(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098863
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電気クリップおよび脱落防止機能付き電気クリップ
(51)【国際特許分類】
H01R 11/24 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
H01R11/24
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002638
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔平
(57)【要約】
【課題】安全性を向上させた電気クリップおよび脱落防止機能付き電気クリップを提供する。
【解決手段】実施の形態による電気クリップは、電気作業に用いられる電気クリップであって、第1方向に延びる基部と、基部から第1方向に直交する第2方向に延び出た挟持部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気作業に用いられる電気クリップであって、
第1方向に延びる基部と、
前記基部から前記第1方向に直交する第2方向に延び出た挟持部と、を備える、電気クリップ。
【請求項2】
第1のクリップ片と第2のクリップ片とを備え、
前記第1のクリップ片は、前記第1方向に延びる第1の基部と、前記第1の基部から前記第2方向に延び出た第1の先端部と、を有し、
前記第2のクリップ片は、前記第1方向に延びる第2の基部と、前記第2の基部から前記第2方向に延び出た第2の先端部と、を有し、
前記基部は、前記第1の基部と前記第2の基部とにより構成され、
前記挟持部は、前記第1の先端部と前記第2の先端部とにより構成され、
前記第1のクリップ片は、前記第2のクリップ片に対して前記第1方向にスライド移動可能に構成されている、請求項1に記載の電気クリップ。
【請求項3】
前記第1の先端部が前記第2の先端部に向かうように、前記第1のクリップ片を前記第1方向に付勢するコイルばねをさらに備える、請求項2に記載の電気クリップ。
【請求項4】
前記第1のクリップ片を前記第1方向にスライド移動させるためのレバーをさらに備える、請求項2に記載の電気クリップ。
【請求項5】
前記レバーの表面を少なくとも部分的に覆う絶縁物をさらに備える、請求項4に記載の電気クリップ。
【請求項6】
前記基部を少なくとも部分的に覆うケースをさらに備える、請求項1に記載の電気クリップ。
【請求項7】
前記ケースの表面を少なくとも部分的に覆う絶縁物をさらに備える、請求項6に記載の電気クリップ。
【請求項8】
電線が接続される電気接続部をさらに備え、
前記電気接続部は、ビスで構成されている、請求項1に記載の電気クリップ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の電気クリップと、
既設電線に取り付けられることにより、前記電気クリップの脱落を防止する脱落防止クリップと、を備える、脱落防止機能付き電気クリップ。
【請求項10】
電気作業に用いられる電気クリップと、
既設電線を挟持することにより、前記電気クリップの脱落を防止する脱落防止クリップと、を備える、脱落防止機能付き電気クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、電気クリップおよび脱落防止機能付き電気クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
電気設備における電気作業に用いられる電気工具として、電気クリップが知られている。電気クリップの一例として、ワニグチクリップが挙げられる。電気作業においては、ワニグチクリップが装着された電線を介して電気機器および端子台を電気的に接続し、回路構成や電気試験に使用している。
【0003】
図1に、一般的なワニグチクリップの構成図を示す。
図1に示すように、ワニグチクリップ1は、第1のクリップ片2と第2のクリップ片3とを備えている。第1のクリップ片2と第2のクリップ片3は、中央部付近に設けられた結合軸4で軸支されている。第1のクリップ片2と第2のクリップ片3は、それぞれ、基部2a、3aと先端部2b、3bとを有している。第1のクリップ片2の先端部2bと第2のクリップ片3の先端部3bとにより挟持部5が構成されている。
【0004】
また、ワニグチクリップ1は、コイルばね6を備えている。コイルばね6は、第1のクリップ片2の先端部2bが第2のクリップ片3の先端部3bに向かうように、すなわち、挟持部5が閉じるように、第1のクリップ片2を付勢している。作業者が第1のクリップ片2の基部2aと第2のクリップ片3の基部3aを指で摘まむことにより、コイルばね6の付勢力に抗して挟持部5を開くことができ、指を離すことにより、コイルばね6の付勢力により挟持部5を閉じることができる。第2のクリップ片3の基部3aには、接合部7と支持片8が設けられている。接合部7には半田付け等により電線が接合され、支持片8で電線がガイドされるようになっている。
【0005】
