(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009893
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】難燃剤造粒物、難燃剤造粒物の製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
C09K 21/04 20060101AFI20240116BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240116BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20240116BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20240116BHJP
C09K 21/10 20060101ALI20240116BHJP
B01J 2/20 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C09K21/04
C08L101/00
C08K5/49
C09K21/12
C09K21/10
B01J2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174009
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2022074909の分割
【原出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】宮本 朗
(72)【発明者】
【氏名】木谷 誠
(57)【要約】
【課題】非臭素系の粉体状の難燃剤について、取扱性、安全性、作業環境改善性を向上させることができ、かつ、高濃度で難燃剤が配合された樹脂組成物または樹脂成形品の生産性向上に寄与し得る難燃剤造粒物を提供する。
【解決手段】本発明の難燃剤造粒物は、非臭素系粉体状難燃剤が結着して構成される。1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物は、40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤を含む。1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物は、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非臭素系粉体状難燃剤が結着して構成される、難燃剤造粒物。
【請求項2】
融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤を含む、請求項1に記載の難燃剤造粒物。
【請求項3】
液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤を含む、請求項1に記載の難燃剤造粒物。
【請求項4】
結着剤をさらに含む、請求項1に記載の難燃剤造粒物。
【請求項5】
前記非臭素系粉体状難燃剤の含有割合が、前記非臭素粉体状難燃剤と前記結着剤との合計量100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である、請求項4に記載の難燃剤造粒物。
【請求項6】
前記非臭素系粉体状難燃剤が、リン含有化合物系難燃剤、窒素含有化合物系難燃剤、無機系難燃剤および金属塩系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の難燃剤造粒物。
【請求項7】
前記融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤が、芳香族リン酸エステル化合物、芳香族縮合リン酸エステル化合物、環状ホスファゼン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の難燃剤造粒物。
【請求項8】
前記非臭素系粉体状難燃剤と、水と、を混合する混合工程と、
該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、
該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む、
請求項1から7のいずれかに記載の難燃剤造粒物の製造方法。
【請求項9】
前記非臭素系粉体状難燃剤と、水と、結着剤とを混合する混合工程と、
該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、
該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む、
請求項4に記載の難燃剤造粒物の製造方法。
【請求項10】
前記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む、請求項8に記載の難燃剤造粒物の製造方法。
【請求項11】
前記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒を行うことを含む、請求項8に記載の難燃剤造粒物の製造方法。
【請求項12】
成形用材料または熱可塑性樹脂コンパウンドの原料としての、請求項1から7のいずれかに記載の難燃剤造粒物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤造粒物、難燃剤造粒物の製造方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂やエラストマーに難燃性を付与するために、粉体状の難燃剤を配合する場合がある。近年、環境対応の観点から、非臭素の難燃剤として、リン含有化合物系難燃剤、窒素含有化合物系難燃剤、無機系難燃剤、あるいは金属塩系難燃剤の使用が増えているが、UL94規格に代表される難燃規格において、高度な難燃レベルが求められる傾向にあり、このため樹脂組成物に配合される難燃剤の配合量が増える傾向にある。
