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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098898
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】シート材巻き取り方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/10 20060101AFI20240717BHJP
   B65H 18/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B65H75/10
B65H18/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002699
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 宏彰
【テーマコード(参考)】
3F055
3F058
【Fターム(参考)】
3F055AA01
3F055AA05
3F055AA08
3F055BA25
3F055CA01
3F058AA03
3F058AB01
3F058AC00
3F058BA03
3F058BB01
3F058BB07
3F058BB11
3F058BB12
3F058CA00
3F058DA04
3F058JA14
(57)【要約】
【課題】円筒状の巻き芯に内装用のシート材を巻き取る方法であって、強い巻き段痕の発生を抑制できるシート材巻き取り方法を提供する。
【解決手段】シート材巻き取り方法は、円筒状の巻き芯10に内装用のシート材1を巻き取る方法であって、前記巻き芯10は断面形状の仮想外周Rを増大可能とするためのスリット11が設けられており、この巻き芯10に外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周Rを自然状態よりも増大させる第1工程、前記巻き芯の断面形状の仮想外周Rを増大させた状態で、巻き芯10の周囲にシート材1を巻き取る第2工程、および、前記シート材1の巻き取りが完了した後、前記巻き芯10に付与していた前記外力を解除する第3工程、を含むことを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の巻き芯に内装用のシート材を巻き取る方法であって、
前記巻き芯は、断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、この巻き芯に外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる第1工程、
前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る第2工程、および、
前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する第3工程、を含むことを特徴とするシート材巻き取り方法。
【請求項2】
円筒状の巻き芯と、前記巻き芯の周囲に巻回された内装用のシート材とからなる芯付きロール体を製造する方法であって、
前記巻き芯は、断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、この巻き芯に外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる第1工程、
前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る第2工程、および、
前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する第3工程、を含むことを特徴とする芯付きロール体の製造方法。
【請求項3】
内装用のシート材をロール状に巻いたロール体を製造する方法であって、
断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられた円筒状の巻き芯に、外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる第1工程、
前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る第2工程、
前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する第3工程、および、
巻き取られたシート材から前記巻き芯を抜き出す第4工程、を含むことを特徴とするロール体の製造方法。
【請求項4】
円筒状の巻き芯と、前記巻き芯の周囲に巻回された内装用のシート材とからなる芯付きロール体であって、
前記巻き芯は、仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、
前記芯付きロール体の巻き芯の中心軸が鉛直となるように静置したとき、前記シート材の最内層の端縁が、巻き芯のスリットに入り込んでおらず、また、前記巻き芯と内側から2周目のシート材との間で挟圧されていないことを特徴とする芯付きロール体。
【請求項5】
内装用のシート材の巻き取りに使用される円筒状の巻き芯であって、
断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、
シート材巻き取り時に、巻き芯を弾性変形させることで断面形状の仮想外周を増大できるように構成されていることを特徴とする巻き芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装用のシート材を保管や運搬のために、ロール状に巻き取る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺のシート材は巻き芯に巻き取り、ロール体として保管されることが多い。このようなロール体では、巻き取りによって生じた巻芯部に位置するシート材端部の段差に起因する巻痕、いわゆる巻き段痕を生じることが知られている。また、内装用のシート材はロール体として巻ける程度の柔軟性を有しており、柔軟性が高い。そのため、厚み寸法が大きい内装用シート材は、巻き段痕が特につき易い。
【0003】
