(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098872
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 T
H05K3/46 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002654
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬介
(72)【発明者】
【氏名】西脇 史朗
(72)【発明者】
【氏名】木村 涼哉
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA04
5E316AA06
5E316AA12
5E316AA15
5E316AA26
5E316AA29
5E316AA32
5E316AA38
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5E316CC04
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC12
5E316CC13
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5E316CC37
5E316DD02
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5E316EE33
5E316FF15
5E316GG15
5E316GG16
5E316GG17
5E316HH01
(57)【要約】
【課題】伝送され得る信号により適した伝送路を有する配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板は、第1絶縁層11、及び、第1絶縁層11上に積層される第1導体層12を含む第1配線部10と、第1配線部10上に形成される、第1絶縁層11の厚さより小さい厚さを有する第2絶縁層21、及び、第2絶縁層21上に積層される第1導体層12の厚さより小さい厚さを有する第2導体層22からなる第2配線部20と、を含んでいる。第1導体層12は第1配線FW1を備え、第2導体層22は第2配線FW2を備え、第1配線12は、配線幅の最小値が5μmより大きく、且つ、配線間隔の最小値が7μmより大きい差動配線を含み、第2配線22は、配線幅の最大値が5μm以下、且つ、配線間隔の最大値が7μm以下であり、第2配線部20は第1配線部10よりも配線基板の最も外側の面に近い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層、及び、前記第1絶縁層上に積層される第1導体層を含む第1配線部と、
前記第1配線部上に形成される、前記第1絶縁層の厚さより小さい厚さを有する第2絶縁層、及び、前記第2絶縁層上に積層される前記第1導体層の厚さより小さい厚さを有する第2導体層からなる第2配線部と、
を含む配線基板であって、
前記第1導体層は第1配線を備え、
前記第2導体層は第2配線を備え、
前記第1配線は、配線幅の最小値が5μmより大きく、且つ、配線間隔の最小値が7μmより大きい差動配線を含み、
前記第2配線は、配線幅の最大値が5μm以下、且つ、配線間隔の最大値が7μm以下であり、
前記第2配線部は前記第1配線部よりも前記配線基板の最も外側の面に近い。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記差動配線を含む第1導体層の上側及び下側に隣接する第1導体層又は第2導体層は、平面視において前記差動配線と重なるプレーン層を有している。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記差動配線の上面は算術平均粗さが0.13μm以下である。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、前記差動配線の上面は、有機被膜層で被覆されている。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、周波数5.8GHzにおける、前記第1絶縁層の誘電正接は前記第2絶縁層の誘電正接よりも小さく、前記第1絶縁層の比誘電率は前記第2絶縁層の比誘電率よりも小さい。