(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098962
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】敏感肌改善用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20240717BHJP
A61K 8/33 20060101ALI20240717BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240717BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/33
A61K8/64
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218107
(22)【出願日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】10-2023-0004062
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユミ・シム
(72)【発明者】
【氏名】サンキュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジンヨン・イ
(72)【発明者】
【氏名】オスン・クォン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC02
4C083EE11
4C083EE12
4C083EE13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用化粧料組成物及び医薬部外品組成物を提供する。
【解決手段】クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8とを有効成分として含む、化粧料組成物及び医薬部外品組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン(curcumin)と、タウリン(taurine)及び/又はアセチルヘキサペプチド-8(acetyl hexapeptide-8)とを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用化粧料組成物。
【請求項2】
前記化粧料組成物は、βディフェンシン2(β-defensin 2)合成を促進するものである、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記化粧料組成物は、前記クルクミンと、タウリン又はアセチルヘキサペプチド-8とを1:1000~100:1の重量比で含むものである、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記化粧料組成物は、組成物の総重量に対して、前記クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8を0.00001~10重量%含むものである、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
クルクミン(curcumin)と、タウリン(taurine)及び/又はアセチルヘキサペプチド-8(acetyl hexapeptide-8)とを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用医薬部外品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8とを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用化粧料組成物及び医薬部外品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナ以降、自らの肌が敏感であると感じる消費者が増加しており、低刺激製品に対する需要が高まっている。しかし、敏感肌についての理解もなく、従来の保湿、落ち着き効能しか持たない単なる敏感肌用製品が発売されており、従来の製品との違いがない状況である。よって、敏感肌についての正確な理解に基づいて、敏感性を減少させる成分を見出す必要がある。
【0003】
敏感肌は、ヒリヒリした痛み、ほてり、ピリピリした刺激を普通肌に比べて敏感に感じるという特徴がある。このような刺激を感じさせる原因としては、化学物質、精神的ストレス、ホルモン、温度差、風など、様々な種類が挙げられる。皮膚にはこのような刺激要因に対応するシステムが備えられており、最初に対応するシステムの1つとして、皮膚表面の防御タンパク質であるディフェンシンが挙げられ、このタンパク質はストレス要因により減少する。
【0004】
現代人は、外部刺激要因にも継続して曝露されるが、精神的なストレス状況にも継続して曝露される。また、精神的なストレスによりコルチゾール分泌が増加すると、皮膚表面の防御タンパク質であるディフェンシンが減少するという研究結果がある。ディフェンシンは、細菌やウイルス侵入に対応する防御ペプチドであるが、このような防御の役割だけでなく、皮膚再生にも関与し、損傷したバリアの回復にも関与する。
【0005】
ディフェンシンには様々な種類があり、α、βに大別される。皮膚においては、βディフェンシン1~3が最もよく知られている。各ペプチドは少しずつ異なる役割を果たすが、ディフェンシン1及び3は、皮膚バリアの間隙を密着させるタンパク質合成を助ける役割を果たす。ディフェンシン2は、危険を感知する信号として作用し、いくつかの他の細胞を集め、細胞の移動と増殖に関与し、創傷部位の再生が早く行われるように助け、損傷したバリア回復を助ける。これらのうちヒトβディフェンシン2(human β-defensin 2, hBD-2)は、微生物や炎症反応により上皮細胞で生成される抗菌ペプチドであり、細胞媒介性免疫反応を増強し、表皮細胞と線維芽細胞における増殖及び分化過程に影響を及ぼし、創傷治癒を促進する機能も有する(非特許文献1)。
