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特開2024-98890生体識別システム、生体識別方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098890
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】生体識別システム、生体識別方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/117 20160101AFI20240717BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61B5/117 200
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002684
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知明
(72)【発明者】
【氏名】ケイ サワリン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA07
4C038VB31
4C038VC05
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】生体の識別精度が向上された生体識別システムを提供する。
【解決手段】生体識別システム1において、第1情報演算部13は、第1モデルの出力から、対象の生体が既知の生体である確率と、対象の生体が未知の生体である確率とを演算する。第1モデルは、対象の生体が既知の生体である確率を示す情報を、取得された生体情報の入力に応じて出力する。第2情報演算部14は、第2モデルの出力から、対象の生体が既知の生体である確率と対象の生体が未知の生体である確率とを演算する。第2モデルは、対象の生体が既知の生体である確率を示す情報と、対象の生体が未知の生体である確率を示す情報とを上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。識別部15は、第1情報演算部13の演算結果と第2情報演算部14の演算結果とに基づいて、対象の生体の識別結果を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部によって取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を前記取得された生体情報の入力に応じて出力する第1モデルの出力から、前記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを演算する第1情報演算部と、
前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率を示す情報と、前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率を示す情報とを前記取得された生体情報の入力に応じて出力する第2モデルの出力から、前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率とを演算する第2情報演算部と、
前記第1情報演算部の演算結果と前記第2情報演算部の演算結果とに基づいて、前記取得された生体情報の生体の識別結果を出力する識別部と、を備える、生体識別システム。
【請求項2】
前記識別部は、
前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体であるか否かを前記第1情報演算部の演算結果から判定する既知判定部と、
前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体であると前記第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、前記第1情報演算部の演算結果に関する情報を前記識別結果として出力する出力部と、を含んでいる、請求項1に記載の生体識別システム。
【請求項3】
前記識別部は、
前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体であるか否かを前記第1情報演算部の演算結果から判定する既知判定部と、
前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体であると前記第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、前記第2情報演算部の演算結果に基づいて、前記第2情報演算部の演算結果に関する情報を前記識別結果として出力する出力部と、を含んでいる、請求項1に記載の生体識別システム。
【請求項4】
前記識別部は、前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体であると前記第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、前記第2情報演算部の演算結果が正確であるか否かを判定する正確度判定部をさらに含み、
前記出力部は、前記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、前記正確度判定部の判定結果に基づいて、前記第1情報演算部の演算結果に関する情報又は前記第2情報演算部の演算結果に関する情報を前記識別結果として出力する出力部と、を含んでいる、請求項3に記載の生体識別システム。
【請求項5】
前記出力部は、
前記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定され、かつ、前記正確度判定部が前記第2情報演算部を不正確と判定した場合に、前記第1情報演算部の演算結果に関する情報を前記識別結果として出力し、
前記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定され、かつ、前記正確度判定部が前記第2情報演算部の演算結果を正確と判定した場合に、前記第2情報演算部の演算結果に関する情報を前記識別結果として出力する、請求項4に記載の生体識別システム。
【請求項6】
前記正確度判定部は、前記第2情報演算部の演算結果と閾値との比較結果に基づいて、前記第2情報演算部の演算結果が正確であるか否かを判定する、請求項4に記載の生体識別システム。
【請求項7】
前記第1情報演算部は、前記第1モデルの出力が入力されることによって、前記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率とを出力するOpenMaxアルゴリズムを含んでおり、
前記第2情報演算部は、前記第2モデルの出力が入力されることによって、前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率とを出力するSoftMaxアルゴリズムを含んでいる、請求項1に記載の生体識別システム。
【請求項8】
前記第1モデルは、クローズセット分類モデルであり、
前記第2モデルは、オープンセット分類モデルである、請求項1から7のいずれか一項に記載の生体識別システム。
【請求項9】
生体の生体情報を取得することと、
取得された前記生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を前記取得された生体情報の入力に応じて出力する第1モデルの出力から、前記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第1演算結果として演算することと、
前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率を示す情報と、前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率を示す情報とを前記取得された生体情報の入力に応じて出力する第2モデルの出力から、前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率とを第2演算結果として演算することと、
前記第1演算結果と前記第2演算結果とに基づいて、前記取得された生体情報の生体の識別結果を出力することと、を有している、生体識別方法。
【請求項10】
複数の学習用生体の各々の識別情報と前記複数の学習用生体の各々の生体情報とを含む学習用データセットを取得することと、
互いに同一の前記学習用データセットを用いた学習によって、前記第1モデルと前記第2モデルとを作成することと、をさらに有し、
前記既知の生体は、前記学習用生体である、請求項9に記載の生体識別方法。
【請求項11】
生体の生体情報を取得することと、
取得された前記生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を前記取得された生体情報の入力に応じて出力する第1モデルの出力から、前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第1演算結果として演算することと、
前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率を示す情報と、前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率を示す情報とを前記取得された生体情報の入力に応じて出力する第2モデルの出力から、前記取得された生体情報の生体が前記既知の生体である確率と前記取得された生体情報の生体が前記未知の生体である確率とを第2演算結果として演算することと、
前記第1演算結果と前記第2演算結果とに基づいて、前記取得された生体情報の生体の識別結果を出力することと、をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生体識別システム、生体識別方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報に基づいて生体を識別する生体識別システムが知られている。例えば、生体の生体情報が取得され、取得された生体情報の生体の識別結果が出力される。例えば、非特許文献1及び非特許文献2は、心拍信号に基づいて人物を識別する技術を記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】L. Biel,O. Pettersson, L. Philipson, and P. Wide, “Ecg analysis: a new approach inhuman identification,” IEEE Trans. Instrum. Meas., vol. 50, no. 3, pp. 808-812,2001.