なお、内装用シートを施工する際、巻き段痕が強く生じている状態で、下地に内装用シートを敷設すると、巻き段痕がそのまま消えずに残り、見栄えが悪くなってしまう。よって、施工する前に、巻き取られた内装用シートを現場で広げて養生させることにより、巻き段痕を弱くしてから下地に接着剤などを塗布し、前記内装用シートを敷設することが一般的に行われている。しかしながら、冬場等の低温環境下では長時間養生しても巻き段痕が弱くなり難い傾向にある。この場合、養生時間をより長くしたり、空調設備で室温を高くしたりするなど、時間や手間が必要となっていた。また、内装用シートの種類によっては、巻き段痕が養生によっても弱くならずに残存する場合があった。
【0004】
そこで、保管時や運搬時に生じるシート材の変形を抑制する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、第1主面と、第2主面を有し、前記第1主面が内側となり、前記第2主面が外側となるように丸みをもたせて捲回されている被運搬物と、前記被運搬物を収容する容器と、前記被運搬物の捲回方向における内周側の端部を、この内周側の端部における前記第2主面と向かい合う前記第1主面から離間させるための離間部材と、を備える梱包物が記載されている(引用文献1(請求項1、図1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-172295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、円筒状の巻き芯に内装用のシート材を巻き取る方法であって、強い巻き段痕の発生を抑制できるシート材巻き取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することができた本発明のシート材巻き取り方法は、円筒状の巻き芯に内装用のシート材を巻き取る方法であって、前記巻き芯は、断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、この巻き芯に外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる第1工程、前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る第2工程、および、前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する第3工程、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明のシート材巻き取り方法は、円筒状の巻き芯を用いるため、シート材の巻き取り作業を簡便に行うことができる。また、従来の方法では、巻き芯を用いてシート材を巻き取った場合、2周目以降のシート材は先に巻き取られているシート材に圧接されるため、この圧力によってシート材に巻き段痕が発生する。しかし、本発明のシート材巻き取り方法では、巻き芯の断面形状の仮想外周が、巻き取り作業時よりも巻き取り作業後の方が小さくなり、1周目のシート材が半径方向の内方へ移動できるため、2周目以降のシート材の圧力が解放される。これにより、施工後にも残存するような強い巻き段痕がシート材に発生することを抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシート材巻き取り方法によれば、円筒状の巻き芯にシート材を簡便に巻き取ることができ、かつ、強い巻き段痕の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のシート材巻き取り方法に使用される巻き芯の一例を示す斜視図である。
図2図1の巻き芯の側面図である。
図3】本発明のシート材巻き取り方法に使用される巻き芯の他の例を示す斜視図である。
図4】外力付与部材の一例を示す斜視図である。
図5図4の外力付与部材を巻き芯に挿入した状態を示す断面模式図である。
図6図4の外力付与部材により巻き芯を支持した状態の一例を示す斜視図である。
図7図4の外力付与部材により巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態を示す断面模式図である。
図8】巻き芯の周囲にシート材を巻き取る方法の一例を説明する断面模式図である。
図9】巻き芯の周囲にシート材を巻き取る方法の一例を説明する断面模式図である。
図10】シート材を巻き取り後、巻き芯に付与されていた外力を解除した状態を示す断面模式図である。
図11】本発明の芯付きロール体を巻き芯の中心軸が鉛直となるように静置したときの平面図である。
図12】芯付きロール体を、軸で吊り下げた状態の断面模式図である。
図13】巻き段痕の確認試験における施工後の試験材を示す図面代用写真である。
図14】巻き段痕の確認の追加試験における施工後の試験材を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一例について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記実施態様に限定されるものではない。また、寸法などは、常温常圧の環境下にて測定した値である。
【0012】
[シート材巻き取り方法]
本発明のシート材巻き取り方法は、円筒状の巻き芯に内装用のシート材を巻き取る方法であって、前記巻き芯は、断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、この巻き芯に外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる第1工程、前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る第2工程、および、前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する第3工程、を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明のシート材巻き取り方法は、円筒状の巻き芯に、内装用のシート材を巻き取る方法である。
【0014】
(内装用のシート材)
前記内装用のシート材としては、床シート、床下地用シート、壁装材等が挙げられる。前記シート材は、単層シート、複層シートのいずれでもよく、また、発泡層を有していてもよい。内装用のシート材の中でも、床シートおよび床下地用シートは、壁装材よりも厚み寸法が大きく巻き段痕が強くなり易いため、本発明のシート材巻き取り方法は、床シートの巻き取り方法、床下地用シートの巻き取り方法として好適である。
【0015】
