(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098982
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】粘着剤層付偏光フィルム、画像表示パネル及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240717BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240717BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240717BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240717BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240717BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240717BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20240717BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240717BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240717BHJP
G02B 1/16 20150101ALI20240717BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/1333
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
G09F9/30 349E
G09F9/00 309Z
C09J7/38
C09J133/00
B32B7/023
B32B27/00 M
G02B1/16
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059902
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2019180092の分割
【原出願日】2019-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019052205
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 智之
(72)【発明者】
【氏名】小野 寛大
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟士
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄祐
(57)【要約】
【課題】異形部を有する粘着剤層付偏光フィルムであって、インセル型液晶パネルに適用する場合にも、異形クラックの発生を抑制することができ、かつ静電気ムラを抑制できる帯電防止機能付きの粘着剤層付偏光フィルムを提供すること。
【解決手段】偏光子および前記偏光子の片面または両面に保護フィルムを有する偏光フィルム、導電層並びに粘着剤層をこの順に有する粘着剤層付偏光フィルムであって、前記粘着剤層付偏光フィルムは、矩形以外の異形部を有し、前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびイオン性化合物(B)含有する粘着剤組成物より形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子および前記偏光子の片面または両面に保護フィルムを有する偏光フィルム、導電層並びに粘着剤層をこの順に有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付偏光フィルムは、上面視形状において矩形以外の異形部を有し、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物より形成されており、
前記導電層の表面抵抗値は1×107~1×1012Ω/□であることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項2】
前記導電層が、イオン性界面活性剤系、導電性ポリマーおよび導電性微粒子から選ばれるいずれか少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項3】
偏光子および前記偏光子の片面または両面に保護フィルムを有する偏光フィルム、導電層並びに粘着剤層をこの順に有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付偏光フィルムは、上面視形状において矩形以外の異形部を有し、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物より形成されており、
前記導電層が、カーボンナノチューブを含有することを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項4】
前記導電層の表面抵抗値が、1×107~1×1012Ω/□であることを特徴とする請求項3記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層の表面抵抗値が、1×108~1×1012Ω/□であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項6】
前記導電層の厚みが1μm以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項7】
前記イオン性化合物(B)が、アルカリ金属塩及び/または有機カチオン-アニオン塩であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレート、並びに、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及びアミド基含有モノマーから選ばれる1種以上の官能基含有モノマーを含有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項9】
前記イオン性化合物(B)は、カチオン成分の分子量が210以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項10】
前記カチオン成分がリチウムイオンであることを特徴とする請求項9記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、前記イオン性化合物(B)を0.1~10重量部含有することを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項12】
前記保護フィルムが、セルロース樹脂フィルムおよび(メタ)アクリル樹脂フィルムから選ばれるいずれか1種であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項13】
前記偏光子の厚みが10μm以下であることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項14】
前記偏光フィルムは、偏光子および前記偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムであることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項15】
前記片保護偏光フィルムにおいて、前記偏光子の他の片面に前記導電層を有することを特徴とする請求項14記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項16】
前記片保護偏光フィルムにおける前記偏光子の他の片面に前記偏光子に直接形成されている厚み10μm以下の透明層を介して前記導電層を有することを特徴とする請求項15のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項17】
前記透明層が、イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマーを含有する形成材の硬化物であることを特徴とする請求項16記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項18】
前記粘着剤層は、85℃におけるクリープ値が120μm以下であることを特徴とする請求項1~17のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の粘着剤層付偏光フィルムを有することを特徴とする画像表示パネル。
【請求項20】
液晶層およびタッチセンサー部を有するタッチセンシング機能内蔵液晶セルに、前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層が貼り合わされていることを特徴とする請求項19記載の画像表示パネル。
【請求項21】
請求項19または20に記載の画像表示パネルを有することを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、矩形以外の異形部を有する粘着剤層付偏光フィルムに関する。また、本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムが適用された画像表示パネル、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示パネル、例えば、液晶表示装置等に使用される液晶パネルは、通常、一対の透明基板間に配された液晶層から形成される液晶セルの両側に粘着剤層を介して偏光フィルムが積層されている。一方、画像表示パネルの製造時、前記粘着剤層付偏光フィルムを液晶セルに貼り付ける際には、粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層から離型フィルムを剥離するが、当該離型フィルムの剥離により静電気が発生する。このようにして発生した静電気は、例えば、液晶表示パネル内部の液晶層の配向に影響を与え、不良を招くようになる。静電気の発生は、例えば、偏光フィルムの外面に帯電防止層(導電層)を形成することにより抑えることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、タッチセンシング機能付液晶表示装置において、表示不良や誤作動の発生を低減するため、表面抵抗値が1.0×109~1.0×1011Ω/□の帯電防止層を有する偏光フィルムを液晶層の視認側に配置することが提案されている。また、粘着剤層に帯電防止剤としてイオン性化合物を添加することで、静電気の発生を抑制できることも知られている。
【0004】
一方、近年、スマートフォンやカーナビゲーションシステムでは、異形のインセル型液晶表示装置が増加しており、偏光フィルムについても当該表示装置に合わせて異形のものが用いられている。特許文献2には、偏光フィルムを加工して、矩形以外の異形を有する偏光フィルムを製造する方法が開示されている。特許文献3には、偏光フィルムに用いられる透明保護フィルムに異形性を有する無機粒子を含有させることで、偏光フィルムの異形打抜き性と打抜き後の異形の偏光フィルムのヒートサイクル試験後のクラック耐久性を改善することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-105154号公報
【特許文献2】特開2017-151191号公報
【特許文献3】特開2017-097111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の帯電防止層を有する偏光フィルムによれば、静電気発生を抑制することができる。しかし、帯電防止層またはイオン性化合物を含有する粘着剤層を設けた粘着剤層付偏光フィルムであっても、静電気ムラを十分に抑制することができるものではなかった。また、異形の粘着剤層付偏光フィルムにあっては、帯電防止層またはイオン性化合物を含有する粘着剤層を設けた粘着剤層付偏光フィルムでは、異形部に生じる異形クラックを十分に抑制することができるものではなかった。特に、イオン性化合物を粘着剤層に含有し、異形部を有する粘着剤層付偏光フィルムをインセル型液晶パネルに適用する場合には、前記粘着剤層にイオン性化合物を多量添加する必要があり、その結果として、異形部に生じる異形クラックが悪化することがわかった。
【0007】
本発明は、異形部を有する粘着剤層付偏光フィルムであって、インセル型液晶パネルに適用する場合にも、異形クラックの発生を抑制することができ、かつ静電気ムラを抑制できる帯電防止機能付きの粘着剤層付偏光フィルムを提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムが適用された画像表示パネル、画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤層付偏光フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、
