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特開2024-98940産業財産権のイベント予測システムおよび費用予測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098940
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】産業財産権のイベント予測システムおよび費用予測システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/18 20120101AFI20240717BHJP
【FI】
G06Q50/18 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079579
(22)【出願日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2023002657
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】300010899
【氏名又は名称】NGB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 秀
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 拓也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昌
(72)【発明者】
【氏名】中辻 啓
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC33
5L050CC33
(57)【要約】
【課題】産業財産権に関する将来のイベントの種類をより正確に予測する。
【解決手段】イベント予測システム100は、各案件に発生したイベントの種類と発生タイミングとが記録されたイベント履歴に基づいて、起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミングの順に並べた1または複数のイベントパターンを抽出するイベントパターン抽出部122と、イベントパターンごとの発生確率を算出するイベント算出部123と、イベントパターンごとに発生確率を対応づけて出力する出力部124と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業財産権である案件のイベント予測システムであって、
各案件に発生したイベントの種類と発生タイミングとが記録されたイベント履歴に基づいて、起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミングの順に並べた1または複数のイベントパターンを抽出するイベントパターン抽出部と、
前記イベントパターンごとの発生確率を算出するイベント算出部と、
前記イベントパターンごとに前記発生確率を対応づけて出力する出力部と、を備える、イベント予測システム。
【請求項2】
前記イベント予測システムは、さらに、
前記終結イベントが発生した終結案件を抽出する終結案件抽出部を備え、
前記イベントパターン抽出部は、前記終結案件に発生したイベントのうちのいずれかを前記起点イベントとして決定する、請求項1に記載のイベント予測システム。
【請求項3】
前記イベント予測システムは、さらに、
前記終結イベントが発生した終結案件を抽出する終結案件抽出部を備え、
前記イベントパターン抽出部は、前記終結案件に発生したイベントのうち、複数種類のイベントを前記起点イベントとして決定可能である、請求項1または請求項2に記載のイベント予測システム。
【請求項4】
前記イベントパターン抽出部は、前記起点イベントから前記終結イベントまでの複数のイベントのうち、所定条件を満たす複数のイベントを発生タイミングの順に並べた前記イベントパターンを抽出する、請求項1または請求項2に記載のイベント予測システム。
【請求項5】
前記イベント算出部は、各前記イベントパターンに含まれるイベントごとに、前記起点イベントから各イベントに至る標準所要期間を算出し、
前記出力部は、算出された各前記標準所要期間を出力する、請求項1または請求項2に記載のイベント予測システム。
【請求項6】
前記イベントパターン抽出部は、前記起点イベントの選択を受け付ける、請求項1または請求項2に記載のイベント予測システム。
【請求項7】
前記起点イベントは複数であり、
前記イベントパターン抽出部は、前記起点イベントごとに、1または複数の前記イベントパターンを抽出し、
前記出力部は、前記起点イベントごとに、前記イベントパターンと前記発生確率とを対応づけて出力する、請求項1または請求項2に記載のイベント予測システム。
【請求項8】
産業財産権である案件の費用予測システムであって、
評価対象の案件を特定するための対象情報と、各案件に発生したイベントの種類および発生タイミングが記録されたイベント履歴とを取得する対象情報取得部と、
前記対象情報および前記イベント履歴に基づいて、前記評価対象の直近イベントを特定する直近イベント特定部と、
前記評価対象に対して発生する予測費用を算出する費用算出部と、を備え、
前記費用算出部は、
起点となる起点イベントごとに、前記起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミングの順に並べた複数のイベントパターンと、各前記イベントパターンの発生確率とを含むイベントデータを取得し、
前記直近イベントを前記起点イベントとする1または複数の前記イベントパターンの発生確率と、前記イベントパターンに含まれる各イベントの標準費用とに基づいて、前記予測費用を算出する、費用予測システム。
【請求項9】
前記費用算出部は、前記評価対象ごとに、前記イベントパターンに含まれる各イベントの標準費用と、前記イベントパターンの発生確率とを用いた期待値を算出し、前記期待値に基づいて前記予測費用を算出する、請求項8に記載の費用予測システム。
【請求項10】
前記イベントデータは、前記イベントパターンに含まれるイベントごとに、前記起点イベントから各イベントに至る標準所要期間を含み、
前記費用算出部は、さらに、前記直近イベントの発生タイミングと、前記直近イベントを前記起点イベントとする前記イベントパターンに含まれるイベントごとの前記標準所要期間とに基づいて、前記評価対象に対して費用が発生する予測時期を前記予測費用に対応づけて算出する、請求項8または請求項9に記載の費用予測システム。
【請求項11】
前記費用算出部は、
