(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098986
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240717BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/36 20060101ALI20240717BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20240717BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20240717BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L2/52
A23L2/00 F
A61K31/36
A61P3/02
A23K10/30
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062612
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2021551148の分割
【原出願日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2019183905
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】八木田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】阿部 千絵
(72)【発明者】
【氏名】小野 佳子
(57)【要約】
【課題】本発明は、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善方法、及び、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善のためのセサミン類の1種以上の使用を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、セサミン類の1種以上を含む生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物等に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セサミン類の1種以上を含む生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物。
【請求項2】
セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
セサミン類の1種以上が、エピセサミンである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
加齢に伴う生活活動量低下の予防若しくは抑制、加齢に伴い低下した生活活動量の改善、加齢に伴う不活動時間増加の予防若しくは抑制、加齢に伴い増加した不活動時間の改善のための請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
経口用組成物である請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記経口用組成物が飲食品、医薬品、医薬部外品又は飼料である請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記飲食品が特定保健用食品、栄養機能食品又は機能性表示食品である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
セサミン類の1種以上を投与する、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善方法。
【請求項9】
生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善のための、セサミン類の1種以上の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物に関する。また、本発明は、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善方法、及び、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善のためのセサミン類の1種以上の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本を含め世界各国において、生活習慣対策が重要な課題となっている。また、日本のような人口構成における高齢者比率が高い国では、健康寿命の延長も重要な課題となっている。このような状況において、継続して運動を実施することにより、生活習慣病予防を行うこと、筋力を向上させ健康寿命の延長を図ることが推進されている。また、最近では、運動の開始よりも心理的ハードルが低く、手軽に開始できるものとして、日常生活の中での身体活動量を増やすことが推奨されている。例えば、通勤・通学時の歩行や家事は、多くの人々が日常生活の中で手軽に行うことができる活動として推奨されている。
【0003】
ここで、厚生労働省から発行されている「健康づくりのための運動指針2006」によると、身体活動とは、「安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する全ての営みのこと」であり、運動と生活活動に分類できると定義されている。生活活動とは、「身体活動のうち運動以外のもの」と定義されている。また、身体活動の強度と活動を行った時間をかけ合わせて、身体活動量と表現される。
【0004】
また、厚生労働省から発行されている厚生労働白書(平成26年版)では、健康寿命は、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されており、介護を必要としない生活を送れる期間は、生活活動が制限されない期間と同義である。ここで、加齢に伴い、生活活動に障害が生じる可能性は高くなる。例えば、非特許文献1には、加齢に伴い、生活活動が減ることが開示されている。非特許文献3には、身体活動量が高いほど、健康寿命が延伸することが開示されている。高齢化社会においては、運動だけでなく生活活動量を維持することで身体活動量を維持し、健康寿命期間を延伸することが求められている。
【0005】
また、ヒトの身体活動量は、歩数を基本指標として測定が可能である。例えば、動物試験では、赤外線による移動回数の測定や、テレメトリーによる移動距離の測定などが主流である。しかし、運動を含まない生活活動量の評価には低強度の活動評価も必要となる。近年、ヒトの生活活動量測定法としての三軸加速度センサー内蔵活動量計を利用した測定法が開発された。この測定方法を使うことで低強度の活動も正確に測定できるため、生活活動量をより正確に測定した指標となりうる。この測定法を用いて、ヒトの生活活動量が加齢に伴い低下することが証明された(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】熊谷秋三, 田中茂穂, 岸本裕歩, 他.三軸加速度センサー内蔵活動量を用いた身体活動量,座位行動の調査と身体活動疫学研究への応用. 運動疫学研究 2015;17(2):90-103.
