(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098972
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ドーパミンD3/D2受容体調節化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 295/135 20060101AFI20240717BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20240717BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240717BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C07D295/135 CSP
A61K31/495
A61P25/18
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024001696
(22)【出願日】2024-01-10
(31)【優先権主張番号】63/479,530
(32)【優先日】2023-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】310008859
【氏名又は名称】リヒター ゲデオン ニュイルヴァーノシャン ミューコェデー レースヴェーニュタールシャシャーグ
【氏名又は名称原語表記】Richter Gedeon Nyrt.
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルザ,イシュトバーン
(72)【発明者】
【氏名】エーレシュ,ヤーノシュ
(72)【発明者】
【氏名】メンツィンガー,バーリント
(72)【発明者】
【氏名】ボッドナールネ・ディーク,シルビア
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC50
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA18
4C086ZC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】統合失調症を含めた、疾患及び状態の治療における薬剤として有用である化合物を含む、医薬組成物を提供する。
【解決手段】式(I):
(R
1は、直鎖C
1~C
3アルキルである)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、
R
1は、直鎖C
1~C
3アルキルである)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
R1がCH3である、請求項1に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項3】
R1がCH2CH3である、請求項1に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項4】
R1がCH2CH2CH3である、請求項1に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項5】
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素;
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(メトキシメチル)-N-メチル尿素;及び
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-(プロポキシメチル)尿素からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項6】
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素である、請求項1に記載の化合物、又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項7】
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素の薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
薬学的に許容される担体と組み合わせて、治療有効量の請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む、医薬組成物。
【請求項10】
統合失調症に罹患している対象において統合失調症を治療する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項11】
医薬としての使用のための、請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項12】
統合失調症の治療における使用のための、請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【請求項13】
統合失調症の治療用の医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2023年1月11日出願の米国特許仮出願第63/479,530号の利益を主張し、その内容を参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、ドーパミンD2及びD3受容体の活性を調節する化合物、かかる化合物を製造する方法、それらの化合物を含有する組成物、及びそれらの化合物を用いる治療の方法に関係する。
【背景技術】
【0003】
ドーパミン神経伝達物質系の機能不全は、統合失調症及び情動性又は認知性の機能障害を含めた精神神経障害の病態において観察することができる(Sokoloff、P.ら:Nature、1990年、347.146;Schwartz、J.-C.ら:Clin.Neuropharmacology.、1993年、16巻、295頁)。ドーパミンの作用は、ドーパミンD1受容体ファミリー(すなわち、D1及びD5)又はD2受容体ファミリー(すなわち、D2、D3及びD4)に属する少なくとも5つの異なるドーパミン受容体によって媒介される。D3受容体は、中枢ドーパミン系(central dopaminergic system)に特徴的な分布を有する。ドーパミンD2受容体は、脳内に広範に分布し、多数の生理機能及び病理的状態に関与する。ドーパミンD2アンタゴニストは、例えば、統合失調症治療薬として用いられる。しかしながら、D2受容体の大量のアンタゴニズムによって、望まれない副作用、例えば、錐体外路の運動症状、精神運動の鎮静、認知機能の鈍麻などが生じる。D3受容体を優先的に標的とする統合失調症治療薬は、統合失調症の治療において治療介入に成果を挙げている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sokoloff、P.ら:Nature、1990年、347.146
【非特許文献2】Schwartz、J.-C.ら:Clin.Neuropharmacology.、1993年、16巻、295頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
当技術分野において、D3/D2受容体の選択性を有する改良された化合物が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
いくつかの実施形態では、本発明は、式(I)
【0007】
【化1】
(式中、
R
1は、C
1~C
3アルキルである)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がCH3である、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がCH2CH3である、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がCH2CH2CH3である、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素;
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(メトキシメチル)-N-メチル尿素;及び
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-(プロポキシメチル)尿素;又は薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素;又は薬学的に許容されるその塩である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、薬学的に許容される塩N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素である。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、治療有効量の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む、医薬組成物を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本開示は、統合失調症を治療するための方法を提供し、本方法は、治療有効量の式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を対象に投与する工程を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、医薬としての使用のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本開示は、統合失調症の治療における使用のための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、統合失調症の治療用の医薬の製造のための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、ドーパミンD3受容体及びドーパミンD2受容体の活性を調節する化合物を記載している。
【0021】
本明細書に開示される化合物は、任意の置換基において又は本明細書の式中に2回以上存在する、1つ以上の変数を含むことができる。それぞれの存在における変数の定義は、別の存在におけるその定義と無関係である。さらに、置換基の組合せは、かかる組合せが安定化合物をもたらす場合にのみ、許容される。安定化合物は、反応混合物から単離することができる化合物である。
【0022】
定義
本明細書で使用される特定の用語は、以下に詳述する通り、次の定義を参照することを意図している。
【0023】
本明細書及び所期の特許請求の範囲において使用される場合、別段文脈で明確に指示しない限り、単数形(「a」、「an」及び「the」)は、複数の対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「化合物」への参照には、単一の化合物並びに1つ以上の同じ若しくは異なる化合物が含まれる。「薬学的に許容される担体」の参照は、単一の薬学的に許容される担体並びに1つ以上の薬学的に許容される担体などを意味する。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、特段の指定がない限り、次の用語は、示した意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「C1~C3アルキル」とは、別段規定がない限り、1、2又は3個の炭素原子を有する飽和の炭化水素鎖基を指す。「C1~3アルキル」の代表例には、メチル、エチル、及びn-プロピルが含まれる。
【0026】
ある場合には、ある部分の炭素原子数は、接頭辞「Cx~Cy」により示され、xは、最小値であり、yは、置換基中の炭素原子の最大数である。したがって、例えば、「C1~C6アルキル」は、1~6個の炭素原子を含むアルキル置換基を意味し、「C1~C3アルキル」は、1~3個の炭素原子を含むアルキル置換基を意味する。
【0027】
語句「医薬組成物」とは、医学的使用における投与に適した組成物を指す。
【0028】
