(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098882
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】樹脂多層基板及び電子部品
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240717BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20240717BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240717BHJP
H01P 3/08 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
H05K3/46 L
H01Q1/38
H05K3/46 N
H05K1/14 C
H01P3/08 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002673
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】松田 賢二
【テーマコード(参考)】
5E316
5E344
5J014
5J046
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA38
5E316BB02
5E316BB04
5E316BB06
5E316BB13
5E316CC08
5E316CC10
5E316CC32
5E316EE01
5E316FF07
5E316GG15
5E316GG28
5E316HH06
5E316HH23
5E344AA02
5E344AA22
5E344BB04
5E344BB08
5E344BB10
5E344CD12
5E344DD08
5E344EE08
5E344EE11
5J014CA56
5J046AB13
5J046TA03
(57)【要約】
【課題】基板の平坦性を向上させて、浮遊容量の増加を抑制できる樹脂多層基板および電子部品を提供すること。
【解決手段】樹脂多層基板は、厚み方向に重なって互いに接合された第1基板および第2基板と、第1基板と第2基板との接合面に配置された第1信号電極と、第1基板に配置され、第1信号電極と接合された第1ビア導体と、第2基板に配置され、厚み方向から見て第1信号電極と重なる第1グランド電極と、第2基板に配置され、厚み方向において第1信号電極と第1グランド電極との間に位置する第1浮き電極と、を備え、第1信号電極は、第1ビア導体と接合する第1接合部と、信号伝送方向に延びる配線部とを有し、信号伝送方向に交差する線幅方向において、第1接合部の線幅は、配線部の線幅よりも大きく、第1浮き電極は、厚み方向から見て、第1信号電極の第1接合部と重なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に重なって互いに接合された第1基板および第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との接合面に配置された第1信号電極と、
前記第1基板に配置され、前記第1信号電極と接合された第1ビア導体と、
前記第2基板に配置され、前記厚み方向から見て前記第1信号電極と重なる第1グランド電極と、
前記第2基板に配置され、前記厚み方向において前記第1信号電極と前記第1グランド電極との間に位置する第1浮き電極と、を備え、
前記第1信号電極は、前記第1ビア導体と接合する第1接合部と、信号伝送方向に延びる配線部とを有し、
前記信号伝送方向に交差する線幅方向において、前記第1接合部の線幅は、前記配線部の線幅よりも大きく、
前記第1浮き電極は、前記厚み方向から見て、前記第1信号電極の前記第1接合部と重なる、
樹脂多層基板。
【請求項2】
前記第2基板において、前記第1浮き電極と同層に配置された第2グランド電極、をさらに備える、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項3】
前記第1信号電極は、前記第1接合部とは異なる第2接合部を備え、
前記第2基板に配置され、前記第2接合部と接合された第2ビア導体と、
前記第2基板において、前記第1浮き電極と同層に配置され、前記第2ビア導体と接合された第2信号電極と、をさらに備える、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項4】
前記第2基板において、前記第1浮き電極および前記第2信号電極と同層に配置された第2グランド電極、をさらに備え、
前記第1浮き電極と前記第2信号電極との距離は、前記第1浮き電極と前記第2グランド電極との距離よりも長い、
請求項3に記載の樹脂多層基板。
【請求項5】
前記第2基板において、前記第1浮き電極および前記第2信号電極と同層に配置された第2グランド電極、をさらに備え、
前記第1浮き電極と前記第2グランド電極との距離は、前記第1浮き電極と前記第2信号電極との距離よりも長い、
請求項3に記載の樹脂多層基板。
【請求項6】
前記第1信号電極と同層、且つ厚み方向から見て前記第2グランド電極と重なる位置に第2浮き電極をさらに備える、
請求項2に記載の樹脂多層基板。
【請求項7】
前記第1信号電極および前記第2浮き電極と同層、且つ厚み方向から見て前記第2グランド電極と重なる位置に第3グランド電極をさらに備える、
請求項6に記載の樹脂多層基板。
【請求項8】
前記線幅方向において、前記第1浮き電極は、前記第1接合部よりも長い、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項9】
