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特開2024-98963ヒト患者のトラクトグラムのセグメント化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098963
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ヒト患者のトラクトグラムのセグメント化
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240717BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240717BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 382
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023219156
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】23305037.6
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500102435
【氏名又は名称】ダッソー システムズ
【氏名又は名称原語表記】DASSAULT SYSTEMES
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルイス モロー
【テーマコード(参考)】
4C096
5L096
【Fターム(参考)】
4C096AA17
4C096AC01
4C096AD14
4C096DC19
5L096AA09
5L096BA06
5L096CA11
5L096DA01
5L096EA43
5L096FA52
5L096FA60
5L096FA66
5L096GA51
5L096MA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒト患者のトラクトグラムを1つまたは複数の白質の流線束にセグメント化するためのコンピュータ実装方法を提供する。
【解決手段】方法は、ヒト患者のトラクトグラムを取得することを含み、トラクトグラムはトラクトグラム流線を含み、白質アトラスはそれぞれのアトラス流線を含む1つまたは複数の束を含む。方法はまた、アトラスの少なくとも1つの束およびそのそれぞれのアトラス流線について、束にそれぞれのトラクトグラム流線を帰属させることを含み、それぞれのトラクトグラム流線は、少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第1のセットの各々を含み、各第1のセットは、束のアトラス流線のそれぞれのセットに対応し、それぞれのトラクトグラム流線は、トラクトグラム流線の1つまたは複数の第2のセット各々をさらに含み、各第2のセットは、束のアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト患者トラクトグラムを1つまたは複数の白質の流線束にセグメント化するためのコンピュータ実装方法であって、
・ ヒト患者のトラクトグラムを取得するステップ(S10)であって、前記トラクトグラムは、トラクトグラム流線を含み、白質アトラスは、各々がそれぞれのアトラス流線を含む1つまたは複数の束を含む、ステップと、
・ 前記アトラスの少なくとも1つの束およびそのそれぞれのアトラス流線について、前記少なくとも1つの束にそれぞれのトラクトグラム流線を帰属させるステップ(S20)とを含み、前記それぞれのトラクトグラム流線は、少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第1のセット各々を含み、各第1のセットは、前記少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットに対応し、前記それぞれのトラクトグラム流線は、少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第2のセット各々をさらに含み、各第2のセットは、前記少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する、方法。
【請求項2】
前記帰属させるステップ(S20)は、
・ 所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して、複数のトラクトグラム流線クラスタを取得するステップと、
・ 前記所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して、複数のアトラス流線クラスタを取得するステップと、
・ 前記複数のトラクトグラム流線クラスタから1つまたは複数の第1のセットを選択するステップであって、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが前記複数のアトラス流線クラスタとの近接基準を満たすときに、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが第1のセットとして選択される、ステップと、
・ 前記複数のトラクトグラム流線クラスタから前記1つまたは複数の第2のセットを選択するステップであって、前記それぞれのトラクトグラム流線クラスタが前記アトラス流線クラスタのそれぞれの複数の断面部分を有する前記近接基準を満たすときに、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが第2のセットとして選択される、ステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
・ 前記1つまたは複数の第1のセットを選択するステップは、
o 所定の重心計算アルゴリズムを使用して、それぞれの流線クラスタごとにトラクトグラム重心を計算するステップと、
o 前記所定の重心計算アルゴリズムを使用して、それぞれのアトラス流線クラスタごとに第1のアトラス重心を計算するステップと、
o そのトラクトグラム重心と各第1のアトラス重心との間の所定の距離の値が所定の閾値を超えない各トラクトグラム流線クラスタを識別するステップと
を含み、
・ 前記1つまたは複数の第2のセットを選択するステップは、各残りのトラクトグラム流線クラスタについて、
o 前記アトラス流線クラスタの前記それぞれの複数の断面部分のそれぞれの断面部分について複数の第2のアトラス重心をそれぞれ決定するステップと、
o そのトラクトグラム重心と各第2のアトラス重心との間の前記所定の距離の前記値が所定の閾値を超えない各トラクトグラム流線クラスタを識別するステップと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の第2のアトラス重心を決定するステップは、
・ 前記トラクトグラム重心の長さの前記値を決定するステップと、
・ 前記トラクトグラム重心よりも高い前記長さの値を有する各第1のアトラス重心について、前記トラクトグラム重心と同じ長さの値を有する前記第1のアトラス重心の1つまたは複数の断面部分を抽出するステップと
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアトラス重心の前記1つまたは複数の断面部分を抽出するステップは、所定のオフセットを使用して前記第1のアトラス重心を反復的に切断するステップを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記所定のクラスタリングアルゴリズムは、それぞれの複数の流線について、
・ 初期流線を初期流線クラスタに割り当てるステップ(Q10)と、
・ 前記それぞれの複数の流線の後続の流線を反復的にアクセスするステップ(Q20)と、
・ それぞれの後続の流線について、および所定の距離に関して(Q30)、
o 前記後続の流線と各既存の流線クラスタの重心との間のそれぞれの距離値を計算するステップ(Q310)と、
o 最小距離値を有するそれぞれの流線クラスタを決定するステップ(Q320)であって、
■ 前記それぞれの距離値が所定の閾値未満である場合(Q330)、前記それぞれの後続の流線を前記それぞれの流線クラスタに割り当て(Q331)、
■ そうでない場合、後続の流線クラスタを作成し(Q332)、前記それぞれの後続の流線を前記後続の流線クラスタに割り当てる、ステップと
を含む、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記所定のクラスタリングアルゴリズムは、前記複数の流線のすべての流線を割り当てた後、
・ 前記所定の重心計算アルゴリズムを使用して、各流線クラスタの前記重心を再計算するステップと、
・ それぞれの流線クラスタに割り当てられた各流線について、かつ前記所定の距離に関して、
o 前記流線と前記それぞれの流線クラスタの前記重心との間のそれぞれの距離値を計算するステップと、
o 前記それぞれの距離値が前記所定の閾値を超える場合、前記それぞれの流線クラスタから前記流線の割り当てを解除するステップと、
・ 前記所定の重心計算アルゴリズムを使用して、各流線クラスタの前記重心を再計算するステップと、
・ 別のそれぞれの流線クラスタに割り当てが解除された各流線について、および前記所定の距離に関して、
o 各流線クラスタの前記流線と前記重心との間のそれぞれの距離値を計算するステップと、
o 最小の距離値を有する流線クラスタを決定するステップであって、
■ 前記それぞれの距離値が前記所定の閾値未満である場合、前記割り当てが解除された流線を前記決定された流線クラスタに再割り当てするステップと、
■ そうでない場合、後続の流線クラスタを作成し、後続の流線クラスタに前記後続の流線を再割り当てするステップと
をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の距離は、最小ダイレクトフリップ距離である、請求項3から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定のクラスタリングアルゴリズムは閾値を入力として取り、前記所定のクラスタリングアルゴリズムを使用する前記ステップの前に、かつ前記1つまたは複数の第1のセットおよび前記1つまたは複数の第2のセットを選択する前記ステップの前に、前記方法は、
・ 前記トラクトグラムからすべての前記トラクトグラム流線を取り出し、前記白質アトラスからすべてのアトラス流線を取り出すステップ(P10)と、
・ 前記所定のクラスタリングアルゴリズムを前記すべてのトラクトグラム流線に適用して、複数の初期トラクトグラム流線クラスタを取得するステップ(P20)と、
・ 前記所定のクラスタリングアルゴリズムを前記すべての前記アトラス流線に適用するステップ(P30)と、
・ 前記複数の初期トラクトグラム流線クラスタからトラクトグラム流線の1つまたは複数の初期セットを選択するステップ(P40)であって、それぞれの初期トラクトグラム流線クラスタが前記複数の初期アトラス流線クラスタとのより粗い近接基準を満たすときに、前記それぞれの初期トラクトグラム流線クラスタが初期セットとして選択される、ステップと
を含み、
前記複数のトラクトグラム流線クラスタを取得するための前記所定のクラスタリングアルゴリズムを使用は、トラクトグラム流線の前記1つまたは複数の初期のセットの少なくとも一部の前記流線に適用される、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つまたは複数の初期セットの前記少なくとも一部を取得するために、
・ 前記白質アトラスからバイナリマスクを計算するステップであって、前記バイナリマスクは、バイナリ値ボクセルを含み、バイナリ値ボクセルは、前記ボクセルが、前記取り出されたすべての白質アトラス流線からの1つのアトラス流線の一部と交差するときに1の値を有し、そうでない場合はゼロの値を有する、ステップと、
・ 前記バイナリマスクを適用して、ゼロの値を有するボクセル内の少なくとも1つの点を含む重心を有するトラクトグラム流線の各初期セットを除外するステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記トラクトグラムを取得するステップ(S10)は、