【非特許文献2】I.Odinaka, P.-H. Lai, A. D. Kaplan, J. A. O’Sullivan, E.J. Sirevaag, S. D.Kristjansson, A. K. Sheffield, and J. W. Rohrbaugh, “Ecg biometrics: A robustshort-time frequency analysis,” in IEEE Int. Workshop Inf. Forensics Secur.,pp. 1-6, IEEE, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現実世界における生体識別は、既知の生体と未知の生体とが混在したオープンセット条件下で実施される場合が多い。したがって、既知の生体のみを識別するクローズセット条件下の識別だけでなく、オープンセット条件下における識別でも、生体の識別精度を確保することが求められている。既知の生体とは、例えば、生体識別システムの学習データに含まれる生体である。
【0005】
本発明の一つの態様は、生体の識別精度が向上された生体識別システム、生体識別方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における生体識別システムは、生体情報取得部と、第1情報演算部と、第2情報演算部と、識別部と、を備えている。生体情報取得部は、生体の生体情報を取得する。第1情報演算部は、第1モデルの出力から、生体情報取得部によって取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを演算する。第1モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を、上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。第2情報演算部は、第2モデルの出力から、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを演算する。第2モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。識別部は、第1情報演算部の演算結果と第2情報演算部の演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果を出力する。
【0007】
本発明の別の態様における生体識別方法は、生体の生体情報を取得することと、上記第1モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第1演算結果として演算することと、第2モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第2演算結果として演算することと、第1演算結果と第2演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果を出力することと、を有している。第1モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を、上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。第2モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。
【0008】
本発明のさらに別の態様におけるプログラムは、生体の生体情報を取得することと、上記第1モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第1演算結果として演算することと、第2モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第2演算結果として演算することと、第1演算結果と第2演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果を出力することと、をコンピュータに実行させる。第1モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を、上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。第2モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの態様は、生体の識別精度が向上された生体識別システム、生体識別方法、及び、プログラムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における生体識別システムのブロック図である。
図2】生体識別システムに用いられる生体情報取得部の構成の一例を説明するための概略図である。
図3】生体識別システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】第1モデル及び第2モデルの作成方法の一例を示すフローチャートである。
図5】生体識別方法の一例を示すフローチャートである。
図6】識別処理の一例を示すフローチャートである。
図7】学習用データセットの情報を示す表である。
図8】実験に用いられるパラメータを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
【0012】
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
【0013】
[1]本開示の実施形態における生体識別システムは、生体情報取得部と、第1情報演算部と、第2情報演算部と、識別部と、を備えている。生体情報取得部は、生体の生体情報を取得する。第1情報演算部は、第1モデルの出力から、生体情報取得部によって取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを演算する。第1モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を、上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。第2情報演算部は、第2モデルの出力から、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを演算する。第2モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。識別部は、第1情報演算部の演算結果と第2情報演算部の演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果を出力する。
【0014】
上記[1]における生体識別システムにおいて、識別部は、第1情報演算部の演算結果と第2情報演算部の演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果を出力する。この場合、第1情報演算部の演算結果と第2情報演算部の演算結果とが組み合わされ、第1情報演算部の演算結果と第2情報演算部の演算結果とのうち、状況に応じた適切な演算結果が出力され得る。したがって、生体の識別精度が向上され得る。
【0015】
[2]上記[1]の生体識別システムにおいて、識別部は、既知判定部と、出力部とを含んでいてもよい。既知判定部は、上記取得された生体情報の生体が未知の生体であるか否かを第1情報演算部の演算結果から判定してもよい。出力部は、上記取得された生体情報の生体が既知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、第1情報演算部の演算結果に関する情報を識別結果として出力してもよい。取得された生体情報の生体が既知の生体である場合において、第1情報演算部の演算結果は、第2情報演算部の演算結果よりも高い識別精度を有している。取得された生体情報の生体が既知の生体である場合において、第1情報演算部の演算結果が識別結果として出力されるため、生体の識別精度が向上され得る。
【0016】
