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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098888
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240717BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 23/28 20060101ALN20240717BHJP
   H01L 23/48 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301B
H01L29/91 C
H01L29/91 K
H01L27/04 A
H01L27/04 H
H01L27/092 B
H01L23/28 K
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002682
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】山路 将晴
【テーマコード(参考)】
4M109
5F038
5F044
5F048
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA01
4M109CA02
4M109DB09
4M109EA02
4M109EA10
4M109EB12
5F038BE07
5F038BH04
5F038BH19
5F038CA05
5F038EZ07
5F044AA01
5F048AA05
5F048AC03
5F048AC06
5F048BA01
5F048BE02
5F048BG12
5F048BG13
5F048BH05
(57)【要約】
【課題】ノイズ耐性の低下を抑制しつつ小型化を図ることができる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置は、複数のパワー半導体素子と、第1端子と複数の第2端子とを含む複数の端子を備え、前記複数の第2端子に供給される電源電圧を利用して前記複数のパワー半導体素子を制御する制御チップとを具備する。また、半導体装置は、所定の制御電圧を前記第1端子に供給するための第1導体と、前記複数の第2端子に個別に接続されて前記電源電圧を前記複数の第2端子に供給するための複数の第1配線と、前記制御チップが配置されるダイパッドと、前記電源電圧を生成するブートストラップ動作に利用されるダイオードを含む半導体チップとを具備する。前記半導体チップは前記ダイパッドに絶縁性材料で固定される。前記ダイパッドは基準電圧が供給される端子に接続される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパワー半導体素子と、
第1端子と複数の第2端子とを含む複数の端子を備え、前記複数の第2端子に供給される電源電圧を利用して前記複数のパワー半導体素子を制御する制御チップと、
所定の制御電圧を前記第1端子に供給するための第1導体と、
前記複数の第2端子に個別に接続されて前記電源電圧を前記複数の第2端子に供給するための複数の第1配線と、
前記制御チップが配置されるダイパッドと、
前記電源電圧を生成するブートストラップ動作に利用されるダイオードを含む半導体チップとを具備し、
前記半導体チップは前記ダイパッドに絶縁性材料で固定され、
前記ダイパッドは基準電圧が供給される端子に接続される、半導体装置。
【請求項2】
前記基準電圧は接地電圧である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制御チップは前記ダイパッドに導電性材料で固定される請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導体に接続された第2配線をさらに具備し、
前記半導体チップは、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面層に形成された前記第1導電型の第1半導体層と、
前記半導体基板の前記表面層のうちの前記第1半導体層が形成されていない領域に形成されて前記第1半導体層とともに前記ダイオードを構成する第2導電型の第2半導体層と、
前記第2配線を介して前記第1導体に電気的に接続され前記第1半導体層と接合された陽極と、
前記第1配線を介して前記第2端子に電気的に接続され前記第2半導体層に接合された陰極とを有する請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記制御チップは、前記陽極に電気的に接続された中継端子を前記複数の端子に含み、
前記第2配線は、前記中継端子と前記第1端子とを接続する中継パターンを含む、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップは、
前記電源電圧の第1交流相を生成するブートストラップ動作に利用される第1ダイオードを含む第1半導体チップと、
前記電源電圧の第2交流相を生成するブートストラップ動作に利用される第2ダイオードを含む第2半導体チップと、
前記電源電圧の第3交流相を生成するブートストラップ動作に利用される第3ダイオードを含む第3半導体チップとを有し、
前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップおよび前記第3半導体チップはそれぞれ、前記ダイパッドに前記絶縁性材料で固定される、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1導体に接続された第2配線をさらに具備し、
前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップおよび前記第3半導体チップはそれぞれ、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面層に形成された前記第1導電型の第1半導体層と、
前記半導体基板の前記表面層のうちの前記第1半導体層が形成されていない領域に形成されて前記第1半導体層とともに前記ダイオードを構成する第2導電型の第2半導体層と、
前記第2配線を介して前記第1導体に電気的に接続され前記第1半導体層と接合された陽極と、
前記第1配線を介して前記第2端子に電気的に接続され前記第2半導体層に接合された陰極とを有する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1半導体チップが有する前記陽極と、前記第2半導体チップが有する前記陽極と、前記第3半導体チップが有する前記陽極とを互いに電気的に接続する第3配線とをさらに具備する、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第3配線は、
前記第1半導体チップが有する前記陽極に一端が接合され、前記第2半導体チップが有する前記陽極に他端が接合された第1ワイヤと、
前記第2半導体チップが有する前記陽極に一端が接合され、前記第3半導体チップが有する前記陽極に他端が接合された第2ワイヤとを含む、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体チップは、
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板に設けられ、前記電源電圧の第1交流相を生成するブートストラップ動作に利用される第1ダイオードと、
前記半導体基板に設けられ、前記電源電圧の第2交流相を生成するブートストラップ動作に利用される第2ダイオードと、
前記半導体基板に設けられ、前記電源電圧の第3交流相を生成するブートストラップ動作に利用される第3ダイオードとを含む、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の半導体装置として、スイッチング素子およびブートストラップダイオードを備え電力変換を実行可能な半導体装置が知られている(例えば特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/199608号
【特許文献2】特開2019-192833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、産業機器や家電製品などでインバータ化による高効率化が進む一方、スイッチング素子を制御する制御部およびブートストラップダイオードを含む電力変換部の小型化が要求されている。小型化のため制御部およびブートストラップダイオードを同一のダイパッド上に配置した構成は、制御部に入力されたノイズに起因して制御部およびダイパッドの絶縁耐圧を超えた電圧が制御部に印加され、半導体装置が誤動作する可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、ノイズ耐性の低下を抑制しつつ小型化を図ることができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本開示の一態様に係る半導体装置は、複数のパワー半導体素子と、第1端子と複数の第2端子とを含む複数の端子を備え、前記複数の第2端子に供給される電源電圧を利用して前記複数のパワー半導体素子を制御する制御チップとを具備する。また、半導体装置は、所定の制御電圧を前記第1端子に供給するための第1導体と、前記複数の第2端子に個別に接続されて前記電源電圧を前記複数の第2端子に供給するための複数の第1配線と、前記制御チップが配置されるダイパッドと、前記電源電圧を生成するブートストラップ動作に利用されるダイオードを含む半導体チップとを具備する。前記半導体チップは前記ダイパッドに絶縁性材料で固定される。前記ダイパッドは基準電圧が供給される端子に接続される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、ノイズ耐性の低下を抑制しつつ小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1実施形態に係る半導体装置の電気的な構成を例示する回路図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る半導体装置に具備された各要素の配置を例示するレイアウト図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る半導体装置に具備された半導体チップおよび高電位側の駆動チップの近傍を拡大して示すレイアウト図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る半導体装置に具備された1個の半導体チップの構成例を示す平面図である。
図5図4中に示すA-A´線で切断した半導体チップの断面図である。
図6】本開示の第1実施形態に係る半導体装置が備える複数の半導体チップの配置および接続を例示する断面図である。
図7】本開示の第1実施形態に係る半導体装置に具備された高電位側の制御チップの構成を例示する平面図である。
図8図7中に示すC-C´線で切断した高電位側の制御チップの断面図である。
図9】本開示の第2実施形態に係る半導体装置の電気的な構成を例示する回路図である。
図10】本開示の第2実施形態に係る半導体装置に具備された各要素の配置を例示するレイアウト図である。
図11】本開示の第2実施形態に係る半導体装置に具備された半導体チップおよび高電位側の駆動チップの近傍を拡大して示すレイアウト図である。
