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特開2024-99074触覚提示装置、触覚提示方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099074
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】触覚提示装置、触覚提示方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240718BHJP
   H10N 10/17 20230101ALI20240718BHJP
【FI】
G06F3/01 560
H01L35/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021054582
(22)【出願日】2021-03-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】折橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正啓
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA01
5E555BA20
5E555BB01
5E555BB20
5E555BC01
5E555CB20
5E555DA24
5E555DB57
5E555DC84
5E555DD06
5E555EA09
5E555FA00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザに対して様々な触覚を提示する触覚提示装置、触覚提示方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】触覚提示装置10は、支持体3と、膨張膜1と、熱電変換素子2と、駆動部(アクチュエータ)5とを具備する。膨張膜1は、支持体4との間に流体を保持する空間4を形成する。熱電変換素子2は、膨張膜1の支持体4側の面に複数配置される。駆動部5は、流体の流出入を制御する。膨張膜1の第2の面に熱電変換素子2を配置し、ユーザUの指が直接熱電変換素子2と接しない構造とすることにより、様々な触感提示が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜と、
前記膨張膜の前記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子と、
前記流体の流出入を制御する駆動部と
を具備する触覚提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記膨張膜は、第1の膨張膜と、前記第1の膨張膜よりも前記支持体側に位置する第2の膨張膜を含み、
前記空間は、前記第2の膨張膜と前記支持体との間に形成され、
前記熱電変換素子は、前記第1の膨張膜の前記支持体側の面に配置される
触覚提示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記複数の熱電変換素子のうち少なくとも1つは、前記膨張膜との接触面積が他の熱電変換素子と異なる
触覚提示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記膨張膜を複数有する
触覚提示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子が配置される前記膨張膜に配置された温度センサ、前記空間に配置された距離センサ、及び、前記空間に配置された気圧センサの少なくとも1つを更に具備する
触覚提示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記膨張膜の熱伝導率は0.2W/mK以上である
触覚提示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記複数の熱電変換素子は個別に制御される
触覚提示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子の駆動後、前記駆動部は前記空間へ前記流体を流入するように制御される
触覚提示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子は、昇温・降温速度を0~±10℃/sに可変して駆動される
触覚提示装置。
【請求項10】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記触覚提示装置は、前記膨張膜がユーザの皮膚に接するように配され、
前記熱電変換素子は、第1の昇温速度で任意の温度まで昇温後、前記第1の昇温速度の1/2以下の速度で降温し、前記熱電変換素子の温度が前記ユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら昇温するように制御される
触覚提示装置。
【請求項11】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記触覚提示装置は、前記膨張膜がユーザの皮膚に接するように配され、
前記熱電変換素子は、第1の降温速度で任意の温度まで降温後、前記第1の降温速度の1/2以下の速度で昇温し、前記熱電変換素子の温度が前記ユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら降温するように制御される
触覚提示装置。
【請求項12】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子は、前記触覚提示装置を装着するユーザに表示される映像に応じた温冷覚刺激となるように駆動される
触覚提示装置。
【請求項13】
請求項1に記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子は、予め準備されている、前記熱電変換素子により表現される温冷覚刺激の種類毎の前記熱電変換素子の制御パターンを用いて駆動される
触覚提示装置。
【請求項14】
支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜の前記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子の駆動と前記流体の流出入を制御する
触覚提示方法。
【請求項15】
支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜の前記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子の駆動と前記流体の流出入を制御する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ユーザに触覚を提示する触覚提示装置、触覚提示方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザに対して触覚を提示する各種の触覚提示装置が知られている。
例えば、下記特許文献1には、空気圧式の膨張空気袋上に温度の変化を作り出すペルチェデバイスが配置された、使用者に刺激を付与するトランスデューサが開示されている。該トランスデューサでは、膨張空気袋を用いてペルチェデバイスを持ち上げ、指に圧迫提示をし、ペルチェデバイスの硬い表面を皮膚に提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-528046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような分野において、ユーザに対して様々な触覚を提示することが可能な技術が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、ユーザに対して様々な触覚を提示することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る触覚提示装置は、支持体と、膨張膜と、熱電変換素子と、駆動部とを具備する。
上記膨張膜は、上記支持体との間に流体を保持する空間を形成する。
上記熱電変換素子は、上記膨張膜の上記支持体側の面に複数配置される。
上記駆動部は、上記流体の流出入を制御する。
【0007】
このような構成によれば、広い提示面積で、膨張膜の膨張による圧迫感や硬軟感といった圧覚刺激、及び、熱電変換素子による温冷覚刺激を行うことができ、様々な触感提示が可能となる。
【0008】
上記膨張膜は、第1の膨張膜と、上記第1の膨張膜よりも上記支持体側に位置する第2の膨張膜を含み、上記空間は、上記第2の膨張膜と上記支持体との間に形成され、上記熱電変換素子は、上記第1の膨張膜の上記支持体側の面に配置されてもよい。
【0009】
上記複数の熱電変換素子のうち少なくとも1つは、上記膨張膜との接触面積が他の熱電変換素子と異なってもよい。
上記膨張膜を複数有しても良い。
上記熱電変換素子が配置される上記膨張膜に配置された温度センサ、上記空間に配置された距離センサ、及び、上記空間に配置された気圧センサの少なくとも1つを更に具備しても良い。
【0010】
