(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098917
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法、及びドライバ支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002730
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大屋 魁
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 信
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF27
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両の周囲に存在する複数のリスク対象に関する情報をドライバに対して適切に通知することのできる技術を提供すること。
【解決手段】本開示は、車両との衝突のリスクを包含するリスク対象が存在する場合に車両のドライバに対する支援を行う支援装置を提供する。本開示の支援装置は、ドライバに対して情報を通知する第1通知装置と、ドライバに対して情報を通知する、第1通知装置と異なる第2通知装置と、1又は複数のプロセッサとを備える。1又は複数のプロセッサは、車両の周囲に存在するリスク対象を認識する認識処理と、認識処理によって認識された認識リスク対象についての情報をドライバに対して通知する通知処理と、を実行する。通知処理は、認識リスク対象が複数存在する場合に、認識リスク対象の一部又は全部についての情報を、第1通知装置及び第2通知装置に分けて通知することを含む。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバに対して、前記車両との衝突のリスクを包含するリスク対象が存在する場合の支援を行う支援装置であって、
前記ドライバに対して情報を通知する装置として構成される第1通知装置と、
前記ドライバに対して情報を通知する装置であって、前記第1通知装置と異なる装置として構成される第2通知装置と、
1又は複数のプロセッサと
を備え、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記車両の周囲に存在する前記リスク対象を認識する認識処理と、
前記認識処理によって認識された認識リスク対象についての情報を前記ドライバに対して通知する通知処理と、
を実行し、
前記通知処理は、前記認識リスク対象が複数存在する場合に、前記認識リスク対象の一部又は全部についての情報を、前記第1通知装置及び前記第2通知装置に分けて通知することを含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の支援装置であって、
前記第2通知装置は、前記第1通知装置とは異なる通知方法によって情報を通知する装置として構成される
ことを特徴とする支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の支援装置であって、
前記第1通知装置及び前記第2通知装置は、視覚によって情報を通知する装置として構成される
ことを特徴とする支援装置。
【請求項4】
請求項3に記載の支援装置であって、
前記第1通知装置は、画面表示によって情報を通知するディスプレイ装置であり、
前記第2通知装置は、発光によって情報を通知する発光装置である
ことを特徴とする支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の支援装置であって、
前記ドライバに対して情報を通知する装置であって、前記第1通知装置及び前記第2通知装置と異なる装置として構成される第3通知装置を更に備え、
前記通知処理は、前記認識リスク対象が3つ以上存在する場合に、前記認識リスク対象の一部又は全部についての情報を、前記第1通知装置、前記第2通知装置、及び前記第3通知装置に分けて通知することを含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項6】
請求項4に記載の支援装置であって、
前記1又は複数のプロセッサは、
前記認識リスク対象が複数存在する場合に、前記認識リスク対象のそれぞれについて、前記ドライバに対する情報の通知の優先度を算出する優先度算出処理を更に実行し、
前記通知処理は、前記認識リスク対象が複数存在する場合に、前記優先度算出処理によって算出された優先度に基づいて、前記認識リスク対象の一部又は全部についての情報の通知を行う装置を決定することを含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の支援装置であって、
前記通知処理は、前記認識リスク対象が複数存在する場合に、複数の前記認識リスク対象のうち、前記優先度の最も高い認識リスク対象が前記第1通知装置によって通知されるように、前記認識リスク対象の一部又は全部を前記第1通知装置及び前記第2通知装置に分けて通知することを含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項8】
請求項6に記載の支援装置であって、
前記優先度算出処理は、前記認識リスク対象の種類を表すリスク対象種別に基づいて優先度を算出することを含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項9】
請求項8に記載の支援装置であって、
前記リスク対象種別は、前記車両の周囲に存在することが検出されている顕在リスク対象、及び前記車両の周囲に存在する可能性が推定される潜在リスク対象を含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項10】
請求項9に記載の支援装置であって、
前記リスク対象種別は、前記車両の周囲に存在し現時点ではリスクではないが今後リスクとなり得る準顕在リスク対象をさらに含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項11】
請求項9に記載の支援装置であって、
前記優先度算出処理は、前記顕在リスク対象が前記車両に向けて移動する確率を表す移動確率に基づいて前記顕在リスク対象の前記優先度を算出することを含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項12】
請求項4に記載の支援装置であって、
前記通知処理は、前記認識リスク対象が1つのみ存在する場合に、前記認識リスク対象についての情報を前記第1通知装置によって通知することを含む
ことを特徴とする支援装置。
【請求項13】
請求項3に記載の支援装置であって、
前記第1通知装置は、前記ドライバから前記第1通知装置を見た方向と前記車両の進行方向との成す角が、前記ドライバから前記第2通知装置を見た方向と前記車両の進行方向との成す角と比較して小さくなる場所に配置される
ことを特徴とする支援装置。
【請求項14】
車両のドライバに対して、前記車両との衝突のリスクを包含するリスク対象が存在する場合の支援を行う支援方法であって、
前記車両の周囲に存在する前記リスク対象を認識することと、