・ 前記脳の拡散磁気共鳴画像(MRI)を取得するステップと、
・ 前記拡散MRIから拡散ボクセルモデルを決定するステップと、
・ 前記拡散ボクセルモデルから前記トラクトグラムを構築するステップと
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記帰属させるステップの結果は、医学的状態に関して患者を診断および/または治療するために使用可能であり、任意選択で前記少なくとも1つの束は、
・ 前記帯状回の繊維に対応する束を含み、および/または前記医学的状態はアルツハイマー病などの記憶の機能に影響を与える状態であり、
・ 結腸体に対応する束を含み、および/または前記医学的状態はハンチントン病であり、
・ 光学放射線に対応する束を含み、および/または前記医学的状態は光学神経繊維に影響を与える、および/または多発性硬化症などの視神経炎を引き起こす状態であり、
・ 皮質脊髄管に対応する束を含み、および/または前記医学的状態はパーキンソン病である、ならびに/または
・ 神経外科計画に使用可能な1つまたは複数の束を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
メモリに結合されたプロセッサを備えるシステムであって、前記メモリは、請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録している、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンピュータプログラムおよびシステムの分野に関し、より具体的には、ヒト患者のトラクトグラムを1つまたは複数の白質の流線束にセグメント化するための方法、プログラムおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
脳の白質(電気パルスを伝導する繊維からなる)のモデリングは、臨床医が病理学の治療またはモニタリングについての決定を下すために、コンテキストにより解釈可能にされた白質データの共通表現に基づいて診断を行うことを支援するために使用され得る。ヒト患者のトラクトグラムは、部分的に白質を表すトラクトグラム流線を含む。しかしながら、トラクトグラム流線を得るためにいくつかの問題がある。1つの問題は、トラクトグラム流線が誤って切断され得ることであり、例えば、トラクトグラム流線の一部が誤って灰白質に入ると見なされ、トラクトグラム流線を早期に切断することにつながり得る。別の問題は、流線の取得にノイズが存在し得ることである。例えば、流線の方向が間違っていて、突然停止することがある。別の問題は、セグメント化が次元数(dimensionality)の問題に煩わされることである。トラクトグラムは、数百万もの流線を含むことがあり、その結果、すべての流線の解剖学的精度を分析することは、計算上高価である。
【0003】
この文脈の中で、ヒト患者のトラクトグラムを1つまたは複数の白質の流線束にセグメント化するための改善された方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【0004】
したがって、ヒト患者のトラクトグラムを1つまたは複数の白質の流線束にセグメント化するためのコンピュータ実装方法が提供される。方法は、ヒト患者のトラクトグラムを取得することを含む。トラクトグラムは、トラクトグラム流線を含む。方法はまた、それぞれのアトラス流線をそれぞれが含む1つまたは複数の束を含む白質のアトラスを取得することを含む。方法はまた、アトラスおよびそのそれぞれのアトラス流線の少なくとも1つの束について、少なくとも1つの束にそれぞれのトラクトグラム流線を帰属させることを含み、それぞれのトラクトグラム流線は、少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第1のセットの各々を含む。各第1のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットに対応する。それぞれのトラクトグラム流線は、少なくとも1つのトラクトグラム流線のそれぞれの1つまたは複数の第2のセットをさらに含み、各第2のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する。
【0005】
方法は、以下のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0006】
- 帰属させることは、
o 所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して、複数のトラクトグラム流線クラスタを取得することと、
o 所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して、複数のアトラス流線クラスタを取得することと、
o 前記複数のトラクトグラム流線クラスタから1つまたは複数の第1のセットを選択することであって、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが複数のアトラス流線クラスタとの近接基準を満たすときに、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが第1のセットとして選択される、ことと、
o 複数のトラクトグラム流線クラスタから1つまたは複数の第2のセットを選択することであって、それぞれのトラクトグラム流線クラスタがアトラス流線クラスタのそれぞれの複数の断面部分を有する近接基準を満たすときに、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが第2のセットとして選択される、ことと、を含む。
- 1つまたは複数の第1のセットを選択することは、
o 所定の重心計算アルゴリズムを使用して、それぞれのトラクトグラム流線クラスタごとにトラクトグラム重心を計算することと、
o 所定の重心計算アルゴリズムを使用して、それぞれのアトラス流線クラスタごとに第1のアトラス重心を計算することと、
o そのトラクトグラム重心と各第1のアトラス重心との間の所定の距離値が所定の閾値を超えない各トラクトグラム流線クラスタを識別することと、を含み、
1つまたは複数の第2のセットを選択することは、各残りのトラクトグラム流線クラスタについて、
o アトラス流線クラスタのそれぞれの複数の断面部分のそれぞれの断面部分について複数の第2のアトラス重心をそれぞれ決定することと、
o そのトラクトグラム重心と各第2のアトラス重心との間の所定の距離値が所定の閾値を超えない各トラクトグラム流線クラスタを識別することと、を含む。
- 複数の第2のアトラス重心を決定することは、
o トラクトグラム重心の長さの値を決定することと、
o トラクトグラム重心よりも高い長さの値を有する各第1のアトラス重心について、トラクトグラム重心と同じ長さの値を有する第1のアトラス重心の1つまたは複数の断面部分を抽出することと、を含む。
- 第1のアトラス重心の1つまたは複数の断面部分を抽出することは、所定のオフセットを使用して第1のアトラス重心を反復的に切断することを含む。
- 所定のクラスタリングアルゴリズムは、それぞれの複数の流線について、
o 初期流線を初期流線クラスタに割り当てることと、
o それぞれの複数の流線の後続の流線を反復的にアクセスすることと、
o それぞれの後続の流線について、および所定の距離に関して、
■ 後続の流線と各既存の流線クラスタの重心との間のそれぞれの距離値を計算することと、
■ 最小距離値を有するそれぞれの流線クラスタを決定することであって、
・ それぞれの距離値が所定の閾値未満である場合、それぞれの後続の流線をそれぞれの流線クラスタに割り当てることと、
・ そうでない場合、後続の流線クラスタを作成し、それぞれの後続の流線クラスタを前記後続の流線クラスタに割り当てることと、を含む。
【0007】
- 所定のクラスタリングアルゴリズムは、さらに、複数の流線のすべての流線を割り当てた後、
o 所定の重心計算アルゴリズムを使用して、各流線クラスタの重心を再計算することと、
o それぞれの流線クラスタに割り当てられた各流線について、および所定の距離に関して、
■ それぞれの流線クラスタの流線と重心との間のそれぞれの距離値を計算することと、
■ それぞれの距離値が所定の閾値を上回っている場合、それぞれの流線クラスタから流線の割り当てを解除することと、
o 所定の重心計算アルゴリズムを使用して、各流線クラスタの重心を再計算することと、
o それぞれの流線クラスタに割り当てが解除された各流線について、および所定の距離に関して、
■ それぞれの流線クラスタの流線と重心との間のそれぞれの距離値を計算することと、
■ 最小の距離値を有するそれぞれの流線クラスタを決定することであって、
・ それぞれの距離値が所定の閾値を下回る場合、未割り当ての流線を決定された流線クラスタに再割り当てすることと、
・ そうでない場合、後続の流線クラスタを作成し、後続の流線クラスタに後続の流線を再割り当てすることと、を含む。
- 所定の距離は、最小ダイレクトフリップ距離である。
- 所定のクラスタリングアルゴリズムは、閾値を入力として取り、所定のクラスタリングアルゴリズムを使用するステップの前に、および1つまたは複数の第1のセットおよび1つまたは複数の第2のセットを選択するステップの前に、方法は、
o トラクトグラムからすべてのトラクトグラム流線を取り出し、白質アトラスからすべてのアトラス流線を取り出すことと、
o 所定のクラスタリングアルゴリズムを前記すべてのトラクトグラム流線に適用して、初期の複数のトラクトグラム流線クラスタを取得することと、
o 所定のクラスタリングアルゴリズムを前記すべてのアトラス流線に適用することと、
o 複数の初期トラクトグラム流線クラスタからトラクトグラム流線の1つまたは複数の初期セットを選択することであって、それぞれの初期トラクトグラム流線クラスタが複数の初期アトラス流線クラスタとのより粗い近接基準を満たすときに、それぞれの初期トラクトグラム流線クラスタが初期セットとして選択される、ことと
を含み、
複数のトラクトグラム流線クラスタを取得するための所定のクラスタリングアルゴリズムの使用は、トラクトグラム流線の1つまたは複数の初期のセットの少なくとも一部の流線に適用される。
- さらに、1つまたは複数の初期セットの少なくとも一部を取得するために、
o 白質アトラスからバイナリマスクを計算することであって、バイナリマスクは、バイナリ値ボクセルを含み、バイナリ値ボクセルは、ボクセルが、取り出されたすべての白質アトラス流線からの1つのアトラス流線の一部と交差するときに1の値を有し、そうでない場合ゼロの値を有する、ことと、
o バイナリマスクを適用して、ゼロの値を有するボクセル内の少なくとも1つの点を含む重心を有するトラクトグラム流線の各初期セットを除外することと、を含む。
- トラクトグラムを取得することは、
o 脳の拡散磁気共鳴画像(MRI)を取得することと、
o 拡散MRIから拡散ボクセルモデルを決定することと、
o 拡散ボクセルモデルからトラクトグラムを構築することと、を含む。
- 帰属の結果は、病状に関して患者を診断および/または治療するために使用可能であり、任意選択で少なくとも1つの束は、
o 帯状回の繊維に対応する束を含み、および/または医学的状態は、アルツハイマー病などの記憶の機能に影響を与える状態であり、
o 結腸体に対応する束を含み、および/または医学的状態がハンチントン病であり、
o 光学放射線に対応する束を含み、および/または医学的状態は、光学神経繊維に影響を与える、および/または多発性硬化症などの視神経炎を引き起こす状態であり、
o 皮質脊髄管に対応する束を含み、および/または医学的状態がパーキンソン病である、ならびに/または
o 神経外科計画に使用可能な1つまたは複数の束
を含む。
【0008】
さらに、方法を実行するための命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0009】
