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特開2024-98879電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098879
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240717BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20240717BHJP
   B60K 17/34 20060101ALI20240717BHJP
   B60K 17/356 20060101ALI20240717BHJP
   B60L 9/18 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B60L15/20 S
B60K17/12
B60K17/34 B
B60K17/356 B
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002669
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 唯
(72)【発明者】
【氏名】澤田 彰
【テーマコード(参考)】
3D042
3D043
5H125
【Fターム(参考)】
3D042AA01
3D042AB01
3D042AB17
3D042BE01
3D043AA01
3D043AB01
3D043AB17
3D043EA05
3D043EA11
3D043EA33
3D043EA34
3D043EE02
3D043EE03
3D043EF17
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC12
5H125BA05
5H125BB07
5H125CA02
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】複数の駆動モータの一部がバックラッシュを跨ぐ動作をする場合であってもドライバが所望する加減速度を実現する電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】リアモータ31の第2の駆動力伝達機構が第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第1のフロント目標トルク指令値に所定の第1の補正トルクを加算し、フロントモータ21の第1の駆動力伝達機構が第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第1のリア目標トルク指令値に所定の第2の補正トルクを加算し、第1の補正トルクを、第1のリア目標トルク指令値と、第2の駆動力伝達機構の伝達特性を有するフィルタ911rと、に基づいて算出し、第2の補正トルクを、第1のフロント目標トルク指令値と、第1の駆動力伝達機構の伝達特性を有するフィルタ911fと、に基づいて算出する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報に基づいて第1の目標トルク指令値及び第2の目標トルク指令値を生成し、前記第1の目標トルク指令値に基づいて第1の駆動輪を駆動する第1の駆動モータを駆動し、前記第2の目標トルク指令値に基づいて前記第1の駆動輪とは異なる第2の駆動輪を駆動する第2の駆動モータを駆動し、
前記第1の駆動モータの駆動力を前記第1の駆動輪に伝達する第1の駆動力伝達機構が前記第1の駆動輪への駆動力の伝達が不能となる第1のバックラッシュ区間を含み、前記第2の駆動モータの駆動力を前記第2の駆動輪に伝達する第2の駆動力伝達機構が前記第2の駆動輪への駆動力の伝達が不能となる第2のバックラッシュ区間を含む電動車両の制御方法であって、
前記第2の駆動力伝達機構が前記第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第1の目標トルク指令値に所定の第1の補正トルクを加算し、
前記第1の駆動力伝達機構が前記第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第2の目標トルク指令値に所定の第2の補正トルクを加算し、
前記第1の補正トルクを、前記第2の目標トルク指令値と、前記第2の駆動力伝達機構が前記第2の駆動モータから前記第2の駆動輪に駆動力を伝達するときの前記第2の駆動力伝達機構の伝達特性を有する第1の伝達フィルタと、に基づいて算出し、
前記第2の補正トルクを、前記第1の目標トルク指令値と、前記第1の駆動力伝達機構が前記第1の駆動モータから前記第1の駆動輪に駆動力を伝達するときの前記第1の駆動力伝達機構の伝達特性を有する第2の伝達フィルタと、に基づいて算出する電動車両の制御方法。
【請求項2】
前記第1の駆動力伝達機構の伝達特性と前記第2の駆動力伝達機構の伝達特性を表すとともに前記第1の駆動力伝達機構の駆動軸ねじり振動と前記第2の駆動力伝達機構の駆動軸ねじり振動を低減する規範応答を形成する車両モデルに前記第1の目標トルク指令値を入力して得られる出力に基づいて前記第1の駆動モータを駆動し、前記車両モデルに前記第2の目標トルク指令値を入力して得られる出力に基づいて前記第2の駆動モータを駆動する場合において、
前記第2の駆動力伝達機構が前記第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第1の目標トルク指令値に前記第1の補正トルクを加算した値を前記車両モデルに入力して得られる出力に基づいて前記第1の駆動モータを駆動し、
前記第1の駆動力伝達機構が前記第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第2の目標トルク指令値に前記第2の補正トルクを加算した値を前記車両モデルに入力して得られる出力に基づいて前記第2の駆動モータを駆動する請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項3】
前記第1の駆動力伝達機構の伝達特性に前記第1のバックラッシュ区間を模した第1の不感帯要素が掛け合わされた伝達特性と、前記第2の駆動力伝達機構の伝達特性に前記第2のバックラッシュ区間を模した第2の不感帯要素が掛け合わされた伝達特性と、を有する車両モデルにおいて、前記第1の目標トルク指令値を入力したときの前記第1の不感帯要素の出力として生成される第1の駆動軸トルク推定値に基づいて、前記第1の駆動力伝達機構が前記第1のバックラッシュ区間を通過しているか否かを推定し、
前記車両モデルにおいて、前記第2の目標トルク指令値が入力されたときの前記第2の不感帯要素の出力として生成される第2の駆動軸トルク推定値に基づいて、前記第2の駆動力伝達機構が前記第2のバックラッシュ区間を通過しているか否かを推定する請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項4】
前記第1の補正トルクを、
前記第2の目標トルク指令値を前記第1の伝達フィルタに入力して得られる第1の規範駆動軸トルクから前記第2の駆動軸トルク推定値を差し引いて得られる第1の差分に基づいて算出し、
前記第2の補正トルクを、
前記第1の目標トルク指令値を前記第2の伝達フィルタに入力して得られる第2の規範駆動軸トルクから前記第1の駆動軸トルク推定値を差し引いて得られる第2の差分に基づいて算出する請求項3に記載の電動車両の制御方法。
【請求項5】
前記第1の駆動力伝達機構の伝達特性に前記第1のバックラッシュ区間を模した第1の不感帯要素が掛け合わされた伝達特性と、前記第2の駆動力伝達機構の伝達特性に前記第2のバックラッシュ区間を模した第2の不感帯要素が掛け合わされた伝達特性と、を有するとともに、前記第1の駆動力伝達機構の駆動軸ねじり振動と前記第2の駆動力伝達機構の駆動軸ねじり振動を低減する規範応答を形成する車両モデルにおいて、
前記第2の駆動力伝達機構が前記第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第1の目標トルク指令値に前記第1の補正トルクを加算した値を前記車両モデルに入力して得られる出力に基づいて前記第1の駆動モータを駆動し、
前記第1の駆動力伝達機構が前記第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第2の目標トルク指令値に前記第2の補正トルクを加算した値を前記車両モデルに入力して得られる出力に基づいて前記第2の駆動モータを駆動し、
前記第1の伝達フィルタを、前記車両モデルにおいて前記第2の不感帯要素を取り除いたモデルとして設定し、
前記第2の伝達フィルタを、前記車両モデルにおいて前記第1の不感帯要素を取り除いたモデルとして設定する請求項1に記載の電動車両の制御方法。
【請求項6】
前記第1の補正トルクを第1の位相進み補償フィルタによりフィルタリングして前記第1の目標トルク指令値に加算し、前記第2の補正トルクを第2の位相進み補償フィルタによりフィルタリングして前記第2の目標トルク指令値に加算する場合において、
前記第1の位相進み補償フィルタを前記第1の伝達フィルタの逆関数であって前記第1の伝達フィルタの時定数よりも小さな時定数を有する関数として設定し、
前記第2の位相進み補償フィルタを前記第2の伝達フィルタの逆関数であって前記第2の伝達フィルタの時定数よりも小さな時定数を有する関数として設定する請求項1又は請求項2に記載の電動車両の制御方法。
【請求項7】
第1の駆動輪を駆動させる第1の駆動モータと、
前記第1の駆動モータの駆動力を前記第1の駆動輪に伝達する第1の駆動力伝達機構と、
前記第1の駆動輪とは異なる第2の駆動輪を駆動させる第2の駆動モータと、
前記第2の駆動モータの駆動力を前記第2の駆動輪に伝達する第2の駆動力伝達機構と、
車両情報に基づいて第1の目標トルク指令値及び第2の目標トルク指令値を生成し、前記第1の目標トルク指令値を前記第1の駆動モータに向けて出力し、前記第2の目標トルク指令値を前記第2の駆動モータに向けて出力するトルク指令値生成部と、を含み、
前記第1の駆動力伝達機構が前記第1の駆動モータの駆動力を前記第1の駆動輪に伝達することが不能となる第1のバックラッシュ区間を含み、