例えば、床シートとしては、JIS A 5705(2016)に記載されるビニル系床材の床シートが挙げられ、より詳細には、単層ビニル床シート、複層ビニル床シート、発泡複層ビニル床シート、クッションフロア等が挙げられる。床下地用シートは、衝撃吸収性の向上や音の発生軽減などを目的として、床下地と床シートとの間に敷設して使用されるものである。壁装材としては、壁紙、腰壁等が挙げられ、壁装材の中でも腰壁は比較的厚み寸法が厚いため、本発明のシート材巻き取り方法は、腰壁の巻き取り方法としても好適である。
【0016】
本発明のシート材巻き取り方法が適用されるシート材の厚さは特に限定されないが、厚さが増すほど巻き段痕が強くなり易く、本発明の巻き段痕の抑制効果がより顕著となることから、シート材の厚さは1.0mm以上が好ましく、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上である。シート材の厚さの上限は特に限定されないが、10.0mm以下が好ましく、より好ましくは6.0mm以下である。
【0017】
(巻き芯)
図1~3を参照して、本発明に使用される巻き芯の例を説明する。図1は、本発明のシート材巻き取り方法に使用される巻き芯の一例を示す斜視図である。図2は、図1の巻き芯の側面図である。図3は、巻き芯の他の例を示す斜視図である。
【0018】
内装用のシート材の巻き取りに使用される円筒状の巻き芯10は、軸方向に直交する断面の断面形状の仮想外周Rを増大可能とするためのスリット11が設けられており、シート材巻き取り時に、巻き芯10を弾性変形させることで断面形状の仮想外周Rを増大できるように構成されている。なお、断面形状の仮想外周Rとは、巻き芯の軸方向に直交する断面の断面形状において、スリット部分にも巻き芯が連続していると仮定した場合の外周である。図2では断面形状の仮想外周Rを、二点鎖線で示している。
【0019】
前記巻き芯10の形状は、円筒状であり、軸方向に直交する断面の断面形状は略円形状または円形状である。前記巻き芯10の断面形状の外径φは特に限定されないが、下限値は40mm以上が好ましく、より好ましくは60mm以上であり、上限値は300mm以下が好ましく、より好ましくは250mm以下である。外径が下限値以上であれば、断面形状の仮想外周を増大させた場合に生じる塑性変形を抑制できる。外径が上限値以下であれば、ロール体および巻き芯を小さくすることができ、保管および搬送が容易になる。なお、前記巻き芯10は、軸方向全長にわたって断面形状の外径が実質的に一定であることが好ましい。また、断面形状において、外径が均一でない巻き芯であっても、シート材を巻ければよく、例えば、最も長い外径(長径)と最も短い外径(短径)との比(長径/短径)は、1.10以下が好ましく、より好ましくは1.05以下であればよい。
【0020】
前記巻き芯10の軸方向の長さは特に限定されず、巻き取るシート材の幅に応じて適宜調節すればよい。前記巻き芯10の軸方向の長さとしては、例えば、700mm以上、3000mm以下である。
【0021】
前記巻き芯10の肉厚の下限値は、1mm以上が好ましく、より好ましくは1.5mm以上であり、上限値は10mm以下が好ましく、より好ましくは6mm以下である。巻き芯10の肉厚が下限値以上であれば巻き取り作業時に巻き芯が軸方向に撓むことが抑制され、巻き取りの作業性が向上し、上限値以下であれば巻き芯の仮想外層を増大させやすくなる。
【0022】
前記巻き芯10は、軸方向の全長にわたってスリット11が設けられている。前記巻き芯10は、スリット11が形成されていることで、断面形状の外径が増大するように変形させる、つまり、断面形状の仮想外周が増大するように変形させることができる。
【0023】
前記スリット11は、巻き芯の断面形状において、円筒の一部に、円筒の外表面から内表面に貫通するように形成されている。前記スリット11は、巻き芯の断面形状において、半径方向に直線状に形成されていることが好ましい。つまり、巻き芯の断面形状において、スリット形成部分の端縁(切断面)が半径方向に直線状に形成されていることが好ましい。このように構成することで、保管時に、巻き芯の周方向の端縁が他の巻き芯のスリットに入り込みにくくなって、隣接する巻き芯どうしが絡まることを防止でき、また、巻き取り作業時にスリットにシート材先端が入り込みにくくなる。
【0024】
前記スリット11の軸方向の形状は特に限定されず、軸方向の全長にわたって連続的に設けられていればよい。図1では、巻き芯の軸方向に平行となるように直線状にスリット11が設けられているが、この態様に限定されない。例えば、スリット11の形状としては、巻き芯の軸方向に対して斜め方向に直線状に設ける態様(図3(a))、湾曲させた態様(図3(b))、直線が左右交互に繰り返し折れ曲がった態様(図3(c))、蛇行させた態様(図3(d))等が挙げられる。これらの中でも巻き芯にスリットを形成するときの製造効率の観点では、スリットの軸方向の形状は、図1及び図3(a)に示す直線状が好ましく、図1に示す軸方向に平行な直線状がより好ましい。また、図3(a)、図3(b)、図3(c)、図3(d)に示す巻き芯は、複数の巻き芯を寝かした状態、すなわち巻き芯の中心軸が水平な状態で保管する際、隣接する巻き芯のスリットどうしが絡まることを防止することができ、また、巻き芯にシート材を巻く際、シート材の始端がスリットへ入り込むことを抑制できる。
【0025】
前記スリット11の幅dは、巻き芯の断面形状の外径や肉厚に応じて適宜調節すればよく特に限定されない。例えば、スリット11の幅dの下限値は、0mm超であればよく、0.5mm以上がより好ましい。スリット11の幅dの上限値は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましい。また、前記巻き芯の断面形状の外径φとスリットの幅dとの比(d/φ)は、0超であり、0.5以下が好ましく、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。前記スリット11の幅dは、軸方向に直交する断面において巻き芯の表面にて直線距離で測定する。
【0026】
前記スリット11の幅dは、巻き芯の軸方向全長にわたって均一であることが好ましい。具体的には、巻き芯の軸方向の一方端におけるスリット幅(mm)をd0、中央部におけるスリット幅(mm)をd50、他方端におけるスリット幅(mm)をd100としたとき、d0とd50との差の絶対値(│d50-d0│)が10mm以下、好ましくは5mm以下であり、かつ、d100とd50との差の絶対値(│d100-d50│)が10mm以下、好ましくは5mm以下であることが好ましい。巻き芯の軸方向全長にわたってスリット幅を均一とすることで、シート材を巻き取る際に、シート材にシワが発生することを防止できる。
