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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099061
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】鉄骨部材の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
E04B1/94 V
E04B1/94 D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079990
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2021198881の分割
【原出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛇石 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】花井 厚周
(72)【発明者】
【氏名】南谷 知輝
(57)【要約】
【課題】鉄骨部材の耐火性能の低下を抑制することを目的とする。
【解決手段】鉄骨部材の耐火被覆構造は、鋼管12と、鋼管12の周囲に配置され、鋼管12を耐火被覆する複数の木質耐火被覆材30と、隣り合う木質耐火被覆材30の端部が突き当てられた隅部30Cに沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部40Aを有し、鋼管12の周囲に立てられ、隣り合う木質耐火被覆材30を支持する複数のコーナー下地材40と、断面C字形状にそれぞれ形成されるとともに、互いに背合わせ状態で、隣り合うコーナー下地材40の間に立てられ、木質耐火被覆材30を支持する一対の中間下地材70と、を備え、一対の中間下地材70上には、隣り合う木質耐火被覆材30の目地が位置し、該木質耐火被覆材30の端部がビスでそれぞれ取り付けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の木質耐火被覆材と、
隣り合う前記木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部を有し、前記鉄骨部材の周囲に立てられ、隣り合う前記木質耐火被覆材を支持する複数のコーナー下地材と、
断面C字形状にそれぞれ形成されるとともに、互いに背合わせ状態で、隣り合う前記コーナー下地材の間に立てられ、前記木質耐火被覆材を支持する一対の中間下地材と、
を備え、
一対の前記中間下地材上には、隣り合う前記木質耐火被覆材の目地が位置し、該木質耐火被覆材の端部がビスでそれぞれ取り付けられている、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項2】
隣り合う前記木質耐火被覆材の端部は、一対の前記中間下地材上で、相欠きによって継がれている、
請求項1に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨部材の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨部材を取り囲む複数の木質材が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
特許文献1では、鉄骨部材を被覆する耐火被覆材の表面に、木質材が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-008640号公報
【特許文献2】特開2019-056202号公報
【特許文献3】特開2019-206854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、隣り合う木質材の端部同士が突き当てられた角部は、火災時に、二方向から加熱されるため、他の部位と比較して温度上昇し易く、目地が開き易い。したがって、鉄骨部材の耐火性能が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、鉄骨部材の耐火性能の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、鉄骨部材と、前記鉄骨部材の周囲に配置され、前記鉄骨部材を耐火被覆する複数の木質耐火被覆材と、隣り合う前記木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲されるとともに該端部がそれぞれ取り付けられる一対のフランジ部を有し、隣り合う前記木質耐火被覆材を支持するコーナー下地材と、を備える。
【0008】