認識された前記リスク対象が複数存在する場合に、前記認識されたリスク対象の一部又は全部についての情報を、前記ドライバに対して情報を通知するための装置である第1通知装置と、前記ドライバに対して情報を通知するための装置であって前記第1通知装置とは異なる第2通知装置と、に分けて通知することと、
を含むことを特徴とする支援方法。
【請求項15】
車両との衝突のリスクを包含するリスク対象が存在する場合に、前記車両のドライバに対する支援のための処理をコンピュータに実行させるドライバ支援プログラムであって、
前記車両の周囲に存在する前記リスク対象を認識する処理と、
認識された前記リスク対象が複数存在する場合に、前記認識されたリスク対象の一部又は全部についての情報を、前記ドライバに対して情報を通知するための装置である第1通知装置と、前記ドライバに対して情報を通知するための装置であって前記第1通知装置とは異なる第2通知装置と、に分けて通知する処理と、
を前記コンピュータに実行させるように構成された
ことを特徴とするドライバ支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のドライバに対して、車両との衝突のリスクを包含する物標が存在する場合の支援を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の周囲における警戒すべき箇所としての警戒対象の情報をドライバ(運転者)に提供する運転支援装置が開示されている。運転支援装置は、車両の周囲を撮像して得られる撮像画像を受け取って、複数の警戒対象の撮像画像を含む1つの表示用画像を生成する。表示用画像は表示装置に表示され、ドライバに対して警戒対象についての情報を通知する。このとき、優先順位の高い警戒対象については、撮像画像を色付き枠で囲うなどすることで情報が強調して表示される。
【0003】
なお、本開示の技術分野における出願時の技術レベルを示す文献としては、上記特許文献1の他にも下記の特許文献2を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-13369号公報
【特許文献2】米国特許第9272708号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両のドライバを支援するため、車両との衝突のリスクを包含するリスク対象についての情報をドライバに対して通知することを考える。特に、リスク対象が複数存在する場合に、当該複数のリスク対象についての情報をどのようにドライバに対して通知するかを考える。1つの方法として、上記の従来技術のように、1つの表示装置を用いて複数のリスク対象に関する情報を通知することが考えられる。しかし、車両の周囲に存在する複数のリスク対象に関する情報を全て1つの装置から通知すると、ドライバにとっては情報過多の状態となり、リスク対象に対してどのように対処すべきか判断が間に合わなくなる恐れがある。
【0006】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものである。本開示は、ドライバにとって情報量が多すぎる状態や少なすぎる状態となることを防ぎながら、車両の周囲に存在する複数のリスク対象に関する情報をドライバに対して適切に通知することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は支援装置を提供する。本開示の支援装置は、車両との衝突のリスクを包含するリスク対象が存在する場合に車両のドライバに対する支援を行う支援装置である。本開示の支援装置は、ドライバに対して情報を通知する装置として構成される第1通知装置と、ドライバに対して情報を通知する装置として構成される第2通知装置と、1又は複数のプロセッサとを備える。1又は複数のプロセッサは、車両の周囲に存在するリスク対象を認識する認識処理と、認識処理によって認識された認識リスク対象についての情報をドライバに対して通知する通知処理と、を実行する。
【0008】
ここで、第2通知装置は、第1通知装置とは異なる装置として構成される。また、通知処理は、認識リスク対象が複数存在する場合に、認識リスク対象の一部又は全部についての情報を、第1通知装置及び第2通知装置に分けて通知することを含む。
【0009】
本開示の支援装置において、第1通知装置及び第2通知装置はそれぞれ、画面表示によって情報を通知するディスプレイ装置、及び発光によって情報を通知する発光装置であってもよい。
【0010】
本開示の支援装置において、通知処理は、認識リスク対象が3つ以上存在する場合に、認識リスク対象の一部又は全部についての情報を、第1通知装置、第2通知装置、及び第3通知装置に分けて通知することを含んでもよい。ここで、第3通知装置は、ドライバに対して情報を通知する装置として構成される装置であり、第1通知装置及び第2通知装置とは異なる装置である。
【0011】
本開示の支援装置において、第1通知装置は、ドライバから第1通知装置を見た方向と車両の進行方向との成す角が、ドライバから第2通知装置を見た方向と車両の進行方向との成す角と比較して小さくなる場所に配置されてもよい。
【0012】
本開示は支援方法を提供する。詳しくは、車両との衝突のリスクを包含するリスク対象が存在する場合に車両のドライバに対する支援を行う支援方法を提供する。本開示の支援方法は、以下の2つのステップを含む。第1のステップは、車両の周囲に存在するリスク対象を認識するステップである。第2のステップは、認識されたリスク対象が複数存在する場合に、認識されたリスク対象の一部又は全部についての情報を第1通知装置と第2通知装置とに分けて通知するステップである。ここで、第1通知装置及び第2通知装置は、ドライバに対して情報を通知するための装置である。また、第2通知装置は第1通知装置とは異なる装置である。
【0013】
本開示はドライバを支援するドライバ支援プログラムを提供する。本開示のドライバ支援プログラムは、車両との衝突のリスクを包含するリスク対象が存在する場合に、車両のドライバに対する支援のための処理をコンピュータに実行させるプログラムである。本開示のドライバ支援プログラムは、以下の処理をコンピュータに実行させる。第1の処理は、車両の周囲に存在するリスク対象を認識する処理である。第2の処理は、認識されたリスク対象が複数存在する場合に、認識されたリスク対象の一部又は全部についての情報を、第1通知装置と第2通知装置とに分けて通知する処理である。ここで、第1通知装置及び第2通知装置は、ドライバに対して情報を通知するための装置である。また、第2通知装置は第1通知装置とは異なる装置である。
【発明の効果】
【0014】
本開示の技術によれば、車両の周囲に複数のリスク対象が認識される場合、当該複数のリスク対象の一部又は全部についての情報は、少なくとも2つの装置に分けて通知される。認識された複数のリスク対象についての情報が、全て1つの装置から通知されることがなくなるため、ドライバが情報過多の状態に陥ることを防ぐことができる。このように、本開示の技術によれば、自車両周辺に複数のリスク対象が存在する場合にも、ドライバに対して適切な通知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態に係る支援装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】本実施の形態に係る支援装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図6】支援装置の機能構成の別の例を示すブロック図である。
