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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098891
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 107
B41J2/01 203
B41J2/01 213
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002688
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】四ノ宮 文二
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB40
2C056EC08
2C056EC71
2C056EC72
2C056EC74
2C056EC75
2C056FA11
2C056HA44
2C056HA60
(57)【要約】
【課題】マルチパス印刷において、代替可能なノズル群を準備することなく吐出不良のノズルの影響を低減する。
【解決手段】プリンタは、インクを吐出する複数のノズルが記録媒体の搬送方向Xに並んで形成されたノズル列を有するインクヘッドを備える。プリンタには、マルチパス印刷におけるパス数に対応するようにノズル列が搬送方向Xに分割された複数のノズル群G1~G8と、各ノズル群G1~G8から吐出されるインクのデューティー値V1~V8とが登録されている。吐出不良のノズルが発生すると、プリンタは、吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値Vdよりも小さいデューティー値Vdが登録された他のノズル群が存在することを含む所定の場合に、吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値Vdを他のノズル群のうちの1つのノズル群のデューティー値Vdに入れ替える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持台と、
インクヘッドと、
前記支持台、前記インクヘッド、および前記記録媒体のうちの少なくとも1つを所定の搬送方向に移動させることにより、前記記録媒体を前記インクヘッドに対して前記搬送方向に移動させる搬送装置と、
前記搬送装置および前記インクヘッドを制御する制御装置と、を備え、
前記インクヘッドは、それぞれインクを吐出する複数のノズルが前記搬送方向に並んで形成されたノズル列を有し、
前記制御装置は、
マルチパス印刷におけるパス数に対応するように前記ノズル列が前記搬送方向に分割された複数のノズル群と、各ノズル群から吐出されるインクのデューティー値とが登録されたデューティー登録部と、
前記インクヘッドを制御して、前記各ノズル群から前記デューティー登録部に登録されたデューティー値でインクを吐出させる吐出制御部と、
前記搬送装置を制御して、パス毎に前記インクヘッドに対して前記記録媒体を前記搬送方向の下流側に搬送させる搬送制御部と、
吐出不良のノズルを入力可能な入力部と、
前記吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値よりも小さいデューティー値が登録された他のノズル群が存在することを含む所定の場合に、前記吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値を前記他のノズル群のうちの1つのノズル群のデューティー値に入れ替え、前記デューティー登録部の登録を変更する登録変更部と、を備えている、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記登録変更部は、前記吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値が所定値以上の場合に前記デューティー登録部の登録の変更を選択し、前記吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値が前記所定値を下回る場合に前記デューティー登録部の登録の維持を選択するように構成されている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記搬送方向の最も上流側を1として下流側に向かって1ずつ増えるように前記複数のノズル群にパス番号が付与されるとし、パス番号がn(nは自然数)のノズル群を第nノズル群とするとき、
前記複数のノズル群のデューティー値は、第1ノズル群からパス番号が増加するに従って増加した後に減少に転じるように設定されており、
前記登録変更部は、
前記吐出不良のノズルが属するノズル群とデューティー値を入れ替えるノズル群として、デューティー値が前記所定値を下回る1つのノズル群を選択し、さらに、
前記選択されたノズル群を起点として対応するノズル群がシフトするように、前記吐出不良のノズルが属するノズル群以外のノズル群のデューティー値の登録を変更する、
請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記登録変更部は、前記吐出不良のノズルが属するノズル群とデューティー値を入れ替えるノズル群として、前記第1ノズル群を選択する、
請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記登録変更部は、前記吐出不良のノズルが属するノズル群とデューティー値を入れ替えるノズル群として、デューティー値が前記所定値を下回るノズル群のうちで前記吐出不良のノズルが属するノズル群と最もパス番号が近いノズル群を選択する、
請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記搬送方向の最も上流側を1として下流側に向かって1ずつ増えるように前記複数のノズル群にパス番号が付与されるとし、パス番号がn(nは自然数)のノズル群を第nノズル群とするとき、
前記複数のノズル群のデューティー値は、第1ノズル群からパス番号が増加するに従って増加した後に減少に転じるように設定されており、
前記登録変更部は、前記吐出不良のノズルが属するノズル群のパス番号が所定の数以上である場合には、
パス番号が前記所定の数以上のノズル群のうちから前記吐出不良のノズルが属するノズル群とデューティー値を入れ替えるノズル群を選択し、かつ、
パス番号が前記所定の数未満のノズル群のデューティー値の登録を維持する、
