(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098947
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240717BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240717BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240717BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240717BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240717BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240717BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
A23L33/135
A61P37/08
A61P37/02
A61P29/00
A61K35/74
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122567
(22)【出願日】2023-07-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0190903
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 韓国食品栄養科学会2022年度国際シンポジウム及び第73次定期学術大会(発表日2022年10月20日、開催場所:済州国際コンベンションセンター)においてポスター発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 韓国食品栄養科学会2022年度国際シンポジウム及び第73次定期学術大会抄録集,第499頁,プログラム番号P05-38(発行日2022年10月19日)において公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 学会抄録集:https://www.kfn.or.kr/content/community/post_view.php?bt=7&post_id=4531&page=1(掲載日2022年10月26日)においてWeb公開
(71)【出願人】
【識別番号】523275983
【氏名又は名称】グリーンストア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】シン,デ グン
(72)【発明者】
【氏名】ク,ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ,ナ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】バン,チェヨン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME07
4B018ME14
4B065AA01X
4B065BC03
4B065CA41
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC30
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB13
(57)【要約】
【課題】本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)及びその用途に関する。
【解決手段】本発明に係る菌株は、人体に毒性がないので安全であり、免疫調節効能と共に、炎症反応抑制などの優れた生理活性を有し、過敏免疫(皮膚、喘息及び鼻炎などのアレルギー疾患)のみならず、免疫正常化及び炎症疾患の予防、改善又は治療のための素材として使用され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株。
【請求項2】
ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫過敏反応又は炎症疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項3】
前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物及び菌株抽出物から選ばれるいずれか一つである、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記免疫過敏反応は、アレルギー原因物質によって誘発されるものである、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記炎症疾患は、免疫過敏反応によって誘発されるものである、請求項2に記載の薬学組成物。
【請求項6】
ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫過敏反応又は炎症疾患改善用食品組成物。
【請求項7】
ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫改善用食品組成物。
【請求項8】
前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物及び菌株抽出物から選ばれるいずれか一つである、請求項6又は請求項7に記載の食品組成物。
【請求項9】
ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫力増進用健康機能食品。
【請求項10】
前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物及び菌株抽出物から選ばれるいずれか一つである、請求項9に記載の健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06菌株及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫過敏反応は、過度な免疫反応が起こる現象であって、免疫欠乏(immune deficiency)、自己免疫(autoimmunity)、移植拒否反応(transplantation rejection)などと共に、免疫と関連した疾病に属する。
【0003】
Gell&Coomsの分類法を用いると、過敏反応は、合計4型に分類することができる。この分類法は、各疾患の免疫学的メカニズムを基準にして、アレルギーのほとんどであると共に、アナフィラキシーを誘発するので、即時型過敏反応と呼ばれる1型アレルギーと、抗体媒介過敏反応である2型と、免疫複合体による3型と、後天性免疫による4型とに区分している。
【0004】
このうち、第1型、すなわち、一般的な意味のアレルギーでは、抗体のうちIgEと肥満細胞(mast cell)が主要症状を誘発する。肥満細胞は、前駆細胞が未だに不確実であるが、白血球のうち好塩基球(basophils)が有力である。肥満細胞と結合したIgEは、化学物質のように、単一抗原や、多くの理由によって抗原であっても抗原として認識できない抗原に対しては、複合体が結合した場合にも免疫作用を行うことができない。しかし、特定の配列の多価抗原の場合は、肥満細胞を刺激し、細胞内の脱顆粒(degranulation)を誘発するようになる。