【0006】
こうした背景の下、本発明においては、ストレスホルモンであるコルチゾールにより減少するβディフェンシン2を増加させる効能物質を評価により見出し、それらの物質のうち、クルクミンとタウリン、クルクミンとアセチルヘキサペプチド-8(AHP-8)の組み合わせがシナジー効果を有することが確認された。このように、前述したように組み合わせた物質が敏感肌予防又は改善、肌の落ち着き及びバリア改善用化粧料として利用可能であることが確認された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】パク・ヨンド, 2007.12., HaCaT 角質形成細胞におけるTNF-αによるHuman β-defensin-2発現増加
【非特許文献2】Herman, A. & Herman, A. P., 2019, Antimicrobial peptides activity in the skin, Ski. Res. Technol. 25, 111-117
【非特許文献3】Hai Le Thanh Nguyen, 2020, Role of Antimicrobial peptides in skin barrier repair in individuals with atopic dermatitis, Int. J. Mol. Sci. 21(20), 7607
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8とを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用化粧料組成物及び医薬部外品組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8とを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用化粧料組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8とを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用医薬部外品組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8との組み合わせにおける、βディフェンシン2合成促進のシナジー効果が確認されたので、前記組み合わせ物質を敏感肌予防又は改善、肌の落ち着き及び皮膚バリア強化効果に優れた化粧料組成物、医薬部外品組成物として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】細胞におけるクルクミン、タウリン、アセチルヘキサペプチド-8の単独処理によるβディフェンシン2合成促進効果を示す図である。ここで、コルチゾール処理群の値を100として換算した値を示す。
【
図2】細胞におけるクルクミン及びタウリンの混合処理によるβディフェンシン2合成促進効果を示す図である。ここで、コルチゾール処理群の値を100として換算した値を示す。
【
図3】細胞におけるクルクミン及びアセチルヘキサペプチド-8の混合処理によるβディフェンシン2合成促進効果を示す図である。ここで、コルチゾール処理群の値を100として換算した値を示す。
【
図4】細胞におけるクルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8の混合処理によるβディフェンシン2合成促進効果を示す図である。ここで、コルチゾール処理群の値を100として換算した値を示す。
【
図5】ヒト皮膚における対照群と、クルクミン、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8混合処理群のβディフェンシン2合成量を比較観察した結果を示す図である。
【
図6】ヒト皮膚における対照群と、クルクミン及びタウリン混合処理群のバリア損傷後の紅斑指数を比較観察した結果を示す図である。
【
図7】ヒト皮膚における対照群と、クルクミン及びアセチルヘキサペプチド-8混合処理群のバリア損傷後の紅斑指数を比較観察した結果を示す図である。
【
図8】ヒト皮膚における対照群と、クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8混合処理群のバリア損傷後の紅斑指数を比較観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本発明で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0014】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本発明に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物は本発明に含まれることが意図されている。
【0015】
本発明の一態様は、クルクミン(curcumin)と、タウリン(taurine)及びアセチルヘキサペプチド-8(acetyl hexapeptide-8)の少なくとも1つとを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用化粧料組成物を提供する。
【0016】
具体的には、本発明における前記化粧料組成物は、クルクミン及びタウリンを有効成分として含むものであってもよく、クルクミン及びアセチルヘキサペプチドを有効成分として含むものであってもよく、クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチドを有効成分として含むものであってもよい。
【0017】