前記起点イベントが共通する複数の前記評価対象のうち、前記イベントパターンごとに、前記イベントパターンの発生確率に対応する数の前記評価対象に対して、前記イベントパターンを割り当てて、複数の前記評価対象に対して発生する前記予測費用の合計値を算出する、請求項8に記載の費用予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業財産権のイベント予測システムおよび費用予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、特許、実用新案、意匠、商標などの産業財産権に関する出願から権利維持の手続きに関する将来的な費用の見積もりシステムを開示している。特許文献1の費用見積もりシステムは、各手続きまたはその請求が発生する標準的なタイムスケジュールに基づいて、将来的に発生する手続きの請求予定日を算出し、請求予定日が所定期間内となる請求予定額を合算して所定期間の費用の予測を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-42412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業財産権を取得するまでには、出願手続きに始まり、審査請求および拒絶対応などの審査手続き、ならびに登録手続き等の様々なイベントが発生する。発生するイベントの種類は案件ごとに異なるため、将来的に発生するイベントの種類をより正確に予測することのできる技術が望まれている。また、イベントの発生予定日に基づく費用の予測値と実際に発生する費用との間にずれが生じることがある。
【0005】
本発明の一の目的は、産業財産権に関する将来のイベントの種類をより正確に予測することである。本発明の他の目的は産業財産権に関する費用をより正確に予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一態様に係る産業財産権である案件のイベント予測システムは、
各案件に発生したイベントの種類と発生タイミングとが記録されたイベント履歴に基づいて、起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミングの順に並べた1または複数のイベントパターンを抽出するイベントパターン抽出部と、
前記イベントパターンごとの発生確率を算出するイベント算出部と、
前記イベントパターンごとに前記発生確率を対応づけて出力する出力部と、を備える。
【0007】
本発明の第二態様に係る産業財産権である案件の費用予測システムは、
評価対象の案件を特定するための対象情報と、各案件に発生したイベントの種類および発生タイミングが記録されたイベント履歴とを取得する対象情報取得部と、
前記対象情報および前記イベント履歴に基づいて、前記評価対象の直近イベントを特定する直近イベント特定部と、
前記評価対象に対して発生する予測費用を算出する費用算出部と、を備え、
前記費用算出部は、
起点となる起点イベントごとに、前記起点イベントから前記終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミングの順に並べた複数のイベントパターンと、各前記イベントパターンの発生確率とを含むイベントデータを取得し、
前記直近イベントを前記起点イベントとする1または複数の前記イベントパターンの発生確率と、前記イベントパターンに含まれる各イベントの標準費用とに基づいて、前記予測費用を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、産業財産権に関する将来のイベントの種類をより正確に予測できる。また、産業財産権に関する費用をより正確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係るイベント予測システムの構成を例示している。
図2図2は、図1に示す履歴データベースに記録されたイベント履歴の一例を示している。
図3図3は、図1に示す制御部の動作の流れを説明するためのフローチャートを示している。
図4図4は、図1に示すイベントパターン抽出部により抽出されたイベントパターンと、イベント算出部により算出されたイベントパターンの発生確率との対応関係を示す確率テーブルの一例を示している。
図5図5は、第2実施形態に係る費用予測システムの構成を例示している。
図6図6は、費用データベースが記録する費用テーブルの一例を示している。
図7図7は、図5に示す制御部の動作の流れを説明するためのフローチャートを示している。
図8図8は、図5示す費用算出部が算出する予測費用の例を説明するための費用算出テーブルを示している。
図9図9は、第2実施形態の変形例に係るイベントパターンの割り当てテーブルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、本発明に係る実施形態について説明する。
【0011】
[第1実施形態]
(システムの全体構成)
図1は、第1実施形態に係る産業財産権である案件のイベント予測システム100の構成を例示している。イベント予測システム100は、通信ネットワーク20を介して一人または複数人のユーザの端末30に通信可能に接続されている。イベント予測システム100は、ユーザが出願予定、出願中または保有している産業財産権である案件について、将来的に発生し得る複数のイベントを発生タイミング順に並べた一連のイベントパターンを複数抽出し、各イベントパターンの発生確率を算出し、出力するシステムである。ユーザの端末30は、ユーザが所有する端末であってもよいし、ユーザがログインした自身が所有していない端末であってもよい。端末とは、パーソナルコンピュータでもよいし、タブレット端末または携帯電話端末であってもよい。ユーザは、例えば、産業財産権の出願人、権利者または出願代理人である。
【0012】
本明細書において用いられる「産業財産権」という用語は、登録された産業財産権だけでなく、出願前の産業財産権、および出願中であって未登録の産業財産権も含む。以下では、出願前および出願中の産業財産権も含めて、単に産業財産権または案件と称する。
【0013】
イベント予測システム100は、記憶部11と制御部12を有している。制御部12は、通信ネットワーク20を介して記憶部11に通信可能に接続されている。なお、制御部12は、記憶部11とともに一つの装置をなす構成としてもよいし、内部ネットワークを介して記憶部11に通信可能に接続されてもよい。
【0014】
記憶部11には、複数の案件のイベント履歴を記録する履歴データベース111が保存されている。イベント履歴は、各案件について実際に発生したイベントの種類とその発生タイミングを含む。
【0015】
案件のイベントには、産業財産権を取得するまでに発生する、出願手続き、審査手続き、登録手続き、などの各種の手続きが含まれる。審査手続きには、審査請求および拒絶理由通知への応答などが含まれることもある。また、案件のイベントには、出願中または登録後の産業財産権を維持するために必要な費用(以下、維持年金と称する)を納付する手続きも含まれる。また、案件のイベントには、特許庁への手続きだけでなく、各種手続きで発生する費用請求、社内連絡、承認決済、社外への連絡および権利取得を断念する放置等も含まれる。例えば、社内連絡には、産業財産権の出願手続きのための社内承認が含まれる。また、例えば、社外への連絡には、特許事務所への連絡が含まれる。