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板であって、前記第1絶縁層の周波数5.8GHzにおける誘電正接は0.005以下であり、比誘電率は3.5以下である。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2絶縁層に含まれる無機フィラーの最大粒子径は、前記第1絶縁層の無機フィラーの最大粒子径よりも小さい。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、前記第2絶縁層に含まれる無機フィラーの最大粒子径は1μm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されている配線基板においては、高密度配線層である第2の配線部材が、低密度配線層である第1の配線部材の外側に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている配線基板においては、第1の配線部材を構成する配線層、及び、第2の配線部材を構成する配線層のそれぞれにおいて形成され得る配線パターンが、伝送され得る信号に適した特性を有さない場合があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1絶縁層、及び、前記第1絶縁層上に積層される第1導体層を含む第1配線部と、前記第1配線部上に形成される、前記第1絶縁層の厚さより小さい厚さを有する第2絶縁層、及び、前記第2絶縁層上に積層される前記第1導体層の厚さより小さい厚さを有する第2導体層からなる第2配線部と、を含んでいる。前記第1導体層は第1配線を備え、前記第2導体層は第2配線を備え、前記第1配線は、配線幅の最小値が5μmより大きく、且つ、配線間隔の最小値が7μmより大きい差動配線を含み、前記第2配線は、配線幅の最大値が5μm以下、且つ、配線間隔の最大値が7μm以下であり、前記第2配線部は前記第1配線部よりも前記配線基板の最も外側の面に近い。
【0006】
本発明の実施形態によれば、比較的微細な第2配線によって構成される第2配線部よりも、配線基板の最も外側から遠い側(内層側)に形成される第1配線部は、高周波信号の伝送に適する差動配線を含んでいる。第1配線部及び第2配線部のそれぞれにおいて伝送され得る信号により適した伝送路(配線)を有する配線基板が提供され得ると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図2】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す
図1における部分拡大図。
【
図3A】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【
図3B】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【
図3C】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【
図3D】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【
図3E】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【
図3F】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【
図3G】一実施形態の配線基板の製造方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。なお、以下、参照される図面においては、各構成要素の正確な比率を示すことは意図されておらず、本発明の特徴が理解され易いように描かれている。
図1には、一実施形態の配線基板が有し得る構造の一例として、配線基板1の断面図が示されている。
【0009】
図1に示される例の配線基板1は、第1配線部10と、第2配線部20と、第3配線部30とを有している。第1配線部10は、絶縁層(コア絶縁層)101と、コア絶縁層101の両面に形成された導体層(コア導体層)102を含むコア基板100を有している。コア基板100の両面上には、それぞれ、絶縁層11及び導体層12が交互に積層されている。
【0010】
