(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098901
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】車両の制御方法及び車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
H02P 21/22 20160101AFI20240717BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240717BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20240717BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240717BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20240717BHJP
【FI】
H02P21/22
B60K6/46 ZHV
B60W20/50
H02J7/00 P
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002704
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 厚
【テーマコード(参考)】
3D202
5G503
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
3D202AA07
3D202BB00
3D202BB16
3D202CC55
3D202DD27
3D202DD29
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA11
5G503CB13
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD06
5H505EE08
5H505EE30
5H505EE41
5H505EE50
5H505GG04
5H505HA09
5H505HB01
5H505LL22
5H505LL24
5H505LL44
5H505MM06
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA10
5H770DA41
5H770HA02Y
5H770HA07Z
(57)【要約】
【課題】ドライバに不安を与えることなく、部品の保護を実現する車両の制御方法及び車両の制御システムを提供する。
【解決手段】エンジンにより駆動される発電機と、発電機の発電電力を変換してバッテリに供給してバッテリを充電する発電機インバータと、駆動輪を駆動させるモータと、バッテリからの電力を変換してモータに供給する駆動インバータと、を備える車両の制御方法が提供される。この車両の制御方法は、駆動インバータを構成する半導体の温度または駆動インバータに流れる電流に応じて、発電機インバータによりバッテリから発電機にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機の発電電力を変換してバッテリに供給して前記バッテリを充電する発電機インバータと、駆動輪を駆動させるモータと、前記バッテリからの電力を変換して前記モータに供給する駆動インバータと、を備える車両の制御方法であって、
前記駆動インバータを構成する半導体の温度または前記駆動インバータに流れる電流に応じて、前記発電機インバータにより前記バッテリから前記発電機にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う、
車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記駆動インバータを構成する半導体の温度が所定の値を超えた場合に前記d軸電流制御を行う、
車両の制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の車両の制御方法であって、
前記駆動インバータに流れる電流が所定の値を超えた場合に前記d軸電流制御を行う、
車両の制御方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の車両の制御方法であって、
前記バッテリの電圧が所定の値以上である場合に、前記駆動インバータを構成する半導体の温度または前記駆動インバータに流れる電流に応じて前記d軸電流制御を行う、
車両の制御方法。
【請求項5】
エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機の発電電力を変換してバッテリに供給して前記バッテリを充電する発電機インバータと、駆動輪を駆動させるモータと、前記バッテリからの電力を変換して前記モータに供給する駆動インバータと、前記発電機インバータの動作を制御するコントローラとを備える車両の制御システムであって、
前記コントローラは、前記駆動インバータを構成する半導体の温度または前記駆動インバータに流れる電流に応じて、前記発電機インバータにより前記バッテリから前記発電機にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う、
車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御方法及び車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駆動モータ等を制御するインバータのパワーモジュールは、スイッチング時の損失により発熱する。パワーモジュールが高温状態となった場合、通常、電流制限をかける等して、損失を抑制することで、パワーモジュールの発熱を抑制し、部品を保護する。
【0003】