【0016】
イベントの発生タイミングには、例えば、各種手続きの実行日が含まれる。具体的には、イベントの発生タイミングには、出願日、審査請求日、補正書または意見書提出日、認可または登録に必要な費用の納付日、維持年金納付日、および費用請求日(例えば、請求書発行日)などが含まれうる。また、イベントの発生タイミングには、特許庁から発行された拒絶理由通知書発生日(起案日、発行日または送達日)、認可通知書発生日(発行日または送達日)、認可日および登録日なども含まれうる。さらに、イベント発生タイミングには、拒絶理由通知書、認可通知書の受領日および請求書受領日なども含まれうる。イベントの発生タイミングは、発生日など年月日で表されてもよいし、出願日などの基準となるイベントからの経過日数で表されてもよい。
【0017】
図2は、記憶部11に保存されている履歴データベース111に記録されたイベント履歴の一例を示す。本例においては、イベント履歴は、各案件の出願国、四法区分、管理番号、イベント種類および請求日を含む。例えば、出願国として登録されているEPは、案件が欧州特許庁へ出願されていることを意味する。図2ではEPのみを例示しているが、欧州以外が出願国であってもよい。
【0018】
四法区分は、産業財産権の種別であり、Pは特許、Uは実用新案、Dは意匠、Tは商標を意味する。図2ではPのみを例示している。管理番号は一の案件を特定する番号である。イベント種類はそれぞれの管理番号の案件で発生したイベントの種類を示す。請求日は、イベントに関する費用の請求日である。
【0019】
具体的に、例えば図2の例では、管理番号001EPの欧州特許出願では、「出願」イベントが2021年5月24日(請求日)に発生し、「サーチレポート」イベントが2021年11月30日(請求日)に発生したことを示している。
【0020】
(制御部の構成)
再び図1を参照して、制御部12は、記憶部11に保存されている履歴データベース111に記録されたイベント履歴に基づき、起点イベントから将来的に発生する一連のイベントを表すイベントパターンの発生確率を算出し、出力する。制御部12は、終結案件抽出部121と、イベントパターン抽出部122と、イベント算出部123と、出力部124とを備える。
【0021】
(i)イベントパターンの抽出
図3は、図1に示す制御部12の動作の流れを説明するためのフローチャートである。より詳細には、まず、終結案件抽出部121は、履歴データベース111に記録された複数の案件のうち、終結イベントが発生した1または複数の終結案件を抽出する(図3に示すステップS11)。
【0022】
終結イベントは、案件の一連の手続きの終結を示すイベントであり、例えば、産業財産権の登録証の発行、権利期間の満了または放棄手続きを含む。図2に示す例では、管理番号が001EP,002EP,003EP,004EPの4つの案件のうち、001EP,002EP,003EPの3つの案件は登録証が発行されている。この場合、終結案件抽出部121は、001EP,002EP,003EPの3つの案件を終結案件として抽出する。
【0023】
次に、イベントパターン抽出部122は、履歴データベース111に記録されたイベント履歴を参照して、終結案件抽出部121が抽出した終結案件に発生した複数種類のイベントのうち、イベントパターンの起点となる起点イベントを決定する(図3に示すステップS12)。
【0024】
起点イベントは、例えば、出願、審査請求または拒絶理由通知の応答などである。イベントパターン抽出部122は、終結案件に生じた一連のイベントのうち、最初に発生したイベントを起点イベントとして決定してもよいし、2番目以降に発生したイベントを起点イベントとして決定してもよい。
【0025】
次に、イベントパターン抽出部122は、履歴データベース111に記録されたイベント履歴に基づいて、終結案件抽出部121が抽出した終結案件ごとに、起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミング順に並べた一連のイベントパターンを全パターン抽出する(図3に示すステップS13)。
【0026】
具体的には、図2の例では、イベントパターン抽出部122が「出願」を起点イベントとして決定したと仮定する。また、管理番号がそれぞれ001EP,002EP,003EPである3つの案件が終結案件として抽出されたと仮定する。この場合、イベントパターン抽出部122は、管理番号が001EP,003EPである2つの案件のイベント履歴に基づいて、「出願,サーチレポート,認可通知,登録証」というイベントがこの順で発生するというイベントパターンを抽出する。また、イベントパターン抽出部122は、管理番号が002EPである案件のイベント履歴に基づいて、「出願,サーチレポート,拒絶理由通知,拒絶理由通知,認可通知,登録証」というイベントがこの順で発生するというイベントパターンを抽出する。なお、以降では、イベントパターンに言及するとき、列挙されたイベントはこの順で発生することを示す。
【0027】
さらに、イベントパターン抽出部122は、「出願」に加えて、「サーチレポート」を起点イベントとして決定したと仮定する。この場合、図2の例では、イベントパターン抽出部122は、「出願」を起点イベントとした上記2つのイベントパターンに加えて、管理番号が001EP,003EPである2つの案件のイベント履歴に基づいて、「サーチレポート,認可通知,登録証」というイベントパターンを抽出する。また、イベントパターン抽出部122は、管理番号が002EPである案件のイベント履歴に基づいて、「サーチレポート,拒絶理由通知,拒絶理由通知,認可通知,登録証」というイベントパターンを抽出する。このように、起点イベントが複数種類である場合、同一の案件について複数のイベントパターンを抽出できる。
【0028】
なお、イベントパターン抽出部122は全てのイベントパターンを抽出しなくてもよく、例えば、所定数以上の案件において生じたイベントパターンのみを抽出してもよい。
【0029】
また、イベントパターン抽出部122は、終結イベントまでの一連のイベントを全て含むイベントパターンを抽出してもよいし、所定条件を満たす複数のイベントを並べたイベントパターンを抽出してもよい。例えば、イベントパターン抽出部122は、費用が発生するイベントを並べたイベントパターンを抽出してもよいし、出願人が自発的に行うイベント以外のイベントを並べたイベントパターンを抽出してもよい。このように、イベントパターンの利用目的(例えば費用予測)に応じてノイズとなるイベントを除いてイベントパターンを抽出することができるため、ユーザの利用目的により適した情報を提供することができる。
