(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098954
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】制御システム及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/00 20060101AFI20240717BHJP
G05D 1/241 20240101ALI20240717BHJP
B65G 35/00 20060101ALI20240717BHJP
G05D 1/622 20240101ALI20240717BHJP
G05D 1/672 20240101ALI20240717BHJP
G05D 1/43 20240101ALN20240717BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
G05D1/241
B65G35/00 B
G05D1/622
G05D1/672
G05D1/43
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204525
(22)【出願日】2023-12-04
(62)【分割の表示】P 2023002150の分割
【原出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】515012804
【氏名又は名称】サンナイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143063
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】長屋 俊司
【テーマコード(参考)】
3F022
5H301
【Fターム(参考)】
3F022LL07
3F022MM08
3F022MM61
3F022MM70
3F022NN22
3F022NN57
3F022QQ01
3F022QQ13
3F022QQ20
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC08
5H301CC10
5H301GG06
5H301GG08
5H301LL01
5H301LL08
5H301LL11
5H301QQ01
(57)【要約】
【課題】搬送装置に搬送対象を連結し易い態様で搬送装置が搬送対象に接近している状態とするための搬送装置の制御を実行することが可能な搬送システムの制御装置及び搬送システムを提供すること。
【解決手段】牽引側制御装置及び連結側制御装置は、台車11を所定の搬送場所に搬送するための搬送システムに利用される。搬送システムは、牽引車12と連結装置13とを備えている。連結装置13は、牽引車12の進路変更に際して台車11の追従を可能とする揺動部26を備えている。これらの制御装置では、連結装置13に台車11を連結させる場合に、牽引車12を台車11に向けた方向とは逆方向に移動させる制御と、牽引装置10の直線状態が検知されたことに基づいて当該逆方向の移動を終了させる制御と、連結装置13に台車11を連結させるために牽引車12を台車11に向けた方向に移動させる制御とが行われる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象を所定の搬送場所に搬送するための搬送装置を有する搬送システムに利用される制御システムであって、
前記搬送装置を移動させて所定状態となるようにするための所定制御を実行する所定制御手段と、
前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している状況において、当該搬送装置の移動量が所定移動量となったことに基づいて又は前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している期間が所定期間となったことに基づいて、前記所定状態となっていなくても前記搬送装置の移動を終了させるための特定終了制御を実行する特定終了制御手段と、
を備えていることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記搬送システムは、前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している状況において、当該搬送装置が移動の障害となる所定検知対象と接触したことを検知する所定接触検知手段を備え、
前記制御システムは、前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している状況において、前記所定接触検知手段により前記所定検知対象との接触が検知されたことに基づいて前記搬送装置の移動を終了させるための所定の終了制御を実行する手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記搬送システムは、前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している状況において、当該搬送装置の移動方向に移動の障害となる特定検知対象が存在していることを検知する所定非接触検知手段を備え、
前記制御システムは、前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している状況において、前記所定非接触検知手段により前記特定検知対象が検知されている状態となったことに基づいて、前記搬送装置を減速させる制御を実行する手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記搬送システムは、前記搬送装置に前記搬送対象を連結するための連結手段を備え、
前記制御システムは、
前記搬送装置に設けられた第1制御手段と、
前記連結手段に設けられた第2制御手段と、
を備え、
前記所定制御手段は、前記所定制御において、前記搬送装置を移動させる制御を実行する所定移動制御手段を備え、
前記特定終了制御手段は、
前記特定終了制御において、前記搬送装置の移動量が前記所定移動量となるという事象又は前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している期間が前記所定期間となるという事象である所定事象が発生したことを特定する所定事象発生特定手段と、
前記特定終了制御において、前記所定事象発生特定手段により前記所定事象の発生が特定されたことに基づいて、前記所定状態となっていなくても前記搬送装置の移動を終了させるための特定移動終了制御を実行する特定移動終了制御手段と、
を備え、
前記第2制御手段は、前記所定事象発生特定手段を備え、
前記第1制御手段は、前記所定移動制御手段及び前記特定移動終了制御手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記搬送システムは、前記搬送装置に前記搬送対象を連結するための連結手段を備え、
前記搬送装置に連結されている前記連結手段が前記搬送対象と連結可能な位置に存在している状態となることにより前記所定状態となる構成であり、
前記所定制御手段は、前記所定制御として、前記搬送装置を前記搬送対象に向けた方向に移動させるようにするための連結用移動制御を実行する手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記搬送システムは、前記所定状態となったことを検知する連結可能検知手段を備え、
前記制御システムは、前記連結可能検知手段により前記所定状態となったことが検知されたことに基づいて、前記連結用移動制御が終了されるようにするための所定の終了制御を実行する手段を備えていることを特徴とする請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記制御システムは、前記所定の終了制御が実行されたことに基づいて、前記連結手段に前記搬送対象が連結されるようにするための制御を実行する手段を備えていることを特徴とする請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記搬送システムは、前記搬送装置に前記搬送対象を連結するための連結手段を備え、
前記連結手段は、前記搬送装置の進行方向の変更に際して前記搬送対象の追従を可能とするように縦方向の回動軸を中心として回動可能に設けられた回動部を備え、
前記回動部の回動位置が所定位置となることにより前記所定状態となる構成であり、
前記所定制御手段は、前記所定制御として、前記搬送装置に前記連結手段が連結されている状態において当該搬送装置を特定の方向に移動させるようにするための特定移動制御を実行する特定移動制御手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の制御システム。
【請求項9】
前記搬送システムは、前記回動部の回動位置が前記所定位置となったことを検知する所定検知手段を備え、
前記制御システムは、前記回動部の回動位置が前記所定位置となったことが前記所定検知手段により検知されたことに基づいて前記特定移動制御が終了されるようにするための特定の移動終了制御を実行する手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記搬送システムは、前記回動部の回動位置が前記所定位置である前記所定状態において当該回動部の回動を規制する規制手段を備え、
前記制御システムは、前記回動部の回動位置が前記所定位置となったことが前記所定検知手段により検知されたことに基づいて、前記規制手段により前記回動部の回動が規制されるようにするための規制用制御を実行する規制制御手段を備えていることを特徴とする請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
請求項1記載の前記制御システムを備えていることを特徴とする搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システムに利用される制御システム及び搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場及び倉庫等において、材料、部品及び完成品等の物品を搬送先に搬送するために搬送システムが利用されている。搬送システムには、駆動輪を有する搬送装置及び当該搬送装置の制御を行う制御装置が含まれている。搬送装置として、物品が搭載される荷台などを備えており単独で物品を搬送する搬送装置、物品を搭載した台車などの搬送対象を押しながら搬送先まで搬送する搬送装置、及び物品を搭載した台車などの搬送対象を搬送先まで牽引しながら搬送する搬送装置などが利用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記のような搬送システムでは、搬送装置が搬送先に到達している状態や所定の検知対象物が検知されている状態などの所定の状態となるように、直進走行などの所定の走行態様で搬送装置の自動走行が行われるようにするための制御が行われる。このような搬送装置の制御では、当該所定の状態となることを妨げる要因が発生してしまった場合に、管理者の想定範囲を超えて搬送装置の走行が継続されることにより搬送装置が障害物等と接触してしまうといった問題があった。これに対して、搬送装置が障害物等と接触したことを検知して搬送装置の走行を停止させる制御を行う搬送システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような制御が行われる搬送システムでは、管理者が想定していない状況で搬送装置が障害物等と接触することで搬送装置や接触した障害物等が破損してしまうおそれがある。また、搬送装置の周囲に存在する障害物等を非接触で検知して接触する前に搬送装置を停止させる制御を行う搬送システムも考えられるが、搬送装置の周囲に存在する全ての障害物等を検知しようとすると、搬送装置の製造コストの増大といった問題が生じてしまう。このように、所定の状態となるように搬送装置の自動走行を安全に行わせるための制御を実行する搬送システムの制御装置及び搬送システムには依然として改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記例示した事情等に鑑みてなされたものであり、所定の状態となるように搬送装置の自動走行を安全に行わせるための制御を実行することが可能な制御システム及び搬送システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく請求項1記載の発明は、搬送対象を所定の搬送場所に搬送するための搬送装置を有する搬送システムに利用される制御システムであって、
前記搬送装置を移動させて所定状態となるようにするための所定制御を実行する所定制御手段と、
前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している状況において、当該搬送装置の移動量が所定移動量となったことに基づいて又は前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している期間が所定期間となったことに基づいて、前記所定状態となっていなくても前記搬送装置の移動を終了させるための特定終了制御を実行する特定終了制御手段と、
を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決すべく請求項11記載の発明は、搬送対象を所定の搬送場所に搬送するための搬送装置を有する搬送システムであって、請求項1記載の前記制御システムを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定の状態となるように搬送装置の自動走行を安全に行わせるための制御を実行することが可能な制御システム及び搬送システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)第1の実施形態における牽引装置及び台車の側面図であり、(b)台車を上から見た平面図であり、(c)牽引車を上から見た平面図である。
【
図4】(a)連結装置の接続部を上から見た平面図であり、(b)各種部品を取り除いた状態の第2連結フレームを上から見た平面図であり、(c)フックが台車に係合する様子を説明するための説明図である。
【
図5】牽引装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図6】(a)~(c)牽引装置の台車接続用動作を説明するための説明図である。
【
図7】牽引側CPUにおける走行制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】牽引側CPUにおける異常対応処理を示すフローチャートである。
【
図9】牽引側CPUにおける接続動作中処理を示すフローチャートである。
【
図10】連結側CPUにおける連結側処理を示すフローチャートである。
【
図11】(a)連結側CPUにおける接続用前進中処理を示すフローチャートであり、(b)連結側CPUにおける接続用後進中処理を示すフローチャートである。
【
図12】(a)~(h)台車接続用動作が行われる様子を示すタイムチャートである。
【
図13】(a)~(j)牽引装置の異常停止が行われる様子を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は牽引装置10及び当該牽引装置10に牽引される台車11の側面図である。
【0012】
図1(a)に示すように、牽引装置10は自律走行可能な牽引車12と、台車11を当該牽引車12に連結させるための連結装置13とを備えている。なお、本実施の形態では、便宜上、牽引車12が前進走行する際の走行方向に向かって前側を「前側」として規定し、当該走行方向に向かって後側を「後側」として規定する。また、牽引車12が前進走行する際の走行方向に向かって右側を「右側」と規定し、走行方向に向かって左側を「左側」と規定する。
【0013】
図1(b)は台車11を上から見た平面図である。
図1(b)に示すように、台車11は、矩形の底板部14と、底板部14の底面に設けられた4つのキャスタ15a~15dとを備えている。底板部14の上には材料、部品及び完成品等の搬送物(図示略)が搭載される。キャスタ15a~15dは向き変更自在な車輪であり、底板部14の四隅に配置されている。