第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、鉄骨部材の周囲には、複数の木質耐火被覆材が配置される。これらの木質耐火被覆材によって、鉄骨部材が耐火被覆される。これにより、本発明では、石膏ボードやけい酸カルシウム板等によって鉄骨部材を耐火被覆する場合と比較して、炭素貯蔵量を増加する。したがって、脱炭素化に貢献することができる。
【0009】
また、隣り合う木質耐火被覆材は、コーナー下地材によって支持される。コーナー下地材は、隣り合う木質耐火被覆材の端部が突き当てられた隅部に沿って屈曲される一対のフランジ部を有し、この一対のフランジ部に、隣り合う木質耐火被覆材の端部が取り付けられる。
【0010】
これにより、火災時に、隣り合う木質耐火被覆材の端部間の目地の開きが抑制される。また、火災時に、仮に隣り合う木質耐火被覆材の端部間の目地が開いたとしても、隅部に沿って屈曲された一対のフランジ部によって、目地から鉄骨部材側への熱の侵入が遮蔽される。したがって、鉄骨部材の耐火性能が向上する。
【0011】
このように本発明では、脱炭素化に貢献しつつ、鉄骨部材の耐火性能を向上させることができる。
【0012】
第2態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造において、前記鉄骨部材から外側へ突出する第一ブラケットを備え、前記コーナー下地材は、前記第一ブラケットに対して前記鉄骨部材の材軸方向に重ねられた状態でボルト接合される第二ブラケットを有し、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの一方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、前記第一ブラケット及び前記第二ブラケットの他方のボルト孔は、前記木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる。
【0013】
第2態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、第一ブラケットは、鉄骨部材から外側へ突出する。また、コーナー下地材は、第二ブラケットを有する。第二ブラケットは、第一ブラケットに対して鉄骨部材の材軸方向に重ねられた状態でボルト接合される。
【0014】
このように第一ブラケット及び第二ブラケットを介してコーナー下地材を鉄骨部材に取り付けることにより、コーナー下地材の施工性が向上する。
【0015】
また、第一ブラケット及び第二ブラケットの一方のボルト孔は、木質耐火被覆材の幅方向に延びる長孔とされ、第一ブラケット及び第二ブラケットの他方のボルト孔は、木質耐火被覆材の厚み方向に延びる長孔とされる。
【0016】
これにより、鉄骨部材に対してコーナー下地材の取付位置の二方向に調整することができる。したがって、木質耐火被覆材の加工誤差や施工誤差等を吸収することができる。
【0017】
第3態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造において、前記コーナー下地材は、前記鉄骨部材と間隔を空けて配置され、前記鉄骨部材の周囲の躯体に支持される。
【0018】
第3態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、コーナー下地材は、鉄骨部材と間隔を空けて配置され、鉄骨部材の周囲の躯体に支持される。これにより、鉄骨部材の施工精度の影響を受けずに、コーナー下地材及び木質耐火被覆材を施工することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、鉄骨部材の耐火性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態に係る鉄骨部材の耐火被覆構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す平断面図である。
図2図1に示されるコーナー下地材、金属板、木質耐火被覆材、及び化粧材を分割した分解平断面図である。
図3】第二実施形態に係る鉄骨部材の耐火被覆構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す平断面図である。
図4】第二実施形態に係る鉄骨部材の耐火被覆構造の変形例が適用された鉄骨柱を示す平断面図である。
図5図4に示される鉄骨柱の柱脚部を示す平断面図である。
図6図5の6-6線断面図である。
図7図4に示される鉄骨柱の柱頭部を示す立面図(側面図)である。
図8図7の8-8線断面図である。
図9】第一実施形態に係る鉄骨部材の耐火被覆構造の変形例が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図1に対応する平断面図である。
図10図9に示されるコーナー下地材、金属板、木質耐火被覆材、及び化粧材を分割した分解平断面図である。