【0003】
粉体状の難燃剤は、一般に嵩比重が小さく、移送における流動性が悪く、さらに加工機や輸送配管への付着が強いために、輸送、貯蔵、梱包、加工機への供給安定性、等のハンドリング上の問題が生じることが多い。また、作業環境や人体に対する安全性において解決すべき課題が多い。特に、溶融混練装置(例えば、押出機)を用いて、熱可塑性の樹脂やエラストマーに粉体状の難燃剤を配合する場合、とりわけ、高濃度の難燃剤を配合する場合において、粉体難燃剤の溶融混練装置への供給が障害となって、組成のばらつきが大きくなったり、更にはフィードネック(供給不良)により、溶融混練の生産速度(吐出速度)が著しく低下してしまうという問題がある。
【0004】
特許文献1では粉体状の難燃剤を粒状化することが提案されている。粉体状の難燃剤を造粒化することで、ハンドリング性は大きく改善することができる。しかしながら、特許文献1においては、非臭素系の難燃剤に対しては難燃剤の結着力が不十分となって、崩壊し易く、ハンドリング性に関して問題が生じる場合があり、また、造粒物の結着力を高めるために、結着剤として炭化水素系の化合物を使用すると難燃性が低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、非臭素系の粉体状難燃剤について、取扱性、安全性、作業環境改善性を向上させることができ、かつ、高濃度で難燃剤が配合された樹脂組成物または樹脂成形品の生産性向上に寄与し得る難燃剤造粒物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の難燃剤造粒物は、非臭素系粉体状難燃剤が結着して構成される。
1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物は、融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤を含む。
1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物は、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤を含む。
1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物は、結着剤をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記非臭素系粉体状難燃剤の含有割合が、上記非臭素粉体状難燃剤と上記結着剤との合計量100重量部に対して、80重量部~99.9重量部である。
1つの実施形態においては、上記非臭素系粉体状難燃剤が、リン含有化合物系難燃剤、窒素含有化合物系難燃剤、無機系難燃剤および金属塩系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤が、芳香族リン酸エステル化合物、芳香族縮合リン酸エステル化合物、環状ホスファゼン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の別の局面によれば、上記難燃剤造粒物の製造方法が提供される。この製造方法は、上記非臭素系粉体状難燃剤と、水と、を混合する混合工程と、該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記非臭素系粉体状難燃剤と、水と、結着剤とを混合する混合工程と、該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒を行うことを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、成形用材料または熱可塑性樹脂コンパウンドの原料としての、上記難燃剤造粒物の使用が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非臭素系の粉体状難燃剤について、取扱性、安全性、作業環境改善性を向上させることができ、かつ、高濃度で難燃剤が配合された樹脂組成物または樹脂成形品の生産性向上に寄与し得る難燃剤造粒物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1で得られた粉体造粒物の外観写真図である。
【
図2】実施例2で得られた粉体造粒物の外観写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.難燃剤造粒物の概要
本発明の難燃剤造粒物は、非臭素系粉体状難燃剤が結着して構成される。非臭素系粉体状難燃剤は任意の適切な作用により結着させることができる。
【0011】
1つの実施形態において、難燃剤造粒物は、非臭素系粉体状難燃剤として、融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤を含む。1つの実施形態においては、難燃剤造粒物は結着剤を含む。1つの実施形態においては、融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤と結着剤とが併用され得る。1つの実施形態においては、難燃剤造粒物は、融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤および/または結着剤により、非臭素系粉体状難燃剤が結着して構成される。
【0012】
1つの実施形態においては、造粒方法を一因として、難燃剤造粒物の結着性が発現する。例えば、難燃剤造粒物は、非臭素系粉体状難燃剤として、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤を含む。このような非臭素系粉体状難燃剤を含む難燃剤造粒物は、例えば、湿式造粒法(攪拌造粒法)において、非臭素系粉体状難燃剤と液体(例えば、水)との相互作用で液架橋を形成することにより、得ることができる。1つの実施形態においては、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤は、結着剤および/または融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤と併用され得る。