語句「薬学的に許容される塩」とは、過度の毒性、刺激性、及びアレルギー性反応などがなく、妥当な利益/危険比に見合う、健全な医学的判断の範囲内で、ヒト及び下等動物の組織と接触して用いるのに適する、塩を指す。
【0029】
用語「安定した」とは、製造を可能にするのに十分な安定性を有する及び本明細書中で詳述される目的のために有用であるのに十分な期間、本化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0030】
語句「治療有効量」とは、ある特定の対象又は対象集団において治療用に投与された場合、治療されている状態若しくは障害の症状のうちの1つ以上の発生を予防する又は治療されている状態若しくは障害の症状のうちの1つ以上をある程度まで緩和するのに十分である、化合物、又は薬学的に許容されるその塩の量を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療している」、及び「治療」は、疾患及び/又はそれらの付随する症状を緩和する又は抑止する方法を指す。
【0032】
化合物
本開示の化合物は、本明細書に記載された一般式(I)を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)
【0034】
【化2】
(式中、
R
1は、C
1~C
3アルキルである)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がC1アルキルである、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がC2アルキルである、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がC3アルキルである、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1が、CH3、CH2CH3、及びCH2CH2CH3からなる群から選択される、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がCH3である、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がCH2CH3である、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示は、R1がCH2CH2CH3である、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本開示は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素である式(I)の化合物;又は薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0043】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素である。
【0044】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素の薬学的に許容される塩である。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物;又は薬学的に許容されるその塩を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(メトキシメチル)-N-メチル尿素である。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(メトキシメチル)-N-メチル尿素である。
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(メトキシメチル)-N-メチル尿素の薬学的に許容される塩である。
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物;又は薬学的に許容されるその塩を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-(プロポキシメチル)尿素である。
【0049】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-(プロポキシメチル)尿素である。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、本化合物は、N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-(プロポキシメチル)尿素の薬学的に許容される塩である。
【0051】
本開示の化合物及び中間体を、ACD/Name 2021.1.3(ファイルバージョンN15E41、Build 123232、2021年7月7日)ソフトウェアプログラムを用いることによって及び/又はCHEMDRAW(登録商標)Professional v.20.1.1.125の一部としてStruct=Name命名アルゴリズムを用いることによって命名した。
【0052】
式(I)の模範的な化合物には、それだけには限らないが、以下の表1に示す化合物、及び薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。
【0053】
【0054】
式(I)の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で用いることができる。式(I)の化合物は、塩基性官能基又は酸性官能基のいずれか、又は両方を含むことができ、望まれる場合、適切な酸又は塩基を用いることにより、薬学的に許容される塩に変換することができる。
【0055】
模範的な化合物を作製する方法
本開示の化合物は、化合物を調製することができる手段を例証する次の合成スキーム及び方法に関連してより良く理解され得る。本開示の化合物は、様々な合成手順によって調製することができる。代表的な合成手順は、それだけに限らないが、スキーム1~2に示される。変数R1は、本明細書、例えば、要約に詳述される通り定義される。
スキーム
【0056】
【0057】
スキーム1に示す通り、R1が本明細書で定義する通りである、式(I)の化合物は、例えば、国際公開第2010/070370号などの当該技術分野で公知の方法に従って調製することができる式(1)の化合物から調製することができる。したがって、式(1)の化合物は、市販のパラホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド(メタノール安定剤を含む飽和水溶液)、及びR1が本明細書に記載した通りである、式(2)の適切なアルコールで処理することができ、これらは、市販されている、又は当技術分野で公知の方法に従って周囲温度で還流して、調製することができる。反応は、通常、適当な溶媒、例えば、アルコール(2)又はテトラヒドロフランなどで1~168時間行って、式(I)の化合物が生成される。
【0058】
【0059】
スキーム2に示す通り、式(I)の化合物は、式(1)の化合物から調製することができる。したがって、式(1)の化合物は、周囲温度で市販の1-ヒドロキシメチルイミダゾールで処理して、適当な溶媒、例えば、酢酸及びテトラヒドロフランの混合物中で1~24時間還流して、式(3)の化合物を生成することができる。式(3)の化合物を、R1が本明細書に記載の通りである、式(2)の適切なアルコールを用いて、水酸化カリウムのような適切な塩基又は硫酸若しくはメタンスルホン酸のような適切な酸の存在下で処理して、式(I)の化合物を生成することができる。反応を、通常、周囲温度で行って、適当な溶媒、例えば、テトラヒドロフラン又はトルエン中で1~24時間還流する。
【0060】
詳細な手順を、合成例のセクションにおいて示す。別段記載がない限り、出発材料及び試薬は、市販されている、又は化学文献に記載されている方法を用いて、市販の材料から当業者により調製することができる。
【0061】
医薬組成物
医薬品として使用される場合、本開示の化合物は、医薬組成物の形態で投与することができる。かかる組成物は、薬学的に許容される担体と一緒になって、治療有効量の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含むことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体と組み合わせて、治療有効量の式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む、医薬組成物が提供される。
【0063】
使用の方法
式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、及び式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物は、統合失調症に罹患している対象に投与することができる。用語「投与」とは、化合物を対象と接触させる方法を指す。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示は、医薬としての使用のための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、及び式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本開示は、統合失調症の治療における使用のための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、及び式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示は、統合失調症の治療用の医薬の製造のための、式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩、及び式(I)の化合物、又は薬学的に許容されるその塩を含む医薬組成物の使用を提供する。
【実施例0067】
次の実施例は、例示的な目的のために用いることができ、発明の範囲を限定するとみなすべきでない。
【0068】
すべての試薬は、市販グレードのもので、別段の記載がない限り、さらに精製せずにそのままを用いた。市販の無水溶媒を、不活性雰囲気下で行った反応のために用いた。別段規定がない限り、試薬グレードの溶媒を、他のすべての場合において用いた。1H NMRスペクトルの化学シフト(δ)を、テトラメチルシラン(δ0.00)又は内部参照として、適切な残留溶媒ピーク、すなわち、CHCl3(δ7.27)に対する百万分率(ppm)で報告した。
【0069】
次の略語は、別段規定がない限り、示されている意味を有する:
【0070】
【0071】
合成例
[実施例1]
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(エトキシメチル)-N-メチル尿素
N-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N’-メチル尿素5.0g(12.5mmol)、エタノール250mL、酢酸2.5mL及びパラホルムアルデヒド3.75g(125mmol)の混合物を70℃で40時間撹拌した。反応混合物を、真空中で濃縮した。残留物を、アセトンにより溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーにかけた。粗物質を、ジエチルエーテルと混合し、ろ過して、表題化合物を生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.88-1.02 (m, 2H), 1.08 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 1.14-1.28 (m, 3H), 1.31-1.40 (m, 2H), 1.69-1.81 (m, 4H), 2.31-2.39 (m, 2H), 2.42-2.61 (br m, 4H), 2.79 (s, 3H), 2.90-3.04 (br m, 4H), 3.35 (q, J = 7.0 Hz, 2H), 3.31-3.44 (m, 1H), 4.63 (s, 2H), 6.03 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.10-7.18 (m, 1H), 7.25-7.34 (m, 2H); LC-MS (ESI) m/z 471.3 (M+H)+.
