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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098949
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 43/08 20060101AFI20240717BHJP
   F16D 13/52 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F16D43/08
F16D13/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148824
(22)【出願日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2023002565
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000128175
【氏名又は名称】株式会社エフ・シー・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小澤 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】曾 恒香
(72)【発明者】
【氏名】志水 亮太
【テーマコード(参考)】
3J056
3J068
【Fターム(参考)】
3J056AA20
3J056AA38
3J056AA62
3J056BE07
3J056CA07
3J056CC32
3J056GA02
3J056GA13
3J068AA05
3J068BA13
3J068BB06
3J068CA01
3J068CA02
3J068DD08
3J068GA11
3J068GA19
(57)【要約】
【課題】遠心クラッチ手段の部品点数を削減して製造コストを低減させることができる動力伝達装置を提供する。
【解決手段】ウェイト部材10が外径側位置にあるとき駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7とを圧接させてエンジンの駆動力を車輪に伝達可能な状態とするとともに、ウェイト部材10が内径側位置にあるとき駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7との圧接力を解放させてエンジンの駆動力が車輪に伝達されるのを遮断し得る動力伝達装置であって、保持部材11は、ウェイト部材10の径方向の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制する規制部11cが形成されたものである。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの駆動力で回転する入力部材と共に回転し、複数の駆動側クラッチ板が取り付けられたクラッチハウジングに収容され、車両の車輪を回転させ得る出力部材と連結されたクラッチ部材と、
前記クラッチ部材に対して接近または離隔可能に設けられ、かつ前記駆動側クラッチ板と交互に配置された複数の被動側クラッチ板の少なくとも一部を保持し、かつ、前記駆動側クラッチ板および前記被動側クラッチ板を押圧可能なプレッシャ部材と、を具備し、前記クラッチハウジングの回転に伴う遠心力により内径側位置から外径側位置に移動可能とされたウェイト部材と、前記ウェイト部材が前記内径側位置から前記外径側位置に移動することにより前記駆動側クラッチ板及び前記被動側クラッチ板を圧接させる方向に移動する圧接部材と、前記ウェイト部材を前記内径側位置と前記外径側位置との間で径方向に移動可能に保持する保持部材とを有する遠心クラッチ手段と、
を具備し、前記ウェイト部材が前記外径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板とを圧接させて前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達可能な状態とするとともに、前記ウェイト部材が前記内径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板との圧接力を解放させて前記エンジンの駆動力が前記車輪に伝達されるのを遮断し得る動力伝達装置であって、
前記保持部材は、前記ウェイト部材の径方向の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制する規制部が形成されたことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記ウェイト部材は、ウェイト部材側勾配面が形成されるとともに、前記規制部は、前記ウェイト部材側勾配面と対峙する規制部側勾配面を有することを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記ウェイト部材が前記圧接部材側に移動することを規制することを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記規制部側勾配面が、前記ウェイト部材の径方向の移動を案内するとともに、前記ウェイト部材の軸方向の移動を規制することを特徴とする請求項2記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記ウェイト部材は周方向に複数設けられており、前記ウェイト部材の周方向における両側面に前記ウェイト部材側勾配面が形成されるとともに、前記規制部の周方向における両側面に前記規制部側勾配面が形成されていることを特徴とする請求項2記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記規制部における前記ウェイト部材を案内する部位とは異なる部位に、前記ウェイト部材の抜け止めを行う部位を設けたことを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記ウェイト部材は周方向に複数設けられており、前記規制部の周方向における両側部に、前記ウェイト部材の抜け止めを行う部位が形成されていることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記ウェイト部材側勾配面および前記規制部側勾配面は、平面から形成されていることを特徴とする請求項2記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記規制部は、前記保持部材に一体形成された部位から成ることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記保持部材は、前記規制部と対峙する部位に開口が形成されたことを特徴とする請求項9記載の動力伝達装置。