【非特許文献2】Takada S, Kinugawa S, Matsushima S, et al. Sesamin prevents decline in exercise capacity and impairment of skeletal muscle mitochondrial function in mice with high-fat diet-induced diabetes. Exp Physiol. 2015 Nov 1;100(11):1319-1330
【非特許文献3】Leskinen T, Stenholm S, Aalto V, et al.Physical activity level as a predictor of healthy and chronic disease-free life expectancy between ages 50 and 75. Age Ageing 2018 May 1;47(3)423-429
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セサミンは、高脂肪食を与えたラットに運動負荷試験を行い、持久力低下が抑制されることが非特許文献2において証明されている。しかし、セサミン類が、身体活動のうち、運動ではなく、生活活動量の低下を予防し、生活活動量維持に寄与するかについては報告されていない。すなわち、セサミンなどのセサミン類が、生活活動量維持作用を有することは知られていなかった。特に、セサミンなどのセサミン類が、加齢に伴う生活活動量維持に寄与するかについては報告されていない。
【0008】
本発明は、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善方法、及び、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善のためのセサミン類の1種以上の使用を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討し、非特許文献1に示される三軸加速度センサー内蔵活動量計を利用し、運動を負荷せずにラットの活動量を測定することにより、セサミン類が運動を除く身体活動量すなわち生活活動量を維持する作用を有することを見出した。また本発明者らは、セサミン類が、加齢により低下する生活活動量の低下予防又は維持に有用であることを見出した。
【0010】
本発明は、以下の生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物に関する。
〔1〕セサミン類の1種以上を含む生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物。
〔2〕セサミン類の1種以上が、セサミン及び/又はエピセサミンである上記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕セサミン類の1種以上が、エピセサミンである上記〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕加齢に伴う生活活動量低下の予防若しくは抑制、加齢に伴い低下した生活活動量の改善、加齢に伴う不活動時間増加の予防若しくは抑制、加齢に伴い増加した不活動時間の改善のための上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕経口用組成物である上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕上記経口用組成物が飲食品、医薬品、医薬部外品又は飼料である上記〔5〕に記載の組成物。
〔7〕上記飲食品が特定保健用食品、栄養機能食品又は機能性表示食品である〔6〕に記載の組成物。
〔8〕セサミン類の1種以上を投与する、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善方法。
〔9〕生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善のための、セサミン類の1種以上の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物を提供することができる。また、本発明によれば、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善方法を提供することができる。また、本発明によれば、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善のためのセサミン類の1種以上の使用を提供することができる。
セサミン類の1種以上を摂取すると、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善の効果が得られる。また、セサミン類の1種以上を摂取すると、加齢に伴う生活活動量の低下の予防若しくは抑制、加齢に伴い低下した生活活動量の改善、又は、加齢に伴う不活動時間増加の予防、抑制若しくは改善をすることができる。本発明で使用されるセサミン類は、古くから食品として摂取されてきた成分であり、安全性が高く継続的に摂取できる点でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1はセサミン及びエピセサミン混合物(セサミン:エピセサミン(重量比=1:1))の生活活動量に対する効果を示すグラフである。
【0013】
本発明の生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物は、セサミン類の1種以上を含む。
セサミン類は、胡麻の主要なリグナン類化合物の一種で、胡麻中に0.5~1.0重量%程度含まれている。人工的に合成された化合物の長期的摂取は、予期せぬ副作用等の観点から好ましくない一方で、安全性の担保されたセサミン類は、長期的摂取に最適である。