特許文献1には、駆動モータを制御するインバータを構成するスイッチング素子(半導体)が制限温度を超えないように、モータの出力可能なトルクを調整する制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の制御装置では、スイッチング素子が制限温度に達した場合、トルクを調整(制限)することで部品を保護している。このため、トルクを調整した結果、例えば走行負荷が高い登坂路等でスムーズに走行できなくなる場合等があり、ドライバに不安を与える虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、ドライバに不安を与えることなく、部品の保護を実現する車両の制御方法及び車両の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、エンジンにより駆動される発電機と、発電機の発電電力を変換してバッテリに供給してバッテリを充電する発電機インバータと、駆動輪を駆動させるモータと、バッテリからの電力を変換してモータに供給する駆動インバータと、を備える車両の制御方法が提供される。この車両の制御方法は、駆動インバータを構成する半導体の温度または駆動インバータに流れる電流に応じて、発電機インバータによりバッテリから発電機にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、駆動インバータを構成する半導体の温度または駆動インバータに流れる電流に応じて、バッテリから発電機にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う。このように、発電機側でd軸電流制御を行うと、バッテリの電力が消費され、バッテリ電圧が下がるため、駆動インバータにおけるスイッチング損失が減少する。即ち、発電機側でd軸電流制御を行うため、モータのトルクを制限せずに、スイッチング損失を減少させて、半導体の発熱を抑制し、半導体の温度を低下させることができる。従って、ドライバに不安を与えることなく、半導体(部品)を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、各実施形態に共通する車両制御システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の車両制御システムにおける部品保護制御を説明するタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、d軸電流制御時におけるインバータのスイッチング損失を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の車両制御システムにおける部品保護制御を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態の車両制御システムにおける部品保護制御を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、第3実施形態の車両制御システムにおける部品保護制御を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、第4実施形態の車両制御システムにおける部品保護制御を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の各実施形態に共通する車両制御システム100の概略構成図である。車両制御システム100は、エンジンにより駆動される発電用のモータ(発電機)と、駆動用のモータとを備える、いわゆるシリーズハイブリッド車両に適用される。但し、本実施形態で説明する車両の制御方法は、シリーズハイブリッド車両だけでなく、バッテリ、発電機及び駆動用のモータを備える各種の車両等に適用することができる。
【0012】
図1に示すように、車両制御システム100は、エンジン1、発電機2、発電機インバータ3、バッテリ4、駆動インバータ5、駆動モータ(モータ)6、平滑コンデンサ7及びコントローラ8等から構成される。
【0013】
エンジン(内燃機関)1は、不図示のギヤを介して発電機2と機械的に接続されており、発電機2が発電するための動力を発電機2へ伝達する。エンジン1は、燃料を燃焼することで動力を発生する。本実施形態の車両制御システム100が適用される車両は、シリーズハイブリッド車両であるため、エンジン1は、主として発電機2を回転駆動させるための駆動源として用いられる。なお、エンジン1の動作は、後述のコントローラ8により制御される。
【0014】
発電機2は、例えば3相交流モータであり、エンジン1からの動力によって回転することにより発電するモータジェネレータである。即ち、エンジン1の駆動力は発電機2に伝達され、発電機2はエンジン1の駆動力によって発電する。発電機2は、発電機インバータ3を介してバッテリ4及び駆動インバータ5に接続されており、発電機2によって発電された電力は、駆動インバータ5を介して駆動モータ6に供給されるとともに、バッテリ4に充電される。なお、発電機2は、エンジン1の始動時には、発電機2の動力を用いてエンジン1をクランキングさせることや、エンジン1を発電機2の動力を用いて力行回転させることにより電力を消費するモータリングも行う。
【0015】
発電機インバータ3は、複数のIGBT等の半導体スイッチング素子(半導体)31からなるスイッチング回路として構成される。発電機インバータ3は、発電機2、バッテリ4、及び駆動インバータ5に接続されており、各半導体スイッチング素子31のオン、オフが制御されることで、発電機2が発電する交流の電力を直流の電力に変換して、駆動インバータ5及びバッテリ4に供給する。駆動インバータ5に供給された発電機2の電力は、駆動インバータ5から駆動モータ6に供給され、駆動モータ6を駆動させる。また、発電機2の電力は発電機インバータ3からバッテリ4にも供給され、これによりバッテリ4が充電される。但し、発電機2が発電する電力がすべて駆動モータ6の駆動力として消費される場合には、発電機インバータ3からバッテリ4に電力が供給されない。発電機インバータ3を構成する半導体スイッチング素子31の動作は、後述のコントローラ8により制御される。なお、バッテリ4から発電機2に電力が供給される場合には、発電機インバータ3は、バッテリ4からの出力電流を変換して発電機2に供給する。発電機インバータ3と発電機2とを接続するライン上には、発電機インバータ3の出力電流を検出する不図示の発電機電流センサが備えられており、発電機電流センサの検出値は、コントローラ8に送信される。