【請求項11】
前記規制部は、前記保持部材に取り付けられた、前記保持部材とは別体の別体部材から成ることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項12】
車両のエンジンの駆動力で回転する入力部材と共に回転し、複数の駆動側クラッチ板が取り付けられたクラッチハウジングに収容され、車両の車輪を回転させ得る出力部材と連結されたクラッチ部材と、
前記クラッチ部材に対して接近または離隔可能に設けられ、かつ前記駆動側クラッチ板と交互に配置された複数の被動側クラッチ板の少なくとも一部を保持し、かつ、前記駆動側クラッチ板および前記被動側クラッチ板を押圧可能なプレッシャ部材と、を具備し、
前記クラッチハウジングの回転に伴う遠心力により内径側位置から外径側位置に移動可能とされたウェイト部材と、前記ウェイト部材が前記内径側位置から前記外径側位置に移動することにより前記駆動側クラッチ板及び前記被動側クラッチ板を圧接させる方向に移動する圧接部材と、前記ウェイト部材を前記内径側位置と前記外径側位置との間で径方向に移動可能に保持する保持部材とを有する遠心クラッチ手段と、を具備し、
前記ウェイト部材が前記外径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板とを圧接させて前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達可能な状態とするとともに、前記ウェイト部材が前記内径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板との圧接力を解放させて前記エンジンの駆動力が前記車輪に伝達されるのを遮断し得る動力伝達装置であって、
前記保持部材は前記ウェイト部材の軸方向の移動を規制する規制部が形成され、前記規制部は前記保持部材に一体形成された部位から成ることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項13】
前記規制部は、前記ウェイト部材の径方向の移動を案内することを特徴とする請求項12記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意に入力部材の回転力を出力部材に伝達させ又は遮断させ得る動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の動力伝達装置として、例えば特許文献1で開示されているように、クラッチハウジングの回転に伴う遠心力で内径側位置から外径側位置に移動することにより駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板とを圧接させ得るウェイト部材を具備した遠心クラッチ手段について提案されている。そして、ウェイト部材は、保持部材に保持されるとともに、内径側位置と外径側位置との間を移動可能とされている。かかる従来の動力伝達装置によれば、エンジンの駆動に伴ってクラッチハウジングが回転することにより、ウェイト部材に遠心力を付与させることができ、駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板とを圧接させてエンジンの駆動力を車輪に伝達させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-30211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の動力伝達装置に配設された遠心クラッチ手段は、ウェイト部材を覆って軸方向の抜け止めをするためのカバー部材などを必要とするため、部品点数が増加してしまうとともに、少なくとも部品点数の増加分だけ製造コストが嵩んでしまうという不具合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、遠心クラッチ手段の部品点数を削減して製造コストを低減させることができる動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、車両のエンジンの駆動力で回転する入力部材と共に回転し、複数の駆動側クラッチ板が取り付けられたクラッチハウジングに収容され、車両の車輪を回転させ得る出力部材と連結されたクラッチ部材と、前記クラッチ部材に対して接近または離隔可能に設けられ、かつ前記駆動側クラッチ板と交互に配置された複数の被動側クラッチ板の少なくとも一部を保持し、かつ、前記駆動側クラッチ板および前記被動側クラッチ板を押圧可能なプレッシャ部材と、を具備し、前記クラッチハウジングの回転に伴う遠心力により内径側位置から外径側位置に移動可能とされたウェイト部材と、前記ウェイト部材が前記内径側位置から前記外径側位置に移動することにより前記駆動側クラッチ板及び前記被動側クラッチ板を圧接させる方向に移動する圧接部材と、前記ウェイト部材を前記内径側位置と前記外径側位置との間で径方向に移動可能に保持する保持部材とを有する遠心クラッチ手段と、を具備し、前記ウェイト部材が前記外径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板とを圧接させて前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達可能な状態とするとともに、前記ウェイト部材が前記内径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板との圧接力を解放させて前記エンジンの駆動力が前記車輪に伝達されるのを遮断し得る動力伝達装置であって、前記保持部材は、前記ウェイト部材の径方向の