【0030】
(ii)各イベントパターンの発生確率の算出
再び図3を参照して、次に、イベント算出部123は、イベントパターン抽出部122により抽出された各イベントパターンの発生確率を算出する(図3に示すステップS14)。
【0031】
図4は、イベントパターン抽出部122により抽出されたイベントパターンと、イベント算出部123により算出されたイベントパターンの発生確率との対応関係を示す確率テーブルの一例である。
【0032】
図4に示す例においては、確率テーブルは、それぞれの案件の出願国、四法区分、起点イベント、イベントパターン、発生確率および後述する標準所要期間を含む。例えば、イベントパターン抽出部122は、EPへの特許出願について、起点イベントを「出願」として、複数の終結案件のイベント履歴に基づいて、「サーチレポート,拒絶理由通知,登録証」や「サーチレポート,拒絶理由通知,認可通知,登録証」などのイベントパターンを抽出する。また、イベントパターン抽出部122はEPへの特許出願について、起点イベントを「サーチレポート」として、複数の終結案件のイベント履歴に基づいて、「認可通知,登録証」や「拒絶理由通知,認可通知,登録証」などのイベントパターンを抽出する。
【0033】
そして、イベント算出部123は、例えば、「出願」を起点イベントとした各イベントパターンについて、発生確率を算出する。具体的に、イベント算出部123は、イベント履歴を参照して、各イベントパターンについて、イベントパターンに含まれる順でイベントが発生した案件の件数を特定する。そして、イベント算出部123は、特定した件数を、「出願」を起点イベントとしたイベントパターン抽出の対象である総件数、すなわち終結案件であり、かつ「出願」のイベントが発生した案件数で割ることによって当該イベントパターンの発生確率を算出する。
【0034】
図4に示す例では、例えば「出願」を起点イベントとして「サーチレポート,認可通知,登録証」の順でイベントが発生した案件の件数が68件であり、「出願」のイベントが発生した終結案件が500件であったとする。この場合、「出願」を起点イベントとした「サーチレポート,認可通知,登録証」のイベントパターンの発生確率が、68/500=13.6%と算出される。
【0035】
また、例えば「サーチレポート」を起点イベントとして「認可通知,登録証」の順でイベントが発生した案件の件数が81件であり、「サーチレポート」のイベントが発生した終結案件が400件であったとする。この場合、「サーチレポート」を起点イベントとした「認可通知,登録証」のイベントパターンの発生確率が、81/400=約20.3%と算出される。
【0036】
イベント算出部123は、「出願」や「サーチレポート」以外の他の起点イベントについても、同様に起点イベントごとのイベントパターンの発生確率を算出する。これにより、出願国「EP」かつ四法区分「P」という条件における各起点イベントを起点とするイベントパターンの発生確率を算出することができる。また、イベント算出部123は、出願国および四法区分の条件を変更し、対象となるすべての出願国および四法区分における各起点イベントを起点とするイベントパターンの発生確率を算出する。
【0037】
なお、十分な案件数のイベント履歴が履歴データベース111に記録されている場合には、出願国および四法区分だけでなく、出願ルート(パリルートまたはPCTルートなど)や特許分類(IPCまたはCPCなど)等の条件を加えて細分化されたイベントパターンが抽出されてもよい。この場合においても、イベント算出部123は、細分化された各イベントパターンの発生確率を算出する。
【0038】
(iii)標準所要期間の算出
再び図1および図3を参照して、次に、イベント算出部123は、イベントパターンごとに、起点イベントからそのイベントパターンに含まれる各イベントまでの標準所要期間を算出する(図3に示すステップS15)。
【0039】
標準所要期間は、例えば、イベントパターンに含まれる順でイベントが発生した案件の中で、各イベントについて、起点イベントから当該イベントまでの所要期間の算術平均によって求めることができる。図4に示す例では、起点イベントを「出願」とした「サーチレポート,認可通知,登録証」というイベントパターンについて、起点イベント「出願」からイベント「サーチレポート」、「認可通知」および「登録証」までの標準所要期間がそれぞれ253日、672日、752日であることが示されている。
【0040】
なお、標準所要期間は、起点イベントからの日単位で算出されることに限定されず、月単位、年単位または四半期単位など、任意の単位で算出されてもよい。また、標準所要期間は、算術平均値ではなく、加重平均値、中央値または最頻値など、所定の統計値を用いて算出されてもよい。
【0041】
(iv)イベントデータの出力
次に、出力部124は、例えば、出願国と、四法区分と、起点イベントと、イベントパターンと、発生確率と、各イベントの標準所要期間とを対応づけたイベントデータ、すなわち図4に示す確率テーブルのデータを、図1に示す記憶部11へ出力する(図3に示すステップS16)。これにより、記憶部11には、過去の実績に基づいたイベントパターンごとの発生確率を示すイベントデータが保存される。
【0042】
イベント予測システム100による上記のようなイベントデータの作成は、定期的または不定期に行われる。例えば、1カ月おき、半年おき、1年おき、などにイベント予測システム100が上記のようにイベントデータを作成してもよい。あるいは、システム管理者が任意のタイミングでイベント予測システム100にイベントデータを作成させてもよい。あるいは、ユーザからの入力に基づき、イベント予測システム100が上記のようにイベントデータを作成するように構成してもよい。出力部124は、イベントデータが記憶部11に保存済である場合において、新たなイベントデータが作成された場合には、記憶部11に保存されているイベントデータを更新する。
【0043】
なお、出力部124は、イベントデータを通信ネットワーク20経由で端末30へ出力してもよい。端末30は、イベント予測システム100の出力部124から出力されたイベントデータを受けると、例えば、当該イベントデータを端末30のメモリ等に保存する。この場合、ユーザは、例えば端末30のモニタにおいて、過去の実績に基づいた、1または複数のイベントパターン、および各イベントパターンの発生確率を確認することができる。また、ユーザは、端末30を操作することにより、端末30に保存されているイベントデータの内容を変更することが可能である。
【0044】
(イベントデータの活用方法)