【
図7】移動確率を算出するための指標の例を説明するための図である。
【
図8】移動確率を算出するための指標の別の例を説明するための図である。
【
図9】本実施の形態に係る支援装置による通知の様子の例を示す概略図である。
【
図10】本実施の形態に係る支援装置が行う処理の例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施の形態に係る支援装置による通知の様子の例を示す概略図である。
【
図12】本実施の形態に係る支援装置による通知の様子の例を示す概略図である。
【
図13】本実施の形態に係る支援装置による通知の様子の例を示す概略図である。
【
図14】本実施の形態に係る支援装置による通知の様子の例を示す概略図である。
【
図15】本実施の形態に係る支援装置による通知の様子の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0017】
1.支援装置の説明
本実施形態に係る支援装置は、自車両の周囲にリスク対象が存在する場合に、車両のドライバに対する支援を行う。ここでいうリスク対象は、車両との衝突のリスクを包含する物標である。支援装置による支援は、車両の周囲に存在するリスク対象についての情報を車両のドライバに対して通知することを含み、自車両とリスク対象との衝突のリスクを低減させるために行われる。
【0018】
図1は、本実施形態に係る支援装置10による支援の対象となる車両1の構成例を示すブロック図である。車両1は、支援装置10、認識センサ20、車両状態センサ30、及びアクチュエータ40を備える。認識センサ20、車両状態センサ30、及びアクチュエータ40は、車両1に搭載されている。支援装置10は、車両1に搭載されてもよいし、車両1と外部装置とに分散的に配置されてもよい。つまり、支援装置10の一部は車両1の外部の外部装置に配置され、リモートで車両1に対する支援を行ってもよい。
【0019】
支援装置10は、認識センサ20、車両状態センサ30、及びアクチュエータ40と互いに情報を通信することができるように構成されている。例えば、支援装置10は、これらの装置と車載ネットワークで接続される。
【0020】
認識センサ20は車両1の周囲の状況を認識(検出)する。認識センサ20としては、カメラ、ミリ波レーダ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等が例示される。支援装置10は、認識センサ20と通信を行うことで認識センサ20が検出する情報を取得することができる。支援装置10によって取得された情報は、記憶装置102に一時的に記憶される。
【0021】
車両状態センサ30は車両1の状態を検出する。車両状態センサ30は、速度センサ、加速度センサ、ヨーレートセンサ、舵角センサ等を含む。支援装置10は、車両状態センサ30と通信を行うことで、車両状態センサ30が検出する情報を取得することができる。支援装置10によって取得された情報は、記憶装置102に一時的に記憶される。
【0022】
アクチュエータ40は、車両1の車輪を操舵する操舵アクチュエータ、車両1を駆動する駆動アクチュエータ、及び車両1を制動する制動アクチュエータを含む。支援装置10は、ドライバに対する情報の通知に加えて、アクチュエータ40を動作させることでドライバに対する支援を行ってもよい。
【0023】
支援装置10は、処理部100としての1又は複数のプロセッサ101(以下、単にプロセッサ101と呼ぶ)及び1又は複数の記憶装置102(以下、単に記憶装置102と呼ぶ)、第1通知装置200、並びに第2通知装置300を備える。支援装置10の処理部100は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)であってもよい。
【0024】
プロセッサ101は各種処理を実行する。記憶装置102は各種プログラム及び各種データを格納する。プロセッサ101が記憶装置102に格納されたプログラムを実行することにより、ドライバへの支援を行うための処理を含む、支援装置10による各種の処理が実現される。
【0025】
第1通知装置200及び第2通知装置300は、ドライバに対して情報を通知するためのHMIである。第1通知装置200及び第2通知装置300はそれぞれ異なるハードウェアを有する装置として構成され、それぞれが単独でドライバへの通知を行うことができる。第1通知装置200及び第2通知装置300はドライバに対して情報を通知することができる装置であればよく、装置の形態及び通知方法は限定されない。
【0026】
通知方法の例としては、画面表示、発光、音声、振動、等が挙げられる。例えば、第1通知装置200及び第2通知装置300のいずれかあるいは両方は、ドライバへの情報を画面に表示するディスプレイ装置であってもよいし、ヘッドアップディスプレイであってもよいし、装置の一部を発光させることでドライバに情報を伝える発光装置であってもよい。これらの装置は視覚によってドライバに情報を通知することができる。あるいは、第1通知装置200及び第2通知装置300のいずれか一方は、音声によってドライバに情報を通知するスピーカであってもよい。
【0027】
また、第1通知装置200及び第2通知装置300は、同じ通知方法によって情報の通知を行う装置であってもよいし、それぞれ異なる通知方法によって情報の通知を行う装置であってもよい。同じ通知方法によって情報の通知を行う場合においても、それぞれの形状や大きさは異なっていてもよい。異なる通知方法をとる装置の例として、第1通知装置200が視覚によってドライバに情報を伝える装置であり、第2通知装置300がスピーカであってもよい。あるいは、第1通知装置200がディスプレイ装置であり、第2通知装置300が発光装置であってもよい。同じ通知方法をとる装置の例として、第1通知装置200及び第2通知装置300は、画面の大きさや形状がそれぞれ異なるディスプレイ装置であってもよい。あるいは、第1通知装置200及び第2通知装置300は、大きさや形状、発光のパターンなどがそれぞれ異なる発光装置であってもよい。
【0028】
支援装置10は、第1通知装置200及び第2通知装置300のいずれか又は両方を用いて、車両1のドライバに対して情報を通知することができる。
図2を用いて、ドライバに対する情報の通知を行うための、支援装置10の機能構成の例について説明する。なお、支援装置10による情報の通知先には車両1の乗員が含まれてもよい。
【0029】
図2に示されるように、支援装置10の処理部100は、機能部として認識部111及び通知制御部112を備える。これらの機能部は、プロセッサ101が記憶装置102に格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0030】
認識部111は、車両1の周囲に存在するリスク対象を認識する認識処理を行う。認識部111は、認識センサ20及び車両状態センサ30から情報を取得することでリスク対象を認識することができる。以下、本明細書において、認識部111が認識処理によって認識したリスク対象を認識リスク対象と呼ぶ。
【0031】