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制する規制部が形成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記ウェイト部材は、ウェイト部材側勾配面が形成されるとともに、前記規制部は、前記ウェイト部材側勾配面と対峙する規制部側勾配面を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記規制部は、前記ウェイト部材が前記圧接部材側に移動することを規制することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の動力伝達装置において、前記規制部側勾配面が、前記ウェイト部材の径方向の移動を案内するとともに、前記ウェイト部材の軸方向の移動を規制することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項2記載の動力伝達装置において、前記ウェイト部材は周方向に複数設けられており、前記ウェイト部材の周方向における両側面に前記ウェイト部材側勾配面が形成されるとともに、前記規制部の周方向における両側面に前記規制部側勾配面が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記規制部における前記ウェイト部材を案内する部位とは異なる部位に、前記ウェイト部材の抜け止めを行う部位を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記ウェイト部材は周方向に複数設けられており、前記規制部の周方向における両側部に、前記ウェイト部材の抜け止めを行う部位が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項2記載の動力伝達装置において、前記ウェイト部材側勾配面および前記規制部側勾配面は、平面から形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項9記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記規制部は、前記保持部材に一体形成された部位から成ることを特徴とする。
【0015】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の動力伝達装置において、前記保持部材は、前記規制部と対峙する部位に開口が形成されたことを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の発明は、請求項1記載の動力伝達装置において、前記規制部は、前記保持部材に取り付けられた、前記保持部材とは別体の別体部材から成ることを特徴とする。
【0017】
請求項12記載の発明は、車両のエンジンの駆動力で回転する入力部材と共に回転し、複数の駆動側クラッチ板が取り付けられたクラッチハウジングに収容され、車両の車輪を回転させ得る出力部材と連結されたクラッチ部材と、前記クラッチ部材に対して接近または離隔可能に設けられ、かつ前記駆動側クラッチ板と交互に配置された複数の被動側クラッチ板の少なくとも一部を保持し、かつ、前記駆動側クラッチ板および前記被動側クラッチ板を押圧可能なプレッシャ部材と、を具備し、前記クラッチハウジングの回転に伴う遠心力により内径側位置から外径側位置に移動可能とされたウェイト部材と、前記ウェイト部材が前記内径側位置から前記外径側位置に移動することにより前記駆動側クラッチ板及び前記被動側クラッチ板を圧接させる方向に移動する圧接部材と、前記ウェイト部材を前記内径側位置と前記外径側位置との間で径方向に移動可能に保持する保持部材とを有する遠心クラッチ手段と、を具備し、前記ウェイト部材が前記外径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板とを圧接させて前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達可能な状態とするとともに、前記ウェイト部材が前記内径側位置にあるとき前記駆動側クラッチ板と前記被動側クラッチ板との圧接力を解放させて前記エンジンの駆動力が前記車輪に伝達されるのを遮断し得る動力伝達装置であって、前記保持部材は前記ウェイト部材の軸方向の移動を規制する規制部が形成され、前記規制部は前記保持部材に一体形成された部位から成ることを特徴とする。
【0018】
請求項13記載の発明は、請求項12記載の動力伝達装置において、前記規制部は、前記ウェイト部材の径方向の移動を案内することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、保持部材は、ウェイト部材の径方向の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制する規制部が形成されているので、遠心クラッチ手段の部品点数を削減して製造コストを低減させつつ、ウェイト部材の案内機能及び抜け止め機能を持たせることができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、ウェイト部材は、ウェイト部材側勾配面が形成されるとともに、規制部は、ウェイト部材側勾配面と対峙する規制部側勾配面を有するので、ウェイト部材の案内を円滑に行わせつつ軸方向の抜け止めを行わせることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、規制部はウェイト部材が圧接部材側に移動することを規制するので、ウェイト部材が圧接部材側に抜け落ちることを規制部によって防止することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、規制部に形成した規制部側勾配面が、ウェイト部材の径方向の移動を案内するとともに、ウェイト部材の軸方向の移動を規制するので、規制部の構造を簡単なものにして製造コストを低減することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、ウェイト部材の周方向における両側面にウェイト部材側勾配面が形成されるとともに、規制部の周方向における両側面に規制部側勾配面を形成したので、ウェイト部材の案内を一層円滑に行わせつつ軸方向の抜け止めを確実に行わせることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、規制部におけるウェイト部材を案内する部位とは異なる部位に、ウェイト部材を案内する部位を設けたので、ウェイト部材の案内と抜け止めを、それぞれに最適な形状によって行うことができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、規制部の周方向における両側面に、ウェイト部材の抜け止めを行う部位を形成したので、ウェイト部材の軸方向の抜け止めを確実に行わせることができる。