【0013】
なお、本明細書において、難燃剤とは、当該難燃剤を所定量含む成形体に難燃性を付与でき、当該成形体が着火したとしても火が燃え広がらないようにする物質を意味する。また、本明細書において、「結着剤」は、当該難燃剤を含まない概念とする。
【0014】
また、非臭素系粉体状難燃剤とは、臭素原子を含まない化合物から構成された粉体状の難燃剤を意味する。本明細書において、以下、非臭素系粉体状難燃剤を単に粉体状難燃剤ともいう。また、「融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤」を結着性粉体状難燃剤ともいう。
【0015】
上記難燃剤造粒物は、適度な結着力(すなわち、造粒物硬度)と優れた難燃性を発現することができる。上記難燃剤造粒物は、樹脂組成物の溶融コンパウンド(溶融混練)をはじめ、熱可塑性樹脂の各種の可塑化溶融加工において、当該樹脂組成物に添加して用いられ得る。上記難燃剤造粒物を用いれば、難燃剤含有樹脂組成物の生産性向上を図ることができる。具体的には、上記難燃剤造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れるため、当該難燃剤造粒物を用いれば、難燃剤含有樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。また、粉塵による作業環境汚染を著しく改善し、作業者の労働安全衛生環境を向上させることができ、設備の切り替え清掃の時間を大幅に短縮できる。また、本発明の難燃剤造粒物を用いれば、高濃度で粉体状難燃剤が配合された樹脂組成物または樹脂成形品についても、高い生産性で製造することが可能となる。さらに、融点が40℃以上150℃未満の粉体状難燃剤(結着性粉体状難燃剤)、または、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤を用いれば、より優れた効率で生産され、かつ、品質安定性(形状安定性、硬度の均一性)、高硬度性に優れる難燃剤造粒物を得ることができる。
【0016】
1つの実施形態においては、難燃剤造粒物は結着剤を含まない。このような難燃剤造粒物は粉体状難燃剤が自己結着性を有する場合に得ることができる。例えば、結着性粉体状難燃剤を用いるか、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤を用いることにより得ることができる。結着剤を用いずに構成された難燃剤造粒物は、高い難燃性を発現し得る点で有利である。
【0017】
1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物は、半湿式造粒法により製造される。半湿式造粒法によれば、上記効果が顕著となる。詳細は後述する。
【0018】
上記難燃剤造粒物は、任意の適切な形状であり得る。代表的には、上記難燃剤造粒物は円柱状(ペレット状)である。
【0019】
上記難燃剤造粒物が円柱状である場合、上記難燃剤造粒物の直径は、例えば、2mm~5mmである。また、難燃剤造粒物の長さ(高さ)は、例えば、1mm~7mmである。このような形状であれば、ハンドリングしやすい難燃剤造粒物を得ることができる。難燃剤造粒物の直径は、例えば、造粒の際のディスクプレートのダイス孔の径により調整でき、長さはディスクプレートとカッター間の距離で調整できる。難燃剤造粒物の形状とサイズを、組み合わせて用いられる樹脂のペレットサイズに合わせることにより、ハンドリング性が向上し、また、溶融コンパウンドにおける難燃剤の分散性が良くなる。
【0020】
上記難燃剤造粒物の木屋式硬度計における破壊応力は、好ましくは0.05kg~10kgであり、より好ましくは0.5kg~7kgであり、さらに好ましくは1.0kg~5kgである。このような範囲であれば、ハンドリング性と溶融加工性に優れる難燃剤造粒物を得ることができる。ここで、破壊応力とは、20粒以上(好ましくは25粒以上)について測定した平均の崩壊応力を示す。
【0021】
上記難燃剤造粒物の水分量は、任意の適切な水分量とされ得る。上記難燃剤造粒物の水分量は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下であり、最も好ましくは0.5重量%以下である。難燃剤造粒物の水分量は、後述のとおり赤外線水分計を用いて測定される。
【0022】
上記難燃剤造粒物の嵩密度は、好ましくは0.3kg/L~2.0kg/Lであり、より好ましくは0.5kg/L~1.0kg/Lである。嵩密度を高くすることで、溶融混練を行う際に、難燃剤造粒物の供給速度と供給安定性が高まる。嵩密度は、升を用いて、粉体を当該升に自然落下させてすり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで算出される(単位:kg/L)。
【0023】
A-1.非臭素系粉体状難燃剤
本発明の効果が得られる限り、非臭素系粉体状難燃剤(粉体状難燃剤)の含有割合は、任意の適切な割合とされ得る。上記難燃剤造粒物が結着剤を含む場合、粉体状難燃剤の含有割合は、粉体状難燃剤と結着剤との合計量100重量部に対して、好ましくは50重量部~99.9重量部であり、より好ましくは60重量部~99.9重量部であり、さらに好ましくは80重量部~99.9重量部であり、特に好ましくは90重量部~99.9重量部であり、最も好ましくは95重量部~99.9重量部である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。
【0024】
上記粉体状難燃剤の粒子径は、任意の適切なサイズとすることができる。粉体状難燃剤の数平均粒子径は、例えば、10nm~1mmであり、好ましくは1μm~500μm、より好ましくは5μm~300μm、さらに好ましくは10μm~200μmである。このような範囲であれば、難燃剤造粒物の生産性を高めることができる。粉体状難燃剤の粒子径は、レーザー回折法により求めることができる。