上記膨張膜の熱伝導率は0.2W/mK以上であってもよい。
上記複数の熱電変換素子は個別に制御されてもよい。
上記熱電変換素子の駆動後、上記駆動部は上記空間へ上記流体を流入するように制御されてもよい。
上記熱電変換素子は、昇温・降温速度を0~±10℃/sに可変して駆動されてもよい。
【0011】
上記触覚提示装置は、上記膨張膜がユーザの皮膚に接するように配され、
上記熱電変換素子は、第1の昇温速度で任意の温度まで昇温後、上記第1の昇温速度の1/2以下の速度で降温し、上記熱電変換素子の温度が上記ユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら昇温するように制御されてもよい。
【0012】
上記触覚提示装置は、上記膨張膜がユーザの皮膚に接するように配され、
上記熱電変換素子は、第1の降温速度で任意の温度まで降温後、上記第1の降温速度の1/2以下の速度で昇温し、上記熱電変換素子の温度が前記ユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら降温するように制御されてもよい。
【0013】
上記熱電変換素子は、上記触覚提示装置を装着するユーザに表示される映像に応じた温冷覚刺激となるように駆動されてもよい。
【0014】
上記熱電変換素子は、予め準備されている、上記熱電変換素子により表現される温冷覚刺激の種類毎の上記熱電変換素子の制御パターンを用いて駆動されてもよい。
【0015】
本技術に係る触覚提示方法は、支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜の上記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子の駆動と上記流体の流出入を制御する。
【0016】
本技術に係るプログラムは、支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜の上記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子の駆動と上記流体の流出入を制御する処理をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本技術の第1の実施形態に係る触覚提示装置の構成を示す模式断面図及び模式平面図である。
図2】第1~第3の実施形態に係る触覚提示装置の内部制御構成を示すブロック図及び熱電変換素子の制御構成を示す図である。
図3】熱電変換素子の動作原理を説明する図である。
図4図1の触覚提示装置における使用時の動作例を示す模式図である。
図5】第2の実施形態に係る触覚提示装置の構成及び動作の一例を示す模式断面図である。
図6】第3の実施形態に係る触覚提示装置の構成及び動作の一例を示す模式断面図である。
図7】第3の実施形態に係る触覚提示装置の構成例を示す模式平面図である。
図8】第4の実施形態に係る触覚提示装置の構成例を示す模式断面図である。
図9】触覚提示装置の適用例を説明する図である。
図10図9の触覚提示装置の使用例を示す図である。
図11図9の触覚提示装置の制御構成を示す機能ブロック図である。
図12】触覚提示装置の他の適用例を示す図である。
図13】触覚提示装置の更に他の適用例を示す図である。
図14図13の触覚提示装置の制御構成を示す機能ブロック図である。
図15】触覚提示装置の更に他の適用例を示す図である。
図16】触覚提示装置の更に他の適用例を示す図である。
図17】触覚提示装置の更に他の適用例を示す図である。
図18】触覚提示装置における熱電変換素子の配置例を示す図である。
図19】触覚提示装置における熱電変換素子と膨張膜とのの好ましい接触面積を説明するための図である。
図20】触覚提示装置における熱電変換素子の制御例を説明するための図である。
図21】触覚提示装置における熱電変換素子の他の制御例を説明するための図である。
図22】触覚提示装置における熱電変換素子の更に他の制御例を説明するための図である。
図23】触覚提示装置における熱電変換素子の更に他の制御例を説明するための図である。
図24】触覚提示装置における熱電変換素子の更に他の制御例を説明するための図である。
図25】触覚提示装置における基本的な触覚提示方法を示すフロー図である。
図26】提示例1での触覚提示装置における熱電変換素子の制御方法を示すフロー図である。
図27】提示例2での触覚提示装置における熱電変換素子の制御方法を示すフロー図である。
図28】提示例3での触覚提示装置における熱電変換素子の制御方法を示すフロー図である。
図29】触覚提示装置の変形例の模式断面図及び模式平面図である。
図30】触覚提示装置の他の変形例の模式断面図及び模式平面図である。
図31】熱電変換素子の構造例を説明する斜視図及び模式断面図である。
図32】熱電変換素子の他の構造例を説明する斜視図及び模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、同様の構成については同様の符号を付し、既出の構成については説明を省略する場合がある。
【0019】
<第1実施形態>
[全体構成及び各部の構成]
図1(A)は、本技術の第1実施形態に係る触覚提示装置10の構成を示す模式断面図である。図1(B)は、図1(A)の触覚提示装置10を上からみた模式平面図である。図上、触覚提示装置10の厚み方向をZ軸とし、該Z軸に互いに直交する軸をX軸及びY軸とする。明細書において、Z軸方向に上から触覚提示装置10をみた場合を平面視という。また、触覚提示装置の使用時の形態において、ユーザの皮膚に近い側を上又は皮膚側、その反対の側を下又は非皮膚側ということがある。
触覚提示装置は、触覚提示装置の一部を構成する後述する膨張膜が、ユーザの皮膚に接し、該皮膚に対して、圧迫感や硬軟感、温冷感といった触覚を提示する。本実施形態では、触覚提示対象部位が手の指先である例をあげて説明するが、指先に限定されない。他の例については後述する。
【0020】
図1に示すように、触覚提示装置10は、支持体3と、提示部9とを有する。
支持体3は例えば指先全体を載置可能な程度の大きさの平面を有した土台である。使用時、支持体3は例えば水平面を有する机上等に設置され、提示部9に指先をおいて使用される。
提示部9は、圧覚刺激及び温冷覚刺激によって、圧迫感や硬軟感、温冷感といった触覚を提示する。
提示部9は、流体を流出入可能な空間4と、空間4を覆うように設けられた膨張膜1と、膨張膜1の第2の面1bに配置された複数の熱電変換素子2とを有している。また、提示部9は、流体を供給する供給源14と、その駆動により空間4への流体の流出入を制御する駆動部としてのアクチュエータ5と、空間4と供給源14を繋ぐパイプ15とを有している。
【0021】
図1に示す例では、膨張膜1は略正円形の平面形状を有する。膨張膜1の周縁部は支持体3に固定される。支持体3に対して膨張膜1が設けられることによって、膨張膜1と支持体3との間に流体を保持する空間4が形成される。
尚、膨張膜1の形状は円形に限定されず、触覚提示装置の用途、触覚提示対象部位によって適宜設定され得る。
【0022】
空間4に保持される流体は、例えば、空気、ヘリウムなどの気体であってもよいし、水や油などの液体であってもよい。なお、流体の種類については特に限定されず、各種の流体を用いることができる。尚、流体として液体を用いる場合、熱電変換素子2に防水加工処理を施してもよい。
【0023】
膨張膜1は、第1の面1aと第2の面1bを有する。触覚提示装置10において、膨張膜1は露出している。第1の面1aは、触覚提示装置10の使用時に、ユーザの皮膚に接触する皮膚側面である。第2の面1bは、第1の面1aと反対側の非皮膚側面であり、支持体3側に位置する面である。
【0024】
膨張膜1は、薄い膜状に構成されており、空間4への流体の流出入により変形可能に構成されている。膨張膜1に用いられる材料としては、伸縮性を考慮して典型的にはシリコンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴムなどの各種のゴムが用いられる。なお、膨張膜1は、流体の空間4への流出入に応じて変形可能(膨張及び収縮可能)であればよく、ゴム以外の材料により構成されていてもよい。
【0025】
膨張膜1は、空間4への流体の流入に応じて伸びることで、外側に向けて膨張(突出)することが可能とされている。この膨張膜1の膨張により、ユーザの指先に対して圧覚刺激がなされる。また、膨張膜1は、空間4からの流体の流出に応じて縮むことで、外側へ向けて膨張した状態から収縮して元の状態へ戻ることが可能とされている。
このように、空間4への流体の流出入を制御することにより、ユーザの膨張膜1と接する皮膚に対して圧覚刺激を与え、圧迫感や硬軟感といった触覚を提示することができる。例えば、空間4の圧力の調整により提示する硬さの調整が可能である。
【0026】
アクチュエータ5は、空間4及び供給源14を繋ぐパイプ15に対して取り付けられている。アクチュエータ5は、その駆動により、空間4に対する流体の流出入を制御する。アクチュエータ5は、例えば、ポンプ、ファン、ブロア等の各種のアクチュエータ5により構成されるが、どのような構成とされていてもよい。
【0027】
