(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099002
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】免疫調節化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240717BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240717BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240717BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240717BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240717BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240717BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/705
A61K38/17
A61P37/02
A61P33/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068462
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2021162614の分割
【原出願日】2016-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】500057995
【氏名又は名称】ザ カウンシル オブ ザ クイーンズランド インスティテュート オブ メディカル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル ワイクス
(57)【要約】
【課題】免疫応答の調節に用いる化合物の提供を目的とする。
【解決手段】より具体的には、本発明は、Th1免疫応答の調節に用いるオリゴマー形態のPD-L2を開示している。本発明の化合物は、Th1を媒介とする広範な障害で有用であり、その障害には病原性感染症と過剰増殖性障害が含まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[P]n (I)
(式中、
Pは、現われるごとに独立に、タンパク質性分子であって、前記タンパク質性分子の自己集合を促進してポリペプチド複合体を形成する少なくとも1のオリゴマー化ドメインに作用可能に連結されたPD-L2ポリペプチドの可溶性外部ドメイン含有部分を含むか、当該部分からなるか、又は当該部分から実質的になる、前記タンパク質性分子を表し、ここで当該可溶性部分及び少なくとも1のオリゴマー化ドメインが、一本鎖キメラペプチドの形態であり、そして
nは4よりも大きいか又は4に等しい整数を表わす)。
で表わされるポリペプチド複合体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、免疫応答の調節に用いる化合物に関する。より具体的には、本発明は、Th1免疫応答の調節に用いるオリゴマー形態のPD-L2に関する。本発明の化合物は、Th1を媒介とする広範な障害で有用であり、その障害には病原性感染症と過剰増殖性障害が含まれる。
【背景技術】
【0002】
プログラムされた細胞死タンパク質1(PD-1)は、エフェクタT細胞に対するブレーキとしての作用と組織微小環境で免疫応答を低下させる作用を通じて免疫を調節する際の重要な役者であると認識されている。PD-1は、免疫抑制CD4+ T細胞(Treg)と消耗CD8+ T細胞を含む活性化されたT細胞の表面で発現しているだけでなく、B細胞、骨髄性樹状細胞(MDC)、単球、胸腺細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞の表面でも発現している。PD-1のこの広範な発現は、効果的な免疫とT細胞のホメオスタシス維持に必要なPD-1シグナル伝達経路にさまざまな意味があることを示唆している(Gianchecchi他、Autoimmun.Rev.第12巻:1091~1100ページ、2013年)。
【0003】
重要なことだが、PD-1シグナル伝達経路は、正常な個体における中枢性寛容と末梢性寛容の両方の維持に寄与する。胸腺では、PD-1とそれに対応するリガンドの相互作用が陽性選択を抑制し、そのことによってCD4- CD8-ダブルネガティブ細胞からCD4+ CD8+ダブルポジティブT細胞への形質転換を妨げる(Keir他、J.Immunol.第175巻:7329~7379ページ、2005年)。PD-1シグナル伝達は、陰性選択を逃れる自己反応性エフェクタT細胞と炎症性エフェクタT細胞を抑制することで、免疫を媒介とした二次的な組織損傷を回避すすることにも重要な役割を果たしている(Keir他、J.Exp.Med.第203巻:883~895ページ、2006年)。
【0004】
PD-1には2つのリガンドが知られている。1つはタンパク質死リガンド1(PD-L1;Freeman他、J.Exp.Med.第192巻:1027~1034ページ、2000年)であり、ヒトではB7-H1としても知られており(Dong他、Nat.Med.第5巻:1365~1369ページ、1999年)、もう1つはタンパク質死リガンド2(PD-L2;Latchman他、Nat.Immunol.第2巻:261~268ページ、2001年)であり、B7-DCとしても知られる(Tseng他、J.Exp.Med.第193巻:839~846ページ、2001年)。PD-L1とPD-L2の発現パターンはまったく異なっている。PD-L1は、多彩な免疫細胞と非免疫細胞によって構成的に発現され、大半の正常な組織細胞において、強い炎症シグナルの存在下で上方調節されるように見える(Matzinger他、Nat.Rev.Immunol.第11巻:221~230ページ、2011年;Muhlbauer他、J.Hepatol.第45巻:520~528ページ、2006年;Pinchuk他、Gastroenterol.第135巻:1228~1237ページ、2008年;Stanciu他、J.Infect.Dis.、第193巻:404~412ページ、2006年)。それとは対照的に、PD-L2の構成的基礎発現はPD-L1と比べて少ない。PD-L2の発現は、当初は抗原提示細胞(単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)など)に限定されると考えられていた(Latchman他、Nature Immunol.第2巻:261~268ページ、2001年;Yamazaki他、J.Immunol.第169巻:5538~5545ページ、2002年)が、微小環境刺激に応じてPD-L2の発現を多彩な他の免疫細胞と非免疫細胞の表面で誘導できることが、最近いくつかのグループによって示された(Kinter他、J.Immunol.第181巻:6738~6746ページ、2008年;Zhong他、Eur.J.Immunol.第37巻:2405~2410ページ、2007年;Messal他、Mol.Immunol.第48巻:2214~2219ページ、2011年;Lesterhuis他、Mol.Immunol.第49巻:1~3ページ、2011年)。
【0005】
PD-1とそれに対応するリガンドは、悪性細胞とその周囲の微小環境細胞で異常に発現している。腫瘍の微小環境内では、PD-1は、異なる多くのタイプの腫瘍からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の多くの割合で高度に発現しており、局所的なエフェクタ免疫応答を抑制する。TILでのPD-1の発現は、エフェクタ機能(腫瘍細胞に対するサイトカイン産生と細胞傷害効果)の低下および/またはいくつかのタイプの腫瘍(腎細胞がん、転移性黒色腫のほか、胃がん、乳がん、卵巣がん、膵臓がん、肺がんが含まれる)における転帰不良と関係している(Thompson他、Clin.Cancer Res.第13巻:1757~1761ページ、2007年;Zhang他、Mol.Immunol.第7巻:389~395ページ、2010年;Ahmadzadeh M他、Blood第114巻:1537~1544ページ、2009年;Shi他、Int.J.Cancer第128巻:887~896ページ、2011年)。同様に、PD-L2は一部のヒト腫瘍で上方調節されていることが観察されており、転帰不良に結びついていることもある(Rozali他、Clin.Dev.Immunol.第2012巻:656340ページ、2012年)。
【0006】
腫瘍微小環境でのがん関連免疫抑制にPD-1/PD-リガンド経路が関与している可能性があるため、その経路を標的とすることが魅力的な治療戦略として提案されてきた。これに関するいくつかの研究では、PD-1/PD-L1経路に対する抗体を阻止することの治療効果が調べられていて、腫瘍制御率の向上が証明されている(Curran他、Proc.Natl.Acad Sci.USA第107巻:4275~4280ページ、2010年;Iwai他、Proc.Natl.Acad Sci.USA第99巻:12293~12297ページ、2002年;Pilon-Thomas他、J.Immunol.184巻:3442~3449ページ、2010年;Zhang他、Blood第114巻:1545~1552ページ、2009年)。しかし明確な治療戦略としてのPD-L2の阻止を調べた研究はほとんど存在していない。少数の研究でPD-L2阻止戦略が用いられたが、常にPD-L1を標的とすることとの組み合わせであった(Parekh他、J.Immunol.第182巻:2816~1826ページ、2009年;He他、J.Immunol.第173巻:4919~4928ページ、2004年)ため、抗PD-L2戦略の真価を引き出すことはできなかった。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一部は、抗原特異的免疫エフェクタ細胞(IEC)(Tリンパ球が含まれる)と相互作用する抗原提示細胞(APC)などの細胞の表面におけるPD-L2の発現がTh1関連障害の重症度と逆相関することと、Th1免疫の確立にはPD-L2が必要であることが判明したことに基づいている。このようなIEC相互作用細胞の表面でのPD-L2のクラスター化がPD-1へのPD-L1の結合を抑制し、そのことによってIECに対するPD-L1の免疫抑制機能を抑制することが可能であることも見いだされた。驚くべきことに、本発明の発明者は、オリゴマー化度が2超であるPD-L2オリゴマーが、PD-1への結合に関して二量体PD-L2よりも有意に大きい親和性を有することと、そのような「高次PD-L2オリゴマー」はIEC機能(CD4+T細胞の機能が含まれる)に対するPD-L1の抑制効果を顕著に低下させることができることも明らかにした。これらの発見は、Th1免疫を調節するための新規な薬剤と方法で実用化が進められており、それを以下に記載する。
【0008】
そこで1つの側面では、本発明により、Th1免疫を刺激または増進するのに役立つポリペプチド複合体が提供される。この複合体は、一般に、式(I):
[P]n (I)
で表わされる。ただしこの式において、
Pは、現われるごとに独立に、PD-L2ポリペプチドを含むタンパク質性分子、またはPD-L2ポリペプチドからなるタンパク質性分子、または主にPD-L2ポリペプチドからなるタンパク質性分子を表わし;
nは2よりも大きい整数を表わす。
【0009】
Pは、腫瘍新生血管標的ドメイン、または腫瘍関連新生血管標的ドメインを欠いていることが好ましい。
【0010】
いくつかの実施態様では、PD-L2ポリペプチドは、PD-L2の可溶性部分を含む、またはPD-L2の可溶性部分からなる、または主にPD-L2の可溶性部分からなる。可溶性部分の具体的な例には、シグナルペプチドあり、またはなしのPD-L2外部ドメインが含まれる。特別な実施態様では、タンパク質性分子は、PD-L2膜貫通ドメインとPD-L2細胞質ドメインの一方または両方を欠いている。
【0011】
nは、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上のいずれかであることが好ましい。このタイプの具体例では、nは、100以下、50以下、30以下、20以下のいずれかである。特別な実施態様では、nは、3~20の範囲内、好ましくは4~16の範囲内、より好ましくは8~12の範囲内である。
【0012】
タンパク質性分子は互いに化学的にカップルさせて形成することができる。あるいは個々のタンパク質性分子が、ポリペプチド複合体を形成するためそれらタンパク質性分子の自己組織化を促進する少なくとも1つのオリゴマー化ドメインをさらに含むことができる。これらの実施態様では、少なくとも1つのオリゴマー化ドメインは、典型的にはPD-L2ポリペプチドに機能可能に接続されて一本鎖キメラポリペプチドを形成している。少なくとも1つのオリゴマー化ドメインがPD-L2ポリペプチドに機能可能に接続されている実施態様では、本発明により、別の1つの側面において、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載したPD-L2ポリペプチドを含むタンパク質性分子、またはPD-L2ポリペプチドからなるタンパク質性分子、または主にPD-L2ポリペプチドからなるタンパク質性分子であって、式(I)のポリペプチド複合体を形成するためそのタンパク質性分子の自己組織化を促進する少なくとも1つのオリゴマー化ドメインに機能可能に接続されているタンパク質性分子が提供される。オリゴマー化ドメインは、PD-L2ポリペプチドの上流(すなわちそのPD-L2ポリペプチドのアミノ末端)および/または下流(すなわちそのPD-L2ポリペプチドのカルボキシ末端)に機能可能に接続されている。例えば少なくとも1つのオリゴマー化ドメインがPD-L2ポリペプチドの下流に機能可能に接続されている実施態様では、タンパク質性分子は、式(II):
PD-L2-L-OMDA (II)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含む、またはそのポリペプチド一本鎖からなる、または主にそのポリペプチド一本鎖からなる。ただしこの式において、
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは3以上、好ましくは3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、結合またはペプチドリンカーである。
【0013】
あるいはタンパク質性分子は、式(III):
PD-L2-L-OMDA-L-OMDB (III)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含む、またはそのポリペプチド一本鎖からなる、または主にそのポリペプチド一本鎖からなる。ただしこの式において、
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは2以上、好ましくは2、3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、現われるごとに独立に、結合またはペプチドリンカーを表わし;
OMDBは、j個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(jはiよりも大きい整数、好ましくはi+1、i+2、i+3、i+4、i+5、i+6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインである。
【0014】
このタイプの具体例では、iは2であり、jは4または6である。
【0015】
少なくとも1つのオリゴマー化ドメインがPD-L2ポリペプチドの上流に機能可能に接続されている実施態様では、タンパク質性分子は、式(IV):
OMDA-L-PD-L2 (IV)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含む、またはそのポリペプチド一本鎖からなる、または主にそのポリペプチド一本鎖からなる。ただしこの式において、
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは3以上、好ましくは3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、結合またはペプチドリンカーであり;
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わす。
【0016】
あるいはタンパク質性分子は、式(V):
OMDB-L-OMDA-L-PD-L2 (V)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含む、またはそのポリペプチド一本鎖からなる、または主にそのポリペプチド一本鎖からなる。ただしこの式において、
OMDBは、j個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(jは2以上、好ましくは2、3、4、5、6のいずれかであり;
Lは、現われるごとに独立に、結合またはペプチドリンカーを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(iはjよりも大きい整数、好ましくはj+1、j+2、j+3、j+4、j+5、j+6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わす。
【0017】
このタイプの具体例では、jは2であり、iは4または6である。
【0018】
いくつかの実施態様では、結合パートナーの存在下で個々のオリゴマー化ドメイン(例えばOMDAまたはOMDB)が組織化してヘテロオリゴマーになる。オリゴマー化ドメインと結合パートナーは、特異的結合ペアのメンバーが可能性であり、その具体例に含まれるのは、ビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン、抗原-抗体、ハプテン-抗ハプテン、リガンド-受容体、受容体-補助受容体である。
【0019】
本発明では、適切な任意のオリゴマー化ドメインの利用も考える。オリゴマー化ドメインの例に含まれるのは、二量体化ドメイン(例えば免疫グロブリンFcドメイン、ロイシンジッパーなど)、三量体化ドメイン(例えば大腸菌アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼ(ATCアーゼ)の触媒性サブユニット、バクテリオファージT4フィブリチンからの「フォールドン」三量体化配列、ネック領域ペプチド、ヒト肺界面活性Dタンパク質、オリゴマー化コイルドコイルアドヒーシン、エンベロープウイルスのクラスI融合タンパク質の相補的7アミノ酸反復領域など)、四量体化ドメイン(例えばテトラブラキオンのコイルドコイルドメイン)、五量体化ドメイン(例えばトリプトファンジッパーまたは軟骨オリゴマーマトリックスドメイン(COMP)の五量体化ドメインなど)、六量体化ドメイン(例えばIgA抗体の重鎖のC末端からのテールピース)である。
【0020】
いくつかの実施態様では、少なくとも1つのオリゴマー化ドメインはPD-L2ポリペプチドに直接接続されている。別の実施態様では、少なくとも1つのオリゴマー化ドメインペプチドリンカーによって接続されている。そのペプチドリンカーは約1個~約100個のアミノ酸残基(と、その間のあらゆる整数値のアミノ酸残基)からなるが、通常は約1個~約30個のアミノ酸残基(と、その間のあらゆる整数値のアミノ酸残基)であり、典型的には約1個~約20個のアミノ酸残基(と、その間のあらゆる整数値のアミノ酸残基)である。
ペプチドリンカーは、タンパク質性分子の精製を促進する精製部分と、タンパク質性分子に対する免疫応答を調節する免疫調節部分と、構造的柔軟性付与部分から選択された少なくとも1つの部分を含むことができる。
【0021】
タンパク質性分子は、合成で、または組み換え手段によって作製することができる。タンパク質性分子が組み換えによって作製される実施態様では、本発明により、別の1つの側面において、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載したタンパク質性分子をコードする配列を含んでいて宿主細胞の中で機能可能な調節エレメントに機能可能に連結された核酸コンストラクトが提供される。
【0022】
関連する1つの側面では、本発明により、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載した核酸コンストラクトを含有する宿主細胞が提供される。宿主細胞として、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞が可能である。
【0023】
タンパク質性分子が少なくとも1つのオリゴマー化ドメインを含む実施態様では、タンパク質性分子は適切な条件下(例えば水溶液中)で自己組織化して式(I)のポリペプチド複合体を形成することができる。したがって別の1つの側面では、本発明により、ポリペプチド複合体を形成する方法として、ポリペプチド複合体の形成に適した条件下(例えば水溶液内)で、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載したタンパク質性分子を組み合わせることを含んでいて、そうすることにより、n個のサブユニットのタンパク質性分子からなるオリゴマーを含む方法が提供される。
【0024】
本発明により、別の1つの側面では、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載したポリペプチド複合体と、医薬として許容可能な基剤またはアジュバントとを含む免疫調節組成物が提供される。
【0025】
本発明のポリペプチド複合体または組成物は、対象または生産動物でTh1免疫応答を含む免疫応答を刺激する、または誘起する、または増大させるのに役立つ。したがって本発明の別の1つの側面により、対象でTh1免疫応答を含む免疫応答を刺激する、または誘起する、または増大させる方法として、その対象に、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載したポリペプチド複合体または組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0026】
関連する1つの側面では、本発明により、対象のTh1関連疾患またはTh1関連障害を処置する方法が提供される。これらの方法は、一般に、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載したポリペプチド複合体または組成物の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0027】
いくつかの実施態様では、対象でTh1免疫が損なわれたことが判明したときに本発明のポリペプチド複合体または組成物を対象に投与する。対象のTh1免疫状態は、適切な任意の手段を利用して評価することができる。有利な実施態様では、対象のTh1免疫状態の評価は、(1)対象から得られたサンプルのTh1免疫状態バイオマーカープロファイルとして、そのサンプル中の少なくとも1つのTh1免疫状態バイオマーカー(その少なくとも1つのTh1免疫状態バイオマーカーには、そのサンプル中の免疫エフェクタ細胞(IEC)相互作用細胞と相互作用する細胞のPD-L2が含まれ、場合によってはPD-L1も含まれる)のバイオマーカー値を含むプロファイルを明らかにすることと;(2)前記バイオマーカー値を用い、その対象のTh1免疫状態の少なくとも一部を示す指標を求めることを含む方法によってなされる。特別な実施態様では、IEC相互作用細胞はAPCであり、そのAPCは、樹状細胞とマクロファージからなるグループから選択されることが適切である。このタイプの代表的な例では、APCはCD11c発現樹状細胞である。別の実施態様では、IEC相互作用細胞は腫瘍細胞である。
【0028】
バイオマーカー値は、対象から得られたサンプル中のTh1免疫状態バイオマーカーの濃度を少なくとも部分的に示すことが好ましく、このタイプのいくつかの実施態様では、バイオマーカー値は、Th1免疫状態バイオマーカーの含量を含んでいる。代表的な一例では、
個々のバイオマーカー値が、細胞表面のTh1免疫状態バイオマーカーを発現する抗原提示細胞(PD-L2+樹状細胞、PD-L2+腫瘍細胞など)の割合を含んでいる。このタイプのいくつかの実施態様では、Th1免疫状態バイオマーカーはPD-L2であり、バイオマーカー値は、IEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)の表面上のPD-L2クラスター化の測定値である。
【0029】
対象のTh1免疫状態が判断されると、いくつかの実施態様では、サンプル中でPD-L2のレベルが、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫の存在と相関するPD-L2の対照レベルと比べて低下していて、そのことによってTh1免疫の少なくとも一部が損なわれていることを指標が示していると判断される。
【0030】
別の実施態様では、サンプル中のPD-L2のレベルは、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫の存在と相関するPD-L2の対照レベルとほぼ同じであるため、指標は、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫を少なくとも部分的に示していると判断される。さらに別の実施態様では、サンプル中のPD-L2のレベルは、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫の存在と相関するPD-L2の対照レベルと比べて上昇しているため、指標は、Th1免疫の上昇を少なくとも部分的に示していると判断される。これらの実施態様の代表的な例では、対象に本発明のポリペプチド複合体または組成物を投与しない。
【0031】
Th1免疫状態の評価に用いる指標は、少なくとも1つのTh1免疫状態バイオマーカーがPD-L1をさらに含んでいるとき、信頼性がより高くて診断力がより大きくなる。したがっていくつかの実施態様では、一対のTh1免疫状態バイオマーカーからのバイオマーカー値を用いて指標を求める。例えばいくつかの好ましい実施態様では、その一対のバイオマーカーはPD-L2とPD-L1である。本発明の方法で2つ以上のTh1免疫状態バイオマーカーが用いる場合には、その方法は、バイオマーカー値に組み合わせ関数を適用することをさらに含むことが好ましい。この点に関し、適切な組み合わせ関数の具体例の選択は、付加モデル、線形モデル、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークモデル、ランダムフォレストモデル、回帰モデル、遺伝的アルゴリズム、アニーリングアルゴリズム、加重合計、最近傍モデル、確率モデルを含むグループからなされる。
【0032】
上に説明するとともに本明細書の別の箇所に記載した方法は、(a)第1のTh1免疫状態バイオマーカーのバイオマーカー値を求め;(b)第2のTh1免疫状態バイオマーカーの対応するバイオマーカー値を求め;(c)その第1のTh1免疫状態バイオマーカーとその第2のTh1免疫状態バイオマーカーに関して記録したバイオマーカー値を用いて前記指標を求めることを含んでいて、その指標が、その第1のTh1免疫状態バイオマーカーとその第2のTh1免疫状態バイオマーカーに関して記録したバイオマーカー値の比を示すことが好ましい。このタイプの具体的な方法では、第1のTh1免疫状態バイオマーカーはPD-L2であり、第2のTh1免疫状態バイオマーカーはPD-L1である。一例として、いくつかの実施態様では、サンプルから求めた第1のTh1免疫状態バイオマーカーと第2のTh1免疫状態バイオマーカーの値の比(「サンプルTh1免疫状態バイオマーカー比」)は、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫の存在と相関する対照PD-L2:PD-L1バイオマーカー値の比と比べて低下していて、Th1免疫の少なくとも一部が損なわれていることを指標が示していると判断される。サンプルのバイオマーカー値の比は、(例えばTh1免疫応答が正常であるか損なわれていない対照から得られた対照サンプルから求められる)対照バイオマーカー値の比の約95%以下、94%以下、93%以下、92%以下、91%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下のいずれか(とその間のあらゆる整数値)であることが適切である。
【0033】
逆に、サンプルのPD-L2:PD-L1バイオマーカー値の比が、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫の存在と相関する対照PD-L2:PD-L1バイオマーカー値の比と比べて上昇している場合には、Th1免疫の増大を指標が少なくとも部分的に示していると判断される。その場合、サンプルのPD-L2:PD-L1バイオマーカー値の比は、(例えばTh1免疫応答が正常であるか損なわれていない対照から得られた対照サンプルから求められる)対照バイオマーカー値の比の少なくとも約105%、106%、107%、108%、109%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%のいずれか(とその間のあらゆる整数値)である。別の実施態様では、サンプルのPD-L2:PD-L1バイオマーカー値の比が、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫の存在と相関する対照PD-L2:PD-L1バイオマーカー値の比とほぼ同じだと、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫を指標が少なくとも部分的に示していると判断される。その場合には、サンプルのPD-L2:PD-L1バイオマーカー値の比は、通常は、(例えばTh1免疫応答が正常であるか損なわれていない対照から得られた対照サンプルから求められる)対照バイオマーカー値の比の約96%~104%(とその間のあらゆる整数値)である。これらの実施態様の代表的な例では、対象に本発明のポリペプチド複合体または組成物を投与しない。
【0034】
タンパク質バイオマーカーまたは核酸バイオマーカーを測定するための公知のどの技術も本発明で用いるのに適している。例えばバイオマーカーの測定は、フローサイトメトリー、イムノアッセイ、質量分析、シークエンシング用プラットフォーム、アレイ、ハイブリダイゼーション用プラットフォームや、これらの組み合わせを用いて実施することができる。
【0035】
本発明の発明者の知見により、Th1免疫状態が望ましくない疾患および/または状態(本明細書では、同じ意味で「Th1関連疾患」または「Th1関連障害」と呼ぶ)を診断する方法と、そのような疾患を処置するため本発明のポリペプチド複合体または組成物を含む治療薬を投与する方法が可能になる。したがって別の1つの側面では、本発明により、上に説明するとともに本明細書の別の箇所に記載した方法において、上記の指標を用いてTh1関連疾患またはTh1関連障害の存在または不在を診断する方法が提供される。いくつかの実施態様では、疾患または障害はTh1免疫状態の低下または抑制と関係しており、対象から得られたサンプル中のPD-L2のレベルが所定の閾値未満であるときにその疾患または障害であると診断される。例えばTh1免疫状態の低下または抑制に関連する疾患または障害は、転移性のがんを含むがん、または病原性感染症である可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、細胞の表面におけるバイオマーカー発現を特徴づけるFACS分析からのグラフ表示出力である。DCの表面におけるPD-L2発現は、ヒトのマラリア原虫血症と逆相関している。(A~C)7人の健康なボランティアにP.falciparum(ヒト熱帯熱マラリア原虫)を接種し、感染前と感染後7日目に、血液で(A)PD-L1と(B)PD-L2を発現しているCD11c
+ DCの割合を調べた。(C)血液1ml当たりの寄生虫の数と%PD-L2:%PD-L1 DCの比の関係を示すプロット。R101~R108は、各ボランティアを表わす。p値は、全体の勾配がゼロという帰無仮説を検定している。
【0037】
【
図2】
図2は、(A)非致死性のP.chabaudiマラリアまたはP.yoelii 17XNLマラリアに感染して典型的な感染経過を辿るマウスにおける寄生虫血症の割合の平均値を40日後までモニタして示したグラフ表示である。(B)致死性のP.yoelii YMまたはP.bergheiに感染して典型的な感染経過を辿るマウスにおける寄生虫血症の割合の平均値を10日間モニタした。誤差棒はSEMを表わす(n=4~8)。
【0038】
【
図3】
図3は、(A)PD-L1を発現しているすべてのCD11c
+ DCの割合と、(B)ナイーブマウスと感染したマウス(感染後7日目)に由来するPD-L1
+ CD11c
+脾臓DCの表面でのPD-L1発現の平均蛍光強度(MFI)を示すグラフ表示である。(C)PD-L2を発現しているすべてのCD11c
+ DCの割合と、(D)ナイーブマウスと感染したマウス(感染後7日目)に由来するPD-L2
+ CD11c
+脾臓DCの表面でのPD-L2発現のMFI。散布図の棒は平均値を表わす。マッチした0日目のヒトサンプルと7日目のヒトサンプルの間の有意性を、ウィルコクソンの符号付き順位和検定によって分析した。多数の群の間の有意性は、テューキーの多重比較検定を伴う一元配置分散分析を利用して分析した。(群間の比較に関して* p<0.05;** p<0.01;*** p<0.001;****p<0.0001)。(A)と(C)のデータは、同様の結果が得られた独立した実験を総合したデータである。
【0039】
【
図4】
図4は、致死性マラリアと非致死性マラリアに由来するDCの表面におけるPD-L1とPD-L2の発現レベルを示すグラフ表示である。(A)~(E)ナイーブマウス(A)、非致死性P.yoelii 17XNLマラリア株に感染したマウス(B)、非致死性P.chabaudiマラリア株に感染したマウス(C)、致死性P.yoelii YMマラリア株に感染したマウス(D)、致死性P.bergheiマラリア株に感染したマウス(E)いずれかからの生きているCD19
- CD3
- D11c
+ DCの表面におけるPD-L1発現、PD-L2発現、CD8発現のフローサイトメトリー・プロファイル。(F)PD-L1とPD-L2を発現しているナイーブマウスと感染したマウス(感染後7日目)からのCD11c
+脾臓DCのMFIを、
図3Bと
図3Dで使用したのとは電圧設定が異なる別のフローサイトメーターで測定した反復実験。(G)DC(ナイーブDC、P.yoelii 17XNLに感染してから7日目のDC、P.yoelii YMに感染してから7日目のDC)から単離したRNAからのPD-L1とPD-L2の定量RT-PCR分析。結果は、3つのハウスキーピング遺伝子(CxxC1、TBP、mRPL13A)の幾何平均に規格化してある。数値は、3回の独立した実験の平均値±SEMとして表わすとともに、感染していないマウスからの結果に対する相対値として表わしてある。
【0040】
【
図5】
図5は、PD-L2がマラリア感染からの免疫と生存を改善することを示すグラフ表示である。(A~C)(A)PD-L2 koマウスと野生型マウス(n=4)または(B)ラットIgGまたは抗PD-L2阻止抗体で処置した野生型マウス(n=5)で典型的な経過を辿るP.yoelii 17XNLマラリアに関する寄生虫血症の割合の平均値と、(C)ラットIgGまたは抗PD-L2阻止抗体で処置した野生型マウス(n=5)で典型的な経過を辿るP.chabaudiマラリアに関する寄生虫血症の割合の平均値(対数スケール)。矢印は、ラットIgGで処置したマウスでは抗PD-L2で処置したマウスよりも寄生虫が4日早く消えたことを示している。データは、同様の結果が得られた2つの独立した実験のうちの1つを表わしている。両側でのノンパラメトリックなマン-ホイットニーのU検定を利用して所定の時点における有意性を分析した。誤差棒はSEMを表わす(* p<0.05;** p<0.005)。
【0041】
【
図6】
図6は、PD-L2が、P.yoelii 17XNLマラリアの間に防御、症状、Th1免疫を調節することを示すグラフ表示である。(A~B)(A)野生型マウスとPD-L2 koマウス(n=5)または(B)ラットIgGまたは抗PD-L2阻止抗体で処置した野生型マウス(n=5)で典型的な経過を辿るP.yoelii 17XNLマラリアの間の、
図5Aと
図5Bでのデュープリケート実験からの寄生虫血症。(C)
図2Cについて記載したようなデュープリケート実験においてラットIgGまたは抗PD-L2阻止抗体で処置した野生型マウス(n=5)でP.chabaudiマラリアが典型的な経過を辿っている間の寄生虫血症。矢印は、ラットIgGで処置したマウスでは抗PD-L2で処置したマウスよりも寄生虫が3日早く消えたことを示している。
【0042】
【
図7】
図7は、(A)CD4
+T細胞におけるT
betの発現をフローサイトメトリーによって評価する際に利用するゲーティング戦略を示すグラフ表示である。(B)~(C)散布図は、ラットIgGで処置した野生型マウス(n=7)、または抗PD-L2阻止抗体で処置した野生型マウス(n=7)、またはP.yoelii 17XNLを14日間感染させたPD-L2 koマウス(n=3)の脾臓当たりのT細胞の数を示している。(B)T
betを発現しているCD4
+ CD62L
hi T細胞またはCD4
+ CD62L
lo T細胞の脾臓当たりの平均数。(C)ナイーブDCの存在下で寄生虫抗原(MSP1
19)に応答してELISPOT培養物の中でIFN-γを分泌したCD4
+ T細胞の脾臓当たりの平均数。(D)散布図は、ナイーブDCの存在下で寄生虫ペプチド(Pb1)に応答してELISPOT培養物の中でIFN-γを分泌したCD8
+ T細胞の脾臓当たりの数を14日目について示している。2つの独立した実験からのデータを総合するが、PD-L2 koマウスは一度だけ評価した。両側でのノンパラメトリックなマン-ホイットニーのU検定を利用して有意性を分析した。(* p<0.05;*** p<0.001)。
【0043】
【
図8】
図8は、PD-L2を阻止するとP.yoelii 17XNLに感染したマウスで寄生虫特異的CD4
+ T細胞の増殖が抑制されることを示すグラフ表示である。野生型マウスにP.yoelii 17XNLを感染させ、ラットIgGまたは抗PD-L2阻止抗体で処置した(n=7)。(A)、(B)、(C)(A)0日目、(B)7日目、(C)14日目にT
betを発現しているCD4
+ CD62L
hi T細胞とCD4
+ CD62L
lo T細胞の脾臓当たりの数。(D)ナイーブDCの存在下で寄生虫抗原(MSP1
19)に応答してELISPOT培養物の中でインターフェロン-γ(IFN-γ)を分泌したCD4
+ T細胞の数。(E)ナイーブDCの存在下で寄生虫抗原MSP1
19に応答して培養物の中で増殖したCD4
+ T細胞の数をEdUの取り込みによって測定。(F)と(G)P.yoelii 17XNLに感染したマウスの血清中の(F)IFN-γと(G)IL-10の平均レベル。(H)CD25とFoxP3を発現しているCD4
+ T細胞(制御性T細胞)の脾臓当たりの平均数。散布図の棒は中央値を示している。データは、2つの独立した実験を総合した結果を表わしている。両側でのノンパラメトリックなマン-ホイットニーのU検定を利用して有意性を分析した(* p<0.05;** p<0.01;*** p<0.001)。
【0044】
【
図9A-H】
図9は、PD-L1とPD-L2を発現したDCがT細胞と免疫に及ぼす異なる効果を示すグラフ表示である。致死性P.yoelii YMに感染させてから7日目に採取し、DC部分集団(CD4
+ DC;CD8
+ DC;B220
+ pDC;CD11b
+ DC)のマーカーについて標識した(A)野生型マウスと(B)PD-L1 koマウスに由来するCD19
- CD3
- CD11c
+ DCのフローサイトメトリー・プロファイル。(C)PD-L1の発現がないDCによる致死性マラリアに対する防御を示す生存曲線。デュープリケート実験において野生型マウスとPD-L1 koマウスに致死量のP.yoelii YM pRBCを感染させ、感染した(薬物治療)マウスからDCを単離し、4匹のナイーブマウスからなる群の中の各マウスに1×10
7個のDCを移した。24時間後、各マウスに10
4個のP.yoelii YM pRBCを感染させ、生存を1~3日ごとに50日間にわたってモニタした。(D)~(E)野生型マウスとPD-L1 koマウスに致死性P.yoelii YMを感染させてから7日目に採取した約1×10
7個のDCを輸液したナイーブマウスにおける寄生虫血症のデュープリケート実験。24時間後、輸液した各マウスに10
4個のP.yoelii YM pRBCを感染させ、1~3日ごとに50日間にわたってモニタした。結果は、平均値±SEM、n=4匹のマウス/群である。(I)PD-1 koマウスが致死性マラリアに対して免疫があることを示す生存曲線。デュープリケート実験において、5匹の野生型マウスからなる群と5匹のPD-1 koマウスからなる群に10
4個の致死性P.yoelii YM pRBCを感染させ、生存を1~3日ごとに50日間にわたってモニタした。(J)~(K)野生型マウスとPD-1 koマウスに10
4個のP.yoelii YM pRBCを感染させ、寄生虫血症を1~3日ごとに50日間にわたってモニタしたデュープリケート実験。結果は、平均値±SEM、n=5匹のマウス/群である。(L)~(P)PD-L1とPD-L2を発現しているDCとともに培養したCD4
+ CD62L
lo PD-1
+ T細胞の表面におけるCD3発現とICOS発現のフローサイトメトリー分析。36時間後の(L)T細胞だけを含んでいてDCは含まない陰性対照であり、(M)T細胞とDCを含む陽性対照であり、(N)PD-1の阻止であり、(O)PD-L1の阻止であり、(P)PD-L2の阻止である。P.yoelii 17XNLを12~14日間感染させたマウスの脾臓からT細胞とDCの両方を単離した。PD3またはICOSの高発現を判断するためのゲートは、抗PD-L1培養物に見られる明確な二重ピークに基づいて選択した。(Q)3回の独立した実験から、同条件の複数のウエル(n=3~5)でCD3とICOSが多く発現しているCD4
+ CD62
lo T細胞/ウエルの割合を白、淡い青、濃い青の点で示した散布図。誤差棒は平均値を表わす。3つの実験のうちの1つから、対応のないt検定(片側)を利用して有意性を分析した(* p<0.05;** p<0.005;*** p<0.0005;**** p<0.0001)。
【0045】
【
図9I-Q】
図9は、PD-L1とPD-L2を発現したDCがT細胞と免疫に及ぼす異なる効果を示すグラフ表示である。致死性P.yoelii YMに感染させてから7日目に採取し、DC部分集団(CD4
+ DC;CD8
+ DC;B220
+ pDC;CD11b
+ DC)のマーカーについて標識した(A)野生型マウスと(B)PD-L1 koマウスに由来するCD19
- CD3
- CD11c
+ DCのフローサイトメトリー・プロファイル。(C)PD-L1の発現がないDCによる致死性マラリアに対する防御を示す生存曲線。デュープリケート実験において野生型マウスとPD-L1 koマウスに致死量のP.yoelii YM pRBCを感染させ、感染した(薬物治療)マウスからDCを単離し、4匹のナイーブマウスからなる群の中の各マウスに1×10
7個のDCを移した。24時間後、各マウスに10
4個のP.yoelii YM pRBCを感染させ、生存を1~3日ごとに50日間にわたってモニタした。(D)~(E)野生型マウスとPD-L1 koマウスに致死性P.yoelii YMを感染させてから7日目に採取した約1×10
7個のDCを輸液したナイーブマウスにおける寄生虫血症のデュープリケート実験。24時間後、輸液した各マウスに10
4個のP.yoelii YM pRBCを感染させ、1~3日ごとに50日間にわたってモニタした。結果は、平均値±SEM、n=4匹のマウス/群である。(I)PD-1 koマウスが致死性マラリアに対して免疫があることを示す生存曲線。デュープリケート実験において、5匹の野生型マウスからなる群と5匹のPD-1 koマウスからなる群に10
4個の致死性P.yoelii YM pRBCを感染させ、生存を1~3日ごとに50日間にわたってモニタした。(J)~(K)野生型マウスとPD-1 koマウスに10
4個のP.yoelii YM pRBCを感染させ、寄生虫血症を1~3日ごとに50日間にわたってモニタしたデュープリケート実験。結果は、平均値±SEM、n=5匹のマウス/群である。(L)~(P)PD-L1とPD-L2を発現しているDCとともに培養したCD4
+ CD62L
lo PD-1
+ T細胞の表面におけるCD3発現とICOS発現のフローサイトメトリー分析。36時間後の(L)T細胞だけを含んでいてDCは含まない陰性対照であり、(M)T細胞とDCを含む陽性対照であり、(N)PD-1の阻止であり、(O)PD-L1の阻止であり、(P)PD-L2の阻止である。P.yoelii 17XNLを12~14日間感染させたマウスの脾臓からT細胞とDCの両方を単離した。PD3またはICOSの高発現を判断するためのゲートは、抗PD-L1培養物に見られる明確な二重ピークに基づいて選択した。(Q)3回の独立した実験から、同条件の複数のウエル(n=3~5)でCD3とICOSが多く発現しているCD4
+ CD62
lo T細胞/ウエルの割合を白、淡い青、濃い青の点で示した散布図。誤差棒は平均値を表わす。3つの実験のうちの1つから、対応のないt検定(片側)を利用して有意性を分析した(* p<0.05;** p<0.005;*** p<0.0005;**** p<0.0001)。
【
図10】
図10は、転移性黒色腫の患者では血中DCの表面におけるPD-L2の発現が低下していることを示すグラフ表示である。(A~C)8人の健康なボランティアと、黒色腫でない病変がある4人の患者と、転移性黒色腫がある4人の患者から血液を採取した。その血液で(A)PD-L1を発現しているCD11c
+ DCの割合と(B)PD-L2を発現しているCD11c
+ DCの割合を調べた。(C)各群における%PD-L2:%PD-L1 DCの比を示すプロット。(A)と(B)のp値は各群の間でマン-ホイットニー検定を利用して求め、(C)のp値は、クラスカル-ウォリス多重比較検定によって計算した。
【0046】
【
図11A-G】
図11は、八量体の形態のPD-L2が致死性マラリアに対する防御作用を持つことを示すグラフ表示である。(A)寄生虫血症の割合の平均値。(B)寄生虫血症を有するマウスの数を対数スケールで示してある。(C)生存率(x軸は感染後の日数を示す)。(D)感染後3日目、5日目、7日目に陰性対照である(ヒト)IgGまたは二量体PD-L2で処置した野生型マウスで典型的な経過を辿るP.yoelii YMマラリアに関する寄生虫血症の割合。(E)寄生虫血症が検出可能になった後、3日目、次いで5日目、7日目に対照である(ヒト)IgGまたはPD-L2で処置した野生型マウス(3回の独立した実験から合計でn=12)におけるP.yoelii YMマラリアの典型的な経過に関する臨床症状スコア(x軸は感染後の日数を示す)。生き残っているすべてのマウスを放置し、150日後に、同じ用量の致死性P.yoelii YMを再度感染させる(追加のPD-L2は投与せず)とともに、同齢の新たな対照マウス(対照Ig-R)にも感染させた。(F)PD-L2で処置したマウスからの血液を200μl与えたナイーブマウスにP.yoelii YMを再度感染させてから20日後の寄生虫血症の割合のピーク値(x軸は感染後の日数を示す)。このアッセイでは、ドナーマウスの血液中で検出される寄生虫が少ない。感染後3日目、5日目、7日目に対照である(ヒト)IgGまたはPD-L2で処置した野生型マウス(2つの独立した実験から合計でn=9)におけるP.berghei感染の典型的な経過に関する(G)臨床症状スコア、(H)生存率(x軸は感染後の日数を示す)、(I)寄生虫血症の割合の平均値(x軸は感染後の日数を示す)。誤差棒はSEMを表わす。ログ-ランク(マンテル-コックス)検定を利用して生存率の有意性を分析した。
【
図11H-I】
図11は、八量体の形態のPD-L2が致死性マラリアに対する防御作用を持つことを示すグラフ表示である。(A)寄生虫血症の割合の平均値。(B)寄生虫血症を有するマウスの数を対数スケールで示してある。(C)生存率(x軸は感染後の日数を示す)。(D)感染後3日目、5日目、7日目に陰性対照である(ヒト)IgGまたは二量体PD-L2で処置した野生型マウスで典型的な経過を辿るP.yoelii YMマラリアに関する寄生虫血症の割合。(E)寄生虫血症が検出可能になった後、3日目、次いで5日目、7日目に対照である(ヒト)IgGまたはPD-L2で処置した野生型マウス(3回の独立した実験から合計でn=12)におけるP.yoelii YMマラリアの典型的な経過に関する臨床症状スコア(x軸は感染後の日数を示す)。生き残っているすべてのマウスを放置し、150日後に、同じ用量の致死性P.yoelii YMを再度感染させる(追加のPD-L2は投与せず)とともに、同齢の新たな対照マウス(対照Ig-R)にも感染させた。(F)PD-L2で処置したマウスからの血液を200μl与えたナイーブマウスにP.yoelii YMを再度感染させてから20日後の寄生虫血症の割合のピーク値(x軸は感染後の日数を示す)。このアッセイでは、ドナーマウスの血液中で検出される寄生虫が少ない。感染後3日目、5日目、7日目に対照である(ヒト)IgGまたはPD-L2で処置した野生型マウス(2つの独立した実験から合計でn=9)におけるP.berghei感染の典型的な経過に関する(G)臨床症状スコア、(H)生存率(x軸は感染後の日数を示す)、(I)寄生虫血症の割合の平均値(x軸は感染後の日数を示す)。誤差棒はSEMを表わす。ログ-ランク(マンテル-コックス)検定を利用して生存率の有意性を分析した。