イベント予測システム100により作成されたイベントデータの活用方法について説明する。再び図1を参照して、例えば、ユーザが、端末30に対して、出願国および四法区分など、イベント予測の対象とする案件の条件を入力したとする。この場合、端末30は、ユーザにより入力された条件を示す条件情報を通信ネットワーク20経由でイベント予測システム100へ出力する。
【0045】
イベント予測システム100におけるイベントパターン抽出部122は、端末30からの条件情報を受け付ける。そして、イベントパターン抽出部122は、端末30からの条件情報を受けると、記憶部11に保存されているイベントデータ、および当該条件情報に基づいて、複数のイベントパターンの中から、ユーザにより入力された条件に合致するイベントパターンを特定する。
【0046】
例えば、ユーザが、出願国「EP」および四法区分「P」を、イベント予測の対象として条件入力を行ったとする。この場合、イベントパターン抽出部122は、出願国が「EP」であり、かつ四法区分が「P」である複数のイベントパターンを特定する。そして、イベントパターン抽出部122は、イベントデータに基づいて、特定したイバントパターンごとの発生確率を抽出し、イベントパターンと発生確率とを対応づけた発生確率データを出力部124へ出力する。
【0047】
再び図1を参照して、出力部124は、イベントパターン抽出部122から出力された発生確率データを受けると、当該発生確率データを、条件情報の出力元である端末30へ通信ネットワーク20経由で出力する。
【0048】
当該端末30は、イベント予測システム100から出力された発生確率データを受けると、例えば、当該発生確率データの示す内容を端末30のモニタに表示する処理を行う。これにより、ユーザは、端末30のモニタに表示される内容を確認することで、任意の条件を満たす案件に将来発生しうる一連のイベントパターンおよび発生確率を把握することができる。
【0049】
なお、イベント予測システム100から端末30へ出力される発生確率データには、イベントパターンごとの発生確率だけでなく、各イベントパターンの起点イベント、およびイベントパターンに含まれる各イベントの標準所要日数などが含まれてもよい。この場合、例えば、図4に示す確率テーブルに相当する、イベントパターンごとの発生確率や起点イベントなどを含む発生確率データが端末30のモニタに表示される。また、ユーザにより入力された条件に該当するすべてのイベントパターンが表示される構成に限定されず、例えば、発生確率が高いイベントパターンから優先的に、所定数のイベントパターンが表示されてもよい。
【0050】
また、ユーザは、イベント予測の対象とする案件の条件として、出願国および四法区分のいずれか一方を入力してもよいし、出願国および四法区分に加えて、さらに別の条件を入力してもよい。
【0051】
例えば、ユーザは、条件の入力として、出願国「EP」および四法区分「P」に加えて、さらに、任意の案件において発生した直近のイベント「サーチレポート」を起点イベントとして入力したとする。この場合、イベントパターン抽出部122は、イベントデータに基づいて、出願国が「EP」であり、四法区分が「P」であり、かつ起点イベントが「サーチレポート」である複数のイベントパターンを特定する。そして、特定されたイベントパターンと発生確率との対応関係を示す確率データが端末30へ出力され、当該確率データの示す内容が端末30のモニタに表示される。
【0052】
あるいは、ユーザは、出願国「EP」および四法区分「P」に加えて、出願人を特定する情報を入力してもよい。例えば、出願人によっては、早期審査請求など本来は任意の手続である特定の手続を、必ず行うことにしている場合がある。このように、出願人によってイベントパターンに偏りがある場合などは、出願人を特定することによって、出願人に即したイベントパターンの発生確率を端末30のモニタに表示させることができる。
【0053】
上記のように、第1実施形態に係るイベント予測システム100では、イベントパターン抽出部122が、各案件に発生したイベントの種類と発生タイミングとが記録されたイベント履歴に基づいて、起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミングの順に並べた1または複数のイベントパターンを抽出する。また、イベント算出部123が、イベントパターンごとの発生確率を算出する。そして、出力部124が、イベントパターンごとに発生確率を対応づけて出力する。
【0054】
このように、イベント履歴に基づいて、イベントパターンと発生確率とを対応づける構成により、過去の実績を踏まえて、産業財産権に関する将来のイベントの種類をより正確に予測することができる。
【0055】
また、第1実施形態に係るイベント予測システム100では、終結案件抽出部121が、終結イベントが発生した終結案件を抽出する。そして、イベントパターン抽出部122が、終結案件に発生したイベントのうちのいずれかを起点イベントとして決定する。
【0056】
このような構成により、終結案件において発生したイベントのうち、最初に発生したイベントに限らず、2番目以降に発生したイベントを起点イベントとして決定することができる。
【0057】
また、第1実施形態に係るイベント予測システム100では、イベントパターン抽出部122が、終結案件に発生したイベントのうち、複数種類のイベントを起点イベントとして決定可能である。
【0058】
このような構成により、同一の終結案件から、起点イベントの異なる複数のイベントパターンを抽出することができる。
【0059】
また、第1実施形態に係るイベント予測システム100では、イベントパターン抽出部122は、起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントのうち、所定条件を満たす複数のイベントを発生タイミングの順に並べたイベントパターンを抽出する。
【0060】
このような構成により、例えば、ユーザが、係属中案件に発生する予測費用を把握したい場合、費用が発生するイベントのみを並べたイベントパターンを提示することにより、ユーザに対してより適した情報を提供することができる。
【0061】
また、第1実施形態に係るイベント予測システム100では、イベント算出部123が、各イベントパターンに含まれるイベントごとに、起点イベントから各イベントに至る標準所要期間を算出する。そして、出力部124が、算出された各標準所要期間を出力する。
【0062】
このような構成により、例えば、標準所要期間をユーザに提示することで、ユーザにおいて、係属中案件に発生しうるイベントパターンだけでなく、当該イベントパターンに含まれる各イベントの発生時期を把握することができる。
【0063】
また、第1実施形態に係るイベント予測システム100では、イベントパターン抽出部122が、起点イベントの選択を受け付ける。
【0064】