前記第2の駆動力伝達機構が前記第2の駆動モータの駆動力を前記第2の駆動輪に伝達することが不能となる第2のバックラッシュ区間を含む電動車両の制御装置であって、
前記第2の駆動力伝達機構が前記第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第1の目標トルク指令値に所定の第1の補正トルクを加算する第1の補正トルク加算手段と、
前記第1の駆動力伝達機構が前記第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、前記第2の目標トルク指令値に所定の第2の補正トルクを加算する第2の補正トルク加算手段と、を含み、
前記第1の補正トルク加算手段は、
前記第1の補正トルクを、前記第2の目標トルク指令値と、前記第2の駆動力伝達機構が前記第2の駆動モータから前記第2の駆動輪に駆動力を伝達するときの前記第2の駆動力伝達機構の伝達特性を有する第1の伝達フィルタと、に基づいて算出し、
前記第2の補正トルク加算手段は、
前記第2の補正トルクを、前記第1の目標トルク指令値と、前記第1の駆動力伝達機構が前記第1の駆動モータから前記第1の駆動輪に駆動力を伝達するときの前記第1の駆動力伝達機構の伝達特性を有する第2の伝達フィルタと、に基づいて算出する電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の駆動輪に対して各々接続された駆動モータを駆動する電動車両の駆動制御について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-103249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、複数の駆動モータの一部がバックラッシュを跨ぐ動作をする場合には、当該一部の駆動モータの制駆動力が駆動輪に伝達されず、ドライバが所望する加減速度を実現できないという問題があった。
【0005】
本発明は、複数の駆動モータの一部がバックラッシュを跨ぐ動作をする場合であってもドライバが所望する加減速度を実現する電動車両の制御方法、及び電動車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動車両の制御方法は、車両情報に基づいて第1の目標トルク指令値及び第2の目標トルク指令値を生成し、第1の目標トルク指令値に基づいて第1の駆動輪を駆動する第1の駆動モータを駆動し、第2の目標トルク指令値に基づいて第1の駆動輪とは異なる第2の駆動輪を駆動する第2の駆動モータを駆動し、第1の駆動モータの駆動力を第1の駆動輪に伝達する第1の駆動力伝達機構が第1の駆動輪への駆動力の伝達が不能となる第1のバックラッシュ区間を含み、第2の駆動モータの駆動力を第2の駆動輪に伝達する第2の駆動力伝達機構が第2の駆動輪への駆動力の伝達が不能となる第2のバックラッシュ区間を含む電動車両の制御方法である。この制御方法では、第2の駆動力伝達機構が第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第1の目標トルク指令値に所定の第1の補正トルクを加算し、第1の駆動力伝達機構が第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第2の目標トルク指令値に所定の第2の補正トルクを加算する。そして、第1の補正トルクを、第2の目標トルク指令値と、第2の駆動力伝達機構が第2の駆動モータから第2の駆動輪に駆動力を伝達するときの第2の駆動力伝達機構の伝達特性を有する第1の伝達フィルタと、に基づいて算出し、第2の補正トルクを、第1の目標トルク指令値と、第1の駆動力伝達機構が第1の駆動モータから第1の駆動輪に駆動力を伝達するときの第1の駆動力伝達機構の伝達特性を有する第2の伝達フィルタと、に基づいて算出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一つの駆動力伝達機構(駆動輪)に対してバックラッシュ区間を跨ぐような制駆動力が印加される場合に、当該バックラッシュ区間を跨ぐ際に不足する制駆動力を他の駆動力伝達機構(駆動輪)に補正トルクとして加算することができるので、ドライバが所望する加減速度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の電動車両の制御装置が適用される電動車両の第1のシステム構成を示す図である。
図2図2は、本実施形態の電動車両の制御装置が適用される電動車両の第2のシステム構成を示す図である。
図3図3は、車両コントローラによって行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、アクセル開度-トルクテーブルの一例を示す図である。
図5図5は、前後駆動力配分処理を説明するための図である。
図6図6は、電動車両の駆動力伝達機構をモデル化した図である。
図7図7は、本実施形態の電動車両の制御装置の制振制御演算処理部のブロック図である。
図8図8は、制振制御演算処理部を構成するフィードフォワード補償器のブロック図である。
図9図9は、制振制御演算処理部を構成する制駆動力補償器のブロック図である。
図10図10は、前後加速度(アクセル開度)が略一定の状態でフロントモータとリアモータの駆動力配分を変化させた場合であってフロント駆動軸トルクが力行状態を維持しつつ減少し、リア駆動軸トルクが制動状態から力行状態に切り替わるときにリアモータの駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過する場合のタイムチャートである。
図11図11は、前後加速度(アクセル開度)が略一定の状態でフロントモータとリアモータの駆動力配分を変化させた場合であってフロント駆動軸トルクが力行状態を維持しつつ増加し、リア駆動軸トルクが力行状態から制動状態に切り替わるときにリアモータの駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過する場合のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の電動車両100の制御装置が適用される電動車両100の第1のシステム構成を示す図である。電動車両100は、複数の駆動輪と、複数の駆動輪のそれぞれに駆動力を生じさせる複数の電動機と、を備える電動車両100である。本実施形態においては、電動車両100はいわゆる四輪駆動車両であって、第1のシステム構成では、駆動輪である前輪22及び後輪32と、これらの駆動輪のそれぞれに制駆動力を生じさせるフロントモータ21及びリアモータ31と、を備える。
【0011】
図1に示すように、電動車両100は、フロント駆動システム11、リア駆動システム12、バッテリ13、及び、車両コントローラ14を備える。
【0012】
フロント駆動システム11は、フロントモータ21によって、前輪22を駆動するシステムである。フロント駆動システム11は、フロントモータ21(第1の駆動モータ)及び前輪22(第1の駆動輪)の他に、フロントインバータ23、回転センサ24、電流センサ25、フロント減速機26(第1の駆動力伝達機構)、フロント駆動軸27(第1の駆動力伝達機構)等を備える。
【0013】
フロントモータ21は、例えば三相交流同期電動機であり、フロントインバータ23から入力される交流電力によって駆動される。フロントモータ21の出力トルクは、前輪22にトルク(駆動力)を生じさせる。また、フロントモータ21は、その駆動軸が前輪22によって連れ回されて回転するときに、いわゆる回生トルクを発生させる。これにより、フロントモータ21は、電動車両100の運動エネルギーを電気エネルギーとして回収することができる。
【0014】
前輪22は、電動車両100の前方に配置された1対の駆動輪である。前輪22は、フロント減速機26及びフロント駆動軸27を介してフロントモータ21に接続される。本実施形態では、前輪22は右前輪及び左前輪からなる。但し、右前輪及び左前輪はフロント駆動軸27によって連結され、一体になって駆動されるので、本実施形態(第1のシステム構成)では、右前輪及び左前輪を区別せず、これらをまとめて前輪22という。また、前輪22は、別の駆動輪である後輪32との対比において、第1の駆動輪である。
【0015】
フロントインバータ23は、フロントモータ21の相ごとに2対のスイッチング素子を備える。フロントインバータ23は、車両コントローラ14から入力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号に応じてこれらのスイッチング素子を開閉する。これにより、フロントインバータ23は、バッテリ13から供給される直流電力を交流電力に変換してフロントモータ21に入力し、フロントモータ21を駆動する。フロントインバータ23を構成するスイッチング素子は、例えば、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)や金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOS-FET)等のパワー半導体素子である。回生制御時には、フロントインバータ23は、フロントモータ21で生じる交流電力を直流電力に変換してバッテリ13に入力する。
【0016】
回転センサ24は、フロントモータ21の回転子位相(α)を検出する。回転子位相(α)はいわゆる電気角[rad]である。回転センサ24は、例えば、レゾルバやエンコーダである。検出された回転子位相(α)は、車両コントローラ14に入力される。
【0017】
電流センサ25は、フロントモータ21の各相に流れる電流(iuf,ivf,iwf)(以下、三相電流という)を検出する。フロントモータ21の三相電流(iuf,ivf,iwf)は、車両コントローラ14に入力される。
【0018】
フロント減速機26は、フロントモータ21の制駆動力を、フロント駆動軸27を介して前輪22に伝達する。その際、フロント減速機26は、フロントモータ21の回転数を所定のギヤ比(N)で減速させた回転数でフロント駆動軸27及び前輪22を回転させる。
【0019】