【0047】
【
図12】
図12は、可溶性十二量体PD-L2(sPD-L2)が、進行した黒色腫に対する防御作用を持つことを示すグラフ表示である。6匹のC57BL/6マウスからなる群に5×10
5個のB16.F0黒色腫細胞を皮下移植した。9日目頃には腫瘍の平均サイズが約100mm
3であり、9日目、11日目、13日目にマウスにヒトIgGまたはsPD-L2を200μg投与して1~2日ごとに腫瘍のサイズをモニタした。データは、同様の結果が得られた2つの独立した実験のうちの総合した1つである。片側でのノンパラメトリックなマン-ホイットニーのU検定を利用してp値を求めた。(群間の比較に関して*** p=0.0006)。
【0048】
【
図13】
図13は、sPD-L2が黒色腫に対する早期防御作用を持つことを示すグラフ表示である。6匹のC57BL/6マウスからなる群に1×10
5個のB16.F10メラノーマ細胞を皮下移植した。9日目頃には腫瘍の平均サイズが約100mm
3であり、3日目、9日目、15日目にマウスにヒトIgGまたはsPD-L2を200μg投与して1~2日ごとに腫瘍のサイズをモニタした。データは、同様の結果が得られた2つの独立した実験のうちの総合した1つである。片側でのノンパラメトリックなマン-ホイットニーのU検定を利用してp値を求めた。(群間の比較に関して*** p=0.03)。
【発明を実施するための形態】
【0049】
1.定義
特に断わらない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したのと類似しているか同等なあらゆる方法と材料を、本発明を実施する際や試験する際に用いることができるが、好ましい方法と材料を記載する。本発明の目的で、以下の用語を以下のように定義する。
【0050】
冠詞「1つの」は、本明細書では、この冠詞の文法上の対象が1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)であることを意味するのに用いる。例として、「1つの要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0051】
本明細書では、「および/または」は、関連して列挙されている1つ以上の項目の可能なあらゆる組み合わせのほか、後者(または)で解釈されるときには組み合わせの欠如を意味し、包含する。
【0052】
さらに、本明細書では、「約」および「ほぼ」という用語は、量、用量、時間、温度、活性、レベル、数、頻度、割合、大きさ、サイズ、量、重量、位置、長さなどの測定可能な数値を意味する場合には、示されている量、用量、時間、温度、活性、レベル、数、頻度、割合、大きさ、サイズ、量、重量、位置、長さなどの±15%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、のいずれか、それどころか±0.1%の変動が含まれることを意味する。温度、活動、レベル、数、頻度、百分率、寸法、サイズ、量、重量、位置、長さなど。「約」と「ほぼ」という用語が参照ポリペプチド内の領域の場所または位置に関して用いられている場合には、これらの用語に、±20個までのアミノ酸残基、±15個までのアミノ酸残基、±10個までのアミノ酸残基、±5個までのアミノ酸残基、±4個までのアミノ酸残基、±3個までのアミノ酸残基、±2個までのアミノ酸残基のいずれか、それどころか±1アミノ酸残基の変動が包まれる。
【0053】
「同時投与」、「同時に投与する」、「同時投与する」などの表現は、2つ以上の活性剤を含有する単一の組成物を投与すること、またはそれぞれの活性剤を、同時期に、または同時に、またはそのようなすべての活性剤が単一の組成物として投与された場合に得られる有効な結果と同等であるような十分に短い期間内に順番に、別々の組成物として投与および/または送達することを意味する。「同時に」とは、活性剤が実質的に同時に、そして望ましくは同じ製剤中で一緒に投与されることを意味する。「同時期に」とは、時間を接近させて複数の活性剤を投与すること(例えば、1つの成分を別の成分の前または後の約1分以内~約1日以内に投与すること)を意味する。任意の同時期が有用である。しかし複数の薬剤が同時に投与されないことがしばしば起こるため、複数の薬剤を約1分以内~約8時間以内に投与すること、好ましくは約1時間~約4時間以内に投与することになろう。複数の薬剤は、同時期に投与する場合、対象の同じ部位に投与することが好ましい。「同じ部位」という用語は正確な場所を含むが、約0.5~約15センチメートル以内が可能であり、約0.5~約5センチメートル以内が好ましい。本明細書では、「別々に」という用語は、ある時間間隔で(例えば約1日~数週間または数ヶ月の間隔で)複数の薬剤を投与することを意味する。活性剤はどのような順番で投与してもよい。本明細書で使用される「順番に」という用語は、複数の薬剤を例えば数分、数時間、数日、数週間の間隔で順番に投与することを意味する。適切な場合には、活性剤を規則的な繰り返し周期で投与することができる。
【0054】
本明細書では、「アジュバント」という用語は、組成物の中で特定の免疫原(例えば本発明のポリペプチド複合体)と組み合わせて使用される場合に、生じる免疫応答(例えば、Th1免疫応答)を増進させる化合物を意味する(増進には、抗体と細胞性免疫応答の一方または両方の強化または特異性の拡大が含まれる)。
【0055】
用語「薬剤」または「調節剤」には、望む薬理学的効果および/または生理学的効果を誘導する化合物が含まれる。この用語には、本明細書で具体的に言及されている化合物の医薬として許容可能で薬理学的に活性な成分が含まれ、その非限定的な例には、塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性な代謝産物、類似体などが含まれる。上記の用語が使用されるとき、活性剤そのものと、医薬として許容可能で薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、代謝産物、類似体などが含まれることを理解されたい。「薬剤」という用語は狭く解釈されてはならず、小分子、タンパク質性分子(例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質)のほか、これらを含む組成物、遺伝分子(例えばRNA、DNA、その模倣体や化学的類似体)、細胞剤にまで広がっている。「薬剤」という用語には、本明細書で言及されているポリペプチドを産生したり分泌したりすることができる細胞のほか、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが含まれる。したがって「薬剤」という用語は核酸コンストラクトにまで広がっており、その中には、ベクター(例えばウイルスベクター、非ウイルスベクター、発現ベクター)や、ある範囲の細胞内での発現と分泌のためのプラスミドが含まれる。
【0056】
本明細書では、「抗原」という用語と、その文法的に同等な表現(例えば「抗原性」)は、特定の液性免疫または細胞性免疫の産物(例えば抗体分子またはT細胞受容体)が特異的に結合することのできる化合物、組成物、物質を意味する。抗原として任意のタイプの分子が可能であり、その中には、例えばハプテン、単純な中間代謝産物、糖(例えばオリゴ糖)、脂質、ホルモンのほか、巨大分子(複雑な炭水化物(例えば多糖)、リン脂質、タンパク質など)が含まれる。抗原の一般的なカテゴリーの非限定的な例に含まれるのは、ウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、原生動物抗原、他の寄生虫抗原、腫瘍抗原、自己免疫疾患に関与する抗原、アレルギーに関与する抗原、移植片拒絶反応に関与する抗原、毒素、他のさまざまな抗原である。
【0057】
「抗原結合分子」とは、標的抗原に対する結合親和性がある分子を意味する。この用語は、抗原結合活性を示す免疫グロブリン、免疫グロブリンフラグメント、非免疫グロブリン由来タンパク質フレームワークまで広がっていることが理解されよう。本発明の実施に役立つ代表的な抗原結合分子に含まれるのは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のほか、それらのフラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(scFv)抗体、ドメイン抗体(例えばサメ抗体およびラクダ抗体が含まれる)、抗体を含む融合タンパク質、抗原結合/認識部位を含む他のあらゆる改変された配置の免疫グロブリン分子である。抗体には、任意のクラスの抗体、例えばIgG、IgA、IgM(またはそのサブクラス)などが含まれるが、抗体がどれか特定のクラスである必要はない。免疫グロブリンは、重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、IgMがあり、そのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)に分類することができる(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2)。異なるクラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれα、δ、ε、γ、μと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置はよく知られている。抗原結合分子には、二量体抗体のほか、多価形態の抗体も含まれる。いくつかの実施態様では、抗原結合分子は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、特定の抗体クラスまたは抗体サブクラスに属する抗体の対応する配列と同じか相同である一方で、鎖の残部が、別の種に由来するか、別の抗体クラスまたは抗体サブクラスに属する抗体の対応する配列と同じか相同であるキメラ抗体のほか、そのような抗体のフラグメントで、望む生物学的活性を示すものである(例えばアメリカ合衆国特許第4,816,567号;Morrison他、1984年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第81巻:6851~6855ページを参照されたい)。非ヒト(例えば齧歯類、好ましくはマウス)免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変鎖からの相補性決定領域(CDR)をヒト可変ドメインに移すことによって一般に作製されるヒト化抗体も考慮される。次に、ヒト抗体の典型的な残基を、対応する非ヒト抗体のフレームワーク領域において置換する。ヒト化抗体に由来する抗体要素を用いることで、非ヒト定常領域の免疫原性に関係する潜在的な問題が回避される。非ヒト、特にマウスの免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的な技術は、例えばOrlandiら(1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第86巻:3833ページ)が記載している。ヒト化モノクローナル抗体を作製する技術は、例えばJonesら(1986年、Nature 第321巻:522ページ)、Carterら(1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第89巻:4285ページ)、Sandhu(1992年、Crit.Rev.Biotech.第12巻:437ページ)、Singerら(1993年、J.Immun.第150巻:2844ページ)、Sudhir(編、『Antibody Engineering Protocols』、Humana Press,Inc.社、1995年)、Kelley(『Protein Engineering: Principles and Practice』(Cleland他編、John Wiley & Sons,Inc.社、1996年)の中の「Engineering Therapeutic Antibodies」、399~434ページ)、Queenら(アメリカ合衆国特許第5,693,762号(1997年))が記載している。ヒト化抗体には、抗体の抗原結合領域が、カニクイザルを興味ある抗原で免疫化することによって作製した抗体に由来する「霊長類化」抗体が含まれる。ヒト化抗体は抗原結合分子としても考慮される。
【0058】
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、免疫系の特定のエフェクタ細胞(本明細書では「免疫エフェクタ細胞」または「IEC」とも呼ぶ)が認識できるペプチド-MHC複合体の形態で1つ以上の抗原を提示することができて、そのことによって提示された1つまたは複数の抗原に対する免疫応答を調節する(例えば刺激/増強する、または低減/寛容化/無力化する)一群の細胞を意味する。本発明の特別な実施態様では、APCは、IEC(CD8+リンパ球および/またはCD4+リンパ球を含むTリンパ球など)を活性化することができる。生体内でAPCとして作用する可能性のある細胞には、例えばプロフェッショナルAPC(樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞、単球、B細胞など)だけでなく、非プロフェッショナルAPCも含まれ、その具体例として、活性化された上皮細胞、線維芽細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、血管内皮細胞が挙げられる。多くの種類の細胞がその細胞の表面に抗原を提示してIEC(T細胞が含まれる)を認識することができる。
【0059】
「バイオマーカー」という用語は、典型的には、生理学的状態および/または病態生理学的状態の存在または性質(例えば重症度または状態)を反映した測定可能な特徴を意味し、その特徴には特定の生理学的状態または病態生理学的状態になるリスクの指標が含まれる。例えばあるバイオマーカーが、ある生理学的状態または病態生理学的状態(その状態の症状も含まれる)になる前の対象から得られたサンプルの中に存在している可能性がある。したがって対象から得られたサンプルの中にそのバイオマーカーが存在しているというのは、対象で、その生理学的状態または病態生理学的状態か、その状態の症状を示すリスクが増大していることを示している可能性が大きい。その代わりに、またはそれに加えて、そのバイオマーカーは、ある個人で正常に発現している可能性があるが、その発現は、ある生理学的状態または病態生理学的状態(その状態の症状も含まれる)になる前に変化する(すなわち増加する(上方調節される;過剰発現)か減少する(下方調節される;過少発現))可能性がある。したがってそのバイオマーカーのレベルが変化するというのは、対象で、その生理学的状態または病態生理学的状態か、その状態の症状を示すリスクが増大していることを示している可能性が大きい。その代わりに、またはそれに加えて、バイオマーカーのレベルの変化は、対象で特定の生理学的状態または病態生理学的状態か、その状態の症状が変化していることを反映している可能性があるため、その生理学的状態または病態生理学的状態か、その状態の症状の性質(例えば重症度)をある期間にわたって追跡することが可能になる。このアプローチは、例えば治療計画をモニタして対象におけるその有効性(または無効性)を評価するのに役立つ可能性がある。本明細書に記載してあるように、バイオマーカーのレベルへの言及には、バイオマーカーの濃度、バイオマーカーの発現レベル、バイオマーカーの活性が含まれる。これについてはあとでより詳しく説明する。
【0060】
「バイオマーカー値」という用語は、対象の対応する少なくとも1つのバイオマーカーについて測定または導出された値を意味し、典型的には対象から採取したサンプル中のバイオマーカーの含量または濃度を少なくとも部分的に示している。したがってバイオマーカー値は、測定されたバイオマーカー値(つまり対象で測定されたバイオマーカーの値)、または導出されたバイオマーカー値(例えば測定された1つ以上のバイオマーカー値に関数を適用することにより、測定されたその1つ以上のバイオマーカー値から導出された値)が可能である。バイオマーカー値は、その値を求める方法に応じて適切な任意の形態が可能である。例えばバイオマーカー値は、ハイスループット技術(例えば質量分析、シークエンシングプラットフォーム、アレイ、ハイブリダイゼーションプラットフォーム、イムノアッセイ、フローサイトメトリーや、これら技術の任意の組み合わせ)を利用して求めることができる。好ましい一例では、バイオマーカー値は、タンパク質発現産物または他の測定可能な分子の活性レベルまたは含量に関係しており、その値はフローサイトメトリーなどの技術を利用して定量される。この場合、バイオマーカー値は、当業者であればわかるように、サンプル中でそのバイオマーカーを発現している細胞の%値の形が可能である。これについてはあとでより詳しく説明する。
【0061】
「バイオマーカープロファイル」という用語は、1種類以上のバイオマーカー(例えばポリペプチド分子、cDNA分子など)のうちの1つまたは複数、またはその表示と、そのバイオマーカーの特徴(測定可能な側面(例えばバイオマーカー値)など)を意味する。バイオマーカープロファイルは、対象のTh1免疫状態(例えば増進したTh1免疫状態または低下したTh1免疫状態)と相関する単一のバイオマーカーの全体レベル、含量、量を含むことができる。あるいはバイオマーカープロファイルは、少なくとも2つのそのようなバイオマーカーまたはその表示を含むことができる。その場合にバイオマーカーは同じクラスのものでも異なるクラスのものでもよく、例えばポリペプチドと核酸が可能である。したがってバイオマーカープロファイルは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100のいずれか、またはそれ以上の数のバイオマーカーまたはその表示を含むことができる。いくつかの実施態様では、バイオマーカープロファイルは、2つ、いくつか、数十、数百のバイオマーカーまたはその表示を含んでいる。バイオマーカープロファイルはさらに、1つ以上の対照または内部標準を含むことができる。いくつかの実施態様では、バイオマーカープロファイルは、内部標準として機能する少なくとも1つのバイオマーカーまたはその表示を含んでいる。別の実施態様では、バイオマーカープロファイルは、1種類以上のバイオマーカーの表示を含んでいる。本明細書においてこの文脈で用いる「表示」という用語は、単純に、バイオマーカー分子そのものではなく、バイオマーカープロファイルが、バイオマーカーのシンボル、データ、略号や、他の類似した徴候を含む状況を意味する。本明細書では、「バイオマーカープロファイル」という用語は、1つのバイオマーカー値、または少なくとも2つのバイオマーカー値の組み合わせを意味するのにも用いる。その場合に個々のバイオマーカー値は1つ以上の対象から測定または導出できるバイオマーカーの値に対応していて、それらの値の組み合わせが、Th1免疫状態、個別の病気、病気の段階、病気のサブタイプ、個別の病気の予後、病気の段階の予後、病気のサブタイプの予後を特徴づけている。「プロファイルバイオマーカー」という用語は、例えば特定の病気、段階または重症度が異なる病気、異なる病気のサブタイプ、異なる予後を含めたり除外したりするため臨床評価を実施する際に使用できるバイオマーカープロファイルで用いることを目的として同定されたバイオマーカーのサブセットを意味するのに用いられる。プロファイルバイオマーカーの数はさまざまであろうが、典型的には10以下の程度である。
【0062】
「キメラ」という用語は、分子に関して用いる場合、その分子が、異なる2つ以上の出所または供給源に由来する部分を含むこと、または異なる2つ以上の出所または供給源から得られた部分を含むこと、または異なる2つ以上の出所または供給源から単離された部分を含むこと、または異なる2つ以上の出所または供給源に基づく部分を含むことを意味する。したがってポリペプチドは、出所が異なる2つ以上のアミノ酸配列を含んでいて、しかも(1)自然には一緒になることのない(すなわち少なくとも1つのアミノ酸配列が、他のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つと異種である)ポリペプチド配列、または(2)自然状態では隣接していないアミノ酸配列を含んでいるときにキメラである。
【0063】
本明細書では、「クラスタリング」と、その文法的に同等な表現は、3つ以上の同じTh1免疫状態バイオマーカー(例えば、PD-L2)のあらゆる可逆的または不可逆的な結び付きを意味する。クラスターは、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、12個、20個などのバイオマーカーで構成することができる。2つのバイオマーカーからなるクラスターは二量体と呼ばれる。3個以上のバイオマーカーからなるクラスターは一般にオリゴマーと呼ばれ、クラスターの個別の数は独自の名称を有する。例えば3個のバイオマーカーからなるクラスターは三量体、4個のバイオマーカーからなるクラスターは四量体、5個のバイオマーカーからなるクラスターは五量体である。6個のバイオマーカーからなるクラスターは六量体、7個のバイオマーカーからなるクラスターは七量体、8個のバイオマーカーからなるクラスターは八量体、10個のバイオマーカーからなるクラスターは十量体、12個のバイオマーカーからなるクラスターは十二量体、20個のバイオマーカーからなるクラスターは二十量体である。
【0064】
「コード配列」とは、遺伝子のポリペプチド産物または遺伝子の最終mRNA産物(例えば、スプライシング後の遺伝子のmRNA産物)のコードに寄与するあらゆる核酸配列を意味する。それとは異なり、「非コード配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド産物または遺伝子の最終mRNA産物のコードに寄与しないあらゆる核酸配列を意味する。
【0065】
「コイルドコイル」または「コイルドコイル構造」という用語は、本明細書では交換可能に用いることができ、タンパク質の中にあって2つ以上のαヘリックス(2~7個のαヘリックスであることが最も多い)がロープのストランドのように合わさってコイル状になった構造モチーフを意味する(二量体と三量体が最も一般的なタイプである)。多くのコイルドコイル型タンパク質が、重要な生物機能(遺伝子(例えば転写因子)の発現の調節など)に関与している。コイルドコイルは、7アミノ酸反復(下記参照)と呼ばれる疎水性(h)アミノ酸残基と極性(p)アミノ酸残基の反復パターン(hpphpppまたはhppphpp)を含んでいることがしばしばあるが、必ずしもそうとは限らない。この反復パターンを持つ配列を折り畳んでαへリックス二次構造にすると、疎水性残基が左回りにヘリックスの周囲に軽く巻き付く「ストライプ」として提示されるため、両親媒性構造が形成される。水で満たされた環境の中にそのような2つのヘリックスを配置するための最も有利な方法は、互いに接した状態の疎水性ストランドを親水性アミノ酸の間に挟むというものである。したがって疎水性表面が埋もれてしまうため、αヘリックスをオリゴマー化するための熱力学的駆動力が提供される。コイルドコイルのインターフェースのパッキングは極めて緊密である。αへリックスは平行でも反平行でもよく、通常は左巻きのスーパーコイルを採用する。不利であるとはいえ、右巻きコイルドコイルも、自然界のタンパク質と設計されたタンパク質でいくつか観察されている。「コイルドコイル」または「コイルドコイル構造」という用語は、共通の一般的知識に基づいている本分野の当業者には明らかであろう。この点について特に参照すべきなのは、コイルドコイル構造に関する概説論文、例えばCohenとParry(1990年、Proteins 第7巻:1~15ページ);KohnとHodges(1998年、Trends Biotechnol第16巻:379~389ページ);Schneider他(1998年、Fold Des第3巻:R29~R40ページ);Harbury他(1998年、Science第282巻:1462~1467ページ);MasonとArndt(2004年、Chem- BioChem第5巻:170~176ページ);LupasとGruber(2005年、Adv Protein Chem第70巻:37~78ページ);Woolfson(2005年、Adv Protein Chem第70巻:79~112ページ);Parry他、2008年、J Struct Biol 第163巻:258~269ページ);Mcfarlane他(2009年、Eur J Pharmacol第625巻:101~107ページ)である。
【0066】
本明細書では、「コンパニオン診断」は、特定の処置法を用いた処置に対して感受性のある対象を同定するため、または処置をモニタするために利用する診断法および/または試薬、および/または単一の対象にとって、または複数の対象の一部にとって、または他の一群の対象にとって有効な用量を同定するために利用する診断法および/または試薬を意味する。本明細書の目的では、コンパニオン診断は試薬を意味し、それは例えば、サンプル中の(例えば本明細書に記載した)Th1免疫系バイオマーカーのバイオマーカー値を求めるための試薬である。コンパニオン診断は、試薬を意味するとともに、その試薬を用いて実施する試験も意味する。
【0067】
本明細書では、「相補的」という用語と、その文法的に同等な表現は、2つ以上の構造要素(例えばペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子や、その一部分など)が、互いにハイブリダイズしたり、オリゴマー化(例えば、二量体化、三量体化、四量体化、五量体化、六量体化、七量体化、八量体化、九量体化、十量体化、十一量体化、十二量体化)したり、相互作用したり、複合体を形成したりできるという特徴を意味する。例えば「ポリペプチドの相補的領域」は互いに合わさって複合体を形成することができる。
【0068】
本明細書では、「複合体」という用語は、分子(例えばペプチド、ポリペプチドなど)が直接的および/または間接的に互いに接触している集合体または凝集体を意味する。特別な実施態様では、「接触」、より具体的に「直接的な接触」は、2個以上の分子が十分に近接していて、分子間の相互作用において引力性の非共有結合相互作用(ファンデルワールス力、水素結合、イオン性相互作用、疎水性相互作用など)が優勢になっていることを意味する。そのような実施態様では、分子の複合体(例えばペプチド、ポリペプチド)が、その複合体が(例えばその複合体の構成分子が凝集していない状態や複合体になっていない状態と比べて)熱力学的に有利であるような条件下で形成される。本明細書では、「ポリペプチド複合体」または「タンパク質複合体」という用語は、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、十一量体、十二量体、またはより高次のオリゴマーを意味する。特別な実施態様では、ポリペプチド複合体は、PD-L2ポリペプチドと少なくとも1つのオリゴマー化ドメインを含むキメラポリペプチドの自己組織化によって形成される。
【0069】
本明細書の全体を通じ、文脈上特に必要でなければ、「含む」、「含んでいる」という用語は、記載されている1つの工程か要素、または一群の工程か要素を含むが、任意の他の1つの工程か要素、または一群の工程か要素を除外はしないことを意味すると理解される。したがって「含んでいる」などの用語の使用は、列挙した要素は必要または必須だが、他の要素は任意選択であって存在しても存在しなくてもよいことを示している。「からなる」は、この「からなる」という表現の前に存在するすべてのものを含んでいて、それらに限定されることを意味する。したがって「からなる」という表現は、列挙した要素が必要または必須であって、しかも他の要素は存在しないことを示す。「主に…からなる」は、この表現の前に列挙したあらゆる要素を含んでいて、他の要素は、列挙した要素について本開示で特定した活性または作用を妨げない、またはその活性または作用に寄与しないものに限定されることを意味する。したがって「主に…からなる」という表現は、列挙した要素が必要または必須だが、他の要素は任意選択であり、列挙した要素の活性または作用に影響を及ぼすかどうかに応じて存在しても存在しなくてもよいことを示す。
【0070】
本明細書では、「コンジュゲートした」、「連結した」、「融合した」、「融合」という用語と、その文法的に同等な表現は、化学的結合や(例えば遺伝子融合による)組み換え手段を含む任意の手段で2つ以上の要素または成分またはドメインを互いに結合させる文脈では、交換可能に用いることができる。化学的結合のさまざまな方法(例えばヘテロ二官能性架橋剤を用いる方法)が本分野で知られている。より具体的には、本明細書で用いるPD-L2ポリペプチド-オリゴマー化ドメインの融合またはコンジュゲートは、少なくとも1つのオリゴマー化ドメインへのPD-L2ポリペプチドの遺伝子結合または化学的結合を意味する。特別な実施態様では、少なくとも1つのオリゴマー化ドメインを、グリシン-セリン(gly-ser)リンカーなどのペプチドリンカーを介してPD-L2ポリペプチドに間接的に融合させる。別の実施態様では、少なくとも1つのオリゴマー化ドメインをPD-L2ポリペプチドに直接融合させる。
【0071】
「保存的アミノ酸置換」は、そのアミノ酸残基が、似た側鎖を有するアミノ酸残基で置換される置換である。似た側鎖を持つアミノ酸残基のファミリーは本分野で明確にされており、それらは一般に以下のように下位分類することができる。
【表1】
【0072】
保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づく分類も含まれる。例えば脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンである。脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンとトレオニンである。アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンとグルタミンである。芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンである。塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リシン、アルギニン、ヒスチジンである。イオウ含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインとメチオニンである。例えばロイシンをイソロイシンまたはバリンで置換すること、アスパラギン酸をグルタミン酸で置換すること、トレオニンをセリンで置換することや、1つのアミノ酸を構造的に関連したアミノ酸で同様に置換することが、得られる変異したポリペプチドの特性に大きな効果を及ぼさないであろうと予想するのは合理的である。1つのアミノ酸が変化して機能的ポリペプチドになるかどうかは、その活性を調べることによって容易に明らかにすることができる。保存的置換を、アミノ酸置換の例と好ましいアミノ酸置換という見出しで表2に示す。本発明の範囲に含まれるアミノ酸置換は、一般に、(a)置換の領域におけるペプチド骨格の構造維持、または(b)標的部位における分子の電荷または疎水性の維持、または(c)側鎖の大きさの維持に対する効果が有意には違わない置換を選択することによって実現される。置換を導入した後、生物学的活性に関して変異体をスクリーニングする。
【表2】
【0073】
「コンストラクト」という用語は、異なる供給源に由来する1つ以上の単離された核酸配列を含む組み換え遺伝分子を意味する。したがってコンストラクトは、出所が異なる2つ以上の核酸配列が組み合わされて単一の核酸分子にされたキメラ分子である。コンストラクトに含まれるのは、(1)自然には一緒になることのない(すなわち少なくとも1つのアミノ酸配列が、他のアミノ酸配列のうちの少なくとも1つと異種である)調節配列とコード配列を含む核酸配列、または(2)自然には接合されることのない機能的RNA分子または機能的タンパク質の一部をコードする配列、または(3)自然には接合されることのないプロモータの一部を含有する任意のコンストラクトである。代表的なコンストラクトには、あらゆる組み換え核酸分子が含まれ、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、自律的に複製するポリヌクレオチド分子、ファージや、任意の供給源に由来し、1つ以上の核酸分子が機能可能に連結された核酸分子を含んでいてゲノムを組み込むか自律的に複製することが可能な線状または環状の一本鎖または二本鎖のDNA核酸分子またはRNA核酸分子が挙げられる。本発明のコンストラクトは、一般に、そのコンストラクトにやはり含まれている興味の対象である核酸配列(例えば標的核酸配列やモジュレーター核酸配列)の発現を指示するのに必要な要素を含むことになる。そのような要素は、興味の対象である核酸配列(の転写を指示するため、その核酸配列)に機能可能に連結されたプロモータなどの制御要素を含むことができ、ポリアデニル化配列も含んでいることがしばしばある。本発明の特別な実施態様では、コンストラクトはベクターに含めることができる。ベクターは、コンストラクトの成分に加え、例えば1つ以上の選択マーカー、および/または1つ以上の複製起点(原核生物と真核生物の複製起点)、および/または少なくとも1つの多重クローニング部位、および/または宿主細胞のゲノムへのコンストラクトの安定した組み込みを促進するための要素を含むことができる。2つ以上のコンストラクトを単一の核酸分子(例えば単一のベクター)の中に含有させることや、2つ以上の別々の核酸分子(例えば2つ以上の別々のベクター)の中に含有させることができる。「発現コンストラクト」は、一般に、興味の対象であるヌクレオチド配列に機能可能に連結された少なくとも1つの制御配列を含んでいる。このようにして、例えば発現させるヌクレオチド配列に機能可能に結合されたプロモータが、1つの生物またはその一部(宿主細胞が含まれる)の中で発現させるための発現コンストラクトの中に提供される。本発明を実施するには、コンストラクトと宿主細胞の調製と利用のための一般的な組成物と方法が当業者によく知られている。例えば『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第3版、第1巻、第2巻、第3巻、J.F.Sambrook、D.W.Russell、N.Irwin、Cold Spring Harbor Laboratory Press、2000年を参照されたい。
【0074】
「相関する」という用語は、ある種類のデータと別の種類のデータの間の関係、またはある種類のデータとある状態(例えばTh1免疫状態)の間の関係を明らかにすることを意味する。
【0075】
「に対応する」または「に対応している」は、参照アミノ酸配列と配列が実質的に類似するか、配列が一致しているアミノ酸配列を意味する。一般に、アミノ酸配列は、配列が参照アミノ酸配列の少なくとも一部と、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%類似するか、100%まで一致する。
【0076】
「オリゴマー化の程度」という用語は、式(I)のポリペプチド複合体に含まれるタンパク質性分子ユニットの数(n)を意味する。
【0077】
本明細書では、「診断」、「診断する」などの用語は交換可能に用いることができ、対象がある病気になる可能性、または対象におけるある病気の存在または性質を明らかにすることを包んでいる。これらの用語には、疾患の重症度または疾患のエピソードを明らかにすることのほか、合理的な治療の文脈において、診断が治療へとつながること(その中には、治療法の最初の選択、治療法の変更(例えば用量または投薬計画の調整)などが含まれる)も含まれる。「可能性」は、特定の測定されたバイオマーカー値または導出されたバイオマーカー値を持つ対象が、所与の数学的モデルに基づいて実際に病気を持っているかどうかを判断する1つの指標を意味する。例えば増大した可能性は、相対的でも絶対的でもよく、定性的または定量的に表現することができる。例えば増大した可能性は、単純に、対象で少なくとも2つのTh1免疫状態バイオマーカーについて測定されたバイオマーカー値または導出されたバイオマーカー値を求め、その対象を、集団での以前の研究に基づく「増大した可能性」のカテゴリーに入れることによって判断することができる。「可能性」という用語は、本明細書では「確率」という用語と交換可能に用いることができる。「リスク」という用語は、将来のある時点で特定のイベントが発生する可能性または確率と関係している。「リスク層化」は、既知の臨床リスク因子を列挙することで、医師が、患者を、特定の疾患になるリスクが低い、中程度、高い、最大のいずれかに分類できるようにすることを意味する。
【0078】
本明細書では、「ドメイン」という用語は、一般的な物理化学的特徴(その非限定的な例は、疎水性ドメイン、極性ドメイン、球状ドメイン、螺旋状ドメインなど)、または特性(リガンド結合、膜融合、シグナル伝達、細胞浸透、オリゴマー化など)を共有する分子または構造の一部を意味する。ドメインは折り畳まれたタンパク質構造を有することがしばしばあり、その構造は、そのタンパク質の残部とは独立に三次構造を保持する能力を有する。一般に、ドメインはタンパク質の個々の機能的特性にとって非常に重要であり、多くの場合に、タンパク質の残部の機能および/またはそのドメインの機能を喪失することなく他のタンパク質への付加、移動、導入が可能である。ドメインは、そのドメインの領域または一部と同じ空間に存在することができる。ドメインは、1つの分子の離散した隣接していない複数の領域を含むことができる。タンパク質ドメインの非限定的な例に含まれるのは、細胞内または細胞外の局在ドメイン(例えばシグナルペプチド;SP)、免疫グロブリン(Ig)ドメイン、外部ドメイン、膜貫通(TM)ドメイン、細胞質(C)ドメインである。
【0079】
本明細書では、「コードする」、「コードしている」などの用語は、核酸が、別の核酸またはポリペプチドを提供する能力を意味する。例えばある核酸配列がポリペプチドを「コードする」というのは、その核酸配列を転写および/または翻訳してポリペプチドを産生させることができる場合、またはその核酸配列を転写および/または翻訳できる形態に処理してポリペプチドを産生させることができる場合である。そのような核酸配列に含まれるのは、コード配列だけ、またはコード配列と非コード配列の両方である。したがって「コードする」、「コードしている」などの用語に含まれるのは、DNA分子を転写することによって生じるRNA産物、RNA分子を翻訳することによって生じるタンパク質、RNA産物を形成した後にそのRNA産物を翻訳するためのDNA分子を転写することによって生じるタンパク質、RNA産物を提供し、そのRNA産物のプロセシングによってプロセシングを受けたRNA産物(例えばmRNA)を提供するためのDNA分子を転写することによって生じるタンパク質である。
【0080】
「外部ドメイン」は、細胞外空間(すなわち細胞の外部空間)へと伸びている細胞膜タンパク質のドメインである。外部ドメインは、通常は、タンパク質のうちで表面との接触を開始する部分であり、その接触がシグナル伝達につながる。したがって本明細書に規定したPD-L2の外部ドメインは、PD-L2のうちで細胞外空間(細胞外ドメイン)へと広がっている部分を意味するが、PD-L2のうちで、対応する受容体(PD-1など)への結合にとって非常に重要なより短い部分または断片も含まれる。したがって「PD-L2の外部ドメインまたはその断片」という用語は、細胞外ドメインまたはその一部を形成していて受容体に相変わらず結合することのできるPD-L2の細胞外ドメイン(すなわち受容体結合ドメイン)を意味する。
【0081】
「有効量」は、エンベロープウイルスの融合タンパク質、またはその融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を誘起するという文脈、または疾患や病気の治療または予防という文脈では、そのような誘起、治療、予防のいずれかに有効な量の薬剤を、その薬剤を必要とする個体に単回投与で、または一連の投与の一部として投与することを意味する。有効量は、処置する個体の健康状態と体調、処置する個体が分類されるグループ、組成物の組成、医学的状態の評価や、それ以外の関連因子に応じて変わるであろう。量は比較的広い範囲に入ることが予想され、その範囲は定型的な試行を通じて決定することができる。
【0082】
「内部産生」という用語は、1つの生物の体内で核酸が発現することと、それに関連してその生物の体内で核酸の発現産物が産生および/または分泌されることを意味する。特別な実施態様では、生物は多細胞生物(例えば脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトなどの霊長類)であり、核酸は、その多細胞生物の細胞内または組織内で発現する。
【0083】
遺伝子配列に関する「発現」という用語は、遺伝子を転写してRNA転写産物(例えばmRNA、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNAなど)を産生させることと、適切な場合には、得られたmRNA転写産物を翻訳してタンパク質にすることを意味する。したがって文脈から明らかなように、コード配列の発現は、そのコード配列を転写して翻訳することから生じる。逆に、非コード配列の発現は、非コード配列の転写から生じる。
【0084】
本明細書では、「融合」タンパク質は、自然界では結合した配置で見いだされることのない、互いに結合した2つ以上のポリペプチドを意味する。
【0085】
本明細書では、「遺伝子」という用語は、mRNA、アンチセンスRNA、siRNA、shRNA、miRNAなどを産生させるため、そしていくつかの実施態様ではポリペプチドを産生させるために使用できる核酸分子を意味する。遺伝子は、機能的タンパク質を産生させるのに使用できてもできなくてもよい。遺伝子は、コード領域と非コード領域の両方(例えばイントロン、調節エレメント(プロモータ、エンハンサ、終止配列、5’と3’の非翻訳領域が含まれる))を含むことができる。遺伝子は「単離する」ことができる。単離とは、核酸分子が、その自然の状態でその核酸分子に付随して通常見いだされる諸成分を実質的または本質的に含まないことを意味する。そのような成分に含まれるのは、他の細胞材料、および/または組み換え産生からの培地、および/または核酸分子の化学合成で用いるさまざまな化学物質である。「遺伝子」に言及するときには、その範囲に、連続した配列を有するため本明細書に規定したような連続した核酸種を規定する遺伝子、または不連続な配列を有するため本明細書に規定した不連続な核酸種を規定する遺伝子への言及も含まれる。いくつかの実施態様では、「遺伝子」という用語の範囲に、特定のポリペプチドと、イントロンと、発現の調節に関与する隣接した5’と3’の非コードヌクレオチド配列をコードするオープンリーディングフレームが含まれる。この点に関し、遺伝子は、制御配列(プロモータ、エンハンサ、自然状態で所与の遺伝子に付随している終止シグナルおよび/またはポリアデニル化シグナル、異種の制御配列など)をさらに含むことができる。遺伝子配列として、cDNA、またはゲノムDNA、またはその断片が可能である。遺伝子は、染色体の外で維持するため、または宿主に導入するため、適切なベクターに導入することができる。
【0086】
本明細書では、「異種の」という用語は、配列の選択が、この配列とPD-L2ポリペプチドを融合した産物が、野生型PD-L2ポリペプチドの前駆体または成熟形態とは異なる配列を持つようになされた任意のタンパク質部分を意味する。
【0087】
「宿主」という用語は、本発明のコンストラクトを導入することのできる任意の生物(真核生物でも原核生物でもよい)またはその細胞を意味する。特別な実施態様では、「宿主」という用語は真核生物を意味し、その中には単細胞真核生物(酵母や真菌など)と多細胞真核生物(動物など)が含まれ、その非限定的な例に含まれるのは、無脊椎動物(例えば昆虫、刺胞動物、棘皮動物、線虫など);真核生物寄生虫(例えばマラリア寄生虫(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)など)、蠕虫など);脊椎動物(例えば魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類);哺乳動物(例えば齧歯類、ヒトなどの霊長類、ヒト以外の霊長類)である。したがって「宿主細胞」という用語は、そのような真核生物の細胞のほか、そのような真核生物に由来する細胞系を含むことが適切である。「宿主細胞」という用語の範囲には、本発明の任意の組み換えベクターまたは単離されたポリヌクレオチドのレシピエントになりうるかレシピエントであった個々の細胞または細胞培養物も含まれる。宿主細胞には単一の宿主細胞の子孫が含まれるが、その子孫は、自然の、または偶発的な、または意図的な変異および/または変化が原因で必ずしも元の親細胞と完全に同じでなくてもよい。宿主細胞には、生体内またはインビトロで本発明の組み換えベクターまたはポリヌクレオチドをトランスフェクトした細胞または感染させた細胞が含まれる。本発明の組み換えベクターを含む宿主細胞は、組み換え宿主細胞である。
【0088】
本明細書では、「免疫エフェクタ細胞」(IEC)という用語は白血球の集団を意味し、その中に含まれるのはエフェクタ部分受容体(例えばサイトカイン受容体)および/またはFc受容体を表面に提示するリンパ球であり、IECはその受容体を通じてエフェクタ部分(例えばサイトカイン)および/または抗体のFc領域に結合して標的細胞(例えば腫瘍細胞)の破壊に寄与する。IECは、例えば細胞傷害効果または食細胞効果を媒介することができる。IEC細胞の非限定的な例に含まれるのは、CD8+細胞傷害性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、γδT細胞、NK細胞、NK様T細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞などのエフェクタT細胞である。IECの活性は、APC(マクロファージ、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、B細胞、単球などのプロフェッショナル抗原提示細胞が含まれる)との相互作用を通じて調節することができる。
【0089】
本明細書では、「免疫原性組成物」または「免疫原性製剤」という用語は、脊椎動物(特に哺乳動物などの動物)に投与したときに免疫応答(Th1免疫応答が含まれる)を誘導する調製物を意味する。
【0090】
本明細書では、「指標」という用語は、結果または結果の表示を意味し、その中に含まれるのは、対象が特定の病気に罹患している可能性またはリスクを当業者が推定および/または判断することのできるあらゆる情報、数、比、信号、徴候、印、メモである。本発明の場合には、「指標」は、対象のTh1免疫状態を判断するため、場合によっては他の臨床的特徴とともに用いることができる。そのような指標が「求まった」とは、その指標が100%正確であることを意味しない。熟練した臨床医は、指標を他の臨床徴候とともに用いて診断を下すことができる。
【0091】
「リンカー」とは、2個の分子を連結してそれら2個の分子を望ましい立体配置にするのに役立つことがしばしばある1個の分子または一群の分子(モノマーやポリマーなど)を意味する。特別な実施態様では、「ペプチドリンカー」は、2つのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ドメイン、領域、モチーフを連結するアミノ酸配列を意味する。ペプチドリンカーはそれら2つの下位結合(例えばオリゴマー化)ドメインの相互作用に適合したスペーサー機能を提供することができるため、得られるポリペプチドは、標的分子(例えばPD-L2ポリペプチド)に対する特異的結合親和性を保持する、またはシグナル伝達活性を保持する。いくつかの実施態様では、リンカーは、例えば約2個~約35個のアミノ酸、または約4個~約20個のアミノ酸、または約8個~約15個のアミノ酸、または約15個~約25個のアミノ酸からなる。
【0092】
本明細書では、「部分」という用語は、分子の一部を意味し、部分として、分子内にあってその分子の特徴的な化学的特性、および/または生物学的特性、および/または医学的特性にとって非常に重要な1つの官能基、および/または一群の官能基、および/または特定の原子団が可能である。
【0093】
「得られた」は、所有するに至ることを意味する。そのようにして得られたサンプルに含まれるのは、例えば、特定の供給源から単離されるか特定の供給源に由来する核酸抽出物またはポリペプチド抽出物である。例えば抽出物は、対象の体液または組織から直接単離することができる。
【0094】
本明細書では、「オリゴマー化ドメイン」は、優先的に1つ以上のタンパク質ドメインと直接に、または架橋分子を介して相互作用または会合するタンパク質ドメインを意味し、他のタンパク質ドメインとのその相互作用が、オリゴマー化(すなわち二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、十一量体、十二量体や、より高次のオリゴマーの形成(オリゴマーは、ホモオリゴマーでもヘテロオリゴマーでもよい))に実質的に寄与したり、オリゴマー化を効率的に促進したりする。そのような「相補的」オリゴマー化ドメインに含まれるのは、二量体化ドメイン(例えば免疫グロブリンFcドメイン、ロイシンジッパーなど)、三量体化ドメイン(例えば大腸菌アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼ(ATCアーゼ)の触媒性サブユニット、バクテリオファージT4フィブリチンからの「フォールドン」三量体化配列、ネック領域ペプチド、ヒト肺界面活性Dタンパク質、オリゴマー化コイルドコイルアドヘシン、エンベロープウイルスのクラスI融合タンパク質の相補的7アミノ酸反復領域など)、四量体化ドメイン(例えばテトラブラキオンのコイルドコイルドメイン)、五量体化ドメイン(例えばトリプトファンジッパーまたは軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)の五量体化ドメインなど)、六量体化ドメイン(例えばIgA抗体の重鎖のC末端からのテールピース)であり、望むのであればこれらを組み合わせて用いてより高次のオリゴマー(七量体、八量体、九量体、十量体、十一量体、十二量体など)を形成することができる。