偏光子および前記偏光子の片面または両面に保護フィルムを有する偏光フィルム、導電層並びに粘着剤層をこの順に有する粘着剤層付偏光フィルムであって、
前記粘着剤層付偏光フィルムは、矩形以外の異形部を有し、
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物より形成されていることを特徴とする粘着剤層付偏光フィルム、に関する。
【0011】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおいて、前記導電層が導電性ポリマーを含有することが好ましい。
【0012】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおいて、前記導電層の厚みが1μm以下であることが好ましい。
【0013】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおいて、前記イオン性化合物(B)は、カチオン成分の分子量が210以下であることが好ましい。さらには、前記カチオン成分はリチウムイオンであることが好ましい。
【0014】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおいて、前記イオン性化合物(B)は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して0.1~10重量部を含有されていることが好ましい。
【0015】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおいて、前記保護フィルムがセルロース樹脂フィルムおよび(メタ)アクリル樹脂フィルムから選ばれるいずれか1種の場合に好適である。また、前記偏光フィルムにおける前記偏光子の厚みは10μm以下であることが好ましい。
【0016】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおいて、前記偏光フィルムは、偏光子および前記偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムを用いることができる。前記片保護偏光フィルムでは、前記偏光子の他の片面に前記導電層を有することが好ましい。
【0017】
前記片保護偏光フィルムは、前記偏光子の他の片面に前記偏光子に直接形成されている厚み10μm以下の透明層を介して前記導電層を有することができる。前記透明層としては、イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマーを含有する形成材の硬化物を用いることができる。
【0018】
前記粘着剤層付偏光フィルムにおいて、前記粘着剤層は、85℃におけるクリープ値が120μm以下であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、前記粘着剤層付偏光フィルムを有することを特徴とする画像表示パネル、に関する。前記画像表示パネルは、液晶層およびタッチセンサー部を有するタッチセンシング機能内蔵液晶セルに、前記粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層が貼り合わされているもの適用できる。
【0020】
また本発明は前記画像表示パネルを有することを特徴とする画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、粘着剤層と偏光フィルム間に導電層を有し、かつ、粘着剤層にはイオン性化合物を含有しており、導電層と粘着剤層の両層によって帯電防止性能を向上することができる。そのため、粘着剤層中のイオン性化合物の量を低減したとしても、前記両層の帯電防止機能によって、粘着剤層付偏光フィルムをインセル型液晶パネルに適用した場合にも、静電気ムラを抑制できる。また、本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、矩形以外の異形部を有するものであるが、前記のように、粘着剤層中のイオン性化合物の量を低減することができるため、異形クラックの発生を抑制することができる。
【0022】
また、前記イオン性化合物は、カチオン成分の分子量が小さいほど異形クラックへの悪影響が小さいことが分かった。特に、イオン性化合物のカチオン成分としてリチウム塩を用いた場合には異形クラックの抑制効果に優れていることが分かった。さらには、異形クラックの抑制効果は、偏光フィルムとして、偏光子の片面にのみ保護フィルムを有する片保護偏光フィルムを用いる場合に有利であることも分かった。片保護偏光フィルムは、薄型化、低コスト化の観点からも有利である。また前記カチオン成分は分子量が小さいほど、静電気ムラを抑制する点からも好ましいことが分かった。
【0023】
一方、上記のように偏光フィルムとして、片保護偏光フィルムを用いた場合には、前記導電層が偏光子に直接形成されるため、加湿環境下において、導電層の帯電防止剤が偏光子内部に侵入することで偏光子の端部が脱色する上に、前記粘着剤層に含まれるイオン性化合物の偏光子への偏析によって、粘着剤層の帯電防止機能が低下するおそれのあることも分かった。このように片保護偏光フィルムを用いる場合には、偏光子に透明層を介して導電層を設けることによって、導電層が偏光子に直接的に影響を及ぼさないようにすることで、加湿環境下における、偏光子の端部の脱色を抑制することができる。
【0024】
以上のように、本発明の粘着剤層付偏光フィルムによれば、片保護偏光フィルムを用いた場合においても、偏光子の光学信頼性の劣化を抑制でき、薄型で光学信頼性が良好で、かつ長期に渡って帯電防止性に優れる粘着剤層付偏光フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの一例を示す断面図である。
【
図3】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの一例を示す断面図である。
【
図4】本発明の粘着剤層付偏光フィルムの矩形以外の異形部の一例を示す上面図である。
【
図5】本発明の実施例に係る異形部を有する粘着剤層付偏光フィルムを示す上面図である。
【
図6】本発明の粘着剤層付偏光フィルムを用いたタッチセンシング機能付液晶パネルの一例を示す断面図である。
【
図7】本発明の粘着剤層付偏光フィルムを用いたタッチセンシング機能付液晶パネルの一例を示す断面図である。
【
図8】本発明の粘着剤層付偏光フィルムを用いたタッチセンシング機能付液晶パネルの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、例えば、
図1に示される。
図1に示されるように、粘着剤層付偏光フィルム1は、偏光フィルム11、導電層cおよび粘着剤層21をこの順に有する。
図2は、
図1の偏光フィルム11として、前記偏光子aの片面にのみ保護フィルムbを有する片保護偏光フィルム11Aを用いた場合であり、前記片保護偏光フィルム11Aでは、前記偏光子aに対して保護フィルムbを有していない側の他の片面に前記導電層cを介して前記粘着剤層21を有する。なお、図示はしていないが、前記偏光子aの片面にのみ保護フィルムbを有する片保護偏光フィルムA2として、偏光子a/保護フィルムb/導電層c/粘着剤層21、の順の積層物を用いることもできる。
図3は、前記片保護偏光フィルム11Aを用いた場合に、さらに、前記偏光子aの他の片面に透明層dを有する場合である。
図3では、前記片保護偏光フィルム11Aには、透明層d、導電層c、粘着剤層21がこの順で設けられている。前記透明層dは偏光子aに、直接、設けることが高温高湿環境下における偏光子の水分率の上昇を抑制できる点から好ましい。
【0027】
<異形部>
また本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、矩形以外の異形部を有する。
図4は、矩形以外の異形部を有するものの一例の上面図である。異形形状は特に制限されず、粘着剤層付偏光フィルムの用途、機能、及びデザイン等に応じて任意の形状をとり得る。矩形以外の異形形状は、例えば、矩形に欠け部または貫通孔を有する場合が挙げられる。
【0028】
前記欠け部は、粘着剤層付偏光フィルムの外縁に設けられる。前記欠け部が複数設けられる場合、それらは同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。前記欠け部は、1つの辺に2以上設けてもよく、2つの辺にそれぞれ1つ以上設けてもよい。また、前記欠け部は、矩形の4箇所ある外縁の隅の1箇所に設けてもよく、2箇所以上に設けてもよい。なお、前記欠け部を設けていない外縁の隅は、角張っていてもよく、丸くなっていてもよい。前記欠け部は、直線、曲線、又はこれらの組合せにより構成することができる。
図4は、異形形状を有する粘着剤層付偏光フィルム1の一例であり、矩形の両短辺にそれぞれ異なる形状の欠け部2が設けられている。
【0029】
前記欠け部の辺W1の長さは、偏光フィルムの用途に応じて適宜調整する。例えば、W1は2~100mm程度の範囲で調整することが好ましい。また、前記欠け部2は、辺W1からの最大深さDが2~100mm程度で調整することが好ましい。
【0030】
図4では、前記欠け部2の形を構成する2つの直線のなす角度θ1が90°の場合が示されているが、角度θ1は、90°以上180°未満であり、好ましくは90°以上135°以下である。角度θ1が前記範囲外の場合には、熱衝撃の過酷な環境下において、膨張・収縮に基づく応力が、2つの直線が交わる部分4に集中し、当該部分4にクラックが生じやすくなる。
【0031】
また、
図4では、前記欠け部2の形を構成する曲線が記載されえているが、当該曲線の曲率半径R1は0.2mm以上であり、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上、さらに好ましくは5mm以上である。曲率半径R1が0.2mm未満の場合には、熱衝撃の過酷な環境下において、膨張・収縮に基づく応力が曲線部分に集中し、当該曲線部分にクラックが生じやすくなる。
【0032】
前記貫通孔は、粘着剤層付偏光フィルムの平面内部に設けられる。前記貫通孔を、粘着剤層付偏光フィルムの平面内部に複数設ける場合、それらは同じ形状であってもよく、異なる形状であってもよい。前記貫通孔は、直線、曲線、又はこれらの組合せにより構成されている。前記貫通孔の形状としては、例えば、円形、楕円形(対称軸が1つのもの、対称軸が2つのもの)、角丸長方形、四角形(正方形、長方形)、及び五角以上の多角形などが挙げられる。
【0033】
前記異形部を形成する方法としては、例えば、打ち抜き加工、エンドミル加工、及びレーザー加工などが挙げられる。前記異形部は、通常、各層を積層した後に前記加工により形成される。
【0034】
<粘着剤層付偏光フィルム>
まず、本発明の粘着剤層付偏光フィルムを構成する各部材について説明する。前記偏光フィルムは、偏光子および前記偏光子の片面または両面に保護フィルムを有するものが用いられる。
【0035】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。
【0036】
また偏光子としては厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚みは1~7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0037】
保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性等に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片側には、保護フィルムは、通常、接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。
【0038】
前記保護フィルム(透明保護フィルム)の材料としては、粘着剤層の表面抵抗値の変動を小さく制御することができることからセルロース樹脂、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。なお、(メタ)アクリル樹脂としては、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いることが好ましい。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂としては、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂があげられる。特に、セルロース樹脂は(メタ)アクリル樹脂に比べて、片保護偏光フィルムで課題となる異形クラック、偏光子クラックの抑制に効果的な点で好ましい。
【0039】
前記保護フィルムとしては、位相差フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム等も用いることができる。位相差フィルムとしては、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有するものが挙げられる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが偏光子保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0040】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。
