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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099059
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】放電ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/52 20060101AFI20240717BHJP
   H01J 61/073 20060101ALI20240717BHJP
   H01J 61/86 20060101ALI20240717BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01J61/52 F
H01J61/073 F
H01J61/86
H01J9/02 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078739
(22)【出願日】2024-05-14
(62)【分割の表示】P 2020163468の分割
【原出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 満博
(72)【発明者】
【氏名】細木 裕介
(57)【要約】
【課題】放電ランプにおいて、効果的に放熱を行って電極温度を抑える。
【解決手段】電極30は、電極先端面32Dを含む先端側部材32と、電極支持棒17Bと接続する後端側部材34から構成され、先端側部材32に凹部40が形成され、凹部40内に、凹部40と同軸配置された柱状部50が形成される。柱状部50は、銀タングステンから成り、ランプ点灯時などにおいて、液状の銀が、柱状部50と凹部40との間に形成される内部空間60、60Dへ溶出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、電極軸方向に沿った凹部と、前記凹部に配置される柱状部とを有し、
ランプ点灯時、前記凹部と前記柱状部との間で、非対流の液状の伝熱体を介して熱が伝導することを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
放電管と、
前記放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、電極軸方向に沿った凹部と、前記凹部に配置される柱状部とを有し、
前記凹部と前記柱状部との間に形成される内部空間の体積が、前記柱状部の体積より小さく、
ランプ点灯時、前記内部空間の少なくとも一部が、液状の伝熱体によって占められていることを特徴とする放電ランプ。
【請求項3】
前記柱状部が、タングステンの多孔質体を有することを特徴とする請求項1または2に記載の放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を備えた放電ランプに関し、特に、電極の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプは、点灯中に電極先端部が高温となり、タングステンなどの電極材料が溶融、蒸発し、放電管が黒化して、ランプ照度低下を招く。電極先端部の過熱を防ぐため、耐久性のある金属から成る電極先端部と、熱伝導性のより高い金属から成る胴体部とを別々に成形し、固相接合などによって接合する電極の構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、電極内部に放熱空間を形成した電極の構成も知られている(特許文献2参照)。そこでは、電極内部に形成された筒状凹部に柱状部を同軸的に配置し、電極軸方向および電極軸に垂直な方向に沿って隙間を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5472915号公報
【特許文献2】特開2018-142482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極内部で柱状部を凹部に接合させた構造では、ランプ点灯時に柱状部が凹部底面から剥がれる恐れがある。特に、電極材料より熱膨張率の高い材料から成る柱状部を形成した場合、熱膨張量の違いによって底面剥離が生じ、熱伝導性能が低下する恐れがある。また、柱状部が凹部底面に接している電極構造においても、ランプ点灯中の電極変形などによって接触面に隙間が生じ、電極軸方向に沿った熱伝導性能が低下する恐れがある。
【0006】
また、露光対象物の大型化、スループット向上のためにランプの高出力化(大電力化)が今まで以上に求められている。これに伴ってランプ点灯中の電極温度も高くなり、電極の温度上昇をこれまでよりも効果的に抑えることができる電極構造が求められる。
【0007】