【0005】
これによって、ヒスタミン(histamine)、ロイコトリエン(leukotriene)、プロスタグランジン(prostaglandin)及びIL-4などの多くの信号化学物質を放出する。ヒスタミンは、血管の透過性を増加させ、血管内の体液を血管外に放出するので、炎症を誘発する。体液が放出されることによって、血圧は減少するようになる。血圧は、3要素、すなわち、血液の量、血管の大きさ及び心臓の収縮力によって影響を受けるが、体液が放出されることによって血圧が影響を受ける。
【0006】
また、急性過敏反応である過敏性ショックは、血管拡張及び気道閉塞などを起こす。これは、生命を脅かす症状であって、エピネフリン注射及び心肺蘇生法を直ぐ行わなければならない。また、粘液を増加させ、炎症性体液排出が増加するので、気管支炎症が増大することによって呼吸困難を誘発することもある。ヒスタミンのみならず、ロイコトリエンは、ヒスタミンの影響を増加させ、プロスタグランジンは、免疫反応に広範囲に作用し、インターロイキン4は、IgEの生成を誘導する免疫細胞の活性を促進させる。また、インターロイキン4は、他の白血球の遊走を促進させ、炎症を慢性化する。
【0007】
1型アレルギーは、IgEの影響によってアトピー性と非アトピー性とに分けられるが、非アトピー性は、IgEの数が少ないにもかかわらず、アレルギーが誘発されるという特徴を示す。また、胃腸にもヒスタミン受容体があるので、胃炎症状を示す場合もある。症状を抑制するためには、ヒスタミンが受容体と結合して症状を示すことを抑制する抗ヒスタミン剤と、COX回路と通称されるプロスタグランジン合成メカニズムを抑制又は妨害することによって炎症を抑制する抗炎症製剤(消炎剤)などが主に使用される。
【0008】
韓国登録特許第10-1937364号(2019.01.04.)には、免疫調節作用を有するヒト消化管由来の新規乳酸菌及びその用途に関して開示されている。韓国登録特許第10-1783672号(2017.09.26.)には、乳児糞便から分離した菌株及びこれを用いた抗酸化及び免疫強化機能を有する発酵乳の製造方法に関して開示されている。
【0009】
本発明では、前記免疫過敏反応及び過敏反応による炎症に関する改善及び治療効能を有する新規菌株を発掘したので、これを提供しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1937364号
【特許文献2】韓国登録特許第10-1783672号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06菌株及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を提供する。
【0013】
一方、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫過敏反応又は炎症疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0014】
このとき、前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、好ましくは、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物又は菌株抽出物から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0015】
このとき、前記免疫過敏反応は、好ましくは、アレルギー原因物質によって誘発されるものであり得る。
【0016】
このとき、前記炎症疾患は、好ましくは、免疫過敏反応によって誘発されるものであり得る。
【0017】
一方、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫過敏反応又は炎症疾患改善用食品組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫改善用食品組成物を提供する。
【0019】
このとき、前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、好ましくは、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物又は菌株抽出物から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0020】
一方、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫力増進用健康機能食品を提供する。
【0021】
このとき、前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、好ましくは、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物又は菌株抽出物から選ばれるいずれか一つであり得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る菌株は、人体に毒性がないので安全であり、免疫調節効能と共に、炎症反応抑制などの優れた生理活性を有し、過敏免疫(皮膚、喘息及び鼻炎などのアレルギー疾患)のみならず、免疫正常化及び炎症疾患の予防、改善又は治療のための素材として使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】PlasmidFinder 2.0分析プログラムを用いて本発明の乳酸菌であるウィッセラ・チバリアGSKM06菌株の横的移動と関連性の高い媒介水平遺伝子の保有有無を確認した結果を示す図である。
【
図2】本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の一酸化窒素(NO)の生成抑制能を確認した結果を示す図である。
【
図3】本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)のβ-ヘキソサミニダーゼ(β-Hexosaminidase)の生成抑制能を確認した結果を示す図である。
【
図4】本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の気道付着能を調査した結果を示す図である。
【
図5】本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるマウスの重さ変化を確認した結果を示す図である。
【
図6】本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与による血清内IgE数値の減少効能を確認した結果を示す図である。
【
図7】気道炎症誘発群における本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるIL-4の減少効能を確認した結果を示す図である。
【
図8】気道炎症誘発群における本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるIL-5の減少効能を確認した結果を示す図である。