また、d0とd100との差の絶対値(│d100-d0│)は、10mm以下、好ましくは5mm以下であり、シート材の始端がスリットに入り込むことを防止できる。
【0027】
前記巻き芯10は、弾性変形することができる材料で形成されている。前記材料としては、樹脂、エラストマー、ゴム、紙、金属等が挙げられる。なお、前記巻き芯の材料としては、紙が好ましい。紙製の巻き芯は、比較的軽量であり、強度およびコストに優れ、スリットを形成する作業性にも優れ、また、リサイクルや廃棄が容易となる。
【0028】
前記巻き芯10は、弾性変形が可能な材料から形成され、かつ、スリット11を有しているため、巻き芯の内表面から半径方向外方へと外力を付与することで、断面形状の仮想外周を拡張することができ、かつ、外力を解除すると元の形状に復元するように変形し、仮想外周が収縮する。なお、外力解除時の変形は、元の形状に完全に復元しなくてもよく、外力付与時の状態から少しでも仮想外周が収縮すればよい。前記巻き芯は、外力を付与して仮想外周を6%増大させ後、外力を解除したときの復元率が、14%以上が好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上である。また、変形率は、95%以上が好ましく、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上である。
なお、前記復元率は、下記の式で求める。
復元率={(L2-L3)/(L2-L1)}×100
変形率=(L1/L3)×100
L1:外力付与前の自然状態における仮想外周(mm)。
L2:外力を付与している状態における仮想外周(mm)。
L3:外力を解除した後の自然状態における仮想外周(mm)。
【0029】
(第1工程)
第1工程では、巻き芯10に外力を加え弾性変形させて、巻き芯10の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる。
【0030】
前記巻き芯に外力を加える方法は特に限定されないが、巻き芯の内部に半径方向内方から外方への外力を付与するための外力付与部材を挿入し、この外力付与部材によって巻き芯の内表面に外力を付与することが好ましい。外力付与部材の挿入位置や部材の個数は特に限定されず、巻き芯の軸方向の長さや弾性に応じて適宜調節すればよい。
【0031】
前記外力付与部材としては、断面形状が略円形状であって、半径方向へ伸縮自在な係止部を備えたチャック部材、膨張可能なバルーン部材等が挙げられる。なお、後述する巻き取り工程が容易となることから、前記外力付与部材は巻き芯を回転可能に軸支するための支持手段を兼ねていることが好ましい。
【0032】
前記巻き芯の仮想外周を増大させる際の増大比は、1.01以上が好ましく、より好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.08以上であり、1.30以下が好ましく、より好ましくは1.20以下、さらに好ましくは1.15以下である。前記増大比が1.01以上であれば、巻き段の発生をより抑制でき、1.30以下であれば巻き芯が塑性変形してしまうことを抑制できる。前記増大率は、外力付与前の自然状態の仮想外周R1と外力を付与した状態の仮想外周R2との比(R2/R1)である。なお、自然状態とは、外力を付与していない状態である。
【0033】
前記巻き芯の仮想外周を増大させる際は、巻き芯の軸方向全長にわたって、仮想外周Rを均一とすることが好ましい。具体的には、巻き芯の軸方向の一方端における仮想外周をR0、中央部における仮想外周をR50、他方端における仮想外周をR100としたとき、R0とR50との差の絶対値(│R50-R0│)が10mm以下、好ましくは5mm以下であり、かつ、R100とR50との差の絶対値(│R100-R50│)が10mm以下、好ましくは5mm以下である。巻き芯の軸方向全長にわたって仮想外周を均一とすることで、シート材を巻き取る際に、シート材にシワが発生することを防止できる。また、d0とd100との差の絶対値(│d100-d0│)は、10mm以下、好ましくは5mm以下であり、シート材を巻き取る際、巻いていくに従ってシート材が巻き芯の軸方向にずれていくことを防止できる。
【0034】
前記巻き芯の仮想外周を増大させる際は、外力付与前の自然状態のスリットの幅d1と外力を付与した状態のスリットの幅d2との差(d2-d1)は0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上であり、10mm以下が好ましく、より好ましくは7mm以下である。
【0035】
図4~7を参照し、巻き芯の仮想外周を増大させる方法の一例を説明する。図4は、外力付与部材の一例を示す斜視図である。図5は、図4の外力付与部材を巻き芯に挿入した状態を示す断面模式図である。図6は、図4の外力付与部材により巻き芯を支持した状態の一例を示す斜視図である。図7は、図4の外力付与部材により巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態を示す断面模式図である。
【0036】
図4に示した外力付与部材40は、中心軸41と、この中心軸41に対して半径方向へ伸縮自在に取り付けられた係止部42を備えている。前記外力付与部材40は、中心軸41の断面形状が円形状であり、この中心軸41の周囲に円弧状の係止部42を備えている。また、図5に示すように、係止部42が半径方向の最も内方に位置している状態では、外力付与部材40の外径が巻き芯10の内径よりも小さくなっており、外力付与部材40を巻き芯10の内部に挿入することができる。なお、図4~7では、外力付与部材40が4個の係止部42を備えているが、係止部42の個数、形状、位置はこの構成に限定されず、巻き芯10の仮想外周を増加できればよい。
【0037】
図6に示すように、1対の外力付与部材40を巻き芯10の両端から挿入した後、係止部42を半径方向外方に移動させることで、巻き芯10に対して外力を付与することができる。そして、図7に示すように、係止部42によって巻き芯10に外力を付与することで、巻き芯10が半径方向外方へ押し広げられ、スリット11が幅d1から幅d2へと拡張され、巻き芯10の仮想外周R2が増大する。
【0038】