このような構成により、例えば、ユーザが、係属中案件に生じた直近のイベントを起点イベントとして選択した場合、当該起点イベント以降に発生しうるイベントパターンおよび当該イベントパターンの発生確率を提示することができる。このため、ユーザに対してより有用な情報を提示することができる。
【0065】
また、第1実施形態に係るイベント予測システム100では、起点イベントは複数であり、イベントパターン抽出部122が、起点イベントごとに、1または複数のイベントパターンを抽出する。そして、出力部124が、起点イベントごとに、イベントパターンと発生確率とを対応づけて出力する。
【0066】
このような構成により、例えば、起点イベントごとに、複数のイベントパターンと、各イベントパターンの発生確率とをユーザに提示することができる。
【0067】
[第2実施形態]
(システムの全体構成)
図5は、第2実施形態に係る産業財産権である案件の費用予測システム200の構成を例示している。費用予測システム200は、通信ネットワーク20を介して一人または複数人のユーザの端末30に通信可能に接続されている。費用予測システム200は、ユーザが出願予定、出願中または保有している産業財産権である案件について、直近のイベントから終結イベントまで将来的に発生する複数のイベントを発生タイミング順に並べた一連のイベントパターンの発生確率を用いて、将来的に発生する費用予測を計算し、出力するシステムである。なお、通信ネットワーク20や端末30など第1実施形態と同様の構成については同じ参照符号を用い説明を省略する。
【0068】
費用予測システム200は、記憶部21と、制御部22を有している。制御部22は、通信ネットワーク20を介して記憶部21に通信可能に接続されている。なお、制御部22は、記憶部21とともに一つの装置をなす構成としてもよい。
【0069】
記憶部21は、履歴データベース211と、費用データベース212と、イベントデータベース213とを有している。
【0070】
履歴データベース211は、第1実施形態の履歴データベース111と同様に構成され、複数の案件のイベント履歴を記録する。イベント履歴は、各案件について実際に発生したイベントの種類とその発生タイミングを含む。ただし、第2実施形態の履歴データベース211は、更に各案件に発生したイベントの種類とその発生タイミングに関連づけて実績費用を記録してもよい。
【0071】
費用データベース212は、各イベントに要する標準費用を、対応するイベントに関連付けて記録する。図6は、費用データベース212が記録する費用テーブルの一例を示す。本例においては、費用テーブルには、出願国と各種のイベントに要する標準費用が記録されている。標準費用には、例えば庁費用と代理人費用が含まれる。庁費用と代理人費用は、別々に記録してもよい。また、本実施形態では標準費用は円貨で記録しているが、外国費用の場合には外貨で記録してもよい。標準費用は、例えば、イベントの種類ごとに、履歴データベースに記録されている過去の実績費用の算術平均値、加重平均値、中央値または最頻値など、所定の統計値を用いて算出される。
【0072】
図5に示すイベントデータベース213は、起点イベントごとに、当該起点イベントから終結イベントまでの一連のイベントパターンとそれぞれの発生確率とを記録する。イベントデータベース213は例えば、図4の確率テーブルに含まれる内容を示すイベントデータを有し、詳細は省略する。
【0073】
イベントデータベース213に記録されているイベントデータは、例えば、図1に示すイベント予測システム100における制御部12により更新される。制御部12は、図5に示す費用予測システム200に含まれる構成であってもよいし、費用予測システム200に含まれない構成であってもよい。制御部12が費用予測システム200に含まれない場合、例えば、制御部12は、更新内容を示すデータを通信ネットワーク20経由で費用予測システム200へ送信することにより、イベントデータベース213に記録されているイベントデータを更新する。
【0074】
(制御部の構成)
制御部22は、案件の直近のイベントから終結イベントまで将来的に発生する一連のイベントパターンの発生確率を用いて、当該案件に対して将来的に発生する予測費用を計算し、出力する。より詳細には、制御部22は、対象情報取得部221と、直近イベント特定部222と、費用算出部223と、出力部224と、を備える。
【0075】
(i)評価対象の抽出
図7は、図5に示す制御部22の動作の流れを説明するためのフローチャートである。より詳細には、まず、対象情報取得部221は、予測費用の対象案件(以下、「評価対象」と称する)を特定するための対象情報を取得する(図7に示すステップS21)。
【0076】
評価対象は、例えば、終結イベントが発生していない係属中案件である。なお、費用予測システム200が、例えば、案件の登録後に発生する年金等の費用についても予測を行う場合などにおいては、評価対象に終結案件が含まれてもよい。
【0077】
例えば、ユーザが、端末30に対して、評価対象の条件として、出願国、四法区分、および係属中案件などの条件を入力したとする。この場合、端末30は、ユーザにより入力された条件を示す条件情報を通信ネットワーク20経由で費用予測システム200へ出力する。そして、費用予測システム200における対象情報取得部221は、端末30からの条件情報を、対象情報として取得する。
【0078】
次に、対象情報取得部221は、履歴データベース211に記録されたイベント履歴を取得する。そして、対象情報取得部221は、対象情報およびイベント履歴に基づいて、イベント履歴に含まれる複数の案件の中から1または複数の評価対象を抽出する(図7に示すステップS22)。
【0079】
(ii)予測費用の算出
次に、直近イベント特定部222は、対象情報取得部221が抽出した各評価対象について、直近イベントを特定する(図7に示すステップS23)。直近イベントは、例えば、費用予測を行う時点で既に発生しているイベント、すなわち過去のイベントのうち直近(最新)のイベントである。
【0080】
なお、直近イベント特定部222は、評価対象の費用予測を行う時点では発生していないイベント、すなわち将来のイベントのうち、直近に発生することが確定しているイベントを直近イベントとして特定してもよい。例えば、評価対象において過去のイベントのうち最新のイベントが「認可通知」である場合、将来において直近で発生するイベントが「登録証」であることが確定している。このような場合、直近イベント特定部222は、当該評価対象の直近イベントを「登録証」と特定する。
【0081】
次に、費用算出部223は、対象情報取得部221が抽出した各評価対象の将来的に発生する費用である予測費用を算出する(図7に示すステップS24)。
【0082】