【
図9】気道炎症誘発群における本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるIL-13の減少効能を確認した結果を示す図である。
【
図10】気道炎症誘発群における本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるIL-1βの減少効能を確認した結果を示す図である。
【
図11】気道炎症誘発群における本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるIL-6の減少効能を確認した結果を示す図である。
【
図12】気道炎症誘発群における本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるTNF-αの減少効能を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、重複する内容の混雑を防止するために、重複する内容の記載は省略した。すなわち、下記の内容のみに発明の内容が限定されるのではなく、全体的な発明の内容によって発明の内容が解釈されるべきである。
【0025】
本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を提供する。
【0026】
本発明の実施例によると、本発明で発掘した菌株は、免疫改善(免疫力増加)、免疫過敏反応及び炎症疾患の改善又は治療に効能を有することが確認された。
【0027】
したがって、本発明では、前記菌株を「ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06」と命名し、韓国生命工学研究院に寄託し、2022年10月11日付けで受託番号KCTC15129BPが付与された。
【0028】
一方、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)を含有する免疫過敏反応又は炎症疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0029】
このとき、前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、好ましくは、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物又は菌株抽出物から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0030】
このとき、前記免疫過敏反応は、好ましくは、アレルギー原因物質(抗原)によって誘発されるものであり得るが、このとき、アレルギー原因物質である木、草、ブタクサ、花粉などの物質に誘導されて発生する季節性アレルギー、薬物アレルギー、食物アレルギー、ホコリ、動物のフケやカビの吸入によって誘発される通年性アレルギー抗原、特定の物質(抗原)との接触によって誘発されるアレルギー、昆虫に咬まれたり刺されることによって誘発されるアナフィラキシー反応、及び病原性菌の感染によって発生するアレルギーを含む。
【0031】
一般に、アレルギーが現れると、くしゃみをし、涙、目のかゆみ、鼻水、皮膚のかゆみ、発疹などが現れる。アナフィラキシーと呼ばれる一部のアレルギー反応は、生命を脅かすこともある。
【0032】
一般に、抗体、白血球、肥満細胞、補体タンパク質及びその他の物質などを含む免疫体系は、人体を外部物質(抗原)から保護する。しかし、脆弱な人の場合、ほとんどの人にとって無害な食物、薬物又は環境中の特定の物質(アレルギー抗原)に露出すると、免疫体系が過敏に反応し得る。
【0033】
多くのアレルギー反応で免疫体系が抗原に最初に露出すると、免疫グロブリンE(IgE)と言う抗体を生産する。IgEは、血流にある好塩基球と言う一種の白血球と、組織にある肥満細胞と言う類似細胞に結合される。最初の露出時、人体がアレルギー抗原に敏感になり得るが(「感作」と言う)、症状は現れない。
【0034】
感作された人が後でアレルギー抗原と接すると、IgEがある好塩基球と肥満細胞がヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエンなどの物質を放出するが、これが周辺組織の浮腫や炎症を誘発する。そのような物質は、連鎖反応を開始しながら組織を持続的に刺激し、組織に害を与える。
【0035】
本発明の実施例では、本発明に係る菌株が、病原性菌及び薬物によって誘発された免疫過敏反応及び炎症反応を効果的に抑制したことが確認された。
【0036】
本発明に係る菌株は、特に、呼吸器、中枢神経系及びヒト関節に感染を起こし得る有害菌であるモラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)KCCM42706に対する抑制効能が確認された。
【0037】
そこで、前記免疫過敏反応は、喘息、鼻炎、肺炎などを含む呼吸器感染、中枢神経系感染、関節炎、肺血症、髄膜炎及び皮膚炎から選ばれるいずれか一つを含むことができる。
【0038】
また、前記炎症疾患は、好ましくは、免疫過敏反応によって誘発されるものであり得るが、このとき、前記炎症疾患は、一例として、咽喉炎、扁桃炎、喉頭蓋炎、喉頭気管支炎、肝炎、食道炎、胃炎、皮膚炎、関節炎、腸炎、膣炎、肺炎、胆道炎、胆嚢炎、及び膵腸炎から選ばれるいずれか一つであり得るが、アレルギー抗原によって誘発される炎症であれば、その疾病は限定されない。
【0039】
本発明で使用される「予防」という用語は、本発明に係る薬学的組成物の投与によって影響を受ける疾患、すなわち、免疫過敏反応又は炎症疾患を抑制することや、その発病を遅延させる全ての行為を意味する。
【0040】
本発明で使用される「治療」という用語は、本発明に係る薬学的組成物の投与によって免疫過敏反応又は炎症疾患症状が好転することや、有利に変更される全ての行為を意味する。
【0041】
本発明の前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を有効成分として含む組成物は、前記成分に追加的に同一又は類似する機能を示す有効成分を1種以上含有することができる。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株以外に、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。
【0043】
本発明で使用され得る担体の種類は、特に制限されず、当該技術分野で通常使用される担体であればいずれも使用可能である。前記担体の非制限的な例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、マルトデキストリン、グリセロール、エタノールなどを挙げることができる。これらは、単独で使用されてもよく、2種以上を混合して使用されてもよい。
【0044】
また、本発明の薬学的組成物は、必要な場合、抗酸化剤、賦形剤、希釈剤、緩衝液又は静菌剤などのその他の薬学的に許容可能な各添加剤を添加して使用することができ、界面活性剤、結合剤、充填剤、増量剤、湿潤剤、崩壊剤、分散剤又は潤滑剤などを付加的に添加して使用することができる。
【0045】
