(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098865
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】隙間塞ぎ部材、隙間塞ぎ方法、及び隙間塞ぎ構造
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
E04G5/00 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002640
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】306035122
【氏名又は名称】信和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】則武 栗夫
(72)【発明者】
【氏名】青山 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】河合 賢樹
(57)【要約】
【課題】容易な操作で踏み板間の隙間を塞ぐことができる隙間塞ぎ部材を提供する。
【解決手段】隙間塞ぎ部材1の構成を、平板状の閉塞本体10と、軸方向が閉塞本体と平行となるように閉塞本体の裏面に支持されている支軸20と、支軸と直交する方向に延びている回動軸部41、及び、回動軸部の先端で屈曲または湾曲している係止部42を有し、支軸周りに回動するフック40と、係止部が閉塞本体の裏面に近付く方向に、フックの支軸周りの回動を付勢している付勢部材(ねじりコイルバネ50)と、フックとは別に支軸周りに回動し、一方向への回動によりフック基部45を押圧することにより、付勢部材の付勢に抗してフックを支軸周りに回動させるレバー62と、フック基部に臨む位置で閉塞本体に貫設されており、レバーを閉塞本体のおもて面側に露出させている本体孔部15と、を具備する構成とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の閉塞本体と、
軸方向が前記閉塞本体と平行となるように前記閉塞本体の裏面に支持されている支軸と、
前記支軸と直交する方向に延びている回動軸部、及び、該回動軸部の先端で屈曲または湾曲している係止部を有し、前記支軸周りに回動するフックと、
前記係止部が前記閉塞本体の裏面に近付く方向に、前記フックの前記支軸周りの回動を付勢している付勢部材と、
前記フックとは別に前記支軸周りに回動し、一方向への回動により前記フックの基部を押圧することにより、前記付勢部材の付勢に抗して前記フックを前記支軸周りに回動させるレバーと、
前記フックの基部に臨む位置で前記閉塞本体に貫設されており、前記レバーを前記閉塞本体のおもて面側に露出させている本体孔部と、を具備する
ことを特徴とする隙間塞ぎ部材。
【請求項2】
平板状の踏み板本体、及び、該踏み板本体の裏面において側縁に沿って突出している裏桟材を備える踏み板の複数と、
請求項1に記載の隙間塞ぎ部材と、を具備する隙間塞ぎ構造を構築する隙間塞ぎ方法であり、
前記フックが前記裏桟材と干渉しない位置で、前記隙間塞ぎ部材を前記踏み板に上方から載置し、前記レバーを前記支軸周りに回動させて前記フックの基部を押圧し、前記付勢部材の付勢に抗して前記フックを前記支軸周りに回動させることにより、前記係止部を前記裏桟材より低く位置させ、
その状態で前記隙間塞ぎ部材を、前記係止部における開口方向に向かって水平にスライドさせることによって、前記係止部を前記裏桟材の下方に位置させ、
前記レバーによって前記フックの基部を押圧する力を除くことにより、前記付勢部材の付勢によって、前記係止部が前記閉塞本体の裏面に近付く方向に前記フックを前記支軸周りに回動させ、前記係止部を前記裏桟材と係合させる
ことを特徴とする隙間塞ぎ方法。
【請求項3】
平板状の踏み板本体、及び、該踏み板本体の裏面において側縁に沿って突出している裏桟材を有する踏み板の複数と、
請求項1に記載の隙間塞ぎ部材と、を具備し、