本発明における「クルクミン(curcumin)」とは、インド産ウコンに主に含まれるポリフェノールの一種を意味し、その化学式はC21H20O6である。クルクミンは、抗腫瘍、抗酸化、抗アミロイド及び抗炎症作用を有することが知られているが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明における「タウリン(taurine)」とは、2-アミノエタンスルホン酸(2-aminoethanesulfonic acid)構造を有する有機物であって、主にヒトをはじめとする哺乳動物の細胞や組織に存在する硫黄を含有するアミンを意味するが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明における「アセチルヘキサペプチド-8(acetyl hexapeptide-8)」とは、筋肉を麻痺させる毒素の一種であるボツリヌストキシン(botulinum toxin)の基質であるSNAP-25の断片ペプチドを意味する。これは、SNAP-25タンパク質と競合的に作用し、アセチルコリン(acetylcholine)の分泌を調節することが知られているが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明における「敏感肌」とは、外部の刺激やアレルギー性物質などの環境変化に対して、普通肌に比べて敏感に反応し、刺激反応や皮膚炎が頻繁に発生する肌を意味する。敏感肌の原因は非常に多様かつ複合的であり、遺伝的要因により先天的に鋭敏な肌であるか、有害物質や、ストレス、気候、季節変化、作業環境などの外部的要因により発生し、敏感肌を誘発する主な原因としては、神経学的過剰反応、免疫反応の増加、皮膚バリアの損傷などが挙げられ、皮膚バリアの損傷によるケースが多く観察されるが、これらに限定されるものではない。また、紅斑、皮膚乾燥、ヒリヒリした痛み、かゆみ、ほてり、炎症などの症状を伴うが、これらに限定されるものではない。
【0021】
敏感肌の代表的な例としてアトピー肌が挙げられ、アトピー肌は、普通肌に比べてディフェンシンが減少していることが研究的に明らかになっている。前記ディフェンシンは、外部の有害物質を除去する抗菌効能を有し、皮膚バリア損傷の再生にも関与することが知られているが、特に角質形成細胞においてタイトジャンクション(tight junction)を構成するクローディン(claudin)、オクルディン(occludin)などのタンパク質の合成を促進し、皮膚バリアの恒常性を維持する役割を果たすことが知られている(非特許文献2,3)。
【0022】
本発明における「敏感肌予防」とは、前記組成物の投与により、敏感肌の発生や、敏感肌の発生による紅斑、皮膚乾燥、ヒリヒリした痛み、かゆみ、ほてり、炎症などの症状を遅延させるあらゆる行為を意味する。前記敏感肌予防は、βディフェンシン2の合成が促進されて皮膚バリアが強化されることにより行われてもよい。
【0023】
本発明における「敏感肌改善」とは、敏感肌の発生や、敏感肌の発生による紅斑、皮膚乾燥、ヒリヒリした痛み、かゆみ、ほてり、炎症などの症状の程度を減少させるか、損傷した皮膚を回復させるあらゆる行為を意味する。前記敏感肌改善は、βディフェンシン2の合成が促進されて皮膚バリアが強化されることや、肌が落ち着くことにより行われてもよい。
【0024】
本発明における「肌の落ち着き」とは、紅斑や、刺激を受けた肌の部位などが緩和されて落ち着くことを意味し、肌刺激の緩和が含まれる概念である。例えば、肌の水分損失の減少及び/又は赤みの減少が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0025】
本発明における「皮膚バリア」とは、肌の水分を維持し、外部刺激から保護する役割を果たす、肌の最も外側の角質層を意味する。本発明における「皮膚バリア強化」には、皮膚バリアが強化される作用や、損傷したバリアが回復又は再生される作用のあらゆる作用が含まれ、これは皮膚バリアにおいて機能するディフェンシン2合成促進により行われるが、これらに限定されるものではない。また、皮膚バリア強化により表皮角質層から外部への水分流出を防止し、外部からの物質の出入りを統制するなど、外部との遮断層の役割を果たすが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明における「化粧料組成物」は基本的に皮膚に塗布されるものであるので、当該技術分野の化粧料組成物を参照すれば、通常製造されるいかなる剤形にも製造することができる。例えば、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、パック、乳液、メイクアップベース、ファンデーション、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、ジェル、ローション、パウダー、界面活性剤含有クレンジング、パッチ及びスプレーからなる群から選択される剤形に製造することができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記化粧料組成物は、βディフェンシン2(β-defensin 2)合成を促進するものであってもよい。本発明における「ディフェンシン(defensin)」とは、病原体に感染した際に宿主細胞の防御機序により分泌され、システインをはじめとするアミノ酸から構成されるペプチドを意味する。ディフェンシンは、防御の役割だけでなく、皮膚再生にも関与し、損傷したバリアの回復にも関与することが知られているが、これらに限定されるものではない。