前記信号伝送方向において、前記第1浮き電極は、前記第1接合部よりも長い、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項10】
前記信号伝送方向において、前記第1浮き電極は、前記第1ビア導体と前記第2ビア導体の距離よりも長い、
請求項3に記載の樹脂多層基板。
【請求項11】
前記厚み方向から見て、前記第1浮き電極は、前記第1接合部の全体と重なる、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項12】
前記第1基板の誘電体の比誘電率は、前記第2基板の誘電体の非誘電率よりも大きい、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項13】
前記第1基板は、アンテナ素子である、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項14】
前記第1グランド電極は、グランド電位に接続される、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項15】
前記第1浮き電極は、特定の電位に接続されない、
請求項1に記載の樹脂多層基板。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の前記樹脂多層基板を備える、
電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂多層基板及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、リジット領域と、リジット領域よりも可撓性の高いフレキシブル領域との2種類の異なる領域を有する多層フレキシブル基板を開示する。
【0003】
特許文献1の多層フレキシブル基板では、フレキシブル領域に設けられた充填ビアの空隙率を、リジット領域を含む構成槽に設けられた充填ビアの空隙率よりも高くする。これにより、多層フレキシブル基板を折り曲げた際に、フレキシブル領域の十分な可撓性を確保しようとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/073669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ビアの空隙率を変更したり、ビア受け部の形状を変更すると、基板の一部が歪んで平坦性が悪化したり、基板内の浮遊容量が増加する場合がある。
【0006】
従って、本開示の目的は、前記問題を解決することにあって、基板の平坦性を向上させて、浮遊容量の増加を抑制した樹脂多層基板およびそれを備える電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る樹脂多層基板は、厚み方向に重なって互いに接合された第1基板および第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との接合面に配置された第1信号電極と、前記第1基板に配置され、前記第1信号電極と接合された第1ビア導体と、前記第2基板に配置され、前記厚み方向から見て前記第1信号電極と重なる第1グランド電極と、前記第2基板に配置され、前記厚み方向において前記第1信号電極と前記第1グランド電極との間に位置する第1浮き電極と、を備え、前記第1信号電極は、前記第1ビア導体と接合する第1接合部と、信号伝送方向に延びる配線部とを有し、前記信号伝送方向に交差する線幅方向において、前記第1接合部の線幅は、前記配線部の線幅よりも大きく、前記第1浮き電極は、前記厚み方向から見て、前記第1信号電極の前記第1接合部と重なる。
【0008】
また、本開示に係る電子部品は、前記樹脂多層基板を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、基板の平坦性を向上させて、浮遊容量の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施形態1に係る樹脂多層基板の第1層の上面図
【
図4】実施形態1に係る樹脂多層基板の第2層の上面図
【
図5】実施形態1に係る樹脂多層基板の第3層の上面図
【
図8】実施形態2に係る樹脂多層基板の一部を拡大して示す縦断面図
【
図9】実施形態3に係る樹脂多層基板の一部を拡大して示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第1態様によれば、厚み方向に重なって互いに接合された第1基板および第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との接合面に配置された第1信号電極と、前記第1基板に配置され、前記第1信号電極と接合された第1ビア導体と、前記第2基板に配置され、前記厚み方向から見て前記第1信号電極と重なる第1グランド電極と、前記第2基板に配置され、前記厚み方向において前記第1信号電極と前記第1グランド電極との間に位置する第1浮き電極と、を備え、前記第1信号電極は、前記第1ビア導体と接合する第1接合部と、信号伝送方向に延びる配線部とを有し、前記信号伝送方向に交差する線幅方向において、前記第1接合部の線幅は、前記配線部の線幅よりも大きく、前記第1浮き電極は、前記厚み方向から見て、前記第1信号電極の前記第1接合部と重なる、樹脂多層基板を提供する。
【0012】
本開示の第2態様によれば、前記第2基板において、前記第1浮き電極と同層に配置された第2グランド電極、をさらに備える、第1態様に記載の樹脂多層基板を提供する。
【0013】