より詳細には、費用算出部223は、図6に示すイベントデータベース213に記録されているイベントデータから、評価対象ごとに、直近イベント特定部222によって特定された直近イベントを起点イベントとする1または複数のイベントパターンを特定し、各イベントパターンの発生確率を読み取る。そして、費用算出部223は、イベントパターンに含まれる各イベントの標準費用と、当該イベントパターンの発生確率とを用いて費用の期待値を算出し、算出した期待値に基づいて、1または複数の評価対象に対して発生する予測費用を算出する。
【0083】
(iii)予測費用の算出の具体例
図8は、費用算出部223が算出する予測費用の例を説明するための費用算出テーブルを示す。ここでは、一例として、費用算出部223が、評価対象である管理番号EP010の案件の予測費用を算出する場合について説明する。管理番号EP010の案件は、「出願」が直近イベントつまり起点イベントであるとする。
【0084】
この場合、費用算出部223は、イベントデータベース213に記録されているイベントデータに基づいて、「出願」を起点イベントとする1または複数のイベントパターンを特定し、特定した各イベントパターンの発生確率を読み取る。
【0085】
例えば、図4に示す確率テーブルでは、起点イベントが「出願」であり、「サーチレポート,認可通知,登録証」のイベントパターンの発生確率は13.6%であることが示されている。また、確率テーブルでは、起点イベントが「出願」であり、「サーチレポート,拒絶理由通知,認可通知,登録証」のイベントパターンの発生確率は11.4%であることが示されている。また、確率テーブルでは、起点イベントが「出願」であり、「サーチレポート,放棄」のイベントパターンの発生確率は10.1%であることが示されている。また、確率テーブルでは、起点イベントが「出願」であり、「サーチレポート,拒絶理由通知,拒絶理由通知,認可通知,登録証」のイベントパターンの発生確率は9.1%であることが示されている。
【0086】
再び図8を参照して、費用算出部223は、イベントパターンに含まれるイベントごとに、当該イベントの標準費用に、イベントパターンの発生確率の重みを付けた値を、費用の期待値として算出する。
【0087】
具体的には、起点イベントが「出願」であり、「サーチレポート,認可通知,登録証」のイベントパターンが抽出されたとする。この場合、「サーチレポート」の標準費用である300,000円に、当該イベントパターンの発生確率13.6%を乗じた値40,800円が、「サーチレポート」についての費用の期待値として算出される。また、「サーチレポート」だけでなく、「認可通知」および「登録証」についても、各イベントの標準費用に当該イベントパターンの発生確率を乗じることにより、各イベントの費用の期待値が算出される。
【0088】
このように、費用算出部223は、「出願」を起点イベントとする全てのイベントパターンに対して、イベントごとの期待値を算出する。そして、費用算出部223は、例えば、算出した複数の期待値の加重平均を算出することによって、管理番号EP010の案件の将来的な予測費用を算出することができる。
【0089】
図8に示すように、起点イベントの次のイベントの種類が同一であっても、イベントパターンの発生確率に応じて、当該イベントに対する費用の期待値が異なる。このため、上記のように、イベントの標準費用と、イベントパターンの発生確率とを用いて予測費用を算出することにより、イベントの標準費用のみを用いて予測費用を算出する場合と比較して、過去の統計パターンに基づく、より正確な予測費用を算出することができる。
【0090】
なお、費用算出部223は、複数の評価対象に発生する予測費用を算出してもよい。例えば、費用算出部223は、管理番号EP010の案件と同様に、評価対象である管理番号EP011の案件についても予測費用の算出を行う。そして、費用算出部223は、評価対象ごとの予測費用を合計することによって、複数の評価対象の案件全体の将来的な予測費用を算出することができる。
【0091】
(iv)費用が発生する時期の予測
再び図5および図7を参照して、費用算出部223は、さらに、評価対象に対して費用が発生する予測時期を算出する(図7に示すステップS25)。例えば、費用算出部223は、イベントデータを参照し、特定したイベントパターンごとに、起点イベントの発生タイミングから各イベントまでの標準所要期間を確認する。そして、費用算出部223は、図8に示すように、イベントパターンに含まれるイベントごとに、起点イベントの発生タイミングから標準所要期間を経過した日を、費用が発生する予測時期として算出する。
【0092】
図8の例では、イベントパターンに含まれるイベントごとに、予測時期として予測日が記録されている。費用算出部223は、この予測日も考慮することによって、2024年11月に発生する予測費用や、2024年の1年間に発生する予測費用など、所定の予測期間に応じた予測費用を算出することもできる。
【0093】
(v)予測費用の出力
次に、出力部224は、費用算出部223により算出された1または複数の評価対象の予測費用と予測時期とを対応づけたデータを、通信ネットワーク20経由でユーザの端末30に出力する(図7に示すステップS26)。出力部224は、この際、所定の予測期間に発生する予測費用の合計値を出力してもよい。
【0094】
なお、出力部224は、予測費用と合わせて履歴データベース211に記録されている実績費用を出力してもよい。これによって、過去の実績費用と将来の予測費用をまとめて管理することが出来るため、例えば、ユーザにおいて、産業財産権に発生する費用の傾向を把握したり、費用の予測精度を確認したりすることができる。
【0095】
また、費用算出部223は、算出した予測費用を単純に足し合わせて合計値を算出するだけでなく、特定の集計軸で集計した値を算出することもできる。例えば、費用算出部223は、出願国やイベントの種類ごとに予測費用を集計することができる。
【0096】
また、第1実施形態と同様に、出力部224からの出力は、端末30を介したユーザへの提示だけでなく、図8に示すような、イベントごとの費用の期待値を含む費用算出テーブルのデータを、図5に示す記憶部21に保存してもよい。
【0097】
また、費用算出部223は、費用算出テーブルとは別に、案件ごとに、管理番号、出願年、特定技術分野および製品分類等が関連付けられた案件書誌テーブルを参照することで、出願年や特定技術分野、製品分類等の集計軸で予測費用を集計してもよい。例えば、2022年に出願した複数の評価対象について将来的に発生する予測費用の合計値を算出したり、特定技術分野に関連する評価対象について将来的に発生する予測費用の合計値を算出したりすることができる。
【0098】