【0025】
上記粉体状難燃剤の嵩密度は、好ましくは0.01kg/L~1kg/Lであり、より好ましくは0.05kg/L~0.8kg/Lであり、さらに好ましくは0.1kg/L~0.5kg/Lである。粉体状難燃剤の嵩密度が上記範囲にあると、難燃剤造粒物の時間当たり生産速度を高めることができる。上記難燃剤造粒物においては、造粒物の形態をなすことにより、嵩密度が低い粉体状難燃剤を含みながらも、供給安定性および供給精度を向上させ得る点で有利であり、当該難燃剤造粒物を用いれば、高い生産性で安定的に難燃剤含有樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0026】
1つの実施形態においては、上記粉体状難燃剤として、ゴム、樹脂等に使用される難燃剤が用いられる。
【0027】
1つの実施形態においては、上記粉体状難燃剤は、リン含有化合物系難燃剤、窒素含有化合物系難燃剤、無機系難燃剤および金属塩系難燃剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である。これらの難燃剤を用いれば、難燃剤造粒物として好ましくその効果が引き出せる。粉体状難燃剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
リン含有化合物系難燃剤としては、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステルを挙げることができ、トリフェニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェートを例示することができる。
【0029】
窒素含有化合物系難燃剤としては、例えば、ジアルキルホスフィン酸および/またはその塩、メラミンの縮合生成物、メラミンとリン酸との反応生成物、メラミンの縮合生成物とポリリン酸との反応生成物、ポリリン酸アンモニウム塩、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミド、グアニジン等が挙げられる。他の例として、ホスファゼン類を挙げることができ、具体例として、ホスホニトリル酸フェニルエステルが挙げられる。窒素含有化合物系難燃剤は、リンを含んでいてもよい。
【0030】
無機系難燃剤の具体例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化スズ、酸化アンチモン、ベーマイト、ジヒドロタルサイト、ヒドロカルマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、酸化スズ水和物、水酸化マンガン、ホウ酸亜鉛、塩基性ケイ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、赤燐等が挙げられる。
【0031】
金属塩系難燃剤としては、例えば、有機ホスフィン酸金属塩、有機スルホン金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸金属塩を挙げることができ、具体例として、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム塩、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩等が挙げられる。
【0032】
上記のとおり、難燃剤造粒物は、非臭素系粉体状難燃剤として、融点が40℃以上150℃未満の非臭素系粉体状難燃剤(結着性粉体状難燃剤)を含み得る。当該結着性粉体状難燃剤としては、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、窒素含有化合物系難燃剤等が用いられ得る。1つの実施形態においては、結着性粉体状難燃剤として、芳香族リン酸エステル化合物、芳香族縮合リン酸エステル化合物、環状ホスファゼン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が用いられる。結着性粉体状難燃剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート(融点:50℃)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(融点:92℃)、ホスファゼン化合物等が挙げられる。ホスファゼン化合物としては、環状フェノキシホスファゼン化合物がより好ましく、特に、三量体を70質量%以上、好適には85質量%以上含有する環状フェノキシホスファゼン化合物が望ましく、ホスホニトリル酸フェニルエステル(融点:110℃)を例示することができる。
【0033】
結着性粉体状難燃剤の含有割合は、粉体状難燃剤100重量部中、好ましくは0.1重量部~100重量部である。1つの実施形態においては、結着性粉体状難燃剤の含有割合は、粉体状難燃剤100重量部中、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~15重量部であり、さらに好ましくは1重量部~10重量部である。別の実施形態においては、結着性粉体状難燃剤の含有割合は、粉体状難燃剤100重量部中、好ましくは70重量部~100重量部であり、より好ましくは80重量部~100重量部であり、さらに好ましくは90重量部~100重量部である。さらに別の実施形態においては、粉体状難燃剤のすべてが、結着性粉体状難燃剤である。
【0034】