第1配線部10の一方の面F1の上側(コア基板100と反対側)には、複数の絶縁層21及び複数の導体層22が交互に積層された第2配線部20が形成されている。第1配線部10の他方の面F2の上側(コア基板100と反対側)には、複数の絶縁層31及び複数の導体層32が交互に積層された第3配線部30が形成されている。図示の例では、第1配線部10が配線基板1における内層部を構成し、第2配線部20及び第3配線部30が配線基板1における表層部を構成している。すなわち、第2配線部20及び第3配線部30は、第1配線部10よりも配線基板1の外側に近く位置している。
【0011】
なお、図示される配線基板1の説明においては、コア絶縁層101から遠い側を、「上」、「上側」、「外側」、又は「外」と称し、コア絶縁層101に近い側を、「下」、「下側」、「内側」、又は「内」と称する。また、各構成要素において、コア基板100と反対側を向く表面は「上面」とも称され、コア基板100側を向く表面は「下面」とも称される。従って、配線基板1を構成する各要素の説明において、コア基板100から遠い側が「上側」、「上方」、「上層側」、「外側」、又は単に「上」もしくは「外」とも称され、コア基板100に近い側が「下側」、「下方」、「下層側」、「内側」、又は単に「下」もしくは「内」とも称される。
【0012】
第1配線部10を構成する絶縁層11は第1絶縁層11とも称され、第1配線部10を構成する導体層12は第1導体層12とも称される。第1導体層12は第1絶縁層11上に積層される。第2配線部20を構成する絶縁層21は第2絶縁層21とも称され、第2配線部20を構成する導体層22は第2導体層22とも称される。第2導体層22は第2絶縁層21上に積層される。第3配線部30を構成する絶縁層31は第3絶縁層31とも称され、第3配線部30を構成する導体層32は第3導体層32とも称される。第3導体層32は第3絶縁層31上に積層される。第2配線部20は第2絶縁層21及び第2導体層22からなり、第3配線部30は第3絶縁層31及び第3導体層32からなる。
【0013】
特に、第2配線部20においては、導体層22が比較的高密度に設けられている。具体的には、第2配線部20を構成する第2絶縁層21の厚さは第1配線部10を構成する第1絶縁層11の厚さよりも小さく、第2配線部20を構成する第2導体層22の厚さは第1配線部10を構成する第1導体層12の厚さよりも小さい。例えば、第2絶縁層21の厚さの最大値は18μm以下であり、第1絶縁層11の厚さの最小値は19μm以上であり得る。例えば、第2導体層22の厚さの最大値は11μm以下であり、第1導体層12の厚さの最小値は12μm以上であり得る。また、第2導体層22は、その導体パターンとして、比較的微細なパターンを含み得る。詳しくは後述されるように、第2導体層22に含まれる導体パターンは、第1導体層12に含まれる導体パターンにおける配線幅よりも小さい配線幅、及び、第1導体層12に含まれる導体パターンにおける配線間隔よりも小さい配線間隔を有する。
【0014】
なお、図示される例においては、第1配線部10に対して第2配線部20と反対側に設けられる第3配線部30では、第3絶縁層31及び第3導体層32が、上述された第2絶縁層21及び第2導体層22と同様の構成を有している。従って、以降、配線基板1の表層部の説明として主に第2配線部20の構成が説明され、第3配線部30についての詳細な説明は省略される。
【0015】
コア基板100を構成する絶縁層101には、絶縁層101を厚さ方向に貫通し、コア基板100の両面における導体層102を接続する、スルーホール導体103が形成されている。スルーホール導体103の内部は、エポキシ樹脂などを含む樹脂体103iで充填されている。第1絶縁層11、第2絶縁層21、第3絶縁層31、のそれぞれには、第1~第3絶縁層11、21、31を挟む導体層同士を接続するビア導体13、23、33が含まれている。
【0016】
図示の例では、第2配線部20の外側(第1配線部10と反対側)には、さらに、第2導体層22及び第2導体層22の導体パターンから露出する第2絶縁層21を被覆する被覆絶縁層210が形成されている。第3配線部30の外側(第1配線部10と反対側)には、さらに、第3導体層32及び第3導体層32の導体パターンから露出する第3絶縁層31を被覆する被覆絶縁層310が形成されている。被覆絶縁層210、310は、例えば、配線基板1の最外の絶縁層を構成するソルダーレジスト層であり得る。
【0017】