【0014】
底板部14には、前後方向に延びる左右一対の底板貫通孔14a,14bが設けられている。底板貫通孔14a,14bは底板部14を板厚方向に貫通させて形成されている。底板部14において、底板貫通孔14a,14bの前方に前枠部14cが存在している。前枠部14cの後端部のうち、左側底板貫通孔14aの前側縁部14d及び右側底板貫通孔14bの前側縁部14eに、連結装置13を係合させることが可能となっている。
【0015】
なお、台車11の構成は、
図1(a)及び
図1(b)に示す構成に限らない。例えば、底板部14の前部に、当該底板部14の底面から下方に突出した突起部を備え、当該突起部に連結装置13が係合される構成としてもよい。また、所謂六輪台車のように、底板部14の底面において、前側の一対のキャスタ15a,15cと後側の一対のキャスタ15b,15dとの間に、向きが前後方向に設定されており向き変更不能に固定された一対の固定車輪が設けられている構成としてもよい。さらにまた、底板部14の上に、台車11に搭載される物品の水平方向への移動を規制する側枠部が設けられている構成としてもよい。
【0016】
図1(a)に示すように、牽引車12は、略直方体状の車体16と、車体16の底部前側に設けられた左右一対の前輪17(一方の図示を省略)と、車体16の底部後側に設けられた左右一対の後輪18(一方の図示を省略)と、車体16の上に設けられたスピーカ19と、車体16の前側上部に設けられた前方検知センサ21と、車体16の前側下部に設けられた前側バンパ22とを備えている。また、牽引車12は、車体16の内部に、後輪駆動部23と、牽引側制御装置30とを備えている。
【0017】
一対の後輪18は駆動輪であるとともに、一対の前輪17は従動車輪である。左右それぞれの後輪18毎に正回転及び逆回転可能なモータ(図示略)が設けられており、一対の後輪18は個別に、正回転制御可能となっているとともに逆回転制御可能となっている。牽引側制御装置30が後輪駆動部23を利用して一対の後輪18の回転速度及び向きを制御することにより、牽引車12の操舵制御が行われる。
【0018】
前方検知センサ21は、牽引車12の前方に設定されている検知範囲内(具体的には前方の半径1mの範囲内)に存在する障害物や作業者(以下、本明細書において「障害物等」という。)を非接触で検知する超音波式センサである。なお、前方検知センサ21として利用するセンサは、超音波式センサに限定されることはなく、光学式センサ等、非接触で障害物等を検知可能な各種センサを利用することができる。
【0019】
牽引車12が前進走行している状況において、前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となった場合、牽引車12の走行速度は前進走行用の速度(具体的には秒速15cm)から減速前進走行用の速度(具体的には秒速7.5cm)に切り換えられる。スピーカ19は、牽引装置10が異常停止状態となっていることを作業者に報知する異常報知音、及び前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となっていることを報知する警告音を出力可能である。
【0020】
図1(c)は牽引車12を上から見た平面図である。
図1(c)に示すように、前側バンパ22は、車体16の左側面16aの前部から車体16の前面16bを経由して車体16の右側面16cの前部まで、車体16に沿って延在している。牽引車12が前方(左前方及び右前方を含む)に存在している障害物等に接触する場合には、車体16よりも先に前側バンパ22が障害物等と接触して、車体16に加わる衝撃を和らげることが可能となっている。前側バンパ22には、当該前側バンパ22が障害物等と接触して押されたことを検知する前側接触検知センサ24が接続されている。
【0021】
次に、連結装置13について説明する。
図1(a)に示すように、連結装置13は、牽引車12の後部に固定される接続部25と、接続部25に対して可動な揺動部26とを備えている。詳細は後述するが、揺動部26には、台車11を接続するための係合ユニット27、及び牽引装置10を直線的に前進走行又は後進走行させることを容易とするための流れ止め台車部28が設けられている。
図2は連結装置13を上から見た斜視図であり、
図3は連結装置13を下から見た斜視図である。
【0022】
図2に示すように、接続部25は、車体16の後面16d(
図1(c))の下側に固定される矩形板状の固定フレーム41と、固定フレーム41の後側の板面41aから後方に延びる第1連結フレーム42とを備えている。固定フレーム41及び第1連結フレーム42は、金属製であり、一体形成されている。
【0023】
図3に示すように、第1連結フレーム42は、上側板部43と、当該上側板部43の底面43aの周縁部を下方に突出させて形成された下側枠部44とを備えている。
図2に示すように、上側板部43の後部に回動軸29が固定されており、当該回動軸29に揺動部26が軸支されている。揺動部26は、回動軸29を介して第1連結フレーム42と連結される金属製の第2連結フレーム46を備えている。第2連結フレーム46は、下側板部47と、下側板部47の上側平面47aの周縁部から上方に突出する上側枠部48とを備えている。
【0024】
図4(a)は接続部25を上から見た平面図であり、
図4(b)は各種部品を取り除いた状態の第2連結フレーム46を上から見た平面図である。なお、
図4(b)では各種部品のネジ穴の図示を省略している。
図4(a)に示すように、上側板部43は、前側(牽引車12側)に存在する矩形の前側板部43bと、前側板部43bの後側(台車11側)に存在している後側板部43cとを有している。前側板部43bの後側には回動軸29(
図3)を挿通可能とする第1連結孔43dが設けられている。第1連結孔43dは、上側板部43の幅方向(左右方向)の中央に設けられている。また、
図4(b)に示すように、下側板部47の前側には、回動軸29を挿通可能とする第2連結孔47bが設けられている。第2連結孔47bは、下側板部47の幅方向(左右方向)の中央に設けられている。第1連結孔43d及び第2連結孔47bは、これらの連結孔43d,47bの直径が回動軸29の直径よりも大きくなるように形成されている。
【0025】
第1連結孔43d及び第2連結孔47bが同一軸線上となるように連通されているとともに、
図2に示すように第2連結フレーム46の前部が第1連結フレーム42の後部の上に配置されている状態において、回動軸29がこれらの連結孔43d,47bに挿通されている。これにより、第2連結フレーム46が回動軸29の周りを回動可能となっているとともに、揺動部26が回動軸29の周りを回動可能となっている。牽引装置10を水平な床面上で使用する場合、回動軸29は縦方向(牽引装置10の高さ方向)に延び、揺動部26は回動軸29と直交する水平面内で揺動可能となる。揺動部26は、牽引装置10の前進方向又は後進方向に対して、左右方向に揺動可能である。
【0026】
図3に示すように、回動軸29の下部は、第1連結フレーム42の下方から下側軸固定部材45により第1連結フレーム42に固定されている。これにより、回動軸29が連結孔43d,47bから下方に抜け落ちてしまうことが防止されている。また、
図2に示すように、回動軸29の上部には円盤状のストッパ49が固定されており、ストッパ49と下側板部47との間にはコイルばね51が存在している。コイルばね51は、回動軸29と同一軸線上となるように配置されている。ストッパ49は、コイルばね51の外周よりも大きく、ピン締結により回動軸29から外れないように固定されている。これにより、第2連結フレーム46の上方への移動が規制されており、回動軸29が第2連結孔47b(
図4(b))から抜けてしまうことが防止されている。
【0027】
図3に示すように、下側板部47の底面47cには、一対の連結側キャスタ52a,52bが設けられている。連結側キャスタ52a,52bは、向き変更自在な車輪である。これにより、連結側キャスタ52a,52bが固定車輪である場合と比較して、牽引装置10の操舵性を良好なものとすることが可能となっている。また、連結側キャスタ52a,52bが設けられていることにより、牽引車12の走行中に牽引車12の動きに追従する態様で、揺動部26を回動軸29の周りで回動させることが可能となっているとともに、牽引装置10に台車11が接続されている状況において牽引装置10の進行方向の変更に際して台車11を追従させることが可能となっている。なお、下側板部47の底面47cに設けられる連結側キャスタ52a,52bの数は任意であり、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0028】
次に、揺動部26の回動範囲を規制するための構成について説明する。
図4(a)に示すように、第1連結フレーム42における上側板部43の後側板部43cは、左側傾斜部43e及び右側傾斜部43fが生じるように、根本から先端に向けて左右両側からそれぞれ一定の割合で先細りしており、前後方向の中心線に対して左右対称形状となっている。当該左側傾斜部43e及び右側傾斜部43fのそれぞれから下方に向けて突出させて、
図3に示すように左側傾斜突起部44a及び右側傾斜突起部44bが、後側板部43c(
図4(a))の下側枠部44として設けられている。また、
図3に示すように、第2連結フレーム46における下側板部47の底面47cから下方に突出させて、左右一対の回動範囲規制突起53,54が設けられている。
【0029】
回動軸29を中心として第2連結フレーム46が左方に回動すると、左側回動範囲規制突起53が左側傾斜突起部44aと接触してそれ以上左方に回動できない状態となる。また、回動軸29を中心として第2連結フレーム46が右方に回動すると、右側回動範囲規制突起54が右側傾斜突起部44bと接触してそれ以上右方に回動できない状態となる。第1連結フレーム42の幅方向(左右方向)の中央と、回動軸29と、第2連結フレーム46の幅方向の中央とが一直線上に並んでいる状態(以下、本明細書において「連結装置13の直線状態」という。)を基準として、第2連結フレーム46の当該直線状態からの左方への回動量が左側規制角度(具体的には30度)に達した場合に左側回動範囲規制突起53が左側傾斜突起部44aと接触するとともに、第2連結フレーム46の当該直線状態からの右方への回動量が右側規制角度(具体的には30度)に達した場合に右側回動範囲規制突起54が右側傾斜突起部44bと接触する。
【0030】
図2に示すように、係合ユニット27は、揺動部26において回動軸29に固定されている一端側とは逆の他端側(後側)に設けられている。係合ユニット27は、左右一対のフック55,56と、フック55,56を上下動させるためのフック昇降装置57と、フック55,56を外側から保護するための左右一対の外側フレーム61,62とを備えている。フック55,56及び外側フレーム61,62は金属製である。
【0031】
図3に示すように、フック55,56は、前後方向に延在する長板状であり一端がフック昇降装置57に固定され他端が第2連結フレーム46よりも後方に突出した位置に存在するように設けられた内側フレーム部63,64と、当該内側フレーム部63,64の突出先端側に固定されており上方に突出している係合部65,66とを備えている。左側係合部65は左内側フレーム部63の外側(左側)に、左側係合部65の外側(左側)からネジ固定されているとともに、右側係合部66は右内側フレーム部64の外側(右側)に、右側係合部66の外側(右側)からネジ固定されている。
【0032】
図2に示すように、外側フレーム61,62は略L字に形成されている。外側フレーム61,62は、鉛直方向に延びる外側鉛直部61a,62aと、外側鉛直部61a,62aの下部から係合部65,66よりも後方まで延びる外側水平部61b,62bとを備えている。左外側鉛直部61aの上部は、板状の左スペーサ58を挟んで外側(左側)から上側枠部48の左側面にネジ固定されているとともに、右外側鉛直部62aの上部は、板状の右スペーサ59を挟んで外側(右側)から上側枠部48の右側面にネジ固定されている。
【0033】
係合部65,66は外側フレーム61,62の外側鉛直部61a,62aよりも後方に存在している。係合部65,66は、横方向に所定の厚みを有し、上面が後方に向けて徐々に下り傾斜となる形状をしている。係合部65,66において前方を向く面である係合面65a,66aは縦方向に延在している。台車11を係合する場合にはこの係合面65a,66aが台車11の前枠部14c(
図1(b))に後方から当接する。
【0034】
図3に示すように、フック昇降装置57は、第2連結フレーム46の下側板部47における底面47cの後側に設けられている。フック昇降装置57は、第2連結フレーム46に固定されている固定部57aと、当該固定部57aに対して上下動可能に接続されている可動部57bとを備えている。固定部57aは、下側板部47の底面47cに固定されている断面L字の固定部材72と、当該固定部材72の後向きの板面72aに固定されて縦方向(牽引装置10の高さ方向)に延在している左右一対のラック73,74とを備えている。可動部57bは、略直方体形状の昇降用本体部75と、昇降用本体部75の前面に固定されておりラック73,74に沿って上下動可能な一対の可動部材76,77とを備えている。また、昇降用本体部75の左右には、上述したフック55,56の内側フレーム部63,64が一体形成されている。
【0035】
ラック73,74には縦方向に並ぶ複数の歯(図示略)が設けられている。また、可動部材76,77は円盤状のギヤ(図示略)を備えており、当該ギヤには、ラック73,74の歯に係合するように、周方向に並ぶ複数の歯(図示略)が設けられている。また、昇降用本体部75には昇降用駆動部71(
図5参照)が収容されており、昇降用駆動部71は可動部材76,77のギヤを回転させるための回転モータ(図示略)を備えている。回転モータが正回転するように昇降用駆動部71の駆動制御を行うことにより、可動部材76,77のギヤを正回転させて可動部材76,77を含む可動部57bをラック73,74に沿って上方に移動させることができる。また、回転モータが逆回転するように昇降用駆動部71の駆動制御を行うことにより、可動部材76,77のギヤを逆回転させて可動部材76,77を含む可動部57bをラック73,74に沿って下方に移動させることができる。なお、フック昇降装置57の構成は、ラック73,74及びギヤの組合せを利用する構成に限定されることはなく、昇降用駆動部71の駆動制御を行うことにより可動部57bを縦方向に移動可能な構成であれば任意である。
【0036】
フック昇降装置57は、可動部57bを上方に移動させることによりフック55,56を上昇させることができるとともに、可動部57bを下方に移動させることによりフック55,56を下降させることができる。
図2に示している連結装置13の状態はフック55,56が上端まで上昇している上昇状態である。フック55,56が当該上昇状態となることにより、係合部65,66の上端が外側フレーム61,62における外側水平部61b,62bの上端よりも上方に突出して、台車11と係合可能となる。
【0037】
図4(c)はフック56が台車11に係合する様子を説明するための説明図である。昇降用駆動部71を第1駆動状態とする制御が行われて、可動部材76,77のギヤが正回転することによりフック55,56が上昇する。そして、
図4(c)において実線で示すように、台車11の前枠部14cの後面に対して後方の位置にて右側係合部66の係合面66aが対向する状態となり、この状態で牽引装置10が前進走行することにより右側係合部66の係合面66aが台車11の右側底板貫通孔14bの前側縁部14eに後方から当接し、右側係合部66が台車11と係合した状態となる。図示は省略するが同様に、左側係合部65の係合面65aも台車11の前枠部14cの後面に対して後方の位置にて対向する状態となり、この状態で牽引装置10が前進走行することにより左側係合部65の係合面65aが台車11の左側底板貫通孔14aの前側縁部14dに後方から当接し、左側係合部65が台車11と係合した状態となる。
【0038】
昇降用駆動部71を第2駆動状態とする制御が行われて、可動部材76,77のギヤが逆回転することによりフック55,56が下降する。フック55,56が下端まで下降している下降状態では、