【0095】
本明細書では、「機能可能に接続された」または「機能可能に連結された」という表現は、そのように記述されている諸要素が、意図したように機能することができる関係で並置されていることを意味する。例えば興味あるヌクレオチド配列(例えばコード配列および/または非コード配列)に「機能可能に連結された」調節配列(例えばプロモータ)は、興味ある配列に対して制御配列が、その制御配列に適合した条件下で興味あるその配列の発現が可能になるように配置および/または配向されていることを意味する。制御配列は、興味あるヌクレオチド配列の発現を指示する機能を有するのであれば、興味あるヌクレオチド配列と連続している必要はない。したがって例えば介在非コード配列(例えば転写されるが翻訳されない配列)をプロモータとコード配列の間に存在させることができるが、それでもプロモータ配列はコード配列に「機能可能に連結している」と見なすことができる。同様に、PD-L2ポリペプチドを少なくとも1つの異種オリゴマー化ドメインに「機能可能に接続する」には、PD-L2ポリペプチドに対してオリゴマー化ドメインを、PD-L2ポリペプチドオリゴマー化ドメインキメラポリペプチドの自己組織化によるポリペプチド複合体の形成が可能になるように配置および/または配向することが含まれる。
【0096】
本明細書で交換可能に用いられる「患者」、「対象」、「宿主」、「個体」という用語は、治療または予防することが望ましい任意の対象(特に脊椎動物の対象、さらに特定するならば哺乳動物の対象)を意味する。本発明の範囲に入る適切な脊椎動物の非限定的な例に含まれるのは脊索動物亜門の任意のメンバーであり、そこには、霊長類(例えばヒト、サル、類人猿などであり、マカク属からのサルの種(例えばカニクイザル(Macaca fascicularis)および/またはアカゲザル(Macaca mulatta))、ヒヒ(Papio ursinus)、マーモセット(マーモセット属からの種)、リスザル(リスザル属からの種)、タマリン(タマリン属からの種)が含まれる)、類人猿の種(例えばチンパンジー(Pan troglodytes)が含まれる)、齧歯類(例えばマウス、ラット、モルモット)、ウサギ目(例えばウサギ、野ウサギ)、ウシ科(例えばウシ)、ヒツジ科(例えばヒツジ)、ヤギ科(例えばヤギ)、ブタ科(例えばブタ)、ウマ科(例えばウマ)、イヌ科(例えばイヌ)、ネコ科(例えばネコ)、鳥類(例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、飼い鳥(カナリア、セキレイインコなど))、海洋哺乳動物(例えばイルカ、クジラ)、爬虫類(ヘビ、カエル、トカゲなど)、魚が含まれる。好ましい対象は、エンベロープウイルスの融合タンパク質、または融合タンパク質の複合体に対する免疫応答を誘起する必要があるヒトである。しかし段落冒頭の用語は、症状が存在することを意味していないことが理解されよう。
【0097】
本明細書で交換可能に用いられる「PD-L2活性」、「PD-L2の生物活性」、「PD-L2の機能的活性」は、PD-L2ポリペプチドまたはPD-L2核酸分子がPD-L2に応答する細胞または組織に対して、またはPD-L2ポリペプチド結合パートナーに対して及ぼす活性を意味し、その活性は、標準的な技術に従って生体内またはインビトロで求められる。いくつかの実施態様では、PD-L2活性は、PD-L2結合パートナーとの会合などの直接的な活性である。本明細書では、「標的分子」または「結合パートナー」は、PD-L2ポリペプチドと自然に結合または相互作用してPD-L2を通じた機能を実現する分子である。特別な実施態様では、PD-L2標的分子は、PD-1受容体と反発性ガイダンス分子b(RGMb)から選択される。あるいはPD-L2活性は、PD-L2ポリペプチドが天然の結合パートナー(例えばPD-1またはRGMb)と相互作用することによって伝えられる細胞シグナル伝達活性などの間接的な活性である。PD-L2の生物活性は本明細書に記載されている。例えば本発明のPD-L2ポリペプチドは、以下の機能、すなわち1)受容体PD-1やそれ以外の天然のPD-L2結合パートナー(RGMbなど)に結合する機能、および/またはその活性を調節する機能、2)細胞内シグナル伝達または細胞間シグナル伝達を調節する機能、3)免疫細胞(例えばTリンパ球)の活性化を調節する機能、4)生物(例えばヒトやそれ以外の霊長類などの哺乳動物)の免疫応答(Th1免疫応答が含まれる)を調節する機能のうちの1つ以上を持つことができる。
【0098】
「PD-L2発現」、「PD-L1発現」という用語は、それぞれ、PD-L2とPD-L1の転写および/または翻訳および/または活性を意味する。例えば本明細書に記載してあるように、いくつかの方法を利用してPD-L2とPD-L1の発現レベルを求めることができる。
【0099】
「PD-L2ポリペプチド」は、PD-L2分子に対応するアミノ酸配列を持つポリペプチドを意味する。この用語には、配列ID番号1、2、3、4、5、6のいずれかに記載した配列との配列一致または配列類似性が少なくとも70%(と、少なくとも71%~少なくとも99%と、その間のあらゆる整数値)であるアミノ酸配列を持つポリペプチドが含まれるが、それに限定されない。この用語にはさらに、ある生物と別の生物の間に存在していたり生じたりする可能性があるPD-L2ポリペプチドの天然のアレル変異が含まれる。また、グリコシル化やそれ以外の翻訳後修飾の程度と位置は、選択された宿主と、その宿主の細胞環境の性質に応じて異なる可能性がある。「PD-L2ポリペプチド」という用語には、前駆体の形態のPD-L2ポリペプチドのほか、生物活性な形態が得られるように処理したPD-L2ポリペプチドも含まれることが想定されている。この用語にはさらに、参照用または天然のPD-L2ポリペプチドと比べて化学的に修飾されているPD-L2ポリペプチド、および/または参照用または天然のPD-L2ポリペプチドと比べてアミノ酸配列に1つ以上の変更を含むPD-L2ポリペプチド、および/または参照用または天然の完全長または前駆体のPD-L2ポリペプチドまたはそのドメイン(PD-L2シグナルペプチド、IgVドメイン、IgCドメイン、外部ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞質内ドメインが含まれる)と比べて短縮されたアミノ酸配列を含むPD-L2ポリペプチドが含まれる。その代わりに、またはそれに加えて、PD-L2ポリペプチド(その複合体が含まれる)は、参照用または天然のPD-L2ポリペプチドとは異なる特性を示す可能性がある。その特性に含まれるのは変化した(例えば増強された)安定性や変化した(例えば増強された)生物活性であり、その非限定的な例は、1)受容体PD-1やそれ以外の天然のPD-L2結合パートナー(RGMbなど)への結合の増強、および/または受容体PD-1やそれ以外の天然のPD-L2結合パートナー(RGMbなど)のシグナル伝達の増強、2)細胞内シグナル伝達または細胞間シグナル伝達の増強、3)免疫細胞(例えばTリンパ球)の活性化の増強、4)生物(例えばヒトやそれ以外の霊長類などの哺乳動物)の免疫応答(Th1免疫応答が含まれる)の増強である。「PD-L2ポリペプチド」という用語には、わずかに変化したアミノ酸配列を持つタンパク質性分子(例えば、N末端が変化していてN末端のアミノ酸の欠失または付加があるポリペプチド、および/または参照用または天然のPD-L2ポリペプチドと比べて化学的に修飾されたポリペプチド)も含まれる。PD-L2ポリペプチドには、参照用または天然のPD-L2ポリペプチドと実質的に同じかより優れた生物活性を示すタンパク質分子、または参照用または天然のPD-L2ポリペプチドと比べて実質的に変化するか低下した生物活性を示すタンパク質分子も含まれる。
【0100】
「医薬として許容可能な基剤」は、動物(ヒトを含む哺乳動物が好ましい)に局所投与または全身投与するとき安全に使用できる固体または液体の充填剤、希釈剤、封入物質を意味する。医薬として許容可能な代表的な基剤に含まれるのは、当業者に知られているように、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬、薬安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、着香剤、染料、これらと同様の材料、これらの組み合わせである(例えば、『Remington’s Pharmaceutical Sciences』、第18版、Mack Printing Company社、1990年、1289~1329ページ(参照によって本明細書に組み込まれている)を参照されたい)。従来からあるどの基剤も、活性成分と適合しない場合を除き、医薬組成物で用いることが考えられる。
【0101】
本明細書では、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、DNAのいずれかを意味する。この用語は、典型的には、長さが少なくとも10塩基のポリマーの形態になったヌクレオチドを意味し、そのヌクレオチドは、リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドであるか、修飾された形態のどちらかのタイプのヌクレオチドである。この用語には、一本鎖の形態のDNAと二本鎖の形態のDNAが含まれる。
【0102】
本明細書では、「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」、「タンパク質性分子」は交換可能に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを含む分子、またはアミノ酸残基のポリマーからなる分子と、そのバリアントおよび合成類似体を意味する。したがってこれらの用語は、1個以上のアミノ酸残基が非天然の合成アミノ酸(例えば対応する天然のアミノ酸の化学的類似体)であるアミノ酸ポリマーと、天然のアミノ酸ポリマーに適用される。
【0103】
本明細書では、「組み換えポリヌクレオチド」という用語は、インビトロで核酸を操作することによって自然界では通常見られない形態にされたポリヌクレオチドを意味する。例えば組み換えポリヌクレオチドは、発現ベクターの形態にすることができる。一般に、そのような発現ベクターは、ヌクレオチド配列に機能可能に連結されていて転写と翻訳を調節する核酸を含んでいる。
【0104】
「組み換えポリペプチド」は、組み換え技術を利用して、すなわち組み換えポリヌクレオチドを発現させることを通じて作製されたポリペプチドを意味する。
【0105】
本明細書では、「調節エレメント」、「調節配列」、「制御エレメント」、「制御配列」などは交換可能に用いられ、コード配列の上流に位置するヌクレオチド配列(5’非コード配列)、またはコード配列の中に位置するヌクレオチド配列、またはコード配列の下流に位置するヌクレオチド配列(3’非コード配列)を意味し、直接的に、または間接的に、関連するコード配列の転写、RNAプロセシング、RNA安定性、翻訳に影響を及ぼす。調節エレメントに含まれるのは、エンハンサ、プロモータ、翻訳リーダー配列、イントロン、Rep認識エレメント、遺伝子間領域、ポリアデニル化シグナル配列である。その中には、天然配列と合成配列のほか、合成配列と天然配列が組み合わされている可能性のある配列が含まれる。
【0106】
本明細書では、「サンプル」という用語に、対象からのあらゆる生物サンプルが含まれ、そのサンプルとして、抽出したサンプル、処理していないサンプル、処理したサンプル、希釈したサンプル、濃縮したサンプルが可能である。サンプルの非限定的な例に含まれる可能性があるのは、体液(例えば全血、血清、赤血球細胞、白血球細胞、血漿、唾液、尿、大便(すなわち糞)、涙、汗、皮脂、乳頭吸引液、乳管洗浄液、腫瘍滲出液、滑液、腹水、腹腔液、羊水、脳脊髄液、リンパ液、細針吸引液)、他のあらゆる体液、細胞ライセート、細胞分泌物、炎症液、精液、膣分泌物である。サンプルには、組織サンプル、生検組織、組織ホモジェネートなどが含まれる可能性がある。好ましいサンプルに含めることができるのは、本明細書に教示した任意の1つ以上のバイオマーカーを検出可能な量で含むサンプルである。サンプルは、できるだけ少ない侵襲で対象から取り出すこと、または単離することが可能な方法によって容易に取得できることが好ましい。いくつかの実施態様では、サンプルは、血液(特に末梢血)を含むか、その分画または抽出物を含んでいる。典型的には、サンプルは、血液細胞(例えば成熟した白血球、未熟な白血球、発達中の白血球であり、白血球には、リンパ球、多形核白血球、好中球、単球、網状赤血球、好塩基球、体腔細胞、血球、好酸球、巨核球、マクロファージ、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞などが含まれる)、またはそのような細胞の分画(例えば核酸分画またはタンパク質分画)を含んでいる。特別な実施態様では、サンプルは、白血球(その中には末梢血単核細胞(PBMC)が含まれる)を含んでいる。
【0107】
「自己組織化」は、より高次の構造を自発的に組み立てるプロセスを意味し、このプロセスは、その高次構造の構成要素(例えば分子)が互いに自然に引き合うことに依存している。これは、典型的には、分子がランダムに運動することと、サイズ、形状、組成、化学的特性に基づいて結合が形成されることを通じて起こる。
【0108】
本明細書では、「配列一致」という用語は、比較ウインドウ上で、ヌクレオチドごとに、またはアミノ酸ごとに、配列が一致している程度を意味する。したがって「配列一致の割合」は、最適なアラインメントにした2つの配列を比較ウインドウ上で比較し、両方の配列で核酸塩基(例えばA、T、C、G、I)またはアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、Met)の一致が起こる位置の数を求めて一致した位置の数を取得し、一致した位置に関するその数を、比較ウインドウ内の位置の総数(すなわちウィンドウサイズ)で割り、得られた結果を100倍することによって計算される。本発明では、本発明の方法とシステムにおいて、完全長IL-22ポリペプチドと、その生物活性な断片を用いることを考える。典型的には、完全長IL-22ポリペプチドの生物活性な断片は、相互作用(例えば分子内相互作用または分子間相互作用)に関与することができる。
【0109】
「類似性」は、一致するアミノ酸、または上記の表1と表2に規定した保存的置換を構成するアミノ酸の%数を意味する。類似性は、GAP(Deveraux他、1984年、Nucleic Acids Research 第12巻:387~395ページ)などの配列比較プログラムを用いて求めることができる。このようにして、長さが類似した配列または長さが実質的に異なる配列を、本明細書に引用した配列と比較することが、アライメントの中にギャップを挿入することによって可能になろう。そのようなギャップは、例えばGAPが利用している比較アルゴリズムによって求まる。
【0110】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の配列関係を記述するのに用いられる用語には、「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列一致」、「配列一致の割合」、「実質的一致」が含まれる。「参照配列」は、長さが少なくとも12モノマー単位(ヌクレオチドとアミノ酸残基が含まれる)であり、15~18モノマー単位であることが頻繁にあり、少なくとも25モノマー単位であることがしばしばある。2つのポリヌクレオチドは、それぞれ、(1)その2つのポリヌクレオチドの間で類似している配列(すなわち、ポリヌクレオチド配列の全長の一部だけ)と、(2)その2つのポリヌクレオチドの間で異なる配列を含んでいる可能性があるため、2つ(以上)のポリヌクレオチドの間の配列比較は、典型的には、その2つのポリヌクレオチドの配列を「比較ウインドウ」上で比較し、配列が類似している局所領域を同定して比較することによってなされる。「比較ウインドウ」は、少なくとも6個の連続した位置(通常は約50~約100個、より一般的には約100~約150個)からなる概念的区画を意味し、その比較ウインドウ内の配列が、同数の連続した位置からなる参照配列と、それら2つの配列を最適なアラインメントにした後に比較される。比較ウインドウは、2つの配列を最適なアラインメントにするため、(付加または欠失を含まない)参照配列と比べて約20%以下の付加または欠失(すなわちギャップ)を含んでいてもよい。配列を最適なアラインメントにして比較ウインドウにアラインメントすることは、コンピュータに実装したアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0の中のGAP、BESTFIT、FASTA、TFASTA、Genetics Computer Group社、575サイエンス・ドライブ・マディソン、ウィスコンシン州、アメリカ合衆国)によって、または目視と、さまざまな方法の中から選択された任意の方法によって生成された最良の(すなわち、比較ウインドウ上で相同性の割合が最大になる)アラインメントによって実現することができる。例えばAltschul他、1997年、Nucl.Acids Res.第25巻:3389ページに開示されているBLASTファミリーのプログラムも参照することができる。配列分析の詳細な議論は、Ausubel他、『Current Protocols in Molecular Biology』、John Wiley & Sons Inc.社、1994年~1998年、第15章の19.3項に見いだすことができる。
【0111】
本明細書では、「一本鎖」という用語は、単一の直鎖状かつ連続した共有結合アミノ酸配置である。
【0112】
本明細書では、「可溶性」ポリペプチド(可溶性PD-L2ポリペプチドなど)という用語は、通常は膜に結合しているが、膜に結合していない状態になると、分子に結合する能力を保持しつつ機能し、膜に結合している相手(例えばPD-1)によって認識される非天然のポリペプチドを意味する。
【0113】
本明細書で交換可能に用いられる「Th1関連疾患」または「Th1関連障害」は、Th1免疫応答の発生に関連する疾患を意味する。本明細書では、「Th1免疫応答」は、Th1細胞の増殖または分化増加を意味する。Th1関連疾患またはTh1関連障害の同定は、(1)Th1細胞および/またはTh1サイトカインおよび/またはTh1抗体のレベルが、ヒト、動物、細胞培養物のいずれかで通常見られるレベルを超えていること;(2)疾患または病状に関係する病理学的所見を、Th1細胞の増殖または分化を上方調節する薬剤の投与によって動物で実験的に再現できること;(3)疾患または病状の実験動物モデルで誘導される病状を、Th1細胞の増殖または分化を抑制する薬剤を用いた処置によって抑制できること、またはなくせることによって適切になされる。大半のTh1関連疾患では、これら3つの条件のうちの少なくとも2つが満たされている。
【0114】
本明細書では、「処置」、「処置する」などの用語は、望む薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、疾患またはその症状を完全または部分的に予防するという点では予防的であり、および/または疾患および/またはその疾患に起因する有害な効果を部分的または完全に治癒させるという点では治療的である。本明細書では、「処置」は、哺乳動物(特にヒト)における疾患のあらゆる処置をカバーしていて、その中に含まれるのは、(a)その疾患にかかりやすいがまだその疾患であるという診断がなされていない対象でその疾患の発症を予防すること;(b)その疾患を抑制すること、すなわちその疾患の発症を止めること;(c)その疾患を軽減すること、すなわちその疾患を後退させることである。
【0115】
「ベクター」は、例えばプラスミド、バクテリオファージ、酵母、ウイルスのいずれかに由来するポリヌクレオチド分子(DNA分子が適切である)を意味し、ベクターにはポリヌクレオチドを挿入したりクローニングしたりすることができる。ベクターは、1つ以上の独自の制限部位を含むことができ、所定の宿主細胞(標的細胞または標的組織、またはその前駆細胞または前駆組織が含まれる)の中で自律的な複製をしたり、その所定の宿主のゲノムに組み込んだりすることが可能であるため、クローニングされた配列を再現することができる。したがってベクターとして、自律複製ベクター、すなわち染色体の外に存在していて染色体の複製とは独立に複製されるベクター(例えば線状プラスミド、閉環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、人工染色体)が可能である。ベクターは、自己複製を保証するための任意の手段を含むことができる。あるいはベクターとして、宿主細胞に導入されたときにゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体とともに複製されるベクターが可能である。ベクター系は、単一のベクターまたはプラスミドを含むこと、または2つ以上のベクターまたはプラスミド(それらを合わせると、宿主細胞のゲノムに導入される全DNAが含まれている)を含むこと、またはトランスポゾンを含むことができる。ベクターの選択は、典型的には、ベクターと、そのベクターが導入される宿主細胞の適合性に依存するであろう。本発明では、ベクターは、動物の細胞、好ましくは哺乳動物の細胞の中で機能する、ウイルスのベクターまたはウイルス由来のベクターが好ましい。そのようなベクターは、ポックスウイルス、アデノウイルス、酵母に由来するものが可能である。ベクターは、適切な形質転換細胞の選択に使用できる選択マーカー(抗生物質耐性遺伝子など)も含むことができる。そのような耐性遺伝子は当業者に知られており、その例に含まれるのは、抗生物質であるカナマイシンとG418(Geneticin(登録商標))に対する耐性を与えるnptII遺伝子や、抗生物質であるハイグロマイシンBに対する耐性を与えるhph遺伝子である。
【0116】
「野生型」、「天然の(native)」、「天然の(naturally occurring)」という用語は、本明細書では交換可能に用いられ、遺伝子または遺伝子産物であって、天然の供給源から単離されたときにその遺伝子または遺伝子産物の特徴を有するものを意味する。野生型または天然の遺伝子または遺伝子産物(例えばポリペプチド)は、集団の中で最も頻繁に観察されるため、その遺伝子または遺伝子産物の「通常の」形態または「野生型」形態と呼ばれるようになっている。
【0117】
本明細書に記載したそれぞれの実施態様は、特に断わらない限り、必要な変更を加えた上で個々の実施態様すべてに適用されるべきである。
【0118】
2.ポリペプチド複合体
本発明の発明者は、驚くべきことに、APC(例えば樹状細胞)などのIEC相互作用細胞の表面におけるPD-L2発現がTh1関連障害の重症度と逆相関することと、Th1免疫を確立するのにPD-L2が必要であることを発見した。言い換えるならば、APCの表面におけるPD-L2発現が、正常なTh1免疫または損なわれていないTh1免疫の存在と相関する閾値よりも下になると、Th1免疫は損なわれる。本発明の発明者は、APCの表面におけるPD-L2のクラスター化がPD-1へのPD-L1の結合を抑制し、そのことによって抗原特異的IEC(例えば抗原特異的T細胞)に対するPD-L1の免疫抑制機能を抑制できることも発見した。そのため本発明の発明者は、PD-L2のさまざまなオリゴマーがPD1へのPD-L1の結合を阻止する効果を比較するに至った。注目すべきことに、二量体形態のPD-L2はこの結合を阻止するのに効果的ではないことが見いだされた。しかし本発明の発明者は、より高次のPD-L2オリゴマー、すなわちオリゴマー化度が3以上(例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12など)のPD-L2オリゴマーは、PD-1への結合に関して二量体PD-L2よりも有意に大きい親和性を持つことと、そのようなより高次のPD-L2オリゴマーは、PD-L1がIECの機能(CD4+ T細胞の機能が含まれる)を抑制する効果を著しく低下させることが可能であることも見いだした。したがって本発明により、Th1免疫の調節とTh1関連疾患の処置に使用するための、オリゴマー化度が3以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12など)のPD-L2オリゴマーが提供される。これについてはあとでより詳しく説明する。
【0119】
そこで本発明により、Th1免疫を刺激または増進するのに役立つポリペプチド複合体が提供される。この複合体は、一般に、式(I):
[P]n (I)
で表わされる。ただしこの式において、
Pは、現われるごとに独立に、PD-L2ポリペプチドを含むタンパク質性分子、またはPD-L2ポリペプチドからなるタンパク質性分子、または主にPD-L2ポリペプチドからなるタンパク質性分子を表わし;
nは2よりも大きい整数を表わす。
【0120】
2.1 PD-L2ポリペプチド
PD-L2は膜貫通タンパク質であり、単量体の形態では、シグナルペプチドと、IgVドメインと、IgCドメインを含んでいて、その2つのドメインが分子の細胞外ドメイン(本明細書では「外部ドメイン」とも呼ぶ)を構成しており、そのIgV様ドメインが、全体として、または部分的に、PD-1への結合とそれ以外の機能(シグナル伝達が含まれる)に重要な役割を果たしている。PD-L2は、短い細胞質内ドメインと単一の膜貫通ドメインも含んでいる。
【0121】
PD-L2タンパク質の非限定的な例は、以下のPD-L2オルソログから選択することができる。
【0122】
ヒトPD-L2
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPTWLLHIFIPFCIIAFIFIATVIALRKQLCQKLYSSKDTTKRPVTTTKREVNSAI[配列ID番号1];
【0123】
チンパンジーPD-L2
MRWAKRSRYELRERDSMNHERWAKKAASPEVSDQIQNMIFLLLMLSLELQLHQIAALFT
VTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHCERATLLEEQLPLGKALFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPTWLLHIFIPSCIIAFIFIATVIALRKQLCQKLYSSKDTTKRPVTTTKREVNSAI[配列ID番号2];
【0124】
マウスPD-L2
MLLLLPILNLSLQLHPVAALFTVTAPKEVYTVDVGSSVSLECDFDRRECTELEGIRASLQK
VENDTSLQSERATLLEEQLPLGKALFHIPSVQVRDSGQYRCLVICGAAWDYKYLTVKVKASYMRIDTRILEVPGTGEVQLTCQARGYPLAEVSWQNVSVPANTSHIRTPEGLYQVTSVLRLKPQPSRNFSCMFWNAHMKELTSAIIDPLSRMEPKVPRTWPLHVFIPACTIALIFLAIVIIQRKRI[配列ID番号3];
【0125】
配列ID番号1~3のいずれかに示されている配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%とその間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチド。
【0126】
有用なPD-L2ポリペプチドには可溶性の断片が含まれる。可溶性の断片はPD-L2の断片であることが好ましく、産生細胞から放出される可能性、または産生細胞から分泌される可能性、または産生細胞から抽出できる可能性がある。いくつかの実施態様では、PD-L2ポリペプチドは、PD-L2の外部ドメイン全体を含んでいる。PD-L2の外部ドメインは、哺乳動物のPD-L2のほぼ20番目から221番目までのアミノ酸、またはその活性な断片を含んでいる。別の実施態様では、PD-L2ポリペプチドは、PD-L2のIgCドメインとIgVドメインを含んでいる。さらに別の実施態様では、PD-L2ポリペプチドは、PD-L2のIgVドメインを含んでいる。
【0127】
特別な実施態様では、PD-L2ポリペプチドは、PD-L2外部ドメインを含んでいる、またはPD-L2外部ドメインからなる、または主にPD-L2外部ドメインからなる。その具体例には以下のものが含まれる:
【0128】
ヒトPD-L2外部ドメイン+シグナルペプチド
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT[配列ID番号4];
【0129】
チンパンジーPD-L2外部ドメイン+シグナルペプチド
MRWAKRSRYELRERDSMNHERWAKKAASPEVSDQIQNMIFLLLMLSLELQLHQIAALFT
VTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHCERATLLEEQLPLGKALFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT[配列ID番号5];
【0130】
マウスPD-L2外部ドメイン+シグナルペプチド
MLLLLPILNLSLQLHPVAALFTVTAPKEVYTVDVGSSVSLECDFDRRECTELEGIRASLQK
VENDTSLQSERATLLEEQLPLGKALFHIPSVQVRDSGQYRCLVICGAAWDYKYLTVKVKASYMRIDTRILEVPGTGEVQLTCQARGYPLAEVSWQNVSVPANTSHIRTPEGLYQVTSVLRLKPQPSRNFSCMFWNAHMKELTSAIIDPLSRMEPKVPRT[配列ID番号6];
【0131】
ヒトPD-L2外部ドメイン
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHRERATLLEEQLP
LGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT[配列ID番号7];
【0132】
チンパンジーPD-L2外部ドメイン
LFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKVENDTSPHCERATLLEEQLP
LGKALFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT[配列ID番号8];
【0133】
マウスPD-L2外部ドメイン
LFTVTAPKEVYTVDVGSSVSLECDFDRRECTELEGIRASLQKVENDTSLQSERATLLEEQL
PLGKALFHIPSVQVRDSGQYRCLVICGAAWDYKYLTVKVKASYMRIDTRILEVPGTGEVQLTCQARGYPLAEVSWQNVSVPANTSHIRTPEGLYQVTSVLRLKPQPSRNFSCMFWNAHMKELTSAIIDPLSRMEPKVPRT[配列ID番号9];
【0134】
配列ID番号4~9のいずれかに示されている配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%とその間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチド。
【0135】
いくつかの実施態様では、PD-L2ポリペプチドは、PD-L2膜貫通ドメインの少なくとも一部を含んでいる。
【0136】
他の多数の哺乳動物のPD-L2配列(その中には霊長類の配列が含まれる)が本分野で知られており、例えばGenPeptデータベースまたはOnlamoon他(Immunology 第124巻:277~293ページ、2008年)に開示されている。
【0137】
本発明のタンパク質性分子は、適切な任意の手段によってオリゴマー化することができる。例えばオリゴマーは、タンパク質性分子の間に、化学的結合を通じて(例えばヘテロ二官能性リンカーを用いて)、またはオリゴマー化ドメインをそのタンパク質性分子のPD-L2ポリペプチドに機能可能に接続することによって形成することができる。
【0138】
2.2 ヘテロ二官能性連結試薬
1つのタンパク質性分子を他のタンパク質性分子に連結させて本発明のポリペプチド複合体を作製するときの連結は、直接的でも間接的でもよい。例えば2つ以上のタンパク質性分子の連結は、化学的連結によって実現すること、またはヘテロ二官能性リンカーによって促進することができる。アミノ基とチオール基の間に共有結合を形成してチオール基をタンパク質の中に導入するのに用いられる多数のヘテロ二官能性架橋剤が当業者に知られている(例えば『PIERCE CATALOG,ImmunoTechnology Catalog & Handbook』、1992年~1993年(そのような試薬の調製法と利用法が記載されていることに加え、そのような試薬の供給元が提示されている)を参照されたい;例えばCumber他、Bioconjugate Chem.第3巻:397~401ページ、1992年;Thorpe他、Cancer Res.第47巻:5924~5931ページ、1987年;Gordon他、Proc.Natl.Acad Sci.USA第84巻:308~312ページ、1987年;Walden他、J.Mol.Cell Immunol.第2巻:191~197ページ、1986年;Carlsson他、Biochem.J.第173巻:723~737ページ、1978年;Mahan他、Anal.Biochem.第162巻:163~170ページ、1987年;Wawrzynczak他、Br.J.Cancer第66巻:361~366ページ、1992年;Fattom他、Infection & Immun.第60巻:584~589ページ、1992年も参照されたい)。これらの試薬は、1つのPD-L2ポリペプチドと別のPD-L2ポリペプチドの間に共有結合を形成するのに用いることができ、その非限定な例に含まれるのは、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジル(SPDP;ジスルフィドリンカー);6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサン酸スルホスクシンイミジル(スルホ-LC-SPDP);ベンジルチオスルホン酸スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル(SMBT、立体障害ジサルフェートリンカー)。6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサン酸スクシンイミジル(LC-SPDP);4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸スルホスクシンイミジル(スルホ-SMCC);3-(2-ピリジルジチオ)酪酸スクシンイミジル(SPDB;立体障害ジスルフィド結合リンカー);2-(7-アジド-4-メチルクマリン-3-アセトアミド)エチル-1,3’-ジチオプロピオン酸スルホスクシンイミジル(SAED);7-アジド-4-メチルクマリン-3-酢酸スルホ-スクシンイミジル(SAMCA);6-[α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルアミド]-ヘキサン酸スルホスクシンイミジル(スルホ-LC-SMPT);1,4-ジ-[3’-(2’-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB);4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルチオ)-トルエン(SMPT、立体障害ジサルフェートリンカー);6-[α-メチル-α-(2-ピリミジルジチオ)トルアミド]-ヘキサン酸スルホスクシンイミジル(スルホ-LC-SMPT);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル(MBS);m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミドエステル(スルホ-MBS);(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸N-スクシンイミジル(SIAB;チオエーテルリンカー);(4-ヨードアセチル)アミノ安息香酸スルホスクシンイミジル(スルホ-SIAB);4-(p-マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミジル(SMPB);4-(p-マレイミド-フェニル)酪酸スルホスクシンイミジル(スルホ-SMPB);アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)である。これらのリンカーは、ペプチドリンカー(例えば、構造的柔軟性または溶解性を増大させるリンカーや、立体障害を提供したり除去したりするリンカーなど)と組み合わせて用いることができる。ポリペプチド分子を他の分子に連結する用途で当業者に知られている他の任意のリンカーを用いることができる。一般的な特性は、得られる分子がPD-1または他の標的分子(例えば他のコグネイト受容体)に結合することである。
【0139】
2.3 オリゴマー化ドメイン
3つ以上のPD-L2ポリペプチドの相互作用は、それ自体が相互作用して安定な構造を形成することのできる任意の部分または他のポリペプチドに直接または間接に結合させることによって促進することができる。例えば別々のPD-L2ポリペプチド鎖をオリゴマー化によって接合して本発明のタンパク質性分子を形成することができる。そのときポリペプチドのオリゴマー化にはオリゴマー化ドメインが関与する。典型的には、オリゴマー化ドメインは、少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、またはそれ以上の個数のPD-L2ポリペプチド含有タンパク質性分子の間に安定なタンパク質-タンパク質相互作用が形成されるようにする。個々のPD-L2ポリペプチドのオリゴマー化ドメインは、本発明のポリペプチド複合体に含まれる別のPD-L2ポリペプチドのオリゴマー化ドメインとは異なっていてもよいが、異なるそのオリゴマー化ドメインが「相補的」であって互いに優先的に相互作用または会合してタンパク質性分子をオリゴマー化できる(すなわち、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、十一量体、十二量体などのオリゴマー、またはより高次のオリゴマー(そのオリゴマーはホモオリゴマーでもヘテロオリゴマーでもよい)を形成する)ことが条件である。
【0140】
一般に、オリゴマー化ドメインは、安定なタンパク質-タンパク質相互作用を形成することのできる任意のアミノ酸配列を含んでいる。オリゴマー化ドメイン同士は、免疫グロブリン配列(例えばFcドメイン;例えば国際特許出願公開WO93/10151とWO2005/063816;アメリカ合衆国特許出願公開第2006/0024298号;アメリカ合衆国特許第5,457,035号を参照されたい)、ロイシンジッパー(例えば核形質転換タンパク質であるfosとjun、またはがん原遺伝子であるc-mycからのロイシンジッパー、または窒素の全体的制御(General Control of Nitrogen)(GCN4)からのロイシンジッパー)、疎水性領域、親水性領域、ホモまたはヘテロオリゴマーのキメラ分子間に分子間ジスルフィド結合を形成する自由なチオールのいずれかを通じて相互作用することができる。それに加え、オリゴマー化ドメインは、穴を含むアミノ酸配列と相補的な突起を含むアミノ酸配列を含むことができる。これについては、例えばアメリカ合衆国特許第5,731,168号;国際特許出願公開WO98/50431とWO2005/063816;Ridgway他(1996年)Protein Engineering、第9巻:617~621ページに記載されている。このようなオリゴマー化領域を操作して、立体的相互作用により、安定な相互作用が促進されるだけでなく、キメラモノマーの混合物からホモ二量体よりもヘテロ二量体の形成が促進されるようにすることができる。一般に、突起は、第1のポリペプチドの界面からの小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えばチロシンまたはトリプトファン)で置き換えることによって構成される。場合によっては突起と同じか似たサイズの相補的な穴が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなアミノ酸側鎖(例えばアラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって第2のポリペプチドの界面に創り出される。オリゴマー化ドメインの例は下に示す。
【0141】
PD-L2ポリペプチド(例えば本明細書に提示されている任意のPD-L2ポリペプチド)は、どの位置にも接合できるが、典型的には、そのPD-L2ポリペプチドのN末端またはC末端を通じ、少なくとも1つのオリゴマー化ドメインを含むオリゴマー化モジュールのN末端またはC末端に接合することで、キメラポリペプチドを形成する。連結は直接的でも、リンカーを通じて間接的でもよい。また、キメラポリペプチドは、融合タンパク質であっても、化学結合によって(例えば共有結合相互作用や非共有結合相互作用などを通じて)形成してもよい。例えば少なくとも1つのオリゴマー化ドメインを含むオリゴマー化モジュールを含むキメラポリペプチドを調製するとき、PD-L2ポリペプチドをコードする核酸を、直接的または間接的に、または場合によってはリンカーペプチドを通じ、オリゴマー化モジュールをコードする核酸に機能可能に接続して、核酸コンストラクトを形成することができる。典型的には、このコンストラクトは、PD-L2ポリペプチドのC末端がオリゴマー化モジュールのN末端に接合されたキメラポリペプチドをコードしている。いくつかの例では、コンストラクトは、PD-L2ポリペプチドのN末端がオリゴマー化ドメインのC末端に接合されたキメラポリペプチドをコードすることができる。
【0142】
例えば少なくとも1つのオリゴマー化ドメインがPD-L2ポリペプチドの下流に機能可能に接続されている実施態様では、タンパク質分子は、式(II):
PD-L2-L-OMDA (II)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むこと、またはそのポリペプチド一本鎖からなること、または主にそのポリペプチド一本鎖からなることが可能である。ただしこの式において、
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは3以上、好ましくは3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、結合またはペプチドリンカーである。
【0143】
あるいはタンパク質分子は、式(III):
PD-L2-L-OMDA-L-OMDB (III)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むこと、またはそのポリペプチド一本鎖からなること、または主にそのポリペプチド一本鎖からなることが可能である。ただしこの式において、
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは2以上、好ましくは2、3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、現われるごとに独立に、結合またはペプチドリンカーを表わし;
OMDBは、j個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(jはiよりも大きい整数、好ましくはi+1、i+2、i+3、i+4、i+5、i+6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインである。
【0144】
例えば少なくとも1つのオリゴマー化ドメインがPD-L2ポリペプチドの上流に機能可能に接続されている実施態様では、タンパク質分子は、式(IV):
OMDA-L-PD-L2 (IV)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むこと、またはそのポリペプチド一本鎖からなること、または主にそのポリペプチド一本鎖からなることが可能である。ただしこの式において、
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは3以上、好ましくは3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、結合またはペプチドリンカーであり;
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わす。
【0145】
あるいはタンパク質分子は、式(V):
OMDB-L-OMDA-L-PD-L2 (V)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むこと、またはそのポリペプチド一本鎖からなること、または主にそのポリペプチド一本鎖からなることが可能である。ただしこの式において、
OMDBは、j個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(jは2以上、好ましくは2、3、4、5、6のいずれかであり;
Lは、現われるごとに独立に、結合またはペプチドリンカーを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(iはjよりも大きい整数、好ましくはj+1、j+2、j+3、j+4、j+5、j+6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わす。
【0146】
多数のオリゴマー化ドメインが本分野で知られており、その代表的な例には以下のものが含まれる。
【0147】
2.3.1 免疫グロブリンドメイン
オリゴマー化ドメインには、追加のアミノ酸配列のオリゴマー化ドメインと反応して分子間ジスルフィド結合を形成することのできる自由なチオール部分を含むものが含まれる。例えばオリゴマー化ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgM、IgEなどに由来する免疫グロブリン分子の一部を含むことができる。一般に、そのような部分は免疫グロブリン定常領域(Fc)である。抗体に由来するポリペプチドのさまざまな部分(Fcドメインが含まれる)に融合したポリペプチドを含む融合タンパク質の調製は以前から報告されている。例えばAshkenazi他、Proc.Natl.Acad.Sci USA 第88巻:10535ページ、1991年;Byrn他、Nature 第344巻:667ページ、1990年;『Current Protocols in Immunology』の中のHollenbaughとAruffo(2002年)「免疫グロブリン融合タンパク質の構成」、第10章、10.19.1~10.19.11ページを参照されたい。
【0148】
いくつかの実施態様では、オリゴマー化ドメインは完全長免疫グロブリンポリペプチドを含んでいる。あるいは免疫グロブリンポリペプチドは、完全長より短い、すなわち重鎖、軽鎖、Fab、Fab2、Fv、Fcのいずれかを含んでいる。一例では、PD-L2ポリペプチド-免疫グロブリンキメラポリペプチドは、ヘテロオリゴマーまたはホモオリゴマー(特に四量体)として組み立てられる。さまざまな構造の鎖または基本単位を利用してヘテロオリゴマーとホモオリゴマーを組み立てることができる。例えばPD-L2ポリペプチドは、1つの免疫グロブリン分子の全体または一部(その中には、1つの免疫グロブリン分子のCHドメイン、CLドメイン、VHドメイン、VLドメインの全部または一部が含まれる)に融合することができる(例えばアメリカ合衆国特許第5,116,964号を参照されたい)。キメラPD-L2ポリペプチド-免疫グロブリンポリペプチドは、適切な核酸分子を用いて形質転換された哺乳動物細胞に産生させて分泌させることが容易である。分泌型には、PD-L2ポリペプチドが重鎖と軽鎖のヘテロ四量体の中に、PD-L2ポリペプチドが1つ以上の軽鎖または重鎖に融合した状態で存在するものが含まれる。いくつかの例では、1つまたは2つ以上の核酸融合分子で宿主細胞を形質転換し、PD-L2ポリペプチド部分が同じか異なるオリゴマーをその宿主細胞に産生させることができる。
【0149】
Fcドメイン
典型的には、PD-L2ポリペプチドキメラポリペプチドの免疫グロブリン部分には、免疫グロブリンポリペプチドの重鎖、最も一般的には重鎖の定常ドメインが含まれる。ヒトIgGサブタイプに関する重鎖定常領域の配列の例は、以下の配列から選択されたものである。
【0150】
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSG
LYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK[配列ID番号10](IgG1);
【0151】
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSG
LYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK[配列ID番号11](IgG2);