【0041】
前記保護フィルムと偏光子は接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層を介して積層される。この際、介在層により両者を空気間隙なく積層することが望ましい。前記保護フィルムと偏光子は接着剤層を介して積層するのが好ましい。前記偏光子と保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤またはラジカル硬化型接着剤が好適である。
【0042】
<導電層>
前記導電層cの厚さは、表面抵抗値の安定性及び粘着剤層21との密着性の観点から1μm以下であるのが好ましく、0.01~0.5μmであるのが好ましく、0.01~0.2μmであるのが好ましく、さらに0.01~0.1μmであるのが好ましい。また、前記導電層cの表面抵抗値は帯電防止機能の観点から、1×107~1×1012Ω/□であるのが好ましく、1×107~1×1011Ω/□であるのが好ましく、さらに1×107~1×1010Ω/□であるのが好ましい。
【0043】
導電層は、各種の帯電防止剤組成物から形成することができる。導電層を形成する帯電防止剤としては、イオン性界面活性剤系、導電性ポリマー、導電性微粒子、カーボンナノチューブ等を用いることができる。
【0044】
これら帯電防止剤のなかでも導電性ポリマー、カーボンナノチューブは光学特性、外観、帯電防止効果および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性という観点から好ましく使用される。特に、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性ポリマーが好ましく使用される。導電性ポリマーは有機溶剤可溶性、水溶性、水分散性のものを適宜使用可能だが、水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーが好ましく使用される。水溶性導電性ポリマーや水分散性導電性ポリマーは帯電防止層を形成する際の塗布液を水溶液または水分散液として調製でき、当該塗布液は非水系の有機溶剤を用いる必要がなく、当該有機溶剤による光学フィルム基材の変質を抑えることができるためである。なお、水溶液または水分散液は、水のほかに水系の溶媒を含有できる。たとえば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec-アミルアルコール、tert-アミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、2-メチル-1-ブタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類があげられる。
【0045】
また、前記ポリアニリン、ポリチオフェン等の水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーは、分子中に親水性官能基を有することが好ましい。親水性官能基としては、たとえばスルホン基、アミノ基、アミド基、イミノ基、四級アンモニウム塩基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、またはそれらの塩等があげられる。分子内に親水性官能基を有することにより水に溶けやすくなったり、水に微粒子状で分散しやすくなり、前記水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーを容易に調製することができる。
【0046】
水溶性導電ポリマーの市販品の例としては、ポリアニリンスルホン酸(三菱レーヨン社製,ポリスチレン換算による重量平均分子量150000)等があげられる。水分散性導電ポリマーの市販品の例としては、ポリチオフェン系導電性ポリマー(ナガセケムテック社製、商品名,デナトロンシリーズ)等があげられる。
【0047】
また導電層の形成材料としては、前記帯電防止剤とともに、帯電防止剤の皮膜形成性、光学フィルムへの密着性の向上等を目的に、バインダー成分を添加することもできる。帯電防止剤が水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーの水系材料の場合には、水溶性もしくは水分散性のバインダー成分を用いる。バインダーの例としては、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等があげられる。特にポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。これらバインダーは1種または2種以上を適宜その用途に合わせて用いることができる。
【0048】
帯電防止剤、バインダーの使用量は、それらの種類にもよるが、得られる導電層の表面抵抗値が1×107~1×1012Ω/□になるように制御するのが好ましい。
【0049】
<粘着剤層>
前記粘着剤層は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)およびイオン性化合物(B)含有する粘着剤組成物より形成される。
【0050】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0051】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1~18のものを例示できる。例えば、前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、イソミリスチル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、等を例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3~9であるのが好ましい。
【0052】
前記アルキル(メタ)アクリレートの重量比率は、モノマー単位として、(メタ)アクリル系ポリマー(A)を構成する全構成モノマー(100重量%)の重量比率において、70重量%以上であるのが好ましい。前記アルキル(メタ)アクリレートの重量比率は、他の共重合モノマーの残部として考えることができる。前記アルキル(メタ)アクリレートの重量比率を前記範囲に設定することは、接着性を確保するうえで好ましい。
【0053】
前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)中には、前記アルキル(メタ)アクリレートのモノマーユニットの他に、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。
【0054】
前記共重合モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー等の官能基含有モノマーを例示できる。
【0055】
カルボキシル基含有モノマーは、その構造中にカルボキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が挙げられる。前記カルボキシル基含有モノマーのなかでも、共重合性、価格、および粘着特性の観点からアクリル酸が好ましい。
【0056】
ヒドロキシル基含有モノマーは、その構造中にヒドロキシル基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。ヒドロキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等が挙げられる。前記ヒドロキシル基含有モノマーのなかでも、耐久性の点から、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーは、粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合に、架橋剤との反応点になる。カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーは分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。またカルボキシル基含有モノマーは耐久性とリワーク性を両立させる点で好ましく、ヒドロキシル基含有モノマーはリワーク性の点で好ましい。
【0058】
カルボキシル基含有モノマーの前記重量比率は、10重量%以下であるのが好ましく、さらには0.01~8重量%が好ましく、さらには0.05~6重量%が好ましく、さらには0.1~5重量%が好ましい。カルボキシル基含有モノマーの重量比率を0.01重量%以上とすることは耐久性の点で好ましい。一方、10重量%を超える場合にはリワーク性の点から好ましくない。
【0059】
ヒドロキシル基含有モノマーの前記重量比率は、3重量%以下であるのが好ましく、さらには0.01~3重量%が好ましく、さらには0.1~2重量%が好ましく、さらには0.2~2重量%が好ましい。ヒドロキシル基含有モノマーの重量比率が0.01重量%以上とすることは、粘着剤層を架橋する観点、耐久性や粘着特性の点で好ましい。一方、3重量%を超える場合には、耐久性の点から好ましくない。
【0060】
アミド基含有モノマーは、その構造中にアミド基を含み、かつ(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性不飽和二重結合を含む化合物である。アミド基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド、アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン等のN-アクリロイル複素環モノマー;N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム等のN-ビニル基含有ラクタム系モノマー等が挙げられる。アミド基含有モノマーは、経時的な(特に加湿環境下での)表面抵抗値の上昇を抑制したり、耐久性を満足させたりするうえで好ましく、さらには異形クラックを抑制するうえでも好ましい。特に、アミド基含有モノマーのなかでも、特に、N-ビニル基含有ラクタム系モノマーは、経時的(特に加湿環境下)にける表面抵抗値の上昇を抑制したり、透明導電層(タッチセンサー層)に対する耐久性を満足させたり、異形クラックを抑制するうえで好ましい。
【0061】
アミド基含有モノマーの前記重量比率が大きくなると、光学フィルムに対する投錨性が低下する傾向があるため、前記重量比率は、10重量%以下であるのが好ましく、さらには5重量%以下であるのが特に好ましい。アミド基含有モノマーの前記重量比率は、経時的(特に加湿環境下)な表面抵抗値の上昇を抑制する観点から、0.1重量%以上であるのが好ましい。前記重量比率は、0.3重量%以上が好ましく、さらには0.5重量%以上であるのが好ましい。アミド基含有モノマーは、本発明の粘着剤層が含有するイオン性化合物(B)との関係で好適である。
【0062】
前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物において、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の側鎖に導入されたアミド基が存在している場合には、当該アミド基の存在によって、加湿環境下においても、イオン性化合物(B)を配合したことにより調整された粘着剤層の表面抵抗値が変動して大きくなることが抑制され、所望の値の範囲内に維持するうえで好ましい。前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の側鎖に共重合モノマーの官能基として導入されたアミド基の存在によって、(メタ)アクリル系ポリマー(A)とイオン性化合物(B)との相溶性が上がると考えられる。
【0063】
また、前記粘着剤層は、ベースポリマーである(メタ)アクリル系ポリマー(A)中の側鎖に導入されたアミド基が存在している場合には、ガラスおよび透明導電層(ITO層等)のいずれに対しても耐久性が良好であり、液晶パネルに貼り付けられた状態において剥がれや、浮き等の発生を抑えることができる。また、加湿環境下(加湿信頼性試験後)においても、耐久性を満足することができる。
【0064】
また共重合モノマーとしては、例えば、芳香環含有(メタ)アクリレートを用いることができる。芳香環含有(メタ)アクリレートは、その構造中に芳香環構造を含み、かつ(メタ)アクリロイル基を含む化合物である。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、またはビフェニル環が挙げられる。
【0065】
