(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098868
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
F02M 51/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
F02M51/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002646
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一星 宙生
(72)【発明者】
【氏名】田口 透
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正浩
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA48
3G066BA51
3G066CC14
(57)【要約】
【課題】ノズルの耐圧性の低下を抑制しつつ噴射精度を向上可能な燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】インジェクタボデー40は、ニードル30に対し噴孔23とは反対側に設けられ、圧力制御室300と低圧室400との間を開閉する開閉部70を収容する。リテーニングナット50は、インジェクタボデー40に螺合することでノズルボデー20とインジェクタボデー40とが互いに近付く方向の軸力を発生させ、ナット筒部51、および、ナット筒部51の内周壁と外周壁とを接続しナット筒部51の周方向に延びるようナット筒部51に2つ形成されたスリット52を有する。ノズルボデー20は、ノズル筒部21、および、2つのスリット52のそれぞれに対応するようノズル筒部21の外周壁から凹むノズル凹部24を有する。ナット筒部51の軸Ax1を中心とするスリット52の形成角度範囲であるスリット角をα(度)とすると、84<α<180である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を噴射する噴孔(23)、および、前記噴孔に連通するノズル室(200)を有するノズルボデー(20)と、
軸方向に往復移動可能に前記ノズル室に設けられ、前記噴孔を開閉可能なニードル(30)と、
前記ニードルに対し前記噴孔とは反対側に設けられ、圧力制御室(300)と低圧室(400)との間を開閉する開閉部(70)を収容するインジェクタボデー(40)と、
前記インジェクタボデーに螺合することで前記ノズルボデーと前記インジェクタボデーとが互いに近付く方向の軸力を発生させるリテーニングナット(50)と、を備え、
前記リテーニングナットは、ナット筒部(51)、および、前記ナット筒部の内周壁と外周壁とを接続し前記ナット筒部の周方向に延びるよう前記ナット筒部に2つ形成されたスリット(52)を有し、
前記ノズルボデーは、内側に前記ノズル室を形成するノズル筒部(21)、および、2つの前記スリットのそれぞれに対応するよう前記ノズル筒部の外周壁から凹むノズル凹部(24)を有し、
前記ナット筒部の軸(Ax1)を中心とする前記スリットの形成角度範囲であるスリット角をα(度)とすると、84<α<180である燃料噴射弁。
【請求項2】
84<α≦150であり、
2つの前記スリットは、前記ナット筒部の軸に対し垂直な1つの平面(P1)上に形成されている請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
150<α<180であり、
2つの前記スリットは、前記ナット筒部の軸に対し垂直で互いに平行な2つの平面(P1、P2)上に形成されている請求項1に記載の燃料噴射弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スス排出量低減を含む環境性能向上に向けて、完成車メーカが燃焼改善技術を開発中である。先進技術では、狙った燃焼を達成するため、エンジン側の技術向上とともに、燃料噴射の精度向上が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10060386号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102020208277号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1には、ピストンの壁面に凹部および突起を設けることにより、噴射された燃料および燃焼火炎がピストン壁面からピストン中心に戻る流れを促す技術が開示されている。これにより、ピストン壁面による燃料および燃焼火炎の冷却が抑制され、燃焼温度を十分高温に保つ効果が得られることで、スス排出量の低減を図ることができる。
【0005】
上記のようなピストン形状による燃焼改善に対しては、燃料噴射の精度向上が要求される。燃料噴射の精度向上には、噴孔が形成されたノズルのひねり角の精度向上(公差縮小)が有効である。そこで、例えば特許文献2の燃料噴射弁では、ノズルの根本周辺部またはノズルの先端周辺部を押さえながら、リテーニングナットを締結することにより、ひねり角のズレの抑制を図っている。これにより、噴孔角度の精度を向上し、燃料噴射の精度向上を図ることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献2の燃料噴射弁では、ノズルの肉厚の薄い部分に、治具等で押さえるための凹部を設けている。そのため、ノズルの耐圧性の低下が懸念される。
