(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098916
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】除湿器
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B01D53/26 210
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002729
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】古舘 由布子
(72)【発明者】
【氏名】金野 覚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優里
(72)【発明者】
【氏名】相川 豊子
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA09
4D052CA04
4D052CA06
4D052GA04
4D052GB00
4D052GB13
4D052HA11
4D052HA12
4D052HA13
4D052HA14
4D052HA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】床専有面積の増大および設置安定性の低下を抑制しつつ、通気側面を拡張するとともに容量を増大することが可能な除湿器を提供する。
【解決手段】除湿器は、接地面Gに対し対向する底面10と、通気側面20を有する第一横側面12と、第一横側面12に対向する第二横側面14と、第一横側面12と第二横側面14との間を亘る第三横側面および第四横側面とを、有し、内部空間に潮解性薬剤40が収容されており、第一横側面12から下方に向けて延在する突縁部50が設けられており、かつ内部空間に潮解液42が満たされた状態において、最低位h1から20%長さh3において第一仮想線L1を法線とする仮想面の面方向に内部空間を切断してなる第一切断面S1の面積Aが、最低位h1から70%長さにおいて第一仮想線L1を法線とする仮想面の面方向に内部空間を切断してなる第二切断面S2の面積Bよりも大きくなるよう構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面に対し対向する底面と、
通気側面を有する第一横側面と、
前記第一横側面に対向する第二横側面と、
前記第一横側面と前記第二横側面との間を亘る第三横側面および第四横側面と、を有し、
少なくとも前記底面、前記第一横側面、前記第二横側面、前記第三横側面および前記第四横側面によって閉じられた内部空間に潮解性薬剤が収容されており、
前記第一横側面と前記底面とが隣接する外縁において、下方に向けて延在する突縁部が設けられており、かつ
前記内部空間に潮解液が満たされた状態において、前記第一横側面の最低位から最高位に向けて引いた第一仮想線の長さを100%としたときに、前記最低位から20%長さにおいて前記第一仮想線を法線とする仮想面の面方向に前記内部空間を切断してなる第一切断面の面積が、前記最低位から70%長さにおいて前記第一仮想線を法線とする仮想面の面方向に前記内部空間を切断してなる第二切断面の面積よりも大きいことを特徴とする除湿器。
【請求項2】
前記第三横側面の正面視において、
前記第一横側面を面方向に拡張した第一仮想面と、
前記第二横側面を面方向に拡張した第二仮想面とが、前記接地面より上方において交差する請求項1に記載の除湿器。
【請求項3】
前記第一横側面全体が透湿防水シートで構成された前記通気側面であり、
前記第一切断面と前記第二横側面とが交わる位置の上記第二横側面の厚みT1、および前記第二切断面と前記第二横側面が交わる位置の前記第二横側面の厚みT2が、T1<T2である請求項1または2に記載の除湿器。
【請求項4】
第二横側面の正面視において、
前記第三横側面を面方向に拡張した第三仮想面と、
前記第四横側面を面方向に拡張した第四仮想面とが、前記接地面より上方において交差する請求項1または2に記載の除湿器。
【請求項5】
前記突縁部の平均曲げ硬度が0.08N以上4.00N以下である請求項1または2に記載の除湿器。
【請求項6】
前記突縁部の平均曲げ硬度が0.08N以上4.00N以下であり、
前記突縁部の平均曲げ硬度が、前記第二横側面の最大曲げ硬度よりも大きい請求項1または2に記載の除湿器。
【請求項7】
前記第一横側面全体が透湿防水シートで構成された前記通気側面であり、
前記突縁部が前記第一横側面の外縁全周に設けられている請求項1または2に記載の除湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に潮解性薬剤が収容された除湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローゼット、押入れ、あるいは下駄箱などの収納空間の湿気取りとして、塩化カルシウムなどの潮解性薬剤を用い、空気中の水分を吸収することで液化させ、これを容器内に貯める除湿器が広く提案されている。
【0003】
たとえば、一般的な除湿器の例としては、合成樹脂材料によって形成され上面が開口する直方体または略直方体の容器内部に潮解性薬剤が収容されるとともに、当該開口に透湿防水シートが配置されたタンクタイプの除湿器(以下、従来技術1ともいう)が知られる。従来技術1は、直方体の縦横高さの寸法にもよるが、一般的に安定感がよいことが知られる。
【0004】
また別のタイプの除湿器として、特許文献1、2に開示されるスタンディングパウチ型の除湿器が知られる。具体的には、特許文献1には、非透湿性の底面シートおよび上下方向に伸長する2以上の側面シートからなる有底の容器の内部に潮解性薬剤が収容された除湿器(以下、従来技術2ともいう)が知られる。従来技術2は、側面シートの任意の領域が透湿防水シートで置き換えられている。
また特許文献2には、透湿性の第1シートと非透気性の第2シートとが対向して配置された2層の間隙に、2つ折りにした非透気性の底部シートを配置し、周端部をシールした底ガゼット方式のスタンディングパウチ容器の内部に潮解性薬剤が収容された除湿器(以下、従来技術3ともいう)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60-52256号公報
【特許文献2】特開2019-218087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
除湿器は、透湿可能な面(以下、通気側面ともいう)が大きいほど吸湿速度が速いため、広い通気側面を確保することが求められる。また昨今、ウォークインクローゼット等の収納空間の大容量化に伴い、従来よりも除湿量の多い大容量タイプの除湿器の提供が求められている。除湿器が大容量化されれば、除湿器の交換のタイミングを減らすことができる点でも望ましい。
【0007】
これに対し、上述する従来技術1のタンクタイプの除湿器は、上面の開口およびこれに対向する底面の面積を増大させることによって、通気側面を拡張し、かつ大容量化を図ることができる。しかしながら従来技術1では、このように底面が拡張されることによって、設置における床専有面積が増大してしまい、限られた設置エリアにおいて除湿器を設置し難くなるという問題があった。