前記隙間塞ぎ部材が前記踏み板の一つに固定されている固定状態と、前記隙間塞ぎ部材の前記踏み板への固定が解除されている解除状態との何れかの状態にある隙間塞ぎ構造であり、
前記固定状態は、隣接する前記踏み板間の隙間が、上方から前記閉塞本体で覆われていると共に、前記閉塞本体の裏面から離れる方向に前記支軸周りに回動した前記フックの前記係止部が、前記付勢部材の付勢によって前記裏桟材と係合している状態である一方、
前記解除状態は、前記支軸周りに回動した前記レバーで前記フックの基部が押圧されていることにより、前記付勢部材の付勢に抗して前記支軸周りに回動した前記フックにおいて、前記係止部が前記裏桟材より下方に位置している状態である
ことを特徴とする隙間塞ぎ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場において隣接する踏み板間に生じている隙間を塞ぐための隙間塞ぎ部材、該隙間塞ぎ部材を使用した隙間塞ぎ方法、及び、該隙間塞ぎ方法により構築される隙間塞ぎ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅やビル等の建物、橋梁やトンネル等の土木構造物の建築現場において仮設される足場は、一般的に、設置面から立設させた支柱と、隣接する支柱間に架け渡され、或いは、1本の支柱に片持ち状に支持されている横架材と、同じ高さにある平行な二本の横架材間に架け渡された踏み板とから、主に構成されている。水平方向に並設された踏み板によって、作業のためのステージや、作業者が移動するための通路が形成される。
【0003】
このような足場では、隣接する踏み板間に隙間が生じてしまうことがある。踏み板間に隙間があると、工具や部品が隙間から落下するおそれがあり、危険である。また、隙間で作業者がつまずくおそれもある。
【0004】
そのため、一般的な足場では、踏み板間の隙間を平板で塞ぐ方策が採られている。単純には、踏み板間の隙間に平板を当て、支柱や横架材に針金で巻き付けることにより平板を足場に固定している。しかしながら、針金を支柱や横架材に巻き付けて平板を固定する作業は、手間や時間がかかるという問題があった。また、足場を解体した後、使用済みの針金を再利用することができないため、廃棄処理のための手間や費用が発生することに加え、資源の無駄となるという問題があった。
【0005】
一方、足場に固定するためのロック機構を備えている閉塞板で、踏み板間の隙間を閉塞する隙間閉塞構造も提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の閉塞板は、筒状で閉塞板の裏面において上下に貫通していると共に、閉塞板に設けられた貫通孔に連通している案内枠と、この案内枠の内部を上下方向に移動するロック片とを備えている。ロック片の下端は、上向きコ字状に折れ曲がった係止部となっており、ロック片の上端には、引き起こした状態と傾倒させた状態との間で回動するレバー片が設けられている。
【0006】
この閉塞板で踏み板間の隙間を閉塞した状態で、閉塞板を踏み板に固定する際は、レバー片を引き起こした状態で、ロック片を案内枠の内部で下方に移動させ、ロック片の下端の係止部が踏み板の裏面で突出している側縁フレームと干渉しない位置まで、ロック片を下げる。その状態で、ロック片を上下方向に延びる軸周りに90度回転させ、係止部の向きを踏み板の側縁フレームに直交する向きとする。その後、ロック片を案内枠の内部で上方に移動させることにより、係止部が踏み板の側縁フレームに下方から引掛かったら、レバー片を傾倒させた状態とする。これにより、レバー片が案内枠の上端に載置支持され、ロック片の下降が制限されて閉塞板が踏み板に固定される。
【0007】
閉塞板を踏み板から外す際は、レバー片を再度引き起こし、ロック片を案内枠の内部で下方に移動させることにより、ロック片の下端の係止部と側縁フレームとの係合を解除した上で、ロック片を90度回転させて側縁フレームと干渉しない向きとし、ロック片を案内枠の内部で上方に移動させてから、レバー片を傾倒させて案内枠の上端の上に載置する。これにより、係止部が踏み板の側縁フレームに係合していない状態のロック片の下降が制限される。