【0014】
本発明において、身体活動、運動、及び、生活活動は、厚生労働省から発行されている「健康づくりのための運動指針2006」における身体活動、運動、及び、生活活動の定義と同一の意味である。すなわち、身体活動とは、安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての営みのことであり、生活活動は、身体活動のうち運動以外のものである。なお運動は、例えば、体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施するものである。生活活動量は、例えば、ヒトにおいては三軸加速度センサー内蔵活動量計(panasonic社製 Actimarker)を用いて測定することができる。動物においてはトレッドミルなどの運動を負荷しない条件で三軸加速度センサー内蔵活動量計(キッセイコムテック(株)社製nanotag)を用いて測定することができる。
【0015】
本発明における生活活動としては、特に限定されないが、例えば、ヒトにおいては、家事、仕事及び/又は育児上の活動などが挙げられる。動物においては、運動を負荷しない条件で測定した活動量がヒトでいう生活活動量に相当すると考えられる。
【0016】
また、本発明において、生活活動量は、生活活動量及び/又は生活活動時間として測定することができる。すなわち、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善は、生活活動量及び/又は生活活動時間の維持、低下予防、低下抑制又は改善を意味する。
なお、生活活動時間の低下(減少)によって、不活動時間が増加するため、本発明における生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善には、不活動時間増加の予防、抑制又は改善も含まれる。なお、本明細書において不活動時間とは、身体活動を行っていない時間、すなわち、睡眠や座位行動など安静にしている時間を意味する。
【0017】
上記生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善は、生活活動量低下の予防若しくは抑制、低下した生活活動量の改善、不活動時間増加の予防若しくは抑制、又は、増加した不活動時間の改善であることが好ましい。
【0018】
また、上記生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善が、加齢に伴う生活活動量低下の予防若しくは抑制、加齢に伴い低下した生活活動量の改善、加齢に伴う不活動時間増加の予防若しくは抑制、加齢に伴い増加した不活動時間の改善であることが好ましい。
なお、本発明において加齢とは、中高年以降、特に40歳前後以降の年齢の増加に伴う変化のことをいう。
【0019】
(セサミン類)
本発明において、セサミン類とは、セサミン及びその類縁体を含む化合物の総称である。セサミンは、ゴマに含まれる主要なリグナン化合物の一種である。セサミン類縁体としては、エピセサミンの他、例えば特開平4-9331号公報に記載されたジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン誘導体が挙げられる。セサミン類の1種以上として、化合物1種を単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。セサミン類の具体例としては、セサミン、エピセサミン、セサミノール、エピセサミノール、セサモール、セサモリン等を例示でき、これらの立体異性体又はラセミ体を単独で、または混合して使用することができる。また、セサミン類の代謝物(例えば、特開2001-139579号公報に記載)も、本発明の効果を示す限り、本発明のセサミン類に含まれるセサミン類縁体であり、本発明に使用することができる。本発明においては、セサミン類の1種以上として、セサミン及び/又はエピセサミンを好適に用いることができ、セサミン及びエピセサミン、又は、エピセサミンをより好適に用いることができ、エピセサミンをさらに好ましく用いることができる。セサミン及びエピセサミンを用いる場合、これらの比率は特に限定されないが、例えば、セサミン:エピセサミン(重量比)が1:0.1~1:9が好ましく、1:0.3~1:3がより好ましく、1:0.5~1:2がさらに好ましい。
【0020】
本発明で使用されるセサミン類は、その形態や製造方法等によって、何ら制限されるものではない。例えば、セサミンの場合は、ゴマ油から公知の方法(例えば、特開平4-9331号公報に記載された方法)によって抽出したセサミン(セサミン抽出物または精製物という)を用いることができる。また、市販のゴマ油(液状)をそのまま用いることもできる。しかしながら、ゴマ油を用いた場合には、ゴマ油特有の風味が官能的に好ましくないと評価されることもあることから、ゴマ油から抽出された無味無臭であるセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。また、ゴマ油を用いた場合、セサミン含有量が低いため、好ましい量のセサミンを配合しようとすると、処方される組成物の単位投与当りの体積が大きくなり過ぎるため、摂取に不都合を生じることがある。特に、経口投与用に製剤化した場合は、製剤(錠剤、カプセルなど)が大きくなり過ぎて摂取に支障が生じる。したがって、摂取量が少なくてよいという観点からもゴマ油からのセサミン抽出物(又はセサミン精製物)を用いることが好ましい。本発明においては、精製又は単離されたセサミン類の1種以上を使用してもよい。合成によりセサミン類を得ることもできる。その方法としては、例えば、セサミン、エピセサミンについては、Berozaらの方法(J.Am.Chem.Soc.,78,1242(1956))で合成することができる。セサミン、エピセサミンの代謝物についてはUrataらの方法(Chem.Pharm.Bull.(Tokyo),56(11)1611-2(2008))で合成することができる。