【0026】
請求項8の発明によれば、ウェイト部材側勾配面および規制部側勾配面を平面から形成したので、ウェイト部材の案内を一層円滑に行わせることができる。
【0027】
請求項9の発明によれば、規制部は、保持部材に一体形成された部位から成るので、保持部材を容易に製造することができ、且つ、遠心クラッチ手段の部品点数をより削減させることができる。
【0028】
請求項10の発明によれば、保持部材は、規制部と対峙する部位に開口が形成されたので、保持部材に一体形成される規制部を容易に形成することができるとともに、保持部材の軽量化を図ることができる。
【0029】
請求項11の発明によれば、規制部は、保持部材に取り付けられた、保持部材とは別体の別体部材から成るので、保持部材とは異なる材料で規制部を形成することができるとともに、規制部の変形又は破損が生じた場合、別体部材を交換することによりウェイト部材の案内及び軸方向の抜け止めを維持することができる。
【0030】
請求項12の発明によれば、保持部材は、ウェイト部材の軸方向の移動を規制する規制部が形成されているので、ウェイト部材の抜け止め機能を持たせることができるとともに、規制部は、保持部材に一体形成された部位から成るので、保持部材を容易に製造することができ、且つ、遠心クラッチ手段の部品点数をより削減させることができる。
【0031】
請求項13の発明によれば、保持部材に一体形成され、ウェイト部材の軸方向の移動を規制する規制部が、ウェイト部材の径方向の移動を案内するので、遠心クラッチ手段の部品点数を削減して製造コストを低減させつつ、ウェイト部材の案内機能及び抜け止め機能を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の第1の実施形態に係る動力伝達装置を示す外観図
図2図1におけるII-II線断面図であってウェイト部材が内径側位置にあるときを示す断面図
図3図1におけるII-II線断面図であってウェイト部材が外径側位置にあるときを示す断面図
図4】同動力伝達装置におけるクラッチハウジング、第1クラッチ部材、第2クラッチ部材及びプレッシャ部材を示す分解斜視図
図5】同動力伝達装置におけるクラッチハウジング、第1クラッチ部材、第2クラッチ部材及びプレッシャ部材を示す分解斜視図
図6】同動力伝達装置における遠心クラッチ手段を示す3面図
図7図6におけるVII-VII線断面図
図8】同遠心クラッチ手段を示す分解斜視図
図9】同遠心クラッチ手段の保持部材を示す斜視図
図10】同遠心クラッチ手段の保持部材を示す斜視図
図11】同遠心クラッチ手段の圧接部材を示す3面図
図12】同遠心クラッチ手段におけるウェイト部材を示す斜視図
図13】同ウェイト部材を示す平面図及び背面図
図14図13におけるXIV-XIV線断面図
図15】同動力伝達装置の遠心クラッチ手段(ウェイト部材が内径側位置)を示す平面図
図16図15におけるXVI-XVI線断面図
図17】同動力伝達装置の遠心クラッチ手段(ウェイト部材が外径側位置)を示す平面図
図18図17におけるXVIII-XVIII線断面図
図19】同動力伝達装置が適用される車両を示す模式図
図20】本発明の他の実施形態に係る動力伝達装置の遠心クラッチ手段における規制部近傍を示す断面図
図21】本発明の第2の実施形態に係る動力伝達装置の遠心クラッチ手段における保持部材を示す斜視図
図22】同保持部材に取り付けられた別体部材を示す平面図及びA-A線断面図
図23】他の形態の別体部材を示す平面図及びA-A線断面図
図24】本発明の第3の実施形態に係る動力伝達装置の遠心クラッチ手段における保持部材を示す平面図
図25】他の形態の保持部材を示す平面図
図26】本発明の第4の実施形態に係る動力伝達装置の遠心クラッチ手段を示す平面図
図27図26におけるXXVII-XXVII線断面図
図28】本発明の第5の実施形態に係る動力伝達装置の遠心クラッチ手段を示す平面図
図29図28におけるXXIX-XXIX線断面図
図30】本発明の他の動力伝達装置(ウェイト部材が内径側位置)を示す断面模式図
図31】本発明の他の動力伝達装置(ウェイト部材が外径側位置)を示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る動力伝達装置Lは、図19に示すように、車両に配設されて任意にエンジンEの駆動力をミッションMを介して駆動輪T側へ伝達し又は遮断するためのもので、図1~18に示すように、車両のエンジンEの駆動力で回転する入力ギア1(入力部材)が形成されたクラッチハウジング2と、ミッションMに接続された出力シャフト3(出力部材)と、クラッチ部材(第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4b)と、プレッシャ部材5と、複数の駆動側クラッチ板6及び複数の被動側クラッチ板7と、ウェイト部材10を具備した遠心クラッチ手段9とを有して構成されている。なお、図中符号8は固定部材、符号Sはクラッチスプリングをそれぞれ示している。
【0034】
入力ギア1は、エンジンEから伝達された駆動力(回転力)が入力されると出力シャフト3を中心として回転可能とされたもので、リベット等によりクラッチハウジング2と連結されている。クラッチハウジング2は、図4、5に示すように、一方の端部が開口した円筒状部材から成るとともに入力ギア1と連結して構成されており、エンジンEの駆動力により入力ギア1の回転と共に回転し得るようになっている。
【0035】