図4(c)において二点鎖線で示すように、右側係合部66の上端が台車11の底板部14よりも下方に位置している状態となることにより、右側係合部66が台車11と係合しない状態となる。図示は省略するが同様に、左側係合部65の上端が台車11の底板部14よりも下方に位置している状態となることにより、左側係合部65が台車11と係合しない状態となる。
図3に示している連結装置13の状態はフック55,56が下端まで下降している下降状態である。フック55,56が当該下降状態となることにより、係合部65,66の上端が外側水平部61b,62bの上端よりも下方に存在し、フック55,56が障害物等と接触しないように外側フレーム61,62によってガードされている状態となる。
【0039】
図3に示すように、第2連結フレーム46における下側板部47の底面47cにおいて、フック昇降装置57の後方には、台車検知装置81が設けられている。台車検知装置81は、台車検知本体部81aと、縦方向(牽引装置10の高さ方向)に沿った台車検知用回動軸81bと、台車検知用回動軸81bの周りを回動可能な台車接触部81cとを備えている。台車検知本体部81aには台車検知センサ82(
図5参照)が収容されている。台車接触部81cの後部は第2連結フレーム46の後端よりも後方に突出しており、台車11と接触可能となっている。台車接触部81cが台車11と接触して台車検知用回動軸81bの周りを回動することにより台車検知センサ82にて台車11を検知可能となる。
【0040】
図3に示すように、流れ止め台車部28は、左右一対の流れ止めフレーム83,84と、車輪固定フレーム85と、左右一対の流れ止め側車輪86,87とを備えている。流れ止めフレーム83,84及び車輪固定フレーム85は金属製である。
【0041】
図2に示すように、左流れ止めフレーム83は、左外側水平部61bにおいて左側係合部65よりも後方側に固定されて後方に向かって延在しているとともに、右流れ止めフレーム84は、右外側水平部62bにおいて右側係合部66よりも後方側に固定されて後方に向かって延在している。流れ止めフレーム83,84の後部の上には矩形板状の車輪固定フレーム85が固定されている。そして、
図3に示すように、車輪固定フレーム85の底面に流れ止め側車輪86,87が固定されている。流れ止め側車輪86,87は、向きが前後方向に設定されており向き変更不能に固定された固定車輪である。これにより、流れ止め側車輪86,87が向き変更自在な車輪である構成と比較して、牽引装置10を直線的に前進走行又は後進走行させることが容易化されている。
【0042】
既に説明したとおり、第1連結フレーム42の幅方向(左右方向)の中央と、回動軸29と、第2連結フレーム46の幅方向の中央とが一直線上に並んでいる状態となることにより連結装置13の直線状態となる。以下、本明細書において、牽引車12の幅方向(左右方向)の中央と、回動軸29と、第2連結フレーム46の幅方向の中央とが一直線上に並んでいる状態を「牽引装置10の直線状態」(
図6(b)参照)という。連結装置13が牽引車12に固定されている状態においては、連結装置13が直線状態となることにより牽引装置10が直線状態となる。
【0043】
図2に示すように、回動軸29の後方(台車11側)には、連結装置13の直線状態を維持可能とする直線ロック装置88が設けられている。直線ロック装置88は、下側板部47の上側平面47aから上方に延びる中空円筒状のシリンダ部88aと、シリンダ部88aの内部に配置されており縦方向に延在している可動棒88b(
図3参照)と、固定用本体部88cとを備えている。直線ロック装置88の後方には、下側板部47の上側平面47aから上方に起立させて柱状の第1支持部材91が設けられており、固定用本体部88cの上部は第1支持部材91に固定されている。固定用本体部88cはシリンダ部88aの上方に設けられており、固定用本体部88cには可動棒88bをシリンダ部88aの内部で上下動させるための固定用駆動部89(
図5参照)が収容されている。
【0044】
図4(b)に示すように、第2連結フレーム46の下側板部47において、シリンダ部88a(
図3)の下方には、可動棒88bの下部を挿通可能とするロック用第2貫通孔47dが設けられている。ロック用第2貫通孔47dは、下側板部47の幅方向(左右方向)の中央に設けられている。ロック用第2貫通孔47dは、可動棒88bの外周よりも大きく、可動棒88bと同一軸線上に存在している。また、
図4(a)に示すように、第1連結フレーム42の上側板部43における後側板部43cには、ロック用第1貫通孔43gが設けられている。ロック用第1貫通孔43gは、上側板部43の幅方向(左右方向)の中央に設けられている。連結装置13が直線状態となった場合には、ロック用第1貫通孔43g、ロック用第2貫通孔47d及び可動棒88bが同一軸線上に存在している状態となる。
【0045】
可動棒88bは、固定用駆動部89が非駆動状態から駆動状態に切り換えられることにより下方に移動するとともに、固定用駆動部89が駆動状態から非駆動状態に切り換えられることにより付勢手段(図示略)の復元力により上方に移動する。固定用駆動部89が非駆動状態である場合には、可動棒88bの下端がロック用第2貫通孔47d内に入り込んでいる状態、すなわち可動棒88bの下端が下側板部47の上側平面47a(
図2)と底面47c(
図3)との間の高さ位置に存在している状態となっている。連結装置13が直線状態となっている状況において、固定用駆動部89が非駆動状態から駆動状態に切り換えられることにより、可動棒88bがロック用第1貫通孔43g及びロック用第2貫通孔47dに挿通されている状態となり、第2連結フレーム46の回動軸29周りの回動が規制されて、連結装置13の直線状態が維持される直線ロック状態となる。また、直線ロック状態において、固定用駆動部89が駆動状態から非駆動状態に切り換えられることにより、可動棒88bの下端がロック用第1貫通孔43gから抜けてロック用第2貫通孔47d内に入り込んでいる状態となり、当該直線ロック状態が解除される。
【0046】
ロック用第1貫通孔43gは、ロック用第2貫通孔47dよりも一回り大きく形成されている。これにより、固定用駆動部89が駆動状態となり可動棒88bが下方に移動する場合に当該可動棒88bがロック用第2貫通孔47dの縁部に接触してしまう可能性が低減されている。また、直線ロック状態においても牽引装置10の後進方向に対して第2連結フレーム46の若干の左右方向への回動が許容されている。そして、当該第2連結フレーム46の若干の左右方向への回動は、連結装置13に台車11を接続する際に台車11に接触した揺動部26の左右方向への若干の回動を可能とする遊びとなっている。なお、ロック用第1貫通孔43gが可動棒88bの外周よりも大きく、ロック用第2貫通孔47dと同一の大きさとなるように形成されている構成としてもよい。
【0047】
図2に示すように、シリンダ部88aには、板状のセンサ固定部材92が取り付けられており、当該センサ固定部材92の一方側(右側)の板面には直線検知センサ93が固定されている。直線検知センサ93は、下方に向けて光を放出する投光部(図示略)と、当該放出された後に反射して戻る光を受光するための受光部(図示略)とを備えている。
【0048】
図4(a)に示すように、上側板部43の上には、連結装置13の直線状態を検知するために利用される反射板94が設けられている。反射板94はロック用第1貫通孔43gの近傍に配置されている。また、
図4(b)に示すように、下側板部47には直線検知用貫通孔47eが形成されている。直線検知用貫通孔47eは、連結装置13が直線状態となっている状況において、第1連結フレーム42に設けられた反射板94(
図4(a))と上方にて対向している状態となる。当該状況において、直線検知センサ93(
図2)の投光部から出た光は直線検知用貫通孔47eを通過して反射板94に到達する。そして、反射板94にて反射されて光は直線検知用貫通孔47eを通過して直線検知センサ93の受光部に届く。一方、連結装置13が直線状態とはなっていない状況において、直線検知センサ93の投光部から出た光は下側板部47に当たって散乱し、受光部には届かない。これにより、直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態を検知可能となっている。
【0049】
図2に示すように、第2連結フレーム46の後部上方には連結側バンパ装置95が設けられている。連結側バンパ装置95はバンパ本体部96を備えている。バンパ本体部96は、第2連結フレーム46の幅方向(左右方向)に延在している。バンパ本体部96の左側面96a(
図3)は第2連結フレーム46の左端よりも左方に突出しているとともに、バンパ本体部96の右側面96bは第2連結フレーム46の右端よりも右方に突出している。
【0050】
図2において破線で示すように、バンパ本体部96の左部には左連結側接触検知センサ97(
図5参照)が収容されているとともに、バンパ本体部96の右部には右連結側接触検知センサ98(
図5参照)が収容されている。また、左連結側接触検知センサ97には棒状の左側バンパ接触部99が接続されているとともに、右連結側接触検知センサ98には棒状の右側バンパ接触部101が接続されている。バンパ本体部96の左側面96aには左側バンパ接触部99を挿通可能な左側バンパ用貫通孔96c(
図3)が形成されており、左側バンパ接触部99は左側バンパ用貫通孔96cを通ってバンパ本体部96の左側面96aから左方に突出している。また、バンパ本体部96の、右側面96bには右側バンパ接触部101を挿通可能な右側バンパ用貫通孔96dが形成されており、右側バンパ接触部101は右側バンパ用貫通孔96dを通ってバンパ本体部96の右側面96bから右方に突出している。
【0051】
左側バンパ接触部99は、バンパ本体部96の左側面96aから左方に延在している左側直線部99aと、左側直線部99aの左端に連続しており左方に向かって後方に湾曲している左側湾曲部99bとを備えている。また、右側バンパ接触部101は、バンパ本体部96の右側面96bから右方に延在している右側直線部101aと、右側直線部101aの右端に連続しており右方に向かって後方に湾曲している右側湾曲部101bとを備えている。これにより、台車11と接触しない位置にバンパ接触部99,101を存在させることが可能となっている。連結側接触検知センサ97,98は、バンパ接触部99,101の変形を検知することによりバンパ接触部99,101が障害物等に接触したことを検知する。
【0052】
図2に示すように、第1支持部材91の後方(台車11側)には、連結側制御装置110が設けられている。連結側制御装置110はケース体111を備えている。ケース体111の下方には、下側板部47の上側平面47aから上方に起立させて第2支持部材102が設けられている。ケース体111の下部は第2支持部材102の上部に固定されているとともに、ケース体111の上部は第1支持部材91の上部に固定されている。ケース体111の上部から上方に突出させて、無線による通信(具体的には連結側制御装置110と牽引側制御装置30との通信)を可能とする連結側制御アンテナ113が設けられている。ケース体111の内部には連結側制御基板112(
図5参照)が収容されている。
【0053】
上記構成の牽引装置10では、第2連結フレーム46が回動可能に固定されていることにより、台車11を牽引しながら牽引装置10を旋回走行させる場合における操舵性を良好なものとすることができる。また、回動範囲規制突起53,54により第2連結フレーム46の回動可能範囲が規制されていることにより、旋回走行時に台車11が障害物等に接触してしまう可能性が低減されている。
【0054】
前方検知センサ21が設けられていることにより、牽引装置10の前方に存在している障害物等が検知された場合には牽引車12の走行速度を落とすことができる。これにより、牽引車12が障害物等と接触する可能性を低減することができる。また、前側バンパ22が設けられていることにより、牽引車12の前部が障害物等と接触した場合に当該接触を検知することが可能であり、障害物等との接触を契機として牽引車12を異常停止させることが可能となる。
【0055】
図5は、牽引装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【0056】
牽引車12は、牽引車12の制御を司る牽引側制御装置30を具備している。牽引側制御装置30は牽引側制御基板31を備えている。牽引側制御基板31には、牽引側CPU32と、当該牽引側CPU32により実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶した牽引側ROM33と、その牽引側ROM33内に記憶される制御プログラムの実行に際して各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリである牽引側RAM34とが搭載されている。
【0057】
牽引側制御基板31には、入力ポート及び出力ポート(図示略)がそれぞれ設けられている。牽引側制御装置30の入力側には、前方検知センサ21と、前側接触検知センサ24とが接続されている。また、牽引側制御装置30の出力側には、スピーカ19と、後輪駆動部23とが接続されている。牽引側制御装置30及び後輪駆動部23の動作電力は、牽引車12の内部に設けられた牽引側電源部(図示略)から供給される。
【0058】
牽引側制御装置30には連結側制御装置110との間でデータ(各種信号を含む)の送受信を可能とする牽引側通信部(図示略)が設けられているとともに、連結側制御装置110には牽引側制御装置30との間でデータ(各種信号を含む)の送受信を可能とする連結側通信部(図示略)が設けられている。牽引側制御装置30と連結側制御装置110との通信は無線により行われる。牽引側通信部は、牽引車12を管理するための牽引車管理アプリがインストールされているスマートフォン、タブレット端末又はノートパソコンの操作に基づいて無線で牽引側制御装置30に送信されるデータ(後述する搬送先データ及び戻り先データ)を受信可能である。また、連結側通信部は、連結装置13を管理するための連結装置管理アプリがインストールされているスマートフォン、タブレット端末又はノートパソコンの操作に基づいて無線で連結側制御装置110に送信されるデータ(後述する接続指示信号)を受信可能である。なお、牽引側制御装置30と連結側制御装置110との通信が有線により行われる構成としてもよい。
【0059】
連結装置13は、牽引車12及び連結装置13の制御を司る連結側制御装置110を具備している。連結側制御装置110は、連結側制御基板112を備えている。連結側制御基板112には、連結側CPU114と、当該連結側CPU114により実行される各種の制御プログラムや固定値データを記憶した連結側ROM115と、その連結側ROM115内に記憶される制御プログラムの実行に際して各種のデータ等を一時的に記憶するためのメモリである連結側RAM116とが搭載されている。
【0060】
連結側制御基板112には、入力ポート及び出力ポート(図示略)がそれぞれ設けられている。連結側制御装置110の入力側には、台車検知センサ82と、直線検知センサ93と、連結側接触検知センサ97,98とが接続されている。また、連結側制御装置110の出力側には、フック昇降装置57の昇降用駆動部71と、直線ロック装置88の固定用駆動部89とが接続されている。連結側制御装置110の動作電力、フック昇降装置57の動作電力及び直線ロック装置88の動作電力は、連結側制御装置110に内蔵された連結側電源部(図示略)から供給される。
【0061】
次に、牽引側CPU32にて実行される各種処理の説明に先立ち、牽引装置10に台車11を接続するために行われる台車接続用動作について説明する。
【0062】
図6(a)~
図6(c)は台車接続用動作を説明するための説明図である。台車接続用動作は、直線ロックが解除されている状態であるとともに、フック55,56が下端まで下降している下降状態で開始される。作業者は、
図6(a)に示すように、牽引車12の後部が台車11の前部と略正対している状態とした後に、台車接続用動作の開始操作を行う。作業者は、上述した連結装置管理アプリがインストールされているスマートフォン等を操作することにより無線で連結側制御装置110に接続指示信号を送信する。なお、連結側制御装置110に対して有線又は無線で接続指示信号を送信可能なコントローラの操作に基づいて連結側制御装置110に接続指示信号が送信される構成としてもよく、連結装置13又は牽引車12に設けられた操作ボタン又は操作画面を操作することにより連結側制御装置110に対して接続指示信号が入力される構成としてもよい。