図11】第一実施形態に係る鉄骨部材の耐火被覆構造の変形例が適用された鉄骨梁を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。なお、各図に適宜示される矢印X方向、及び矢印Y方向は、互いに直交する水平二方向を示している。
【0022】
図1には、本実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱(以下、「CFT柱」という)10が示されている。CFT柱10は、鋼管12と、鋼管12の内部に充填されたコンクリート14とを備えている。
【0023】
鋼管12は、一例として、角形鋼管とされている。この鋼管12は、複数の木質耐火被覆材30によって耐火被覆されている。なお、鋼管12は、角形鋼管に限らず、丸形鋼管でも良い。また、鋼管12は、鉄骨部材の一例である。
【0024】
(第一ブラケット)
図2に示されるように、鋼管12の各角部には、後述するコーナー下地材40を取り付けるための一対の第一ブラケット20が取り付けられている。一対の第一ブラケット20は、鋼板等の金属板によって形成されており、厚み方向を鋼管12の材軸方向として配置されている。また、一対の第一ブラケット20は、鋼管12の材軸方向から見て、矩形状に形成されている。
【0025】
一対の第一ブラケット20は、鋼管12の各角部の外面(側面)に沿ってそれぞれ配置されている。つまり、一対の第一ブラケット20は、鋼管12の材軸方向から見て、互いに交差(本実施形態では略直交)する方向に沿って配置されている。各第一ブラケット20の一端部は、鋼管12の外面に突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。
【0026】
各第一ブラケット20には、複数の第一ボルト孔22が形成されている。複数の第一ボルト孔22は、第一ブラケット20を厚み方向に貫通する貫通孔とされている。また、複数の第一ボルト孔22は、後述する一方の木質耐火被覆材30Aの厚み方向(矢印X方向)に延びる長孔とされている。この第一ブラケット20には、後述するコーナー下地材40が取り付けられている。
【0027】
(木質耐火被覆材)
図1に示されるように、複数(本実施形態では4枚)の木質耐火被覆材30は、鋼管12を取り囲むように配置されている。より具体的には、複数の木質耐火被覆材30は、鋼管12の材軸方向から見て、鋼管12を取り囲む矩形枠状に配置されており、鋼管12を耐火被覆している。
【0028】
各木質耐火被覆材30は、鋼管12の外面との間に間隔Gを空けて配置されている。間隔Gは、断熱層(断熱空間)として機能する。また、鋼管12の外面と木質耐火被覆材30との間に間隔Gを空けることにより、鋼管12の外面に形成された溶接ビード等の凹凸と木質耐火被覆材30との干渉が抑制されるとともに、間隔Gによって、木質耐火被覆材30の施工誤差等が吸収可能とされる。
【0029】
各木質耐火被覆材30は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber)、LVL(Laminated Veneer Lumber)、集成材、又は合板等の木質板によって形成されている。なお、集成材等に用いる接着剤は、耐火性能の観点から熱硬化性樹脂系の接着剤が好ましい。
【0030】
木質耐火被覆材30は、耐火被覆材として機能する。具体的には、木質耐火被覆材30は、鋼管12を耐火被覆する燃え代層として機能する。燃え代層は、火災時に燃焼して炭化層(断熱層)を形成することにより、鋼管12側への火災熱の浸入を抑制する層とされる。
【0031】
木質耐火被覆材30の板厚(厚み)tは、要求される耐火性能に応じて適宜設定される。より具体的には、木材(木質材)は、1面加熱の場合、1時間加熱で40mm~60mm、2時間加熱で70mm~90mm、3時間加熱で100mm~120mm炭化する。また、木材(木質材)は、2面加熱になると、板厚に10%~20%の余裕が必要となり、柱・梁等の木材厚(木質耐火被覆材30の板厚t)としては、1時間加熱で44mm~72mm、2時間加熱で77mm~108mm、3時間加熱で110mm~144mmに設定される。
【0032】
また、木質耐火被覆材30に使用する樹種(木材)としては、例えば、カラマツ、ベイマツ、又はスギが挙げられる。ここで、樹種によって、加熱後に、木質耐火被覆材30の外面(見つけ面)の燃焼状態が異なる場合がある。例えば、スギの場合、木質耐火被覆材30の外面の全面において、燃焼が継続され易い。
【0033】
一方、カラマツ、及びベイマツの場合、木質耐火被覆材30の外面において、部分的に燃焼が継続されるが、全体としては燃え止まり易い。したがって、木質耐火被覆材30に使用する樹種(木材)としては、カラマツ、及びベイマツが好ましい。
【0034】
また、鋼管12は、熱伝導率が高い。そのため、火災時に、木質耐火被覆材30の外面において部分的に燃焼が継続しても、火災熱が鋼管12全体に拡散されるため、鋼管12の局所的な温度上昇が抑制される。さらに、鋼管12の内部のコンクリート14は、熱容量が大きいため、鋼管12の温度上昇がさらに抑制される。