【0007】
本発明の目的は、ノズルの耐圧性の低下を抑制しつつ噴射精度を向上可能な燃料噴射弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る燃料噴射弁は、ノズルボデー(20)とニードル(30)とインジェクタボデー(40)とリテーニングナット(50)とを備える。ノズルボデーは、燃料を噴射する噴孔(23)、および、噴孔に連通するノズル室(200)を有する。ニードルは、軸方向に往復移動可能にノズル室に設けられ、噴孔を開閉可能である。
【0009】
インジェクタボデーは、ニードルに対し噴孔とは反対側に設けられ、圧力制御室(300)と低圧室(400)との間を開閉する開閉部(70)を収容する。リテーニングナットは、インジェクタボデーに螺合することでノズルボデーとインジェクタボデーとが互いに近付く方向の軸力を発生させる。リテーニングナットは、ナット筒部(51)、および、ナット筒部の内周壁と外周壁とを接続しナット筒部の周方向に延びるようナット筒部に2つ形成されたスリット(52)を有する。
【0010】
ノズルボデーは、内側にノズル室を形成するノズル筒部(21)、および、2つのスリットのそれぞれに対応するようノズル筒部の外周壁から凹むノズル凹部(24)を有する。ナット筒部の軸(Ax1)を中心とするスリットの形成角度範囲であるスリット角をα(度)とすると、84<α<180である。
【0011】
本発明では、インジェクタボデーに対するノズルボデーの相対角度、すなわち、噴孔角度を調整した後、スリットを経由してノズル凹部にピン等の治具を押し当て荷重を付加しながら、リテーニングナットをインジェクタボデーに螺合することにより、螺合時にノズルボデーのひねり角がズレるのを抑制できる。これにより、噴孔角度の精度を向上し、噴射精度を向上可能である。また、ノズル凹部は、所定の肉厚のノズル筒部の外周壁から凹むよう形成されている。そのため、噴射精度の向上のためにノズル凹部を形成する場合であっても、ノズルボデーの耐圧性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態による燃料噴射弁を示す断面図。
【
図2】第1実施形態による燃料噴射弁の一部を示す断面図。
【
図3】第1実施形態による燃料噴射弁のリテーニングナットを示す模式的断面図。
【
図5】第1実施形態による燃料噴射弁のスリットを示す斜視図。
【
図6】第1実施形態による燃料噴射弁の一部の製造工程における状態を示す模式的断面図。
【
図8】第1実施形態による燃料噴射弁の一部の製造工程における状態を示す模式的断面図。
【
図9】第1実施形態による燃料噴射弁の噴孔位置調整工程における状態を示す断面図。
【
図10】第1実施形態による燃料噴射弁の流路プレート組付け工程における状態を示す断面図。
【
図11】第1実施形態による燃料噴射弁の反転工程における状態を示す断面図。
【
図12】第1実施形態による燃料噴射弁のボデー組付け工程における状態を示す断面図。
【
図13】第1実施形態による燃料噴射弁のナット仮締付け工程における状態を示す断面図。
【
図14】第1実施形態による燃料噴射弁のピン押圧工程、ナット本締付け工程における状態を示す断面図。
【
図15】第1実施形態による燃料噴射弁のピン押圧解除工程、ノズル振れ・ひねり角検査工程における状態を示す断面図。
【
図16】第1比較形態による燃料噴射弁のナット本締付け工程における状態を示す断面図。
【
図17】第2比較形態による燃料噴射弁を示す断面図。
【
図18】第2実施形態による燃料噴射弁のリテーニングナットを示す模式的断面図。
【
図19】第3実施形態による燃料噴射弁の一部の製造工程における状態を示す模式的断面図。
【
図20】第4実施形態による燃料噴射弁の一部の製造工程における状態を示す模式的断面図。
【
図21】第5実施形態による燃料噴射弁のスリットを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態による燃料噴射弁を図面に基づき説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態の燃料噴射弁を
図1に示す。燃料噴射弁1は、例えば図示しない車両に搭載された4気筒のディーゼルエンジンに適用される。燃料噴射弁1は、各気筒に設けられ、蓄圧された燃料としての軽油を貯留するコモンレール(図示せず)に接続される。燃料噴射弁1は、コモンレールから供給された高圧の燃料を各気筒の燃焼室に噴射する。
【0015】
図1、2に示すように、燃料噴射弁1は、ノズルボデー20、ニードル30、インジェクタボデー40、リテーニングナット50、流路プレート60等を備える。ノズルボデー20は、燃料を噴射する噴孔23、および、噴孔23に連通するノズル室200を有する。ニードル30は、軸方向に往復移動可能にノズル室200に設けられ、噴孔23を開閉可能である。
【0016】
インジェクタボデー40は、ニードル30に対し噴孔23とは反対側に設けられ、圧力制御室300と低圧室400との間を開閉する開閉部70を収容する。リテーニングナット50は、インジェクタボデー40に螺合することでノズルボデー20とインジェクタボデー40とが互いに近付く方向の軸力を発生させる。リテーニングナット50は、ナット筒部51、および、ナット筒部51の内周壁と外周壁とを接続しナット筒部51の周方向に延びるようナット筒部51に2つ形成されたスリット52を有する。