したがって、電極に内部空間を形成した放電ランプにおいて、電極の温度上昇をより効果的に抑えることができる電極構造が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様である放電ランプは、放電管と、放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、電極軸方向に沿った凹部と、凹部に配置される柱状部とを有し、ランプ点灯時、凹部と柱状部との間で、非対流の液状の伝熱体を介して熱が伝導する。
【0009】
本発明の他の一態様である放電ランプは、放電管と、放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、電極軸方向に沿った凹部と、凹部に配置される柱状部とを有し、凹部と柱状部との間に形成される内部空間の体積が、柱状部の体積より小さく、ランプ点灯時、内部空間の少なくとも一部が、液状の伝熱体によって占められている。
【0010】
例えば、柱状部は、タングステンの多孔質体を有する。
【0011】
例えば、放電ランプは、放電管と、放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、電極軸方向に沿った凹部と、凹部に配置される柱状部とを有する。例えば柱状部は、電極先端側の端面と凹部の底面との間で接合している、あるいは接しているように構成することができる。そして、ランプ点灯時、凹部と柱状部との間で形成される内部空間の少なくとも一部が、非対流の液状の伝熱体によって占められる。
【0012】
ここで、「ランプ点灯時、凹部と柱状部との間で形成される内部空間」は、様々な空間形状、サイズ、形成箇所で構成することが可能であり、例えば、電極軸方向に沿って凹部と柱状部との間に形成される空間が含まれる。また、ランプ製造時および/またはランプ点灯時に、柱状部と凹部との接合部分あるいは接している部分に隙間が生じる場合、その隙間も含まれる。
【0013】
一方、「非対流の液状の伝熱体」とは、ランプ点灯時に溶融した液体が対流することによって電極軸方向に熱輸送する伝熱体とは異なり、対流による熱輸送の機能を発揮しない程度に内部空間において抑制されている状態の伝熱体を、ここでは「非対流の液状の伝熱体」と定義する。液状の伝熱体は、柱状部にあらかじめ含まれていた物質などが溶出するように構成することが可能であり、あるいは、あらかじめランプ点灯時に溶融する伝熱体を内部空間に含めるように構成してもよい。
【0014】
液状の伝熱体の上記「非対流」状態は、液状の伝熱体の粘性特性、凹部と柱状部との間に形成される内部空間の大きさや形状、すなわち、凹部と柱状部との間に形成される流路の圧力損失などに基づく。例えば、電極軸に沿って凹部と柱状部との間に形成される内部空間を小さくする、すなわち電極軸垂直方向に沿った凹部と柱状部との距離間隔を短くすることが可能である。また、柱状部あるいは凹部側面に溝などを設けて流路抵抗を付与することも可能である。ランプ製造時および/またはランプ点灯時に、例えば柱状部の電極先端側端面と凹部の底面との接合部分あるいは接している部分に隙間が生じる場合、その隙間部分は僅かなスペースであることから、「非対流」状態にあるといえる。
【0015】
例えば、放電ランプは、放電管と、放電管内に対向配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、電極軸方向に沿った凹部と、凹部に配置される柱状部とを有し、柱状部が、ランプ点灯時、液状の伝熱体が凹部と柱状部との間に形成される内部空間に溶出可能なように、構成されている。柱状部は、多孔質性の熱伝導性部材で構成し、ランプ点灯時に液状となる融点をもつ物質が含まれるようにすればよい。例えば、銀タングステンで構成することができる。
【0016】
液状の伝熱体が非対流状態になるようにするため、例えば、内部空間における凹部側面と柱状部の電極軸垂直方向に沿った幅が、柱状部の半径より小さくなるように構成すればよい。また、液状の伝熱体が非対流状態になるようにするため、柱状部は、少なくとも電極先端側付近の側面に、溝または膜を形成するように構成することができる。
【0017】
電極の構成としては、例えば、柱状部が、電極支持棒と接続する凸部を設けた後端側部材と接合し、凹部が、電極先端面を含む先端側部材に形成されるように構成することができる。この場合、柱状部と凸部との接合面の電極軸に沿った位置が、先端側部材と後端側部材の接合面の電極軸に沿った位置より、電極先端面側に位置するようにすればよい。
【0018】
例えば、本発明の他の態様である放電ランプ用電極の製造方法は、柱状の先端側固体部材に対して筒状凹部を中心軸周りに形成し、円柱状固体部材に対し、筒状凹部の内径より小さい凸部をその中心軸周りに形成し、ランプ点灯時に液状となる融点をもつ物質が含まれる熱伝導性部材を、凹部の底面からの高さに合わせて柱状に形成し、熱伝導性部材が筒状凹部に同軸配置されるように、先端側固体部材と、熱伝導性部材と、後端側固体部材とを含めて接合することによって、電極を形成する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電極に内部空間を形成した放電ランプにおいて、電極の温度上昇をより効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態である放電ランプの平面図である。