請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記制御装置は、前記デューティー登録部に登録された全てのパスにおいてインクを吐出させる印刷モードを選択可能に構成されたモード選択部を備えている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式によって記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタが従来から知られている。インクジェットプリンタにおいては、インクを吐出する多数のノズルのうちの一部に不具合が発生することがあり得る。そのような一部のノズルの不具合の影響を抑えるように構成されたインクジェットプリンタも従来から知られている。例えば特許文献1には、異常ノズルの代わりに他の正常ノズルでインク滴を吐出する代替処理を行うインクジェットプリンタが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたインクジェットプリンタは、複数回の走査(パス)で印刷を行うマルチパス印刷を行うように構成されている。特許文献1に開示されたインクジェットプリンタは、パス数に対応した複数の部分(以下、ノズル群とも呼ぶ)に制御上分割されたノズル列を備えている。特許文献1に開示されたインクジェットプリンタは、異常ノズルが属するノズル群からのインクの吐出量を減らし、上記ノズル群と代替可能な他のノズル群からのインクの吐出量を増やすことにより、部分的な代替処理を行うことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-149113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたようなマルチパス印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、あるノズル群と代替可能な他のノズル群を準備するためには、通常時には、代替可能な他のノズル群にインクを吐出させないことが必要である。言い換えると、全てのパスにおいてインクを吐出させるような高速の印刷では、あるノズル群と代替可能な他のノズル群を準備することができない。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、マルチパス印刷において、代替可能なノズル群を準備しなくとも吐出不良のノズルの影響を低減できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタは、記録媒体を支持する支持台と、インクヘッドと、前記支持台、前記インクヘッド、および前記記録媒体のうちの少なくとも1つを所定の搬送方向に移動させることにより、前記記録媒体を前記インクヘッドに対して前記搬送方向に移動させる搬送装置と、前記搬送装置および前記インクヘッドを制御する制御装置と、を備える。前記インクヘッドは、それぞれインクを吐出する複数のノズルが前記搬送方向に並んで形成されたノズル列を有している。前記制御装置は、デューティー登録部と、吐出制御部と、搬送制御部と、入力部と、登録変更部と、を備えている。前記デューティー登録部には、マルチパス印刷におけるパス数に対応するように前記ノズル列が前記搬送方向に分割された複数のノズル群と、各ノズル群から吐出されるインクのデューティー値とが登録されている。前記吐出制御部は、前記インクヘッドを制御して、前記各ノズル群から前記デューティー登録部に登録されたデューティー値でインクを吐出させる。前記搬送制御部は、前記搬送装置を制御して、パス毎に前記記録媒体を前記インクヘッドに対して前記搬送方向の下流側に搬送させる。前記入力部は、吐出不良のノズルを入力可能に構成されている。前記登録変更部は、前記吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値よりも小さいデューティー値が登録された他のノズル群が存在することを含む所定の場合に、前記吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値を前記他のノズル群のうちの1つのノズル群のデューティー値に入れ替え、前記デューティー登録部の登録を変更する。
【0008】
上記インクジェットプリンタによれば、吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値を、当該ノズル群よりも小さいデューティー値が登録された他のノズル群のデューティー値に入れ替えることにより、吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値を小さくすることができる。そのため、吐出不良のノズルが属するノズル群の印刷への影響を低減することができる。かつ、上記処理はノズル群間でのデューティー値の入れ替えである。そのため、上記インクジェットプリンタによれば、代替可能なノズル群を準備する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】キャリッジの下面の構成を示す平面図である。
図3】プリンタのブロック図である。
図4】初期登録状態における各ノズル群のデューティー値の一例を示すグラフである。
図5】各パスの画素の位置の一例を示す模式図である。
図6】デューティー値変更後における各ノズル群のデューティー値の一例を示すグラフである。
図7】デューティー値変更後における各ノズル群のデューティー値の第2の例を示すグラフである。
図8】第2実施形態に係るプリンタにおけるデューティー値の変更プロセスを示すフローチャートである。
図9】デューティー値変更後における各ノズル群のデューティー値の第3の例を示すグラフである。
図10】デューティー値変更後における各ノズル群のデューティー値の第4の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と称する)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態に係るプリンタ10の正面図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、作業者がプリンタ10の正面を向いているときにプリンタ10の後部から作業者に向かう方向を前方、作業者からプリンタ10の後部に向かう方向を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0012】
プリンタ10は、記録媒体5に印刷を行うものである。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエステル等の樹脂材料から形成されたものや、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板および段ボール等から形成されたものが含まれる。
【0013】