芳香環含有(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートフェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性クレゾール(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、ポリスチリル(メタ)アクリレート等のベンゼン環を有するもの;ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のナフタレン環を有するもの;ビフェニル(メタ)アクリレート等のビフェニル環を有するもの挙げられる。
【0066】
前記芳香環含有(メタ)アクリレートとしては、粘着特性や耐久性の点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、特にフェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0067】
芳香環含有(メタ)アクリレートの前記重量比率は、25重量%以下であるのが好ましく、さらには3~25重量%が好ましく、さらには10~22重量%が好ましく、さらには14~20重量%が好ましい。芳香環含有(メタ)アクリレートの重量比率が3重量%以上である場合には、表示ムラを抑制するうえで好ましい。一方、25重量%を超えると表示ムラの却って抑制が十分でなく、耐久性が低下する傾向がある。
【0068】
上記以外の他の共重合モノマーの具体例としては、;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマー等が挙げられる。
【0069】
また、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミドやN-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミドやN-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー、等も改質目的のモノマー例として挙げられる。
【0070】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のグリコール系(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2-メトキシエチルアクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー等も使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0071】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマー等が挙げられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
また、共重合モノマーとしては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタン等の骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
【0073】
(メタ)アクリル系ポリマー(A)における前記他の共重合モノマーの割合は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の全構成モノマー(100重量%)の重量比率において、0~10重量%程度、さらには0~7重量%程度、さらには0~5重量%程度であるのが好ましい。
【0074】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、通常、重量平均分子量が100万~250万であることが好ましい。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は120万~200万であるのが好ましい。重量平均分子量が100万以上であると、耐熱性の点で好ましい。また、重量平均分子量が250万よりも大きくなると粘着剤が硬くなりやすい傾向があり、剥がれが発生しやすくなる。また、分子量分布を示す、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は、1.8以上10以下であるのが好ましく、さらには1.8~7であり、さらには1.8~5であるのが好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が10を超える場合には耐久性の点で好ましくない。なお、重量平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値から求められる。
【0075】
このような(メタ)アクリル系ポリマー(A)の製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合等の公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等いずれでもよい。
【0076】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエン等が用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50~70℃程度で、5~30時間程度の反応条件で行われる。
【0077】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤等は特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0078】
<イオン性化合物(B)>
本発明の粘着剤層を形成する粘着剤組成物が含有するイオン性化合物(B)としては、アルカリ金属塩及び/または有機カチオン-アニオン塩を好ましく用いることができる。アルカリ金属塩は、アルカリ金属の有機塩および無機塩を用いることができる。なお、本発明でいう、「有機カチオン-アニオン塩」とは、有機塩であって、そのカチオン成分が有機物で構成されているものを示し、アニオン成分は有機物であっても良いし、無機物であっても良い。「有機カチオン-アニオン塩」は、イオン性液体、イオン性固体とも言われる。前記粘着剤層に、イオン性化合物(B)を含有させることにより、粘着剤層の表面抵抗値を低下させて静電気発生を抑制することができ、帯電による液晶層の配向が乱れて光漏れ(帯電ムラ)が生じることを抑えることができる。
【0079】
<アルカリ金属塩>
アルカリ金属塩のカチオン成分を構成するアルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各イオンが挙げられる。これらアルカリ金属イオンのなかでもリチウムイオンが好ましい。
【0080】
アルカリ金属塩のアニオン成分は有機物で構成されていてもよく、無機物で構成されていてもよい。有機塩を構成するアニオン成分としては、例えば、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、-O3S(CF2)3SO3
-、PF6
-、CO3
2-、や下記一般式(1)乃至(4)、
(1):(CnF2n+1SO2)2N- (但し、nは0~10の整数)、
(2):CF2(CmF2mSO2)2N- (但し、mは1~10の整数)、
(3):-O3S(CF2)lSO3
- (但し、lは1~10の整数)、
(4):(CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2)、(但し、p、qは1~10の整数)、で表わされるもの等が用いられる。特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。無機塩を構成するアニオン成分としては、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(CN)2N-、等が用いられる。アニオン成分としては、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、等の前記一般式(1)で表わされる、(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドが好ましく、特に(CF3SO2)2N-、で表わされる(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0081】
アルカリ金属の有機塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、KO3S(CF2)3SO3K、LiO3S(CF2)3SO3K等が挙げられ、これらのうちLiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N、Li(CF3SO2)3C等が好ましく、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(C4F9SO2)2N等のビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩であるフッ素含有リチウムイミド塩がより好ましく、特に(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩が好ましい。その他、4,4,5,5-テトラフルオロ-1,3,2-ジチアゾリジン-1,1,3,3-テトラオキシドリチウム塩等が挙げられる。
【0082】
また、アルカリ金属の無機塩としては、過塩素酸リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。
【0083】
<有機カチオン-アニオン塩>
本発明で用いられる有機カチオン-アニオン塩は、カチオン成分とアニオン成分とから構成されており、前記カチオン成分は有機物からなるものである。カチオン成分として、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
【0084】
アニオン成分としては、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(CN)2N-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、((CF3SO2)(CF3CO)N-、-O3S(CF2)3SO3
-、や下記一般式(1)乃至(4)、
(1):(CnF2n+1SO2)2N- (但し、nは0~10の整数)、
(2):CF2(CmF2mSO2)2N- (但し、mは1~10の整数)、
(3):-O3S(CF2)lSO3
- (但し、lは1~10の整数)、
(4):(CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2)、(但し、p、qは1~10の整数)、で表わされるもの等が用いられる。なかでも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。
【0085】
有機カチオン-アニオン塩は、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせからなる化合物が適宜選択して用いられる。有機カチオン-アニオン塩の好ましい具体例としては、例えば、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)が挙げられる。なかでも、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニルイミド)がより好ましい。
【0086】
また、イオン性化合物(B)としては、前記のアルカリ金属塩、有機カチオン-アニオン塩の他に、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム等の無機塩が挙げられる。
【0087】
前記イオン性化合物(B)は、異形クラックの発生を抑制する観点から、カチオン成分の分子量が210以下のものを用いることが好ましい。カチオン成分の分子量は、さらには150以下であるのが好ましく、さらには110以下であるのが好ましく、さらには50以下であるのが好ましく、さらには10以下であるのが好ましい。前記カチオン成分の分子量が大きいほど、粘着剤層中の(メタ)アクリルポリマー同士の絡み合いを阻害し、粘着剤層の物性が柔らかくなる傾向がある。そのため、前記分子量が小さいほど粘着剤層の物性が柔らかくなりにくく、異形クラックの発生を抑制することができる。また前記カチオン成分は分子量が小さいほど、粘着剤層の表面抵抗値が下がりやすく静電気ムラを抑制する点からも好ましい。
【0088】
前記イオン性化合物(B)がアルカリ金属塩の場合には、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンは、分子量が210以下のカチオン成分であるため、これらアルカリ金属イオンをカチオン成分とするアルカリ金属塩を好適に用いることができる。特に、粘着剤層との相溶性の観点から、アルカリ金属塩のアニオン成分が有機物で構成されている、アルカリ金属の有機塩が好ましい。また、前記アルカリ金属イオンとしては、分子量が最も小さいリチウムイオンが好ましい。前記イオン性化合物(B)としてはリチウム塩が好適であり、リチウムの有機塩が特に好ましい。一方、前記イオン性化合物(B)が有機カチオン-アニオン塩の場合には、前記例示のカチオン成分のなかから分子量が210以下を選択して用いることができる。特に、粘着剤層との相溶性の観点から、アニオン成分が有機物で構成されている、有機カチオン-アニオン塩が好ましい。