【0017】
ノズルボデー20は、内側にノズル室200を形成するノズル筒部21、および、2つのスリット52のそれぞれに対応するようノズル筒部21の外周壁から凹むノズル凹部24を有する。ナット筒部51の軸Ax1を中心とするスリット52の形成角度範囲であるスリット角をα(度)とすると、84<α<180である。
【0018】
以下、燃料噴射弁1の構成について、より詳細に説明する。
【0019】
図2に示すように、ノズルボデー20は、ノズル筒部21、ノズル底部22、噴孔23、ノズル凹部24を有する。ノズル筒部21は、例えば金属により形成されている。ノズル筒部21は、ノズル小径部211、ノズル中径部212、ノズル大径部213を有している。ノズル小径部211は、略円筒状に形成されている。ノズル中径部212は、ノズル小径部211の一端に接続するようノズル小径部211と一体に略円筒状に形成されている。ノズル中径部212の外径は、ノズル小径部211の外径より大きい。ノズル中径部212の内径はノズル小径部211の内径と同じである。ノズル大径部213は、ノズル中径部212のノズル小径部211とは反対側の端部に接続するようノズル中径部212と一体に略円筒状に形成されている。ノズル大径部213の外径は、ノズル中径部212の外径より大きい。ノズル大径部213の内径は、ノズル中径部212の内径より大きい。ノズル中径部212の内周壁とノズル大径部213の内周壁とは、テーパ状の壁面により接続されている。
【0020】
ノズル底部22は、ノズル筒部21のノズル小径部211のノズル中径部212とは反対側の端部を塞ぐようノズル筒部21と一体に形成されている。噴孔23は、ノズル底部22を貫くよう形成されている。噴孔23は、例えば、ノズル底部22の周方向に等間隔で5つ形成されている。ノズル底部22の噴孔23に対し上流側の内壁は、テーパ状に形成され、テーパ状の弁座220が形成されている。
【0021】
ノズル室200は、ノズル筒部21、ノズル底部22の内側に形成され、噴孔23に連通している。
【0022】
ニードル30は、ニードル本体31、鍔部32を有している。ニードル本体31は、例えば金属により棒状に形成されている。ニードル本体31は、軸方向に往復移動可能にノズル室200に設けられている。ニードル本体31は、一端が弁座220に当接または弁座220から離間可能なようノズル室200に設けられている。以下、適宜、ニードル本体31が弁座220に当接する方向を「閉弁方向」といい、ニードル本体31が弁座220から離間する方向を「開弁方向」という。
【0023】
鍔部32は、例えば金属により環状に形成され、ニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部から所定距離離れた位置に設けられている。ニードル本体31の一端が弁座220に当接した状態において、鍔部32は、ノズル大径部213のノズル中径部212側の端部の径方向内側に位置している。また、この状態において、ニードル本体31の他端の端面は、ノズル大径部213のノズル中径部212とは反対側の端面から所定距離噴孔23側に離れている。
【0024】
ノズル大径部213の径方向内側には、シリンダ34、ニードルスプリング33が設けられている。シリンダ34は、例えば金属により略円筒状に形成されている。シリンダ34は、ニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部の径方向外側に設けられている。
【0025】
シリンダ34の内径は、ニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部の外径よりやや大きい。シリンダ34は、内周壁がニードル本体31の噴孔23とは反対側の端部の外周壁と摺動可能、かつ、ニードル本体31に対し軸方向に相対移動可能に設けられている。シリンダ34の外径は、ノズル大径部213の内径より小さい。シリンダ34の外周壁とノズル大径部213の内周壁との間には、略円筒状の隙間が形成されている。
【0026】
ニードルスプリング33は、例えばコイルスプリングであり、ニードル本体31の径方向外側において鍔部32とシリンダ34との間に設けられている。ニードルスプリング33の一端は鍔部32に当接し、他端はシリンダ34に当接している。ニードルスプリング33は、軸方向に伸びる力を有している。これにより、ニードルスプリング33は、シリンダ34をニードル本体31に対し開弁方向に付勢している。
【0027】
流路プレート60は、ノズルボデー20の噴孔23とは反対側に設けられている。流路プレート60は、プレート本体61、ノズル室流路601、イン流路602、アウト流路603を有している。プレート本体61は、例えば金属により略円板状に形成されている。プレート本体61は、噴孔23側の端面が、ノズル大径部213のノズル中径部212とは反対側の端面に当接するよう設けられている。
【0028】