図2】第1の実施形態の電極の概略的断面図である。
図3】ランプ点灯中の電極内部状態を示した断面図である。
図4】第2の実施形態である放電ランプの電極の概略的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ショートアーク型放電ランプ10は、高輝度の光を出力可能な大型放電ランプであり、透明な石英ガラス製の略球状放電管(発光管)12を備え、放電管12内には、タングステン製の一対の電極20、30が対向(同軸)配置される。放電管12の両側には、石英ガラス製の封止管13A、13Bが放電管12と連設し、一体的に形成されている。放電管12内の放電空間DSには、水銀とハロゲンやアルゴンガスなどの希ガスが封入されている。
【0022】
陰極である電極20は、電極支持棒17Aによって支持されている。封止管13Aには、電極支持棒17Aが挿通されるガラス管(図示せず)と、外部電源と接続するリード棒15Aと、電極支持棒17Aとリード棒15Aを接続する金属箔16Aなどが封止されている。陽極である電極30についても同様に、電極支持棒17Bが挿通されるガラス管(図示せず)、金属箔16B、リード棒15Bなどのマウント部品が封止されている。また、封止管13A、13Bの端部には、口金19A、19Bがそれぞれ取り付けられている。
【0023】
一対の電極20、30に電圧が印加されると、電極20、30の間でアーク放電が発生し、放電管12の外部に向けて光が放射される。ここでは、1kW以上の電力が投入される。放電管12から放射された光は、反射鏡(図示せず)によって所定方向へ導かれる。例えば露光装置に放電ランプ10が組み込まれた場合、放射光はパターン光となって基板などに照射される。
【0024】
図2は、電極(陽極)30の概略的断面図である。なお、電極(陰極)20についても同様の構造にすることが可能である。
【0025】
電極30は、電極先端面32Dを有する先端側部材32と、電極支持棒17Bと繋がる後端側部材34から成り、先端側部材32と後端側部材34とを接合することによって電極30が構成されている。ここでは、SPSなどの固相接合によって接合されている。
【0026】
後端側部材34は、電極軸X(以下では、軸方向Xともいう)を中心軸として凸部35Aを設けた円柱状部材35を備え、また、凸部35Aから電極先端面32D側に向けて柱状部50(ここでは円柱状)が形成されている。先端側部材32には、軸方向Xに沿って、柱状部50を囲う筒状の凹部40が同軸的に形成され、電極先端面32Dとは逆方向を向く(凹んでいる)。
【0027】
先端側部材32と後端側部材34とは、その端部32E、34Eにおいて固相接合している。柱状部50は、電極支持棒側の端面50Bが円柱状部材35の凸部35Aの端面35Dと固相接合し、電極先端側の端面50Aが、凹部40の底面40Bと固相接合している。柱状部50の端面50Bの電極軸Xに沿った位置、すなわち柱状部50と円柱状部材35との接合面の位置は、後端側部材34の端部34Eの電極軸Xに沿った位置(接合面の位置)よりも、電極先端面側に位置する。
【0028】
先端側部材32と、後端側部材34の円柱状部材35は、ここではタングステンやモリブデンなどの熱伝導性のある金属によって成形され、ランプ点灯中、固体として維持される。柱状部50も、ランプ点灯中に固体として維持される熱伝導性部材である一方、ランプ点灯時や電極熱処理時の高温状態になると、液状の伝熱体が溶出するように構成されている。
【0029】
ここでは、柱状部50が、タングステンの多孔質体で構成され、タングステンよりも熱伝導率の高い銀を含侵させた合金(銀タングステン)から成る。電極の熱処理時やランプ点灯時の高温状態(約1500℃以上)になると、銀が柱状部50の側面50Sなどの表面から溶出する。
【0030】
柱状部50と凹部40との間には、軸方向Xに沿って、管状の内部空間60が柱状部50の周囲全体に渡って形成されている。柱状部50および凹部40は、ともにその中心軸が電極軸Xと一致し、電極軸Xに対して対称的形状になっている。凹部40の底面40Bも電極軸Xに関して対称的であり、内部空間60は、電極軸Xに関して対称的空間形状になっている。なお、底面40Bと側面40Sとの成す角(凹部40の角)は、曲面を有するように構成してもよい。
【0031】
内部空間60の体積は、柱状部50の体積と比べて小さい。柱状部50の半径をr、電極軸Xから凹部40の側面40Sまでの距離をRとすると、内部空間60は、R-r<rを満たすように形成されている。すなわち、内部空間60における凹部40の側面40Sと柱状部50の側面50Sとの電極軸垂直方向に沿った幅が、柱状部50の半径rよりも短くなるように、柱状部50が凹部40の形成する内側空間の大部分を占めるような太さで構成されている。