【0089】
本発明の粘着剤組成物におけるイオン性化合物(B)の割合は、粘着剤層の帯電防止特性とタッチパネルの感度を満足するように適宜に調整することができる。例えば、粘着剤層の表面抵抗値が1.0×10
8~1.0×10
12Ω/□の範囲になるように、偏光フィルムの保護フィルムの種類等を考慮しながら、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルの種類に応じて、イオン性化合物(B)の割合を調整するのが好ましい。例えば、
図6に示す、インセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルでは、粘着剤層は、初期の表面抵抗値が、1×10
8~1×10
12Ω/□の範囲に制御するのが好ましく、1×10
8~1×10
10Ω/□の範囲に制御するのがさらに好ましい。また、
図7に示す、セミインセル型、または
図8に示す、オンセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルでは、粘着剤層は、初期の表面抵抗値が、1×10
10~1×10
12Ω/□の範囲に制御するのが好ましい。
【0090】
前記イオン性化合物(B)が多くなるとイオン性化合物(B)が析出する可能性があり、さらには加湿剥がれが生じやすくなる。また、前記イオン性化合物(B)が多くなると、表面抵抗値が低くなりすぎてベースライン変動(表面抵抗値が低すぎすることにより生じるタッチ時の誤作動)により、タッチパネルの感度が低下するおそれがある。前記イオン性化合物(B)の割合は、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、通常、40重量部以下であるのが好ましく、さらには20重量部以下であるのが好ましく、さらには10重量部以下であることが好ましく、さらには6重量部以下が好ましい。少なすぎると帯電防止性に劣り、多すぎるとタッチ感度低下、イオン性化合物の析出、粘着剤の加湿剥がれが悪化する恐れがある。一方、帯電防止性能の向上させるうえで、前記イオン性化合物(B)を0.01重量部以上用いることが好ましい。かかる観点から前記イオン性化合物(B)は、0.1重量部以上が好ましく、さらには0.5重量部以上であるのが好ましい。
【0091】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(C)を含有することができる。架橋剤(C)としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0092】
架橋剤(C)としては、イソシアネート系架橋剤および/または過酸化物系架橋剤が好ましい。
【0093】
イソシアネート系架橋剤(C)としては、イソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物を用いることができる。たとえば、一般にウレタン化反応に用いられる公知の脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が用いられる。
【0094】
過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃~160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃~140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0095】
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)等が挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)等が好ましく用いられる。
【0096】
架橋剤(C)の使用量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、3重量部以下が好ましく、さらには0.01~3重量部が好ましく、さらには0.02~2重量部が好ましく、さらには0.03~1重量部が好ましい。なお、架橋剤(C)が0.01重量部未満では、粘着剤層が架橋不足になり、耐久性や粘着特性を満足できないおそれがあり、一方、3重量部より多いと、粘着剤層が硬くなりすぎて耐久性が低下する傾向が見られる。
【0097】
本発明の粘着剤組成物には、シランカップリング剤(D)を含有することできる。シランカップリング剤(D)を用いることにより、耐久性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、具体的には、たとえば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。前記例示のシランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0098】
また、シランカップリング剤(D)として、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するものを用いることもできる。具体的には、たとえば、信越化学社製X-41-1053、X-41-1059A、X-41-1056、X-41-1805、X-41-1818、X-41-1810、X-40-2651などが挙げられる。これらの分子内に複数のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、揮発しにくく、アルコキシシリル基を複数有することから耐久性向上に効果的であり好ましい。特に、粘着剤層付きの光学フィルムの被着体が、ガラスに比べてアルコキシシリル基が反応しにくい透明導電層(例えば、ITO等)の場合にも耐久性が好適である。また、分子内に複数のアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤は、分子内にエポキシ基を有するものが好ましく、エポキシ基は分子内に複数有することがさらに好ましい。分子内に複数のアルコキシシリル基を有し、かつエポキシ基を有するシランカップリング剤は被着体が透明導電層(例えば、ITO等)の場合にも耐久性が良好な傾向がある。分子内に複数のアルコキシシリル基を有し、かつエポキシ基を有するシランカップリング剤の具体例としては、信越化学社製X-41-1053、X-41-1059A、X-41-1056が挙げられ、特に、エポキシ基含有量の多い、信越化学社製X-41-1056が好ましい。
【0099】
前記シランカップリング剤(D)は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、5重量部以下が好ましく、さらには0.001~5重量部が好ましく、さらには0.01~1重量部が好ましく、さらには0.02~1重量部がより好ましく、さらには0.05~0.6重量部が好ましい。耐久性を向上させる量である。
【0100】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、反応性シリル基を有するポリエーテル化合物、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのポリエーテル化合物、着色剤、顔料等の粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。これら添加剤は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対して5重量部以下、さらには3重量部以下、さらには1重量部以下の範囲で用いるのが好ましい。
【0101】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータ等に塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を形成した後に光学フィルム(偏光フィルム)に転写する方法、または光学フィルム(偏光フィルム)に前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を光学フィルムに形成する方法等により作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0102】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1~100μm程度である。好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。
【0103】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムに適用される粘着剤層は、異形の偏光フィルムに適用される観点から、85℃におけるクリープ値が120μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは85μm以下であり、特に好ましくは60μm以下である。前記クリープ値の下限は、好ましくは15μm以上であり、より好ましくは30μm以上である。前記クリープ値が120μmを超えると、実施例に記載のように、異形の偏光フィルムに生じる、クラックが悪化するおそれがある。クリープ値が、15μmを下回ると、粘着剤層の応力緩和性が低くなるため、耐久性試験で粘着剤層の剥がれが発生しやすくなったりするおそれがある。
【0104】
<透明層>
以下は透明層について詳述する。
【0105】
透明層の厚さは、薄層化および光学信頼性の観点から、10μm以下であるのが好ましく、さらには5μm以下であるのが好ましく、さらには3μm以下であるのが好ましく、さらには1.5μm以下であるのが好ましく、さらには1μm以下であるのが好ましい。透明層が厚すぎる場合には、偏光フィルムの厚さが厚くなり、さらには偏光子の光学信頼性を低下させるおそれがある。一方、透明層の厚さは、粘着剤層の表面抵抗値の変動比を小さく抑える観点から、0.1μm以上であるのが好ましく、さらには0.2μm以上が好ましく、さらには0.3μm以上であるのが好ましい。
【0106】
前記透明層を形成する材料は、透明性を有し、かつ、導電層の偏光子への影響を抑制することができるものを用いることができる。かかる材料としては、例えば、イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマー(a)を含有する形成材が挙げられる。
【0107】
イソシアネート化合物としては、例えば、多官能のイソシアネート化合物が好ましく、具体的に多官能の芳香族系イソシアネート化合物、脂環族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネート化合物またはこれらの2量体などが挙げられる。
【0108】
多官能芳香族系イソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス4-フェニルイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0109】
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0110】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0111】
また多官能イソシアネート化合物としては、イソシアヌル酸トリス(6-インシアネートヘキシル)などのイソシアネート基を3個以上有するものが挙げられる。
【0112】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0113】
前記ウレタンプレポリマー(a)としては、本発明では、分子構造的に環状構造(ベンゼン環、シアヌレート環、イソシアヌレート環等)が構造中で占める割合の大きなリジットな構造のものを使用することが好ましい。例えば、前記多官能のイソシアネート化合物は1種を単独でまたは2種以上を併用することができるが、前記偏光子への水分混入抑制の観点からは芳香族系イソシアネート化合物が好ましい。他の多官能のイソシアネート化合物は、芳香族系イソシアネート化合物と併用することができる。特に、芳香族系イソシアネート化合物のなかでも前記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0114】
ウレタンプレポリマー(a)としては、トリメチロールプロパン-トリ-トリレンイソシアネート、トリメチロールプロパン-トリ-ジフェニルメタンジイソシアネート、が好ましく用いられる。なお、前記ウレタンプレポリマー(a)は、末端イソシアネート基を有する化合物であり、例えば、イソシアネート化合物と多価アルコールとを混合して攪拌し反応させることによって得られる。通常は、多価アルコールの水酸基に対して、イソシアネート基が過剰となるよう、イソシアネート化合物と多価アルコールと混合することが好ましい。
【0115】
なお、前記ウレタンプレポリマー(a)は、末端イソシアネート基に保護基を付与したものを用いることもできる。保護基としてはオキシムやラクタムなどがある。イソシアネート基を保護したものは、加熱することによりイソシアネート基から保護基を解離させ、イソシアネート基が反応するようになる。