リア駆動システム12は、リアモータ31によって、後輪32を駆動するシステムであり、フロント駆動システム11と対称に構成される。したがって、リア駆動システム12は、リアモータ31(第2の駆動モータ)及び後輪32(第2の駆動輪)の他に、リアインバータ33、回転センサ34、電流センサ35、リア減速機36(第2の駆動力伝達機構)、リア駆動軸37(第2の駆動力伝達機構)等を備える。リア駆動システム12を構成するこれら各部は、フロント駆動システム11の各部と同様に機能する。すなわち、後輪32は、電動車両100の後方に配置された1対の駆動輪である。後輪32は、右後輪及び左後輪からなるが、本実施形態(第1のシステム構成)ではこれらを区別せず、右後輪及び左後輪をまとめて後輪32という。後輪32は、別の駆動輪である前輪22との対比において、第2の駆動輪である。回転センサ34が検出するリア駆動システム12の回転子位相は「α」である。電流センサ35が検出するリアモータ31の各相に流れる電流は「iur,ivr,iwr」である。
【0020】
バッテリ13は、フロント駆動システム11とリア駆動システム12に共通に設けられ、フロントモータ21とリアモータ31を駆動する電力を供給する。また、回生制御時には、バッテリ13は、フロントモータ21及びリアモータ31で生じた回生電力によって充電される。
【0021】
車両コントローラ14は、電動車両100の制御装置である。車両コントローラ14は、例えば、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等を含む1又は複数のコンピュータによって構成される。また、車両コントローラ14は、予め定める所定の制御周期で、フロントモータ21及びリアモータ31等を制御するようにプログラムされている。例えば、車両コントローラ14は、各種の車両変数(車両情報)を取得し、これらの車両変数に基づいて、フロントモータ21及びリアモータ31を駆動するためのPWM信号をそれぞれ生成する。そして、車両コントローラ14は、生成したPWM信号をそれぞれフロントインバータ23及びリアインバータ33に入力することにより、車両変数に応じてフロントモータ21及びリアモータ31を駆動させる。
【0022】
車両変数とは、電動車両100の制御状態等を表すパラメータである。車両コントローラ14は、車両変数として、例えば、フロントモータ21の回転子位相(α)及び三相電流(iuf,ivf,iwf)、リアモータ31の回転子位相(α)及び三相電流(iur,ivr,iwr)を取得する。この他、車両コントローラ14は、例えば、アクセル開度(A、)、及び、バッテリ13の直流電圧(Vdc)等を車両変数として取得する。アクセル開度(Apo)は、ドライバによるアクセルペダルの操作量を表すパラメータである。アクセル開度(Apo)、及び、バッテリ13の直流電圧(Vdc)等の車両変数は、例えば図示しないセンサ等を用いて、必要に応じて適宜検出され得る。なお、本実施形態の車両コントローラ14は、センサ等から直接に車両変数を取得するが、車両コントローラ14は、図示しない他のコントローラ(コンピュータ)から、一部又は全部の車両変数を取得することができる。
【0023】
図3は、車両コントローラ14によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。図3に示すように、車両コントローラ14は、入力処理S301、基本目標トルク演算処理S302、制振制御演算処理S303、電流指令値演算処理S304、及び、電流制御演算処理S305等を実行する。すなわち、車両コントローラ14は、入力処理S301を実行する入力処理部、基本目標トルク演算処理S302を実行する基本目標トルク演算処理部、制振制御演算処理S303を実行する制振制御演算処理部、電流指令値演算処理S304を実行する電流指令値演算処理部、及び電流制御演算処理S305を実行する電流制御演算処理部として機能するようにプログラムされている。
【0024】
入力処理S301は、フロントモータ21及びリアモータ31の制御に必要な車両変数等を取得し、又は、演算する処理である。
【0025】
具体的には、車両コントローラ14は、入力処理S301において、フロントモータ21の三相電流(iuf,ivf,iwf)、及び、リアモータ31の三相電流(iur,ivr,iwr)を取得する。フロントモータ21の三相電流(iuf,ivf,iwf)の合計はゼロになるので、車両コントローラ14は、例えば、これらのうち二相分の電流を取得し、残り一相分の電流は演算により求めることができる。これはリアモータ31の三相電流(iur,ivr,iwr)についても同様である。
【0026】
この他、車両コントローラ14は、入力処理S301において、フロントモータ21の回転子位相(α)、リアモータ31の回転子位相(α)、及び、バッテリ13の直流電圧(Vdc)を取得する。
【0027】
また、車両コントローラ14は、入力処理S301において、例えば、フロントモータ21の回転角速度(ωmf)[rad/s]、及び、リアモータ31の回転角速度(ωmr)[rad/s]を演算する。フロントモータ21の回転角速度(ωmf)は機械角速度であり、回転子位相(α)を微分し、フロントモータ21の極対数で割ることによって演算される。同様に、リアモータ31の回転角速度(ωmr)は機械角速度であり、回転子位相(α)を微分し、リアモータ31の極対数で割ることによって演算される。
【0028】
なお、本実施形態では、電動車両100が備える電動機の回転速度を表すパラメータとして、フロントモータ21の回転角速度(ωmf)とリアモータ31の回転角速度(ωmr)が用いられる。但し、例えば、フロントモータ21の回転速度(Nmf)[rpm]、及び、リアモータ31の回転速度(Nmr)[rpm]が、電動機の回転速度を表すパラメータとして用いられてもよい。フロントモータ21の回転速度(Nmf)及びリアモータ31の回転速度(Nmr)は、フロントモータ21の回転角速度(ωmf)及びリアモータ31の回転角速度(ωmr)にそれぞれ単位変換係数(60/2π)を乗算することで演算可能である。
【0029】
基本目標トルク演算処理S302は、ドライバの操作に応じて、フロントモータ21及びリアモータ31が全体として出力すべきトルクについての指令値(以下、基本目標トルク指令値(Tm1 )という)を演算する処理である。本実施形態では、車両コントローラ14は、アクセル開度(Apo)と、フロントモータ21の回転角速度(ωmf)と、に基づいて、基本目標トルク指令値(Tm1 )を演算する。
【0030】
図4は、アクセル開度-トルクテーブルの例を示すグラフである。図4に示すように、車両コントローラ14は、例えば、アクセル開度(Apo)及び回転角速度(ωmf)と、基本目標トルク指令値(Tm1 )と、を実験又はシミュレーション等に基づいて対応付けたアクセル開度-トルクテーブルを予め保有する。したがって、車両コントローラ14は、このアクセル開度-トルクテーブルを参照することにより、アクセル開度(Apo)及び回転角速度(ωmf)に対応する基本目標トルク指令値(Tm1 )を演算する。
【0031】
図5は、前後駆動力配分処理を説明するための図である。本実施形態では、基本目標トルク指令値(Tm1 )が、第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )と第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )に配分される。第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )は、フロントモータ21が出力すべきトルクの目標を表す指令値である。第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )は、リアモータ31が出力すべきトルクの目標を表す指令値である。第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )及び第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )への基本目標トルク指令値(Tm1 )の配分比(K)は、例えば前輪22の輪荷重と後輪32との輪荷重の差異に基づいて設定される。前輪22の輪荷重と後輪32との輪荷重の差異は、例えば第1のシステム構成では電動車両100が走行する道路の傾斜に基づいて算出し、後述の第2のシステム構成(図2)では電動車両100の車速と操舵角により算出する。
【0032】
制振制御演算処理S303は、駆動力伝達機構(第1の駆動力伝達機構、第2の駆動力伝達機構)において生じる振動を低減する処理である。制振制御演算処理S303では、車両コントローラ14は、第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )に基づいて、フロントモータ21への最終的なトルク指令値(以下、フロント最終トルク指令値(Tmff )という)を演算する。フロント最終トルク指令値(Tmff )は、フロント駆動軸27のねじり振動等を低減しつつ、要求されたトルクをフロントモータ21によって出力させる。同様に、制振制御演算処理S303では、車両コントローラ14は、第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )に基づいて、リアモータ31への最終的なトルク指令値(以下、リア最終トルク指令値(Tmrf )という)を演算する。リア最終トルク指令値(Tmrf )は、リア駆動軸37のねじり振動等を低減しつつ、要求されたトルクを、リアモータ31によって出力させる。制振制御演算処理S303についての詳細は後述する。
【0033】
電流指令値演算処理S304は、フロントモータ21及びリアモータ31に入力する電流の指令値(以下、電流指令値という)を演算する処理である。車両コントローラ14は、いわゆるdq軸座標系における電流指令値を演算する。具体的には、車両コントローラ14は、フロント最終トルク指令値(Tmff )、フロントモータ21の回転角速度(ωmf)、及びバッテリ13の直流電圧(Vdc)に基づいて、フロントモータ21のdq軸電流指令値(idf ,iqf )を演算する。同様に、車両コントローラ14は、リア最終トルク指令値(Tmrf )、リアモータ31の回転角速度(ωmr)、及び、バッテリ13の直流電圧(Vdc)に基づいて、リアモータ31のdq軸電流指令値(idr ,iqr )を演算する。