さらに、コンピュータプログラムを記録したコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0010】
さらに、メモリに結合されたプロセッサを含むシステムが提供され、メモリはその上にコンピュータプログラムを記録している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
次に、添付の図面を参照して、非限定的な例を説明する。
図1】本方法のフローチャートである。
図2】本システムの例を示す図である。
図3】本方法の一部の例のフローチャートである。
図4】本方法の一部の例を示す図である。
図5】本方法の一部の別のフローチャートである。
図6】本方法の例を示す図である。
図7】本方法の例を示す図である。
図8】本方法の例を示す図である。
図9】本方法の例を示す図である。
図10】本方法の例を示す図である。
図11】本方法の例を示す図である。
図12】本方法の例を示す図である。
図13】本方法の例を示す図である。
図14】本方法の例を示す図である。
図15】本方法の例を示す図である。
図16】本方法の例を示す図である。
図17】本方法の例を示す図である。
図18】本方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1のフローチャートを参照して、ヒト患者のトラクトグラムを1つまたは複数の白質の流線束(streamline bundle)にセグメント化するためのコンピュータ実装方法が提案される。この方法は、ヒト患者のトラクトグラムを取得することを含む。トラクトグラムは、トラクトグラム流線を含む。この方法はまた、白質アトラスを取得する。白質アトラスは、1つまたは複数の束(bundle)を含み、各束は、それぞれのアトラス流線を含む。この方法はまた、アトラスの少なくとも1つの束およびそのそれぞれのアトラス流線について、少なくとも1つの束にそれぞれのトラクトグラム流線を帰属させることを含む。(少なくとも1つの束の)それぞれのトラクトグラム流線は、1つまたは複数の第1のセットを含み、各セットは、少なくとも1つのトラクトグラム流線のセットである。各第1のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットに対応する。(少なくとも1つの束の)それぞれのトラクトグラム流線は、少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第2のセットの各々をさらに含む。各第2のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する。
【0013】
そのような方法は、1つまたは複数の白質の流線束へのヒト患者トラクトグラムのセグメント化を改善する。
【0014】
特に、本方法は、アトラスの少なくとも1つの束に、白質アトラスに含まれる少なくとも1つの束のアトラス流線に解剖学的に対応するそれぞれのトラクトグラム流線を帰属させる。アトラスの各束は、アトラスの白質の同じ解剖学的セグメントに属する繊維を表し得、その結果、本方法は、ヒト患者(本方法によって処理されたトラクトグラムが属する実在の人)の同じ解剖学的セグメントに属する繊維を表す、ヒト患者におけるトラクトグラム流線を識別することを可能にする。そのような識別は、同様に、異なる医療用途に適用することができる。方法は、対象のヒト患者の白質の異なる解剖学的部分を検出することを可能にするように、アトラスのいくつかの束、例えば、アトラスに存在する各束についてそのような帰属を実行し得る。
【0015】
方法は、改善された精度で、少なくともアトラスの1つの束についてのそれぞれのトラクトグラム流線のそのような識別を実行する。一方で、各第1のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットに対応し、したがって、各第1のセットは、白質の1つまたは複数の全繊維の解剖学的に対応するセットを表す。一方、各第2のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応し、したがって、各第2のセットは、白質の1つまたは複数の繊維のセットの解剖学的に対応する断面部分、例えば、繊維の実際の解剖学的寸法に関して一定の長さまたは割合までを表す。したがって、この方法は、例えば、依然として解剖学的に正確であるが、おそらく不完全であるトラクトグラム流線の断面部分が、依然としてセグメント化または第2のセットで表されることを確実にする。言い換えれば、この方法は、ヒト患者のトラクトグラムでは、対応する白質繊維に関していくつかの流線が誤って切断される一方、対応するアトラス流線がそのような方法で切断されないという事実に堅牢性を提供する。アトラス流線セットの断面部分を見ることによって、この方法は、トラクトグラム流線を少なくとも1つの束に帰属させることに関して偽陰性を減少させる。
【0016】
加えて、方法は、流線のセットおよび/またはその断面部分の間の対応を見ることによって、帰属させることを行う。例では、少なくとも1つ(例えば、いくつかまたはそれぞれ)の第1のセットは、いくつかのトラクトグラム流線を含み得、少なくとも1つ(例えば、いくつかまたはそれぞれ)の第2のセットは、いくつかのトラクトグラム流線を含み得、同様に、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線の少なくとも1つ(例えば、いくつかまたはそれぞれ)の第1のセットの対応するセットは、いくつかのアトラス流線を含み得、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線の少なくとも1つ(例えば、いくつかまたはそれぞれ)の第2のセットの対応するセットは、いくつかのアトラス流線を含み得る。このようなセットツーセット対応のアプローチは、方法をトラクトグラムの取得ノイズに対して堅牢にし、また計算の複雑さを大幅に低減する。
【0017】
方法は、コンピュータに実装される。これは、方法のステップ(または実質的にすべてのステップ)が、少なくとも1つのコンピュータ、または任意のシステムによって同様に実行されることを意味する。したがって、方法のステップは、場合により完全に自動で、または半自動で、コンピュータによって実行される。例では、方法の少なくともいくつかのステップのトリガーは、ユーザとコンピュータの対話を介して実施され得る。必要とされるユーザとコンピュータの対話のレベルは、予測される自動化のレベルに依存し、ユーザの希望を実装する必要性とバランスをとり得る。例においては、このレベルはユーザ定義、および/または事前定義され得る。
【0018】
方法のコンピュータ実装の典型的な例は、この目的に適合したシステムを用いて方法を実施することである。システムは、メモリおよびグラフィカルユーザインターフェース(GUI)に結合されたプロセッサを備え得、メモリは、方法を実施するための命令を備えるコンピュータプログラムをそれに記録している。メモリはデータベースを格納してもよい。メモリは、そのようなストレージに適合した任意のハードウェアであり、場合によりいくつかの物理的に区別できる部分(例えば、プログラム用の部分、および場合によってはデータベース用の部分)を備える。
【0019】
図2は、システムの例を示し、システムは、クライアントコンピュータシステム、例えば、ユーザのワークステーションである。
【0020】
例示のクライアントコンピュータは、内部通信バス2000に接続された中央処理装置(CPU)2010、またバスに接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)2070を備える。クライアントコンピュータは、バスに接続されたビデオランダムアクセスメモリ2100に関連付けられたグラフィカルプロセッシングユニット(GPU)2110をさらに備える。ビデオRAM1100はまた、当技術分野でフレームバッファとして知られている。マスストレージデバイスコントローラ2020は、ハードドライブ2030などのマスメモリデバイスへのアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令およびデータを実体的に具現化するのに適した大容量メモリデバイスは、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内部ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスクを含む、すべての形式の不揮発性メモリを含む。前述のいずれも、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補完され、または組み込まれ得る。ネットワークアダプタ2050は、ネットワーク2060へのアクセスを管理する。クライアントコンピュータはまた、カーソル制御デバイス、キーボードなどの触覚デバイス2090を含み得る。カーソル制御デバイスは、ユーザがディスプレイ1080上の任意の所望の位置にカーソルを選択的に配置することを可能にするために、クライアントコンピュータで使用される。さらに、カーソル制御デバイスにより、ユーザはさまざまなコマンドを選択し、制御信号を入力することができる。カーソル制御デバイスは、システムに制御信号を入力するためのいくつかの信号生成デバイスを含む。典型的には、カーソル制御デバイスはマウスであり得、マウスのボタンは信号を生成するために使用される。代替的または追加的に、クライアントコンピュータシステムは、感知パッド、および/または感知スクリーンを備え得る。
【0021】
コンピュータプログラムは、コンピュータによって実行可能な命令を備え得、命令は、上記のシステムに方法を実施させるための手段を備える。プログラムは、システムのメモリを含む任意のデータストレージ媒体上に記録可能であり得る。プログラムは、例えば、デジタル電子回路、またはコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実装され得る。プログラムは、装置、例えば、プログラム可能なプロセッサによる実行のためにマシン可読記憶デバイスに具現化された製品として実装され得る。方法のステップは、入力データを操作し、出力を生成することによって、方法の機能を実施する命令のプログラムを実行するプログラム可能なプロセッサによって実施され得る。したがって、プロセッサは、データ記憶システム、少なくとも1つの入力デバイス、および少なくとも1つの出力デバイスからデータおよび命令を受信し、それらにデータおよび命令を送信するようにプログラム可能であり、結合され得る。アプリケーションプログラムは、ハイレベル手続型またはオブジェクト指向プログラミング言語で、または必要に応じてアセンブリもしくはマシン語で実装され得る。いずれの場合も、言語は、コンパイルされ、または解釈された言語であり得る。プログラムは、完全なインストールプログラムまたは更新プログラムであり得る。システム上へのプログラムの適用は、いかなる場合も、方法を実施するための命令をもたらす。代替的に、コンピュータプログラムは、クラウドコンピューティング環境のサーバ上に格納され、実行され得、サーバは、1つまたは複数のクライアントとネットワークを介して通信している。そのような場合、処理ユニットは、プログラムによって構成される命令を実行し、それによって、方法をクラウドコンピューティング環境上で実行させる。
【0022】
この方法は、ヒト患者のトラクトグラムを1つまたは複数の白質の流線束にセグメント化するためのものである。これは、方法がヒト患者トラクトグラムを入力として取り、トラクトグラム流線が1つまたは複数の(異なる)セグメント(群)に帰属するその豊富なバージョンを出力することを意味する。そのようなセグメンテーションは、次に、方法がトラクトグラム流線によって表される白質繊維束の1つまたは複数の3D表現をさらに生成し、任意選択で表示することを可能にし得る。表示は、例えば、白質の3D表現のみを表示すること(それによって、方法によって出力されないトラクトグラムのトラクトグラム流線の他の3D表現を除く)、および/または方法によって出力されるトラクトグラム流線によって表される白質繊維束の3D表現を(例えば、異なる色またはラベルで)強調表示することを含み得る。