本発明の薬学的組成物において、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、薬学的組成物全体の重量を基準にして0.00001重量%乃至99.99重量%で含まれてもよく、好ましくは0.1重量%乃至90重量%、より好ましくは0.1重量%乃至70重量%、さらに好ましくは0.1重量%乃至50重量%で含まれ得るが、これには限定されず、投与対象の状態、具体的な病症の種類、進行程度などによって多様に変更可能であり、必要な場合、薬学的組成物の全体含量でも含まれ得る。
【0046】
すなわち、本発明の薬学的組成物の薬学的有効量及び有効投与量は、薬学的組成物の製剤化方法、投与方式、投与時間及び/又は投与経路などによって多様になり得る。また、本発明の薬学的組成物の薬学的有効量及び有効投与量は、薬学的組成物の投与で達成しようとする反応の種類と程度、投与対象になる個体の種類、年齢、体重、一般的な健康状態、疾病の症状や程度、性別、食餌、排泄、該当の個体に同時又は異時に共に使用される薬物又はその他の組成物の成分などを始めとした多くの因子、及び医薬分野でよく知られている類似因子に従って多様になり得る。また、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、目的とする治療に効果的な投与量を容易に決定して処方することができる。例えば、本発明の薬学的組成物の一日投与量は、約0.01mg/kg乃至1,000mg/kgで、好ましくは0.1mg/kg乃至100mg/kgであって、本発明の薬学的組成物は、一日1回乃至数回に分けて投与することができる。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、一日に1回投与されてもよく、数回に分けて投与されてもよい。本発明の薬学的組成物は、個別治療剤として投与されたり、他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次的又は同時に投与されてもよい。前記要素を全て考慮した上で、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することができ、これは、当業者によって容易に決定され得る。
【0048】
本発明の薬学的組成物は、免疫過敏反応又は炎症疾患を予防又は治療するために、追加的にホルモン治療、薬物治療などの多様な方法と併用して使用され得る。
【0049】
本発明で使用された「投与」という用語は、いずれかの適切な方法で患者に本発明の薬学的組成物を導入することを意味し、本発明の薬学的組成物の投与経路及び投与方式は、それぞれ独立的であってもよく、目的とする該当の部位に前記薬学的組成物が到逹し得る限り、特別な制限なく任意の投与経路及び投与方式に従うことができる。
【0050】
前記薬学的組成物は、経口投与又は非経口投与方式で投与することができ、経口投与又は非経口投与のための適切且つ多様な剤形に製剤化されて使用され得る。
【0051】
本発明の薬学的組成物を用いた経口投与用製剤の非制限的な例としては、油性懸濁液、トローチ剤(troches)、ロゼンジ(lozenge)、錠剤、水溶性懸濁液、調剤粉末、顆粒、エマルジョン、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップ又はエリキシル剤などを挙げることができる。
【0052】
本発明の薬学的組成物を経口投与用に製剤化するためには、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アミロペクチン、セルロースラクトース、サッカロース又はゼラチンなどの結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム又はポリエチレングリコールワックスなどの潤滑剤;第二リン酸カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシ澱粉又はサツマイモ澱粉などの崩壊剤;などを使用することができ、芳香剤、シロップ剤、甘味剤なども使用することができる。さらに、カプセル剤の場合は、前記言及した物質以外にも、脂肪油などの液体担体などをさらに使用することができる。
【0053】
本発明の薬学的組成物の非経口投与方法としては、筋肉内投与、経皮投与、静脈内投与、腹腔内投与又は皮下投与などを用いることができ、前記組成物を疾患部位に塗布、噴霧又は吸入する方法も利用可能であるが、これに制限されない。
【0054】
本発明の薬学的組成物を用いた非経口用製剤の非制限的な例としては、注射液、坐剤、軟膏、塗布用パウダー、オイル、呼吸器吸入用粉末、スプレー用エアロゾル剤、クリームなどを挙げることができる。
【0055】
本発明の薬学的組成物を非経口投与用に製剤化するためには、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、外用剤などを使用することができ、前記非水性溶剤及び懸濁剤としては、オリーブオイルなどの植物性油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどを使用することができる。
【0056】
本発明の薬学的組成物を注射液に製剤化する場合、本発明の薬学的組成物を安定剤又は緩衝剤と共に水で混合することによって溶液又は懸濁液に製造し、これをアンプル(ampoule)又はバイアル(vial)の単位投与用に製剤化することができる。
【0057】
本発明の薬学的組成物をエアロゾル剤に製剤化する場合、水分散された濃縮物又は湿潤粉末が分散されるように推進剤などの添加剤と共に配合することができる。
【0058】
本発明の薬学的組成物を軟膏、オイル、クリーム、塗布用パウダー、皮膚外用剤などに製剤化する場合は、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、酸化亜鉛などを担体として使用して製剤化することができる。
【0059】
一方、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫過敏反応又は炎症疾患改善用食品組成物を提供する。
【0060】
また、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫改善用食品組成物を提供する。
【0061】
このとき、前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、好ましくは、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物又は菌株抽出物から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0062】
本発明の「改善」という用語は、本発明の組成物の投与で免疫力、免疫過敏反応又は炎症疾患が好転したり、又は有利に変更される全ての行為を意味する。
【0063】
本発明の免疫過敏反応又は炎症疾患の改善用又は免疫改善用食品組成物において、前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、好ましくは、食品組成物に対して0.00001重量%~50重量%で含まれると良く、0.00001重量%未満である場合は、その効果が微々たるものとなり、50重量%を超える場合は、使用量に比べて効果の増加が微々たるものとなるので非経済的である。