このようなワニグチクリップは、電気機器や端子台の端子を挟持することにより接続される。ここで、ワニグチクリップで端子を挟持するために、端子を覆う端子台カバーを取り外さなければならない場合があった。この場合、端子台カバーを取り外したことにより接続部が露出し、安全性が低下するおそれがあった。このことの対策として、接続部に絶縁テープを貼って接続部を絶縁する方法もあるが、絶縁テープの間に隙間が生じていたり、絶縁テープが剥がれたりする場合もあり、更なる安全性の向上が望まれていた。あるいは、振動等でワニグチクリップが端子から外れて脱落する場合があった。この場合、ワニグチクリップの脱落により、既設電線との短絡や感電事故が発生するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2-117669号公報
【特許文献2】実用新案登録第3219225号公報
【特許文献3】特開2012-238507号公報
【特許文献4】実開平11-31546号公報
【特許文献5】特開2003-177151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、安全性を向上させた電気クリップおよび脱落防止機能付き電気クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施の形態による電気クリップは、電気作業に用いられる電気クリップであって、第1方向に延びる基部と、基部から第1方向に直交する第2方向に延び出た挟持部と、を備える。
【0009】
また、実施の形態による脱落防止機能付き電気クリップは、上述した電気クリップと、既設電線に取り付けられることにより、電気クリップの脱落を防止する脱落防止クリップと、を備える。
【0010】
また、実施の形態による脱落防止機能付き電気クリップは、電気作業に用いられる電気クリップと、既設電線に取り付けられることにより、電気クリップの脱落を防止する脱落防止クリップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本実施の形態によれば、安全性を向上させた電気クリップおよび脱落防止機能付き電気クリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一般的なワニグチクリップを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態による電気クリップを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図2に示される電気クリップが端子台に適用された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による電気クリップおよび脱落防止機能付き電気クリップについて説明する。
【0014】
本実施の形態による電気クリップは、電気設備における電気作業に用いられる電気工具である。電気設備としては、受変電設備や配電盤、分電盤等の電気盤等が例示される。電気クリップは、端子台の端子を挟持可能に構成されている。
【0015】
図2~
図6に示すように、本実施の形態による電気クリップ10は、L字型に構成されている。より具体的には、電気クリップ10は、X方向(第1方向)に延びる基部12と、基部12からZ方向(第2方向)に延び出た挟持部14と、を備えている。挟持部14は、後述する端子台80の端子82を挟持する部分である(
図6参照)。
【0016】
ここで、X方向は、電気クリップ10の基部12の長さ方向を示す。Y方向は、電気クリップ10の基部12および挟持部14の幅方向を示し、X方向に直交する方向である。Z方向は、電気クリップ10の基部12の厚さ方向を示し、X方向およびY方向の両方に直交する方向である。
【0017】
以下、電気クリップ10の構成の一例についてより詳細に説明する。
【0018】
電気クリップ10は、一対のクリップ片を備えていてもよい。すなわち、
図2~
図5に示すように、電気クリップ10は、第1のクリップ片20と第2のクリップ片30とを備えていてもよい。第1のクリップ片20と第2のクリップ片30は、それぞれ、金属等の導電性材料で構成されていてもよい。
【0019】
第1のクリップ片20は、X方向に延びる第1の基部22と、第1の基部22からZ方向に延び出た第1の先端部24と、を有していてもよい。第2のクリップ片30は、X方向に延びる第2の基部32と、第2の基部32からZ方向に延び出た第2の先端部34と、を有していてもよい。
【0020】
第1の基部22と第2の基部32は、それぞれ、Z方向の厚みが薄い薄板状に形成されていてもよい。第1の基部22と第2の基部32は、Z方向において重ね合わされていてもよい。上述した電気クリップ10の基部12は、第1のクリップ片20の第1の基部22と第2のクリップ片30の第2の基部32とにより構成されていてもよい。
【0021】
第1の先端部24と第2の先端部34は、基部12からZ方向における同じ側(
図2における上側)に延び出ていてもよい。第1の先端部24と第2の先端部34は、X方向に並んでいてもよい。上述した電気クリップ10の挟持部14は、第1のクリップ片20の第1の先端部24と第2のクリップ片30の第2の先端部34とにより構成されていてもよい。すなわち、第1の先端部24と第2の先端部34との間に、端子台80の端子82が挟持されるようになっていてもよい。
【0022】