本開示の第3態様によれば、前記第1信号電極は、前記第1接合部とは異なる第2接合部を備え、前記第2基板に配置され、前記第2接合部と接合された第2ビア導体と、前記第2基板において、前記第1浮き電極と同層に配置され、前記第2ビア導体と接合された第2信号電極と、をさらに備える、第1態様又は第2態様に記載の樹脂多層基板を提供する。
【0014】
本開示の第4態様によれば、前記第2基板において、前記第1浮き電極および前記第2信号電極と同層に配置された第2グランド電極、をさらに備え、
前記第1浮き電極と前記第2信号電極との距離は、前記第1浮き電極と前記第2グランド電極との距離よりも長い、第3態様に記載の樹脂多層基板を提供する。
【0015】
本開示の第5態様によれば、前記第2基板において、前記第1浮き電極および前記第2信号電極と同層に配置された第2グランド電極、をさらに備え、
前記第1浮き電極と前記第2グランド電極との距離は、前記第1浮き電極と前記第2信号電極との距離よりも長い、第3態様に記載の樹脂多層基板を提供する。
【0016】
本開示の第6態様によれば、前記第1信号電極と同層、且つ厚み方向から見て前記第2グランド電極と重なる位置に第2浮き電極をさらに備える、第2態様、第4態様、第5態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0017】
本開示の第7態様によれば、前記第1信号電極および前記第2浮き電極と同層、且つ厚み方向から見て前記第2グランド電極と重なる位置に第3グランド電極をさらに備える、第6態様に記載の樹脂多層基板を提供する。
【0018】
本開示の第8態様によれば、前記線幅方向において、前記第1浮き電極は、前記第1接合部よりも長い、第1態様から第7態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0019】
本開示の第9態様によれば、前記信号伝送方向において、前記第1浮き電極は、前記第1接合部よりも長い、第1態様から第8態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0020】
本開示の第10態様によれば、前記信号伝送方向において、前記第1浮き電極は、前記第1ビア導体と前記第2ビア導体の距離よりも長い、第1態様から第9態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0021】
本開示の第11態様によれば、前記厚み方向から見て、前記第1浮き電極は、前記第1接合部の全体と重なる、第1態様から第10態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0022】
本開示の第12態様によれば、前記第1基板の誘電体の比誘電率は、前記第2基板の誘電体の非誘電率よりも大きい、第1態様から第11態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0023】
本開示の第13態様によれば、前記第1基板は、アンテナ素子である、第1態様から第12態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0024】
本開示の第14態様によれば、前記第1グランド電極は、グランド電位に接続される、第1態様から第13態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0025】
本開示の第15態様によれば、前記第1浮き電極は、特定の電位に接続されない、第1態様から第14態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を提供する。
【0026】
本開示の第16態様によれば、第1態様から第15態様のいずれか1つに記載の樹脂多層基板を備える電子部品を提供する。
【0027】
以下、本開示に係る樹脂多層基板および電子部品の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示の発明は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が含まれる。
【0028】
(実施形態1)
図1は、樹脂多層基板100の縦断面図であり、
図2は、
図1の一部拡大図である。
図3~
図5は、樹脂多層基板100の第2基板4における各層を示す上面図である。
図3は、
図2におけるI-I線に沿った第1層を示す上面図であり、
図4は、
図2におけるII-II線に沿った第2層を示す上面図であり、
図5は、
図2におけるIII-III線に沿った第3層を示す上面図である。
【0029】
図1に示す樹脂多層基板100は、高周波信号等の信号を伝送するための基板である。樹脂多層基板100は、スマートフォン等の電子機器内部の電子部品に用いられる。樹脂多層基板100の用途としては、例えばアンテナや、2つの回路を電気的に接続する伝送線路である。
【0030】
図1に示すように、樹脂多層基板100は、第1基板2と、第2基板4とを有する。
【0031】
第1基板2および第2基板4はそれぞれ誘電体基板であって、厚み方向Tに重なって互いに接合される。
図1に示す例では、第1基板2が上方、第2基板4が下方に配置される。第1基板2の下面と第2基板4の上面が互いに接合されて接合面を構成する。
【0032】
第1基板2および第2基板4は、厚み方向Tから見たときの外形が互いに異なる。
図1に示す例では、厚み方向Tから見たときの外形が、第1基板2よりも第2基板4の方が大きい。第1基板2と第2基板4が互いに重なる領域がリジット領域Aであり、第1基板2と第2基板4が互いに重ならずに第2基板4もしくは第1基板2の一方のみが存在する領域がフレキシブル領域Bである。可撓性の高いフレキシブル領域Bを有する樹脂多層基板100は、フレキシブル基板として機能する。