プリンタ10は、所定の搬送方向に記録媒体5を移動させながら記録媒体5に印刷を行う。記録媒体5の搬送方向は、ここでは、前後方向である。以下では、記録媒体5の搬送方向のことを副走査方向X(図2参照)とも呼ぶ。副走査方向Xの上流側X1は、ここでは後方である。副走査方向Xの下流側X2は、ここでは前方である。また、プリンタ10は、インクヘッド31を副走査方向Xと直交する主走査方向Yに移動させながら、インクヘッド31にインクを吐出させる。主走査方向Yは、ここでは、左右方向である。ただし、上記方向は説明の便宜のためのものに過ぎず、プリンタ10の設置態様等を何ら限定するものではない。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プラテン15と、キャリッジ20と、キャリッジ20に搭載された記録ヘッド30と、キャリッジ20に搭載された光照射装置40と、キャリッジ移動装置50と、記録媒体5の搬送装置60と、制御装置100と、操作パネル110と、を備えている。
【0015】
プラテン15は、記録媒体5を支持する支持台である。プラテン15は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。キャリッジ20は、プラテン15の上方に設けられている。記録ヘッド30は、キャリッジ20に設けられている。図2は、キャリッジ20の下面の構成を示す平面図である。図2に示すように、記録ヘッド30は、主走査方向Yに並んで配置された複数のインクヘッド31を備えている。各インクヘッド31は、副走査方向Xに延びるノズル列32を有している。各インクヘッド31は、1つまたは複数のノズル列32を有している。ノズル列32は、インクを吐出する複数のノズル33が副走査方向Xに並んで形成されたものである。ノズル列32が備えるノズル33の数は特に限定されないが、例えば240個である。ただし、図2では、ノズル33の数は少なく図示されている。各ノズル33は、上下方向に貫通した微小な孔である。ノズル33から吐出されたインク滴は、下方に向けて飛翔する。
【0016】
各インクヘッド31は、ここでは、複数の圧電素子を備え、制御装置100から送信される駆動信号を受けて圧電素子が振動することによりインクを吐出する。図示しない圧電素子は、例えば、圧電材料と導電層とを交互に積層した積層体である。圧電素子は、制御装置100からの駆動信号を受けると膨張または収縮する。圧電素子が膨張または収縮することにより、ノズル33に連通しインクが貯留された圧力室(図示せず)の体積が減少または増加する。これにより、ノズル33からインクが吐出される。駆動信号は、圧電素子を膨張させる電位と収縮させる電位とが交互に現れる駆動波形信号である。駆動信号の周波数は、キャリッジ20の主走査方向Yへの移動速度とともに、インクドットの主走査方向Yの最大解像度を規定している。
【0017】
本実施形態では、複数のノズル列32からは異なる色のインクが吐出される。ただし、複数のノズル列32は、同じ色のインクを吐出するものを含んでいてもよい。図2に示すように、本実施形態では、複数のインクヘッド31は、副走査方向Xの位置が揃うように配置されている。ただし、複数のインクヘッド31は、その一部の副走査方向Xの位置が他とずれるように、いわゆるスタガ配置されていてもよい。
【0018】
本実施形態では、プリンタ10は、特定の周波数帯の光を受けると硬化する光硬化性のインクを吐出する。光硬化性のインクは、例えば、紫外線を受けると硬化するUVインクである。ただし、インクの種類はUVインクには限定されない。インクヘッド31から吐出されるインクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インクや水性インクであってもよい。
【0019】
光照射装置40は、インクを硬化させる光を照射する。図2に示すように、光照射装置40は、ここでは、キャリッジ20の左側面に取り付けられている。ただし、光照射装置40が設けられる場所はキャリッジ20には限定されない。光照射装置40は、光を生成する図示しない光源と、下方に向けて開口した光の照射口41と、を備えている。光照射装置40は、光源で生成され照射口41を通る光をプラテン15上の記録媒体5に向けて照射する。
【0020】
キャリッジ移動装置50は、キャリッジ20を主走査方向Yに移動させる。図1に示すように、キャリッジ移動装置50は、ガイドレール51と、左右のプーリ52と、無端状のベルト53と、スキャンモータ54と、を有している。ガイドレール51は、プラテン15の上方に配置されている。ガイドレール51は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ20は、ガイドレール51に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。キャリッジ20には、ベルト53が固定されている。ベルト53は、左右のプーリ52に巻き掛けられている。スキャンモータ54は、一方のプーリ52に接続されている。スキャンモータ54が駆動して、一方のプーリ52が回転することで、ベルト53が走行する。これにより、キャリッジ20が主走査方向Yに移動する。記録ヘッド30および光照射装置40は、キャリッジ20とともに主走査方向Yに移動する。
【0021】
搬送装置60は、プラテン15に支持された記録媒体5を副走査方向Xに搬送する。図1に示すように、搬送装置60は、グリットローラ61と、ピンチローラ62と、フィードモータ63と、を有している。グリットローラ61は、プラテン15に埋設されている。各グリットローラ61の一部は、プラテン15に露出している。フィードモータ63は、グリットローラ61を副走査方向Xに回転させる。ピンチローラ62は、記録媒体5を上から押さえつけるものである。ピンチローラ62は、グリットローラ61の上方に配置されている。ピンチローラ62は、グリットローラ61と対向する位置に設けられている。ピンチローラ62は、上下方向に移動可能に構成されている。グリットローラ61とピンチローラ62との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ63が駆動してグリットローラ61が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。記録媒体5への画像の形成は、副走査方向Xの上流側X1から下流側X2に記録媒体5を間欠的に搬送しながら行われる。
【0022】
図3は、本実施形態に係るプリンタ10のブロック図である。図3に示すように、プリンタ10の制御装置100は、複数のインクヘッド31(図2には1つのみ図示)と、光照射装置40と、キャリッジ移動装置50のスキャンモータ54と、搬送装置60のフィードモータ63と、にそれぞれ電気的に接続され、それらの動作を制御している。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0023】
図3に示すように、制御装置100は、デューティー登録部101と、吐出制御部102と、搬送制御部103と、テストパターン印刷部104と、入力部105と、登録変更部106と、モード選択部107と、を備えている。制御装置100は他の処理部を備えていてもよいが、ここでは、図示および説明を省略する。