第1の先端部24と第2の先端部34は、それぞれ、任意の形状を有していてもよい。第1の先端部24と第2の先端部34は、端子台80の端子82を挟持した際に、その端子82を構成するビスの頭部が収容されるように、内部が空洞になっていてもよい。また、第1の先端部24と第2の先端部34は、端子82を構成するビスを挟持しやすいように、先端に貫通孔24a、34aを有していてもよい。貫通孔24a、34aは、それぞれ半円状に形成され、組み合わされて円形状を構成してもよい。
【0023】
電気クリップ10は、スライド機構を有していてもよい。より具体的には、第1のクリップ片20は、第2のクリップ片30に対してX方向にスライド移動可能に構成されていてもよい。第1のクリップ片20がX方向にスライド移動することにより、挟持部14が閉じたり開いたりするようになっていてもよい。
【0024】
また、
図2および
図3に示すように、電気クリップ10は、コイルばね40をさらに備えていてもよい。コイルばね40は、第1のクリップ片20をX方向に付勢していてもよい。コイルばね40は、第1の先端部24が第2の先端部34に向かうように、すなわち、挟持部14が閉じるように、第1のクリップ片2をX方向に付勢していてもよい。これにより、挟持部14は、コイルばね40の付勢力をもって、端子台80の端子82を挟持することができる。
図2および
図3に示すように、コイルばね40は、第1のクリップ片2の第1の基部22の後端部をX方向に付勢していてもよい。コイルばね40は、後述するケース50内に収容されていてもよい。
【0025】
また、
図2に示すように、電気クリップ10は、レバー26をさらに備えていてもよい。レバー26は、第1のクリップ片2の第1の基部22に設けられていてもよい。レバー26は、第1の基部22の後端部に設けられていてもよい。レバー26は、第1のクリップ片20をX方向にスライド移動させるための部材である。すなわち、作業者は、レバー26を指で把持してX方向に移動させることにより、第1のクリップ片20をX方向にスライド移動させることができる。これにより、作業者は、コイルばね40の付勢力に抗して挟持部14を開くことができ、また、指を離すことにより、コイルばね40の付勢力により挟持部14を閉じることができる。レバー26は、後述するケース50の開口部54から外部に延び出ていてもよい。
【0026】
また、
図2に示すように、電気クリップ10は、レバー26の表面を少なくとも部分的に覆う絶縁物28をさらに備えていてもよい。絶縁物28は、レバー26のうち作業者が指で把持する部分を覆っていてもよい。絶縁物28は、レバー26の表面の一部分を覆っていてもよい。あるいは、絶縁物28は、レバー26の表面の全体を覆っていてもよい。絶縁物28は、例えば、ゴム材料や熱可塑性樹脂により構成されていてもよい。
【0027】
また、
図2~
図5に示すように、電気クリップ10は、ケース50をさらに備えていてもよい。ケース50は、基部12を少なくとも部分的に覆っていてもよい。
図2~
図5に示すように、ケース50は、基部12のうち挟持部14から離れた部分、すなわち、基部12の後端側の部分を覆っていてもよい。ケース50は、正面に開口部52を有し、開口部52から基部12が延び出ていてもよい。ケース50は、側面に開口部54を有し、開口部54から上述したレバー26が延び出ていてもよい。ケース50は、背面に開口部56を有し、開口部56から後述する電線62が延び出ていてもよい。ケース50は、上述したコイルばね40を収容していてもよい。また、ケース50は、後述する電気接続部60を収容していてもよい。ケース50は、任意の形状を有していてもよい。
図2~
図5に示すように、ケース50は、略直方体形状を有していてもよい。ケース50の内部は空洞であってもよい。
【0028】
また、
図2に示すように、電気クリップ10は、ケース50の表面を少なくとも部分的に覆う絶縁物58をさらに備えていてもよい。絶縁物58は、ケース50の表面の一部分を覆っていてもよい。絶縁物58は、ケース50の表面のうち外側に位置する面を覆っていてもよい。あるいは、絶縁物58は、ケース50の表面の全体を覆っていてもよい。絶縁物58は、例えば、ゴム材料や熱可塑性樹脂により構成されていてもよい。なお、ケース50の表面に絶縁物58が設けられることに代えて、ケース50がゴム材料や熱可塑性樹脂により構成されていてもよい。
【0029】
また、
図3~
図5に示すように、電気クリップ10は、電気接続部60をさらに備えていてもよい。電気接続部60は、第2のクリップ片30の第2の基部32に設けられていてもよい。電気接続部60は、第2の基部32のうち第1の基部22とは反対側の面に設けられていてもよい。電気接続部60は、ケース50内に収容されていてもよい。電気接続部60は、電線62の端子が接続される部分である。すなわち、電線62の一端が、電気接続部60に接続されている。電気接続部60は、ビスで構成されていてもよい。これにより、電気接続部60を構成するビスと第2の基部32との間に電線62の端子を挟み込むことにより、電気接続部60に電線62を容易に接続することができる。電気接続部60に接続された電線62は、ケース50の背面の開口部56から延び出ていてもよい(
図2参照)。電線62の他端は、測定器等の外部の電気機器に接続されていてもよい。
【0030】
また、
図2、
図3および
図5に示すように、電気クリップ10は、脱落防止クリップ70をさらに備えていてもよい。脱落防止クリップ70を備える電気クリップ10を、脱落防止機能付き電気クリップとも称する。脱落防止クリップ70は、電気クリップ10の脱落を防止する機能を有する。脱落防止クリップ70は、任意の位置に設けられていてもよい。