【0072】
[実施例2]
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(メトキシメチル)-N-メチル尿素
N-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N’-メチル尿素1g(2.4mmol)、メタノール20mL、酢酸0.5mL及び37%ホルムアルデヒド溶液(およそ10%メタノールを含む水溶液)2mL(26.8mmol)の混合物を85℃で20時間撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮した。残留物を、Phenomenex Kinetex(登録商標)5μm C18 100Å AXIA Packed LC Column(150mm×21.2mm)における分取HPLC;3分間にわたるイソクラティックの、水+0,1%ジエチルアミン(A)中の20mmol/L NH4HCO3;水+0,1%ジエチルアミン(A)及びメタノール(B)中の20mmol/L NH4HCO3(A)の16分間にわたる40~50%グラジエントにより40℃で流速21.2mL/分で精製して、表題化合物を生成した。1H NMR (400 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δppm 0.88-1.06 (m, 2H), 1.15-1.28 (m, 3H), 1.31-1.40 (m, 2H), 1.68-1.82 (m, 4H), 2.31-2.39 (m, 2H), 2.46-2.59 (br m, 4H), 2.79 (s, 3H), 2.90 -3.05 (br m, 4H), 3.12 (s, 3H), 3.25-3.45 (m, 1H), 4.59 (s, 2H), 6.05 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 7.11-7.17 (m, 1H), 7.27-7.34 (m, 2H); LC-MS (ESI) m/z 457.3 (M+H)+.
【0073】
[実施例3]
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-(プロポキシメチル)尿素
【0074】
[実施例3A]
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-(1H-イミダゾル-1-イル)メチル]-N-メチル尿素
N-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N’-メチル尿素3.0g(7.25mmol)、(1H-イミダゾル-1-イル)メタノール1.070g(10.9mmol)、酢酸9mL(200mmol)及びテトラヒドロフラン70mLの混合物を80℃で18時間撹拌した。ジクロロメタン(100mL)及び飽和NaHCO3水溶液(50mL)を混合物に加えた。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した。ろ液を、真空中で濃縮した。残留物を、ジエチルエーテル(200mL)及びメタノール(5mL)の混合物と混合し、ろ過して、表題化合物を生成した。LC-MS(ESI):m/z 493.3(M+H)+。
【0075】
[実施例3B]
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-(プロポキシメチル)尿素
メタンスルホン酸87mg(0.9mmol)の1-プロパノール273mg(4.55mmol)中溶液に、トルエン20mL及びN’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-[(1H-イミダゾル-1-イル)メチル]-N-メチル尿素443mg(1mmol)を室温で加え、反応混合物を90℃で2時間撹拌した。酢酸エチル(30mL)及び飽和NaHCO3水溶液(30mL)を混合物に加えた。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで脱水し、ろ過した。ろ液を、真空中で濃縮した。残留物を、ジクロロメタン/メタノール(97:3)で溶出するシリカゲルのクロマトグラフィーにかけた。粗物質を、n-ペンタンと混合し、ろ過して、表題化合物を生成した。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) d ppm 0.84 (t, J =7.2 Hz, 3H), 0.88-1.03 (m, 2H), 1.13-1.29 (m, 3H), 1.30-1.40 (m, 2H), 1.48 (sxt, J = 7.0 Hz, 2H), 1.69-1.81 (br m, 4H), 2.31-2.40 (m, 2H), 2.43-2.60 (br m, 4H), 2.79 (s, 3H), 2.90-3.05 (br m, 4H), 3.26 (t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.31-3.46 (m, 1H), 4.64 (s, 2H), 6.02 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.11-7.17 (m, 1H), 7.27-7.33 (m, 2H); LC-MS (ESI) m/z 485.3 (M+H)+.
【0076】
【0077】
参考例1
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N-メチル-N-プロピル尿素
表題化合物を、国際公開第2005012266号に記載されている通り調製した。
【0078】
【0079】
参考例2
N’-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N,N-ジメチル尿素(CAR)
表題化合物を、国際公開第2005012266号に記載されている通り調製した。
【0080】
【0081】
参考例3
N-[(1r,4r)-4-{2-[4-(2,3-ジクロロフェニル)ピペラジン-1-イル]エチル}シクロヘキシル]-N’-メチル尿素(DCAR)
表題化合物を、国際公開第2005012266号に記載されている通り調製した。
【0082】
動的溶解度(Kinetic Solubility)試験
【0083】
【0084】
動的溶解度の決定のために、各化合物の10mM(5mM、1mM)DMSO原液3mLを、PBS295mL(pH7.4)を含有する96ウェルプレート(Millipore Multiscreen(登録商標)HTS-PCF Filter Plate、MilliporeSigma、St.Louis、MO、USA)のウェルにピペットで移した。懸濁液を300rpmのオービタルシェーカーで2時間振り混ぜた後、本懸濁液を、真空ろ過(Multiscreen(登録商標)Vacuum Manifold; MilliporeSigma)で清澄化した。ろ過ステップの直後、ろ液160mLをアセトニトリル40mLに移して、飽和溶液からの化合物の沈殿を回避した。研究化合物の濃度を、研究化合物の同じバッチから作製された外部標準を用いることにより、HPLC-UV-(MS)検出によって決定した。結果を表2に示す。
【0085】
熱力学的溶解度試験(37℃、4時間)
熱力学的溶解度を測定する場合:通常、本溶液200~400μLを、固形試験物質(n=5)1~2mgに加えた。得られた混合物/過飽和溶液を、37℃で4時間(溶液平衡まで)振り混ぜ、Milliporeマルチスクリーンフィルタープレート(0.45μm)でろ過する。ろ液の濃度を、5点校正に基づいてLC/UV/MSにより決定する。(固形材料が水性試験媒体に完全に溶解した場合、その結果は最小値と考えるべきである。)。結果を表2に示す。