【0035】
したがって、木質耐火被覆材30にカラマツ、又はベイマツを使用した場合であって、火災時に、木質耐火被覆材30の外面において部分的に燃焼が継続しても、CFT柱10の耐火性能は確保される。
【0036】
鋼管12の材軸方向から見て、隣り合う木質耐火被覆材30は、互いに略直交する方向(矢印X方向、矢印Y方向)に沿って配置されている。また、隣り合う木質耐火被覆材30は、各々の端部が突き当てられた状態で配置されており、その端部間に目地32が形成されている。これらの木質耐火被覆材30は、後述する金属板34を介してコーナー下地材40に取り付けられている。
【0037】
木質耐火被覆材30の外面は、化粧材38によって被覆されている。化粧材38は、例えば、木質材や、樹脂等の防水性を有する材料によって形成されており、木質耐火被覆材30の外面に重ねられた状態で図示しないビス等によって取り付けられている。この化粧材38によって、CFT柱10の意匠性が高められる。
【0038】
また、例えば、CFT柱10が屋外に設置される場合、耐候層としての化粧材38によって、雨等による木質耐火被覆材30の腐食等が抑制されるため、木質耐火被覆材30の耐久性が向上する。なお、化粧材38は、省略可能である。
【0039】
(コーナー下地材)
コーナー下地材40は、鋼管12の周囲に、当該鋼管12の材軸方向に沿って配置されるとともに、鋼管12の各角部に取り付けられている。また、コーナー下地材40は、断面L字形状の軽量鉄骨等によって形成されており、鋼管12の各角部の外側にそれぞれ配置されている。このコーナー下地材40は、鋼管12の材軸方向を長手方向として配置されており、鋼管12の柱脚部から柱頭部に亘っている。
【0040】
コーナー下地材40は、一対のフランジ部40Aを有している。一対のフランジ部40Aは、鋼管12の材軸方向から見て、隣り合う木質耐火被覆材30の隅部30Cに沿って屈曲されている。この一対のフランジ部40Aには、隣り合う金属板34の端部、及び隣り合う木質耐火被覆材30の端部がそれぞれ取り付けられている。
【0041】
(金属板)
断熱層としての金属板34は、熱伝導率が高い鋼板や鉄板等によって形成されており、鋼管12の外面(側面)と対向して配置されている。この金属板34の外面には、木質耐火被覆材30が重ねられている。
【0042】
金属板34及び木質耐火被覆材30は、隣り合うコーナー下地材40のフランジ部40Aの外面に亘って配置されており、その両端部が複数のビス36によって、フランジ部40Aに取り付けられている(共締めされている)。複数のビス36は、フランジ部40Aの長手方向の間隔を空けて配置されている。
【0043】
なお、木質耐火被覆材30の外面には、ビス36用のザグリ31が形成されている。また、木質耐火被覆材30及び金属板34を予め一体化されたユニットとしても良い。この場合、金属板34は、例えば、木質耐火被覆材30の内面に重ねられた状態で接着剤によって接合される。
【0044】
(第二ブラケット)
図2に示されるように、コーナー下地材40には、一対の第二ブラケット50が設けられている。一対の第二ブラケット50は、鋼板等の金属板によって形成されており、厚み方向を鋼管12の材軸方向として配置されている。また、一対の第二ブラケット50は、鋼管12を厚み方向から見て、矩形状に形成されている。
【0045】
一対の第二ブラケット50は、一対のフランジ部40Aの内面に沿ってそれぞれ配置されている。つまり、一対の第二ブラケット50は、鋼管12の材軸方向から見て、互いに略直交する方向(矢印X方向、矢印Y方向)に沿って配置されている。各第二ブラケット50の一端部は、一対のフランジ部40Aの内面に突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。
【0046】
各第二ブラケット50には、複数の第二ボルト孔52が形成されている。複数の第二ボルト孔52は、第二ブラケット50を厚み方向に貫通する貫通孔とされている。また、複数の第二ボルト孔52は、隣り合う木質耐火被覆材30A,30Bのうち、一方の木質耐火被覆材30Aの幅方向(矢印Y方向)に延びる長孔とされている。つまり、第一ボルト孔22と第二ボルト孔52とは、互いに略直交する方向(矢印X方向、矢印Y方向)に延びる長孔とされている。
【0047】
なお、第一ボルト孔22が、隣り合う一方の木質耐火被覆材30Aの幅方向に延びる長孔とされ、第二ボルト孔52が、隣り合う一方の木質耐火被覆材30Aの厚み方向に延びる長孔とされても良い。また、第一ボルト孔22及び第二ボルト孔52は、長孔に限らず、第一ボルト孔22及び第二ボルト孔52の少なくとも一方は、円形状の丸孔とされても良い。また、第一ボルト孔22及び第二ボルト孔52は、ボルト孔の一例である。
【0048】