【0024】
デューティー登録部101には、ノズル列32が副走査方向Xに分割された複数のノズル群が登録されている。複数のノズル群は、マルチパス印刷におけるパス数に対応している。このノズル列32の分割は制御上のものであり、ノズル列32のノズル33は全て同じものであってもよい。図2に示すように、本実施形態では、ノズル列32は、8つのノズル群G1~G8に分割されている。8つのノズル群G1~G8は、副走査方向Xの下流側X2に向かってこの順で並んでいる。ノズル群G1は、最も副走査方向Xの上流側X1のノズル群である。以下、ノズル群G2~G8へと進むごとに副走査方向Xの下流側X2に配置されている。ノズル群G1は、マルチパス印刷における1パス目に対応している。ノズル群G2は、マルチパス印刷における2パス目に対応している。以下、ノズル群G8まで同様である。本実施形態におけるマルチパス印刷は、最大8パス印刷である。パス番号は、副走査方向Xの最も上流側X1を「1」として下流側X2に向かって「1」ずつ増えるように複数のノズル群G1~G8に付与される。以下、パス番号がn(nは自然数)のノズル群を第nノズル群とも呼ぶこととする。以下では、ノズル群G1~G8は、それぞれ、第1ノズル群G1~第8ノズル群G8とも呼ばれる。第nノズル群は、マルチパス印刷においてnパス目にインクを吐出するノズル群である。
【0025】
デューティー登録部101には、低解像度の印刷モードに対応する他のノズル群のセットも登録されていてもよい。例えば、デューティー登録部101には、4パス印刷に対応する他の第1~第4ノズル群のセットも登録されていてもよい。
【0026】
デューティー登録部101には、ノズル群G1~G8とともに、各ノズル群G1~G8から吐出されるインクのデューティー値が登録されている。図4は、初期登録状態における各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdの一例を示すグラフである。図4に示すように、複数のノズル群G1~G8のデューティー値Vdは、第1ノズル群G1からパス番号が増加するに従って増加し、その後に減少に転じるように設定されている。複数のノズル群G1~G8のデューティー値Vdを示すグラフは、ほぼ対称的な山形である。
【0027】
より詳しくは、本実施形態では、デューティー値Vdは、第1ノズル群G1の最上流のノズル33から第3ノズル群G3の最下流のノズル33まで直線的に増加する。第4ノズル群G4および第5ノズル群G5では、デューティー値Vdは、第3ノズル群G3の最下流のノズル33と同じであり一定値である。デューティー値Vdは、第6ノズル群G6の最上流のノズル33から第8ノズル群G8の最下流のノズル33まで直線的に減少する。第1ノズル群G1~第3ノズル群G3のデューティー値Vdの上昇勾配と、第6ノズル群G6~第8ノズル群G8のデューティー値Vdの下降勾配とは同じである。複数のノズル群G1~G8のデューティー値Vdを示すグラフの形状は、等辺台形である。以下、初期登録時におけるノズル群G1~G8のデューティー値Vdをそれぞれ、第1デューティー値V1~第8デューティー値V8とも呼ぶこととする。
【0028】
ノズル群G1~G8のデューティー値V1~V8は、同じ基準に基づく代表値である。代表値としては、例えば、中央値、平均値、最小値、最大値などが挙げられる。ノズル群G1~G8のデューティー値V1~V8としてどのような代表値を設定するかは限定されない。図4では、ノズル群G1~G8のデューティー値Vdそれぞれの最小値を第1デューティー値V1~第8デューティー値V8として図示する。デューティー値Vdを示す以降の図についても同様である。ただし、これは図示の都合上のことに過ぎない。
【0029】
デューティー値Vdの分布は、印刷品質を向上させるために、上記のように設定されている。本願発明者の知見によれば、記録媒体5にインクを着弾させるときには、最初の方のパスではインクの量を少なくし、中間のパスではインクの量を多くし、最後の方のパスではインクの量を再び少なくすると印刷品質が向上する。これはインクの種類によらない一般的な傾向である。ただし、程度はインクの種類によって異なる。UVインクでは、例えば溶剤インクと比較すると、上記した傾向は小さい。
【0030】
なお、上記したデューティー値Vdの分布は好適な一例であって、上記には限定されない。デューティー値Vdのグラフの形状は、例えば、二等辺三角形であってもよい。または、デューティー値Vdのグラフの形状は、例えば、ノズル群間の境界でデューティー値Vdが不連続に上昇または下降する階段形状であってもよい。デューティー値Vdのグラフの形状は、対称形であることが好ましいが、対称形に限定されるわけではない。
【0031】
デューティー登録部101には、パス毎のインクの着弾位置(インクが着弾する画素)が登録されている。画素の位置は、パス番号と紐づけられている。図5は、パス毎の画素の位置の一例を示す模式図である。図5に示すように、ここに示す例では、8つの画素のいずれかに1パス目~8パス目のインク着弾位置がそれぞれ割り当てられている。図5に示す例では、画素は、主走査方向Yに2画素、副走査方向Xに4画素とされている。8パス全てでインクを吐出しない印刷モード(例えば、低解像度の印刷モード)では、一部のパスでしかインクは吐出されない。インクを吐出するパスでは、デューティー値Vdに応じてインクが吐出される。例えば、インクを吐出するパスであってデューティー値Vdが50%の場合には、該当するノズル33のうち、半分のノズル33からインクが吐出される。
【0032】
本願発明者の知見によれば、パス毎の画素の位置も印刷品質と関係している。図5に示した例では、最も副走査方向Xの上流側X1にある画素には、1パス目と5パス目とが配置されている。2番目に副走査方向Xの上流側X1にある画素には、2パス目と6パス目とが配置されている。3番目に副走査方向Xの上流側X1にある画素には、3パス目と7パス目とが配置され、最も副走査方向Xの下流側X2にある画素には、4パス目と8パス目とが配置されている。主走査方向Yに並ぶ2つの画素の間のパス番号の差を、副走査方向Xの複数の列間で同じとすることにより、印刷濃度を均一にすることができる。ただし、パス毎の画素の位置は特に限定されない。
【0033】
吐出制御部102は、インクヘッド31を制御して、各ノズル群G1~G8からデューティー登録部101に登録されたデューティー値V1~V8でインクを吐出させる。搬送制御部103は、搬送装置60を制御して、パス毎に記録媒体5を副走査方向Xの下流側X2に搬送させる。
【0034】
テストパターン印刷部104は、インクヘッド31、光照射装置40、およびキャリッジ移動装置50を制御して、吐出不良のノズル33の有無と、その位置を確認するためのテストパターンを印刷させる。テストパターンとしては従来公知のテストパターンを好適に利用できる。吐出不良のノズル33の有無および位置は、ユーザー等がテストパターンを目視することによって確認されてもよい。または、プリンタ10は、テストパターンを撮像するカメラ等を備えていてもよい。その場合、プリンタ10は、撮像された画像に基づいて、吐出不良のノズル33の有無および位置を自動判別してもよい。