ディフェンシンは、脊椎動物、無脊椎動物、植物、真菌類(fungi)において広範囲に見出され、様々な種類があり、αディフェンシン、βディフェンシンに大別されるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、βディフェンシン2(human β-defensin 2, hBD-2)とは、微生物や炎症反応により上皮細胞で生成される抗菌ペプチドを意味し、主に細胞媒介性免疫反応を増強し、表皮細胞と線維芽細胞における増殖及び分化過程に影響を及ぼし、創傷治癒を促進することが知られているが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明における前記化粧料組成物は、具体的には、前記クルクミンと、タウリン又はアセチルヘキサペプチド-8とを1:1000~100:1の重量比、好ましくは1:100~10:1の重量比で含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、前記化粧料組成物は、具体的には、前記クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8を1~1000:1~1000:1~1000の重量比、好ましくは1~500:1~500:1~500の重量比、より好ましくは1~100:1~100:1~100の重量比で含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
さらに、前記化粧料組成物の総重量に対して、前記クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8は、それぞれ0.00001~10重量%含まれ、好ましくは0.001~10重量%含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記化粧料組成物は、本発明のクルクミン、タウリン、アセチルヘキサペプチド-8以外に、化粧料組成物に通常用いられる抗酸化剤、安定化剤、可溶化剤、ビタミン、顔料、香料などの通常の補助剤及び担体をさらに含んでもよい。例えば、前記化粧料組成物は、グリセリン、ブチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、酢酸トコフェロール、クエン酸、パンテノール、スクアラン、クエン酸ナトリウム、アラントインなどの補助成分をさらに含んでもよい。
【0032】
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、パック、経皮パッチ、経皮ゲル、パウダー、軟膏、ペースト、ジェル、サスペンション、エマルジョン、スプレー、美容液又はカプセルに剤形化されるものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の化粧料組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容される担体を1種以上さらに含んでもよく、通常の成分として、例えば油分、水、界面活性剤、保湿剤、アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適宜配合してもよいが、これらに限定されるものではない。本発明の化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容される担体は、剤形によって様々である。
【0034】
本発明の剤形が軟膏、ペースト、クリーム又はジェルの場合は、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛又はそれらの混合物が用いられてもよい。
【0035】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーの場合は、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミドパウダー又はそれらの混合物が用いられてもよく、特にスプレーの場合は、さらにハイドロクロロフルオロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルなどの推進剤が含まれてもよい。
【0036】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液の場合は、担体成分として、溶媒、可溶化剤又は乳濁化剤が用いられ、例えば水、エタノール、イソプロパノール、炭酸ジエチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイルが用いられてもよく、特に綿実油、ピーナッツオイル、トウモロコシ胚種油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、グリセリン脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが用いられてもよい。
【0037】
本発明の剤形が懸濁液の場合は、担体成分として、水、エタノール、プロピレングリコールなどの液状の希釈剤や、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁剤や、微結晶性セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、アガー、トラガカントなどが用いられてもよい。
【0038】
一方、本発明の剤形がカプセルの場合は、アルギン酸塩(alginate)カプセル、アガー(agar)カプセル、ゼラチン(gelatin)カプセル、ワックス(wax)カプセル又は二重カプセルの形態に剤形化されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の他の態様は、クルクミンと、タウリン(taurine)及びアセチルヘキサペプチド-8(acetyl hexapeptide-8)の少なくとも1つとを有効成分として含む、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用医薬部外品組成物を提供する。
【0040】