一対の第二ブラケット50は、鋼管12に設けられた一対の第一ブラケット20に、鋼管12の材軸方向に重ねられた状態でボルト接合されている。具体的には、第一ブラケット20及び第二ブラケット50は、第一ボルト孔22及び第二ボルト孔52を貫通するボルト54及び図示しないナットによって接合されている。これにより、鋼管12の各角部に、コーナー下地材40が取り付けられている。
【0049】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0050】
図1に示されるように、本実施形態によれば、CFT柱10の鋼管12の周囲には、複数の木質耐火被覆材30が配置されている。これらの木質耐火被覆材30によって、鋼管12が耐火被覆されている。これにより、本実施形態では、石膏ボードやけい酸カルシウム板等によって鋼管12を耐火被覆する場合と比較して、炭素貯蔵量を増加する。したがって、脱炭素化に貢献することができる。
【0051】
また、隣り合う木質耐火被覆材30は、コーナー下地材40によって支持されている。コーナー下地材40は、隣り合う木質耐火被覆材30の端部が突き当てられた隅部30Cに沿って配置される一対のフランジ部40Aを有している。この一対のフランジ部40Aに、隣り合う木質耐火被覆材30の端部がそれぞれ取り付けられている。
【0052】
これにより、火災時に、隣り合う木質耐火被覆材30の端部間の目地32の開きが抑制される。また、火災時に、仮に隣り合う木質耐火被覆材30の端部間の目地32が開いたとしても、隅部30Cに沿って屈曲された一対のフランジ部40Aによって、目地32から鋼管12側への熱の侵入が遮蔽される。したがって、鋼管12の耐火性能が向上する。
【0053】
このように本実施形態では、脱炭素化に貢献しつつ、CFT柱10の鋼管12の耐火性能を向上させることができる。
【0054】
また、図2に示されるように、鋼管12の各角部には、一対の第一ブラケット20が設けられている。一対の第一ブラケット20は、鋼管12の角部の外面から外側へそれぞれ突出している。また、コーナー下地材40は、一対の第二ブラケット50を有している。一対の第二ブラケット50は、一対の第一ブラケット20に対して鋼管12の材軸方向にそれぞれ重ねられた状態でボルト接合されている。
【0055】
このように一対の第一ブラケット20、及び一対の第二ブラケット50を介してコーナー下地材40を鋼管12に取り付けることにより、コーナー下地材40の施工性が向上する。
【0056】
また、一対の第一ブラケット20の第一ボルト孔22は、隣り合う一方の木質耐火被覆材30Aの幅方向(矢印X方向)に延びる長孔とされている。また、一対の第二ブラケット50の第二ボルト孔52は、隣り合う一方の木質耐火被覆材30Aの厚み方向(矢印Y方向)に延びる長孔とされている。つまり、第一ボルト孔22と第二ボルト孔52とは、互いに略直交する方向(矢印X方向、矢印Y方向)に延びる長孔とされている。
【0057】
これにより、鋼管12に対してコーナー下地材40の取付位置を二方向(矢印X方向、矢印Y方向)に調整することができる。したがって、木質耐火被覆材30の加工誤差や施工誤差等を吸収することができる。
【0058】
また、木質耐火被覆材30は、鋼管12の外面との間に間隔Gを空けた状態で、コーナー下地材40に支持されている。これにより、鋼管12の外面と木質耐火被覆材30の内面との間に断熱層(空気層)が形成されるため、鋼管12の耐火性能がさらに高められる。
【0059】
さらに、鋼管12の外面と木質耐火被覆材30との間に間隔Gを空けることにより、鋼管12の外面に形成された溶接ビード等の凹凸と木質耐火被覆材30との干渉が抑制されるとともに、木質耐火被覆材30の施工誤差等が吸収される。
【0060】
また、木質耐火被覆材30は、鋼管12の外面を、断熱層としての金属板34を介して耐火被覆している。これにより、例えば火災時に、木質耐火被覆材30の外面において、部分的に燃焼が継続した場合に、金属板34によって火災熱が拡散され、火災熱が鋼管12の全体に分散して伝達される。この結果、鋼管12の局所的な温度上昇が抑制される。したがって、CFT柱10の耐火性能が向上する。
【0061】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0062】
図3には、本実施形態に係る鉄骨部材の耐火被覆構造が適用されたCFT柱10が示されている。CFT柱10の周囲には、複数のコーナー下地材60、補強下地材62、及び中間下地材70が配置されている。
【0063】
(コーナー下地材)
コーナー下地材60は、断面C字形状のスタッド(軽量鉄骨)によって形成されており、鋼管12の各角部の外側にそれぞれ配置されている。また、コーナー下地材60は、長手方向を鋼管12の材軸方向として配置されており、鋼管12の柱脚部から柱頭部に亘っている。このコーナー下地材60の断面形状は、隣り合う一方の木質耐火被覆材30の幅方向に延びる長方形状とされている。
【0064】