被覆絶縁層210には開口210aが形成され、開口210a内には導体パッド22pが露出している。開口210aは被覆絶縁層210を厚さ方向に貫通する貫通孔であり、開口210aは導体によって充填されている。開口210aを充填する導体は配線基板1の最外の表面を構成し、配線基板1と外部の電子部品との接続に用いられ得る、例えば金属ポストであり得る接続要素MPを構成している。被覆絶縁層310には開口310aが形成され、開口310aからは第3配線部30における最も外側の第3導体層32が有する導体パッド32pが露出している。
【0018】
第2配線部20を構成する複数の第2導体層22のうち、最も外側の第2導体層22は、複数の導体パッド22pを有するパターンに形成されている。図示の例では、導体パッド22p上に、導体で形成される構成要素である接続要素MPが形成される。接続要素MPは、配線基板1の使用において、外部の電子部品が有する接続パッドとの接続に用いられ得る。接続要素MPの上面は、例えば、はんだなどの導電性の接合材(図示せず)を外部の電子部品の接続パッドとの間に介して、外部の電子部品と電気的及び機械的に接続され得る。すなわち、接続要素MPの露出面及び被覆絶縁層210の上面で構成される、配線基板1の最外面である第1面FAは、配線基板1の使用において外部の電子部品が接続され得る部品搭載面であり得る。
【0019】
配線基板1に搭載され得る電子部品としては、半導体集積回路装置やトランジスタなどの能動部品のような電子部品(例えば、ロジックチップやメモリ素子)が例示される。なお、第1面FAと反対側の第2面FBは、第3配線部30の最も外側の、被覆絶縁層310の露出面と開口310aから露出する導体パッド32pの上面で構成される。第2面FBは、例えば、外部の配線基板(例えば任意の電気機器のマザーボード)などの外部要素に配線基板1自体が実装される場合に、外部要素に接続される接続面であり得る。導体パッド32pは、任意の基板、電気部品、又は機構部品などと接続され得る。
【0020】
配線基板1を構成する絶縁層101、11、21、31は、それぞれ、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され得る。絶縁層101、11、21、31には、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリエステル樹脂(PE)、変性ポリイミド樹脂(MPI)が用いられてもよい。各絶縁層101、11、21、31は、ガラス繊維などの補強材(芯材)を含む場合がある。各絶縁層101、11、21、31は、はシリカ、アルミナなどの無機フィラーを含み得る。ソルダーレジスト層であり得る被覆絶縁層210、310は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成され得る。
【0021】
なお、詳しくは後述されるように、第1絶縁層11と第2絶縁層21とでは比誘電率及び誘電正接の値が異なり得る。また、第2絶縁層21が無機フィラーを含む場合、第2絶縁層21に含まれる無機フィラーの寸法は第1絶縁層11に含まれ得る無機フィラーの寸法と異なり得る。
【0022】
導体層102、12、22、32、ビア導体13、23、33、スルーホール導体103、及び、接続要素MPは、銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成され、例えば、銅箔などの金属箔、及び/又は、めっきもしくはスパッタリングなどで形成される金属膜によって構成され得る。導体層102、12、22、32、ビア導体13、23、33、スルーホール導体103、及び、接続要素MPは、
図1では単層構造で示されているが、2つ以上の金属層を有する多層構造を有し得る。例えば、絶縁層101の表面上に形成されている導体層102は、金属箔層(好ましくは銅箔)、無電解めっき膜層(好ましくは無電解銅めっき膜)、及び電解めっき膜層(好ましくは電解銅めっき膜)を含む5層構造を有し得る。また、導体層12、22、32、ビア導体13、23、33、スルーホール導体103、並びに接続要素MPは、例えば、無電解めっき膜もしくはスパッタ膜である金属膜層、及び、電解めっき膜層を含む多層構造を有し得る。
【0023】
配線基板1が有する各導体層102、12、22、32、は、所定の導体パターンを有するようにパターニングされている。実施形態の配線基板では、第1配線部10を構成する複数の第1導体層12のうち任意の第1導体層12が第1配線FW1を含んでおり、第1配線FW1は差動配線であり得る。第2配線部20を構成する複数の第2導体層22のうち任意の第2導体層22が第2配線FW2を含んでいる。図示の例では、第3配線部30を構成する複数の第3導体層32のうち任意の第3導体層32が第3配線FW3を含んでいる。