【0008】
これに対し、従来技術2、3は、通気側面が側面部に設けられているため、底面の面積を増大させずとも、当該通気側面を上方に拡張すれば、通気側面の面積を増大させることが可能であり、またこれによって容量も増大可能である。しかしながら、底面の面積を変更せずに高さ方向に寸法を大きくした場合、除湿器の設置安定性が悪くなるという問題があった。設置安定性が十分でなくなり、たとえば使用中に通気側面が下面となる方向に転倒し、その転倒状態が継続した場合、吸湿し難い状態となり問題であった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みなされたものであって、床専有面積の増大および設置安定性の低下を抑制しつつ、通気側面を拡張するとともに容量を増大することが可能な除湿器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の除湿器は、接地面に対し対向する底面と、通気側面を有する第一横側面と、上記第一横側面に対向する第二横側面と、上記第一横側面と上記第二横側面との間を亘る第三横側面および第四横側面と、を有し、少なくとも上記底面、上記第一横側面、上記第二横側面、上記第三横側面および上記第四横側面によって閉じられた内部空間に潮解性薬剤が収容されており、上記第一横側面の、上記底面と隣接する外縁において、上記第一横側面から下方に向けて延在する突縁部が設けられており、かつ上記内部空間に潮解液が満たされた状態において、上記第一横側面の最低位から最高位に向けて引いた第一仮想線の長さを100%としたときに、上記最低位から20%長さにおいて上記第一仮想線を法線とする仮想面の面方向に上記内部空間を切断してなる第一切断面の面積が、上記最低位から70%長さにおいて上記第一仮想線を法線とする仮想面の面方向に上記内部空間を切断してなる第二切断面の面積よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を備える本発明の除湿器は、設置姿勢が安定し、特に通気側面側に転倒することが防止されているため、設置安定性を維持しつつ、床専有面積を増大させずに高さ方向に寸法を大きくして通気側面を拡張するとともに大容量化を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態にかかる使用時の除湿器の第三横側面を正面視した際の側面図である。
【
図2】
図1に示す第一実施形態にかかる使用時の除湿器のII-II線断面図である。
【
図3】(3A)は、本発明の第一実施形態にかかる未使用の除湿器の、第一横側面12を上方に向けた状態の斜視図であり、(3B)は、(3A)のIII-III線断面図である。
【
図4】(4A)は、本発明の第二実施形態にかかる除湿器の第二横側面側からみた斜視図であり、(4B)は、(4A)に示す除湿器の第二横側面を正面視した際の側面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態の第一の変形例である除湿器を示し、(5A)は、第一横側面を上方に向けた状態の斜視図であり、(5B)は、第三横側面を正面視した際の側面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態の第二の変形例である除湿器を示し、(6A)は、第一横側面を上方に向けた状態の斜視図であり、(6B)は、第三横側面を正面視した際の側面図である。
【
図7】本発明の第一実施形態の第三の変形例である除湿器を示し、(7A)は、第一横側面を上方に向けた状態の斜視図であり、(7B)は、第三横側面を正面視した際の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜に省略する。
本発明の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、1つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。たとえば、以下では、第二横側面、第三横側面、および第四横側面が個別の側面として区別容易に構成された例を用いて本発明を説明するが、本発明は、第二横側面と、第三横側面および/または第四横側面とが明確な境界なく連続した面を構成する態様を包含し、たとえば、底面が半円状であって、第三横側面、第二横側面、第四横側面が一連の面として当該半円状の底面の弧の部分から立ち上がる側面を構成する態様を本発明は包含する。尚、上記半円とは、真円の2分の1の形状だけでなく、弧とこれに対する弦とからなる形状をいう。
尚、本発明の説明に関し用いる図面は、本発明および本発明に含まれる部材の寸法、寸法比率および形状を限定するものではない。また特段の断りなく本発明の説明に関し言う上下方向とは、本発明の除湿器を使用状態で接地面に設置した際の天地方向を指す。
【0014】
[第一実施形態]
以下に、
図1~
図3を用いて本発明の第一実施形態の除湿器100について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態にかかる使用時の除湿器100の第三横側面16を正面視した際の側面図である。
図2は、
図1に示す第一実施形態にかかる使用時の除湿器100のII-II線断面図である。
図3Aは、本発明の第一実施形態にかかる未使用の除湿器100の、第一横側面12(通気側面20)を上方に向けた状態の斜視図であり、
図3Bは、
図3AのIII-III線断面図である。
【0015】
本発明の第一実施形態の除湿器100は、接地面Gに対し対向する底面10と、通気側面20を有する第一横側面12と、第一横側面12に対向する第二横側面14と、第一横側面12と第二横側面14との間を亘る第三横側面16および第四横側面17と、を有する。以下の説明において、少なくとも底面10と、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17を備える非透湿部材から構成された部分を非透湿部と呼ぶ場合がある。
除湿器100は、上記非透湿部の開口が第一横側面12によって閉じられてなる内部空間を有しており、当該内部空間に潮解性薬剤40が収容されている。
【0016】
本実施形態では、底面10に対向する上面18をさらに備えており、非透湿部は、底面10、上面18、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17によって構成されている。そして、かかる非透湿部および第一横側面12により閉じられた内部空間に潮解性薬剤40が収容されている。上面18を備えないこと以外は同様に構成された他の態様に比べ、本実施形態は上面18を有することによって、上記内部空間の容積が大きい。
【0017】
除湿器100は、第一横側面12と底面10とが隣接する外縁56において、下方に向けて延在する突縁部50が設けられている。