【0035】
入力部105は、吐出不良のノズル33を入力可能に構成されている。図示および詳しい説明は省略するが、プリンタ10は、インクヘッド31をクリーニングしてノズル33の状態を維持するクリーニング装置を備えていてもよい。クリーニング装置は、例えば、インクヘッド31を払拭するワイパー、インクヘッド31に装着されるキャップ、キャップに接続されインクを吸引する減圧装置等を備えている。吐出不良のノズル33が発見された場合には、クリーニング装置を使ったインクヘッド31のクリーニングにより、当該ノズル33の吐出不良を解消することが試みられてもよい。それでもノズル33の吐出不良が解消しない場合に、ユーザー等は、吐出不良のノズル33を入力部105に入力する。入力部105は、例えば、吐出不良のノズル33を入力する画面を、プリンタ1に接続されたコンピュータの表示装置に表示させる。ただし、吐出不良のノズル33を入力する画面が表示されるものはコンピュータの表示装置には限定されず、例えば操作パネル110でもよい。入力部105には、吐出不良のノズル33の位置が自動で入力されてもよい。
【0036】
登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdよりも小さいデューティー値Vdが登録された他のノズル群が存在することを含む所定の場合に、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdを他のノズル群のうちの1つのノズル群のデューティー値Vdに入れ替え、デューティー登録部101の登録を変更する。プリンタ10は、これにより、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdを小さくし、吐出不良のノズル33の印刷への影響を低減する。吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdよりも小さいデューティー値Vdが登録された他のノズル群が存在しない(吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdが最も小さい)場合には、効果が期待できないため、デューティー登録部101の登録は変更されない。登録変更部106は、ノズル群G1~G8間でデューティー値Vdを入れ替える際には、デューティー値Vdと紐づけられた画素の位置もともに入れ替える。
【0037】
登録変更部106は、より詳しくは、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdが所定値以上の場合にデューティー登録部101の登録の変更を選択する。登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdが上記した所定値を下回る場合には、デューティー登録部101の登録の維持を選択する。上記所定値は特に限定されないが、例えば、第2ノズル群G2のデューティー値V2および第7ノズル群G7のデューティー値V7と等しくてもよい。その場合、吐出不良のノズル33が属するノズル群が第1ノズル群G1または第8ノズル群G8(最もデューティー値Vdが小さいノズル群)でない限りは、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdが他の1つのノズル群のデューティー値Vdと置換される。
【0038】
登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、デューティー値Vdが上記所定値を下回る1つのノズル群を選択する。本実施形態では、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、第1ノズル群G1を選択する。さらに、登録変更部106は、選択されたノズル群を起点として対応するノズル群がシフトするように、吐出不良のノズル33が属するノズル群以外のノズル群のデューティー値Vdの登録を変更する。すなわち、本実施形態では、登録変更部106は、デューティー登録部101の登録を変更する場合には、全てのノズル群G1~G8のデューティー値Vdを相互に入れ替える。この詳細については、変更例を使って後述する。
【0039】
モード選択部107は、印刷モードを選択可能に構成されている。モード選択部107は、例えば、印刷モードを選択する画面を、プリンタ10に接続されたコンピュータの表示装置に表示させる。ただし、印刷モードを選択する画面が表示されるものはコンピュータの表示装置には限定されず、例えば操作パネル110でもよい。印刷モードには、デューティー登録部101に登録された全てのパスにおいてインクを吐出させる印刷モード(以下、高品質モードとも呼ぶ)が含まれている。モード選択部107は、高品質モードを選択可能に構成されている。なお、他の印刷モードとして、例えば、パス数を少なくして高速で印刷する高速モード等が準備されていてもよい。
【0040】
[登録変更例]
以下では、吐出不良のノズル33が発生し、デューティー登録部101の登録を変更する処理を、吐出不良のノズル33が第3ノズル群G3に発生した場合を例に説明する。前述したように、本実施形態では、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、第1ノズル群G1を選択する。さらに、登録変更部106は、選択されたノズル群(ここでは、第1ノズル群G1)を起点として対応するノズル群がシフトするように、吐出不良のノズル33が属するノズル群以外のノズル群のデューティー値Vdの登録を変更する。
【0041】
図6は、変更後における各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdを示すグラフである。図6に示すように、吐出不良のノズル33が属する第3ノズル群G3のデューティー値Vdは、第3デューティー値V3から第1デューティー値V1に変更されている。これにより、吐出不良のノズル33を有する第3ノズル群G3のデューティー値Vdが小さくされる。その結果、吐出不良のノズル33が印刷画質に与える影響が低減される。
【0042】
図6に示すように、第4ノズル群G4~第8ノズル群G8のデューティー値Vdは、それぞれ、第2デューティー値V2~第6デューティー値V6に変更されている。また、第1ノズル群G1および第2ノズル群G2のデューティー値Vdは、それぞれ、第7デューティー値V7および第8デューティー値V8に変更されている。このように、登録変更部106は、選択された第1ノズル群G1を起点として対応するノズル群がシフトするように、吐出不良のノズル33が属する第3ノズル群G3以外のノズル群G1、G2、およびG4~G8のデューティー値Vdの登録も同時に変更する。このシフトは、第8ノズル群G8と第1ノズル群G1とが繋がり、第1ノズル群G1~第8ノズル群G8が循環するようなシフトである。