【0023】
ヒト患者トラクトグラムは、トラクトグラム流線を含む3D構造であってもよい。トラクトグラム流線は、例えば3D点のシーケンスとして、実線3D線を表すデータの数値部分であり得る。3D点のシーケンスは、例えば、100以上、さらには400またはそれ以上の3D点を含み得る。言い換えれば、流線は、3D点のシーケンスによってサンプリングされるような、実線の3D線の離散化を表し得る。トラクトグラム流線は、拡散磁気共鳴画像(MRI)から決定された拡散ボクセルモデルから構築され得る。
【0024】
トラクトグラムを取得することS10は、脳の拡散MRIを取得すること(すなわち、物理的に測定すること)および/または取得することを含み得る。拡散MRIは、拡散磁気共鳴撮像プロセスを介して行われる脳内の水分子の拡散の物理的測定から得られてもよい。白質は、束に集まる繊維で構成される脳内の構造である。したがって、白質中に存在する水分子は、制約された環境内に広がる。したがって、脳内の水分子の拡散の測定は、白質の構造を見つけることに対応する。
【0025】
取得することS10はまた、拡散MRIから拡散ボクセルモデルを決定することを含み得る。拡散ボクセルモデルは、ボクセルのセットであってよく、各ボクセルは、脳内の水分子の拡散の表示を含む。拡散ボクセルモデルは、各ボクセル上の拡散MRIからの水分子の拡散を決定する数学的モデルからモデル化され得る。拡散ボクセルモデルは、水分子が1つの優先方向に拡散する確率を提供する繊維配向密度関数(FOD)から取得され得る。したがって、トラクトグラム流線は、水が1つの優先方向に拡散する計算された確率から生じる3D線を表す。
【0026】
取得することS10はまた、拡散ボクセルモデルからトラクトグラムを構築することを含み得る。言い換えれば、取得することS10は、拡散MRIによって捕捉されるように、水が脳内の1つの優先的な方向に拡散する計算された確率を表す拡散ボクセルモデルから生じるトラクトグラム流線をまとめ得る。トラクトグラムの構築は、拡散MRI内の初期位置(シード位置とも呼ばれる)を選択することによって実行され得る。初期位置は、白質を表す拡散MRIの領域内で選択されてもよい。構造は、拡散ボクセルモデルを使用して初期位置で主拡散方向を決定し得る。トラクトグラム流線は、例えば、拡散ボクセルモデルのボクセルを横断する3D点のシーケンスとして、それが停止基準または他のボクセルに達するまで、この主要な拡散方向に従うように構築され得る。
【0027】
白質アトラスは、それぞれが(例えば、そのセットまたはコレクションの)アトラス流線を含む1つまたは複数の束を含む3D構造であり得る。それぞれのアトラス流線は、白質の束に含まれる繊維を表す。言い換えれば、アトラス流線は、これらが白質を構成する繊維を表すという点において解剖学的意味を有する。白質アトラスは、S10で、例えば、Tractometer Challenge(これは、ウェブサイトhttp/tractometer.org/ismrm2015/home/で参照され得る)から構築されるように、複数の患者から構築された白質束の所定の集合から取得されてもよい。
【0028】
トラクトグラムおよび白質アトラスを取得することS10は、例えば、トラクトグラムが格納され得る(例えば、遠隔の)メモリまたはサーバ、または任意の不揮発性ストレージから前記トラクトグラムをダウンロードする/取り出すこと(例えば、ネットワークを介して)を含み得る。あるいは、トラクトグラムは、白質アトラスから独立して(例えば、異なる時間に、異なる場所から、および/または異なるエンティティによって)取得されてもよく、例えば、白質アトラスは、トラクトグラムが格納され得るメモリまたはサーバまたは任意の不揮発性ストレージではなく別のメモリまたはサーバまたは任意の不揮発性ストレージからダウンロードされ/取り出されてもよい。
【0029】
アトラスおよびそのそれぞれのアトラス流線のうちの少なくとも1つの束について、方法は、少なくとも1つの束に、それぞれのトラクトグラム流線を帰属させるS20。帰属させることによって、少なくとも1つの束がそれぞれのトラクトグラム流線に関連付けられている(リンクされている)ことを意味する。言い換えれば、帰属させることS20は、例えば、関連付けを示すラベルまたは他のデータを用いて、前記少なくとも1つの束に対応するように、それぞれのトラクトグラム流線をマークする。そのようなマーキングまたはラベル付けデータは、メモリ上に作成され書き込まれ得る。方法は、帰属させることS20の後に、永続的(不揮発性)メモリに、帰属させることS20の結果(例えば、前記マーキングまたはラベリングデータ)で強化された初期トラクトグラムを格納することを含み得る。
【0030】
それぞれのトラクトグラム流線(少なくとも1つの束に帰属される)は、少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第1のセットの各々、すなわち、少なくとも1つのトラクトグラム流線、例えば、10、100、またはさらには1000もしくはそれ以上のトラクトグラム流線の集合を形成する1つまたは複数の第1のセットの結合を含む。
【0031】
各第1のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットに対応する。言い換えれば、少なくとも1つのトラクトグラム流線のコレクションは、例えば、関連性を示すラベルまたは任意の他のタイプのデータを介して、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットにリンクされる。
【0032】
それぞれのトラクトグラム流線は、1つまたは複数の第2のセットをさらに含む。1つまたは複数の第2のセットのそれぞれは、少なくとも1つのトラクトグラム流線、例えば、10、100、または1000もしくはそれ以上のトラクトグラム流線を含む。各第2のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する。「断面部分」によって、それぞれのセットの2つの断面間、例えば、開始「断面」と終了「断面」との間、開始「断面」と中間断面との間、または2つの中間断面の間のそれぞれのセットの一部を意味する。断面は慣例によって、例えば、白質アトラス内の対応する少なくとも1つのアトラス流線の3D線内の点および/または少なくとも1つのアトラス流線の境界(終点など)で設定され得る。白質の繊維が細長いので、アトラス流線も細長く、少なくとも1つの束は、少なくとも1つの流線の細長いセットの各々にグループ化することができるアトラス流線を含む。トラクトグラム流線(複数可)の第2のセットは、アトラス流線(複数可)のそのような細長いセットの断面部分に対応する。言い換えれば、そのような細長いアトラス流線のセットは、その長さに沿って2つの異なる位置で切断/分割され、それによって得られた長さ部分は、第2のセットを形成するためにトラクトグラム流線と対応するようにされる。
【0033】
これは、1つまたは複数の白質の流線束へのヒト患者トラクトグラムのセグメント化を改善する。実際、拡散ボクセルモデルからトラクトグラム流線を得るための方法は実質的に確率的である(また、拡散MRIのノイズの多い取得によって影響を受け得る)ため、解剖学的意味を有し得ない、言い換えれば、白質を構成する繊維を表さない、またはトラクトグラムのノイズの取得に起因して現れるトラクトグラム流線が存在し得る。白質アトラスの少なくとも1つの束(解剖学的意味を付与されている)に、それぞれのトラクトグラム流線を帰属させるおかげで、本方法は、正しい解剖学的意味を有するトラクトグラム流線を保持し、それによって、保持されたトラクトグラム流線から生じるセグメント化の精度を向上させる。
【0034】
さらに、各第2のセットは、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する。したがって、本方法はまた、依然として解剖学的意味を有するトラクトグラム流線の断面部分を保持する。
【0035】
任意選択で、方法は、トラクトグラム流線によって表される白質繊維束の1つまたは複数の3D表現として、1つまたは複数の第1のセットおよび1つまたは複数の第2のセットを表示し得る。例えば、1つまたは複数の第1のセット、および1つまたは複数の第2のセットは、他のトラクトグラム流線からユーザに強調表示され得る。代替として、方法は、表示中に第1のセット、1つまたは複数の第2のセットとして選択されていない任意のトラクトグラム流線を除外してもよい。
【0036】
帰属させることの結果は、病状に関して患者を診断および/または治療するために使用可能であり得る。言い換えれば、方法は、セグメント化の結果を使用して、少なくとも1つのパラメータが前記セグメント化に依存する診断ステップおよび/または治療ステップを実行することを含み得る。例えば、方法は、1人または複数人の医療従事者にセグメント化の3D表現を表示すること、例えば、(例えば、それぞれの)異なる色で少なくとも1つの束(1つまたは複数の第1のセットおよび1つまたは複数の第2のセットを含む)に帰属される(例えば、それぞれの)トラクトグラム流線を示す/強調表示することを含み得る。代替的または追加的に、S20の出力は、そのような使用を実行するために自動プロセスに提供され得る。
【0037】
任意選択で、少なくとも1つの束は、帯状回の繊維に対応する束を含み得る。追加的または代替的に、医学的状態は、アルツハイマー病などの記憶の機能に影響を与える状態である。例えば、この方法は、アルツハイマー病患者の認知機能障害および辺縁系の萎縮を決定するために、帯状回の束の部分異方性を抽出するために使用され得る。
【0038】
追加的または代替的に、少なくとも1つの束は、脳梁に対応する束を含み得る。追加的または代替的に、医学的状態は、ハンチントン病である。例えば、この方法は、疾患の発症前に損なわれ得る、脳梁の経路を調べるために使用され得る。
【0039】
追加的または代替的に、少なくとも1つの束は、光放射に対応する束を含み得る。追加的または代替的に、医学的状態は、光学神経繊維に影響を及ぼす、および/または多発性硬化症などの視神経炎を引き起こす状態であり、例えば、この方法は、光学放射線内の異常を判定するために使用され得る。
【0040】
追加的または代替的に、少なくとも1つの束は、皮質脊髄管に対応する束を含み得る。追加的または代替的に、医学的状態は、パーキンソン病である。この方法は、例えば、パーキンソン病障害における疾患特異的な局所的白質変化を決定するために使用され得る。
【0041】
追加的または代替的に、少なくとも1つの束は、神経外科計画に使用可能な1つまたは複数の束を含み得る。例えば、この方法は、患者の治療結果、臨床機能検査、または電気皮質刺激などの臨床情報とセグメント化を相関させ、相関の結果に基づいて神経外科計画を実行するために使用され得る。
【0042】
帰属させることS20は、所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して、複数のトラクトグラム流線クラスタを取得することを含み得る。トラクトグラム流線クラスタは、トラクトグラム流線のセット(またはコレクション)であり得る。所定のクラスタリングアルゴリズムは、トラクトグラムからそれぞれのトラクトグラム流線クラスタにトラクトグラム流線を割り当てる(または選択する)命令のセットであり得る。所定のクラスタリングアルゴリズムは、類似性基準に基づいてトラクトグラム流線を選択し得る。例えば、所定のクラスタリングアルゴリズムは、同様の幾何学的配置(例えば、同様の曲率度を有する)を有するトラクトグラム流線を決定することによって、トラクトグラム流線クラスタにトラクトグラム流線を割り当て得る。所定のクラスタリングアルゴリズムは、トラクトグラム流線クラスタ内の決定されたトラクトグラム流線を、トラクトグラム流線クラスタとのその関連付けを示すデータピースに関連付け得る。
【0043】
帰属させることS20は、所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して、複数のトラクトグラム流線クラスタを取得することを含み得る。言い換えれば、帰属させることは、複数のトラクトグラム流線クラスタを取得するために使用される同じ所定のクラスタリングアルゴリズムを使用し得る。したがって、アトラス流線クラスタは、トラクトグラム流線クラスタが取得されるのと同じ基準に基づいて決定されるアトラス流線のセット(またはコレクション)であり得る。