【0152】
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSG
LYSLSSVVTVPSSSLGTQTYTCNVNHKPSNTKVDKRVELKTPLGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFKWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK[配列ID番号12](IgG3);
【0153】
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSG
LYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK[配列ID番号13](IgG4)。
【0154】
ただしCH1ドメインはアミノ酸1~98に対応し、ヒンジ領域はアミノ酸99~110に対応し、CH2ドメインはアミノ酸111~223に対応し、CH3ドメインはアミノ酸224~330に対応する。
【0155】
一例では、免疫グロブリンポリペプチドキメラタンパク質は、免疫グロブリンポリペプチドのFc領域を含むことができる。典型的には、そのような融合体は、少なくとも、免疫グロブリン重鎖の定常領域の機能的に活性なヒンジと、CH2ドメインと、CH3ドメインを保持している。例えばIgG1の完全長Fc配列は、配列ID番号10に記載した配列のアミノ酸99~330を含んでいる。ヒトIgG1のFc配列の一例は下記のものである。
【0156】
PKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNW
YVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK[配列ID番号14]
【0157】
この配列は、配列ID番号10に示したヒンジ配列のほぼすべてと、CH2ドメインとCH3ドメインの全配列を含んでいる。
【0158】
あるいはヒトIgG1のFc配列は、以下の配列から選択される。
【0159】
TCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVH
NAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGPFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK[配列ID番号15];と
【0160】
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDG
VEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK[配列ID番号16]。
【0161】
本明細書に提示したPD-L2ポリペプチドオリゴマー化モジュールキメラタンパク質には、ヒトIgG1 Fcに加え、他のFc領域も含めることができる。例えばFc/Fcγ受容体(Fc/FcγR)相互作用によって媒介される免疫エフェクタ機能をできるだけ小さくする場合には、補体または免疫エフェクタ細胞のリクルートが少ないIgGアイソタイプ(例えばIgG2またはIgG4のFc)と融合させることが考えられる。それに加え、Fc融合体は、任意の抗体クラス(その非限定的な例に含まれるのは、抗体のIgGクラス(ヒトサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、IgG4が含まれる)、IgAクラス(ヒトサブクラスIgA1とIgA2が含まれる)、IgDクラス、IgEクラス、IgMクラスである)に属する免疫グロブリン遺伝子によって実質的にコードされている免疫グロブリン配列を含むことができる。さらに、リンカーを用いてFcを別のポリペプチドに共有結合させてFcキメラを作製することができる。
【0162】
本明細書では、改変したFcドメインもPD-L2ポリペプチドとのキメラで用いることが考えられる。いくつかの例では、Fc領域を改変してFcRへの結合を変化させ、その結果としてそのFc領域が野生型免疫グロブリン重鎖のFc領域のエフェクタ機能から変化した(すなわち、より強い、またはより弱い)エフェクタ機能を持つようにする。したがって改変したFcドメインは、変化した親和性(その非限定的な例に、Fc受容体に対する親和性の増大、または低下、または不在が含まれる)を持つことができる。例えば異なるIgGサブクラスはFcγRに対する親和性が異なっており、典型的には、IgG1とIgG3はIgG2とIgG4と比べて受容体への結合が実質的により良好である。改変したFcドメインは当業者に公知であり、文献に記載されている。改変の例については例えばアメリカ合衆国特許第5,457,035号;アメリカ合衆国特許出願公開第2006/0024298号;国際特許出願公開WO2005/063816を参照されたい。
【0163】
2.3.2 コイルドコイルドメイン
タンパク質のオリゴマー化に関与する1つの一般的な構造モチーフはコイルドコイルドメインであり、そのようなドメインは、PD-L2ポリペプチド複合体を作製するためのオリゴマー化ドメインとしても用いることができる。コイル状αヘリックス構造モチーフはそれ自体がコイルを形成することができ、2つ、または3つ、または4つ、または5つのαヘリックスが互いに巻き付いて「コイルドコイル」として知られる左巻きスーパーヘリックスを形成することができるが、人工的な右巻きスーパーヘリックスが設計されている(Burkhard他、Trends Cell Biol第11巻:82~88ページ、2001年;Creightonによる『Proteins』(ISBN 0-7167-2317-4)の5.5.2節;Yu、AdV Drug Deliv Rev 第54巻:1113~1129ページ、2002年;Muller他、Methods Enzymol第328巻:261~282ページ、2000年;BeckとBrodsky、J Struct Biol第122巻:17~29ページ、1998年;Lupas、Trends Biochem Sci第21巻:375~382ページ、1996年;Adamson他、Curr Opin Biotechnol第4巻:428~347ページ、1993年)。コイルドコイルドメインは単純であるため、所定のオリゴマー化状態であるキメラタンパク質を設計する際によく選択されている(Muller他、Methods Enzymol第328巻:261~282ページ、2000年)。
【0164】
コイルドコイル構造では、αヘリックスは、各ヘリックスの一方の側に沿って極性のない縞を形成している疎水性残基を通じて相互作用する。この縞の両側にある側鎖の間には、安定化させる静電相互作用も存在している可能性がある。αヘリックスの7アミノ酸反復abcdefgの内部では、極性のない縞は、残基aとdの位置にある疎水性側鎖によって規定され、あらゆる静電相互作用は、主に残基eとgの位置に存在する。位置aは、Leu、Ile、Alaのいずれかであることが最も多く、位置dは、通常はLeuまたはAlaである。残基eとgは、GluまたはGlnであることがしばしばあり、ArgとLysも位置gによく見られる。帯電した残基は溶媒と接触しているため、位置b、c、fで一般的である。しかしこの一般的な7アミノ酸反復パターンには例外があり、Pro残基が7アミノ酸反復の中に見られることがある。このような例外には通常は機能上の意味があり、その非限定的な例に、Fタンパク質で起こるようなリフォールディングと再配列を可能にするオリゴマー化ドメインの不安定化が含まれる。
【0165】
本分野ではコイルドコイルドメイン配列が数百個知られているため、本発明ではオリゴマー化ドメインとして適切な任意の配列を使用できるが、その配列が、他のコイルドコイルドメインとのオリゴマーになる能力を保持していることと、その配列が、PD-L2ポリペプチド内の他のドメインの機能を破壊したり顕著に損なったりしないことが条件である。天然のコイルドコイルドメインを用いる代わりに人工のコイルドコイルドメインを用いることができる(Chao他、J Chromatog B Biomed Sci Appl 第715巻:307~329ページ、1998年;Arndt他、Structure第10巻:1235~1248ページ、2002年)。コイルドコイルドメインは非常に反復が多い構造であるため、このドメインは、コンピュータによるモデル化に特に適している。というのも1つの残基の各骨格部分を固有の変数を持つ独自のユニットとして扱うのではなく、各アミノ酸残基の骨格部分をパラメータ化できるからである。ドメイン(b)は、ロイシンジッパー配列またはアラニンジッパー配列を含むことができる(LiuとLu、J Biol Chem第277巻:48708~48713ページ、2002年)。
【0166】
コイルドコイルは、二量体、三量体、四量体、五量体として存在することがわかっている。コイルドコイルは多くの種類のタンパク質で見つかっており、そのようなタンパク質に含まれるのは、特に、転写因子(その非限定的な例はfos、jun、c-myc、GCN4)、ウイルス融合ペプチド、SNARE複合体、いくつかのtRNAシンテターゼである。非常に長いコイルドコイルが、トロポミオシン、中間径フィラメント、紡錘極体成分などのタンパク質に見られる。他の例はトロンボスポンジンと軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)であり、これらの中では、3本の鎖(トロンボスポンジン1とトロンボスポンジン2)または5本の鎖(トロンボスポンジン3、トロンボスポンジン4、COMP)鎖が結合している。分子は花束のような外観をしており、分子がオリゴマー構造である理由は、恐らくC末端ドメインと細胞受容体の多価相互作用であろう。酵母転写活性化因子GCN4は、塩基性領域ロイシンジッパー(bZIP)DNA結合モチーフを含む真核生物タンパク質が30種類以上同定されている中の1つである(Ellenberger他、Cell 第71巻:1223~1237ページ、1982年)。bZIP二量体は、カルボキシ末端の34残基にわたって平行なコイルドコイルを形成した後、アミノ末端に向かって徐々に分岐してDNA結合部位の主溝を通過する一対の連続αヘリックスである。別の例は、Mr 52000のサブユニットのホモ三量体としてウシ気管軟骨から単離されたCMP(マトリリン-1)(PaulssonとHeinegard、Biochem J.第197巻:367~375ページ、1981年)であり、このタンパク質では、各サブユニットが、vWFA1モジュールと、単一のEGFドメインと、vWFA2モジュールと、5つの7アミノ酸反復にわたるコイルドコイルドメインからなる(Kiss他、J.Biol.Chem.第264巻:8126~8134ページ、1989年;HauserとPaulsson、J.Biol.Chem.第269巻:25747~25753ページ、1994年)。さらに別の例は、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)である。非コラーゲン性糖タンパク質であるCOMPは、軟骨で最初に同定された(Hedbom他、J.Biol.Chem.第267巻:6132~6136ページ、1992年)。このタンパク質は、5つのサブユニットからなる524 kDaのホモ五量体であり、N末端の7アミノ酸反復領域(cc)と、その後に続く4つの上皮成長因子(EGF)様ドメイン(EF)、7つのカルシウム結合ドメイン(T3)、C末端の末端球状ドメイン(TC)からなる。このドメイン構成によれば、COMPはトロンボスポンジンのファミリーに属する。
【0167】
特別な実施態様では、コイルドコイルオリゴマー化ドメインはロイシンジッパーである。 ロイシンジッパードメインによって形成される二量体は、(abcdefg)n(例えばMcLachlan とStewart、J.Mol.Biol.第98巻:293ページ、1978年を参照されたい)で表わされる7アミノ酸反復によって安定化される。この式において残基aとdは一般に疎水性残基であり、そのうちのdはロイシンで螺旋の同じ面上に並ぶ。逆に帯電した残基が一般に位置gとeに来る。したがって2つの螺旋状ロイシンジッパードメインから形成された平行なコイルドコイルでは、第1の螺旋の疎水性側鎖によって形成された「ノブ」が、第2の螺旋の側鎖間に形成された「穴」に嵌まる。
【0168】
本明細書でオリゴマー化ドメインとして用いる具体的なロイシンジッパーは、ロイシンジッパードメインを示す2つの核形質転換タンパク質fosとjunのいずれかに由来するもの、またはマウスがん原遺伝子c-mycの産物に由来するものが可能である。ロイシンジッパードメインはこれらのタンパク質における生物活性(DNA結合)に必要である。核がん遺伝子fosとjunの産物は、ヘテロ二量体を優先的に形成するロイシンジッパードメインを含んでいる(O’Shea他、Science、第245巻:646ページ、1989年;TurnerとTijian、Science、第243巻:1689ページ、1989年)。例えばヒト転写因子c-junとc-fosのロイシンジッパードメインは、化学量論が1:1の安定なヘテロ二量体を形成することが示されている(例えばBuschとSassone-Corsi、Trends Genetics、第6巻:36~40ページ、1990年;Gentz他、Science、第243巻:1695~1699ページ、1989年を参照されたい)。jun-junホモ二量体も形成されることが示されているが、jun-fosヘテロ二量体と比べて安定性が約1/1000倍である。
【0169】
一般に、c-junまたはc-fosのロイシンジッパードメインは、PD-L2ポリペプチドのC末端に融合される。c-junとc-fosのロイシンジッパーのアミノ酸配列の例には以下のものが含まれる:
【0170】
RIARLEEKVKTLKAQNSELASTANMLREQVAQLKQKVMN[配列ID番号17];
【0171】
LTDTLQAETDQLEDEKSALQTEIANLLKEKEKLEFILAA[配列ID番号18]。
【0172】
それに加え、PD-L2ポリペプチドとロイシンジッパーの連結では、直接的な連結にすること、または構造的柔軟性の大きいリンカードメイン(例えばIgGのヒンジ領域、または小さなアミノ酸(グリシン、セリン、トレオニン、アラニンなど)からなるさまざまな長さと組み合わせの他のポリペプチドリンカー)を用いることができる。これについてはあとでより詳しく説明する。いくつかの例では、コードされたポリペプチドのC末端からのロイシンジッパーの分離は、プロテアーゼ切断部位(例えばトロンビン切断部位)をコードする配列との融合によって実現することができる。
【0173】
オリゴマー化ドメインとして用いる別のロイシンジッパードメインの一例は、サッカロミセス・セレビシエにおける窒素の全体的制御(GCN4)代謝に関与する遺伝子ファミリーの転写活性化因子として機能する核タンパク質に由来する。このタンパク質は二量体化してGCN4の認識配列を含むプロモータ配列に結合することができ、そのことによって窒素欠乏時に転写を活性化する。このようなドメインは本分野で知られている(O’Shea他、Science第243巻:534~542ページ、1989年;Harbury他、Science 第262巻:1401~1407ページ、1993年)。二量体複合体を形成することのできるGCN4ロイシンジッパーの配列の一例は、以下の配列から選択されることが適切である:
【0174】
RMKQLEDKVEELLSKNYHLENEVARLKKLVGE[配列ID番号19];
【0175】
MKQLEDKVEELLSKNYHLENEVARLKKLVGER[配列ID番号20]。
【0176】
GCN4ロイシンジッパードメインを表わす合成ペプチドのa残基とd残基におけるアミノ酸置換(すなわち配列ID番号16として示される配列におけるアミノ酸置換)は、ロイシンジッパードメインのオリゴマー化特性を変化させることが見いだされている。例えば位置aのすべての残基がイソロイシンに変化しても、ロイシンジッパーは相変わらず平行な二量体を形成する。この変化に加えて位置dのすべてのロイシン残基もイソロイシンに変化すると、得られたペプチドは溶液中で自発的に平行な三量体コイルドコイルを形成する。三量体を形成することのできるこのようなGCN4ロイシンジッパードメインの配列の一例は、以下の配列から選択される:
【0177】
RMKQIEDKIEEILSKIYHIENEIARIKKLIGE[配列ID番号21];
【0178】
MKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKK[配列ID番号22]。
【0179】
位置dのすべてのアミノ酸をイソロイシンで置換し、位置aのすべてのアミノ酸をロイシンで置換すると、四量体化するペプチドが得られる。四量体を形成することのできるGCN4のロイシンジッパードメインの代表的な1つの配列は、以下の配列から選択されることが適切である:
【0180】
RMKQIEDKLEEILSKLYHIENELARIKKLLGE[配列ID番号23];
【0181】
MKQIEDKLEEILSKLYHIENELARIKKLLGE[配列ID番号24]。
【0182】
オリゴマーが形成される機構は、従来からのロイシンジッパードメイン(例えば上に説明して配列ID番号16に示したGCN4)が形成される機構と同じであると考えられるため、これらの置換を含むペプチドはやはりロイシンジッパードメインと呼ばれる。
【0183】
代わりのコイルドコイルドメインは、三量体を形成する細菌の膜貫通タンパク質から得られるものである。適切な膜貫通タンパク質の例は、アドヘシン(すなわち他の細胞または表面への接着を媒介する細胞表面タンパク質)、特に細菌性アドヘシン(例えばオリゴマー化コイルドコイルアドヘシンファミリー、すなわち「Oca」ファミリーの中のアドヘシン)である。本発明で用いる具体的な配列に含まれるのは、参考文献24に開示されていて、エルニシア・エンテロコリチカのアドヘシンYadA、髄膜炎菌のアドヘシンNadA、モラクセラ・カタラーリスの表面タンパク質UspA2、他のアドヘシン(例えばインフルエンザ菌バイオグループエジプチウスからのHadA アドヘシン)などに由来する配列である。(WO2006/011060の配列ID番号28~31と42~58を参照されたい)。それに加え、真核生物の熱ショック転写因子は、別々に発現させることのできるコイルドコイル三量体化ドメインを有するため、本発明で用いることができる。
【0184】
本発明で用いることのできる別のクラスのオリゴマー化ドメインは、コラーゲンヘリックスとして知られる左巻き三重螺旋に見いだされる(Creightonによる『Proteins』(ISBN 0-7167-2317-4)の5.5.3節)。この三重螺旋形成配列には1Gly2Xaa3Xaaという基本的トリペプチド反復配列が含まれる(ただし2XaaはProであることがしばしばあり、3Xaaは4-ヒドロキシプロリンであることがしばしばある)。このモチーフは「コラーゲン」ヘリックスとして知られるが、コラーゲンだけでなく多くのタンパク質に見いだされる。したがってオリゴマー化ドメインとして、配列モチーフ1Gly2Xaa3Xaaの反復を複数個含む配列が可能であり、このモチーフが折り畳まれて螺旋構造を形成すると、この螺旋構造は、他のポリペプチド鎖の中の対応する螺旋構造とのオリゴマーになることができる。
【0185】
コラーゲンは別のクラスのオリゴマー化ドメインも提供する。ZhangとChen(J Biol Chem 第274巻:22409~22413ページ、1999年)は、X型コラーゲンの非コラーゲンドメイン1(NC1)に見られるモチーフを記載しており、このモチーフは、三重螺旋のない三量体とそれよりも高次のオリゴマーを形成するのに使用できる。三量体を形成するこの会合は、分子間ジスルフィド結合なしで非常に熱安定性である。したがってオリゴマー化ドメインはNC1配列を含むことができる。
【0186】
バクテリオファージT4タンパク質フィブリチンの三量体化ドメイン(フォールドン)(Tao他、Structure第5巻:789~798ページ、1997年;Guthe他、J.Mol.Biol.第337巻:905~915ページ、2004年)、特にフォールドンのC末端の27~30個の残基、またはその誘導体も、PD-L2ポリペプチドをオリゴマー化するのに使用できる。この三量体化ドメインは、配列GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL[配列ID番号25]またはGSGYIPEAP
RDGQAYVRKDGEWVLLSTFL[配列ID番号26]を持つことができる。このドメインをわずかに改変することも考えられる。そのような改変として、隣接したドメイン間にジスルフィド架橋を形成することを目的としてAsp 9をCysで置換する改変が可能である。このドメインの表面アミノ酸の別の改変に含めることができるのは、隣接したオリゴマー化ドメイン間の界面における相互作用(例えば、疎水性相互作用、親水性相互作用、イオン性相互作用や、ジスルフィド架橋などの共有結合)を最適化するための残基の置換である。このドメインの表面アミノ酸のさらに別の改変に含めることができるのは、官能基が付着する部位を作ることを目的としたアミノ酸の置換(例えばシステインまたはリシンによる置換)である。
【0187】
別の実施態様では、テトラブラキオンのコイルドコイルドメインの四量体化ドメイン(Stetefeld他、Nature Structural Biology第7巻(9):772~776ページ、2000年)またはその誘導体をPD-L2ポリペプチドのオリゴマー化に用いる。この四量体化ドメインは、配列IINETADDIVYRLTVIIDDRYESLKNLITLRADRLMIINDNVSTILASG[配列ID番号27]を含むことが適切である。コイルドコイルの配列は、3,4-疎水性反復を有する7残基反復を特徴とする。少数のターンの後に残基がほぼ同等な位置を取ることを可能にする次の周期性は、3つのターンまたは11個の残基である。超好熱性古細菌スタフィロテルムス・マリヌス(Staphylothermus marinus)由来の表面層糖タンパク質テトラブラチオンのC末端は、11残基反復の存在に基づき、右巻きコイルドコイル構造を形成する。このコイルドコイル構造は、長さが70nmでC末端が細胞膜に固定される四量体αヘリックスコイルドコイルの柄(stalk)を形成する。
【0188】
本発明では、PD-L2ポリペプチドをオリゴマー化するための五量体化ドメインも考慮する。このタイプのドメインの非限定的な一例は、COMPの五量体化ドメイン(Malashkevich他、Science 第274巻:761~765ページ、1996年)またはその誘導体である。この五量体化ドメインは、配列LAPQMLRELQETNAALQDVRELLRQQVKQITFLKNTVMECDACG[配列ID番号28]を含むことができる。この配列のより短いコンストラクト(例えばC末端のCDACGモチーフを欠いたコンストラクト(このモチーフの中のシステインが、この五量体化ドメインのC末端に分子間ジスルフィド架橋を形成する))も考えられる。
【0189】
あるいは五量体化ドメインは、トリプトファンジッパー(Liu J他、Proc Natl Acad Sci USA 第101巻:16156~16161ページ、2004年)またはその誘導体である。このタイプの五量体化ドメインの非限定的な一例は、配列SSNAKWDQWSSDWQTWNAKWDQWSNDWNAWRS
DWQAWKDDWARWNQRWDNWAT[配列ID番号29]を含んでいる。
【0190】
別の有用なオリゴマー化ドメインはIgA免疫グロブリンの重鎖のC末端(アルファテールピース(αtp)としても知られる)であり、これが六量体を形成する。代表的な六量体化αtp配列は長さが18個のアミノ酸であり、ヒトIgA分子に由来する。一実施態様では、アルファテールピースはPTHVNVSVVMAEVDGTCY[配列ID番号30]である。しかし望むのであれば、ペプチドに対し、残基5~7(NVS)の位置で1個または2個のアミノ酸を変えることによってグリコシル化部位を除去する改変をなすことができる。例えば5位のアスパラギン(N)はグルタミン(Q)に変えることができる。あるいは7位のセリン(S)をアラニン(A)に変えることができる。それに加え、IgA定常領域のアミノ酸残基のうちの数個(例えばIgA定常領域の約4個のアミノ酸)も含めることができる。有用なアルファテールピースを有する適切なIgA分子の非限定的な例に含まれるのは、ヒトIgA1、ヒトIgA2、ウサギIgA、マウスIgAである。このペプチドは、免疫グロブリンの定常ドメイン(例えばCH2ドメインとCH3ドメインを含むフラグメント)に直接的または間接的に連結される。
【0191】
2.3.3 サブユニット間のタンパク質-タンパク質相互作用
PD-L2ポリペプチドのオリゴマー化に用いる代わりのオリゴマー化ドメインは、異なるサブユニットポリペプチド間のタンパク質-タンパク質相互作用によってオリゴマー化を促進するオリゴマー化ドメインである。そのようなオリゴマー化ドメインは、例えば、Aキナーゼアンカータンパク質(AKAP)のアンカードメイン(AD)を有するcAMP依存性タンパク質キナーゼ(PKA)の機構に由来する。したがってヘテロオリゴマーPD-L2ポリペプチドは、PD-L2ポリペプチドをPKAのRサブユニット配列(その具体的な一例はSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA[配列番号31]である)に(直接的または間接的に)融合させて作製することができる。するとRサブユニットによって二量体が自然に形成されるため、ホモ二量体分子が得られる。それと並行して、別のPD-L2ポリペプチドをAKAPのAD配列(例えば配列:QIEYLAKQIVDNAIQQ[配列番号32]を含む)に融合させて別のPD-L2ポリペプチド融合体を作製することができる。これらキメラポリペプチドのそれぞれをコードする配列を宿主細胞の中で同時に発現させると、二量体RサブユニットがAD配列に結合するためのドッキング部位を提供し、その結果としてヘテロオリゴマー分子が得られる。この結合イベントは、共有結合(例えばジスルフィド結合など)によってさらに安定化させることができる。いくつかの例では、構造的柔軟性の大きいリンカー残基をPD-L2ポリペプチドとオリゴマー化ドメインの間に融合させることができる。別の一例では、PD-L2ポリペプチドは、共有結合しやすくするためRサブユニットのアミノ末端に隣接して組み込まれたシステイン残基を含むRサブユニットに融合させることができる。PKAのそのように改変されたRサブユニットは、例えば配列:CSHIQIPPGLTELLQGYTVEVLRQQPPDLVEFAVEYFTRLREARA[配列ID番号33]を含むことができる。同様に、PD-L2ポリペプチドは、ADのアミノ末端とカルボキシル末端の両方にシステイン残基が組み込まれたADサブユニットにも融合させることができる。そのように改変されたADサブユニットの代表的な1つの配列は、配列:CGQIEYLAKQIVDNAIQQAGC[配列ID番号34]を含んでいる。
【0192】
PD-L2ポリペプチドのオリゴマー化に使用できる別のオリゴマー化ドメインは、別々に作製されてPD-L2ポリペプチド融合体として発現する2つ以上のポリペプチドのタンパク質-タンパク質相互作用を促進する。そのようなオリゴマー化ドメインに含まれるのは、例えば、バーナーゼ-バースターモジュール(例えばDeyev他、Nat.Biotechnol.第21巻:1486~1492ページ、2003年を参照されたい);特定のタンパク質ドメインの使用(例えばTerskikh他、Proc Natl Acad Sci USA 第94巻:1663~1668ページ、1997年;Muller他、FEBS Lett.第422巻:259~264ページ、1998年を参照されたい);特定のペプチドモチーフの使用(例えばde Kruif他、J.Biol.Chem.第271巻:7630~7634ページ、1996年;Muller他、FEBS Lett.第432巻:45~49ページ、1998年を参照されたい);安定性を高めるためのジスルフィド架橋の使用(de Kruif他、J.Biol.Chem.第271巻:7630~7634ページ、1996年;Schmiedl他、Protein Eng.第13巻:725~734ページ、2000年)のほか、特定の結合ペア(例えば、ビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン、抗原-抗体、ハプテン-抗ハプテン、リガンド-受容体、受容体-補助受容体)である。
【0193】
2.4 リンカー
本発明のキメラポリペプチドは、PD-L2ポリペプチドをオリゴマー化ドメインから離すリンカー、または2つのオリゴマー化ドメインを離すリンカーを含むことができる。リンカーは一般に任意のアミノ酸残基を含んでいるため、アミノ酸残基を7アミノ酸反復配列にあいまいさなく割り当てることはできない。リンカーはタンパク質工学の分野で頻繁に使用されており、例えば抗体の可変軽鎖(VL)と可変重鎖(VH)に由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)コンストラクトの作製において異なる機能単位を互いに接続するのに用いられる。リンカーは、一般に、溶液中では立体構造の柔軟性が大きい。リンカーは、主に極性アミノ酸残基型からなることが適切である。構造的柔軟性の大きいリンカーに含まれる典型的な(頻繁に用いられる)アミノ酸は、セリンとグリシンである。それと比べて好ましさの程度は劣るが、構造的柔軟性の大きいリンカーは、アラニン、スレオニン、プロリンも含むことができる。したがってキメラポリペプチドの介在リンカーは、PD-L2ポリペプチドとオリゴマー化ドメインが、または2つのオリゴマー化ドメインが緩やかに(邪魔されずに)会合することが保証される柔軟性の大きな立体構造であることが好ましい。本明細書で想定するポリペプチドで用いるのに適したリンカーは当業者に明らかであろう。PD-L2ポリペプチドの生物活性、またはオリゴマー化ドメインのオリゴマー化特性に影響を与えないという意味で構造的柔軟性が大きいリンカーである限り、適切なリンカーとして、アミノ酸配列を連結するのに本分野で使用されている任意のリンカーが可能である。
【0194】
当業者は、必要に応じて限られた数の定型的な実験を実施した後に最適なリンカーを決定することができよう。介在リンカーは、一般に少なくとも1個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であることが適切だが、そのアミノ酸配列は通常は少なくとも2個のアミノ酸残基からなり、便宜上の理由で選択される厳密ではない上限は、約100個のアミノ酸残基である。特別な実施態様では、リンカーは、約1個~約50個のアミノ酸残基、または約50個~約100個のアミノ酸残基からなり、通常は約1個~約40個のアミノ酸残基、典型的には約1個~約30個のアミノ酸残基からなる。特に非限定的な実施態様では、リンカー配列の少なくとも50%のアミノ酸残基は、プロリン、グリシン、セリンからなるグループから選択される。さらに別の非限定的な実施態様では、リンカー配列のアミノ酸残基の少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例示するならば80%、さらに特定するならば90%が、プロリン、グリシン、セリンからなるグループから選択される。別の特別な実施態様では、リンカー配列は本質的に極性アミノ酸残基からなる。そのような特別な実施態様では、リンカー配列のアミノ酸残基の少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例示するならば70%または80%、さらに特定するならば90%または最大100%が、グリシン、セリン、トレオニン、アラニン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、リシン、アルギニンからなるグループから選択される。いくつかの実施態様では、リンカー配列に含めることができるのは、GG、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]nである。ただしnは1~10の整数であり、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
【0195】
特別な実施態様では、リンカーの例の選択は、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなすことができる。
【0196】
2.5 他の部分
本発明のキメラポリペプチドはさらに、PD-L2ポリペプチド-オリゴマー化ドメインキメラの精製を容易にするための精製部分を含むことができる。精製部分は、典型的には、親和性結合を通じたキメラポリペプチドの回収を可能にする一連のアミノ酸を含んでいる。多数の精製部分、すなわち「タグ」が本分野で知られており、その具体例に含まれるのは、ビオチンカルボキシル化キャリアタンパク質タグ(BCCPタグ)、Mycタグ(c-mycタグ)、カルモジュリンタグ、FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ(ヘキサヒスチジンタグ、His6、6H)、マルトース結合タンパク質タグ(MBPタグ)、Nusタグ、セルロース結合ドメインタグ(CBDタグ)、T7ペプチドタグ(T7タグ))、ユビキチンタグ、キチン結合タンパク質タグ(CBPタグ)、グルタチオン-S-トランスフェラーゼタグ(GSTタグ)、緑色蛍光タンパク質タグ(GFPタグ)、ポリグルタミン酸塩タグ、アミロイドβタグ、チオレドキシンタグ、Sタグ、Softag 1、Softag 3、ブドウ球菌プロテインAタグ(プロテインAタグ)、連鎖球菌プロテインGタグ(プロテインGタグ)、ストレプトアビジン結合ペプチドタグ(SBPタグ)、ビオチンタグ、ストレプトアビジンタグ、V5タグである。
【0197】
いくつかの実施態様では、PD-L2ポリペプチドおよび/またはオリゴマー化ドメインは、これらの構成要素のうちの任意の1つ以上に対する免疫応答が対象で誘発されたり発生したりするのを抑制する免疫サイレンシング部分または免疫抑制部分を含んでいる。免疫サイレンシング部分として、グリコシル化酵素(特にグリコシルトランスフェラーゼ)によって特異的に認識されてグリコシル化されるグリコシル化部位が可能である。グリコシル化としてN結合型またはO結合型が可能である。N結合型は、炭水化物部分がアスパラギン残基の側鎖に結合していることを意味する。トリペプチド配列N-X-SとN-X-T(ただしXはP以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分をアスパラギン側鎖に酵素で結合させるための認識配列であり、これらの配列は一般に「グリコシル化部位」と呼ばれる。O結合型グリコシル化は、N-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、キシロースという糖のうちの1つがヒドロキシアミノ酸(最も一般的にはセリンまたはトレオニン)に結合していることを意味するが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも用いることができる。
【0198】
3.代表的なキメラポリペプチドコンストラクト
本発明のキメラポリペプチドの例は、式(VI):
PD-L2-L-OMDX (VI)
によってうまく表わすことができる。ただし
PD-L2の選択は、配列ID番号1~9の中から、または配列ID番号1~9の任意の1つに示されている配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドからなされ;
-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされ;
OMDXの選択は、
(a)配列ID番号21、22、25、26から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列、または配列ID番号21、22、25、26のいずれか1つに示されているアミノ酸配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドを含むか、そのアミノ酸配列またはポリペプチドからなる三量体化ドメイン;
(b)配列ID番号23、24、27から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列、または配列ID番号23、24、27のいずれか1つに示されているアミノ酸配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドを含むか、そのアミノ酸配列またはポリペプチドからなる四量体化ドメイン;
(c)配列ID番号28または29から選択されたアミノ酸配列を含むか、そのアミノ酸配列からなることが好ましい五量体化ドメイン;
(d)配列ID番号30に示されているアミノ酸配列を含むか、そのアミノ酸配列からなることが好ましい六量体化ドメイン
からなされる。
【0199】
別の実施態様では、本発明のキメラポリペプチドの例は、式(VII):
PD-L2-L-OMDY-L- OMDZ (VII)
によってうまく表わすことができる。ただし
PD-L2の選択は、配列ID番号1~9の中から、または配列ID番号1~9の任意の1つに示されている配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドからなされ;
-L-は、現われるごとに独立に、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされ;
OMDYは、i個のサブユニットOMDYからなるオリゴマー(OMDY)jを形成するオリゴマー化ドメインであり、その選択は、
(a)配列ID番号10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列、または配列ID番号10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20のいずれか1つに示されているアミノ酸配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドを含むか、そのアミノ酸配列またはポリペプチドからなることが好ましい二量体化ドメイン、またはAKAPのPKA-AD配列のRサブユニット配列(例えば配列ID番号31と32、または配列ID番号33と34)、ビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン、抗原-抗体、ハプテン-抗ハプテン、リガンド-受容体、受容体-補助受容体から選択されることが好ましい特別な結合ペアのメンバーであるオリゴマー化ドメインを含むか、そのオリゴマー化ドメインからなる二量体化ドメイン;
(b)配列ID番号21、22、25、26から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列、または配列ID番号21、22、25、26のいずれか1つに示されているアミノ酸配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドを含むか、そのアミノ酸配列またはポリペプチドからなる三量体化ドメイン;
(c)配列ID番号23、24、27から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列、または配列ID番号23、24、27のいずれか1つに示されているアミノ酸配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドを含むか、そのアミノ酸配列またはポリペプチドからなる四量体化ドメイン;
(d)配列ID番号28または29から選択されたアミノ酸配列を含むか、そのアミノ酸配列からなることが好ましい五量体化ドメイン;
(e)配列ID番号30に示されているアミノ酸配列を含むか、そのアミノ酸配列からなることが好ましい六量体化ドメイン
からなされることが好ましく;
OMDZは、j個のサブユニットOMDZからなるオリゴマー(OMDZ)jを形成するオリゴマー化ドメインであり(ただしjはiよりも大きい整数であり、i+1、i+2、i+3、i+4、i+5、i+6のいずれかであることが好ましい)、その選択は、
(a)配列ID番号21、22、25、26から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列、または配列ID番号21、22、25、26のいずれか1つに示されているアミノ酸配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドを含むか、そのアミノ酸配列またはポリペプチドからなる三量体化ドメイン;
(b)配列ID番号23、24、27から選択されたいずれか1つのアミノ酸配列、または配列ID番号23、24、27のいずれか1つに示されているアミノ酸配列との配列類似性または配列一致が少なくとも70%(と、少なくとも71%~99%と、その間のあらゆる整数値の%)であるポリペプチドを含むか、そのアミノ酸配列またはポリペプチドからなる四量体化ドメイン;
(c)配列ID番号28または29から選択されたアミノ酸配列を含むか、そのアミノ酸配列からなることが好ましい五量体化ドメイン;
(d)配列ID番号30に示されているアミノ酸配列を含むか、そのアミノ酸配列からなることが好ましい六量体化ドメイン
からなされることが好ましい。
【0200】
本発明のキメラポリペプチドの非限定的な例を以下に示す。
【0201】
3.1 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-GCN4三量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-RMKQIEDKIEEILSKIYHIENEIARIKKLIGE[配列番号44]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0202】
GCN4三量体化ドメインにより、キメラポリペプチドが自己組織化して三量体になるのが容易になる。
【0203】
3.2 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-フォールドン三量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-GSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL[配列番号45]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0204】
フォールドン三量体化ドメインにより、キメラポリペプチドが自己組織化して三量体になるのが容易になる。
【0205】
3.3 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-GCN4四量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-RMKQIEDKLEEILSKLYHIENELARIKKLLGE[配列番号46]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0206】
GCN4四量体化ドメインによりキメラポリペプチドが自己組織化して四量体になるのが容易になる。
【0207】
3.4 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-テトラブラキオン四量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-IINETADDIVYRLTVIIDDRYESLKNLITLRADRLMIINDNVSTILASG[配列番号47]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0208】
テトラブラキオン四量体化ドメインにより、キメラポリペプチドが自己組織化して四量体になるのが容易になる。
【0209】
3.5 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-COMP五量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-LAPQMLRELQETNAALQDVRELLRQQVKQITFLKNTVMECDACG[配列番号48]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0210】
COMP五量体化ドメインにより、キメラポリペプチドが自己組織化して五量体になるのが容易になる。
【0211】
3.6 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-トリプトファンジッパー五量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-SSNAKWDQWSSDWQTWNAKWDQWSNDWNAWRSDWQAWKDDWARWNQRWDNWAT[配列番号49]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0212】
トリプトファンジッパー五量体化ドメインにより、キメラポリペプチドが自己組織化して五量体になるのが容易になる。
【0213】
3.7 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-αtp六量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-PTHVNVSVVMAEVDGTCY[配列番号50]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0214】
αtp六量体化ドメインにより、キメラポリペプチドが自己組織化して六量体になるのが容易になる。
【0215】
3.8 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-Fc二量体化ドメイン-L-フォールドン三量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK-L-GSGYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL[配列番号51]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0216】
Fc二量体化ドメインとフォールドン三量体化ドメインの組み合わせにより、キメラポリペプチドが自己組織化して六量体になるのが容易になる。
【0217】
3.9 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-Fc二量体化ドメイン-L-GCN4四量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK-L-MKQIEDKLEEILSKLYHIENELARIKKLLGE[配列番号52]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0218】
Fc二量体化ドメインとGCN4四量体化ドメインの組み合わせにより、キメラポリペプチドが自己組織化して八量体になるのが容易になる。
【0219】
3.10 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-Fc二量体化ドメイン-L-COMP五量体化ドメイン
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ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK-L-LAPQMLRELQETNAALQDVRELLRQQVKQITFLKNTVMECDACG[配列番号53]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0220】
Fc二量体化ドメインとCOMP五量体化ドメインの組み合わせにより、キメラポリペプチドが自己組織化して十量体になるのが容易になる。
【0221】
3.11 ヒトPD-L2外部ドメイン-L-Fc二量体化ドメイン-L-αtp六量体化ドメイン
MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTVPKELYIIEHGSNVTLECNFDTGSHVNLGAITASLQKV
ENDTSPHRERATLLEEQLPLGKASFHIPQVQVRDEGQYQCIIIYGVAWDYKYLTLKVKASYRKINTHILKVPETDEVELTCQATGYPLAEVSWPNVSVPANTSHSRTPEGLYQVTSVLRLKPPPGRNFSCVFWNTHVRELTLASIDLQSQMEPRTHPT-L-DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK-L-PTHVNVSVVMAEVDGTCY[配列番号54]、
ただし-L-は、結合(例えばペプチド結合)またはペプチドリンカーを表わし、そのペプチドリンカーの選択は、[GGSG]nGG、[GGGGS]n、[SSSSG]n、[SSSSG]n、[AAPA]n、[GGGKGGGG]n、[GGGNGGGG]n、[GGGCGGGG]n(ただしnは、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である)、GG、GGGGG[配列ID番号35]、GGGGS[配列ID番号36]、SSSSG[配列ID番号37]、GKSSGSGSESKS[配列ID番号38]、GSTSGSGKSSSEGSGSTKG[配列ID番号39]、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列ID番号40]、EGKSSGSGSESKEF[配列ID番号41]、GGSTSGSGKSSEGKG[配列ID番号42]、AAPA[配列ID番号43]からなるグループからなされる。