図12図11中に示すC-C´線で切断した半導体チップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、各図面においては、各要素の寸法および縮尺が実際の製品とは相違する場合がある。また、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
【0010】
A:第1実施形態
図1は、本実施形態に係る半導体装置100Aの電気的な構成を例示する回路図である。半導体装置100Aは、3相モータ等の電動機Mを駆動する3相インバータ回路として利用されるインテリジェントパワーモジュールである。半導体装置100Aには制御装置102が接続される。制御装置102は、例えば、半導体装置100Aの動作を制御する外部のマイクロプロセッサ(Micro Processing Unit:MPU)である。
【0011】
なお、以下の説明においては、電動機Mにおける任意のひとつの交流相を記号kにより識別する。すなわち、記号kは、U相とV相とW相との何れかを意味する(k=U,V,W)。例えば、参照符号に付加された符号[k]は、電動機Mの交流相毎の要素であることを意味する。図1に例示される通り、半導体装置100Aは、外部接続用の複数の接続端子T(Tin_H[k],Tin_L[k],Tout[k],Tc_H,Tc_L,Tg,Tp,Tn[k],Tbs[k])を具備する。
【0012】
半導体装置100Aは、3個の駆動チップ21[k](21[U],21[V],21[W])と、3個の駆動チップ22[k](22[U],22[V],22L[W])と3個の半導体チップ30A[k](30A[U],30A[V],30A[W])と1個の制御チップ41と1個の制御チップ42とを具備する。電動機Mの3相(U相,V相,W相)の各々について駆動チップ21[k]と駆動チップ22[k]と半導体チップ30A[k]とが設置される。
【0013】
駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k]の各々は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor:IGBT)と還流ダイオード(Free Wheeling Diode:FWD)とを含む逆導通(RC:Reverse Conducting)-IGBTであり、主電極Eと主電極Cと制御電極Gとを具備する。主電極Eおよび主電極Cは、制御対象となる電流が入力または出力される電極である。主電極CはFWDの陰極としても機能し、主電極EはFWDの陽極としても機能する。制御電極Gは、IGBTのオン/オフを制御するための駆動電圧が印加されるゲート電極である。なお、駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k]は、「パワー半導体素子」の一例である。つまり、半導体装置100Aは、複数のパワー半導体素子を具備している。
【0014】
駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k]の組は、電動機Mのひとつの交流相に対応するハーフブリッジ回路を構成する。駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k]は、接続端子Tpと接続端子Tn[k]との間に直列に接続される。駆動チップ21[k]と駆動チップ22[k]との間の接続点は、接続端子Tout[k]に電気的に接続される。接続端子Tout[k]は、電動機Mのひとつの交流相に電力を供給するための出力端子である。接続端子Tpには外部電源103から高電位側の電源電圧が供給される。接続端子Tn[k]には低電位側の電源電圧(接地電圧)が供給される。なお、3個の接続端子Tn[k]は、3相に共通の1個の端子に置換されてもよい。
【0015】
制御チップ41は、高電位側の各駆動チップ21[k]を制御するHVIC(High Voltage IC)である。図1に例示される通り、制御チップ41は、複数の端子H(Hin[k],Hout[k],Hb[k],Hs[k],Hm[k](図1では不図示、図3参照),Hc,Hg,Hr)を具備する。すなわち、制御チップ41は、電動機Mの交流相毎に、入力端子Hin[k]と出力端子Hout[k]と電源端子Hb[k]と電源端子Hs[k]と中間端子Hm[k](図1では不図示、図3参照)とを具備する。
【0016】
制御装置102から接続端子Tin_H[k]に供給される制御信号が入力端子Hin[k]に入力される。制御信号は、駆動チップ21[k]を制御するための信号である。電源端子Hb[k]には高電位側の電源電圧Vb[k]が供給され、電源端子Hs[k]には低電位側の電源電圧Vs[k]が供給される。制御チップ41は、電源端子Hb[k]および電源端子Hs[k]に供給される電源電圧により動作することで、入力端子Hin[k]に供給される制御信号に応じた駆動電圧を出力端子Hout[k]に出力する。出力端子Hout[k]は、駆動チップ21[k]におけるIGBTの制御電極Gに電気的に接続される。以上の説明から理解される通り、制御チップ41は、電源端子Hb[k]に供給される電源電圧Vb[k]を利用して駆動チップ21[k]を制御する。電源端子Hb[k]は、「第2端子」の一例である。
【0017】
また、制御チップ41は、電圧端子Hcと、接地端子Hgと、中継端子Hrとを具備する。電圧端子Hcには、外部電源104から接続端子Tc_Hを介して制御電圧Vccが供給される。中継端子Hrは、中継パターン401aによって電圧端子Hcに接続されている。制御電圧Vccは、制御チップ41の動作に利用される所定の直流電圧である。また、制御電圧Vccは、制御チップ41の電源電圧Vb[k]を生成するブートストラップ動作にも利用される。他方、接地端子Hgは接地される。なお、電圧端子Hcは、「第1端子」の一例である。
【0018】
したがって、半導体装置100Aは、電圧端子Hc(第1端子の一例)と電源端子Hb[U],Hb[V],Hb[W](複数の第2端子の一例)とを含む端子H(Hin[k],Hout[k],Hb[k],Hs[k],Hm[k],Hc,Hg,Hr)(複数の端子の一例)を備えた制御チップ41を具備している。
【0019】
制御チップ42は、低電位側の各駆動チップ22[k]を制御するLVIC(Low VoltageIC)である。また、制御チップ41と制御チップ42とが単体のチップで構成されてもよい。図1に例示される通り、制御チップ42は、複数の端子L(Lin[k],Lout[k],Lc,Lg)を具備する。すなわち、制御チップ42は、電動機Mの交流相毎に、入力端子Lin[k]と出力端子Lout[k]とを具備する。
【0020】
制御装置102から接続端子Tin_L[k]に供給される制御信号が入力端子Lin[k]に入力される。制御信号は、各駆動チップ22[k]を制御するための信号である。制御チップ42は、入力端子Lin[k]に供給される制御信号に応じた駆動電圧を出力端子Lout[k]に出力する。出力端子Lout[k]は、駆動チップ22[k]におけるIGBTの制御電極Gに電気的に接続される。すなわち、制御チップ42は、各駆動チップ22[k]を制御する。
【0021】
また、制御チップ42は、電圧端子Lcと接地端子Lgとを具備する。電圧端子Lcには、外部電源104から接続端子Tc_Lを介して制御電圧Vccが供給される。なお、制御チップ41に供給される制御電圧Vccと制御チップ42に供給される制御電圧Vccとは相違してもよい。他方、接地端子Lgは接地される。
【0022】
図1に例示される通り、制御チップ41の電源端子Hb[k]は、接続端子Tbs[k]に電気的に接続される。接続端子Tbs[k]と接続端子Ts[k]との間には、容量素子B[k]が電気的に接続される。容量素子B[k]は、半導体装置100Aに外部接続されるブートストラップコンデンサである。容量素子B[k]のそれぞれは、第1電極b1と第2電極b2とを具備する。第1電極b1は接続端子Tbs[k]に電気的に接続され、第2電極b2は接続端子Ts[k]に電気的に接続される。
【0023】
半導体チップ30A[k](例えば、30A[U],30A[V],30A[W])は、接続端子Tc_Hと接続端子Tbs[k]とに接続される。すなわち、制御チップ41における電圧端子Hcと電源端子Hb[k]とに半導体チップ30A[k]が接続される。半導体チップ30A[k]は、前述のブートストラップ動作に利用される。
【0024】
図1に例示される通り、半導体チップ30A[k]はダイオードD[k](例えば、D[U],D[V],D[W])を具備する。ダイオードD[k]は、ブートストラップ動作において容量素子B[k]を充電する経路(充電経路α)を構成するブートストラップダイオードである。ダイオードD[k]は、半導体チップ30A[k]に設けられた半導体基板301(図1では不図示、図5参照)およびN-拡散層302(図1では不図示、図5参照)を備えている。ダイオードD[k]では陽極315[k](図5参照)が共有され、陽極315[k]は接続端子Tc_Hおよび電圧端子Hcに電気的に接続される。ダイオードD[k]の陰極304[k]は、接続端子Tbs[k]および電源端子Hb[k]に電気的に接続される。
【0025】
半導体チップ30A[k]は、ダイオードD[k]の陰極304[k]側に、ダイオードD[k]を形成するN-拡散層302によって形成されてダイオードD[k]と直列に接続されたN-拡散層302の抵抗成分(ドリフト抵抗)を有している。図1では、理解を容易にするため、N-拡散層302の抵抗成分(ドリフト抵抗)は、ダイオードD[k]と接続端子Tbs[k]および電源端子Hb[k]との間に設けられた抵抗素子R[k](例えば、R[U],R[V],R[W])として図示されている。抵抗素子R[k]は、ブートストラップ動作においてダイオードD[k]に流れる電流を制限する。抵抗素子R[k]は、N-拡散層302の抵抗成分ではなく、例えばポリシリコンによって形成され、ダイオードD[k]に直列に接続された素子であってもよい。
【0026】
半導体チップ30A[k]の詳細な構成については後述する。このように、半導体装置100Aは、電源電圧Vb[k]を生成するブートストラップ動作に利用され電源端子Hb[k]と同数の半導体チップ30A[k]を具備している。半導体チップ30A[k]は、それぞれダイオードD[k]を含む。
【0027】
例えば、半導体装置100Aは、電源電圧Vb[k]を生成するブートストラップ動作に利用され3個の電源端子Hb[U],Hb[V],Hb[W]と、3個の半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]を具備している。半導体チップ30A[U]は、ダイオードD[U]を含む。半導体チップ30A[V]は、ダイオードD[V]を含む。半導体チップ30A[W]は、ダイオードD[W]を含む。
【0028】
以上の構成において、駆動チップ21[k]をオフ状態に維持したまま駆動チップ22[k]をオン状態に制御することでブートストラップ動作が実行される。駆動チップ22[k]がオン状態に制御されることで、図1の充電経路αが形成される。なお、図1においては、半導体チップ30A[V]に設けられたダイオードD[V]を経由する充電経路αのみが便宜的に図示されているが、U相およびW相についても同様に充電経路αが形成される。
【0029】
充電経路αは、接続端子Tc_HとダイオードD[k]と抵抗素子R[k]と接続端子Tbs[k]と容量素子B[k]と接続端子Ts[k]と駆動チップ22[k]と接続端子Tn[k]とを以上の順番で経由する電流経路である。充電経路αにより容量素子B[k]が充電される。具体的には、容量素子B[k]の両端間の電圧は、充電経路αを介した充電により制御電圧Vccに維持される。したがって、電源端子Hb[k]に供給される電源電圧Vb[k]は、電源端子Hs[k]の電源電圧Vs[k]と比較して制御電圧Vccだけ高い電圧に設定される。以上のようにブートストラップ動作は、半導体チップ30A[k]と容量素子B[k]とを含むブートストラップ回路を利用して電源電圧Vb[k]を生成する動作である。