供給源14は、パイプ15を介して空間4に流体を供給可能とされる。供給源14は、例えば、用いられる流体が空気の場合、エアコンプレッサなどの圧縮空気圧源であってもよい。また、用いられる流体が水などの液体である場合や、空気以外の特殊な気体(例えば、ヘリウムなど)である場合、流体を貯留可能なタンクなどであってもよい。
【0028】
熱電変換素子2は、典型的にはペルチェ素子である。
触覚提示装置10において、熱電変換素子の放熱または吸熱による熱を用いて、ユーザに対して温冷覚刺激を与え、温感や冷感を提示する。
【0029】
図3は、ペルチェ素子(熱電変換素子)の原理を示す動作説明図である。熱電変換素子2は、P型の熱電半導体23pとN型の熱電半導体23nが電極21aと電極21bに接合され、P型の熱電半導体23pとN型の熱電半導体23nに直流電流を流す電源22が電極21bに接続される。
熱電変換素子2は、図3(A)に矢印E1で示すように、N型の熱電半導体23nからP型の熱電半導体23pに直流電流を流すと、電極21a側から電極21b側へ熱が輸送されることで、電極21a側が吸熱により冷却されるとともに、電極21b側が放熱により加熱される。
これに対して、図3(B)に矢印E2で示すように、P型の熱電半導体23pからN型の熱電半導体23nに直流電流を流すと、電極21b側から電極21a側へ熱が輸送されることで、電極21b側が吸熱により冷却されると共に、電極21a側が放熱により加熱される。
このように、供給される電流の向きを変えることで、熱電変換素子2の加熱と冷却を切り替えることができる。
【0030】
熱電変換素子2は、膨張膜1の第2の面1b側に複数配置される。熱電変換素子2は、典型的には、平面形状が矩形の薄い板状である。尚、平面形状は矩形に限定されず、円形等、所望の形状とすることができる。
図1(B)に示す例では、同じ寸法の熱電変換素子2が5つ配置される。複数の熱電変換素子2のうちの1つは平面視で膨張膜1の中央に位置する。図1(B)において、他の4つの熱電変換素子2は、略中央に位置する熱電変換素子2のY軸方向に沿った上下、X軸方向に沿った左右それぞれに位置する。複数の熱電変換素子2は、互いに離間して位置する。
触覚提示装置10の使用時、ユーザの指先は、指の延びる方向がY軸方向と略平行となるように膨張膜1の第1の面1a上におかれる。
図1(B)において、膨張膜1のX軸方向における中央部に位置する3つの熱電変換素子に符号2Cを付す。膨張膜1のX軸方向における中央部の左右それぞれに位置する側部に位置する2つの熱電変換素子に符号2Sを付す。これら熱電変換素子を2C,2Sというように特に区別する必要がない場合は、熱電変換素子2という。
尚、熱電変換素子2の数や配置はこれに限定されない。熱電変換素子2の具体的な寸法及び配置等については後述する。
【0031】
熱電変換素子2は、膨張膜1の非皮膚側面となる第2の面1bに配置されるため、触覚提示装置10の使用時、ユーザUの指先は、膨張膜1を間に介して熱電変換素子2に間接的に接することになる。
ここで、熱電変換素子2を膨張膜1の第1の面1aに配置した場合、ユーザUには、熱電変換素子2の硬く平坦といった質感が提示される。このため、膨張膜1の膨張による圧覚刺激により、硬い、柔らかいといった質感を提示しても、ユーザUの指先に直接接する熱電変換素子2の存在によって、その質感を十分に提示することが難しい。
これに対して、本実施形態では、熱電変換素子2は、膨張膜1の非皮膚側面となる第2の面1bに配置されるので、圧覚刺激を用いた、硬い、柔らかいといった質感の提示が、熱電変換素子2が第1の面1a側に配置されることによって損なわれる、ということがない。
このように、膨張膜1の第2の面1bに熱電変換素子2を配置し、ユーザUの指が直接熱電変換素子2と接しない構造とすることにより、様々な触感提示が可能となる。
また、触覚提示装置10の使用時にユーザの皮膚に直接接触する膨張膜1に熱電変換素子2が配置されるので、熱電変換素子2による温冷提示がユーザの皮膚に対し速やかに行われ得る。すなわち、熱電変換素子2による放熱及び吸熱といった熱の利用効率を良好なものとすることができ、熱電変換素子2において少ない温度上昇又は降下でユーザUへの温冷提示が可能となる。熱電変換素子としてのペルチェ素子は消費電力が大きいため、熱電変換素子2をユーザの皮膚に直接接触する膨張膜1に配置することは、熱利用効率の観点、ひいては消費電力の観点からも好ましい。
【0032】
熱電変換素子2は、膨張膜1の第2の面1bに接着剤(図示せず)によって固定して配置される。接着剤は、例えば、熱電変換素子2の接着剤の塗工側の面(上面)の全面を塗工領域として塗工される。接着剤の塗工パターンは特に限定されない。例えば、塗工領域において、接着剤は、スパイラル状といった塗工部と非塗工部とが混在する間欠塗工パターンで形成されてもよいし、塗工領域全域に亘って非塗工部が存在しないような塗工パターンで形成されてもよい。以下の説明において、接着剤の塗工領域とは、接着剤の塗工部全体を囲んで得られる領域を意味し、非塗工部が含まれていてもよい。
尚、接着剤は、熱電変換素子2の塗工側の面の一部の領域を塗工領域として形成されてもよい。
熱電変換素子2を膨張膜1から剥がれ落ちにくくし、また、熱電変換素子2の熱の利用効率を高めるという観点から、熱電変換素子2における塗工領域を広くとる、すなわち、熱電変換素子2と膨張膜1との接触面積を広くとることが好ましい。ここでは、熱電変換素子2の全面を塗工領域として形成される例をあげる。
【0033】
複数の熱電変換素子2は、互いに間隔をあけて間欠配置される。これにより、膨張膜1の第2の面1bは、接着剤によって熱電変換素子2が接着される熱電変換素子接着領域と、熱電変換素子2が接着されない熱電変換素子非接着領域とを有する。
膨張膜1の熱電変換素子接着領域においては、熱電変換素子2と膨張膜1との接着によって膨張膜1の膨張が阻害される。
一方、膨張膜1の熱電変換素子非接着領域においては、膨張膜1の膨張が阻害されない。
このように、触覚提示装置10において、複数の熱電変換素子2が互いに離間して配置されることにより、膨張膜1の膨張が阻害されない熱電変換素子非接着領域が膨張膜1の全域に分布する形態となる。これにより、広い触覚提示範囲で、膨張膜の膨張による圧覚刺激が可能となるとともに圧電変換素子による温冷覚刺激も可能となる。
【0034】
尚、熱電変換素子2を間欠配置せず、接して配置してもよく、後述する他の実施形態においても同様である。
膨張膜1に対する熱電変換素子接着領域は、熱電変換素子2における接着剤の塗工領域に対応する。
接着剤が熱電変換素子2の塗工側の面の一部の領域を塗工領域として形成される場合、接着剤の塗工領域以外の領域では、膨張膜1は、熱電変換素子2と接着されていないので膨張が阻害されない領域となり得る。例えば、熱電変換素子2における接着剤の塗工領域を、熱電変換素子2の平面形状よりも一回り小さい矩形状とした場合、熱電変換素子2において、小さい矩形状の塗工領域は熱電変換素子接着領域となるが、その周囲にある枠状部分は熱電変換素子非接着領域となる。このような接着形状の場合、例えば複数の熱電変換素子を接して配置した場合、隣り合う熱電変換素子の境界付近は熱電変換素子非接着領域となり得る。従って、複数の熱電変換素子を接して配置したとしても、接着剤の塗工領域の設定によって、熱電変換素子の存在によって膨張が阻害されない領域を膨張膜の面内で分布するように構成することが可能である。
【0035】
複数の熱電変換素子2が一括して同時に制御され、温冷提示対象領域部位(本実施形態では手の指先)への温冷覚刺激が行なわれてもよい。また、複数の熱電変換素子2が個別に制御されてもよい。制御例については後述する。
【0036】
以上のように、触覚提示装置10において、複数の熱電変換素子2を膨張膜1の第2の面1bに複数、間欠配置することにより、圧覚刺激及び温冷覚刺激による様々な触覚提示を可能とするとともに、消費電力低減が可能となる。
ここで、昇温のために薄型抵抗ヒータを用いることも考えられるが、熱電変換素子(ペルチェ素子)を用いることにより、薄型抵抗ヒータと比較して低消費電力かつ早い応答で温度変化を提示することが可能となる。また、薄型抵抗ヒータでは、自然放熱により温度低下するため、温度低下に時間がかかる。これに対し、熱電変換素子(ペルチェ素子)では冷却が可能であるので、温度低下も容易に制御可能となり、速やかに所望の温度を提示することができる。
【0037】
図2(A)は、触覚提示装置10の構成を示すブロック図である。図2(B)は、触覚提示装置10の構成の一部をより詳細に説明するための図であり、熱電変換素子の制御構成を示す図である。
図2に示すように、触覚提示装置10は、制御部6と、提示部9における熱電変換素子2及びアクチュエータ5と、通信部7と、記憶部8を備えている。
【0038】
制御部6は、記憶部8に記憶された各種のプログラムに基づき種々の演算を実行し、触覚提示装置10の各部を統括的に制御する。
制御部6は、ハードウェア、又は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せにより実現される。ハードウェアは、制御部6の一部又は全部として構成され、このハードウェアとしては、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、あるいは、これらのうち2以上の組合せなどが挙げられる。