【0222】
Fc二量体化ドメインとαtp六量体化ドメインの組み合わせにより、キメラポリペプチドが自己組織化して十二量体になるのが容易になる。
【0223】
4.キメラポリペプチドの作製
本発明のPD-L2ポリペプチド-オリゴマー化ドメインキメラは、化学合成または組み換え手段によって調製することができる。通常は、キメラポリペプチドは、キメラポリペプチドをコードする組み換えコンストラクトを適切な宿主細胞の中で発現させることによって調製されるが、適切な任意の方法を利用することができる。適切な宿主細胞に含まれるのは、例えば昆虫細胞(例えばネッタイシマカ(Aedes aegypti)、キンウワバ(Autographa californica)、カイコ(Bombyx mori)、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni))、哺乳動物細胞(例えばヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、齧歯類(例えばハムスター))、鳥類細胞(例えばニワトリ、アヒル、ガチョウ)、細菌(例えば大腸菌、枯草菌、連鎖球菌のさまざまな種)、酵母細胞(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ハンセヌラ(Hansenula)多形体、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・ギリエルモンディ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica))、テトラヒメナ細胞(例えばテトラヒメナ・テルモフィレ(Tetrahymena thermophile)、またはこれらの組み合わせである。適切な多くの昆虫細胞と哺乳動物細胞が本分野で知られている。適切な昆虫細胞に含まれるのは、例えばSf9細胞、Sf21細胞、Tn5細胞、シュナイダーS2細胞、High Five細胞(親イラクサギンウワバBTI-TN-5B1-4細胞1由来のクローン単離物(Invitrogen社))である。適切な哺乳動物細胞に含まれるのは、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎細胞(HEK293細胞、典型的には剪断アデノウイルス5型DNAによって形質転換されたもの)、NIH-3T3細胞、293-T細胞、ベロ細胞、ヒーラ細胞、PERC.6細胞(ECACC寄託番号96022940)、Hep G2細胞、MRC-5(ATCC CCL-171)、WI-38(ATCC CCL-75)、胎児アカゲザル肺細胞(ATCC CL-160)、マディン-ダービー・ウシ腎臓(「MDBK」)細胞、マディン-ダービー・イヌ腎臓(「MDCK」)細胞(例えばMDCK(NBL2)、ATCC CCL34;またはMDCK 33016、DSM ACC 2219)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞(BHK21-Fなど)、HKCC細胞などである。適切な鳥類細胞に含まれるのは、例えばニワトリ胚性幹細胞(例えば、EBx(登録商標)細胞)、ニワトリ胚性線維芽細胞、ニワトリ胚性生殖細胞、アヒル細胞(例えばAGE1.CR細胞系とAGE1.CR.pIX細胞系(ProBioGen社)であり、これらの細胞系は例えばVaccine 第27巻:4975~4982ページ(2009年)とWO2005/042728に記載されている)、EB66細胞などである。
【0224】
適切な昆虫細胞発現系(バキュロウイルス系など)は当業者に知られており、例えばSummersとSmith、『Texas Agricultural Experiment Station Bulletin』第1555号(1987年)に記載されている。バキュロウイルス/挿入細胞発現系のための材料と方法は、特にInvitrogen社(サンディエゴ、カリフォルニア州)からキットの形で市販されている。鳥類細胞発現系も当業者に知られており、例えばアメリカ合衆国特許第5,340,740号;第5,656,479号;第5,830,510号;第6,114,168号;第6,500,668号;欧州特許第EP0787180B号;欧州特許出願第EP03291813.8号;WO03/043415;WO03/076601号に記載されている。同様に、細菌細胞発現系と哺乳動物細胞発現系も本分野で知られており、例えば『Yeast Genetic Engineering』(Barr他編、1989年)、Butterworths社、ロンドンに記載されている。
【0225】
本発明のキメラポリペプチドをコードしている組み換えコンストラクトは、従来法を利用して適切なベクターの中に調製することができる。昆虫または哺乳動物細胞における組み換えタンパク質の発現に適した多数のベクターが本分野でよく知られていて慣用されている。適切なベクターは多数の構成要素を含むことができ、その非限定的な例に含まれるのは、複製起点;選択マーカー遺伝子;1つ以上の発現制御エレメント(転写制御エレメント(例えばプロモータ、エンハンサ、ターミネータ)など)および/または1つ以上の翻訳シグナル;選択された宿主細胞(例えば哺乳動物起源の宿主細胞や、異種の哺乳動物または非哺乳動物種に由来する宿主細胞)中の分泌経路を標的とするためのシグナル配列またはリーダー配列のうちの1つ以上である。例えば昆虫細胞の中で発現させるには、適切なバキュロウイルス発現ベクター(pFastBac(Invitrogen社)など)を用いて組み換えバキュロウイルス粒子を作製することができる。バキュロウイルス粒子を増幅し、昆虫細胞に感染させて組み換えタンパク質を発現させる。哺乳動物細胞の中で発現させるには、望む哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞)の中でコンストラクトを発現させるベクターを用いる。
【0226】
キメラポリペプチドは、適切な任意の方法を利用して精製することができる。望むタンパク質を精製するための適切な方法は本分野でよく知られており、その方法には、沈降とさまざまな種類のクロマトグラフィ(疎水性相互作用クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、キレートクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィなど)が含まれる。適切な精製スキームは、これらの方法または他の適切な方法のうちの2つ以上を利用して作り出すことができる。望むのであれば、キメラポリペプチドは、3.5節に記載したように、精製を容易にする精製部分、すなわち「タグ」を含むことができる。このようなタグ付きポリペプチドは、例えばならし培地から、キレートクロマトグラフィまたはアフィニティクロマトグラフィによってうまく精製することができる。
【0227】
5.キメラポリペプチドに基づくポリペプチド複合体
本発明のキメラポリペプチドは、適切な条件下で自己組織化してポリペプチド複合体を形成することができる。したがって本発明はポリペプチド複合体を作製する方法をさらに包含する。この方法は、ポリペプチド複合体の形成に適した条件下で(例えば水溶液中で)本発明のキメラポリペプチドを組み合わせることを含んでおり、そうすることで、例えば本明細書に記載したように、3つ以上のキメラポリペプチドを含んでいて、PD-L2の少なくとも1つの機能的活性を有することを特徴とするポリペプチド複合体が生成する。一般に、キメラポリペプチドは緩衝化水溶液(例えばpHが約5~約9)の中で自己組織化する。必要な場合には、例えば尿素、少量の有機溶媒、熱のいずれかを含めることによる穏やかな変性条件を利用してキメラポリペプチドを穏やかに変性させることで、リフォールディングと自己組織化が容易になるようにすることができる。
【0228】
キメラポリペプチドの適切な任意の調製物をこの方法で用いることができる。例えば望むキメラポリペプチドを含むならし細胞培養培地をこの方法で用いることができる。しかしこの方法では精製したキメラポリペプチドを用いることが好ましい。
【0229】
6.組成物
本発明によりさらに、ここまでと本明細書の別の箇所に幅広く記載してあるポリペプチド複合体またはキメラポリペプチドか、キメラポリペプチドまたは複合体を発現させることのできる核酸コンストラクトと、医薬として許容可能な基剤またはアジュバントとを含む組成物(その中には医薬組成物が含まれる)が提供される。代表的な組成物は、キメラポリペプチドまたは複合体の望む用途に応じて選択される緩衝剤を含むことができ、想定する用途に合った他の物質も含むことができる。想定する用途が免疫応答(Th1免疫応答が含まれる)を調節することである場合には、組成物は、「免疫を調節する」組成物または「免疫調節」組成物と呼ばれる。そのような組成物には、予防用組成物(すなわちTh1関連疾患またはTh1関連障害を予防する目的で投与する組成物)と治療用組成物(すなわちTh1関連疾患またはTh1関連障害を治療する目的で投与する組成物)が含まれる。したがって本発明の免疫調節組成物は、予防、寛解、緩和、治療のいずれかを目的としてレシピエントに投与することができる。
【0230】
当業者は、本分野で知られている多彩な緩衝液の中から想定する用途に合った適切な緩衝液を容易に選択することができる。いくつかの例では、組成物は、医薬として許容可能な賦形剤を含むことができ、賦形剤は多彩なものが本分野で知られているため、本明細書で詳細に論じる必要はない。医薬として許容可能な賦形剤は多彩な刊行物に広く記載されており、そのような刊行物に含まれるのは、例えばA.Gennaro(2000年)『Remington:The Science and Practice of Pharmacy』、第20版、Lippincott,Williams, & Wilkins社;『Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems』(1999年)H.C.Ansel他編、第7増補版、Lippincott,Williams, & Wilkins社;『Handbook of Pharmaceutical Excipients』(2000年)A. H. Kibbe他編、第3増補版、Amer. Pharmaceutical Assoc.である。
【0231】
本発明の医薬組成物は、注射による投与に適した形態、経口摂取に適した製剤(例えばカプセル剤、錠剤、カプレット剤、エリキシル剤など)、局所投与に適した軟膏、クリーム、ローションの形態、点眼剤として送達するのに適した形態、吸入(鼻腔内吸入や経口吸入など)による投与に適したエーロゾルの形態、非経口投与(すなわち皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射)に適した形態にすることができる。
【0232】
補足的な活性成分(アジュバントや生物学的応答調節剤など)も本発明の医薬組成物に組み込むことができる。アジュバントを本発明の医薬組成物に含めることができるが、医薬組成物は必ずしもアジュバントを含んでいる必要はない。その場合には、アジュバントの使用によって生じる反応原性の問題を回避することができる。
【0233】
一般に、本発明の医薬組成物の文脈におけるアジュバント活性の非限定的な例には、組成物中の免疫原性成分(例えば本発明のキメラポリペプチドまたは複合体)によって誘導される免疫応答を(定量的または定性的に)増強する能力が含まれる。こうすることで、Th1免疫応答を含む免疫応答(Th1免疫応答が含まれる)を生じさせるのに必要な免疫調節成分の用量またはレベルを低下させること、および/または望む免疫応答を生じさせるのに必要な免疫化の回数または頻度を減らすことができる。
【0234】
適切な任意のアジュバントが本発明の医薬組成物に含まれていてもよい。例えばアルミニウム系アジュバントを用いることができる。適切なアルミニウム系アジュバントの非限定的な例に含まれるのは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムと、これらの組み合わせである。使用できるアルミニウム系アジュバントの別の具体例は、欧州特許第1216053号とアメリカ合衆国特許第6,372,223号に記載されている。他の適切なアジュバントに含まれるのは、フロイントの不完全アジュバントと完全アジュバント(Difco Laboratories社、デトロイト、ミシガン州);Merck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc.社、ローウェイ、ニュージャージー州);AS-2(SmithKline Beecham社、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州);アルミニウム塩(水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)やリン酸アルミニウムなど);カルシウム、鉄、亜鉛いずれかの塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;カチオン性またはアニオン性の誘導体化された多糖類;ポリホスファゼン;生分解性ミクロスフェア;モノホスホリルリピドAとクイルA;水中油型エマルジョン(欧州特許第0399843号、アメリカ合衆国特許第7,029,678号、PCT公開WO2007/006939に記載されているものが含まれる);および/または追加のサイトカイン(例えばインターロイキン-2、インターロイキン-7、インターロイキン-12、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、モノホスホリルリピドA(MPL)、コレラ毒素(CT)またはそれを構成するサブユニット、熱不安定性エンテロトキシン(LT)またはそれを構成するサブユニット、トール様受容体リガンドアジュバント(リポ多糖(LPS)など)とその誘導体(例えばモノホスホリルリピドAと3-脱アシル化モノホスホリルリピドA)、フラビウイルスのNS1とムラミルジペプチド(MDP)である。
【0235】
本発明の医薬組成物はキットで提供することができる。キットは、本発明の方法を実施するのを助ける追加の構成要素(例えば投与装置、および/または緩衝液、および/または希釈剤)を含むことができる。キットは、さまざまな構成要素を収容するための容器と、本発明の方法においてキットの構成要素を使用するための指示を含むことができる。典型的には、キットは、本発明の免疫調節組成物を使用するための指示を、単独で、または例えば本明細書に記載されているコンパニオン診断薬とともに含んでいる。
【0236】
本発明のポリペプチド複合体は、免疫調節剤に対する免疫応答を増強するのに有用である。免疫調節剤には、疾患関連抗原(例えば腫瘍抗原と、病原性生物の抗原)と抗原結合分子が含まれる。
【0237】
本発明では、興味ある標的抗原の少なくとも一部に対応する任意の抗原を本発明の組成物で利用し、その標的抗原に対する免疫応答を刺激することを考慮する。そのような抗原は、可溶形態(例えばペプチド、ポリペプチド、ペプチドまたはポリペプチドを発現させることのできる核酸分子)にすること、または細胞全体や弱毒化した病原体調製物(例えば弱毒化したウイルスまたは細菌)の形態にすることや、抗原提示細胞に提示させることができる。これについてはあとでより詳しく説明する。
【0238】
6.1 抗原
本発明で有用な標的抗原として任意の種類の生体分子が可能であり、その中には例えば、単純な中間代謝産物、糖、脂質、ホルモンのほか、巨大分子(複雑な炭水化物、リン脂質、核酸、ポリペプチド、ペプチドなど)が含まれる。標的抗原は、宿主が産生する内因性抗原、または宿主にとって異質な外因性抗原から選択することができる。適切な内因性抗原の非限定的な例に含まれるのは、がん抗原または腫瘍抗原である。がん抗原または腫瘍抗原の非限定的な例に含まれるのは、がんまたは腫瘍からの抗原であり、そのがんまたは腫瘍の選択は、ABL1がん原遺伝子、エイズ関連がん、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺様嚢胞癌、副腎皮質がん、特発性骨髄化成、脱毛症、胞巣性軟部肉腫、肛門がん、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張症、基底細胞癌(皮膚)、膀胱がん、骨がん、腸がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍とCNS腫瘍、乳がん、カルチノイド腫瘍、子宮頸がん、小児脳腫瘍、小児がん、小児白血病、小児軟組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、大腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維芽細胞腫、線維形成性小細胞腫瘍、乳管癌、内分泌がん、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、肝外胆管がん、眼がん、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管がん、ファンコーニ貧血、線維肉腫、胆嚢がん、胃がん、胃腸がん、消化管カルチノイド腫瘍、尿生殖器がん、生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科がん、血液悪性腫瘍、有毛細胞白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、遺伝性乳がん、組織球症、ホジキン病、ヒトパピローマウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭がん、眼内黒色種、膵島細胞がん、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、平滑筋肉腫、白血病、リー-フラウメニ症候群、唇がん、脂肪肉腫、肝がん、肺がん、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性の乳がん、腎悪性ラブドイド腫瘍、髄芽腫、黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、転移性のがん、口がん、多発性内分泌腫瘍症、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔がん、鼻咽頭がん、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非黒色種皮膚がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、眼がん、食道がん、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、オストミー卵巣がん、膵臓がん、副鼻腔がん、副甲状腺がん、耳下腺がん、陰茎がん、末梢性神経外胚葉腫瘍、下垂体がん、真性多血症、前立腺がん、稀ながんとその関連障害、腎細胞癌、横紋筋肉腫、ロスムンド-トムソン症候群、唾液腺がん、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん(SCLC)、小腸がん、軟組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮がん(皮膚)、胃がん、滑膜肉腫、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、移行上皮がん(膀胱)、移行上皮がん(腎盂-/-尿管)、絨毛がん、尿道がん、泌尿器系がん、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮がん、膣がん、外陰がん、ワルデンストロームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍からなされる。いくつかの実施態様では、がんまたは腫瘍は黒色腫に関係する。黒色腫関連抗原の具体例に含まれるのは、メラニン細胞分化抗原(例えばgp100、MART、Melan-A/MART-1、TRP-1、Tyros、TRP2、MC1R、MUC1F、MUC1R、またはこれらの組み合わせ)と黒色腫特異的抗原(例えばBAGE、GAGE-1、gp100In4、MAGE-1(例えばGenBank登録番号X54156とAA494311)、MAGE-3、MAGE4、PRAME、TRP2IN2、NYNSO1a、NYNSO1b、LAGE1、p97黒色腫抗原(例えばGenBank登録番号M12154)、p5タンパク質、gp75、がん胎児抗原、GM2ガングリオシドとGD2 ガングリオシド、cdc27、p21ras、gp100Pmel117、またはこれらの組み合わせ)である。他の腫瘍特異的抗原の非限定的な例に含まれるのは、etv6、aml1、シクロフィリンb(急性リンパ芽球性白血病);Ig-イディオタイプ(B細胞リンパ腫);E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn(神経膠腫);p21ras(膀胱がん);p21ras(胆管がん);MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2(乳がん);p53、p21ras(子宮頸癌);p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー、Cripto-1タンパク質、Pim-1タンパク質(結腸癌);大腸関連抗原(CRC)-CO17-1A/GA733、APC(大腸がん);癌胎児性抗原(CEA)(大腸がん、絨毛癌);シクロフィリンb(上皮細胞がん);HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質(胃がん);αフェトプロテイン(肝細胞がん);Imp-1、EBNA-1(ホジキンリンパ腫);CEA、MAGE-3、NY-ESO-1(肺がん);シクロフィリンb(リンパ球由来白血病);MUCファミリー、p21ras(骨髄腫);HER2/neu、c-erbB-2(非小細胞肺癌);Imp-1、EBNA-1(鼻咽頭がん);MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2、MAGE-A4、NY-ESO-1(卵巣がん);前立腺特異抗原(PSA)とその抗原性エピトープ(PSA-1、PSA-2、PSA-3)、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質(前立腺がん);HER2/neu、c-erbB-2(腎臓がん);ヒトパピローマウイルスタンパク質などのウイルス産物(子宮頸部と食道の扁平上皮がん);NY-ESO-1(精巣がん);HTLV-1エピトープ(T細胞白血病)である。
【0239】
外来抗原は、病原性生物から選択されることが適切である。病原性生物の非限定的な例に含まれるのは、ウイルス、細菌、真菌寄生体、藻類、原生動物、アメーバである。ウイルスの具体例は、疾患(その非限定的な例に含まれるのは、麻疹、おたふく風邪、風疹、ポリオ、A型肝炎、B型肝炎(例えばGenBank登録番号E02707)、C型肝炎(例えばGenBank登録番号E06890)である)の原因となるウイルスのほか、他の肝炎ウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス(例えば4型と7型)、狂犬病ウイルス(例えばGenBank登録番号M34678)、黄熱病ウイルス、エプスタイン-バーウイルス、他のヘルペスウイルス(パピローマウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス(例えばGenBank登録番号E07883)、デング熱ウイルス(例えばGenBank登録番号M24444)、ハンタウイルス、センダイウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、オトロミクソウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ビスナウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えばGenBank登録番号U18552)など)である。そのようなウイルスに由来する適切な任意の抗原が、本発明を実施する際に有用である。例えばHIV由来の具体的なレトロウイルス抗原の非限定的な例に含まれるのは、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子の遺伝子産物、Nefタンパク質、逆転写酵素、他のHIV成分といった抗原である。肝炎ウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、B型肝炎ウイルスのSタンパク質、Mタンパク質、Lタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレS抗原、他の肝炎(例えばA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎)のウイルス成分(C型肝炎ウイルスRNAなど)といった抗原である。インフルエンザウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、ヘマグルチニンやノイラミニダーゼなどの抗原と、インフルエンザウイルスの他の成分である。麻疹ウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、麻疹ウイルス融合タンパク質と、麻疹ウイルスの他の成分といった抗原である。風疹ウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、タンパク質E1、タンパク質E2、風疹ウイルスの他の成分といった抗原と、ロタウイルス抗原(VP7sc、ロタウイルスの他の成分など)である。サイトメガロウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、エンベロープ糖タンパク質B、サイトメガロウイルスの他の抗原成分といった抗原である。呼吸器合胞体ウイルス抗原の非限定的な例に含まれるのは、RSV融合タンパク質、M2タンパク質、呼吸器合胞体ウイルスの他の抗原成分といった抗原である。単純ヘルペスウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、即時型初期タンパク質、糖タンパク質D、単純ヘルペスウイルスの他の抗原成分といった抗原である。水痘帯状疱疹ウイルス抗原の非限定的な例に含まれるのは、9PI、gpII、水痘帯状疱疹ウイルスの他の抗原成分といった抗原である。日本脳炎ウイルス抗原の非限定的な例に含まれるのは、タンパク質E、タンパク質M-E、タンパク質M-E-NS1、タンパク質NS1、タンパク質NS1-NS2A、タンパク質80%E、日本脳炎ウイルスの他の抗原成分といった抗原である。狂犬病ウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質、狂犬病ウイルスの他の抗原成分といった抗原である。パピローマウイルス抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、子宮頸がんに関係するL1キャプシドタンパク質、L2キャプシドタンパク質、E6/E7抗原である。ウイルス抗原のさらなる例については、『Fundamental Virology』、第2版、Fields,B.N.とKnipe,D.M.編、Raven Press社、ニューヨークを参照されたい。
【0240】
真菌の具体例に含まれるのは、アクレモニウム(Acremonium)属の種、アスペルギルス(Aspergillus)属の種、バシディオボルス(Basidiobolus)属の種、ビポラリス(Bipolaris)属の種、ブラストミセス・デルマチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ(Candida)属の種、クラドフィアロフォラ・カリオニイ(Cladophialophora carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コンディオボルス(Conidiobolus)属の種、クリプトコッカス(Cryptoccus)属の種、クルブラリア(Curvularia)属の種、エピデルモフィトン(Epidermophyton)属の種、エクソフィアラ・ジャンセルメイ(Exophiala jeanselmei)、エクセロヒルム(Exserohilum)属の種、フォンセケア・コンパクタ(Fonsecaea compacta)、フォンセケア・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ゲオトリクム・カンジドゥム(Geotrichum candidum)、ヒストプラズマ・カプスラツム変種カプスラツム(Histoplasma capsulatum var.capsulatum)、ヒストプラズマ・カプスラツム変種ドゥボイシイ(Histoplasma capsulatum var.duboisii)、ホルテア・ウェルネッキー(Hortaea werneckii)、ラカジア・ロボイ(Lacazia loboi)、ラシオジプロディア・テオブロメ(Lasiodiplodia theobromae)、レプトスフェリア・セネガレンシス(Leptosphaeria senegalensis)、マドゥレラ・グリセア(Madurella grisea)、マドゥレラ・ミセトマチス(Madurella mycetomatis)、マラセジア・フルフル(Malassezia furfur)、ミクロスポルム(Microsporum)属の種、ネオテスツジナ・ロサティー(Neotestudina rosatii)、オニココラ・カナデンシス(Onychocola canadensis)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、フィアロフォラ・ベルコサ(Phialophora verrucosa)、ピエドライア・ホルテ(Piedraia hortae)、ピエドラ・イアホルテ(Piedra iahortae)、ピチリアシス・ベルシコロール(Pityriasis versicolor)、シュードアレシリア・ボイジイ(Pseudallesheria boydii)、ピレノケタ・ロメロイ(Pyrenochaeta romeroi)、リゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、シタリジウム・ジミジアツム(Scytalidium dimidiatum)、スポロトリックス・シェンキー(Sporothrix schenckii)、トリコフィトン(Trichophyton)属の種、トリコスポロン(Trichosporon)属の種、接合菌綱の真菌、アブシジア・コリンビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコル・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾプス・アルヒズス(Rhizopus arrhizus)である。したがって本発明の組成物と方法で使用できる真菌抗原の非限定的な具体例に含まれるのは、カンジダ属の真菌抗原成分;ヒストプラズマ属の真菌抗原(熱ショックタンパク質60(HSP60)、ヒストプラズマ属の真菌の他の抗原成分など);クリプトコッカス属の真菌抗原(莢膜多糖、クリプトコックス属の真菌の他の抗原成分など);コクシジオイデス属の真菌抗原(球状体抗原、コクシジオイデス属の真菌の他の抗原成分など);白癬真菌抗原(トリコフィチンなど)、コクシジオイデス属の真菌の他の抗原成分である。
【0241】
細菌の具体例には、さまざまな疾患の原因となる細菌が含まれ、疾患の非限定的な例に含まれるのは、ジフテリア(例えばジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae))、百日咳(例えば百日咳菌(Bordetella pertussis)、GenBank登録番号M35274)、破傷風(例えば破傷風菌(Clostridium tetani)、GenBank登録番号M64353)、結核(例えば結核菌(Mycobacterium tuberculosis))、細菌性肺炎(例えばインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))、コレラ(例えばコレラ菌(Vibrio cholerae))、炭疽症(例えば炭疽菌(Bacillus anthracis))、腸チフス、ペスト、細菌性赤痢(例えば志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae))、ボツリヌス中毒(例えばボツリヌス菌(Clostridium botulinum))、サルモネラ症(例えばGenBank登録番号L03833)、消化性潰瘍(例えばヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori))、レジオネラ症、ライム病(例えばGenBank登録番号U59487)である。他の病原性細菌に含まれるのは、大腸菌、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、化膿連鎖球菌である。したがって本発明の組成物と方法で使用できる細菌抗原の非限定的な例に含まれるのは、百日咳菌細菌抗原(百日咳毒素、糸状赤血球凝集素、パータクチン、FM2、FIM3、アデニル酸シクラーゼ、百日咳菌の他の抗原成分など);ジフテリア菌細菌抗原(ジフテリア毒素またはジフテリアトキソイド、ジフテリア菌の他の抗原成分など);破傷風菌細菌抗原(破傷風毒素または破傷風トキソイド、破傷風菌の他の抗原成分など);連鎖球菌細菌抗原(Mタンパク質、連鎖球菌の他の抗原成分など);グラム陰性菌細菌抗原(リポ多糖、グラム陰性菌の他の抗原成分など);結核菌細菌抗原(ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30kDa主要分泌タンパク質、抗原85A、結核菌の他の抗原成分);ヘリコバクター・ピロリ細菌抗原成分、肺炎球菌細菌抗原(ニューモリシン、肺炎球菌莢膜多糖、肺炎球菌の他の抗原成分など);インフルエンザ菌抗原(莢膜多糖、インフルエンザ菌の他の抗原成分など);炭疽菌抗原(炭疽症防御抗原、炭疽菌の他の抗原成分など);リケッチア菌抗原(rompA、リケッチア菌の他の抗原成分)である。本明細書に記載の細菌抗原には、他の任意の細菌抗原、マイコバクテリア抗原、マイコプラズマ抗原、リケッチア抗原、クラミジア抗原も含まれる。
【0242】
原生動物の具体例には、さまざまな疾患の原因となる原生動物が含まれ、疾患の非限定的な例に含まれるのは、マラリア(例えばGenBank登録番号X53832)、鉤虫、オンコセルカ症(例えばGenBank登録番号M27807)、住血吸虫症(例えばGenBank登録番号LOS 198)、トキソプラズマ症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、ジアルジア症(GenBank登録番号M33641)、アメーバ症、フィラリア症(例えばGenBank登録番号J03266)、ボレリア症、旋毛虫症である。したがって本発明の組成物と方法で使用できる原生動物抗原の非限定的な例に含まれるのは、熱帯熱マラリア原虫抗原(メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲抗原、生殖母体/配偶子表面抗原、血液ステージ抗原pf155/RESA、他のマラリア原虫抗原成分など);トキソプラズマ抗原(SAG-1、p30、他のトキソプラズマ抗原成分など);住血吸虫抗原(グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、パラミオシン、他の住血吸虫抗原成分など);リーシュマニア主要抗原と他のリーシュマニア抗原(gp63、リポホスホグリカンとその関連タンパク質、他のリーシュマニア抗原成分など);クルーズトリパノソーマ抗原(75~77kDa抗原、56kDa抗原、他のトリパノソーマ抗原成分など)である。
【0243】
本発明では、抗原として毒素成分も考慮する。毒素の非限定的な具体例に含まれるのは、ブドウ球菌エンテロトキシン、毒素性ショック症候群毒素、レトロウイルス抗原(例えばHIVに由来する抗原)、連鎖球菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)、ブドウ球菌エンテロトキシン1-3(SE1-3)、ブドウ球菌エンテロトキシンD(SED)、ブドウ球菌エンテロトキシンE(SEE)のほか、マイコプラズマに由来する毒素、マイコバクテリウムに由来する毒素、ヘルペスウイルスに由来する毒素である。
【0244】
標的抗原の少なくとも一部に対応する抗原は、天然の供給源から単離すること、または本分野で知られている組み換え技術によって調製することができる。例えばペプチド抗原は、免疫応答が変化することが望まれる細胞集団または組織から得られた抗原提示細胞のMHCとそれ以外の提示分子から溶出させることができる。溶出したペプチドは、本分野で知られている標準的なタンパク質精製技術を利用して精製することができる(Rawson他、2000年、Cancer Res 第60巻(16)、4493~4498ページ)。望むのであれば、精製ペプチドの配列を明らかにした後、例えば下記の標準的なタンパク質合成技術を利用してそのペプチドの合成バージョンを作製することができる。あるいは粗抗原調製物は、免疫応答が変化することが望まれる細胞集団または組織のサンプルを単離した後、そのサンプルを溶解させることによって、またはそのサンプルを、アポトーシス細胞の形成に至る条件にする(例えば紫外線またはγ線を照射する、ウイルスを感染させる、サイトカイン、細胞培養培地の中で細胞から栄養素を奪う、過酸化水素とともにインキュベートする、デキサメタゾン、セラミド化学療法剤、抗ホルモン剤(リュープロン(Lupron)やタモキシフェンなど)などの薬剤とともにインキュベートする)ことによって作製できる。その後、そのライセートまたはアポトーシス細胞を粗抗原の供給源として使用し、可溶性形態で用いること、または抗原提示細胞と接触させることができる。これについてはあとでより詳しく説明する。
【0245】
代表的な実施態様では、本発明のポリペプチド複合体またはキメラポリペプチド、またはキメラポリペプチドを発現させることのできる核酸コンストラクト(「免疫調節剤」)は、がんの処置に使用される。これら実施態様のいくつかでは、免疫調節剤は、腫瘍細胞の増殖、生存、生存率を抑制する少なくとも1つのがん療法と同時に適用することができる。免疫調節剤は、そのがん療法の後に治療のため用いることや、その療法を適用する前に、またはその療法と同時に用いることができる。したがって本発明では、本発明の免疫調節剤を用いると同時にがん療法を適用する併用療法を考慮する。がん療法の非限定的な例に含まれるのは、放射線療法、外科手術、化学療法、ホルモン除去療法、アポトーシス促進療法、免疫療法である。
【0246】
6.2 放射線療法
放射線療法には、DNAの損傷を誘導する波動(例えばγ線、X線、UV光、マイクロ波、電子線、放射性同位体など)の照射が含まれる。治療は、局在化した腫瘍部位に上記の形態の放射線を照射することによって実現することができる。これらの因子のすべてが、DNAの前駆体、DNAの複製と修復、染色体の組織化と維持に影響を与え、DNAに広範なダメージを与えている可能性が大きい。
【0247】
X線の線量の範囲は、長期間(3~4週間)にわたる場合の50~200レントゲンという1日量から、1回だけの線量である2000~6000レントゲンまでの範囲である。放射性同位体の線量の範囲は広く、同位体の半減期と、放出される放射線の強度および種類と、腫瘍細胞による取り込みに依存する。
【0248】
放射線療法の非限定的な例に含まれるのは、原体外照射療法(50~100グレイを分割して4~8週間かけて与える)、高線量を1回で、または分割して与える小線源療法、永久組織内小線源療法、全身への放射性同位体(例えばストロンチウム89)照射である。いくつかの実施態様では、放射線療法は、放射線増感剤と組み合わせて適用することができる。放射線増感剤の非限定的な具体例に含まれるのは、エファプロキシラル、エタニダゾール、フルオゾール、ミソニダゾール、ニモラゾール、テモポルフィン、チラパザミンである。
【0249】
6.3 化学療法
化学療法剤は、以下のカテゴリーのうちの任意の1つ以上から選択することができる:
(i)腫瘍学で用いられている抗増殖薬/抗腫瘍薬とその組み合わせ(例えばアルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア);代謝拮抗剤(例えば抗葉酸剤であるフルオロピリジン(5-フルオロウラシル、テガフールなど)、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシウレアなど);抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリンであるアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン、ミトラマイシンなど);抗有糸分裂剤(例えばビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビンなど)、タキソイド(パクリタキセル、ドセタキセルなど));トポイソメラーゼ阻害剤(例えばエピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシドなど)、アムサクリン、トポテカン、カンプトテシン));
(ii)細胞増殖抑制剤(例えば抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、イドキシフェン)、エストロゲン受容体下方調節剤(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン剤(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン)、UHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロレリン、ブセレリン)、プロゲストーゲン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール、エキセメスタン)、5α-レダクターゼの阻害剤(例えばフィナステリド));
(iii)がん細胞の浸潤を抑制する薬剤(例えばメタロプロテイナーゼ阻害剤(マリマスタットなど)、ウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベータ受容体機能の阻害剤);
(iv)増殖因子機能の阻害剤(例えばそのような阻害剤に含まれるのは、増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体(例えば抗erbb2抗体であるトラスツズマブ[ハーセプチン(商標)]と抗erbb1抗体であるセツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、MEK阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤であり、例えば上皮増殖因子ファミリーの他の阻害剤(例えば他のEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤であるN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(エルロチニブ、OSI-774)、6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(CI 1033))、例えば血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、例えば肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤がある);
(v)抗血管新生剤(血管内皮増殖因子の効果を抑制する抗血管新生剤(例えば抗血管内皮細胞増殖因子抗体であるベバシズマブ[アバスチン(商標)])や、国際特許出願公開WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856、WO98/13354に開示されている化合物)、他の機構で作用する化合物(例えばリノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、アンジオスタチン)など);
(vi)血管損傷剤(コンブレタスタチンA4や、国際特許出願公開WO99/02166、WO00/40529、WO00/41669、WO01/92224、WO02/04434、WO02/08213に開示されている化合物など);
(vii)アンチセンス治療剤(例えば上記の標的に向かうもの(ISIS 2503、抗rasアンチセンスなど));
(viii)遺伝子治療のアプローチ(例えば異常な遺伝子(例えば異常なp53や異常なGDEPT)置換するアプローチ(遺伝子指向酵素プロドラッグ療法)、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼ、細菌ニトロレダクターゼ酵素のいずれかを用いるアプローチ、化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を高めるアプローチ(多剤耐性遺伝子治療など)が含まれる)。
【0250】
6.4 免疫療法
免疫療法のアプローチに含まれるのは、例えば患者の腫瘍細胞の免疫原性を大きくするための生体外アプローチと生体内アプローチ(例えばサイトカイン(インターロイキン2、インターロイキン4、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子など)のトランスフェクション)、T細胞のアネルギーを低下させるアプローチ、トランスフェクトされた免疫細胞(サイトカインをトランスフェクトされた樹状細胞など)を用いるアプローチ、サイトカインをトランスフェクトされた腫瘍細胞系を用いるアプローチ、抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチである。これらのアプローチは一般に、がん細胞を標的として破壊するのに免疫エフェクタ細胞と免疫エフェクタ分子の使用に依存している。免疫エフェクタとして、例えば抗原結合分子(腫瘍細胞の表面にあるマーカーに対して特異的な抗体など)が可能である。抗原結合分子は、単独で治療のエフェクタとして機能すること、または他の細胞をリクルートして細胞の殺害を実際に促進することができる。抗原結合分子は、薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)との複合体になり、単にターゲティング剤として機能することもできる。あるいは免疫エフェクタとして、悪性細胞標的と直接的または間接的に相互作用する表面分子を担持したリンパ球が可能である。多彩な免疫エフェクタ細胞には、細胞傷害性T細胞とNK細胞が含まれる。
【0251】
これら実施態様のいくつかでは、抗原結合分子が標的とする細胞表面抗原は腫瘍関連抗原であることが適切であり、その具体例に含まれるのは、Her2/neu、EGFR、Epcam、VEGFR、FGFR、MUC-I、CA 125、CEA、MAGE、CD20、CD19、CD40、CD33、A3、A33抗体に対して特異的な抗原、BrE3抗原、CD1、CD1a、CD5、CD8、CD14、CD15、CD16、CD21、CD22、CD23、CD30、CD33、CD37、CD38、CD40、CD45、CD46、CD52、CD54、CD74、CD79a、CD126、CD138、CD154、B7、Ia、Ii、HMl.24、HLA-DR(例えばHLA-DR10)、NCA95、NCA90、HCGとサブユニット、CEA(CEACAM5)、CEACAM-6、CSAp、EGP-I、EGP-2、Ba 733、KC4抗原、KS-I抗原、KS1-4、Le-Y、MUC2、MUC3、MUC4、PlGF、ED-Bフィブロネクチン、NCA 66a-d、PAM-4抗原、PSA、PSMA、RS5、SlOO、TAG-72、TlOl、TAG TRAIL-Rl、TRAIL-R2、p53、テネイシン、インスリン増殖因子-1(IGF-I)、Tn抗原などである。
【0252】
6.5 他の療法
他のがん療法の例に含まれるのは、光線療法、寒冷療法、毒素療法、アポトーシス促進療法である。このリストががんとそれ以外の過形成病変に適用できる処置法の種類を網羅してはいないことを当業者は知っていると考えられる。
【0253】