【0033】
第1基板2は、誘電体6と、複数の信号電極8と、複数のビア導体10と、複数のグランド電極12と、を備える。
【0034】
誘電体6は、絶縁体材料である樹脂で構成され、複数の電極・導体を支持する。誘電体6に支持される信号電極8は、高周波信号等の信号を伝送するための電極である。厚み方向Tに間隔を空けて、複数の信号電極8が設けられる。ビア導体10は、複数の信号電極8同士を接続するための導体であり、厚み方向Tに延びる。グランド電極12は、基準電位/グランド電位に接続される電極である。
図1に示す例では、第1基板2の上面に設けられたグランド電極12のみを図示する。基準電位/グランド電位に接続する方法としては、電子機器のシャーシに対するフレームグラウンド等、任意の方法を用いてもよい。他のグランド電極についても同様である。
【0035】
誘電体6は、例えば、セラミック材料や、LCP(液晶ポリマー)、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)、PI(ポリイミド)、MPI(変性ポリイミド)等の熱可塑性樹脂で構成される。信号電極8およびグランド電極12は、例えば、銅箔等の金属箔で構成される。ビア導体10は、例えば、銅等の金属で構成される。
【0036】
図1に示す第1基板2の電極・導体の配置例は一例であり、第2基板4と電気的に接続されて高周波信号等の信号を伝送する機能があれば、その他の配置を採用してもよい。
【0037】
図示を省略しているが、第1基板2や第2基板4の表面には、レジスト等の保護膜が設けられてもよい。
【0038】
第2基板4は、誘電体16と、複数の信号電極18、20、22と、複数のビア導体24、26、28と、複数のグランド電極30、32、34と、複数の浮き電極40、42と、を備える。
【0039】
誘電体16は、絶縁体材料である樹脂で構成され、複数の電極・導体を支持する。誘電体16に支持される信号電極18、20、22はそれぞれ、高周波信号等の信号を伝送するための電極である。
図1に示す例では、信号電極18、22は第2基板4の第1層に設けられ、信号電極20は第2基板4の第2層に設けられる。信号電極18は、前述したビア導体10を介して第1基板2の信号電極8と接続されている。ビア導体24、26、28は、信号電極同士やグランド電極同士を互いに接続するための導体であり、厚み方向Tに延びる。ビア導体24は、信号電極18、20を互いに接続し、ビア導体26は、信号電極20、22を互いに接続し、ビア導体28は、グランド電極30、32を互いに接続する。グランド電極30、32、34は、基準電位・グランド電位に接続される電極であり、第2基板4の各層にそれぞれ設けられる。グランド電極30は第2基板4の第1層に設けられ、グランド電極32は第2基板4の第2層に設けられ、グランド電極34は第2基板4の第3層に設けられる。
【0040】
誘電体16は、例えば、LCP、PTFE、PI、MPI等の熱可塑性樹脂で構成される。信号電極18、20、22およびグランド電極30、32、34は、例えば、銅箔等の金属箔で構成される。ビア導体24、26、28は、例えば、銅等の金属で構成される。
【0041】
第2基板4における信号電極18およびグランド電極30は、第1基板2と第2基板4との接合面に配置される。
【0042】
信号電極18、20、22は、厚み方向Tに直交する信号伝送方向Sに信号を伝送する。以下、厚み方向Tに対応する方向をZ方向、信号伝送方向Sに対応する方向をY方向、厚み方向Tと信号伝送方向Sに対して直交する方向(後述する線幅方向W)をX方向とする。
【0043】
浮き電極40、42は、特定の電位に接続されない電極である。浮き電極40、42は、他の電極・導体とは接続されておらず、浮遊電位に保たれる。
【0044】
図1に示す例では、浮き電極40、42はともに、第2基板4の第2層に配置され、同層にある信号電極20とグランド電極32との間に設けられる。「同層」とは、厚み方向Tの位置が同じ又は重なることを意味する。
【0045】
浮き電極40は、厚み方向Tにおいて、第1層にある信号電極18と、第3層にあるグランド電極34との間に配置される。浮き電極42は、厚み方向Tにおいて、第1層にある信号電極22と、第3層にあるグランド電極34との間に配置される。
【0046】
第2層に浮き電極40、42を設けることで、浮き電極40、42を設けない場合に比べて、第2基板4の部分的な凹みの発生を抑制することができ、第2基板4の平坦性を向上させることができる。また、浮き電極40、42の代わりに第2層のグランド電極32をY方向に伸ばした構成に比べて、信号電極18、22とグランド電極32との間の浮遊容量の増加を抑制することができる。
【0047】
図3に示すように、第2基板4の第1層にはグランド電極30が設けられており、グランド電極30におけるY方向の両端部近傍には、信号電極18、22をそれぞれ露出させる開口が形成される。
図3に示す例では、グランド電極30のY方向の両端部近傍において、X方向に間隔を空けて3つずつ開口が設けられた構成を例示する。
【0048】
図4に示すように、第2基板4の第2層にはグランド電極32が設けられており、グランド電極32には、信号電極20や浮き電極40、42を露出させる開口が形成される。
図4に示す例では、グランド電極32の内側に、X方向に間隔を空けて3つずつ開口が設けられた構成を例示する。
【0049】
グランド電極32に形成された3つの開口から、3つの信号電極20と、2つの浮き電極40と、2つの浮き電極42が露出する。
【0050】
本実施形態では、3つの信号電極20は、信号伝送方向Sに沿って略同じ長さを有する。3つの信号電極20のそれぞれにおいて、同じ開口内に浮き電極40、42が配置される。