コーナー下地材60は、隣り合う木質耐火被覆材30の隅部30Cに沿って配置されている。このコーナー下地材60は、一対のフランジ部60Aを有している。一対のフランジ部60Aは、鋼管12の材軸方向から見て、隣り合う木質耐火被覆材30の隅部30Cに沿って屈曲されている。この一対のフランジ部60Aに、隣り合う金属板34の端部、及び隣り合う木質耐火被覆材30の端部が、複数のビス36によってそれぞれ取り付けられる。また、コーナー下地材60は、補強下地材62によって補強されている。
【0065】
(補強下地材)
補強下地材62は、コーナー下地材60と同様に、断面C字形状のスタッド(軽量鉄骨)によって形成されており、コーナー下地材60と隣接して配置されている。また、補強下地材62は、鋼管12の材軸方向から見て、コーナー下地材60と異なる向き(90°回転した向き)で配置されている。この補強下地材62によって、コーナー下地材60の倒れ等が抑制されている。なお、補強下地材62は、適宜省略可能である。
【0066】
(中間下地材)
隣り合うコーナー下地材60の間には、一対の中間下地材70が配置されている。一対の中間下地材70は、断面C字形状のスタッド(軽量鉄骨)によって形成されており、互いに背合わせ状態で配置されている。また、一対の中間下地材70は、鋼管12の材軸方向を長手方向として配置されており、鋼管12の柱脚部から柱頭部に亘っている。中間下地材70の断面形状は、当該中間下地材70が支持する木質耐火被覆材30の厚み方向に延びる長方形状とされている。
【0067】
(下側ランナー、上側ランナー)
コーナー下地材60、補強下地材62、及び中間下地材70の下端部は、下側ランナー80によって支持されている。下側ランナー80は、上方が開口した断面C字状の軽量鉄骨等によって形成されており、鋼管12の柱脚部を囲むように矩形枠状に複数配置されている。
【0068】
各下側ランナー80は、例えば、スラブ等の躯体にビス等によって固定されている。これらの下側ランナー80の内部にコーナー下地材60、補強下地材62、及び中間下地材70の下端部が嵌め込まれた状態で、図示しないビス等によって固定されている。
【0069】
これと同様に、コーナー下地材60、補強下地材62、及び中間下地材70の上端部は、図示しない上側ランナーによって支持されている。上側ランナーは、下方が開口した断面C字状の軽量鉄骨等によって形成されており、鋼管12の柱頭部を囲むように矩形枠状に複数配置されている。
【0070】
各上側ランナーは、例えば、上階のスラブや梁等の躯体にビス等によって固定されている。これらの上側ランナーの内部にコーナー下地材60、補強下地材62、及び中間下地材70の下端部が嵌め込まれた状態でビス等によって固定されている。なお、下側ランナー80及び上側ランナーは、ランナーの一例である。
【0071】
(木質耐火被覆材)
複数の木質耐火被覆材30は、CFT柱10の鋼管12を取り囲むように配置されており、鋼管12の外面と間隔Gを空けて配置されている。各木質耐火被覆材30は、コーナー下地材60と中間下地材70とに亘って配置されており、その両端部が複数のビス36によってコーナー下地材60及び中間下地材70にそれぞれ取り付けられている。
【0072】
隣り合う木質耐火被覆材30は、一対の中間下地材70上で、相欠きによって継がれている。これらの木質耐火被覆材30によって、CFT柱10の鋼管12が耐火被覆されている。
【0073】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。なお、上記第一実施形態と同様の作用及び効果は、説明を適宜省略する。
【0074】
図3に示されるように、隣り合う木質耐火被覆材30は、コーナー下地材60によって支持されている。コーナー下地材60は、一対のフランジ部60Aを有している。一対のフランジ部60Aは、隣り合う木質耐火被覆材30の端部が突き当てられた隅部30Cに沿って屈曲されている。この一対のフランジ部60Aに、隣り合う木質耐火被覆材30の端部がそれぞれ取り付けられている。
【0075】
これにより、火災時に、隣り合う木質耐火被覆材30の端部間の目地32の開きが抑制される。また、火災時に、仮に隣り合う木質耐火被覆材30の端部間の目地32が開いたとしても、隅部30Cに沿って屈曲された一対のフランジ部60Aによって、目地32から鋼管12側への熱の侵入が遮蔽される。したがって、鋼管12の耐火性能が向上する。
【0076】
このように本実施形態では、上記第一実施形態と同様に、脱炭素化に貢献しつつ、CFT柱10の鋼管12の耐火性能を向上させることができる。
【0077】
また、コーナー下地材60は、鋼管12と間隔Gを空けて配置され、下側ランナー80及び図示しない上側ランナーを介して、鋼管12の周囲の躯体に支持されている。これにより、鋼管12の施工精度の影響を受けずに、コーナー下地材60及び木質耐火被覆材30を施工することができる。
【0078】
(第二実施形態の変形例)