認識リスク対象についての情報は、認識部111から通知制御部112に送られる。通知制御部112は、第1通知装置200及び第2通知装置300を制御して、認識リスク対象に関する情報をドライバに通知する通知処理を行う。
【0032】
認識リスク対象が1つのみ存在する場合の通知の態様は任意である。一方、認識リスク対象が複数存在する場合には、通知制御部112は、認識リスク対象の一部又は全部についての情報を、第1通知装置200と第2通知装置300とに分けて通知させる。つまり、複数存在する認識リスク対象の一部についての情報は第1通知装置200から通知され、残りの認識リスク対象の少なくとも一部についての情報は第2通知装置300から通知される。
【0033】
複数の認識リスク対象が存在する場合に、このように2つの装置に情報が分けて通知されることによる効果について説明する。比較例として、認識リスク対象が複数存在する場合に、1つの装置のみを用いてドライバに対する情報の通知を行うことを考える。
【0034】
まず、複数の認識リスク対象についての情報を全て1つの装置からドライバに通知することを考える。この場合、ドライバにとっては情報過多の状態となってしまう恐れがある。すなわち、1つの装置の中で提示される情報が多すぎることで情報の取捨選択が困難となり、リスク対象への対応がかえって遅れることにもなりかねない。
【0035】
そこで今度は、複数の認識リスク対象のうちの1つのみについての情報をドライバに対して通知することを考える。この場合、ドライバにとって情報過多の状態となることは防ぐことができる。しかし、ドライバにとっては認識リスク対象が1つしか存在しないために1つのみしか通知されていないのか、それとも本当は複数存在するのかを通知から判断することが難しくなる。そのため、通知の対象となっていないリスク対象に気付きにくくなり、これらへの対応は遅れる恐れがある。
【0036】
一方、本実施の形態においては、認識リスク対象が複数存在する場合、認識リスク対象についての情報は第1通知装置200と第2通知装置300とに分けて通知される。全ての認識リスク対象に関する情報が1つの装置によって提示されることがないため、ドライバが情報過多の状態となることを防ぐことができる。また、片方の装置から通知されなかった情報の少なくとも一部は、もう片方の装置によってドライバに通知される。そのため、片方の装置による通知の対象となったリスク対象以外にもリスク対象が存在することをドライバに気付かせることができる。こうして、本実施形態に係る支援装置によれば、認識リスク対象に関する情報をドライバに対して適切に通知することができる。
【0037】
2.実施形態の例-リスク対象種別
以下、支援装置10が上述のような通知を行うための実施形態の例について説明する。まずは、認識部111がどのように物標をリスク対象と認識するかについて、リスク対象の種類と併せて説明する。
【0038】
リスク対象の種類を表すリスク対象種別は、顕在リスク対象、準顕在リスク対象、及び潜在リスク対象を含む。
図3から
図5を用いて、これら3つのリスク対象種別について説明する。
【0039】
顕在リスク対象及び準顕在リスク対象となり得る物標は、車両1の周囲に存在することが実際に検出されている物標である。支援装置10は、認識センサ20によって、顕在リスク対象又は準顕在リスク対象となりうる物標を検出することができる。例えば、支援装置10は、認識センサ20に含まれる前方カメラの画像を取得することで、車両1の前方に存在する物標を検出することができる。
【0040】
まず、顕在リスク対象について説明する。顕在リスク対象は、車両1の周囲に存在することが検出された物標のうち、なりゆきで衝突すると判断される物標、つまり車両1が現在の車速のまま現在と同じ向きに走行を続けた場合には衝突することが推定される物標である。例として、
図3の上図には歩行者2が顕在リスク対象として認識された場面が、
図3の下図には他車両3及び歩行者4が顕在リスク対象として認識された場面が示されている。
【0041】
歩行者2は、信号のない横断歩道を横断中の歩行者である。車両1が現在の向き及び車速のまま走行を続けた場合、歩行者2と衝突することが推定される。そのため、歩行者2は顕在リスク対象として認識される。
【0042】
顕在リスク対象は、同時に2つ以上認識されてもよい。
図3の下図における他車両3は、車両1の前方で停車中の車両である。車両1が現在の向き及び車速のまま走行を続けた場合、車両3と衝突することが推定される。そのため、車両3は顕在リスク対象として認識される。また、車両1が車両3の側方を通過して走行を続けた場合、車両3の更に前方にいる歩行者4との衝突する可能性がある。そのため、歩行者4についても顕在リスク対象として認識される。
【0043】
なりゆきで衝突するか否かの判断には、衝突余裕時間が用いられてもよい。例えば、支援装置10は、車両1の周囲に検出された物標のうち衝突余裕時間が閾値以下となる物標を顕在リスク対象として認識してもよい。衝突余裕時間は、顕在リスク対象となる物標が検出された時点から、衝突すると推定される時点までの時間である。
【0044】
衝突余裕時間の算出には、車両1の周囲で検出された物標の種類や、車両1及び当該物標の位置、速度、加速度、向き等についての情報が用いられる。支援装置10は、認識センサ20及び車両状態センサ30からこれらの情報を取得することができる。
【0045】
例えば、
図3の下図の場面において、支援装置10は、認識センサ20のカメラやLiDARによって車両3と自車両1との距離についての情報を取得することができる。また、支援装置10は、車両状態センサ30の車速センサから車両1の車速を取得することができる。そして、支援装置10は、これらの情報を基に、車両1が現在の向き及び車速で走行を続けた場合に車両3の位置に到達するまでの時間、すなわち衝突余裕時間を算出することができる。検出された物標が歩行者2や歩行者4の場合についても同様に、支援装置10は、認識センサ20や車両状態センサ30から取得される情報に基づいて衝突余裕時間を算出することができる。こうして算出された衝突余裕時間が閾値以下の場合、支援装置10は検出した物標を顕在リスク対象として認識する。
【0046】
リスク対象となり得る物標として代表的なものは、人、他車両、自動二輪車、自転車等の移動体である。ただし、顕在リスク対象になり得る物標には、移動体の他に、柵、電柱等の構造物も含まれる。
【0047】
次に、準顕在リスク対象について説明する。上述のように、準顕在リスク対象になり得る物標は、車両1の周囲に存在することが検出されている物標である。このうち、現時点においてなりゆきで衝突するとは判断されないが、その後の動きの変化によっては車両1との衝突のリスクを生じさせ得る移動体が準顕在リスク対象として認識される。つまり、準顕在リスク対象は、現時点ではリスクではないが今後リスクとなり得る移動体である。
【0048】
図4の上図には、準顕在リスク対象の例として歩行者5が示されている、歩行者5は路肩を歩行中であり、車両1は歩行者5の側方を通過しようとしている。現時点では歩行者5は路肩を歩行し続けると予測され、車両1と衝突するとは推定されない。しかし、もし歩行者5が突然向きを変えて車道に飛び出したとすれば、車両1との衝突の可能性が生じ得る。つまり、歩行者5は現時点ではリスクではないが、予測の範囲を超えた動きをしてリスクに変化する可能性がある。そのため、歩行者5は準顕在リスク対象として認識される。