【0016】
バッテリ4は、発電機インバータ3を介して発電機2に接続され、駆動インバータ5を介して駆動モータ6に接続されている。本実施形態において、バッテリ4は、リチウムイオンバッテリによって構成されるがこれに限られない。バッテリ4は、発電機2が発電した電力及び駆動モータ6の回生電力を充電する一方で、駆動モータ6を駆動させるための駆動電力を放電する。具体的には、エンジン1が駆動している場合、発電機2が発電した電力のうち、駆動モータ6の駆動力に用いられる電力を差し引いた電力がバッテリ4に充電される。また、エンジン1が駆動している場合、発電機2が発電した電力では駆動モータ6を駆動するのに不足する場合、不足分の電力がバッテリ4から駆動インバータ5を介して駆動モータ6に供給される。一方、エンジン1が停止している場合、駆動モータ6を駆動させるための電力が、バッテリ4から駆動インバータ5を介して駆動モータ6に供給される。なお、バッテリ4は、後述のコントローラ8により制御される。また、発電機インバータ3及び駆動インバータ5とバッテリ4とを電気的に接続する配線上には、バッテリ4の出力電圧VBTを検出する不図示のバッテリ電圧センサ及びバッテリ4の出力電流IBTを検出する不図示のバッテリ電流センサが設けられており、検出されたバッテリ4の電圧値VBT及び電流値IBTは、コントローラ8に送信される。
【0017】
駆動インバータ5は、複数のIGBT等の半導体スイッチング素子(半導体)51からなるスイッチング回路として構成される。駆動インバータ5は、各半導体スイッチング素子51のオン、オフが制御されることで、発電機2から発電機インバータ3を介して供給される直流の電力及びバッテリ4から供給される直流の電力を交流の電力に変換して、駆動モータ6に供給し、駆動モータ6を駆動する。即ち、発電機2(発電機インバータ3)及びバッテリ4からの電力は、駆動インバータ5を介して駆動モータ6に供給される。また、駆動インバータ5は、各半導体スイッチング素子51のオン、オフが制御されることで、駆動モータ6で回生発電された交流の電力を直流の電力に変換して、バッテリ4に供給する。駆動インバータ5を構成する半導体スイッチング素子51の動作は、後述のコントローラ8により制御される。なお、駆動インバータ5と駆動モータ6とを接続するライン上には、駆動インバータ5の出力電流(即ち、駆動モータ6に供給される電流)IINVを検出する不図示のモータ電流センサが備えられており、モータ電流センサの検出値は、コントローラ8に送信される。また、駆動インバータ5は、駆動インバータ5を構成する半導体51の温度Tを検出する温度センサを備え、検出された半導体51の温度Tは、コントローラ8に送信される。
【0018】
駆動モータ(モータ)6は、例えば3相交流モータであり、発電機インバータ3及びバッテリ4から駆動インバータ5を介して供給される交流電流により駆動し、駆動輪に駆動力を伝達する。また、駆動モータ6は、車両の減速時やコースト走行中等に駆動輪に連れ回されて回転するときに、回生駆動力を発生させ、車両の運動エネルギーが電気エネルギーとして回収される。回収した電気エネルギーは、回生電力としてバッテリ4に充電される。なお、駆動モータ6に隣接した位置には駆動モータ6の回転子の電気角θを検出する不図示の回転センサが設けられており、検出された電気角θはコントローラ8に送信される。
【0019】
平滑コンデンサ7は、バッテリ4と駆動インバータ5との間に設けられ、バッテリ4から駆動インバータ5に供給される直流電流のノイズやリップルを平滑化する。
【0020】
コントローラ8は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えた1または複数のコンピュータで構成される。コントローラ8は、特定のプログラムを実行することにより、特定の制御を実現するための処理を実行する。例えば、コントローラ8は、駆動モータ6の要求トルク及びバッテリ4の目標SOCを満たすべく、エンジン1、発電機インバータ3、バッテリ4及び駆動インバータ5の動作を制御するようにプログラムされている。また、コントローラ8は、後述する部品保護制御を実行するようにプログラムされている。
【0021】
車両制御システム100が搭載される車両は、アクセル開度を検出する不図示のアクセル開度センサ、車速を検出する車速センサを備え、コントローラ8は、アクセル開度センサ及び車速センサから、アクセル開度、車速の情報を取得する。また、コントローラ8は、不図示のナビゲーション装置から、道路勾配等の道路情報を取得する。そして、コントローラ8は、アクセル開度、車速、及び路面勾配などの車両状態などの情報に応じて、駆動モータ6へのモータトルク指令値(駆動モータ6の要求トルク)を演算するとともに、駆動モータ6のトルクTrがモータトルク指令値を満たすように、駆動インバータ5を制御する。
【0022】
また、コントローラ8は、バッテリ電流センサにより検出されたバッテリ4の電流値IBTを取得し、当該電流値IBTに基づきバッテリ4のSOCを算出し、取得する。そして、コントローラ8は、バッテリ4のSOC、入力可能電力、出力可能電力、駆動モータ6の回生電力などの情報に基づいてバッテリ4の目標SOCを演算して、目標SOCを達成するようにエンジン1及び発電機インバータ3を制御して、発電機2の発電電力量を制御する。
【0023】