【0008】
このような閉塞板は、針金を使用する場合とは異なり、使用の度に廃棄対象となる部材がなく、繰り返し使用することができる利点がある。しかしながら、特許文献1の閉塞板は、ロック片を案内枠の内部で上下に移動させたり、90度回転させたりなど、操作が非常に面倒であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、容易な操作で踏み板間の隙間を塞ぐことができる隙間塞ぎ部材、該隙間塞ぎ部材を使用した隙間塞ぎ方法、及び、該隙間塞ぎ方法により構築される隙間塞ぎ構造の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる隙間塞ぎ部材は、
「平板状の閉塞本体と、
軸方向が前記閉塞本体と平行となるように前記閉塞本体の裏面に支持されている支軸と、
前記支軸と直交する方向に延びている回動軸部、及び、該回動軸部の先端で屈曲または湾曲している係止部を有し、前記支軸周りに回動するフックと、
前記係止部が前記閉塞本体の裏面に近付く方向に、前記フックの前記支軸周りの回動を付勢している付勢部材と、
前記フックとは別に前記支軸周りに回動し、一方向への回動により前記フックの基部を押圧することにより、前記付勢部材の付勢に抗して前記フックを前記支軸周りに回動させるレバーと、
前記フックの基部に臨む位置で前記閉塞本体に貫設されており、前記レバーを前記閉塞本体のおもて面側に露出させている本体孔部と
を具備する」ものである。
【0012】
このような構成の隙間塞ぎ部材を使用して、隣接する踏み板間の隙間を閉塞する際は、次のような隙間塞ぎ方法を使用することができる。すなわち、
「平板状の踏み板本体、及び、該踏み板本体の裏面において側縁に沿って突出している裏桟材を備える踏み板の複数と、
上記に記載の隙間塞ぎ部材と、を具備する隙間塞ぎ構造を構築する隙間塞ぎ方法であり、
前記フックが前記裏桟材と干渉しない位置で、前記隙間塞ぎ部材を前記踏み板に上方から載置し、前記レバーを前記支軸周りに回動させて前記フックの基部を押圧し、前記付勢部材の付勢に抗して前記フックを前記支軸周りに回動させることにより、前記係止部を前記裏桟材より低く位置させ、
その状態で前記隙間塞ぎ部材を、前記係止部における開口方向に向かって水平にスライドさせることによって、前記係止部を前記裏桟材の下方に位置させ、
前記レバーによって前記フックの基部を押圧する力を除くことにより、前記付勢部材の付勢によって、前記係止部が前記閉塞本体の裏面に近付く方向に前記フックを前記支軸周りに回動させ、前記係止部を前記裏桟材と係合させる」ものである。
【0013】
上記構成の隙間塞ぎ部材を使用した隙間塞ぎ方法によれば、隣接する踏み板間に隙間がある部分で、踏み板に隙間塞ぎ部材を上方から載置し、レバーを起こすように支軸周りに回動させた状態で隙間塞ぎ部材を水平方向にスライドさせるのみの非常に容易な操作で、隙間を閉塞本体で覆った状態の隙間塞ぎ部材を踏み板に固定することができる。また、レバーを起こすように支軸周りに回動させた状態で、隙間塞ぎ部材を反対方向にスライドさせるのみの非常に容易な操作で、踏み板への固定を解除して隙間塞ぎ部材を取り外すことができる。
【0014】
本発明にかかる隙間塞ぎ構造は、
「平板状の踏み板本体、及び、該踏み板本体の裏面において側縁に沿って突出している裏桟材を有する踏み板の複数と、
上記に記載の隙間塞ぎ部材と、を具備し、
前記隙間塞ぎ部材が前記踏み板の一つに固定されている固定状態と、前記隙間塞ぎ部材の前記踏み板への固定が解除されている解除状態との何れかの状態にある隙間塞ぎ構造であり、
前記固定状態は、隣接する前記踏み板間の隙間が、上方から前記閉塞本体で覆われていると共に、前記閉塞本体の裏面から離れる方向に前記支軸周りに回動した前記フックの前記係止部が、前記付勢部材の付勢によって前記裏桟材と係合している状態である一方、