図1に示すとおり、底面10を下面として接地面Gに除湿器100が設置された場合、突縁部50が接地面Gに当接することによって、底面10の第一横側面12寄りの領域が接地面Gから浮いた状態となる。この結果、底面10は、第一横側面12から第二横側面14に向かって下り傾斜する。そのため、除湿器100は、設置状態において物理的な衝撃が加えられた際、第一横側面12側に転倒し難い。
【0018】
また、
図2に示すとおり、除湿器100は、使用開始後、内部空間に潮解液42が満たされた状態において、第一横側面12の最低位h1から最高位h2に向けて引いた第一仮想線L1の長さを100%としたときに、最低位h1から第一仮想線L1の長さに対し20%長さh3において第一仮想線L1を法線とする仮想面の面方向に内部空間を切断してなる第一切断面S1の面積Aが、最低位h1から70%長さh4において第一仮想線L1を法線とする仮想面の面方向に内部空間を切断してなる第二切断面S2の面積Bよりも大きくなるよう構成されている。より具体的には本実施形態では、
図2に示すとおり、第一仮想線L1を法線とする仮想面の面方向の内部空間を切断してなる切断面の面積は、上方に向けて連続的に小さくなるよう構成されている。このように内部空間の下方における切断面の面積が上方における切断面の面積より大きくなるよう構成されることによって、潮解液42が貯留された状態の除湿器100の重心が低くなり、設置安定性が向上する。
尚、本発明の説明に関し、除湿器の内部空間に潮解液が満たされた状態とは、当該内部空間に収容された潮解性薬剤が全て潮解液となり平衡に達した状態を指し、便宜上、除湿器の内部空間に潮解液が満たされた状態における除湿器100の寸法は、除湿器100の設計寸法を参照することができる。
【0019】
尚、本発明において第一横側面12の最低位h1とは、内部空間が潮解液42で満たされた状態の除湿器100の第一横側面12を正面視した際、かかる第一横側面12の最も接地面Gに近い位置を指す。また第一横側面12の最高位h2とは、内部空間が潮解液42で満たされた状態の除湿器100の第一横側面12を正面視した際、かかる第一横側面12の最も接地面Gから離れた位置を指す。
【0020】
本実施形態では、上述する第一切断面S1の面積Aが第二切断面S2の面積Bよりも大きくするための手段として、以下の構成が採用されている。
即ち、
図1に示すとおり、除湿器100は、第三横側面16の正面視において、第一横側面12を面方向に拡張した第一仮想面S3と、第二横側面14を面方向に拡張した第二仮想面S4とが、接地面Gより上方において交差角度θで交差するよう構成されている。交差角度θは、たとえば底面10の幅寸法(即ち、第一横側面12と第二横側面14とを亘る方向における底面10の寸法)を変更することで調整することができる。かかる態様は、後述する第二実施形態に比べて、第一横側面12の面積を大きく確保しやすい点で好ましい。
【0021】
ここで交差角度θは特に限定されないが、重心を下方に調整しやすく、かつ内部空間の容積を十分な広さに確保するという観点からは、5度以上であることが好ましく、10度以上であることがさらに好ましい。一方、床専有面積を適度に抑え、狭い空間でも設置しやすくするという観点からは、交差角度θは45度以下であることが好ましく、40度以下であることがより好ましい。尚、本明細書において床専有面積とは、使用開始時における除湿器を上面視した際の長手方向の最大となる部分を実測した値と、当該長手方向に直交する方向を幅方向とし当該幅方向の最大となる部分である最大幅を実測した値とを乗じることで算出される。
【0022】
上述する構成を備える除湿器100は、たとえば底面10の面積を変更せずに、高さ方向に寸法を大きくすることで、床専有面積を増大させることなく通気側面の面積を増大させるとともに大容量化を図ることができる。除湿器100は、上述するとおり突縁部50を有し、かつ第一切断面S1の面積A>第二切断面S2の面積Bとなるよう構成されるため、第一横側面12側に転倒し難く、全体としても良好な設置安定性が示され得る。そのため、除湿器100は、高さ方向に寸法を大きくした場合であっても、優れた設置安定性が維持される。尚、本実施形態では第三横側面16と第四横側面17とは平行である。
以下に除湿器100の詳細についてさらに説明する。
【0023】
本実施形態における除湿器100において、底面10は
図3Aに示すとおり長方形であり、一方の長辺に連続して第一側面12(通気側面20)が設けられ、他方の長辺に連続して第二横側面14が設けられている。またかかる長方形の一方の短辺および他方の短辺それぞれに連続して、第三横側面16および第四横側面17が設けられている。接地面Gに設置した状態において、第一横側面12、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17は、底面10から上方に立ち上がっており、それぞれの上端縁に接して上面18が設けられている。本実施形態では上面18は長方形である。
【0024】
(第一横側面)
第一横側面12は、通気側面20を有する面である。即ち、第一横側面12の一部または全部が通気側面20として構成され、これによって除湿器100の内部と外部との通気を可能とする。本実施形態のように長方形の底面10の長辺に連続して第一横側面12が設けられることによって、第三横側面16および第四横側面17よりも第一横側面12の面積を大きく確保し易く、結果として、通気側面20の面積を大きく確保しやすい。図面に示す本実施形態は、第一横側面12全体が通気側面20として構成されている。
【0025】
通気側面20は、通気性かつ防水性(即ち、透湿防水性)を示す領域である。本実施形態では、上述する非透湿部に潮解性薬剤40が収容された状態において、当該非透湿部の開口を透湿防水シート22によって覆って内部空間を形成することによって透湿防水性を示す通気側面20を備える除湿器100が構成される。
【0026】
通気側面20を構成するために用いられる透湿防水シート22は、透湿性であり、かつ防水性(つまり潮解液42の通過を防止する性質)のシートである。透湿防水シート22としては、たとえば微多孔膜樹脂シートが好ましい。この微多孔膜樹脂シートの製造方法は特に限定されないが、たとえば無機充填剤を含有した熱可塑性樹脂シートを成形後に延伸することにより製造可能である。この微多孔膜樹脂シートの成形に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、あるいはポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等があげられる。この微多孔膜樹脂シートからなる透湿防水性フィルムには、住化積水フィルム(株)製の商品名「セルポア」、(株)トクヤマ製の商品名「NFシート」、(株)ニトムズ製の商品名「ブレスロン」、三菱ケミカル(株)製の商品名「エクセポール」等がある。
上記微多孔膜樹脂シートの透湿性を阻害しない範囲で、当該微多孔膜樹脂シートに不織布や他の有孔フィルムを積層して多層シートとしてもよい。
【0027】
尚、除湿器100は、使用前において吸湿反応の発生を防止するために、
図1に示すように通気側面20(透湿防水シート22)を覆う蓋シート30が取り付けられている。
【0028】