上記のとおり、難燃剤造粒物は、非臭素系粉体状難燃剤として、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤を含み得る。当該粉体状難燃剤としては、例えば、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム塩が挙げられる。詳細な作用は明確ではないが、トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム塩を粉体状難燃剤として用いる場合、半湿式造粒工程において、当該粉体状難燃剤間に水が介在することで、当該粉体状難燃剤と水との相互作用で液架橋を形成することにより、難燃剤造粒物が得られると考えられる。トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム塩は、融解せず耐熱性に優れるため、当該化合物を用いれば、溶融加工温度が高いエンジニアリングプラスチックス類に対して好ましく使用できる難燃剤造粒物を得ることができる。
【0035】
液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤の含有割合は、粉体状難燃剤100重量部中、好ましくは0.1重量部~100重量部である。1つの実施形態においては、液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤の含有割合は、粉体状難燃剤100重量部中、好ましくは70重量部~100重量部であり、より好ましくは80重量部~100重量部であり、さらに好ましくは90重量部~100重量部である。別の実施形態においては、粉体状難燃剤のすべてが、液体の作用により結着可能な粉体状難燃剤である。さらに別の実施形態においては、粉体状難燃剤のすべてが、結着性粉体状難燃剤および液体の作用により結着可能な非臭素系粉体状難燃剤である。
【0036】
粉体状難燃剤中、結着性粉体状難燃剤に該当しない粉体状難燃剤の融点は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、さらに好ましくは300℃以上である。また、融解せずに熱分解する粉体状難燃剤を用いてもよい。融点が高い、もしくは融解しない粉体状難燃剤は、難燃剤造粒物製造時に加熱されても、形状が好ましく維持され得る点で好ましい。融点が高い粉体状難燃剤および/または融解しない粉体状難燃剤と、結着性粉体状難燃剤とを併用すれば、形状維持性が高く、かつ、難燃性に優れた難燃剤造粒物を得ることができる。
【0037】
A-2.結着剤
本明細書において、「結着剤」は、非臭素系粉体状難燃剤を結着させる物質を意味する。上記結着剤の軟化温度は、40℃以上150℃未満であることが好ましい。このような範囲であれば、結着力に優れた難燃剤造粒物を得ることができる。より詳細には、上記範囲の軟化温度を有する結着剤は、難燃剤造粒物の造粒工程または加熱工程において、結着剤が溶融または軟化して粉体状難燃剤の表面に馴染み、再び冷却して固化することで、結着剤としての作用効果を良好に発揮することができる。上記結着剤の軟化温度は、好ましくは50℃以上145℃未満であり、より好ましくは60℃以上140℃未満であり、さらに好ましくは70℃以上135℃未満である。このような範囲であれば、本発明の効果が顕著となる。軟化温度は、融点またはガラス転移温度を意味し、示差走査型熱量計(DSC)で測定され得る。1つの実施形態においては、上記DSC測定において、吸熱あるいは発熱のピークが観測される場合において軟化温度は融点に相当し、また、ベースラインの不連続性が観測される場合において軟化温度はガラス転移温度に相当する。
【0038】
上記結着剤は常温で粉体であることが好ましい。結着剤が粉体であれば、粉体状難燃剤との分散混合において好ましい。
【0039】
結着剤の数平均粒子径は、任意の適切なサイズとすることができるが、例えば、1μm~1mmであり、好ましくは5μm~500μm、より好ましくは10μm~300μm、更に好ましくは20μm~200μmである。結着剤の粒子径は、レーザー回折法により求めることができる。
【0040】
上記結着剤の含有割合は、造粒対象とする粉体状難燃剤のサイズ、形状、吸水性、吸油性、嵩密度等に応じて、任意の適切な割合とされ得る。結着剤を用いる場合、上記結着剤の含有割合は、上記粉体状難燃剤と結着剤の合計100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~20重量部であり、好ましくは0.5重量部~15重量部であり、より好ましくは1重量部~10重量部である。このような範囲であれば、粉体状難燃剤に対する結着力が好ましく発揮され、ハンドリング性に優れた難燃剤造粒物を得ることができる。
【0041】
1つの実施形態においては、上記結着剤は、任意の適切な樹脂により構成され得る。結着剤を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。別の実施形態においては、上記結着剤として、多糖類が用いられる。結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。1つの実施形態においては、上記結着剤を構成する樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂から好ましく選ぶことができる。これらの樹脂を用いれば、粉体原料に対する結着力に優れ、形状安定性に優れた難燃剤造粒物を得る点で有利である。これらの中で、とりわけ、ホットメルト接着性機能を有するものを好ましく使用することができる。
【0042】
上記難燃剤造粒物は、必要に応じて、任意の適切なその他の添加剤を含み得る。添加剤粉体としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、分散剤、相溶化剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、結晶化核剤、加水分解抑制剤、脱酸素剤、着色剤(染顔料)等が挙げられる。
【0043】
また、必要に応じて、難燃助剤を添加してもよい。難燃助剤としては、亜リン酸アルミニウム、酸化鉄、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンのほか、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、リン酸アンチモンなどのアンチモン化合物等が挙げられる。難燃助剤は、1種または2種以上で使用することができる。