【0030】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置100Aに具備された各種備品の配置を例示するレイアウト図である。図2では、所定の要素同士を接続するワイヤが両端に黒丸を有する直線で図示されている。図3は、半導体装置100Aに具備された半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]および高電位側の制御チップ41の近傍を拡大して示すレイアウト図である。図4は、半導体装置100Aに具備された1個の半導体チップ30A[k]の構成例を示す平面図である。図5は、図4中に示すA-A´線で切断した半導体チップ30A[k]の断面図である。
【0031】
以下の説明においては、図2から図5に例示される通り、相互に直交するX軸とY軸とZ軸とを想定する。半導体装置100Aの長手方向(すなわち半導体チップ30A[k]や制御チップ41,42などの各要素を内包し薄板直方体形状を有する筐体50(詳細は後述)の長辺の方向)をX軸方向とする。半導体装置100Aの短手方向(すなわち筐体50の短辺の方向)をY軸方向とする。半導体装置100Aの厚さ方向(すなわち筐体50の長辺の方向および短辺の方向に直交する方向)をZ軸方向とする。X軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向の反対の方向をX2方向と表記する。また、Y軸に沿う一方向をY1方向と表記し、Y1方向の反対の方向をY2方向と表記する。同様に、Z軸に沿う一方向をZ1方向と表記し、Z1方向の反対の方向をZ2方向と表記する。また、半導体装置100Aの任意の要素をZ軸の方向(Z1方向またはZ2方向)に沿って視認することを以下では「平面視」と表記する。
【0032】
なお、実際に使用される場面では、半導体装置100Aは任意の方向に設置され得るが、以下の説明においては便宜的に、Z1方向を下方と想定し、Z2方向を上方と想定する。したがって、半導体装置100Aの任意の要素のうちZ1方向を向く表面が「下面」と表記され、当該要素のうちZ2方向を向く表面が「上面」と表記される場合がある。
【0033】
図2に例示される通り、半導体装置100Aは、図1に例示した各要素を収容する筐体50を具備する。筐体50は、樹脂ケース51と支持板52と封止樹脂53とを具備する。樹脂ケース51は、樹脂材料で形成された矩形枠状の構造体である。筐体50は、例えば、PPS(polyphenylene sulfide)樹脂、PBT(polybutylene terephthalate)樹脂、PBS(poly butylene succinate)樹脂、PA(polyamide)樹脂、またはABS(acrylonitrile-butadiene-styrene)樹脂等の各種の樹脂材料により形成される。
【0034】
支持板52は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料で形成された絶縁層(不図示)と、例えばアルミニウムまたは銅等の高熱伝導性の金属材料で形成された放熱板(不図示)との積層で構成される板状部材である。当該絶縁層は、当該放熱板の上面を被覆する。当該放熱板は、板状部材である。支持板52は、樹脂ケース51の開口を閉塞するように樹脂ケース51に固定される。支持板52を底面として樹脂ケース51により包囲された空間に、3個の駆動チップ21[k](21[U],21[V],21[W])と、3個の駆動チップ22[k](22[U],22[V],22[W])と、3個の半導体チップ30A[k](30[U],30[V],30[W])と、制御チップ41と、制御チップ42とが収容される。駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k]の各々の上面には主電極Eおよび制御電極Gが形成され、各々の下面には主電極C(図2では不図示、図1参照)が形成される。
【0035】
封止樹脂53は、樹脂ケース51の内側の空間に充填された樹脂であり、当該空間に収容された要素を封止する。封止樹脂53は、例えばシリコーンゲルまたはエポキシ樹脂等の各種の樹脂材料により形成される。なお、封止樹脂53は、樹脂材料に加えて、酸化珪素または酸化アルミニウム等の各種の絶縁フィラーを含んでもよい。
【0036】
筐体50にはリードフレーム60が設置される。リードフレーム60は、例えば銅または銅合金等の低抵抗な金属材料で形成された配線である。リードフレーム60は、例えばインサート成形により樹脂ケース51と一体に形成される。リードフレーム60は、複数のリードを含む導電体である。前述の各接続端子Tは、複数のリードのうち筐体50から外部に露出した端部である。
【0037】
図2に例示される通り、筐体50は、平面視で素子領域55と端子領域56と制御領域57とを含む。素子領域55と端子領域56と制御領域57との各々は、X軸に沿って長尺な領域である。端子領域56と制御領域57との間に素子領域55が位置する。
【0038】
複数の接続端子Tのうち制御チップ41および制御チップ42の動作に関連する一部の接続端子T(Tin_H[k],Tin_L[k],Tc_H,Tc[L],Tg,Tbs[k])は、制御領域57の側面からY1方向に突出する制御端子であり、X軸に沿って相互に間隔をあけて配置される。また、駆動チップ21[k]の主電極E[k]と電気的に接続され、かつ、容量素子B[k]の低電位側と接続される接続端子Ts[k]、制御チップ42の電圧端子Hcに接続される接続端子Tc_Lも制御領域57の側面からY1方向に突出する制御端子であり、X軸に沿って相互に間隔をあけて配置される。他方、複数の接続端子Tのうち電動機Mに供給される電力に関連する一部の接続端子T(Tout[k],Tp,Tn[k])は、端子領域56の側面からY2方向に突出する端子であり、X軸に沿って相互に間隔をあけて配置される。
【0039】
図2に例示される通り、リードフレーム60は、1個のダイパッド61と3個のダイパッド62[k]とを含む。ダイパッド61およびダイパッド62[k]のそれぞれは、平面視で素子領域55内に位置する金属板である。ダイパッド61には、3個の駆動チップ21[k]が実装される。ダイパッド62[k]には、1個の駆動チップ22[k]が実装される。駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k]の実装には、例えば半田または金属焼結材等の導電性の接合材が使用される。以上の説明から理解される通り、素子領域55には、3個の駆動チップ21[k]と3個の駆動チップ22[k]とが設置される。なお、3個のダイパッド62[k]は単体のダイパッドに置換されてよい。
【0040】
リードフレーム60は、接続端子Tpと接続端子Tout[k]と接続端子Tn[k]との各々から延伸するリードを含む。接続端子Tpは、リード(不図示)を介してダイパッド61に連結される。したがって、駆動チップ21[k]の下面の主電極C(図2では不図示、図1参照)は、接続端子Tpに電気的に接続される。接続端子Tout[k]は、リード(不図示)を介してダイパッド62[k]に連結される。また、接続端子Tout[k]は、駆動チップ21[k]の上面の主電極Eに対してワイヤにより電気的に接続される。したがって、図1の例示の通り、駆動チップ21[k]の主電極Eと駆動チップ22[k]の下面の主電極Cとが、接続端子Tout[k]に電気的に接続される。また、各接続端子Tn[k]は、駆動チップ22[k]の上面の主電極Eに対してワイヤにより電気的に接続される。
【0041】
また、図2に例示される通り、リードフレーム60は、ダイパッド64と3個の接続パッド65[k]とを含む。ダイパッド64と接続パッド65[k]とは、平面視で制御領域57内に位置する金属板である。
【0042】
リードフレーム60は、制御チップ42の動作に関連する制御用の接続端子T(Tin_H[k],Tin_L[k],Tc_H,Tc_L,Tg,Tbs[k],Ts[k])から延伸するリードを含む。ダイパッド64は、リードRdgを介して接続端子Tgに連結される。したがって、ダイパッド64には、接続端子Tgから接地電圧(GND)が供給される。接地電圧(GND)は、「基準電圧」の一例である。なお、ダイパッド64と接続端子Tgとは、一体的に形成されてよい。
【0043】
制御チップ41はダイパッド64の表面に接合される。詳細は後述するが、制御チップ41の実装には、導電性材料(例えば接合材や半田)が使用される。したがって、制御チップ41の下面とダイパッド64とは電気的に接続される。
【0044】
制御チップ41の上面には、前述の複数の端子Hが形成される(図3参照)。制御チップ41の端子Hのそれぞれは、駆動チップ21[k]または接続端子Tに対してワイヤにより電気的に接続される。例えば、図2および図3に例示される通り、制御チップ41の出力端子Hout[k]は駆動チップ21[k]の上面の制御電極Gに接続され、中間端子Hm[k]は駆動チップ21[k]の上面の主電極Eに接続される。また、駆動チップ21[k]の上面の電源端子Hs[k]は、接続端子Ts[k]に連結されたリードに接続される。中間端子Hm[k]および電源端子Hs[k]は制御チップ41内で電気的に接続されている。制御チップ41の上面の接地端子Hgは、ワイヤQdgを介してダイパッド64に電気的に接続される。
【0045】
図2に例示される通り、制御チップ42はダイパッド64の表面に接合される。制御チップ42の実装には、絶縁性の接着剤が使用される。したがって、制御チップ42の下面とダイパッド64とは電気的に絶縁される。制御チップ42の上面には、前述の複数の端子L(図1参照)が形成される。制御チップ42の端子Lのそれぞれは、駆動チップ22[k]または接続端子Tに対してワイヤにより電気的に接続される。例えば、制御チップ42の出力端子Lout[k](図1参照)は駆動チップ22[k]の上面の制御電極Gに接続される。また、電圧端子Lc(図1参照)は、接続端子Tc_Lに連結されたリードに接続され、接地端子Lg(図1参照)は、接続端子Tgに連結されたリードに接続される。
【0046】
また、リードフレーム60は、制御電圧Vccを電圧端子Hcに供給するためのリードRd63を具備する。リードRd63は、「第1導体」の一例である。リードRd63は、外部電源104(図1参照)から制御電圧Vccが入力される接続端子Tc_H(図1参照)に電気的に接続されている。半導体装置100Bは、リードRd63に電気的に接続された配線部材401を具備する。配線部材401は、「第2配線」の一例である。
【0047】
配線部材401は、中継パターン401aおよびワイヤ401bを有している。中継パターン401aは、中継端子Hrと電圧端子Hcとを電気的に接続する。ワイヤ401bは、電圧端子HcとリードRd63とを電気的に接続する。
【0048】
電圧端子Hcは、接続端子Tc_Hに対して、ワイヤ401bとリードRd63とを介して電気的に接続される。したがって、電圧端子Hcには、接続端子Tc_Hから制御電圧Vccが供給される。接続端子Tc_HとリードRd63とは、一体的に形成されてよい。なお、リードRd63は「第1導体」の一例である。したがって、半導体装置100Aは、制御電圧Vcc(所定の制御電圧の一例)を電圧端子Hc(第1端子の一例)に供給するためのリードRd63(第1導体の一例)を具備している。リードRd63と、接続端子Tc_Hとのうちの一部または全部を、「第1導体」としてもよい。