ノズル室流路601は、プレート本体61の外縁部においてプレート本体61の軸に対し傾斜し、プレート本体61の噴孔23とは反対側の端面と噴孔23側の端面とを接続するよう形成されている。イン流路602は、プレート本体61の軸に対し傾斜し、プレート本体61の噴孔23とは反対側の端面と噴孔23側の端面の中央とを接続するよう形成されている。ここで、イン流路602の噴孔23とは反対側の端部は、ノズル室流路601の噴孔23とは反対側の端部に接続している。アウト流路603は、プレート本体61の軸に対し傾斜し、プレート本体61の噴孔23とは反対側の端面の中央と噴孔23側の端面の中央とを接続するよう形成されている。
【0029】
イン流路602の噴孔23側の端部には、オリフィス604が形成されている。アウト流路603の噴孔23とは反対側の端部には、オリフィス605が形成されている。
【0030】
ノズル大径部213とプレート本体61との接続部の径方向外側には、ガイドリング81が設けられている。ガイドリング81は、例えば金属により略円筒状に形成されている。ガイドリング81の内径は、ノズル大径部213の外径、および、プレート本体61のノズル大径部213側の端部の外径よりやや大きい。これにより、ノズルボデー20と流路プレート60との径方向の位置ズレが抑制されている。
【0031】
シリンダ34は、噴孔23とは反対側の端面が、プレート本体61の噴孔23側の端面に当接、または、プレート本体61の噴孔23側の端面から離間可能である。圧力制御室300は、シリンダ34の内周壁およびニードル本体31の噴孔23とは反対側の端面とプレート本体61の噴孔23側の端面との間に形成されている。
【0032】
ノズル室流路601の噴孔23側の端部は、ノズル大径部213の内周壁とシリンダ34の外周壁との間に開口している。これにより、ノズル室流路601は、ノズル室200に連通している。イン流路602およびアウト流路603の噴孔23側の端部は、シリンダ34の径方向内側に開口している。これにより、イン流路602およびアウト流路603は、圧力制御室300に連通している。
【0033】
インジェクタボデー40は、流路プレート60の噴孔23とは反対側に設けられている。インジェクタボデー40は、ボデー本体41、ボデーねじ部42、配管接続部43、高圧燃料流路401を有している。ボデー本体41は、例えば金属により筒状に形成されている。ボデー本体41は、噴孔23側の端面が、プレート本体61の噴孔23とは反対側の端面に当接するよう設けられている。ボデーねじ部42は、ボデー本体41の噴孔23側の端部の外周壁に形成されている。
【0034】
高圧燃料流路401は、ボデー本体41の内周壁と外周壁との間においてボデー本体41の軸に略平行となるよう形成されている。高圧燃料流路401は、ボデー本体41の噴孔23側の端面のノズル室流路601およびイン流路602の開口部に対応する位置に開口している。これにより、高圧燃料流路401は、ノズル室流路601およびイン流路602に連通している。なお、プレート本体61とボデー本体41とは、
図2において図示しないノックピン82により、互いの相対位置のズレが規制されている。
【0035】
配管接続部43は、ボデー本体41の外周壁から径方向外側へ延びるようボデー本体41と一体に形成されている。配管接続部43の内側には、高圧燃料流路401に連通する流路が形成されている。配管接続部43には、コモンレールから延びる燃料配管が接続される。これにより、コモンレールから供給された高圧の燃料は、配管接続部43内の流路を経由して高圧燃料流路401に流れる。高圧燃料流路401に流れた燃料は、ノズル室流路601を経由してノズル室200に流れ、イン流路602を経由して圧力制御室300に流れる。その結果、ノズル室200および圧力制御室300が高圧の燃料で満たされる。
【0036】
開閉部70は、ボデー本体41の噴孔23側の端部の内側に設けられている。開閉部70は、駆動部71、アーマチャバルブ72を有している。アーマチャバルブ72は、例えば磁性材料により形成され、ボデー本体41の噴孔23側の端部の内側において、ボデー本体41の軸に略平行な方向に往復移動可能に設けられている。アーマチャバルブ72は、噴孔23側の端部が、プレート本体61の噴孔23とは反対側の端面のアウト流路603の開口部に当接可能、または、当該開口部から離間可能に設けられている。
【0037】
低圧室400は、アーマチャバルブ72の噴孔23側の端部の径方向外側に形成されている。低圧室400は、図示しない低圧燃料流路に連通している。アーマチャバルブ72がプレート本体61の噴孔23とは反対側の端面のアウト流路603の開口部に当接しているとき、圧力制御室300と低圧室400とのアウト流路603を経由した連通は遮断されている。一方、アーマチャバルブ72がプレート本体61の噴孔23とは反対側の端面のアウト流路603の開口部から離間しているとき、圧力制御室300と低圧室400とのアウト流路603を経由した連通は許容されている。このように、開閉部70は、アーマチャバルブ72をプレート本体61に当接、または、プレート本体61から離間させることで、圧力制御室300と低圧室400との間を開閉する。
【0038】
駆動部71は、アーマチャバルブ72に対し噴孔23とは反対側に設けられ、通電により磁気吸引力を発生し、アーマチャバルブ72を噴孔23とは反対側へ吸引可能である。車両に設けられたECU100(
図1参照)は、駆動部71への通電を制御可能である。ECU100は、駆動部71への通電を制御することにより、開閉部70のアーマチャバルブ72の作動を制御し、圧力制御室300と低圧室400との間の開閉を制御可能である。
【0039】