【0064】
本発明の食品組成物は、一例として、麺類、ガム類、乳製品類、アイスクリーム類、肉類、穀類、カフェイン飲料、一般飲料、チョコレート、パン類、スナック類、お菓子類、キャンディー、ピザ、ゼリー、アルコール性飲料、お酒、ビタミン複合剤及びその他の健康補助食品類から選ばれるいずれか一つであり得るが、必ずしもこれに限定されない。
【0065】
本発明の食品組成物を食品添加物として使用する場合、これをそのまま添加して使用されたり、他の食品又は食品成分と共に使用されてもよく、通常の方法によって適宜使用され得る。
【0066】
一方、本発明は、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株を含有する免疫力増進用健康機能食品を提供する。
【0067】
このとき、前記免疫力増進とは、免疫改善を意味する。
【0068】
このとき、前記ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、好ましくは、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)の生菌、死菌、その培養物又は菌株抽出物から選ばれるいずれか一つであり得る。
【0069】
前記「健康機能食品」とは、健康機能食品に関する法律第6727号による人体に有用な機能性を有する原料や成分を用いて製造及び加工した食品を意味し、「機能性」とは、人体の構造及び機能に対する栄養素の調節、又は生理学的作用などの保健用途に有用な効果を得る目的で摂取することを意味する。
【0070】
本発明の食品組成物及び健康機能食品は、通常、匂い、味、視覚などを向上できる追加成分を含むことができ、例えば、ビオチン(biotin)、葉酸(folate)、パントテン酸(panthotenic acid)、ビタミンA、C、D、E、B1、B2、B6、B12、ナイアシン(niacin)などを含むことができ、クロム(Cr)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、カルシウム(Ca)などのミネラルを含むことができ、システイン、バリン、リシン、トリプトファンなどのアミノ酸を含むことができる。また、本発明の食品組成物及び健康機能食品には、防腐剤(ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなど)、着色剤(タール色素など)、発色剤(亜硝酸ナトリウムなど)、漂白剤(亜硫酸ナトリウム)、殺菌剤(漂白粉と高度漂白粉、次亜塩素酸ナトリウムなど)、膨張剤(ミョウバン、D-酒石酸水素カリウムなど)、強化剤、乳化剤、増粘剤(糊料)、被膜剤、酸化防止剤[ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)など]、調味料(MSGグルタミン酸ナトリウムなど)、甘味料(ズルチン、シクラメート、サッカリン、ナトリウムなど)、香料(バニリン、ラクトン類など)、ガム基礎剤、泡抑制剤、溶剤、改良剤などの食品添加物(food additives)を添加することができる。前記添加物は、食品の種類によって選別され、適切な量で使用され得る。
【0071】
本発明の健康機能食品において、ウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)GSKM06(KCTC15129BP)菌株は、その含量は特に制限されず、投与対象の状態、具体的な病症の種類、進行程度などによって多様に変更可能であり、必要な場合、食品の全体含量でも含まれ得る。
【0072】
以下、本発明の内容を下記実施例又は実験例を通じてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の権利範囲は、下記実施例又は実験例にのみ限定されるものではなく、それと等価の技術的思想の変形までも含む。
【実施例0073】
[実施例1:ウィッセラ・チバリアGSKM06(W.cibaria GSKM06)の分離及び同定]
【0074】
1.乳酸菌の分離
【0075】
星州の一農場で適期に収穫されたマクワウリをMRS液体培地[Lactobacilli MRSブロス(broth);Difco、USA]に入れ、37℃で約48時間にわたって前培養した。その後、培養液を、滅菌希釈液(3M、USA)を用いて十分に希釈した後、MRS寒天培地(Lactobacilli MRS agar;Difco、USA)にブロモクレゾールパープル(bromocresol purple)0.05%を添加したBCP培地で、37℃で約48時間にわたって嫌気的に培養した後、純粋分離した。最終的に分離された菌株に対しては、WGS(Whole-Genome Sequencing)を用いて全長遺伝体の塩基配列情報を明らかにした。
【0076】
2.乳酸菌の同定
【0077】
マクワウリから分離した菌株は、グラム染色、生理学的特性及び16S rRNA配列などを通じて菌株の種を確認し、菌株名を付与した。該当の乳酸菌は、ウィッセラ・チバリア菌株として確認され、「ウィッセラ・チバリアGSKM06(Weissella cibaria GSKM06)」と命名した。ウィッセラ・チバリアGSKM06の16S rRNA配列は、配列番号1に示した。
【0078】
3.糖代謝特性の確認
【0079】
API 50CHLキット(Bio Merioux、France)を用いて、供給会社の実験方法に従って糖代謝特性を調査した。下記表1から確認できるように、前記分離された菌株の糖代謝特性を調査した結果でもウィッセラ・チバリア(Weissella cibaria)として同定され、16S rRNA遺伝子の配列分析による同定結果を再確認できた。
【0080】
【0081】
[実験例1:ウィッセラ・チバリアGSKM06(W.cibaria GSKM06)の安全性評価]
【0082】
1.溶血活性の有無の確認
【0083】
本発明の乳酸菌の安全性を評価するためには、溶血活性(α,β,γ-hemolysis)の有無を確認した。このとき、陽性対照群としては、β-溶血(hemolysis)活性を有する黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)KCTC 3881(Korean Collection for Type Cultures,Korea)を使用した。
【0084】
より具体的には、5%(v/v)のヒツジ脱線維素血液(Defibrinated Sheep Blood)が添加された血液固体培地を使用し、各菌を塗抹してから37℃で48時間にわたって嫌気培養した後、クリアゾーン(clear zone)の生成有無を確認し、その結果を下記表2に示した。
【0085】
【0086】
実験の結果、陽性対照群である黄色ブドウ球菌株はクリアゾーンを生成したが、本発明の乳酸菌であるGSKM06菌株はクリアゾーンを生成しなかった。
【0087】
したがって、本発明のウィッセラ・チバリアGSKM06菌株においては、溶血活性がないことを確認できた。
【0088】
2.抗生剤耐性の有無の確認
【0089】