【0032】
図3は、ランプ点灯中の電極内部状態を示した断面図である。
【0033】
柱状部50は、後端側部材34の円柱状部材35、先端側部材32と熱膨張率が異なる。そのため、ランプ製造時の電極熱処理工程、あるいはランプ点灯による電極温度上昇によって、柱状部50の端面50Aが、凹部40の底面40Bから剥がれやすくなる(あるいは、柱状部50の端面50Bが、円柱状部材35の端面35Dから剥がれやすくなる)。図3(A)では、柱状部50の端面50Aと凹部40の底面40Bとの接合面の剥がれによって形成された隙間60D(ランプ製造時および/またはランプ点灯中に形成された内部空間60の一部)を描いている。
【0034】
一方で、ランプ点灯中に柱状部50が先端側部材32からの熱によって加熱され、銀70の融点を超えると、含侵させた銀70が、柱状部50から内部空間60に溶出する。そして液状の銀70が、柱状部50と凹部40との間に形成された隙間60Dに入り込む(図3(B)参照)。これによって、凹部40の底面40B側からの熱が、隙間60Dを占める銀を介して柱状部50に輸送される。銀70が隙間60Dに入り込むことで熱伝導性は維持され、ひいては熱伝導率の高い銀70が介在することによって、熱伝導性能がより高まる結果となる。
【0035】
上述したように、内部空間60の体積は柱状部50の体積より小さい、あるいは凹部40の形成する内側空間より極めて小さくなるように内部空間60が形成されている。このことは、凹部40の側面40Sとそれに対向する柱状部50の側面50Sが、液状の銀70が内部空間60において少なくとも電極軸方向に関して対流する、すなわち、電極軸方向に熱せられた流体が上側へ上昇し、周囲の低温流体が流れ込むことを抑制するような流路抵抗を付与する。
【0036】
そして、柱状部50と凹部40との間に生じた隙間60Dに入り込む液状の銀70も、電極軸X方向に沿った移動が抑制される。このような移動の抑制された液状の銀70が、非対流で(隙間60Dを含めて)内部空間60の一部を占めることにより、先端側部材32側からの熱を、熱伝導性を低下させることなく、柱状部50へ輸送することができる。熱伝導率の高い銀タングステンから成る柱状部50は、電極支持棒17B側へ効率よく熱を輸送し、電極の温度上昇をより効果的に抑えることができる。
【0037】
このように本実施形態によれば、電極30が、電極先端面32Dを含む先端側部材32と、電極支持棒17Bと接続する後端側部材34から構成され、先端側部材32に凹部40が形成され、凹部40内に、凹部40と同軸配置された柱状部50が形成される。柱状部50は、銀タングステンから成り、ランプ点灯時などにおいて、液状の銀が、柱状部50と凹部40との間に形成される内部空間60、60Dへ溶出する。
【0038】
電極30内に銀タングステンから成る柱状部50を配置することによって、ランプ点灯中、2つの伝熱体、すなわち、熱伝導部材として機能する柱状部50と、熱伝導性の高い液状の銀70が設けられる構成にすることができる。
【0039】
上記電極30は、以下のように製造することができる。すなわち、電極先端面を有することになる柱状の熱伝導性をもつ先端側固体部材に対して筒状凹部を中心軸周りに形成する。また、熱伝導性のある円柱状固体部材に対し、凹部の内径より小さい凸部をその中心軸周りに形成する。そして、多孔質性の銀タングステンから成る柱状部材を、凸部の径および凹部の底面からの高さに合わせて柱状に形成する。
【0040】
その後、柱状部材が凹部に同軸配置されるように、先端側固体部材と、柱状部材と、後端側固体部材とを含む部材を組み合わせ、SPSなどの固相接合を行うことよって、先端側固体部材と後端側固体部材とを含む電極を形成する。
【0041】
このような製造方法により、液状の伝熱体を別途封入する工程を含めることなく、電極の熱処理時やランプ点灯時に液状の銀70が柱状部50から溶出する電極30を製造することができる。電極30以外の放電ランプ製造工程(電極30の放電管12への配置、封止工程など)は、従来知られた製造方法で行えばよい。
【0042】
なお、柱状部50の径と凸部35Aの径は同じである必要はない。後端側部材34については、円柱状部材35に凸部35Aを設けない構成にしてもよい。柱状部50は、その両端面50A、50Bを、円柱状部材35の凸部35Aの端面35Dおよび凹部40の底面40Bとそれぞれ固相接合させなくてもよく、どちらか一方の端面あるいは両端面とも、単に接するように構成してもよい。上述した実施形態においては隙間60Dが形成されているが、当然のことながら、隙間60Dは無くてもよく、一方で、柱状部50の軸方向長さを僅かに短く設計し、電極製造時の段階で電極軸垂直方向に沿った隙間(隙間60D)を形成してもよい。
【0043】