蓋シート30は、通気側面20を覆う非透湿性シートである。本実施形態では通気側面20を構成する透湿防水シート22を覆う蓋シート30が設けられている。除湿器100は、蓋シート30によって蓋をされ内部空間が密閉されており、当該内部空間に収容された潮解性薬剤40による吸湿を防止し、蓋シート30が剥離されることで使用が開始される。尚、本明細書において非透湿性とは、気体および液体のいずれも透過が防止される性質を意味する。
【0029】
蓋シート30は、非透湿性(ガスバリヤ性)であればよく、透明または不透明であってよい。非透湿性のシートとしては、たとえば、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデンコートPET(K-PET)、ポリ塩化ビニリデンコートOPP(K-OPP)、シリカ蒸着PET、アルミナ蒸着PET等の樹脂系シートのほか、アルミシート等があげられ、これらの非透湿シートを単層で用いてもよいし、複数層を複合(ラミネート)して用いてもよい。
たとえば、蓋シート30の透湿防水シート22と接する側に易剥離性接着層を設けて透湿防水シート22に対し蓋シート30を積層させて接着し、使用開始時に蓋シート30のみを容易に剥離することができる。
【0030】
(第一横側面以外の他の側面)
第一横側面12以外の他の側面である第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17、底面10、上面18は、いずれも、非透湿性の部材から構成される。非透湿性の部材としてはシート部材が挙げられ、具体的にはたとえば樹脂シートが挙げられる。
上記樹脂シートは、ポリエチレン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などからなる非透湿性の樹脂シートが挙げられる。上記樹脂シートは、上述する樹脂部材を1種または2種以上の混合樹脂として用いて構成される。柔軟性などを考慮すると、ポリエチレン系樹脂が含まれている樹脂シートが好ましい。また樹脂シートは、単層シートであってもよいし、複数の樹脂層を有する積層シートであってもよい。たとえば、両最外面にポリエチレン系樹脂層を有し、その間に、これ以外の樹脂層を有する積層シートが柔軟性の観点から好ましく、より具体的な例としては、ポリエチレン系樹脂層/ナイロン系樹脂層/ポリエチレン系樹脂層がこの順で積層されてなる積層シートが挙げられる。
【0031】
第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17、底面10、上面18はそれぞれ、異なる部材で構成されてもよいが、製造容易性や廃棄処理などを考慮すると、いずれも同様の部材で構成されることが好ましく、いずれも同一の樹脂部材で構成されることがより好ましい。
特には、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17、底面10、上面18が、1枚の樹脂シートから構成されることが好ましい。これによって、各面の境界が連続的に構成されるため、潮解液42が漏れ出ることが良好に防止される。また製造時の部品点数を減らすことができるため、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17、底面10、上面18を1枚の樹脂シートから構成することは、製造上においても有利である。
【0032】
(突縁部)
第一横側面12と底面10とが隣接する外縁56において下方に向けて延在する突縁部50が設けられている。本実施形態では、突縁部50の基端は、外縁56において底面10に連続している。
ここで突縁部50が下方に向けて延在するとは、設置状態の除湿器100において、突縁部50が外縁56から下方に向けて延在することを指し、詳しくは、非設置状態の除湿器100において、底面10の面方向を0度とし、当該0度の面から内部空間を遠ざける方向に0度を超えて180度未満である。第一横側面12側に転倒することをより良好に防止するという観点からは、突縁部50の延在する方向は、底面10の面方向を0度とし、45度以上135度以下であることが好ましく、60度以上120度以下であることがより好ましく、80度以上100度以下であることが特に好ましく、85度以上95度以下であることが特に好ましい。本実施形態では、底面10の面方向に対する突縁部50の延在方向は
図3に示すように90度である。突縁部50は、設置状態において除湿器100の重量や内部空間に貯留された潮解液42の重量によって
図1に示すとおり、適度に湾曲することが好ましい。また使用期間終了まで、突縁部50により外縁56が浮いた状態(即ち底面10の外縁56寄りの部分が浮いた状態)が保たれることが好ましい。ただし、使用により潮解液42の貯留量が増大して突縁部50に対する荷重負荷が大きくなり、実質的に外縁56が接地面Gに接触した状態になっても、除湿器100は、上述するとおり第一切断面S1の面積が第二切断面S2の面積より大きく、重心が下方になるよう配慮されているため、設置安定性が良好であり転倒防止も図られる。
【0033】
外縁56において底面10と連続し下方に延在する突縁部50は、底面10とは別体にて構成され、外縁56において底面10と接着あるいは接合等されてもよいが、好ましくは底面10と一体的に構成されるとよい。
例えば、製造工程における部品点数を減らすことができ製造工程上有利である上、接触などによる突縁部50の脱落や破損が生じ難いという観点からは、1枚の非透湿性の樹脂シートにより底面10と突縁部50とが一体的に構成されることが好ましい。
【0034】
内部空間に潮解液42が貯留し始め、突縁部50に対する荷重負荷が大きくなった場合でも、外縁56が接地面Gから浮いた状態が維持されやすいという観点からは、突縁部50の平均曲げ硬度は0.08N以上であることが好ましく、0.10N以上であることがより好ましい。
一方、突縁部50の硬度が大きすぎる場合、内部空間に貯留された潮解液42の荷重負荷によって、突縁部50と底面10との境界である外縁56付近に応力が集中し突縁部50が折れ、あるいは底面10に亀裂が入る等の不具合が発生する可能性がある。このような問題の発生を良好に抑制するという観点からは、突縁部50の平均曲げ硬度は4.00N以下であることが好ましく、2.00N以下であることがより好ましく、1.00N以下であることがさらに好ましい。上述する好ましい下限と好ましい上限との間における曲げ硬度を示す突縁部50は、少なくとも突縁部50の基端(外縁部56を介して底面10と隣接する端部)と先端(上記基端と対向する端部であって設置面Gと接触する端部)との間において適度な湾曲を示しうる。そのため、かかる突縁部50を備えることによって、外縁56付近に応力が集中し、あるいは底面10に亀裂が入ることを回避しつつ、外縁56を接地面から浮いた状態とすることが可能である。