リテーニングナット50は、ナット筒部51、スリット52、ナットねじ部53を有している。ナット筒部51は、例えば金属により形成されている。ナット筒部51は、ナット小径部511、ナット中径部512、ナット大径部513を有している。ナット小径部511は、略円筒状に形成されている。ナット中径部512は、ナット小径部511の一端に接続するようナット小径部511と一体に略円筒状に形成されている。ナット中径部512の外径は、ナット小径部511の外径より大きい。ナット中径部512の内径は、ナット小径部511の内径より大きく、ナット小径部511の外径より小さい。ナット大径部513は、ナット中径部512のナット小径部511とは反対側の端部に接続するようナット中径部512と一体に略円筒状に形成されている。ナット大径部513の外径は、ナット中径部512の外径より大きい。ナット大径部513の内径は、ナット中径部512の内径より大きく、ナット中径部512の外径より小さい。
【0040】
ナットねじ部53は、インジェクタボデー40のボデーねじ部42に螺合可能なよう、ナット大径部513のナット中径部512とは反対側の端部の内周壁に形成されている。リテーニングナット50は、ナット小径部511のナット大径部513側の環状の端面が、ノズル大径部213のノズル小径部211側の環状の端面に当接し、ナットねじ部53がボデーねじ部42に螺合するようにして設けられている。これにより、ノズルボデー20とインジェクタボデー40とが互いに近付く方向の軸力が発生している。そのため、流路プレート60は、ノズルボデー20とインジェクタボデー40との間に挟まれ、ノズル大径部213のプレート本体61側の端面とプレート本体61のノズル大径部213側の端面との間、および、プレート本体61のボデー本体41側の端面とボデー本体41のプレート本体61側の端面との間に、所定の圧力が作用した状態となっている。
【0041】
図2~4に示すように、スリット52は、ナット筒部51のナット中径部512の内周壁と外周壁とを接続し、ナット中径部512の周方向に延びるようナット中径部512に2つ形成されている。ここで、便宜上、2つのスリット52のうち一方をスリット521とし、他方をスリット522とする。
【0042】
<2>
図4に示すように、ナット筒部51の軸Ax1を中心とするスリット52の形成角度であるスリット角をα(度)とすると、84<α≦150である。また、
図3に示すように、2つのスリット52は、ナット筒部51の軸Ax1に対し垂直な1つの平面P1上に形成されている。
【0043】
図3、5に示すように、ナット筒部51の径方向から見ると、スリット52は、4つの角部が丸みを帯びた長方形となるよう形成されている。つまり、スリット52の長手方向(ナット中径部512の周方向)の両端部の角部は、丸みを帯びている。
【0044】
図2に示すように、ノズル凹部24は、2つのスリット52のそれぞれに対応するようノズル大径部213の外周壁から凹むよう形成されている。ここで、便宜上、2つのノズル凹部24のうち一方をノズル凹部241とし、他方をノズル凹部242とする。
【0045】
ノズル凹部241は、スリット521に対応するよう形成されている。ノズル凹部242は、スリット522に対応するよう形成されている。スリット521、スリット522、ノズル凹部241、ノズル凹部242は、ナット筒部51の軸Ax1方向において略同じ位置に形成されている。
【0046】
図7に示すように、ノズル凹部241、ノズル凹部242は、ナット筒部51の軸Ax1を挟むようにしてノズル筒部21の周方向に等間隔で形成されている。なお、ノズル凹部241、ノズル凹部242の底面は、ナット筒部51の軸Ax1に対し平行な平面状に形成されている。
【0047】
次に、燃料噴射弁1の作動について説明する。
【0048】
コモンレールからの高圧燃料は、高圧燃料流路401、ノズル室流路601を経由してノズル室200に供給される(
図2参照)。ノズル室200の燃料圧力は、ニードル30に対し開弁方向の力を加える。ニードルスプリング33は、ニードル30に対し閉弁方向の荷重を加える。
【0049】
高圧燃料流路401の燃料の一部は、イン流路602のオリフィス604を通って圧力制御室300に供給される。
図2に示すように、駆動部71への通電がオフの状態では、圧力制御室300は高圧燃料で満たされている。ニードル30は、ニードルスプリング33の荷重と圧力制御室300の燃料圧力とから、閉弁方向の力を受ける。
【0050】
駆動部71への通電がオンになると、アーマチャバルブ72は、駆動部71の磁気吸引力により開弁方向に移動し、圧力制御室300と低圧室400とのアウト流路603を経由した連通が許容される。これにより、圧力制御室300の燃料は、アウト流路603のオリフィス605を通って低圧室400に流れ、低圧燃料流路に排出される。その結果、圧力制御室300の燃料圧力が低下する。
【0051】
圧力制御室300の燃料圧力が低下すると、ニードル30がニードルスプリング33の荷重と圧力制御室300の燃料圧力とから閉弁方向に受ける力よりも、ニードル30がノズル室200の燃料圧力から開弁方向に受ける力の方が大きくなる。そのため、ニードル30が開弁方向に移動し、弁座220から離間する。これにより、ノズル室200の燃料が噴孔23から噴射される。
【0052】