【0043】
なお、上記した処理は、吐出不良のノズル33が発生したノズル列32に対してのみ行われ、他のノズル列32のデューティー値Vdの登録変更は行われない。ただし、デューティー値Vdの登録変更は、吐出不良のノズル33が発生したノズル列32に対してのみではなく、他のノズル列32に対しても行われてもよい。
【0044】
[第1実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係るプリンタ10が奏することができる作用効果について説明する。本実施形態に係るプリンタ10は、マルチパス印刷におけるパス数(ここでは、8)に対応するようにノズル列32が副走査方向Xに分割された複数のノズル群G1~G8と、各ノズル群G1~G8から吐出されるインクのデューティー値V1~V8とが登録されたデューティー登録部101と、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdよりも小さいデューティー値Vdが登録された他のノズル群が存在することを含む所定の場合に、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdを上記他のノズル群のうちの1つのノズル群のデューティー値Vdに入れ替え、デューティー登録部101の登録を変更する登録変更部106と、を備えている。
【0045】
かかるプリンタ10によれば、吐出不良のノズル33が属するノズル群(上記した例では、第3ノズル群G3)のデューティー値Vd(上記した例では、第3デューティー値V3)を、当該ノズル群よりも小さいデューティー値Vdが登録された他のノズル群(上記した例では、第1ノズル群G1)のデューティー値Vd(上記した例では、第1デューティー値V1、V1<V3)に入れ替えることにより、吐出不良のノズル33が属するノズル群(上記した例では、第3ノズル群G3)のデューティー値Vdを小さくすることができる。
【0046】
吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値を小さくすることにより吐出不良のノズルの影響を低減する技術は従来から知られている。そのような従来の技術では、例えば、吐出不良のノズルが属するノズル群と他のノズル群とを代替する代替処理が行われる。または、例えば特許文献1に開示されているように、吐出不良のノズルが属するノズル群からのインクの吐出量を減らし、上記ノズル群と代替可能な他のノズル群からのインクの吐出量を増やすことにより、部分的な代替処理が行われる。
【0047】
しかしながら、マルチパス印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、あるノズル群と代替可能な他のノズル群を準備するためには、通常時には、代替可能な他のノズル群にインクを吐出させないことが必要である。言い換えると、全てのパスにおいてインクを吐出させる印刷では、あるノズル群と代替可能な他のノズル群を準備することができない。
【0048】
本実施形態に係るプリンタ10では、ノズル群G1~G8間でデューティー値Vdの入れ替えを行うことにより、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdを小さくしている。そのため、本実施形態に係るプリンタ10では、吐出不良のノズル33が属するノズル群と代替させるためのノズル群を準備する必要がない。そこで、本実施形態に係るプリンタ10によれば、マルチパス印刷において、代替可能なノズル群を準備しなくとも吐出不良のノズル33の影響を低減できる。例えば、全てのパスにおいてインクを吐出するように設定され、そのために代替可能なノズル群を準備できない高品質印刷を行う場合であっても、吐出不良のノズル33の影響を低減することができる。
【0049】
本実施形態では、制御装置100は、デューティー登録部101に登録された全てのパスにおいてインクを吐出させる高品質モードを選択可能に構成されたモード選択部107を備えている。ここに開示する技術は、高品質モードにおいても吐出不良のノズル33の影響を低減することができる点に特に利点を有する。
【0050】
本実施形態では、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdが所定値以上の場合にデューティー登録部101の登録の変更を選択し、吐出不良のノズル33が属するノズル群のデューティー値Vdが所定値を下回る場合にデューティー登録部101の登録の維持を選択するように構成されている。かかる構成によれば、閾値(所定値)の適切な設定により、必要な場合にはデューティー登録部101の登録を変更するとともに、必要でない場合にはデューティー登録部101の登録を維持し、デューティー値Vdを入れ替えることに起因する他の影響を避けることができる。
【0051】
さらに詳しくは、本実施形態に係る登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、デューティー値Vdが上記した所定値(閾値)を下回る1つのノズル群を選択する。さらに、登録変更部106は、選択されたノズル群を起点として対応するノズル群がシフトするように、吐出不良のノズル33が属するノズル群以外のノズル群のデューティー値Vdの登録を変更する。かかる構成によれば、初期登録時のデューティー値Vdの連続性がかなりの程度で維持される。例えば、図6に示した例では、第3ノズル群G3のデューティー値Vdは第1デューティー値V1であり、第3ノズル群G3に連続する第4ノズル群G4のデューティー値Vdは第1デューティー値V1に連続する第2デューティー値V2である。そのため、デューティー値Vdを入れ替えることによる印刷品質への影響を抑制することができる。例えば、選択されたノズル群を起点としてノズル群のデューティー値Vdをシフトさせれば、画素にインクを着弾させる順序が維持されることが多くなる。その結果、デューティー登録部101の登録変更が印刷品質に与える影響が抑制される。
【0052】
本実施形態では、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、第1ノズル群G1を選択する。本実施形態では、複数のノズル群G1~G8のデューティー値V1~V8は、第1ノズル群G1からパス番号が増加するに従って増加した後に減少に転じるように設定されている。そのため、初期登録時の第1ノズル群G1のデューティー値V1は小さい。本実施形態では、初期登録時の第1ノズル群G1のデューティー値V1は、複数のノズル群G1~G8のデューティー値V1~V8の中で最も小さい。そのため、吐出不良のノズル33の影響を効果的に抑えることができる。
