2は、LVOTの状態を反映したものであるといえる。一方、
図10の大動脈弁軸AA3は、僧帽弁前尖の形状を用いることなく設定されたものである。つまり、
図10の大動脈弁軸AA3は、LVOTの状態を反映できていない可能性がある。
【0118】
これに対して、本実施形態に係る医用画像診断装置2は、上述したように、LVOTの状態を反映した大動脈弁軸を特定することができる。ここで、
図8は、実施形態に係る医用画像処理装置2によるAMAの算出結果の一例を説明する図である。
【0119】
図8は、本実施形態に係る医用画像処理装置2で、
図9と同じ被検体Pの同じ三腔長軸断面において、僧帽弁軸MA1及び大動脈弁軸AA1を設定し、僧帽弁軸MA1と大動脈弁軸AA1とがなす角であるAMA1を計測した場合の一例である。
【0120】
図8の例では、AMA1は、45.7°である。
図9のAMA2と
図8のAMA1との差の絶対値は、1.9°であり、
図9のAMA2と
図10のAMA3との差の絶対値よりも小さい。したがって、
図8の大動脈弁軸AA1は、
図10の大動脈弁軸AA3よりも強くLVOTの状態を反映したものであるといえる。以上より、本実施形態に係る医用画像処理装置2は、心臓の血流動態の把握するための指標を正確かつ効率的に計測することができる。
【0121】
なお、上述した実施形態は、各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0122】
(変形例1)
上述の実施形態においては、医用画像診断装置1が、X線CT装置である場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。医用画像診断装置1は、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、アンギオ-CTシステム、トモシンセシス装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、超音波画像診断装置等であってもよい。
【0123】
本変形例によれば、X線CT装置に限らず、様々な医用画像診断装置で取得された三次元医用画像データを用いて、心臓の血流動態の把握するための指標を正確かつ効率的に計測することができる。
【0124】
(変形例2)
上述の実施形態においては、X線CT装置1のコンソール装置40とは別体の情報処理装置を医用画像処理装置2とする形態について説明した。しかしながら、コンソール装置40が、医用画像処理装置2が備える機能構成を備えていてもよい。本変形例によれば、X線CT装置1単体で心臓の血流動態の把握するための指標を正確かつ効率的に計測することができる。
【0125】
(変形例3)
上述の実施形態においては、被検体Pの心臓にデバイスが留置されていない場合について説明した。しかしながら、上述の実施形態は、被検体Pの心臓にデバイスが留置されている場合にも適用可能である。以下、被検体Pの僧帽弁に僧帽弁治療デバイスが留置されている場合を例に説明する。
【0126】
この場合、本変形例の第2特定機能243は、僧帽弁の形状と僧帽弁治療デバイスの形状とに基づいて、三次元画像データ上における、被検体Pに僧帽弁治療デバイスが留置されていなかった場合に僧帽弁が存在すると想定される領域を僧帽弁領域として特定する。また、同様に、第2特定機能243は、僧帽弁治療デバイスが留置されていなかった場合に僧帽弁の弁輪が存在すると想定される領域を僧帽弁弁輪領域として特定する。
【0127】
本変形例に係る医用画像処理装置2によれば、例えば、僧帽弁治療デバイスにより、左室や左室流出路の形状が歪んでいる場合においても、LVOTの状態を反映した大動脈弁軸を特定することができる。
【0128】
(変形例4)
上述の実施形態においては、心臓の血流動態の把握するための指標を算出する処理の対象が左心系(左心房、僧帽弁、左心室、大動脈弁、及び大動脈)である場合について説明した。しかしながら、上述の実施形態は、処理の対象が右心系(右心房、三尖弁、右心室、肺動脈弁、及び肺動脈)である場合にも適用可能である。
【0129】
処理の対象が右心系である場合、上述の実施形態について、「左心房」を「右心房」に、「僧帽弁」を「三尖弁」に、「左心室」を「右心室」に、「左室流出路(LVOT)」を「右室流出路(RVOT)」に、「大動脈」を「肺動脈」に、「三腔長軸断面」を「右心房領域と右心室領域と肺動脈弁領域とを横断する長軸断面」に、夫々読み替えることで上述した実施形態の処理を適用することができる。
【0130】
本変形例によれば、左心系だけでなく、右心系についても、心臓の血流動態の把握するための指標を正確かつ効率的に計測することができる。
【0131】
以上説明した少なくとも実施形態及び変形例等によれば、心臓の血流動態の把握するための指標を正確かつ効率的に計測することができる。
【0132】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0133】
プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0134】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0135】
1 X線CT装置
2 医用画像処理装置
10 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 DAS(Data Acquisition System)
19 撮影系
21 メモリ
22 ディスプレイ
23 入力インタフェース
24 処理回路
241 取得機能
242 第1特定機能
243 第2特定機能
244 第3特定機能
245 第4特定機能
246 算出機能
247 表示制御機能
30 寝台装置
31 基台
32 寝台駆動装置
33 天板
34 支持フレーム
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インタフェース
45 処理回路
451 システム制御機能
452 前処理機能
453 再構成処理機能
454 画像処理機能