【0039】
アクチュエータ5は、提示部9の一部であり、制御部6の制御により駆動されて、空間4に対する流体の流出入を制御する。
【0040】
熱電変換素子2は、提示部9の一部であり、制御部6の制御により駆動されて加熱と冷却が切り替えられる。
図2(B)に示すように、触覚提示装置10は、熱電変換素子2を駆動する直流の電源22と、電流の向きを切り替えるスイッチ26を備える。制御部6は、触覚提示に係る情報(後述する)に基づく制御信号に基づいてスイッチ26を制御し、熱電変換素子2による加熱と冷却を切り替える。電源22は例えば電池である。
尚、ここでは、触覚提示装置10が電源22を備える例をあげたが、これに限定されない。例えば、触覚提示装置と外部機器を有線で接続し、外部機器に整流や降圧又は昇圧回路を備え、圧電変換素子の電源を外部機器から供給するとともに、外部機器に備えたスイッチで供給される電流の向きを切り替えるようにしてもよい。
【0041】
記憶部8は、制御部6の処理に必要な各種のプログラムや、各種のデータが記憶される不揮発性のメモリと、制御部6の作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。なお、上記各種のプログラムは、光ディスク、半導体メモリなどの可搬性の記録媒体から読み取られてもよいし、ネットワーク上のサーバ装置等からダウンロードされてもよい。
【0042】
通信部7は、有線又は無線により、他の触覚提示装置10等の他の装置と通信可能に構成されている。触覚提示装置10は、他の装置との間で直接的に通信を行ってもよいし、ネットワーク上のサーバ装置等の他の装置を介して、他の装置との間で間接的に通信を行ってもよい。
【0043】
次に、図4を用いて、使用時における触覚提示装置の動作について説明する。
図4(A)は、触覚提示装置において、空間4への流体の流入が行われる前の状態を示す。
図4(B)は、触覚提示装置において、空間4への流体の流入が行われた後の状態を示す。
使用時、触覚提示装置10の膨張膜1にユーザUの指先が接するように膨張膜1上に指が載置される。
図4(A)に示すように、流体の流入が行われる前の、膨張膜1が収縮した状態では、ユーザUの指先の腹部が、膨張膜1を介してX軸方向中央に位置する3つの熱電変換素子2Cに接して置かれた状態となる。
図4(B)に示すように、流体の流入が行われ、膨張膜1が膨張した状態では、膨張膜1の全体が膨張するが、ユーザUの指先の重みによって、膨張膜1のX軸方向中央部ではZ軸方向における膨らみが抑えられる。一方、膨張膜1のX軸方向側部ではZ軸方向に上に向かって膨らむ。膨張膜1は全体的にユーザUの指先を包み込むように変形し、ユーザUの指の腹部及び側部は、膨張膜1を介して、X軸方向中央部に位置する3つの熱電変換素子2C及びX軸方向側部に位置する2つの熱電変換素子2Sに接した状態となる。膨張膜1に熱電変換素子2が接着固定されているため、膨張膜1の膨張時において、熱電変換素子2の位置は膨張膜1の変形に追従して変化する。膨張膜1は、ユーザUの指先の形状に沿って変形する。このため、膨張膜1を間に介して熱電変換素子2と指先とが接する形態となるので、熱電変換素子2の熱の利用効率が良好となり、効果的に温冷提示を行うことができる。
【0044】
<第2実施形態>
[全体構成及び各部の構成]
図5は、本技術の第2実施形態に係る触覚提示装置30の構成を示す模式断面図であり、使用時の動作例を示す模式図である。本実施形態は、第1実施形態と比較して、膨張膜が2つある点で相違する。
触覚提示装置30は、後述する触覚提示装置30を構成する第1の膨張膜11が、ユーザの皮膚に接し、皮膚に対して、圧迫感や硬軟感、温冷感といった触覚を提示する。ここでは、触覚提示対象部位が手の指先である例をあげる。
図5(A)は、触覚提示装置30において、空間4への流体の流入が行われる前の状態を示す。
図5(B)は、触覚提示装置30において、空間4への流体の流入が行われた後の状態を示す。
【0045】
触覚提示装置30の構成について説明する。
図5に示すように、触覚提示装置30は、支持体3と、提示部9とを有する。提示部9は、使用時、ユーザの指先に対して触覚を提示する。
【0046】
提示部9は、流体を流出入可能な空間4と、空間4を覆うように設けられた第2の膨張膜12と、第2の膨張膜12よりも上側に配置された第1の膨張膜11と、第1の膨張膜11の第2の面11bに配置された複数の熱電変換素子2とを有している。
また、提示部9は、流体を供給する供給源14と、その駆動により空間4への流体の流出入を制御する駆動部としてのアクチュエータ5と、空間4と供給源14を繋ぐパイプ15とを有している。
【0047】
第1の膨張膜11は、図1(B)に示すように、第1の実施形態と同様の略正円形の平面形状を有する。また、第1の膨張膜11の第2の面11bに配置された複数の熱電変換素子2の配置は、図1(B)に示すように、第1の実施形態と同様に配置される。
第2の膨張膜12は、平面視で第1の膨張膜11と略同一の形状を有する。
第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12それぞれの周縁部は支持体3に固定される。支持体3に対して第2の膨張膜12が設けられることによって、第2の膨張膜12と支持体3との間に流体を保持する空間4が形成される。
【0048】
第1の膨張膜11は、第1の面11aと第2の面11bを有する。触覚提示装置30において、第1の膨張膜11は露出している。第1の面11aは、触覚提示装置30の使用時に、ユーザの皮膚に接触する皮膚側面である。第2の面11bは、第1の面11aと反対側の非皮膚側面であり、支持体3側に位置する面である。
第2の膨張膜12は、第1の面12aと第2の面12bを有する。触覚提示装置30において、第2の膨張膜12は露出しておらず、第1の膨張膜11よりも下側に位置する。第1の面12aは皮膚側面である。第2の面12bは、第1の面12aと反対側の非皮膚側面であり、支持体3側に位置する面である。
【0049】
第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12は、それぞれ薄い膜状に構成されており、空間4への流体の流出入により変形可能に構成されている。第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12に用いられる材料としては、伸縮性を考慮して典型的にはシリコンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、天然ゴムなどの各種のゴムが用いられる。なお、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12は、流体の空間4への流出入に応じて変形可能(膨張及び収縮可能)であればよく、ゴム以外の材料により構成されていてもよい。
【0050】
熱電変換素子2は、第1の膨張膜11と第2の膨張膜12との間に位置する。
熱電変換素子2は、皮膚側面である第1の面2aと、非皮膚側面である第2の面2bを有する。
複数の熱電変換素子2それぞれの第1の面2aは、第1の膨張膜11の第2の面11bと接着剤(図示せず)により接着されて配置される。更に、複数の熱電変換素子2それぞれの第2の面2bは、第2の膨張膜12の第1の面12aと接着剤(図示せず)により接着されて配置される。
尚、ここでは、第2の膨張膜12が熱電変換素子2と接着剤によって接着される例をあげるが、両者を接着剤によって接着しない形態としてもよい。
【0051】
第1の膨張膜11と第2の膨張膜12との間の空間と、第2の膨張膜12と支持体3との間の空間4とは非連結状態であり、互いに独立した空間である。
第2の膨張膜12は、空間4への流体の流入に応じて伸びることで、外側に向けて膨張(突出)することが可能とされている。更に、第2の膨張膜12の膨張に追従して、第2の膨張膜12に熱電変換素子2を間に介して接着する第1の膨張膜11も膨張する。第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12の膨張により、ユーザの指先に対して圧覚が提示される。
また、第2の膨張膜12は、空間4からの流体の流出に応じて縮むことで、外側へ向けて膨張した状態から収縮して元の状態へ戻ることが可能とされている。更に、第2の膨張膜12の収縮に追従して第1の膨張膜11も収縮する。
【0052】
第1の膨張膜11と第2の膨張膜12とは、熱電変換素子2を間に介して接着されている。これにより、第1の膨張膜11から熱電変換素子2が落下しても該熱電変換素子2を第2の膨張膜12によって支持することができ、温冷提示を継続させることができる。更に、第2の膨張膜12は、熱電変換素子2から移動する熱を分散させる放熱部として機能し、所望の温冷提示を速やかに行うことができる。
第2の膨張膜12が熱電変換素子2と接着剤によって接着されていない形態の場合、流体流入前の状態において、第2の膨張膜12と熱電変換素子2とを接するよう配置してもよいし、接しないように配置してもよい。熱電変換素子2が落下しても該熱電変換素子2を第2の膨張膜12によって支持することができ、温冷提示を継続させることができる。また、流体流入前の状態で第2の膨張膜12と熱電変換素子2とが接しないように配置されていても、空間4に流体を流入することにより、熱電変換素子2を押し上げるように第2の膨張膜12は膨張するので、第2の膨張膜12と熱電変換素子2とは接する形態となる。これにより、第2の膨張膜12を放熱部として効率よく機能させることができ、所望の温冷提示を速やかに行うことができる。
