(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099065
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】水性貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20240717BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240717BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240717BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20240717BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61K9/70 405
A61K47/32
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/38
A61K31/192
A61K31/19
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080658
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2018199959の分割
【原出願日】2018-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】中筋 幸博
(72)【発明者】
【氏名】稲付 昌弘
(57)【要約】
【課題】 膏体の塗工量が少ない水性貼付剤において、フィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支持体として用いたときであっても、製造時や保存時においては膏体の支持体からの裏抜けがなく、かつ使用時の粘着力が良好に維持される水性貼付剤を提供すること。
【解決手段】 膏体成分として、水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%含む、含水率が25~45重量%である低含水量の膏体を、厚み0.4~0.7mm(目付:80~110g/m
2)の支持体に、塗工量として300~600g/m
2の範囲で塗布してなることを特徴とする水性貼付剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膏体成分として、ケトプロフェン、アクリル系ポリマーを含む水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%および架橋剤を含有する、含水率が25~45重量%である低含水量の膏体を、厚み0.4~0.7mm及び目付80~110g/m2の支持体に、塗工量として300~600g/m2の範囲で塗布してなり、日本薬局方「一般試験 6.12 粘着力試験法」の「3.2 傾斜式ボールタック試験法」による粘着力としてボールナンバー(No.)10以上の粘着力を有することを特徴とする水性貼付剤であって、前記アクリル系ポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物およびポリアクリル酸から選択される1種又は2種以上である水性貼付剤。
【請求項2】
アクリル系ポリマー以外の水溶性ポリマーが、ゼラチン、寒天、プルラン、各種ガム類、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンから選択される1種又は2種以上のものである請求項1に記載の水性貼付剤。
【請求項3】
他の多価アルコールが、D-ソルビトール液、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および1,3-ブタンジオールから選択される1種又は2種以上のものである請求項1に記載の水性貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工量の少ない水性貼付剤において、厚みの薄い支持体を用いた場合であっても、保存時においては膏体の裏抜けがなく、かつ使用時の粘着力が良好に維持する水性貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、貼付剤はその厚みが薄いものの方が、衣服に絡みつきにくく使用感が良いため好まれている。そのため、できるだけ膏体の塗工量を少なくし膏体層の厚みを薄くし、且つまた、支持体の厚みも薄くする等、両方の厚みを抑える検討がなされている。
しかしながら、パップ剤に代表される水性貼付剤の場合にあっては、貼付剤基剤となる膏体が架橋するまでの間は流動性が高い状態に置かれているため、膏体が支持体の裏側へ染み出してしまい、貼付時に手がべたつく問題があり、また、保管時に包装袋内部に貼付剤製剤が張り付くといった不都合がおこりやすい。
さらには、膏体が支持体にめりこみすぎることにより、粘着性の低下が起こるといった問題もある。
【0003】
そのため、薄型の水性貼付剤を検討する場合には、支持体から膏体の裏抜けを防止するためにフィルムが積層された支持体を使用することが検討されてきている(例えば、特許文献1及び2)。