【0049】
接続パッド65[k]は、接続端子Tbs[k]に対してリードを介して連結される。3個の接続パッド65[k]は、X軸に沿って相互に間隔をあけて配列される。具体的には、3個の接続パッド65[k]は、筐体50のうちY1方向に位置する周縁に沿って配列する。前述の通り、接続端子Tbs[k]には容量素子B[k]の高電位側が接続される。すなわち、接続パッド65[k]には容量素子B[k]が外部接続される。接続パッド65[k]および接続端子Tbs[k]と、接続パッド65[k]および接続端子Tbs[k]を連結するリードとは、一体的に形成されてよい。
【0050】
次に、半導体チップ30A[k]の具体的な構成を図1から図3を参照しつつ図4および図5を用いて説明する。図5に例示される通り、半導体チップ30A[k]は、ダイオードD[k]を備える。ダイオードD[k]は、P型(第1導電型の一例)の半導体基板301の表面層に形成されたP型の拡散層316と、半導体基板301の表面層に形成されたN型(第2導電型の一例)のN-拡散層302とを含む。P型の拡散層316が「第1半導体層」の一例である。N-拡散層302が「第2半導体層」の一例である。
【0051】
なお、半導体基板301の表面層とは、半導体基板301の表面と、半導体基板301の表面と直交する深さ方向(例えば、Z1方向)において半導体基板301の表面の近傍に位置する領域と、を含む層を意味する。P型の拡散層316は、N-拡散層302が形成されていない半導体基板301の表面層に形成されている。図5では、理解を容易にするため、N-拡散層302およびP型の拡散層316の接合部分に形成されるpn接合部317[k]がダイオードの回路図記号で表されている。
【0052】
P型の拡散層316は、ダイオードD[k]のアノード領域を構成し、N-拡散層302は、ダイオードD[k]のカソード領域を構成する。なお、N-拡散層302は抵抗素子R[k]でもある。半導体基板301もダイオードD[k]のアノード領域として機能するが主要な電流が流れるのは、N-拡散層302と拡散層316との接合部分である。
【0053】
ダイオードD[k]のpn接合部317[k]は、拡散層316とN-拡散層302[U]との接合部に形成される。
【0054】
図5に例示される通り、半導体チップ30A[k]は、N-拡散層302が形成されていない半導体基板301の表面層に形成されたP型の拡散層316を含む。したがって、N-拡散層302は、平面視で島状に形成されており、その周囲に拡散層316が形成されている。図5では、両端の拡散層316の幅とN-拡散層302の両側の拡散層316の幅とが異なる幅で形成されているが、同じ幅であってもよい。
【0055】
拡散層316は、半導体基板301の表面の所定領域にP型の不純物として例えばボロンをイオン注入し、イオン注入した箇所を活性化することにより形成される。拡散層316は、例えばN-拡散層302より深い深さで形成される。
【0056】
半導体チップ30A[k]は、拡散層316の表面の一部に形成されたP+拡散層318を含む。P+拡散層318は、例えば拡散層316よりも高い不純物濃度を有している。P+拡散層318におけるP型の不純物濃度は、例えばN+拡散層303におけるN型の不純物濃度と同じである。
【0057】
P+拡散層318は、P型の不純物として例えばボロンをイオン注入し、イオン注入した箇所を活性化することにより拡散層316の表面の所定領域に拡散層316よりも浅い深さで形成される。
【0058】
P+拡散層318は、P型の拡散層316の表面の一部であって半導体基板301の側壁とN-拡散層302[W]との間の領域に形成されている。P+拡散層318とN-拡散層302との間には、P型の拡散層316が介在している。また、P型の拡散層316とN+拡散層303との間には、N-拡散層302が介在している。例えば、半導体基板301の表面およびその近傍(すなわち、表面層)では、この表面に水平な方向において、P+拡散層318とP型の拡散層316とN-拡散層302とN+拡散層303とがこの順で並んで配置されている。
【0059】
図4および図5に例示される通り、半導体チップ30A[k]は、N-拡散層302上に形成された陰極304[k]を含む。陰極304[k]は、N+拡散層303に接触して形成されている。陰極304[k]は、ワイヤQb[k](第1配線の一例)(図4および図5では不図示、図3参照)を介して電源端子Hb[k]に電気的に接続される。
【0060】
図5に例示される通り、陰極304[k]は、導電性プラグ304aをN+拡散層303に接触して形成されている。このため、陰極304[k]およびN+拡散層303は、オーミック接続される。これにより、陰極304[k]とN+拡散層303との接触抵抗の低減が図られる。
【0061】
半導体チップ30A[k]は、陽極315[k]を含む。陽極315[k]は、拡散層316の上に形成されて配線部材401(図4および図5では不図示、図3参照)を介してリードRd63(図4および図5では不図示、図3参照)に電気的に接続される。
【0062】
より具体的には、陽極315[k]は、P+拡散層318に接触して形成された導電性プラグ315aと、導電性プラグ315aに接触して形成された電極プレート315eとを含む。導電性プラグ315aは、P+拡散層318に接触して形成されている。このため、陽極315[k]およびP+拡散層318は、オーミック接続される。これにより、陽極315[k]とP+拡散層318との接触抵抗の低減が図られる。
【0063】
電極プレート315eは、薄板直方体形状を有している。電極プレート315eは、陰極304[k]が配置される箇所に陰極304[k]の電極パッド304bが挿入される開口を有している。陰極304[k]の電極パッド304bは、電極プレート315eに接触せずに当該開口に配置されている。電極プレート315eは、例えばアルミニウムで形成されている。
【0064】
図3に例示される通り、半導体チップ30A[k](例えば、後述の図6に示す半導体チップ30A[U])の陽極315[k]の一部である電極プレート315eは、ワイヤQ315によって制御チップ41の中継端子Hrに電気的に接続されている。ワイヤQ315は、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。
【0065】
図4および図5に例示される通り、半導体チップ30A[k]は、半導体基板301の表面を覆って形成された絶縁膜70を含む。絶縁膜70は、半導体基板301の表面に接触して形成された酸化膜などの絶縁膜701と、絶縁膜701の上に形成されたポリイミドなどの保護膜702とを有している。また、半導体チップ30A[k]は、絶縁膜70(図3では不図示、図5参照)に形成された開口部702p1,702p2,700[k](図3では不図示、図4図5参照)をそれぞれ有する。開口部702p1,702p2の底面では、電極プレート315eの表面の一部がそれぞれ露出している。開口部700[k]の底面では、電極パッド304bの表面の一部が露出している。
【0066】
半導体チップ30A[k](例えば、後述の図6に示す半導体チップ30A[U])において、ワイヤQ315の一端は、絶縁膜70に形成された開口部702p1に露出する電極プレート315eの表面の一部に接合されている。ワイヤQ315の他端は、中継端子Hrの表面に接合されている。中継端子Hrは、中継パターン401aの一端に形成されている。中継パターン401aの他端には、電圧端子Hcが形成されている。電圧端子HcとリードRd63とは、ワイヤ401bによって接続されている。ワイヤ401bは、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。
【0067】
リードRd63は、外部電源104(図1参照)から制御電圧Vccが入力される接続端子Tc_H(図1および図2参照)に接続されている。このため、陽極315[k]には、接続端子Tc_H、リードRd63、配線部材401(すなわちワイヤ401bおよび中継パターン401a)およびワイヤQ315を介して制御電圧Vccが供給される。
【0068】
図5に戻って、半導体チップ30A[k]は、半導体基板301の表面の反対側の面(すなわち裏面)を絶縁性接着剤72によってダイパッド64に接着される。詳細は後述するが、半導体チップ30A[k]の半導体基板301のボディには、陽極315[k]から制御電圧Vccが供給される。一方、ダイパッド64は、接地電圧が供給される接続端子TgにリードRdgを介して接続される。このため、ダイパッド64には、接続端子TgおよびリードRdgを介して接地電圧が供給される。
【0069】
したがって、半導体チップ30A[k]の半導体基板301に供給される電圧と、ダイパッド64に供給される電圧とは異なる。しかしながら、半導体チップ30A[k]の半導体基板301およびダイパッド64は、絶縁性接着剤72によって絶縁されるため、接続端子Tc_Hおよび接続端子Tgが短絡することが防止される。
【0070】
制御チップ41に設けられた接地端子Hgは、ワイヤQgdを介してダイパッド64に接続される。ワイヤQgdは、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。ワイヤQgdの一端は、制御チップ41の接地端子Hgの表面に接合され、ワイヤQgdの他端は、ダイパッド64の表面に接合される。これにより、制御チップ41の接地端子Hgには、接続端子Tg、ダイパッド64およびワイヤQgdを介して接地電圧が供給される。
【0071】
図6は、半導体装置100Aが備える複数(本実施形態では3個)の半導体チップ30A[k]の配置および接続を例示する断面図である。図6は、図3中に示すB-B´線で切断した3個の半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]を例示する断面図である。
【0072】
図6に例示される通り、半導体装置100Aは、例えば3個の半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]を備える。半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]は、互いに一定の間隔を置いて配置されている。例えば、半導体チップ30A[U],30[V],30[W]は、制御チップ41の長手方向(X軸方向)に沿って、一定の間隔を置いて配置されている。半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]は、それぞれ、絶縁性接着剤72を介してダイパッド64の表面に固定されている。
【0073】
半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]は、絶縁膜70に形成された開口部702p1,702p2をそれぞれ有する。例えば、半導体チップ30A[U]の開口部702p1の底面に露出する電極プレート315eの表面には、ワイヤQ315の一端が接合されている。このワイヤQ315の他端は、中継端子Hrの表面に接合されている。
【0074】
半導体チップ30A[U]の開口部702p2の底面に露出する電極プレート315eの表面には、ワイヤQ316の一端が接合されている。このワイヤQ316の他端は、半導体チップ30A[V]の開口部702p1の底面に露出する電極プレート315eの表面に接合されている。ワイヤQ316は、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。これにより、半導体チップ30A[U]の電極プレート315eと半導体チップ30A[V]の電極プレート315eは、ワイヤQ316を介して互いに電気的に接続される。半導体チップ30A[V]の電極プレート315eには、ワイヤQ315,Q316を介して制御電圧Vccが供給される。