接合方法は固相接合(SPS、HPなど)が好適であるが、他の接合方法(例えば溶融接合)も適用できる。接合の際、先端側部材と後端側部材との間に中間部材を挟み、接合面間の密着化をしてもよい。また、柱状部50の両端面50A、50Bと、円柱状部材35の端面35Dおよび凹部40の底面40Bとの間に中間部材を挟んでもよい。中間部材としては、例えばレニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、あるいはこれらの合金が適用可能である。
【0044】
柱状部と凹部の形状、サイズなどは任意であり、例えば軸方向Xに沿って径が変化する(拡径あるいは縮径)柱状部50を形成し、それに応じた(相補的な)形状の凹部を形成することが可能である。また、凹部40の底面40Bに凸部や凹部あるいは曲面などを設けてもよく、それに合わせた(相補的な)柱状部50の電極先端側の端部の形状にしてもよい。凹部40、柱状部50の断面形状を円状以外の形状にすることも可能である。
【0045】
本実施形態では、柱状部50が電極先端側へ延びる構成であるが、その逆の構成、すなわち、先端側部材に柱状部、後端側部材に凹部を形成してもよい。さらに、電極軸Xに沿って内部空間を設けず、略隙間が生じないように柱状部が凹部に嵌合するように構成してもよい。
【0046】
逆に、内部空間については、電極軸Xに沿った管状の内部空間に限定せず、柱状部と凹部との間に電極軸垂直方向に沿って隙間を形成した軸方向断面コの字状の内部空間を形成してもよい。さらには、柱状部の径を小さくし、凹部の内側空間の大部分(半分以上)を内部空間で形成する構成にすることも可能である。
【0047】
柱状部50については、銀を含侵させた多孔質の銀タングステン以外の構成にすることも可能であり、ランプ製造時および/またはランプ点灯時に液状の伝熱体が柱状部から溶出する構成であればよい。例えば、銅タングステンや銅モリブデン、銀ダイヤモンドなどでもよい。
【0048】
次に、図4を用いて、第2の実施形態である放電ランプについて説明する。第2の実施形態では、ランプ点灯時に液状となる伝熱体が、内部空間にあらかじめ設けられている。
【0049】
図4は、第2の実施形態である放電ランプの電極の概略的断面図である。
【0050】
電極(陽極)30’は、第1の実施形態と同様、先端側部材32’と後端側部材34’から構成され、凹部40’には柱状部50’が配置されている。また、柱状部50’は、凹部40’、後端側部材34’の円柱状部材35’と接合している。
【0051】
柱状部50’は、ここでは、ランプ点灯温度で溶出する物質は含まれておらず、先端側部材32’や後端側部材34’と同じ素材で構成する。例えば、タングステンやモリブデンなどの金属やその合金で構成することが可能である。あるいは、ホウ化ジルコニウムなどのホウ化物やセラミックなどの熱伝導率の高い部材を適用してもよい。
【0052】
先端側部材32’に形成された凹部40’と、柱状部50’との間に形成された内部空間60’には、粒状の伝熱体70’があらかじめ封入されている。伝熱体70’は、点灯開始前の状態(常温)では固体で、ランプ点灯時に溶融する液体が適用可能であり、例えばフッ化マグネシムやフッ化カルシウムなどのフッ化物、酸化タングステンや酸化ビスマスなどの酸化物が適用できる。ここでは、銅が用いられている。柱状部50’の側面50’Sには、周方向に沿った微細溝Mが柱状部50’の長さ全体に渡って形成されている。微細溝Mは、例えばレーザ加工によって形成することができる。
【0053】
ランプ点灯時、柱状部50’が凹部40’の底面40’Bから剥がれて生じる隙間(図4では図示せず)に溶融した伝熱体70’が入り込み、仮に剥離などが生じても、電極軸Xに沿った熱伝導性が維持される。また、内部空間60’に存在する伝熱体70’は、少なくとも電極軸方向に沿って流体が上昇する流れが生じる対流が抑えられた非対流状態にあるため、(隙間を含めて)内部空間60’に留まり、電極軸Xに沿った熱伝導性がより優れたものになる。
【0054】
その一方で、第1の実施形態と同様、柱状部50’の端面50’Bの電極軸Xに沿った位置、すなわち接合面の位置が、後端側部材34’の端部34E’の電極軸Xに沿った接合面の位置よりも電極先端面側に位置するため、液状の伝熱体70’が先端側部材32’と後端側部材34’との接合面から漏れ出るのを防ぐことができる。
【0055】
柱状部50’の側面50’Sに微細溝Mが形成されていることにより、柱状部50’の側面50’Sが凹凸形状になり、流路抵抗を大きくすることに貢献する。その結果、液状の伝熱体70’の移動を抑制して非対流を作り出すことができる。また、電極軸垂直方向内側に熱を吸収しやすく、柱状部50’から電極支持棒側へ熱を輸送しやすくすることができる。なお、柱状部50’の側面50’Sに溝Mを形成する代わりに、放射性をもつ膜を形成してもよい。また、第1の実施形態に対しても微細溝Mなどを形成することが可能であり、少なくとも電極先端側(凹部40の底面40B)付近に形成すればよい。
【符号の説明】
【0056】
10 放電ランプ
30 電極
32 先端側部材
34 後端側部材
40 凹部
50 柱状部
60 内部空間
70 銀(伝熱体)
図1
図2
図3
図4