[3]上記[1]又は[2]のいずれか一つの生体識別システムにおいて、識別部は、既知判定部と、正確度判定部と、出力部とを含んでいてもよい。既知判定部は、上記取得された生体情報の生体が未知の生体であるか否かを第1情報演算部の演算結果から判定してもよい。出力部は、上記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、第2情報演算部の演算結果に基づいて、第1情報演算部の演算結果に関する情報又は第2情報演算部の演算結果に関する情報を識別結果として出力してもよい。このため、取得された生体情報の生体が未知の生体である場合に、第2情報演算部の演算結果は、第1情報演算部の演算結果よりも高い識別精度を有しうる。取得された生体情報の生体が既知の生体である場合において、第2情報演算部の演算結果に基づいて、第1情報演算部の演算結果に関する情報又は第2情報演算部の演算結果に関する情報が識別結果として出力されるため、生体の識別精度が向上され得る。
【0017】
[4]上記[3]の生体識別システムにおいて、識別部は、正確度判定部をさらに含んでいてもよい。正確度判定部は、上記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、第2情報演算部の演算結果が正確であるか否かを判定してもよい。出力部は、上記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、正確度判定部の判定結果に基づいて第1情報演算部の演算結果に関する情報又は第2情報演算部の演算結果に関する情報を識別結果として出力してもよい。この場合、第2情報演算部の演算結果の正確度が考慮されるため、生体の識別精度がさらに向上され得る。
【0018】
[5]上記[4]の生体識別システムにおいて、出力部は、上記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定され、かつ、正確度判定部が第2情報演算部を不正確と判定した場合に、第1情報演算部の演算結果に関する情報を識別結果として出力してもよい。出力部は、上記取得された生体情報の生体が未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定され、かつ、正確度判定部が第2情報演算部の演算結果を正確と判定した場合に、第2情報演算部の演算結果に関する情報を識別結果として出力してもよい。この場合、生体の識別精度がより確実に向上され得る。
【0019】
[6]上記[4]又は[5]のいずれか一つの生体識別システムにおいて、正確度判定部は、第2情報演算部の演算結果と閾値との比較結果に基づいて、第2情報演算部の演算結果が正確であるか否かを判定してもよい。この場合、第2情報演算部の演算結果の正確度が容易に判定され得る。
【0020】
[7]上記[1]から[6]のいずれか一つの生体識別システムにおいて、第1情報演算部は、OpenMaxアルゴリズムを含んでいてもよい。OpenMaxアルゴリズムは、第1モデルの出力が入力されることによって、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを出力してもよい。第2情報演算部は、SoftMaxアルゴリズムを含んでいてもよい。SoftMaxアルゴリズムは、第2モデルの出力が入力されることによって、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを出力してもよい。この場合、生体の識別精度がより容易かつ確実に向上され得る。
【0021】
[8]上記[1]から[7]のいずれか一つの生体識別システムにおいて、第1モデルは、クローズセット分類モデルであり、第2モデルは、オープンセット分類モデルであってもよい。この場合、生体の識別精度がより容易かつ確実に向上され得る。
【0022】
[9]本開示の別の形態における生体識別方法は、生体の生体情報を取得することと、上記第1モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第1演算結果として演算することと、第2モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第2演算結果として演算することと、第1演算結果と第2演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果を出力することとを有している。第1モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を、上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。第2モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。
【0023】
上記[9]における生体識別方法において、第1演算結果と第2演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果が出力される。この場合、第1演算結果と第2演算結果とが組み合わされ、第1演算結果と第2演算結果とのうち、状況に応じた適切な演算結果が出力され得る。したがって、生体の識別精度が向上され得る。
【0024】
[10]上記[9]の生体識別方法は、複数の学習用生体の各々の識別情報と複数の学習用生体の各々の生体情報とを含む学習用データセットを取得することと、互いに同一の学習用データセットを用いた学習によって、第1モデルと第2モデルとを作成することと、をさらに有してもよい。既知の生体は、学習用生体であってもよい。この場合、容易且つ確実に、生体の識別精度が向上され得る。
【0025】
[11]本開示のさらに別の形態におけるプログラムは、生体の生体情報を取得することと、上記第1モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第1演算結果として演算することと、第2モデルの出力から上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率と上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率とを第2演算結果として演算することと、第1演算結果と第2演算結果とに基づいて、上記取得された生体情報の生体の識別結果を出力することと、をコンピュータに実行させる。第1モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報を、上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。第2モデルは、上記取得された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、上記取得された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを上記取得された生体情報の入力に応じて出力する。
[本開示の実施形態の詳細]
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明における生体識別システムの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
まず、図1から図2を参照して、本開示の実施形態における生体識別システムの概略構成について説明する。図1は、本実施形態における生体識別システム1のブロック図である。
【0028】
生体識別システム1は、生体の生体情報に基づいて生体を識別する。生体識別システム1は、対象の生体の生体情報を取得し、取得された生体情報に基づいて、対象の生体が複数の既知の生体のうちいずれの生体であるか未知の生体であるかを識別する。換言すれば、生体識別システム1は、オープンセット条件下において、生体を識別する。本実施形態に示す例において、「既知の生体」は、後述する学習用データセットに含まれる学習用生体であり、「未知の生体」は、既知の生体以外の生体である。
【0029】
生体識別システム1は、例えば、対象の生体が既知の生体である確率、及び、対象の生体が未知の生体である確率を演算する。生体識別システム1は、例えば、複数の既知の生体の各々について、対象の生体が当該既知の生体である確率を演算する。この場合、生体識別システム1は、演算された確率に基づいて、対象の生体を識別する。
【0030】