上記のように、第2実施形態に係る費用予測システム200では、対象情報取得部221が、評価対象の案件を特定するための対象情報と、各案件に発生したイベントの種類および発生タイミングが記録されたイベント履歴とを取得する。また、直近イベント特定部222が、対象情報およびイベント履歴に基づいて、評価対象の直近イベントを特定する。また、費用算出部223が、起点となる起点イベントごとに、起点イベントから終結イベントまでの複数のイベントを発生タイミングの順に並べた複数のイベントパターンと、各イベントパターンの発生確率とを含むイベントデータを取得し、直近イベントを起点イベントとする1または複数のイベントパターンの発生確率と、イベントパターンに含まれる各イベントの標準費用とに基づいて、評価対象に対して発生する予測費用を算出する。
【0099】
このような構成により、評価対象に発生しうるイベントパターンの発生確率を考慮して、評価対象に関する費用をより正確に予測することができる。
【0100】
また、第2実施形態に係る費用予測システム200では、費用算出部223が、評価対象ごとに、イベントパターンに含まれる各イベントの標準費用と、イベントパターンの発生確率とを用いた期待値を算出し、期待値に基づいて上記予測費用を算出する。
【0101】
このように、評価対象の直近イベントを起点イベントするイベントパターンについて、イベントパターンに含まれるイベントごとの費用の期待値を算出する構成により、評価対象ごとの予測費用をより正確に算出することができる。
【0102】
また、第2実施形態に係る費用予測システム200では、イベントデータは、イベントパターンに含まれるイベントごとに、起点イベントから各イベントに至る標準所要期間を含む。費用算出部223は、さらに、直近イベントの発生タイミングと、直近イベントを起点イベントとするイベントパターンに含まれるイベントごとの標準所要期間とに基づいて、評価対象に対して費用が発生する予測時期を、予測費用に対応づけて算出する。
【0103】
このような構成により、例えば、予測費用をユーザに提示するだけでなく、費用が発生する予測時期をユーザに提示することができる。
【0104】
[変形例]
再び図5を参照して、第2実施形態に係る費用予測システム200の費用算出部223は、イベントパターン含まれるイベントごとに費用の期待値を算出し、複数の期待値の統計値を算出することにより予測費用を算出する。これに対して、変形例に係る費用算出部223は、期待値を用いることなく、起点イベントが共通する各評価対象に対してイベントパターンを割り当てて、複数の評価対象に発生する予測費用を算出する。
【0105】
より詳細には、費用算出部223は、起点イベントが共通する複数のイベントパターンを特定する。そして、費用算出部223は、当該起点イベントを直近イベントとする複数の評価対象のうち、イベントパターンの発生確率に対応する数の評価対象の案件に対して、当該イベントパターンを割り当てる。
【0106】
図9は、費用算出部223が評価対象の案件に対していずれか1のイベントパターンを割り当てる例を示す。本例においては、EP010からEP050の欧州特許出願は評価対象の案件であり直近イベントは「出願」である。図9に示すように、これらの案件には図4の「出願」を起点イベントとするイベントパターンの何れか一つのイベントパターンが発生確率に基づいて割り当てられる。
【0107】
具体的には、図9に示すEP010からEP050の41件のうち、13.6%に相当する5件または6件に対して、「サーチレポート,認可通知,登録証」のイベントパターンが割り当てられる。また、これら41件のうち、11.4%に相当する4件または5件に対して、「サーチレポート,拒絶理由通知,認可通知,登録証」のイベントパターンが割り当てられる。このように、各案件には、「出願」を起点イベントとするいずれか1つのイベントパターンが割り当てられる。
【0108】
そして、費用算出部223は、各案件に割り当てられたイベントパターン内のイベントに基づき、費用データベース212から予測費用を読み取り、評価対象の予測費用を算出する。例えば、費用算出部223は、EP010の案件について、サーチレポートの標準費用300,000円、認可通知の標準費用200,000円、および登録証の標準費用10,000円の合計値510,000円を予測費用として算出する。
【0109】
このように、費用算出部223は、各案件について予測費用を算出し、各案件の予測費用の合計値を算出する。これにより、「出願」を直近イベントとする複数の評価対象の予測費用を算出することができる。このため、変形例に係る費用予測システム200においても、第2実施形態に係る費用予測システム200と同様に、過去の統計パターンに基づいて、より正確な予測費用を算出することができる。
【0110】
上記のように、第2実施形態の変形例に係る費用予測システム200では、費用算出部223が、起点イベントが共通する複数の評価対象のうち、イベントパターンごとに、イベントパターンの発生確率に対応する数の評価対象に対して、イベントパターンを割り当てて、複数の評価対象に対して発生する予測費用の合計値を算出する。
【0111】
このような構成により、複数の評価対象に発生する予測費用をまとめて算出することができるため、評価対象ごとに予測費用を算出する場合と比較して、予測費用の算出のための演算処理を軽減させることができる。
【0112】
これまで説明した様々な機能を有する制御部12、22は、プロセッサ、非一時的記録手段、および一時的記録手段を備えている。非一時的記録手段、および一時的記録手段は、汎用メモリにより実現されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラム(コンピュータ可読命令)が記憶されうる。プロセッサは、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、無線通信ネットワークを介して外部サーバ装置からダウンロードされた後、汎用メモリにインストールされてもよい。
【0113】
プロセッサは、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。各プロセッサは、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0114】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0115】
100 イベント予測システム
11 記憶部
111 履歴データベース
12 制御部
121 終結案件抽出部
122 イベントパターン抽出部
123 イベント算出部
124 出力部
200 費用予測システム
21 記憶部
211 履歴データベース
212 費用データベース
213 イベントデータベース
22 制御部
221 対象情報取得部
222 直近イベント特定部
223 費用算出部
224 出力部
20 通信ネットワーク
30 ユーザの端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9