前記外力付与部材40は、係止部42によって巻き芯10に外力を付与することで、係止部42と巻き芯10との間の摩擦により、巻き芯10を固定することができる。前記外力付与部材40は、それぞれ巻き取り装置のアーム部50に接続されており、これらの1対の外力付与部材40およびアーム部50によって、巻き芯10を周方向に回転可能に軸支できるように構成されている。なお、図4に示した外力付与部材40は、従来、巻き芯を軸支するためのチャックとして使用されている。そのため、このような既存のチャックを利用することで、新たな装置を必要とすることなく、本発明のシート材巻き取り方法を実施することができる。
【0039】
(第2工程)
前記第2工程では、前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る。図8、9を参照し、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る方法の一例を説明する。図8は、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る方法の一例を説明する断面模式図である。図9は、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る方法の一例を説明する断面模式図である。
【0040】
図8、9に示したシート材1を巻き取る方法では、外力付与部材40に軸支された巻き芯10の周囲に、第1ローラ51および第2ローラ52が配置されている。これらの第1ローラ51および第2ローラ52は、それぞれ回転可能に軸支されており、軸方向が巻き芯10の軸方向と並行となるように調整されている。また、第1ローラ51および第2ローラ52は、それぞれ巻き芯10に当接するように付勢されており、巻き芯10の回転に追随して回転するように構成されている。なお、第1ローラ51および第2ローラ52の回転軸は移動可能に構成されており、巻き芯10の周囲に巻き取られたシート材1の厚さに応じて、第1ローラ51と巻き芯10との間隔、第2ローラ52と巻き芯10との間隔が拡大できるように構成されている。なお、図8、9には図示していないが、巻き芯10の周囲には、巻き芯10によるシート材1の巻き取りをサポートするためのガイドが配置されている。
【0041】
シート材1を巻き取る際は、図8中の矢印Bの方向にシート材1の先端1aが搬送され、巻き芯10が矢印A方向に回転することで、シート材1が巻き芯10と第1ローラ51との間に挟まれて、巻き芯10の回転に従い、巻き芯10に巻き取られる。巻き芯10がさらに回転すると、シート材1の先端1aが進み、巻き芯10と第2ローラ52との間に挟まれて、さらに巻き芯10に巻き取られる。そして、巻き取られたシート材1の先端1aが第1ローラ51の位置まで進むと、先端1の上から2周目のシート材1が重ねられ、さらにシート材1が巻き取られる。この際、シート材1の先端1aが2周目のシート材と巻き芯10によって挟圧され、1周目のシート材と2周目のシート材1との間に巻き段が生じる。
【0042】
なお、シート材1の先端1aは、粘着剤、接着剤、粘着テープ等の固定手段により、巻き芯10の表面に固定しなくてもよい。固定手段が不要であれば、シート材1の巻き取り作業が簡易になり、また、施工時にシート材1を巻き芯10から取り外す作業も簡易になるので作業性に優れる。
【0043】
また、シート材1の先端1aは、巻き芯10のスリット11に入り込まないようにすることが好ましい。シート材1の先端1aがスリット11に入り込んでいると、巻き芯10に付与している外力を解除した際に、シート材1が先端付近で折れ曲がってしまい、シート材を施工する際に膨れや浮きの原因となる。また、スリット11の幅がシート材1の厚さよりも小さい場合、巻き芯10のスリット11に挟まれた部分に痕がついてしまい、この部分を破棄することが必要となる。
【0044】
なお、シート材1の先端1aが、2周目のシート材1と巻き芯10とで挟圧される位置については特に限定されず、巻き芯10の表面であればよく、スリット11の近傍であってもよい。
また、外力付与部材40を巻き芯10の内部に挿入して巻き芯の仮想外周を増大させる場合、この外力付与部材40によってシート材1の先端1aがスリット11に入り込むことを防止できる。例えば、図8に示すように、外力付与手段40の係止部42によって、巻き芯10のスリット11を塞ぐことで、シート材1の先端1aがスリット11に入り込むことを抑制できる。また、外力付与手段40の軸方向に直交する断面において、複数の係止部42の円周方向の間隔をスリットの幅d2よりも小さくすることによっても、シート材1の先端1aがスリット11に入り込むことを抑制できる。
【0045】
巻き取る際の巻き芯の回転速度は、巻き芯の仮想外周、シート材の厚さ等に応じて適宜調整すればよい。また、巻き取る際は、シート材1に張力をかけて、巻き取られるシート材1にシワが生じないようにする。シート材1にかける張力は適宜調整すればよいが、シート材1の先端1aが固定される程度に張力をかける必要がある。巻き取る際の巻き芯の周囲に巻回するシート材の巻回数は、巻き芯の仮想外周、シート材の厚さ等に応じて適宜調整すればよい。
【0046】
巻き芯10に巻き取られたシート材1は、図9に示すように、シート材1の先端1aに起因する巻き段1bが生じている。なお、図9は断面模式図であるため、巻き取られたシート材1に生じた巻き段を一定の大きさで図示しているが、現実の巻き取られたシート材1では、内側から外側にいくに従って、巻き段が小さくなっていく傾向がある。一般的な内装用のシート材では、巻き取られたシート材1において、内側から外側にいくに従って、巻き段1bが小さくなっていくことが多く、内側から4周目以降ではあまり目立たなくなってくる。
【0047】
(第3工程)
前記第3工程では、前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する。図10を参照し、巻き芯に付与していた前記外力を解除する方法の一例を説明する。図10は、シート材を巻き取り後、巻き芯に付与されていた外力を解除した状態を示す断面模式図である。
【0048】
シート材1の巻き取りが完了した後、外力付与部材40の係止部42を半径方向の内方に移動させ、巻き芯10に付与していた外力を解除する。外力を解除することにより、巻き芯10は自らの弾性によって、外力を付与する前の状態に戻るように変形する。これにより、図10に示すように、巻き芯の断面形状の仮想外周Rが、巻き取り作業時よりも巻き取り作業後の方が小さくなり、1周目のシート材1が半径方向の内方へ移動できるため、2周目以降のシート材1による圧力が解放される。よって、シート材を保管、運搬した場合でもシート材1の巻き段の発生が抑制され、強い巻き段痕の発生が抑制される。