【0116】
透明層を形成する形成材は、前記ウレタンプレポリマー(a)に加えて、イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有する化合物(b)を含有することができる。イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基としては、水酸基、アミノ基当が挙げられる。前記化合物(b)が有する活性水素を有する官能基の個数は多いほど、ウレタンプレポリマー(a)のイソシアネート基との反応点が多くなり硬化物を形成しやすいため、前記官能基の個数は3以上が好ましい。
【0117】
また、化合物(b)は、その分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下であることが好ましい。このように、分子量と官能基の個数との関係を定義することによって、化合物(b)とウレタンプレポリマー(a)のイソシアネート基との反応性を確保することができる。
【0118】
また、前記化合物(b)の分子量は1000以下であることが好ましい。化合物(b)の分子量を1000以下の範囲のものは、ウレタンプレポリマー(a)とともに形成材を溶液として調製する際の相溶性の点で好ましい。
【0119】
前記化合物(b)としては、例えば、多価アルコール、多価アミン、分子内に水酸基とアミノ基を有する化合物等を例示することができる。
【0120】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、ポリプロピレングリコール、等の2官能アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能アルコール;ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ソルビトール等の4官能アルコール等;その他、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル等の前記多価アルコールへのアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド)付加物等が挙げられる。
【0121】
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、ダイマージアミン等が挙げられる。
【0122】
また、分子内に水酸基とアミノ基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類;
エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0123】
前記化合物(b)としては、多価アルコールを用いることが、偏光子の光学信頼性の悪化を防ぐ点から好ましく、特に、トリメチロールプロパンは、ウレタンプレポリマー(a)との反応性の点から好ましい。
【0124】
前記形成材は、前記ウレタンプレポリマー(a)を主成分として含有する。ウレタンプレポリマー(a)は、形成材の固形分の50重量%以上を含有することが好ましい。
【0125】
前記ウレタンプレポリマー(a)に対する前記化合物(b)の配合割合は、前記ウレタンプレポリマー(a)と前記化合物(b)の合計100重量%(固形分比率)に対して、5重量%以上であるのが好ましい。前記化合物(b)の配合割合は、膜強度の向上の観点から10重量%以上であるのが好ましい。一方、前記化合物(b)の配合割合が多くなると偏光子の光学信頼性の悪化が起こることがあるため、前記化合物(b)の配合割合は80重量%以下、さらには50重量%以下であることが好ましい。
【0126】
前記形成材は、さらにイソシアネート基の反応性をあげるために反応触媒を用いることができる。反応触媒は特に制限されないが、スズ系触媒またはアミン系触媒が好適である。反応触媒は1種または2種以上を用いることができる。反応触媒の使用量は、通常、ウレタンプレポリマー(a)100重量部に対して、5重量部以下で使用される。反応触媒量が多いと、架橋反応速度が速くなり形成材の発泡が起こる。発泡後の形成材を使用しても十分な接着性は得られない。通常、反応触媒を使用する場合には、0.01~5重量部、さらには0.05~4重量部が好ましい。
【0127】
さらにイソシアネート基の反応性をあげるために反応触媒を用いることができる。反応触媒は特に制限されないが、スズ系触媒またはアミン系触媒が好適である。反応触媒は1種または2種以上を用いることができる。反応触媒の使用量は、通常、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、5重量部以下で使用される。反応触媒量が多いと、架橋反応速度が速くなり形成材の発泡が起こる。発泡後の形成材を使用しても十分な接着性は得られない。通常、反応触媒を使用する場合には、0.01~5重量部、さらには0.05~4重量部が好ましい。
【0128】
スズ系触媒としては、無機系、有機系のいずれも使用できるが有機系が好ましい。無機系スズ系触媒としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二スズ等があげられる。有機系スズ系触媒は、メチル基、エチル基、エーテル基、エステル基などの骨格を有する脂肪族基、脂環族基などの有機基を少なくとも1つ有するものが好ましい。例えば、テトラ-n-ブチルスズ、トリ-n-ブチルスズアセテート、n-ブチルスズトリクロライド、トリメチルスズハイドロオキサイド、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレート等があげられる。
【0129】
またアミン系触媒としては、特に制限されない。例えば、キノクリジン、アミジン、ジアザビシクロウンデセンなどの脂環族基等の有機基を少なくとも1つ有するものが好ましい。その他、アミン系触媒としては、トリエチルアミン等があげられる。また前記以外の反応触媒としては、ナフテン酸コバルト、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が例示できる。
【0130】
前記形成材は、通常、前記ウレタンプレポリマー(a)および前記化合物(b)を含有する溶液として用いられる。溶液は溶剤系であってもよいし、エマルジョン、コロイド分散液、水溶液等の水系であってもよい。
【0131】
有機溶剤としては、イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を有さず、形成材を構成する前記ウレタンプレポリマー(a)および前記化合物(b)を均一に溶解すれば特に制限はない。有機溶剤は、1種または2種以上を組わせて用いることができる。また有機溶剤は、前記ウレタンプレポリマー(a)および前記化合物(b)に対して、それぞれ別の溶剤を用いることができる。この場合には、各溶液を調製した後に、各溶液を混合することにより形成材を調製することができる。また、調製した形成材に、有機溶剤をさらに加えて形成材の粘度を調整することができる。さらに、有機溶剤に溶解した溶剤系の溶液の場合にも、下記例示のアルコール類や水等を溶剤として含ませることができる。
【0132】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類);酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセチルアセトン等のケトン類;等が挙げられる。
【0133】
なお、水系にする場合には、例えば、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類を配合することもできる。水系にする場合には、分散剤を用いたり、ウレタンプレポリマーに、カルボン酸塩、スルホン酸塩、4級アンモニウム塩等のイソシアネート基と反応性の低い官能基や、ポリエチレングリコール等の水分散性成分を導入することにより行うことができる。
【0134】
前記ウレタンプレポリマー以外の透明層を形成する材料としては、例えば、シアノアクリレート系形成材、エポキシ系形成材、ウレタンアクリレート系形成材等が挙げられる。
【0135】
前記透明層の形成は、前記形成材の種類に応じて適宜に選択することができるが、例えば、当該形成材を偏光子等に塗布した後に硬化することにより行うことができ、透明層は塗布層として得ることができる。通常は、前記塗布後に、30~100℃程度、好ましくは50~80℃で、0.5~15分間程度乾燥することにより、硬化層を形成することにより行う。さらには、前記形成材が、イソシアネート成分を含有する場合には、反応促進の為に、30~100℃程度、好ましくは50~80℃で、0.5~24時間程度のアニール処理を行うことができる。
【0136】
<画像表示パネル、画像表示装置>
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、各種の画像表示パネルに適用することができ、当該画像表示パネルは、従来の画像表示装置に適用することができる。画像表示装置における、その他の構成は、従来の画像表示装置と同様である。前記画像表示パネルが適用可能な画像表示装置の具体例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)等を挙げることができる。
【0137】
本発明の粘着剤層付偏光フィルムは表面抵抗値の変動比が小さく、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルへの適用が好適である。
【0138】
さらに、上記構成以外にも、液晶パネルには、位相差フィルム、視角補償フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムを適宜設けることができる。
【0139】
液晶層としては、特に限定されるものではなく、例えば、TN型やSTN型、π型、VA型、IPS型等の任意なタイプ等の任意なタイプのものを用いうる。透明基板9(光源側)は、透明な基板であればよく、その素材は特に限定されないが、例えば、ガラス、透明樹脂フィルム基材を挙げることができる。透明樹脂フィルム基材としては、前述のものを挙げることができる。
【0140】
なお、液晶層に対して光源側には、本分野において従来用いられている粘着剤層付偏光フィルムを用いることができ、また、本明細書に記載のものも好適に用いることができる。
【0141】
上記のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルの具体例は、例えば、
図6乃至
図8に示される。
図6乃至
図8では、本発明の粘着剤層付偏光フィルムとして、
図1に示される粘着剤層付偏光フィルム1(但し、導電層cの記載を省略)を、液晶セルの視認側に用いた場合が例示されている。即ち、
図1の片保護偏光フィルム11、粘着剤層21が、
図6乃至
図8では第1偏光フィルム11、第1粘着剤層21として示されている。
【0142】
図6、所謂、インセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルであり、視認側から、第1偏光フィルム11/第1粘着剤層21/第1透明基板41/タッチセンサー部5/液晶層3/駆動電極兼センサー部6/第2透明基板42/第2粘着剤層22/第2偏光フィルム12、の構成を有する。
図6のインセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルでは、例えば、液晶セルCは液晶層3を挟む第1、2ガラス基板41、42内(液晶セル内)にタッチセンサー部5および駆動電極兼センサー部6を有する。
【0143】
また、
図7は、所謂、インセル型(セミインセル型)のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルの変形例であり、視認側から、第1偏光フィルム11/第1粘着剤層21/タッチセンサー部5/第1透明基板41/液晶層3/駆動電極兼センサー部6/第2透明基板42/第2粘着剤層22/第2偏光フィルム12、の構成を有する。
図7のインセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルでは、例えば、液晶セルCは第1透明基板41の外側でタッチセンサー部5は第1粘着剤層21に直接接しており、液晶層3を挟む第1、2ガラス基板41、42内(液晶セル内)の第2透明基板42の側に駆動電極兼センサー部6を有する。
【0144】
また、
図8は、所謂、オンセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルであり、視認側から、第1偏光フィルム11/第1粘着剤層21/タッチセンサー部5/駆動電極兼センサー部6/第1透明基板41/液晶層3/駆動電極7/第2透明基板42/第2粘着剤層22/第2偏光フィルム12、の構成を有する。
図8のオンセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルでは、例えば、液晶セルCは第1透明基板41の外側でタッチセンサー部5および駆動電極兼センサー部6を有し、タッチセンサー部5は第1粘着剤層21に直接接しており、液晶層3を挟む第1、2ガラス基板41、42内(液晶セル内)の第2透明基板42の側には駆動電極7を有する。