【0044】
B.難燃剤造粒物の製造方法
上記難燃剤造粒物は、任意の適切な方法により、製造することができる。上記難燃剤造粒物は、例えば、上記粉体状難燃剤と、水と、必要に応じて添加される結着剤とを含む混合物を半湿式造粒法に供することにより得ることができる。
【0045】
1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物の製造方法は、上記粉体状難燃剤と水とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。混合工程においては、必要に応じて上記結着剤がさらに混合され得る。好ましくは、結着剤と粉体状難燃剤とを含む粉体混合物に、水が添加される。
【0046】
混合工程においては、任意の適切な混合機を用いて、均一に混合することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)、等を挙げることができる。
【0047】
水の配合量は、粉体状難燃剤の特性(吸水性等)により、任意の適切な量とされ得る。水の配合量は、粉体状難燃剤と結着剤の合計量100重量部に対して、例えば、5重量部~100重量部であり、好ましくは8重量部~70重量部であり、より好ましくは10重量部~50重量部であり、さらに好ましくは15重量部~30重量部である。このような範囲であれば、半湿式法による造粒工程で、造粒性に優れた混合物を得ることができる。このような混合物を用いれば、粉体状難燃剤が好ましく結着して構成された難燃剤造粒物前駆体を安定して得ることができる。
【0048】
添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。また、水にアルコール等加えたアルコール水溶液としてもよい。アルコール水溶液のアルコール濃度は、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上である。
【0049】
水の添加は、通常、1~60分、好ましくは3~30分、より好ましくは、5~20分の時間をかけて均一に分散させながら、粉体混合物に水を含ませることが好ましい。
【0050】
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。好ましくは、材料が十分かつ均一に分散混合されるように混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
【0051】
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、タブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。生産性と得られる難燃剤造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
【0052】
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料(水分を含んだ粉体混合物)が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状の難燃剤造粒物を得ることができる。造粒物前駆体の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。ディスクプレートとカッター間の距離は、粉体原料の種類等に応じて、任意の適切な距離とされ得る。ディスクプレートとカッター間の距離は、例えば、1mm~30mmであり、より好ましくは2mm~20mmであり、さらに好ましくは3mm~10mmである。
【0053】
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
【0054】
乾燥工程における乾燥方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。乾燥工程後、振動ふるい等で処理を行うことで、微粉を除去した難燃剤造粒物が得られ得る。乾燥工程では、任意の適切な乾燥設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。乾燥温度は、通常、室温~150℃の範囲が好ましく、適宜選択することができる。1つの実施形態においては、結着性粉体状難燃剤を用いる場合、乾燥温度は、結着性粉体状難燃剤の融点以上(例えば、結着性粉体状難燃剤の融点より10℃~50℃高い温度)とされる。1つの実施形態においては、結着剤を用いる場合、乾燥温度は、結着剤の軟化温度以上(例えば、結着剤の軟化温度より10℃~50℃高い温度)とされる。乾燥時間は、目的とする難燃剤造粒物の水分量に応じて、適宜選択される。
【0055】
C.難燃剤造粒物を使用する溶融コンパウンド
1つの実施形態においては、上記難燃剤造粒物は、その用途として、成形用材料、または熱可塑性樹脂コンパウンドの原料として供される。熱可塑性樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂が用いられる。
【0056】
溶融コンパウンドの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは二軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、二軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練して得られた組成物はペレット化される。
【0057】