【0075】
半導体チップ30A[V]の開口部702p2の底面に露出する電極プレート315eの表面には、ワイヤQ317の一端が接合されている。このワイヤQ317の他端は、半導体チップ30A[W]の開口部702p1の底面に露出する電極プレート315eの表面に接合されている。ワイヤQ317は、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。これにより、半導体チップ30A[V]の電極プレート315eと半導体チップ30A[W]の電極プレート315eは、ワイヤQ317を介して互いに電気的に接続される。半導体チップ30A[W]の電極プレート315eには、ワイヤQ315,Q316,Q317を介して制御電圧Vccが供給される。
【0076】
なお、図6において、半導体チップ30A[U]が「第1半導体チップ」の一例であり、半導体チップ30A[U]が有するダイオードD[U]が「第1ダイオード」の一例である。ダイオードD[U]は、電源電圧Vb[U](電源電圧の第1交流相の一例)を生成するブートストラップ動作に利用される。半導体チップ30A[V]が「第2半導体チップ」の一例であり、半導体チップ30A[V]が有するダイオードD[V]が「第2ダイオード」の一例である。ダイオードD[V]は、電源電圧Vb[V](電源電圧の第2交流相の一例)を生成するブートストラップ動作に利用される。半導体チップ30A[W]が「第3半導体チップ」の一例であり、半導体チップ30A[W]が有するダイオードD[W]が「第3ダイオード」の一例である。ダイオードD[W]は、電源電圧Vb[W](電源電圧の第2交流相の一例)を生成するブートストラップ動作に利用される。また、ワイヤQ315は例えば「第2配線」の一部である。ワイヤQ316,Q317は「第3配線」の一例である。ワイヤQ316が、第3配線の「第1ワイヤ」の一例である。ワイヤQ317が、第3配線の「第2ワイヤ」の一例である。
【0077】
次に、半導体チップ30Aの陰極304[k]とワイヤQb[k]との接続について、より具体的に説明する。図3に例示される通り、陰極304[k]の電極パッド304bには、ワイヤQb[k]が接続されている。ワイヤQb[k]は、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。ワイヤQb[k]は、ワイヤ配線Qb1およびワイヤ配線Qb2を有している。
【0078】
ワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb1は、接続端子Tbs[U]と、半導体チップ30A[U]の陰極304[U]とを接続する配線である。具体的には、ワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb1の一端は、接続パッド65[U]の表面に接合される。ワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb1の他端は、開口部700[U]に露出する陰極304[U]の電極パッド304bの表面に接合される。これにより、接続端子Tbs[U]と半導体チップ30A[k]の陰極304[U]とは、接続パッド65[U]およびワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb1を介して電気的に接続される。
【0079】
ワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb2は、半導体チップ30A[k]の陰極304[U]と、制御チップ41の電源端子Hb[U]とを接続する配線である。具体的には、ワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb2の一端は、開口部700[U]に露出する陰極304[U]の電極パッド304bの表面に接合される。ワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb2の他端は、制御チップ41に電源端子Hb[U]の表面に接合される。これにより、半導体チップ30A[k]の陰極304[U]と制御チップ41の電源端子Hb[U]とは、ワイヤQb[U]のワイヤ配線Qb2を介して電気的に接続される。
【0080】
ワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb1は、接続端子Tbs[V]と、半導体チップ30A[k]の陰極304[V]とを接続する配線である。具体的には、ワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb1の一端は、接続パッド65[V]の表面に接合される。ワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb1の他端は、開口部700[V]に露出する陰極304[V]の電極パッド304bの表面に接合される。これにより、接続端子Tbs[V]と半導体チップ30A[k]の陰極304[V]とは、接続パッド65[V]およびワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb1を介して電気的に接続される。
【0081】
ワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb2は、半導体チップ30A[k]の陰極304[V]と、制御チップ41の電源端子Hb[V]とを接続する配線である。具体的には、ワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb2の一端は、開口部700[V]に露出する陰極304[V]の電極パッド304bの表面に接合される。ワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb2の他端は、制御チップ41に電源端子Hb[V]の表面に接合される。これにより、半導体チップ30A[k]の陰極304[V]と制御チップ41の電源端子Hb[V]とは、ワイヤQb[V]のワイヤ配線Qb2を介して電気的に接続される。
【0082】
ワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb1は、接続端子Tbs[W]と、半導体チップ30A[k]の陰極304[W]とを接続する配線である。具体的には、ワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb1の一端は、接続パッド65[W]の表面に接合される。ワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb1の他端は、開口部700[W]に露出する陰極304[W]の電極パッド304bの表面に接合される。これにより、接続端子Tbs[W]と半導体チップ30A[k]の陰極304[W]とは、接続パッド65[W]およびワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb1を介して電気的に接続される。
【0083】
ワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb2は、半導体チップ30A[k]の陰極304[W]と、制御チップ41の電源端子Hb[W]とを接続する配線である。具体的には、ワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb2の一端は、開口部700[W]に露出する陰極304[W]の電極パッド304bの表面に接合される。ワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb2の他端は、制御チップ41に電源端子Hb[W]の表面に接合される。これにより、半導体チップ30A[k]の陰極304[W]と制御チップ41の電源端子Hb[W]とは、ワイヤQb[W]のワイヤ配線Qb2を介して電気的に接続される。
【0084】
このように、半導体装置100Aは、電源端子Hb[k](複数の第2端子の一例)に個別に接続されて制御電圧Vccを複数の電源端子Hb[k]に供給するためのワイヤQb[k](複数の第1配線の一例)を具備している。
【0085】
図3に例示される通り、半導体装置100Aは、制御チップ41に設けられた入力端子Hin[U],Hin[V],Hin[W]と、接続端子Tin_H[U],Tin_H[V],Tin_H[W]に接続されたリードRd[U],Rd[V],Rd[W]とを接続するワイヤQu,Qv,Qwを具備している。ワイヤQu,Qv,Qwは、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。
【0086】
半導体装置100Aは、制御チップ41に設けられた接地端子Hgと、ダイパッド64に接続されたリードRdgとを接続するワイヤQdgを具備している。ワイヤQdgは、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。このため、制御チップ41の接地端子Hgには、ダイパッド64に印加される接地電圧が供給される。これにより、制御チップ41および制御チップ42は、接地電圧が互いに同電位となる。
【0087】
半導体装置100Aは、制御チップ41に設けられた出力端子Hout[U],Hout[V],Hout[W]と、駆動チップ21[k]の制御電極Gとを接続するワイヤQg[U],Qg[V],Qg[W]を具備している。ワイヤQg[U],Qg[V],Qg[W]は、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。
【0088】
半導体装置100Aは、制御チップ41に設けられた中間端子Hm[U],Hm[V],Hm[W]と、駆動チップ21[k]の主電極Eとを接続するワイヤQe[U],Qe[V],Qe[W]を具備している。ワイヤQe[U],Qe[V],Qe[W]は、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。
【0089】
半導体装置100Aは、制御チップ41に設けられた電源端子Hs[U],Hs[V],Hs[W]と、接続端子Ts[U],Ts[V],Ts[W]に接続されたリードRds[U],Rds[V],Rds[W]とを接続するワイヤQs[U],Qs[V],Qs[W]を具備している。ワイヤQs[U],Qs[V],Qs[W]は、ワイヤボンディングにより形成される線状の導電体である。
【0090】
図7は、半導体装置100Aに具備された高電位側の制御チップ41の構成を例示する平面図である。図8は、本開示の第1実施形態に係る半導体装置100Aに具備された制御チップ41の構成を例示する断面図である。図8は、図7中に示すC-C´線で切断した高電位側の制御チップ41の断面図である。
【0091】
図7に例示される制御チップ41は、高電位側の各駆動チップ21[k]を制御するHVICである。制御チップ41は、例えば、外部電源103から電源電圧Vb[k]が供給されるハイサイド領域と、外部電源104から制御電圧Vccが供給されるローサイド領域とを含む。制御電圧Vccよりも電源電圧Vb[k]の方が高電圧である。ハイサイド領域は、駆動チップ21[U]を制御するための制御領域411[U]と、駆動チップ21[V]を制御するための制御領域411[V]と、駆動チップ21[W]を制御するための制御領域411[W]とを含む。
【0092】