前記解除状態は、前記支軸周りに回動した前記レバーで前記フックの基部が押圧されていることにより、前記付勢部材の付勢に抗して前記支軸周りに回動した前記フックにおいて、前記係止部が前記裏桟材より下方に位置している状態である」ものである。
【0015】
これは、上記構成の隙間塞ぎ部材を使用して構築される隙間塞ぎ構造であり、上記構成の隙間塞ぎ方法によって構築される隙間塞ぎ構造の構成である。隣接する踏み板間に隙間がある部分で、踏み板に隙間塞ぎ部材を上方から載置し、レバーを起こすように支軸周りに回動させた状態で隙間塞ぎ部材を水平方向にスライドさせるのみの非常に容易な操作で、固定状態にある隙間塞ぎ構造が構築される。また、固定状態から、レバーを起こすように支軸周りに回動させるのみの非常に容易な操作で、解除状態にある隙間塞ぎ構造が構築される。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、容易な操作で踏み板間の隙間を塞ぐことができる隙間塞ぎ部材、該隙間塞ぎ部材を使用した隙間塞ぎ方法、及び、該隙間塞ぎ方法により構築される隙間塞ぎ構造を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態である隙間塞ぎ部材をおもて面側から見た斜視図であり、
図1(b)は同じ隙間塞ぎ部材を裏面側から見た斜視図である。
【
図2】
図1の隙間塞ぎ部材を使用した隙間塞ぎ方法の説明図である。
【
図3】
図3(a),(b)は、
図2に引き続き
図1の隙間塞ぎ部材を使用した隙間塞ぎ方法の説明図である。
【
図4】
図1の隙間塞ぎ部材を使用して構築される隙間塞ぎ構造の斜視図である。
【
図5】
図4の隙間塞ぎ構造をロック機構部の中央を通る切断線で切断した断面図である。
【
図6】
図4の隙間塞ぎ構造を裏面側から見た図である。
【
図7】
図1の隙間塞ぎ部材におけるロック機構部の分解斜視図である。
【
図8】
図8(a),(b),(c)はロック機構部の動作を説明する斜視図である。
【
図9】
図9(a),(b),(c)はロック機構部の動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態である隙間塞ぎ部材1、この隙間塞ぎ部材1を使用した隙間塞ぎ構造、及び、隙間塞ぎ部材1を使用した隙間塞ぎ方法について、図面を用いて説明する。隙間塞ぎ部材1は、複数の踏み板7が水平に並設されている仮設の足場において、隣接する踏み板7間に生じている隙間を塞ぐための部材である。ここで、「上下」は、隣接する踏み板7間の隙間を隙間塞ぎ部材1で塞いでいる使用状態における上下である。
【0019】
隙間塞ぎ部材1は、閉塞本体10と、ロック機構部Rとを備えている。閉塞本体10は、細長い長方形の平板状である。ロック機構部Rは二つあり、閉塞本体10の長手方向に沿った一対の側辺11a,11bのうちの一方の側辺11bに近接した位置において、長手方向に延びる同一線上に対称に設けられている。閉塞本体10には、ロック機構部Rの設けられている位置に、本体孔部15が貫設されている。
【0020】
それぞれのロック機構部Rは、
図7に示すように、支軸20と、支軸固定部30と、フック40と、付勢部材としてのねじりコイルバネ50と、操作部60とを備えている。支軸固定部30は、それぞれ平板状で平行な一対の軸支持片31と、一対の軸支持片31を同じ側で連結している一対の固定片32と、を備えている。一対の固定片32は離隔しており、その間に本体孔部15を位置させた状態で、それぞれ閉塞本体10の裏面に固定されている。これにより、一対の軸支持片31は、閉塞本体10の裏面から下方に向かって平行に突出している。
【0021】
一対の軸支持片31には、同じ位置に第一小孔部35が貫設されており、これらの第一小孔部35に支軸20の両端がそれぞれ挿通された上で、支軸20が軸支持片31に回転不能に固定されている。つまり、支軸20は、一対の軸支持片31に直交する方向に架け渡された状態で、支軸固定部30に支持されており、支軸20の軸方向は閉塞本体10と平行である。