【0053】
また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、複数の熱電変換素子2は、互いに間隔をあけて間欠配置することができる。これにより、第1の膨張膜11の第2の面11bは、接着剤によって熱電変換素子2が接着される熱電変換素子接着領域と、熱電変換素子2が接着されない熱電変換素子非接着領域とを有する。同様に、第2の膨張膜12の第1の面12aは、接着剤によって熱電変換素子2が接着される熱電変換素子接着領域と、熱電変換素子2が接着されない熱電変換素子非接着領域とを有する。
第1の膨張膜11の熱電変換素子接着領域においては、熱電変換素子2と第1の膨張膜11との接着によって第1の膨張膜11の膨張が阻害される。第2の膨張膜12の熱電変換素子接着領域においては、熱電変換素子2と第2の膨張膜12との接着によって第2の膨張膜12の膨張が阻害される。
一方、第1の膨張膜11の熱電変換素子非接着領域においては、第1の膨張膜11が熱電変換素子2の存在によって第1の膨張膜11の膨張が阻害されない。第2の膨張膜12の熱電変換素子非接着領域においては、第2の膨張膜12が熱電変換素子2の存在によって第2の膨張膜12の膨張が阻害されない。
【0054】
このように、触覚提示装置30において、熱電変換素子2が複数間欠配置されることにより、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12の膨張が阻害されない熱電変換素子非接着領域が第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12の全域に分布する形態となる。これにより、広い触覚提示範囲で、膨張膜の膨張による圧覚刺激が可能となるとともに熱電変換素子による温冷覚刺激も可能となる。
【0055】
更に、熱電変換素子2は、第1の実施形態と同様に、第1の膨張膜11の非皮膚側面となる第2の面11bに配置されるため、触覚提示装置30の使用時、ユーザUの指先は、第1の膨張膜11を間に介して熱電変換素子2に間接的に接することになる。これにより、熱電変換素子2の硬く平坦といった質感が直接ユーザの指先に提示されにくくなる。従って、圧覚刺激を用いた、硬い、柔らかいといった質感の提示が、熱電変換素子2が第1の面11a側に配置されることによって損なわれる、ということがない。
このように、第1の膨張膜11の第2の面11bに熱電変換素子2を配置し、ユーザUの指が直接熱電変換素子2と接しない構造とすることにより、様々な触感提示が可能となる。
また、触覚提示装置30の使用時にユーザの皮膚に直接接触する第1の膨張膜11に熱電変換素子2が配置されるので、熱電変換素子2による温冷提示がユーザの皮膚に対し速やかに行われ得る。すなわち、熱電変換素子2による放熱及び吸熱といった熱の利用効率を良好なものとすることができ、熱電変換素子2において少ない温度上昇又は降下でユーザUへの温冷提示が可能となる。また、消費電力の低減が可能となる。
【0056】
以上のように、触覚提示装置30において、複数の熱電変換素子2を第1の膨張膜11の第2の面11bに複数間欠配置することにより、圧覚刺激及び温冷覚刺激による様々な触覚提示を可能とするとともに、消費電力低減が可能となる。
【0057】
図2(A)は、触覚提示装置30の構成を示すブロック図である。図2(B)は、触覚提示装置30の構成の一部をより詳細に説明するための図であり、熱電変換素子の制御構成を示す図である。
図2に示すように、触覚提示装置30は、制御部6と、提示部9における熱電変換素子2及びアクチュエータ5と、通信部7と、記憶部8を備えている。基本的な構成は第1の実施形態と同様である。
【0058】
次に、図5を用いて、使用時における触覚提示装置の動作について説明する。
使用時、触覚提示装置30の第1の膨張膜11にユーザUの指先が接するように第1の膨張膜11上に指が載置される。
図5(A)に示すように、流体の流入が行われる前の、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12が収縮した状態では、ユーザUの指先の腹部が、第1の膨張膜11を介してX軸方向中央に位置する3つの熱電変換素子2Cに接して置かれた状態となる。
図5(B)に示すように、流体の流入が行われ、第1の膨張膜11が膨張した状態では、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12の全体が膨張するが、ユーザUの指先の重みによって、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12のX軸方向中央部ではZ軸方向における膨らみが抑えられる。一方、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12のX軸方向側部ではZ軸方向に上に向かって膨らむ。第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12は全体的にユーザUの指先を包み込むように変形し、ユーザUの指の腹部及び側部は、第1の膨張膜11を介して、X軸方向中央部に位置する3つの熱電変換素子2C及びX軸方向側部に位置する2つの熱電変換素子2Sに接した状態となる。第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12に熱電変換素子2が接着固定されているため、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12の膨張時において、熱電変換素子2の位置は第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12の変形に追従して変化する。このため、第1の膨張膜11を間に介して熱電変換素子2と指先とが接する形態となるので、熱電変換素子2の熱の利用効率が良好となり、効果的に温冷提示を行うことができる。
【0059】
<第3実施形態>
[全体構成及び各部の構成]
本実施形態は、第1及び第2実施形態と比較して、流体の流出入可能な空間が複数ある点で相違する。
図6(A)及び(B)は、本技術の第3実施形態に係る触覚提示装置31の構成を示す模式断面図であり、使用時の動作例を示す模式図である。
図6(C)は、本技術の第3実施形態に係る触覚提示装置32の構成を示す模式断面図である。
触覚提示装置31及び32は、いずれも、流体の流出入可能な空間が複数ある構成を有する。触覚提示装置31においては、各空間に対応する膨張膜が第1の実施形態のように1つである。触覚提示装置32においては、各空間に対応する膨張膜が第2の実施形態のように2つである。
触覚提示装置31(32)は、提示部9を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)が、ユーザの皮膚に接することが可能に構成され、皮膚に対して、圧迫感や硬軟感、温冷感といった触覚を提示する。ここでは、触覚提示対象部位が手の指先である例をあげる。
【0060】
触覚提示装置31の構成について説明する。
図6(A)は、触覚提示装置31において、空間4への流体の流入が行われる前の状態を示す。
図6(B)は、触覚提示装置31において、空間4への流体の流入が行われた後の状態を示す。
図6(A)及び(B)に示すように、触覚提示装置31は、支持体3と、提示部9とを有する。提示部9は、複数の温冷膨張室90から構成される。これに対して、第1及び第2の実施形態で説明した触覚提示装置10及び30では、温冷膨張室が1つである。
【0061】
各温冷膨張室90は、流体を流出入可能な空間4と、空間4を覆うように設けられた膨張膜1と、膨張膜1の第2の面1bに接着配置された複数の熱電変換素子2とを有している。
また、各温冷膨張室90は、流体を供給する供給源14と、その駆動により空間4への流体の流出入を制御する駆動部としてのアクチュエータ5と、空間4と供給源14を繋ぐパイプ15とを有している。各アクチュエータ5を独立して制御することにより、温冷膨張室90それぞれの膨張を個別に制御することができ、指先と提示部9との接触面積を変化させることができる。更に、各温冷膨張室90の熱電変換素子2を互いに独立して制御することにより、より様々な触覚提示が可能となる。
【0062】
触覚提示装置32の構成について説明する。
図6(C)に示すように、触覚提示装置32は、支持体3と、提示部9とを有する。提示部9は、複数の温冷膨張室91から構成される。
各温冷膨張室91は、流体を流出入可能な空間4と、空間4を覆うように設けられた第2の膨張膜12と、第2の膨張膜12よりも上側に配置された第1の膨張膜11と、複数の熱電変換素子2とを有している。
触覚提示装置32において、熱電変換素子2は、第2の実施形態と同様に第1の膨張膜11と第2の膨張膜12との間に配置され、一方の面(皮膚側の面)が第1の膨張膜11の第2の面11bに、他方の面(非皮膚側の面)が第2の膨張膜12の第1の面12aに接着して、配置される。