上記第二実施形態では、コーナー下地材60がスタッドによって形成されている。しかし、コーナー下地材60は、スタッドに限らない。例えば、図4及び図5に示される変形例では、断面L字形状の軽量鉄骨等によってコーナー下地材90が形成されている。
【0079】
コーナー下地材90は、鋼管12の各角部の外側にそれぞれ配置されている。また、コーナー下地材90は、鋼管12の材軸方向を長手方向として配置されており、鋼管12の柱脚部から柱頭部に亘っている。
【0080】
コーナー下地材90は、一対のフランジ部90Aを有している。一対のフランジ部90Aは、隣り合う木質耐火被覆材30の隅部30Cに沿って屈曲されている。この一対のフランジ部90Aに、隣り合う金属板34の端部、及び隣り合う木質耐火被覆材30の端部がそれぞれ取り付けられている。
【0081】
図5及び図6に示されるように、コーナー下地材90の下端部は、下側ランナー92によって支持されている。図6に示されるように、下側ランナー92は、断面L字形状の軽量鉄骨等によって形成されており、鋼管12の柱脚部を囲むように矩形枠状に複数配置されている。各下側ランナー92は、例えば、スラブ等の躯体94にビス等によって固定されている。これらの下側ランナー92にコーナー下地材90の下端部がビス等によって固定されている。
【0082】
図7及び図8に示されるように、コーナー下地材90の上端部は、上側ランナー96によって支持されている。上側ランナー96は、断面L字形状の軽量鉄骨等によって形成されており、鉄骨梁100の下側フランジ部100Aに取り付けられている。この上側ランナー96にコーナー下地材90の上端部がビス等によって固定されている。
【0083】
なお、図7に示されるように、隣り合うコーナー下地材90は、繋ぎ材98を介して連結しても良い。また、上側ランナー96及び下側ランナー92は、ランナーの一例である。
【0084】
このようにコーナー下地材90の形状や支持構造は、適宜変更可能である。
【0085】
(第一~第三実施形態の変形例)
次に、上記第一実施形態~第三実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態及び上記第三実施形態にも適宜適用可能である。
【0086】
上記第一実施形態では、鉄骨部材がCFT柱10の鋼管12とされている。しかし、鉄骨部材は、鋼管12に限らず、形鋼でも良い。
【0087】
例えば、図9及び図10に示される変形例では、鉄骨部材としての鉄骨柱110が、H形鋼で形成されている。鉄骨柱110は、水平方向に互いに対向する一対のフランジ部110A,110Bと、一対のフランジ部110A,110B同士を接続するウェブ部110Cとを有している。
【0088】
一対のフランジ部110Aの両側の端部には、一対の第一ブラケット20が溶接等によってそれぞれ取り付けられている。この一対の第一ブラケット20に、一対の第二ブラケット50を介してコーナー下地材40が取り付けられている。
【0089】
また、上記第一実施形態では、鉄骨部材が柱(CFT柱10)とされている。しかし、鉄骨部材は、柱に限らず、鉄骨梁でも良い。例えば、図11に示される変形例では、鉄骨部材が鉄骨梁120とされている。
【0090】
鉄骨梁120は、H形鋼によって形成されている。この鉄骨梁120は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部120A及び下側フランジ部120Bと、上側フランジ部120A及び下側フランジ部120Bを接続するウェブ部120Cとを有している。
【0091】
下側フランジ部120Bの両側の端部には、一対の第一ブラケット20が溶接等によってそれぞれ取り付けられている。この一対の第一ブラケット20に、一対の第二ブラケット50を介してコーナー下地材40が取り付けられている。
【0092】
上側フランジ部120Aの上には、スラブ130が設けられている。この上側フランジ部120Aの両側の端部には、1つの第一ブラケット20が溶接等によってそれぞれ取り付けられている。この第一ブラケット20に、第二ブラケット50を介して下地材140が取り付けられている。下地材140は、フラットバー等によって形成されている。この下地材140に、木質耐火被覆材30の端部が複数のビス等によって取り付けられている。
【0093】
このように鉄骨部材は、CFT柱や鉄骨柱に限らず、鉄骨梁でも良い。
【0094】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0095】
12 鋼管(鉄骨部材)
20 第一ブラケット
22 第一ボルト孔(ボルト孔)
30 木質耐火被覆材
30C 隅部
40 コーナー下地材
40A フランジ部
50 第二ブラケット
52 第二ボルト孔(ボルト孔)
60 コーナー下地材
60A フランジ部
90 コーナー下地材
90A フランジ部
110 鉄骨柱(鉄骨部材)
120 鉄骨梁(鉄骨部材)
G 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11