図2、
図3および
図5に示すように、脱落防止クリップ70は、ケース50に設けられていてもよい。脱落防止クリップ70は、ケース50のうちZ方向において挟持部14が延び出ている側(
図2における上側)の部分に設けられていてもよい。
【0031】
脱落防止クリップ70は、後述する端子台80に接続された既設電線84に取り付けられるように構成されていてもよい(
図6参照)。脱落防止クリップ70は、第1本体部72と第2本体部74とを有していてもよい。
図2および
図5に示すように、第1本体部72と第2本体部74は、それぞれ、L字状に折れ曲がっていてもよく、第1本体部72と第2本体部74との間に、小幅部76が設けられていてもよい。
【0032】
小幅部76は、Y方向における第1本体部72と第2本体部74との間の距離が、他の部分よりも狭くなっている部分である。Y方向における第1本体部72と第2本体部74との間の距離は、Z方向において開口部の側から小幅部76に向かうにつれて狭くなり、Z方向において小幅部76からケース50の側に向かうにつれて広くなっていてもよい。小幅部76の幅(Y方向における距離)は、既設電線84の直径よりも小さくてもよい。
【0033】
第1本体部72と第2本体部74との間であって、小幅部76よりもケース50に近い位置には、通路部78が設けられていてもよい。通路部78は、既設電線84が通る部分である(
図6参照)。通路部78は、X方向に延びていてもよい。既設電線84は、開口部の側から小幅部76を通って通路部78に入り込むようになっていてもよい。この際、第1本体部72と第2本体部74が互いに離れる向きに変形することにより小幅部76の幅が広がって、既設電線84が小幅部76を通過できるようになっていてもよい。既設電線84の通過後、第1本体部72と第2本体部74は元の位置に戻り、小幅部76の幅が元の大きさに戻るようになっていてもよい。
【0034】
脱落防止クリップ70は、第1本体部72と第2本体部74との間に既設電線84を挟み込むことにより、既設電線84に取り付けられてもよい。より具体的には、第1本体部72と第2本体部74との間の通路部78に既設電線84を通すことにより、脱落防止クリップ70が既設電線84に取り付けられてもよい。第1本体部72と第2本体部74との間に小幅部76が設けられていることにより、脱落防止クリップ70が既設電線84から外れることを抑制することができる。
【0035】
脱落防止クリップ70が既設電線84に取り付けられることにより、電気クリップ10の脱落を防止することができる。すなわち、振動等で電気クリップ10の挟持部14が端子台80の端子82から外れた場合であっても、脱落防止クリップ70が既設電線84に取り付けられていることにより、電気クリップ10は既設電線84に支持され、電気クリップ10の脱落が防止される。
【0036】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。
【0037】
図6に示すように、本実施の形態による電気クリップ10は、端子台80に適用することができる。
図6に示すように、端子台80は、端子82を有している。端子82は、ビスで構成されていてもよい。端子台80の端子82には、既設電線84が絶縁圧着端子86を介して接続されている。また、端子台80には、端子台カバー88が設けられており、端子台カバー88により端子82が覆われている。この端子台カバー88によって、端子82と既設電線84との接続部が外部に露出しないようになっている。
【0038】
このような端子台80の端子82を、
図1に示すような一般的なワニグチクリップ1によって挟持しようとした場合、端子台カバー88を取り外し、端子82の上方あるいは斜め上方から、ワニグチクリップ1が端子台80の端子82にアクセスすることを要する。この場合、端子台カバー88を取り外すことにより、端子82と既設電線84との接続部が外部に露出し、安全性が低下するおそれがある。
【0039】
これに対して本実施の形態によれば、電気クリップ10は、X方向に延びる基部12と、基部12からZ方向に延び出た挟持部14と、を備えている。このように、電気クリップ10がL字型に構成されていることにより、
図6に示すように、端子台カバー88を取り外すことなく、電気クリップ10が端子台80と端子台カバー88との間の隙間から端子82にアクセスして、端子82を挟持することができる。あるいは、端子台カバー88を取り外し、電気クリップ10により端子82を挟持した後、再び端子台カバー88を取り付けることができる。このことにより、端子82と既設電線84との接続部が外部に露出することを抑制することができる。このため、安全性を向上させることができる。
【0040】
また、本実施の形態によれば、第1のクリップ片20は、第2のクリップ片30に対してX方向にスライド移動可能に構成されている。このように、電気クリップ10がスライド機構を有していることにより、電気クリップ10が端子台80と端子台カバー88との間の隙間から端子82にアクセスした状態で、端子82を確実に挟持することができる。
【0041】