本明細書において、「生体」は、人、及び、人以外の動物を含んでいる。「生体情報」は、例えば、各生体を識別できる生体固有の情報であり、心拍、及び、呼吸の情報などを含んでいる。生体識別システム1は、電磁波又は音波などを用いたレーダによって生体情報を取得し、取得された生体情報に基づいてオープンセットの生体識別を実行する。本実施形態の変形例として、生体識別システム1は、カメラによって生体情報を取得してもよい。以下において、ドップラーレーダによって生体情報が取得される場合を例に説明する。
【0031】
本実施形態に示す例において、生体識別システム1は、学習フェーズ、及び、推定フェーズを実行する。生体識別システム1は、学習フェーズにおいて学習された推定モデルに基づいて、推定フェーズを実行する。生体識別システム1は、推定フェーズにおいて、生体の生体情報に基づいて、生体を識別する。生体識別システム1は、推定フェーズにおいて取得された情報と、実際の生体の個体情報とに基づいて、さらに学習フェーズを実行してもよい。
【0032】
例えば、生体識別システム1は、学習フェーズにおける推定モデルの作成において機械学習を利用する。機械学習とは、与えられた情報に基づいて反復的に学習することで法則又はルールを自律的に見つけ出す手法である。たとえば、生体識別システム1において行われる機械学習では、学習用データセットを用いた学習によって、活性化関数、重み付け値等の推定モデルのパラメータが最適化される。これによって、推定モデルが作成される。
【0033】
生体識別システム1において行われる機械学習は、ディープラーニングである。この機械学習は、多層パーセプトロン(MLP:Multilayer perceptron)によって構成される教師あり学習である。生体識別システム1は、ニューラルネットワークを含むように構成される機械学習を用いる。生体識別システム1において行われる機械学習は、教師あり学習に限定されない。生体識別システム1において行われる機械学習は、ランダムフォレスト、サポートベクトルマシン、ニューラルネットワーク(NN)、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などを含むように構成されてもよい。ニューラルネットワークとは、人間の脳神経系の仕組みを模した情報処理モデルをいう。
【0034】
例えば、生体識別システム1において用いられるニューラルネットワークは、長短期メモリネットワーク(LSTM:Long Short―Term Memory)である。生体識別システム1で用いられるニューラルネットワークの種類はこれに限定されない。
【0035】
生体識別システム1は、推定フェーズにおいて動作する推定部10と学習フェーズにおいて動作する学習部30とを備えている。生体識別システム1は、推定部10として、生体情報取得部11と、格納部12と、第1情報演算部13と、第2情報演算部14と、識別部15と、を備えている。生体識別システム1は、学習部30として、学習情報取得部31と、第1モデル作成部32と、第2モデル作成部33と、格納部12とを備えている。
【0036】
推定部10と学習部30とは、物理的に一体に構成されていても、互いに物理的に分離していてもよい。推定部10と学習部30とが互いに分離している場合、推定部10と学習部30とは、それぞれ異なる格納部12を備えていてもよい。
【0037】
本実施形態の変形例として、生体識別システム1は、学習部30を含まず、推定部10のみから構成されていてもよい。生体識別システム1は、学習部30のみから構成された学習システムであってもよい。
【0038】
次に、推定フェーズにおける生体識別システム1の各機能部について、より詳細に説明する。推定フェーズにおいては、推定部10が動作する。推定部10は、生体情報取得部11と、格納部12と、第1情報演算部13と、第2情報演算部14と、識別部15とによって、対象の生体がいずれの生体であるか推定し、出力する。
【0039】
生体情報取得部11は、対象の生体の生体情報を取得する。生体情報取得部11は、例えば、生体情報として、対象の生体の心拍に関する情報を取得する。本実施形態の変形例として、生体情報取得部11は、例えば、生体情報として、対象の生体の呼吸に関する情報を取得してもよい。
【0040】
例えば、生体情報取得部11は、電磁波又は音波などを生体に向けて信号波を照射し、生体において反射した信号波に関する情報を取得する。電磁波は、可視光を含んでいてもよい。本実施形態に示す例において、生体情報取得部11は、ドップラーレーダによって生体情報を取得する。本実施形態の変形例として、生体情報取得部11は、ドップラー効果以外を利用するレーダであってもよい。以下、一例として、生体情報取得部11がドップラーレーダを用いる場合を主として説明する。図2は、生体識別システム1に用いられる生体情報取得部11の構成の一例を説明するための概略図である。
【0041】
生体情報取得部11は、例えば、ドップラーレーダ41と、ミキサー42と、データ取得部44と、デジタル信号処理部45と、を含んでいる。ドップラーレーダ41は、少なくとも一つの送信アンテナTxと、少なくとも一つの受信アンテナRxとを含んでいる。
【0042】
例えば、ドップラーレーダ41は、変調されていない信号波Tが送信アンテナTxから、対象の生体Mの胸部領域に向けて放射する。信号波Tは、例えば電磁波である。送信アンテナTxから放射される信号波Tは、キャリア周波数を“f”、位相雑音を“Φ(t)”、時間を“t”とした場合に、式(1):T(t)=cos(2πft+Φ(t))として表される。信号波Tが反射されると、信号波TにおいてT(t)の位相変化が引き起こされる。反射された信号波Tは、受信アンテナRxによって受信される。受信アンテナRxによって受信された受信信号R(t)は、信号波Tの速度が“c”であり、信号波Tの波長が“λ”であり、対象の生体Mの胸部の変位が“x(t)”であり、ドップラーレーダ41と対象の生体Mとの距離が“d”である場合、以下の式(2)によって表される。
【数1】
【0043】
ドップラーレーダ41は、受信信号R(t)から、送信した信号波T(t)を減算し、ベースバンド信号B(t)を出力する。ベースバンド信号B(t)は、ドップラーレーダ41と生体Mとの位相シフトが“θ”であり、回路雑音と伝送チャネル雑音とを含む残留位相雑音の和が“ΔΦ(t)”である場合、以下の式(3)によって表される。
【数2】
【0044】
ミキサー42は、ベースバンド信号B(t)の入力に応じて、π/2の位相差を有する2つの出力信号を出力する。例えば、ミキサー42は、ベースバンド信号B(t)の入力に応じて、同相信号I(t)及び直交信号Q(t)を出力する。ミキサー42から出力された同相信号I(t)及び直交信号Q(t)は、アナログ信号である。同相信号I(t)及び直交信号Q(t)は、それぞれ、以下の式(4)及び式(5)によって表される。
【数3】

【数4】
【0045】
データ取得部44及びデジタル信号処理部45は、ミキサー42から出力された同相信号I(t)及び直交信号Q(t)を取得し、同相信号I(t)及び直交信号Q(t)をデジタル信号に変換する。以上によって、生体情報取得部11は、I/Q信号S(t)を取得する。I/Q信号S(t)は、バイタル信号である。
【0046】
生体情報取得部11は、例えば、前処理として、生のI/Q信号S(t)に楕円フィッティング及び補償アルゴリズムを適用する。楕円フィッティング及び補償アルゴリズムは、既知の手法である。前処理によって、対象の生体Mの胸部の変位x(t)が再構成される。前処理後の変位x(t)も、呼吸、心臓、生体Mの身体運動、及び、その他のノイズを含んでいる。変位x(t)は、生体情報取得部11によって取得された生体情報に相当する。
【0047】
生体情報取得部11は、例えば、変位x(t)に対して、フィルタリング処理を行う。例えば、生体情報取得部11は、例えば、変位x(t)に対して、通過帯域が0.7Hz-15Hzのバンドパスフィルタ(BPF)を適用する。この結果、変位x(t)から不要成分が除去された、心拍信号hp(t)が取得される。本実施形態に示す例において、心拍信号hp(t)が、生体情報取得部11によって取得された生体情報に相当する。
【0048】
格納部12は、生体識別システム1の内部の各機能部から出力された情報、及び、生体識別システム1の外部から取得された情報を格納している。格納部12は、生体識別システム1の動作に用いられる情報を予め格納していてもよい。格納部12は、第1モデル及び第2モデルを格納している。
【0049】