【0051】
浮き電極40は、信号電極20がビア導体24と接続する側の端部(右端部)の外側に配置される。浮き電極42は、信号電極20がビア導体26と接続する側の端部(左端部)の外側に配置される。
【0052】
図3、
図4に示すような配置に限らず、信号電極20の数は任意の数であってもよい。また、信号電極20のうち、浮き電極40、42が同じ開口内に配置される信号電極20の数も任意の数であってもよく、一部の信号電極20においては、同じ開口内に浮き電極40、42が配置されない場合であってもよい。
【0053】
図3、
図4では、第1層のグランド電極30と第2層のグランド電極32とを接続するビア導体28(
図1、
図2)の図示を省略している。1つ又は複数のビア導体28を任意の位置に設けてもよい。
【0054】
図5に示すように、第2基板4の第3層にはグランド電極34が設けられる。
図5に示す例では、第2基板4の第3層の全面がグランド電極34である。グランド電極34は、厚み方向Tから見て、第2基板4における全ての信号電極、全てのビア導体および他のグランド電極と重なっている。
【0055】
図3に示すように、厚み方向Tから見て、第1層の信号電極18は、第2層の浮き電極40(点線で図示)と重なっている。信号電極18の直下に浮き電極40を設けることで、第2基板4の平坦性を向上させる効果と、信号電極18とグランド電極32との間の浮遊容量の増加を抑制する効果をより発揮しやすくなる。
【0056】
図6は、
図3の一部拡大図であって、厚み方向Tから見たときの、信号電極18と浮き電極40との重なり状態を示す。
【0057】
図6に示すように、信号電極18は、接合部44、46と、配線部48とを備える。接合部44、46はそれぞれ、ビア導体10、24をそれぞれ接合するための部分であり、「ビア受け部」とも称する。接合部44は、上方のビア導体10に接合され、接合部46は、下方のビア導体24に接合される。配線部48は、2つの接合部44、46を接続する部分であり、信号伝送方向Sに沿って延びて信号伝送方向Sに信号を伝送する。
【0058】
接合部44、46と配線部48の領域を互いに区別するときは、信号伝送方向Sにおいて、信号電極18の先端から最大幅(信号電極18の線幅方向Wの最大幅、すなわち、接合部44、46の直径)の長さ分だけの領域を接合部44、46とし、それ以外の領域を配線部48として区別してもよい。
【0059】
接合部44、46と配線部48は、信号伝送方向Sに直交する線幅方向Wの長さ(すなわち「線幅」)が互いに異なる。具体的には、接合部44、46の線幅(直径)は、配線部48の線幅よりも長くなっている。ここでの線幅は、線幅の最大長である。ビア受け部である接合部44、46の線幅を相対的に長くして接合部44、46を大きくすることで、樹脂多層基板100のフレキシブル領域Bが曲がるときに応力が集中しても、当該応力に耐えうるような大きさのビア導体10、24を形成しやすくなり、接合強度を向上させることができる。
【0060】
接合部44、46の線幅(直径)は、例えば、400μmである。接合部44、46に接合される箇所のビア導体10、26の線幅(直径)は、例えば、150μmである。例えば、接合部44、46の線幅をビア導体10、26の線幅の2倍以上とすることで、接合強度を効果的に向上させることができ、第1基板2と第2基板4の接合位置に多少の位置ずれが生じても接合可能となる。配線部48の線幅は、例えば、30μm~300μmである。
【0061】
接合部44、46を大きくした場合、接合部44、46と厚み方向Tに対向するグランド電極が存在すると、接合部44、46とグランド電極との間の浮遊容量が増加しやすく、第2基板4の配線導体のインピーダンスが低下しやすくなる。
【0062】
これに対して、
図6に示すように、厚み方向Tから見て、信号電極18の接合部44と重なる位置に浮き電極40を設けることで、接合部44の直下に第2層のグランド電極32が進入することを防止できる。これにより、浮き電極40で第2基板4の平坦性を保ちながら、信号電極18とグランド電極32との間の浮遊容量の増加を抑制することができる。
【0063】
図6に示す例では、浮き電極40は、厚み方向Tから見て略矩形の形状を有する。浮き電極40の寸法は、信号電極18の接合部44よりも大きくなっている。信号伝送方向Sにおいて、浮き電極40は接合部44よりも長く、線幅方向Wにおいても、浮き電極40は接合部44よりも長い。厚み方向Tから見て、浮き電極40は接合部44の全体と重なっている。
【0064】
浮き電極40の寸法を接合部44の寸法よりも大きくして浮き電極40が接合部44の全体と重なるようにすることで、第2基板4の平坦性を向上させる効果と、浮遊容量の増加を抑制する効果を向上させることができる。
【0065】
図7は、
図3の一部拡大図であって、厚み方向Tから見たときの、信号電極22(第1層)と浮き電極42(第2層)との重なり状態を示す。
【0066】
図7に示すように、信号電極22は、接合部50と、配線部52とを有する。接合部50は、下方のビア導体26に接合されるビア受け部である。配線部52は、接合部50から信号伝送方向Sに沿って延びる部分である。線幅方向Wの長さに関して、接合部50の線幅(直径)は、配線部52の線幅よりも長い。接合部50の線幅は、
図6に示す接合部44、46の線幅と略同じであってもよく、配線部52の線幅は、
図6に示す配線部48の線幅と略同じであってもよい。配線部52の線幅は、コネクタやチップ部品を実装するため、信号電極20の線幅よりも長くてもよい。その場合、浮き電極42を設けたことで、配線部52の部分の浮遊容量の増加をより効果的に抑制することができる。