【0034】
なお、車両コントローラ14は、フロント最終トルク指令値(Tmff )、フロントモータ21の回転角速度(ωmf)、及び、バッテリ13の直流電圧(Vdc)と、フロントモータ21のdq軸電流指令値(idf ,iqf )と、を実験又はシミュレーション等によって対応付けたテーブルを予め保有する。同様に、車両コントローラ14は、リア最終トルク指令値(Tmrf )、リアモータ31の回転角速度(ωmr)、及び、バッテリ13の直流電圧(Vdc)と、リアモータ31のdq軸電流指令値(idr ,iqr )と、を実験又はシミュレーション等によって対応付けたテーブルを予め保有する。このため、車両コントローラ14は、これらテーブルを参照することにより、フロントモータ21のdq軸電流指令値(idf ,iqf )、及び、リアモータ31のdq軸電流指令値(idr ,iqr )を演算する。
【0035】
電流制御演算処理S305は、フロントモータ21及びリアモータ31を駆動するPWM信号をそれぞれ演算する処理である。車両コントローラ14は、フロントモータ21を駆動するPWM信号を次のように演算する。まず、車両コントローラ14は、三相電流(iuf,ivf,iwf)及び回転子位相(α)に基づいて、dq軸電流(idf,iqf)を演算する。次に、車両コントローラ14は、dq軸電流指令値(idf ,iqf )とdq軸電流(idf,iqf)の偏差に基づいて、dq軸電圧指令値(vdf,vqf)を演算する。このとき、車両コントローラ14は、いわゆる非干渉制御を付加する場合がある。また、車両コントローラ14は、dq軸電圧指令値(vdf,vqf)と回転子位相(α)に基づいて、三相電圧指令値(vuf,vvf,vwf)を演算する。そして、車両コントローラ14は、三相電圧指令値(vuf,vvf,vwf)と、バッテリ13の直流電圧(Vdc)に基づいて、PWM信号を演算する。このようにして演算されたPWM信号によってフロントインバータ23のスイッチング素子を開閉することにより、要求されたトルクを出力するようにフロントモータ21が駆動される。ここではフロントモータ21を駆動するPWM信号の演算について説明したが、リアモータ31を駆動するPWM信号の演算についてもこれと同様である。
【0036】
図2は、本実施形態の電動車両100の制御装置が適用される車両の第2のシステム構成を示す図である。第2のシステム構成では、駆動輪はいずれも電動車両100の後輪32であり、左後輪32L、右後輪32Rを備え、左後輪32Lに駆動力を生じさせる左リアモータ31L(第1の駆動モータ)と、右後輪32Rに駆動力を生じさせる右リアモータ31R(第2の駆動モータ)と、を備える。
【0037】
左リアモータ31Lは、左リア減速機36L(第1の駆動力伝達機構)及び左リア駆動軸37L(第1の駆動力伝達機構)を介して制駆動力を左後輪32Lに伝達する。
【0038】
右リアモータ31Rは、右リア減速機36R(第2の駆動力伝達機構)及び右リア駆動軸37R(第2の駆動力伝達機構)を介して制駆動力を右後輪32Rに伝達する。
【0039】
回転センサ34Lは、左リアモータ31Lの回転子位相(αrL)を検出して車両コントローラ14に出力する。
【0040】
回転センサ34Rは、右リアモータ31Rの回転子位相(αrR)を検出して車両コントローラ14に出力する。
【0041】
電流センサ35は、左リアモータ31Lに流れる三相電流(iurL,ivrL,iwrL)、及び右リアモータ31Rに流れる三相電流(iurR,ivrR,iwrR)を検出して車両コントローラ14に出力する。
【0042】
車両コントローラ14は、前記同様に複数の3車両変数に基づいて、左リアインバータ33Lを介して左リアモータ31Lを駆動制御し、右リアインバータ33Rを介して右リアモータ31Rを駆動制御する。上記の第2のシステム構成のように、左右別々のモータを備えた2WD車両に対しても本願発明を適用できる。
【0043】
[駆動力伝達機構のモデル]
図6は、電動車両100の駆動力伝達機構をモデル化した図である。図6は、第1のシステム構成における電動車両100の1軸分の駆動力伝達機構をモデル化したものである。車両の運動方程式は、以下に示す(1)~(6)式により表される。
【0044】
【数1】
【0045】
【数2】
【0046】
【数3】
【0047】
【数4】
【0048】
【数5】
【0049】
【数6】
【0050】
ここで、各パラメータは下記の通りである。
【0051】
:モータイナーシャ
:駆動軸イナーシャ(1軸分)
M:車両の質量
:駆動軸の捻れ剛性
:タイヤと路面の摩擦に関する係数
N:オーバーオールギヤ比
r:タイヤ荷重半径
ω:モータ角速度
θ:モータ回転角度
ω:駆動輪角速度
θ:駆動輪回転角度
:モータトルク
:駆動軸トルク
F:駆動力(1軸分)
V:車体速度
θ:駆動軸の捻れ角
【0052】
(1)~(6)式をラプラス変換してモータトルク(T)からモータ回転角速度(ω)まで伝達特性を求めると以下に示す(7)-(8)式となる。
【0053】
【数7】
【0054】
【数8】
【0055】
ただし、各パラメータは以下に示す(9)式の通りである。
【数9】
【0056】
また、モータトルク(T)から駆動軸トルク(T)までの伝達特性は以下に示す(10)式となる。
【数10】
【0057】
(1),(3),(4),(5)式よりモータ回転角速度(ω)から駆動輪回転角速度(ω)までの伝達特性を求めると以下に示す(11)式となる。
【数11】
【0058】
(7),(8),(11)式より、モータトルク(T)から駆動輪回転角速度(ω)までの伝達特性は以下に示す(12)式となる。
【数12】
【0059】
(10),(12)式より駆動軸トルク(T)から駆動輪回転角速度(ω)までの伝達特性は以下に示す(13)式となる。
【数13】
【0060】
(13)式を変形すると以下に示す(14)式となる。
【数14】
【0061】
よって、(13),(14)式より駆動軸ねじり角速度(ω)は次式で表せる。
【数15】
【0062】
ただし、(15)式のH(s)は以下のようになる。
【数16】

である。
【0063】
また(15)式は、
【数17】

と変形できる。ここで、「ζ」は駆動軸トルク伝達系の減衰係数、「ω」は駆動軸トルク伝達系の固有振動周波数である。
【0064】
さらに、(17)式の極と零点を調べると、「α≒c/c」となるため極零相殺すると以下に示す(18)式となる。
【数18】
【0065】
最終トルク指令値(Tmf )を
【数19】

とすると、以下に示す(20)式のように書き換えることができる。
【数20】
【0066】
「T=Tmf 」として(20)式を(18)式に代入すると、以下に示す(21)式のように整理することができる。
【数21】
【0067】
モータトルクから駆動軸トルクまでの規範応答を以下に示す(22)式とする場合、
【数22】

(21)式と(22)式が一致する条件は以下に示す(23)式となる。
【数23】
【0068】
次に、(1)~(16)式を適用し、モータから駆動軸までのバックラッシュ特性は不感帯でモデル化する。
【0069】
駆動軸トルク(T)は以下に示す(24)式で表される。
【数24】
【0070】
ここで「θdead」はモータから駆動軸までのオーバーオールのバックラッシュ量である。
【0071】
[制振制御演算処理]
図7は、本実施形態の電動車両100の制御装置の制振制御演算処理部のブロック図である。
【0072】
図7に示すように、車両コントローラ14(制振制御演算処理部)は、制駆動力補償器91、フィードフォワード補償器92、フィードバック補償器(減算器93f、フィルタ94f、加算器95f、減算器93r、フィルタ94r、加算器95r)を含む。
【0073】
制駆動力補償器91は、第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )及び第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )を入力とし、さらに後述のフロント駆動軸トルク推定値(Tdf)及びリア駆動軸トルク推定値(Tdr)を入力し、第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )及び第2リア目標トルク指令値(Tmr2 )を生成してフィードフォワード補償器92に出力する。制駆動力補償器91の詳細については後述する。
【0074】
フィードフォワード補償器92は、第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )及び第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 )を入力とし、第3のフロント目標トルク指令値(Tmf3 )、フロント駆動軸トルク推定値(Tdf)、フロントモータ回転角速度推定値(ωmf^)、第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 )、リア駆動軸トルク推定値(Tdr)、リアモータ回転角速度推定値(ωmr^)を出力する。フィードフォワード補償器92の詳細については後述する。
【0075】
図8は、制振制御演算処理部を構成するフィードフォワード補償器92のブロック図である。フィードフォワード補償器92は、車両パラメータ((1)~(23)式)と、フロントモータ21側の駆動力伝達機構(ギヤ)のバックラッシュを模擬した不感帯モデル923(後述の(26)式)と、リアモータ31側の駆動力伝達機構(ギヤ)のバックラッシュを模擬した不感帯モデル924(後述の(27)式)と、を含む車両モデルであり、前後駆動輪にてそれぞれ独立したモータを有した4WDの車両モデルである。
【0076】