【0022】
フック40は、細長い棒状の回動軸部41と、回動軸部41の先端で回動軸部41に対して屈曲または湾曲している係止部42と、係止部42とは反対側で回動軸部41が固定されているフック基部45と、を備えている。ここで、フック基部45は、本発明の「フックの基部」に相当する。
【0023】
係止部42は、回動軸部41に直交する方向に延びている第一係止部421と、第一係止部421の先端から回動軸部41と同じ方向に短く延びている第二係止部422とを有しており、回動軸部41と係止部42とで略J字形を形成している。係止部42が屈曲または湾曲している向きは、回動軸部41の支軸20周りの回動軌跡によって形成される平面に対して、第一係止部421の軸方向が直交する向きに設定されている。また、係止部42が屈曲または湾曲している向きは、閉塞本体10の長手方向に沿った一対の側辺11a,11bのうち、ロック機構部Rが近接している側辺11bに向かって係止部42が開口する向きに設定されている。
【0024】
フック基部45は、それぞれ平板状で平行な一対の基部側面451と、一対の基部側面451を同じ側で連結している基部中間面452と、を備える断面コ字形の部材である。一対の基部側面451には、同じ位置に第二小孔部455が貫設されており、フック基部45が一対の軸支持片31間に配された状態で、一対の第二小孔部455に支軸20が挿通されている。また、フック40では、回動軸部41において係止部42とは反対側の端部が、フック基部45の基部中間面452に直角に固定されている。これにより、回動軸部41は、支軸20に直交する方向に延びていることとなる。支軸20は第二小孔部455に遊嵌されており、フック40は支軸20周りに正逆方向に回動する。
【0025】
このようなフック40の回動は、付勢部材としてのねじりコイルバネ50によって、係止部42が閉塞本体10の裏面に近付く方向に付勢されている。具体的には、一対の基部側面451間において、ねじりコイルバネ50のコイル部を支軸20が挿通している。また、フック40の回動軸部41には、フック基部45に近接して、軸方向を回動軸部41と平行とした筒部43が取り付けられており、ねじりコイルバネ50の二本の腕部のうちの一方が筒部43に挿入されている。ねじりコイルバネ50の他方の腕部は、一対の固定片32の一方を介して閉塞本体10の裏面に当接している。このような構成により、フック40を支軸20周りに下方に向かって回動させると、ねじりコイルバネ50において二本の腕部が近付くことによって曲げ応力が発生し、二本の腕部が遠ざかる方向へフック40を回動させる力、すなわち、係止部42が閉塞本体10の裏面に近付く方向へフック40を回動させる付勢力が作用する。
【0026】
操作部60は、それぞれ平板状で平行な一対の回動片61と、一対の回動片61を同じ側で連結しているレバー62と、を備える断面コ字形の部材である。レバー62の一方の端部は一対の回動片61それぞれの一方の端部と同一面上にあり、レバー62の他方の端部は一対の回動片61それぞれの他方の端部より突出して長く延びている。一対の回動片61には、同じ位置に第三小孔部65が貫設されており、一対の回動片61それぞれが基部側面451と軸支持片31との間に配された状態で、一対の第三小孔部65に支軸20が挿通されている。支軸20は第三小孔部65に遊嵌されており、操作部60は支軸20周りに正逆方向に回動する。つまり、操作部60は、フック40が支軸20周りに回動するのとは別に、同じ支軸20周りに回動する。
【0027】
ここで、操作部60は、レバー62を閉塞本体10より上方で露出させた状態で、回動片61を上方から本体孔部15に挿入することで、閉塞本体10より下方において支軸20に一対の回動片61を挿通させている。また、フック40においては、フック基部45が本体孔部15に臨んでいる。これにより、レバー62を指先でつかみ、レバー62を起こすように操作部60を支軸20周りに回動させると、レバー62の下端側の端部、すなわち、レバー62において一対の回動片61それぞれの端部と同一面上にある端部(以下、「レバー下端部62b」と称する)が、フック基部45に当接する。