また、クラッチハウジング2は、図4、5に示すように、周方向に亘って複数の切欠き2aが形成されており、これら切欠き2aに嵌合して複数の駆動側クラッチ板6が取り付けられている。かかる駆動側クラッチ板6のそれぞれは、略円環状に形成された板材から成るとともにクラッチハウジング2の回転と共に回転し、且つ、軸方向(図2、3中左右方向)に移動し得るよう構成されている。
【0036】
クラッチ部材(第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4b)は、クラッチハウジング2の駆動側クラッチ板6と交互に形成された複数の被動側クラッチ板7が保持されているとともに、車両のミッションMを介して駆動輪Tを回転させ得る出力シャフト3(出力部材)と連結されたものであり、第1クラッチ部材4aと第2クラッチ部材4bとの2つの部材を組み付けて構成されている。
【0037】
第1クラッチ部材4aは、その中央に形成された挿通孔に出力シャフト3が挿通され、互いに形成されたギアが噛み合って回転方向に連結されるよう構成されている。第2クラッチ部材4bは、図4、5に示すように、フランジ部4bbが形成された円環状部材から成るもので、外周面に形成されたスプライン嵌合部4baに被動側クラッチ板7がスプライン嵌合にて保持されるよう構成されている。
【0038】
そして、クラッチ部材(第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4b)には、図2、3に示すように、プレッシャ部材5が組み付けられ、当該プレッシャ部材5のフランジ部5aと第2クラッチ部材4bのフランジ部4bbとの間に複数の駆動側クラッチ板6及び被動側クラッチ板7が交互に積層状態にて保持されるようになっている。
【0039】
より具体的には、第2クラッチ部材4bに形成されたスプライン嵌合部4baは、図4、5に示すように、第2クラッチ部材4bの外周側面における略全周に亘って一体的に形成された凹凸形状にて構成されており、スプライン嵌合部4baを構成する凹溝に被動側クラッチ板7が嵌合することにより、被動側クラッチ板7の第2クラッチ部材4bに対する軸方向の移動を許容しつつ回転方向の移動が規制され、当該第2クラッチ部材4bと共に回転し得るよう構成されているのである。
【0040】
すなわち、被動側クラッチ板7は、第2クラッチ部材4bに対し、第2クラッチ部材4bの回転方向への移動が規制され、かつ出力シャフト3(出力部材)の軸方向に移動可能となるように、第2クラッチ部材4bに保持されている。また、被動側クラッチ板7は、プレッシャ部材5に対し、プレッシャ部材5の回転方向への移動が規制され、かつ出力シャフト3(出力部材)の軸方向に移動可能となるように、プレッシャ部材5に保持されている。
【0041】
かかる被動側クラッチ板7は、図2,3に示すように、駆動側クラッチ板6と交互に積層形成されており、隣接する各クラッチ板6、7が圧接又は圧接力の解放が可能なようになっている。すなわち、両クラッチ板6、7は、第2クラッチ部材4bの軸方向への移動が許容されており、走行中においては両クラッチ板6、7が圧接され、クラッチハウジング2の回転力が第2クラッチ部材4b及び第1クラッチ部材4aを介して出力シャフト3に伝達される状態となり、両クラッチ板6、7の圧接力が解放して第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4bがクラッチハウジング2の回転に追従しなくなり、出力シャフト3への回転力の伝達がなされなくなるのである。
【0042】
しかして、駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7とが圧接された状態にて、クラッチハウジング2に入力された回転力(エンジンEの駆動力)を出力シャフト3(出力部材)を介して駆動輪側(ミッションM)に伝達するとともに、駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7との圧接が解放された状態にて、クラッチハウジング2に入力された回転力(エンジンEの駆動力)が出力シャフト3(出力部材)に伝達されるのを遮断し得るようになっている。
【0043】
遠心クラッチ手段9は、図6~8、12~14に示すように、クラッチハウジング2の回転に伴う遠心力により内径側位置から外径側位置に移動可能とされたウェイト部材10を具備したもので、ウェイト部材10が外径側位置にあるとき駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7とを圧接させてエンジンEの駆動力を車輪(駆動輪T)に伝達可能な状態とするとともに、当該ウェイト部材10が内径側位置にあるとき駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7との圧接力を解放させてエンジンEの駆動力が車輪(駆動輪T)に伝達されるのを遮断し得るよう構成されている。
【0044】
具体的には、遠心クラッチ手段9は、駒状部材で構成されたウェイト部材10と、ウェイト部材10を内径側位置と外径側位置との間で移動可能に保持する保持部材11と、圧接部材12とを有して構成されている。なお、圧接部材12は、図11に示すように、周方向に亘って複数の突起部が形成されており、駆動側クラッチ板6と同様、クラッチハウジング2の切欠き2aに嵌合して取り付けられている。これにより、圧接部材12は、それぞれクラッチハウジング2の軸方向に移動可能とされるとともに、回転方向に係合して当該クラッチハウジング2と共に回転可能とされている。
【0045】
ウェイト部材10は、図12~13に示すように、先端部に形成されたカム面10aと、両側面にそれぞれ形成されたウェイト部材側勾配面10bと、付勢スプリング13(図8参照)を挿通可能な溝形状10cと、保持部材11の被摺動面11b(図8、9参照)を摺動可能とされた摺動面10dと、基端部の両側に突出形成された当接部10eとを有して構成されている。かかるウェイト部材10は、保持部材11に収容されており、遠心力が付与されない状態で内径側位置(図15、16参照)に保持されるとともに、遠心力が付与されることにより付勢スプリング13の付勢力に抗して外側に移動し、外径側位置(図17、18参照)に至るようになっている。
【0046】