フィードフォワード補償器92は、第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )及び第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 )に対してフィードフォワード補償処理を行い、ねじり振動を低減した第3のフロント目標トルク指令値(Tmr3 )及び第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 )を算出する。また、フィードフォワード補償器92は、第3のフロント目標トルク指令値(Tmr3 )及び第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 )を算出する工程を利用して、フロントモータ回転角速度推定値(ωmf^)、フロント駆動軸トルク推定値(Tdf)、リアモータ回転角速度推定値(ωmr^)、リア駆動軸トルク推定値(Tdr)を算出する。車両モデルは、フロントねじり振動補償部921とリアねじり振動補償部922を含む。
【0077】
フロントねじり振動補償部921は、第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )に対して、フロント駆動システム11におけるフロント駆動軸27のねじり振動を補償する。フロントねじり振動補償部921は、フロント駆動軸27の推定ねじり角速度(φ^)に、ゲイン(k)を乗算することにより、ねじり振動補償値を演算する。そして、フロントねじり振動補償部921は、ねじり振動補償値(k・φ^)を第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )から減算することにより、第3のフロント目標トルク指令値(Tmf3 )を演算する。
【0078】
リアねじり振動補償部922は、第2のリア目標トルク指令値(Tmf2 )に対して、リア駆動システム12におけるリア駆動軸37のねじり振動を補償する。リアねじり振動補償部922は、リア駆動軸37の推定ねじり角速度(φ^)に、ゲイン(k)を乗算することにより、ねじり振動補償値を演算する。そして、リアねじり振動補償部922は、ねじり振動補償値(k・φ^)を第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 )から減算することにより、第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 )を演算する。
【0079】
ここで、フロントモータ21のゲイン(k)は前記の1軸分の特性により(23)式を適用する。また、リアモータ31のゲイン(k)もフロントモータ21と同様に以下に示す(25)式となる。
【数25】
【0080】
なお、「grr」はフロントモータ21と同様に(1)~(6)式により算出される。
【0081】
不感帯モデル923は、フロント駆動システム11で使用するギヤのバックラッシュ特性を模擬したモデルである。不感帯モデル923は、(24)式に倣って下記の(26)式で表される。同様に、不感帯モデル924は、リア駆動システム12で使用するギヤのバックラッシュ特性を模擬したモデルである。不感帯モデル924は、(24)式に倣って下記の(27)式で表される。なお、「θdf」及び「θdr」はねじり角であり、「θdeadf」及び「θdeadr」は不感領域の角度(バックラッシュ特性)である。
【数26】

【数27】
【0082】
図7に戻り説明を続ける。減算器93fはフロントモータ回転角速度(ωmf)とフロントモータ回転角速度推定値(ωmf^)の差分を算出してフィルタ94fに出力する。
【0083】
フィルタ94fは、後述のフィルタ(H(s))と(18)式に基づく車両モデルの逆モデル(1/Gpf(s))との積により構成されたフィルタであり、前記の差分(ωmf^-ωmf)を入力値とし、その出力((H(s)/Gpf(s))(ωmf^-ωmf))を加算器95fに出力する。
【0084】
加算器95fは、第3のフロント目標トルク指令値(Tmf3 )とフィルタ94fの出力((H(s)/Gpf(s))(ωmf^-ωmf))とを加算してフロント最終トルク指令値(Tmff )を生成する。
【0085】
減算器93rはリアモータ回転角速度(ωmr)とリアモータ回転角速度推定値(ωmr^)の差分を算出してフィルタ94rに出力する。
【0086】
フィルタ94rは、後述のフィルタ(H(s))と(18)式に基づく車両モデルの逆モデル(1/Gpr(s))との積により構成されたフィルタであり、前記差分(ωmr^-ωmr)を入力値とし、その出力((H(s)/Gpr(s))(ωmr^-ωmr))を加算器95rに出力する。
【0087】
加算器95rは、第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 )とフィルタ94rの出力((H(s)/Gpr(s))(ωmr^-ωmr))とを加算してフロント最終トルク指令値(Tmrf )を生成する。
【0088】
ここで、フィルタ(H(s))及びフィルタ(H(s))は、ローパス側、及びハイパス側の減衰特性が概略一致し、かつ、駆動系のねじり共振周波数が、対数軸(logスケール)上で、通過帯域の中央部近傍となるように設定されたバンドパスフィルタとなっている。そして、例えばフィルタ(H(s))及びフィルタ(H(s))を1次のハイパスフィルタと1次のローパスフィルタで構成する場合、周波数(fpf)をフロントモータ21の駆動力伝達機構のねじり共振周波数と、周波数(fpr)をリアモータ31の駆動慮伝達系のねじり共振周波数とし、「k」 及び「k」を任意の値として以下に示す(28)、(29)式のように構成する。
【数28】
【0089】
ただし、「τLf=1/(2πfHCf)、fHCf=k・fpf、τHf=1/(2πfLCf)、fLCf=fpf/k」である。
【数29】
【0090】
ただし、「τLr=1/(2πfHCr)、fHCr=k・fpr、τHr=1/(2πfLCr)、fLCr=fpr/k」である。
【0091】
図9は、制振制御演算処理部を構成する制駆動力補償器91のブロック図である。図9に示すように制駆動力補償器91は、フィルタ911f(第2の伝達フィルタ)、比例要素912f、減算器913f、フィルタ914f(第2の位相進みフィルタ)、加算器915f、フィルタ911r(第1の伝達フィルタ)、比例要素912r、減算器913r、フィルタ914r(第1の位相進みフィルタ)、加算器915rを含む。
【0092】
フィルタ911fは、以下の(30)式に示す規範応答フィルタ(Grf(s))(バックラッシュを含まない)を有し、フィルタ914rも以下の(30)式に示す位相進みフィルタ(Hpr(s))を有する。
【数30】
【0093】
なお、「ωpf」及び「ωpr」は、(17)式にフロントモータ21の駆動力伝達機構のパラメータ、リアモータ31の駆動力伝達機構のパラメータをそれぞれ代入して求めるものとする。また(30)式は位相進み補償器の特性を持たせるため「KBL」は1よりも大きい値に設定する。
【0094】
フィルタ911fは第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )が入力されるとフロントモータ21のトルク入力に対するフロント駆動軸27の規範応答(Grf(s))を乗じて、これを減算器913fに出力する。
【0095】
比例要素912fは、フロント駆動軸トルク推定値(Tdf)が入力されるとこれにフロントモータ21の駆動力伝達機構のギヤ比の逆数となる数値(1/N)を乗じて、これを減算器913fに出力する。
【0096】
減算器913fは、フィルタ911fの出力から比例要素912fの出力を差し引いて得られる差分をフィルタ914fに出力する。なお、前記の差分はフロントモータ21の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過していないときはゼロであるが、バックラッシュ区間を通過しているときはゼロ以外の値となる。
【0097】
フィルタ914fは、減算器913fから前記の差分が入力されるとこれに「Hpf(s)」を乗じて、これを第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])として加算器915rに出力する。
【0098】
フィルタ911rは、以下の(31)式に示す規範応答フィルタ(Grr(s))(バックラッシュを含まない)を有し、フィルタ914rも以下の(31)式に示す位相進みフィルタ(Hpr(s))を有する。
【数31】
【0099】
フィルタ911rは第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )が入力されるとリアモータ31のトルク入力に対するリア駆動軸37の規範応答(Grr(s))を乗じて、これを減算器913fに出力する。
【0100】
比例要素912rは、リア駆動軸トルク推定値(Tdr)が入力されるとこれにリアモータ31の駆動力伝達機構のギヤ比の逆数となる数値(1/N)を乗じて、これを減算器913rに出力する。
【0101】
減算器913rは、フィルタ911rの出力から比例要素912rの出力を差し引いて得られる差分をフィルタ914rに出力する。なお、前記の差分はリアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過していないときはゼロであるが、バックラッシュ区間を通過しているときはゼロ以外の値となる。
【0102】
フィルタ914rは、減算器913rから前記の差分が入力されるとこれに「Hpr(s)」を乗じて、これを第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])として加算器915fに出力する。
【0103】
加算器915fは、第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )にフィルタ914rの出力を加算して第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )を出力する。
【0104】
加算器915rは、第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )にフィルタ914fの出力を加算して第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 )を出力する。
【0105】