【0049】
図4の下図には、準顕在リスク対象の例として他車両6が示されている、車両6は対向車線を走行中であり、現時点では車両1と衝突するとは推定されない。しかし、車両6は、工事現場を避けようとして動きを変化させる可能性がある。車両6が動きを変化させて車両1が走行する車線にはみ出してくれば、車両1との衝突の可能性を生じさせ得る。車両6は現時点でリスクと判断される物標ではないが今後リスクになり得るため、準顕在リスク対象として認識される。
【0050】
支援装置10は、認識センサ20、車両状態センサ30、及び記憶装置102から、車両1及び車両1の周囲に検出された移動体の、現在及び過去の位置、速度、加速度、種類、向き等の情報を取得する。そして、これらの情報を総合的に判断し、検出した移動体がなりゆきで衝突するとは判断されず、かつ今後リスクになる可能性があると判断されれば、当該移動体を準顕在リスク対象として認識する。あるいは、支援装置10は、車両1の周囲に検出された移動体のうち、顕在リスク対象として認識されなかった移動体について、後述する移動確率を算出し、移動確率が所定値以上の場合に当該移動体を準顕在リスク対象として認識してもよい。
【0051】
最後に、潜在リスク対象について説明する。潜在リスク対象は、実際に検出されているわけではないが、車両1の周囲に存在する可能性が推定される移動体である。すなわち、潜在リスク対象はいわば架空の移動体である。潜在リスク対象は、車両1から見て死角にあたる位置から突然現れる可能性があり、現れた場合には車両1との衝突の可能性を生じさせ得る。
【0052】
図5には、車両1が見通しの悪い交差点を通過しようとする様子が示されている。交差点には車両1から見た死角が存在し、死角には移動体7が存在する可能性が推定されている。この移動体7が支援装置10によって認識されている潜在リスク対象である。移動体7は現時点で認識センサ20等によって存在が検出されているわけではなく、実際に存在するかどうか、また実在する場合の移動体の種類は現時点では不明である。しかし、もし移動体7が実際に存在して死角から急に飛び出してきたとすれば、車両1との衝突の可能性を生じさせ得る。
【0053】
支援装置10は、例えば、認識センサ20のLiDARやカメラ等によって死角を作り出す障害物や構造物を検出することができる。そして、支援装置10は、車両1から見て死角に当たる位置に移動体が存在する可能性が推定されれば、これを潜在リスク対象として認識する。
【0054】
3.実施形態の例-優先度
図6に示す実施形態では、支援装置10の処理部100は、認識部111及び通知制御部112に加えて、優先度算出部113を備える。優先度算出部113は、認識リスク対象が複数存在する場合、それぞれの認識リスク対象について優先度を算出する優先度算出処理を実行する。
【0055】
優先度算出部113が算出する優先度は、ドライバへの情報の通知の優先度である。優先度算出部113は、リスク対象種別に基づいて優先度を算出することができる。
【0056】
優先度の算出方法の1つ目の例を説明する。1つ目の例では、優先度は、リスク対象種別ごとに決まった値、または決まった範囲の値となるように決められる。ドライバは、実在することが確実ではない認識リスク対象よりも、実際に存在している認識リスク対象に優先的に対応すべきであると考えられる。また、その中でも、車両1との衝突が現時点で推定されている認識リスク対象に対して特に優先して対応すべきであると考えられる。そこで、1つ目の例では、大きいものから順に顕在リスク対象、準顕在リスク対象、潜在リスク対象となるように優先度が決められる。
【0057】
2つ目の例では、それぞれのリスク対象種別に応じた指標を用いて優先度が算出される。包含する車両1との衝突のリスクが大きいリスク対象ほど、ドライバがより優先的に対応することが求められる。そのため、このようなリスク対象ほど、優先度も大きくなるように算出される。
【0058】
顕在リスク対象の優先度の算出には、衝突余裕時間が用いられる。衝突余裕時間が短いほどリスク対象と車両1との衝突のリスクは大きくなると考えられるため、優先度は、衝突余裕時間が短いほど大きくなるように算出される。例えば、顕在リスク対象の優先度は、次の式によって算出されてもよい。
【数1】
【0059】
ここで、ka及びksは所定の係数である。また、係数ksは、顕在リスク対象、準顕在リスク対象、及び潜在リスク対象の間で優先度の次元及びスケールを合わせるために導入されている。次元及びスケールが合わせられることで、リスク対象種別の異なる認識リスク対象同士であっても、優先度を比較することが可能となる。
【0060】
準顕在リスク対象の優先度の算出には、移動確率が用いられる。移動確率は、準顕在リスク対象となっている移動体が動きを変化させて自車両1に向かって移動してくる確率である。移動確率は、準顕在リスク対象の位置、速度、加速度、向き、移動体の種類等の情報を用いて算出される。
【0061】
図7及び
図8を用いて、移動確率の算出において考慮される指標の例を説明する。
図7に示すように、移動確率は、準顕在リスク対象となる移動体の種類ごとの特性を考慮して算出されてもよい。例えば、歩行者は、自転車と比較すると方向転換が容易であるため、進行方向を自車両1の方向へ変化させる確率もより高くなると考えられる。そこで、準顕在リスク対象が歩行者である場合の移動確率は、その他の条件が同等の場合には、準顕在リスク対象が自転車である場合の移動確率よりも高くなるように算出される。
【0062】
同様に、自転車は自動二輪車よりも方向転換が容易であることから、移動確率は、自動二輪車よりも自動車の方がより高くなるように算出される。また、自動二輪車は自動車よりも方向転換が容易であることから、自動車よりも自動二輪車の方がより高くなるように移動確率が算出される。支援装置10は、例えば認識センサ20のカメラから取得されるカメラ画像に基づいて、準顕在リスク対象となっている移動体の種類を推定することができる。
【0063】
また、
図8に示すように、移動確率の算出においては、準顕在リスク対象となっている移動体の進行方向に存在する障害物の有無が考慮されてもよい。準顕在リスク対象(
図8の例では歩行者)の進行方向に障害物がある場合、障害物がない場合と比較して歩行者が進行方向を変える確率は高いと考えられる。そこで、他の条件が同等の移動体に対しては、障害物がある場合の移動確率が、ない場合の移動確率よりも高くなるように算出される。
【0064】
移動確率が高い認識リスク対象ほど車両1との衝突のリスクが大きくなると考えられるため、準顕在リスク対象の優先度は、移動確率が高いほど大きくなるように算出される。例えば、準顕在リスク対象の優先度は、次の式によって算出されてもよい。
【数2】
【0065】
ここで、kb及びkjは所定の係数である。また、係数kjは、顕在リスク対象、準顕在リスク対象、及び潜在リスク対象の間で優先度の次元及びスケールを合わせるために導入される。
【0066】
潜在リスク対象の優先度は、例えば次の式によって算出される。
【数3】
【0067】
ここで、係数ksは、顕在リスク対象、準顕在リスク対象、及び潜在リスク対象の間で優先度の次元及びスケールを合わせるために導入される係数である。Rは潜在リスク対象のリスクの大きさを表す潜在リスク値であり、優先度は潜在リスク値が大きいほど大きくなるように算出される。Sは潜在リスク値から優先度を求めるための係数である。
