(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098909
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240717BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H05K7/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002717
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】唐木 隆行
【テーマコード(参考)】
5E322
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322BB06
5E322BC02
5E322EA05
5E322EA11
5E322FA09
5H770GA17
5H770HA02Z
5H770LA02Z
5H770LB10
5H770PA02
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA37
(57)【要約】
【課題】目詰まりによる半導体スイッチング素子の冷却効果低下を検出する。
【解決手段】電力変換装置10は、スイッチング動作により電力を変換する半導体スイッチング素子1と、半導体スイッチング素子1を冷却する放熱器2と、放熱器2を空冷によって冷却するファン3と、ファン3を駆動するファン駆動装置4と、ファン3の駆動電流を検出するファン駆動電流検出器5と、駆動電流と閾値とを比較し、駆動電流が閾値を所定時間以上継続して超えた場合に警告を発報する警告発報器6と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング動作により電力を変換する半導体スイッチング素子と、前記半導体スイッチング素子を冷却する放熱器と、前記放熱器を空冷によって冷却するファンと、前記ファンを駆動するファン駆動装置と、を備える電力変換装置であって、
前記ファンの駆動電流を検出するファン駆動電流検出器と、
前記駆動電流と閾値とを比較し、前記駆動電流が前記閾値を所定時間以上継続して超えた場合に警告を発報する警告発報器と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記閾値は、システムインピーダンスが前記放熱器のフィン部、又は前記ファンの吸込み口側に配置されたフィルタに所定以上の目詰まりが発生した時の値であった場合に前記ファンに流れる駆動電流の値である、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記警告は、前記放熱器のフィン部、又は前記ファンの吸込み口側に配置されたフィルタに目詰まりが発生したことを示す警告である、請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷によって半導体スイッチング素子を冷却する電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、複数の半導体スイッチング素子を適切に駆動することにより電力を直流から交流、交流から直流に変換することが可能であるが、スイッチング時や導通時のON電圧によって損失が熱として発生する。
【0003】
発生した熱損失による半導体スイッチング素子の温度上昇を抑制するために、ヒートシンク等の放熱器が使用される。さらに、温度上昇を抑制するために、放熱器をファンによって空冷する方法が主に使用される(例えば、特許文献1参照)。また、電力変換装置には、埃等の異物の混入を防止するために、フィルタが設けられることがある。
【0004】
しかし、フィルタや、放熱器であるヒートシンクのフィン部に異物等が混入して目詰まりが発生し、冷却性能が低下することがある。そのため、従来は
図4に示すように、半導体スイッチング素子1や放熱器2の温度を温度検出器111により計測し、所定温度以上となった場合に、警告発報器106により警告を発報し、メンテナンスを促している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、半導体スイッチング素子や放熱器の温度を計測する方法では、経年劣化や周囲環境による影響で警告を発報する可能性があり、必ずしも目詰まりによる冷却性能の低下かどうかを判断できるとは限らない。
【0007】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、目詰まりによる半導体スイッチング素子の冷却効果低下を検出することが可能な電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、一実施形態に係る電力変換装置は、スイッチング動作により電力を変換する半導体スイッチング素子と、前記半導体スイッチング素子を冷却する放熱器と、前記放熱器を空冷によって冷却するファンと、前記ファンを駆動するファン駆動装置と、を備える電力変換装置であって、前記ファンの駆動電流を検出するファン駆動電流検出器と、前記駆動電流と閾値とを比較し、前記駆動電流が前記閾値を所定時間以上継続して超えた場合に警告を発報する警告発報器と、を備える。
【0009】
さらに、一実施形態において、前記閾値は、システムインピーダンスが前記放熱器のフィン部、又は前記ファンの吸込み口側に配置されたフィルタに所定以上の目詰まりが発生した時の値であった場合に前記ファンに流れる駆動電流の値であってもよい。
【0010】
さらに、一実施形態において、前記警告は、前記放熱器のフィン部、又は前記ファンの吸込み口側に配置されたフィルタに目詰まりが発生したことを示す警告であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放熱器フィン部又はフィルタの目詰まり発生を検出し、警告として発報することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力変換装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】ファンの風量-静圧特性図の一例を示す図である。