上記熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、フッ素系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等の汎用樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエステル類(PET、PBT等)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチック類、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)等のスーパーエンジニアリングプラスチック類等が挙げられる。
【0058】
また、上記熱可塑性樹脂として、生分解性ポリマーを用いてもよい。生分解性ポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーあるいはコポリマー、これらのホモポリマーあるいはコポリマーの変性した物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーあるいはランダムポリマー等)、ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等)等が挙げられる。
【0059】
上記熱可塑性樹脂と上記難燃剤造粒物の溶融コンパウンドにおいて、上記難燃剤造粒物は、押出機等の溶融混練装置への投入能力と安定性に優れるので、樹脂組成物の生産性を飛躍的に向上させることができると共に、樹脂への難燃剤分散性にも優れる。また、作業環境と作業者の労働安全衛生環境の改善にも大きく寄与する。
【実施例0060】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0061】
[実施例1]
FMミキサー(日本コークス工業社製、商品名「5FM5C/I」;処理容積:5L)に、粉体状難燃剤(トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム塩、クラリアント社製、商品名「エキソリットOP1230」;平均粒子径:30μm、嵩密度:0.59kg/L;表中、「A-1」)100重量部を投入した。
FMミキサーの羽根は上羽根と下羽根の組み合わせとし、上羽根はY1羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、下羽根はS0羽根(商品名、日本コークス(株)製)を使用した。また、撹拌槽内には邪魔板(バッフル、もしくはデフレクターとも称す)を装着した。
上記粉体状難燃剤に対し、攪拌羽を回転数1,000rpmで回転させながら、噴霧状に上水15重量部を、5分間を要して、連続的に噴霧注入し、含水混合物を得た。
この含水混合物を、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ペレット状の造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を12mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、140℃で4時間乾燥させて、難燃剤造粒物(FRG-1)を得た。得られた難燃剤造粒物(FRG-1)の外観写真を
図1に示す。
【0062】
[実施例2]
FMミキサーに、粉体状難燃剤(エキソリットOP1230;表中、「A-1」)100重量部と、結着性粉体状難燃剤としての1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(商品名:PX-200、大八化学工業(株)製、融点:92℃;表中、「B-1」)3重量部を投入し、回転数1,000回転で2分間攪拌混合し、粉体混合物を得た。
FMミキサーの羽根の構成は実施例1と同じとした。
上記粉体混合物対し、攪拌羽を回転数1,000rpmで回転させながら、噴霧状に上水15重量部を、5分間を要して、連続的に噴霧注入し、含水粉体混合物を得た。
この含水粉体混合物を、実施例1と同様にディスクペレッターにより造粒し、熱風式循環型乾燥機を用いて、120℃で4時間乾燥させて、難燃剤造粒物(FRG-2)を得た。得られた難燃剤造粒物(FRG-2)の外観写真を
図2に示す。
【0063】
[実施例3]
結着性粉体状難燃剤を、ホスファゼン(ホスホニトリル酸フェニルエステル)(商品名:ラビトルFP-110、(株)伏見製薬所製、融点:110℃;表中、「B-2」)3重量部に変更した以外は実施例2と同様の操作で、難燃剤造粒物(FRG-3)を得た。」
【0064】
[実施例4]
FMミキサーに、粉体状難燃剤(無処理水酸化マグネシウム粉末)(商品名:ジュンマグBF、ファイマテック(株)製、平均粒子径12μm;表中、「A-2」)100重量部と、結着性粉体状難燃剤としての1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(PX-200;表中、「B-1」))10重量部を投入し、回転数1,000回転で2分間攪拌混合し、粉体混合物を得た。
FMミキサーの羽根の構成は実施例1と同じとした。
上記粉体混合物対し、攪拌羽を回転数1,000rpmで回転させながら、噴霧状に上水10重量部を、5分間を要して、連続的に噴霧注入し、含水粉体混合物を得た。
この含水粉体混合物を、実施例1と同様にディスクペレッターにより造粒し、熱風式循環型乾燥機を用いて、120℃で4時間乾燥させて、難燃剤造粒物(FRG-4)を得た。
【0065】
[実施例5]
粉体状難燃剤を、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート(PX-200;表中、「B-1」))に変更し、造粒物前駆体の乾燥条件を、80℃で4時間とする以外は実施例1と同様にして、難燃剤造粒物(FRG-5)を得た。
【0066】
[参考例1]
参考例1は、実施例1と同じ組成であるが、FMミキサーの羽根を、上羽根はST羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、下羽根はA0羽根(商品名、日本コークス(株)製)とし、邪魔板を外し、上水15重量部を一度に、FMミキサーに投入し、回転数1,000rpmで5分間の攪拌処理を行い、粉体混合物とした例である。造粒と乾燥処理は実施例1と同じである(FRG-C1)。