第1モデルは、生体情報の入力によって、入力された生体情報の生体Mが既知の生体である確率を示す情報を出力する。第1モデルは、生体情報の入力によって、複数の既知の生体の各々について、入力された生体情報の生体Mが当該既知の生体である確率を示す情報を出力する。第1モデルは、生体情報取得部11によって取得された生体情報の入力に応じて、生体情報取得部11によって取得された生体情報の生体Mが既知の生体である確率を示す情報を出力する。さらに換言すれば、第1モデルは、クローズセット分類モデルである。以下、「生体情報取得部11によって取得された生体情報の生体M」を単に「対象の生体M」という。
【0050】
第2モデルは、生体情報の入力によって、入力された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、入力された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを出力する。第2モデルは、生体情報の入力によって、複数の既知の生体の各々について、入力された生体情報の生体Mが当該既知の生体である確率を示す情報を出力する。第2モデルは、対象の生体Mが既知の生体である確率を示す情報と、対象の生体Mが未知の生体である確率を示す情報とを、生体情報取得部11によって取得された生体情報の入力に応じて出力する。さらに換言すれば、第2モデルは、オープンセット分類モデルである。
【0051】
第1モデル及び第2モデルは、機械学習によってトレーニングされたモデルである。第1モデル及び第2モデルは、例えば、ディープラーニングによってトレーニングされたモデルである。第1モデル及び第2モデルは、例えば、CNNベースのディープラーニングモデルである。第1モデル及び第2モデルは、時系列分類タスクのためのディープラーニングモデルである。例えば、第1モデル及び第2モデルは、同時にトレーニングされる。例えば、第1モデル及び第2モデルには、5秒の心臓パルス信号が入力される。
【0052】
第1モデルの出力活性化ベクトルの数は、学習データにおける既知のクラスの数nに等しい。学習データは、学習用データセットに相当する。クラスは、例えば、生体である。第2モデルの出力活性化ベクトルの数は、n+1に相当する。換言すれば、第1モデルは、n分類モードでトレーニングされ、第2モデルは、n+1分類モードでトレーニングされる。
【0053】
第1モデルは、n個の出力チャンネルを有している。第1モデルは、n個の既知の生体の各々について、入力された生体情報の生体Mが当該既知の生体である確率を示す情報を出力する。
【0054】
第2モデルは、n+1個の出力チャンネルを有している。第2モデルの余分な出力チャンネルは、トレーニングセットに現れない生体Mに対応する未知のクラスに相当する。第2モデルは、n個の既知の生体の各々について、入力された生体情報の生体Mが当該既知の生体である確率を示す情報を出力し、これに加えて、入力された生体情報の生体Mが未知の生体である確率を示す情報を出力する。
【0055】
第1モデル及び第2モデルは深層転移学習によって学習される。「転移学習」は、あるタスクから学習された情報を、関連するが十分な学習データを欠く別のタスクに転移する方法である。第1モデル及び第2モデルは、例えば、多数の重みパラメータ及び特定の深さを有するが、使用する学習用データセットのサイズは比較的小さい。第1モデルと第2モデルは、例えば、5000個のECGのデータセットに対してトレーニングされる。
【0056】
第1情報演算部13は、生体情報の入力によって、入力された生体情報の生体Mが既知の生体である確率を示す情報と、入力された生体情報の生体Mが未知の生体である確率を示す情報とを出力する。第1情報演算部13は、複数の既知の生体の各々について、入力された生体情報の生体Mが当該既知の生体である確率を示す情報を出力する。第1情報演算部13は、第1モデル演算部21と、第1予測部22とを含んでいる。
【0057】
第1モデル演算部21は、生体情報取得部11によって取得された生体情報と第1モデルとに基づいて演算を行う。第1モデル演算部21は、生体情報取得部11によって取得された生体情報の入力に応じて、対象の生体Mが既知の生体である確率を示す情報を第1モデルから出力する。本実施形態に示す例において、第1モデル演算部21は、心拍信号hp(t)が5秒の区間にセグメントされた情報を生体情報として取得し、第1モデルに入力する。
【0058】
第1予測部22は、第1モデルの出力から、対象の生体Mが既知の生体である確率と対象の生体Mが未知の生体である確率とを演算する。第1予測部22は、例えば、これら確率の演算結果から、予測ラベルを出力する。予測ラベルは、例えば、対象の生体Mが、既知の生体のいずれであるか、又、未知の生体であるかを示す情報である。第1予測部22は、n個の既知クラス及び1つの未知クラスからなる2つの確率分布をさらに出力してもよい。
【0059】
第1予測部22は、OpenMaxアルゴリズムを含んでいる。OpenMaxアルゴリズムは、第1モデルの出力が入力されることによって、対象の生体Mが既知の生体である確率と、対象の生体Mが未知の生体である確率とを出力する。第1予測部22は、第1モデルの出力にOpenMaxアルゴリズムを適用する。OpenMaxアルゴリズムは、第1モデルの活性化ベクトルに相当する。
【0060】
OpenMaxアルゴリズムは、クローズセット分類モデルをオープンセット分類モデルに拡張することを目的とするアルゴリズムである。OpenMaxアルゴリズムは、テストデータの活性化ベクトルを較正し、学習データに適合されたワイブル分布を使用することによって出力層内の新しいカテゴリを拡張する。例えば、OpenMaxアルゴリズムは、n分類をn+1分類に拡張する。例えば、OpenMaxアルゴリズムは、n個の既知の生体に関する情報の出力を、n個の既知の生体に関する情報と未知の生体に関する情報との出力に拡張する。本実施形態に示す例において、ワイブル分布の使用において、最適なパラメータは、Stail=2及びrα=5である。
【0061】
第2情報演算部14は、生体情報の入力によって、入力された生体情報の生体Mが既知の生体である確率を示す情報と、入力された生体情報の生体Mが未知の生体である確率を示す情報とを出力する。第2情報演算部14は、複数の既知の生体の各々について、入力された生体情報の生体Mが当該既知の生体である確率を示す情報を出力する。第2情報演算部14は、第2モデル演算部23と、第2予測部24とを含んでいる。
【0062】
第2モデル演算部23は、生体情報取得部11によって取得された生体情報と第2モデルとに基づいて演算を行う。第2モデル演算部23は、生体情報取得部11によって取得された生体情報の入力に応じて、対象の生体Mが既知の生体である確率を示す情報と、対象の生体Mが未知の生体である確率を示す情報とを第2モデルから出力する。
【0063】
第2予測部24は、第2モデルの出力から、対象の生体Mが既知の生体である確率と対象の生体Mが未知の生体である確率とを演算する。第2予測部24は、例えば、これら確率の演算結果から、予測ラベルを出力する。第2予測部24は、n個の既知クラス及び1つの未知クラスからなる2つの確率分布をさらに出力してもよい。
【0064】
第2予測部24は、SoftMaxアルゴリズムを含んでいる。第2予測部24は、SoftMaxアルゴリズムを直接的に活性化層として使用する。SoftMaxアルゴリズムは、第2モデルの活性化ベクトルに相当する。SoftMaxアルゴリズムは、第2モデルの出力が入力されることによって、対象の生体Mである確率と、対象の生体Mが未知の生体である確率とを出力する。
【0065】
識別部15は、第1情報演算部13の演算結果と第2情報演算部14の演算結果とに基づいて、対象の生体Mの識別結果を出力する。生体Mが既知の生体である場合に、第1情報演算部13の演算結果は、第2情報演算部の演算結果よりも高い識別精度が得られる。生体Mが未知の生体である場合に、第2情報演算部14の演算結果は、第1情報演算部の演算結果よりも高い識別精度が得られる可能性がある。識別部15は、第2情報演算部14の演算結果を、第1情報演算部13の演算結果に組合わせ、第1情報演算部13の演算結果を較正する。識別部15は、既知判定部25と、正確度判定部26と、出力部27とを含んでいてもよい。
【0066】