【0024】
特に、第2配線部20に含まれる第2配線FW2は、第1配線部10に含まれる第1配線FW1よりも微細な配線として形成される。具体的には、第2配線FW2の配線幅の最大値は、第1配線FW1が有する差動配線の配線幅の最小値よりも小さい値を有し得る。また、第2配線FW2の配線間隔の最大値は、第1配線FW1が有する差動配線の配線間隔の最小値よりも小さい値を有し得る。第2配線部20は、配線基板1を構成する導体層が含み得る配線のうち、最も配線幅及び配線間隔が小さい第2配線FW2を含み得る。なお、第1配線部10に含まれ得る第1配線FW1は高周波信号の搬送を担う配線として形成され得る。
【0025】
次いで、
図2が参照され、第1配線部10を構成する第1導体層12及び第1絶縁層11、並びに、第2配線部20を構成する第2導体層22及び第2絶縁層21について詳述される。
図2は、
図1において1点鎖線で囲われている領域IIの拡大図である。
【0026】
図示されるように、第1導体層12並びに第2導体層22は、金属膜層と電解めっき膜層を含む多層構造を有している。図示において、第1導体層12は金属膜層12np及び電解めっき膜層12epを含み、第2導体層22は、金属膜層22np及び電解めっき膜層22epを含んでいる。第1導体層12に含まれる金属膜層12npは、無電解めっきによって形成される無電解銅めっき膜層又は銅をターゲットするスパッタリングにより形成されるスパッタ膜層であり得る。電解めっき膜層12epは、金属膜層12npを給電層として形成される電解銅めっき膜層であり得る。第2導体層22を構成する金属膜層22npは、無電解めっきによって形成される無電解銅めっき膜層又は銅をターゲットするスパッタリングにより形成されるスパッタ膜層であり得る。電解めっき膜層22epは、金属膜層22npを給電層として形成される電解銅めっき膜層であり得る。
【0027】
第1導体層12に含まれる配線は差動配線を含んでおり、
図2においては1組の(1対の)差動配線DWが示されている。実施形態の配線基板における第1導体層12に含まれる差動配線DWは、その配線幅DWLの最小値が5μmよりも大きい。また、1対の差動配線DWを構成する配線同士の間隔(配線間隔)DWSは、その最小値が7μmよりも大きい。また、第2導体層22に含まれている第2配線FW2は、その配線幅FW2Lの最大値が5μm以下であり、且つ、配線間隔FW2Sの最大値が7μm以下である。なお、本明細書における説明では、「配線間隔」とは、隣り合う配線同士の離間距離を意味し、特に、差動配線DWに関する説明における「配線間隔」とは、1組の差動配線DWを構成する2本の配線間の離間距離を意味している。
【0028】
1対の配線から構成される差動配線では、信号の搬送において、受信側で1対の配線に入力される信号の差分がとられることにより外来のノイズがキャンセルされ得る。また、1対の配線に対して逆極性の信号が入力されることで、差動配線自体から発生するノイズがキャンセルされ得る。配線基板を構成する導体層の内、高周波信号の伝送を担い得る第1導体層12に差動配線DWが含まれていることで、ノイズの影響を受け難いより良好な信号の伝送が可能となり得る。なお、第1導体層12は、差動配線DW以外の配線をも含む場合がある。
【0029】
上述されたように、配線基板の表層部を構成する第2導体層22に含まれる第2配線FW2は第1配線FW1と比較して微細且つ高密度な配線として構成され得る。また、配線基板の内層部を構成する第1導体層12に含まれる第1配線FW1は高周波信号の伝送を担い得る。従って、第1導体層12が差動配線DWを含んでいることによって、配線基板の表層部と内層部とのそれぞれにおいて搬送され得る信号に、より適した特性の伝送路を有する配線基板が提供され得る。
【0030】