さらに、ウェイト部材10は、図7、15に示すように、内径側位置にあるとき、隣接するウェイト部材10の当接部10eが互いに当接した状態とされており、さらなる内径側(装置の内側)に向かう移動が規制されている。これにより、ウェイト部材10の内径側への移動を規制するための別個の規制手段を不要とすることができ、遠心クラッチ手段9の構成を簡素化することができる。
【0047】
保持部材11は、ウェイト部材10を内径側位置と外径側位置との径方向の間で移動可能に保持するもので、図8~10に示すように、円環状部材から成り、付勢スプリング13の一端を当接させ得る壁部11aと、ウェイト部材10を摺動させ得る被摺動面11bと、ウェイト部材10の内径側位置と外径側位置との間の移動を案内するとともに、軸方向(図2、3の左右方向)の移動を規制して抜け止め(被摺動面11bと反対側、すなわち圧接部材12側に向かって脱落するのを規制)可能な規制部11cと、規制部11cの近傍に形成された貫通孔11dとを有して構成されている。
【0048】
ここで、本実施形態に係る規制部11cは、図8、9に示すように、保持部材11の周縁部において同心円状複数形成された凸状部位から成り、保持部材11に一体形成されている。さらに、規制部11cは、図9、16、18に示すように、ウェイト部材10に形成されたウェイト部材側勾配面10bと対峙(対向)する規制部側勾配面11caが形成されており、これらウェイト部材側勾配面10b及び規制部側勾配面11caが当接することにより、ウェイト部材10の内径側位置と外径側位置との間の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制して抜け止め可能とされている。
【0049】
すなわち、保持部材11の両側面には、それぞれ規制部側勾配面11caが形成されており、一側面側の規制部側勾配面11caが隣接するウェイト部材10のうち一方のウェイト部材10の一側面に形成されたウェイト部材側勾配面10bと対峙するとともに、他側面側の規制部側勾配面11caが隣接するウェイト部材10のうち他方のウェイト部材10の一側面に形成されたウェイト部材側勾配面10bと対峙するよう構成されている。これにより、各ウェイト部材10が内径側位置と外径側位置との間を移動する過程において、規制部側勾配面11caに対してウェイト部材側勾配面10bが当接してウェイト部材10を案内するとともに、規制部側勾配面11caに対してウェイト部材側勾配面10bが当接してウェイト部材10を抜け止めすることができる。
【0050】
さらに、本実施形態に係る保持部材11は、図9、10に示すように、規制部11cの規制部側勾配面11caと対峙する部位に開口11d(表面と裏面とを貫通する開口)が形成されている。これにより、保持部材11の成形時において、成形型の一部を開口11dに挿通させることができ、逆テーパとなる規制部側勾配面11caを容易に成形することができる。
【0051】
圧接部材12は、ウェイト部材10が内径側位置から外径側位置に移動することにより駆動側クラッチ板6及び被動側クラッチ板7の積層方向(図2、3中右側)に移動して当該駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7とを圧接させるものである。具体的には、圧接部材12は、図8、11に示すように、円環状部材から成り、周方向に亘って複数形成された勾配面12aと、勾配面12aが形成された面とは反対側の面である押圧面12bとを有して構成されている。
【0052】
そして、勾配面12aは、ウェイト部材10のカム面10aと対峙しつつ当接するよう形成されており、これら勾配面12a及びカム面10aがカムとして作用することにより、ウェイト部材10の内径側位置から外径側位置に向かう移動時の推力を圧接部材12に伝達して駆動側クラッチ板6と被動側クラッチ板7とを圧接させる方向に移動させるようになっている。
【0053】
本実施形態によれば、保持部材11は、ウェイト部材10の径方向の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制する規制部11cが形成されているので、遠心クラッチ手段9の部品点数を削減して製造コストを低減させつつ、ウェイト部材10の案内機能及び抜け止め機能を持たせることができる。
【0054】
また、本実施形態に係るウェイト部材10は、ウェイト部材側勾配面10bが形成されるとともに、規制部11cは、ウェイト部材側勾配面10bと対峙する規制部側勾配面11caを有するので、ウェイト部材10の案内を円滑に行わせつつ軸方向の抜け止めを確実に行わせることができる。
【0055】
さらに、規制部11cはウェイト部材10が圧接部材12側に移動することを規制するので、ウェイト部材10が圧接部材12側に抜け落ちることを規制部11cによって防止することができる。また、規制部11cに形成した規制部側勾配面11caが、ウェイト部材10の径方向の移動を案内するとともに、ウェイト部材10の軸方向の移動を規制するので、規制部11cの構造を簡単なものにして製造コストを低減することができる。
【0056】
加えて、ウェイト部材10の周方向における両側面にウェイト部材側勾配面10bが形成されるとともに、規制部11cの周方向における両側面に規制部側勾配面11caを形成したので、ウェイト部材10の案内を一層円滑に行わせつつ軸方向の抜け止めを確実に行わせることができる。また、規制部11cの周方向における両側面に、ウェイト部材10の抜け止めを行う部位を形成したので、ウェイト部材10の軸方向の抜け止めを確実に行わせることができる。特に、ウェイト部材側勾配面10bおよび規制部側勾配面11caを平面から形成したので、ウェイト部材10の案内を一層円滑に行わせることができる。
【0057】
しかるに、上記実施形態においては、ウェイト部材側勾配面10b及び規制部側勾配面11caにて規制部11cが構成されているが、これに代えて、図20に示すように、規制部11cに形成され、被摺動面11bに対して平行な方向に延設された(勾配しない)係止部11cbと、ウェイト部材10に形成され、摺動面10dに対して平行な方向に延設された(勾配しない)係止部10fとを対峙させるようにし、これら係止部11cb及び係止部10fが対峙することにより、軸方向の移動を規制して抜け止め可能なものとしてもよい。
【0058】