よって、リアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間にない場合、第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )は第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )と同じ値となる。一方、リアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過しているとき、第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )は第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )に第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])が加算された値となる。
【0106】
同様に、フロントモータ21の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間にない場合、第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 )は第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )と同じ値となる。一方、フロントモータ21の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過しているとき、第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 )は第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )に第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])が加算された値となる。
【0107】
[タイムチャート]
図10は、前後加速度(アクセル開度)が略一定の状態でフロントモータ21とリアモータ31の駆動力配分を変化させた場合であってフロント駆動軸トルクが力行状態を維持しつつ減少し、リア駆動軸トルクが制動状態から力行状態に切り替わるときにリアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過する場合のタイムチャートである。図11は、前後加速度(アクセル開度)が略一定の状態でフロントモータ21とリアモータ31の駆動力配分を変化させた場合であってフロント駆動軸トルクが力行状態を維持しつつ増加し、リア駆動軸トルクが力行状態から制動状態に切り替わるときにリアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過する場合のタイムチャートである。
【0108】
図10図11において、破線で示す曲線は、本実施形態の制駆動力補償器91(図7)がない場合であって、第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )も同様)がフィードフォワード補償器92(図7)に直接入力される場合となっている。
【0109】
一方、図10図11において、実線で示す曲線は、第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 )(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 )も同様)が本実施形態の制駆動力補償器91(図7)に入力され、その出力である第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 )(第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 )も同様)がフィードフォワード補償器92(図7)に入力される場合となっている。
【0110】
なお、図10図11は、第1のシステム構成(図1)において、電動車両100が走行する道路の傾斜が変化することでフロントモータ21とリアモータ31のトルク配分が時刻t2から時刻t4の間で変化する場合を表している。また、図10図11は、第2のシステム構成(図2)において、電動車両100に対して操舵が行われることでフロントモータ21とリアモータ31のトルク配分が時刻t2から時刻t4の間で変化する場合を表している。
【0111】
図10において、リア最終トルク指令値(Tmrf )及びリア駆動軸トルクは回生状態から力行状態に移行するように単調に増加している。しかし、時刻t2から時刻t3の間においてリアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過している。これに対応して、リア最終トルク指令値(Tmfrf )及びリア駆動軸トルクは時刻t2から時刻t3の間においてゼロとなっている。一方、フロント最終トルク指令値(Tmff )及びフロント駆動軸トルクは力行状態を維持しているが、破線の曲線で示すように前記のバックラッシュ区間に関わらず単調に減少している。
【0112】
したがって、ドライバが前後加速度(アクセル開度)を略一定となるように制御しているにも関わらず、破線の曲線で示すように時刻t2以降において前後加速度が減少し時刻t3以降となる時刻t4まで元の前後加速度とはならず、ドライバの意図した加速(アクセル操作、ブレーキ操作)を得ることはできず、ドライバに不快感を与えることになる。
【0113】
一方、図10の実線で示すフロント最終トルク指令値(Tmff )には、時刻t2から時刻t3におけるリアモータ31のバックラッシュ区間に対応して第1の補正トルク(図9)が加算されている。これにより、時刻t2から時刻t3にかけてフロント駆動軸トルク(実線)が略一定となるように制御され、前後加速度(実線)の変動が低減されており、ドライバが所望する前後加速度を実現できることがわかる。
【0114】
なお、フロント最終トルク指令値(Tmff )の時刻t2の直前の上に凸となるピーク(図11では下に凸となるピーク)は、リアモータ31の駆動力伝達機構のバックラッシュ区間を通過する時間を短くするためのトルク成分であり、時刻t3の直前の下に凸となるピーク(図11では上に凸となるピーク)は前記バックラッシュ区間を通過してギヤが再結合する際の衝撃を低減するためのトルク成分である。
【0115】
また、図10図11も同様)の時刻t3以降において、フロント最終トルク指令値(Tmff )(実線)及びフロント駆動軸トルク(実線)は、前後加速度を略一定とするためリア駆動軸トルクの変化に合わせて変化させている。
【0116】
図10では、リアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間に入る場合について説明している。しかし、フロントモータ21の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間に入る場合は前記と同様にリア最終トルク指令値(Tmrf )に第2の補正トルク(図98)が加算され、前後加速度の変動を低減できる。
【0117】
図11において、リア最終トルク指令値(Tmrf )及びリア駆動軸トルクは力行状態から回生状態に移行するように単調に減少している。しかし、時刻t2から時刻t3の間においてリアモータ31の駆動力伝達機構がバックラッシュ区間を通過している。これに対応して、リア最終トルク指令値(Tmfrf )及びリア駆動軸トルクは時刻t2から時刻t3の間においてゼロとなっている。一方、フロント最終トルク指令値(Tmff )及びフロント駆動軸トルクは力行状態を維持しているが、破線の曲線で示すように前記のバックラッシュ区間に関わらず単調に増加している。
【0118】
したがって、ドライバが前後加速度(アクセル開度)を略一定となるように制御しているにも関わらず、破線の曲線で示すように時刻t2以降において前後加速度が増加し時刻t3以降となる時刻t4まで元の前後加速度とはならず、ドライバの意図した加速(アクセル操作、ブレーキ操作)を得ることはできず、ドライバに不快感を与えることになる。
【0119】
しかし、前記と同様に図11の実線で示すフロント最終トルク指令値(Tmff )には、時刻t2から時刻t3におけるリアモータ31のバックラッシュ区間に対応して第1の補正トルク(図9)が加算されている。したがって、前記と同様に前後加速度(実線)の変動を低減でき、ドライバが所望する前後加速度を実現できることがわかる。
【0120】
[本実施形態の効果]
本実施形態の電動車両100の制御方法によれば、車両情報(各種の車両変数)に基づいて第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))及び第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))を生成し、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))に基づいて第1の駆動輪(前輪22)を駆動する第1の駆動モータ(フロントモータ21)を駆動し、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))に基づいて第1の駆動輪(前輪22)とは異なる第2の駆動輪(後輪32)を駆動する第2の駆動モータ(リアモータ31)を駆動し、第1の駆動モータ(フロントモータ21)の駆動力を第1の駆動輪(前輪22)に伝達する第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1の駆動輪(フロントモータ21)への駆動力の伝達が不能となる第1のバックラッシュ区間を含み、第2の駆動モータ(リアモータ31)の駆動力を第2の駆動輪(後輪32)に伝達する第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2の駆動輪(リアモータ31)への駆動力の伝達が不能となる第2のバックラッシュ区間を含む電動車両100の制御方法であって、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))に所定の第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を加算し、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))に所定の第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を加算し、第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))と、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2の駆動モータ(リアモータ31)から第2の駆動輪(後輪32)に駆動力を伝達するときの第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の伝達特性を有する第1の伝達フィルタ(フィルタ911r)と、に基づいて算出し、第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))と、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1の駆動モータ(フロントモータ21)から第1の駆動輪(前輪22)に駆動力を伝達するときの第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の伝達特性を有する第2の伝達フィルタ(フィルタ911f)と、に基づいて算出する。