具体的には、本発明における前記医薬部外品組成物は、クルクミン及びタウリンを有効成分として含むものであってもよく、クルクミン及びアセチルヘキサペプチドを有効成分として含むものであってもよく、クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチドを有効成分として含むものであってもよい。
【0041】
本発明における「医薬部外品」とは、ヒトや動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置又は予防する目的で用いられる物品のうち医薬品より作用が軽微な物品を意味する。例えば、薬事法によれば、医薬部外品は、医薬品の用途に用いられる物品を除くものであり、ヒト/動物の疾病治療や予防に用いられる製品、人体に対する作用が軽微であるか、又は直接作用しない製品などが挙げられる。本発明における前記医薬部外品組成物は、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用途を有するものであってもよい。
【0042】
前記「医薬部外品組成物」は、上記成分以外に、必要に応じて薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤をさらに含んでもよい。前記薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤は、本発明の効果を損なわない限り限定されるものではなく、例えば充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが挙げられる。具体的には、前記医薬部外品には、皮膚外用剤及び個人衛生用品が含まれる。より具体的には、手指消毒剤、シャワーフォーム、うがい薬、ウェットティッシュ、洗剤、石鹸、ハンドウォッシュ又は軟膏剤であるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明による前記組成物を医薬部外品添加物として用いる場合は、前記組成物をそのまま添加してもよく、他の医薬部外品又は医薬部外品成分と共に用いてもよく、通常の方法で適宜用いられる。有効成分の混合量は、使用目的に応じて適宜決定される。
【0044】
本発明のさらに他の態様は、クルクミン(curcumin)と、タウリン(taurine)及び/又はアセチルヘキサペプチド-8(acetyl hexapeptide-8)とを有効成分として含む、化粧料組成物の敏感肌予防もしくは改善用途、肌の落ち着き用途又は皮膚バリア強化用途を提供する。
【0045】
本発明のさらに他の態様は、クルクミン(curcumin)と、タウリン(taurine)及び/又はアセチルヘキサペプチド-8(acetyl hexapeptide-8)とを有効成分として含む、医薬部外品組成物の敏感肌予防もしくは改善用途、肌の落ち着き用途又は皮膚バリア強化用途を提供する。
【0046】
本発明のさらに他の態様は、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8とを含む組成物における、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用化粧料を製造する用途を提供する。
【0047】
本発明のさらに他の態様は、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8とを含む組成物における、敏感肌予防もしくは改善、肌の落ち着き又は皮膚バリア強化用医薬部外品を製造する用途を提供する。
【実施例0048】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
細胞培養及びサンプル処理方法
まず、10% fetal bovine serum(FBS; Gibco, USA)、1% Antibiotic Antimycotic(Gibco, USA)を混合したDulbecco’s Modified Eagle’s Media(DMEM; Gibco, USA)を用いて、皮膚細胞のうち最も外側で影響を受けるヒト表皮細胞であるHaCaTを24 well plateにおいて37℃、5%CO2の条件で培養した。
【0050】
細胞が80%以上になったら、βディフェンシン2(human β-defensin 2)合成を減少させるために、ストレスホルモンであるコルチゾール(hydrocortisone)(sigma Aldrich, USA)5mMで処理し、24時間培養した。ここで、皮膚細胞においてコルチゾールによりβディフェンシン2が大幅に減少することが確認された。
【0051】
24時間後に、実験濃度のクルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8で処理し、その後24時間培養した。ここで、クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8のそれぞれで単独処理し、また、クルクミンの濃度を0.1ppm、1ppmに固定し、次いで各濃度のタウリン及びアセチルヘキサペプチド-8を組み合わせて処理し、24時間培養した。
【0052】
[実施例2]
定量化方法
各サンプル処理24時間後に、βディフェンシン2(human β-defensin 2, hBD-2)タンパク質合成量を定量するために、ELISAを行った。ELISAにはHUMAN BETA DEFENSIN 2 ELISA kit(ALPHA DIAGNOSTIC, USA)を用いた。細胞培養液を用いて、キットの取扱説明書に従って行った。最終タンパク質量は、400nmにおける吸光度を測定して計算した。
【0053】
無処理群のβディフェンシン2の量を100%として換算し、サンプル処理後のβディフェンシン2の量を定量した。ここで、コルチゾールにより減少した値より数値が高ければ、サンプルによりβディフェンシン2の合成が増加したものと解釈した。
【0054】