また、コントローラ8は、発電機電流センサにより検出された発電機インバータ3の出力電流値、バッテリ電圧センサにより検出されたバッテリ4の電圧値VBT、モータ電流センサにより検出された駆動インバータ5の出力電流値IINV、温度センサにより検出された半導体51の温度Tを取得する。さらにコントローラ8は、回転センサにより検出された駆動モータ6の回転子の電気角θを取得し、電気角θの時間当たりの変化量から、駆動モータ6の回転数fを算出及び取得する。
【0024】
以上のとおり、車両制御システム100では、駆動モータ6の要求トルク及びバッテリ4の目標SOCを満たすように、駆動インバータ5、エンジン1及び発電機インバータ3の動作が制御される。
【0025】
ところで、駆動モータを制御するインバータを構成するスイッチング素子(半導体)は、スイッチング時の損失により発熱するが、インバータが高温状態になった場合、部品を保護するため、半導体が制限温度(耐熱温度)を超えないように損失を抑制する必要がある。ここで、駆動モータのトルクTrを制限することで、インバータの損失を抑制すると、例えば走行負荷が高い登坂路等でスムーズな走行ができなくなる場合があり、ドライバに不安を与える虞がある。
【0026】
そこで、本実施形態においては、駆動インバータ5を構成する半導体51の温度Tに応じて、バッテリ4から発電機2にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行うこととした。発電機側でd軸電流制御を行うと、バッテリ4の電力が消費され、バッテリ4の電圧VBTが下がるため、駆動インバータ5におけるスイッチング損失が減少する。即ち、本実施形態においては、半導体51の温度Tに応じて、発電機側でd軸電流制御を行うため、駆動モータ6のトルクTrを制限せずに、スイッチング損失を減少させ、半導体51の発熱を抑制することができる。なお、バッテリ4の電圧低下によるスイッチング損失減少のメカニズムの詳細は後述する。
【0027】
以下、第1実施形態の車両制御システム100における部品保護制御の詳細を説明する。
【0028】
前述のとおり、本実施形態では、駆動インバータ5を構成する半導体51の温度Tに応じて、バッテリ4から発電機2にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う。具体的には、駆動インバータ5により、駆動モータ6に電力を供給している際に、駆動インバータ5の半導体51の温度Tが所定の閾値Tthを超えており、且つバッテリ4の電圧VBTが所定の閾値VBTth以上である場合に、発電機インバータ3により、バッテリ4から発電機2にd軸電流が流される。
【0029】
図2は、第1実施形態における部品保護制御を説明するタイミングチャートであり、
図3は、d軸電流制御時における駆動インバータ5のスイッチング損失を説明する図である。なお、
図3における電圧及び電流は、半導体スイッチング素子51に係る電圧V
INV及び駆動インバータ5の出力電流I
INVである。
【0030】
図2に示すように、時刻t
1において、駆動モータ6のトルク(モータトルク)TrがTr
1からTr
2に上昇すると、駆動インバータ5を介して駆動モータ6に供給される電力(電流)が増加し、駆動インバータ5の半導体51の温度Tが上昇する。なお、駆動モータ6のトルクTrが急上昇して半導体51の温度Tが上昇する場合とは、例えば登坂路を走行する場合や登坂路でモータがロックしている場合、急発進する場合等が考えられる。
【0031】
時刻t2において、半導体51の温度Tが閾値Tthを超えると、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上であれば、時刻t3において、バッテリ4から、発電機インバータ3を介して発電機2に、発電機2のトルクに影響しないd軸電流が流される。ここでの半導体51の温度閾値Tthは、高温であるが半導体51が破損等しない耐熱温度以下の温度であり、実験等に基づき設定することができる。バッテリ4から発電機2にd軸電流が流されると、バッテリ4の電力が消費され、バッテリ4の電圧がVBT1からVBT2に下がる。このとき、駆動モータ6に供給する電力は変わらないため、バッテリ4の電圧低下に伴い、半導体スイッチング素子51のオン時間が増加する。即ち、d軸電流制御により、バッテリ4の電圧VBTは低下するが、半導体スイッチング素子51のオン時間が増加し、駆動モータ6への供給電力は低下せず、駆動モータ6のトルクTrはTr2に維持される。
【0032】
ここで、
図3に示すように、駆動インバータ5(半導体スイッチング素子51)における損失は、半導体スイッチング素子51のオン、オフを切り替える際のスイッチング損失と、オン状態における導通損失の合計で決まる。半導体スイッチング素子51をオンまたはオフに切り替える際のスイッチング損失の大きさは、駆動モータ6に供給する電力が一定の場合、オフ時における半導体スイッチング素子51に係る電圧とオン時において半導体スイッチング素子51に係る電圧との差の大きさ、即ち、切り替え時の電圧低下または上昇の度合いに依存する。オフ状態において、半導体スイッチング素子51には、バッテリ4の電圧V
BTが係る。従って、d軸電流制御によりバッテリ4の電圧V
BTが低下すると、スイッチング損失は減少する。一方、導通損失の大きさは半導体スイッチング素子51のオン時間の長さに依存する。従って、駆動モータ6に供給する電力が一定の場合、d軸電流制御によりバッテリ4の電圧V
BTが低下すると、導通損失は増加する。ここで、半導体スイッチング素子51における全体の損失に対する寄与度は、導通損失よりもスイッチング損失の方が大きい。このため、d軸電流制御によりバッテリ4の電圧がV
BT1からV
BT2に低下すると、導通損失は増加するが、オフ状態における半導体スイッチング素子51に係る電圧がV
BT1からV
BT2に低下するため、スイッチング損失が減少し、全体として駆動インバータ5の損失は減少する。
【0033】