【0063】
台車接続用動作の開始操作が行われると、牽引車12を前進走行させるための処理が実行される。既に説明したとおり、第2連結フレーム46に連結側キャスタ52a,52b(
図3参照)が設けられているため、第2連結フレーム46が連結装置13の直線状態よりも右方に回動している状況において牽引車12の前進走行が開始された場合には、当該前進走行において回動軸29が前方に移動することにより第2連結フレーム46が左方に回動して連結装置13の直線状態に近づく。また、図示は省略するが、第2連結フレーム46が連結装置13の直線状態よりも左方に回動している状況において牽引車12の前進走行が開始された場合には、当該前進走行において回動軸29が前方に移動することにより第2連結フレーム46が右方に回動して連結装置13の直線状態に近づく。
【0064】
その後、
図6(b)に示すように、直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知された場合には、直線ロック装置88の固定用駆動部89を駆動状態として連結装置13を直線ロック状態とする処理が実行される。これにより、牽引装置10を台車11に向けて後進走行させている状況において、揺動部26が左右に揺動してしまうことを防止できる。直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知されたことに基づいて直線ロックを行うことにより、直線ロックの動作を行ったにも関わらず連結装置13の直線状態が維持されない状態となってしまうことを防止できる。牽引装置10の後部が台車11の前部と略正対している状態で牽引装置10の前進走行を開始し、牽引装置10を直線状態とすることにより、牽引車12、回動軸29及び台車11が一列に並んでいる状態とすることができる。
【0065】
その後、台車接触部81cが台車11と接触して台車検知センサ82にて台車11が検知されるまで、牽引装置10を台車11に向けて後進走行させるための処理が実行される。牽引装置10を台車11に向けて後進走行させている状況において、台車検知センサ82にて台車11を検知することにより、フック55,56を台車11に係合可能な状態となったことを連結側制御装置110にて把握可能となる。
【0066】
台車検知センサ82にて台車11を検知した後に、フック55,56が上端まで上昇するようにフック昇降装置57における昇降用駆動部71の駆動制御を行うことにより、
図6(c)に示すように、底板部14における左側底板貫通孔14aの前側縁部14dに左側係合部65を係合させることが可能となるとともに、底板部14における右側底板貫通孔14bの前側縁部14eに右側係合部66を係合させることが可能となる。連結装置13の直線ロックが行われてる状態でフック55,56を上昇させる構成であることにより、左右の係合部65,66の一方のみが前側縁部14d,14dに係合している状態、又は左右の係合部65,66の両方が前側縁部14d,14dに正常に係合していない状態が発生してしまうことを防止できる。
【0067】
牽引装置10により台車11が牽引される場合、左側バンパ接触部99の自由端は牽引車12の左端及び台車11の左端よりも左方に突出している状態となるとともに、右側バンパ接触部101の自由端は牽引車12の右端及び台車11の右端よりも右方に突出している状態となる。連結側バンパ装置95が設けられていることにより、牽引装置10を台車11に向けて後進させている状況においてバンパ接触部99,101が障害物等と接触した場合に当該接触を検知可能であり、当該接触の検知を契機として牽引車12を異常停止させることが可能となっている。また、台車11を牽引しながら牽引装置10が旋回走行している状況において牽引車12と台車11との間に障害物等が入り込んでバンパ接触部99,101と接触した場合に当該接触を検知可能であり、当該接触の検知を契機として牽引車12を異常停止させることが可能となっている。
【0068】
次に、牽引側CPU32にて実行される走行制御処理について
図7のフローチャートを参照しながら説明する。走行制御処理は、牽引側制御装置30への動作電力の供給が開始された後に実行される。
【0069】
まず搬送設定処理を実行する(ステップS101)。作業者は、上述した牽引車管理アプリがインストールされているスマートフォン等を操作することにより無線で牽引側制御装置30に搬送先データ及び戻り先データを送信する。搬送設定処理(ステップS101)では、搬送先データ及び戻り先データを受信した場合、当該受信したデータに基づいて、搬送先指定情報及び搬送終了後の戻り先指定情報を牽引側RAM34に設定する処理を実行する。なお、牽引側制御装置30に対して有線又は無線でデータを送信可能なコントローラを作業者が操作することにより牽引側制御装置30に搬送先データ及び戻り先データが送信される構成としてもよく、牽引車12に設けられた操作ボタン又は操作画面を作業者が操作することにより牽引側制御装置30に対して搬送先データ及び戻り先データが入力される構成としてもよい。
【0070】
その後、連結側CPU114から接続開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS102)。接続開始信号は、上述した連結装置管理アプリがインストールされているスマートフォン等の操作(上述した台車接続用動作の開始操作)に基づいて送信される接続指示信号を連結側CPU114が受信した場合に送信される。牽引装置10は台車11の前に作業者によって配置される。作業者は、台車11の前部に対して牽引車12の後部が略正対している状態とした後に台車接続用動作の開始操作を行う。
【0071】
接続開始信号を受信していない場合には(ステップS102:NO)、ステップS102の判定処理を繰り返す。そして、接続開始信号を受信した場合には(ステップS102:YES)、接続動作中処理を実行する(ステップS103)。接続動作中処理では、連結側CPU114と通信を行いながら、台車接続用動作を行うための処理を実行する。なお、接続動作中処理の詳細については後述する。
【0072】
その後、搬送中処理を実行する(ステップS104)。搬送中処理では、搬送設定処理(ステップS101)にて設定された搬送先指定情報に基づいて、台車11を牽引しながら牽引装置10が搬送先に到達するように、牽引車12の走行制御を行うための処理を実行する。搬送中処理は、牽引装置10が搬送先に到着することにより終了する。牽引装置10は、牽引側ROM33に予め設定されているプログラムに従って搬送先まで自動走行する。なお、牽引装置10が床面に設置されたレールに沿って走行する構成としてもよく、工場や倉庫などの施設に設けられた指標を牽引装置10が検知しながら走行する構成としてもよい。
【0073】
搬送中処理(ステップS104)を実行した後は、搬送終了処理を実行する(ステップS105)。搬送終了処理では、連結側CPU114に対してフック下降信号を送信する。連結側CPU114はフック下降信号を受信した場合、フック55,56が下降するようにフック昇降装置57の駆動制御を行う。これにより、搬送先で牽引装置10から台車11を分離させることができる。
【0074】
その後、戻り走行中処理を実行する(ステップS106)。戻り走行中処理では、搬送設定処理(ステップS101)にて設定された戻り先指定情報に基づいて、牽引装置10が戻り先に到達するように、牽引車12の走行制御を行うための処理を実行する。その後、戻り走行終了処理を実行する(ステップS107)。戻り走行終了処理では、搬送先の情報及び戻り先の情報をクリアする処理を実行する。その後、ステップS101の処理に進む。
【0075】
次に、牽引側CPU32にて実行される異常対応処理について
図8のフローチャートを参照しながら説明する。異常対応処理は、上述した走行制御処理(
図7)が実行されている状況において、例えば4ミリ秒の周期で定期的に起動される割込み処理の中で実行される。
【0076】
まず牽引側RAM34に設けられた異常停止フラグ34a(
図5参照)に「1」がセットされているか否かを判定する(ステップS201)。異常停止フラグ34aは、前側接触検知センサ24にて障害物等との接触が検知されたこと、又は連結側CPU114から後述する異常発生信号を受信したことに基づいて牽引装置10が異常停止状態となっていることを牽引側CPU32にて把握可能とするフラグである。異常停止フラグ34aに「1」がセットされている場合には(ステップS201:YES)、異常停止中処理を実行する(ステップS202)。
【0077】
異常停止中処理(ステップS202)では、牽引車12の車体16に設けられた異常解除ボタン(図示略)を操作する異常解除操作が行われたか否かを判定する。そして、異常解除操作が行われた場合には、異常停止状態中にスピーカ19から出力されている異常報知音の出力を停止し、連結側CPU114に異常解除信号を送信する。異常報知音の出力は、後述するステップS208にて異常停止開始処理が実行されることにより開始される。異常解除信号は、異常停止状態が解除されたことを連結側CPU114にて把握可能とする信号である。異常解除信号を送信した後には、異常停止フラグ34aを「0」クリアする。これにより、ステップS201にて肯定判定が行われない状態となり、異常停止状態が解除される。
【0078】
異常停止フラグ34aに「1」がセットされていない場合には(ステップS201:NO)、牽引側RAM34に設けられた前進走行フラグ34b(
図5参照)に「1」がセットされているか否かを判定する(ステップS203)。前進走行フラグ34bは、牽引車12が前進走行中であることを牽引側CPU32にて把握可能とするフラグである。前進走行フラグ34bには牽引車12の前進走行が開始される場合に「1」がセットされる。
【0079】
牽引車12が前進走行中である場合には(ステップS203:YES)、前方検知センサ21にて障害物等を検知中であるか否かを判定し(ステップS204)、障害物等を検知中である場合には(ステップS204:YES)、減速前進走行処理を実行する(ステップS205)。減速前進走行処理では、牽引車12の走行速度が減速走行用の速度(具体的には秒速7.5cm)となるようにするとともに、前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となっていることを報知する警告音がスピーカ19から出力されるようにする。これにより、牽引車12の前方に障害物が存在していること又は牽引車12の前方に作業者が居ることを周囲の作業者に報知することができる。警告音の出力は、前方検知センサ21にて障害物等が検知されていない状態となった場合に終了する。また、減速前進走行処理(ステップS205)では、連結側CPU114に減速走行信号を送信する。減速走行信号は、減速走行中であることを連結側CPU114にて把握可能とする信号である。
【0080】
このように、前進走行中に前方検知センサ21にて障害物等が検知された場合には減速走行が行われるとともに警告音が出力される。これにより、牽引装置10が障害物と接触する前に障害物を取り除く契機、又は牽引装置10の前方に居る作業者が牽引装置10を避ける動作をする契機を与えて、牽引装置10が障害物等と接触してしまう可能性を低減することができる。また、前方検知センサ21にて障害物等が検知された場合に直ちに異常停止する構成と比較して、牽引装置10が異常停止する頻度を低減することができる。
【0081】
異常対応処理(
図8)は、台車接続用動作が行われている状況、牽引装置10が台車11を牽引しながら搬送先まで搬送している状況、及び牽引装置10が戻り先まで走行している状況のいずれにおいても実行される処理であるため、これらのいずれの状況においても牽引装置10の前進走行中に前方検知センサ21にて障害物等が検知されたことに基づいて、減速前進走行への切り換え及び警報音の出力が行われるようにすることができる。
【0082】
ステップS203にて否定判定を行った場合、ステップS204にて否定判定を行った場合、又はステップS205の処理を行った場合には、前側接触検知センサ24にて障害物等との接触が検知されているか否かを判定する(ステップS206)。また、前側接触検知センサ24にて障害物等との接触が検知されていない場合には(ステップS206:NO)、連結側CPU114から異常発生信号を受信したか否かを判定する(ステップS207)。異常発生信号は、連結側接触検知センサ97,98にて障害物等との接触が検知された場合、台車接続用動作において所定の前進基準距離(具体的には50cm)以上前進しても直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知されない場合、又は台車接続用動作において所定の後進基準距離(具体的には100cm)以上後進しても台車検知センサ82にて台車11が検知されない場合に連結側CPU114から送信される。
【0083】
前側接触検知センサ24にて障害物等が検知された場合(ステップS206:YES)、又は異常発生信号を受信した場合には(ステップS207:YES)、異常停止開始処理を実行する(ステップS208)。異常停止開始処理では、牽引車12の走行を停止させるとともに、スピーカ19にて異常停止報知音の出力が開始されるようにする。これにより、牽引装置10が異常停止状態となっていることを作業者に報知することができる。
【0084】
その後、連結側CPU114に異常停止信号を送信する(ステップS209)。異常停止信号は、異常停止状態が開始されることを連結側CPU114にて把握可能とする信号である。その後、牽引側RAM34の異常停止フラグ34aに「1」をセットする(ステップS210)。これにより、ステップS201にて肯定判定が行われて異常停止中処理(ステップS202)が実行される状態となる。
【0085】
異常対応処理(
図8)は、台車接続用動作が行われている状況、牽引装置10が台車11を牽引しながら搬送先まで搬送している状況、及び牽引装置10が戻り先まで走行している状況のいずれにおいても実行される処理であるため、これらのいずれの状況においても前側接触検知センサ24にて障害物等が検知されたこと、又は連結側CPU114から異常発生信号を受信したことに基づいて、牽引装置10の異常停止状態への切り換え及び異常停止報知音の出力が行われるようにすることができる。
【0086】
次に、牽引側CPU32にて実行される接続動作中処理について
図9のフローチャートを参照しながら説明する。既に説明したとおり、接続動作中処理は走行制御処理(
図7)のステップS103にて実行される。
【0087】
まず前進走行開始処理を実行する(ステップS301)。前進走行開始処理では、牽引車12の前進走行を開始させる。その後、牽引側RAM34の前進走行フラグ34bに「1」をセットする(ステップS302)。これにより、前進走行中であることを牽引側CPU32にて把握可能とする。その後、連結側CPU114に接続用前進信号を送信する(ステップS303)。接続用前進信号は、台車接続用動作において牽引車12が前進走行していることを連結側CPU114にて把握可能とする信号である。
【0088】
その後、連結側CPU114から直線ロック開始信号を受信したか否かを判定する(ステップS304)。直線ロック開始信号は、連結側CPU114にて連結装置13の直線ロックを開始するための処理を実行した場合に送信される信号である。直線ロック開始信号を受信していない場合には(ステップS304:NO)、ステップS304の判定処理を繰り返す。そして、直線ロック開始信号を受信した場合には(ステップS304:YES)、前進走行停止処理を実行する(ステップS305)。前進走行停止処理では、牽引車12の前進走行を停止させる。その後、牽引側RAM34の前進走行フラグ34bを「0」クリアする(ステップS306)。
【0089】