また、提示部9は、流体を供給する供給源14と、その駆動により空間4への流体の流出入を制御する駆動部としてのアクチュエータ5と、空間4と供給源14を繋ぐパイプ15とを有している。各アクチュエータ5を独立して制御することにより、温冷膨張室90それぞれの膨張を個別に制御することができ、より様々な触覚提示をすることができる。
【0063】
図7(A)~(D)は、触覚提示装置31(32)の平面図であり、提示部9の構成例である。尚、図示する形態に限定されず、種々の形態をとり得る。
【0064】
図7(A)に示すように、提示部9が、X軸方向に3つの温冷膨張室90(91)が並んで構成されてもよい。図に示す例では、各温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)は、平面形状が略矩形状を有する。各温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)の平面形状は略同じである。膨張膜1(第1の膨張膜11)は、膨張膜1(第1の膨張膜11)上に載置されるユーザUの指先の指の延びる方向(Y軸方向)に沿った長手方向を有する。3つの温冷膨張室90(91)のうちX軸方向中央部に位置する温冷膨張室90(91)には、Y軸方向に沿って間欠配置された熱電変換素子2が3つ位置する。このうち、真ん中に位置する熱電変換素子2は、膨張膜1(第1の膨張膜11)の略中央に位置する。3つの温冷膨張室90(91)のうち両側に位置する2つの温冷膨張室90(91)には、平面視したときに、該温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)の略中央に熱電変換素子2が1つ位置する。
【0065】
図7(B)に示す例では、提示部9が、X軸方向に3つの温冷膨張室90(91)が並んで構成される。図に示す例では、各温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)は、略矩形状を有する。X軸方向中央部に位置する温冷膨張室90は、その両側にそれぞれ位置する温冷膨張室90(91)よりもY軸方向の長さが長くなっている。このように、各温冷膨張室90(91)の膨張膜1の大きさが異なっていてもよい。3つの温冷膨張室90(91)のうちX軸方向中央部に位置する温冷膨張室90(91)には、Y軸方向に沿って間欠配置された熱電変換素子2が3つ位置する。このうち、真ん中に位置する熱電変換素子2は、膨張膜1(第1の膨張膜11)の略中央に位置する。3つの温冷膨張室90のうち両側に位置する2つの温冷膨張室90(91)には、平面視したときに、該温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)の略中央に熱電変換素子2が1つ位置する。
【0066】
図7(C)に示す例では、提示部9が、5つの温冷膨張室90(91)により構成される。図に示す例では、各温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)は、平面形状が略正方形状を有し、各温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)の平面形状は略同じである。各温冷膨張室90(91)には1つの熱電変換素子2が配置される。熱電変換素子2は、平面視において膨張膜1(第1の膨張膜11)の略中央に位置する。
【0067】
図7(D)に示す例では、提示部9が、X軸方向に3つの温冷膨張室90(91)が並んで構成され、各温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)は、平面形状が略矩形状を有する。各温冷膨張室90(91)を構成する膨張膜1(第1の膨張膜11)の平面形状は略同じである。各温冷膨張室90(91)には、y軸方向に沿って間欠配置された熱電変換素子2が3つ位置する。このうち、真ん中に位置する熱電変換素子2は、平面視において膨張膜1(第1の膨張膜11)の略中央に位置する。
【0068】
触覚提示装置31(32)では、提示部9において、複数の膨張膜1(第1の膨張膜11)全体に対し複数の熱電変換素子2が間欠して配置される構成となっている。触覚提示装置31(32)は、膨張膜1(第1の膨張膜11)と熱電変換素子2とが接着する熱電変換素子接着領域と、接着しない熱電変換素子非接着領域とを有する。更に、各温冷膨張室90(91)においても、熱電変換素子接着領域と、熱電変換素子非接着領域とを有する。
熱電変換素子接着領域においては、膨張膜1(第1の膨張膜11)の膨張が熱電変換素子の存在によって阻害される。熱電変換素子非接着領域においては、膨張膜1(第1の膨張膜11)の膨張が熱電変換素子に阻害されない。
触覚提示装置31(32)の提示部9において、膨張膜1(第1の膨張膜11)の膨張が阻害されない熱電変換素子非接着領域が膨張膜1(第1の膨張膜11)の全域に分布する形態となる。これにより、広い触覚提示範囲で、膨張膜の膨張による圧覚刺激が可能となるとともに圧電変換素子による温冷覚刺激も可能となる。
【0069】
更に、熱電変換素子2は、膨張膜1(第1の膨張膜11)の非皮膚側面となる第2の面1b(11b)に配置されるため、触覚提示装置31(32)の使用時、ユーザUの指先は、膨張膜1(第1の膨張膜11)を間に介して熱電変換素子2に間接的に接する。これにより、熱電変換素子2の硬く平坦といった質感が直接ユーザの指先に提示されにくくなる。従って、圧覚刺激を用いた、硬い、柔らかいといった質感の提示が、熱電変換素子2が第1の面11a側に配置されることによって損なわれるということがない。このように、膨張膜1(第1の膨張膜11)の第2の面1b(11b)に熱電変換素子2を配置し、ユーザUの指が直接熱電変換素子2と接しない構造とすることにより、より様々な触感提示が可能となる。
また、触覚提示装置31(32)の使用時にユーザの皮膚に直接接触する膨張膜1(第1の膨張膜11)に熱電変換素子2が配置される。このため、熱電変換素子2による温冷提示がユーザの皮膚に対し速やかに行われ得る。すなわち、熱電変換素子2による放熱及び吸熱の利用効率を良好なものとすることができ、熱電変換素子2において少ない温度上昇又は降下でユーザUへの温冷提示が可能となる。また、消費電力の低減が可能となる。
【0070】
以上のように、触覚提示装置31(32)において、圧覚刺激及び温冷覚刺激による様々な触覚提示を可能とするとともに、消費電力低減が可能となる。
【0071】
図2(A)は、触覚提示装置31(32)の構成を示すブロック図である。図2(B)は、触覚提示装置30の構成の一部をより詳細に説明するための図であり、熱電変換素子の制御構成を示す図である。
図2に示すように、触覚提示装置31(32)は、制御部6と、提示部9における熱電変換素子2及びアクチュエータ5と、通信部7と、記憶部8を備える。基本的な構成は第1の実施形態と同様である。
【0072】
次に、図6(A)及び(B)を用いて、使用時における触覚提示装置31の動作について説明する。
図6(A)に示すように、流体の流入が行われる前の、膨張膜1が収縮した状態では、ユーザUの指先の腹部が、膨張膜1を介してX軸方向中央に位置する3つの熱電変換素子2Cに接して置かれた状態となる。
図6(B)に示すように、一部の温冷膨張室90の空間4に流体を流入し膨張させ、他の温冷膨張室90の空間4には流体を流入しないように制御することができる。図に示す例では、X軸方向中央部に位置する温冷膨張室90には流体を流入させず、その左右両側にある温冷膨張室90にのみ流体を流入する。これにより、ユーザUの指先の形状に沿って指先の一部を覆うように提示部9全体が変形する。ユーザUの指の腹部及び側部は、膨張膜1を介して、X軸方向中央部に位置する3つの熱電変換素子2C及びX軸方向側部に位置する2つの熱電変換素子2Sに接した状態となる。膨張膜1に熱電変換素子2が接着固定されているため、膨張膜1の膨張時において、熱電変換素子2の位置は膨張膜1の変形に追従して変化する。このため、膨張膜1を間に介して熱電変換素子2と指先とが接する形態となるので、熱電変換素子2の熱の利用効率が良好となり、効果的に温冷提示を行うことができる。
図6(C)に示す触覚提示装置32においても、触覚提示装置31と同様に、流体を流入する温冷膨張室91を選択することによって、提示部9全体における第1の膨張膜11の形状を変化させることができる。
【0073】
以上のように、複数の温冷膨張室を有するように触覚提示装置を構成することができる。これにより、圧迫感や硬柔感をより自在に変化させつつ、熱電変換素子を用いて温冷覚刺激を変化させることができる。
【0074】
<第4実施形態>
上述の第1~第3の実施形態において、各触覚提示装置に、温度センサ、距離センサ、気圧センサから選択される1以上のセンサが設けられてもよい。
【0075】
図8は、センサが設けられた触覚提示装置33の一例を示す。図8では、上述の第2の実施形態のように、膨張膜が2つある例をあげて説明するが、第1及び第3の実施形態の触覚提示装置についても同様に適用可能である。
【0076】