【0049】
なお、内装用のシート材はある程度の厚み、剛性度を有しているため、シート材1の先端1aが固定されなくなった場合でも、シート材1の先端部分が折れ曲がって、先端1aがスリット11に入り込んでしまうことはない。
【0050】
外力を解除した際に巻き芯10は元の形状に回復するが、この際の回復率は100%でなくてもよく、巻き段1bが弱まる程度に仮想外周Rが小さくなればよい。すなわち、外力付与前の自然状態のスリットの幅d1と外力付与後の自然状態のスリットの幅d3が一致していなくてもよい。なお、幅d3が幅d1よりも小さくなっていてもよい。また、外力を付与した状態のスリットの幅d2と外力解除後の自然状態のスリットの幅d3との差(d2-d3)は1mm以上が好ましく、より好ましくは2mm以上である。
【0051】
前記回復率は、14%以上が好ましく、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上、最も好ましくは50%である。また、変形比率は、80%以上が好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
なお、前記回復率、変形比率は、下記の式で求める。
回復率={(R2-R3)/(R2-R1)}×100
変形比率=(R1/R3)×100
R1:外力付与前の自然状態における仮想外周(mm)。
R2:外力を付与している状態における仮想外周(mm)。
R3:外力を解除した後の自然状態における仮想外周(mm)。
【0052】
なお、第3工程において、前記巻き芯に付与していた外力を解除した後、前記巻き芯の回復を促す方向に別の外力を付与してもよい。また、巻き取られたシート材が巻き戻ることを防止するために、シート材の最外端部を粘着テープ等で固定してもよいし、シート材を紐や包装紙等で固定してもよい。
【0053】
本発明のシート材の巻き取り方法は、円筒状の巻き芯と、前記巻き芯の周囲に巻回された内装材用のシート材とからなる芯付きロール体を製造する方法;内装用のシート材をロール状に巻いたロール体を製造する方法に使用できる。
【0054】
[芯付きロール体の製造方法]
本発明の芯付きロール体の製造方法は、円筒状の巻き芯と、前記巻き芯の周囲に巻回された内装用のシート材とからなる芯付きロール体を製造する方法であって、前記巻き芯は、断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、この巻き芯に外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる第1工程、前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る第2工程、および、前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する第3工程、を含むことを特徴とする。
【0055】
本発明の芯付きロール体の製造方法は、円筒状の巻き芯を用いるため、シート材の巻き取り作業を簡便に行うことができる。また、従来の方法では、巻き芯を用いてシート材を巻き取った場合、2周目以降のシート材は先に巻き取られているシート材に圧接されるため、この圧力によってシート材に巻き段痕が発生する。しかし、本発明の芯付きロール体の製造方法では、巻き芯の断面形状の仮想外周が、巻き取り作業時よりも巻き取り作業後の方が小さくなり、1周目のシート材が半径方向の内方へ移動できるため、2周目以降のシート材の圧力が解放される。これにより、シート材への強い巻き段痕の発生が抑制できる。
【0056】
(第1~第3工程)
前記芯付きロール体の製造方法において、第1工程、第2工程および第3工程は、上述したシート材巻き取り方法の第1工程、第2工程および第3工程と同様に行えばよい。
【0057】
前記第1工程、第2工程および第3工程を経て、円筒状の巻き芯と、前記巻き芯の周囲に巻回された内装用のシート材とからなる芯付きロール体が得られる。
【0058】
得られた芯付きロール体は、シート材を保護するため包装することが好ましい。また、包装する場合、芯付きロール体の周方向全体を保護することが好ましく、さらに芯付きロール体の軸方向の両端面も包装材で被覆することが好ましい。前記包装材は特に限定されず、従来、使用されているものが使用できる。前記包装材の材質としては、例えば、紙、樹脂、紙と樹脂の複合物などが挙げられる。前記製造方法で得られた芯付きロール体は、巻き芯の仮想外周が巻き取り時よりも小さくなっており、ロール体から抜け出しやすくなっている。そのため、芯付きロール体の軸方向の両端面を包装材で被覆することで巻き芯が抜け出すことを防止できる。
【0059】
(芯付きロール体)
本発明の芯付きロール体は、円筒状の巻き芯と、前記巻き芯の周囲に巻回された内装用のシート材とからなる芯付きロール体であって、前記巻き芯は、仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられており、前記芯付きロール体の巻き芯の中心軸が鉛直となるように静置したとき、前記シート材の最内層の端縁が、巻き芯のスリットに入り込んでおらず、また、前記巻き芯と内側から2周目のシート材との間で挟圧されていないことを特徴とする。前記芯付きロール体は、本発明の芯付きロール体の製造方法によって製造することができる。
【0060】
図11を参照して、本発明の芯付きロール体を説明する。図11は、本発明の芯付きロール体を巻き芯の中心軸が鉛直となるように静置したときの平面図である。前記芯付きロール体60の巻き芯10の中心軸が鉛直となるように静置したとき、前記シート材1の最内層の端縁1aが、前記巻き芯と内側から2周目のシート材1との間で挟圧されていないため、シート材1の2周目以降に巻き段が生じていないか、あるいは、巻き段が生じていても弱められている。よって、この芯付きロール体は長時間保管しても、強い巻き段痕が発生することがない。なお、芯付きロール体を巻き芯の中心軸が鉛直となるように静置する際は、巻き芯の軸方向に直交する断面の中心と、ロール体の軸方向に直交する断面の中心とが一致するように巻き芯の位置を調整する。
【0061】