しかしながら、この場合にあっても、通常使用されている不織布等の支持体にフィルム層を積層することにより、皮膚への追従性が悪くなり、また、貼付部分の皮膚がフィルムの積層により蒸れることとなり、更には、製造コストが高くなるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-213768号公報
【特許文献2】特開2005-224981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の現状に鑑み、膏体の塗工量が少ない水性貼付剤において、フィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支持体として用いたときであっても、製造時や保存時においては膏体の支持体からの裏抜けがなく、かつ使用時の粘着力が良好に維持される水性貼付剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果,水性貼付剤の膏体の調製において含有する水分量を低減させると共に、膏体基剤成分として水溶性ポリマーおよび多価アルコールの両者を特定量用い、その上でグリセリンを少なくとも多価アルコールの一種として特定量含有させた低含水量の膏体を調製し、かかる膏体を、フィルム等を積層していない厚みの薄い支持体に塗工することにより、上記課題が解決できる水性貼付剤となり得ることを新規に見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
而して、本発明は、その基本的態様は、
(1)膏体成分として、水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%含む、含水率が25~45重量%である低含水量の膏体を、厚み0.4~0.7mm(目付:80~110g/m2)の支持体に、塗工量として300~600g/m2の範囲で塗布してなることを特徴とする水性貼付剤;
である。
【0008】
より具体的な本発明は、
(2)水溶性ポリマーが、ゼラチン、寒天、プルラン、各種ガム類(キサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム等)、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンから選択される1種または2種以上のものである上記(1)に記載の水性貼付剤;
(3)他の多価アルコールが、D-ソルビトール液、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および1,3-ブタンジオールから選択される1種または2種以上のものである上記(1)に記載の水性貼付剤;
(4)膏体中に更に薬効成分を含有してなる、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の水性貼付剤;
(5)薬効成分が、ロキソプロフェンナトリウム、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ザルトプロフェン、フェンブフェン、プラノプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、フェルビナク、メフェナム酸、インドメタシン、またはジクロフェナクナトリウムから選択されるものである上記(4)に記載の水性貼付剤;
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支持体として用い、膏体の塗工量の少ない薄型の水性貼付剤において、製造時および保存時に支持体に対する膏体の裏抜けがなく、その上、優れた粘着力を持続する水性貼付剤を提供することができる。
したがって、本発明の膏体中に消炎鎮痛剤等の薬効成分を含有させた水性貼付剤は、優れた経皮吸収性、安定性、および高い保存安定性を兼ね備えた水性貼付剤であり、その効果は多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実験例4におけるin vitro皮膚透過性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記したように、本発明の基本的態様は、膏体成分として、水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%含む、含水率が25~45重量%である低含水量の膏体を、厚み0.4~0.7mm(目付:80~110g/m2)の支持体に、塗工量として300~600g/m2の範囲で塗布してなることを特徴とする水性貼付剤である。
【0012】
本発明が提供する水性貼付剤において、膏体を構成する基剤成分である主成分として用いられる水溶性ポリマーとしては、例えば、ゼラチン、寒天、プルラン、各種ガム類(キサンタンガム、アラビアガム、ローカストビーンガム等)等といった天然ポリマーや、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等といった半合成ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等といった合成ポリマー、などを挙げることができる。