また、コルチゾールにより減少したβディフェンシン2を増加させる各効能物質のシナジー効果については、コルビー式により予測し、予測した値より実際の測定値の方が高ければ、シナジー効果があるものと判断した。
【0055】
[実施例3]
クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8のβディフェンシン2合成促進効果の確認(In vitro実験)
実施例3-1.クルクミン、タウリン又はアセチルヘキサペプチド-8の単独処理の結果
各サンプルのシナジー効果を確認するために、まずクルクミン0.1ppm~1ppm、タウリン0.01ppm~10ppm、アセチルヘキサペプチド-8(AHP-8)0.01ppm~10ppmで単独処理し、効能を確認した。
【0056】
【0057】
その結果、表1及び
図1に示すように、クルクミン、タウリンにおいては1ppmで促進効能が確認され、アセチルヘキサペプチドにおいては0.1ppmと5ppmで促進効能が確認された。
【0058】
実施例3-2.クルクミン及びタウリンの混合処理の結果
クルクミンの濃度を0.1ppm及び1ppmに固定し、それぞれにタウリンを0.1ppm~10ppmで混合して処理した際のβディフェンシン2合成促進効能を確認した。ここで、実施例2-1で単独評価した結果値を用いてコルビー式により促進効果を予測した。予測値の計算に用いたコルビー式は次の通りである。
【0059】
【0060】
【0061】
その結果、表2及び
図2に示すように、測定された実際の効能はコルビー式による予測値より全て高いことが確認された。よって、クルクミンとタウリンの組み合わせで処理するとβディフェンシン2増加にシナジー効果があることが分かった。
【0062】
実施例3-3.クルクミン及びアセチルヘキサペプチド-8の混合処理の結果
クルクミンの濃度を0.1ppm及び1ppmに固定し、それぞれにアセチルヘキサペプチド-8(AHP-8)を0.1ppm~10ppmで混合して処理した際のβディフェンシン2合成促進効能を確認した。ここで、実施例2-1で単独評価した結果値を用いてコルビー式により促進効果を予測した。予測値の計算に用いたコルビー式は次の通りである。
【0063】
【0064】
【0065】
その結果、表3及び
図3に示すように、測定された実際の効能はコルビー式による予測値より全て高いことが確認された。よって、クルクミンとアセチルヘキサペプチド-8を併用するとβディフェンシン2増加にシナジー効果があることが分かった。
【0066】
実施例3-4.クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8の3種混合処理の結果
クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8(AHP-8)の3種類を混合して処理した際のβディフェンシン2合成促進効能を確認した。ここで、実施例2-1で単独評価した結果値を用いてコルビー式により促進効果を予測した。予測値の計算に用いたコルビー式は次の通りである。
【0067】
【0068】
【0069】
その結果、表4及び
図4に示すように、測定された実際の促進効能の値はコルビー式による予測値より高いことが確認され、クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8の組み合わせがβディフェンシン2増加にシナジー効果があることが分かった。
【0070】
[実施例4]
クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8のβディフェンシン2合成促進効果及び紅斑減少効果の確認(In vivo実験)
実施例4-1.In vivo実験方法
人体試験により、実際の皮膚においてもβディフェンシン2が増加するか否かを確認した。まず、10人の被験者において前腕部に評価部位を定め、その後1%SLSを用いてバリアに損傷を与えた。クルクミンとタウリンを1:100で混合した剤形を4週間塗布し、パッチを用いて損傷部位の角質を採取した。クルクミンとアセチルヘキサペプチド-8においては、1:10で混合した剤形を同様に塗布し、パッチを用いて損傷部位の角質を採取した。
【0071】
採取した角質からタンパク質を分離し、その後in vitro方法と同様にディフェンシン2を対象にELISAを行い、剤形塗布の有無によるβディフェンシン2生成の差を比較した。
【0072】
また、試験部位の紅斑をmexameter(Mexameter(登録商標) MX 18 (Courage Khazaka, Germany))により測定した。
【0073】
【0074】
実験の結果、表5及び
図5に示すように、対照群に比べて、各組み合わせで混合した製品を用いた部位においてβディフェンシン2の量がさらに増加することが観察された。よって、In vitroにおいて得られた、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8との各組み合わせのβディフェンシン2合成促進効果は、人体試験においても同様に得られることが確認された。
【0075】
また、
図6~
図8のグラフは、順にクルクミン及びタウリンを混合した製品、クルクミン及びアセチルヘキサペプチド-8を混合した製品、クルクミン、タウリン及びアセチルヘキサペプチド-8を混合した製品の使用後に同一部位における紅斑を測定した結果を示すものであり、3種類の組み合わせの全てにおいて、対照群に比べて製品を塗布した部位に現れる紅斑が少ないことが確認された。
【0076】
よって、クルクミンと、タウリン及び/又はアセチルヘキサペプチド-8との組み合わせの製品は、βディフェンシン2の合成を促進し、バリア損傷の改善を助け、特に紅斑の改善に卓越した効能を示すことが分かった。
【0077】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。