【0086】
熱力学的溶解度試験(RT、24時間)
熱力学的溶解度を測定する場合:通常、本溶液200~400μLを、固形試験物質(n=5)1~2mgに加えた。得られた混合物を、室温(RT)で24時間(溶液平衡まで)振り混ぜ、Milliporeマルチスクリーンフィルタープレート(0.45μm)でろ過した。ろ液の濃度を、5点校正に基づいてLC/UV/MSにより決定した。(固形材料が水性試験媒体に完全に溶解した場合、その結果は最小値と考えるべきである。)。結果を表2に示す。
【0087】
【0088】
本開示の実施例の速度論的及び熱力学的溶解度データによって、参照化合物の溶解度と比較して、それらの溶解度が予想外に改善されていることが示される。
【0089】
生物アッセイ
インビトロ生物学研究では、次の略語を一般的に用いた:BSAはウシ血清アルブミン、cAMPは環状アデノシン一リン酸、DMEMはダルベッコ改変イーグル培地、DMSOはジメチルスルホキシド、EDTAはエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩、EGTAはエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸、FBSはウシ胎児血清、G418はジェネテシン、IBMXは3-イソブチル-1-メチルキサンチン、Trisはトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンである。
【0090】
ヒトD2L受容体を用いた試験
競合的結合アッセイにおける[3H]ラクロプリドを用いたヒトD2L受容体の親和性の決定
組換えヒトD2L受容体を発現する培養CHO-K1細胞(DRD2L cAMP Hunter(商標)、Gi細胞株、Eurofins DiscoverX社、Fremont、CA、USA)を、4×(v/v)緩衝液(50mM Tris、5mM MgCl2、1mM EGTA、pH7.4、25℃)中で、Dounce組織グラインダーを用いてホモジナイズし、40,000×gで、4℃で10分間遠心分離した。上澄みを除去し、ペレットを4×緩衝液(v/v)に再懸濁し、遠心分離した。得られたペレットを、上記緩衝液に体積12.5mL/g 原重量で再懸濁した。次いで、膜標本をアリコートし、-70℃で保存した。
【0091】
試験化合物を、DMSOで連続的に希釈し、続いて、結合緩衝液(50mM Tris、5m MgCl2、5mM KCl、1mM CaCl2、120mM NaCl、1mM EDTA)中で5%DMSO(v/w)に希釈した。結合緩衝液(50μL)中の5×濃縮化合物を、96ウェルディープウェルプレート(BRAND、Wertheim、Germany)に移した。アリコートした膜標本を解凍し、結合緩衝液中で1回洗浄した。同じ緩衝液中で、ウェル当たりタンパク質10μgを、(試験化合物の結合阻害又は全結合をそれぞれ決定するために)試験化合物の存在下又は非存在下で、250μLの体積で25℃で120分間2nM[3H]ラクロプリド(PerkinElmer社、Waltham、MA、USA)でインキュベートした。非特異的結合(NSB)を、D2受容体のアンタゴニストである10μMハロペリドールの存在下で決定した。インキュベーション後、サンプルを、Filtermate(商標)harvester(PerkinElmer社)を用いてUniFilter(登録商標)GF/Bプレート(PerkinElmer社)でろ過し、氷冷結合緩衝液1mLで4回洗浄した。プレートを40℃で1時間乾燥させ、Microscint(商標)-20シンチレーションカクテル(PerkinElmer社)40μLを各ウェルに加えた。放射能を、MicroBeta2(登録商標)マイクロプレートカウンター(PerkinElmer社)を用いて決定した。
【0092】
非特異的結合を差し引いて、特異的結合を得、これをビヒクル処理したサンプルに正規化し、置換%値に変換した。GraFit 6.0(Erithracus Software社、Horley、UK)をIC50値の決定及び曲線当てはめに用いた。IC50値(すなわち、特異的結合を50%抑制する化合物の濃度)を、シグモイダルフィッティング(sigmoidal fitting)による濃度-変位曲線から決定した。阻害定数(Ki)を、チェン-プルソフ方程式を用いて算出した:Ki=IC50/[1+([L]/KD)](式中、[L]は、放射性リガンド濃度、KDは、受容体に対する標識リガンドの親和性である)。KDを、別個の飽和実験から決定した。pKi値を、mol/リットルで表されるKi値の負の対数を算出することによって導き出した。実験を3回行い、結果を表3に示す。これらの結果から、本開示の例は、ヒト組換えD2L受容体の高親和性リガンドであることが示される。
【0093】
【0094】
[3H]スピペロンを用いた競合結合アッセイにおけるヒトD2L受容体の親和性の決定
ヒト組換えD2L受容体を発現するCHO-K1細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄した。細胞をプレートからすり落とし、1000×gで遠心分離した。細胞を、Teflon(登録商標)ペッスルホモジナイザーを用いて、25mM Tris-HCl、pH=7.4、6mM MgCl2、1mM EDTA、10mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)を含有する緩衝液中で破砕した。得られた懸濁液を1000×gで遠心分離した。上澄みを回収し、41,000×gで遠心分離した。上澄みを捨て、ペレットを上記の緩衝液に再懸濁した。次いで、膜標本をアリコートし、-70℃で保存した。
【0095】
96ウェルプレート中、最終反応体積222μLに1% DMSOで、50mM Tris-HCl、1.4mMアスコルビン酸、0.001% BSA、150mM NaCl(pH7.4)を含有するインキュベーション緩衝液中で、試験化合物の存在下又は非存在下で0.16nM[3H]スピペロン(PerkinElmer社)を用いて25℃で120分間、アリコートした膜標本をインキュベートした。非特異的結合(NSB)を、10μMハロペリドール(Sigma-Aldrich社)の存在下で決定した。インキュベーション後、サンプルをUniFilter(登録商標)GF/Cプレート(PerkinElmer社)でろ過し、洗浄し、Microscint(商標)-20シンチレーションカクテルを加えた。放射能を、MicroBeta2(登録商標)マイクロプレートカウンター(PerkinElmer社)を用いて決定した。
【0096】
シンチレーション数から、NSBを差し引いて、特異的結合を得、これをビヒクル処理したサンプルに正規化し、置換%値に変換した。IC50値を、MathIQ(商標)(ID Business Solutions Ltd.、Surrey、UK)を用いた非線形最小二乗回帰分析により決定した。Ki値を、被検化合物の観察されたIC50、アッセイに使用した放射性リガンドの濃度、及びリガンドのKDの既存の値(historical value)を用いたチェン-プルソフ式を用いて算出した。pKi値を、mol/リットルで表されるKi値の負の対数を算出することによって導き出し、表4に示す。これらの結果から、本開示の例は、[3H]スピペロンを放射性リガンドとして用いる場合、ヒト組換えD2L受容体の高親和性リガンドであることが示される。
【0097】
【0098】
環状アデノシン一リン酸検出を用いたヒトD2L受容体のアゴニズムの特徴付け