既知判定部25は、対象の生体Mが未知の生体であるか否かを第1情報演算部13の演算結果から判定する。既知判定部25は、例えば、第1予測部22から出力された予測ラベルが、対象の生体Mが未知の生体であることを示しているか否かを判定する。
【0067】
正確度判定部26は、第2情報演算部14の演算結果が正確であるか否かを判定する。正確度判定部26は、既知判定部25において、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部の演算結果から判定された場合に、第2情報演算部14の演算結果が正確であるか否かを判定する。例えば、正確度判定部26は、第2情報演算部14の演算結果と閾値との比較結果に基づいて、第2情報演算部14の演算結果が正確であるか否かを判定する。
【0068】
例えば、正確度判定部26は、第2情報演算部14において演算された確率のうち最大の確率maxsoftと、閾値Bとを比較し、確率maxsoftが閾値B以上である場合に、第2情報演算部14の演算結果が正確であると判定する。第2情報演算部14において演算された確率は、複数の既知の生体の各々に対する生体Mが既知の生体である確率と、生体Mが未知の生体である確率とを含んでいる。
【0069】
閾値Bは、例えば、学習用データセットにおける第2情報演算部14の演算結果に基づいて演算される。閾値Bは、例えば、サンプルセットSの平均mean(S)と、サンプルセットSの標準偏差std(s)との差である。サンプルセットSは、学習用データセットに含まれる同一のデータサンプルiについて第2情報演算部14によって演算された確率Pの最大値がmである場合、学習用データセット内の全てのデータサンプルについてのmの集合である。データサンプルiは、学習用データセットに含まれる任意の学習用生体である。
【0070】
出力部27は、第1情報演算部13の演算結果と第2情報演算部14の演算結果とのいずれかを識別結果として出力する。出力部27は、対象の生体Mが既知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定された場合に、第1情報演算部13の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定された場合に、第2情報演算部の演算結果に基づいて、第1情報演算部13の演算結果に関する情報又は第2情報演算部14の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。
【0071】
出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定された場合に、正確度判定部26の判定結果に基づいて、第1情報演算部13の演算結果に関する情報又は第2情報演算部の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定され、かつ、正確度判定部26が第2情報演算部14を不正確と判定した場合に、第1情報演算部13の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定され、かつ、正確度判定部26が第2情報演算部14の演算結果を正確と判定した場合に、第2情報演算部14の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。
【0072】
次に、学習フェーズにおける生体識別システム1の各機能部について、より詳細に説明する。学習フェーズにおいては、学習部30が動作する。学習部30は、種々の情報を含む学習用データセットを用いて学習された第1モデル及び第2モデルを作成する。学習部30は、例えば、学習情報取得部31と、第1モデル作成部32と、第2モデル作成部33と、格納部12とによって、第1モデル及び第2モデルを作成する。
【0073】
学習部30は、学習情報取得部31によって学習用データセットを取得し、第1モデル及び第2モデルを作成する。学習情報取得部31は、学習用データセットを取得する。学習用データセットは、複数の学習用生体の各々の識別情報と複数の学習用生体の各々の生体情報とを含んでいる。
【0074】
第1モデル作成部32は、学習用データセットを用いた学習によって、第1モデルを作成する。第2モデル作成部33は、学習用データセットを用いた学習によって、第2モデルを作成する。例えば、第2モデル作成部33は、第1モデル作成部32において用いられた学習用データセットと同一の学習用データセットを用いた学習によって、第2モデルを作成する。例えば、第1モデル作成部32及び第2モデル作成部33は、畳み込みニューラルネットワークによって第1モデル及び第2モデルを作成する。
【0075】
第1モデル作成部32及び第2モデル作成部33は、推定フェーズにおいて取得された情報に基づいて、第1モデル及び第2モデルを再作成、又は、更新してもよい。第1モデル作成部32及び第2モデル作成部33は、学習フェーズの終了後に、生体識別システム1から除外されてもよい。
【0076】
学習フェーズにおいて、格納部12は、第1モデル作成部32及び第2モデル作成部33によって作成された第1モデル及び第2モデルを格納する。格納部12は、学習データセットを予め格納していてもよいし、生体識別システム1の外部から取得して格納してもよい。
【0077】
次に、図3を参照して、生体識別システム1のハードウェア構成について説明する。図6は、生体識別システム1のハードウェア構成の一例を示す図である。図3に示されている例において、生体識別システム1の推定部10と学習部30とは、一体に構成されている。
【0078】
生体識別システム1は、プロセッサ101と、主記憶装置102と、補助記憶装置103と、通信装置104と、入力装置105と、出力装置106とを備えている。生体識別システム1は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータを含んでいる。生体情報取得部11と、格納部12と、第1情報演算部13と、第2情報演算部14と、識別部15と、学習情報取得部31と、第1モデル作成部32と、第2モデル作成部33とのそれぞれは、1つのコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。生体識別システム1は、ハードウェアと協働して実現されている。
【0079】
生体情報取得部11と、格納部12と、第1情報演算部13と、第2情報演算部14と、識別部15と、学習情報取得部31と、第1モデル作成部32と、第2モデル作成部33とが、複数のコンピュータによって構成される場合には、これらのコンピュータはローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの生体情報取得部11、格納部12、第1情報演算部13、第2情報演算部14、識別部15、学習情報取得部31、第1モデル作成部32、及び、第2モデル作成部33が構築される。
【0080】
プロセッサ101は、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。たとえば、生体識別システム1の各種機能部の少なくとも一部は、プロセッサ101及び主記憶装置102によって実現され得る。
【0081】
補助記憶装置103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置103は、一般的に主記憶装置102よりも大量のデータを記憶する。たとえば、格納部12の少なくとも一部は、補助記憶装置103によって実現され得る。
【0082】
通信装置104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。たとえば、生体情報取得部11、学習情報取得部31、及び、出力部27の少なくとも一部は、通信装置104によって実現され得る。入力装置105は、キーボード、マウス、及び、タッチパネルなどにより構成される。出力装置106は、プリンタなどにより構成される。たとえば、出力部27の少なくとも一部は、出力装置106によって実現され得る。
【0083】