【0028】
なお、閉塞本体10に貫設されている本体孔部15の大きさは、操作部60を支軸20周りに回動させることができ、且つ、レバー下端部62bをフック基部45に当接させられる限度で、できるだけ小さい大きさに設定される。
【0029】
一方、踏み板7は、細長い長方形で平板状の踏み板本体70と、踏み板本体70の裏面に固定された複数の裏桟材と、を備えている。裏桟材としては、踏み板本体70の長手方向における一対の側辺に沿って配されており、踏み板本体70の裏面から突出している一対の第一裏桟材71と、第一裏桟材71とは直交する方向で踏み板本体70の一対の側辺に沿って配されている一対の第二裏桟材72と、を備えている。また、ここでは、一対の第二裏桟材72との間で、第二裏桟材72と平行に一対の第一裏桟材71を連結している補強用裏桟材73の複数を有している踏み板7を例示している。
【0030】
また、踏み板7は、長手方向における両端部それぞれの角部に、横架材に踏み板7を引掛けるための引掛け部79を備えている。なお、本実施形態では、第一裏桟材71が本発明の「裏桟材」に相当する。
【0031】
次に、隙間塞ぎ部材1を使用した隙間塞ぎ方法、及び、その結果として構築される隙間塞ぎ構造について説明する。隣接する踏み板7間に隙間が生じている場合、
図2及び
図3(a)に示すように、フック40の全体が隙間に位置するように、すなわち、フック40が踏み板7の第一裏桟材71と干渉しない位置で、隙間塞ぎ部材1を上方から踏み板7の上面に載置する。これにより、隣接する踏み板7間の隙間が閉塞本体10で覆われる。
【0032】
フック40に外力が作用していない状態では、ねじりコイルバネ50の付勢によりフック40は係止部42が閉塞本体10の裏面に近付く方向に回動している。仮に、係止部42が屈曲または湾曲している向きが、回動軸部41の支軸20周りの回動軌跡によって形成される平面内で第二係止部422の軸方向が延びている向きに設定されていたとすると、フック40に外力が作用していない状態で、係止部42が閉塞本体10の裏面から突出することとなる。これに対し本実施形態では、係止部42が屈曲または湾曲している向きは、回動軸部41の支軸20周りの回動軌跡によって形成される平面に対して、第二係止部422の軸方向が直交する向きに設定されているため、係止部42が閉塞本体10の裏面に近付いている状態では、フック40の全体が閉塞本体10の裏面に沿う配置となっている。
【0033】
本実施形態では、このようにフック40の全体が閉塞本体10の裏面に沿っている状態から、フック40を支軸20周りに回動させることによって係止部42を裏桟材より低く位置させてから、隙間塞ぎ部材1を水平方向にスライドさせる。係止部42を裏桟材より低く位置させるためには、
図8(b)及び
図9(b)に示すように、レバー62を起こすように操作部60を支軸20周りに回動させることにより、レバー下端部62bをフック基部45に当接させ、レバー62でフック基部45を上方から押圧する。これにより、フック基部45を含むフック40は、ねじりコイルバネ50の付勢に抗して、下方に向かって支軸20周りに回動する。
【0034】
この回動により、係止部42の位置が第一裏桟材71より低い位置となったら、上述のように隙間塞ぎ部材1を水平方向にスライドさせる(
図3(a)の状態から
図3(b)の状態とする)。このとき、隙間塞ぎ部材1をスライドさせる方向は、フック40において係止部42が開口している方向とする(
図3(b)における矢印を参照)。このスライドにより、係止部42が第一裏桟材71の直下に位置したら、レバー62がフック基部45を押圧している力を除く。これにより、ねじりコイルバネ50の付勢によって、係止部42が閉塞本体10の裏面に近付く方向にフック40を回動させる力が作用し、
図6に示すように、フック40の係止部42が下方から第一裏桟材71に係合する。その後、
図8(c)及び