【0053】
[第1実施形態の変形例]
登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群を選択する際に、他の基準によってもよい。登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、第1ノズル群G1以外のノズル群を選び得るように構成されていてもよい。1つの好適な変形例では、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、デューティー値Vdが所定値(以下、閾値Vtとも呼ぶ、図7参照)を下回るノズル群のうちで吐出不良のノズル33が属するノズル群と最もパス番号が近いノズル群を選択してもよい。
【0054】
図7は、デューティー値Vdの変更後における各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdの第2の例を示すグラフである。図7に示す例では、図6と同様に、吐出不良のノズル33は、第3ノズル群G3に発生したものとする。また、閾値Vtは、第2デューティー値V2および第7デューティー値V7よりも大きく、第3デューティー値V3および第6デューティー値V6よりも小さく設定されているものとする。
【0055】
本変形例では、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属する第3ノズル群G3とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群として、デューティー値Vdが閾値Vtを下回るノズル群のうちで第3ノズル群G3と最もパス番号が近いノズル群、すなわち第2ノズル群G2を選択する。本変形例でも、他のノズル群G1~G4およびG6~G8のデューティー値Vdの変更法則は、上記した実施形態と同じであるとする。従って、第4ノズル群G4~第8ノズル群G8のデューティー値Vdは、それぞれ、第3デューティー値V3~第7デューティー値V7に変更される。また、第1ノズル群G1および第2ノズル群G2のデューティー値Vdは、それぞれ、第8デューティー値V8および第1デューティー値V1に変更される。
【0056】
かかる変形例によれば、第1実施形態と同様に初期登録時のデューティー値Vdの連続性がかなりの程度で維持され、かつ、第1実施形態よりも各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdの変化が小さくなりやすい。図7図6とを比較すると、例えば、図7における第4ノズル群G4のデューティー値Vdは第3デューティー値V3であるのに対し、図6における第4ノズル群G4のデューティー値Vdは第2デューティー値V2である。第2デューティー値V2よりも第3デューティー値V3の方が、第4ノズル群G4の初期設定時のデューティー値V4に近い。そのため、デューティー登録部101の登録変更が印刷品質に与える影響をより抑制することができる。
【0057】
[第2実施形態]
第2実施形態では、プリンタ10は、パス番号が所定数よりも小さいノズル群のデューティー値Vdを変更しないように構成される。前述したように、特に溶剤インクでは、最初の方のパスのインク量を少なくした方が印刷品質が向上する傾向がある。そのため、本実施形態に係るプリンタ10では、パス番号が所定数よりも小さいノズル群のデューティー値Vdは変更されない。
【0058】
本実施形態では、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のパス番号が所定の数以上である場合には、パス番号が上記所定の数以上のノズル群のうちから吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群を選択する。ここでは、一例として、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のパス番号が「3」以上である場合には、パス番号が「3」以上のノズル群(すなわち、第3ノズル群G3~第8ノズル群G8)のうちから吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群を選択するものとする。かつ、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のパス番号が所定の数以上である場合には、パス番号が上記所定の数未満のノズル群のデューティー値Vdの登録を維持する。ここでは、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のパス番号が「3」以上である場合には、パス番号が「3」未満のノズル群(すなわち、第1ノズル群G1および第2ノズル群G2)のデューティー値V1およびV2の登録を維持する。
【0059】
登録変更部106は、ここでは、吐出不良のノズル33が第2ノズル群G2に発生した場合には、第2ノズル群G2のデューティー値Vdを第1デューティー値V1に、第1ノズル群G1のデューティー値Vdを第2デューティー値V2に変更する。ただし、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が第1ノズル群G1または第2ノズル群G2に発生した場合には、デューティー登録部101の登録を維持するように構成されていてもよい。
【0060】
図8は、第2実施形態に係るプリンタ10におけるデューティー値Vdの変更プロセスを示すフローチャートである。図8に示すように、本実施形態では、デューティー値Vdの変更プロセスのステップS01において、吐出不良のノズル33が発生したノズル群が第1ノズル群G1かどうかが判定される。ステップS01の結果がYESである場合(吐出不良のノズル33が発生したノズル群が第1ノズル群G1である場合)、デューティー値Vdの変更登録は行われず、プロセスは終了する。
【0061】
ステップS01の結果がNOである場合(吐出不良のノズル33が発生したノズル群が第1ノズル群G1でない場合)、ステップS02において、吐出不良のノズル33が発生したノズル群が第2ノズル群G2かどうかが判定される。ステップS02の結果がYESである場合(吐出不良のノズル33が発生したノズル群が第2ノズル群G2である場合)、ステップS03において、第2ノズル群G2のデューティー値Vdが第1デューティー値V1に、第1ノズル群G1のデューティー値Vdが第2デューティー値V2に変更される。この場合、ステップS03でプロセスは終了する。
【0062】