制御領域411[U]には、1個の電源端子Hb[U]、2個の電源端子Hs[U]、1個の出力端子Hout[U]が配置されている。制御領域411[V]には、1個の電源端子Hb[V]、2個の電源端子Hs[V]、1個の出力端子Hout[V]が配置されている。制御領域411[W]には、1個の電源端子Hb[W]、2個の電源端子Hs[W]、1個の出力端子Hout[W]が配置されている。ハイサイド領域において、制御領域411[U],411[V],411[W]間は、例えば後述のP+拡散層518とN+拡散層503(図7では不図示、図8参照)との間に形成される空乏層(耐圧領域)によって電気的に分離される。あるいは、ハイサイド領域において、制御領域411[U],411[V],411[W]間は、LOCOS(local oxidation of silicon)又はトレンチアイソレーション等の素子分離部によって電気的に分離されていてもよい。
【0093】
ローサイド領域には、入力端子Hin[U],Hin[V],Hin[W]と、接地端子Hgと、電圧端子Hcと、中継端子Hrと、電圧端子Hcと中継端子Hrとを電気的に接続する中継パターン401aとが配置されている。ローサイド領域とハイサイド領域との間は、後述のP+拡散層518とN+拡散層503(図7では不図示、図8参照)との間に形成される空乏層(耐圧領域)によって電気的に分離される。あるいは、ローサイド領域とハイサイド領域との間は、LOCOS又はトレンチアイソレーション等の素子分離部によって電気的に分離されていてもよい。
【0094】
図8に例示されるように、制御チップ41は、P型の半導体基板501と、P型の半導体基板501に設けられたハイサイド領域と、P型の半導体基板501に設けられたローサイド領域(図8では不図示、図7参照)と、を含む。また、制御チップ41は、P型の半導体基板501の表面層に形成されたN型のN-ウェル層502と、N-ウェル層502が形成されていないP型の半導体基板501の表面層に形成されたP型のPウェル層516と、P型のPウェル層516の表面層に形成されたP型のP+拡散層518とを含む。Pウェル層516は、P型の半導体基板501よりもP型の不純物濃度が高い。P+拡散層518は、Pウェル層516よりもP型の不純物濃度が高い。図示しないが、P+拡散層518は図8の紙面と交差する方向(X軸の方向)に延びており、任意の端子(例えば、接地端子Hg)と電気的に接続している。これにより、P+拡散層518、Pウェル層516およびP型の半導体基板501に任意の電圧(例えば、接地電圧)が供給される。
【0095】
また、図8に例示されるように、N-ウェル層502には、N型のN+拡散層503と、Pウェル層512とが設けられている。N+拡散層503は、N-ウェル層502よりもN型の不純物濃度が高い。図示しないが、N+拡散層503は図8の紙面と交差する方向(例えば、X軸の方向)に延びており、任意の端子(例えば、電源端子Hb[k])と電気的に接続している。これにより、N+拡散層503に任意の電圧(例えば、電源電圧Vb[k];図1に示した容量素子B[k]の高電位)が供給される。
【0096】
例えば、N-ウェル層502にはP型のMOSトランジスタTrpが設けられている。Pウェル層512には、N型のMOSトランジスタTrnが設けられている。ハイサイド領域の一部は、MOSトランジスタTrp,Trnを含むCMOSトランジスタで構成されている。このCMOSトランジスタは、例えば駆動チップ21[k]の制御電極G(図8では不図示、図1参照)に入力される信号を出力するバッファ回路である。
【0097】
Pウェル層512は図8の紙面と交差する方向(X軸の方向)に延びており、任意の端子(例えば、電源端子Hs[k])と電気的に接続している。これにより、Pウェル層512に任意の電圧(例えば、電源電圧Vs[k];図1に示した容量素子B[k]の低電位)が供給される。
【0098】
なお、ハイサイド領域に設けられる回路は、上記のバッファ回路に限定されず、例えば電流検出回路やラッチ回路など、任意の回路が設けられていてもよい。
半導体基板501の表面上には絶縁膜520が設けられている。絶縁膜520は、絶縁膜70と同様に酸化膜などの絶縁膜とポリイミドなどの保護膜の積層構造とすることができる。
ここで、半導体チップ30A[K]のN-拡散層302および拡散層316の2つの領域は素子を構成する主要な領域である。これら2つの領域によって素子の耐圧が決まるからである。制御チップ41のN-ウェル層502およびPウェル層516の2つの領域と半導体チップ30A[K]のN-拡散層302および拡散層316の2つの領域はそれぞれ、同一の製造方法で形成することができる。よって、制御チップ41の前記した2つの領域と半導体チップ30A[K]の前記した2つの領域はそれぞれ、同じ深さおよび不純物濃度で形成することができる。このように、半導体チップ30A[K]の主要の構成を制御チップ41と同一の深さおよび不純物濃度で形成することにより、制御チップ41の設計に基づいて半導体チップ30A[K]を容易に設計することができる。
ここでは、2つの領域について同一の深さおよび不純物濃度で形成することを記載したが、その他の領域、例えば、N+拡散層503とN+拡散層303を同一の製造方法としてもよい。
【0099】
次に、半導体装置100Aの構成から導かれる作用・効果について、図1から図8を参照しつつ、その概要を説明する。
【0100】
図1から図8に例示される通り、半導体装置100Aは、例えば3相モータ等の電動機Mを駆動する3相インバータ回路として利用されるインテリジェントパワーモジュール(IPM)である。IPM内の実装面積縮小のために、HVICである制御チップ41と、ブートストラップダイオード(BSD)であるダイオードD[k]を有する半導体チップ30A[k]が同一のダイパッド64上に配置されている。
【0101】
ダイパッド64には、例えば接地電圧が供給される。ダイオードD[k]に電気的に接続する陽極315[k]および陰極304[k]を半導体チップ30A[k]の表面側に配置し、半導体チップ30A[k]の裏面側は絶縁性接着剤72を配置することで、ダイオードD[k]をダイパッド64から絶縁している。絶縁性接着剤72は、「絶縁性材料」の一例である。
【0102】
制御チップ41はダイパッド64に導電性接着剤71で固定されている。導電性接着剤71は、「導電性材料」の一例である。制御チップ41の裏面側には導電性接着剤71を配置することで、制御チップ41に含まれる半導体基板501に接地電圧(GND)を供給している。これにより、制御チップ41側のノイズ耐性の低下や絶縁破壊などを回避しつつ、制御チップ41と、複数の(例えば、3個の)半導体チップ30A[k]を同一のダイパッド64に搭載することができる。
【0103】
半導体装置100Aの構成から導かれる作用・効果について、図1から図8を参照しつつ、より詳しく説明する。半導体装置100では、HVICである制御チップ41と、U層用のBSDであるダイオードD[U]を有する半導体チップ30A[U]と、V層用のBSDであるダイオードD[V]を有する半導体チップ30A[V]と、W層用のBSDであるダイオードD[W]を有する半導体チップ30A[W]とがそれぞれ1チップずつ、同一のダイパッド64上に配置されている。ダイパッド64には、例えば接地電圧(GND)が供給される。また、半導体チップ30A[U],30A[V]30A[W]において、N-拡散層302とP型の拡散層316とのpn接合により、高耐圧のダイオードD[U],D[V],D[W]がそれぞれ形成されている。
【0104】
カソードにあたるN-拡散層302の表面には、オーミックとなるN+拡散層303が形成されている。アノードにあたるP型の拡散層316の表面には、オーミックとなるP+拡散層318が形成されている。N+拡散層303上およびP+拡散層318上にはそれぞれ、アルミニウム等で構成された陰極304[k]および陽極315[k]が接続している。そして、半導体基板301の表面側は絶縁膜70が設けられている。絶縁膜70には、陰極304[k]および陽極315[k]にそれぞれワイヤの一端を接合ができるように、開口部700、702p1,702p2が設けられている。
【0105】
ダイオードD[k]の充電電流経路は、半導体チップ30A[k]の表面のアノードからカソードへ、半導体基板301の表面に平行又はほぼ平行な方向(すなわち、横方向)に流れる。要求されるIPMの定格・保証耐圧に応じて、半導体チップ30A[k]のN-拡散層302の不純物濃度やドリフト長を調整することで、半導体チップ30A[k]は例えば600V、1200Vなどの耐圧クラスに対応することができる。
【0106】
なお、パワーデバイスのスイッチングや外来サージに伴うdV/dtノイズは、陽極315[k]が電気的に接続する電源端子Hsだけでなく、陰極304[k]が電気的に接続する電源端子Hbにも入力されるため、半導体チップ30A[k]にもdV/dtはかかる。
【0107】
しかしながら、半導体チップ30A[k]は、制御チップ41と比較してハイサイド領域がないため、P型の半導体基板301とN-拡散層302との接合面積は小さい。そのため、ダイオードD[k]の接合容量CbとdV/dtの積による変位電流量は、制御チップ41の接合容量ChとdV/dtの積による変位電流量よりも小さい。そのため、ダイオードD[k]を有する半導体チップ30A[k]の裏面を絶縁していても、裏面電位の持ち上がりは制御チップ41の裏面を絶縁した場合よりも低くなる。かりに、半導体チップ30A[k]の裏面と制御チップ41の裏面とに同じ厚さの絶縁性接着剤を塗布した場合、半導体チップ30A[k]裏面の絶縁破壊リスクは、制御チップ41裏面の絶縁破壊リスクよりも低くなる。
【0108】
実装面積縮小のために制御チップ41と半導体チップ30A[k]とを同一ダイパッドに配置した際に、P型の半導体基板(Psub)上に形成したBSDのアノード・カソード電極を表面側に配置し、PSubの裏面側を絶縁することで、ダイパッドやHVIC裏面の電位をGNDに固定することができる。これにより、自己分離方式や接合分離方式の安価な分離方式を適用したHVICの裏面側で、スイッチングノイズや外来ノイズによる発生キャリアを引き抜くことができ、ノイズ耐性の低下を抑制できる。また、半導体チップ30A[k]では、変位電流に起因したPsub電位の持ち上がりの影響(絶縁破壊)もHVICに比べて小さくなる。よって、安価な構成でIPM内の実装面積を縮小、IPMの小型が実現でき、なおかつHVICのノイズ耐性の低下も抑制することができる。
【0109】
なお、本実施形態と比較される比較例として、制御チップ41と半導体チップ30A[k]とを同一ダイパッドに配置するとともに、BSDのアノードを半導体チップの表面側ではなく、裏面側に配置し、BSDの充電電流経路を縦方向(すなわち、半導体チップの厚さ方向)とする態様が考えられる。
【0110】
この比較例では、ダイパッドをVcc電位にする必要があるが、BSDと同一ダイパッドに配置されるHVICの裏面はP型の半導体基板(Psub)である。このため、HVICのPsubをVcc電位から切り離す必要があり、HVICの裏面に絶縁性接着剤を塗布する必要がある。ここで、HVICの裏面を絶縁性接着剤等で絶縁すると、HVICのハイサイド領域にdV/dtノイズが入力された際に、Nウェル/Psubの接合容量ChとdV/dtの積による変位電流の発生でPsub(基板)電位が数百ボルトまで持ち上がり、HVIC裏面の絶縁性接着剤の絶縁耐圧を超えて、PsubがVccと短絡してしまう可能性がある。また、HVICのハイサイド領域の縦(裏面)方向で発生キャリアを引き抜けずに誤動作を引き起こし易くなることが考えられる。
【0111】