補助記憶装置103は、予め、プログラム及び処理に必要なデータを格納している。このプログラムは、生体識別システム1の各機能要素をコンピュータに実行させる。このプログラムによって、たとえば、後述する状態識別方法における各処理がコンピュータにおいて実行される。このプログラムは、たとえば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。このプログラムは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0084】
次に、図4から図6を参照して、生体識別方法について説明する。例えば、生体識別方法は、第一モデル及び第二モデルの作成方法を含んでおり、第1モデル及び第2モデルを作成する学習フェーズと作成された第1モデル及び第2モデルを用いて生体Mの識別を実行する推定フェーズとを実行する。まず、図4を参照して、学習フェーズにおける第1モデル及び第2モデルの作成方法について説明する。図4は、第1モデル及び第2モデルの作成方法の一例を示すフローチャートである。
【0085】
まず、学習情報取得部31が学習用データセットを取得する(処理S21)。学習用データセットは、複数の学習用生体の各々の識別情報と複数の学習用生体の各々の生体情報とを含んでいる。
【0086】
次に、第1モデル作成部32が、処理S21において取得された学習用データセットを用いた学習によって、第1モデルを作成する(処理S22)。第2モデル作成部33が、処理S21において取得された学習用データセットを用いた学習によって、第2モデルを作成する(処理S23)。例えば、第2モデル作成部33は、第1モデル作成部32において用いられた学習用データセットと同一の学習用データセットを用いた学習によって、第2モデルを作成する。例えば、第1モデル作成部32及び第2モデル作成部33は、畳み込みニューラルネットワークによって第1モデル及び第2モデルを作成する。処理S22と処理S23とは、並行に実行されてもよい。例えば、作成された第1モデル及び第2モデルは、格納部12に格納される。
【0087】
次に、図5及び図6を参照して、生体識別方法の一例について詳細に説明する。図5は、生体識別方法の一例を示すフローチャートである。
【0088】
まず、生体情報取得部11は、生体情報を含む信号を取得する(処理S1)。例えば、生体情報取得部11は、ドップラーレーダ41の受信信号を受信アンテナRxにおいて取得する。そして、生体情報取得部11は、I/Q信号を取得する。本実施形態の変形例として、生体情報取得部11は、ドップラーレーダ41の受信信号を取得せずに、I/Q信号のみを取得してもよい。
【0089】
次に、生体情報取得部11は、生体情報を取得する(処理S2)。例えば、生体情報取得部11は、処理S1において取得された信号に基づいて、対象の生体Mの生体情報を取得する。例えば、本実施形態に示す例において、生体情報取得部11は、I/Q信号から対象の生体Mの胸部の変位x(t)の情報を生体情報として取得する。
【0090】
次に、生体情報取得部11は、フィルタリング処理を行う(処理S3)。生体情報取得部11は、フィルタリング処理によって、変位x(t)から不要成分が除去された、心拍信号hp(t)を取得する。処理S3において、心拍の情報が生体情報として取得されてもよい。
【0091】
次に、第1情報演算部13及び第2情報演算部14が第1演算処理及び第2演算処理を実行する。第1演算処理によって第1演算結果が導出される。第2演算処理によって第2演算結果が導出される。例えば、第1演算処理と第2演算処理とは、並行して実行される。第1演算処理が第2演算処理の後に実行されてもよいし、第2演算処理が第1演算処理の後に実行されてもよい。
【0092】
第1演算処理において、第1モデル演算部21が、処理S3において取得された生体情報を第1モデルへ入力する(処理S4)。第1モデルは、生体情報の入力によって、入力された生体情報の生体Mが既知の生体である確率を示す情報を出力する。第1モデルは、クローズセット分類モデルである。第1モデルは、生体情報取得部11によって取得された生体情報の入力に応じて、対象の生体Mが既知の生体である確率を示す情報を出力する。
【0093】
第1演算処理において、第1予測部22が、第1モデルの出力を第1アルゴリズムに入力する(処理S5)。第1アルゴリズムは、例えば、OpenMaxアルゴリズムである。OpenMaxアルゴリズムは、第1モデルの出力が入力されることによって、対象の生体Mが既知の生体である確率と、対象の生体Mが未知の生体である確率とを出力する。
【0094】
第2演算処理において、第2モデル演算部23が、処理S3において取得された生体情報を第2モデルへ入力する(処理S6)。第2モデルは、生体情報の入力によって、入力された生体情報の生体が既知の生体である確率を示す情報と、入力された生体情報の生体が未知の生体である確率を示す情報とを出力する。第2モデルは、オープンセット分類モデルである。第2モデルは、対象の生体Mが既知の生体である確率を示す情報と、対象の生体Mが未知の生体である確率を示す情報とを、生体情報取得部11によって取得された生体情報の入力に応じて出力する。
【0095】
第2演算処理において、第2予測部24が、第2モデルの出力を第2アルゴリズムに入力する(処理S7)。第2アルゴリズムは、例えば、SoftMaxアルゴリズムである。SoftMaxアルゴリズムは、第2モデルの出力が入力されることによって、対象の生体Mが既知の生体である確率と、対象の生体Mが未知の生体である確率とを出力する。
【0096】
次に、識別部15が、識別処理を実行する(処理S8)。識別部15が、第1演算処理の演算結果と第2演算処理の演算結果とに基づいて、対象の生体Mの識別結果を出力する。処理S8が終了すると、一連の処理が終了される。
【0097】
次に、図6を参照して、処理S8における識別処理について、より詳細に説明する。図6は、識別処理の一例を示すフローチャートである。
【0098】
まず、識別部15は、各種情報を取得する(処理S11)。識別部15は、第1演算処理の第1演算結果と第2演算処理の第2演算結果とを取得する。
【0099】
次に、識別部15は、既知判定部25において、対象の生体Mが未知の生体であるか否かを第1演算結果から判定する(処理S12)。既知判定部25は、例えば、第1予測部22から出力された予測ラベルが、対象の生体Mが未知の生体であることを示しているか否かを判定する。
【0100】
対象の生体Mが未知の生体でないと第1演算結果から判定された場合(処理S12のNO)、識別部15は、第1演算結果に関する情報を識別結果に設定する(処理S13)。対象の生体Mが未知の生体であると第1演算結果から判定された場合(処理S12のYES)、識別部15は、正確度判定部26において、第2演算結果が正確であるか否かを判定する(処理S14)。
【0101】
第2演算結果が正確でないと判定された場合(処理S14のNO)、識別部15は、第1演算結果に関する情報を識別結果に設定する(処理S13)。第2演算結果が正確であると判定された場合(処理S14のYES)、識別部15は、第2演算結果に関する情報を識別結果に設定する(処理S15)。
【0102】
次に、上述した実施形態にかかる生体識別システム1、生体識別方法、及び、プログラムによる作用効果について説明する。
【0103】
生体識別システム1において、識別部15は、第1情報演算部13の演算結果と第2情報演算部14の演算結果とに基づいて、対象の生体Mの識別結果を出力する。この場合、第1情報演算部13の演算結果と第2情報演算部14の演算結果とが組み合わされ、第1情報演算部13の演算結果と第2情報演算部14の演算結果とのうち、状況に応じた適切な演算結果が出力され得る。したがって、生体の識別精度が向上され得る。
【0104】
識別部15は、既知判定部25と、出力部27とを含んでいる。既知判定部25は、対象の生体Mが未知の生体であるか否かを第1情報演算部13の演算結果から判定する。出力部27は、対象の生体Mが既知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定された場合に、第1情報演算部13の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。対象の生体Mが既知の生体である場合において、第1情報演算部13の演算結果は、第2情報演算部14の演算結果よりも高い識別精度を有している。対象の生体Mが既知の生体である場合において、第1情報演算部13の演算結果が識別結果として出力されるため、生体の識別精度が向上され得る。
【0105】