【0068】
また、R及びSの添え字は移動体の種類を表す。つまり、Rped、Rbike、Rvehicleはそれぞれ、潜在リスク対象が歩行者、自転車、自動車であった場合の潜在リスク値を表している。また、Sped、Sbike、Svehicleは、潜在リスク対象となり得る移動体の種類に応じてそれぞれ決められる係数である。
【0069】
潜在リスク値は、潜在リスク対象が実際に死角から飛び出してくる可能性、潜在リスク対象が実際に現れた場合に回避できない可能性、回避できなかった場合の被害の大きさ等を総合した、潜在リスク対象が包含するリスクの大きさを表す値である。潜在リスク対象が歩行者、自転車、自動車の場合の潜在リスク値は、例えば、それぞれ次の式によって求められてもよい。
【数4】
【0070】
ここで、F1、F2、F3、F4・・・は車両1が走行する道路の道路環境因子、例えば、道路幅、見通し角、横断歩道の有無、歩道の有無、等を表す値である。t1、t2、t3、t4・・・はそれぞれの道路環境因子がリスクの大きさに与える影響を考慮して予め決められた係数である。t1、t2、t3、t4・・・は潜在リスク対象となる移動体の種類ごとに決まった係数とされ、添え字は移動体の種類を表す。
【0071】
4.優先度に基づく通知
優先度算出部113によって算出された優先度は通知制御部112に送られる。通知制御部112は、優先度に基づいて、複数の認識リスク対象の一部又は全部についての情報を第1通知装置200と第2通知装置300に分けて通知する。このとき、通知制御部112は、優先度の大きい認識リスク対象の情報が優先度の小さい認識リスク対象の情報よりも優先的にドライバに通知されるように、複数の認識リスク対象の一部又は全部についての情報の通知を行う装置を決定する。通知制御部112(支援装置10)が優先度に基づいてどのように情報を分けて通知するかについて、具体例を挙げて説明する。
【0072】
支援装置10の最適な構成の1つでは、第1通知装置200がディスプレイ装置とされ、第2通知装置300が発光装置とされる。
【0073】
ディスプレイ装置は、車速、走行可能距離、時刻、気温等の運転に必要な情報を表示する情報表示パネルである。リスク対象が認識されるとディスプレイ装置の表示内容は切り替えられ、認識リスク対象についての情報が表示される。
【0074】
発光装置は、ダッシュボードの幅方向に広がるアンビエントライトであり、発光させる部分や、発光の色、発光パターン等を制御することができる。発光装置は、通常時は、ドライバの運転を邪魔しないように発光しない状態を保っている。あるいはドライバをリラックスさせるような色で発光する。そして、リスク対象が認識されると、ドライバに注意を促す色やパターンで発光するように発光モードが切り替えられる。
【0075】
図3の下図のように認識リスク対象が2つ存在している場面を想定して、ディスプレイ装置と発光装置の2つの装置からどのような通知が行われるかを考える。
図9には、ディスプレイ装置としての第1通知装置200と、発光装置としての第2通知装置300から通知が行われている様子の概念図が示されている。
【0076】
図3の下図に示される車両3及び歩行者4は、いずれも顕在リスク対象として認識されているため、衝突余裕時間に基づいて優先度が算出される。車両1との距離が小さい車両3の方が衝突余裕時間が短いため、優先度の大きさは車両3が最も大きく、歩行者4は2番目となっている。支援装置10は、このように算出された優先度に基づいて、2つの認識リスク対象についての情報を、ディスプレイ装置200と発光装置300とに分けて通知する。具体的には、支援装置10は、優先度の最も大きい車両3についての情報をディスプレイ装置200からドライバに対して通知する。そして、優先度の2番目に大きい歩行者4についての情報を発光装置300からドライバに対して通知する。
【0077】
つまり、支援装置10は、ディスプレイ装置200から、発光装置300と比較してより優先度の大きい認識リスク対象についての情報が通知されるように、通知を行う装置を決定する。なお、ここでは認識リスク対象は2つのため、複数の認識リスク対象の全部についての情報がドライバに通知されている。認識リスク対象が3つ以上存在し、そのうちの一部についての情報がディスプレイ装置200と発光装置300からドライバに通知される場合には、通知の対象となる認識リスク対象は、通知の対象とならない認識リスク対象と比較して優先度の大きいものとなるように選択される。
【0078】
ディスプレイ装置200は、発光装置300と比較してより多くの情報量を伝達できる装置である。そのため、このように最も優先度の大きい認識リスク対象についての情報がディスプレイ装置200から通知されることで、特に重要な認識リスク対象についてはドライバが多くの情報を得られるようにし、ドライバが対応しやすくすることができる。また、優先度の比較的小さい認識リスク対象についての情報は、発光装置300から通知される。発光装置300はディスプレイ装置200と通知方法が異なるため、全ての認識リスク対象がディスプレイ装置200に表示される場合と比較して、ドライバが情報過多の状態に陥りにくい。ただし、発光によって、少なくとも認識リスク対象が複数存在することをドライバに伝えることはできるため、ドライバに周囲への警戒を促し、運転の安全性を高めることができる。
【0079】
なお、第1通知装置200と第2通知装置300がディスプレイ装置200と発光装置300以外の場合にも、ドライバに対して効果的な通知を行うことができる。例えば、第1通知装置200及び第2通知装置300はいずれもディスプレイ装置とされてもよい。そして、第1通知装置200の表示画面が第2通知装置300の表示画面よりも大きくされてもよい。この場合も、第1通知装置200は第2通知装置300よりも多くの情報量をドライバに伝えることができるため、認識リスク対象が複数存在する場合に、ドライバに対して効果的な通知を行うことができる。
【0080】
また、第1通知装置200及び第2通知装置300がいずれも視覚による通知を行う装置の場合、優先度に応じた通知を効果的に行うためには、次のような装置の配置も好ましい。それは、ドライバから第1通知装置200を見た方向と車両の進行方向との成す角が、ドライバから第2通知装置300を見た方向と車両の進行方向との成す角と比較して小さくなるようにそれぞれの装置を配置することである。ドライバにとっては、第2通知装置300よりも第1通知装置200が視界に入りやすくなり、ドライバが第1通知装置200から情報を得やすくすることができる。
【0081】
5.処理例
優先度に基づく通知を行うための、支援装置10による処理を説明する。
図10は、支援装置10が実行する処理、より具体的にはプロセッサ101が実行する処理の例を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、例えば、車両1の走行の開始とともに開始し、車両が走行している間、所定の周期ごとに繰り返し実行される。
【0082】