ヒトD2L受容体におけるアゴニスト活性を、cAMP Giキット(Cisbio/PerkinElmer社)を用いて、均一系時間分解蛍光法(HTRF(登録商標):homogenous time-resolved fluorescence)により、ヒトD2L受容体(Eurofins DiscoverX社、Fremont、CA、USA)を発現するCHO-K1細胞においてcAMPレベルを測定することによりアッセイした。ヒトD2L受容体を発現するCHO-K1細胞を、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン抗マイコ溶液、及びG418(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)800μg/mLを補充したHamのF12培地で培養し、CO2 5.0%を含有する加湿雰囲気下で37℃に維持した。cAMP測定のために、凍結保存した細胞を解凍し、PathHunter(登録商標)AssayComplete(商標)Cell Plating 2(CP2)試薬(Eurofins DiscoverX社)中で、半分の面積の白壁の96ウェルプレートにウェル当たり10,000細胞で播種し、CO2 5.0%を含む加湿雰囲気下で、37℃で終夜インキュベートした。cAMP測定前に、CP2試薬を細胞から除去し、100μM IBMXを補充した、20μLの化合物又はビヒクル含有アッセイ緩衝液(140mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl2、2mM CaCl2、10mM 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタン-1-スルホン酸(HEPES)、10mMグルコース、pH7.4)と置き換え、周囲温度で20分間インキュベートした。0.5μMフォルスコリン(Eurofins DiscoverX社)により周囲温度でさらに30分間インキュベートした後、細胞刺激を、溶解緩衝液で希釈した検出試薬(cAMP-d2 20μL及び抗cAMPクリプテート20μL、Cisbio/PerkinElmer社)を加えることにより停止した。周囲温度で60分間インキュベートした後、レーザー励起が337nmの標準HTRF(登録商標)設定を用いたPHERAstar FSマルチモードリーダー(BMG Labtech社、Ortenberg、Germany)によって、時間分解蛍光シグナルを定量した。結果は、アクセプター蛍光シグナル(A665nm)及びドナー蛍光シグナル(A620nm)の比×104から算出し、次式を用いてΔF%値として表した:100×(サンプル比-ネガティブコントロール比)/ネガティブコントロール比。実験では、すべての処理を複数のウェルで並行して測定し、平均ΔF%値をさらなる分析のために用いた。アゴニスト活性の値は、フォルスコリンにより刺激されたcAMP蓄積の阻害のパーセンテージとして算出し、同じ実験で試験した最大有効濃度のドーパミンによって誘発された反応に対して正規化した。すべての算出を、Microsoft Excel(登録商標)(Microsoft社 、Redmond、WA、USA)を用いて行った。表5に示すpEC50値(フォルスコリンにより刺激されたcAMP蓄積を50%阻害するアゴニスト濃度の負の対数、mol/リットルで表される)を、GraphPad Prism(GraphPad社、San Diego、CA、USA)を用いて、下方漸近線をゼロに制限し、4パラメーターのシグモイド曲線を濃度-効果データに当てはめることにより得た。これらの結果から、本開示の例が、ヒト組換えD2L受容体のGタンパク質共役シグナル伝達経路の強力なアゴニストであることが示される。
【0099】
【0100】
ヒトドーパミンD2L受容体に対するβ-アレスチンリクルートの測定
タグ化ヒトD2L受容体及びタグ化β-アレスチン-2(Eurofins DiscoverX社、Fremont、CA、USA)を発現するPathHunter(登録商標)CHO-K1細胞を、壁面が白く底が透明な96ウェル組織培養プレートに、細胞当たり90μLのAssayComplete(商標)Cell Plating 2(CP2)試薬(Eurofins DiscoverX社)中に、ウェル当たり20,000細胞の密度で播種した。プレートを、37℃でCO2 5%を含む加湿雰囲気下で終夜インキュベートした。20~24時間後、CP2試薬中の及び2.2%DMSO含有する試験化合物又はビヒクル20μLを、細胞に加え、それらを37℃で90分間インキュベートした。次いで、PathHunter(登録商標)検出試薬(Eurofins DiscoverX社)をウェル当たり55μL加え、プレートを25℃で60分間インキュベートし、その後、PHERAstar(登録商標)FSマルチモードプレートリーダー(BMG Labtech社、Ortenberg、Germany)を用いて発光を検出した。生データを、基底値を上回る刺激パーセントに変換した。値を、30μMドーパミンによるβ-アレスチンリクルートの最大刺激パーセントにさらに変換した。EC50値を、Origin(登録商標)7.5ソフトウェア(OriginLab Corporation、Northampton、MA、USA)を用いて、シグモイダルフィッティングにより2連で実行した、少なくとも6種の濃度の濃度-反応曲線から算出し、刺激が最大半減であるアゴニストの濃度として定義した。pEC50値を、mol/リットルで表した、EC50値の負の対数として算出し、表6に示す。この結果から、本開示の例が、ヒト組換えD2L受容体のGタンパク質非依存性シグナル伝達経路の強力なアゴニストであることが示される。
【0101】
【0102】
ヒトD3受容体を用いた試験
[3H]ラクロプリドを用いた競合的結合アッセイにおけるヒトD3受容体の親和性の決定
組換えヒトD3受容体(DRD3、GenBank ID U32499、Euroscreen Fast社、Brussels、BEから購入)を発現する細胞培養(CHO-K1)を、4×緩衝(v/v)溶液(15mM Tris、2mM MgCl2、0.3mM EDTA、1mM EGTA、pH7.4、25℃)中でDounce組織粉砕機を用いてホモジナイズし、4℃で25分間40,000×gで遠心分離した。上澄みを除去し、ペレットを4×(v/v)緩衝液に再懸濁し、遠心分離した。本プロセスを、2回繰り返し、ペレットを保存緩衝液(75mM Tris、12.5mM MgCl2、0.3mM EDTA、1mM EGTA、250mMスクロース、pH7.4、25℃)に12.5mL/g 元の細胞重量で再懸濁した。次いで、膜標本をアリコートし、-70℃で保存した。
【0103】
化合物を、DMSO及び結合緩衝液(50mM Tris、5mM MgCl2、5mM KCl、1mM CaCl2、120mM NaCl、1mM EDTAを含有する)に希釈し、各溶液50μLを、5%DMSO-緩衝液中で最終濃度5倍でディープウェルプレート(BRAND)に移した。アリコートした膜標本を解凍し、結合緩衝液中で1回洗浄した。同じ緩衝液中で、アッセイ当たりタンパク質3.3μgを、試験化合物の存在下又は非存在下で、96ウェルディープウェルプレート(BRAND)中に約2.7nM[3H]ラクロプリド(PerkinElmer社)を用いて、250μLの体積で、25℃で120分間インキュベートした。非特異的結合(NSB)を、10μMハロペリドールの存在下で決定した。DMSOの最終濃度は、すべての反応において1%(v/v)であった。インキュベーション後、サンプルを、Filtermate(商標)harvester(PerkinElmer社)を用いてUniFilter(登録商標)GF/Bプレート(PerkinElmer社)でろ過し、氷冷結合緩衝液4×1mLで洗浄した。プレートを40℃で1時間乾燥させ、Microscint(商標)-20シンチレーションカクテル(PerkinElmer社)40μLを各ウェルに加えた。放射能を、MicroBeta2(登録商標)マイクロプレートカウンター(PerkinElmer社)を用いて決定した。