【0067】
図7に示すように、厚み方向Tから見て、信号電極22の配線部52と重なる位置に浮き電極42を設けている。信号電極22の配線部52の直下に浮き電極42を設けることで、浮き電極42で第2基板4の平坦性を保ちながら、信号電極22とグランド電極32との間の浮遊容量の増加を抑制することができる。
【0068】
図6に示す浮き電極40が対向する接合部44は、相対的に線幅が大きい部分であるのに対して、
図7に示す浮き電極42が対向する配線部52は、相対的に線幅が小さい部分である。浮き電極40と接合部44が重なる領域の方が、浮き電極42と配線部52が重なる領域よりも大きい場合は、浮遊容量の増加を抑制する効果は、浮き電極42よりも浮き電極40の方が高い。
【0069】
図2に戻ると、第2基板4の第2層における信号伝送方向Sの距離に関して、浮き電極40と信号電極20との間は距離D1であり、浮き電極40とグランド電極32との間は距離D2である。距離D1、D2を調整することで、第2基板4の配線導体におけるインピーダンスを調整することができる。
【0070】
実施形態1では、距離D1>距離D2である。距離D1を相対的に長くすることで、浮き電極40と信号電極20との隙間を確保することができ、樹脂多層基板100を製造する際に、誘電体16の材料である液状の樹脂(例えば熱可塑性樹脂)を浮き電極40と信号電極20との間に流し込みやすくなる。これにより、第2基板4の形状安定性を高めるとともに、第2基板4の平坦性を向上できる。特に、ビア受け部である接合部44の直下に樹脂を流し込みやすくすることで、第2基板4におけるビア導体24の突出を抑制して、第2基板4の平坦性を向上させることができる。すなわち、第2基板4においてビア導体24が出っ張ることを抑制することができ、信号電極18が凸になって第2基板4の平坦性が悪化することを抑制することができる。
【0071】
信号伝送方向Sにおいて、浮き電極40は長さL1を有する。第1実施形態では、浮き電極40の長さL1が、ビア導体10、24同士の距離D3よりも長い。このように浮き電極40の寸法を大きくすることで、平坦性の向上効果と浮遊容量の抑制効果を高めることができる。
【0072】
上述した構成を有する樹脂多層基板100では、第1基板2の誘電体6の比誘電率を、第2基板4の誘電体16の比誘電率を大きくしている。誘電体6の比誘電率を相対的に大きくすることで、第1基板2を小型化しやすくなる。
【0073】
比誘電率の高い材料・基板としては、例えば、セラミック材料や、ガラスエポキシ基板、LTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板が挙げられる。比誘電率の低い材料・基板としては、例えば、LCP樹脂、PTFE樹脂、PI樹脂、MPI樹脂が挙げられる。このような材料を複数組み合わせて、あるいは単独で用いることで、誘電体6、16の比誘電率を異ならせることができる。比誘電率の測定方法としては例えば、共振器法、フリースペース法が挙げられる。これらの測定方法によって測定した結果に基づいて誘電体6、16の比誘電率を比較すればよい。
【0074】
以上のように構成された樹脂多層基板100は、電子機器内部の電子部品として、高周波信号等の信号を伝送する。実施形態1では、第1基板2はアンテナ素子であり、第2基板4は伝送線路である。これにより、樹脂多層基板100をアンテナとして機能させることができる。実施形態1では特に、第1基板2の誘電体6の比誘電率を第2基板4の誘電体16の比誘電率よりも大きくしているため、アンテナサイズの小型化が可能となる。
【0075】
また
図1、
図4に示すように、第2基板4の第2層において、信号電極20とグランド電極32との間の隙間を埋めるように浮き電極40、42を配置している。これにより、第2基板4の平坦性を保ちながら、信号電極18、22とグランド電極32との間の浮遊容量の増加を抑制することができる。
【0076】
また
図2、
図6に示すように、信号電極18において相対的に線幅の長い接合部44の直下に浮き電極40を配置することで、信号電極18とグランド電極32との間の浮遊容量の増加をより効果的に抑制することができる。
【0077】
[効果]
実施形態1の樹脂多層基板100は、厚み方向Tに重なって互いに接合された第1基板2および第2基板4と、第1基板2と第2基板4との接合面に配置された信号電極18(第1信号電極)と、第1基板2に配置され、信号電極18と接合されたビア導体10(第1ビア導体)と、第2基板4に配置され、厚み方向Tから見て信号電極18と重なるグランド電極34(第1グランド電極)と、第2基板4に配置され、厚み方向Tにおいて信号電極18とグランド電極34との間に位置する浮き電極40(第1浮き電極)と、を備え、信号電極18は、ビア導体10と接合する接合部44(第1接合部)と、信号伝送方向Sに延びる配線部48とを有し、信号伝送方向Sに交差する線幅方向Wにおいて、接合部44の線幅は、配線部48の線幅よりも大きく、浮き電極40は、厚み方向Tから見て、信号電極18の接合部44と重なる。
【0078】
このような構成によれば、信号電極18の接合部44とグランド電極34の間に浮き電極40を配置することで、浮き電極40がない場合に比べて、第2基板4の平坦性を向上させるとともに、信号電極18(特に接合部44)と他の電極との間の容量形成を抑制することができる。
【0079】
また、実施形態1の樹脂多層基板100は、第2基板4において、浮き電極40(第1浮き電極)と同層に配置されたグランド電極32(第2グランド電極)、をさらに備える。このような構成によれば、グランド電極32と同層に浮き電極40を設けることで、グランド電極32が信号電極18の接合部44の直下に進入することを防止することができ、信号電極18とグランド電極32との間の容量形成を抑制することができる。