駆動部71への通電がオフになると、アーマチャバルブ72が閉弁方向に移動し、流路プレート60に当接し、圧力制御室300と低圧室400とのアウト流路603を経由した連通が遮断される。そのため、圧力制御室300の燃料圧力は、イン流路602から供給される燃料により上昇する。これにより、ニードル30がノズル室200の燃料圧力から開弁方向に受ける力よりも、ニードル30がニードルスプリング33の荷重と圧力制御室300の燃料圧力とから閉弁方向に受ける力の方が大きくなる。そのため、ニードル30が閉弁方向に移動し、弁座220に当接する。これにより、ノズル室200の燃料の噴孔23からの噴射が停止する。
【0053】
次に、製造工程における燃料噴射弁1の状態等について説明する。製造工程のうちリテーニングナット50の組付け工程における燃料噴射弁1の状態を
図6~8に示す。
【0054】
図6、7に示すように、リテーニングナット50の組付け工程において、リテーニングナット50をインジェクタボデー40に螺合し、ナット筒部51の軸Ax1方向におけるスリット52とノズル凹部24との位置を合わせる。その後、例えば棒状の治具としてのピン91を2つのスリット52のそれぞれに挿通させ、ピン91の先端部をノズル凹部24に押し当てる。その後、2つのピン91に対しノズル筒部21の径方向外側から中心に向かって所定の荷重を付加する。
【0055】
その後、ノズルボデー20とインジェクタボデー40との間に所定の軸力が発生するよう、インジェクタボデー40に対しリテーニングナット50を相対回転させて螺合、すなわち、締付ける。
【0056】
本実施形態では、2つのピン91の間でインジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対回転が規制されているため、インジェクタボデー40に対しリテーニングナット50を締付ける際、「リテーニングナット50とインジェクタボデー40との間の摩擦力によりインジェクタボデー40に対しノズルボデー20が相対回転すること」を抑制できる。これにより、リテーニングナット50の締付け時におけるインジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対角度のズレを抑制できる。
【0057】
図8に示すように、ノズル凹部24の底面は平面状に形成され、ピン91の端面も平面状に形成されている。そのため、ピン91に対し荷重を付加すると、ピン91の端面全体からノズル凹部24の底面に対し荷重が作用する。そのため、この状態でノズルボデー20に回転力が作用しても、ノズルボデー20の回転は規制される。
【0058】
次に、燃料噴射弁1の製造工程における各部の組付け工程等について説明する。
【0059】
(噴孔位置調整工程)
作業者または製造装置は、ニードル30、ニードルスプリング33、シリンダ34を組付けたアッシー状態のノズルボデー20を筒状の治具92に挿入する(
図9参照)。治具92は、例えば軸が鉛直方向に沿うように設置されている。治具92の内径は、ノズル中径部212の外径よりやや大きい。そのため、ノズル大径部213の噴孔23側の端面は、治具92の鉛直方向上側の端面の内縁部に当接する。作業者または製造装置は、この状態で、治具92に対しノズルボデー20を相対回転させ、噴孔23の位置を調整する。
【0060】
(流路プレート組付け工程)
その後、作業者または製造装置は、筒状の治具93をノズル大径部213の径方向外側に配置する(
図10(A)参照)。治具93の内径は、ノズル大径部213の外径よりやや大きい。治具93の一方の端面の内縁部は、治具92の鉛直方向上側の端面の外縁部に当接する。その後、作業者または製造装置は、ガイドリング81をノズル大径部213のノズル中径部212とは反対側の端部の外周壁に嵌合させる。
【0061】
その後、作業者または製造装置は、流路プレート60をノズルボデー20の噴孔23とは反対側の端面に配置する。ここで、流路プレート60は、プレート本体61の一方の端部の外周壁がガイドリング81の内周壁に嵌合および摺動することで、アッシー状態のノズルボデー20への組付けが案内される(
図10(B)参照)。
【0062】
(反転工程)
その後、作業者または製造装置は、ガイドリング81によって互いに組付けられた状態のノズルボデー20と流路プレート60とを治具92、治具93から抜き出し、流路プレート60が鉛直方向下側を向き、ノズルボデー20が鉛直方向上側を向くよう反転させる(
図11(A)、(B)参照)。
【0063】
(ボデー組付け工程)
その後、作業者または製造装置は、反転工程で反転したノズルボデー20と流路プレート60とを、インジェクタボデー40に組付ける(
図12参照)。ここで、インジェクタボデー40には、開閉部70、および、ノックピン82が設けられている。作業者または製造装置は、流路プレート60の所定の位置に形成された穴部にノックピン82が嵌合するよう、ノズルボデー20および流路プレート60をインジェクタボデー40に組付ける。なお、この時点で、インジェクタボデー40の周方向の位置は、所定の基準位置に固定されている。
【0064】
(ナット仮締付け工程)
その後、作業者または製造装置は、ノズルボデー20の流路プレート60に対する相対回転位置を保持した状態で、スリット52がノズル凹部24の位置に来るまで、リテーニングナット50をインジェクタボデー40に仮締付けする(
図13(A)~(C)参照)。
【0065】
<トルク管理>
この工程において、作業者または製造装置は、トルク管理として、各部品同士が密着する分の軸力を付与しつつ、その過程での異常検出(例えば噛み込み、座面状態、ねじ部異常等)を行う。