出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定された場合に、第2情報演算部14の演算結果に基づいて、第1情報演算部13の演算結果に関する情報又は第2情報演算部14の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。このため、対象の生体Mが未知の生体である場合に、第2情報演算部14の演算結果は、第1情報演算部13の演算結果よりも高い識別精度を有しうる。対象の生体Mが既知の生体である場合において、第2情報演算部14の演算結果に基づいて、第1情報演算部13の演算結果に関する情報又は第2情報演算部14の演算結果に関する情報が識別結果として出力されるため、生体の識別精度が向上され得る。
【0106】
正確度判定部26は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定された場合に、第2情報演算部14の演算結果が正確であるか否かを判定する。出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定された場合に、正確度判定部26の判定結果に基づいて第1情報演算部13の演算結果に関する情報又は第2情報演算部14の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。この場合、第2情報演算部14の演算結果の正確度が考慮されるため、生体の識別精度がさらに向上され得る。
【0107】
出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定され、かつ、正確度判定部26が第2情報演算部14を不正確と判定した場合に、第1情報演算部13の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。出力部27は、対象の生体Mが未知の生体であると第1情報演算部13の演算結果から判定され、かつ、正確度判定部26が第2情報演算部14の演算結果を正確と判定した場合に、第2情報演算部14の演算結果に関する情報を識別結果として出力する。この場合、生体の識別精度がより確実に向上され得る。
【0108】
正確度判定部26は、第2情報演算部14の演算結果と閾値との比較結果に基づいて、第2情報演算部14の演算結果が正確であるか否かを判定する。この場合、第2情報演算部14の演算結果の正確度が容易に判定され得る。
【0109】
第1情報演算部13は、OpenMaxアルゴリズムを含んでいる。OpenMaxアルゴリズムは、第1モデルの出力が入力されることによって、対象の生体Mが既知の生体である確率と対象の生体Mが未知の生体である確率とを出力する。第2情報演算部14は、SoftMaxアルゴリズムを含んでいる。SoftMaxアルゴリズムは、第2モデルの出力が入力されることによって、対象の生体Mが既知の生体である確率と対象の生体Mが未知の生体である確率とを出力する。この場合、生体の識別精度がより容易かつ確実に向上され得る。
【0110】
OpenMaxアルゴリズムが結合された第1モデルは、重要でない特徴を有する全ての入力サンプルを、学習データセットに現れない未知のクラスに属するものとして識別する傾向がある。一方、SoftMaxアルゴリズムが結合された第2モデルは、学習データセットに現れる既知のクラスに属する重要でない特徴を有する入力サンプルを識別することに優位性を有する。
【0111】
第1モデルは、クローズセット分類モデルであり、第2モデルは、オープンセット分類モデルである。この場合、生体の識別精度がより容易かつ確実に向上され得る。
【0112】
次に、生体識別システム1の検証の一例を説明する。本検証では、生体情報として、人の心拍が用いられた。
【0113】
本検証では、公開されたデータセットが学習用データセットとして用いられた。このデータセットは、実験室の設定で収集された、レーダの信号の記録と、抽出されたバイタルサインと同期されたリファレンス基準信号とからなる。このデータセットは、同時に、リファレンスデバイスセンサを備えた24GHzの連続波レーダシステムを用いる。この連続波レーダシステムは、心電図(ECG)とインピーダンスカルジオグラム(ICG)と非侵襲的連続血圧(BP)とを同時に計測する。レーダのサンプリングレートは、20000Hzである。このデータセットには、安静、ヴァルサルヴァ、無呼吸、チルトアップ、チルトダウンの5つのテストシナリオが含まれている。被験者がリラックスして横になり、落ち着いて呼吸していた実験では、静止シナリオのデータのみが用いられた。各被験者について、静止シナリオでは、10分間のデータが収集された。図7は、学習データセットの主な情報を示している。このデータセットは、30名の健常被験者から収集された。
【0114】
上記データセットにおいて、30名の被験者からランダムに15名選択し、選択された被験者を既知と設定し、残りの15名の被験者を未知と設定した。本検証において、既知に設定された被験者からのドップラーレーダエコー信号のみが、学習フェーズで入力として用いられた。テストフェーズでは、30人全員からのドップラーレーダエコー信号が使用された。
【0115】
本検証では、上記データセットの30人の被験者それぞれからの600秒のデータが使用された。これらのデータは、既存の作業で一般的に使用される1.5秒の重なりを持つ5秒の時間窓によって分割された。このため、データセット内の各サブジェクトは、171個の信号セグメントを有し、30個のサブジェクトの合計5130個の信号セグメントが得られた。これらのデータの20%がテストデータセットとして用いられた。テストデータセットは、15人の被験者からの1026セグメントである。残りの4104セグメントが、学習データセットとして用いられた。図8は、検証に用いられるパラメータを示す表である。
【0116】
オープンセット分類問題では、開放性指数は以下の式(6)によって定義される。
【数5】
【0117】
式(6)において、Ctrainは学習データセットにおけるクラスの数であり、Ctestはテストデータセットにおけるクラスの数である。開放性指標は、オープンセット分類タスクの困難さを表すために用いられた。開放性指数の値が高いほど、オープンセット分類タスクの難易度が高い。本検証において、アルゴリズム性能を評価するために、精度スコアとF1スコアの2つの指標が用いられた。これらは、以下の式(7)及び式(8)によって定義される。
【数6】

【数7】
【0118】
ここで、TP、TN、FP、及び、FNは、それぞれ真陽性、真陰性、偽陽性、偽陰性に相当する。Precisionは、TP+FPに対するTPのトータル比を表している。Recallは、TP+FNに対するTPのトータル比を表している。精度スコアは、モデルパフォーマンスの最も直感的な指標である。F1スコアは、クラス分布が不均衡な場合のモデルパフォーマンスを反映している。
【0119】
上述したように、30人の被験者の半数が既知の被験者として、残りの半数が未知の被験者として無作為に選択された。これは、開放性指数0.293に相当する。この条件において、生体識別システム1の精度スコアは、94.35%であった。第2情報演算部14が存在せず、第1情報演算部13のみが存在している場合の精度スコアは91.42%であった。また、DDLM(Dipole Deep Learning Model)の精度スコアは93.57%であった。したがって、識別精度において、生体識別システム1の優位性が確認された。
【0120】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0121】
例えば、本実施形態において、生体情報取得部11は、レーダの受信信号を処理し、生体情報を取得した。しかし、生体情報取得部11は、通信によって、生体識別システム1の外部から生体情報を取得してもよい。例えば、生体情報取得部11は、生体識別システム1の外部において格納されている生体情報を、通信によって取得してもよい。
【符号の説明】
【0122】
1…生体識別システム、11…生体情報取得部、13…第1情報演算部、14…第2情報演算部、15…識別部、25…既知判定部、26…正確度判定部、27…出力部、B…閾値、M…生体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8