【0080】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、信号電極18(第1信号電極)は、接合部44(第1接合部)とは異なる接合部46(第2接合部)を備え、第2基板4に配置され、接合部46と接合されたビア導体24(第2ビア導体)と、第2基板4において、浮き電極40(第1浮き電極)と同層に配置され、ビア導体24と接合された信号電極20(第2信号電極)と、をさらに備える。このような構成によれば、信号電極20と同層に浮き電極40を設けることで、第2基板4の局所的な凹みの発生を抑制することができ、第2基板4の平坦性を向上させることができる。
【0081】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、第2基板4において、浮き電極40(第1浮き電極)および信号電極20(第2信号電極)と同層に配置されたグランド電極32(第2グランド電極)、をさらに備え、浮き電極40と信号電極20との距離D1は、浮き電極40とグランド電極32との距離D2よりも長い。このような構成によれば、浮き電極40と信号電極20との距離D1を空けることで、浮き電極40と信号電極20の間に樹脂がより流し込みやすくなる。
【0082】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、線幅方向Wにおいて、浮き電極40(第1浮き電極)は、接合部44(第1接合部)よりも長い。このような構成によれば、浮き電極40の寸法を接合部44の寸法よりも大きくすることで、平坦性向上効果と容量形成抑制効果をより奏しやすくなる。
【0083】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、信号伝送方向Sにおいて、浮き電極40(第1浮き電極)は、接合部44(第1接合部)よりも長い。このような構成によれば、浮き電極40の寸法を接合部44の寸法よりも大きくすることで、平坦性向上効果と容量形成抑制効果をより奏しやすくなる。
【0084】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、信号伝送方向Sにおいて、浮き電極40(第1浮き電極)の長さL1は、ビア導体10(第1ビア導体)とビア導体24(第2ビア導体)の距離D3よりも長い。このような構成によれば、浮き電極40の寸法を接合部44の寸法よりも大きくすることで、平坦性向上効果と容量形成抑制効果をより奏しやすくなる。
【0085】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、厚み方向Tから見て、浮き電極40(第1浮き電極)は、接合部44(第1接合部)の全体と重なる。このような構成によれば、浮き電極40の寸法を接合部44の寸法よりも大きくすることで、平坦性向上効果と容量形成抑制効果をより奏しやすくなる。
【0086】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、第1基板2の誘電体6の比誘電率は、第2基板4の誘電体16の非誘電率よりも大きい。このような構成によれば、第1基板2を小型化しやすく、第1基板2がアンテナ素子の場合にはアンテナサイズの小型化が可能となる。
【0087】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、第1基板2は、アンテナ素子である。このような構成によれば、樹脂多層基板100をアンテナとして機能させることができる。
【0088】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、グランド電極34(第1グランド電極)は、グランド電位に接続される。このような構成によれば、グランド電極34として機能させることができる
【0089】
また、実施形態1の樹脂多層基板100では、浮き電極40(第1浮き電極)は、特定の電位に接続されない。このような構成によれば、浮き電極40として機能させることができる。
【0090】
また、実施形態1の電子部品は、樹脂多層基板100を備える。このような構成によれば、樹脂多層基板100と同様の効果を奏することができる。
【0091】
(実施形態2)
図8を参照して、実施形態1の樹脂多層基板100と実施形態2の樹脂多層基板200との違いについて説明する。ここでは、実施形態1と同一または同様の構成については同じ名称や符号を付して説明する。また、実施形態1と重複する記載は省略する。
【0092】
図8は、実施形態2に係る樹脂多層基板200の一部を拡大して示す縦断面図である。
【0093】
実施形態2では、浮き電極240と信号電極20との距離D4よりも、浮き電極240とグランド電極32との距離D5の方が長い点で、実施形態1と異なる。
【0094】
図8に示すように、樹脂多層基板200は、浮き電極40に代えて、浮き電極240を備える。浮き電極240は、信号電極20およびグランド電極32と同層である第2層において、第1層の信号電極18の接合部44の直下に配置される。
【0095】
実施形態2では、信号伝送方向Sにおいて、浮き電極240と信号電極20との距離D4よりも、浮き電極240とグランド電極32との距離D5の方が長い。このように、浮き電極240とグランド電極32との距離D5を相対的に長くすることで、浮き電極240を介した信号電極18とグランド電極32との間の浮遊容量の増加をより抑制することができる。
【0096】