また、本実施の形態によれば、電気クリップ10は、第1の先端部24が第2の先端部34に向かうように、第1のクリップ片2をX方向に付勢するコイルばね40をさらに備えている。このことにより、コイルばね40の付勢力によって、第1の先端部24と第2の先端部34との間で端子台80の端子82をしっかりと挟持することができる。このため、振動等で電気クリップ10が端子台80の端子82から外れて脱落することを抑制することができる。この結果、安全性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、電気クリップ10は、第1のクリップ片20をX方向にスライド移動させるためのレバー26をさらに備えている。このことにより、作業者がレバー26を指で把持してX方向に移動させることにより、第1のクリップ片20をX方向にスライド移動させることができる。このため、作業者による電気クリップ10の挟持操作を容易化することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、電気クリップ10は、レバー26の表面を少なくとも部分的に覆う絶縁物28をさらに備えている。このことにより、隣接する配線との短絡や作業者がレバー26を指で把持した際の感電等を防止することができる。このため、安全性を向上させることができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、電気クリップ10は、基部12を少なくとも部分的に覆うケース50をさらに備えている。このことにより、ケース50内にコイルばね40や電気接続部60等の電気クリップ10を構成する各部品を収容することができる。このため、作業者がこれらの部品に直接触れることを抑制することができる。このため、安全性を向上させることができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、電気クリップ10は、ケース50の表面を少なくとも部分的に覆う絶縁物58をさらに備えている。このことにより、隣接する配線との短絡や作業者がケース50に触れた際の感電等を防止することができる。このため、安全性を向上させることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、電気接続部60は、ビスで構成されている。このことにより、電気接続部60を構成するビスで電線62の端子を挟み込むことにより、電気接続部60に電線62を容易に接続することができる。このため、作業者による電気クリップ10への電線62の接続作業を容易化することができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、電気クリップ10は、既設電線84に取り付けられることにより、電気クリップ10の脱落を防止する脱落防止クリップ70をさらに備えている。このことにより、振動等で電気クリップ10の挟持部14が端子台80の端子82から外れた場合であっても、既設電線84により電気クリップ10を支持することができ、電気クリップ10の脱落を防止することができる。このため、安全性を向上させることができる。
【0048】
なお、上述した本実施の形態においては、L字型に構成された電気クリップ10に、脱落防止クリップ70が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、その他の構成の電気クリップに、脱落防止クリップ70が設けられていてもよい。例えば、
図7に示すように、一般的なワニグチクリップ1に、脱落防止クリップ70が設けられていてもよい。
【0049】
図7に示すワニグチクリップ1は、
図1を用いて説明したワニグチクリップ1と同様の構成であるため、同一の部分には同一の符号を付して、再度の説明は省略する。
図7に示す例においては、ワニグチクリップ1の接合部7に電線62が接合され、支持片8で電線62がガイドされている。
【0050】
脱落防止クリップ70は、任意の位置に設けられていてもよい。
図7に示すように、電線62に脱落防止クリップ70が設けられていてもよい。
図7に示す例においては、電線62にケース50が設けられている。ケース50は、正面から背面に貫通した貫通孔59を有し、この貫通孔59を電線62が通過していてもよい。脱落防止クリップ70は、このケース50に設けられていてもよい。すなわち、脱落防止クリップ70は、ケース50を介して電線62に設けられていてもよい。上述したように、脱落防止クリップ70は、端子台80に接続された既設電線84に取り付けられる。
図7に示す脱落防止クリップ70も、
図2~
図6を用いて説明した脱落防止クリップ70と同様の構成であるため、同一の部分には同一の符号を付して、再度の説明は省略する。
【0051】
このように、その他の構成の電気クリップに脱落防止クリップ70が設けられている場合であっても、脱落防止クリップ70が既設電線84に取り付けられることにより、電気クリップの脱落を防止することができる。このため、安全性を向上させることができる。
【0052】
以上述べた実施の形態によれば、安全性を向上させた電気クリップおよび脱落防止機能付き電気クリップを提供することができる。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10:電気クリップ、12:基部、14:挟持部、20:第1のクリップ片、22:第1の基部、24:第1の先端部、26:レバー、28:絶縁物、30:第2のクリップ片、32:第2の基部、34:第2の先端部、40:コイルばね、50:ケース、58:絶縁物、60:電気接続部、70:脱落防止クリップ