また、ウェイト部材10に形成されたウェイト部材側勾配面10bが、規制部11cに形成された規制部側勾配面11caに当接しており、規制部側勾配面11caは、ウェイト部材10の内径側位置と外径側位置との間の移動を案内している。このように、規制部11cにおけるウェイト部材10を案内する部位たる規制部側勾配面11caとは異なる部位に、ウェイト部材10の抜け止めを行う部位たる係止部11cbを設けたので、ウェイト部材10の案内と抜け止めを、それぞれに最適な形状によって行うことができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る規制部11cは、保持部材11に一体形成された部位から成るので、保持部材11を容易に製造することができ、且つ、遠心クラッチ手段9の部品点数をより削減させることができる。またさらに、本実施形態に係る保持部材11は、規制部11cと対峙する部位に開口11dが形成されたので、保持部材11に一体形成される規制部11cを容易に形成することができるとともに、保持部材11の軽量化を図ることができる。
【0060】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る動力伝達装置は、第1の実施形態と同様、車両に配設されて任意にエンジンEの駆動力をミッションMを介して駆動輪T側へ伝達し又は遮断するためのもので、入力ギア1(入力部材)が形成されたクラッチハウジング2と、ミッションMに接続された出力シャフト3(出力部材)と、クラッチ部材(第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4b)と、プレッシャ部材5と、複数の駆動側クラッチ板6及び複数の被動側クラッチ板7と、遠心クラッチ手段9とを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付すこととし、詳細な説明を省略する。
【0061】
本実施形態に係る遠心クラッチ手段9の保持部材11は、図21に示すように、別部品から成る別体部材14が周縁部に複数取り付けられており、それぞれの別体部材14には、図22に示すように、規制部側勾配面14aが形成されている。そして、保持部材11にウェイト部材10が保持されると、ウェイト部材10に形成されたウェイト部材側勾配面10bと別体部材14に形成された規制部側勾配面14aとが対峙(対向)するよう構成されている。これにより、各ウェイト部材10が内径側位置と外径側位置との間を移動する過程において、規制部側勾配面14aに対してウェイト部材側勾配面10bが当接してウェイト部材10を案内するとともに、規制部側勾配面14aに対してウェイト部材側勾配面10bが当接してウェイト部材10を抜け止めすることができる。
【0062】
本実施形態によれば、規制部は、保持部材11に取り付けられた、保持部材11とは別体の別体部材14から成るので、保持部材11とは異なる材料で規制部を形成することができるとともに、規制部の変形又は破損が生じた場合、別体部材14を交換することによりウェイト部材10の案内及び軸方向の抜け止めを維持することができる。
【0063】
しかるに、上記実施形態においては、ウェイト部材側勾配面10b及び規制部側勾配面14aにて規制部としての別体部材14が構成されているが、これに代えて、図23に示すように、規制部としての別体部材14’に形成され、被摺動面11bに対して平行な方向に延設された(勾配しない)係止部14’aとし、ウェイト部材10に形成され、摺動面10dに対して平行な方向に延設された(勾配しない)係止部10f(図20参照)とを対峙させるようにし、これら係止部14’a及び係止部10fが対峙することにより、ウェイト部材10の内径側位置と外径側位置との間の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制して抜け止め可能なものとしてもよい。
【0064】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。
本実施形態に係る動力伝達装置は、第1の実施形態と同様、車両に配設されて任意にエンジンEの駆動力をミッションMを介して駆動輪T側へ伝達し又は遮断するためのもので、入力ギア1(入力部材)が形成されたクラッチハウジング2と、ミッションMに接続された出力シャフト3(出力部材)と、クラッチ部材(第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4b)と、プレッシャ部材5と、複数の駆動側クラッチ板6及び複数の被動側クラッチ板7と、ウェイト部材10を具備した遠心クラッチ手段9とを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付すこととし、詳細な説明を省略する。
【0065】
本実施形態に係る遠心クラッチ手段9の保持部材11は、図24に示すように、ウェイト部材10が内径側位置にあるとき、そのウェイト部材10の基端部と当接する規制リング15が取り付けられている。かかる規制リング15は、保持部材11における中心側開口の周縁に取り付けられたリング状部材から成り、内径側ウェイト部材10の基端部と当接して当該ウェイト部材10が内径側位置から更に内径側に移動してしまうのを防止可能とされている。なお、かかる規制リング15が取り付けられた保持部材11の他の実施形態として、図25に示すように、別体部材14(第2実施形態参照)を取り付けるようにしてもよい。
【0066】
次に、本発明に係る第4の実施形態について説明する。
本実施形態に係る動力伝達装置は、第1の実施形態と同様、車両に配設されて任意にエンジンEの駆動力をミッションMを介して駆動輪T側へ伝達し又は遮断するためのもので、入力ギア1(入力部材)が形成されたクラッチハウジング2と、ミッションMに接続された出力シャフト3(出力部材)と、クラッチ部材(第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4b)と、プレッシャ部材5と、複数の駆動側クラッチ板6及び複数の被動側クラッチ板7と、遠心クラッチ手段9とを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付すこととし、詳細な説明を省略する。
【0067】