その後、連結側CPU114から直線ロック終了信号を受信したか否かを判定する(ステップS307)。直線ロック終了信号は、連結側CPU114に連結装置13の直線ロックを開始する処理が実行された後にロック待機期間(具体的には1秒)が経過した場合に送信される。直線ロック終了信号を受信していない場合には(ステップS307:NO)、ステップS307の判定処理を繰り返す。そして、直線ロック終了信号を受信した場合には(ステップS307:YES)、後進走行開始処理を実行する(ステップS308)。後進走行開始処理では、所定の速度(具体的には秒速15cm)で牽引車12の後進走行を開始させるための処理を実行する。
【0090】
このように、ロック待機期間が経過するまで後進走行を開始しない構成とすることにより、直線ロックの動作が終了し、連結装置13の直線状態が固定された状態で後進走行が開始されるようにすることができる。これにより、直線ロック動作の途中で後進走行が開始されてしまうことを防止できる。
【0091】
その後、連結側CPU114から台車検知信号を受信したか否かを判定する(ステップS309)。台車検知信号は、台車検知センサ82にて台車11が検知された場合に送信される。台車検知信号を受信していない場合には(ステップS309:NO)、ステップS309の判定処理を繰り返す。そして、台車検知信号を受信した場合には(ステップS309:YES)、後進走行停止処理を実行する(ステップS310)。後進走行停止処理では、牽引車12の後進走行を停止させるための処理を実行する。
【0092】
その後、連結側CPU114からフック上昇終了信号を受信したか否かを判定する(ステップS311)。フック上昇終了信号は、連結側CPU114にてフック55,56の上昇動作を開始させるための処理が実行された後に上昇待機期間(具体的には2秒)が終了した場合に送信される。フック上昇終了信号を受信していない場合には(ステップS311:NO)、ステップS311の判定処理を繰り返す。そして、フック上昇終了信号を受信した場合には(ステップS311:YES)、本接続動作中処理を終了する。既に説明したとおり、走行制御処理(
図7)では、接続動作中処理(ステップS103)が終了した後に搬送中処理(ステップS104)が実行される。
【0093】
このように、上昇待機期間が経過するまで搬送中処理(ステップS104)を開始しない構成とすることにより、フック55,56の上昇動作が終了し、台車11の連結装置13への接続が終了した状態で搬送用の走行を開始させることができる。これにより、フック55,56の上昇動作の途中で搬送用の走行が開始されてしまうことを防止できる。
【0094】
次に、連結側CPU114にて実行される連結側処理について
図10のフローチャートを参照しながら説明する。連結側処理は例えば4ミリ秒の周期で定期的に実行される。
【0095】
まず牽引側CPU32から異常停止信号を受信したか否かを判定する(ステップS401)。既に説明したとおり、異常停止信号は、異常停止状態が開始される場合に牽引側CPU32から送信される。異常停止信号を受信した場合には(ステップS401:YES)、連結側RAM116に設けられた異常停止中フラグ116a(
図5参照)に「1」をセットする(ステップS402)。異常停止中フラグ116aは、異常停止状態であることを連結側CPU114にて把握可能とするフラグである。
【0096】
異常停止信号を受信していない場合には(ステップS401:NO)、異常停止中フラグ116aに「1」がセットされているか否かを判定し(ステップS403)、異常停止中フラグ116aに「1」がセットされている場合には(ステップS403:YES)、牽引側CPU32から異常解除信号を受信したか否かを判定する(ステップS404)。既に説明したとおり、異常解除信号は、異常停止状態が終了される場合に牽引側CPU32から送信される。異常解除信号を受信した場合には(ステップS404:YES)、異常停止中フラグ116aを「0」クリアする(ステップS405)。
【0097】
異常停止中フラグ116aに「1」がセットされていない場合には(ステップS403:NO)、連結側接触検知センサ97,98にて障害物等との接触が検知されているか否かを判定し(ステップS406)、連結側接触検知センサ97,98にて障害物等との接触が検知された場合には(ステップS406:YES)、異常発生処理を実行する(ステップS407)。異常発生処理では、牽引側CPU32に異常発生信号を送信する。これにより、牽引装置10が異常停止状態となるようにすることができる。また、異常発生処理(ステップS407)では、固定用駆動部89を非駆動状態に切り換える処理を行う。これにより、可動棒88bの上方への移動が開始される。可動棒88bの下端がロック用第1貫通孔43gを抜けてロック用第2貫通孔47d内に存在している状態となることにより、連結装置13の直線ロック状態が解除され、第2連結フレーム46が回動可能な状態となる。
【0098】
台車接続用動作における牽引装置10の後進走行が行われている状況において、連結側接触検知センサ97,98にて障害物等との接触が検知された場合には、異常発生処理が実行されて連結装置13の直線ロック状態が解除される。作業者は直線ロック状態を解除するための操作をすることなく障害物等を取り除き、牽引車12の後部が台車11の前部と略正対している状態となるように牽引装置10の配置を修正した後に、再度台車接続用動作を開始させることができる。
【0099】
連結側接触検知センサ97,98にて障害物等が検知されていない場合には(ステップS406:NO)、作業者が操作するタブレット等の操作端末から接続指示信号を受信したか否かを判定し(ステップS408)、接続指示信号を受信した場合には(ステップS408:YES)、牽引側CPU32に接続開始信号を送信する(ステップS409)。これにより、牽引側CPU32にて接続動作中処理(ステップS103)が実行されるようにすることができる。
【0100】
ステップS408にて否定判定を行った場合には、牽引側CPU32から接続用前進信号を受信したか否かを判定し(ステップS410)、接続用前進信号を受信した場合には(ステップS410:YES)、連結側RAM116に設けられた接続用前進フラグ116b(
図5参照)に「1」をセットするとともに、連結側RAM116に設けられた距離カウンタ116cを「0」クリアする(ステップS411)。接続用前進フラグ116bは、台車接続用動作において牽引装置10の前進走行が行われている状態であることを連結側CPU114にて把握可能とするフラグである。また、距離カウンタ116cは、台車接続用動作における前進距離又は後進距離を連結側CPU114にて把握可能とするカウンタである。ステップS411にて距離カウンタ116cを「0」クリアすることにより台車接続用動作における前進距離の計測を開始可能な状態とすることができる。
【0101】
ステップS410にて否定判定を行った場合には、接続用前進フラグ116bに「1」がセットされているか否かを判定し(ステップS412)、接続用前進フラグ116bに「1」がセットされている場合には(ステップS412:YES)、接続用前進中処理を実行する(ステップS413)。
図11(a)は接続用前進中処理を示すフローチャートである。
【0102】
接続用前進中処理では、直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知されている場合(ステップS501:YES)、直線ロック開始処理を実行する(ステップS502)。直線ロック開始処理では、可動棒88bが下降するように固定用駆動部89の駆動制御を行う。その後、連結側制御基板112に設けられたタイマ回路(図示略)にロック待機時間(具体的には1秒)をセットする(ステップS503)。タイマ回路に設定された数値情報は定期的に更新され、設定されたロック待機期間を経過することによりタイマ回路に「0」がセットされている状態となる。ステップS503にてタイマ回路にロック待機期間をセットすることにより、ロック待機期間の計測が開始される。その後、牽引側CPU32に直線ロック開始信号を送信する(ステップS504)。これにより、牽引側CPU32にて前進走行停止処理(ステップS305)が実行されるようにすることができる。
【0103】
その後、連結側RAM116における接続用前進フラグ116bを「0」クリアするとともに、連結側RAM116に設けられたロック待機フラグ116d(
図5参照)に「1」をセットする(ステップS505)。接続用前進フラグ116bを「0」クリアすることにより前進走行が終了したことを連結側CPU114にて把握可能となる。ロック待機フラグ116dは、ロック待機期間であることを連結側CPU114にて把握可能とするフラグである。
【0104】
ステップS501にて否定判定を行った場合には、前進距離の更新処理を実行する(ステップS506)。前進距離の更新処理では、前進走行中である場合には連結側RAM116における距離カウンタ116cの値に「2」を加算するとともに、減速前進走行中である場合には距離カウンタ116cの値に「1」を加算する。このように、減速前進走行が行われており走行速度が前進走行時の半分となっている場合、距離カウンタ116cに加算される値は前進走行時の半分の値となる。その後、距離カウンタ116cの値に基づいて、前進距離が50cm以上となったか否かを判定する(ステップS507)。ステップS507では、距離カウンタ116cの値が50cmに対応する値以上(具体的には「1667」以上)である場合に肯定判定を行う。
【0105】
前進距離が50cm以上となった場合には(ステップS507:YES)、牽引側CPU32に異常発生信号を送信する(ステップS508)。これにより、牽引側CPU32にて異常停止開始処理(ステップS208)が行われるようにすることができる。その後、接続用前進フラグ116bを「0」クリアする(ステップS509)。
【0106】
このように、台車接続用動作における前進距離が50cm以上となった場合には、牽引装置10を異常停止状態とするための処理が実行される。これにより、作業者が想定していた距離を超えて牽引装置10が前進走行を続けてしまうことを防止できる。前進距離が50cm以上となったことに基づいて異常発生信号を送信する処理(ステップS508)を行う構成であることにより、前進走行中に一時的に減速前進走行に切り換わった場合においても、前進距離が50cm以上となるまで牽引装置10が異常停止状態とならないようにすることができる。なお、台車接続用動作において牽引装置10の前進走行が行われている期間が所定の前進基準期間(例えば4秒)以上となったことに基づいて異常発生信号を送信する処理(ステップS508)を行う構成としてもよい。
【0107】
連結側処理(
図10)の説明に戻り、ステップS412にて否定判定を行った場合には、ロック待機フラグ116dに「1」がセットされているか否かを判定し(ステップS414)、ロック待機フラグ116dに「1」がセットされている場合には(ステップS414:YES)、ロック待機期間が経過したか否かを判定する(ステップS415)。ロック待機期間が経過した場合には(ステップS415:YES)、ロック待機フラグ116d及び距離カウンタ116cを「0」クリアするとともに、連結側RAM116に設けられた接続用後進フラグ116e(
図5参照)に「1」をセットする(ステップS416)。ロック待機フラグ116dを「0」クリアすることによりロック待機期間が終了したことを連結側CPU114にて把握可能となる。また、距離カウンタ116cを「0」クリアすることにより台車接続用動作における後進距離の計測を開始可能とすることができる。接続用後進フラグ116eは、台車接続用動作において牽引装置10の後進走行が行われている状態であることを連結側CPU114にて把握可能とするフラグである。
【0108】
その後、牽引側CPU32に直線ロック終了信号を送信する(ステップS417)。これにより、牽引側CPU32にて後進走行開始処理(ステップS308)が実行されるようにすることができる。このように、ロック待機期間が経過するまで直線ロック終了信号を送信しない構成とすることにより、直線ロックの動作が行われている途中で牽引装置10の後進走行が開始されてしまうことを防止できる。
【0109】
ステップS414にて否定判定を行った場合には、接続用後進フラグ116eに「1」がセットされているか否かを判定し(ステップS418)、接続用後進フラグ116eに「1」がセットされている場合には(ステップS418:YES)、接続用後進中処理を実行する(ステップS419)。
図11(b)は接続用後進中処理を示すフローチャートである。
【0110】
接続用後進中処理では、台車検知センサ82にて台車11が検知されている場合(ステップS601:YES)、牽引側CPU32に台車検知信号を送信する(ステップS602)。これにより、牽引側CPU32にて後進走行停止処理(ステップS310)が実行されるようにすることができる。その後、フック上昇開始処理を実行する(ステップS603)。フック上昇開始処理では、フック55,56を上昇させるための動作が開始されるようにフック昇降装置57の駆動制御を開始する。
【0111】
その後、連結側制御基板112のタイマ回路に上昇待機時間(具体的には2秒)をセットする(ステップS604)。タイマ回路に設定された数値情報は定期的に更新され、設定された上昇待機期間を経過することによりタイマ回路に「0」がセットされている状態となる。ステップS604にてタイマ回路に上昇待機期間をセットすることにより、上昇待機期間の計測が開始される。その後、連結側RAM116における接続用後進フラグ116eを「0」クリアするとともに、連結側RAM116に設けられたフック上昇中フラグ116f(
図5参照)に「1」をセットする(ステップS605)。接続用後進フラグ116eを「0」クリアすることにより台車接続用動作における牽引装置10の後進走行が終了したことを連結側CPU114にて把握可能となる。フック上昇中フラグ116fは、フック55,56を上昇させる動作が行われている状態であることを連結側CPU114にて把握可能とするフラグである。
【0112】
ステップS601にて否定判定を行った場合には、後進距離の更新処理を実行する(ステップS606)。後進距離の更新処理では、距離カウンタ116cの値を「2」加算する。その後、距離カウンタ116cの値に基づいて、後進距離が100cm以上となったか否かを判定する(ステップS607)。ステップS607では、距離カウンタ116cの値が100cmに対応する値以上(具体的には「3334」以上)である場合に肯定判定を行う。
【0113】
後進距離が100cm以上となった場合には(ステップS607:YES)、既に説明した連結側処理(
図10)のステップS407と同様に、異常発生処理を実行する(ステップS608)。異常発生処理では、牽引側CPU32に異常発生信号を送信する。これにより、牽引装置10が異常停止状態となるようにすることができる。また、異常発生処理(ステップS608)では、固定用駆動部89を非駆動状態に切り換える処理を行う。これにより、可動棒88bの上方への移動が開始される。可動棒88bの下端がロック用第1貫通孔43gを抜けてロック用第2貫通孔47d内に存在している状態となることにより、連結装置13の直線ロック状態が解除され、第2連結フレーム46が回動可能な状態となる。作業者は直線ロック状態を解除するための操作をすることなく、牽引車12の後部が台車11の前部と略正対している状態となるように牽引装置10の配置を修正した後に、再度台車接続用動作を開始させることができる。ステップS608にて異常発生処理を実行した後は接続用後進フラグ116eを「0」クリアする(ステップS609)。
【0114】
このように、台車接続用動作における後進距離が100cm以上となった場合には、牽引装置10を異常停止状態とするための処理が実行される。これにより、作業者が想定していた距離を超えて牽引装置10が後進走行を続けてしまうことを防止できる。また、所定の後進基準距離として、所定の前進基準距離(50cm)よりも長い距離(100cm)が設定されている。これにより、台車接続用動作において、前進距離に基づいて異常停止が発生しない態様で牽引装置10の前進走行が終了した場合に、当該台車接続用動作が開始された地点から少なくともこれらの基準距離の差分の距離(具体的には所定の後進基準距離から所定の前進基準距離を引いた50cm)までは、後進距離に基づいて異常停止が発生しない態様で牽引装置10を後進走行させることが可能となっている。
【0115】
連結側処理(