第1配線部10を構成する第1導体層12の上面(第1絶縁層11における第1導体層12が積層される面と反対側の面)は、その表面粗さが比較的小さく形成されており、従って、差動配線DWの上面の表面粗さは比較的小さい。第1導体層12の上面の表面粗さは、第2配線部20を構成する第2導体層22の上面(第2絶縁層21における第2導体層22が積層される面と反対側の面)の表面粗さよりも小さい場合がある。具体的には、第1導体層12の上面の算術平均粗さは、第2配線部20を構成する第2導体層22の上面の算術平均粗さよりも小さい場合があり、例えば、第2導体層22の上面の算術平均粗さは0.15μm以上であり、第1導体層12の上面の算術平均粗さは0.13μm以下であり得る。例えば、比較的粗度の高い表面を有する配線では、高周波信号の伝送において、表皮効果の影響を受けて実質的なインピーダンスが増加して伝送特性が低下することがある。第1導体層12の上面が比較的低い粗度とされていることで、高周波信号の伝送を担い得る第1導体層12に含まれる配線FW1において、良好な伝送特性が実現される場合がある。
【0031】
なお、比較的粗度の低い第1導体層12の上面と第1導体層12上に積層される第1絶縁層11との間には、有機被膜層(図示せず)が介在する場合がある。第1導体層12の上面と第1絶縁層11との間に介在し得る有機被膜層は、第1導体層12と第1絶縁層11との密着性を向上させ得る。有機被膜層は、例えば、第1絶縁層11を構成する樹脂などの有機材料、及び第1導体層12を構成する金属などの無機材料の両方と結合し得る材料によって形成され得る。有機被膜層は、例えば、有機材料と化学結合し得る反応基及び無機材料と化学結合し得る反応基の両方を含む材料によって形成される。有機被膜層の材料としては、トリアゾール化合物などのアゾールシラン化合物を含むシランカップリング剤が例示される。
【0032】
差動配線DWを含む第1導体層12と隣接する導体層(差動配線DWを含む第1導体層12の一層上側の導体層及び一層下側の導体層)は、平面視において差動配線DWと重なる位置に、プレーン層を有し得る。なお「平面視」は、対象物を配線基板1の厚さ方向と平行な視線で見ることを意味している。図示の例では、差動配線DWは、その一層上側の第1導体層12に含まれるプレーン層12pluと、一層下側の第1導体層12に含まれるプレーン層12pllとに挟まれる位置に配置されている。差動配線DWが上層側及び下層側の両方でプレーン層と重なるので、差動配線DWにおいて、外来ノイズによる影響を受け難い、さらに良好な信号伝送が可能であると考えられる。
【0033】
また、第2絶縁層21に含まれ得る無機フィラーの寸法は、第1絶縁層11に含まれ得る無機フィラーの寸法と異なり得る。具体的には、特に、第2配線部20を構成する第2絶縁層21に含まれ得る無機フィラーf2の最大粒径は、第1配線部10を構成する第1絶縁層11に含まれる無機フィラーf1の最大粒径よりも小さい場合がある。比較的高密度に形成され得る第2導体層22において、隣り合う導体間に比較的粒径の大きい無機フィラーが位置すると、フィラー表面を介するマイグレーションにより配線間の短絡が発生する場合がある。従って、第2絶縁層21に含まれ得るフィラーの最大の粒径が比較的小さいことで、第2導体層22における短絡の虞が低減される場合がある。なお、フィラーの説明における用語「粒径」は、フィラーの外表面における最も離間する2点間の直線距離を意味している。具体的には、例えば、第2絶縁層21に含まれ得る無機フィラーf2の最大粒径は1μm以下であり得る。例えば、第1絶縁層11に含まれ得る無機フィラーf1の最大粒径は3μm以上であり得る。
【0034】
第1導体層12には、高周波信号の伝送を担い得る配線が含まれ得る。配線に接する絶縁層が、比較的高い値の誘電率、誘電正接を有する場合、配線で伝送される高周波信号の誘電損失(伝送損失)が比較的大きい。従って、第1導体層12によって搬送される信号の、良好な信号伝送品質を実現する観点から、特に、第1絶縁層11が有する比誘電率及び誘電正接の値は比較的小さいことが望ましい。第1絶縁層11が有する比誘電率及び誘電正接の値は、第2配線部20を構成する第2絶縁層21が有する比誘電率及び誘電正接の値と異なる場合がある。第1絶縁層11は、比較的、誘電率及び誘電正接の小さい材料で構成されていることが好ましく、周波数5.8GHzにおける比誘電率が3.5以下、且つ、誘電正接が0.005以下であることが好ましい。
【0035】
実施形態の配線基板は、
図1及び
図2に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。例えば、配線基板を構成する第1配線部はコア基板を含まないコアレス基板であってよい。また、各配線部は任意の数の絶縁層及び導体層を有し得る。実施形態の説明では、第1配線部10の第2配線部20が形成される側と反対側には、第2配線部20と同様の構成を有する第3配線部30が形成される例が示されたが、第3配線部30の構成(絶縁層31及び導体層32の層数、導体層32の導体パターン、絶縁層31及び導体層32の各層の厚さや表面状態、など)は特に限定されない。第1配線部10の第2配線部20が形成される側と反対側には、任意の形態の配線部が形成され得る。