これに対して、本実施形態の半導体装置100Aでは、ダイパッド64に接地電圧(GND)が供給され、HVICである制御チップ41の裏面は導電性接着剤71を介してダイパッド64に固定されている。これにより、半導体装置100Aでは、制御チップ41について、比較例で説明したようなPsubとVccとの短絡を防ぐことができる。また、半導体装置100Aでは、ダイパッド64から導電性接着剤71を介して制御チップ41に接地電圧(GND)が供給されるため、ハイサイド領域の縦(裏面)方向で発生キャリアを引き抜けずに誤動作を引き起こす可能性を低減することができる。
【0112】
以上説明したように、本開示の第1実施形態に係る半導体装置100Aは、複数のパワー半導体素子(例えば、駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k])と、第1端子(例えば、電圧端子Hc)と複数の第2端子(例えば、電源端子Hb[k])とを含む複数の端子を備え、複数の第2端子に供給される電源電圧Vb[k]を利用して複数のパワー半導体素子を制御する制御チップ41とを具備する。また、半導体装置100Aは、所定の制御電圧Vccを第1端子に供給するための第1導体(例えば、リードRd63と接続端子Tc_H)と、複数の第2端子に個別に接続されて電源電圧Vb[k]を複数の第2端子に供給するための複数の第1配線(例えば、ワイヤQb[k])と、制御チップ41が配置されるダイパッド64と、電源電圧Vb[k]を生成するブートストラップ動作に利用されるダイオードD[k]を含む半導体チップ30A[k]とを具備する。
【0113】
半導体チップ30A[k]は、例えば、ダイオードD[U]を含む半導体チップ30A[U]と、ダイオードD[V]を含む半導体チップ30A[V]と、ダイオードD[W]を含む半導体チップ30A[W]とを有する。半導体チップ30A[k]はダイパッド64に絶縁性接着剤72で固定される。ダイパッド64は基準電圧(例えば、接地電圧(GND))が供給される端子(例えば、接続端子Tg)に接続される。
【0114】
これにより、半導体装置100Aは、ノイズ耐性の低下を抑制しつつ小型化を図ることができる。
【0115】
なお、第1実施形態では、制御チップ41が3相1チップの3ch-HVICである場合を説明したが、これはあくまで一例である。制御チップ41は、単相HVIC×3チップ(すなわち、U相駆動用のHVIC、V層駆動用のHVIC、W相駆動用のHVICの計3チップ)の構成であってもよい。また、HVICである制御チップ41と、LVICである制御チップ42とが1チップ化されていてもよい。このような構成は、第1実施形態だけでなく、後述の第2実施形態においても適用してよい。
【0116】
B:第2実施形態
上記の第1実施形態では、U層用のBSDであるダイオードD[U]を有する半導体チップ30A[U]と、V層用のBSDであるダイオードD[V]を有する半導体チップ30A[V]と、W層用のBSDであるダイオードD[W]を有する半導体チップ30A[W]とがそれぞれ1チップずつ、ダイパッド64上に配置されていることを説明した。
【0117】
しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されない。本開示の実施形態では、ダイオードD[U]を有する半導体チップ30A[U]と、ダイオードD[V]を有する半導体チップ30A[V]と、ダイオードD[W]を有する半導体チップ30A[W]とが1チップ化されていてもよい。複数のダイオードD[k]を有する半導体チップ30Bと、HVICである制御チップ41とが同一のダイパッド64上に配置されていてもよい。このような態様を第2実施形態として、図9から図12を用いて説明する。
【0118】
なお、第2実施形態において機能が第1実施形態に係る半導体装置の要素と同様の要素については、第1実施形態に係る半導体装置の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0119】
図9は、本開示の第2実施形態に係る半導体装置100Bの電気的な構成を例示する回路図である。図10は、半導体装置100Bに具備された各要素の配置を例示するレイアウト図である。図11は、半導体装置100Bに具備された半導体チップ30Bおよび高電位側の駆動チップ21[k]の近傍を拡大して示すレイアウト図である。図12は、図11中に示すD-D´線で切断した半導体チップ30Bの断面図である。本実施形態に係る半導体装置100Bは、ブートストラップ動作に用いられる複数のダイオードD[k]を1つの半導体チップ30Bが有し、半導体基板301の表面に平行又はほぼ平行な方向(例えば、横方向)に充電経路が形成される。
【0120】
図9に例示される通り、第2実施形態に係る半導体装置100Bは、第1実施形態に係る半導体装置100Aと同様に、電源端子Hb[k]に供給される電源電圧Vb[k]を利用して駆動チップ21[k]を制御する制御チップ41と、制御電圧Vccを電圧端子Hcに供給するためのリードRd63(図9では不図示、図11参照)と、電源端子Hb[k]に個別に接続されて電源電圧Vb[k]を電源端子Hb[k]に供給するためのワイヤQb[k](図9では不図示、図11参照)とを具備する。また、半導体装置100Bは、電源電圧Vb[k]を生成するブートストラップ動作に利用され電源電圧Vb[k]と同数のダイオードD[k]を含む半導体チップ30Bとを具備する。
【0121】
図10に例示される通り、半導体装置100Bに設けられたダイパッド64は、制御チップ41,42および半導体チップ30Bの下方に広がって形成されている。制御チップ41,42および半導体チップ30Bは、ダイパッド64の上に接合される。すなわち、制御チップ41,42および半導体チップ30Bは、ダイパッド64の表面に接合される。半導体チップ30Bの実装には、絶縁性の接着剤が使用される。したがって、半導体チップ30Bの下面とダイパッド64とは電気的に絶縁される。また、制御チップ41の実装には、導電性の接着剤が使用される。したがって、制御チップ41の下面とダイパッド64は電気的に接続される。
【0122】
次に、半導体チップ30Bの具体的な構成について図9から図11を参照しつつ図12を用いて説明する。図12に例示される通り、半導体チップ30Bは、複数(本実施形態では3個)のダイオードD[k]を備える。ダイオードD[k]は、P型の半導体基板301を含む。ダイオードD[k]は、半導体基板301の表面層に所定の間隔を空けて並んで形成されたN型のN-拡散層302[k]を含む。ダイオードD[k]は、N-拡散層302[k]が形成されていない半導体基板301の表面層に形成されたP型の拡散層316を含む。図12では、理解を容易にするため、N-拡散層302[k]および拡散層316の接合部分に形成されるpn接合部317[k]がダイオードの回路図記号で表されている。
【0123】
拡散層316は、ダイオードD[k]のアノード領域を構成し、N-拡散層302[k]は、ダイオードD[k]のカソード領域を構成する。なお、N-拡散層302[k]は抵抗素子R[k]でもある。半導体基板301もダイオードD[k]のアノード領域として機能するが主要な電流が流れるのは、N-拡散層302[k]と拡散層316との接合部分である。
【0124】
ダイオードD[U]のpn接合部317[U]は、拡散層316とN-拡散層302[U]との接合部に形成される。ダイオードD[V]のpn接合部317[V]は、N-拡散層302[V]と拡散層316との接合部に形成される。ダイオードD[W]のpn接合部317[W]は、N-拡散層302[W]と拡散層316との接合部に形成される。
【0125】
図12に例示される通り、半導体チップ30Bは、N-拡散層302[k]が形成されていない半導体基板301の表面層に形成されたP型の拡散層316を含む。したがって、N-拡散層302[k]は、平面視で島状に形成されており、その周囲に拡散層316が形成されている。図12では、両端の拡散層316の幅とN-拡散層302[k]の両側の拡散層316の幅とが異なる幅で形成されているが、同じ幅であってもよい。
【0126】
拡散層316は、半導体基板301の表面の所定領域にP型の不純物として例えばボロンをイオン注入し、イオン注入した箇所を活性化することにより形成される。拡散層316は、例えばN-拡散層302[k]より深い深さで形成される。
【0127】
半導体チップ30Bは、拡散層316の表面の一部に形成されたP+拡散層318a,318b,318c,318dを含む。P+拡散層318a,318b,318c,318dは、例えば拡散層316よりも高い不純物濃度を有している。P+拡散層318a,318b,318c,318dは、例えばN+拡散層303[k]と同じ不純物濃度を有している。
【0128】
P+拡散層318a,318b,318c,318dは、P型の不純物として例えばボロンをイオン注入し、イオン注入した箇所を活性化することにより拡散層316の表面の所定領域に拡散層316よりも浅い深さで形成される。
【0129】
P+拡散層318aは、拡散層316の表面の一部であって半導体基板301の側壁とN-拡散層302[W]との間の領域に形成されている。P+拡散層318bは、拡散層316の表面の一部であってN-拡散層302[W]とN-拡散層302[V]との間の領域に形成されている。P+拡散層318cは、拡散層316の表面の一部であってN-拡散層302[V]とN-拡散層302[U]との間の領域に形成されている。P+拡散層318dは、拡散層316の表面の一部であってN-拡散層302[U]と半導体基板301の側壁との間の領域に形成されている。
【0130】
図12に例示される通り、半導体チップ30Bは、N-拡散層302[k]のそれぞれの上に形成されてワイヤQb[k](図12では不図示、図11参照)を介して電源端子Hb[k]に電気的に接続される陰極304[k]を含む。陰極304[k]は、N+拡散層303[k]に接触して形成されている。
【0131】
本実施形態における陰極304[k]は、第1実施形態における陰極304[k](図5参照)と同様の構成を有しているため、説明は省略する。陰極304[k]は、導電性プラグ304aをN+拡散層303[k]に接触して形成されている。このため、陰極304[k]およびN+拡散層303[k]は、オーミック接続される。これにより、本実施形態でも陰極304[k]とN+拡散層303[k]との接触抵抗の低減が図られる。
【0132】
図12に例示される通り、半導体チップ30Bは、拡散層316の上に形成されて配線部材401(図12では不図示、図11参照)を介してリードRd63(図12では不図示、図11参照)に電気的に接続される陽極315[k]を含む。
【0133】
より具体的には、陽極315[k]は、P+拡散層318a,318b,318c,318dに接触して形成された導電性プラグ315a,315b,315c,315dと、導電性プラグ315a,315b,315c,315dに接触して形成された電極プレート315eとを含む。導電性プラグ315aは、P+拡散層318aに接触して形成されている。導電性プラグ315bは、P+拡散層318bに接触して形成されている。導電性プラグ315cは、P+拡散層318cに接触して形成されている。導電性プラグ315dは、P+拡散層318dに接触して形成されている。このため、陽極315[k]およびP+拡散層318a,318b,318c,318dは、オーミック接続される。これにより、陽極315[k]と318a,318b,318c,318dとの接触抵抗の低減が図られる。
【0134】