【0145】
タッチセンシング機能内蔵液晶パネルにおいて、前記液晶セルCのタッチセンサー部5と第1粘着剤層21とが、直接接している場合に、第1粘着剤層21(イオン性化合物を含有)の帯電防止機能が低下しやすく、特に加湿湿環境下において低下しやすい。従って、本発明のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルは、前記例示のなかでも、
図7に示すインセル型(変形例)または
図8に示すオンセル型のタッチセンシング機能内蔵液晶パネルに好適に適用される。
【0146】
なお、液晶セルCの視認側に配置される第1偏光フィルム11、前記視認側の反対側に配置される第2偏光フィルム12は、それぞれの配置箇所の適性に応じて、他の光学フィルムを積層して用いることができる。前記他の光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差フィルム(1/2や1/4等の波長板を含む)、視覚補償フィルム、輝度向上フィルム等の液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものが挙げられる。これらは1層または2層以上用いることができる。これら他の光学フィルムを用いる場合にも、最も液晶層3側の粘着剤層を、前記第1粘着剤層21とすることが好ましい。
【0147】
液晶セルCが有する液晶層3は、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルに適用される、電界が存在しない状態でホモジニアス配向した液晶分子を含む液晶層が用いられる。液晶層3としては、例えばIPS方式の液晶層が好適に用いられる。その他、液晶層3としては、例えばTN型やSTN型、π型、VA型等の液晶層を任意なタイプのものを用いることができる。前記液晶層の厚さは、例えば1.5μm~4μm程度である。
【0148】
液晶セルCにおいて、第1透明基板41および第2透明基板42は、前記液晶層3を挟んで液晶セルを形成することができる。液晶セルの内または外には、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルの形態に応じて、タッチセンサー部5、駆動電極兼センサー部6、駆動電極7等が形成される。また、液晶セル上(第1透明基板41)にはカラーフィルター基板を設けることができる。
【0149】
前記透明基板を形成する材料は、例えば、ガラス又はポリマーフィルムが挙げられる。前記ポリマーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロオレフィン、ポリカーボネート等が挙げられる。前記透明基板がガラスにより形成される場合、その厚みは、例えば0.3mm~1mm程度である。前記透明基板がポリマーフィルムにより形成される場合、その厚みは、例えば10μm~200μm程度である。上記透明基板は、その表面に易接着層やハードコート層を有することができる。
【0150】
タッチセンサー部5(静電容量センサー)、駆動電極兼センサー部6、駆動電極7は、透明導電層として形成される。前記透明導電層の構成材料としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、錫、マグネシウム、タングステン等の金属およびこれら金属の合金等が挙げられる。また、前記透明導電層の構成材料としては、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、ジルコニウム、カドミウムの金属酸化物が挙げられ、具体的には酸化インジウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化カドミウムおよびこれらの混合物等からなる金属酸化物が挙げられる。その他、ヨウ化銅等からなる他の金属化合物などが用いられる。前記金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子の酸化物を含んでいてもよい。例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOとしては、酸化インジウム80~99重量%及び酸化スズ1~20重量%を含有することが好ましい。
【0151】
液晶セルCにおいてタッチセンサー層5が形成される箇所に制限はなく、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルの形態に応じて、タッチセンサー層5は形成される。例えば、
図6乃至
図8では、タッチセンサー層5は、第1偏光フィルム11と液晶層3との間に配置される場合が例示されている。タッチセンサー層5は、例えば、第1透明基板41上に透明電極パターンとして形成することができる。駆動電極兼センサー部6、駆動電極7についても、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルの形態に応じて常法に従って透明電極パターンを形成することができる。上記透明電極パターンは、通常、透明基板の端部に形成された引き回し線(不図示)に電気的に接続され、上記引き回し線は、コントローラIC(不図示)と接続される。透明電極パターンの形状は、櫛形状の他に、ストライプ形状やひし形形状など、用途に応じて任意の形状を採用することができる。透明電極パターンの高さは、例えば10nm~100nmであり、幅は0.1mm~5mmである。
【0152】
また、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルは、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたもの等の液晶表示装置を形成する部材を適宜に用いることができる。
【実施例0153】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0154】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。Mw/Mnについても、同様に測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0155】
<製造例1>
(HC付40μmTACフィルム、HC付25μmTACフィルムの作製)
ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型樹脂モノマー又はオリゴマーが酢酸ブチルに溶解された樹脂溶液(DIC(株)製,商品名:ユニディック17-806,固形分濃度:80%)に、その溶液中の固形分100部当たり、光重合開始剤(BASF(株)製,商品名:IRGACURE907)を5部、及びレベリング剤(DIC(株)製、商品名:GRANDIC PC4100)を0.1部添加した。そして、前記溶液中の固形分濃度が36%となるように、前記溶液にシクロペンタノンとプロピレングリコールモノメチルエーテルを45:55の比率で加えて、ハードコート層形成材料を作製した。作製したハードコート層形成材料を、硬化後のハードコート層の厚みが7μmになるようにTJ40UL(富士フィルム製,原料:トリアセチルセルロース系ポリマー,厚み:40μm)上に塗布して塗膜を形成した。その後、塗膜を90℃で1分間乾燥し、さらに高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、前記塗膜を硬化させてハードコート層(HC)を形成して、HC付40μmTACフィルムを作製した。
また同様にして、TJ25UL(富士フィルム製,原料:トリアセチルセルロース系ポリマー,厚み:25μm)上に上記同様の厚みが7μmのハードコート層(HC)を形成して、HC付25μmTACフィルムを作製した。
【0156】
<製造例2>
(30μmアクリルフィルムの作製)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた容量30Lの釜型反応器に、8,000gのメタクリル酸メチル(MMA)、2,000gの2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、10,000gの4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン,MIBK)、5gのn-ドデシルメルカプタンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として5.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(カヤカルボンBIC-7,化薬アクゾ(株)製)を添加すると同時に、10.0gのt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートと230gのMIBKからなる溶液を4時間かけて滴下しながら、還流下、約105~120℃で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
得られた重合体溶液に、30gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(PhoslexA-18,堺化学工業(株)製)を加え、還流下、約90~120℃で5時間、環化縮合反応を行った。次いで、得られた重合体溶液を、バレル温度260℃、回転数100rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(φ=29.75mm,L/D=30)に、樹脂量換算で、2.0kg/hの処理速度で導入し、この押出し機内で、さらに環化縮合反応と脱揮を行い、押し出すことにより、ラクトン環含有重合体の透明なペレットを得た。
得られたラクトン環含有重合体について、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.17質量%の質量減少を検知した。また、このラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が133,000、メルトフローレートが6.5g/10min、ガラス転移温度が131℃であった。
得られたペレットと、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂(トーヨーASAS20、東洋スチレン(株)製)とを、質量比90/10で、単軸押出機(スクリュー30mmφ)を用いて混練押出することにより、透明なペレットを得た。得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
このペレットを、50mmφ単軸押出機を用い、400mm幅のコートハンガータイプTダイから溶融押出し、厚さ120μmのフィルムを作製した。作製したフィルムを、2軸延伸装置を用いて、150℃の温度条件下、縦2.0倍、及び横2.0倍に延伸することにより、厚さ30μmの延伸フィルム(30μmアクリルフィルム)を得た。この延伸フィルムの光学特性を測定したところ、全光線透過率が93%、面内位相差Δndが0.8nm、厚み方向位相差Rthが1.5nmであった。
【0157】
<偏光フィルム(1)の作製>
厚さ45μmのポリビニルアルコールフィルムを、速度比の異なるロール間において、30℃、0.3%濃度のヨウ素溶液中で1分間染色しながら、3倍まで延伸した。その後、60℃、4%濃度のホウ酸、10%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に0.5分間浸漬しながら総合延伸倍率が6倍まで延伸した。次いで、30℃、1.5%濃度のヨウ化カリウムを含む水溶液中に10秒間浸漬することで洗浄した後、50℃で4分間乾燥を行い、厚さ18μmの偏光子を得た。当該偏光子の片面に、製造例1で得られた、けん化処理したHC付40μmTACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム側)を、もう一方の片面に、製造例2で得られた、30μmアクリルフィルムをポリビニルアルコール系接着剤により貼り合せて偏光フィルム(1)を作製した。
【0158】
<偏光フィルム(2)の作製>
(薄型偏光子Aの作製)
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200,ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200,アセトアセチル変性度4.6%,ケン化度99.0モル%以上,日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
以上により、厚み5μmの偏光子を含む光学フィルム積層体を得た。
【0159】
(透明保護フィルムに適用する接着剤の作製)
アクリロイルモルホリン45重量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート45部、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(ARUFONUP1190,東亞合成社製)10部、光重合開始剤(IRGACURE 907,BASF社製)3部、重合開始剤(KAYACURE DETX-S,日本化薬社製)1.5部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0160】