【
図3】ファンの風量-電流特性図の一例を示す図である。
【
図4】従来の電力変換装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1に、一実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す。
図1に示す電力変換装置10は、半導体スイッチング素子1と、放熱器2と、ファン3と、フィルタ31と、ファン駆動装置4と、ファン駆動電流検出器5と、警告発報器6と、を備える。
【0015】
半導体スイッチング素子1は、1個以上のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor),MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)等であり、入力された駆動信号に伴ってスイッチング動作して電力を変換する。
【0016】
放熱器2は、アルミニウム、銅等の金属素材、又はステンレス、セラミック等で構成されるヒートシンクであり、半導体スイッチング素子1に接触するように配置される。放熱器2は、半導体スイッチング素子1が発した熱を熱交換することによって、半導体スイッチング素子1を冷却する。放熱器2は、フィン部(放熱フィン)を有する。フィン部とは、表面積を増やすことにより放熱効果を高める構造の部分をいう。
【0017】
ファン3は、放熱器2に向けて送風し、放熱器2のフィン部を空冷によって冷却することで、放熱器2の冷却性能を向上させる。
【0018】
ファン3は、半導体スイッチング素子1及び放熱器2を有する電力変換器の筐体に配置される。フィルタ31は、ファン3の吸込み口側に配置され、電力変換器への異物混入を防止する。
【0019】
ファン駆動装置4は、ファン3を駆動する電源を生成する。
【0020】
ファン駆動電流検出器5は、ファン3を駆動させたときにファン駆動装置4からファン3に流れるファン駆動電流を検出する。そして、ファン駆動電流検出器5は、検出したファン駆動電流IFANを警告発報器6に出力する。
【0021】
警告発報器6は、ファン駆動電流と閾値とを比較し、駆動電流が閾値を所定時間以上継続して超えた場合に警告を発報する。警告発報器6は、比較器7と、制御器8と、表示器9と、を備える。
【0022】
比較器7は、ファン駆動電流検出器5から入力したファン駆動電流IFANと閾値ITHとを比較する。そして、比較器7は、ファン駆動電流IFANが閾値ITHを超えた場合にのみON状態となる信号を制御器8に出力する。
【0023】
制御器8は、比較器7から入力した信号がON状態を所定時間継続した場合に、警告信号を表示器9に出力する。
【0024】
表示器9は、制御器8から警告信号を入力すると、放熱器2のフィン部、又はフィルタ31に目詰まりが発生したことを示す警告を表示する。
【0025】
(閾値ITHの設定方法)
次に、比較器7における閾値ITHの設定方法について説明する。
【0026】
図2に、ファンの風量-静圧特性図の一例を示す。
図2に示す風量-静圧特性線Aは、ファン3の風量-静圧特性線の一例である。ここで、適用するシステムのシステムインピーダンスと風量-静圧特性線Aのクロスポイントがファン3の動作点(風量)となる。このシステムインピーダンスは、システム内の空気を一定方向に流そうとした場合にその流れとは逆に発生する送風抵抗であり、風量の2乗で増加する。
【0027】
しかしながら、放熱器2のフィン部又はフィルタ31に目詰まりが発生した場合、送風抵抗は大きくなるため、風量に対するシステムインピーダンスの傾きが大きくなる。よって、通常時のシステムインピーダンスBと風量-静圧特性線Aのクロスポイント時の風量Q1に比べて、目詰まり時のシステムインピーダンスCと風量-静圧特性線Aとのクロスポイント時の風量Q2の方が低くなる。
【0028】
図3に、ファンの風量-電流特性図の一例を示す。
図3に示す風量-電流特性線Dは、ファン3の風量-電流特性線の一例である。風量の増減に対してファン駆動電流I
FANもある程度逆比例して増減する。ここで、上述した通常時のシステムインピーダンスBでの風量Q1時の電流I1と、目詰まり時のシステムインピーダンスCでの風量Q2時の電流I2を比較すると、電流I1よりも電流I2が大きくなる。よって、目詰まりの発生により送風抵抗が大きくなり、システムインピーダンスの傾きが大きくなるとファン駆動電流I
FANにおいても大きくなるといえる。
【0029】
したがって、閾値ITHを、システムインピーダンスが放熱器2のフィン部又はフィルタ31に所定以上の目詰まりが発生した時の値であった場合にファン3に流れる駆動電流の値I2に設定することで、警告発報器6は目詰まり発生を正確に検出し、表示器9により警告を発報することが可能となる。
【0030】
以上より、電力変換装置10は、放熱器2のフィン部又はフィルタ31の目詰まりにより冷却性能が低下していることを警告として発報することができる。また、冷却性能低下の要因が目詰まりによるものか否かを区別することができ、メンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0031】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。
【0032】
例えば、警告発報器6は、閾値を複数設けてもよい。また、警告発報器6は、ファン駆動電流と複数の閾値との比較結果に応じて警告内容を変更してもよい。
【0033】
その他、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体スイッチング素子
2 放熱器
3 ファン
4 ファン駆動装置
5 ファン駆動電流検出器
6 警告発報器
7 比較器
8 制御器
9 表示器
10 電力変換装置
31 フィルタ