【0104】
生シンチレーション数を用いて、NSBを差し引いて、特異的結合を得、これをビヒクル処理したサンプルに正規化し、置換パーセント値に変換した。GraFit 6.0(Erithracus Software社、Horley、UK)を曲線フィッティング及び算出のために用いた。IC50値(すなわち、特異的結合を50%抑制する化合物の濃度)を、シグモイダルフィッティングによる濃度-変位曲線から決定した。阻害定数(Ki)を、チェン-プルソフ方程式を用いて算出した:Ki=IC50/[1+([L]/KD)](式中、[L]は、放射性リガンド濃度、KDは、受容体に対する標識リガンドの親和性である)。KDを、別個の飽和実験から決定した。表7に示したpKi値を、mol/リットルで表されるKi値の負の対数を算出することによって導き出した。すべての実験において、サンプルを3連で実行した。これらの結果から、本開示の例は、ヒト組換えD3受容体の高親和性リガンドであることが示される。
【0105】
【0106】
[3H]スピペロンを用いた競合的結合アッセイにおけるヒトD3受容体の親和性の決定
ヒト組換えD3受容体を発現するCHO-K1細胞をPBSで洗浄した。細胞をプレートからすり落とし、1000×gで遠心分離した。細胞を、Teflon(登録商標)ペッスルホモジナイザーを用いて、25mM Tris-HCl(pH=7.4)、6mM MgCl2、1mM EDTA、10mM PMSFを含有する緩衝液中で破砕した。懸濁液を1000×gで遠心分離した。上澄みを回収し、41,000×gで遠心分離した。上澄みを捨て、ペレットを上記の緩衝液に再懸濁した。膜標本をアリコートし、-70℃で保存した。
【0107】
96ウェルプレート中、最終反応体積222μLに1%DMSOで、50mM Tris-HCl、1.4mMアスコルビン酸、0.001%ウシ血清アルブミン、及び150mM NaCl(pH7.4)を含有するインキュベーション緩衝液中で、試験化合物の存在下又は非存在下で0.7nM[3H]スピペロン(PerkinElmer社)を用いて37℃で120分間、アリコートした膜標本をインキュベートした。非特異的結合(NSB)を、25μM(S)-(-)-スルピリド(Sigma Aldrich社)の存在下で決定した。インキュベーション後、サンプルをGF/Cフィルタープレート(PerkinElmer社)でろ過し、洗浄し、Microscint(商標)-20シンチレーションカクテルを加えた。放射能を、MicroBeta2(登録商標)マイクロプレートカウンター(PerkinElmer社)において決定した。
【0108】
生シンチレーション数から、NSBを差し引いて、特異的結合を得、これをビヒクル処理したサンプルに正規化し、置換%値に変換した。IC50値を、MathIQ(商標)(ID Business Solutions Ltd.、Surrey、UK)を用いた非線形最小二乗回帰分析により決定した。Ki値を、被検化合物の観察されたIC50、アッセイに使用した放射性リガンドの濃度、及びリガンドのKDの既存の値(historical value)を用いたチェン-プルソフ式を用いて算出した。表8に示したpKi値を、mol/リットルで表されるKi値の負の対数を算出することによって導き出した。これらの結果から、本開示の例は、[3H]スピペロンを放射性リガンドとして用いる場合、ヒト組換えD3受容体の高親和性リガンドであることが示される。
【0109】
【0110】
環状アデノシン一リン酸検出を用いたヒトD3受容体のアゴニズムの特徴付け
ヒトD3受容体におけるアゴニスト活性を、cAMP Giキット(Cisbio/PerkinElmer社)を用いた均一時間分解蛍光法(HTRF)により、アデニルシクラーゼV(ACV)を安定的に共発現させている組換えヒトD3受容体(BioXtal、Saint-Felix、France)を発現するHEK293細胞(Gedeon Richterにより開発された細胞株)においてcAMPレベルによりアッセイした。組換えヒトD3受容体及びACVを発現しているHEK293細胞を、10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン抗マイコ溶液、1%ピルベート、100μg/mL G418(Thermo Fisher Scientific社)、及び60μg/mLハイグロマイシンBを補充したDMEM中で培養し、CO2 5%を含有する加湿雰囲気下で37℃に維持した。cAMPを測定する前に、細胞を、Versene(Thermo-Fisher Scientific社)で剥離し、壁面が白く半分の面積の96ウェルマイクロプレートに、アッセイ緩衝液(140mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl2、2mM CaCl2、10mM 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタン-1-スルホン酸(HEPES)、10mMグルコース、pH7.4)にウェル当たり15,000細胞の密度で20μLの体積で懸濁した。アッセイ緩衝液を、100μM IBMX(Sigma Aldrich社、St Louis、MO、USA)で補充した。ウェル当たり10μLで試験化合物(4×濃縮した)又はビヒクル(DMSO)を加えた後、細胞をアッセイ緩衝液又は様々な濃度の試験化合物で20分間インキュベートした。1.5μMフォルスコリン(DMSO最終濃度は、0.3%であった。)により周囲温度でさらに30分間インキュベートした後、細胞刺激を、溶解緩衝液(PerkinElmer社)に希釈した検出試薬(cAMP-d2 20μL及び抗cAMPクリプテート20μL)を加えることにより停止した。周囲温度で60分間インキュベートした後、レーザー励起が337nmの標準HTRF設定を用いたPHERAstar FSマルチモードリーダー(BMG Labtech社、Ortenberg、Germany)によって、時間分解蛍光シグナル(TRF)を定量した。
【0111】
結果を、アクセプター蛍光シグナル(A665nm)及びドナー蛍光シグナル(A620nm)×104の比から算出し、次式を用いてΔF%値として表した:100×(サンプル比-ネガティブコントロール比)/ネガティブコントロール比。すべての実験において、複数のウェルを並行して測定し、平均ΔF%値をさらなる分析に用いた。アゴニスト活性の値は、フォルスコリンにより刺激されたcAMP蓄積の阻害のパーセンテージとして算出し、同じ実験で試験した最大有効濃度のドーパミンによって誘発された反応に対して正規化した。すべての算出を、Excel(Microsoft社、Redmond、WA、USA)を用いて行った。pEC50値(mol/リットルで表される、フォルスコリンにより刺激されたcAMP蓄積を50%阻害するアゴニスト濃度の負の対数)を、GraphPad Prism(GraphPad Software社、San Diego、CA、USA)を用いて、下方漸近線をゼロに制限し、4パラメーターのシグモイド曲線を濃度-効果データに当てはめることにより得て、表9に示した。この結果から、本開示の例が、ヒト組換えD3受容体のGタンパク質依存性シグナル伝達経路の強力なアゴニストであることが示される。
【0112】
【0113】
ヒトドーパミンD3受容体に対するβ-アレスチンリクルートの測定