図9(c)に示すように、操作部60を支軸20周りに反対方向に回動させることにより、レバー62を閉塞本体10のおもて面に重畳させる。
【0035】
このような操作により、
図4,
図5及び
図6に示すように、隙間塞ぎ部材1が踏み板7の一つに固定されている固定状態にある隙間塞ぎ構造が構築される。すなわち、隣接する踏み板7間の隙間が、上方から閉塞本体10で覆われていると共に、閉塞本体10の裏面から離れる方向に支軸20周りに回動したフック40の係止部42が、ねじりコイルバネ50の付勢によって第一裏桟材71と係合している固定状態である。
【0036】
隙間塞ぎ部材1の踏み板7への固定を解除する場合は、上記と同様に、レバー62を起こすように操作部60を支軸20周りに回動させることにより、レバー下端部62bをフック基部45に当接させ、レバー62でフック基部45を上方から押圧する。これにより、フック基部45を含むフック40は、ねじりコイルバネ50の付勢に抗して下方に向かって支軸20周りに回動し、係止部42と裏桟材の係合が外れ、係止部42は裏桟材の直下に位置する。
【0037】
このような操作により、隙間塞ぎ部材1の踏み板7への固定が解除されている解除状態にある隙間塞ぎ構造が構築される。すなわち、支軸20周りに回動したレバー62でフック基部45が押圧されていることにより、ねじりコイルバネ50の付勢に抗して支軸20周りに回動したフック40において、係止部42が第一裏桟材71より下方に位置している解除状態である。
【0038】
このように、隙間塞ぎ部材1の踏み板7への固定が解除されたら、隙間塞ぎ部材1を水平方向にスライドさせる。このとき、隙間塞ぎ部材1をスライドさせる方向は、フック40において係止部42が開口している方向とは反対方向とする。このスライドにより、フック40の全体が隣接する踏み板7間の隙間におさまったら、レバー62がフック基部45を押圧している力を除く。これにより、ねじりコイルバネ50の付勢によって、フック40は係止部42が閉塞本体10の裏面に近付く方向に回動し、フック40の全体が閉塞本体10の裏面に沿う配置となる。この状態で、隙間塞ぎ部材1を踏み板7から外すことができる。その際、操作部60を支軸20周りに反対方向に回動させることにより、レバー62を閉塞本体10のおもて面に重畳させておけば、レバー62が邪魔になることがない。
【0039】
以上のように、本実施形態の隙間塞ぎ部材1によれば、隣接する踏み板7間に隙間がある部分で、踏み板7に隙間塞ぎ部材1を上方から載置し、レバー62を起こすように支軸20周りに回動させた状態で隙間塞ぎ部材1を水平方向にスライドさせるのみの非常に容易な操作で、隙間を閉塞本体10で覆った状態の隙間塞ぎ部材1を踏み板7に固定することができる。また、レバー62を起こすように支軸20周りに回動させた状態で、隙間塞ぎ部材1を反対方向にスライドさせるのみの非常に容易な操作で、踏み板7への固定を解除して隙間塞ぎ部材1を取り外すことができる。
【0040】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0041】
例えば、上記では、隣接する踏み板7それぞれの長手方向における側辺間に隙間が生じており、それを隙間塞ぎ部材1で閉塞する場合を例示した。これに限定されず、隣接する踏み板7それぞれの長手方向に直交する側辺間に生じている隙間を、閉塞する構成の隙間塞ぎ部材とすることができる。この場合の隙間塞ぎ部材では、フックにおいて係止部が屈曲または湾曲している向きは、閉塞本体における長手方向に直交する一対の側辺のうちの一方に向かって係止部が開口する向きとする。このような構成の隙間塞ぎ部材を使用した場合、フックの係止部は踏み板7の第二裏残材72に係合させる。
【符号の説明】
【0042】
1 隙間塞ぎ部材
7 踏み板
10 閉塞本体
15 本体孔部
20 支軸
40 フック
41 回動軸部
42 係止部
45 フック基部(フックの基部)
50 ねじりコイルバネ(付勢部材)
62 レバー
70 踏み板本体
71 第一裏桟材(裏桟材)