【0044】
帰属させることS20はまた、複数のトラクトグラム流線クラスタから1つまたは複数の第1のセットを選択することを含み得る。言い換えれば、第1のセットは、トラクトグラム流線クラスタからのクラスタであり得る。それぞれのトラクトグラム流線クラスタは、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが複数のアトラス流線クラスタとの近接基準を満たすとき、第1のセットとして選択され得る。近接基準とは、トラクトグラム流線クラスタと複数のアトラス流線クラスタとの間の近接度(形状、類似性または位置に関する)を決定するための任意の基準を意味する。近接基準は、所定の閾値の満足度に基づいてもよく、すなわち、近接度が所定の閾値を超えない(以下である)場合、帰属させることは、トラクトグラム流線クラスタが近接基準を満たすと判定してもよい。近接度は、トラクトグラム流線クラスタとそれぞれのアトラス流線クラスタとの間の幾何学的重複、例えば、トラクトグラム流線クラスタに含まれる流線とそれぞれのアトラス流線クラスタとの間の距離を考慮し得る任意の関数によって決定され得る。したがって、方法は、それぞれのアトラス流線に対して実質的に重複するトラクトグラム流線クラスタ、例えば、所定の閾値を超える重複からセットを選択する。
【0045】
帰属させることS20はまた、複数のトラクトグラム流線クラスタから1つまたは複数の第2のセットを選択することを含み得る。それぞれのトラクトグラム流線クラスタが、アトラス流線クラスタのそれぞれの複数の断面部分との近接基準を満たすとき、それぞれのトラクトグラム流線クラスタを第2のセットとして選択し得る。
【0046】
それぞれのトラクトグラム流線クラスタは、それぞれのトラクトグラム流線クラスタが複数のアトラス流線クラスタとの近接基準を満たすとき、第2のセットとして選択され得る。近接基準は、トラクトグラム流線クラスタの断面部分とアトラス流線クラスタの複数の断面部分との間の近接度(形状、類似性または位置に関する)をさらに考慮し得る。例えば、近接基準は、トラクトグラム流線クラスタの断面部分とそれぞれの断面部分との間、例えば、アトラス流線クラスタの開始「断面」または終了「断面」の間の幾何学的重複を考慮し得る。
【0047】
これは、セグメント化の精度を改善する。実際、それぞれのトラクトグラム流線が近接基準を満たすときに、1つまたは複数の第1のセットおよび1つまたは複数の第2のセットを選択するおかげで、方法は、結果として生じるセグメント化(第1のセットおよび第2のセットを含む)が(白質アトラスに表されるように)白質の解剖学的構造を表すことを確実にする。
【0048】
ここで、図3iを参照して、所定のクラスタリングアルゴリズムについて説明する。前述のように、所定のクラスタリングアルゴリズムは、トラクトグラム流線および/またはアトラス流線のいずれか(の両方)に適用されて、それぞれの複数のトラクトグラム流線クラスタおよび/またはアトラス流線クラスタを取得し得ることを理解されたい。同じクラスタリングアルゴリズムを使用すると、一貫性が確保され、したがって異なるクラスタリング結果の正確な比較性が保証される。
【0049】
所定のクラスタリングアルゴリズムは、それぞれの複数の(トラクトグラムおよび/またはアトラス)流線について、初期流線を初期(トラクトグラム及び/またはアトラス)流線クラスタに割り当てることQ10を含み得る。初期流線は、任意の方法で選択することができ、例えば、すべての流線(トラクトグラムまたは白質アトラスに含まれる)からランダムに選択することができる。例では、初期流線は、トラクトグラムまたは白質アトラスを取得するときに決定された流線のインデックス付け(例えば、順序付けられているインデックス付け)に従って選択され得る。
【0050】
所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、それぞれの複数の流線について、それぞれの複数の流線の後続の流線を反復的にアクセスすること(visiting)Q20を含み得る。言い換えれば、所定のクラスタリングアルゴリズムは、初期流線として選択されていない他のすべての流線を横断し得る。アクセスは、任意の方法で実行されてもよく、例えば、流線がインデックス付けされている場合、方法は、初期流線から後続の(例えば、上または下)流線のインデックスを反復的に(例えば、1つずつ)アクセスしてもよい。
【0051】
それぞれの後続の流線について、および所定の距離に関してQ30、所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、後続の流線と各既存の流線クラスタの重心との間のそれぞれの距離値を計算することQ310を含み得る。
【0052】
「それぞれの後続の流線」とは、所定のクラスタリングアルゴリズムによってアクセスされた流線を意味する。「既存の」流線クラスタとは、所定のクラスタリングアルゴリズムによって事前に作成された任意の流線クラスタ、例えば、他の流線クラスタが存在しない場合の初期流線クラスタを意味する。
【0053】
重心は、クラスタに既に含まれている(例えば、ラベルを介して割り当てられた)他の流線に対して、(トラクトグラムまたは白質アトラスからの)それぞれの流線クラスタの平均流線であり得る。すなわち、重心は、クラスタに含まれる他の流線に対する平均位置を満たす、流線クラスタ内に割り当てられた(すなわち、含まれる)流線(例えば、3D点のシーケンスである)であり得る。平均位置は、クラスタに既に含まれている他の流線に対する平均距離(例えば、同じ所定の距離に対する)に関してであってもよく、例えば、重心は、クラスタに既に含まれている他の流線(例えば、アルゴリズムが割り当てることQ10の後に後続の流線をアクセスする場合の初期流線)に対して(いくつかの丸め誤差内で)幾何平均で延びる流線であってもよい。平均は、例えば、流線がクラスタ内でインデックス付けされている場合の数値平均であり得る。各流線クラスタの重心は、流線が流線クラスタに割り当てられたとき、すなわち、新しい流線が流線クラスタに割り当てられるたびに、動的に再配置され得る。
【0054】
計算することQ310は、既存のクラスタごとに、後続の流線と重心との間のそれぞれの所定の距離を計算する結果であり得る。
【0055】
ここで、所定の距離の例について説明する。
【0056】
所定の距離は、最小のダイレクトフリップ距離であってもよい。2つの流線4100、4200上で、所定の距離がタイプの最小ダイレクトフリップ距離であり得る場合を示す図4を参照する。
【0057】
MDF=min(ddirect(f,s),dflip(f,s)),
ここで、所定の距離は、項dflip(f,s)=d(f,s)=d(f,s)および
【0058】
【数1】
【0059】
の最小値であり、f、sは、入力流線S 4100およびS 4200の2つの点を示す。この項ddirectは、2つの流線SおよびSの点
【0060】
【数2】
【0061】
の間のユークリッド距離(直線距離とも呼ばれる)の最大値を示す。点
【0062】
【数3】
【0063】
は、例えば、2つの流線の同じ離散化(均一または不均一、ただし2つの流線について同じ数の点)を実行することによって、または2つの流線SおよびSからのサンプリング点によって、任意の方法で取得され得る。点は順序付けられ得、方法は、同じ順序を有する点間の距離を比較し得る。例えば、2つの流線SおよびSは、(流線に対する)点4101~4105および(流線に対する)4201~4205の順序付けられたシーケンスを有し得る。したがって、直線距離ddirectは、2つの点、例えば、(4101,4201),(4102,4202)などの間のユークリッド距離の最大値を計算し得る。
【0064】
項dflip(f,s)は、フリップ距離の項を示す。各流線の2点をf,s、およびそれぞれの流線の反転(またはそれぞれの流線の順列)に対応する2点s,fと表すと、フリップ距離の項プロパティdflip(f,s)=dflip(f,s)を有する、つまり、fとsの間のフリップ距離は、fとsの間の距離と同じである。例えば、項dflip(f,s)は、2つの極値点(4101,4205)の間の距離、例えば各流線sおよびsの最初と最後の点にそれぞれ対応する点の間の距離を計算し得、また2つの中心点(4103,4203)、つまり各流線sとsの中点に対応する点の間の距離を計算し得る。
【0065】
所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、Q310で計算されたそれぞれの距離値の中で(それぞれの後続の流線に対して)最小の距離値を有するそれぞれの流線クラスタを決定することQ320を含み得る。最小の距離値(例えば、いくつかの許容範囲までの後続の流線クラスタと等距離)を有する複数の流線クラスタが存在する場合、方法は、前記流線クラスタの中からそれぞれの流線クラスタをランダムに選択し得る。
【0066】
それぞれの(最小の)距離値が所定の閾値を下回る場合Q330、所定のクラスタリングアルゴリズムは、それぞれの後続の流線をそれぞれの流線クラスタに割り当て得るQ331。例えば、割り当てることQ331は、それぞれの後続の流線を、その割り当てを示すデータピース(例えば、ラベルなど)に関連付けてよく、それぞれの流線クラスタは、Q320において最小の距離値を有すると決定される。
【0067】
それ以外の場合、所定のクラスタリングアルゴリズムは、後続の流線クラスタを作成しQ332、それぞれの後続の流線を前記後続の流線クラスタに割り当て得る。例えば、作成することQ332は、それぞれの後続の流線を、新しいクラスタ、すなわち、流線の新しいセットの一部へのその割り当てを示すデータピース(例えば、ラベルなど)に関連付け得、したがって、他の流線クラスタから識別され得る。
【0068】
したがって、この方法は、セグメント化を改善する。所定のクラスタリングアルゴリズムを使用することのおかげで、方法は、類似の形状(所定の距離の達成によって表されるように)および近接位置を有する流線をまとめることによって、トラクトグラムの次元数を低減する。
【0069】
さらに、所定の距離が最小ダイレクトフリップ距離であるとき、これは、所定のクラスタリングアルゴリズムが中央に近い流線を解離させ、その極値の周りで有意に分離するため、方法がクラスタの品質を改善することをもたらす。
【0070】
1つまたは複数の第1のセットを選択することは、所定の重心計算アルゴリズムを使用して、それぞれのトラクトグラム流線クラスタごとに流線の重心を計算することを含み得る。トラクトグラム重心は、それぞれのトラクトグラム流線クラスタの平均トラクトグラム流線であり得る。すなわち、第1のトラクトグラム重心は、(所定のクラスタリングアルゴリズムによって取得された)トラクトグラム流線クラスタに割り当てられた(すなわち、含まれる)トラクトグラム流線であり得、これは、トラクトグラムクラスタに含まれる他のトラクトグラム流線に対する平均を満たす。
【0071】
1つまたは複数の第1のセットを選択することはまた、所定の重心計算アルゴリズムを使用して、それぞれのアトラス流線クラスタごとに第1のアトラス重心を計算することを含み得る。第1のアトラス重心は、それぞれのアトラス流線クラスタの平均アトラス流線であり得る。すなわち、第1のアトラス重心は、アトラス流線クラスタに割り当てられた(すなわち、含まれている)アトラス流線クラスタ(すなわち、複数のトラクトグラム流線クラスタを取得するために使用される同じ所定のクラスタリングアルゴリズムによって取得されたアトラス流線クラスタ)であってもよく、これはアトラス流線クラスタに含まれている他のアトラス流線、例えば、同じアトラス流線クラスタに含まれていることを示すラベルを有する他のアトラス流線に対して平均を満たす。
【0072】