上述したように、実施形態2の樹脂多層基板200は、第2基板4において、浮き電極40(第1浮き電極)および信号電極20(第2信号電極)と同層に配置されたグランド電極32(第2グランド電極)、をさらに備え、浮き電極40とグランド電極32との距離D5は、浮き電極40と信号電極20との距離D4よりも長い。
【0097】
このような構成によれば、距離D5を長くすることで、浮き電極40を介した信号電極18とグランド電極32との間の浮遊容量の増加を抑制することができ、第2基板4の配線導体におけるインピーダンスを増加させることができる。
【0098】
実施形態2では、距離D4<距離D5とすることでインピーダンスが増加するのに対して、実施形態1では、距離D1>距離D2であるため、浮き電極40を介した信号電極18とグランド電極32との間の容量が増加して、インピーダンスが相対的に減少する。これを利用して、距離D1>距離D2、あるいは距離D4<距離D5のいずれかを選択することで、第2基板4の配線導体のインピーダンスを増減させて、所望の値に調整することが可能である。
【0099】
(実施形態3)
図9を参照して、実施形態1の樹脂多層基板100と実施形態3の樹脂多層基板300との違いについて説明する。ここでは、実施形態1と同一または同様の構成については同じ名称や符号を付して説明する。また、実施形態1と重複する記載は省略する。
【0100】
図9は、実施形態3に係る樹脂多層基板300の一部を拡大して示す縦断面図である。
【0101】
実施形態3では、浮き電極40、42とは別の浮き電極340をさらに備える点で、実施形態1と異なる。
【0102】
図9に示すように、樹脂多層基板300は、浮き電極340を備える。浮き電極340は、浮き電極40、42とは異なり、第2基板4の第1層において、同層の信号電極18とグランド電極30の間に配置される。浮き電極340は、厚み方向Tから見て、第2層のグランド電極32および第3層のグランド電極34と重なり、第1基板2の信号電極8とも重なる。
【0103】
このような位置に浮き電極340を設けることで、信号電極18とグランド電極30の隙間を埋めて、局所的な凹みの発生を抑制することができ、樹脂多層基板300の平坦性を向上させることができる。また、信号電極18とグランド電極30を互いに離すことができるため、信号電極18とグランド電極30との間の容量の増加を抑制することができ、インピーダンスを低下させることができる。
【0104】
上述したように、実施形態3の樹脂多層基板300は、信号電極18(第1信号電極)と同層、且つ厚み方向Tから見てグランド電極32(第2グランド電極)と重なる位置に浮き電極340(第2浮き電極)をさらに備える。
【0105】
このような構成によれば、浮き電極340がない場合に比べて、樹脂多層基板300の平坦性を向上させるとともに、信号電極18とグランド電極32との間の容量形成を抑制することができる。
【0106】
また、実施形態3の樹脂多層基板300は、信号電極18(第1信号電極)および浮き電極340(第2浮き電極)と同層、且つ厚み方向Tから見てグランド電極32(第2グランド電極)と重なる位置にグランド電極30(第3グランド電極)をさらに備える。このような構成によれば、グランド電極30を設けることで、信号電極8とグランド電極との距離を、グランド電極30、34で変えることができるため、インピーダンス調整が可能となる。
【0107】
以上、上述の実施形態1、2、3を挙げて本開示の発明を説明したが、本開示の発明は上述の実施形態1、2、3に限定されない。例えば実施形態1では、第1基板2がアンテナ素子であり、樹脂多層基板300が電子機器のアンテナとして機能する場合について説明したが、このような場合に限らない。第1基板2はアンテナ素子ではなく、その他の用途に用いられる伝送線路であってもよい。例えば、第1基板2の信号電極8が電子部品の第1回路(図示せず)に接合され、第2基板4の信号電極22が電子部品の第2回路(図示せず)に接合され、信号電極8、18、20、22を介して、2つの回路の間で高周波信号を伝送する伝送線路であってもよい。
【0108】
また実施形態1、2、3では、グランド電極30、32、34をそれぞれ設ける場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、第1層のグランド電極30や第2層のグランド電極32を設けない場合であってもよい。
【0109】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0110】
なお、上述した様々な実施形態および様々な変形例のうち、任意の実施形態および任意の変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本開示は、第1基板と第2基板を備える樹脂多層基板およびそれを備える電子部品であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0112】
2 第1基板
4 第2基板
6 誘電体
8 信号電極
10 ビア導体(第1ビア導体)
12 グランド電極
16 誘電体
18 信号電極(第1信号電極)
20 信号電極(第2信号電極)
22 信号電極
24 ビア導体(第2ビア導体)
26 ビア導体
28 ビア導体
30 グランド電極(第3グランド電極)
32 グランド電極(第2グランド電極)
34 グランド電極(第1グランド電極)
40 浮き電極(第1浮き電極)
42 浮き電極
44 接合部(第1接合部)
46 接合部(第2接合部)
48 配線部
50 接合部
52 配線部
100、200、300 樹脂多層基板
240 浮き電極(第1浮き電極)
340 浮き電極(第2浮き電極)
D1、D2、D3、D4、D5 距離
L1 長さ
S 信号伝送方向
T 厚み方向
W 線幅方向