<偏光フィルム(2)の作製>
上記光学フィルム積層体の偏光子Aの表面に、上記紫外線硬化型接着剤を硬化後の接着剤層の厚みが1μmとなるように塗布しながら、上記製造例1で得られた、HC付25μmTACフィルム(トリアセチルセルロースフィルム側)を貼合せたのち、活性エネルギー線として、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm2、積算照射量1000/mJ/cm2(波長380~440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola-Checkシステムを使用して測定した。次いで、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光子を用いた偏光フィルム(2)を作製した。得られた偏光フィルムの光学特性は単体透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0161】
<透明層付偏光フィルム(2)の作製>
上記偏光フィルム(2)の偏光子の面(HC付25μmTACフィルムが設けられていない偏光子面)に、下記の透明層の形成材をバーコーターにより塗布した後、60℃で12時間熱処理を施すことより行って、厚さ3μmのウレタン樹脂層を形成して、透明層付偏光フィルム(2)を作成した。
【0162】
≪透明層の形成材≫
ウレタンプレポリマー(a)の溶液として、トリレンジイソシアネート(TDI)とトリメチロールプロパン(TMP)よりなるウレタンプレポリマーの75%酢酸エチル溶液(東ソー社製、商品名「コロネートL」)を用いた。
一方、トリメチロールプロパンを、シクロペンタノンに固形分濃度10%となるように溶解して、トリメチロールプロパン溶液を調製した。
上記のウレタンプレポリマーの75%酢酸エチル溶液(東ソー社製,商品名「コロネートL」)100部に、上記のトリメチロールプロパン溶液を、ウレタンプレポリマー:トリメチロールプロパンの固形分比率が、90:10になるように添加し、さらに、ジオクチルスズジラウレート系触媒(東京ファインケミカル社製,商品名「エンビライザーOL-1」)0.1部を加え、さらに溶媒としてメチルイソブチルケトンにより固形分濃度10%に調製した形成材(塗工液)を調製した。
【0163】
<導電層の形成材の調製>
固形分で、チオフェン系ポリマーを10~50重量%含む溶液(商品名:デナトロンP-580W,ナガセケムテックス(株)製)8.6部、オキサゾリン基含有アクリルポリマーを含む溶液(商品名:エポクロスWS-700,(株)日本触媒製)1部、及び、水90.4部を混合し、固形分濃度が0.5重量%の導電層形成用塗布液を調製した。得られた導電層形成用塗布液は、ポリチオフェン系ポリマーを0.04重量%、オキサゾリン基含有アクリルポリマーを0.25重量%含有していた。
【0164】
実施例1
(導電層付偏光フィルムの作製)
前記導電層形成用塗布液を前記偏光フィルム(1)のアクリルフィルム側に、乾燥後の厚みが0.06μmになるように塗布し、80℃で2分間乾燥して導電層を形成した。得られた導電層には、チオフェン系ポリマー、オキサゾリン基含有アクリルポリマーが、それぞれ、8重量%、50重量%含まれていた。
【0165】
(アクリル系ポリマー(A)の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート78.9部、フェノキシエチルアクリレート16部、アクリル酸5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.1部、を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)220万、Mw/Mn=4.0のアクリル系ポリマーの溶液を調製した。
【0166】
(粘着剤組成物の調製)
上記で得られたアクリル系ポリマーの溶液の固形分100部に対して、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド リチウムを1部、イソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL,トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)0.6部、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)0.1部およびエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製:X-41-1056)0.3部を配合して、アクリル系粘着剤組成物の溶液を調製した。
【0167】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
次いで、上記アクリル系粘着剤組成物の溶液を、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータフィルム:三菱化学ポリエステルフィルム(株)製,MRF38)の片面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが20μmになるように塗布し、155℃で1分間乾燥を行い、セパレータフィルムの表面に粘着剤層を形成した。次いで、上記で作製した偏光フィルム(1)の導電層に、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層を転写して、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。
【0168】
実施例2~13、比較例1、2
実施例1において、表1に示すように、アクリル系ポリマー(A)の調製に用いたモノマーの種類、その使用割合を変え、また製造条件を制御して、表1に記載のアクリル系ポリマー(A)の溶液を調製した。
【0169】
また、表1に示すように、偏光フィルムの種類、導電層の形成の有無、粘着剤組成物の調製に用いたイオン性化合物(B)の種類またはその配合割合、架橋剤の配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、粘着剤層付偏光フィルムを作製した。なお、偏光フィルムとして、前記偏光フィルム(2)を用いた場合には前記偏光フィルム(2)の偏光子の面(HC付25μmTACフィルムが設けられていない偏光子面)に、前記透明層付偏光フィルム(2)を用いた場合には前記透明層付偏光フィルム(2)の透明層に、前記同様の導電層を形成した。比較例1、2では、導電層は形成しなかった。
【0170】
上記実施例、比較例および参考性で得られた、粘着剤層付偏光フィルムについて以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0171】
<表面抵抗値(Ω/□):導電性>
導電層の表面抵抗値は、粘着剤層を形成する前の導電層付偏光フィルムの導電層側表面について測定した。粘着剤層の表面抵抗値は、セパレータフィルム上に形成した粘着剤層表面について測定した。測定は、三菱化学アナリテック社製MCP-HT450を用いて行った。
【0172】
<クリープ値の測定>
10mm×30mmのサイズに切断した粘着剤層付偏光フィルム(粘着剤層の厚み:20μm)の上端部10mm×10mmを、SUS板に粘着剤層を介して貼着し、50℃、5気圧の条件下で15分間オートクレーブ処理した。加熱面が垂直になるように設置した精密ホットプレートを85℃に加熱し、前記該粘着剤層付偏光フィルムを貼着したSUS板を、粘着剤層を貼着していない面がホットプレートの加熱面に接するように設置した。SUS板を85℃で加熱し始めてから5分後に、前記粘着剤層付偏光フィルムの下端部に500gの荷重を負荷して1時間放置した時の荷重の負荷前後における前記粘着剤層付偏光フィルムとSUS板とのズレ幅を測定し、当該ズレ幅を85℃でのクリープ値(μm)とした。
【0173】
<異形クラックの評価>
作製した粘着剤層付偏光フィルムを、CO
2レーザー加工機Spirit(GCC社製,30W)を用いて、スピード10、レーザー出力35、400ppiの条件で、
図5に示す形状に加工した。
異形加工した粘着剤層付偏光フィルムを350mm×250mm×0.7mm厚の無アルカリガラス(コーニング社製,商品名「EG-XG」)に貼合し、次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、粘着剤層をガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルを、ヒートサイクル試験槽に投入し、100サイクル、200サイクル時点で異形部に発生するクラックの有無を、目視にて確認した。サンプルは各条件につき同じものを5つ投入し、クラックが発生したサンプル数を表1に記載した。
(試験条件)
温度条件:-40℃(30分保持)⇒85℃(30分保持)を1サイクルとして繰り返す昇温・降温速度:10℃/min
【0174】
<ESD試験>
粘着剤層付偏光フィルムからセパレータフィルムを剥がした後、インセル型液晶セルの視認側に貼り合わせて、タッチセンシング機能内蔵液晶パネルを作成した。即ち、得られた粘着剤層付偏光フィルムは、
図6に示すインセル型液晶セルの第1透明基板に貼り合わせて、第1粘着剤層および第1偏光フィルムを形成した。前記液晶パネルにおける、偏光フィルム面にESD(静電気放電)ガン(10kV)を発射して、電気により白抜けした部分が消失するまでの時間を測定し、下記の基準で判断した。
(評価基準)
A:0.5秒以内。
B:0.5秒を超え~1秒以内。
C:1秒を超え~10秒以内。
D:10秒を超える。
【0175】
<耐久性試験>
作製した粘着剤層付偏光フィルムを、偏光フィルムの吸収軸が長辺と並行になるようにして、300×220mmの大きさに切断した。当該粘着剤層付偏光フィルムを、350×250mm×0.7mm厚の無アルカリガラス(コーニング社製、商品名「EG-XG」)にラミネーターで貼合した。次いで、50℃、0.5MPaで15分間オートクレーブ処理して、粘着剤層をガラスに密着させた。かかる処理の施されたサンプルに、95℃の雰囲気下で500時間処理を施した後、また、60℃/95%RHの雰囲気下で500時間処理を施した後、当該サンプルの外観を下記基準で目視にて評価した。
(評価基準)
A:発泡、剥がれなどの外観上の変化が全くなし。
B:わずかながら端部に剥がれ、または発泡があるが、実用上問題なし。
C:端部に剥がれ、または発泡があるが、特別な用途でなければ、実用上問題なし。
D:端部に著しい剥がれあり、実用上問題あり。
【0176】
<端部色抜け評価>
実施例及び比較例で得られた粘着剤層付偏光フィルムを50mm×50mmに裁断し、セパレータフィルムを剥離した後、1.2~1.5mm厚のアルカリガラス(松波硝子社製,マイクロスライドガラス)に粘着剤層を介して貼り合せてサンプルを作製した。当該サンプルを、60℃90%RHの高温高湿環境下に500時間保持した後に、端部色抜け量を微分干渉顕微鏡(オリンパス製,製品名「MX-61L」)により下記条件にて測定した。端部色抜け量はサンプルの4つの角の対角線上において、中央部よりも色が薄くなっている部分の内、最も中央部に近い場所と角を結ぶ直線の距離を端部色抜け量(μm)とし、4つの角の平均値をそのサンプルの端部色抜け量とした。
装置:オリンパス社製、MX-61L
測定条件
レンズ倍率:5倍
ISO:200
シャッタースピード:1/100
反射光量:目盛0
ホワイトバランス:オート
透過光コントローラ:LG-PS2
透過光量:目盛5
透過光偏光方向:偏光フィルム透過軸に対してクロスニコルとなる方向
【0177】
【0178】
表1中、
BAはブチルアクリレート、
PEAはフェノキシエチルアクリレート、
AAはアクリル酸、
NVPはN-ビニル-2-ピロリドン、
HBAは4-ヒドロキシブチルアクリレート、
イソシアネート系は、イソシアネート架橋剤(東ソー社製のコロネートL,トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート)、
BPOは、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製のナイパーBMT)、
Li-TFSIはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド リチウム、
K-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド カリウム
TMPA-TFSIは、トリメチルプロピルアンモニウム ビス(トリフルオロスルホニルイミド)、
EMP-TFSIは、エチルメチルピロリジニウム ビス(トリフルオロスルホニルイミド)、
TBMA-TFSIは、トリブチルメチルアンモニウム ビス(フルオロスルホニルイミド)、
MTOA-TFSIは、メチルトリオクチルアンモニウム ビス(トリフルオロスルホニルイミド)、を示す。