【0021】
セサミン類は、天然物や飲食品に含まれ、食経験がある化合物である。このため安全性の観点から、セサミン類は、例えば毎日摂取することにも問題が少ないと考えられる。本発明によれば、安全性が高い物質を有効成分として含む生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善用組成物を提供することができる。
【0022】
本発明の組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療的用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。非治療的とは、医療行為、すなわち人間の手術、治療又は診断を含まない概念である。
本発明の組成物は、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等の形態とすることができる。本発明の組成物は、それ自体が生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善のための飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等であってもよく、これらに配合して使用される素材又は製剤等であってもよい。
本発明の組成物は、一例として、剤の形態で提供することができるが、本形態に限定されるものではない。当該剤をそのまま組成物として、又は、当該剤を含む組成物として提供することもできる。
本発明の組成物は、経口用組成物、非経口用組成物のいずれであってもよいが、好ましくは経口用組成物である。経口用組成物としては、飲食品、経口用の医薬品、医薬部外品、飼料が挙げられ、好ましくは飲食品又は経口用医薬品であり、より好ましくは飲食品である。
【0023】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、セサミン類の1種以上に加えて、任意の添加剤、任意の成分を含有することができる。これらの添加剤及び成分は、組成物の形態等に応じて選択することができ、一般的に飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等に使用可能なものが使用できる。本発明の組成物を、飲食品、医薬品、医薬部外品、飼料等とする場合、その製造方法は特に限定されず、一般的な方法により製造することができる。
【0024】
例えば本発明の組成物を飲食品とする場合、セサミン類の1種以上に、飲食品に使用可能な成分(例えば、食品素材、必要に応じて使用される食品添加物等)を配合して、種々の飲食品とすることができる。飲食品は特に限定されず、例えば、一般的な飲食品、健康食品、健康補助食品、健康飲料、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用飲食品等が挙げられる。上記健康食品、健康補助食品、機能性表示食品、特定保健用食品等は、例えば、細粒剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、ドライシロップ剤、シロップ剤、液剤、飲料、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。
【0025】
本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、例えば、セサミン類の1種以上に、薬理学的に許容される担体、必要に応じて添加される添加剤等を配合して、各種剤形の医薬品又は医薬部外品とすることができる。そのような担体、添加剤等は、医薬品又は医薬部外品に使用可能な、薬理学的に許容されるものであればよく、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤等の1又は2以上が挙げられる。医薬品又は医薬部外品の投与(摂取)形態としては、経口又は非経口(経皮、経粘膜、経腸、注射等)投与の形態が挙げられる。本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品とする場合、経口用医薬品又は医薬部外品とすることが好ましい。経口投与のための剤形としては、液剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁液、乳剤、チュアブル剤等が挙げられる。医薬品は、非ヒト動物用医薬であってもよい。
【0026】
本発明の組成物を飼料とする場合には、セサミン類の1種以上を飼料に配合すればよい。飼料には飼料添加剤も含まれる。飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料;ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料;犬、猫、小鳥等に用いるペットフードなどが挙げられる。
【0027】
本発明の組成物に含まれるセサミン類の含有量は特に限定されず、その形態等に応じて設定することができる。
本発明の組成物中のセサミン類の総含有量は、例えば、該組成物中に0.001重量%以上が好ましく、0.01重量%以上がより好ましく、0.05重量%以上がさらに好ましく、また、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
一態様において、セサミン類の総含有量は、組成物中に0.001~10重量%が好ましく、0.01~5重量%がより好ましく、0.05~5重量%がさらに好ましい。
上記総含有量は、セサミン類の化合物を2種以上含有する場合は、これらの合計含有量である。
【0028】