図11に例示される通り、電極プレート315eは、ワイヤQ315によって制御チップ41の中継端子Hrに電気的に接続されている。ワイヤQ315の一端は、絶縁膜70(図11では不図示、図12参照)に形成された開口部702p(図12参照)に露出する電極プレート315eの表面の一部に接合されている。ワイヤQ315の他端は、中継端子Hrの表面に接合されている。中継端子Hrは、中継パターン401aの一端に形成されている。中継パターン401aの他端には、電圧端子Hcが形成されている。電圧端子HcとリードRd63とは、ワイヤ401bによって接続されている。リードRd63は、外部電源104(図9参照)から制御電圧Vccが入力される接続端子Tc_H(図10参照)に接続されている。このため、陽極315[k]には、接続端子Tc_H、リードRd63、配線部材401(すなわちワイヤ401bおよび中継パターン401a)およびワイヤQ315を介して制御電圧Vccが供給される。
【0135】
図12に戻って、半導体チップ30Bは、半導体基板301の表面の反対側の面(すなわち裏面)を絶縁性接着剤72によってダイパッド64に接着される。半導体チップ30Bの半導体基板301のボディには、陽極315[k]から制御電圧Vccが供給される。一方、ダイパッド64は、接地電圧が供給される接続端子TgにリードRdgを介して接続される。このため、ダイパッド64には、接続端子TgおよびリードRdgを介して接地電圧が供給される。
【0136】
したがって、半導体チップ30Bの半導体基板301に供給される電圧と、ダイパッド64に供給される電圧とは異なる。しかしながら、半導体チップ30Bの半導体基板301およびダイパッド64は、絶縁性接着剤72によって絶縁されるため、接続端子Tc_Hおよび接続端子Tgが短絡することが防止される。
【0137】
次に、半導体装置100Bの作用・効果について図9から図12を用いて説明する。
図9から図12に例示される通り、本実施形態における半導体チップ30Bは、U相のブートストラップ動作用のダイオードD[U]、V相のブートストラップ動作用のダイオードD[V]およびW相のブートストラップ動作用のダイオードD[W]を1チップ化した構造を有している。
【0138】
図12に例示される通り、半導体チップ30Bに設けられたダイオードD[U]、ダイオードD[V]およびダイオードD[W]は、半導体基板301の厚さ方向に直交する方向(図12中に示すX軸の方向)にpn接合を形成するpn接合部317[U],317[V],317[W]を有している。pn接合部317[U],317[V],317[W]のP型半導体側は、拡散層316によって構成され、互いに共用している。一方、pn接合部317[U],317[V],317[W]のN型半導体側は、N-拡散層302[U],302[V],302[W]で構成されている。N-拡散層302[U],302[V],302[W]は、P型の拡散層316によって互いに分離されている。
【0139】
ダイオードD[U]、ダイオードD[V]およびダイオードD[W]に接続される陽極315[k]は、半導体基板301の上方に配置されて、ダイオードD[U]、ダイオードD[V]およびダイオードD[W]において共用されている。一方、ダイオードD[U]、ダイオードD[V]およびダイオードD[W]に接続される陰極304[U],304[V],304[W]は、N-拡散層302[U],302[V],302[W]に接触して形成されて、互いに分離して設けられている。
【0140】
拡散層316は、ダイオードD[k]のアノード領域を構成する。ダイオードD[U]は、N-拡散層302[U]およびN-拡散層302[U]の周囲に配置された拡散層316とともにpn接合部317[U]を形成する。ダイオードD[V]は、N-拡散層302[V]およびN-拡散層302[V]の周囲に配置された拡散層316とともにpn接合部317[V]を形成する。ダイオードD[W]は、N-拡散層302[W]およびN-拡散層302[W]の周囲に配置された拡散層316とともにpn接合部317[W]を形成する。また、ダイオードD[U]、ダイオードD[V]およびダイオードD[W]は、半導体基板301の厚さ方向(図12中に示すZ軸の方向)にN-拡散層302[U],302[V],302[W]と共にpn接合を形成する。
【0141】
ここで、外部電源103の高電位側の電源電圧が例えば200Vであり、外部電源104の制御電圧Vccが例えば15Vであるとする。また、駆動チップ21[U]、駆動チップ22[V]および駆動チップ22[W]がオン状態で、駆動チップ22[U]、駆動チップ21[V]および駆動チップ21[W]がオフである場合を考える。
この場合、接続端子Tout[U]の電圧は200Vであり、半導体チップ30Bの陰極304[U]に200Vが印加される。接続端子Tout[V]および接続端子Tout[W]の電圧は接地電圧であり、半導体チップ30Bの陰極304[V]および陰極304[W]に接地電圧が印加される。また、半導体基板301および拡散層316は15Vが印加されている。
よって、ダイオードD[V]およびダイオードD[W]により、容量素子B[V]および容量素子B[W]を充電する。
【0142】
一方、ダイオードD[U]は、半導体基板301とN-拡散層302[U]とのpn接合およびpn接合部317[U]に逆バイアスが印加されることから、当該pn接合およびpn接合部317[U]から、N-拡散層302[U]の周囲に配置された拡散層316、半導体基板301およびN-拡散層302[U]に空乏層が広がる。
N-拡散層302[U]の周囲に配置された拡散層316に広がる空乏層がダイオードD[V]のN-拡散層302[V]に達しないように、かつ、当該空乏層がP+拡散層318c、P+拡散層318dまたはN+拡散層303[U]に達しないように、拡散層316の幅および不純物濃度が設定される。
このように設定することにより、N-拡散層302[U],302[V],302[W]は、P+拡散層318によって互いに分離される。
【0143】
ダイオードD[k]のpn接合部317[k]のそれぞれのP型半導体側(すなわち拡散層316)には、陽極315[k]、ワイヤQ315、配線部材401、導電性接着剤71、リードRdcおよび接続端子Tc_H(図10参照)を介して、共通の制御電圧Vccが供給される。
【0144】
一方、ダイオードD[k]のpn接合部317[k]のそれぞれのN型半導体側(すなわちN-拡散層302[k])には、N+拡散層303[k]、陰極304[k]、ワイヤQb[k]のワイヤ配線Qb2、接続パッド65[k]および接続端子Tbs[k]から、ブートストラップ動作に応じた電圧が独立して供給される。このため、半導体チップ30Bは、U相、V相およびW相のブートストラップ動作用の3個のダイオードD[k]を1チップ化した構造を有していても、ブートストラップ動作において容量素子B[k]を充電する充電経路α(図9参照)をU相、V相およびW相ごとに構成することができる。
【0145】
また、電極プレート315eには、制御電圧Vccが供給される。さらに、電極プレート315eは、N-拡散層302と拡散層316との境界の上方にも存在している。このため、電極プレート315eは、フィールドプレートとして機能するので、半導体チップ30Bの耐電圧の向上を図ることができる。
【0146】
このように、本実施形態に係る半導体装置100Bは、ブートストラップ動作用の3個のダイオードD[k]が1チップ化された半導体チップ30Bを具備しているので、ブートストラップ動作用のダイオードをU相、V相およびW相ごとに個別に有する3個の半導体チップ30A[U],30A[V],30A[W]を含む第1実施形態に係る半導体装置100A(図1から図8参照)と比較して、ブートストラップ動作用の半導体チップ30Bの実装面積の省スペース化と部品点数の削減とを図ることができる。これにより、半導体装置100Bは、外形寸法の小型化を図ることができる。
【0147】
以上説明したように、本開示の第2実施形態に係る半導体装置100Bは、複数のパワー半導体素子(例えば、駆動チップ21[k]および駆動チップ22[k])と、第1端子(例えば、電圧端子Hc)と複数の第2端子(例えば、電源端子Hb[k])とを含む複数の端子を備え、複数の第2端子に供給される電源電圧Vb[k]を利用して複数のパワー半導体素子を制御する制御チップ41とを具備する。また、半導体装置100Bは、所定の制御電圧Vccを第1端子に供給するための第1導体(例えば、リードRd63と接続端子Tc_H)と、複数の第2端子に個別に接続されて電源電圧Vb[k]を複数の第2端子に供給するための複数の第1配線(例えば、ワイヤQb[k])と、制御チップ41が配置されるダイパッド64と、電源電圧Vb[k]を生成するブートストラップ動作に利用されるダイオードD[k]を含む半導体チップ30Bとを具備する。
【0148】
半導体チップ30Bは、例えば、ダイオードD[U],D[V],D[W]を含む。半導体チップ30Bは、ダイオードD[U],D[V],D[W]を1チップ化した構造を有する。半導体チップ30Bはダイパッド64に絶縁性接着剤72で固定される。ダイパッド64は基準電圧(例えば、接地電圧(GND))が供給される端子(例えば、接続端子Tg)に接続される。
【0149】
これにより、半導体装置100Bは、ノイズ耐性の低下を抑制しつつ小型化を図ることができる。また、半導体装置100Bは、ダイオードD[U],D[V],D[W]を1チップ化することにより、さらなる小型化および低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0150】
21,22 駆動チップ
30A[k](k=U,V,W),30B 半導体チップ
41,42 制御チップ
50 筐体
51 樹脂ケース
52 支持板
53 封止樹脂
55 素子領域
56 端子領域
57 制御領域
60 リードフレーム
61,62,64 ダイパッド
65[k](k=U,V,W) 接続パッド
70、520、701 絶縁膜
71 導電性接着剤
72 絶縁性接着剤
100A,100B 半導体装置
102 制御装置
103,104 外部電源
301 半導体基板
302,302[k](k=U,V,W) N-拡散層
303,303[k](k=U,V,W) N+拡散層
304a,315a,315b,315c,315d 導電性プラグ
304b 電極パッド
315[k](k=U,V,W) 陽極
317[k](k=U,V,W) pn接合部
316 拡散層
318a,318b,318c,318d P+拡散層
315e 電極プレート
401 配線部材
401a 中継パターン
401b ワイヤ
700[k](k=U,V,W),702p1,702p2 開口部
702 保護膜
B 容量素子
b1 第1電極
b2 第2電極
C,E 主電極
D ダイオード
G 制御電極
H,L 端子
Hb 電源端子
Hc,Lc 電圧端子
Hg,Lh 接地端子
Hin 入力端子
Hm[k](k=U,V,W) 中間端子
Hout[k](k=U,V,W) 出力端子
Hr 中継端子
Hs[k](k=U,V,W) 電源端子
Lin[k](k=U,V,W) 入力端子
Lout[k](k=U,V,W) 出力端子
M 電動機
Q315,Q316,Q317,Qb[k](k=U,V,W),Qc,Qdg,Qe,Qg,Qgd,Qs,Qu,Qv,Qw ワイヤ
Qb1,Qb2 ワイヤ配線
R[k](k=U,V,W) 抵抗素子
Rd[k](k=U,V,W),Rd63,Rdg,Rds[k](k=U,V,W) リード
T,Tbs[k](k=U,V,W),Tc_H,Tc_L,Tg,Tin_H[k](k=U,V,W),Tin_L[k](k=U,V,W),Tn[k](k=U,V,W),Tout[k](k=U,V,W),Tp,Ts[k](k=U,V,W) 接続端子
Vb[k](k=U,V,W) 電源電圧
Vcc 制御電圧
Vs 電源電圧
α 充電経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12