また、芯付きロール体60は、スリングベルト70(ポリエステル製、断面形状:幅 25mm、厚さ 8mm)を用いて、巻き芯10の軸方向が水平方向となるように、かつ、スリット11が最下部となるように吊り下げ、シート材1の内側の先端1aを巻き芯10の高さ方向の中心付近に位置するように芯付きロール体を配置した時、巻き芯10の最下点と1周目のシート材10との最短距離gが、3mm以上であることが好ましく、より好ましくは5mm以上であり、100mm以下が好ましい。前記最短距離gが1mm以上であればシート材と巻き芯に隙間が生まれ、強い巻き段痕の発生がより抑制できる。また、100mm以下であれば巻き芯によりシート材10が軸方向に曲がってしまうことを抑制できる。なお、芯付きロール体60を吊り下げる際は、シート材1の先端1aを、巻き芯10にシート材10が巻回されている方向(図12では右回り)に移動させて、1周目から最外周目のシート材10を隙間なく密接させる。図12は、芯付きロール体を、軸で吊り下げた状態の断面模式図である。
【0062】
前記最短距離g(mm)とシート材の厚さt(mm)との比(g/t)は、1.0以上が好ましく、より好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.5以上である。前記比(g/t)が1.0以上であればシート材と巻き芯との隙間がシート材の厚さ以上となり、強い巻き段痕の発生が一層抑制できる。前記比(g/t)の上限は特に限定されないが、10以下が好ましく、より好ましくは7.0以下、さらに好ましくは5.0以下である。
【0063】
前記シート材1の内側の先端1aは、巻き芯10のスリット11に差し込まれていないことが好ましい。シート材1の先端1aがスリット11に入り込んでいると、巻き芯10に付与している外力を解除した際に、シート材1が先端付近で折れ曲がってしまい、シート材を施工する際に膨れや浮きの原因となる。また、スリット11の幅がシート材1の厚さよりも小さい場合、巻き芯10のスリット11に挟まれた部分に痕がついてしまい、この部分を破棄することが必要となる。
【0064】
また、シート材1の内側の先端1aは、巻き芯10の表面に固定されていないことが好ましい。つまり、シート材1の内側の先端1aが、巻き芯10の円周方向に移動可能となっていることが好ましい。シート材1の先端1aが固定されていなければ、先端1aが巻き芯10の周方向に自由に移動できるため、シート材1が巻き戻りした際にシート材1が先端付近で折れ曲がってしまうことが抑制される。
【0065】
なお、内装用のシート材はある程度の厚み、剛性度を有しているため、シート材1の先端1aが固定されていない場合でも、シート材1の先端部分が折れ曲がって、先端1aがスリット11に入り込んでしまうことはない。
【0066】
前記芯付きロール体60の巻き芯10としては、上述したシート材巻き取り方法に使用される巻き芯10が挙げられる。
前記内装用のシート材1としては壁装材、床シート、床下地用シート等が挙げられる。前記シート材は、単層シート、複層シートのいずれでもよく、また、発泡層を有していてもよい。内装用のシート材の中でも、床シートおよび床下地用シートは、壁装材よりも厚み寸法が大きく巻き段痕が強くなり易いため、本発明の芯付きロール体に好適に用いることができる。
【0067】
例えば、床シートとしては、JIS A 5705(2016)に記載されるビニル系床材の床シートが挙げられ、より詳細には、単層ビニル床シート、複層ビニル床シート、発泡複層ビニル床シート、クッションフロア等が挙げられる。床下地用シートは、アンダーレイシートとも呼ばれ、衝撃吸収性の向上や音の発生軽減などを目的として、床下地と床シートとの間に敷設して使用されるものである。壁装材としては、壁紙、腰壁等が挙げられ、壁装材の中でも腰壁は比較的厚み寸法が厚いため、本発明の芯付きロール体に好適に用いることができる。
【0068】
前記シート材1は特に限定されないが、強い巻き段痕の発生を抑制する効果がより顕著となることから、シート材の厚さは1.0mm以上が好ましく、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは2.0mm以上である。シート材の厚さの上限は特に限定されないが、10mm以下が好ましく、より好ましくは5.0mm以下である。
【0069】
前記シート材1の巻き芯10に対する巻回数は、10以上が好ましく、より好ましくは20以上である。巻回数の上限は特に限定されないが70である。巻き取られるシート材の全長は特に限定されないが、10m~40mである。
前記芯付きロール体60の軸方向の長さは特に限定されないが、700mm~3000mmである。
【0070】
[ロール体の製造方法]
本発明のロール体の製造方法は、内装用のシート材をロール状に巻いたロール体を製造する方法であって、断面形状の仮想外周を増大可能とするためのスリットが設けられた円筒状の巻き芯に、外力を加え弾性変形させて、巻き芯の断面形状の仮想外周を自然状態よりも増大させる第1工程、前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取る第2工程、前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた前記外力を解除する第3工程、および、巻き取られたシート材から前記巻き芯を抜き出す第4工程、を含むことを特徴とする。
【0071】
本発明のロール体の製造方法は、円筒状の巻き芯を用いるため、シート材の巻き取り作業を簡便に行うことができる。また、従来の方法では、巻き芯にシート材を圧接するように巻き取るため、巻き取り作業完了後に巻き芯を抜き取ることが困難であった。しかし、本発明のロール体の製造方法では、巻き芯の断面形状の仮想外周が、巻き取り作業時よりも巻き取り作業後の方が小さくなるため、巻き取られたシート材から巻き芯を容易に抜き取ることができる。よって、芯無しロール体や、巻き取りに使用した巻き芯に変えて他の軸体を挿入したロール体を容易に製造できる。
【0072】
(第1~第3工程)
前記ロール体の製造方法において、第1工程、第2工程および第3工程は、上述したシート材巻き取り方法の第1工程、第2工程および第3工程と同様に行えばよい。
【0073】
(第4工程)
前記第4工程では、巻き取られたシート材から前記巻き芯を抜き出す。巻き芯を抜き出す方法は特に限定されず、巻き芯を軸方向にスライドさせて抜き取ればよい。巻き芯を抜き取ることで、内装用のシート材をロール状に巻いたロール体が得られる。
【0074】