これらの水溶性ポリマーは単独または2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0013】
前記水溶性ポリマーの膏体組成中における配合量は、10~20重量%であり、より好ましくは、10~15重量%である。
水溶性ポリマーの配合量が10重量%未満の場合には、膏体粘度が低すぎて、貼付剤として成形することが難しくなる。
また、20重量%を超える場合には、膏体粘度が高くなりすぎて、膏体の展延工程の作業性が悪くなる。
【0014】
本発明が提供する水性貼付剤において、膏体を構成する他の基剤成分である主成分として配合する多価アルコールは、例えば、グリセリン、D-ソルビトール液、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等があげられるが、なかでもD-ソルビトール液、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびグリセリンを使用するのが好ましい。
【0015】
これらの多価アルコールは、前記した多価アルコールを、適宜複数種組合せて用いることが重要であり、その中でも、グリセリンを多価アルコールの一種として使用する必要がある。
グリセリンは、膏体の物性を保つために必須の成分であり、かかるグリセリンとしては通常、日本薬局方に規定する濃グリセリンが用いられる。
【0016】
多価アルコールの配合量は、20~50重量%であり、好ましくは30~45重量%の範囲で使用するのが良い。
多価アルコールの配合量が50重量%を超える場合には、基剤の粘度が上昇することから、製造時における作業性が悪くなり好ましくない。
また、多価アルコールの配合量が20重量%未満である場合には、基本的な貼付剤の特性、例えば、粘着性、保形性、耐熱性等が悪化してしまい、好ましいものではない。
【0017】
多価アルコールとしての必須成分となるグリセリンの配合量は、膏体の物性を保つために10~40重量%の範囲で配合することが好ましい。また、配合する多価アルコールの20%以上はグリセリンであることが好ましい。
なお、多価アルコールとしてのグリセリンの配合量が10重量%未満である場合には、膏体の物性が保てず、支持体に対する膏体の裏抜けの原因となり、40重量%を超える場合には、含有させる薬物によっては安定性に影響を与える可能性も懸念されるため、好ましいものではない。
【0018】
したがって、本発明が提供する水性貼付剤としては、膏体成分として水溶性ポリマーを10~20重量%および多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、多価アルコールの一種として少なくともグリセリンを10~40重量%含む点に、一つの特徴を有し、この特徴点により、目的とする水性貼付剤の粘着性、保形性、耐熱性等が維持されるのである。
【0019】
本発明が提供する水性貼付剤において、水溶性ポリマーを架橋させる架橋剤としては、通常の多価金属塩を挙げることができる。具体的には、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等が挙げることができ、なかでも、好ましくはメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、およびジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートである。
【0020】
これらの架橋剤は、単独または2種以上を使用することができる。また、その配合量はその種類に応じて異なるが、0.02~0.4重量%が好ましい。さらに0.04~0.2重量%がより好ましい。
【0021】
本発明が提供する水性貼付剤は、膏体の調製時に含有させる水分量を低減させることにまた一つの特徴を有する。
かかる水の配合量は、膏体重量に対して25~45重量%であり、より好ましくは30~40重量%である。
含水量が45重量%を超えた場合、膏体粘度の低下による保形性の悪化、および膏体のべとつき、裏抜けが見られる。また、粘着力が著しく低下し、貼付部位への接着力が十分に得られず好ましくない。
また、含水量が25重量%未満では、膏体粘度が高くなりすぎて、展延工程の作業性が悪くなる。
【0022】
本発明が提供する水性貼付剤にあっては、薬効成分を配合することもできる。本発明の水性貼付剤において配合される薬効成分としては、例えばロキソプロフェンナトリウム、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ザルトプロフェン、フェンブフェン、プラノプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、フェルビナク、メフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナクナトリウム等の消炎鎮痛剤、ジフェンヒドラミン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、ジブカイン、プロカイン、オキシブプロカイン、リドカイン、グリチルレチン酸、吉草酸ベタメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、塩酸クロコナゾール、ラノコナゾール、オキシコナゾール、硝酸ミコナゾール、硝酸イソコナゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。薬効成分は必要に応じて単独でも、また2種以上を併用してもよい。