【0121】
上記方法により、一つの駆動力伝達機構(駆動輪)に対してバックラッシュ区間を跨ぐような制駆動力が印加される場合に、当該バックラッシュ区間を跨ぐ際に不足する制駆動力を他の駆動力伝達機構(駆動輪)に補正トルクとして加算することができるので、ドライバが所望する加減速度を得ることができる。
【0122】
本実施形態において、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の伝達特性と第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の伝達特性を表すとともに第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の駆動軸ねじり振動(kφ^)と第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の駆動軸ねじり振動(kφ^)を低減する規範応答を形成する車両モデル(図8)に第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))を入力して得られる出力(第3のフロント目標トルク指令値(Tmf3 ))に基づいて第1の駆動モータ(フロントモータ21)を駆動し、車両モデル(図8)に第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))を入力して得られる出力(第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 ))に基づいて第2の駆動モータ(リアモータ31)を駆動する場合において、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))に第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を加算した値(第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 ))を車両モデル(図8)に入力して得られる出力(第3のフロント目標トルク指令値(Tmf3 ))に基づいて第1の駆動モータ(フロントモータ21)を駆動し、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))に第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を加算した値を車両モデル(図8)に入力して得られる出力(第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 ))に基づいて第2の駆動モータ(リアモータ31)を駆動する。
【0123】
上記方法により、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))に第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])が加算されても第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の駆動軸ねじり振動を低減し、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))に第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])が加算されても第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の駆動軸ねじり振動を低減することができる。
【0124】
本実施形態において、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の伝達特性に第1のバックラッシュ区間を模した第1の不感帯要素(不感帯モデル923)が掛け合わされた伝達特性と、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の伝達特性に第2のバックラッシュ区間を模した第2の不感帯要素(不感帯モデル924)が掛け合わされた伝達特性と、を有する車両モデル(図8)において、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))を入力したときの第1の不感帯要素(不感帯モデル923)の出力として生成される第1の駆動軸トルク推定値(フロント駆動軸トルク推定値(Tdf))に基づいて、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間を通過しているか否かを推定し、車両モデル(図8)において、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))が入力されたときの第2の不感帯要素(不感帯モデル924)の出力として生成される第2の駆動軸トルク推定値(リア駆動軸推定値Tdr)に基づいて、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が前記第2のバックラッシュ区間を通過しているか否かを推定する。
【0125】
上記方法により、第1の駆動軸トルク推定値(フロント駆動軸トルク推定値(Tdf))がゼロの場合に第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間を通過していると推定でき、ゼロ以外の場合に第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間になくギヤが結合している推定できる。同様に、第2の駆動軸トルク推定値(リア駆動軸推定値Tdr)がゼロの場合に第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が前記第2のバックラッシュ区間を通過していると推定でき、ゼロ以外の場合に第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が前記第2のバックラッシュ区間になくギヤが結合していと推定できる。したがって、簡易な手法で第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間を通過しているか否かを推定し、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が前記第2のバックラッシュ区間を通過しているか否かを遅れなく推定できる。さらに、第1の駆動軸トルク推定値(フロント駆動軸トルク推定値(Tdf))及び第2の駆動軸トルク推定値(リア駆動軸推定値Tdr)を簡易且つ遅れなく推定できる。
【0126】
本実施形態において、第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))を第1の伝達フィルタ(フィルタ911r)に入力して得られる第1の規範駆動軸トルク(Grr(s)Tmr1 )から第2の駆動軸トルク推定値(リア駆動軸トルク推定値(Tdr)/N)を差し引いて得られる第1の差分(Grr(s)Tmr1 -Tdr/N)に基づいて算出し、第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))を第2の伝達フィルタ(フィルタ911f)に入力して得られる第2の規範駆動軸トルク(Grf(s)Tmf1 )から第1の駆動軸トルク推定値(フロント駆動軸トルク推定値(Tdr)/N)を差し引いて得られる第2の差分(Grf(s)Tmf1 -Tdf/N)に基づいて算出する。
【0127】
上記方法により、電動車両100の規範駆動軸トルクに対する不足トルク(バックラッシュにより発生する不足トルク)を高精度に算出することができる。
【0128】
本実施形態において、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の伝達特性に第1のバックラッシュ区間を模した第1の不感帯要素(不感帯モデル923)が掛け合わされた伝達特性と、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の伝達特性に第2のバックラッシュ区間を模した第2の不感帯要素(不感帯モデル924)が掛け合わされた伝達特性と、を有するとともに、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の駆動軸ねじり振動(kφ^)と第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の駆動軸ねじり振動(kφ^)を低減する規範応答を形成する車両モデル(図8)において、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))に第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を加算した値(第2のフロント目標トルク指令値(Tmf2 ))を車両モデル(図8)に入力して得られる出力(第3のフロント目標トルク指令値(Tmf3 ))に基づいて第1の駆動モータ(フロントモータ21)を駆動し、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))に第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を加算した値(第2のリア目標トルク指令値(Tmr2 ))を車両モデル(図8)に入力して得られる出力(第3のリア目標トルク指令値(Tmr3 ))に基づいて第2の駆動モータ(リアモータ31)を駆動し、第1の伝達フィルタ(フィルタ911r)を、車両モデル(図8)において第2の不感帯要素(不感帯モデル924)を取り除いたモデルとして設定し、第2の伝達フィルタ(フィルタ911f)を、車両モデル(図8)において第1の不感帯要素(不感帯モデル923)を取り除いたモデルとして設定する。