本発明の乳酸菌の安全性を評価するために、抗生剤耐性の有無を確認した。抗生剤耐性実験は、特定の抗生剤の濃度が1/2ずつ希釈された15個の濃度で構成されたM.I.C.Evaluator Strips(Oxoid,Cambridge,UK)を用いて確認し、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority;EFSA,2012)の基準を適用して評価した。
【0090】
合計8種の抗生剤を下記表3のような濃度で使用し、本発明の乳酸菌の最小阻害濃度(Minimum inhibitory concentrations、MICs)を確認するための培地として、ISOで提示したisoSensitestブロス(Oxoid,UK)とMRS寒天(agar)(Oxoid,UK)とを9:1で配合したLSM培地を使用した。抗生剤耐性の有無は、LSM培地に各乳酸菌を塗抹した後、抗生剤ストリップを載せてから、37℃の嫌気条件下で24時間にわたって培養しながら確認した。結果は、下記表4に示した。
【0091】
【0092】
【0093】
実験の結果、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株は、カナマイシン(kanamycin)に対して抵抗性を有することが確認された。
【0094】
一方、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株に対しては、追加的に、菌株の全長遺伝体の分析結果に基づいてResfinder 4.1データベースを活用して抗生剤耐性関連遺伝子の保有有無を分析し、PlasmidFinder 2.0分析プログラムを用いて遺伝子の横的移動と関連性の高い媒介水平遺伝子(プラスミド、prophage、insertion sequence element)の保有有無(
図1)を分析した後、その結果を下記表5及び表6に示した。
図1は、PlasmidFinder 2.0分析プログラムを用いて本発明の乳酸菌であるウィッセラ・チバリアGSKM06菌株の横的移動と関連性の高い媒介水平遺伝子の保有有無を確認した結果を示す。
【0095】
【表5】
*Perfect Hits:参照配列と一致(matches reference sequence)
*Strict Hits:モデル内の類似性(similarity within model)
*Loose Hits:モデル外部の類似性(similarity outside of model)
【0096】
【0097】
実験の結果、GSKM06菌株においては、抗生剤耐性関連遺伝子と抗生剤耐性との間の移動がないことを示した。
【0098】
したがって、本発明のGSKM06菌株は、抗生剤耐性に対する憂いのない安全な菌株であることを確認した。
【0099】
[実験例2:ウィッセラ・チバリアGSKM06(W.cibaria GSKM06)の病原性菌抑制効能試験]
【0100】
1.乳酸菌の局所性過敏免疫病原性菌の抑制能評価(定性的)
【0101】
本発明の乳酸菌の病原性菌に対する抑制能を定性的に評価するために、寒天ウェル拡散アッセイ(Agar-well diffusion assay)(Int.J.Infect.Dis.,2004,Vol.(8),p.39-45)を行った。本発明で使用した指示菌は、下記表7に示した。
【0102】
【0103】
より具体的には、本発明のウィッセラ・チバリアGSKM06菌株をMRSブロスで37℃及び18時間の好気性条件下で培養した。活性化させた菌株は、遠心分離した後、ペレットを除去した上澄み液を0.22μmのフィルターを通じてフィルタリングし、結果物を抗菌物質として使用した。ペレットのみを除去する場合、上澄み液に残っている可能性のある少量の菌が寒天プレート上のローン(lawn)に敷かれる現象を発生させ得るので、除菌フィルター過程を経た後、その菌を抑制効能評価に使用した。
【0104】
肺炎菌として知られている肺炎球菌(S.pneumoniae)KCTC5764菌株に対する抗菌活性評価は、BHIブロスで活性化したオーバーナイト培養液を100倍希釈し、BHI寒天に接種した後、プレートに注いで乾燥させた。プレートを完全に乾燥させた後、生検パンチ(biopsy punch)(Kai Medical,Germany)6mmを用いてウェルを作り、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株の上澄み液をそれぞれ100μlずつウェルに分注した。陽性対照群としては、抗生剤のうち一つであるアンピシリン10μl容量のディスク及びMRS培地を使用した。37℃で24時間培養した後、プレートに菌がよく生育したかどうかを寒天プレートの濁度レベルを用いて肉眼で確認すると同時に、ウェルの周辺に菌が生育していない透明なリングが生じたかどうかを確認し、その結果を下記表8に示した。
【0105】
【0106】
実験の結果、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株においては、モラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis)KCCM42706菌株に対する抑制能が最も高いことが確認され、他の活性化有害菌に対する抑制能はないことが確認された。
【0107】
2.乳酸菌の局所性過敏免疫病原性菌の抑制能評価(定量的)
【0108】
本発明の乳酸菌の局所性過敏免疫病原性菌に対する抑制能を定量的に評価するために、マイクロタイタープレートアッセイ(microtiter plate assay)(Food Chemistry,2008,111(4),p.1069-1074)を行った。このとき、病原性菌は、体内で局所性過敏反応によって増加する有害菌のうち5種を指示菌として選定し、前記表7に示した定性的評価に使用された菌株を同様に使用した。
【0109】
より具体的には、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株をMRSブロスに37℃で18時間にわたって好気性条件下で培養した。活性菌株を15,000rpmで5分間遠心分離した後、菌株と上澄み液とを分離し、分離した上澄み液のpHを6.5~7に調節した。また、ペレットを除去した上澄み液は、0.22μmのフィルターを通じてフィルタリングし、結果物を抗菌物質として使用した。
【0110】
96ウェルプレートに200μlのBHI液体培地(Difco,USA)を添加し、活性化された肺炎球菌(S.pneumoniae)KCTC5764を1%接種した。指示菌が接種された各ウェルに菌株の上澄み液10μlを入れ、嫌気的条件下で37℃で24時間にわたって培養した後、600nmでO.D.値を測定した。その後、抗菌活性は、数式で計算して確認し、その結果を下記表9に示した。5種の指示菌に対しては、同一の方法で指示菌の適正培地のみを変えて実験を行った。
【0111】
抗菌活性(減少率、%)=[1-RLU選別菌/RLU指示菌]*100
【0112】
【0113】
実験の結果、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株においては、上記と同様に、モラクセラ・カタラーリス(M.catarrhalis)42706菌株に対する抑制能が最も高いことを確認した。
【0114】
[実験例3:ウィッセラ・チバリアGSKM06(W.cibaria GSKM06)の大食細胞炎症反応の抑制効能試験]