本発明の組成物は、経口で摂取(経口投与)されることが好ましい。本発明の組成物の投与量(摂取量ということもできる)は特に限定されない。本発明の組成物の投与量は、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善効果が得られるような量であればよく、投与形態、投与方法、対象の体重等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
一態様において、本発明の組成物をヒト(成人)を対象に経口で摂取させる又は投与する場合、セサミン類の総投与量は、1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは1mg以上、さらに好ましくは、3mg以上、また、好ましくは200mg以下、より好ましくは100mg以下、さらに好ましくは80mg以下である。
一態様において、セサミン類の総投与量は、ヒト(成人)であれば、1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5~200mg、より好ましくは1~100mg、さらに好ましくは3~80mgである。
上記量を、1日1回以上、例えば、1日1回又は数回(例えば2~3回)に分けて、摂取させる又は投与することが好ましい。
一態様においては、上記量のセサミン類を、ヒトに経口で摂取させる又は投与することが好ましい。
一態様において、本発明の組成物は、ヒトに、体重60kgあたり、1日あたり上記量のセサミン類を摂取させる又は投与するために使用することができる。
上記総投与量は、セサミン類の化合物を2種以上使用する場合は、これらの合計量である。
一態様においては、セサミン及び/又はエピセサミンを、セサミン及びエピセサミンの総投与量として1日当たり体重60kgで、好ましくは0.5~200mg、より好ましくは1~100mg、さらに好ましくは3~80mg、ヒト(成人)に経口で摂取させる又は投与することが好ましい。
【0030】
本発明の組成物は、継続して摂取又は投与されるものであることが好ましい。セサミン類は、継続的に摂取又は投与されることによって、上記の効果が高まることが期待される。一態様において、本発明の組成物は、好ましくは1週間以上、より好ましくは4週間以上、さらに好ましくは8週間以上継続して、特に好ましくは12週間以上継続して摂取又は投与されることが好ましい。
【0031】
本発明の組成物を摂取させる又は投与する対象(投与対象ということもできる)は、特に限定されず、ヒト及びヒト以外の動物に摂取させることができる。ヒト以外の動物としては、例えば、産業動物、ペットおよび実験動物等が挙げられる。具体的に、産業動物とは、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ及びヒツジ等の家畜、ニワトリ、アヒル、ウズラ、七面鳥及びダチョウ等の家禽、並びに、ブリ、ハマチ、マダイ、マアジ、コイ、ニジマス及びウナギ等の魚類等、産業上飼養することが必要とされている動物をいう。ペットとはイヌ、ネコ、マーモセット、小鳥及びハムスター等のいわゆる愛玩動物、コンパニオン・アニマルをいい、実験動物とはマウス、ラット、モルモット、ビーグル犬、ミニブタ、アカゲザル及びカニクイザル等、医学、生物学、農学及び薬学等の分野で研究に供用される動物を表す。
【0032】
本発明の組成物の投与対象は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物であり、より好ましくはヒトである。
一態様において、投与対象として、生活活動量の維持、低下予防、低下抑制又は改善を必要とする又は希望する対象が挙げられる。このような対象として、例えば、中高年の者、生活活動量及び/又は生活活動時間の維持、低下予防、低下抑制又は改善を必要とする又は希望する対象、生活活動を行う活力又は気力の低下を感じている対象等が挙げられる。中高年の者は、例えば、40歳以上のヒトであってよい。中高齢者は、高齢者を含む概念である。一態様において中高年者の中でも、対象として高齢者が好ましい。高齢者は、例えば、60歳以上又は65歳以上のヒトであってよい。本発明の組成物は、例えば、生活活動量及び/又は生活活動時間の維持、低下予防、低下抑制又は改善により予防又は改善が期待できる症状又は疾患の予防等を目的として、健常者に対して使用することもできる。
【0033】
本発明の組成物には、生活活動量及び/又は生活活動時間の維持、低下予防、低下抑制又は改善により発揮される機能の表示が付されていてもよい。このような表示として、例えば、「加齢とともに低下する生活活動量を維持又は向上させる」、「加齢とともに低下する生活活動時間を維持又は延長する」、「加齢とともに増加する不活動時間の増加を抑制、予防、短縮又は改善する」、「日常生活における歩行などの生活活動量を維持または向上させる」、「趣味やレジャー、仕事上の活動などの生活活動量を維持または向上させる」、「活動的な生活をサポートする」、「日常生活動作能力の低下抑制、低下予防、維持、改善又は向上」、及び、「自立した生活活動の維持」からなる群から選択される1又は2以上の機能の表示が付されていてもよい。
本発明の一態様において、本発明の組成物は、上記の表示が付された飲食品であることが好ましい。また上記の表示は、上記の機能を得るために用いる旨の表示であってもよい。
【0034】
本発明は、以下の方法も包含する。
セサミン類の1種以上を投与する、生活活動量及び/又は生活活動時間の維持、低下予防、低下抑制又は改善方法。
【0035】
本発明は、以下の使用も包含する。
生活活動量及び/又は生活活動時間の維持、低下予防、低下抑制又は改善のための、セサミン類の1種以上の使用。
上記方法及び使用は、治療的な方法又は使用であってもよく、非治療的な方法又は使用であってもよい。
セサミン類の1種以上を対象に投与することにより、生活活動量及び/又は生活活動時間の維持、低下予防、低下抑制又は改善が可能となる。