図10)の説明に戻り、接続用後進フラグ116eに「1」がセットされていない場合には(ステップS418:NO)、フック上昇中フラグ116fに「1」がセットされているか否かを判定する(ステップS420)。そして、フック上昇中フラグ116fに「1」がセットされている場合には(ステップS420:YES)、上昇待機期間が経過したか否かを判定する(ステップS421)。
【0116】
上昇待機期間が経過した場合には(ステップS421:YES)、フック上昇中フラグ116fを「0」クリアし(ステップS422)、直線ロック解除処理を実行する(ステップS423)。直線ロック解除処理では、可動棒88bが上昇するように直線ロック装置88の駆動制御を行う。これにより、連結装置13の直線ロック状態が解除され、第2連結フレーム46が回動可能な状態となる。その後、牽引側CPU32にフック上昇終了信号を送信する(ステップS424)。これにより、牽引側CPU32にて搬送中処理(ステップS104)が実行されるようにすることができる。
【0117】
このように、上昇待機期間が経過するまでフック上昇終了信号を送信しない構成とすることにより、フック55,56を上昇させる動作が行われている途中で搬送用の走行が開始されてしまうことを防止できる。フック55,56を上昇させる動作が行われて牽引装置10と台車11とが接続された場合には、第2連結フレーム46が回動可能な状態となる。これにより、搬送用の走行時における牽引装置10の操舵性を良好なものとすることができる。
【0118】
直線検知センサ93にて牽引装置10の直線状態が検知されたことに基づいて直線ロックの動作が行われる場合にはロック待機期間が設定される構成において、上昇待機期間が経過したことに基づいて直線ロック状態を解除する動作が行われる場合には待機期間は設定されない。これにより、台車11が牽引装置10に接続されてから牽引装置10が搬送先に向けて走行を開始するまでの期間の短縮が図られている。
【0119】
フック上昇中フラグ116fに「1」がセットされていない場合には(ステップS420:NO)、搬送終了対応処理を実行して(ステップS425)、本連結側処理を終了する。搬送終了対応処理(ステップS425)では、牽引側CPU32からフック下降信号を受信した場合に、フック55,56が下降するようにフック昇降装置57の駆動制御を行う。これにより、搬送先で牽引装置10から台車11を分離させることができる。
【0120】
次に、台車接続用動作が行われる様子について
図12のタイムチャートを参照しながら説明する。
図12(a)は牽引装置10の前進走行が行われる期間を示し、
図12(b)は直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知される期間を示し、
図12(c)は連結装置13の直線ロックが行われている期間を示し、
図12(d)は牽引装置10の後進走行が行われる期間を示し、
図12(e)は台車検知センサ82にて台車11が検知される期間を示し、
図12(f)はフック55,56を上昇させる動作が行われる期間を示し、
図12(g)は牽引装置10の減速前進走行が行われる期間を示し、
図12(h)は前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となる期間を示す。
【0121】
まず障害物等が検知されることなく台車接続用動作における牽引装置10の前進走行が終了する場合について説明する。
【0122】
t1のタイミングで台車接続用動作の開始操作が行われると、
図12(a)に示すように牽引装置10の前進走行が開始される。その後、t2のタイミングで、
図12(b)に示すように直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知されている状態となると、
図12(a)に示すように牽引装置10の前進走行が終了する。また、当該t2のタイミングで固定用駆動部89が非駆動状態から駆動状態に切り換えられて可動棒88bを下降させる動作が開始される。その後、t3のタイミングで、
図12(c)に示すように直線ロック状態となる。その後、ロック待機期間(1秒)が経過したt4のタイミングで、
図12(d)に示すように牽引装置10の後進走行が開始される。
【0123】
その後、t5のタイミングで、
図12(e)に示すように台車検知センサ82にて台車11が検知されている状態となると、
図12(d)に示すように牽引装置10の後進走行が停止されるとともに、
図12(f)に示すようにフック55,56の上昇動作が開始される。その後、t6のタイミングで、
図12(f)に示すようにフック55,56の上昇動作が終了する。その後、上昇待機期間(2秒)が経過した後のt7のタイミングで、
図12(c)に示すように連結装置13の直線ロック状態が解除されている状態となる。
【0124】
次に、牽引装置10の前進走行中に前方検知センサ21にて障害物等が検知される場合について説明する。
【0125】
t8のタイミングで台車接続用動作の開始操作が行われると、
図12(a)に示すように牽引装置10の前進走行が開始される。その後、t9のタイミングで、
図12(h)に示すように前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となると、
図12(a)及び
図12(g)に示すように牽引装置10の前進走行に代えて減速前進走行が開始される。その後、t10のタイミングで、
図12(h)に示すように前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態が終了すると、
図12(a)及び
図12(g)に示すように牽引装置10の減速前進走行に代えて前進走行が開始される。その後、t11のタイミング~t16のタイミングでは、t2のタイミング~t7のタイミングについて既に説明した動作と同様の動作が行われる。
【0126】
このように、台車接続用動作において、牽引装置10の前進走行中に一時的に前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となった場合には、牽引装置10の前進走行に代えて減速前進走行が行われる。そして、前進距離が50cm以上となる前に連結装置13の直線状態が検知された場合には、異常停止状態となることなく台車接続用動作が継続される。これにより、前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となった場合に異常停止状態となる構成と比較して、牽引装置10の異常停止状態が発生する頻度を低減することができる。
【0127】
次に、牽引装置10の異常停止が行われる様子について
図13のタイムチャートを参照しながら説明する。
図13(a)は牽引装置10が異常停止状態となる期間を示し、
図13(b)は台車接続用動作における牽引装置10の前進距離が50cm以上となるタイミングを示し、
図13(c)は台車接続用動作における牽引装置10の後進距離が100cm以上となるタイミングを示し、
図13(d)は牽引装置10の前進走行が行われる期間を示し、
図13(e)は直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知される期間を示し、
図13(f)は連結装置13の直線ロックが行われている状態となる期間を示し、
図13(g)は牽引装置10の後進走行が行われる期間を示し、
図13(h)は前側接触検知センサ24にて障害物が検知されるタイミングを示し、
図13(i)は連結側接触検知センサ97,98にて障害物等が検知されるタイミングを示し、
図13(j)は牽引装置10の減速前進走行が行われる期間を示す。
【0128】
まず台車接続用動作が行われている状況において、前側接触検知センサ24にて障害物等との接触が検知される場合について説明する。
【0129】
t1のタイミングで、台車接続用動作の開始操作が行われると、
図13(d)に示すように牽引装置10の前進走行が開始される。その後、t2のタイミングで、前方検知センサ21にて障害物等が検知されている状態となると、
図13(d)及び
図13(j)に示すように、牽引装置10の前進走行に代えて減速前進走行が行われている状態となる。その後、t3のタイミングで、
図13(h)に示すように前側接触検知センサ24にて障害物等との接触が検知されると、
図13(j)に示すように牽引装置10の減速前進走行が停止されるとともに、
図13(a)に示すように牽引装置10が異常停止状態となる。このように、牽引装置10が障害物等と接触する前に牽引装置10の走行速度が減速される構成であることにより、牽引装置10が障害物等と接触する場合における衝撃を低減することができる。
【0130】
次に、台車接続用動作における牽引装置10の前進距離が50cm以上となる場合について説明する。
【0131】
t4のタイミングで、台車接続用動作の開始操作が行われると、
図13(d)に示すように牽引装置10の前進走行が開始される。その後、t5のタイミングで、
図13(b)に示すように牽引装置10の前進距離が50cm以上となると、
図13(d)に示すように牽引装置10の前進走行が停止されるとともに、
図13(a)に示すように牽引装置10が異常停止状態となる。これにより、連結装置13が直線状態となることを妨げる要因(例えば、回動範囲規制突起53,54と傾斜突起部44a,44bとの間に小物等が挟まって揺動部26の回動軸29周りの回動が妨げられているという要因)又は直線状態の検知を妨げる要因(例えば断線等)が発生してしまった場合においても、牽引装置10の前進走行が作業者の想定していない長距離に亘って継続されてしまうことを防止できる。
【0132】
このように、牽引装置10の前進走行中に前側接触検知センサ24にて障害物等との接触が検知されたことに基づいて牽引装置10が異常停止状態となる構成において、台車接続用動作における牽引装置10の前進走行距離が50cm以上となった場合には、牽引装置10が障害物等と接触しなくても牽引装置10が異常停止状態となる。これにより、作業者が想定していない状況において牽引装置10が障害物等と接触してしまうことを防止できる。
【0133】
次に、連結側接触検知センサ97,98にて障害物等との接触が検知される場合について説明する。
【0134】
台車接続用動作の開始操作が行われた後、牽引装置10の前進走行が行われている状況において、t6のタイミングで、
図13(e)に示すように直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知されている状態となると、
図13(d)に示すように牽引装置10の前進走行が停止されるとともに、固定用駆動部89が非駆動状態から駆動状態に切り換えられて可動棒88bを下降させる動作が開始される。その後、t7のタイミングで、
図13(f)に示すように直線ロック状態となる。
【0135】
その後、ロック待機期間(1秒)が経過したt8のタイミングで、
図13(g)に示すように牽引装置10の後進走行が開始される。その後、t9のタイミングで、
図13(i)に示すように連結側接触検知センサ97,98にて障害物等との接触が検知されると、
図13(g)に示すように牽引装置10の後進走行が停止される。また、当該t9のタイミングで、
図13(a)に示すように牽引装置10が異常停止状態となる。その後、t10のタイミングで、
図13(f)に示すように連結装置13の直線ロック状態が解除されている状態となる。
【0136】
次に、台車接続用動作における牽引装置10の後進距離が100cm以上となる場合について説明する。
【0137】
台車接続用動作の開始操作が行われた後、牽引装置10の前進走行が行われている状況において、t11のタイミングで、
図13(e)に示すように直線検知センサ93にて連結装置13の直線状態が検知されている状態となると、
図13(d)に示すように牽引装置10の前進走行が停止されるとともに、固定用駆動部89が非駆動状態から駆動状態に切り換えられて可動棒88bを下降させる動作が開始される。その後、t12のタイミングで、
図13(f)に示すように直線ロック状態となる。
【0138】
その後、ロック待機期間(1秒)が経過したt13のタイミングで、
図13(g)に示すように牽引装置10の後進走行が開始される。その後、t14のタイミングで、
図13(c)に示すように牽引装置10の後進走行距離が100cm以上となると、
図13(g)に示すように牽引装置10の後進走行が停止される。また、当該t14のタイミングで、
図13(a)に示すように牽引装置10が異常停止状態となる。これにより、台車接触部81cが台車11と接触することを妨げる要因(例えば、牽引装置10と台車11との間であってバンパ接触部99,101と接触しない位置に、障害物等が存在しており台車接触部81cが台車11と接触できなくなっているという要因)、又は台車検知センサ82における台車11の検知を妨げる要因(例えば断線等)が発生してしまった場合においても、牽引装置10の後進走行が作業者の想定していない長距離に亘って継続されてしまうことを防止できる。その後、t15のタイミングで、
図13(f)に示すように連結装置13の直線ロック状態が解除されている状態となる。
【0139】
このように、牽引装置10の後進走行中に連結側接触検知センサ97,98にて障害物等との接触が検知されたことに基づいて牽引装置10が異常停止状態となる構成において、台車接続用動作における牽引装置10の後進走行距離が100cm以上となった場合には、牽引装置10が障害物等と接触しなくても牽引装置10が異常停止状態となる。これにより、作業者が想定していない状況において牽引装置10が障害物等と接触してしまうことを防止できる。
【0140】
<他の実施形態>
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能である。例えば以下のように変更してもよい。ちなみに、以下の別形態の構成を、上記第1実施形態の構成に対して、個別に適用してもよく、組合せて適用してもよい。
【0141】
(1)上記第1の実施形態では固定用駆動部89の非駆動状態において可動棒88bの下端がロック用第2貫通孔47d内に入り込んでいる状態となる構成としたが、これに限定されることはなく、固定用駆動部89の非駆動状態において可動棒88bの下端が第2連結フレーム46よりも上方に存在し、ロック用第2貫通孔47d内に存在していない状態となる構成としてもよい。本構成においても、固定用駆動部89が駆動状態となり可動棒88bが下方に移動してロック用第1貫通孔43g及びロック用第2貫通孔47dに挿通されている状態となることにより、第2連結フレーム46の回動軸29周りの回動が規制されて、連結装置13の直線状態が維持される直線ロック状態となるようにすることができる。
【0142】
(2)上記第1の実施形態では、牽引装置10が台車11の前に作業者によって配置される構成としたが、これに限定されることはなく、台車11の前部に対して牽引車12の後部が略正対している状態とするための牽引装置10の走行制御が連結側制御装置110及び牽引側制御装置30にて行われる構成としてもよい。具体的には、牽引装置10には、台車11の前部を認識可能な台車認識装置(例えば台車11の前部を撮影可能なカメラ)が設けられている。台車認識装置にて台車11の前部を認識可能な位置に牽引装置10が配置されている状態において台車接続の開始操作が行われた場合、牽引側CPU32は、台車認識装置により認識される台車11の前部の情報が予め設定されている情報と一致している状態となるように牽引車12の走行制御を行う。これにより、台車11の前部に対して牽引車12の後部が略正対している状態であるとともに、台車11と牽引車12との距離が予め設定されている距離となる。その後、上記第1の実施形態と同様に、台車接続用動作が行われるようにするための処理(牽引側CPU32におけるステップS103の処理及び連結側CPU114におけるステップS410~ステップS425の処理)が実行される。これにより、台車接続用動作の開始操作を行う前に牽引車12の後部が台車11の前部と略正対している状態となるように作業者が牽引装置10を台車11の前に配置する作業を省略可能とすることができる。
【0143】