【0129】
上記方法により、第1の伝達フィルタ及び第2の伝達フィルタを、バックラッシュ区間を含まない伝達特性とすることができるので、バックラッシュが発生していない場合において規範駆動軸トルク(Grf(s)Tmf1 、Grr(s)Tmr1 )と実トルク推定値(Tdf/N、Tdr/N)との差分がゼロとなる。よって、余分な補正トルクを低減し、バックラッシュ区間でのトルク不足分を補正トルクとして算出することができる。
【0130】
本実施形態において、第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を第1の位相進み補償フィルタ(フィルタ914r)によりフィルタリングして第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1*))に加算し、第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を第2の位相進み補償フィルタ(フィルタ914f)によりフィルタリングして第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))に加算する場合において、第1の位相進み補償フィルタ(914r)を第1の伝達フィルタ(フィルタ911r)の逆関数であって第1の伝達フィルタ(フィルタ911r)の時定数(1/ωpr)よりも小さな時定数(1/ωrr)を有する関数として設定し((31)式)、第2の位相進み補償フィルタ(914f)を第2の伝達フィルタ(911f)の逆関数であって第2の伝達フィルタ(911f)の時定数(1/ωpf)よりも小さな時定数(1/ωrf)を有する関数として設定する。
【0131】
上記方法により、位相進み補償フィルタの分子を伝達フィルタの伝達特性(分母)とすることで、補正トルクの応答性を高めることができる。また駆動軸ねじり振動を抑制する制振制御を実行したトルク振動を低減することができる。
【0132】
本実施形態の電動車両100の制御装置によれば、第1の駆動輪(前輪22)を駆動させる第1の駆動モータ(フロントモータ21)と、第1の駆動モータ(フロントモータ21)の駆動力を第1の駆動輪(前輪22)に伝達する第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)と、第1の駆動輪(前輪22)とは異なる第2の駆動輪(後輪32)を駆動させる第2の駆動モータ(リアモータ31)と、第2の駆動モータ(リアモータ31)の駆動力を第2の駆動輪(後輪32)に伝達する第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)と、車両情報(複数の車両変数)に基づいて第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))及び第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))を生成し、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))を第1の駆動モータ(フロントモータ21)に向けて出力し、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))を第2の駆動モータ(リアモータ31)に向けて出力するトルク指令値生成部(車両コントローラ14)と、を含み、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1の駆動モータ(フロントモータ21)の駆動力を第1の駆動輪(前輪22)に伝達することが不能となる第1のバックラッシュ区間を含み、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2の駆動モータ(リアモータ31)の駆動力を第2の駆動輪(後輪32)に伝達することが不能となる第2のバックラッシュ区間を含む電動車両の制御装置であって、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))に所定の第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を加算する第1の補正トルク加算手段(フィルタ911r、比例要素912r、減算器913r、フィルタ914r、加算器915f)と、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1のバックラッシュ区間を通過すると推定された場合に、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))に所定の第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を加算する第2の補正トルク加算手段(フィルタ911f、比例要素912f、減算器913f、フィルタ914f、加算器915r)と、を含み、第1の補正トルク加算手段(フィルタ911r、比例要素912r、減算器913r、フィルタ914r、加算器915f)は、第1の補正トルク(Hpr(s)[Grr(s)Tmr1 -Tdr/N])を、第2の目標トルク指令値(第1のリア目標トルク指令値(Tmr1 ))と、第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)が第2の駆動モータ(リアモータ31)から第2の駆動輪(後輪32)に駆動力を伝達するときの第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)の伝達特性を有する第1の伝達フィルタ(フィルタ911r)と、に基づいて算出し、前記第2の補正トルク加算手段(フィルタ911f、比例要素912f、減算器913f、フィルタ914f、加算器915r)は、第2の補正トルク(Hpf(s)[Grf(s)Tmf1 -Tdf/N])を、第1の目標トルク指令値(第1のフロント目標トルク指令値(Tmf1 ))と、第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)が第1の駆動モータ(フロントモータ21)から第1の駆動輪(前輪22)に駆動力を伝達するときの第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)の伝達特性を有する第2の伝達フィルタ(フィルタ911f)と、に基づいて算出する。
【0133】
上記構成により、一つの駆動力伝達機構(駆動輪)に対してバックラッシュ区間を跨ぐような制駆動力が印加される場合に、当該バックラッシュ区間を跨ぐ際に不足する制駆動力を他の駆動力伝達機構(駆動輪)に補正トルクとして加算することができるので、ドライバが所望する加減速度を得ることができる。
【0134】
本実施形態において、第1の駆動輪(前輪22)は、一対で車両(電動車両100)に配置され、一対の第1の駆動輪(前輪22)のうちの一方は第1の駆動力伝達機構(フロント減速機26、フロント駆動軸27)を構成するとともに車両(電動車両100)の進行方向の前方に配置された第1の駆動軸(フロント駆動軸27)の両端部のうちの一方に配置され、一対の第1の駆動輪(前輪22)のうちの他方は第1の駆動軸(フロント駆動軸27)の両端部のうちの他方に配置され、第2の駆動輪(後輪32)は、一対で車両(電動車両100)に配置され、一対の第2の駆動輪(後輪32)のうちの一方は第2の駆動力伝達機構(リア減速機36、リア駆動軸37)を構成するとともに車両(電動車両100)の進行方向の後方に配置された第2の駆動軸(リア駆動軸37)の両端部のうちの一方に配置され、一対の第1の駆動輪(後輪32)のうちの他方は第2の駆動軸(リア駆動軸37)の両端部のうちの他方に配置されている。
【0135】
本実施形態において。第1の駆動モータ(左リアモータ31L)により駆動する第1の駆動輪(左後輪32L)は、第1の駆動力伝達機構(左リア減速機36L)を構成するとともに車両(電動車両100)の幅方向の両端部の一方に配置された第1の駆動軸(左リア駆動軸37L)に配置され、第2の駆動モータ(右リアモータ31R)により駆動する第2の駆動輪(右後輪32R)は、第2の駆動力伝達機構(右リアモータ31R)を構成するとともに車両(電動車両100)の幅方向の両端部の他方に配置された第2の駆動軸(右リア駆動軸37R)に配置されている。
【0136】
上記いずれの構成においても、一方の駆動力伝達機構に対してバックラッシュをまたぐような制駆動力が印加される場合であっても他方の駆動力伝達機構に補正トルクとして加算できるので、ドライバが所望する加減速度を得ることができる。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態及び各変形例等で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0138】
21 フロントモータ、22 前輪 26 フロント減速機、27 ドライブシャフト 31 リアモータ、32 後輪、36 リア減速機、37 ドライブシャフト、100 電動車両、911f フィルタ、911r フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11