なお、バッテリ4の電圧VBTが低い状態で、d軸電流制御を行うと、バッテリ4の電圧VBTがさらに低下し、バッテリ4の出力電圧VBTが過度に低くなり、電圧低下分を電流で補うことになる虞がある。この場合、バッテリ4のSOCが大きく低下し、バッテリ4の性能に影響を及ぼす虞がある。従って、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低い場合には、半導体51の温度Tが閾値Tthを超えても、d軸電流制御は実行されない。ここでの閾値VBTthは、例えば、d軸電流制御を行っても、バッテリ4の性能等に影響がないような値であり、実験等に基づき設定することができる。
【0034】
図2に戻り、時刻t
3において、バッテリ4から、発電機インバータ3を介して発電機2にd軸電流が流され、時刻t
4においてバッテリ4の電圧がV
BT1からV
BT2に下がると、駆動インバータ5(半導体スイッチング素子51)における損失が低下し、半導体51の温度Tが低下する。また、バッテリ4の電圧低下分に応じて、半導体スイッチング素子51のオン時間が増加するため、駆動モータ6のトルクTrはTr
2に維持される。
【0035】
このように、半導体51の温度Tが閾値Tthを超えた場合に、バッテリ4から発電機2に、発電機2のトルクに影響しないd軸電流のみを流すd軸電流制御を行うことで、駆動モータ6のトルクTrを維持したまま駆動インバータ5の損失を減少させ、半導体51の温度Tを低下させることができる。
【0036】
なお、駆動インバータ5の半導体51の温度Tが高温になるシーンは、登坂路でモータがロックしている場合や急発進時等、短時間での状況が多く、高速走行時よりも比較的電力消費量が少ないため、発電機2の非稼働が許容される状態である。
【0037】
図4は、第1実施形態における部品保護制御を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれもコントローラ8により、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0038】
車両のイグニッションスイッチ(パワースイッチ)がオンにされる等して、車両システムが起動すると、ステップS101において、コントローラ8は、駆動インバータ5の半導体51の温度T及びバッテリ4の電圧VBTを取得する。
【0039】
ステップS102において、コントローラ8は、半導体51の温度Tが、閾値Tthを超えているか否かを判断する。半導体51の温度Tが閾値Tthを超えている場合、コントローラ8は、ステップS103の処理を実行する。一方、半導体51の温度Tが閾値Tth以下の場合、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。
【0040】
半導体51の温度Tが閾値Tthを超えている場合、コントローラ8は、ステップS103において、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上であるか否かを判断する。バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上である場合、コントローラ8は、ステップS104の処理を実行する。一方、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低い場合、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。なお、この場合、発電機2の発電電力がバッテリ4に供給される等して、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上になった後に、ステップS104以下の処理が実行される。
【0041】
バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上である場合、コントローラ8は、ステップS104において、バッテリ4から発電機2にd軸電流のみを流すd軸電流制御を実行する。これにより、バッテリ4の電圧VBTが低下し、駆動インバータ5(半導体51)の損失が減少し、半導体51の発熱が抑制される。d軸電流制御を実行し、半導体51の発熱が抑制され、半導体51の温度Tが低下すると、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。
【0042】
なお、本実施形態においては、半導体51の温度Tが閾値Tthを超えている場合にd軸電流制御を行うこととしたが、半導体51の温度Tに応じてd軸電流制御を行うものであれ必ずしもこれに限られない。例えば、半導体51の温度Tが高いほどd軸電流を流す量や時間を増加させるようにしてもよい。
【0043】
また、駆動インバータ5を流れる電流が大きい場合、半導体51の温度Tが高いことが推定されるため、半導体51の温度Tではなく、駆動インバータ5を流れる電流(出力電流IINV)に応じてd軸電流制御を行うようにしてもよい。例えば、駆動インバータ5の出力電流IINVが所定の閾値IINVthを超えた場合に、d軸電流制御を行うようにしてもよい。ここでの閾値IINVthは、例えば、半導体51がある程度高温であることが推定されるが、半導体51が破損等しない程度の電流値であり、実験等に基づき設定することができる。このように、駆動インバータ5を流れる電流(出力電流IINV)に応じてd軸電流制御を行っても、駆動モータ6のトルクTrを維持したまま駆動インバータ5の損失を減少させ、半導体51の温度Tを低下させることができる。
【0044】
また、本実施形態のように、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低い場合には、d軸電流制御を行わないことが好ましいが、必ずしもこれに限られない。即ち、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上であることは、必ずしもd軸電流制御を行う必須要件にしなくてもよい。
【0045】
上記した第1実施形態の車両制御システム100及び車両制御システム100の制御方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0046】