1つまたは複数の第1のセットを選択することはまた、そのトラクトグラム重心と各第1のアトラス重心との間の所定の距離(例えば、最小ダイレクトフリップ距離)の値が所定の閾値を超えない(以下の)各トラクトグラム流線クラスタを識別することを含み得る。例えば、識別することは、トラクトグラム重心と各第1のアトラス重心との間の絶対距離値を比較し得る。識別することは、トラクトグラム重心と各第1のアトラス重心との間の(例えば、それぞれの離散化から生じる)点のペアごとに所定の距離値を比較し得る。例えば、方法は、所定の距離が最小のダイレクトフリップ距離である識別を実行して、トラクトグラム重心および各第1のアトラス重心が、それぞれの中央部分で近く、所定の閾値(閾値は例えば15mmまたは20mmであり、流線の点の数は20と50との間、例えば100)を超えない(すなわち、以下)その終点の周りに分離を有するかどうかを決定し得る。所定の閾値は、点の数に依存してもよく、例えば、点の数は100よりも大きくてもよく、所定の閾値は、対応する係数を掛けることによって取得されてもよい。言い換えれば、識別されたトラクトグラム流線クラスタは、したがって、第1のセットとして選択されるための近接基準を満たすと判定される。
【0073】
1つまたは複数の第2のセットを選択することは、残りのトラクトグラム流線クラスタ(すなわち、第1のセットとして選択されていない任意のトラクトグラム流線クラスタ)ごとに、アトラス流線クラスタのそれぞれの複数のセクション部分のそれぞれのセクション部分について複数の第2のアトラス重心の各々を決定することを含み得る。複数の第2のアトラス重心は、アトラス流線クラスタのそれぞれの断面部分に含まれる(例えば、開始「断面」と終了「断面」との間の)平均アトラス流線の断面部分であり得る。
【0074】
1つまたは複数の第2のセットを選択することはまた、それぞれの断面部分について、そのトラクトグラム重心と各第2のアトラス重心との間の所定の距離値が所定の閾値を超えない(例えば、したがって前記所定の閾値以下である)各トラクトグラム流線クラスタを識別することを含み得る。識別することは、例えば、トラクトグラム重心の位置と各第2のアトラス重心との間の所定の距離値を比較し得る。例えば、所定の距離は、トラクトグラム重心および各第2のアトラス重心がそれぞれの中央部分で近く、所定の閾値を超えない(例えばアトラス重心が例えば100個の点を含む場合、例えば15mm以下、またはさらには20mm以上)その終点の周りに分離を有するかどうかを決定するために、最小ダイレクトフリップ距離であってもよい。言い換えれば、識別されたトラクトグラム流線クラスタは、したがって、第2のセットとして選択されるための近接基準を満たすものとして決定される。
【0075】
これにより、解剖学的に正確な流線をセグメント化するための品質がさらに向上します。実際、選択は、解剖学的に正しいが、ノイズによって破損している可能性があるトラクトグラム流線クラスタのセクション(1つまたは複数の第2のセットに表される)を決定することを可能にする。さらに、重心の使用は、クラスタ内に含まれるすべての流線について距離を計算する必要があることよりも計算上安価であるため、方法は高効率で実装され得る。
【0076】
複数の第2のアトラス重心を決定することは、トラクトグラム重心の長さの値を決定することを含み得る。長さは、トラクトグラム重心の2つの終点(すなわち、極値)を接続する線間の距離(例えば、ユークリッド距離)、すなわち、重心の曲線に従う距離であり得る。
【0077】
複数の第2のアトラス重心を決定することはまた、(第1のセットとして選択されていない残りのトラクトグラム流線クラスタの)トラクトグラム重心よりも高い長さの値を有する各第1のアトラス重心について、トラクトグラム重心と同じ長さの値を有する第1のアトラス重心の1つまたは複数の断面部分を抽出することを含み得る。言い換えれば、この方法は、第2のアトラス重心と同じ長さの第1のアトラス重心上の2つの断面のみを考慮し得る。
【0078】
例えば、識別することは、トラクトグラム重心と各第2のアトラス重心との間の所定の距離値を決定するために、第1のアトラス重心の断面部分を開始点から中間点(トラクトグラムの長さによって決定される)まで抽出し得る。これにより、トラクトグラム重心の長さを第2のアトラス重心の断面部分の長さと一致させることができる。
【0079】
第1のアトラス重心の1つまたは複数の断面部分を抽出することは、所定のオフセットを使用して第1のアトラス重心を反復的に切断すること(およびそれによって、2つの連続した反復の間の所定のオフセットによって重心の長さに沿って移動する重心の異なる部分を反復的に抽出すること)を含み得る。言い換えれば、方法は、第1のアトラス重心の断面部分が抽出される位置を反復的にオフセットし得る。例では、方法は、トラクトグラム重心と第2のアトラス重心との間の所定の距離値の一致の尺度に応じて反復する切断を継続し得る。これにより、所定の閾値未満の(または等しい)最低距離を見つけるときに反復が停止され得るため、トラクトグラム重心と最良の一致を有する第2のアトラス重心の断面部分を見つけることが可能となる。したがって、本方法は、切断された可能性があるか、または不完全であるトラクトグラム流線を保持し得る。
【0080】
所定のクラスタリングアルゴリズムは、複数の流線のすべての流線を割り当てた後、所定の重心計算アルゴリズムを使用して各(アトラスまたはトラクトグラム)流線クラスタの重心を再計算することをさらに含み得る。言い換えれば、所定の重心計算アルゴリズムは、現在割り当てられている流線に対する流線クラスタの平均流線を再び計算し得る。実際、すべての連続した割り当ての後、重心が変化されている可能性がある。次のステップを実行するために、そのような時点で重心を再計算することは、以下で説明するように、計算コストと最終的な精度との間の妥協を可能にする。
【0081】
所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、それぞれの流線クラスタに割り当てられた各流線について、および所定の距離に関して、それぞれの流線クラスタの流線と重心との間のそれぞれの距離値を計算することを含み得る。例えば、所定の距離は、最小のダイレクトフリップ距離であってもよい。さらに、所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、それぞれの距離値が所定の閾値を超える場合、それぞれの流線クラスタから流線の割り当てを解除し得る。言い換えれば、割り当て解除は、例えば、その割り当てを示すデータピース(例えば、ラベルなど)を除去することによって、またはそれぞれの流線クラスタに割り当てられていないことを示す別のデータピースでそれをマーキングすることによって、それぞれの流線クラスタに関連付けた流線の関連付けを除去する。
【0082】
所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、所定の重心計算アルゴリズムを使用して、各(アトラスまたはトラクトグラム)流線クラスタの重心を再計算することを含み得る。言い換えれば、所定の重心計算アルゴリズムは、割り当て解除後にそれぞれの流線クラスタに割り当てられたままの流線に関して、流線クラスタの平均流線を計算し得る。
【0083】
所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、別のそれぞれの流線クラスタに割り当てられていない流線ごとに、所定の距離に関して、各流線クラスタの流線と重心との間のそれぞれの距離値(例えば、最小ダイレクトフリップ距離)を計算することを含み得る。
【0084】
所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、最小の距離値を有する流線クラスタを決定し得る。それぞれの距離値が所定の閾値(例えば、5mm以下の)を下回る場合、所定のクラスタリングアルゴリズムは、割り当てられていない流線を決定された流線クラスタに再割り当てし得る。同じ最小距離値を有する複数の流線クラスタが存在する場合、方法は、割り当てられていない流線を、ランダムに選択された前記流線クラスタのうちの1つに再割り当てし得る。それ以外の場合、所定のクラスタリングアルゴリズムは、後続の流線クラスタを作成し、後続の流線を後続の流線クラスタに再割り当てし得る。
【0085】
これにより、トラクトグラムのセグメント化の品質がさらに向上する。実際、所定のクラスタリングアルゴリズムは、誤って配置された可能性のある流線を再割り当てすることを可能にし、それによって、流線がどのようにクラスタリングされるかについてより細かい制御をもたらす。実際、所定の重心を使用して各(アトラスまたはトラクトグラム)流線の重心の再計算の前に。重心の再計算を含む所定のクラスタリングアルゴリズムは、各流線がその元のクラスタに対応しない場合、異なるクラスタに割り当てられる流線のより細かい離散化をもたらす。
【0086】
図5を参照すると、所定のクラスタリングアルゴリズムは、入力として閾値をとり得る。さらに、所定のクラスタリングアルゴリズムを使用するステップの前に、かつ1つまたは複数の第1のセットおよび1つまたは複数の第2のセットを選択するステップの前に、方法は、トラクトグラムからすべてのトラクトグラム流線を取り出し、白質アトラスからすべてのアトラス流線を取り出すことP10を含み得る。言い換えれば、本方法は、以下の任意の(例えば、すべての)ステップP20~P40について、すべてのトラクトグラム流線およびすべてのアトラス流線のセットを収集する。
【0087】
方法はまた、所定のクラスタリングアルゴリズムを前記(取り出された)すべてのトラクトグラム流線に適用してP20、初期の複数のトラクトグラム流線クラスタを取得することを含み得る。初期の複数のトラクトグラム流線クラスタは、例えば、以前に任意の他のクラスタに関連付けられていない、初期のトラクトグラムクラスタのセットであり得る。
【0088】
方法はまた、所定のクラスタリングアルゴリズムを前記すべてのアトラス流線に適用することP30を含み得る。所定のクラスタリングアルゴリズムは、初期の複数のアトラス流線クラスタを取得し得る。
【0089】
方法はまた、複数の初期トラクトグラム流線クラスタからトラクトグラム流線の1つまたは複数の初期セットを選択することP40を含み得る。P40で選択されたトラクトグラム流線の1つまたは複数の初期セットは、帰属させることS20が実行されるものであり得る。それぞれの初期トラクトグラム流線クラスタが、複数の初期アトラス流線クラスタとのより粗い近接基準を満たすとき、それぞれの初期トラクトグラム流線クラスタは、初期セットとして選択され得る。近接基準は、初期トラクトグラム流線クラスタと複数のアトラス流線クラスタとの間の近接度(形状、類似性または位置に関して)を決定するための基準であり得る。「より粗い近接基準」とは、S20で決定された近接度よりも高い所定の閾値を有することを意味する。より高い所定の閾値は、入力閾値であり得る。例えば、S20で使用される所定の閾値は5mmであり得る一方、より粗い近接基準は15mmの閾値を有し得る。
【0090】
所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して複数のトラクトグラム流線クラスタを取得することは、トラクトグラム流線の1つまたは複数の初期セットの少なくとも一部(例えば、すべて)の流線に適用され得る。所定のクラスタリングアルゴリズムの使用は、例えば、前記位置の初期分布または前記位置の完全にランダムな分布に従って、トラクトグラム流線の初期セットの少なくとも一部または複数が得られるトラクトグラム上の位置を決定し得る。所定のクラスタリングアルゴリズムを使用して複数のアトラス流線クラスタを取得することは、依然として、すべてのアトラス流線に適用され得るが、より高い閾値も入力として用いられ得る。
【0091】
これにより、セグメント化の効率が向上する。実際、それぞれの初期トラクトグラム流線クラスタがより粗い近接基準を満たすときに、初期トラクトグラム流線クラスタが初期セットとして選択されるので、選択された1つまたは複数の初期セットは、白質ファイバ束から比較的遠くに位置する(例えば、外れ値トラクトグラム流線)、または特定の関心領域に位置しないトラクトグラム流線を除去するラフな(または粗い)第1のセグメント化である。
【0092】