突縁部50の平均曲げ硬度は、JIS K 7171を参照し、以下のとおり測定される。具体的には、突縁部50を構成するフィルム材料を縦2.5cm×横8cmに切り取った試料を3枚準備し、各試料を以下の方法により曲げ硬さを測定し、それぞれの測定値を算術平均することによって求めることができる。まず、切り取った試料を20mmの間隔をあけて静置した高さ26mmのL字型治具2台の間に浮かせて静置したのち、幅60mm、厚さ2mmのアクリル製平板を取り付けたフォーステスター(MCT-2150:エー・アンド・デイ株式会社製)を一定の速度(100mm/min)で下降させ、平板により試料を湾曲させ、平板にかかる荷重を測定し、その最大値を曲げ硬さとする。なお、数値が大きい方が曲げ硬さが大きいことを意味する。
また製造後の除湿器100において、透湿防水シート22を取り除いた状態において、上述の方法に準拠して、突縁部50の平均曲げ硬度を求めることもできる。
【0035】
ところで、透湿防水シート22として用いられる微多孔膜樹脂シートは、多孔形成されているため、強度が十分でない場合がある。そのため、内部空間に潮解液42が貯留された際に、透湿防水シート22が破損等しないように配慮されることが好ましい。かかる観点から、突縁部50の平均曲げ硬度は0.08N以上4.00N以下であり、かつ第二横側面14の最大曲げ硬度が、突縁部50の平均曲げ硬度よりも小さいことが好ましい。
上述する数値範囲を満たすことによって、以下の効果を奏する。つまり、適度な柔軟性を有する突縁部50を備えることで底面10の外縁56側を浮かし、これによって、内部空間に貯留された潮解液42の荷重に対する応力を第二横側面14側に十分に分散させ、透湿防水シート22の荷重負荷を軽減することができる。さらに第二横側面14が適度に柔軟性を有することによって、潮解液42の荷重が負荷された第二横側面14を容器の外方向に膨張させやすく、その結果、より十分に透湿防水シート22の荷重負荷を軽減することができる。
尚、第二横側面14の最大曲げ硬度は、第二横側面14を縦横方向に4等分に切断して4枚の試験片を作成し、各試験片の曲げ硬度を上述の突縁部50の曲げ硬さの測定方法に準拠して測定し、測定された値の中で最も大きい値を最大曲げ硬度という。
【0036】
また、第一横側面12全体が透湿防水シート22で構成された態様の除湿器100では、除湿器100の内部空間に徐々に潮解液42が貯留されることにより、特に透湿防水シート22の下方領域54(
図1参照)において使用初期から使用終了までの長期間にわたり潮解液42の荷重負荷がかかる。そのため透湿防水シート22の下方領域54における破損や劣化の発生防止に配慮することが好ましく、かかる観点から以下の構成を備えることが好ましい。
即ち、上記観点から、第一切断面S1と第二横側面14とが交わる位置の第二横側面14の厚みT1、および第二切断面S2と第二横側面14とが交わる位置の第二横側面14の厚みT2が、T1<T2であることが好ましい。このように第二横側面14の上方より下方において厚みを小さくすることで第二横側面14の下方の柔軟性が増し、潮解液42の荷重負荷がかかった際、第二横側面14の下方を外方向に膨張させ張り出し部52(
図1参照)を構成させうる。この結果、透湿防水シート22の下方領域54に対する潮解液42の荷重負荷をさらに良好に軽減させることができる。厚みT1は、試料である除湿器を3個準備し、それぞれ第一切断面S1と第二横側面14が交わる位置の第二横側面14において、
図3におけるx3方向中心位置の厚みを測定し、3回の測定値を算術平均することによって求められる。また厚みT2は、試料である除湿器を3個準備し、それぞれ第二切断面S2と第二横側面14とが交わる位置の第二横側面14において、
図3におけるx3方向中心位置の厚みを測定し、3回の測定値を算術平均することによって求められる。
【0037】
(潮解性薬剤)
次に潮解性薬剤40について説明する。
潮解性薬剤40は、吸湿することによって水溶液化(潮解液化)する剤を広く含み、具体的な例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、酢酸カリウム、等の潮解性物質が挙げられ、特に塩化カルシウムや塩化マグネシウムが吸湿能力及び価格等の点から好ましい。潮解性薬剤40は、公知の潮解性物質を1種で、または2種以上含有して構成される。
【0038】
潮解性薬剤40の形状は特に限定されないが、たとえば上述する潮解性物質を1種または2種以上用い、滴下造粒方式や空冷造粒方式等により粒状に製剤される。粒状の潮解性薬剤40の平均粒径は特に限定されないが、0.1mm以上30mmの範囲であることが好ましい。
【0039】
除湿器100に収容される潮解性薬剤40の量は特に限定されず、除湿器100の内部空間の容積、使用が予定される空間の広さなどを勘案して適宜決定することができる。
【0040】
(除湿器100の製造方法)
以下に、本実施形態にかかる除湿器100の製造方法の好ましい一例について説明する。
まず底面10、上面18、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17からなる非透湿部を製造する。以下では上記非透湿部が一枚の樹脂シートから構成される態様を例に説明する。
【0041】
上部開口であって、底面10、上面18、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17に対応する所望形状の凹空間を備える成形型を準備する。成形型の上部開口と対向する面は第二横側面14に対応する面となる。ここで所望形状とは、製造された除湿器100の内部空間に潮解液42が満たされた状態において、少なくとも、上述する第一切断面S1の面積Aが、第二切断面S2の面積Bよりも大きくなるという構成を満たす形状を指す。より具体的には、本実施形態に使用される成形型は、上部開口に対向する対向面(即ち、第二横側面14に相当する面)が上部開口の面方向に対し傾斜しており、これによって面積A>面積Bが実現される。尚、ここで上部開口の「上部」とは、成形型の開口部分を指す便宜上の上下方向であり、本発明の使用時の上下方向と同意ではない。
【0042】
非透湿部成形工程:
上記成形型の上部開口を覆うように1枚の非透湿性の樹脂シートを配置し水平方向(上部開口の面方向)に張った状態で固定する。そして成形型に設置された吸引部から吸引を行うことによって上記樹脂シートが成形型の凹空間を区画する内側面に沿うよう伸長させて深絞り加工を行う。これによって所望形状の非透湿部を得ることができる。
あるいは、上記深絞り加工と並行して、プラグアシストを行うことで非透湿部を製造することもできる。ここでプラグアシストとは、成形型の凹空間に対応する形状のプラグを準備し、上述のとおり成形型に対し配置、固定された樹脂シートを吸引するとともに、凹空間に押し込むよう当該プラグを当該凹空間に嵌め込むことによって、樹脂シートを成形型の凹空間を区画する内側面に沿って伸長させ所望形状の非透湿部を製造する方法である。
【0043】
上述する深絞り加工により、成形型の凹空間に沿わせて樹脂シートは伸長され薄膜化される。特に上述する上部開口に対する対向面(第二側面14に相当する面)が当該上部開口の面方向に対し傾斜している。そのため、当該対向面に沿う樹脂シートは、上部開口を上面としたときに成形型の深さが深い側の方が、浅い側の方より伸長し厚みが小さくなる。そのためかかる製造方法によれば、上述する厚みT1<T2を実現することができる。
【0044】
突縁部成形工程:
上述する非透湿部成形工程において、底面10に連続する樹脂シートであって成形型の上部開口よりも外部に出た残余の部分を、突縁部50として利用することができる。当該残余の部分を所望する幅の突縁部50としてカットすることによって一枚の樹脂シートで外縁56を介して底面10に連続する突縁部50が形成される。かかる突縁部成形工程によれば、使用した樹脂シートの、突縁部50を構成する領域は、実質的に深絞り加工またはプラグアシストの影響を受けない。そのため、突縁部50の厚みおよび平均曲げ硬度は、使用した樹脂シートの厚みおよび平均曲げ硬度と同等となる。また使用した樹脂シートの、深絞り加工またはプラグアシストの影響を受けた領域(即ち、底面10、上面18、第二横側面14、第三横側面16、第四横側面17に相当する領域)は、突縁部50に比べて厚みが小さくなりうる。
【0045】
充填工程:
上述のとおり成形型内に製造された非透湿部に潮解性薬剤40を充填する充填工程を実施する。
【0046】
第一被覆工程、第二被覆工程:
充填工程後、成形型の上部開口を透湿防水シート22で被覆して上記非透湿部を封止する第一被覆工程を実施する。これによって全面が通気側面20である第一横側面12が構成される。続いて、第一被覆工程によって設けられた透湿防水シート22を非透湿性の蓋シート30で被覆して上記非透湿部を密封する第二被覆工程を実施する。第一被覆工程および第二被覆工程は、それぞれ独立した工程として実施されてもよいし、一部または全部が重複するよう実施されてもよい。第一被覆工程および第二被覆工程が重複する具体的な態様としては、たとえば、予め透湿防水シート22および非透湿性の蓋シート30が積層された積層シートを準備し、透湿防水シート22が非透湿部側に向く向きで当該積層シートによって成形型の上部開口を被覆することにより、第一被覆工程および第二被覆工程を同時に実施することができる。
【0047】
尚、上述する充填工程を実施後、第二被覆工程が完了する前に、非透湿部の気体を脱気する脱気工程を実施し、脱気された状態を維持したまま速やかに第二被覆工程を完了してもよい。脱気工程により、たとえば
図3に示される第二横側面14を下側とした除湿器100において、底面10、第三横側面16、第四横側面17、上面18を、紙面上下方向において圧縮させることができる。これによって使用前の状態において、内部空間の容積が減量された除湿器100(図示省略)を提供することができる。このように嵩が減量された除湿器100は、運搬や収納の際に有利である。
除湿器100の嵩を十分に減量させる観点からは、内部空間に収容された潮解性薬剤40が透湿防水シート22に当接するまで脱気を行い、その後速やかに第二被覆工程を完了することが好ましい。
ここで脱気の方法は、非透湿部を構成する樹脂シート(底面10、第三横側面16、第四横側面17、上面18を構成する樹脂シート)を物理的に収縮させて容積を減容させることができる方法であればいずれの方法でもよい。たとえば、吸引機により非透湿部の内部の気体を吸引してもよいし、あるいは、透湿防水シート22と第二横側面14との距離が近づく方向に圧力をかけて非透湿部を物理的に押し潰すことで脱気しても良い。
【0048】
上述する製造方法の例は、除湿器100の製造の一例であり、本発明の除湿器の製造方法を何ら限定するものではない。たとえば、後述する第二実施形態にかかる除湿器120を製造する場合には、除湿器120の非透湿部の形状に合った成形型が準備される。
【0049】
[第一実施形態の変形例]
上述する第一実施形態の除湿器100は、
図3に示すとおり、第二横側面14が底面10の外縁から上面18の外縁まで直線的に伸長するとともに、第一横側面12に対し、第二横側面14が傾斜する。しかし本実施形態における除湿器100はこれに限定されず、たとえば
図5~
図7に示される以下の変形例を包含する。以下に、第一実施形態の変形例について
図5~
図7を用いて説明する。
【0050】
図5は本発明の第一実施形態の第一の変形例である除湿器140に関し、
図5Aは、第一横側面12を上方に向けた状態の斜視図であり、
図5Bは、第三横側面16を正面視した際の側面図である。
除湿器140における第二横側面14は、
図5A、
図5Bにおいて示されるとおり、底面10の外縁から上面18の外縁に向けて少なくとも一部が傾斜することによって、第一切断面S1の面積Aが第二切断面S2の面積Bよりも大きくなるよう構成されている。より具体的には、第二横側面14は、たとえば底面10の外縁から中間部まで第一横側面12と平行し、当該中間部から上面18の外縁まで第一横側面12に対し傾斜していてもよい。
【0051】
図6は本発明の第一実施形態の第二の変形例である除湿器160に関し、
図6Aは、第一横側面12を上方に向けた状態の斜視図であり、
図6Bは、第三横側面16を正面視した際の側面図である。
除湿器160における第二横側面14は、
図6A、
図6Bにおいて示されるとおり、底面10の外縁から上面18の外縁に向けて、緩やかに湾曲し、第一切断面S1から第二切断面S2に向けて連続的に切断面の面積が小さくなるよう構成されている。
【0052】
図7は本発明の第一実施形態の第三の変形例である除湿器180に関し、
図7Aは、第一横側面12を上方に向けた状態の斜視図であり、
図7Bは、第三横側面16を正面視した際の側面図である。
除湿器180における第二横側面14は、
図7A、
図7Bにおいて示されるとおり、第二横側面14が内部空間から外方向に突出する球状面として構成されている。除湿器180の一部において球状面を備えることによって、潮解液を貯留した状態の除湿器180を落下させたときに物理的衝撃を分散させやすく破裂を良好に防止することができる。尚、ここでいう球状面とは、真球の面の一部であってもよいし、非真球であって第一切断面S1と第二切断面S2との間の中間の切断面の面積が、第一切断面S1の面積よりも大きくなる程度に凸状の面を包含する。
【0053】
[第二実施形態]
以下に本発明の第二実施形態にかかる除湿器120について
図4を用いて説明する。
図4Aは、本発明の第二実施形態にかかる除湿器120の第二横側面14側からみた斜視図であり、
図4Bは、
図4Aに示す除湿器120の第二横側面14を正面視した際の側面図である。
【0054】
除湿器120は、第一横側面12に対し第二横側面14が平行であるとともに、第三横側面16と第四横側面17とが非平行である点、および突縁部50に連続する突縁部50’が設けられている点を除き、第一実施形態の除湿器100と同様に構成されている。したがって、以下では除湿器120に関し、除湿器100と相違する点を中心に説明する。除湿器120に関し、除湿器100と同様の構成については適宜第一実施形態における説明が参照される。
【0055】
除湿器120は、
図4Bに示すとおり、第一切断面S1の面積Aが第二切断面S2の面積Bより大きい。除湿器120は、面積A>面積Bを実現する具体的な手段が除湿器100と相違している。
即ち、除湿器120は、第二横側面14の正面視において、第三横側面16を面方向に拡張した第三仮想面S5と、第四横側面17を面方向に拡張した第四仮想面S6とが、接地面Gより上方において交差し、これによって、第一切断面S1の面積Aが第二切断面S2の面積Bよりも大きくなるよう構成されている。尚、第二実施形態では、第一横側面12と第二横側面14とは平行である。