(3)上記第1の実施形態において、牽引側CPU32にて搬送中処理(ステップS104)が行われている状況において台車検知センサ82にて台車11が検知されていない状況となったことに基づいて、牽引装置10を異常停止させるための処理が実行される構成としてもよい。具体的には、牽引側CPU32にて搬送中処理(ステップS104)が行われている状況において、連結側CPU114にて定期的に(例えば4ミリ秒の周期)、台車検知センサ82から受信している検知信号がHIレベル(台車11を検知している状態に対応するレベル)であるか否かを判定する判定処理が行われる。当該判定処理にて否定判定が行われた場合、すなわち台車検知センサ82から受信している検知信号がLOWレベル(台車11を検知していない状態に対応するレベル)となった場合には、連結側処理(
図10)のステップS407及び接続用更新中処理のステップS608と同様に、異常発生処理が実行される。これにより、フック55,56が台車11に係合していない状況となったことを作業者に報知することができるとともに、当該状況となった後も牽引装置10の走行が継続されてしまうことを防止できる。
【0144】
(4)上記第1の実施形態では上昇待機期間が経過したことに基づいて直線ロック状態を解除する動作が行われる場合には待機期間が設定されない構成としたが、これに限定されることはなく、上昇待機期間が経過したことに基づいて連結側制御基板112のタイマ回路にロック解除待機期間(具体的には1秒)が設定される構成としてもよい。連結側CPU114は、ロック解除待機期間が経過した場合に、牽引側CPU32にロック解除終了信号を送信する。牽引側CPU32は、ロック解除終了信号を受信した場合に、接続動作中処理(
図9)を終了して搬送中処理(ステップS104)を開始する。これにより、牽引装置10の搬送先への走行が開始される前に、可動棒88bの下端がロック用第1貫通孔43gから抜けてロック用第2貫通孔47d内に存在している状態となるようにすることができる。よって、可動棒88bが上方に移動する過程で可動棒88bと第2連結フレーム46とが接触してしまう可能性を低減することができる。
【0145】
(5)上記第1の実施形態においては台車接続用動作にて直線検知センサ93にて牽引装置10の直線状態が検知されている状態となったことに基づいて牽引装置10の前進走行を終了させるための処理を実行する構成としたが、これに限定されることはなく、直線検知センサ93を不具備としてもよい。この場合であっても、牽引装置10を台車11に向けて後進走行させる前に牽引装置10を前進走行させることにより牽引装置10を直線状態に近づけることが可能となる。
【0146】
(6)連結側CPU114又は牽引側CPU32が、牽引装置10の外部から信号を受信したことに基づいて、台車接続用動作における牽引装置10の前進走行を終了させるための処理が実行されるとともに固定用駆動部89を駆動状態とするための処理が実行される構成としてもよい。具体的には、搬送システムは牽引装置10を上から撮影するカメラと、当該撮影された画像に基づいて牽引装置10が直線状態となっているか否かを判定する管理コンピュータとを備えている。管理コンピュータは、台車接続用動作における牽引装置10の前進走行が行われている状況において、撮影された画像に基づいて、牽引装置10が直線状態となっていることを特定した場合、連結側CPU114又は牽引側CPU32に直線検知信号を送信する。これにより、牽引装置10には直線検知センサ93が設けられていない構成としながら、牽引装置10が直線状態となった状態で、連結側CPU114又は牽引側CPU32において、当該前進走行を終了させるための処理を実行することが可能となる。なお、牽引装置10が直線状態となったことを確認した作業者がスマートフォン等を操作して当該前進走行を終了させるための信号を送信する構成としてもよい。
【0147】
(7)上記第1の実施形態では、直線ロック装置88を利用して牽引装置10の直線状態を維持する構成としたが、これに限定されることはなく、回動規制装置を利用して第2連結フレーム46の回動軸29周りの回動が所定の規制角度範囲に規制されている状態を維持する構成としてもよい。具体的には、回動規制装置は、左右一対の規制用可動棒と、当該規制用可動棒を上下動させるための規制用駆動部とを備えている。第2連結フレーム46の下側板部47には、当該規制用可動棒を挿通可能とする左右一対の規制用貫通孔が形成されている。規制用貫通孔は、回動範囲規制突起53,54よりも第2連結フレーム46の幅方向の中央側に設けられている。規制用駆動部が非駆動状態である場合、規制用可動棒の下端は規制用貫通孔内に存在しており、下側板部47の下方には突出していない。規制用駆動部が駆動状態となることにより規制用可動棒が規制用貫通孔に挿通されて下側板部47よりも下方に突出している回動規制実行状態となる。回動規制実行状態において、左側規制用可動棒の下部は、回動軸29を中心として、連結装置13の直線状態からの第2連結フレーム46の左方への回動量が左側の所定規制角度(例えば5度)に達した場合に左側傾斜突起部44aと接触する。これにより、第2連結フレーム46はそれ以上左方に回動できない状態となる。また、回動規制実行状態において、右側規制用可動棒の下部は、回動軸29を中心として、連結装置13の直線状態からの第2連結フレーム46の右方への回動量が右側の所定規制角度(例えば5度)に達した場合に右側傾斜突起部44bと接触する。これにより、第2連結フレーム46はそれ以上右方に回動できない状態となる。このように、回動規制装置を利用することにより、第2連結フレーム46の回動軸29周りの回動が所定の規制角度範囲に規制されている状態で牽引装置10を台車11に向けて後進走行させることができる。これにより、牽引装置10に台車11を連結させ易い態様で牽引装置10を台車11に近づけることが可能となる。
【0148】
(8)上記(7)の構成において、直線検知センサ93に代えて、第2連結フレーム46の回動軸29周りの回動量が所定の規制角度範囲内である状態であることを検知する検知センサが連結装置13に設けられている構成としてもよい。連結側CPU114は、台車接続用動作における牽引装置10の前進走行が行われている状況において、当該検知センサにて第2連結フレーム46の回動軸29周りの回動量が所定の規制角度範囲内である状態であることが検知されている状態となったことに基づいて当該牽引装置10の前進走行を終了させるための処理を実行する。これにより、第2連結フレーム46の回動軸29周りの回動量が所定の規制角度範囲内である状態となったことが検知された後に、回動規制実行状態とするための処理が実行されるようにすることができる。
【0149】
(9)上記第1の実施形態では台車接続用動作において直線ロック装置88を利用して牽引装置10の直線状態を固定する構成としたが、これに限定されることはなく、直線ロック装置88を不具備であり、台車接続用動作における牽引装置10の前進走行が行われている状況において直線検知センサ93にて牽引装置10の直線状態が検知されている状態となったことに基づいて、牽引装置10の前進走行が終了されるとともに牽引装置10の後進走行が開始される構成としてもよい。
【0150】
(10)上記第1の実施形態では第1連結フレーム42及び回動軸29が連結装置13に設けられている構成としたが、これに限定されることはなく、第1連結フレーム42が牽引車12に設けられている構成としてもよく、第1連結フレーム42及び回動軸29の双方が牽引車12に設けられている構成としてもよい。本構成においても、連結装置13の第2連結フレーム46が回動軸29の周りを回動可能となるようにすることができる。また、連結装置13に設けられている直線ロック装置88を利用して、牽引装置10の直線状態を維持することができる。
【0151】
(11)上記第1の実施形態ではフック55,56を上昇させることにより台車11を牽引装置10に接続する構成としたが、これに限定されることはなく、連結装置13の後側に幅方向の軸回りを回動可能に設けられたフックを下から上に向けて回動させることにより台車11を牽引装置10に接続する構成としてもよく、連結装置13の後側に幅方向の軸回りを回動可能に設けられたフックを上から下に向けて回動させることにより台車11を牽引装置10に接続する構成としてもよい。これらの構成においても、牽引装置10の直線状態を維持しながら牽引装置10を台車11に向けて後進走行させることによりフックが台車11に正常に係合していない状態が発生してしまうことを防止できる。
【0152】
(12)上記第1の実施形態では連結装置13における第2連結フレーム46の後側に接触式の連結側バンパ装置95が設けられている構成としたが、これに代えて又は加えて、連結装置13の後方に設定されている検知範囲内(具体的には半径1m以内)に存在する障害物等を検知する非接触式の後方検知センサが設けられている構成としてもよい。牽引装置10の後進走行が行われている状況において、後方検知センサにて障害物等が検知されたことに基づいて、当該後進走行の走行速度を減少させる処理又は当該後進走行を停止させる処理が実行される構成とすることにより、牽引装置10が後方に存在している障害物等と接触してしまう可能性を低減することができる。
【0153】
(13)台車接続用動作における牽引装置10の前進距離を把握可能とする測距センサが設けられている構成としてもよい。連結側CPU114は、連結装置13の後部に設けられた測距センサにより台車11までの距離を把握可能である。牽引装置10の前進距離は、牽引装置10の前進走行の開始時に取得した台車11までの距離の情報と、前進走行中に取得する台車11までの距離の情報とに基づいて把握される。これにより、測距センサを利用して測定された距離の情報に基づいて、台車接続用動作における牽引装置10の前進距離が所定の前進基準距離以上となったか否かを連結側CPU114にて把握可能とすることができる。そして、前進距離が所定の前進基準距離以上となったことに基づいて牽引装置10を異常停止させることが可能となる。
【0154】
(14)上記第1の実施形態では台車接続用動作における牽引装置10の後進距離が所定の後進基準距離(100cm)以上となったことに基づいて牽引装置10を異常停止状態とする構成としたが、これに限定されることはなく、台車接続用動作において、牽引装置10の後進走行時間が所定の後進基準期間(例えば8秒間)以上となったことに基づいて牽引装置10を異常停止状態とするための処理が実行される構成としてもよい。また、牽引装置10が走行する床面に白線等の後進終了基準線が設けられており、台車接続用動作において台車11が検知されることなく当該後進終了基準線まで牽引装置10が後進走行したことに基づいて牽引装置10を異常停止状態とするための処理が実行される構成としてもよい。これにより、台車接続用動作において牽引装置10が後進終了基準線よりも後方に移動してしまうことを防止できる。
【0155】
(15)上記第1の実施形態では牽引装置10の台車接続用動作において前進距離が所定の前進基準距離(50cm)以上となったことに基づいて牽引装置10を異常停止状態とするための処理が実行される構成としたが、これに限定されることはなく、物品が搭載される荷台を備えた搬送装置が搬送先を検知して停止するまで前進走行する構成において当該搬送先が検知されることなく搬送装置の前進距離が特定の前進基準距離(例えば50m)以上となったことに基づいて搬送装置を異常停止状態とするための処理が実行される構成としてもよい。具体的には、搬送装置に搬送先の位置情報が設定された後に、搬送装置の前進走行が開始される。搬送装置の走行路の床面には搬送装置の現在地を認識可能とする現在地認識情報が複数設定されている。搬送装置は、設定されている搬送先の位置情報と、床面から読み取る現在地認識情報とを照会し、これらの位置情報が一致したことに基づいて搬送用の前進走行を終了する。搬送装置の前進走行が開始された後に、搬送先として設定された位置情報と床面から読み取る現在地認識情報とが一致することなく搬送装置の前進距離が特定の前進基準距離(50m)以上となった場合には、搬送先に到着していなくても、搬送装置を異常停止状態とするための処理が実行される。これにより、搬送装置が作業者の予定している距離を超えて前進走行してしまうことを防止できる。
【0156】
(16)上記(15)の構成において、搬送装置が搬送先まで前進走行する構成に代えて又は加えて、搬送装置が戻り先まで後進走行する構成としてもよい。具体的には、戻り先の情報が設定されて搬送装置の後進走行が開始された後に、戻り先として設定された位置情報と床面から読み取る現在地認識情報とが一致することなく搬送装置の後進距離が特定の後進基準距離(例えば50m)以上となった場合には、搬送装置が戻り先に到着していなくても、搬送装置を異常停止状態とするための処理が実行される。これにより、搬送装置が作業者の予定している距離を超えて後進走行してしまうことを防止できる。
【0157】
<上記実施形態から抽出される発明群について>
以下、上述した実施形態から抽出される発明群の特徴について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0158】
<特徴A群>
特徴A1.搬送対象(台車11)を所定の搬送場所に搬送するための搬送システムに利用される搬送システムの制御装置(牽引側制御装置30、連結側制御装置110)において、
前記搬送システムは、
駆動手段(後輪駆動部23)を有し、当該駆動手段の駆動力によって前記搬送対象を前記所定の搬送場所に搬送する搬送装置(牽引車12)と、
前記搬送装置に前記搬送対象を連結するための連結手段(連結装置13)と、
を備え、
前記連結手段は、前記搬送装置の進行方向の変更に際して前記搬送対象の追従を可能とするように縦方向の回動軸(回動軸29)を中心として回動可能に設けられた回動部(揺動部26)を備え、
前記制御装置は、
前記搬送装置に前記連結手段が連結された状態において前記連結手段に前記搬送対象を連結させる場合に、前記搬送装置を前記搬送対象に向けた方向とは逆方向に移動させるようにするための準備用制御(台車接続用動作における牽引装置10の前進走行を行わせるための制御)を実行する準備用制御手段(牽引側CPU32におけるステップS102~ステップS103の処理を実行する機能、ステップS301~ステップS303の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS408~ステップS413の処理を実行する機能)と、
前記準備用制御が実行されることにより前記搬送装置が前記搬送対象に向けた方向とは逆方向に移動している状況において所定終了契機(直線検知センサ93における牽引装置10の直線状態の検知)が発生したことに基づいて、当該逆方向の移動を終了させるための終了用制御(牽引装置10の前進走行を終了させるための制御)を実行する終了用制御手段(牽引側CPU32におけるステップS304~ステップS306の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS501~ステップS505の処理を実行する機能)と、
前記終了用制御が実行された後に、前記連結手段に前記搬送対象を連結させるために前記搬送装置を前記搬送対象に向けた方向に移動させるようにするための連結用制御(台車接続用動作における牽引装置10の後進走行を行わせるための制御)を実行する連結用制御手段(牽引側CPU32におけるステップS307~ステップS308の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS418~ステップS419の処理を実行する機能)と、
を備えていることを特徴とする搬送システムの制御装置。
【0159】
特徴A1によれば、連結手段が回動軸を中心として回動可能に設けられた回動部を備えている構成であることにより、搬送対象が連結されている状態における搬送装置の操舵性の向上が図られている。また、搬送装置に追従するように回動部を回動させることができる。当該構成において、連結用制御に先立って準備用制御を行うことにより、搬送装置、回動軸及び回動部が一直線上に並んでいる状態又は当該状態に近い状態となるようにすることができる。そして、準備用制御及び終了用制御を実行した後に、連結用制御を行うことにより、搬送装置、回動軸及び回動部が一直線上に並んでいる状態又は当該状態に近い状態から搬送装置の搬送対象に向かう方向への移動が開始されるようにすることができる。これにより、搬送装置に搬送対象を連結し易い態様で搬送装置を搬送対象に接近させることが可能となる。
【0160】
特徴A2.前記搬送システムは、前記回動部の回動位置が所定位置(牽引装置10が直線状態となる位置)となったことを検知する所定検知手段(直線検知センサ93)を備え、