化学療法と放射線療法が、急速に分裂する細胞を標的とすること、および/または細胞周期または細胞分裂を乱すことは周知である。これらの処置は、いくつかの形態のがんの処置法の一部として、がんの進行を遅らせること、または治療的処置手段によって疾患の症状を逆転させることを目的として提供されている。しかしこれらのがん処置法によって免疫無防備状態につながり、その結果として病原体に感染する可能性があるため、本発明の範囲は、ポリペプチド複合体と、がん治療薬と、がん療法から生じる免疫無防備状態から発生する感染症、またはがん療法から生じる免疫無防備状態から発症のリスクが増大する感染症に対して有効な抗感染薬の3種類を用いる併用療法にも広がっている。抗感染薬は抗微生物薬から選択されることが適切であり、抗微生物薬の非限定的な例に含まれるのは、微生物(例えばウイルス、細菌、酵母、真菌、原生動物など)を殺すか、微生物の増殖を抑制する化合物、すなわち抗生物質、殺アメーバ薬、抗真菌薬、抗原虫薬、抗マラリア薬、抗結核薬、抗ウイルス薬である。抗感染薬の範囲には、駆虫薬と殺線虫薬も含まれる。抗生物質の具体例に含まれるのは、キノロン類(例えばアミフロキサシン、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、オキソリン酸、ペフロキサシン、ロソキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン;ゲミフロキサシン;ガレノキサシン)、テトラサイクリン、グリシルサイクリン、オキサゾリジノン(例えばクロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、チゲサイクリン;リネゾリド、エペロゾリド)、糖ペプチド、アミノグリコシド(例えばアミカシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォルチマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、メオマイシン、ネチルマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン)、β-ラクタム類(例えばイミペネム、メロペネム、ビアペネム、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフピミゾール、セフピラミド、セフポドキシム、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファアセトリル、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロシン、セファピリン、セフラジン、セフィネタゾール、セフォキシチン、セフォテタン、アズトレオナム、カルモナム、フロモキセフ、モキサラクタム、アミジノシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アゾシリン、カルベニシリン、ベンジルペニシリン、カルフェシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ピペラシリン、スルベニシリン、テモシリン、チカルシリン、セフジトレン、SC004、KY-020、セフジニル、セフチブテン、FK-312、S-1090、CP-0467、BK-218、FK-037、DQ-2556、FK-518、セフォゾプラン、ME1228、KP-736、CP-6232、Ro 09-1227、OPC-20000、LY206763)、リファマイシン、マクロライド系(例えばアジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、オレアンドマイシン、ロキタマイシン、ロサラミシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン)、ケトライド系(例えばテリスロマイシン、セトロマイシン)、クメルマイシン、リンコサミド類(例えばクリンダマイシン、リンコマイシン)、クロラムフェニコールである。
【0254】
抗ウイルス薬の具体例に含まれるのは、硫酸アバカビル、アシクロビルナトリウム、塩酸アマンタジン、アンプレナビル、シドフォビル、メシル酸デラビルジン、ジダノシン、エファビレンツ、ファムシクロビル、ホミビルセンナトリウム、ホスカルネットナトリウム、ガンシクロビル、硫酸インジナビル、ラミブジン、ラミブジン/ジドブジン、メシル酸ネルフィナビル、ネビラピン、リン酸オセルタミビル、リバビリン、塩酸リマンタジン、リトナビル、サキナビル、メシル酸サキナビル、スタブジン、塩酸バラシクロビル、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジンである。
【0255】
殺アメーバ薬または抗原虫薬の非限定的な例に含まれるのは、アトバコン、クロロキン塩酸塩、クロロキンリン酸塩、メトロニダゾール、メトロニダゾール塩酸塩、イセチオン酸ペンタミジンである。駆虫薬は、メベンダゾール、パモ酸ピランテル、アルベンダゾール、イベルメクチン、チアベンダゾールから選択した少なくとも1つのものが可能である。抗真菌剤の具体例の選択は、アムホテリシンB、アムホテリシンB硫酸コレステリル複合体、アムホテリシンB脂質複合体、アムホテリシンBリポソーム、フルコナゾール、フルシトシン、マイクロサイズのグリセオフルビン、超マイクロサイズのグリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ナイスタチン、テルビナフィン塩酸塩からなすことができる。抗マラリア薬の非限定的な例に含まれるのは、クロロキン塩酸塩、リン酸クロロキン、ドキシサイクリン、硫酸ヒドロキシクロロキン、メフロキン塩酸塩、リン酸プリマキン、ピリメタミン、スルファドキシンを含むピリメタミンである。抗結核薬の非限定的な例に含まれるのは、クロファジミン、シクロセリン、ダプソン、エタンブトール塩酸塩、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン、リファンピン、リファペンチン、硫酸ストレプトマイシンである。
【0256】
Th1関連疾患が病原体感染症である別の実施態様では、本発明のポリペプチド複合体は、例えば上記のように抗感染薬と同時に投与される。
【0257】
上記のように、本発明は、本発明の免疫調節剤を追加の薬剤または補助的な薬剤とともに投与することを包含する。免疫調節剤を1種類以上の他の薬剤と一緒に投与することを含む実施態様では、その組み合わせの中の活性成分の用量はそれだけで有効量を含んでおり、追加の薬剤は、患者に対する治療効果または予防効果をさらに増大させることが可能であることが理解されよう。あるいは免疫調節剤と追加の薬剤を合計したとき、Th1関連疾患またはTh1関連障害の予防または治療に有効な量を含むことができる。有効量は、具体的な処置計画(例えば投与のタイミングと回数、投与法、剤形などが含まれる)の文脈で明確にできることも理解されよう。いくつかの実施態様では、免疫調節剤と、場合によって用いられるがん治療薬は、決められたスケジュールで投与される。あるいはがん治療薬は、症状が生じたときに投与することができる。本明細書では、「決められたスケジュール」は、指定された所定の期間を意味する。決められたスケジュールは、そのスケジュールがあらかじめ決められているのであれば、長さが同じ期間または長さが異なる期間を含むことができる。例えば決められたスケジュールは、ポリペプチド複合体の投与を、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、毎月、設定したこれらの間の任意の日数または週数、2ヶ月ごと、3ヶ月ごと、4ヶ月ごと、5ヶ月ごと、6ヶ月ごと、7ヶ月ごと、8ヶ月ごと、9ヶ月ごと、10ヶ月ごと、11ヶ月ごと、12ヶ月ごとなどに実施することを含むことができる。あるいは決められたスケジュールは、ポリペプチド複合体とがん治療薬の同時投与を最初の週は毎日実施し、その後の数ヶ月間は毎月、そしてその後は3ヶ月ごとに実施することを含むことができる。決められたスケジュールが事前に決められていて、所定の日に投与することが適切なスケジュールに含まれているのであれば、具体的な任意の組み合わせが、決められたスケジュールによってカバーされると考えられる。
【0258】
6.6 用量と投与経路
組成物は、「有効量」、すなわち想定した目的を対象で達成するのに有効な量を投与される。患者に投与される活性化合物の用量は、Th1関連疾患またはTh1関連障害に関連する少なくとも1つの症状の軽減といった有益な反応を時間経過とともに対象で実現するのに十分でなければならない。投与される薬学的に活性な化合物の量または投与頻度は、処置する対象の年齢、性別、体重、一般的な健康状態によって異なる可能性がある。この点に関し、投与する活性化合物の正確な量は、処置者の判断にかかることになろう。当業者は、望む治療結果を得るため本発明の医薬組成物の中に含めることになる本明細書に記載した免疫調節剤が毒性を持たない有効な量を、定型的な実験によって決定することができると考えられる。
【0259】
一般に、本発明の医薬組成物は、投与経路とレシピエントの身体的特徴(健康状態を含む)に合ったやり方で、しかもその医薬組成物が望む効果(すなわち治療に有効、および/または免疫原性、および/または保護的)を誘起するように投与することができる。例えば本発明の医薬組成物の適切な用量はさまざまな因子に依存する可能性があり、因子の非限定的な例に含まれるのは、対象の身体的特徴(例えば年齢、体重、性別)、化合物が単剤として使用されているかアジュバント剤として使用されているか、患者のMHC拘束性のタイプ、ウイルス感染の進行状況(すなわち病状)、当業者によって認識される可能性のある他の因子である。本発明の医薬組成物の適切な用量を決定する際に考慮される可能性のあるさまざまな一般的考慮事項が記載されているのは、例えばGennaro(2000年)『Remington:The Science and Practice of Pharmacy』、第20版、Lippincott,Williams, & Wilkins社と、Gilman他(編)、(1990年)、『Goodman And Gilman’s:The Pharmacological Bases of Therapeutics』、Pergamon Press社である。
【0260】
いくつかの実施態様では、本発明の免疫調節剤の「有効量」は、望む予防効果または治療効果を実現して例えばTh1関連疾患またはTh1関連障害に関連する症状を軽減するのに十分な量である。これらの実施態様では、有効量は、個体におけるTh1関連疾患またはTh1関連障害に関連する症状を、免疫調節剤で処置されていない個体での症状と比べて、少なくとも約10%、または少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、またはそれ以上軽減する。さまざまなTh1関連疾患またはTh1関連障害の症状と、そのような症状を測定するための方法は、本分野で知られている。例えば腫瘍量、腫瘍のグレード、個体の体内の病原性生物の数などを測定する方法は、本分野で標準化されている。
【0261】
いくつかの実施態様では、本発明の免疫調節剤の「有効量」は、選択された投与経路で免疫応答(Th1免疫応答を含む)を誘発するのに有効な量である。免疫応答(Th1免疫応答を含む)を測定する方法は、当業者に知られている。方法の例に含まれるのは、固相不均一アッセイ(例えば酵素結合免疫吸着アッセイ)、液相アッセイ(例えば電気化学発光アッセイ)、増幅ルミネセンス近接均一アッセイ、フローサイトメトリー、細胞内サイトカイン染色、機能的T細胞アッセイ、機能的B細胞アッセイ、機能的単球-マクロファージアッセイ、樹状細胞と網状内皮細胞アッセイ、NK細胞応答の測定、免疫細胞によるIFN-γ産生、組織内または体液中のウイルスRNA/DNAの定量(例えば血清その他の体液、または組織/臓器の中のウイルスのRNAまたはDNAの定量)、酸化的バーストアッセイ、細胞傷害特異的細胞溶解アッセイ、五量体結合アッセイ、食作用とアポトーシスの評価である。
【0262】
本発明の医薬組成物は、標準的な経路でレシピエントに投与することができる。経路の非限定的な例には、非経口(例えば静脈内)が含まれる。
【0263】
本発明の医薬組成物は、単独で、または追加の治療薬と組み合わせてレシピエントに投与することができる。医薬組成物が治療薬と同時に投与される実施態様では、投与は、同時に実施しても順番に(すなわち医薬組成物を投与した後に薬剤を投与すること、またはその逆を)実施してもよい。
【0264】
典型的には、処置の用途では、処置は、疾患の状態または現状の継続期間中に行なうことができる。さらに、個々の投与の最適な量と間隔は、処置する疾患の状態または現状の性質と程度、投与する形態、経路、部位、処置を受けている特定の個人の性質によって決定されることが当業者には明らかであろう。最適な条件は、従来からの技術を用いて決定することができる。
【0265】
多くの場合(例えば予防的適用)には、本発明の医薬組成物を数回または複数回投与することが望ましい可能性がある。例えば医薬組成物は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、またはそれ以上の回数投与することができる。投与は、約1週間~約12週間の間隔で行なうことができ、いくつかの実施態様では、約1週間~約4週間の間隔で行なうことができる。本発明の医薬組成物が標的とする特定の病原体または他の疾患関連成分に反復して曝露される場合には、定期的に再投与することが望ましい可能性がある。
【0266】
最適な投与経路は、従来の処置経過決定試験を用いて確かめることができることも当業者には明らかであろう。
【0267】
2つ以上の薬剤が「組み合わせて」または「同時に」対象に投与される場合には、それらの薬剤を単一の組成物にして同時に投与すること、または別々の組成物にして時間的に離して投与することができる。
【0268】
本発明のいくつかの実施態様は、医薬組成物を複数に分割した用量で投与することを含んでいる。したがってTh1関連疾患またはTh1関連障害の予防と治療のための本明細書の方法は、例えば決められた期間にわたって医薬組成物を複数に分割した用量で対象に投与することを含んでいる。したがって本明細書に開示した感染症の予防と治療のための方法は、初回用量の本発明の医薬組成物を投与することを含んでいる。初回用量の後に追加用量を続けることができる。追加用量は、再度ワクチン接種を行なうことを目的とすることができる。さまざまな実施態様では、医薬組成物またはワクチンは、少なくとも1回、2回、3回、またはそれ以上の回数投与される。
【0269】
7.処置法
本発明の免疫調節剤は、Th1免疫応答の低下または不全に関連する疾患を処置するのに有用である。例えばTh1関連疾患として、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫いずれかの感染症が可能である。ウイルスの非限定的な例に含まれるのは、レトロウイルス科ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1(HTLV-III,LAV、またはHTLV-III/LAV、またはHIV-IIIとも呼ばれる)など)と、他の分離株(HIV-LPなど);ピコルナウイルス科(例えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(例えば胃腸炎を引き起こす株であり、ノロウイルスとそれに関連するウイルスが含まれる);トガウイルス科(例えばウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えばデング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロノウイルス科(例えばコロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス)。フィロウイルス科(例えばエボラウイルス);パラミクソウイルス科(例えばパラインフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、メタニューモウイルス);オルソミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(例えばハンタウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、ナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイルス科(例えばレオウイルス、オービウイルス、ロタウイルス);ビマウイルス科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);パポバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1と2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス);ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、VACV、ポックスウイルス);イリドウイルス科(例えばアフリカ豚コレラウイルス);分類されていないウイルス(例えば海綿状脳症の病原体、デルタ型肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの不完全なサテライトであると考えられている)、非A非B型肝炎の病原体(クラス1=内部感染;クラス2=非経口感染(すなわちC型肝炎));アストロウイルスである。
【0270】
いくつかの実施態様では、病原性感染症は細菌性病原体による。対象の体内で病原性であることが知られている細菌の非限定的な例に含まれるのは、病原性であるパスツレラ属の種(例えば、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida))、ブドウ球菌属の種(例えば黄色ブドウ球菌)、連鎖球菌属の種(例えば化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティアエ(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(viridans群)、ストレプトコッカス・フェカーリス(Streptococcus faecalis)ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(嫌気性の種)、肺炎連鎖球菌)、ナイセリア属の種(例えばナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌)、大腸菌属の種(例えば毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、腸管出血性大腸菌(EHEC)、腸侵入性大腸菌(EIEC))、ボルデテラ属の種、カンピロバクター属の種、レジオネラ属の種(例えばレジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila))、シュードモナス属の種、シゲラ属の種、ビブリオ属の種、エルシニア属の種、サルモネラ属の種、ヘモフィルス属の種(例えばインフルエンザ菌)、ブルセラ属の種、フランシセラ属の種、バクテリオイデス属の種、クロストリジウム属の種(例えばクロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、破傷風菌)、マイコバクテリウム属の種(例えばヒト型結核菌、マイコバクテリウム・アビウム(M.avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare)、マイコバクテリウム・カンサシー(M.kansaii)、マイコバクテリウム・ゴルドナエ(M.gordonae))、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、エンテロコッカス属の種、炭疽菌、ジフテリア菌、豚丹毒菌、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシラス・モリニフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ、リケッチア、アクチノマイセス・イスラエリイ(Actinomyces israeli)である。
【0271】
本発明の別の実施態様では、病原性感染症は、真核生物病原体(病原性の真菌や寄生虫など)による。少なくともある程度病原性であることが知られている真菌の非限定的な例に含まれるのは、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチチジス(Blastomyces dermatitidis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラータ(Candida glabrata)、アスペルギルス・フミガータ(Aspergillus fumigata)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)である。
【0272】
異種抗原の出所となることのできる他の真核生物病原体の非限定的な例に含まれるのは、病原性の原生動物、蠕虫、マラリア原虫(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)など);トキソプラズマ(Toxoplasma gondii);ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi);ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japonicum);ドノバンリーシュマニア(Leishmania donovani);ランブル鞭毛虫(Giardia intestinalis);小形クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)などである。
【0273】
Th1免疫応答の低下または不全に関係する可能性のある他の疾患には、あらゆる悪性状態または前悪性状態や、あらゆる増殖性状態または過剰増殖性状態や、身体の任意の細胞または組織の増殖能力や増殖挙動における機能その他の乱れまたは異常から生じたり、そのような乱れまたは異常に由来したり関連していたりするあらゆる疾患も含まれる。本発明のポリペプチド複合体と組成物で処置できる可能性のあるがんの非限定的な例に含まれるのは、乳がん、大腸がん、肺がん、前立腺がん、血液とリンパ系のがん(ホジキン病、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンストローム病が含まれる)、皮膚がん(悪性黒色腫が含まれる)、消化管のがん(頭頸部がん、食道がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がん、大腸直腸がん、肛門がんが含まれる)生殖器系と泌尿器系のがん(腎臓がん、膀胱がん、精巣がん、前立腺がんが含まれる)、女性のがん(乳がん、卵巣がん、婦人科がん、絨毛癌が含まれる)のほか、脳、骨カルチノイド、鼻咽頭、後腹膜、甲状腺、軟組織の腫瘍である。
【0274】
8.免疫状態バイオマーカーとその利用
本発明は、一部が、IEC相互作用細胞(樹状細胞などのAPCが含まれる)の表面におけるPD-L2の発現がTh1関連疾患の重症度と逆相関するという測定結果と、PD-L2がTh1免疫の確立に必要であるという測定結果にも基づいている。そこで本発明の発明者は、PD-L2が、対象において上方制御されたTh1免疫応答および/または増強されたTh1免疫応答の信頼できる1つの指標であると判断した。発明者は、Th1免疫応答の間に調節される他のバイオマーカーも発見した。追加のこれらバイオマーカーを含めると、本明細書に教示した診断アッセイと予後アッセイの診断力と信頼性が向上する。これらの判断に基づき、PD-L2は、場合によっては他のTh1免疫状態バイオマーカーと組み合わせることで、対象のTh1免疫状態を示しているため、Th1関連疾患を患っている対象におけるTh1免疫状態の変化を追跡するのに役立つことを提案する。
【0275】
そのため本発明により、本発明のポリペプチド複合体とキメラポリペプチドのコンパニオン診断として、対象のTh1免疫状態を同定するための、またはTh1関連疾患を有する対象の予後を提供するための方法、装置、組成物、キットも提供される。
【0276】
8.1 Th1免疫状態バイオマーカー
本発明の発明者は、Th1免疫応答の間にヒトとマウスで特異的に発現するIEC相互作用細胞(樹状細胞などのAPCが含まれる)の表面にいくつかの表面マーカーが存在することを見いだした。本明細書に提示した結果は、生物学的に重要な独自のバイオマーカープロファイルが対象のTh1免疫状態を驚くべき精度で予測することの明確な証拠を提供する。要するに、これらの知見は、本明細書に開示したIEC相互作用細胞表面バイオマーカー(特にPD-L2)が、Th1免疫状態を判断するためのバイオマーカーとして機能するため、望ましくないTh1免疫状態に関係する疾患を患っている対象を処置する優先順位を判断するための有用な診断法として役立つ可能性があることの説得力ある証拠を提供する。この点に関し、これらバイオマーカーに基づく本明細書に開示した方法、装置、組成物、キットは、Th1免疫状態の迅速かつ安価な判断を可能にするためポイント・オブ・ケア診断に役立つ可能性がある。その結果として、Th1免疫応答が望ましくない対象は、必要に応じてその対象におけるTh1免疫応答を増大または低下させるのに適した治療薬に曝露することができるため、医療システムのコストを大幅に削減できる可能性がある。
【0277】
本明細書に記載した方法を利用することで、対象のTh1免疫状態を判断する上で特に有用な多数のバイオマーカーが同定されている。これらバイオマーカーを本明細書では「Th1免疫状態バイオマーカー」と呼ぶ。本明細書では、「Th1免疫状態バイオマーカー」という用語は、対象のバイオマーカー、一般には対象の免疫系のバイオマーカーを意味し、Th1免疫応答の一部として、変化する、あるいはその発現レベルが変化する。Th1免疫状態バイオマーカーは、遺伝子(本明細書では、交換可能な用語として「Th1免疫応答バイオマーカー遺伝子」とも呼ぶ)の発現産物(その中には、ポリヌクレオチド発現産物とポリペプチド発現産物が含まれる)であることが適切である。本明細書では、Th1免疫状態バイオマーカー遺伝子のポリヌクレオチド発現産物を「Th1免疫状態バイオマーカーポリヌクレオチド」と呼ぶ。Th1免疫応答バイオマーカー遺伝子のポリペプチド発現産物を本明細書では「Th1免疫状態バイオマーカーポリペプチド」と呼ぶ。
【0278】
本発明の少なくとも1つのTh1免疫状態バイオマーカーは、PD-L2を含むことが適切である。天然のヒトPD-L2アミノ酸配列は、配列ID番号1に示してあり、以下の核酸配列によってコードされている:
【0279】
ACGCGGGGTTTTTCTTCTCTTGAATATATCTTAACGCCAAATTTTGAGTGCTTTTTTTGT
TACCCATCCTCATATGTCCCAGCTAGAAAGAATCCTGGGTTGGAGCTACTGCATGTTGATTGTTTTGTTTTTCCTTTTGGCTGTTCATTTTGGTGGCTACTATAAGGAAATCTAACACAAACAGCAACTGTTTTTTGTTGTTTACTTTTGCATCTTTACTTGTGGAGCTGTGGCAAGTCCTCATATCAAATACAGAACATGATCTTCCTCCTGCTAATGTTGAGCCTGGAATTGCAGCTTCACCAGATAGCAGCTTTATTCACAGTGACAGTCCCTAAGGAACTGTACATAATAGAGCATGGCAGCAATGTGACCCTGGAATGCAACTTTGACACTGGAAGTCATGTGAACCTTGGAGCAATAACAGCCAGTTTGCAAAAGGTGGAAAATGATACATCCCCACACCGTGAAAGAGCCACTTTGCTGGAGGAGCAGCTGCCCCTAGGGAAGGCCTCGTTCCACATACCTCAAGTCCAAGTGAGGGACGAAGGACAGTACCAATGCATAATCATCTATGGGGTCGCCTGGGACTACAAGTACCTGACTCTGAAAGTCAAAGCTTCCTACAGGAAAATAAACACTCACATCCTAAAGGTTCCAGAAACAGATGAGGTAGAGCTCACCTGCCAGGCTACAGGTTATCCTCTGGCAGAAGTATCCTGGCCAAACGTCAGCGTTCCTGCCAACACCAGCCACTCCAGGACCCCTGAAGGCCTCTACCAGGTCACCAGTGTTCTGCGCCTAAAGCCACCCCCTGGCAGAAACTTCAGCTGTGTGTTCTGGAATACTCACGTGAGGGAACTTACTTTGGCCAGCATTGACCTTCAAAGTCAGATGGAACCCAGGACCCATCCAACTTGGCTGCTTCACATTTTCATCCCCTCCTGCATCATTGCTTTCATTTTCATAGCCACAGTGATAGCCCTAAGAAAACAACTCTGTCAAAAGCTGTATTCTTCAAAAGACACAACAAAAAGACCTGTCACCACAACAAAGAGGGAAGTGAACAGTGCTATCTGAACCTGTGGTCTTGGGAGCCAGGGTGACCTGATATGACATCTAAAGAAGCTTCTGGACTCTGAACAAGAATTCGGTGGCCTGCAGAGCTTGCCATTTGCACTTTTCAAATGCCTTTGGATGACCCAGCACTTTAATCTGAAACCTGCAACAAGACTAGCCAACACCTGGCCATGAAACTTGCCCCTTCACTGATCTGGACTCACCTCTGGAGCCTATGGCTTTAAGCAAGCACTACTGCACTTTACAGAATTACCCCACTGGATCCTGGACCCACAGAATTCCTTCAGGATCCTTCTTGCTGCCAGACTGAAAGCAAAAGGAATTATTTCCCCTCAAGTTTTCTAAGTGATTTCCAAAAGCAGAGGTGTGTGGAAATTTCCAGTAACAGAAACAGATGGGTTGCAATAGAGTTATTTTTTATCTATAGCTTCCTCTGGG[配列ID番号55]。
【0280】
本発明の方法で場合によっては用いられる可能性のある別のTh1免疫状態バイオマーカーはPD-L1である。天然のヒトPD-L1アミノ酸配列は、以下の通りである:
【0281】
MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEME
DKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET[配列ID番号56]
【0282】
天然のヒトPD-L1アミノ酸配列は、以下の核酸配列によってコードされている:
【0283】
ATGAGGATATTTGCTGTCTTTATATTCATGACCTACTGGCATTTGCTGAACGCATTTAC
TGTCACGGTTCCCAAGGACCTATATGTGGTAGAGTATGGTAGCAATATGACAATTGAATGCAAATTCCCAGTAGAAAAACAATTAGACCTGGCTGCACTAATTGTCTATTGGGAAATGGAGGATAAGAACATTATTCAATTTGTGCATGGAGAGGAAGACCTGAAGGTTCAGCATAGTAGCTACAGACAGAGGGCCCGGCTGTTGAAGGACCAGCTCTCCCTGGGAAATGCTGCACTTCAGATCACAGATGTGAAATTGCAGGATGCAGGGGTGTACCGCTGCATGATCAGCTATGGTGGTGCCGACTACAAGCGAATTACTGTGAAAGTCAATGCCCCATACAACAAAATCAACCAAAGAATTTTGGTTGTGGATCCAGTCACCTCTGAACATGAACTGACATGTCAGGCTGAGGGCTACCCCAAGGCCGAAGTCATCTGGACAAGCAGTGACCATCAAGTCCTGAGTGGTAAGACCACCACCACCAATTCCAAGAGAGAGGAGAAGCTTTTCAATGTGACCAGCACACTGAGAATCAACACAACAACTAATGAGATTTTCTACTGCACTTTTAGGAGATTAGATCCTGAGGAAAACCATACAGCTGAATTGGTCATCCCAGAACTACCTCTGGCACATCCTCCAAATGAAAGGACTCACTTGGTAATTCTGGGAGCCATCTTATTATGCCTTGGTGTAGCACTGACATTCATCTTCCGTTTAAGAAAAGGGAGAATGATGGATGTGAAAAAATGTGGCATCCAAGATACAAACTCAAAGAAGCAAAGTGATACACATTTGGAGGAGACGTAA[配列ID番号57]
【0284】
上記のTh1免疫状態バイオマーカーのうちで、PD-L2ポリペプチドそのものが、(例えばFACS分析を利用してPD-L2+ IEC相互作用細胞(APCなど)の割合を測定することによって判明する)Th1免疫状態を検出する上で強力な診断性能を有することが見いだされた。したがって特別な実施態様では、PD-L2バイオマーカーを単独で、または他のTh1免疫状態バイオマーカーと組み合わせて使用して、指標を求めることができる。これらの実施態様では、PD-L2バイオマーカーについて、そして場合によっては別のTh1免疫状態バイオマーカー(例えばPD-L1)についてもバイオマーカー値を測定または導出して、指標を求めることが適切である。
【0285】
本発明の発明者は、別のTh1免疫状態バイオマーカーをPD-L2バイオマーカーと組み合わせて用いるときに強力な診断性能を有することも明らかにした。有利な実施態様では、指標を求めるのに使用できるTh1免疫状態バイオマーカーの複数のペアが同定されている。したがってこのタイプの代表的な例では、あとで詳しく記載するように、Th1免疫状態バイオマーカーの比と相関する指標が求まり、その指標を用いて対象のTh1免疫状態を求めることができる。
【0286】
そこで具体的なタンパク質産物が、対象のTh1免疫状態を判断するための手段を提供するTh1免疫応答バイオマーカーとして、本明細書に開示されている。これらTh1免疫状態バイオマーカーを、対象におけるレベル、または対象から得られたサンプルにおけるレベルを分析することによって評価すると、対象におけるTh1免疫状態の評価に使用できる指標を求めるためのバイオマーカー測定値またはバイオマーカー誘導値が提供される。
【0287】
8.2 サンプル調製
一般に、Th1免疫状態バイオマーカーの検出または定量化の前に、サンプルを処理する。例えばタンパク質および/または核酸をサンプルから抽出、および/または単離、および/または精製した後に分析することができる。さまざまなタンパク質、および/またはDNA、および/またはmRNA抽出と精製技術が、当業者によく知られている。処理には、遠心分離、超遠心分離、エタノール沈降、濾過、分画、再懸濁、希釈、濃縮などが含まれる可能性がある。いくつかの実施態様では、本明細書のここまでの部分と別の箇所に教示した方法により、処理なしの、または限定された処理がなされた生サンプル(例えば血液、血清などの生物サンプル)からの分析(例えばタンパク質バイオマーカーの定量)がなされる。
【0288】
さらに、Th1免疫状態バイオマーカーの検出または定量化の前にサンプルを処理し、そのサンプル中の興味ある特定の分画または細胞を精製または濃縮することができる。例えばサンプル中のIEC相互作用細胞(APC、または腫瘍細胞、またはAPCの特定のサブセット(例えば樹状細胞、マクロファージ、単球、B細胞、またはこれらの組み合わせ)など)を濃縮することができる。好ましい実施態様では、Th1免疫状態バイオマーカーの検出または定量の前に、サンプル中のIEC相互作用細胞(APC(例えばCD11c+樹状細胞を含む樹状細胞)や腫瘍細胞など)を濃縮する。生物サンプルに含まれる特定の細胞型を濃縮する方法は、本分野でよく知られている。例えば樹状細胞は、例えば細胞分離のためのFicoll-Hypaqueまたはスクロース勾配溶液を用いて示差勾配分離(differential gradient separation)した後、残存している汚染赤血球を塩化アンモニウムまたは低張溶解で処理することによって単離できる(『Cell Biology:A Laboratory Handbook』、第I巻~第III巻Cellis,J.E.編(1994年);『Current Protocols in Immunology』、第I巻~第III巻 Coligan J.E.編(1994年);Stites他(編))。
【0289】
サンプル調製法は、適切な緩衝液の中でサンプルを均一にする工程と、汚染物質および/またはアッセイ阻害剤を除去する工程と、Th1免疫状態バイオマーカー捕獲試薬(例えば特異的に結合できる部分に連結された磁性ビーズ)を添加する工程と、標的バイオマーカーと捕獲試薬の会合を促進する条件下でインキュベートして標的バイオマーカー:捕獲試薬複合体を生成させる工程と、標的バイオマーカーが放出される条件下でその標的バイオマーカー:捕獲試薬複合体をインキュベートする工程を含むことができる。いくつかの実施態様では、(例えば望むバイオマーカーに特異的な)複数のTh1免疫状態バイオマーカー捕獲試薬を溶液に添加することにより、1回の単離ごとに複数のTh1免疫状態バイオマーカーが単離される。例えばバイオマーカーが核酸である具体的な一実施態様では、異なる標的Th1免疫状態バイオマーカーに対して特異的なオリゴヌクレオチドをそれぞれが含む複数のTh1免疫状態バイオマーカー捕獲試薬をサンプルに添加して複数のTh1免疫状態バイオマーカーを単離することができる。この方法には、捕獲工程の数と、各捕獲工程で捕獲される標的Th1免疫状態バイオマーカーの数の両方が異なる複数の実験計画が包含されると考えられる。いくつかの実施態様では、捕獲試薬は、単離、および/または精製、および/または検出、および/または定量化しようとする特定のバイオマーカーと優先的に(例えば特異的かつ選択的に)相互作用する分子、部分、物質、組成物のいずれかである。特定のTh1免疫状態バイオマーカーに対して望む結合親和性および/または特異性を有する任意の捕獲試薬を本発明の技術で用いることができる。例えば捕獲試薬として、ペプチド、タンパク質(例えば抗体または受容体)、オリゴヌクレオチド、核酸(例えばTh1免疫状態バイオマーカーとハイブリダイズすることのできる核酸)、ビタミン、オリゴ糖、炭水化物、脂質、小分子などの巨大分子、またはその複合体が可能である。具体的かつ非限定的な例として、アビジン標的捕獲試薬を用いてビオチン部分を含む標的を単離して精製すること、抗体を用いて適切な抗原またはエピトープを含む標的を単離して精製すること、オリゴヌクレオチドを用いて相補的なオリゴヌクレオチドを単離して精製することができる。
【0290】
標的Th1免疫状態バイオマーカーに結合すること、または特異的に結合することのできる任意の核酸(一本鎖核酸と二本鎖核酸が含まれる)を捕獲試薬として用いることができる。そのような核酸の例に含まれるのは、DNA、RNA、アプタマー、ペプチド核酸と、糖、リン酸、ヌクレオシド塩基のいずれかに対する他の修飾である。そのため標的を捕獲する戦略は数多く存在しており、したがって多くの種類の捕獲試薬が当業者に知られている。
【0291】
それに加え、Th1免疫状態バイオマーカー捕獲試薬は、捕獲試薬を局在化させる、濃縮する、凝集させるなどの機能を含むことができるため、標的Th1免疫状態バイオマーカーを、捕獲試薬に捕獲された(例えば結合した、ハイブリダイズした、など)ときに(例えば標的:捕獲試薬複合体が形成されたときに)単離して精製する手段が提供される。例えばいくつかの実施態様では、捕獲試薬のうちでTh1免疫状態バイオマーカー(例えばポリペプチド)と相互作用する部分を、巨視的なスケールでユーザが操作できる固体支持体(例えばビーズ、表面、樹脂、カラムなど)に連結させる。固体支持体により、不均一な溶液から標的:捕獲試薬複合体を単離して精製するのに機械的手段を利用できるようになることがしばしばある。例えばビーズに連結させると、分離は、不均一溶液からそのビーズを例えば物理的に動かして取り出すことによって実現する。ビーズが磁性または常磁性を帯びている実施態様では、不均一な溶液から捕獲試薬(したがって標的Th1免疫状態バイオマーカー)を物理的に分離するのに磁場が用いられる。
【0292】
8.3 Th1免疫状態バイオマーカーポリペプチドの評価
本分野で知られている適切な任意の技術を用いてTh1免疫状態バイオマーカーを定量または検出することにより、Th1免疫状態バイオマーカー値を得ることができる。特別な実施態様では、Th1免疫状態バイオマーカーは、個々のTh1免疫状態バイオマーカーのレベル、または含量、または量を明らかにする試薬を用いて定量される。このタイプの試薬の非限定的な例には、タンパク質に基づくアッセイと核酸に基づくアッセイで用いるための試薬が含まれる。
【0293】
Th1免疫状態バイオマーカーの発現は、タンパク質の存在を証明することにより、またはバイオマーカーの既知の1つ以上の機能的特性により、タンパク質の発現レベルで評価することができる。例えばPD-L2特異的タンパク質の検出に用いられる抗PD-L2抗体は、アメリカ合衆国特許第7,709,214号;アメリカ合衆国特許出願公開第2009/296,392号;欧州特許第1537878号に記載されている(これらは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)。抗体は天然のPD-L2タンパク質と変性したPD-L2タンパク質の両方に結合し、本分野でよく知られているいくつかのアッセイ(酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、発光イムノアッセイ、ウエスタンブロット分析、免疫蛍光アッセイ、免疫組織化学、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析が含まれる)によって検出することができる。
【0294】
ELISAとRIAは、特異的な抗原の検出に関して似た原理に従う。一例として、PD-L2は、典型的には125Iで放射性標識したPD-L2特異的抗体により、RIAを利用して測定することができる。ELISAアッセイでは、PD-L2特異的抗体を酵素に化学的に結合させる。PD-L2特異的捕獲抗体を固体支持体の表面に固定化する。次に、標識されていないサンプル(例えば生物サンプルからのタンパク質抽出物)を、非特異的結合が阻止されて、結合しなかった抗体および/またはタンパク質が洗浄によって除去される条件下で、固定化された抗体とともにインキュベートする。結合したPD-L2は、第2のPD-L2特異的標識抗体によって検出される。RIAでは、抗体の結合が放射活性を測定することによって直接測定されるのに対し、ELISAでは、結合は、無色の基質を着色された反応生成物に変換する反応により、連結した酵素の活性の関数として検出される。したがって変化は、分光測光法によって容易に検出することができる(Janeway C.A.他(1997年)、『Immunobiology』第3増補版、Current Biology Ltd.社;Garland Publishing Inc.社、『Cell Biology:A Laboratory Handbook』、第I巻~第III巻 Cellis,J.E.編(1994年);『Current Protocols in Immunology』第I巻~第III巻 Coligan J.E.編(1994年);Stites他(編))。したがって両方のアッセイにより、生物サンプルに含まれるPD-L2タンパク質の含量を定量する手段が提供される。
【0295】
タンパク質バイオマーカーの発現は、発光イムノアッセイによって検出することもできる。ELISAおよびRIAとよく似ている発光イムノアッセイでは、試験する生物サンプル/タンパク質抽出物を固体支持体の表面に固定化し、抗PD-L2抗体で標識した特異的標識を用いて調べる。この標識のほうは発光性であり、結合したとき、特異的認識がなされたしるしとして発光する。発光性標識は、電磁放射、電気化学的励起、化学的活性化のいずれかによって活性化されたときに光を出す物質を含んでおり、蛍光物質、リン光物質、シンチレータ、化学発光物質を含むことができる。標識として、触媒反応系の一部(酵素、酵素の断片、酵素の基質、酵素阻害剤、補酵素、触媒など);発色剤システムの一部(例えば蛍光体、染料、化学発光体、発光体、増感剤など);分散性粒子(非磁性または磁性のものが可能)、固体支持体、リポソーム、リガンド、受容体、ハプテン放射性同位体などが可能であり(アメリカ合衆国特許第6,410,696号、第4,652,533号、欧州特許出願第0,345,776号)、標識は、PD-L2タンパク質の発現を検出するためのさらに別の高感度法を提供する。
【0296】
ウエスタンブロット分析は、生物サンプルに含まれるTh1免疫状態バイオマーカーポリペプチドの含量を評価するための別の手段である。IEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)の生物サンプルからのタンパク質抽出物を、変性させてイオン化する環境の中で可溶化した後、アリコートをポリアクリルアミドゲルマトリックスに適用する。タンパク質は、アノードに向かって移動するにつれて分子サイズ特性に基づいて分離する。次いで抗原をニトロセルロース膜、PVDF膜、ナイロン膜のいずれかに移した後、膜をブロッキングして非特異的結合をできるだけ少なくする。膜は、検出可能な部分に直接結合させた抗体で調べるか、それに続けて検出可能な部分を含む二次抗体で調べる。典型的には、セイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼという酵素を抗体に結合させた後、発色性基質または発光性基質を用いて活性を可視化する(『Antibodies:A Laboratory Manual』(1998年)、CSH Laboratory、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州の中のHarlow E.他、「Immunoblotting」、471~510ページと、Bronstein I.他(1992年)Biotechniques 第12巻:748~753ページ)。
【0297】
サンプル全体の中のタンパク質バイオマーカーの含量を定量するRIA、ELISA、発光イムノアッセイ、イムノブロッティングとは異なり、免疫蛍光/免疫細胞化学を利用すると細胞特異的なやり方でタンパク質を検出できるが、定量化能力は弱い。
【0298】
上記のように、IEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)は、本分野で知られている方法によって単離または濃縮することができる。IEC相互作用細胞の単離または濃縮は、IEC相互作用細胞の割合を(濃縮操作前のサンプルに含まれる割合と比べて)大きくするプロセスを意味する。精製は濃縮の一例である。いくつかの実施態様では、濃縮操作前のサンプルと比べたときのIEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)の数の増加は、濃縮されたサンプル中の細胞の割合として、少なくとも25倍、50倍、75倍、100倍、150倍、200倍、250倍、300倍、350倍であり、100倍~200倍が適切である。特別な実施態様では、IEC相互作用細胞の表面にある表面マーカーに対する抗体を固体支持体に付着させ、分離が可能になるようにする。分離操作に含めることができるのは、抗体磁性ビーズ(例えばMiltenyi(商標)ビーズ)を用いた磁性分離、アフィニティクロマトグラフィ、固体マトリックスに付着させた抗体を用いた「パンニング」や、他の便利な任意の技術(レーザー・キャプチャー・マイクロダイセクションなど)である。特別な実施態様では、IEC相互作用細胞は、CD11cに対して特異的な抗体(この抗体は磁性ビーズにコンジュゲートされている)と、CD11c+細胞を分離して取り出すための磁性細胞分離装置を用いて適切に濃縮された樹状細胞である。特に正確に分離する他の技術にはFACSが含まれる。細胞は、スライドの上に載せると、固定した後に、標識された抗原結合分子(Th1免疫状態バイオマーカーを検出するための標識された抗体など)を用いて細胞特異的なやり方で調べることができる。
【0299】
Th1免疫状態バイオマーカーに対して特異的な抗体(例えば抗PD-L2抗体)を蛍光マーカー(フルオレセイン、FITC、ローダミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、Cy7や、それ以外の蛍光マーカーが含まれる)に直接コンジュゲートさせ、適切なフィルタを備えた蛍光顕微鏡で観察することができる。抗体を酵素にコンジュゲートさせることもできる。酵素は適切な基質を添加されると反応を開始し、検出するPD-L2タンパク質を有する細胞の上に着色沈殿物を生じさせる。するとスライドを標準的な光学顕微鏡で観察できるようになる。あるいはPD-L2に対して特異的な一次抗体をさらに、検出可能な部分にコンジュゲートさせた二次抗体に結合させることができる。このようにして細胞表面の発現を評価することができる。細胞浸透溶液(トリトン-Xやサポニンなど)を添加して試薬を細胞質の中に容易に浸透させることができる(『Cell Biology:A Laboratory Handbook』、第I巻~第III巻 Cellis,J.E.編(1994年);『Current Protocols in Immunology』第I巻~第III巻Coligan J.E.編(1994年);Stites他(編)、『Basic and Clinical Immunology』(第8版)、Appleton & Lange社、ノーウォーク、コネティカット州(1994年);MishellとShiigi(編)、『Selected Methods in Cellular Immunology』、W.H.Freeman and Co.社、ニューヨーク(1980年))。
【0300】