かかる除湿器120は、第二横側面14を下側として接地面Gに置いた際、第一横側面12が水平となり、上下方向に複数個重ねても安定する。そのため、運搬時や収納時に複数の除湿器120をコンパクトに収容できる点で好ましい。
【0056】
また除湿器120は、底面10と第一横側面12との外縁56から延在する突縁部50に加え、かかる突縁部50に連続し、第一横側面12の外縁を周回する突縁部50’が設けられている。
突縁部50’は、たとえば上述する第一実施形態の製造方法において、第三横側面16、第四横側面17、上面18に連続する樹脂シートであって、上述する製造方法における成形型の上部開口よりも外部に出た残余の部分を利用して設けることができる。かかる残余の部分を所望する幅の突縁部50’としてとしてカットすることによって一枚の樹脂シートで、底面10に対し連続する突縁部50に加え、第三横側面16、第四横側面17および上面18に連続する突縁部50’を形成することができる。
第一横側面12全体が透湿防水シート22で構成された通気側面20である除湿器120において、第一横側面12の外縁を全周する突縁部50および突縁部50’は、第一横側面12を構成する透湿防水シート22を取り付けるためのベースとして利用することができる。突縁部50および突縁部50’を上記ベースとして利用する場合には、たとえば、 上記ベースの上面に対し透湿防水シート22の外縁領域を接着し固定すればよい。接着方法は、たとえば超音波溶着法、熱板溶着法、高周波溶着法などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0057】
以上に本発明の第一実施形態および第二実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的および効果を逸脱しない範囲において適宜構成の一部を変更することができる。
たとえば、第二実施形態では、第一横側面12と第二横側面14とが平行であり、かつ第三横側面16と第四横側面17とが非平行である例を示したが、第一切断面S1の面積Aが第二切断面S2の面積Bよりも大きくなる範囲において、第一横側面12と第二横側面14とが非平行であり、かつ第三横側面16と第四横側面17とが非平行である態様を本発明は包含する。
また第一実施形態および第二実施形態では突縁部50が、外縁56の一端から他端まで連続して設けられている例を示した。しかし本発明は、突縁部50の形状についてこれに限定されず、設置状態において、突縁部50の存在により、底面10の外縁56寄りの部分が上方に持ち上げられる範囲において、突縁部50は、外縁56に沿って断続的に設けられた態様、および外縁56の両端部までは到達せず外縁56の中間部にのみ突縁部50が設けられる態様を包含する。
【実施例0058】
以下のとおり本発明の実施例および比較例を実施した。実施例1~実施例4は、突縁部を除き、
図1~
図3に示す除湿器と同様の態様により実施した。突縁部に関してのみ、実施例1~実施例4は、第二実施形態と同様に突縁部(50)および突縁部(50’)を備えるよう構成した。理解容易のため、実施例に関し、適宜各図面と同様の符号を( )内に示しつつ説明する。尚、実施例の製造に関する説明では、成形型に関連する上下方向は、適宜、第一横側面を上方に向けた状態における上下方向を指す。
(実施例1)
図3に示す寸法x1~x4および交差角度θが表1の値となるよう、これに対応した上部開口の所定形状の成形型を準備した。
ポリエチレン系フィルム、ナイロン系フィルム、ポリエチレン系フィルムをこの順で積層してなる複合積層フィルム(厚み200μm、曲げ硬度0.22N)を用い上記成形型の上部開口に配置して固定し、深絞り真空成形法を実施して、第二横側面(14)、第三横側面(16)、第四横側面(17)、底面(10)および上面(18)を備える一面が開口した非透湿部を形成した。上記非透湿部は、底面(10)に対応する面よりも上面(18)に対応する面の面積が小さく、その結果、第一切断面(S1)が第二切断面(S2)よりも大きくなるよう設計された。また、底面(10)、第三横側面(16)、第四横側面(17)および上面(18)それぞれにおいて、上部開口を区画する外縁に突縁部(50)および突縁部(50’)が確保できるように、複合積層フィルムの未延伸部分を残した。
上述の通り得た非透湿部に潮解性薬剤として塩化カルシウム・二水和物295gを充填した。
次いでポリオレフィン系微多孔膜樹脂シートの両面に不織布が貼り合わされた透湿防水シート(22)を用い以下のとおり第一横側面(12)を形成し、非透湿部を封止した。上記不織布としては、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂、鞘がポリエチレン系樹脂からなる鞘芯構造の人口糸を用いて製造された不織布を使用した。具体的には、透湿防水シート(22)で上部開口を覆い、複合積層フィルムの未延伸部分に対し熱溶着して積層した。そして、上部開口を区画する外縁に残された複合積層フィルムの未延伸部分を、長方形の上部開口の短辺に沿って幅寸法約7.5mm、長辺に沿って幅寸法約9mmだけ残し、残余の部分を切り離した。これによって底面(10)に連続する幅寸法約7.5mmの突縁部(50)と、第三横側面(16)および第四横側面(17)に連続する幅寸法約9mmの突縁部(50’)と、上面18に連続する幅寸法約7.5mmの突縁部(50’)が形成された。製造時、突縁部(50)および突縁部(50’)は、底面(10)の面方向に対し約90度の方向に延在するよう形成された。
続いて、少なくとも上部開口を覆うよう、蓋シート(30)を透湿防水シート(22)に積層し接着して内部を密封状態とした。尚、蓋シート(30)は、一方の面に容易に剥離可能な易剥離性接着層を設けた非透湿性の非透湿シートを用い、当該接着層により蓋シート(30)を透湿防水シート(22)に貼り合わせた。
以上のとおり、第二横側面(14)、第三横側面(16)、第四横側面(17)、底面(10)および上面(18)を備える非透湿部と、第一横側面(12)として透湿防水シート(22)を有し、内部に潮解性薬剤が収容された除湿器(100)を製造し、これを実施例1とした。
【0059】
上述のとおり製造された実施例1の蓋シート(30)を剥離して使用を開始した。そして実施例1に収容された潮解性薬剤(40)が全て潮解液(42)になって平衡に達したことを確認し使用を終了した。
【0060】
実施例1の設計寸法(成形型の寸法)である寸法x1~x4、設計寸法および突縁部の幅寸法を考慮した高さ寸法、ならびに、設計寸法に基づく交差角度、内容積、透湿面積、床専有面積および最大幅を表1に示した。
尚、高さ寸法は、実施例1を接地面に設置した状態で、最も高い位置の寸法である。
また最大幅は、実施例1を接地面に設置した状態で上面視し、長手方向(即ち
図3Aにおけるx3方向)を決定し、当該長手方向に直交する方向を幅方向(即ち
図3Aにおけるx1方向)とし、実施例1の幅方向の最大となる部分の寸法である。
また床専有面積は、実施例1を接地面に設置した状態で上面視した際の長手方向(即ち