図8に示すように、温度センサ18が第1の膨張膜11に配置されていてもよい。図に示す例では、温度センサ18は、第1の膨張膜11の第2の面11bに配置される。温度センサ18は、第1の膨張膜11の温度を測定する。また、温度センサ18を用いて、第1の膨張膜11に接するユーザUの指先の温度を推測することができる。例えば、温度センサ18に対し第1の膨張膜11を介して指先を配置した場合の、温度センサ18の実測値と実際の指先の温度との差を予め計測しておき、温度センサ18の実測値から指先の温度を推定することができる。
温度センサ18での測定結果は、第1の膨張膜11の温度制御等に用いられる。
温度センサ18を用いることにより、熱電変換素子2の放熱及び吸熱による第1の膨張膜11の温度範囲が所望の範囲となるように制御することができる。例えば、火傷の発生を防止するために40℃を超えて熱くなりすぎないようにする、20℃を下回って冷えすぎないようにする等、温度センサ18をリミッタとして用いることができ、使用時の安全性を高めることができる。
尚、膨張膜が1つの触覚提示装置においては、膨張膜1に温度センサ18が配置される。また、温度センサ18は熱電変換素子に設けられていても良い。
【0077】
図8に示すように、距離センサ16が支持体3上に配置されてもよい。距離センサ16は、第2の膨張膜12までの距離を測定することができる。第1の膨張膜11は第2の膨張膜12の変形に追従して変形するので、距離センサ16の測定結果から第1の膨張膜11までの距離も推定することができる。図に示す例では、距離センサ16は、複数設けられる。距離センサ16を複数設けることにより、平面視における第1及び第2の膨張膜の支持体3からの距離の分布情報を得ることができる。
距離センサ16での測定結果は、圧覚刺激の力制御に用いられる。
また、距離センサ16を用いることによって、流体流入時の第2の膨張膜12、ひいては第1の膨張膜11が膨張しすぎて膜が破裂しないように、膨張の度合いを所望の範囲となるように制御することができる。このように、距離センサ16をリミッタとして用いることができ、使用時の安全性を高めることができる。
【0078】
図8に示すように、気圧センサ17が支持体3上に配置されてもよい。気圧センサ17は空間4内の圧力を測定する。
気圧センサ17での測定結果は、圧覚刺激の力制御に用いられる。
また、気圧センサ17を用いることによって、流体流入時の第2の膨張膜12、ひいては第1の膨張膜11が膨張しすぎて膜が破裂しないように、膨張の度合いを所望の範囲となるように制御することができる。このように、気圧センサ17をリミッタとして用いることができ、使用時の安全性を高めることができる。
また、例えば後述する第1適用例のように、触覚提示装置を手で握って使用する場合、握った時の圧力の変化を気圧センサ17により検出することができ、検出結果を圧覚刺激の他、温冷覚刺激にフィードバックさせてもよい。
【0079】
<適用例>
本技術に係る触覚提示装置は、各種の用途に用いることができる。例えば、触覚提示装置が、VR(Virtual Reality)、AR(Augmented Reality)装置等に用いられることで、仮想の物体に実際に触れたかのような触覚をユーザに提示することができる。
触覚提示装置は、例えば、ウェアラブル装置、入力装置、医療装置、シミュレート装置、娯楽機器等、典型的には、ユーザに触覚を提示する用途であればどのような用途にも用いることができる。
また、用途に応じて、触覚提示装置の形状を適宜設定することができる。上述の実施形態では、触覚対象部位が指先で、触覚提示装置が平坦な支持体上に提示部が設けられる形状である例をあげたが、触覚提示対象部位や用途に応じて支持体は種々の形状をとり得る。
以下、具体的な触覚提示装置の適用例及び形態例について説明するが、ここに記載されるものに限定されない。
【0080】
[第1適用例]
図9図11を用いて、第1適用例について説明する。
図9(A)は、触覚提示装置50の斜視図である。図9(B)は触覚提示装置50を提示部9が配置される側からみたときの平面図である。
図10は、触覚提示装置50を用いた触覚提示システム100を示す図である。
図11は、触覚提示装置50の内部構成を示すブロック図である。
ここでは、離れた場所に位置する複数のユーザが、触覚提示装置50を用いて、相互に触覚コミュニケーションを行う例をあげる。
【0081】
図9(A)に示すように、触覚提示装置50は、筐体である支持体3と、支持体3に設けられた検出部51と、支持体3に設けられた提示部9とを備えている。
【0082】
支持体3は、ユーザUが片手で把持することが可能な程度の大きさを有する。本実施形態では、支持体3の形状が、両端が閉じられた円筒状とされている。尚、支持体3の形状については、これに限定されない。例えば、支持体3は、3角形、四角形、・・等の多角筒状に構成されていてもよいし、人の手を模した形状等とされていてもよい。
【0083】
検出部51は、ユーザUの力を検出する圧力センサ511と、ユーザUの手の皮膚の温度を検出する温度センサ18を備える。本実施形態では、検出部51は2つの圧力センサ511を備えるが、数はこれに限定されない。
検出部51は、ユーザが触覚提示装置50を握ったときのユーザの指に対応する位置に設けられている。本実施形態では、検出部51は、人差し指、中指、薬指、小指の4本の指における、第1関節部付近に対応する位置に設けられている。
なお、検出部51が設けられる位置は、これに限られない。例えば、検出部51は、親指、人差し指、中指、薬指、小指の5本の指の中から選択された、1本、2本、3本、4本又は5本の指に対応する位置に設けられていてもよい。また、検出部51は、指の第2関節部や第3関節部(親指以外)に対応する位置に設けられていてもよい。
【0084】
また、検出部51は、分離した2以上の箇所に別々に設けられていてもよい。例えば、1つ目の検出部51が、人差し指、中指、薬指、小指に対応する位置に配置され、2つ目の検出部51が親指に対応する位置に配置されていてもよい。また、例えば、1つ目の検出部51が、人差し指、中指、薬指、小指の第1関節部に対応する位置に配置され、2つ目の検出部51が人差し指、中指、薬指、小指の第2関節部、第3関節部等に対応する位置に配置されていてもよい。
【0085】
典型的には、検出部51は、ユーザによる握った力を適切に検出可能な位置であれば、提示部9と別の位置に設けられている限り、どのような位置に設けられていてもよいし、1つの触覚提示装置に対して複数個分離して設けられていてもよい。
【0086】
提示部9は、ユーザUに触覚を提示する。提示部9は、支持体3において検出部51とは別の位置に設けられている。
提示部9には、上述の各実施形態で示した提示部を適用することができる。ここでは、第1の実施形態で示した提示部のように膨張膜が1つの場合を例にあげる。
提示部9は、流体を流出入可能な空間4と、空間4を覆うように設けられた膨張膜1と、膨張膜1の第2の面1bに配置された複数の熱電変換素子2とを有している。また、提示部9は、流体を供給する供給源14と、その駆動により空間4への流体の流出入を制御する駆動部としてのアクチュエータ5と、空間4と供給源14を繋ぐパイプ15とを有している。
本実施形態では、提示部9は、2つの熱電変換素子2を備える。2つの熱電変換素子2は、離間して配置される。また、膨張膜1は、平面視で、支持体3の長手方向に平行な長手方向を有する楕円状を有する。
【0087】
提示部9は、触覚提示装置50を把持するユーザUの手に対し、圧覚刺激及び温冷覚刺激を与え、様々な触覚を提示する。
また、提示部9は、後述するように、他の触覚提示装置50の検出部51で検出された力及び手の皮膚の温度に応じて、流体により膨張膜1を膨張及び収縮し、また、熱電変換素子2を用いた温冷提示を行うことで、ユーザに対して触覚を提示する。
【0088】
ここで、仮に、検出部51と提示部9とが同じ場所に設けられているとすると、ユーザは、自ら触覚提示装置50を握った反力によって力を感じているのか、相手のユーザが握った力により力を感じているのかが認識しにくいといった問題がある。このため、本実施形態では、検出部51と提示部9とが別々の場所に設けられている。
【0089】
本実施形態では、提示部9は、ユーザが触覚提示装置50を握ったときの掌(掌の中央)に対応する位置に設けられる。なお、提示部9が設けられる位置は、これに限られない。例えば、提示部9は、ユーザの指に対応する位置に設けられていてもよく、この場合、検出部51は掌などの指以外の位置に設けられてもよい。
【0090】
また、提示部9は、分離した2以上の箇所に別々に設けられていてもよい。例えば、1つ目の提示部9が、掌において人差し指寄りの位置に配置され、2つ目の提示部9が掌において小指寄りの位置に配置されていてもよい。
【0091】
典型的には、提示部9は、一方のユーザの力による触覚を他方のユーザに適切に提示可能な位置であれば、検出部51と別の位置に設けられている限り、どのような位置に設けられていてもよいし、1つの触覚提示装置50に対して複数個分離して設けられていてもよい。
【0092】
なお、提示部9及び検出部51の位置は、実際に2人の人が握手をしたときに、人が力を感じる手の位置を考慮して設定されていてもよい。例えば、実際に2人の人が握手をしたとき、一方の人は、他方の人の人差し指、中指、薬指、小指等の力を、掌において小指側の領域で感じることになる。従って、検出部51が人差し指、中指、薬指、小指等に対応する位置に設けられていた場合、提示部9は、掌において小指側の領域に設けられていてもよい。