免疫組織化学は原則として免疫蛍光または免疫細胞化学と非常によく似ているが、例えば細胞懸濁液とは異なり、組織試料をPD-L2抗体で調べる。生検試料を固定して処理し、必要に応じて切片にしてパラフィンに包埋すると、細胞または組織のスライドが得られるため、あとでそれをヘパラナーゼ特異的抗体で調べる。あるいは凍結させた組織をクライオスタットの上で切片にした後に抗体で調べると、固定することによって誘導される抗原のマスキングが回避される。抗体は、免疫蛍光または免疫細胞化学におけるように、検出可能な部分(蛍光部分、または酵素が連結した部分)に結合させ、それを用い、免疫蛍光に関して記載されている方法によって組織切片を調べ、その後、利用する検出法に応じて蛍光または共焦点顕微鏡によって可視化する。酵素で検出可能な部分を用いる場合には、反応生成物の沈殿は、その反応生成物を現像した後に標準的な光学顕微鏡で観察することができる(『Cell Biology:A Laboratory Handbook』、第I巻~第III巻 Cellis,J.E.編(1994年);『Current Protocols in Immunology』第I巻~第III巻Coligan J.E.編(1994年);Stites他(編)、『Basic and Clinical Immunology』(第8版)、Appleton & Lange社、ノーウォーク、コネティカット州(1994年);MishellとShiigi(編)、『Selected Methods in Cellular Immunology』、W.H.Freeman and Co.社、ニューヨーク(1980年))。
【0301】
特別な実施態様では、FACS分析を利用してTh1免疫状態バイオマーカーの発現(例えばPD-L2の発現、場合によってはPD-L1の発現も)を評価する。FACSの装置と方法の一般的な説明は、アメリカ合衆国特許第4,172,227号;第4,347,935号;第4,661,913号;第4,667,830号;第5,093,234号;第5,094,940号;第5,144,224号に与えられている。細胞をFACS装置の中に導入し、チューブを通じてFACSセルの中に送達すると、細胞はそのセルを単一の細胞として通過する。レーザービームをFACSセルに向け、前方レーザー散乱はフォトダイオードによって回収し、側方レーザー散乱は、PMT1の方を向いたレンズによってPMTチューブに向かわせる。多変量解析のため、特定のフィルタが側方散乱からの蛍光を他のPMTチューブに向かわせる。側方レーザー散乱は細胞のサイズと粒度を反映しているため、混合されたサンプルに含まれる細胞集団の同定に使用できる。蛍光性の抗PD-L2抗体で標識された細胞は、レーザーでの励起とPMTチューブによる回収によって検出することができ、細胞のタイプは、例えば上に開示したように、サイズと粒度によって、または同定用の追加の細胞表面マーカーを組み込むことによって特定できる。典型的には、FACS分析は、細胞の表面における特定のタンパク質の発現(例えばPD-L2の発現、場合によってはPD-L1の発現も)を明らかにするのに用いられるため、特異的な抗体を用いると、抗原を提示する細胞集団における細胞表面バイオマーカーの発現(例えば樹状細胞の表面でのPD-L2の発現、場合によってはPD-L1の発現も)を検出することができる。表面にPD-L2タンパク質を発現し、場合によってはPD-L1も発現する具体的な抗原提示細胞のサブタイプ(例えばCD11c+樹状細胞)は、サイズと粒度の特徴によって確認すること、または追加の細胞表面マーカータンパク質で共染色して確認することができる。
【0302】
特別な実施態様では、多数のタンパク質を同時に検出および/または定量できるタンパク質捕獲アレイが使用される。例えばフィルタ膜上の低密度タンパク質アレイ(汎用タンパク質アレイシステム(Ge、2000年 Nucleic Acids Res.第28巻(2):e3ページ)など)により、標準的なELISA技術と走査電荷結合素子(CCD)検出器を利用してアレイ状にした抗原の画像を得ることが可能になる。複数の臨床分析物を同時に検出することが可能な免疫センサーアレイも開発されている。今や、タンパク質アレイを使用して、体液(健康な対象または罹患している対象の血清など)に含まれるタンパク質のほか、薬物治療の前と後の対象の体内にあるタンパク質の発現プロファイルを得ることが可能になっている。
【0303】
タンパク質捕獲アレイの例には、空間的な位置が指定された抗原結合分子を含むアレイ(一般に抗体アレイと呼ばれる)が含まれ、このアレイにより、プロテオームまたはサブプロテオームを規定する多数のタンパク質の広範な並行分析が容易になる。抗体アレイは、特異性と許容されるバックグラウンドに関して要求される特性を有することが示されており、いくつかの抗体アレイが市販されている(例えばBD Biosciences社、Clontech社、Bio-Rad社、Sigma社)。抗体アレイを作製するさまざまな方法が報告されている(例えばLopez他、2003年 J.Chromatogram.第B 787巻:19~27ページ;Cahill、2000年Trends in Biotechnology 第7巻:47~51ページ;アメリカ合衆国特許出願公開第2002/0055186号;アメリカ合衆国特許出願公開第2003/0003599号;PCT公開第WO03/062444号;PCT公開第WO03/077851号;PCT公開第WO02/59601号;PCT公開第WO02/39120号;PCT公開第WO01/79849;PCT公開WO99/39210を参照されたい)。このようなアレイの抗原結合分子は、1個の細胞または細胞集団が発現する複数のタンパク質の少なくとも一部を認識することができる。タンパク質の具体例に含まれるのは、増殖因子受容体、ホルモン受容体、神経伝達物質受容体、カテコールアミン受容体、アミノ酸誘導体受容体、サイトカイン受容体、細胞外マトリックス受容体、抗体、レクチン、サイトカイン、セルピン、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ras様GTPアーゼ、加水分解酵素、ステロイドホルモン受容体、転写因子、熱ショック転写因子、DNA結合タンパク質、ジンクフィンガータンパク質、ロイシンジッパータンパク質、ホメオドメインタンパク質、細胞内シグナル伝達調節因子、細胞内シグナル伝達エフェクタ、アポトーシス関連因子、DNA合成因子、DNA修復因子、DNA組み換え因子、細胞表面抗原である。
【0304】
空間的な位置が異なる個々のタンパク質捕獲剤は、典型的には、一般に平面状または曲線状の支持体表面に付着させる。一般的な物理的支持体に含まれるのは、スライドガラス、シリコン、マイクロウエル、ニトロセルロース膜、PVDF膜、磁性マイクロビーズ、それ以外のマイクロビーズである。
【0305】
懸濁液の中の粒子も、同定用にコード化されているのであれば、アレイの基礎として用いることができる。システムに含まれるのは、マイクロビーズ(例えばLuminex社、Bio-Rad社、Nanomics Biosystems社から入手可能)と半導体ナノ結晶(例えばQuantum Dots社から入手できるQDots(商標))のためのカラーコードと、ビーズ(Smartbeads社から入手できるUltraPlex(商標))とマルチメタルマイクロロッド(Surromed社から入手できるNanobarcodes(商標)粒子)のためのバーコードである。ビーズを半導体チップの表面で組み立てて平面アレイにすることもできる(例えばLEAPS technology社とBioArray Solutions社から入手可能)。粒子を用いる場合には、個々のタンパク質捕獲剤を典型的には個々の粒子に付着させて、アレイの空間的位置規定または空間的分離を実現する。すると粒子を別々に、だが並行して調べることを、区画化されたやり方で(例えば微量滴定プレートのウエルの中で、または別々の試験管の中で)行なうことが可能になる。
【0306】
操作中は、タンパク質サンプルを、場合によっては断片化することによってペプチド断片にして(例えばアメリカ合衆国特許出願公開第2002/0055186号を参照されたい)、タンパク質またはペプチドの結合に適した条件下でタンパク質捕獲アレイに送達し、アレイを洗浄することにより、サンプルのうちで結合しなかった成分、または非特異的な結合をした成分をアレイから除去する。次に、アレイの各形状に結合したタンパク質またはペプチドの存在または量を、適切な検出システムを利用して検出する。アレイの1つの形状に結合したタンパク質の量は、アレイの第2の形状に結合した第2のタンパク質の量と比較して決定することができる。特別な実施態様では、サンプル中の第2のタンパク質の量は既知であるか変化しないことがわかっている。
【0307】
特別な実施態様では、Th1免疫状態バイオマーカーは標的ポリペプチドであり、そのレベルが、その標的ポリペプチドと免疫相互作用する少なくとも1つの抗原結合分子を用いて測定される。これらの実施態様では、測定された標的ポリペプチドのレベルを参照ポリペプチドのレベルに対して規格化する。抗原結合分子は、固体支持体または半固体支持体の表面に固定化することが適切である。このタイプの具体例では、抗原結合分子は、抗原結合分子の空間的アレイの一部を形成する。いくつかの実施態様では、標的ポリペプチドに結合した抗原結合分子のレベルは、イムノアッセイによって(例えばELISAを用いて)測定される。
【0308】
サンプル内のバイオマーカー活性の不在または存在の証明は、特定のTh1免疫状態バイオマーカーを発現しているIEC相互作用細胞を発現していない細胞集団から識別するための別の手段である。
【0309】
8.4 PD-L2バイオマーカークラスター化の評価
本発明の発明者は、IEC相互作用細胞の細胞表面におけるPD-L2のクラスター化が、正常なTh1免疫応答または増大したTh1免疫応答の指標であることも明らかにした。したがっていくつかの実施態様では、IEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)の細胞表面におけるPD-L2クラスター化の分析からわかるように、Th1免疫状態バイオマーカーのバイオマーカー値はPD-L2のレベルまたは存在量を示している。
【0310】
抗原提示細胞(例えば樹状細胞)の細胞表面におけるPD-L2のクラスター化を検出するのに広く利用されているアッセイが多数存在している。例えばPD-L2リガンドおよび/またはPD-L2特異的抗体に標識し、その標識を検出してPD-L2のクラスター化を可視化することができる。このタイプのアッセイの一例では、PD-L2を含む樹状細胞または腫瘍細胞を、PD-L2特異的抗体と、そのPD-L2特異的抗体に結合する蛍光標識した二次抗体に接触させる。共焦点走査型レーザー顕微鏡を利用すると、二次抗体から放出された蛍光を検出してPD-L2の位置を同定することができる(Van Steensel他、1995年、J Cell Sci 第108巻:3003~3011ページ)。別の一例では、細胞の表面にPD-L2を含む細胞を、細胞表面のそのPD-L2の標識付きリガンドと接触させ、細胞表面のクラスター化を超解像顕微鏡法によって分析する。これについて記載されているのは、例えばKaufmann他(2011年、J Microsc. 第242巻(1):46~54ページ)、Huber他(2011年、PLoS One. 7巻(9):e44776ページ)、Wang他(2014年 Biochim Biophys Acta. 第1838巻(4):1191~1198ページ)、Sams他(2014年、J Biomed Opt. 第19巻(1):011021ページ)である。
【0311】
あるいは細胞表面のPD-L2のクラスター化は、インサイチュ近接アッセイによって分析される。これについて記載されているのは、例えばBellucci他(2014年、Methods Mol Biol. 第1174巻:397~405ページ)、Barros他(2014年、Breast Cancer Res Treat. 第144巻(2):273~285ページ)、Pacchiana他(2014年、Histochem Cell Biol.第142巻(5):593~600ページ)である。
【0312】
別の実施態様では、FRET顕微鏡法とFRAP顕微鏡法を利用してPD-L2のクラスター化を分析することができる。これについて記載されているのは、例えばWallrabe他(2003年、Biophys J.第85巻(1):559~571ページ)、Wallrabe他(2003年、J Biomed Opt.第8巻(3):339~346ページ)、de Heus他(2013年、Methods Cell Biol.第117巻:305~321ページ)である。
【0313】
PD-L2のクラスター化を分析する別の方法に含まれるのは、例えばPetersenら(1998年、Faraday Discuss.(111):289~305ページ)、Kozerら(2013年、Mol Biosyst.第9巻(7):1849~1863ページ)、Ciccotostoら(2013年、Biophys J.第104巻(5):1056~1064ページ)が記載している画像相関分光法;例えばGiugniら(1987年、J Cell Biol.第104巻(5):1291~1297ページ)と、Zhangら(2011年、PLoS One.第6巻(10):e26805ページ)が記載している電場分析;例えばPlowmanら(2005年、Proc Natl Acad Sci USA.第102巻(43):15500~15505ページ)と、D’Amicoら(2008年、Micron.第39巻(1):1~6ページ)が記載している電子顕微鏡法;例えばGoldら(2014.Nat Commun.第5巻:4129ページ)が記載している電子線低温トモグラフィ;例えばWangら(2012年、Nano Lett.第12巻(6):3231~3237ページ)と、Rongら(2012年、PLoS One.第7巻(3):e34175ページ)が記載している、プラズモンカップリング顕微鏡法(PCM)と組み合わせたナノ粒子(NP)免疫標識;例えばMiyagawa-Yamaguchiら(2014年、PLoS One.第9巻(3):e93054ページ)と、Kotaniら(2008年、Proc Natl Acad Sci USA.第105巻(21):7405~7409ページ)が記載している、酵素を媒介としたラジカル源の活性化(EMARS)分析;例えばLiら(2010年、Biophys J.第98巻(11):2554~2563ページ)が記載している量子ドット分析である。
【0314】
PD-L2に対する特異性を有する多数のリガンドが知られており、それらを用いてクラスター化を分析することができる。これらリガンドの多くは、本発明による治療薬としても有用である。例えばPD-L2ポリペプチドに結合する適切な任意の抗体を用いて本発明を実施することが考えられる。そのような抗体の非限定的な例は上に列挙してある。
【0315】
特別な実施態様では、抗体は免疫グロブリンのFc領域を含んでいる。その代わりに、またはそれに加えて、抗体は多価(例えば2価)抗体である。
【0316】
任意のPD-L2リガンドが、本発明のこれらの実施態様で用いるのに適している。そのようなリガンドのクラスに含まれるのは、タンパク質、有機小分子、炭水化物(多糖を含む)、ポリヌクレオチド、脂質などである。そのようなリガンドの代表例に含まれるのは、PD-1ポリペプチド、ガレクチン-9ポリペプチド、反発性ガイダンス分子b(RGMb)である。
【0317】
8.5 Th1免疫状態バイオマーカー核酸の評価
いくつかの実施態様では、バイオマーカーの発現は、IEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)の中のバイオマーカー核酸転写物のレベルを求めることによってモニタする。RNAは、多数の標準的な技術によって生物サンプルから抽出することができる(『Current Protocols in Molecular Biology』、第I巻~第III巻、Ausubel,R.M.編(1994年);Ausubel他、『Current Protocols in Molecular Biology』、John Wiley and Sons社、バルチモア、メリーランド州(1989年)を参照されたい)。RNAの単離が可能なグアニジウムに基づく細胞溶解法は、その後にそのRNAを細胞の他の巨大分子から分離するための塩化セシウム段階勾配と、それに続くRNAの沈殿と再懸濁を伴うため、時代遅れで一般に利用されることが少なくなったRNA単離法である(Glisin,Ve.他(1973年)Biochemistry第13巻:2633ページ)。あるいはRNAは、単一工程の方法で単離することができる(アメリカ合衆国特許第4,843,155号;Puissant, C.とHoudebine L.M.(1990年)Biotechniques第8巻:148~149ページ)。単一工程の方法には、イソチオシアン酸グアニジウムを用いてRNAを抽出することと、その後のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール抽出によって全RNAを細胞の他のタンパク質とDNAから分離しやすくすることが含まれる。上に記載した原理に基づく市販の単一工程用調製物、例えばTRIZOL試薬(Life Technologies社、ゲイザースバーグ、メリーランド州)を用いることができる。
【0318】
Th1免疫状態バイオマーカーのRNA/遺伝子の発現は、数多く存在する別の標準的な技術によってモニタすることができる。そうした技術の具体例に含まれるのは、ノーザンブロット分析、ドットブロット分析、プライマー伸長、RNアーゼ保護、RT-PCR、インサイチュハイブリダイゼーション、チップハイブリダイゼーションである。
【0319】
特定のTh1免疫状態バイオマーカーのRNA配列は、標識したプローブを、上記のようにして抽出されたブロットされたRNA調製物にハイブリダイズさせることによって容易に検出できる。ノーザンブロット分析では、分画したRNAを変性剤アガロースゲル電気泳動にかける。そうすることで、RNAが、サイズに基づく分離を妨げる可能性のある二次構造を取ることが阻止される。次にRNAをキャピラリートランスファーによってナイロン膜支持体またはニトロセルロース膜支持体に移し、バイオマーカー配列と相補的な標識オリゴヌクレオチドプローブで調べることができる(Alwine他(1977年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第74巻:5350~5354ページ;『Current Protocols in Molecular Biology』、第I巻~第III巻Ausubel,R.M.編(1994年);Ausubel他、『Current Protocols in Molecular Biology』、John Wiley and Sons社、ボルチモア、メリーランド州(1989年)。
【0320】
あるいは分画されていないRNAをナイロン膜またはニトロセルロース膜の表面に固定化し、バイオマーカーに特異的な発現をスロット/ドットブロット分析によって同様に調べることができる。RNAスロット/ドットブロットは、手作業で準備すること、またはマニホールド装置を利用して構成することができるが、後者では濃度測定走査によってハイブリダイゼーションシグナルの比較が容易になる(Chomczynski P.(1992年)Anal.Biochem.第201巻:134~139ページ)。
【0321】
プライマー伸長は、RNAの定量を実現できる別の手段である。逆転写酵素を用いてプライマーを伸長させるプライマー伸長は、特定のRNAの5’末端をマッピングする際にさらなる利点を提供する。この場合、プライマーは、バイオマーカーのmRNAの一部と相補的なオリゴヌクレオチド(または制限断片)である。プライマーは末端が標識されていて、鋳型バイオマーカーのmRNAにハイブリダイズさせることができる。プライマーは、ハイブリダイズすると、逆転写酵素を添加し、鋳型バイオマーカーのmRNAと相補的な一本鎖DNAを標識なしデオキシヌクレオチドに組み込むことによって伸長する。その後、DNAをシークエンシング用ゲルで分析する。伸長したプライマーの長さがmRNAの5’位をマッピングするのに役立ち、伸長した産物の収率は、サンプル中のRNAの存在量を反映している(Jones他(1985年)Cell第42巻:559~572ページ;Mierendorf R.C.とPfeffer,D.(1987年)Methods Enzymol.第152巻:563~566ページ)。
【0322】
RNアーゼ保護アッセイは、バイオマーカーのRNAをたとえ少量であっても定量する非常に高感度の手段を提供する。保護アッセイでは、バイオマーカーのRNAと相補的なリボヌクレオチドプローブの配列特異的ハイブリダイゼーションが大きな比活性で起こってサンプルRNAにハイブリダイズする。次いでハイブリダイゼーション反応物をリボヌクレアーゼで処理して結合していないプローブを除去すると、サンプルRNAの中にあって相同なバイオマーカー配列にハイブリダイズしているアニールされたプローブの完全な断片が残る。その後、断片をシークエンシング用ゲルで電気泳動によって分析すると、適切なサイズのプローブ断片が可視化される(Zinn K.他(1983年)Cell第34巻:865~879ページと、Melton S.A.他(1984年)Nucl.Acids Res.第12巻:7035~7056ページ)。
【0323】
RT-PCRは、バイオマーカーの発現を分析することのできる別の手段である。RT-PCRでは、逆転写酵素を用いてRNAサンプルからcDNAを調製するとき、バイオマーカーのmRNAと相補的なデオキシヌクレオチドプライマーを使用する。生成したcDNAは、デオキシヌクレオチドと、高温で機能するDNAポリメラーゼを添加することにより、ポリメラーゼ連鎖反応を通じて増幅させる。プライマーのアニーリング、cDNAの伸長を容易にするデオキシヌクレオチドの組み込み、その後の鎖変性という反復サイクルを通じて望む配列の増幅が起こり、適切なサイズの断片が得られる。その断片は、アガロースゲル電気泳動によって検出することができる。逆転写、ハイブリダイゼーション、増幅の最適な条件は、用いるプライマーと標的の配列組成および長さと、実施者が選択する実験方法に応じて変化するであろう。適切なプライマー配列とハイブリダイゼーション条件を選択するのにさまざまなガイドラインを利用することができる(例えばSambrook他、1989年、『Molecular Cloning,A Laboratory Manual』(第1巻~第3巻)Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州;Ausubel他、1989年、『Current Protocols in Molecular Biology』、Green Publishing Associates and Wiley Interscience社、ニューヨークを参照されたい)。
【0324】
インサイチュハイブリダイゼーションは、細胞/組織特異的バイオマーカーのRNA発現の検出と位置特定に利用することができる。標識したアンチセンスRNAプローブを、顕微鏡スライドガラスの上に固定化した個々の細胞または処理した組織切片の中のmRNAにハイブリダイズさせる(『In Situ Hybridization:Medical Applications』(GR CoultonとJ.de Belleroche編)、Kluwer Academic Publishers社、ボストン(1992年);『In Situ Hybridization:In Neurobiology;Advances in Methodology』(J.H.Eberwine、K.L.Valentino、J.D.Barchas編)、Oxford University Press Inc.社、イギリス国(1994年);『In Situ Hybridization:A Practical Approach』(D.G.Wilkinson編)、Oxford University Press Inc.社、イギリス国(1992年))。標識したDNAプローブを可視化するために数多くの非同位体システムが開発されており、そのようなシステムに含まれるのは、a)蛍光に基づく直接検出法、b)ジゴキシゲニンで標識したDNAプローブとビオチンで標識したDNAプローブの使用と蛍光検出法の組み合わせ、c)ジゴキシゲニンで標識したDNAプローブとビオチンで標識したDNAプローブの使用と抗体-酵素検出法の組み合わせである。蛍光標識したアンチセンスRNAプローブを細胞RNAにハイブリダイズさせる場合には、ハイブリダイズしたプローブを蛍光顕微鏡で直接見ることができる。核酸プローブに蛍光色素を直接標識すると、多層検出手続き(例えば抗体に基づくシステム)の必要性がなくなるため、迅速な処理が可能になるとともに、非特異的なバックグラウンドシグナルも減少するため、バイオマーカー遺伝子の発現を同定する多用途かつ高感度の手段が提供される。
【0325】
チップハイブリダイゼーションでは、マイクロアレイとして設計された固体基板(ナイロンフィルタ、スライドガラス、シリコンチップなどの粒子状固相で構成することができる(Schena他(1995年)Science 第270巻:467~470ページ))に付着させたバイオマーカー特異的オリゴヌクレオチドを用いる。マイクロアレイは本分野で知られており、バイオマーカー遺伝子の発現を検出するため配列が遺伝子産物(cDNAなど)に対応しているプローブを既知の位置に特異的にハイブリダイズまたは結合させることのできる表面からなる。
【0326】
ハイブリダイゼーション複合体の定量は本分野において周知であり、いくつかのアプローチのうちの任意の1つによって実現することができる。これらのアプローチは、一般に、標識またはマーカー(例えば本分野で標準的に用いられている任意の放射性、蛍光性、生物性、酵素性のタグまたは標識)の検出に基づいている。標識は、オリゴヌクレオチドプローブ、または生物サンプルに由来するRNAに適用することができる。
【0327】
一般に、mRNAの定量は、mRNAが正確に求まるようにするため、較正曲線の決定とともに実施するのが適切である。さらに、生物サンプルに由来する転写産物の定量は、調べる転写産物の発現パターンが正常であることを特徴とする正常なサンプルとの比較によってなされることが好ましい。
【0328】
8.6 バイオマーカー値の導出
バイオマーカー値として、測定されたバイオマーカー値(対象について直接測定されたバイオマーカーの値)、または「導出された」バイオマーカー値(例えば測定された1つ以上のバイオマーカー値に関数を適用することにより、測定されたその1つ以上のバイオマーカー値から導出された値)が可能である。本明細書では、関数が適用されたバイオマーカーを「導出されたバイオマーカー」と呼ぶ。
【0329】
バイオマーカー値は、本分野でよく知られている数多い方法のうちの任意の1つの方法で求めることができる。例えばバイオマーカー値を求める方法の包括的な説明は、国際特許出願公開WO2015/117204に見いだすことができる(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)。一例では、バイオマーカー値を求める方法は、例えば対象に対して、または対象から得られたサンプルに対して試験を実施してバイオマーカー値を測定することを含むことができる。
【0330】
しかしより典型的には、バイオマーカー値を求める工程は、以前に測定または導出されたバイオマーカー値を電子的処理装置に受信または取得させることを含んでいる。これには、例えばデータストア(遠隔データベースなど)からバイオマーカー値を検索すること、手作業で入力されたバイオマーカー値を取得すること、入力装置を使用することなどが含まれる可能性がある。複数のバイオマーカー値の組み合わせを使用して、Th1免疫状態の少なくとも一部を示す指標を決定することが適切である。この方法が電子的処理装置を用いて実行されるのであれば、指標の値は、表示されるか、ユーザに提供される。
【0331】
いくつかの実施態様では、バイオマーカー値が例えば加減乗除によって組み合わされて指標値が求まる。この工程は、複数のバイオマーカー値を組み合わせて1つの指標値にするために実施される。するとより有用かつ直接的な機構が提供されるため、その指標を解釈すること、したがって対象のTh1免疫状態を判断するのに用いることができる。
【0332】
この文脈では、上記の方法で使用されるバイオマーカーが、Th1免疫状態に関する1つのバイオマーカープロファイルを規定できることが理解されよう。このバイオマーカープロファイルは、含まれているバイオマーカーの数は最少(例えば少なくとも1つのバイオマーカー)でありながら、十分な性能を維持しているため、臨床的に適切な判断をする際にこのバイオマーカープロファイルを用いることができる。用いるバイオマーカーの数をできるだけ少なくすることで、診断または予後判定のための検査の実施に関係するコストが最少になり、ポリペプチドバイオマーカーの場合には、比較的簡単な技術(蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)や免疫組織化学など)を利用して検査を実施することができるため、臨床環境で試験を迅速に実施することが可能になる。この点に関し、本明細書に記載した方法によって提供される指標として、指標値のグラフィック表現または英数字表現が可能である。しかしその代わりに、指標として、指標値をあらかじめ決めた閾値または範囲と比較した結果、またはTh1免疫状態の指標が可能であると考えられる。
【0333】
さらに、単一の指標値を生成させることにより、検査結果を臨床医または他の開業医が容易に解釈できるようになるため、臨床環境で検査を信頼性ある診断に用いることができる。
【0334】
ほんの一例だが、指標を求める方法は、少なくとも1つのバイオマーカー値を求めることを含んでいることが適切である。そのバイオマーカー値は、対象の少なくとも1つのTh1免疫状態バイオマーカーについて測定または導出された値であり、その対象から採取されたサンプルに含まれるTh1免疫状態バイオマーカーの濃度または存在量を少なくとも部分的に示していて、その少なくとも1つのTh1免疫状態バイオマーカーは、IEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)のPD-L2を含んでいる。Th1免疫状態バイオマーカーのプロファイルは、Th1免疫状態バイオマーカーとして、IEC相互作用細胞(APC(例えば樹状細胞)や腫瘍細胞など)のPD-L1をさらに含んでいることが適切である。バイオマーカー値は、典型的には、対象のTh1免疫状態を判断する際に用いる指標を求めるのに使用される。いくつかの実施態様では、指標は、一対のTh1免疫状態バイオマーカー(例えばPD-L2とPD-L1)の濃度の比を示す。したがってバイオマーカー値がTh1免疫状態バイオマーカーの濃度を示している場合には、導出されたバイオマーカー値は、典型的には(必ずしもそうではない)バイオマーカー値の比に基づくことになろう。
【0335】
次に、導出されたバイオマーカー値を指標値として用いるか、追加の処理(例えば導出されたバイオマーカー値を参照値などと比較する)を実行することにより、指標を求める。この比較操作は本分野で一般に知られており、以下により詳しく説明する。
【0336】
導出されたバイオマーカー値は、付加モデル、線形モデル、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークモデル、ランダムフォレストモデル、回帰モデル、遺伝的アルゴリズム、アニーリングアルゴリズム、加重合計、最近傍モデル、確率モデルなどの組み合わせ関数を使用して組み合わせることができると考えられる。いくつかの実施態様では、バイオマーカー値は、PD-L2とPD-L1について測定または導出され、指標は、それらバイオマーカー値を組み合わせることによって求まる。いくつかの実施態様では、指標を参照指標と比較し、その比較の結果に従ってTh1免疫状態を判断する。参照指標は、参照集団に含まれる多数の個体について求めた指標から導出することができる。参照集団には、典型的には、異なる特徴を有する個体(性別および/または人種の異なる複数の個体など)が含まれる。群の違いは特徴の違いに基づいて規定され、対象の指標は、特徴が似た個体から導出された参照指標と比較される。参照集団には、健康な複数の個体、Th1免疫状態が増強されていることがわかっている複数の個体、Th1免疫状態が低下しているか不十分であることがわかっている複数の個体、がん(転移性のがんが適切である)の臨床徴候を示す複数の個体、病原性感染症(例えばマラリア)の臨床徴候を示す複数の個体も含めることができる。
【0337】
特別な実施態様では、指標を求める本発明の方法は、少なくとも1つの電子的処理装置(適切にプログラムされたコンピュータシステムなど)を用いて実施される。その場合、電子的処理装置は、典型的には、少なくとも1つの測定されたバイオマーカー値を、測定装置または他の定量装置から受信することによって、またはデータベースなどから検索することによって取得する。その後、処理装置は、適切な任意の手段によって(例えば第1のTh1免疫状態バイオマーカーと第2のTh1免疫状態バイオマーカーの濃度の比を示す値を計算することによって)指標を求める。
【0338】
その後、処理装置は、例えば指標の符号表示または英数字表示の生成、指標を1つ以上の参照指標を比較した結果のグラフィック表示の生成、対象のTh1免疫状態の英数字表示の生成のいずれかにより、標識の表現を生成させることができる。
【0339】
指標を求める本発明の方法は、典型的には、Th1関連疾患(例えば病原性感染症またはがん)の少なくとも1つの臨床徴候を有することが典型である対象から、1つ以上のTh1免疫状態バイオマーカー(例えばPD-L2と、場合によってはPD-L1も)を含むサンプルを取得し、サンプル中のTh1免疫状態バイオマーカーのうちの少なくとも1つ(例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、またはそれ以上の個数)を定量するか、それ以外のやり方で評価し、バイオマーカー値を求めることを含んでいる。これは、適切な任意の技術を利用して実現することができ、Th1免疫状態バイオマーカーの性質に依存するであろう。測定または誘導された個々のTh1免疫状態バイオマーカー値は、それぞれのTh1免疫状態バイオマーカーのレベル、存在量、量のいずれかに対応するか、そのレベルまたは量に適用する関数に対応することが適切である。例えば複数のTh1免疫状態バイオマーカーを用いて指標を求める本発明の方法のいくつかの実施態様で指標がポリペプチドの濃度の比に基づいている場合には、この方法は、典型的には、本分野で知られている任意の手段(免疫蛍光が含まれる)によって、または機能的アッセイによってポリペプチドを定量することを含むと考えられる。
【0340】
いくつかの実施態様では、対象のTh1免疫状態は、対象の体内の、または得られたサンプル中のTh1免疫状態バイオマーカーについて測定または導出された値を個別に示す1つ以上のTh1免疫状態バイオマーカー値を求めることによって明確になる。本明細書では、これらバイオマーカーを「サンプルTh1免疫状態バイオマーカー」と呼ぶ。本発明によれば、サンプルTh1免疫状態バイオマーカーは、参照Th1免疫状態バイオマーカー(本明細書では、「対応するTh1免疫状態バイオマーカー」とも呼ぶ)に対応する。「対応するTh1免疫状態バイオマーカー」は、例えば配列ID番号1(PD-L2)と配列ID番号56(PD-L1)に記載した参照Th1免疫状態バイオマーカーと構造および/または機能が似たTh1免疫状態バイオマーカーを意味する。代表的な対応するTh1免疫状態バイオマーカーに含まれるのは、参照Th1免疫応答バイオマーカー遺伝子のアレル変異体(同じ遺伝子座)、相同体(異なる遺伝子座)、オルソログ(異なる生物)の発現産物である。参照Th1免疫状態バイオマーカー遺伝子とコードされたTh1免疫状態バイオマーカーポリペプチドの核酸変異体は、ヌクレオチドの置換、および/または欠失、および/または反転、および/または挿入を含むことができる。変異は、コード領域と非コード領域の一方または両方に起こる可能性がある。変異により、(コードされた産物と比べたとき)保存的アミノ酸置換と非保存的アミノ酸置換の両方が起こる可能性がある。ヌクレオチド配列については、保存的変異体は、遺伝暗号の縮重が理由で、参照Th1免疫状態ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする配列を含んでいる。
【0341】
対応するTh1免疫状態バイオマーカーには、参照Th1免疫状態バイオマーカーポリペプチドのアミノ酸配列との配列類似性または配列一致を実質的に示すアミノ酸配列が含まれる。一般に、参照アミノ酸配列に対応するアミノ酸配列は、配列ID番号1~9のいずれか1つから選択された参照アミノ酸配列と少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%いずれかの配列類似性または配列一致を示すことになる。
【0342】
いくつかの実施態様では、配列間の配列類似性または配列一致の計算は以下のようになされる。
【0343】
2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の一致率を求めるとき、最適な比較を目的として配列をアラインメントさせる(例えば最適なアラインメントのため、第1と第2のアミノ酸配列または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することと、比較を目的として、相同でない配列を無視することができる)。いくつかの実施態様では、比較を目的としてアラインメントさせた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%であり、通常は少なくとも40%であり、より通常なのは少なくとも50%、60%であり、それ以上に通常なのは少なくとも70%、80%、90%、100%である。その後、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列の中の位置が、第2の配列の中の対応する位置にある同じアミノ酸残基またはヌクレオチドで占められている場合には、それら分子はその位置が一致している。アミノ酸配列の比較については、第1の配列の中の位置が、第2の配列の中の対応する位置にある同じか似たアミノ酸残基によって占められている(すなわち保存的置換)場合には、それら分子はその位置が類似している。
【0344】
2つの配列間の一致率は、2つの配列のアライメントを最適にするため導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さを考慮した上で、個々の位置でそれらの配列によって共有される同じアミノ酸残基の数の関数である。それとは異なり、2つの配列間の類似率は、2つの配列のアライメントを最適にするため導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さを考慮した上で、個々の位置でそれらの配列によって共有される同じアミノ酸残基と似たアミノ酸残基の数の関数である。
【0345】
配列を比較することと、配列間の一致率または類似率を求めることは、数学的アルゴリズムを利用して実現できる。いくつかの実施態様では、アミノ酸配列間の一致率または類似率は、(http://www.gcg.comで入手できる)GCGソフトウェアパッケージの中のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanとWunsch(1970年、J.Mol.Biol.第48巻:444~453ページ)のアルゴリズムでBlossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスを用い、ギャップの重みを16、14、12、10、8、6、4のいずれかにし、長さの重みを1、2、3、4、5、6のいずれかにして求められる。特別な実施態様では、ヌクレオチド配列間の一致率は、NWSgapdna.CMPを使用して、(http://www.gcg.comで入手できる)GCGソフトウェアパッケージの中のGAPプログラムでNWSgapdna.CMPマトリックスを用い、ギャップの重みを40、50、60、70、80のいずれかにし、長さの重みを1、2、3、4、5、6のいずれかにして求められる。パラメータの非限定的なセット(と、特に断わらない限り使用すべきセット)の一例に含まれるのは、ギャップペナルティが12、ギャップ拡張ペナルティが4、およびフレームシフトギャップペナルティが5のBlossum 62スコアリングマトリックスである。
【0346】
いくつかの実施態様では、アミノ酸配列間またはヌクレオチド配列間の一致率または類似率は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.MeyersとW.Miller(1989年、Cabios、第4巻:11~17ページ)のアルゴリズムでPAM120重み残基表を用い、ギャップ長ペナルティを12、ギャップペナルティを4にして求めることができる。
【0347】
本明細書に記載した核酸配列とタンパク質配列は、例えばファミリーの他のメンバーや関連する配列を同定することを目的として公開データベースで検索するための「質問配列」として用いることができる。そのような検索は、Altschulら(1990年、J Mol Biol.、第215巻:403~410ページ)のNBLASTプログラムとXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。BLASTヌクレオチド検索、NBLASTプログラムでスコア=100、ワード長=12にして実施すると、本発明の53010個の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索をXBLASTプログラムでスコア=50、ワード長=3にして実施すると、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的としたギャップ付きアラインメントを得るには、Altschulら(1997年、Nucleic Acids Res、第25巻:3389~3402ページ)が記載しているGapped BLASTを用いることができる。BLASTプログラムとGapped BLASTプログラムを利用するとき、そのそれぞれのプログラム(例えばXBLASTとNBLAST)のデフォルトパラメータを用いることができる。
【0348】
対応するTh1免疫状態バイオマーカーのポリヌクレオチドは、下記のストリンジェンシー条件下で参照Th1免疫状態バイオマーカーのポリヌクレオチドまたはその相補体にハイブリダイズする核酸配列も含んでいる。本明細書では、「低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、高ストリンジェンシー、超高ストリンジェンシーいずれかの条件下でハイブリダイズする」という表現は、ハイブリダイゼーションと洗浄のための条件を記述している。本明細書では、「ハイブリダイゼーション」は、相補的なヌクレオチド配列がペアになってDNA-DNAハイブリッドまたはDNA-RNAハイブリッドを生成させることを意味する。相補的な塩基配列は、塩基対合規則によって関連づけられた配列である。DNAでは、AはTと対合し、CはGと対合する。RNAでは、UはAと対合し、CはGと対合する。この点に関し、本明細書では、「マッチ」と「ミスマッチ」という用語は、相補的な核酸鎖の中でペアになるヌクレオチドがハイブリダイズする能力を意味する。マッチしたヌクレオチドは効率的にハイブリダイズする。その例は、上記の古典的なA-T塩基対やG-C塩基対である。ミスマッチは、効率的にハイブリダイズしない、ヌクレオチドの別の組み合わせである。
【0349】
ハイブリダイゼーション反応を実施するための手引きは、Ausubel他(1998、前出文献)の6.3.1~6.3.6節に見いだすことができる。この参考文献には水性法と非水性法が記載されており、どちらも利用できる。本明細書で言及する低ストリンジェンシー条件に含まれるのは、42℃でのハイブリダイゼーションのための少なくとも約1%v/v~少なくとも約15%v/vのホルムアミド、および少なくとも約1M~少なくとも約2Mの塩と、42℃で洗浄するための少なくとも約1M~少なくとも約2Mの塩である。低ストリンジェンシー条件には、65℃でのハイブリダイゼーションのための1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDSと、室温で洗浄するための(i)2×SSC、0.1%SDSまたは(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5%SDSも含めることができる。低ストリンジェンシー条件の一実施態様には、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)の中でハイブリダイズさせた後、少なくとも50℃の0.2×SSC、0.1%SDSの中で2回洗浄することが含まれる(低ストリンジェンシー条件では洗浄温度を55℃まで上昇させることができる)。中ストリンジェンシー条件に含まれるのは、42℃でのハイブリダイゼーションのための少なくとも約16%v/v~少なくとも約30%v/vのホルムアミド、および少なくとも約0.5M~少なくとも約0.9Mの塩と、55℃で洗浄するための0.1M~少なくとも約0.2Mの塩である。中ストリンジェンシー条件には、65℃でのハイブリダイゼーションのための1%ウシ血清アルブミン(BSA)、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDSと、60~65℃で洗浄するための(i)2×SSC、0.1%SDSまたは(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、5%SDSも含めることができる。中ストリンジェンシー条件の一実施態様には、約45℃の6×SSCの中でハイブリダイズさせた後、60℃の0.2×SSC、0.1%SDSの中で1回以上洗浄することが含まれる。高ストリンジェンシー条件に含まれるのは、42℃でのハイブリダイゼーションのための少なくとも約31%v/v~少なくとも約50%v/vのホルムアミド、および約0.01M~約0.15Mの塩と、55℃での洗浄のための約0.01M~約0.02Mの塩である。高ストリンジェンシー条件には、65℃でのハイブリダイゼーションのための1%BSA、1mM EDTA、0.5M NaHPO4(pH7.2)、7%SDSと、65℃を超える温度で洗浄するための(i)0.2×SSC、0.1%SDSまたは(ii)0.5%BSA、1mM EDTA、40mM NaHPO4(pH7.2)、1%SDSを含めることもできる。高ストリンジェンシー条件の一実施態様には、約45℃の6×SSCの中でハイブリダイズさせた後、65℃の0.2×SSC、0.1%SDSの中で1回以上洗浄することが含まれる。
【0350】
いくつかの実施態様では、対応するTh1免疫状態バイオマーカーのポリヌクレオチドは、開示されているヌクレオチド配列(例えば配列ID番号3または配列ID番号4)に超高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドである。超高ストリンジェンシー条件の一実施態様には、65℃の0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDSの中でハイブリダイズさせた後、65℃の0.2×SSC、1%SDSで1回以上洗浄することが含まれる。
【0351】
他のストリンジェンシー条件は本分野で周知であるため、当業者は、さまざまな因子を操作してハイブリダイゼーションの特異性を最適化できることを認識しているであろう。最終洗浄のストリンジェンシーを最適化することで、大きな割合のハイブリダイゼーションを確実にすることができる。詳しい例については、Ausubelらの上記文献の2.10.1~2.10.16節と、Sambrookら(1989、上記文献)の1.101~1.104節を参照されたい。
【0352】
9.キット
本発明のTh1免疫状態バイオマーカーの検出と定量に必要とされる不可欠なすべての試薬をキットの中にまとめることができる。いくつかの実施態様では、キットは、少なくとも1つのTh1免疫状態バイオマーカーの定量を可能にする試薬を含んでいる。いくつかの実施形態では、キットは、(i)第1のTh1免疫状態バイオマーカーの定量(例えば存在量またはレベルを求めること)を可能にする試薬と、(ii)第2のTh1免疫状態バイオマーカーの定量(例えば存在量またはレベルを求めること)を可能にする試薬を含んでいる。いくつかの実施態様では、キットはさらに、(iii)第3のTh1免疫状態バイオマーカーの定量(例えば存在量またはレベルを求めること)を可能にする任意の試薬と、(iv)第4のTh1免疫状態バイオマーカーの定量(例えば存在量またはレベルを求めること)を可能にする任意の試薬を含んでいる。Th1免疫状態バイオマーカーは、PD-L2とPD-L1の一方または両方であることが適切である。
【0353】
本発明の文脈では、「キット」は、本発明の方法を実施するのに必要なさまざまな試薬を含んでいて、輸送と保管が可能なように包装された製品を意味すると理解される。キットの構成要素を包装するのに適した材料に含まれるのは、結晶、プラスチック(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなど)、瓶、バイアル、紙、封筒などである。それに加え、本発明のキットは、キットに含まれるさまざまな成分を同時に、または順番に、または別々に使用するための指示を含むことができる。指示は、印刷物の形態、または指示を記憶できて対象が読めるようにされた電子的支持体の形態(電子的記憶媒体(磁気ディスク、テープなど)、光学媒体(CD-ROM、DVD)など)にすることができる。その代わりに、またはそれに加えて、媒体には、指示を提供するインターネットアドレスを含めることができる。
【0354】
Th1免疫状態バイオマーカーの定量を可能にする試薬は、Th1免疫状態バイオマーカーの定量を可能にする化合物または材料か、または化合物または材料のセットを含んでいる。特別な実施態様では、その化合物または材料、その化合物または材料のセットにより、ポリペプチド(すなわちPD-L2ポリペプチド)のレベルまたは量を求めることができる。
【0355】