【0115】
1.一酸化窒素アッセイ(NO assay)
【0116】
本発明の乳酸菌の抗炎症効果を評価するために、乳酸菌処理による一酸化窒素の数値変化を測定した。
【0117】
より具体的には、マウス肺大食細胞であるMH-S細胞を、RPMI1640に10%のFBSを添加し、37℃、5%CO2条件下で50,000cells/wellの密度で24ウェルプレートに分注した後、24時間にわたって培養した。上澄み液を除去した後、RPMI1640培地にLPS 500ng/mlとIFN-γ 10ng/mlを添加した後、培地にウィッセラ・チバリアGSKM06菌株を1×107CFU/mlで処理しながら24時間にわたって培養した。その後、上澄み液を収集し、NO分泌をGriessreagent system(Promega)を用いて測定した。
【0118】
実験の結果、LPS+IFN-γ処理によって増加した一酸化窒素の生成が、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株の処理によって抑制されたことを確認した。特に、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株は、LPS+IFN-γ処理によって増加した一酸化窒素の生成の抑制効能に非常に優れることを確認できた(
図2)。
図2は、本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の一酸化窒素(NO)の生成抑制能を確認した結果を示す。
【0119】
2.肥満細胞株の脱顆粒抑制活性実験(β-Hexosaminidase assay)
【0120】
ラット好塩基性白血病細胞であるRBL-2H3細胞を、EMEMに15%の熱不活性化(heat-inactivated)FBSを添加し、37℃、5%CO2条件下で200,000cells/wellの密度で12ウェルプレートに24時間にわたって培養した。上澄み液を除去した後、0.5mg/mlの抗-DNP IgEが含まれたEMEM培地を入れ、16時間にわたって培養した後、上澄み液を除去し、EMEM培地にウィッセラ・チバリアGSKM06菌株を1×108CFU/mlの濃度で処理しながら2時間にわたって培養した。
【0121】
培養後、シラガニアンバッファー(Siraganian buffer)で2回洗浄し、シラガニアンバッファーに200ng/mlのDNP-HASを添加しながら1時間にわたって反応させた。4℃で反応を終結した後、上澄み液を40μlずつ96ウェルプレートに添加し、1mMのP-ニトロフェニル-アセチル-β-D-グルコサミニドを40μl添加した後、37℃で1時間にわたって反応させた。0.1MのNa2CO3を添加し、全ての反応を終結した後、405nmでマイクロプレートリーダー(microplate reader)を用いて吸光度を測定した。
【0122】
実験の結果、DNP-IgE+DNP-HSA処理によって増進されたβ-ヘキソサミニダーゼの生成が、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株の処理によって効果的に抑制されたことを確認した(
図3)。
図3は、本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)のβ-ヘキソサミニダーゼ(β-Hexosaminidase)の生成抑制能を確認した結果を示す。
【0123】
[実験例4:ウィッセラ・チバリアGSKM06(W.cibaria GSKM06)の気道付着能調査]
【0124】
本発明の乳酸菌の気道内付着能を評価するために、ヒト気管支上皮細胞であるBEAS-2B細胞を用いて付着能(Infect Immun 45:534-536,1984.)調査を行った。
【0125】
より具体的には、ヒト気管支上皮細胞であるBEAS-2B細胞は、M199培地に10%のFBS(2mMのL-グルタミン、2.5μg/mlのインスリン、361ng/mlのヒドロコルチゾン、20ng/mlのEGF及び1%の抗生物質)を添加した後、CO2培養器で継代培養した。24ウェルプレートに1ウェル当たり1×105細胞を24時間にわたって培養した後、PBSを用いて細胞を2回洗浄し、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株をそれぞれ1×108CFU/ml添加した後、37℃、5%CO2培養器で15分、30分及び60分間培養した。
【0126】
その後、PBSで細胞を3回洗浄した後、メタノールで固定し、30分間ギムザ(Giemsa)染色を施し、PBSで再び洗浄した後、空気中に乾燥させながらそれぞれの細胞に対する付着能を光学顕微鏡を用いて観察した。
【0127】
実験の結果、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株は、BEAS-2B細胞で15分、30分及び60分のうち60分で気道に付着したことを確認できた(
図4)。
図4は、本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の気道付着能を調査した結果を示す。
【0128】
[実験例5:動物モデルを用いたウィッセラ・チバリアGSKM06(W.cibaria GSKM06)の局所性過敏反応の改善効能評価]
【0129】
本発明の動物は、BALB/cマウス5週齢のオスを対象とし、1週間の順化期間後、試験を開始してから0日と14日に、誘導群には皮下内(S.C)OVA混合物[20μgのOVA(Albumin from chicken egg white lyophilized powder,Sigma)+30μlのPBS+50μlのImject Alum(Thermo)]を注射し、正常対照群には同じ容量のPBSを注射した。
【0130】
マウスに抗原を注射しながら全身的に感作(sensitization)させ、気道を通じて同一の抗原を接触させ、気管支と肺に炎症反応を集中的に起こすことによって、過敏性反応の一つである喘息を誘導した。
【0131】
下記表10に示すように、実験群を3個の群に分け、試験を開始してから15日~42日(4週間)まで試験物質を投与(口腔投与)した後、乳酸菌の4週間投与を終了する前に、OVA 3%が含まれたPBSを、ネブライザーを通じて5日間20分ずつ密閉された個別チャンバーでエアロゾル(aerosol)化した。
【0132】
結果物を一晩置いた後、43日目に剖検を施行した。試験物質の最終投与後、一晩中(4時間~6時間)絶食させ、剖検直前に全ての個体に対してCO2麻酔下で心臓採血を実施した。頚椎脱骨法を用いて安楽死を実行し、全ての試験群で開腹した後、臓器を摘出した。各剖検項目は、痲酔後に心臓採血によって血清を分離し、標的臓器である気道及び肺は、摘出後に冷凍保管した。
【0133】
【0134】
実験の結果、G1(control)及びG2(asthma control)に比べて、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株投与群(G3)において体重に対する有意な差がなかったことを確認した。したがって、本発明に係る乳酸菌は、体重変化に大きな影響を与えないことが確認された(
図5)。