車両制御システム100の制御方法によれば、駆動インバータ5を構成する半導体51の温度Tまたは駆動インバータ5に流れる電流IINVに応じて、バッテリ4から発電機2にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う。このように、発電機側でd軸電流制御を行うことで、駆動モータ(モータ)6のトルクTrを制限せずに、スイッチング損失を減少させて、半導体51の発熱を抑制することができる。従って、不意なトルク制限等によりドライバに不安を与えることなく、半導体51(部品)を保護することができる。
【0047】
車両制御システム100の制御方法によれば、駆動インバータ5を構成する半導体51の温度Tが閾値(所定の値)Tthを超えた場合にd軸電流制御を行う。これにより、半導体51が制限温度を超えてしまうことを防止でき、半導体51(部品)を保護することができる。
【0048】
車両制御システム100の制御方法によれば、バッテリ4の電圧VBTが閾値(所定の値)VBTth以上である場合に、駆動インバータ5を構成する半導体51の温度Tまたは駆動インバータ5に流れる電流IINVに応じてd軸電流制御を行う。即ち、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低い場合には、半導体51の温度Tや駆動インバータ5に流れる電流IINVに関わらず、d軸電流制御を行わない。これにより、バッテリ4の電圧VBTが低い状態でd軸電流制御を行うことでバッテリ4のSOCが過度に低下して、バッテリ4の性能に影響を及ぼすことを防止できる。
【0049】
車両制御システム100は、コントローラ8を備え、コントローラ8は、駆動インバータ5を構成する半導体51の温度Tまたは駆動インバータ5に流れる電流IINVに応じて、発電機インバータ3によりバッテリ4から発電機2にd軸電流のみを流すd軸電流制御を行う。このように、コントローラ8が、発電機側でd軸電流制御を行うことにより、駆動モータ(モータ)6のトルクTrを制限せずに、スイッチング損失を減少させて、半導体51の発熱を抑制することができる。従って、不意なトルク制限等によりドライバに不安を与えることなく、半導体51(部品)を保護することができる。
【0050】
[第2実施形態]
図5を参照して、第2実施形態の車両制御システム100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
本実施形態においては、d軸電流制御を行っても半導体51の温度Tが上昇し続ける場合にトルク制限を行う点が、第1実施形態と異なる。駆動モータ6の出力トルクTrが非常に大きい場合や、駆動インバータ5用の冷却水温度が高い場合等においては、d軸電流制御を行っても半導体51の温度Tが上昇し続ける場合があり得る。本実施形態では、このような場合に、トルク制限制御を行う。
【0052】
図5は、第2実施形態の車両制御システム100におけるd軸電流制御による部品保護制御を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれもコントローラ8により、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0053】
ステップS201~S204は、第1実施形態の
図4におけるステップS101~S104と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態では、第1実施形態における半導体51の温度Tの閾値T
thを第1閾値T
th1と言うこととする。
【0054】
ステップS204において、d軸電流制御を実行すると、コントローラ8は、ステップS205において、再度、駆動インバータ5の半導体51の温度Tを取得する。
【0055】
ステップS206において、コントローラ8は、ステップS205において取得した半導体51の温度Tが、第2閾値Tth2を超えているか否かを判断する。ここで、第2閾値Tth2は、第1閾値Tth1よりも高く、且つ、半導体51の制限温度(耐熱温度)よりも低い値に設定される。従って、ステップS205において、半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている場合、d軸電流制御の実行後も半導体51の温度Tが上昇し続けていること示している。
【0056】
ステップS206において、半導体51の温度Tが、第2閾値Tth2以下の場合、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。一方、半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている、即ち、d軸電流制御の実行後も半導体51の温度Tが上昇し続けている場合、コントローラ8は、ステップS207の処理を実行する。
【0057】
ステップS207において、コントローラ8は、駆動インバータ5によるトルク制限制御を実行する。即ち、コントローラ8は、駆動インバータ5におけるスイッチング動作を制御して、駆動モータ6に供給する電流を制限することで駆動モータ6の出力トルクTrを制限する。これにより駆動インバータ5(半導体スイッチング素子51)の損失が減少し、半導体51の発熱が抑制され、半導体51の温度Tが低下する。トルク制限制御により半導体51の温度Tが低下すると、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。
【0058】
このように、本実施形態では、d軸電流制御を実行しても半導体51の温度Tが上昇し続ける場合に、トルク制限制御を行うことで、半導体51(部品)を保護する。これにより、より確実に部品を保護することができる。
【0059】
[第3実施形態]
図6を参照して、第3実施形態の車両制御システム100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0060】