図3Aにおけるx3方向)の最大となる部分の寸法と、上記最大幅の値を乗じた値である。
【0061】
実施例1を構成するために用いた上記複合積層フィルムにおいて無作為に選択された3か所の厚みを実測し、実測値を算術平均することによって複合積層フィルムの平均厚みを求め、これを突縁部(50)の平均厚みとした。
また上記複合積層フィルムを縦2.5cm×横8cmに切り取った試料を3枚準備し、各試料を上述する突縁部の平均曲げ硬度の測定方法に倣って測定し、それぞれの測定値を算術平均することによって、当該複合積層フィルムの平均曲げ硬度を求め、これを突縁部(50)の平均曲げ硬度とした。
上述のとおり求められた突縁部(50)の平均厚みおよび平均曲げ硬度は、表1に示す。
【0062】
使用が終了した状態において、上述する方法で、第一切断面S1と第二横側面(14)とが交わる部分において厚みT1を求めるとともに、第二切断面S2と第二横側面(14)とが交わる部分において厚みT2を求め、下記のとおり評価した。
〇・・・厚みT1が厚みT2未満であった。
×・・・厚みT1が厚みT2以上であった。
【0063】
(実施例2~実施例4)
表1に示す内容に変更したこと以外は、実施例1と同様に除湿器を製造し、それぞれ実施例2~実施例4とした。尚、実施例2および実施例4では、ポリエチレン系フィルム、ナイロン系フィルム、ポリエチレン系フィルムをこの順で積層してなる複合積層フィルム(厚み300μm、曲げ硬度0.68N)を用いて深絞り加工により非透湿部を形成した。実施例2~実施例4についても、実施例1と同様に設計寸法等を表1に示すとともに、突縁部(50)の平均厚みおよび平均曲げ硬度を測定し、表1に示した。また実施例1と同様に厚みT1と厚みT2の関係を評価した。
【0064】
(比較例1)
縦寸法23cm、横寸法15cmの透湿防水シートと、同寸法の非透湿シートを準備した。透湿防水シートおよび非透湿シートは、寸法以外は実施例に用いた透湿防水シート(22)と同様のものを用いた。
上述する透湿防水シートと非透湿シートとを対向して配置し、2枚のシートの下辺側に2つ折りにした非透湿シートを設けて底部を設けた。そして内部に潮解性薬剤として塩化カルシウム・二水和物295gを収容した状態で2枚のシートの周端部を約10mm幅で互いに熱溶着した。その後、透湿防水シートに対し、容易に剥離可能な易剥離性接着層を設けた非透湿性の蓋シートを積層して密封し、スタンディングパウチ型の除湿器を製造し、これを比較例1とした。
【0065】
上述のとおり製造された比較例1の蓋シートを剥離して使用を開始し、比較例1に収容された潮解性薬剤が全て潮解液になって平衡に達したことを確認し使用を終了した。設計寸法に基づく比較例1の高さ寸法、内容積、透湿面積、床専有面積、最大幅を表1に示した。
【0066】
(比較例2)
内寸が縦寸法10.9cm、横寸法17.2cm、高さ4.6cmのタンクタイプの除湿器を製造し、内部に潮解性薬剤として塩化カルシウム・二水和物295gを収容し比較例2とした。尚、比較例2は、従来のタンクタイプの除湿器であり、透湿防水シートを上面側となるよう接地面に設置して使用した。設計寸法に基づく比較例2の高さ寸法、内容積、透湿面積、床専有面積、最大幅を表1に示した。
【0067】
実施例はいずれも、第一切断面S1が第二切断面S2よりも大きく、潮解液が満たされた状態で、下方重心とすることができたため、安定感が良好であった。また実施例はいずれも、底面(10)と第一横側面(12)(透湿側面)との境界において底面(10)から延伸する突縁部(50)が設けられており、除湿器(100)を接地面に設置した際に、底面(10)の第一横側面(12)寄りの領域が接地面から浮いた状態となり当該底面(10)が第一横側面(12)から第二横側面(14)に対し下り傾斜した状態となった。そのため、実施例は、第一横側面側への転倒が良好に防止される姿勢で接地面に設置することができた。
【0068】
また上述するとおり実施例はいずれも底面(10)が第一横側面(12)から第二横側面(14)に対し下り傾斜している上、厚みT1および厚みT2の関係がT1<T2の関係を満たしていた。そのため、使用終了後の状態において、張り出し部(52)が形成されており、透湿防水シート(22)の下方領域(54)における潮解液の荷重負荷が軽減されていることが推察された。
【0069】
内容積が本発明とほぼ同等である比較例1は、高さ寸法が実施例1~4に比べ有意に高く、かつ、2つ折りの底部が透湿防水シートおよび非透湿シートの端部より高い位置にあるため、設置姿勢が不安定であった。
【0070】
内容積を実施例とほぼ同等に設計された比較例2は、床専有面積が実施例1~4よりも有意に大きくなり、実施例に比べ設置に場所を取られるため、狭い隙間には不適であった。
【0071】
【0072】
上述する本発明は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)接地面に対し対向する底面と、
通気側面を有する第一横側面と、
上記第一横側面に対向する第二横側面と、
上記第一横側面と上記第二横側面との間を亘る第三横側面および第四横側面と、有し、
少なくとも上記底面、上記第一横側面、上記第二横側面、上記第三横側面および上記第四横側面によって閉じられた内部空間に潮解性薬剤が収容されており、
上記第一横側面と上記底面とが隣接する外縁において、下方に向けて延在する突縁部が設けられており、かつ
上記内部空間に潮解液が満たされた状態において、上記第一横側面の最低位から最高位に向けて引いた第一仮想線の長さを100%としたときに、上記最低位から20%長さにおいて上記第一仮想線を法線とする仮想面の面方向に上記内部空間を切断してなる第一切断面の面積が、上記最低位から70%長さにおいて上記第一仮想線を法線とする仮想面の面方向に上記内部空間を切断してなる第二切断面の面積よりも大きいことを特徴とする除湿器。
(2)上記第三横側面の正面視において、
上記第一横側面を面方向に拡張した第一仮想面と、
上記第二横側面を面方向に拡張した第二仮想面とが、上記接地面より上方において交差する上記(1)に記載の除湿器。
(3)上記第一横側面全体が透湿防水シートで構成された上記通気側面であり、
上記第一切断面と上記第二横側面とが交わる位置の上記第二横側面の厚みT1、および上記第二切断面と上記第二横側面とが交わる位置の上記第二横側面の厚みT2が、T1<T2である上記(1)または(2)に記載の除湿器。
(4)第二横側面の正面視において、
上記第三横側面を面方向に拡張した第三仮想面と、
上記第四横側面を面方向に拡張した第四仮想面とが、上記接地面より上方において交差する上記(1)または(2)に記載の除湿器。
(5)上記突縁部の平均曲げ硬度が0.08N以上4.00N以下である上記(1)または(2)に記載の除湿器。
(6)上記突縁部の平均曲げ硬度が0.08N以上4.00N以下であり、
上記突縁部の平均曲げ硬度が、上記第二横側面の最大曲げ硬度よりも大きい上記(1)または(2)に記載の除湿器。
(7)上記第一横側面全体が透湿防水シートで構成された上記通気側面であり、
上記突縁部が上記第一横側面の外縁全周に設けられている上記(1)または(2)に記載の除湿器。