【0023】
その他、本発明が提供する水性貼付剤においては、必要に応じてカオリン、酸化チタン、無水ケイ酸、酸化亜鉛、ベントナイト等の賦形剤;エデト酸塩、酒石酸、クエン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ジイソプロパノールアミン等の安定化剤;酢酸トコフェロール、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール等の抗酸化剤;L-メントール、ハッカ油、dl-カンフル等の清涼化剤;トウガラシ末、トウガラシエキス等のトウガラシ由来物質、カプサイシン、ジヒドロキシカプサイシン、カプシノイド等のカプサイシン類似体、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジル等の温感刺激剤;メチルパラベン、プロピルパラベン等の防腐剤;脂肪酸エステル、クロタミトン、植物油等の可塑剤;ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタンモノオレエート、オレイルエーテル等の界面活性剤等を、適宜、適量配合させることができる。
【0024】
本発明が提供する水性貼付剤にあっては、フィルム等の積層をしていない厚みの薄い支持体を使用する点にまた一つの特徴がある。
すなわち、本発明で提供される水性貼付剤において用いられる支持体としては、貼付後の貼付製剤の剥離を抑制する点から、身体の動きに追従する柔軟性に富む、薄いものが望ましい。
また、支持体としての不織布は伸縮性を有するものであって、縦および/または横への伸び率が100%以上である不織布が好ましい。
【0025】
かかる不織布の繊維材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン等が用いられる。また、製造法としては、ニードルパンチ法、水流絡合(スパンレース)法、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンボンド法、メルトブローン法等が挙げられるが、スパンレース法で製造された不織布が膏体の染み出し防止の観点から特に好ましい。
【0026】
本発明に用いられる厚みの薄い支持体である不織布としては、0.4~0.7mm厚を有する不織布であって、目付量は、80~110g/m2が好ましい。
そのような支持体としては、例えば、日本バイリーン社製の貼付薬用基布を使用することができる。
【0027】
支持体上に塗工した膏体の表面を被覆する剥離フィルムであるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニルの単独あるいは貼り合わせを用いることができ、さらにはこれらの表面をシリコーン処理、コロナ放電処理、凹凸処理、プラズマ処理等を施したものを用いることができる。
【0028】
本発明において、膏体の塗工量は水性貼付剤全体の厚みを抑えるために薄く塗工するのが良く、膏体の塗工量としては、300~600g/m2程度が良い。
【0029】
本発明が提供する水性貼付剤の製造方法は、特に限定はなく、当該技術分野において公知の製造方法にしたがって製造することができる。
例えば、前記の様な基剤成分で組成された貼付基剤を支持体上に展延し、水性基剤表面をプラスチックフィルムで被覆することにより、水性貼付剤を成形することができる。
【実施例0030】
以下に、実施例および比較例、並びに試験例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例1~4:(ケトプロフェン含有/低含水量の水性貼付剤)
下記表1に記載した処方(重量%)に基づいて、添加物を均一に混合し膏体を調製し、得られた膏体を支持体(スパンレース不織布;厚み:0.5~0.6mm/目付量:100g/m2)に膏体の塗工量が430g/m2になるように展延し、その膏体表面をプラスチックフィルムで被覆し、得られた貼付剤を10cm×14cmの矩形に裁断し、本発明の低含水量の水性貼付剤を調製した。
【0032】
比較例1~3:(ケトプロフェン含有水性貼付剤)
下記表2に記載した処方(重量%)に基づいて、添加物を均一に混合し膏体を調製し、得られた膏体を支持体(スパンレース不織布;厚み:0.5~0.6mm/目付量:100g/m2)に膏体の塗工量が430g/m2になるように展延し、その膏体表面をプラスチックフィルムで被覆し、得られた貼付剤を10cm×14cmの矩形に裁断し、比較例の水性貼付剤を調製した。
【0033】
なお、実施例5、6として、有効成分であるフルルビプロフェンおよびフェルビナクを含有させた本発明の低含水量の水性貼付剤を、同様に調製した。
【0034】
【0035】
【0036】
実験例1:支持体側への膏体の裏抜けの有無の検討
不織布上に膏体を展延した各実施例および比較例の貼付製剤について、保存時における膏体の支持体側への裏抜けの有無を観察した。
膏体の支持体側への裏抜けは、製造後、試験貼付製剤を室温にて1週間保管後に目視で調査した。
その結果を下記表3に示した。
【0037】