方法は、1つまたは複数の初期セットの少なくとも一部を取得するために、白質アトラスからバイナリマスクを計算することをさらに含み得る。バイナリマスクは、バイナリ値のボクセルを含み得る。バイナリマスクは、バイナリ値のボクセルのグリッドであり得る。バイナリ値のボクセルは、グリッド内のバイナリ値のボクセルの位置に対応する3次元座標(例えば、x-y-z座標)によって識別され得る体積要素であり得る。バイナリ値のボクセルは、その対応する位置で、前記ボクセルが取り出されたすべての白質アトラス流線からの1つのアトラス流線の一部を横切るとき(例えば、バイナリマスクを白質アトラスに重ねることによって)1の値を、そうでない場合ゼロの値を有し得る。
【0093】
方法はまた、バイナリマスクを適用して、ゼロの値を有するボクセル内の少なくとも1つの点(交差する)、例えば、流線に含まれる点(例えば、流線が3D点のシーケンスである場合)に対応する点、またはボクセルとの交差点での流線のサンプリング(流線が実線の3D線である場合)を含む重心を有するトラクトグラム流線の各初期セットを除外することを含み得る。言い換えれば、方法は、トラクトグラム流線のセットのいずれかのセットに対して帰属させることS20を実行しない。
【0094】
方法は、選択されたトラクトグラムの1つまたは複数の初期セットに、1つまたは複数の追加の(すなわち、P40で既に選択された1つまたは複数の初期セットを含まない)トラクトグラム流線のセットを追加し得る。1つまたは複数の追加のトラクトグラム流線のセットは、取り出された(すべての)トラクトグラム流線の1つまたは複数が、1の値を有するバイナリマスクのバイナリ値ボクセルと交差するときに追加され得る。したがって、方法はまた、前記トラクトグラム流線のセット上で帰属させることS20を実行する。
【0095】
これにより、トラクトグラムのセグメント化の品質がさらに向上する。実際、バイナリマスクの使用は、したがって、トラクトグラム流線の1つまたは複数の初期セットを選択するときP40に、切断されているかまたは考慮されていないことがあるトラクトグラム流線を再び関連付けることを可能にする。
【0096】
方法は、(すなわち、帰属させることS20の後に)少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第1のセット、および少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第2のセットについてトラクトグラム流線の中央値数を取得することをさらに含み得る。さらに、方法は、トラクトグラム流線の数が(トラクトグラム)流線の中央値の数未満のトラクトグラムの位置(またはシード点)で、(前記位置上の)それぞれの補助的な(トラクトグラムまたはアトラス)流線を再度帰属させ(すなわち、1つまたは複数の第1のセットまたは1つまたは複数の第2のセットの一部ではないトラクトグラム流線を関連付け)得る。例では、方法は、1の値を有するバイナリマスクの各ボクセルと交差する流線の中央値数を取得し得る。方法は、流線の中央値の数からボクセルと交差する流線の数を引いたものに等しい数のシード点(位置を示す)を有するボクセル(1の値を有する)に対して再度帰属させることを実行し得る。それぞれの補助(トラクトグラム)流線は、それぞれが少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットに対応する少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第1の補助(S20で割り当てられた第1のセットからの補助)セットを含み得る。さらに、それぞれの補助トラクトグラム流線は、それぞれが少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する、少なくとも1つのトラクトグラム流線の1つまたは複数の第2の補助セットをさらに含み得る。方法は、トラクトグラム流線の中央値の数を再計算し、中央値の数が2回の反復の間で変化しなくなるまで、反復的に再度帰属させることを繰り返し得る。
【0097】
これにより、トラクトグラムのセグメント化の品質がさらに向上する。実際、この方法は、中央値数に関して、低い数の流線を有すると決定されたクラスタ上のより多くのトラクトグラム流線を再度帰属させる。さらに、追加は、中央値未満のいくつかの流線を有するトラクトグラム流線クラスタにのみ集中するため、計算上効率的である。
【0098】
次に、図6図18を参照して、例を説明する。
【0099】
図6は、S10で取得することができるトラクトグラム6100および白質アトラス6200の例を示す。トラクトグラム6100は、拡散MRI上の拡散ボクセルモデルを使用して構築されたトラクトグラム流線6101(例えば、数百万)を含む。白質アトラス5200は、白質の繊維を表すアトラス流線を含む。白質アトラス6200は、この実装において、Tractometer Challengeから取得されている。白質アトラスは、トラクトグラムが計算された複数の患者と、関心のある解剖学的束に属する専門家が手動で選択した流線上に構築される。白質アトラス6200は、単一の患者において取得され、関心領域を使用してセグメント化され、次いで後処理される25束のアトラス流線6201で構成される。
【0100】
図7は、トラクトグラム7200をセグメント化するときに見出される問題のいくつかを示す。例示のために、単一のトラクトグラム流線の離散化(セルグリッド7210として示される)が示され、これは、帯状回の繊維に属するトラクトグラム流線7211を含む。第1の問題7220は、白質/灰質の間違ったラベル付けである。トラクトグラムの離散化(例えば、ボクセルの点として)に関して、この新しい離散点が白質に属することを確認するためのチェックがある。しかしながら、離散点が灰白質としてラベル付けされる場合(例えば、セル7221で)、流線は停止し、したがって、早期に切断された流線になる。第2の問題7230は、ボクセル内のノイズの多い拡散ボクセルモデルであり、実際には、拡散ボクセルモデルのノイズが多すぎる(例えば、ノイズの多いセル7231を含む)場合、流線は従うべき方向を推定することができず、停止し、やはり早期に切断された流線になる。
【0101】
ここで、所定のクラスタリングアルゴリズムについて説明する。
【0102】
所定のクラスタリングアルゴリズムは、類似の形状および近い位置を有する流線を、重心とも呼ばれる単一の平均流線によって表されるクラスタに収集することによって、トラクトグラムの次元数を低減する。図8は、クラスタ8010、8020、およびそれぞれの重心8011および8021を示す。
【0103】
図9は、所定のクラスタリングアルゴリズムの実装のフローチャート9000を示す。所定のクラスタリングアルゴリズムは、2つのステップに詳細化されてよく、第1のステップ(ステップQ10~Q30を実装し得る「クラスタ初期化」と呼ばれる)9100は、ハイレベルの流線離散化を使用して流線をクラスタに大まかに割り当てる(帰属させる)。第2のステップ(「トラクトグラム流線再割り当て」とも呼ばれる)9200は、流線のより細かい離散化であり、各流線は、それが元のクラスタに対応しない場合、異なるクラスタに再割り当てされる。
【0104】
ここで、図10を参照して、クラスタ初期化のステップについて説明する。
【0105】
S1.流線の離散化。
【0106】
この実装では、すべてのトラクトグラム流線は、固定数の点に離散化される。この実装では、固定のポイント数は10に設定されている。
【0107】
S2.流線の割り当て10100。
【0108】
所定のクラスタリングアルゴリズムは、トラクトグラムから初期流線をランダムに選択し、初期流線を初期クラスタに割り当てる(帰属させる)。所定のクラスタリングアルゴリズムはまた、クラスタの重心を更新する。
【0109】
S3.流線の割り当て10200。
【0110】
所定のクラスタリングアルゴリズムは、後続のトラクトグラム流線をランダムに選択する。所定のクラスタリングアルゴリズムは、後続のトラクトグラム流線をすべての既存のクラスタの重心と比較する。比較に使用されるメトリック距離は、最小ダイレクトフリップ距離(MDF)である。このメトリック距離は、流線と現在の重心の、ポイントツーポイントのユークリッド距離の計算に基づいている。メトリックはまた、異なるポイント順序を考慮に入れるために反転して(in a flip way)計算される。メトリックは次の形式である。
【0111】
MDF=min(ddirect(f,c),dflip(f,s))
【0112】
流線と既存のすべての重心の間でMDFメトリックが計算される場合、最も近い重心を識別するために最小のMDFメトリックのみが保持される。
【0113】
S4.閾値に基づく距離テスト。
【0114】
所定のクラスタリングアルゴリズムは、それを所定の閾値と比較することによって、最小のMDFメトリック距離を保持する。所定の閾値は、ユーザによって定義され得る。
【0115】
所定の閾値が満たされる場合10300、所定のクラスタリングアルゴリズムは、最も近い重心に対応するクラスタにトラクトグラム流線を割り当てる。所定のクラスタリングアルゴリズムは、トラクトグラム流線を割り当てるときにクラスタの計算を更新する。
【0116】
所定の閾値が満たされない場合10400、所定のクラスタリングアルゴリズムは、トラクトグラム流線を新しいクラスタに割り当て得る。
【0117】
S5.すべての流線にわたる反復。
【0118】
所定の方法は、トラクトグラム内の次のランダムなトラクトグラム流線によりS3に戻る。このプロセスは、すべてのトラクトグラム流線がクラスタに割り当てられるまで続く。
【0119】
ここで、トラクトグラム流線の再割り当てのステップについて説明する。
【0120】
クラスタ初期化のステップでは、流線のハイレベルの離散化に基づいてクラスタが大まかに決定され、各流線がクラスタに割り当てられている。この方法は、クラスタに新しい流線を追加し、重心の評価を更新する。言い換えれば、方法は、所定の重心計算アルゴリズムを使用して各流線クラスタの重心を再計算する。すべての流線が異なるクラスタに割り当てられると、クラスタの各流線とその重心との間のメトリック距離は、ユーザによって定義された閾値を超えることができる。
【0121】
所定のクラスタリングアルゴリズムは、各流線を離散化し(例えば、流線を表す3D点のシーケンスの1つまたは複数の点を選択し)、各重心は、クラスタ初期化で実行される第1の離散化よりも高い固定数の点に離散化される。この実装では、固定数のポイントは100に設定されている。
【0122】
各クラスタについて、MDFメトリック距離は、考慮されるクラスタに関連付けられた流線の各々とクラスタの重心との間で計算される。次に、MDFメトリックのそれぞれが、以前に定義された閾値と比較される。
【0123】
・ 距離閾値条件が満たされる場合、流線は同じクラスタに留まる。
【0124】
・ 距離閾値条件が満たされない場合、流線はラベル付けされ、クラスタから除去される。
【0125】
言い換えれば、それぞれの流線クラスタに割り当てられた各流線について、および所定の距離に関して、方法は、それぞれの流線クラスタの流線と重心との間のそれぞれの距離値を計算し、それぞれの距離値が所定の閾値を超える場合、それぞれの流線クラスタから流線を割り当て解除する。
【0126】
各クラスタについて、ラベル付けされた流線は、関連付けられたクラスタから除去され、各クラスタの重心が更新される。言い換えれば、方法は、所定の重心計算アルゴリズムを使用して、各流線クラスタの重心を再計算する。
【0127】
クラスタに関連付けられていない(すなわち、割り当てられていない)流線のそれぞれについて:
・ MDFメトリック距離は、流線とすべての既存の重心の間で計算される。
【0128】
・ 最小MDFメトリックは、最も近い重心を識別するために保持される。
【0129】
・ MDFメトリックは、事前定義された閾値と比較される。
【0130】
o MDFメトリックが閾値未満である場合、流線は識別された重心に関連付けられたクラスタに関連付けられる。
【0131】
o MDFメトリックが閾値よりも高い場合、流線から新しいクラスタが作成される。
【0132】
このステップの最後に、すべての流線が再びクラスタに割り当てられる。