本実施形態に係る遠心クラッチ手段9のウェイト部材16は、クラッチハウジング2の回転に伴う遠心力により内径側位置から外径側位置に移動可能とされたもので、図26、27に示すように、保持部材11に対して点接触しつつ移動可能な球状部材16a(接触部)と、両側面にそれぞれ形成されたウェイト部材側勾配面16bとを有して構成されている。
【0068】
そして、保持部材11にウェイト部材16が保持されると、ウェイト部材16に形成されたウェイト部材側勾配面16bと規制部11cに形成された規制部側勾配面11caとが対峙(対向)するよう構成されている。これにより、各ウェイト部材16が内径側位置と外径側位置との間を移動する過程において、規制部側勾配面11caに対してウェイト部材側勾配面16bが当接してウェイト部材16を案内するとともに、規制部側勾配面11caに対してウェイト部材側勾配面16bが当接してウェイト部材16を抜け止めすることができる。
【0069】
次に、本発明に係る第5の実施形態について説明する。
本実施形態に係る動力伝達装置は、第1の実施形態と同様、車両に配設されて任意にエンジンEの駆動力をミッションMを介して駆動輪T側へ伝達し又は遮断するためのもので、入力ギア1(入力部材)が形成されたクラッチハウジング2と、ミッションMに接続された出力シャフト3(出力部材)と、クラッチ部材(第1クラッチ部材4a及び第2クラッチ部材4b)と、プレッシャ部材5と、複数の駆動側クラッチ板6及び複数の被動側クラッチ板7と、遠心クラッチ手段9とを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付すこととし、詳細な説明を省略する。
【0070】
本実施形態に係る遠心クラッチ手段9のウェイト部材17は、クラッチハウジング2の回転に伴う遠心力により内径側位置から外径側位置に移動可能とされたもので、図28、29に示すように、保持部材11に対して転動しつつ移動可能な一対の転動部材17a、17b(接触部)と、両側面にそれぞれ形成されたウェイト部材側勾配面17cとを有して構成されている。
【0071】
そして、保持部材11にウェイト部材17が保持されると、ウェイト部材17に形成されたウェイト部材側勾配面17cと規制部11cに形成された規制部側勾配面11caとが対峙(対向)するよう構成されている。これにより、各ウェイト部材17が内径側位置と外径側位置との間を移動する過程において、規制部側勾配面11caに対してウェイト部材側勾配面17cが当接してウェイト部材17を案内するとともに、規制部側勾配面11caに対してウェイト部材側勾配面17cが当接してウェイト部材17を抜け止めすることができる。
【0072】
上記実施形態によれば、保持部材11は、ウェイト部材10の軸方向の移動を規制する規制部11cが形成されているので、ウェイト部材10の抜け止め機能を持たせることができるとともに、規制部11cは、保持部材11に一体形成された部位から成るので、保持部材11を容易に製造することができ、且つ、遠心クラッチ手段9の部品点数をより削減させることができる。また、保持部材11に一体形成され、ウェイト部材の軸方向の移動を規制する規制部が、ウェイト部材の径方向の移動を案内するので、遠心クラッチ手段の部品点数を削減して製造コストを低減させつつ、ウェイト部材の案内機能及び抜け止め機能を持たせることができる。
【0073】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、第1~5の実施形態の如く遠心クラッチ手段9がクラッチハウジング2の開口側に配設されたものに限らず、図30(ウェイト部材10が内径側位置)及び図31(ウェイト部材10が外径位置)に示すように、クラッチハウジング2の底面側に配設されたものであってもよい。例えば遠心クラッチ手段9がクラッチハウジング2の底面側に配設されるとともに、遠心クラッチ手段9が第1の実施形態に係るウェイト部材10、保持部材11及び圧接部材12を有する動力伝達装置であってもよい。
【0074】
この場合、第1の実施形態と同様、ウェイト部材10の内径側位置と外径側位置との間の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制して抜け止め可能な規制部11cが保持部材11に形成されるので、規制部11cにてウェイト部材10の案内機能及び抜け止め機能を持たせることができ、遠心クラッチ手段9の部品点数を削減して製造コストを低減させることができる。
【0075】
なお、本発明の動力伝達装置は、ウェイト部材の前記内径側位置と外径側位置との間の移動を案内するとともに、軸方向の移動を規制して抜け止め可能な規制部が前記保持部材に形成された遠心クラッチ手段9を具備するものであれば、他の形態の動力伝達装置に適用することができる。例えば、クラッチ部材には被動側クラッチ板が保持されておらず、プレッシャ部材のみに被動側クラッチ板が保持されている動力伝達装置にも適用することができる。また、自動二輪車の他、自動車、3輪又は4輪バギー、或いは汎用機等種々の多板クラッチ型の動力伝達装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明と同様の趣旨であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 入力ギア(入力部材)
2 クラッチハウジング
2a 切欠き
3 出力シャフト(出力部材)
4a 第1クラッチ部材
4b 第2クラッチ部材
4ba スプライン嵌合部
4bb フランジ部
5 プレッシャ部材
5a フランジ部
6 駆動側クラッチ板
7 被動側クラッチ板
8 固定部材
9 遠心クラッチ手段
10 ウェイト部材
10a カム面
10b ウェイト部材側勾配面
10c 溝形状
10d 摺動面
10e 当接部
10f 係止部
11 保持部材
11a 壁部
11b 被摺動面
11c 規制部
11ca 規制部側勾配面
11cb 係止部
11d 開口
12 圧接部材
12a 勾配面
12b 押圧面
13 付勢スプリング
14 別体部材
14a 規制部側勾配面
15 規制リング
16 ウェイト部材
16a 球状部材
16b ウェイト部材側勾配面
17 ウェイト部材
17a、17b 転動部材
17c ウェイト部材側勾配面
S クラッチスプリング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31