【0036】
続いて、
図3A~
図3Gを参照して、
図1に示される配線基板1が製造される場合を例に、配線基板の製造方法が説明される。
【0037】
先ず、
図3Aに示されるように、コア基板100が用意される。コア基板100の用意では、例えば、コア絶縁層101を含む両面銅張積層板が用意される。この両面銅張積層板に貫通孔が例えばドリル加工によって形成される。貫通孔の内壁及び金属箔の上面に、例えば無電解めっき膜層が形成され、この無電解めっき膜層の上に、この無電解めっき膜層を給電層として用いて電解めっき膜層が形成される。この結果、図においては単層で示されているが、無電解めっき膜層及び電解めっき膜層を含む多層構造を有し、貫通孔の内壁を被覆するスルーホール導体103が形成される。スルーホール導体103の内側には、例えばエポキシ樹脂を注入することによって、スルーホール導体103の内部が樹脂体103iで充填される。充填された樹脂体103iが固化された後、樹脂体103i及び電解めっき膜層の上面に、さらに無電解めっき膜層及び電解めっき膜層が形成される。この結果、図では単層で示されているが、金属箔、無電解めっき膜層、電解めっき膜層、無電解めっき膜層、及び電解めっき膜層の5層構造を有する導体層102が、絶縁層101の両面に形成される。そしてサブトラクティブ法によって導体層102をパターニングすることによって所定の導体パターンを備えるコア基板100が得られる。
【0038】
次いで、
図3Bに示されるように、コア基板100における両側の表面に絶縁層11が形成され、その絶縁層11上に導体層12が形成される。例えば各絶縁層11は、フィルム状の絶縁性樹脂を、コア基板100上に熱圧着することによって形成される。導体層12は、絶縁層11に例えばレーザー光によって形成され得る開口13aを充填するビア導体13と同時に、セミアディティブ法などの任意の導体パターンの形成方法を用いて形成される。なお、レーザー光による開口13aの形成後、開口13a内に残留し得る樹脂残渣を除去するデスミア処理が施され得る。デスミア処理は、例えば、CF
4又はCF
4+O
2によるプラズマ処理、又は、過マンガン酸塩等の酸化剤を含む薬液を使用する湿式処理によって実施され得る。デスミア処理により、開口13a内に残留し得る樹脂残渣が除去されると共に、絶縁層11の上面は粗化され得る。
【0039】
続いて、
図3Cに示されるように、コア基板100の両面側において、絶縁層11及び導体層12の積層が、さらに必要な回数繰り返され、第1配線部10が形成される。なお、導体層12は、その導体パターンとして差動配線DWを含むように形成される。形成される差動配線DWは配線幅の最小値が5μmよりも大きく、且つ、配線間隔の最小値が7μmよりも大きく形成される。図示されるように、形成される差動配線DWの一層上側及び一層下側の第1導体層12は、平面視において差動配線DWと重なるプレーン層12plu、12pllが形成され得る。
【0040】
なお、
図3A~
図3Cを参照して説明された絶縁層11の形成においては、絶縁層11を構成する材料として、例えば、周波数5.8GHzにおける比誘電率が3.5以下、且つ、誘電正接が0.005以下である材料が用いられ得る。また、絶縁層11を構成する材料としては、最大粒径は0.3μm以上である無機フィラーを含む材料が用いられる場合がある。形成される絶縁層11は、その厚さの最小値が19μm以上となる樹脂フィルムを用いて形成され得る。
【0041】
また、導体層12の形成においては、有機酸系マイクロエッチング剤を含む薬液を用いる表面処理により、導体層12の表面に凹凸を形成する工程が含まれ得る。用いられる薬液の組成や処理条件により、導体層12上面の表面粗さが適宜調整され得る。例えば、導体層12の上面は、算術平均粗さRaで0.13μm以下の値を有するように形成され得る。形成される導体層12は、例えば、厚さが12μm以上の値を有するように形成され得る。
【0042】