タグ化ヒトD3受容体及びタグ化β-アレスチン-2(Eurofins DiscoverX社、Fremont、CA、USA)を発現するPathHunter(登録商標)CHO-K1細胞を、壁面が白く底が透明な96ウェル組織培養プレートに、90μLのAssayComplete(商標)Cell Plating 2(CP2)試薬(Eurofins DiscoverX社)中に、ウェル当たり25,000細胞の密度で播種し、37℃でCO2 5%で加湿雰囲気下で終夜インキュベートした。20~24時間後、2.2%DMSO含有するCP2試薬中の試験化合物又はビヒクル20μLを、細胞に加え、細胞を37℃で90分間インキュベートした。インキュベーション後、PathHunter(登録商標)検出試薬(Eurofins DiscoverX社)をウェル当たり55μL加え、プレートを25℃で60分間インキュベートし、その後、PHERAstar(登録商標)FSマルチモードプレートリーダー(BMG Labtech社、Ortenberg、Germany)を用いて発光を検出した。
【0114】
生データを最初に、基底値を上回る刺激%に変換した。基底値を上回る刺激%を、1μMドーパミンによるβ-アレスチンリクルートの最大刺激%にさらに変換した。EC50値を、Origin(登録商標)7.5ソフトウェア(OriginLab Corporation、Northampton、MA、USA)を用いて、シグモイダルフィッティングにより2連の、少なくとも6種の濃度の濃度-反応曲線から算出し、刺激が最大半減であるアゴニストの濃度として定義した。表10に示すpEC50値を、mol/リットルで表した、EC50値の負の対数として算出した。この結果から、本開示の例が、ヒト組換えD3受容体のGタンパク質非依存性シグナル伝達経路の非常に強力なアゴニストであることが示される。
【0115】
【0116】
5-HT2A受容体アッセイ
競合的結合アッセイにおけるヒト5-HT2A受容体に対する親和性の決定
受容体膜を、ヒト5-HT2A受容体を安定的に発現しているCHO-K1組換えAequoScreen(登録商標)細胞株(PerkinElmer社、Waltham、MA、USA)から調製した。細胞を、緩衝液A(15mM Tris-HCl、pH7.5、2mM MgCl2、0.3mM EDTA、1mM EGTA)に4×体積で懸濁し(細胞1g - 緩衝液4mL)、Dounceホモジナイザーでホモジナイズした。粗膜画分を、緩衝液Aでの洗浄工程によって40,000×g、25分間の連続した2回の遠心分離により分離した後に、回収した。最終ペレットを、緩衝液B(75mM Tris-HCl、pH7.5、12.5mM MgCl2、0.3mM EDTA、1mM EGTA、250mMスクロース)に0.5mL緩衝液中で湿潤細胞重量80mgの濃度で再懸濁し、分注し、ドライアイス上で瞬間凍結した。タンパク質含量を、標準としてウシ血清アルブミン(BSA)を含む、スルフヒドリル試薬存在下でビシンコニン酸アッセイを用いて決定した。
【0117】
結合実験では、ウェル当たりの膜標本のタンパク質15μg及び放射性リガンドとして1nM塩酸ケタンセリン、[エチレン-3H](PerkinElmer社)を、インキュベーション緩衝液(50mM Tris、0.3%BSA、pH7.4)中で、化合物又はビヒクル(DMSO、最終濃度1%(v/v))でインキュベートした。非特異的結合(NSB)を、1μM ミアンセリン塩酸塩(Tocris社、Bristol、UK)の存在下で決定した。サンプルを、最終体積250μLで25℃で15分間インキュベートした。結合反応を、0.5%(v/v)のポリエチレンイミン(PEI、蒸留水に溶解)に少なくとも1時間予め浸漬したUniFilter(登録商標)GF/Cプレートを用いて、Filtermate(商標)ハーベスター(PerkinElmer社)を通して急速ろ過することにより終了させた。フィルタープレートを、氷冷洗浄緩衝液(50mM Tris、pH7.4)0.5mLで3回洗浄した。洗浄したフィルタープレートを、40℃で60分間乾燥させ、Microscint(商標)-20シンチレーションカクテル(PerkinElmer社)40μLを各ウェルに加えた。放射能を、MicroBeta2(登録商標)マイクロプレートカウンター(PerkinElmer社)を用いて決定した。
【0118】
非特異的結合を生のシンチレーションカウントから差し引いて、特異的結合を生成し、これをビヒクル処理したサンプルに正規化し、置換%値に変換した。IC50値(すなわち、特異的に結合した放射性リガンドの50%を変位する化合物の濃度)を、Origin(登録商標)7.5.ソフトウェア(OriginLab(登録商標)Corporation、Northampton、MA、USA)を用いたシグモイダルフィッティングにより、濃度-変位曲線から決定した。表11に示すKi値(すなわち、阻害定数)を、チェン-プルソフ式を用いて算出した:Ki=IC50/[1+([L]/KD)](式中、[L]は、用いた放射性リガンド濃度であり、シンチレーションカウントにより決定され、KDは、別の実験において決定された標識リガンドの受容体に対する親和性である)。競合的結合アッセイは、2つの独立した実験において、最低6種の濃度で行い、各濃度を3回繰り返した。表11に示したpKi値を、mol/リットルで表されるKi値の負の対数を算出することによって導き出した。これらの結果から、本開示の例は、ヒト組換え5-HT2A受容体のリガンドであることが示される。
【0119】
【0120】
蛍光Ca2+検出を用いたヒト5-HT2A受容体におけるアンタゴニズムの特徴付け
培養下でヒト組換え5-HT2A受容体及びGα16(Euroscreen Fast社、Brussels、BEより購入)を発現しているCHO-K1細胞を、培地として90%FBS/10%DMSOを用いて、確立されたプロトコールに従って凍結保存した。実験前に、細胞を解凍し、10%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン抗マイコ溶液、及び1%ピルベートを補充したPowerCHO(商標)2培地(Lonza社、Basel、Switzerland)に再懸濁した。細胞を、96ウェルマイクロプレートにウェル当たり40,000細胞の密度で播種し、CO2 5.0%を含有する加湿雰囲気下で、37℃で終夜インキュベートした。実験当日、プレートを、プレート洗浄器(Elx405UCWS、Biotek社、Winooski、VT、USA)を用いて、アッセイ緩衝液(140mM NaCl、5mM KCl、2mM MgCl2、2mM CaCl2、10mM 2-[4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-イル]エタン-1-スルホン酸(HEPES)、10mMグルコース、2mMプロベネシド、pH7.4)で洗浄し、次いで、アッセイ緩衝液中の4μM Fluo-4 AM(Thermo Fisher Scientific社)をウェル当たり50μL加えた。色素を負荷した後(60分、37℃、暗所)、プレートを、プレート洗浄器を用い、アッセイ緩衝液で洗浄しウェル当たり50μLの体積を残したままにし、次いで、ビヒクル(アッセイ緩衝液中3%DMSO)又は試験化合物(最終濃度の3×)を含有する、ウェル当たり50μLのアッセイ緩衝液を加え、細胞を37℃でさらに10分間インキュベートした。
【0121】
最終的なDMSO濃度は、すべての処理について1%(v/v)であった。これを達成するために、一連のDMSO原液を、すべての試験化合物から調製した。原液を、-20℃で保存し、アッセイ緩衝液にさらに希釈して、測定直前に所望の最終濃度を得た。5-HTを脱イオン限外ろ過水に溶解することにより、5-HTの原液(10mM)を調製した。
【0122】