【0038】
実験例2:粘着力試験
傾斜式ボールタック法
各実施例および比較例の貼付製剤について、膏体の粘着力を調べるため、日本薬局方の傾斜式ボールタック法による粘着力試験を行った。
水平に対して30度の角度を有する傾斜板上アクリル板上に貼付剤の粘着面を上に向けて置き、上部10cm、下部15cmの部分を適当な紙で覆い、中央に5cm幅の粘着面を残し、径3.2mm~18.3mmの一連のスチールボールを斜面の上端より転がして、中央の粘着面で転落を止め得る最大のボールナンバーを調べた。
なお、ボールナンバーがNo.10以上であれば、粘着力は良好である。
その結果を、下記表4に示した。
【0039】
【0040】
実施例1~4(有効成分:ケトプロフェン)および実施例5(有効成分:フルルビプロフェン)並びに実施例6(有効成分:フェルビナク)の各貼付剤の粘着力は良好であるのに対し、比較例1~3の貼付剤の粘着力は実施例の製剤と比較して著しく低いものであった。
【0041】
実験例3:各実施例並びに比較例の貼付剤の膏体における、水分量、多価アルコール、グリセリン、水溶性ポリマーの含有量と、保型性等に及ぼす影響の検討
下記表5及び6に、各実施例並びに比較例の貼付剤における、水分含有量、多価アルコール/濃グリセリンの配合量、並びに水溶性ポリマーの含有量の比較をまとめた。
【0042】
【0043】
【0044】
アンダーライン:本発明の配合規定量の範囲外
【0045】
各実施例の貼付剤、並びに試験例の貼付剤について製造後1週間保存における膏体の支持体への裏抜けの有無、および膏体の支持体上における保型性を目視で検討し、その結果を併せて表5及び6中に示した。
【0046】
実施例1~4(有効成分:ケトプロフェン)および実施例5(有効成分:フルルビプロフェン)並びに実施例6(有効成分:フェルビナク)の各貼付剤は、膏体として、本発明の基本的態様である、
○:水溶性ポリマーを10~20重量%、
○:多価アルコールを20~50重量%を含有し、且つ、
○:グリセリン(濃グリセリン)を10~40重量%含む、
○:含水率が25~45重量%である低含水量の膏体、
を充足するものであり、膏体の支持体への裏抜けがなく、また、膏体のダレの発生がなく、保型性は良好なものである。
【0047】
これに対して比較例1の貼付剤は、膏体の含水量が本発明の規定量の25~45重量%を超える高含水量の膏体であり、その上、多価アルコールの配合量が本発明の20~50重量%の範囲を逸脱するものである。
また、比較例2の貼付剤にあっては、水溶性ポリマーの配合量が本発明の10~20重量%の範囲を逸脱するものであり、比較例3はグリセリンの配合量が本発明の10~40重量%の範囲を逸脱するものである。
その結果、比較例1~3の貼付剤にあっては膏体の支持体側への裏抜けが認められ、さらに膏体の保型性が悪く、ダレが生じていた。
【0048】
実験例4:in vitro皮膚透過性試験
表1と2に記載の処方に基づく実施例1と比較例1の貼付剤について、ヘアレスラット皮膚を用いたin vitroでの皮膚透過試験を行った。
【0049】
<方法>
雄性ラット(HWY系、8週齢)の側腹部摘出皮膚を37℃に保温した縦型の透過試験用拡散セルに固定し、摘出皮膚の角質層側には試験対象である製剤を貼付し、内側(真皮層側)にはレシーバー液としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を10mL加えた。その後、経時的にレシーバー液を0.2mL採取し、液体クロマトグラフ法によりケトプロフェン透過量を測定し、累積透過量(μg/cm2)を計算した。
【0050】
<結果>
各群4匹を用いて実験を行い、試験開始4、6、8、22及び24時間後におけるケトプロフェンの累積透過量(μg/cm
2)の平均値を下記表7に示し、その経時的な累積透過量の推移を
図1に示した。
【0051】
【0052】
表中及び図に示した結果からも判明するように、本発明製剤である実施例1の水性貼付剤は、比較例1の水性貼付剤と比較して著しく高い皮膚透過性を示す貼付剤であった。
【0053】
以上の結果から判断すると、本発明の特異的な膏体、すなわち、上記の低含水量の膏体は、支持体として、フィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支持体として用いて貼付剤を調製した場合には、製造時や保存時においては膏体の支持体からの裏抜けがなく、かつ使用時の粘着力が良好に維持される水性貼付剤となることが理解される。
また、含有される薬物の皮膚透過性も極めて良好なものであることが判明する。
【0054】
以下に、本発明の製剤の別の処方例を表8、表9に示した。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
【0056】
以上記載のように、本発明によれば、フィルム等を積層していない厚みの薄い不織布を支持体として用い、膏体の塗工量の少ない薄型の水性貼付剤において、製造時および保存時に支持体に対する膏体の裏抜けがなく、その上、優れた粘着力を持続する水性貼付剤を提供することができる。
したがって、例えば、消炎鎮痛剤等の薬効成分を含有させた本発明の水性貼付剤は、優れた経皮吸収性、安定性、および高い保存安定性を兼ね備えた水性貼付剤であり、その産業上の利用性は多大なものである。