【0067】
[比較例1]
結着性粉体状難燃剤を添加しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、難燃剤造粒物(FRG-C2)の製造を試みた。
【0068】
実施例、比較例、及び参考例で用いた各成分の具体的な内容は、表1に示すとおりである。
【表1】
【0069】
<評価>
実施例1~5、参考例1および比較例1で得られた難燃剤造粒物を下記の評価に供した。結果を表2に示す。
(1)造粒性
難燃剤造粒物の造粒性を以下の基準で評価した。
〇: 直径3mmφの造粒物が得られる。
△: 造粒物の形態になるが、結着力のばらつきが大きい。
×: 造粒物の形態になるが、結着力が不足して、崩壊しやすい。
(2)造粒速度
時間当たりの難燃剤造粒物の製造速度(kg/Hr)を算出した。
(3)嵩密度
乾燥後の難燃剤造粒物を1リットルの升に自然落下させ、すり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで、難燃剤造粒物の嵩密度(単位:kg/L)を算出した。
(4)ペレットサイズ
難燃剤造粒物を20粒取り出し、ノギスを用いて、粒状物の長さと直径の平均値を算出した。
(5)水分量
赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、難燃剤造粒物に残存する水分量(単位:重量%)を測定した。
(6)崩壊強度測定
木屋式硬度計(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」)を用いて、乾燥後の難燃剤造粒物の崩壊応力(単位:kg)を測定した。測定値は造粒物25粒の平均値とした。
【0070】
【0071】
表2に示す通り、実施例1~5では、安定したペレット形状、高い造粒速度、適切な硬度のペレット状の難燃剤造粒物を得ることができた。
参考例1は、粉体状難燃剤と結着剤と上水を一度に配合し、粉体攪拌能力が弱い羽根の組み合わせ(上羽根:ST羽根、下羽根:A0羽根)で混合物とした結果(FRG-C1)であるが、崩壊強度が安定しなかった。
一方、比較例1(FRG-C2)は、実施例4に比べて難燃剤造粒物の崩壊強度が劣る。
【0072】
[実施例6]
ポリアミド6樹脂(ユニチカ社製、商品名「ユニチカナイロン6 A1030BRL-1」)75重量部と難燃剤造粒物(FRG-1)25重量部とを、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM18SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、ナイロン6樹脂と粉体状難燃剤(表1中、「A-1」)の樹脂組成物のペレットを製造した。
ポリアミド6のペレットと難燃剤造粒物(FRG-1)は、事前に予備混合を行い、フィーダーを介して、定量的に押出機の最上流部のホッパー位置から、二軸押出機に投入した。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を230℃に設定した。二軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとし、吐出速度は5kg/Hrとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られる樹脂組成物は、押出機への粉体状難燃剤(表1中「A-1」)の供給安定性に優れ、粉体状難燃剤A-1の溶融混練分散性にも優れ、ストランドの引き取り安定性に優れており、優れた難燃性を発現した。
【0073】
[実施例7、8]
表3に示す組成構成に変更した以外は、実施例6と同様にナイロン6樹脂と粉体状難燃剤(表1中、「A-1」)の樹脂組成物のペレットを製造した。得られる樹脂組成物は、いずれも生産安定性に優れ、粉体状難燃剤(A-1)の溶融混練分散性にも優れ、また、難燃性も優れていた。
【0074】
[比較例2]
ナイロン6を単独で押出機を通過させ、ペレット化した。
【0075】
[比較例3]
難燃剤造粒物(FRG-2)を使用せずに、粉体状難燃剤(A-1)を使用したこと以外は、実施例7と同様にして溶融混練を行い、ペレットの製造を試みた。シュート口で粉体状難燃剤(A-1)のブリッジが生じてしまい、安定な連続生産を行うことができなかった。
実施例7と比較例3の対比より、本発明の難燃剤造粒物は粉体状難燃剤の配合量が高配合割合の樹脂組成物を製造する場合においても、樹脂組成物を安定に連続生産することが可能となることが明らかである。
【0076】
<評価>
実施例6~8および比較例2、3で得られた樹脂組成物のペレットを下記の評価に供した。結果を表3に示す。
(a)難燃剤造粒物(もしくは粉体状難燃剤)のフィード特性
押出機投入口への連続投入状況を確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 安定に供給できる。
×: 粉体状難燃剤の供給で、ブリッジあるいは装置壁面への付着が生じることがあり、フィードが不安定。
(b)分散性
樹脂と難燃剤造粒物の溶融混練における分散性を、溶融混合物のストランド表面の感触より、以下の基準で評価した。
〇: 表面が滑らかで分散性が良い。
×: 表面が荒れており、分散性が悪い。
(c)樹脂組成物ペレットの造粒安定性
ダイスから押出される難燃剤と熱可塑性ポリマーの溶融混練物のストランドの引き取り安定性を以下の基準で評価した。
〇: ストランドが切れることなく安定に樹脂組成物の造粒が行える。
×: 原料供給安定性が不安定なため、ストランド切れが発生する。
(d)難燃性評価
溶融混練物のストランドを約10cmに切り出し、スタンドに垂直に固定して、最下部にガスバーナー(炎高さ:1cm)を用いて着火させ、燃焼持続性を、以下の基準で評価した。
AA: ほとんど着火しない(難燃性に優れる)
A: 着火するが自己消化する(ドリッピングが生じる場合もある)
B: 消炎しない
【0077】