ベースライン及びアゴニスト誘発[Ca2+]i(細胞内Ca2+)の変化を、FlexStation(登録商標)II 96ウェルプレートリーダー(Molecular Devices社、San Jose、CA、USA)を用いてモニターした。FlexStation(登録商標)IIについての設定は、蛍光イメージングの場合次の通りであった:励起485nm、発光525nm、カットオフフィルター515nm。蛍光測定を、37℃で行い、ランタイムは40秒、サンプリング間隔は1.36秒であった。励起及び検出を、プレートの底を通して行った。ベースラインを、20秒間記録し、その後、50μLの3×濃縮アゴニスト(EC80の5-HT)溶液又はアッセイ緩衝液/ビヒクルを、取り付けられたピペッターを用いて、155μLに対応する高さで75μL/秒ですべてのウェルに加えたとき、アゴニスト刺激を行った。蛍光を、さらに20秒間モニターした。
【0123】
化合物を、測定ソフトウェア(SoftMax(登録商標)Pro 5.2、Molecular Devices社、San Jose、CA、USA)の一体型曲線フィッティングモジュールで各プレートで決定された通り、EC80 5-HT濃度に対して評価した。
【0124】
結果を、ΔF/F値として表し、Fはアゴニスト投与前及び/又は投与直後の平均蛍光として定義されるベースライン蛍光であり、ΔFは、アゴニスト投与後の蛍光の増加であり;ΔF=Fmax-Fとして算出し、Fmaxは、リード間の最大蛍光17~29であり、Fは、蛍光リードの平均2~13であった。すべての実験では、すべての処理を、複数のウェルで並行して測定し、平均ΔF/Fを、さらなる分析のために用いた。平均ΔF/F値を、次の式を用いて阻害%(I%)値に変換した:I%=100×[1-((ΔF/Fcompound-ΔF/Fvehicle)/(ΔF/Fcontrol-ΔF/Fvehicle))]。試験化合物のIC50値を、SoftMax(登録商標)Proソフトウェア(Molecular Devices社)を用いて、阻害%データにフィットさせた4-パラメーターS字濃度効果曲線から決定した。表12に示したpIC50値のさらなる算出を、上記のソフトウェアによってmol/リットルとして表されるIC50値の負の対数を算出することによって導き出した。これらの結果から、本開示の例は、ヒト組換え5-HT2A受容体のアンタゴニストであることが示される。
【0125】
【0126】
ラットにおけるフェンシクリジン誘発性運動過剰
自発運動活性(Spontaneous locomotor activity)を、Experimetria Ltd.(Budapest、HU)により製造された6-チャンネル活動モニターを用いて測定した。装置は、水平歩行行動を検出するために、ケージの底に近い、壁面に30対の光電管を2倍装備したアクリル製ケージ(48.5cm×48.5cm×40cm)で構成された。飼育反応を検出するために、ケージの反対側の側面に沿って、異なる高さ(6.5cm、12cm、18cm及び23cm)で追加の光電管アレイ(30対)を設置した。光電管のビームが切れたことにより引き起こされる信号を、運動解析ソフトウェア(Experimetria社)により処理し、1Hzのサンプリング周波数で動物の空間位置を決定し、ラットが歩行するのに費やした時間をコンピュータで算出した。
【0127】
試験化合物を、治療群当たり動物10匹で、試験動物に経口又は皮下で投与した。これらの研究では、体重190~210グラムの雄のハーラン-ウィスターラット(Toxi-Coop社、Budapest、HU)を用いた。試験化合物又はビヒクルを経口投与した後、動物を、個別に30分間活動モニターに慣らした。試験化合物を皮下投与した場合では、ラットを、最初に活動モニターに15分間慣れさせ、次いで、試験化合物又はビヒクルで処置し、その後、さらに15分間慣れさせるために活動モニターに戻した。慣れさせた後、ラットを、皮下にフェンシクリジン塩酸塩(PCP)で処置し、測定時間(1時間)中直ちに実験装置に戻した。
【0128】
データを、GraphPad(登録商標)Prism(登録商標)9ソフトウェア(GraphPad社、San Diego、CA、USA)を用いて解析した。統計評価を、活動(歩行に費やした時間)の1時間後に行った。薬効を、分散分析(ANOVA、又は適切な場合、WelchのANOVA)を用い、その後、Dunnettの多重比較検定を用いて評価した。適切な場合、ED50値を、線形回帰分析から得られた阻害パーセントのデータから決定した。ED50値を、表13に示す。
【0129】
【0130】
上記のデータ(表13)によって、本開示の実施例の化合物が、ラットにおけるフェンシクリジン誘発性運動過剰での良好かつ強力な薬力学的効果/活性を示したことが示され、それらが、実質的な統合失調症治療薬の有効性を有し得るということが示される。
【0131】
マウスにおけるアポモルフィンによって誘発された登はん(climbing)及び嗅ぐ動作
体重24~29gの雄性CD1(登録商標)マウス(Envigo社、Horst、NL)を実験に用いた(処置群当たりn=12)。登はん及び嗅ぐ動作を、円筒形のケージ内での目視観察によって測定した。ケージは、高さ15cm、直径12cmであり、直径2mm及び1cm間隔の垂直の金属棒の壁が、平滑なプラスチックの表面にはめ込まれていた。
【0132】
ビヒクル又は被験化合物の皮下投与直後、動物をケージに入れて10分間慣らした。10分間の習慣化期間終了時、アポモルフィン塩酸塩1.5mg/kgを皮下投与した。処理後、動物を円筒形のケージに戻した。登はん及び嗅ぐ挙動の測定は、アポモルフィン処置の10分後(その処置から11分)に開始し、16分間続いた。全行程、登はん挙動を次の通りスコア化した:足4本が床に四つん這いである(0点)、前足が鉄棒に接触している(1点)、足4本が鉄棒をつかんでいる(2点)。動物はまた、次の動作に従って、常同症の尺度として、反復的な嗅ぐ動作を評定した:嗅ぐ動作(0点)、中程度の嗅ぐ動作でケージの壁又は床にほとんど鼻を接触させない(1点)、一定の嗅ぐ動作で、絶え間なく鼻を接触させる(2点)。
【0133】
データを、GraphPad Prism 9ソフトウェア(GraphPad社)を用いて分析した。両挙動のスコアを、個体毎に集計し(あり得る最高スコア32点)、群平均を算出した。薬効を、アポモルフィンによって誘発された挙動の抑制パーセントとして算出した。抑制パーセンテージのデータから、用量反応曲線をプロットし、ED50を単純線形回帰によってED50値をコンピュータで算出した。
【0134】
【0135】
上記のデータ(表14)によって、本開示の例の化合物が、マウスにおけるアポモルフィンによって誘発された登はん及び嗅ぐ動作において良好かつ強力な薬力学的効果/活性を示すことが示され、それらは、実質的な統合失調症治療薬の有効性を有し得るということが示されている。
【0136】
前述の詳細な説明及び添付の例が、単に例示的なものであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物により単独で定義される、本開示の範囲において限定されるものと解釈するべきではないということが理解される。開示された実施形態への様々な変更及び修正は、当業者には明らかである。それだけに限らないが、本開示の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、配合物及び/又は使用の方法に関するものを含めた、かかる変更及び修正は、その精神及び範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中で引用したすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のために参照によりその全体を本明細書に組み込む。