本実施形態においては、d軸電流制御を行っても半導体51の温度Tが上昇し続ける場合に、駆動インバータ5におけるキャリア周波数を低く制御する周波数切替制御を行う点が、他の実施形態と異なる。キャリア周波数を低く制御することにより、駆動インバータ5におけるスイッチング回数が減少し、損失が減少する。
【0061】
なお、キャリア周波数を低く制御すると、スイッチング損失を低減することができるが、電流波形が矩形になり易く、3相電流に高調波が重畳するため、駆動モータ6のモータ効率が悪化する虞がある。駆動モータ6が高速回転している場合にモータ効率が悪化すると、その影響も大きくなる。従って、本実施形態では、半導体51の温度Tが上昇し続けている場合においても、駆動モータ6が高速回転している場合には、キャリア周波数の切り替えを行わない。具体的には、半導体51の温度Tが上昇し続けており、且つ、駆動モータ6の回転数fが所定の閾値fth以下である場合にのみ、キャリア周波数を低く制御する。ここでの閾値fthは、例えば、キャリア周波数を低くすることによるモータ効率悪化の影響を許容できる程度の回転数であり、実験等に基づき設定することができる。
【0062】
図6は、第3実施形態の車両制御システム100における部品保護制御を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれもコントローラ8により、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0063】
ステップS301~S304は、第1実施形態の
図4におけるステップS101~S104と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、第1実施形態における半導体51の温度Tの閾値T
thを第1閾値T
th1と言うこととする。
【0064】
ステップS304において、d軸電流制御を実行すると、コントローラ8は、ステップS305において、再度、駆動インバータ5の半導体51の温度Tを取得する。
【0065】
ステップS306において、コントローラ8は、ステップS305において取得した半導体51の温度Tが、第3閾値Tth3を超えているか否かを判断する。ここで、第3閾値Tth3は、第1閾値Tth1よりも高く、且つ、半導体51の制限温度(耐熱温度)よりも低い値に設定される。従って、ステップS306において、半導体51の温度Tが第3閾値Tth3を超えている場合、d軸電流制御の実行後も半導体51の温度Tが上昇し続けていること示している。
【0066】
ステップS306において、半導体51の温度Tが、第3閾値Tth3以下の場合、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。一方、半導体51の温度Tが第3閾値Tth3を超えている、即ち、d軸電流制御の実行後も半導体51の温度Tが上昇し続けている場合、コントローラ8は、ステップS307の処理を実行する。
【0067】
ステップS307において、コントローラ8は、駆動モータ6の回転数fを取得する。
【0068】
ステップS308において、コントローラ8は、ステップS307において取得した駆動モータ6の回転数fが、閾値fth以下であるか否かを判断する。駆動モータ6の回転数fが閾値fth以下の場合、コントローラ8は、ステップS309の処理を実行する。
【0069】
ステップS309において、コントローラ8は、駆動インバータ5を制御して、駆動インバータ5におけるキャリア周波数を低く制御する周波数切替制御を実行する。これにより、駆動インバータ5におけるスイッチング回数が減少して、スイッチング損失が減少し、駆動インバータ5における損失が減少する。ステップS309において、キャリア周波数を低く制御すると、コントローラ8は、ステップS310の処理を実行する。
【0070】
一方、ステップS308において、駆動モータ6の回転数fが閾値fthより大きい場合、モータ効率が悪化した場合の影響が大きいため、コントローラ8は、キャリア周波数の切り替えを行わず、ステップS312の処理を実行する。
【0071】
ステップS309において、キャリア周波数を低く制御すると、コントローラ8は、ステップS310において、再度、半導体51の温度Tを取得する。
【0072】
ステップS311において、コントローラ8は、ステップS310において取得した半導体51の温度Tが、第2閾値Tth2を超えているか否かを判断する。ここで、第2閾値Tth2は、第3閾値Tth3よりも高い値(即ち、Tth1<Tth3<Tth2)、且つ半導体51の制限温度(耐熱温度)よりも低い値に設定される。従って、ステップS311において、半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている場合、キャリア周波数の切り替え後も半導体51の温度Tが上昇し続けていること示している。
【0073】
ステップS311において、半導体51の温度Tが、第2閾値Tth2以下の場合、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。一方、ステップS311において、半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている、即ち、キャリア周波数の切り替え後も半導体51の温度Tが上昇し続けている場合、または、ステップS308において、駆動モータ6の回転数fが閾値fthより大きい、即ち、駆動モータ6が高速回転している場合、コントローラ8は、ステップS312の処理を実行する。
【0074】
ステップS312において、コントローラ8は、駆動インバータ5によるトルク制限制御を実行する。即ち、コントローラ8は、駆動モータ6に供給する電流を制限することで駆動モータ6の出力トルクTrを制限する。これにより駆動インバータ5(半導体スイッチング素子51)の損失が減少し、半導体51の発熱が抑制され、半導体51の温度Tが低下する。トルク制限制御により半導体51の温度Tが低下すると、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。