また、導体層12の形成においては、形成される導体層12の上面に有機被膜層(図示せず)が形成される場合がある。有機被膜層は、例えば、導体層12と、導体層12上に積層される絶縁層との密着性を向上させる。有機被膜層は、例えば、シランカップリング剤などの、有機材料及び無機材料の両方と結合し得る材料を含む液体への導体層12の浸漬や、そのような液体の噴霧(スプレーイング)によって形成され得る。
【0043】
次いで、
図3Dに示されるように、第1配線部10の一方の面F1の外側に絶縁層21が形成され、他方の面F2の外側に絶縁層31が形成される。絶縁層21、31は、例えば樹脂フィルムの熱圧着によって形成され得る。
【0044】
次いで、
図3Eに示されるように、絶縁層21上に導体層22がビア導体23と一体的に形成される。絶縁層31上に導体層32がビア導体33と一体的に形成される。導体層22は、絶縁層21に例えばレーザー光によって形成され得る開口23aを充填するビア導体23と同時に、セミアディティブ法などの任意の導体パターンの形成方法を用いて形成される。レーザー光による開口23aの形成後、開口23a内に残留し得る樹脂残渣を除去するデスミア処理が施され得る。デスミア処理は、絶縁層11に施され得る処理と同様に、例えば、プラズマ処理又は薬液を使用する処理によって実施され得る。
【0045】
続いて、
図3Fに示されるように、第1配線部10の一方の面F1側では、絶縁層21及び導体層22の形成が所望の回数繰り返され、他方の面F2側では、絶縁層31及び導体層32の形成が所望の回数繰り返される。第2配線部20、及び、第3配線部30の形成が完了する。
【0046】
特に、第2配線部20を構成する絶縁層21の形成においては、絶縁層21は、絶縁層11の厚さよりも小さい厚さとなるように形成される。例えば、上述のように、絶縁層11が19μm以上となるように形成されている場合、絶縁層21は、その厚さの最大値が18μm以下となるような樹脂フィルムを用いて形成され得る。また、絶縁層21の形成には、絶縁層21が無機フィラーを含む材料で形成される場合には、最大粒径が1μm以下である無機フィラーを含む材料が用いられ得る。
【0047】
また、特に、導体層22の形成においては、導体層22の厚さは導体層12よりも薄く形成され得る。例えば、上述したように、導体層12の厚さの最小値が12μm以上となるように形成されている場合、導体層22は厚さの最大値が11μm以下となるように形成され得る。第2配線部20における任意の導体層22は、配線幅の最大値が5μm以下であり、且つ、配線間隔の最大値が7μm以下である配線FW2を含むパターンに形成される。第2配線部20における最も外側の導体層22は、複数の導体パッド22pを含むパターンに形成される。
【0048】
次いで、
図3Gに示されるように、第2配線部20における最も外側の導体層22、及び、導体層22のパターンから露出する絶縁層21上に、被覆絶縁層210が形成される。被覆絶縁層210には、導体パッド22pを露出させる開口210aが形成される。例えば、スプレーコーティング、カーテンコーティング、又はフィルム貼り付けなどによって、感光性を有するエポキシ樹脂膜が形成されることで被覆絶縁層210が形成され、露光及び現像により開口210aが形成され得る。第3配線部30の外側では、被覆絶縁層210の形成と同様の方法によって、導体パッド32pを露出させる開口310aを有する被覆絶縁層310が、導体層32、及び、導体層32のパターンから露出する絶縁層31上に形成される。
【0049】
続いて、開口210a内が導体によって充填され、導体パッド22p上に接続要素MPが形成される。接続要素MPは、例えばセミアディティブ法により形成され得る。第2配線部20の形成が完了し、配線基板1の形成が完了する。なお、接続要素MPの形成工程においては、被覆絶縁層310の表面及び開口310aから露出する導体パッド32pの上面は、PETなどの保護板が設置されることにより適宜保護され得る。
【符号の説明】
【0050】
1 配線基板
10 第1配線部
20 第2配線部
30 第3配線部
101 絶縁層
11 絶縁層(第1絶縁層)
21 絶縁層(第2絶縁層)
31 絶縁層(第3絶縁層)
102 導体層
12 導体層(第1導体層)
22 導体層(第2導体層)
32 導体層(第3導体層)
13、23、33 ビア導体
103 スルーホール導体
210、310 被覆絶縁層
210a、310a 開口
MP 接続要素
F1 一方の面
F2 他方の面
FA 第1面
FB 第2面
FW1 配線(第1配線)
FW2 配線(第2配線)
DW 差動配線
12plu、12pll プレーン層