ステップS02の結果がNOの場合(吐出不良のノズル33が発生したノズル群が第2ノズル群G2でもない場合)、ステップS04において、パス番号が「3」以上のノズル群、すなわち、第3ノズル群G3~第8ノズル群G8のうちから吐出不良のノズル33が属するノズル群とデューティー値Vdを入れ替えるノズル群が選択される(吐出不良のノズル33が属するノズル群を特定するステップは、図8では省略する)。ステップS05では、ステップS04で選択されたノズル群を起点として対応するノズル群がシフトするように、吐出不良のノズル33が属するノズル群以外のノズル群のデューティー値Vdの登録が変更される。また、本実施形態では、第1実施形態の変形例と類似の法則に従って各ノズル群G4~G8のデューティー値Vdが変更される。本実施形態では、ステップS05において第1ノズル群G1および第2ノズル群G2のデューティー値V1およびV2は変更されない。
【0063】
図9は、デューティー値Vdの変更後における各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdの第3の例を示すグラフである。図9は、図6および図7と同様に、吐出不良のノズル33が属するノズル群が第3ノズル群G3であった場合の各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdを示している。図9に示すように、この例では、第1ノズル群G1および第2ノズル群G2のデューティー値Vdは変更なく、それぞれ、第1デューティー値V1および第2デューティー値V2である。第3ノズル群G3のデューティー値Vdは、第3デューティー値V3よりも小さいデューティー値Vdを有する第7ノズル群G7のデューティー値V7に変更される。第4ノズル群G4~第8ノズル群G8のデューティー値Vdは、それぞれ、第8デューティー値V8、第3デューティー値V3、第4デューティー値V4、第5デューティー値V5、および第6デューティー値V6に変更される。
【0064】
本実施形態に係るプリンタ10によれば、登録変更部106は、吐出不良のノズル33が属するノズル群のパス番号が所定の数以上である場合には、パス番号が上記所定の数未満のノズル群のデューティー値Vdの登録を維持する。複数のノズル群G1~G8のデューティー値V1~V8は、第1ノズル群G1からパス番号が増加するに従って増加した後に減少に転じるように設定されている。そのため、パス番号が所定数よりも小さいノズル群(上記した例では、第1ノズル群G1および第2ノズル群G2)のデューティー値Vdは、小さいまま維持される。インクジェットプリンタでは、最初の方のパスのインク量を少なくした方が印刷品質が向上する傾向がある。そのため、本実施形態に係るプリンタ10によれば、吐出不良のノズル33の影響を低減しつつ、印刷品質を確保することが可能である。特に、インクが溶剤インクや水性インクの場合に、本実施形態における処理は有効である。
【0065】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。例えば、上記した実施形態では、複数のノズル群に吐出不良のノズルが発生した場合の処理を説明しなかったが、複数のノズル群に吐出不良のノズルが発生した場合にも、各ノズル群のデューティー値は変更登録されてもよい。各ノズル群のデューティー値の変更法則は限定されないが、例えば、吐出不良のノズルが発生した1のノズル群には最も小さいデューティー値が割り当てられ、吐出不良のノズルが発生した他のノズル群には2番目に小さいデューティー値(最も小さいデューティー値と等しい場合も含む)が割り当てられてもよい。吐出不良のノズルが発生したノズル群の数には限度が設けられていてもよく、その場合、吐出不良のノズルが発生したノズル群の数が限度を超えると、デューティー値の変更登録が行われなくてもよい。
【0066】
図10は、デューティー値Vdの変更後における各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdの第4の例を示すグラフである。図10は、第3ノズル群G3と第6ノズル群G6とに吐出不良のノズル33が発生した場合の各ノズル群G1~G8のデューティー値Vdを示している。図10に示すように、この例では、第3ノズル群G3のデューティー値Vdは、第8デューティー値V8に変更される。第1ノズル群G1および第2ノズル群G2のデューティー値Vdは、第3ノズル群G3を起点とするシフト則に基づき、それぞれ、第6デューティー値V6および第7デューティー値V7に変更される。また、第6ノズル群G6のデューティー値Vdは、第1デューティー値V1に変更される。第7ノズル群G7および第8ノズル群G8のデューティー値Vdは、第6ノズル群G6を起点とするシフト則に基づき、それぞれ、第2デューティー値V2および第3デューティー値V3に変更される。吐出不良のノズル33が発生した2つのノズル群G3とG6との間のノズル群G4およびG5のデューティー値Vdは、ここでは変更されない。例えば、かかる処理により、複数のノズル群に吐出不良のノズルが発生した場合にも、吐出不良のノズルの印刷品質への影響を低減することができる。
【0067】
上記したいくつかの実施形態では、吐出不良のノズルが発生したノズル群以外のノズル群のデューティー値も変更されたが、変更されなくてもよい。その場合、吐出不良のノズルが属するノズル群のデューティー値と選択された他のノズル群のデューティー値とを相互に入れ替えるだけでもよい。
【0068】
プリンタの構成は特に限定されない。例えば、プリンタは、溶剤インクや水性インクで画像を形成するプリンタであってもよく、その場合、記録媒体およびインクを加熱する加熱装置を備えていてもよい。プリンタは、記録媒体を所定の搬送方向に搬送するロール・トゥ・ロールタイプのプリンタでなくてもよく、例えば、記録媒体を支持した支持台が移動する、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。プリンタの搬送装置は、記録媒体の支持台、インクヘッド、および記録媒体のうちの少なくとも1つを所定の搬送方向に移動させることにより、記録媒体をインクヘッドに対して搬送方向に移動させるように構成されていればよく、それ以上限定されない。
【0069】
その他、特に限定されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。また、ここに開示する技術は、互いに阻害する関係でない限り、自在に組み合わせ得る。例えば、上記した第1実施形態~他の実施形態に係るプリンタに開示された技術要素は、互いに阻害する関係でない限り、自在に組み合わせ得る。
【符号の説明】
【0070】
5 記録媒体
10 インクジェットプリンタ
15 プラテン(支持台)
31 インクヘッド
32 ノズル列
33 ノズル
60 搬送装置
100 制御装置
101 デューティー登録部
102 吐出制御部
103 搬送制御部
105 入力部
106 登録変更部
107 モード選択部
G1~G8 ノズル群
V1~V8 第1~第8デューティー値
Vd デューティー値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10