前記ロール体は、巻き芯を抜いた芯無しロール体としてもよいし、巻き芯に変えて他の軸芯を挿入してもよい。なお、他の軸芯を挿入する場合、他の軸芯の形状は特に限定されず、スリットを有さない円筒形状であってもよい。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
[芯付きロール体の製造方法]
製造例No.1
紙製の円筒(外形121mm、厚み3mm、軸方向長さ1845mm)にスリットを形成し、巻き芯を作製した。スリットの軸方向の形状は、巻き芯の軸方向に平行な直線状とした。スリットの幅は3mmとし、軸方向全量にわたって一定とした。この巻き芯の復元率は95%以上である。また、巻き取る内装用のシート材として、アンダーレイシート(厚さ4.5mm)を用いた。
【0077】
(第1工程)
上記で得た巻き芯に、外力を付与して、仮想外周を増大させた。外力は、中心軸と、この中心軸に対して半径方向へ伸縮自在に取り付けられた係止部とを備えた外力付与部材を使用した。1対の外力付与部材を巻き芯の両端から挿入した後、係止部を半径方向外方に移動させることで、巻き芯に対して外力を付与した。仮想外周の増大比(外力を付与した状態の仮想外周/外力を付与する前の仮想外周)は1.06とし、増大比は軸方向全量にわたって一定とした。なお、外力付与部材は、巻き取り装置に接続されており、巻き芯を周方向に回転可能に軸支できるように構成されている。
【0078】
(第2工程)
前記巻き芯の断面形状の仮想外周を増大させた状態で、巻き芯の周囲にシート材を巻き取った。まずシート材の先端を、2周目のシート材と巻き芯とで挟圧して固定した。この際、シート材の先端が、巻き芯のスリットに入り込まないようにした。シート材の先端を固定した後、巻き芯を周方向に回転させることで、シート材を巻き取った。巻き芯の周囲に巻き取るシート材の巻回数は25とした。
【0079】
(第3工程)
前記シート材の巻き取りが完了した後、前記巻き芯に付与していた外力を解除した。この際、巻き芯の回復率は95%以上であった。その後、巻き芯から外力付与部材を取り外し、芯付きロール体No.1を得た。
【0080】
製造例No.2~7
巻き芯に形成するスリットの幅を、表1に示す値に変更したこと以外は、製造例No.1と同様にして、芯付きロール体No.2~7を製造した。
【0081】
製造例No.8
紙製の円筒(外形121mm、厚み3mm、軸方向長さ1845mm)にスリットを形成せず、そのまま巻き芯として使用し、巻き芯の周囲にシート材(アンダーレイシート(厚さ4.5mm))を巻き取り、芯付きロール体No.8を得た。
【0082】
[評価]
(保管時の巻き段)
芯付きロール体を巻き芯の中心軸が鉛直となるように静置し、シート材の最内層の端縁が、巻き芯と内側から2周目のシート材との間で挟圧されているか目視で確認し、挟圧されていないものを「〇」、挟圧されているものを「×」と評価した。
【0083】
(巻き芯とシート材との隙間)
芯付きロール体を、スリングベルト(厚み8mm、幅27mm)を用いて、巻き芯の軸方向が水平方向となるように吊り下げ、シート材の内側の先端を巻き芯の高さ方向の中心付近に位置するように芯付きロール体を配置し、巻き芯の最下点と1周目のシート材との最短距離gを測定した。なお、芯付きロール体を吊り下げる際は、シート材の先端を、巻き芯にシート材が巻回されている方向に移動させて、1周目から最外周目のシート材を隙間なく密接させた。そして、下記の基準で評価した。
〇:最短距離gが5mm以上、100mm以下。
△:最短距離gが1mm以上、5mm未満。
×:最短距離gが1mm未満。
【0084】
(巻き段痕の確認)
製作後の芯付きロール体No.1~8を、5℃の環境試験室(湿度未設定で50~80%雰囲気下)で7日間養生した。養生後にそれぞれの芯付きロール体について、シート材を全て巻き戻して、巻き芯への巻き取り先端側から2~3mを採取し、これを試験材とした。
前記試験材を、繊維強化セメント板に対して、ウレタン系接着剤を用いて施工した。施工は、接着剤を塗布後にこの接着剤で指定された時間の経過後、いわゆるオープンタイム経過後、接着剤が塗布された繊維強化セメント板の上に試験材を敷設し、試験材の表面側からハンドローラーで押圧して試験材と繊維強化セメント板を圧着させた。施工完了から1日経過後に、施工された試験材に遮光を当て、目視で巻き段痕の残存の有無を確認し、巻き段痕が残存していないものを「〇」、巻き段痕が残存しているものを「×」と評価した。
なお、巻き段痕の確認は、巻き段痕が弱くなりにくい環境下で実施した。具体的には、養生後の芯付きロール体からシート材を巻き戻す作業、施工作業、および、巻き段痕の目視確認までの一連の作業は5℃環境下で行った。
【0085】
巻き芯の外径、肉厚およびスリット、ならびに、芯付きロール体の評価を表1に示した。また、図13に、芯付きロール体No.1、2、8、3について、施工後のシート材を撮影した写真を示した。
さらに、芯付きロール体No.3および8については、再現性を確認するため、再度、芯付きロール体を作製し、巻き段痕の確認を行った。図14に、芯付きロール体No.8、3についての再試験における、施工後のシート材を撮影した写真を示した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示したように、本発明の芯付きロール体の製造方法で製造された芯付きロール体No.1~7は、保管時に巻き段が生じておらず、施工後に巻き段痕は確認されなかった。図13において、図の上下方向がシート材の長さ方向(ロール体での周方向)である。図13に示すように、芯付きロール体No.1、2および3から巻き戻されたシート材では、巻き段痕が目視で確認できない程度にまで弱められている。これに対して、芯付きロール体No.8から巻き戻されたシート材では、巻き段痕が目視で確認できる程度に残存している。
図14において、図の左右方向がシート材の長さ方向(ロール体での周方向)である。図14に示すように、芯付きロール体No.3から巻き戻されたシート材では、再試験においても巻き段痕が目視で確認できない程度にまで弱められている。これに対して、芯付きロール体No.8から巻き戻されたシート材では、再試験においても巻き段痕が目視で確認できる程度に残存している。
【符号の説明】
【0088】
1:シート材、10:巻き芯、11:スリット、40:外力付与部材、41:中心軸、42:係止部、50:アーム部、60:芯付きロール体、70:軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14