ステップS110で、支援装置10は、車両1の周囲においてリスク対象が認識されるか否かを判定する。支援装置10は、例えば、認識センサ20の前方カメラや側方カメラ等で車両1の周囲の物標や死角を検出することで、リスク対象を認識することができる。リスク対象が認識されない場合、つまり、認識リスク対象が存在しない場合は、今回処理は終了する。一方、リスク対象が1つ以上認識された場合には、処理はステップS120へ進む。ステップS110に係る処理は、認識部111において実行される。
【0083】
ステップS120で、支援装置10は、認識リスク対象の数についての判定を行う。認識リスク対象が1つのみ存在する場合、処理はステップS150に進む。
【0084】
ステップS150では、支援装置10は、第1通知装置200(ディスプレイ装置200)から認識リスク対象についての情報を通知する。ディスプレイ装置200は、発光装置300と比較して多くの情報量をドライバに伝えることができる。そのため、認識リスク対象が1つの場合は、ディスプレイ装置200からドライバに情報を通知することとすることで、ドライバにより正確な情報を伝えることができる。ステップS150に係る処理は、通知制御部112において実行される。第1通知装置200から情報の通知が行われた後、今回処理は終了する。
【0085】
一方、ステップS120で認識リスク対象が複数存在すると判定された場合、処理はステップS130に進む。ステップS130では、支援装置10は優先度を算出する。優先度の算出は、優先度算出部113において、リスク対象種別に基づき行われる。次に、処理はステップS140に進む。
【0086】
ステップS140で、支援装置10は、優先度に基づいて、複数の認識リスク対象の一部又は全部についての情報を第1通知装置200と第2通知装置300に分けて通知する。ステップS140の処理は、通知制御部112において行われる。
【0087】
ステップS141及びステップS142は、ステップS140で行われる処理の具体例である。ここでは、第1通知装置200及び第2通知装置300からそれぞれ1つの認識リスク対象についての情報が通知される例が示されている。
【0088】
ステップS141で、支援装置10は、ステップS130で優先度が算出された認識リスク対象のうち、優先度の最も大きい認識リスク対象を選択する。そして、選択した認識リスク対象についての情報を第1通知装置200から通知する。
【0089】
ステップS142で、支援装置10は、ステップS130で優先度が算出された認識リスク対象のうち、優先度が2番目に大きい認識リスク対象を選択する。そして、選択した認識リスク対象についての情報を第2通知装置300から通知する。通知が行われた後、今回処理は終了する。
【0090】
なお、第1通知装置200及び第2通知装置300のそれぞれから情報が通知される認識リスク対象の数は、1つずつであってもよいし、いずれか又は両方が複数であってもよい。例えば、ステップS141は、1番目と2番目に優先度の大きい認識リスク対象についての情報が第1通知装置200から通知されるステップであってもよい。また、この場合、ステップS142は、3番目に優先度の大きい認識リスク対象についての情報が第2通知装置300から通知されるステップであってもよいし、3番目と4番目に優先度の大きい認識リスク対象についての情報が第2通知装置300から通知されるステップであってもよい。
【0091】
ただし、ドライバが情報過多の状態となることを防ぐためには、それぞれの装置から通知される認識リスク対象の数は過度に多くならないことが望ましい。そこで、例えば、それぞれの装置から情報が通知される認識リスク対象の数には、装置の特性に応じた上限数が設けられてもよい。
【0092】
また、複数の認識リスク対象の一部についての情報が第1通知装置200と第2通知装置300に分けて通知される場合、第1通知装置200及び第2通知装置のいずれからも通知されていない認識リスク対象についての情報は、ドライバに通知されなくてもよい。あるいは、第1通知装置200及び第2通知装置のいずれからも通知されていない認識リスク対象の少なくとも一部についての情報は、第1通知装置200及び第2通知装置300の何れとも異なる第3の通知装置によって通知されてもよい。また、更に第4の通知装置を用い、第1、第2、及び第3のいずれの通知装置からも通知されなかった情報を第4の通知装置から通知することとしてもよい。
【0093】
ただし、ドライバに対して通知を行う装置の数を過度に増やすと、ドライバにとっては情報過多の状態を招きやすくなる。そのため、通知装置の数はある程度限定的であることが望ましい。特に好ましい実施形態は、第1通知装置200と第2通知装置300の2つの通知装置を用いて通知が行われることである。
【0094】
6.通知の様子の具体例
以上の説明を踏まえ、第1通知装置200がディスプレイ装置、第2通知装置300が発光装置とされる場合にどのように通知が行われるかについて、具体例をいくつか示す。
図11から
図15は、通知が行われている様子を示した概略図である。
【0095】
認識リスク対象が1つのみ存在する場合は、当該認識リスク対象についての情報は、第1通知装置200であるディスプレイ装置から通知される。
図11に示す例では、交差点がつくる死角に移動体の存在が推定され、支援装置10は当該移動体を潜在リスク対象として認識する。認識リスク対象は1つのため、支援装置10は、ディスプレイ装置200から当該潜在リスク対象についての情報を通知する。ディスプレイ装置200からの通知は、例えば、画面に死角を示すアイコンを表示することにより行われる。
【0096】
図12の例では、支援装置10によって、認識リスク対象B、及び認識リスク対象Cの2つのリスク対象が認識されている。認識リスク対象Bは準顕在リスク対象として認識された対向車、認識リスク対象Cは交差点がつくる死角に存在が推定される、潜在リスク対象としての移動体である。認識リスク対象が複数存在するため、支援装置10は、これら2つの認識リスク対象についての情報をディスプレイ装置200と発光装置300とに分けて通知する。
【0097】
このとき、ディスプレイ装置200から、発光装置300と比較して優先度の大きい認識リスク対象についての情報が通知されるように通知が行われる。そのため、最も優先度の大きい認識リスク対象Bについての情報がディスプレイ装置200から通知され、2番目に優先度の大きい認識リスク対象Cについての情報が発光装置300から通知される。
【0098】
ディスプレイ装置200からの通知は、画面に対向車の画像を表示することにより行われる。あるいは、画像の代わりに対向車を示すアイコンが画面に表示されてもよい。また、このとき、画像を枠線で囲む、アイコンを光らせる等によって対向車を強調する表示が行われてもよい。表示を強調することによって、ドライバに対してより強く注意喚起することができる。
【0099】
発光装置300からの通知は、発光装置300の発光部を光らせることにより行われる。このとき、認識リスク対象の位置に応じて発光する位置が変えられてもよい。
図12の例では、認識リスク対象Cが車両1の右側に存在するため、発光装置300の右側が発光させられている。また、発光装置300から通知が行われる際には、通知する情報に応じた色やパターンで発光部が発光させられてもよい。例えば、認識リスク対象までの距離、認識リスク対象のリスク対象種別、認識リスク対象となっている移動体の種類、認識リスク対象の優先度等によって発光の色やパターンが変えられてもよい。