【0036】
上記の方法及び使用において、セサミン類及びその好ましい態様は、上述した本発明の組成物と同じである。セサミン類の1種以上として、セサミン類の化合物1種を使用してもよく、2種以上を使用してもよい。上記方法及び使用においては、1日に1回以上、例えば、1日1回~数回(例えば2~3回)、セサミン類の1種以上を対象に投与する(摂取させる)ことが好ましい。上記方法及び使用においては、セサミン類を、経口投与(摂取)することが好ましい。上記の使用は、好ましくはヒト又は非ヒト哺乳動物、より好ましくはヒトにおける使用である。
【0037】
上記方法及び使用においては、所望の作用が得られる量(有効量ということもできる)のセサミン類の1種以上を使用すればよい。セサミン類の好ましい投与量や投与対象等は上述した本発明の組成物と同じである。セサミン類は、そのまま投与してもよく、これを含む組成物として投与してもよい。例えば、上述した本発明の組成物を使用してもよい。
【0038】
本発明は、本発明の組成物を製造するための、セサミン類の1種以上の使用も包含する。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全ては、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例0039】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。一連の動物実験は、動物愛護管理法他関連法令を遵守し、社内動物実験委員会の審査を経て機関の長が承認した計画に基づき実施した。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
<実施例1:セサミン・エピセサミン混合物(1:1)生活活動量低下抑制効果(in vivo試験)>
本実験では運動負荷をかけない条件で行うため、測定された活動量はすべてヒトでいう生活活動量に相当すると考えられる。通常飼料群とセサミン・エピセサミン含有飼料群は、生活活動量が均等になるように群を分けた。生活活動量の測定には、加速度計測器nanotag(キッセイコムテック株式会社製)を使用した。14ヵ月齢のSlc:SD雄性ラットにイソフルラン麻酔下で、頸部皮下に加速度計測器を埋め込み、回復を確認した後、活動期(暗期)の活動量を3日間測定した。生活活動量の測定では、一定強度以上の振動の数を継続して計測し、振動数の合計を生活活動量とした。通常飼料(AIN-93M、日本クレア(株)製)又は通常飼料に0.1重量%セサミン及びエピセサミン混合物(セサミン:エピセサミン(重量比)=1:1)を含有させた飼料(試験食)を摂取させる群に分け(各8匹/群)、それぞれの飼料(試験食)を8ヶ月間摂取させた。通常飼料を摂取させた群を老齢通常飼料群(通常飼料群)、0.1重量%セサミン及びエピセサミンを含有する飼料を摂取させた群を、老齢セサミン・エピセサミン含有飼料群(セサミン・エピセサミン含有飼料群)という。なおセサミン及びエピセサミンを含有する飼料は、セサミン及びエピセサミンの総含有量が0.1重量%であり、通常飼料にセサミン及びエピセサミン混合物(セサミン:エピセサミン(重量比)=1:1)を混合して調製された。
17カ月齢、22ヵ月齢時点で活動期の生活活動量を1週間測定した。
動物の健康状態を把握するため、定期的に摂餌量と体重を測定し、試験継続が困難と判断したラットは、適切な安楽死処分を実施し、解析から除外した。最終的解析対象は、老齢通常飼料群4匹、老齢セサミン・エピセサミン含有飼料群6匹となった。
【0041】
図1に、試験食開始前の生活活動量を1としたときの相対生活活動量の変化を示す。
図1のグラフにおいて、●は老齢通常飼料群、▲は老齢セサミン・エピセサミン含有飼料群である(*:p<0.05、老齢通常飼料群に対して、repeated measures two-way ANOVA)。値が低くなるほど活動性が低下していることを示す。
図1に示す通り、通常飼料群では、加齢に伴って生活活動量が低下していた。一方で、セサミン・エピセサミン含有飼料群は、加齢に伴う生活活動量の低下が抑制され、反復測定の解析を実施したところ、試験食と時間の間に交互作用が見られた(p=0.014)。22ヵ月齢では通常飼料群に比べて、セサミン・エピセサミン含有飼料群の生活活動量が有意に高かった(Bonferoniの検定、p=0.023)。
【0042】
<実施例2:セサミン又はエピセサミン単独投与による生活活動量低下抑制効果(in vivo試験)>
実施例2は、セサミン又はエピセサミンのどちらがより生活活動量低下抑制に寄与しているか検討するための試験である。基本的操作は、実施例1にしたがって実施した。
14ヵ月齢のSlc:SD雄性ラットを活動量が均等になるように、通常飼料(CE―2、日本クレア(株)社製)、又は、0.1%セサミン若しくはエピセサミン含有飼料を摂取させる群に分け(3匹/群)、それぞれの飼料(試験食)を1ヶ月間摂取させた。試験食摂取1か月後の16ヵ月齢の時点で活動期の生活活動量を測定した。最終的解析対象は、通常飼料群2匹、セサミン含有飼料群及びエピセサミン含有飼料群は各3匹となった。
表1に、試験食開始前の生活活動量を1としたときの、試験食摂取1カ月後の各群の生活活動量を示す。値が低くなるほど生活活動量が低下していることを示す。表1に示す通り、通常飼料群では、生活活動量が低下していた。一方で、セサミン含有飼料群及びエピセサミン含有飼料群では、通常飼料群に比べて、加齢による生活活動量の低下が抑制された。エピセサミン含有飼料群では、加齢による生活活動量の低下が認められなかった。
【0043】
【0044】
以上のことからセサミン及びエピセサミンは、加齢による生活活動量の低下を抑制し、生活活動量を維持、低下予防、低下抑制又は改善したことが示唆された。また、その作用はエピセサミンでより強いことが明らかとなった。