キットは、場合によっては、標識を検出するための適切な試薬、陽性対照と陰性対照、洗浄溶液、ブロッティング膜、マイクロタイタープレート、希釈緩衝液なども含むことができる。例えばタンパク質に基づく検出キットは、(i)Th1免疫状態バイオマーカーポリペプチド(例えばPD-L2ポリヌクレオチドと、場合によってはPD-L1ポリヌクレオチドであり、後者は陽性対照として使用できる)と、(ii)Th1免疫状態バイオマーカーポリペプチドに特異的に結合する抗体を含むことができる。あるいは核酸に基づく検出キットは、(i)Th1免疫状態バイオマーカーポリヌクレオチド(例えばPD-L2ポリヌクレオチドと、場合によってはPD-L1ポリヌクレオチドであり、後者は陽性対照として使用できる)と、(ii)Th1免疫状態バイオマーカーポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするプライマーまたはプローブを含むことができる。増幅に必要な反応混合物を提供するため、核酸の増幅に適した酵素(さまざまなポリメラーゼ(利用する核酸増幅技術に応じ、逆転写酵素、Taq、Sequenase(商標)、DNAリガーゼなど)が含まれる)、デオキシヌクレオチド、緩衝液も含めることができる。そのようなキットは、一般に、個々の試薬と酵素のための別々の容器のほか、それぞれのプライマーまたはプローブのための別々の容器も適切なやり方で含むことになろう。
【0356】
特別な実施態様では、キットはさらに、上に大まかに説明するとともに本明細書の別の箇所に記載した免疫調節剤を含んでいる。
【0357】
キットは、本明細書に記載したアッセイのうちの1つを実施するためのさまざまな装置(例えば1つ以上)と試薬(例えば1つ以上);および/またはキットを用いてTh1免疫状態バイオマーカー遺伝子の発現を定量するための印刷された指示書も特徴とすることができる。
【0358】
検出可能な標識と場合によっては会合させることのできる本明細書に記載の試薬は、実施例または下記のアッセイ(例えば本明細書に記載したRT-PCR技術またはQ PCR技術)で用いるのに適したマイクロ流体力学カードの形態、チップまたはチェンバーの形態、マイクロアレイまたはキットの形態で提示することができる。
【0359】
10.診断法
指標は、対象が望ましくないTh1免疫応答状態に関連した疾患を有する可能性を判定するのにも使用できる。この場合、判定は、通常、その指標を、疾患を示す少なくとも1つの参照指標と比較し、その比較の結果に従って確率を求めることによって実現されると考えられる。本発明による診断と処置が有用なTh1関連疾患の非限定的な例に含まれるのは、例えば本明細書に記載した感染症(特にウイルス感染症)と増殖性疾患(例えば転移性のがん)である。
【0360】
このタイプの実施態様では、その少なくとも1つの参照指標は、参照母集団について求めた指標の分布である。例えば対象が病原性感染症の臨床症状(例えば肝炎ウイルス、真菌感染症(アスペルギルスなど)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、マラリア、腸チフス、コレラ、ヘルペスウイルス、クラミジア、HPVによる症状)を呈する場合には、同じ疾患または似た疾患を患っている個体からなる参照群を用いて対象の指標と比較する。
【0361】
いくつかの実施態様では、対象が疾患を有する可能性の判定は、個体からなる2つ以上の参照群を用いてなされる。例えば第1の参照群は、興味ある疾患を患っていることが以前に診断されてわかっている個体からなり、第2の参照群は、健康な状態であると診断された個体からなる。
【0362】
別の実施態様では、Th1関連疾患は、増殖性または過剰増殖性の状態であり、その中には、あらゆる悪性または前悪性の状態や、身体のあらゆる細胞または組織の増殖能力の乱れや異常、または挙動の機能その他の乱れや異常から生じたり、由来したり、関連していたりするあらゆる疾患が含まれる。したがって本明細書に記載した方法を利用してがんを診断できると考えられる(診断には、がんが転移性のがんであるかどうかの可能性を評価することが含まれる)。
【0363】
本発明を容易に理解して実施できるようにするため、特定の好ましい実施態様を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例0364】
実施例1:DCのPD-L2発現は、ヒトにおけるマラリア重症度と逆相関する
PD-L1とPD-L2がマラリア免疫に影響を及ぼしたかどうかを判断するため、マラリアに罹患したことのない7人の健康なボランティアに、熱帯熱マラリア原虫に感染した赤血球(pRBC)を1800個感染させ、そのチャレンジの前と7日後に血液を調べた。本発明の発明者は、DCが発病に重要な役割を果たしていること(WykesとGood、Nat Rev Microbial第6巻、864~867ページ、2008年)と、DC表面のPD-L1とPD-L2がT細胞による免疫応答を下方調節できること(Brown他、J.Immunol.第170巻:1257~1266ページ、2003年;Freeman他、J.Exp.Med.第192巻:1027~1034ページ、2000年)を考慮し、DC(CD11cの発現)を調べた。7人のボランティア全員で、感染前に90%のDCがPD-L1を発現しており、感染してから7日後までにこのリガンドを発現するDCの割合が有意に変化することはなかった(
図1A)。それとは対照的に、感染前にDCの80%がPD-L2も発現していたが、7人のうちの5人で、感染後7日目にPD-L2
+ DCの割合が有意に減少していた(17~57%)(
図1B)。特に、寄生虫血症のレベルと、感染後7日目のDC表面でのPD-L1発現率に対するPD-L2発現率の比の間に、有意な逆相関が観察された(
図1C)。まとめると、PD-L2の役割は免疫阻害剤であるという一般的な認識とは異なり、熱帯熱マラリア原虫に感染した後に寄生虫血症になることがより少なかった人たちのほうにPD-L2を発現しているDCがより多いという関連性があることが観察された。
材料と方法
ヒトでの研究
【0365】
臨床試験を実施する方法(McCarthy他、PLoS One 第6巻:e21914ページ、2011年)(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT02389348)と、寄生虫血症を定量するのに利用したPCR法(Rockett他、Malar.J.第10巻:48ページ、2011年)は、他の文献に詳しく記載されている。各参加者からインフォームド・コンセントを取った。実験的な抗マラリア治療薬OZ439とDSM265の有効性を評価する研究に参加した19~55歳(中央値24歳{四分位範囲、21~37歳})の8人の健康なボランティア(男性n=4、女性n=3)のうちの7人は、この臨床試験に挿入されているこのサブスタディに参加することに別々に同意した。この研究は、QIMR Berghofer Institute for Medical Research(QIMR)のHuman Research Ethics Committeeによって承認された。ボランティアは、2.0mlの生理食塩水の中に入れた約1800個の熱帯熱マラリア原虫pRBCを静脈内に注射された。処置を開始するよう指定された日である7日目に参加者を研究ユニットに収容し、研究のため採血した後に治験用抗マラリア薬を用いた処置を施した。
【0366】
実施例2:DC表面のPD-L2発現は、マウスにおけるマラリア重症度と逆相関する
本発明の発明者は、これらのデータの生物学における重要性を理解するため、次にマラリアに関する4つのマウスモデルを調べた。マウスに感染するマラリア原虫で、生理と病原性が異なる別々の4つの種/株を選択する。野生型マウスに非致死性のP.yoelii 17XNLまたはP.chabaudiを感染させ、1~3日ごとに血液を検査して寄生虫を探すと、感染は異なる速度で進行したが、両群とも約30日以内に感染が消えた(
図2A)。それとは異なり、P.yoelii YMまたはP.berghei ANKAを感染させた野生型マウスは、重症だが異なる疾患経過を示した(
図2B;表3と表4に従ってモニタした)。P.berghei寄生虫血症の割合は、P.yoelii YM感染症の割合と比べて少ない。なぜならP.bergheiに感染したRBCは、血液から離れて深部組織(脳を含む)に入ることで、致命的な脳疾患へとつながるからである。しかしP.yoeliiYMに感染したマウスとP.bergheiに感染したマウスはすべて、臨床スコアが4以上だと10日以内に安楽死させねばならなかった(表3と表4)。
【0367】
表面におけるPD-L1とPD-L2の発現を、脾臓からのDCで調べた。脾臓は、寄生虫の殺害と寄生虫特異的免疫応答の調節の主要な部位であることがマウスで示されている(Yadava他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,第93巻:4595~4599ページ、1996年)。天然マウスの脾臓の中にあるCD11c
+DCの約70%がPD-L1を発現した。この割合はP.berghei感染マウスとP.chabaudi感染マウスで増加したが、致死性または非致死性のP.yoeliiに感染しているマウスでは増加しなかった(
図3A)。PD-L1を発現しているDCは、4種類すべてのマラリアに感染した後にPD-L1の表面発現レベル(MFI)が天然マウスからのDCと比べて増加し、非致死性P.chabaudi感染マウスが最大の増加を示した(
図3Bと
図4A~
図4F)。それとは異なり、天然マウスからの脾臓DCの5%未満がPD-L2を発現した。これは、主にPD-L2を発現したヒト血液DCとは異なっていた。それは、出所が血液であるか脾臓であるかの違いを反映している可能性が非常に大きい。さらに、PD-L2
+ DCの割合はどのマラリアに感染している間も増加し、致死性マラリアよりも非致死性マラリアに感染したマウスのほうで有意に高い割合になることが見いだされた(
図3Cと
図4A~
図4E)。PD-L2を発現しているDCに関するPD-L2染色のMFIも、P.berghei寄生虫以外のすべての寄生虫に感染したマウスにおいて、天然マウスからのDCと比べて増加した(
図3Dと
図4A~
図4F)。
【0368】
最後に、致死性と非致死性のP.yoeliiからのCD11c
+ DCは、PD-L1 mRNAとPD-L2 mRNAのレベルが同様に増加した(
図4G)。これは、
図3Cに示したこれら寄生虫のPD-L2の間の差が、転写後調節またはタンパク質局在に依存することを示唆している。注目すべきことに、致死性と非致死性のP.yoeliiに感染したマウスからのDCは、表面における発現とmRNAがPD-L1とPD-L2で同じであったが、PD-L2
+ DCの割合は異なり、PD-L1
+DCの割合は異なっていなかった。
【0369】
まとめると、全種類に感染させることから得られた結果は、PD-L2+ DCの割合がより大きいことが、疾患の好ましい転帰と相関するという仮説と一致する。
【0370】
材料と方法
マウスでの研究
特定の病原体に感染していない雌の8~12週齢のC57BL/6J(野生型)マウスをAnimal Resources Centre(パース、オーストラリア国)から入手した。マウスをQIMR動物研究施設に収容し、QIMR Animal Ethics Committeeがすべての手続きを承認してモニタした。「科学を目的とした動物の世話と利用のためのオーストラリアの行動規範」(Australian National Health & Medical Research Council)に従い、QIMR動物倫理承認番号A0209-622Mのもとで作業を実施した。C57BL/6バックグラウンドのPD-1ノックアウト(ko)(Pdcd1-/-)マウスは、親切にも本庶佑博士からRiken BRCを通じて提供された(Nishimura他、Science 第291巻:319~322ページ、2001年)。これらの研究で使用したC57BL/6バックグラウンドのPD-L2 koマウス(Liang他、Eur.J.Immunol.第36巻:58~64ページ、2006年)、PD-L1 koマウス(Liang他、Eur.J.Immunol.第36巻:58~64ページ、2006年)、PD-1 koマウスは、PCR試験および/またはフローサイトメトリーによって遺伝子が欠失していることが確認された。サンプルサイズは、同じ寄生虫を用いて同様のアッセイを実施した以前の研究に基づいて推定した。
【0371】
複数の群を用いて実験するため、最初にすべてのマウスに感染させた後、ランダムに割り当てて複数の処置群を得た。盲検化は実施しなかった。
【0372】
寄生虫の感染とモニタリング
105個のP. yoelii 17XNL、105個のP.chabaudi AS、104個のP.yoelii YM、104個のP.berghei ANKAのいずれかが寄生した赤血球細胞(pRBC)を以前に感染したC57BL/6Jマウスから新たに採取し、3~6匹の野生型マウスからなるコホートの静脈内に感染させた。寄生虫の用量をこれらの値にすると、ほぼ同じ時期に明らかな寄生虫血症になることが以前にわかっている。尾端部血液フィルムを1~2日ごとに作製し、Quick Dip改変ライト-ギムザ染色剤(Thermo Fisher Scientific社)を用いて染色し、寄生虫血症を60日目まで調べた。pRBCの割合は、寄生虫血症が1%超である間はRBCを少なくとも300個数え、それ以外のときは細胞が約10,000個含まれる20個の視野を数えることによって評価した。
【0373】
いくつかの図に示した寄生虫血症の割合の平均値は、1つの群に含まれる個々のマウスからのRBCの総数に対するpRBCの割合の平均値である。マウスで貧血と疾患の身体症状(姿勢(背の丸まり)、活動の欠如、毛並が含まれる)を毎日モニタした。マウスが以下の表3と表4に示した顕著な苦痛の徴候を示した場合には、安楽死させた。
【表3】
【0374】
P.yoelii YMの症状には、貧血、呼吸困難、血尿が含まれ、昏睡や痙攣などの合併症を伴うが、脳マラリアには決してならない。実験期間中はマウスを毎日モニタし、研究に記載されている処置が、マウスを安楽死させるべき程度まで苦痛を引き起こしているかどうかを上記の苦痛判定基準に従って判定する。これらの評価基準で累積スコアが3を超える場合や、体重減少が25%を超える場合には、その苦しんでいるマウスを安楽死させる。
【表4】
【0375】
P.bergheiは致死的な脳疾患を引き起こし、通常は感染後7日目までに症状が明白になる。スコアは累積され、累積スコア=4のマウスは安楽死させる。荒れた毛並と背の丸まりは一般的な臨床徴候だが、他の症状(イタリック体)は脳マラリアの症状であることに注意されたい。
【0376】
フローサイトメトリー
処理した血液細胞または脾臓細胞の単細胞懸濁液を、下記の蛍光体結合抗体の組み合わせで標識した。死んだ細胞を分析から除外するのにFixable Viability Dye eFluor780(eBioscience社)を用いた。各抗体の連続希釈液をフローサイトメトリーによってあらかじめ試験し、本番のアッセイのための最適濃度を決定した。抗CD16/32(クローン2.4G2、BD社)を用いて非特異的Fc結合を阻止した。BD Pharmingen Transcription Factor Bufferセットを用いて細胞の固定と透過処理をした後、星印で示した細胞内マーカーに標識した。データの取得は、BD LSR FortessaフローサイトメーターとBD FACSDivaソフトウェアを用いて行なった。データの分析は、FCS express(De Novo Software社)またはFlowJo(Tree Star社)を用いて実行した。
【表5】
【0377】
実施例3:生存と寄生虫制御にはPD-L2が必要とされる
次に本発明の発明者は、マラリア原虫の制御に対するPD-L2の寄与を明らかにするため、(C57BL/6Jバックグラウンドの)PD-L2 koマウスにおけるP.yoelii 17XNL感染の転帰を野生型マウスと比較して調べた(Liang他、Eur.J.Immunol.第36巻:58~64ページ、2006年)。すべての野生型マウスで感染が27日以内に消えた(
図5A)。
【0378】
しかしPD-L2 koマウスは、13日目以降は寄生虫血症の割合が野生型マウスよりも有意に多かったため、マウスはすべて、死ぬか、臨床スコアが4以上であるという理由で19日目までに安楽死させねばならなかった(
図5Aと
図6A)。したがって寄生虫を制御し、P.yoelii 17XNL感染から生き延びるには、PD-L2の発現が必要である。
【0379】
次に本発明の発明者は、P.yoelii 17XNL感染から生き延びるのにPD-L2が必要であるという観察結果を確認するため、血中に寄生虫を検出できるようになったとき、PD-L2をモノクローナル抗体で阻止した。この実験のため、野生型マウスにP.yoelii 17XNLを感染させ、抗PD-L2または対照であるラットIgGを感染後4日目に投与するとともに、感染後14~18日目まで3~4日ごとに投与した。ラットIgGを投与されたすべての野生型マウスが生き残り、32日以内に感染が消えた(
図5Cと
図6C)。それとは異なり、PD-L2阻止抗体を投与された100%の感染マウスが、死ぬか、重篤な症状のため19日目までに安楽死させられた(
図6B)が、寄生虫制御の程度は、抗PD-L2で処置した群と対照抗体で処置した群で同様であった(
図5Bと
図6B)。これは、13日目以降に寄生虫血症の割合が有意に高かったPD-L2 koマウス(
図5A)とは対照的であり、抗体が機能を完全に抑制しなかったか、阻止前にPD-L2が4日間機能して免疫が部分的に改善されたことを示唆している。
【0380】
他の非致死性感染からの保護におけるPD-L2の役割をさらに探究するため、野生型マウスに非致死性P.chabaudiマラリアを感染させ、P.yoelii 17XNL実験のように抗PD-L2またはラットIgGで処置した(
図5Cと
図6C)。両群のマウスが生き残ったが、PD-L2を阻止すると、急性感染中に寄生虫血症の割合が有意に増加し(8日目、対数スケールであることに注意されたい)、感染の慢性期(21日目以降)には一般に寄生虫血症の割合がより多くなり、寄生虫の消失が4日間遅れた(矢印は、ラットIgGで処置したマウスにおける寄生虫の消失を示す;
図5C)。まとめると、これらの保護/生存試験から、PD-L2の発現が、非致死性マラリアをよりよく制御するためと、P.yoelii 17XNLマラリアから生き延びるために必要であることがわかった。
【0381】
実施例4:PD-L2は、マウスにおける寄生虫特異的CD4
+ T細胞応答を改善する
次に本発明の発明者は、PD-L2を阻止するとなぜマウスが非致死性P.yoelii 17XNL感染から生き延びられなかったのかを理解することに焦点を当てた。そこで発明者は上記の阻止実験を繰り返し、7日目と14日目に脾臓を回収して複数の免疫アッセイで評価した。最初に、CD4
+ T細胞でT
betの発現を調べた。T
betは、Th1 CD4
+ T細胞のエフェクタ機能に必要な転写因子であり、マラリアに対する防御を担うことが知られている(KumarとMiller、Immunol Lett、第25巻:109~114ページ、1990年;Stephensと Langhorne、PLoS Pathog、第6巻:e1001208ページ、2010年;SuとStevenson、J Immunol、第168巻:1348~1355ページ、2002年)。T細胞でCD62Lの発現も評価した(
図7A)。CD62Lは天然T細胞の表面に見いだされるマーカーであり、セントラルメモリー(CD62L
hi)T細胞をエフェクタメモリー(CD62L
lo)T細胞から識別してもいる。天然のマウス(0日目;
図8A)と比較すると、ラットIgGを与えた対照マウスでは7日目までに脾臓当たりのT
bet発現CD62L
hi CD4
+ T細胞の数が有意に増加した(
図8B;p<0.0095)が、PD-L2を阻止したマウスではそうではなかった(
図8B;p>0.05)。対照マウスは、14日目までに、抗PD-L2抗体を与えられたマウスと比較して、脾臓当たりのT
bet発現CD62L
hi CD4
+ T細胞とCD62L
lo CD4
+ T細胞がそれぞれ2.2倍と3倍であった(
図8C)。同様に、対照マウスは、培養物の中での寄生虫抗原MSP1
19に対する応答の測定からわかるように、14日目に、IFN-γを分泌する寄生虫特異的CD4
+ T細胞の数が、PD-L2を阻止したマウスの5倍超であった(
図8D)。インビトロEdU取り込みアッセイにより、対照マウスでは、寄生虫抗原に応答して増殖する寄生虫特異的CD4
+ T細胞の数がより多いことが確認された(
図8E)。しかし血清IFN-γのレベルは、PD-L2の阻止によって有意な影響を受けなかった(
図8F)。それとは逆に、PD-L2を阻止したマウスは、14日目までに血清IL-10が対照マウスの2倍超であった(
図8G)。この結果は、PD-L2を阻止したマウスにおいて、対照で処置したマウスと比べて脾臓当たりの制御性T細胞(T
reg)の数の有意な増加が見られたことと相関していた(
図8H)。
【0382】
P.yoelii 17XNL感染PD-L2 koマウスを用いた研究からは、14日目に、T
betを発現している寄生虫特異的CD4
+ T細胞とIFN-γを分泌する寄生虫特異的CD4
+ T細胞の脾臓当たりの数が感染した野生型マウスと比べて有意に少ないことも見いだされた(
図7Bと
図7C)。最後に、感染したPD-L2 koマウス、または抗PD-L2阻止抗体を投与された感染マウスでは、14日目に、IFN-γを分泌する寄生虫特異的CD8
+ T細胞の脾臓当たりの数は、感染した野生型マウスと比べて有意に減少していなかった(
図7D)。
【0383】
まとめると、データから、P.yoelii 17XNLマラリアに対する効果的なTh1 CD4+ T細胞応答にはPD-L2の発現が必要であることがわかった。DC表面でのPD-L1発現に対するPD-L2発現の比がより大きいことが、より少ない寄生虫血症と関係していたことと、PD-L2を阻止するとTh1応答が低下したことを考慮して、PD-L2は、Th1応答を抑制することが報告されているPD-L1機能(Liang他、Eur.J.Immunol.第36巻:58~64ページ、2006年)を抑制できる可能性があるという仮説を立てた。さらに、PD-L2を阻止すると、P.yoelii 17XNLに感染したマウスは死んだが、P.chabaudiマラリアに感染したマウスは死ななかった。それに加え、PD L1/PD-1を媒介とする免疫抑制は、P.chabaudiマラリア(Horne-Debets他、Cell.Reports.第5巻:1204~1213ページ、2013年)よりもP.yoelii 17XNLマラリア(Butler他、Nat.Immunol.第13巻:188~195ページ、2012年)の急性期の間のほうが大きいことが以前に示されている。そこでわれわれは、PD-L2/PD-1を媒介とした免疫抑制をPD-L2を媒介として抑制することで、PD-L2の阻止によりこれら2つの感染症の間で異なった転帰がもたらされた結果を説明できる可能性があると結論した。
【0384】
実施例5:DC表面でのPD-L1とPD-L2の同時発現が免疫を決定する
次に本発明の発明者は、DC表面におけるPD-L1の発現がマラリアの致死性の原因であるかどうかを明確にするため、DC移入研究を行った。そうするため、野生型マウスとPD-L1 koマウスに致死性P.yoelii YMマラリアを感染させ、感染後7日目にDCを単離し(
図9Aと
図9B)、天然マウスに移した後、そのマウスに致死性P.yoelii YMマラリアを感染させた。野生型マウスからのDCを与えられた100%のマウスを臨床スコアが4以上であるという理由で10日以内に安楽死させねばならなかったが、PD-L1 koマウスからのDCを与えられたマウスはすべてが生き残り(
図9C)、感染が消えた(
図9Dと
図9E)。この移入研究から、DC表面のPD-L1が致死性を媒介していることがわかった。なぜならPD-L1は豊富に存在するがPD-L2はほとんど存在しないDCを与えられたマウス(
図3A、
図3C、
図4D参照)は生き残らなかったのに対し、PD-L1 ko DCを与えられたマウスは生き残ったからである。
【0385】
次に、野生型マウスとPD-1 koマウスに致死性P.yoelii YMを感染させ、PD-1経路がP.yoelii YMマラリアの致死性の原因であることを確認した。100%の野生型マウスを臨床スコアが4以上であるという理由で10日目までに安楽死させねばならなかったのに対し、PD-1 koマウスはすべて生き残り(
図9F)、感染が消えた(
図9Gと
図9H)。これは、PD-1/PD-L1経路がP.yoelii YM感染の致死性を支配していたことの確認となっている。まとめると、これらの研究から、PD-1とPD-L1がマラリアの致死性を媒介していることがわかった。
【0386】
PD-L2の発現がマラリアから生き延びることと関連しているため、次に本発明の発明者は、DCの表面でPD-L2をPD-L1と同時に発現させることで免疫をどのように調節できるかを調べた。以前の研究から、DC上のPD-L1とCD8
+ OTI T細胞上のPD-1の間の相互作用が、リガンドによって誘導されるT細胞受容体(TCR)の下方調節に寄与することがわかっている(Karwacz他、EMBO.Mol.Med.第3巻:581~592ページ、2011年)。DCの表面でPD-L2をPD-L1と同時に発現させるとPD-L1を媒介としたTCRの下方調節と誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)の発現を抑制できるかどうかを調べる実験を行なった。そうするため、精製したDCとT細胞を、PD-1、PD-L1、PD-L2いずれかの機能を阻止する抗体とともに感染したマウス(1:5細胞)から培養し、36時間後にT細胞を調べ、TCRの一構成要素であるCD3の高発現と、T細胞活性化を示している可能性のあるICOSの高発現を探した(
図4I~
図4N)。DC:T細胞培養物の中で抗PD-1抗体を用いてT細胞へのPD-1シグナル伝達を阻止すると、CD3とICOSの発現が有意に増加した(
図4Kと
図4N)。これは、PD-1シグナルがT細胞上のこれらの分子の発現を下方制御したことを示している。PD-L1シグナルを抗体で阻止し、PD-L2だけを機能させると、T細胞でICOSとCD3のレベルが有意に上昇した(
図4Lと
図4N)。それとは逆に、PD-L2を阻止し、PD-L1機能を完全なまま残すと、CD3とICOSが有意に失われた(
図4Mと
図4N)。まとめると、これらの知見から、P.yoelii 17XNLに感染したマウスからの細胞の文脈では、DCの表面におけるPD-L1の発現はT細胞の活性化を抑制するように見えるのに対し、PD-L2は、CD3とICOSの発現を促進するように見えることがわかる。
【0387】
材料と方法
DC移入研究
104個のP.yoelii YM(致死性)pRBCを感染させた野生型マウスとPD-L 1 koマウスの脾臓からCD11c+ DCを取得した。感染の4日後、マウスを4日間にわたって毎日250μgのピリメタミンで処置して感染を消した。7日目に、Dynal DC濃縮キットを用いて脾臓を消化させ、DCを濃縮した。サンプルをAutoMACに適用し、Dynalで標識した細胞とヘモゾインの残留物を除去した。抗CD11c MACSビーズでDCに標識することによって高度に精製されたDCを取得し、AutoMACSで単離した。その後、約1.5×107個のDCをナイーブマウスの静脈内に輸液した。マウスを15時間超休ませた後、致死量のP.yoelii YM(104個のpRBC)を感染させた。マウスを48日間追跡した後にモニタリングを停止した。
【0388】
DC-T細胞培養物
マウスに105個のP.yoelii 17XNL pRBCを感染させ、感染後14日目に脾臓を消化させ、CD90.2 MACSビーズを用いて全T細胞を単離してTCRへの影響が最少になるようにした。その後、Dynal DC濃縮キットを用いてDCを残った脾臓細胞から単離した。
【0389】
少なくとも3連のウエルの中で約106個のT細胞を2×105個のDCとともに培養した。対照、阻止用抗PD-1抗体(RMP1-14)、抗PD-L1抗体(10F.9G2)抗PD-L2抗体(TY25)のいずれかを20μg/mlの濃度で培養物に添加した。36時間培養した後、細胞を洗浄し、フローサイトメトリーのために標識した。生きているCD4+CD62LloPD-1+ T細胞の表面におけるCD3とICOSの発現を評価した。
【0390】
実施例6:転移性のがんを有する患者からのDC表面におけるPD-L2の発現
考え方を証明する追加データを提供するため、良性病変または転移性黒色腫を有する患者からの血液DCを比較した。転移性疾患に罹患している患者では、PD-L2
+ DCの有意な喪失が観察された(
図10参照)。健康なボランティアでは%PD-L2:%PD-L1比が約0.9だが、転移性黒色腫の間にこの比は0.4~0.8に低下する。興味深いことに、局在した病変(すなわち良性腫瘍)を持つ患者では、%PD-L2:%PD-L1比は0.9~1.3へと上昇する。
【0391】
全身性マラリアとがんでの所見に基づくと、PD-L1ではなくてPD-L2が、Th1免疫応答に関連する全身性疾患の重症度を予測するように見える。まとめると、自己免疫疾患の間にPD-L2のレベルが上昇し、そのことにより、損傷を与える免疫エフェクタ細胞の増殖が促進されると予測される。これは、局所的な病変を持っていて比が大きな患者に反映されている。
【0392】
実施例7:PD-L2の多量体化が、TH1免疫状態を示す
本発明の発明者は、可溶性多量体PD-L2(sPD-L2)はPD-L1よりもTh-1細胞表面のPD-1に結合しやすいため、T細胞の機能に対するPD-L1の抑制効果を低下させるであろうという仮説を立てた。この仮説を検証するため、ヒトIgGのFc部分に融合させたマウスPD-L2の細胞外ドメインを含むプラスミドコンストラクトを作製し、Geneart(Life Technologies社;ドイツ国)によって哺乳動物細胞にトランスフェクトした。プロテインGカラムを用いて培養上清から可溶性二量体PD-L2 Igタンパク質(PD-L2)を精製した。このタンパク質は、<0.2EU/mlのエンドトキシンを含むことがわかった。EZ連結スルホNHSビオチンを製造者の指示に従って用いて二量体PD-L2をビオチン化することによってPD-L2を多量体化し、ビオチン化のレベルを測定するキット(Pierce社、アメリカ合衆国)によって測定すると、1つのPD-L2二量体につき2~5個のビオチン分子が得られた。このタンパク質をPD-10カラムに通すことによって過剰なビオチンを除去した。ビオチン化されたPD-L2をストレプトアビジン(Cedarlane社、アメリカ合衆国)と4:1のモル比で混合すると、主に八量体の形態になった多量体PD-L2キメラポリペプチドが得られた。バイアルの中の量が購入した量を超えていたため、ストレプトアビジンの各バッチをタンパク質アッセイで試験した。各バッチは活性が異なっている(例えば6:1)可能性があるため、ストレプトアビジンの各バッチについて比を最適化した。低率ネイティブSDS-PAGEゲルを用いたウエスタンブロット法により、タンパク質が多量体化されて八量体になり、300~400kDaのあたりにバンドがあることを確認した。
【0393】
次に、野生型マウスに致死性のP.yoelii YMまたはP.bergheiを感染させ、寄生虫血症が測定可能になった後である感染後3日目に、次いで5日目と7日目にPD-L2を投与した。P.yoelii YMを感染させて対照ヒトIgG(対照Ig)で処置した野生型マウスはすべて、死ぬか、10日以内に安楽死させねばならなかった(
図11A~
図11C)。
【0394】
同様に、二量体PD-L2は寄生虫血症の増加をまったく防ぐことができなかった(
図11D)。それとは異なり、PD-L2で処置したP.yoelii YM感染マウス(n=12)の92%が、より少ない症状で生存し、25日間で感染が消えた(
図11A~
図11E)。生き残ったすべてのマウスを150日目まで放置した後、同じ用量の致死性P.yoelii YMマラリアを再度感染させる(追加のPD-L2は投与しなかった;
図11A)とともに、新たな同齢の対照ナイーブマウス(対照Ig-R)にも感染させた。以前にPD-L2で処置したマウスはすべて症状なしで再感染から生き延び、8匹のマウスのうちの4匹だけが何らかの寄生虫血症を示したことを、
図11Bに対数スケールで示してある。再感染から20日以内に、sPD-L2で処置して再感染させたこれらマウスの80%で感染が完全に消えた(
図11F)。なぜならこれらのマウスからナイーブマウスに血液を200μl移したときに感染は移さなかったからである。比較して、同齢の対照マウスの第2の集団は感染に屈したため、再感染に用いた寄生虫は致死性であることが確認される(
図11C)。まとめると、多量体PD-L2は、P.yoelii YMを感染させた後のPD-L1を媒介とした致死性を克服することができた。
【0395】
同様に、P.bergheiを感染させた対照マウスの100%が8日以内に実験的脳マラリア症状(ECM)を発症し(
図11G)、10日目までにその感染に屈した(
図11H)。sPD-L2で処置したP.berghei感染マウスの22%だけが脳マラリアを発症したことが、これらマウスのECMスコアからわかる(
図11G)。さらに、生き残ったマウスは感染を約20日間にわたって抑制し(
図11Hと
図11I)、PD-L2を最後に投与してから13日後に感染に屈した。追加投与によって生存率は改善しなかった(データは示さず)。まとめると、多量体PD-L2の投与によって致死性感染症からの生存が有意に改善され、特に脳マラリアに関する臨床症状の重症度が下がった。
【0396】
実施例8:十二量体 PD-L2は腫瘍に対する免疫応答を増進する
自己組織化して十二量体になる可溶性キメラPD-L2ポリペプチドを設計した。このキメラポリペプチドは、ヒトIgGのFc部分に融合させたマウスPD-L2の細胞外ドメインと、C末端α-テールピース(マウスPD-L2-Fc-αtp)を含んでおり、以下のアミノ酸配列を有する:
MLLLLPILNLSLQLHPVAALftvtapkevytvdvgssvslecdfdrrectelegiraslqkvendtslqseratlleeqlplgkalfhipsvqvrdsgqyrclvicgaawdykyltvkvkasymridtrilevpgtgevqltcqargyplaevswqnvsvpantshirtpeglyqvtsvlrlkpqpsrnfscmfwnahmkeltsaiidplsrmepkvprtwplhvfipacDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY[配列ID番号58]。
【0397】
下線を引いた大文字の配列は、マウスPD-L2シグナルペプチドのアミノ酸配列を表わす。小文字の配列は、マウスPD-L2外部ドメインのアミノ酸配列に対応する。イタリックにした小文字の配列は、マウスPD-L2膜貫通ドメインの一部のアミノ酸配列を表わす。大文字の配列は、ヒトIgG1に関するFcポリペプチドのアミノ酸配列に対応する。太字にした大文字の配列は、IgA分子のアルファテールピース(αtp)のアミノ酸配列を表わす。
【0398】
このキメラポリペプチドをコードするDNA配列を発現するコンストラクトをGeneart(Life Technologies社;ドイツ国)によって独自の哺乳動物細胞にトランスフェクトし、大半が十二量体の可溶性PD-L2-Igタンパク質(sPD-L2)を、プロテインGカラムを用いて培養上清から精製した後、FPLC分画によって二量体の形態のタンパク質を除外する。このタンパク質は、<0.2EU/mlのエンドトキシンを含むことがわかった。
【0399】
次に、樹立したB16.F0メラノーマ細胞系とB16.F10メラノーマ細胞系を実験室で増殖させ、それぞれ5×105個または1×105個の細胞をC57BL/6マウスの皮下に移植した。
【0400】
進行黒色腫に対するsPD-L2の効果を明らかにするため、B16.F10腫瘍がほぼ9日目に100mm
3の体積に達すると、9日目、11日目、13日目に、マウスにヒトIgGまたはsPD-L2を200μg投与し、サイズを1~2日ごとにモニタした。倫理的な理由から、腫瘍が1000mm
3を超えた場合、または何らかの潰瘍の形成や不快症状が見られた場合には、マウスを安楽死させた。
図12に示したこの研究からの結果は、sPD-L2が、進行した黒色腫に対する免疫応答を増進し、進行した黒色腫から保護してくれることを明確に示している。
【0401】
sPD-L2の効果を初期腫瘍でも調べた。これらの実験では、腫瘍が約50mm
3の体積に達した約3日目にB16.F10細胞を移植し、3日目、9日目、15日目に200μgのヒトIgGまたはsPD-L2でマウスを処置した。この研究からの結果(
図13参照)から、sPD-L2が早い段階で黒色腫から保護してくれることが明らかになった。
【0402】
本明細書で引用したあらゆる特許、特許出願、刊行物の開示内容は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0403】
本明細書における何らかの参考文献の引用が、本出願でそのような参考文献を「先行技術」として利用できることの承認であると解釈してはならない。
【0404】
本明細書全体を通じ、目的は、本発明の好ましい実施態様を説明することであったが、本発明がどれか1つの実施態様に限定されたり、特徴の特定の集団に限定されたりすることはない。したがって当業者は、例示されている特定の実施態様において、本発明の範囲から逸脱することなく、本開示に照らしてさまざまな修正と変更を行なうことが可能であることがわかるであろう。そのような修正と変更はすべて、添付の請求項の範囲に含まれるものとする。
[1] 式(I):
[P]n (I)
(式中、
Pは、現われるごとに独立に、タンパク質性分子であって、前記タンパク質性分子の自己集合を促進してポリペプチド複合体を形成する少なくとも1のオリゴマー化ドメインに作用可能に連結されたPD-L2ポリペプチドの可溶性外部ドメイン含有部分を含むか、当該部分からなるか、又は当該部分から実質的になる、前記タンパク質性分子を表し、ここで当該可溶性部分及び少なくとも1のオリゴマー化ドメインが、一本鎖キメラペプチドの形態であり、そして
nは4よりも大きいか又は4に等しい整数を表わす)。
で表わされるポリペプチド複合体
[2] Pが、腫瘍新生血管標的ドメイン、または腫瘍関連新生血管標的ドメインを欠いている、項目1に記載のポリペプチド複合体。
[3] 前記外部ドメインが、シグナルペプチドを伴うか、又は伴わない、項目2に記載のポリペプチド複合体。
[4] 前記タンパク質性分子が、PD-L2膜貫通ドメインとPD-L2細胞質ドメインの一方または両方を欠いている、項目1~3のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[5] nが、5以上、6以上、7以上、8以上のいずれかである、項目1~4のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[6] nが、100以下、50以下、30以下、20以下のいずれかである、項目1~5のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[7] nが3~20の範囲内、好ましくは4~16の範囲内、より好ましくは8~12の範囲内である、項目1~6のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[8] 前記少なくとも1つのオリゴマー化ドメインが、前記PD-L2ポリペプチドの上流(すなわちそのPD-L2ポリペプチドのアミノ末端)および/または下流(すなわちそのPD-L2ポリペプチドのカルボキシ末端)に作用可能に接続されている、項目7に記載のポリペプチド複合体。
[9] 前記タンパク質性分子が、式(II):
PD-L2-L-OMDA (II)
(式中、
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは4以上、好ましくは4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、結合またはペプチドリンカーである)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むか、そのポリペプチド一本鎖からなるか、またはそのポリペプチド一本鎖から実質的になる、項目8に記載のポリペプチド複合体。
[10] 前記タンパク質性分子が、式(III):
PD-L2-L-OMDA-L-OMDB (III)
(式中、
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは2以上、好ましくは2、3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、現われるごとに独立に、結合またはペプチドリンカーを表わし;
OMDBは、j個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(jはiよりも大きい整数、好ましくはi+1、i+2、i+3、i+4、i+5、i+6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインである)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むか、そのポリペプチド一本鎖からなるか、またはそのポリペプチド一本鎖から実質的になる、項目8に記載のポリペプチド複合体。
[11] iが2であり、jが4または6である、項目10に記載のポリペプチド複合体。
[12] 前記タンパク質性分子が、式(IV):
OMDA-L-PD-L2 (IV)
(式中、
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDAからなるオリゴマー(OMDA)i(iは3以上、好ましくは3、4、5、6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
Lは、結合またはペプチドリンカーであり;
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わす)
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むか、そのポリペプチド一本鎖からなるか、またはそのポリペプチド一本鎖から実質的になる、項目8に記載のポリペプチド複合体。
[13] 前記タンパク質性分子が、式(V):
OMDB-L-OMDA-L-PD-L2 (V)
(式中、
OMDBは、j個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(jは2以上、好ましくは2、3、4、5、6のいずれかであり;
Lは、現われるごとに独立に、結合またはペプチドリンカーを表わし;
OMDAは、i個のサブユニットOMDBからなるオリゴマー(OMDB)j(iはjよりも大きい整数、好ましくはj+1、j+2、j+3、j+4、j+5、j+6のいずれかである)を形成するオリゴマー化ドメインであり;
PD-L2はPD-L2ポリペプチドを表わす)、
によって表わされるポリペプチド一本鎖を含むか、そのポリペプチド一本鎖からなるか、またはそのポリペプチド一本鎖から実質的になる、項目8に記載のポリペプチド複合体。
[14] jが2であり、iが4または6である、項目13に記載のポリペプチド複合体。
[15] 結合パートナーの存在下で個々のオリゴマー化ドメイン(例えばOMDAまたはOMDB)が組織化してヘテロオリゴマーになる、項目9~14のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[16] 前記オリゴマー化ドメインと前記結合パートナーは特異的結合ペアのメンバーが可能性である、項目15に記載のポリペプチド複合体。
[17] 前記特異的結合ペアの選択が、ビオチン-アビジン、ビオチン-ストレプトアビジン、抗原-抗体、ハプテン-抗ハプテン、リガンド-受容体、受容体-補助受容体からなされる、項目16に記載のポリペプチド複合体。
[18] 前記少なくとも1つのオリゴマー化ドメインの選択が、二量体化ドメイン、三量体化ドメイン、四量体化ドメイン、五量体化ドメイン、六量体化ドメインからなされる、項目1~17のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[19] 前記少なくとも1つのオリゴマー化ドメインが前記PD-L2ポリペプチドに直接接続されている、項目1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[20] 前記少なくとも1つのオリゴマー化ドメインと前記PD-L2ポリペプチドがペプチドリンカーによって接続されている、項目1~18のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体。
[21] 前記ペプチドリンカーが約1個~約100個のアミノ酸残基(と、その間のあらゆる整数値のアミノ酸残基)からなる、項目20に記載のポリペプチド複合体。
[22] 前記ペプチドリンカーが、前記タンパク質性分子の精製を促進する精製部分と、前記タンパク質性分子に対する免疫応答を調節する免疫調節部分と、構造的柔軟性付与部分から選択された少なくとも1つの部分を含む、項目20または21に記載のポリペプチド複合体。
[23] 宿主細胞の中で機能可能な調節エレメントに機能可能に接続された、項目1~22のいずれか1項に記載のタンパク質性分子をコードする配列を含む核酸コンストラクト。
[24] 項目23に記載の核酸コンストラクトを含有する宿主細胞。
[25] 原核生物宿主細胞である、項目24に記載の宿主細胞。
[26] 真核生物宿主細胞である、項目24に記載の宿主細胞。
[27] ポリペプチド複合体を作製する方法であって、ポリペプチド複合体の形成に適した条件下(例えば水溶液内)で項目1~22のいずれか1項に記載のタンパク質性分子を組み合わせることを含んでいて、そうすることにより、n個(nは、典型的には3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上のいずれか、適切には100以下、50以下、30以下、20以下のいずれか、好ましくは3~20の範囲内、適切には4~16、より適切には8~12である)のサブユニットのタンパク質性分子からなるオリゴマーを含むポリペプチド複合体を作製する方法。
[28] 項目1~22のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体と、医薬として許容可能な基剤、希釈剤、アジュバントのいずれかとを含む免疫調節組成物。
[29] 対象でTh1免疫応答を含む免疫応答を刺激する、または誘起する、または増大させるための組成物であって、項目1~22のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を含む、前記組成物。
[30] 対象でTh1関連疾患またはTh1関連障害を治療するための組成物であって、そ項目1~22のいずれか1項に記載のポリペプチド複合体を含む、組成物。
[31] 対象が、以下の:
(1) 前記対象から得られたサンプルのTh1免疫状態バイオマーカープロファイルを決定し、ここで前記Th1免疫状態バイオマーカープロファイルが、第一Th1免疫状態バイオマーカーの量を少なくとも部分的に指し示す第一バイオマーカー値と、サンプル中の第二Th1免疫状態バイオマーカーの量を少なくとも部分的に指し示す第二バイオマーカー値を含み、ここで前記第一及び第二Th1免疫状態バイオマーカーが、抗原提示細胞(APC)上のバイオマーカーであり、ここで前記第一Th1免疫状態バイオマーカーが、プログラム細胞死タンパク質1リガンド2(PD-L2)であり、そして第二Th1免疫状態バイオマーカーが、プログラム細胞死タンパク質1リガンド1(PD-L1)であり;そして
(2)第一及び第二バイオマーカー値を用いて指標を決定し、前記指標が、対照のTh1免疫状態を少なくとも部分的に指し示すサンプルPD-L2:PD-L1バイオマーカー値比を指し示し、ここで前記指標が、前記サンプルPD-L2:PD-L1バイオマーカー値比が、通常の又は損なわれていないTh1免疫の存在と相関する対照PD-L2:PD-L1バイオマーカー値比に対して増加した場合に、対照における上昇した_Th1免疫を少なくとも部分的に指し示すように決定され、そして前記サンプルPD-L2:PD-L1バイオマーカー値比が、通常の又は損なわれていないTh1免疫の存在と相関する対照PD-L2:PD-L1バイオマーカー値比とおおよそ同程度である場合に、前記指標値が、前記対象の通常又は損なわれていないTh1免疫を少なくとも部分的に指し示すと決定される、
を含む方法により、損なわれたTh1免疫を有すると同定された場合に、前記ポリペプチド複合体又は組成物を対象に投与する、項目29又は30に記載の組成物。
[32] APCが、樹状細胞とマクロファージからなるグループから選択される、項目31に記載の組成物。
[33] 前記APCがCD11c発現樹状細胞である、項目31に記載の組成物。
[34] 前記相対バイオマーカー値が、前記対象から得られた前記サンプル中の前記対応するTh1免疫状態バイオマーカーの濃度を少なくとも部分的に示す、項目31~33のいずれか1項に記載の組成物。
[35] 前記相対バイオマーカー値が、前記対応するTh1免疫状態バイオマーカーの含量を含む、項目34に記載の組成物。
[36] 個々のバイオマーカー値が、細胞表面の対応するTh1免疫状態バイオマーカーを発現するAPCの割合を含む、項目31~35のいずれか1項に記載の組成物。
[37] 相対バイオマーカー値が、前記APCの表面上のPD-L2クラスター化の測定値である、項目31~33のいずれか一項に記載の組成物。
[38] 前記Th1関連疾患またはTh1関連障害が、Th1免疫状態の低下または抑制と関係している、項目29~37のいずれか1項に記載の組成物。
[39] 前記Th1関連疾患またはTh1関連障害が、転移性のがんを含むがん、または病原性感染症である、項目38に記載の組成物。