【0100】
図13の例では、支援装置10がリスク対象を4つ認識している。そして、支援装置10は、認識したリスク対象のうちの3つに関する情報をディスプレイ装置200と発光装置300に分けて通知する。具体的には、優先度の最も大きい認識リスク対象Dに関する情報をディスプレイ装置200に表示させ、優先度が2番目と3番目に大きい認識リスク対象E及び認識リスク対象Fについての情報を、発光装置300を発光させて通知する。
【0101】
発光装置300の発光の色やパターンは、認識リスク対象Eと認識リスク対象Fとで変えられてもよい。例えば、優先度がより大きい認識リスク対象Eについての情報は強い光によって通知し、それよりも優先度の小さい認識リスク対象Fについての情報は弱い光によって通知されてもよい。あるいは、認識リスク対象Eを赤や橙などのドライバが周辺視野でも気付きやすい色によって示し、認識リスク対象Fは緑や灰などのドライバが視野中心で見ないと気付きにくい色によって示してもよい。あるいは、認識リスク対象Eを通知する光は高い頻度で点滅させ、認識リスク対象Fを通知する光は点滅を伴わない淡い光としてもよい。
【0102】
また、ここではディスプレイ装置200から1つ、発光装置300から2つの認識リスク対象に関する情報が通知されているが、情報が通知される認識リスク対象の数は可変とされてもよい。例えば、認識リスク対象Fの優先度が所定の閾値よりも小さいときは通知を行わないこととし、発光装置300からは1つの認識リスク対象Eについての情報が通知されてもよい。
【0103】
図14は、
図13に示した場面から、認識リスク対象Dの歩行者が去った後の場面を示している。認識リスク対象Dがなくなったことで、認識リスク対象Eが繰り上がり、優先度の最も大きい認識リスク対象となる。そのため、ディスプレイ装置200は認識リスク対象Eについての情報を通知する。ディスプレイ装置200の表示画面は切り替わり、認識リスク対象Eを示す自転車のアイコンが表示されている。
【0104】
2番目に優先度の大きい認識リスク対象となった認識リスク対象Fについての情報は、そのまま発光装置300から通知され続ける。なお、このとき、認識リスク対象Fの優先度が繰り上がったことを示すために発光の色やパターンが変えられてもよいし、引き続き同じ色やパターンによる通知が行われてもよい。
【0105】
また、認識リスク対象Gが繰り上がって3番目に優先度の大きい認識リスク対象となるため、認識リスク対象Gについての情報が新たに発光装置300から通知される。なお、例えば、認識リスク対象Gの優先度が閾値以下の場合には、認識リスク対象Gについての情報は通知されなくてもよい。
【0106】
7.変形例
変形例として、第1通知装置200は、異なる通知方法の組み合わせにより通知を行う装置であってもよい。例えば、第1通知装置200は、ディスプレイ装置とスピーカを組み合わせた装置であってもよい。この場合、表示画面に認識リスク対象についての情報を表示すると同時に、音声によってドライバに注意を促すことができる。あるいは、第1通知装置200は、ディスプレイ装置と振動装置を組み合わせた装置であってもよいし、ディスプレイ装置とスピーカ及び振動装置を組み合わせた装置であってもよい。このように、視覚に加えて聴覚或いは振動で通知することで、最も優先度の高いリスク対象に対する注意をより効果的に促すことができる。
【0107】
8.第3の通知装置
図15は、支援装置10が第1通知装置200及び第2通知装置300に加えて第3通知装置400を備える実施形態における通知の様子を示した図である。第3通知装置400は第1通知装置200及び第2通知装置300のいずれとも異なるハードウェアを有する装置として構成される。第3通知装置400は、ドライバに対して任意の通知方法により通知を行う装置である。例えば、第3通知装置400はディスプレイ装置であってもよいし、発光装置であってもよいし、スピーカであってもよいし、振動により情報を通知する装置であってもよい。また、第3通知装置400は第1通知装置200及び第2通知装置300の少なくとも何れかと同じ通知方法をとる装置であってもよいし、いずれとも異なる通知方法をとる装置であってもよい。
【0108】
ただし、特に好ましい形態は、第1通知装置200、第2通知装置300、及び第3通知装置400がいずれも視覚による通知を行う装置として構成されることである。視覚による通知を行う装置においては、装置の形態によって伝えられる情報量が明確に異なるため、あるいは同じ形態の装置であっても情報量に差をつけて通知を行うことができるため、ドライバにとって通知の優先順位がわかりやすくなる。
図15には、第1通知装置200、第2通知装置300、及び第3通知装置400がそれぞれ、ディスプレイ装置、発光装置、及び発光装置である例が示されている。第2通知装置300と第3通知装置400とは同じ通知方法をとるが、異なる装置である。例えば、第3通知装置400は、ナビゲーション装置の表示パネル内の一部の領域を点灯或いは点滅させることで情報を通知する装置である。
【0109】
支援装置10は、認識リスク対象のうちの3つについての情報を、第1通知装置200と、第2通知装置300と、第3通知装置400に分けて通知する。具体的には、支援装置10は、最も優先度の大きい認識リスク対象Hについての情報を第1通知装置200から通知し、2番目に優先度の大きい認識リスク対象Iについての情報を第2通知装置300から通知し、3番目に優先度の大きい認識リスク対象Jについての情報を第3通知装置400から通知する。4番目に優先度の大きい認識リスク対象Kについての通知は行われない。
【0110】
なお、第1通知装置200、第2通知装置300、及び第3通知装置400のいずれからも通知されなかった認識リスク対象Kに関する情報は、通知されなくてもよいし、第1通知装置200、第2通知装置300、及び第3通知装置400のいずれとも異なる第4の通知装置から通知されてもよい。
【0111】
支援装置10が第3通知装置を備える場合においても、ドライバにとって情報が多すぎる状態や少なすぎる状態を防ぎながら、ドライバに対して適切な通知を行うことができる。すなわち、第1通知装置からドライバに対して複数の認識リスク対象の全てについての情報が通知されることがなくなるため、ドライバが情報過多の状態となることを防ぐことができる。また、第1通知装置から通知されなかった情報の少なくとも一部は、第2通知装置及び第3通知装置によって通知される。そのため、ドライバに対して、第1通知装置によって通知された認識リスク対象以外にも認識リスク対象が存在することを知らせ、十分な注意を払うよう促すことができる。
【0112】
以上に説明したように、本発明によれば、自車両の周囲に複数のリスク対象が認識される場合、当該複数のリスク対象の一部又は全部についての情報は、少なくとも2つの装置に分けて通知される。これにより、ドライバにとって情報過多の状態や、逆に情報が少なすぎる状態となることを防ぎ、ドライバに対して適切な通知を行うことができる。
【符号の説明】
【0113】
1 車両
10 支援装置
20 認識センサ
30 車両状態センサ
40 アクチュエータ
100 処理部
101 プロセッサ
102 記憶装置
111 認識部
112 通知制御部
113 優先度算出部
200 第1通知装置
300 第2通知装置
400 第3通知装置