前記所定終了契機は、前記回動部の回動位置が前記所定位置となったことが前記所定検知手段により検知された場合に発生することを特徴とする特徴A1に記載の搬送システムの制御装置。
【0161】
特徴A2によれば、準備用制御が実行されることにより搬送装置が搬送対象に向けた方向とは逆方向に移動している状況において、実際に回動部の回動位置が所定位置となったことが所定検知手段により検知されたことに基づいて、終了用制御が行われて連結用制御が開始されるようにすることができる。これにより、回動部の回動位置が所定位置となっていない状態で連結用制御が開始されてしまうことを防止できる。
【0162】
特徴A3.前記搬送システムは、前記回動部の回動位置が前記所定位置である状況において当該回動部の回動を規制する規制手段(直線ロック装置88)を備え、
前記制御装置は、前記回動部の回動位置が前記所定位置となったことが前記所定検知手段により検知された場合に前記規制手段により前記回動部の回動が規制されるようにするための規制用制御(固定用駆動部89を駆動状態に切り換える制御)を実行する規制制御手段(連結側CPU114におけるステップS501~ステップS505の処理を実行する機能)を備えていることを特徴とする特徴A2に記載の搬送システムの制御装置。
【0163】
特徴A3によれば、回動部の回動位置が所定位置となっている状態で規制用制御を行うことにより、当該状態からの回動部の回動を規制しながら連結用制御を行うことが可能となる。これにより、搬送装置に搬送対象を連結し易い態様で搬送装置を搬送対象に接近させることができる。
【0164】
特徴A4.前記所定位置は、前記搬送装置、前記連結手段及び前記搬送対象が一列に並ぶ前記回動部の回動位置(牽引装置10が直線状態となる回動位置)であることを特徴とする特徴A2又はA3に記載の搬送システムの制御装置。
【0165】
特徴A4によれば、搬送装置、連結手段及び搬送対象が一列に並ぶ状態となったことが検知された後に連結用制御が開始されるようにすることができる。これにより、搬送装置に搬送対象を連結し易い態様で搬送装置を搬送対象に接近させることが可能となる。
【0166】
特に、上記特徴A3に記載された構成を備えた場合、搬送装置、連結手段及び搬送対象が一列に並ぶ状態で規制用制御を行うことにより、当該状態からの回動部の回動を規制しながら連結用制御を行うことが可能となる。
【0167】
特徴A5.前記制御装置は、前記準備用制御が実行されることにより前記搬送装置が前記搬送対象に向けた方向とは逆方向に移動している状況において特定終了契機(前進距離が所定の前進基準距離である50cm以上となること)が発生したことに基づいて、前記所定終了契機が発生していなくても当該逆方向の移動を終了させるための特定終了用制御(前進距離が所定の前進基準距離以上となったことに基づいて牽引装置10を異常停止させる制御)を実行する手段(牽引側CPU32におけるステップS207~ステップS210の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS506~ステップS509の処理を実行する機能)を備えていることを特徴とする特徴A1に記載の搬送システムの制御装置。
【0168】
特徴A5によれば、特徴A1の構成を備え、所定終了契機が発生したことに基づいて終了用制御が実行される構成において、所定終了契機が発生していなくても特定終了契機が発生した場合には特定終了用制御が実行されて、搬送装置の搬送対象に向けた方向とは逆方向への移動が終了されるようにすることができる。これにより、所定終了契機が発生していない場合においても、特定終了契機が発生する状況となった後にまで当該逆方向への移動が継続されてしまうことを防止できる。よって、作業者の想定しない状況で搬送装置が障害物等と接触してしまうことを防止できる。
【0169】
特徴A6.前記特定終了契機は、前記準備用制御が実行されることにより前記搬送装置が前記搬送対象に向けた方向とは逆方向に移動している状況において、当該搬送装置の移動量が所定移動量(所定の前進基準距離である50cm)となった場合又は前記準備用制御が実行されることにより前記搬送装置が前記搬送対象に向けた方向とは逆方向に移動している期間が所定期間(所定の前進基準期間である4秒)となった場合に発生することを特徴とする特徴A5に記載の搬送システムの制御装置。
【0170】
特徴A6によれば、準備用制御が実行されることにより搬送装置が搬送対象に向けた方向とは逆方向に移動している状況における搬送装置の移動量が所定移動量となった後にまで当該逆方向への移動が継続されてしまうこと、又は準備用制御が実行されることにより搬送装置が当該逆方向に移動している期間が所定期間となった後にまで当該逆方向への移動が継続されてしまうことを防止できる。これにより、所定終了契機が発生していない場合においても、準備用制御によって搬送装置が所定移動量又は所定期間を超えて移動してしまうことを防止できる。よって、作業者が想定していない状況において搬送装置が障害物等と接触してしまうことを防止できる。
【0171】
特徴A7.前記搬送システムは、前記連結用制御が実行されることにより前記搬送装置が前記搬送対象に向けた方向に移動することで前記連結手段に前記搬送対象を連結させることが可能な状態となったことを検知する連結可能検知手段(台車検知センサ82)を備え、
前記制御装置は、前記連結用制御が実行されることにより前記搬送装置が前記搬送対象に向けた方向に移動している状況において前記連結手段に前記搬送対象を連結させることが可能な状態となったことが前記連結可能検知手段により検知されたことに基づいて、前記搬送装置の前記搬送対象に向けた方向への移動を終了させるための連結用移動終了制御(台車接続用動作における牽引装置10の後進走行を終了させる制御)を実行する連結用移動終了制御手段(牽引側CPU32におけるステップS309~ステップS310の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS601~ステップS605の処理を実行する機能)を備えていることを特徴とする特徴A1に記載の搬送システムの制御装置。
【0172】
特徴A7によれば、連結用制御が実行されることにより搬送装置が搬送対象に向けた方向に移動している状況において、実際に連結手段に搬送対象を連結させることが可能な状態となったことが連結可能検知手段により検知されたことに基づいて、連結用移動終了制御が実行されるようにすることができる。これにより、連結手段に搬送対象を連結させることが可能な状態となっていない状態で連結用移動終了制御が実行されてしまうことを防止できる。
【0173】
特徴A8.前記連結用移動終了制御が実行されることにより前記搬送装置の前記搬送対象に向けた方向への移動が終了された場合、前記連結手段に前記搬送対象が連結されるようにするための制御(昇降用駆動部71を第1駆動状態としてフック55,56を上昇させるための制御)を実行する手段(連結側CPU114におけるステップS601~ステップS605の処理を実行する機能)を備えていることを特徴とする特徴A7に記載の搬送システムの制御装置。
【0174】
特徴A8によれば、特徴A7の構成を備え、連結手段に搬送対象を連結させることが可能な状態となったことが連結可能検知手段により検知されたことに基づいて連結用移動終了制御が実行される構成であるため、実際に連結手段に搬送対象を連結させることが可能な状態となったことが検知され、当該検知に基づいて連結用移動終了制御が実行された後に連結手段に搬送対象が連結されるようにするための制御が実行されるようにすることができる。これにより、連結手段に搬送対象が連結されるようにするための制御が実行されたにも関わらず連結手段に搬送対象が正常に連結されていない状態が生じてしまう可能性を低減することができる。
【0175】
特徴A9.前記制御装置は、前記連結用制御が実行されることにより前記搬送装置が前記搬送対象に向けた方向に移動している状況において移動終了契機(台車接続用動作における牽引装置10の後進距離が所定の後進基準距離以上となること)が発生したことに基づいて、前記連結手段に前記搬送対象を連結させることが可能な状態となったことが前記連結可能検知手段により検知されていなくても前記搬送装置の前記搬送対象に向けた方向への移動を終了させるための制御(牽引装置10を異常停止させるための制御)を実行する手段(牽引側CPU32におけるステップS207~ステップS210の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS606~ステップS609の処理を実行する機能)を備えている特徴A7又はA8に記載の搬送システムの制御装置。
【0176】
特徴A9によれば、特徴A7の構成を備え、連結用制御が実行されることにより搬送装置が搬送対象に向けた方向に移動している状況において連結手段に搬送対象を連結させることが可能な状態となったことが連結可能検知手段により検知されたことに基づいて連結用移動終了制御を実行する構成において、連結手段に搬送対象を連結させることが可能な状態となったことが連結可能検知手段により検知されていなくても、移動終了契機が発生した場合には搬送装置の搬送対象に向けた方向への移動を終了させるための制御が実行されて当該搬送装置の移動が終了されるようにすることができる。これにより、連結手段に搬送対象を連結させることが可能な状態となること、又は当該状態となったことの検知を妨げる要因が発生してしまった場合においても、移動終了契機が発生する状況となった後にまで搬送装置の移動が継続されてしまうことを防止できる。よって、作業者の想定しない状況で搬送装置が障害物等と接触してしまうことを防止できる。
【0177】
特徴A10.特徴A1記載の前記連結手段及び前記制御装置を備えていることを特徴とする搬送システム。
【0178】
特徴A10によれば、特徴A1において既に説明した効果を有する搬送システムを提供することが可能となる。
【0179】
上記特徴A群に係る発明によれば、以下の課題を解決することが可能である。
【0180】
工場及び倉庫等において、材料、部品及び完成品等の物品を搬送先に搬送するために搬送システムが利用されている。搬送システムには、駆動輪を有する搬送装置及び当該搬送装置の制御を行う制御装置が含まれている。搬送装置として、物品が搭載される荷台などを備えており単独で物品を搬送する搬送装置、物品を搭載した台車などの搬送対象を押しながら搬送先まで搬送する搬送装置、及び物品を搭載した台車などの搬送対象を搬送先まで牽引しながら搬送する搬送装置などが利用されている。
【0181】
搬送対象を搬送先まで搬送する搬送装置として、搬送対象を搬送装置に連結するための連結装置を備えているものが知られている。このような搬送装置では、搬送対象が連結されている状態で進路を変更する際の操舵性が問題となる。これに対して、搬送装置の操舵性を良好なものとするために、縦方向の連結軸の周りを回動可能な回動部を有する連結装置が知られている。
【0182】
しかしながら、回動部を有する連結装置を使用する場合、搬送装置を搬送対象に接近させても回動部の回動位置によっては搬送装置に搬送対象を連結できない場合が生じてしまうという問題があった。このように、搬送装置を搬送対象に接近させて搬送装置に搬送対象を連結させるための制御を実行する搬送システムの制御装置及び搬送システムには依然として改良の余地がある。
【0183】
<特徴B群>
特徴B1.搬送対象(台車11)を所定の搬送場所に搬送するための搬送装置を有する搬送システムに利用される搬送システムの制御装置(牽引側制御装置30、連結側制御装置110)において、
前記搬送装置を移動させて所定状態(直線検知センサ93にて牽引装置10の直線状態が検知されている状態、台車検知センサ82にて台車11が検知されている状態)となるようにするための所定制御(台車接続用動作における牽引装置10の前進走行が行われるようにする制御、台車接続用動作における牽引装置10の後進走行が行われるようにする制御)を実行する所定制御手段(牽引側CPU32におけるステップS102~ステップS103の処理を実行する機能、ステップS301~ステップS303及びステップS307~ステップS308の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS408~ステップS413及びステップS418~ステップS419の処理を実行する機能)と、
前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している状況において、当該搬送装置の移動量が所定移動量(所定の前進基準距離、所定の後進基準距離)となったことに基づいて又は前記所定制御が実行されることにより前記搬送装置が移動している期間が所定期間(所定の前進基準期間、所定の後進基準期間)となったことに基づいて、前記所定状態となっていなくても前記搬送装置の移動を終了させるための特定終了制御(牽引装置10を異常停止させるための制御)を実行する特定終了制御手段(牽引側CPU32におけるステップS207~ステップS210の処理を実行する機能、連結側CPU114におけるステップS506~ステップS509の処理を実行する機能、ステップS606~ステップS609の処理を実行する機能)と、
を備えていることを特徴とする搬送システムの制御装置。
【0184】
特徴B1によれば、所定制御を実行して搬送装置を移動させることにより所定状態とすることができる。当該所定制御が実行されることにより搬送装置が移動している状況において当該搬送装置の移動量が所定移動量となった場合又は当該所定制御が実行されることにより搬送装置が移動している期間が所定期間となった場合には、所定状態となっていなくても特定終了制御を実行することにより、所定状態となるまで所定移動量又は所定期間を超えて当該搬送装置の移動が行われてしまうことを防止できる。これにより、所定状態となることを妨げる要因が発生してしまった場合においても、作業者の想定していない状況で搬送装置が障害物等と接触してしまう可能性を低減することができる。
【0185】
上記特徴B群に係る発明によれば、以下の課題を解決することが可能である。
【0186】
工場及び倉庫等において、材料、部品及び完成品等の物品を搬送先に搬送するために搬送システムが利用されている。搬送システムには、駆動輪を有する搬送装置及び当該搬送装置の制御を行う制御装置が含まれている。搬送装置として、物品が搭載される荷台などを備えており単独で物品を搬送する搬送装置、物品を搭載した台車などの搬送対象を押しながら搬送先まで搬送する搬送装置、及び物品を搭載した台車などの搬送対象を搬送先まで牽引しながら搬送する搬送装置などが利用されている。
【0187】
上記のような搬送システムでは、搬送装置が搬送先に到達している状態や所定の検知対象物が検知されている状態などの所定の状態となるように、直進走行などの所定の走行態様で搬送装置の自動走行が行われるようにするための制御が行われる。このような搬送装置の制御では、当該所定の状態となることを妨げる要因が発生してしまった場合に、管理者の想定範囲を超えて搬送装置の走行が継続されることにより搬送装置が障害物等と接触してしまうといった問題があった。これに対して、搬送装置が障害物等と接触したことを検知して搬送装置の走行を停止させる制御を行う搬送システムが知られている。
【0188】
しかしながら、上記のような制御が行われる搬送システムでは、管理者が想定していない状況で搬送装置が障害物等と接触することで搬送装置や接触した障害物等が破損してしまうおそれがある。また、搬送装置の周囲に存在する障害物等を非接触で検知して接触する前に搬送装置を停止させる制御を行う搬送システムも考えられるが、搬送装置の周囲に存在する全ての障害物等を検知しようとすると、搬送装置の製造コストの増大といった問題が生じてしまう。このように、所定の状態となるように搬送装置の自動走行を安全に行わせるための制御を実行する搬送システムの制御装置及び搬送システムには依然として改良の余地がある。
【符号の説明】
【0189】
10…牽引装置、11…台車、12…牽引車、13…連結装置、23…後輪駆動部、26…揺動部、29…回動軸、30…牽引側制御装置、32…牽引側CPU、71…昇降用駆動部、82…台車検知センサ、88…直線ロック装置、89…固定用駆動部、93…直線検知センサ、110…連結側制御装置、114…連結側CPU。