【0075】
このように、本実施形態では、d軸電流制御を実行しても半導体51の温度Tが上昇し続ける場合に、駆動インバータ5におけるキャリア周波数を低く制御し、スイッチング回数を減少させ、駆動インバータ5の損失を低減させる。これにより、d軸電流制御の実行後も半導体51の温度Tが上昇し続ける場合であっても、半導体スイッチング素子51の発熱を抑制し、半導体スイッチング素子51(部品)を保護することができる。従って、より確実に部品を保護することができる。
【0076】
[第4実施形態]
図7を参照して、第4実施形態の車両制御システム100を説明する。本実施形態においては、バッテリ4の電圧V
BTが閾値V
BTthよりも低く、且つ半導体51の温度Tが第2閾値T
th2を超えている場合に、トルク制限制御を行う点が、他の実施形態と異なる。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図7は、第4実施形態の車両制御システム100における部品保護制御を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれもコントローラ8により、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0078】
車両のイグニッションスイッチ(パワースイッチ)がオンにされる等して、車両システムが起動すると、ステップS401において、コントローラ8は、駆動インバータ5の半導体51の温度T及びバッテリ4の電圧VBTを取得する。
【0079】
ステップS402において、コントローラ8は、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上であるか否かを判断する。バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上である場合、コントローラ8は、ステップS403の処理を実行する。一方、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低い場合、コントローラ8は、ステップS405の処理を実行する。
【0080】
バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTth以上である場合、コントローラ8は、ステップS403において、半導体51の温度Tが、第1閾値Tth1を超えているか否かを判断する。半導体51の温度Tが第1閾値Tth1以下の場合、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。一方、半導体51の温度Tが閾値Tthを超えている場合、コントローラ8は、ステップS404において、バッテリ4から発電機2にd軸電流のみを流すd軸電流制御を実行し、部品保護制御を終了する。
【0081】
ステップS402において、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低い場合、コントローラ8は、ステップS405において、半導体51の温度Tが、第2閾値Tth2を超えているか否かを判断する。半導体51の温度Tが、第2閾値Tth2以下の場合、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。一方、半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている場合、コントローラ8は、ステップS406の処理を実行する。
【0082】
ステップS406において、コントローラ8は、駆動インバータ5によるトルク制限制御を実行する。即ち、コントローラ8は、駆動モータ6に供給する電流を制限することで駆動モータ6の出力トルクTrを制限する。これにより駆動インバータ5(半導体スイッチング素子51)の損失が減少し、半導体51の発熱が抑制され、半導体51の温度Tが低下する。トルク制限制御により半導体51の温度Tが低下すると、コントローラ8は、部品保護制御を終了する。
【0083】
このように、本実施形態では、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低く、且つ半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている場合に、トルク制限制御を行う。これにより、バッテリ4の電圧VBTが低く且つ半導体スイッチング素子51が高温の場合にも、トルク制限制御により半導体スイッチング素子51の発熱を抑制し、半導体スイッチング素子51(部品)を保護することができる。従って、より確実に部品を保護することができる。
【0084】
なお、本実施形態においては、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低く、且つ半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている場合に、トルク制限制御を行うこととしたが、必ずしもこれに限られない。即ち、バッテリ4の電圧VBTが閾値VBTthよりも低く、且つ半導体51の温度Tが第2閾値Tth2を超えている場合に、駆動インバータ5におけるキャリア周波数を低く制御する周波数切替制御を行ってもよい。
【0085】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0086】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1、エンジン,2、発電機,3、発電機インバータ,4、バッテリ,5、駆動インバータ,6、駆動モータ(モータ),7、平滑コンデンサ,8、コントローラ,51、半導体スイッチング素子(半導体),100、車両制御システム