【0066】
(ピン押圧工程)
その後、作業者または製造装置は、ピン91を2つのスリット52のそれぞれに挿通させ、ピン91の先端部をノズル凹部24に押し当て、2つのピン91に対しノズル筒部21の径方向外側から中心に向かって所定の荷重を付加する(
図14(A)~(C)参照)。
【0067】
(ナット本締付け工程)
その後、作業者または製造装置は、ノズルボデー20とインジェクタボデー40との間に所定の軸力が発生するよう、インジェクタボデー40に対しリテーニングナット50を相対回転させて螺合、すなわち、締付ける(
図14(A)~(C)参照)。
【0068】
<角度管理>
この工程において、作業者または製造装置は、角度管理として、高圧燃料に対して部品間の面圧シール機能を確保するために、規定の軸力を付与する。本実施形態では、「ピン押圧工程」において2つのピン91の間でインジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対回転が規制されているため、その後の「ナット本締付け工程」の「角度管理」において、部品間の摩擦の状態、部品の歪から生じるノズルボデー20のひねり角のズレを抑制できる。
【0069】
(ピン押圧解除工程)
その後、作業者または製造装置は、ピン91によるノズル凹部24の押圧を解除し、ピン91を2つのスリット52のそれぞれから引き抜く(
図15(A)参照)。
【0070】
(ノズル振れ・ひねり角検査工程)
その後、作業者または製造装置は、インジェクタボデー40に対するノズルボデー20の「同軸度」、「ノズルひねり角(θ)」等について出来栄えを検査する(
図15(B)参照)。
【0071】
次に、第1比較形態の燃料噴射弁について説明する。
【0072】
図16に示すように、第1比較形態は、リテーニングナット50がスリット52を有しておらず、ノズルボデー20がノズル凹部24を有していない点で第1実施形態と異なる。
【0073】
第1比較形態の製造工程は、「噴孔位置調整工程」から「ナット仮締付け工程」までは、第1実施形態と同様である。第1比較形態の製造工程では、「ナット仮締付け工程」の後、「ピン押圧工程」を行うことなく、「ナット本締付け工程」を行う(
図16(A)参照)。
【0074】
第1比較形態の「ナット本締付け工程」では、インジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対回転が規制されていないため、「角度管理」において、部品間の摩擦の状態、部品の歪から生じるノズルボデー20のひねり角のズレが生じるおそれがある。
【0075】
そのため、第1比較形態では、インジェクタボデー40に対するノズルボデー20の「同軸度」、「ノズルひねり角(θ)」等にズレが生じ(
図16(B)参照)、燃料噴射の高精度化に対応できないおそれがある。
【0076】
一方、本実施形態では、「ピン押圧工程」において2つのピン91の間でインジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対回転が規制されているため、その後の「ナット本締付け工程」の「角度管理」において、部品間の摩擦の状態、部品の歪から生じるノズルボデー20のひねり角のズレを抑制でき、燃料噴射の高精度化に対応できる。
【0077】
次に、第2比較形態の燃料噴射弁について説明する。
【0078】
図17に示すように、第2比較形態の燃料噴射弁には、ノックピン83が設けられている。ノックピン83は、流路プレート60を貫く穴部65を通り、両端部が、ノズルボデー20の流路プレート60側の端面に形成された穴部25、および、インジェクタボデー40の流路プレート60側の端面に形成された穴部45に嵌合するよう設けられている。これにより、「ナット本締付け工程」の「角度管理」における、部品間の摩擦の状態、部品の歪から生じるノズルボデー20のひねり角のズレの発生を抑制可能である。また、燃料噴射弁の製造後、使用状態における各部品の相対回転位置のズレを抑制できる。
【0079】
しかしながら、第2比較形態では、流路プレート60に穴部65、ノズルボデー20に穴部25、インジェクタボデー40に穴部45が形成されているため、流路プレート60とノズルボデー20およびインジェクタボデー40との間のシール限界圧を所定値以上に確保できず、燃料の高圧化に対応できないおそれがある。
【0080】
一方、本実施形態では、流路プレート60のノズルボデー20側の端面、および、ノズルボデー20の流路プレート60側の端面には穴部が形成されていないため、流路プレート60とノズルボデー20との間のシール限界圧を所定値以上に確保でき、燃料の高圧化に対応できる。
【0081】
以上説明したように、<1>本実施形態では、リテーニングナット50は、ナット筒部51、および、ナット筒部51の内周壁と外周壁とを接続しナット筒部51の周方向に延びるようナット筒部51に2つ形成されたスリット52を有する。
【0082】
ノズルボデー20は、ノズル筒部21、および、2つのスリット52のそれぞれに対応するようノズル筒部21の外周壁から凹むノズル凹部24を有する。ナット筒部51の軸Ax1を中心とするスリット52の形成角度範囲であるスリット角をα(度)とすると、84<α<180である。
【0083】