図5は、本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるマウスの重さ変化を確認した結果を示す。
【0135】
[実験例6:動物モデルを用いたウィッセラ・チバリアGSKM06(W.cibaria GSKM06)の局所性過敏反応改善及び炎症緩和効能分析]
【0136】
気管支内のアレルギー性炎症反応に関与する炎症細胞(total inflammatory cell)は、肥満細胞、好中球、好酸球、大食細胞、リンパ球などを包括しており、サイトカイン、成長因子、及び分解酵素を分泌し、炎症反応及び感染に対する防御などで必須的な役割をする。
【0137】
好酸球(eosinophil)は、炎症性タンパク質を含有しており、気道上皮細胞に直接損傷を起こし、気道過敏性を増加させながら肥満細胞の脱顆粒を誘発する。また、ロイコトリエンを含有しており、気道収縮及び血管透過性を増加させる。肥満細胞は、気道内の粘膜で成熟した後、IgEにアレルギー抗原が結合すると、肥満細胞に存在するヒスタミン及びロイコトリエンなどが放出される。
【0138】
その他に、好酸球は、IL-1、2、3、4、5、IFN-γ、TNF-αの生産に関与し、アレルギー性及び慢性炎症に寄与する。アレルギーの初期反応時、肥満細胞からヒスタミン及びロイコトリエンなどが分泌され、これらを炎症反応指標として活用することができる。T細胞(T lymphocyte)は、抗原特異的な適応免疫を担当するリンパ球であって、体内抗原の侵入時、成熟したエフェクターT細胞に活性化されながら適応免疫が開始され、炎症反応指標として活用することができる。
【0139】
B細胞(B lymphocyte)は、リンパ球のうち抗体を生産する細胞であって、特に、アレルギー性炎症の反応時に活性化されながらIgEの生産を増加させるので、アレルギー性炎症反応の指標として活用することができる。
【0140】
そこで、以下では、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株の局所性過敏反応改善及び炎症緩和効能を評価するために、多様な因子を対象にして実験を行った。
【0141】
1.ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay);IgE
【0142】
IgEは、アレルギー性炎症及び慢性炎症患者の気道上皮細胞で活性が増加し、このとき、細胞は、炎症媒介物質を多量に分泌するようになる。各炎症媒介物質は、肺胞大食細胞及び好中球を主に活性化し、タンパク分解酵素が遊離されながら活性酸素種と共に肺の損傷を起こすようになる。したがって、本実験では、OVAを用いた免疫過敏反応(喘息)誘導動物モデルにおいて、乳酸菌の投与で喘息改善(免疫改善或いは正常化)及び炎症緩和効能を評価することを目的として行った。
【0143】
より具体的には、個体別に心臓から血液を採取した後、血液を10,000rpm、4℃で5分間2回遠心分離し、上澄み液である血清のみを分析に使用した。分離された血清は、IgE(Abcam,UK)キット内のプロトコルによってELISA分析法を用いて分析した。
【0144】
実験の結果、G1(control)に比べて、G2(asthma control)においてIgE数値が有意に増加したことから喘息が誘導されたことを確認した。また、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株投与群(G3)においては、喘息誘導によって増加したIgE数値が効果的に減少したことを確認した(
図6)。
図6は、本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与による血清内IgE数値の減少効能を確認した結果を示す。
【0145】
このような結果から、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株の投与は、アレルギー抗原による炎症媒介物質の分泌を減少させる効能を有するものと判断される。
【0146】
2.PCR(lung tissue);IL-4、IL-5、IL-13、IL-1β、IL-6、TNF-α
【0147】
Th2細胞では、IL-1β、4、5、6、13などのサイトカイン分泌を刺激し、アレルギー性気道炎症を誘発する。IL-4は、IL-13と共にTh2細胞分化に関与し、肺組織への好酸球性炎症反応を誘発し、この過程でTh2転写因子であるGATA-3を活性化させる。また、粘液と分泌(杯状細胞の異形成)、気道線維化などに関与し、IgGをIgEにスイッチングするのにも関与する。
【0148】
IL-5は、好酸球性炎症の主要なサイトカインであって、骨髓から好酸球への分化を促進する。IL-13は、Th2細胞分化に関与し、B細胞活性化、粘液物質の過形成、杯状細胞の異形成、基底膜の厚さ増加に関与し、また、気道内に好酸球が生存し得る環境を構築するようになる。IL-1βの場合、深刻な炎症状況で分泌され、大食細胞活性化及び好中球性炎症反応誘発に関与する。
【0149】
IL-6も、好酸球移動及び好酸球生存に関与する。IL-6の場合は、炎症反応を促進しながらTh2細胞及びTh17細胞で調節される免疫反応に関与し、慢性炎症患者の喀痰及び血液で増加する。TNF-αは、慢性炎症によって活性化された大食細胞及び気道上皮細胞で分泌され、持続的な炎症をもたらす。したがって、本実験では、PCR技法を用いて、喘息を誘発した実験群において乳酸菌の投与によるサイトカインレベルの変化を評価することを目的として行った。
【0150】
このために、全ての実験群のマウスから摘出した肺組織において炎症性サイトカインなどの炎症媒介物質の発現量を確認するために、qRT-PCRを実施した。より具体的には、肺組織RIboEx溶液を用いてトータルRNAを分離した。分離されたRNAの濃度を定量した後、トータルRNAにオリゴ-(dT)プライマー、dNTP混合物、RTプリミックス&マスターミックスを入れて反応させることによってcDNAを合成した。抽出物質の効能を確認するために、下記表11に示したターゲットマーカーを用いてqRT-PCRを行った。
【0151】
【0152】
実験の結果、G1(control)に比べて、G2(asthma control)においてIL-4、IL-5、IL-1β、IL-6、TNF-α及びIL-13のレベルが増加する傾向から喘息が誘導されたと判断し、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株投与群(G3)において喘息誘導によって増加したIL-4、IL-5、IL-1β、IL-6、TNF-α、及びIL-13のレベルが有意に減少した(
図7乃至
図12)。
図7乃至
図12は、気道炎症誘発群において、本発明の乳酸菌(W.cibaria GSKM06)の投与によるIL-4、IL-5、IL-1β、IL-6、TNF-α、及びIL-13の減少効能をそれぞれ確認した結果を示す。
【0153】
ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株によって全体的に炎症媒介物質数値が減少した上記のような結果から、ウィッセラ・チバリアGSKM06菌株は、過敏免疫反応のうち一つである喘息の改善及び過敏免疫反応の正常化と共に、過敏免疫反応による炎症の緩和効能を有するものと判断される。