【0133】
ステップ5。
【0134】
プロセスは反復的であり、すべての流線がクラスタに割り当てられ、定義された閾値に基づいて距離基準を満たすまで、ステップ2-3-4が計算される。したがって、所定のクラスタリングアルゴリズムの繊維再割り当ては、流線のより細かい離散化を使用して、別のクラスタに誤って配置されたであろう流線を再割り当てする。
【0135】
ここで、上述した所定のクラスタリングアルゴリズムを使用した方法の実装について説明する。
【0136】
本方法の実装のフローチャートを示す図11を参照する。
【0137】
トラクトグラムとアトラスの遠方(far)クラスタリング。
【0138】
方法は、入力トラクトグラムおよび白質アトラス(例えば、帯状回を含む)を所定のクラスタリングアルゴリズムでクラスタリングする11100。この方法は、15mmの距離閾値を使用して、重要な数の流線を有するクラスタを生成する。方法は、任意の種類の適切なユニットを適用し得る。
【0139】
遠方プルーニング11200。
【0140】
この方法は、トラクトグラムの各クラスタ重心と、MDFメトリック距離を有する白質アトラスの各クラスタ重心との間の距離を計算する。したがって、この方法は、トラクトグラム流線、例えば、関心のないもの、または選択された白質束と全く関係ないもの(例えば、形状または位置の観点から)をアトラスから粗く除去する。
【0141】
トラクトグラムの各クラスタ重心について、この方法は、白質束から最も近いクラスタ重心を識別するためにMDF距離の最小値を決定し、また、発明者の場合では、ユーザによって20mmと定義された閾値と比較される。
【0142】
閾値条件が満たされる場合、方法は、トラクトグラムの選択されたクラスタ重心に関連付けられた流線を保持する。したがって、方法は、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットに対応する第1のセットを取得する。
【0143】
閾値条件が満たされない場合、この方法は、トラクトグラムが対象となる白質束の形状および位置から遠すぎると見なし、次いで破棄される。
【0144】
したがって、この方法は、選択された白質束を用いて、例えば、関心のないもの(例えば、形状または位置の点で遠い)をアトラスから粗く除去する。
【0145】
バイナリマスクの追加11300
この方法は、白質アトラスを使用してバイナリマスクを作成する。少なくとも1つのアトラス流線を含む各ボクセルは、1に設定され、それ以外の場合は0に設定される。すべての点がバイナリマスク内にあり、方法によって保持されていないトラクトグラムのクラスタ重心に関連付けられたすべての流線は、自動的に残りのトラクトグラムに追加される。したがって、方法は、前のステップによって切断され、したがって忘れられ得るが、また束にも属することができた流線を含む。
【0146】
クラスタリングの終了11400。
【0147】
この方法は、以前に選択された残りの流線と白質アトラスを再びクラスタリングする。この実装では、新しいクラスタリングは、より制約的な距離の閾値である5mmを使用する。
【0148】
プルーニングの終了11500
この方法は、次に近接プルーニング11500を実行し、これは遠方プルーニングステップ11200に類似するが距離閾値(この実装では8mm)が縮小されており、アトラスからの白質束に形状および位置の非常に近い類似性を有する入力トラクトグラムからの流線のみを保持することを可能にする。
【0149】
並行して行う検討11600
この方法は、次に、1つまたは複数の第2のセットとして早期の切断のために前のステップで保持されなかったであろう流線を追加する。
【0150】
近接クラスタリングステップ11400において保持されていない残りのトラクトグラムのすべての重心は、特別な方法でアトラス重心と比較される。
【0151】
トラクトグラムの残りの各クラスタ重心について、方法は、考慮された重心と、最も近いものであると識別されたアトラスのクラスタ重心との間の比較を実行する。比較は、以下のように実行される。
【0152】
トラクトグラムのクラスタ重心の長さが計算され、次に、最も近いものであると識別されたアトラスのクラスタ重心について報告される。アトラスの識別されたクラスタ重心は、トラクトグラムのクラスタ重心の長さに一致するように、第1の点から中間点まで切断される。
【0153】
次いで、アトラスの切断されたクラスタ重心は、必要な固定数の点(この実装では100個の点)に一致するように離散化される。次に、考慮されるトラクトグラムのクラスタ重心とアトラスの切断されたクラスタ重心との間でMDF距離メトリックが評価される。次に、MDF距離がユーザ定義閾値(この実装では8mm)と比較される。
【0154】
閾値条件が満たされる場合、トラクトグラムの選択されたクラスタ重心に関連付けられた流線が保持される。したがって、本方法は、少なくとも1つの束の少なくとも1つのアトラス流線のそれぞれのセットのそれぞれの断面部分に対応する第2のセットを取得する。
【0155】
閾値条件が満たされない場合、アトラスの切断されたクラスタ重心は、その長さがクラスタトラクトグラムの考慮された重心の長さと一致させるため、第2の点から中間点まで切断される。
【0156】
このプロセスは、閾値条件が満たされ、クラスタリングされたトラクトグラムの重心に関連付けられたトラクトグラム流線が、トラクトグラムの1つまたは複数の第2のセットとして流線の最終セットに追加されるまで、またはクラスタリングされたアトラス重心の終わりに達し、閾値条件が満たされなくなるまで続く。
【0157】
図12は、バイナリマスクの追加を示す。
【0158】
図12は、トラクトグラム流線12000および白質アトラス12200に含まれる対応する流線(すなわち、帯状回を表す)を示す。遠方プルーニングの後、トラクトグラム流線12300の保持された第1のセットは、元のトラクトグラム流線の断面部分のみを表し得る(トラクトグラム流線と交差する他のトラクトグラム流線を有するために失われる)。本方法は、白質アトラスからバイナリマスク12400を計算する。バイナリマスク12400は、灰色化されたボクセルが、1本のアトラス流線の一部と交差するときに、1の値を表すことを示す。方法は、12300で失われたトラクトグラムの断面部分を追加するためにこれを考慮に入れてよい。したがって、この方法は、バイナリマスク12600によって保持されるアトラス流線の重心に近いトラクトグラム流線を追加する。
【0159】
図13は、本方法による出力を示す。図13は、帯状回の入力トラクトグラム流線13100およびアトラス流線13200を示す。近接プルーニングの結果は、流線13300の第1のセットである。結果として得られた第2のセットを有する第1のセットは、13400に示される。13500は、セグメント化された流線のすべてを示す。
【0160】
図14は、本方法の評価を示す。
【0161】
前述のアルゴリズム(パイプライン14100に示される)は、Tractometer Challengeのデータに実装され、テストされ得る。抽出されたアトラスは、白質の25本の束(すなわち、白質繊維のセットを表す流線)を含む。
【0162】
最初の検証は、目視チェックで実現される。近接プルーニングステップの出力には少量の流線が含まれており、入力として使用される帯状回アトラスの形状を見直すことは困難である。
【0163】
より定量的な結果のために、方法は、グラウンドトゥルース14200と比較して発見された束の品質を評価するために、いくつかのメトリックで評価され得る。Aはグラウンドトゥルース束を示し、Bは対応する第1のセットまたは第2のセットを示す。オーバーラップはAとBの共通部分である。オーバーリーチはAを除くB割るAの体積である。
【0164】
指標は次のとおりである。
【0165】
・ オーバーラップ(OL)14300:グラウンドトゥルース束内のボクセルの総数に対する、束およびグラウンドトゥルース束Bに関連付けられた少なくとも1つの有効な流線によって横断されるボクセルの割合。(再現率(Recall)、
【0166】
【数4】
【0167】
に等しい)
・ オーバーリーチ(OR):グラウンドトゥルース束内のボクセルの総数に対する、束に関連付けられた少なくとも1つの有効な流線によって横断されるグラウンドトゥルース束の体積外のボクセルの分数。
【0168】
・ 適合率:束に関連付けられたボクセルの総数に対する、束に関連付けられた少なくとも1つの有効な流線によって横断されるグラウンドトゥルース束の体積内のボクセルの割合(
【0169】
【数5】
【0170】
または
【0171】
【数6】
【0172】
)。
【0173】
・ F1スコア:束がグラウンドトゥルース束をどの程度うまく予測しているか(
【0174】
【数7】
【0175】
)。
【0176】
図15は、結果として生じるメトリックを示す。提案された最適化されたパイプラインの最終的なセグメント化は、はるかに多くの流線を含み、帯状回の腹側部分はセグメント化されている。
【0177】
図15はグラフ15100において、遠方プルーニングステップおよびバイナリマスクの追加の後、セグメント化された束がそれぞれ0.71および0.63という非常に高い平均オーバーラップおよびオーバーリーチを有することを示す(表1520も参照されたい)。近接プルーニングステップの後、オーバーラップおよびオーバーリーチは約0.27および0.29に低下する。しかし、並行して行う検討ステップの後、平均オーバーリーチは約0.34であるのに対し、平均オーバーラップは約0.38に達する。この新しいパイプラインは、オーバーラップが平均してオーバーリーチよりも高い値を持つ最終的なセグメント化を行うことを可能にする。
【0178】
第2の最適化
図16は、トラクトグラム流線の数を改善するために使用される第2の最適化のフローチャート16100を示す。
【0179】
入力トラクトグラムは、最初に、白質アトラスおよび前述の最適化された白質セグメント化パイプラインを使用してセグメント化される。一旦最終的なセグメント化が取得されると、いくつかの束分析が実現される。束分析は、最終セグメント化のバイナリマスク内のボクセルあたりの流線の中央値数を取得することからなる。次に、新しいシード点が、最終セグメント化のバイナリマスクの各ボクセル内に配置される。バイナリ内に配置されたシードの数は、以前に評価された流線の中央値の数から、考慮されたボクセル内の現在の流線の数を引いた数に等しい。ボクセルを通過する流線の数が評価された流線の中央値の数を超える場合、シード点はそれらのボクセルに配置されない。
【0180】
新しい計算された流線が最終的なセグメント化に追加され、この新しい流線のセットに対して方法が再度実行される。
【0181】
停止基準のための異なるテストの後、ボクセル内の流線の中央値数が2回の反復の間で変化しないときに、プロセスが停止されるべきであることが見出された。
【0182】
これは、アトラスに含まれるものに近づくために、最終的なセグメント化で得られた流線の数を増加させる。本方法は中央値数で機能するので、停止基準により、小さな束でも機能する。
【0183】
図17は停止基準を示す。この方法は、シード点、例えば、1000を超えるシード点を追加し得る。この実装では、方法は、4回の反復17100の後にシード点の追加を停止し得る。
【0184】
第2の最適化の評価。
【0185】
視覚的検証を使用して、方法によってセグメント化の品質を評価することが可能である。図18は、帯状回の束で取得されたスクリーンショット18100を示し、18回の反復の後、最終的なセグメント化が最適化された白質セグメント化アルゴリズムの出力よりもはるかにグラウンドトゥルースに近いことを示す。
【0186】
表18200は、各束の最終反復後のメトリックを示す。平均オーバーリーチは約0.38に達するのに対し、平均オーバーラップは約0.61に達する。オーバーラップは、初期の遠方プルーニングおよびバイナリマスクの追加後に得られたセグメント化とほぼ同じレベルに達するが、オーバーリーチは、初期の遠方プルーニングおよびバイナリマスクの追加後に得られた値をはるかに下回る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【外国語明細書】