本実施形態では、インジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対角度、すなわち、噴孔角度を調整した後、スリット52を経由してノズル凹部24にピン91等の治具を押し当て荷重を付加しながら、リテーニングナット50をインジェクタボデー40に螺合することにより、螺合時にノズルボデー20のひねり角がズレるのを抑制できる。これにより、噴孔角度の精度を向上し、噴射精度を向上可能である。また、ノズル凹部24は、所定の肉厚のノズル筒部21の外周壁から凹むよう形成されている。そのため、噴射精度の向上のためにノズル凹部24を形成する場合であっても、ノズルボデー20の耐圧性の低下を抑制することができる。
【0084】
また、<2>本実施形態では、84<α≦150であり、2つのスリット52は、ナット筒部51の軸Ax1に対し垂直な1つの平面P1上に形成されている。
【0085】
本実施形態では、スリット角αが比較的小さいため、2つのスリット52を同一平面上に形成しても、2つのスリット52間におけるナット筒部51の強度を確保できる。また、ノズル筒部21の軸方向における2つのノズル凹部24の位置を同じにできるため、組付け工程時、ノズル凹部24にピン91を押し当て、荷重をかけても、ノズル筒部21にモーメントが生じるのを抑制できる。
【0086】
(第2実施形態)
第2実施形態の燃料噴射弁の一部を
図18に示す。第2実施形態は、リテーニングナット50の構成等が第1実施形態と異なる。
【0087】
<3>本実施形態では、150<α<180であり、2つのスリット52は、ナット筒部51の軸Ax1に対し垂直で互いに平行な2つの平面(P1、P2)上に形成されている。
【0088】
ノズル凹部24は、2つのスリット52のそれぞれに対応するようノズル大径部213の外周壁から凹むよう形成されている。
【0089】
本実施形態では、スリット角αが比較的大きいため、2つのスリット52を、互いに平行な2つの平面(P1、P2)上に形成することで、2つのスリット52間におけるナット筒部51の強度を確保できる。
【0090】
(第3実施形態)
第3実施形態の燃料噴射弁の一部を
図19に示す。第3実施形態は、ノズルボデー20の構成等が第1実施形態と異なる。
【0091】
本実施形態では、ノズル凹部24は、ノズル大径部213の外周壁から凹みつつ、ノズル大径部213の一方の端部から他方の端部まで直線状に延びるよう形成されている。ノズル筒部21の軸に対し垂直な面による断面におけるノズル凹部24の形状は、略矩形状となるよう形成されている(
図19参照)。すなわち、ノズル凹部24は、ノズル大径部213の一方の端部から他方の端部まで平面状に延びる底面と、底面の周方向の両端部から略垂直に延びる平面状の側面とを有している。
【0092】
本実施形態では、ピン91に対し荷重を付加すると、ピン91の端面全体からノズル凹部24の底面に対し荷重が作用する。また、ノズルボデー20に回転力が作用した場合、ノズル凹部24の側面がピン91の外周壁に当接する。そのため、「ナット本締付け工程」の「角度管理」において、インジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対回転を効果的に規制できる。
【0093】
(第4実施形態)
第4実施形態の燃料噴射弁の一部を
図20に示す。第4実施形態は、ノズルボデー20の構成等が第1実施形態と異なる。
【0094】
本実施形態では、ノズル凹部24は、ノズル大径部213の外周壁から凹みつつ、ノズル大径部213の一方の端部から他方の端部まで直線状に延びるよう形成されている。ノズル筒部21の軸に対し垂直な面による断面におけるノズル凹部24の形状は、略三角形状となるよう形成されている(
図20参照)。すなわち、ノズル凹部24は、ノズル大径部213の一方の端部から他方の端部まで平面状に延び、間に所定の角度をなす2つの側面を有している。
【0095】
本実施形態では、ノズル筒部21の軸に対し垂直な面による断面におけるピン91の先端部の形状は、ノズル凹部24の形状に対応し、略三角形状となるよう形成されている(
図20参照)。本実施形態では、ピン91に対し荷重を付加すると、ピン91の先端部からノズル凹部24の2つの側面に対し荷重が作用する。そのため、「ナット本締付け工程」の「角度管理」において、インジェクタボデー40に対するノズルボデー20の相対回転を効果的に規制できる。
【0096】
(第5実施形態)
第5実施形態の燃料噴射弁の一部を
図21に示す。第5実施形態は、リテーニングナット50の構成等が第1実施形態と異なる。
【0097】
本実施形態では、ナット筒部51の径方向から見ると、スリット52は、長穴状すなわち角丸長方形となるよう形成されている。つまり、スリット52の長手方向(ナット中径部512の周方向)の両端部は、丸みを帯びている。そのため、スリット52の加工を容易にできる。
【0098】
(他の実施形態)
他の実施形態では、流路プレート60は、インジェクタボデー40の噴孔23側の端部と一体に形成されていてもよい。
【0099】
このように、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 燃料噴射弁、20 ノズルボデー、21 ノズル筒部、23 噴孔、24 ノズル凹部、30 ニードル、40 インジェクタボデー、50 リテーニングナット、51 ナット筒部、52 スリット、70 開閉部、200 ノズル室、300 圧力制御室、400 低圧室