【0093】
図11に示すように、触覚提示装置50は、制御部6と、検出部51における圧力センサ511及び温度センサ18と、提示部9における熱電変換素子2及びアクチュエータ5と、通信部7と、記憶部8とを備えている。
【0094】
制御部6は、記憶部8に記憶された各種のプログラムに基づき種々の演算を実行し、触覚提示装置50の各部を統括的に制御する。
圧力センサ511は、検出部51の一部である。圧力センサ511は、支持体3の表面側において、検出部51に対応する位置に設けられている。この圧力センサ511は、ユーザの力(握った力)を検出して、検出値を制御部6と出力する。
温度センサ18は、検出部51の一部である。温度センサ18は、例えば、触覚提示装置50を把持した際、ユーザUの手の皮膚が直接接する提示部9の膨張膜1に設けられる。温度センサ18は、ユーザUの手の皮膚温度を検出して、検出された温度を制御部6に出力する。
記憶部8は、制御部6の処理に必要な各種のプログラムや、各種のデータが記憶される不揮発性のメモリと、制御部6の作業領域として用いられる揮発性のメモリとを含む。
通信部7は、有線又は無線により、他の触覚提示装置50との間で相互に通信可能に構成されている。なお、触覚提示装置50は、他の触覚提示装置50との間で直接的に通信を行ってもよいし、ネットワーク上のサーバ装置等の他の装置を介して、他の触覚提示装置50との間で間接的に通信を行ってもよい
【0095】
[動作説明]
ここでは、離れた場所に位置する複数のユーザが、触覚提示装置50を用いて、相互に触覚コミュニケーションを行う例をあげる。
図10(A)は、2人のユーザがそれぞれ離れた場所に位置しているような場合でも、相互に触覚コミュニケーションを可能とするための触覚提示システム100を説明する図である。
図10(B)は、2人のユーザが、触覚提示装置50を用いて触覚コミュニケーションを行っている様子を示す。
ここでは、2つの触覚提示装置50を特に区別するために、一方の触覚提示装置50を第1の触覚提示装置50aと呼び、他方の触覚提示装置50を第2の触覚提示装置50bと呼ぶ。また、2人のユーザをそれぞれ区別するために、第1の触覚提示装置50aを操作するユーザを第1のユーザU1と呼び、第2の触覚提示装置50bを操作するユーザを第2のユーザU2と呼ぶ。
また、第1の触覚提示装置50a及び第2の触覚提示装置50bにおいて、同様の構成を有する各部等をそれぞれ区別するために、第1の・・、第2の・・との用語を使用する。
図10(B)に示すように、第1のユーザU1と第2のユーザU2は、相手が映し出されているディスプレイ13を見ながら、それぞれが把持する第1の触覚提示装置50a及び第2の触覚提示装置50bを用いて触覚コミュニケーションを行うことができる。
尚、ここでは、触覚提示装置50の数が2つである場合について説明するが、触覚提示装置50の数については、3以上であってもよい。同様に、ユーザの数は、2人に限られず、3人以上であってもよい。また、ユーザの一部に架空の人物(画面上に表示される漫画の登場人物、バーチャルアイドル等)を含んでいてもよい。
【0096】
(第1のユーザU1が第1の触覚提示装置50aを握った場合)
図10(A)及び(B)に示すように、第1のユーザU1が、第1の触覚提示装置50aを把持して、第1の触覚提示装置50aを握ると、第1の検出部51aにおける圧力センサ511によって、第1のユーザU1の握った力に応じた第1の圧力値が検出される。更に、第1の検出部51aにおける温度センサ18によって、第1のユーザU1の手の皮膚の第1の温度値が検出される。第1の制御部6は、検出された第1の圧力値及び第1の温度値を、直接的に、あるいは、サーバ装置等を介して間接的に第2の触覚提示装置50bへと送信する。
検出された第1の圧力値及び第1の温度値は、触覚提示に係る情報である。
【0097】
第2の触覚提示装置50bの第2の制御部6は、第1の触覚提示装置50aから直接的に、あるいは、サーバ装置等を介して間接的に第1の圧力値及び第1の温度値を受信する。
第2の制御部6は、第1の圧力値に応じて第2の提示部9bのアクチュエータ5を駆動させて、第2の空間4内における流体の流出入を制御する。これにより、第2の制御部6は、第2の提示部9bの膨張膜1を膨張及び収縮させることで、第1の圧力値に応じた圧覚を第2のユーザU2に提示する。これにより、第2の触覚提示装置50bは、膨張膜の膨張により掌が押されるような感覚を第2のユーザU2に提示することができ、また、膨張膜の収縮により押された掌が元に戻るような感覚を第2のユーザU2に提示することができる。
更に、第2の制御部6は、第2の提示部9bの膨張膜1が第1の温度値となるように第2の提示部9bの熱電変換素子2を温冷制御することで、第1の温度値に応じた温度感覚を第2のユーザU2に提示する。
これにより、第2の触覚提示装置50bは、第1のユーザU1に手を握られたような感触を第2のユーザU2に提示することができる。
【0098】
(第2のユーザU2が第2の触覚提示装置50bを握った場合)
第2のユーザU2が、第2の触覚提示装置50bを把持して、第2の触覚提示装置50bを握ると、第2の検出部51bにおける圧力センサ511によって、第2のユーザU2の握った力に応じた第2の圧力値が検出される。更に、第2の検出部51bにおける温度センサ18によって、第2のユーザU2の手の皮膚の第2の温度値が検出される。第2の制御部6は、検出された第2の圧力値及び第2の温度値を、直接的に、あるいは、サーバ装置等を介して間接的に第1の触覚提示装置50aへと送信する。
検出された第2の圧力値及び第2の温度値は、触覚提示に係る情報である。
【0099】
第1の触覚提示装置50aの第1の制御部6は、第2の触覚提示装置50bから直接的に、あるいは、サーバ装置等を介して間接的に第2の圧力値及び第2の温度値を受信する。
第1の制御部6は、第2の圧力値に応じて第1の提示部9aのアクチュエータ5を駆動させて、第1の空間4内における流体の流出入を制御する。これにより、第1の制御部6は、第1の提示部9aの膨張膜1を膨張及び収縮させることで、第2の圧力値に応じた圧覚を第1のユーザU1に提示する。第1の触覚提示装置50aは、膨張膜の膨張により掌が押されるような感覚を第1のユーザU1に提示することができ、また、膨張膜の収縮により押された掌が元に戻るような感覚を第1のユーザU1に提示することができる。
更に、第1の制御部6は、第1の提示部9aの膨張膜1が第2の温度値となるように第1の提示部9aの熱電変換素子2を温冷制御することで、第2の温度値に応じた温度感覚を第1のユーザU1に提示する。
これにより、第1の触覚提示装置50aは、第2のユーザU2に手を握られたような感触を第1のユーザU1に提示することができる。
【0100】
このように、第1のユーザU1(第2のユーザU2)が把持する第1の触覚提示装置50a(第2の触覚提示装置50b)の温度センサ18で検出された温度値に応じて、検出された温度値がそのまま反映された温度提示が第2のユーザU2(第1のユーザU1)に対し行なわれる。
【0101】
[第2適用例]
図12を用いて、第2適用例について説明する。
上述の第1適用例では、2人のユーザには互いの手の温度が反映された温度提示がなされる例をあげた。本適用例では、手の温度に係らず、互いの握った力が反映された温度提示がなされる例をあげる。また、本適用例では、触覚提示装置の全体の形状が第1適用例とは異なり、掌に収まる程度の大きさを有する例をあげるが、基本的な構成は第1適用例と同様である。
【0102】
図12(A)及び(B)は、第1のユーザU1が第1の触覚提示装置50aを握った時の力が反映されて、第2の触覚提示装置50bにおいて温度上昇として提示される例を示す模式図である。
図12(A)は握ったときの力が相対的に小さい場合を示し、図12(B)は握ったときの力が図12(A)より大きい場合を示す。
図12の第1の触覚提示装置50aにおいて、矢印は、握ったときの第1の触覚提示装置50aにかかる力を模式的に示したものであり、その大きさは握ったときの力の大きさを示す。
図12の第2の触覚提示装置50bにおいて、矢印は、膨張膜の膨張の方向を示すとともに、その大きさは、第2の提示部9bの熱電変換素子2による温度上昇の大きさを示す。
以下では、互いの握った力が反映された温度提示について主に説明するが、互いの握った力が反映された膨張膜の膨張による圧覚も同時に提示される。
【0103】
本適用例では、一方の触覚提示装置で検出された圧力値の大きさに応じて、他方の触覚提示装置での温冷提示が行われる。尚、ここで挙げる数値はあくまでも一例であり、これらに限定されない。
図12(A)に示す例では、第1のユーザU1が、圧力値Aで第1の触覚提示装置50aを握った場合、第2の触覚提示装置50bでは、膨張膜1の温度が1℃あがるように熱電変換素子2が制御される。例えば、膨張膜1の温度が34℃から35℃となるように制御される。
図12(B)に示す例では、第1のユーザU1が、圧力値Aよりも大きい圧力値Bで第1の触覚提示装置50aを更に握った場合、第2の触覚提示装置50bでは、膨張膜1の温度が2℃あがるように熱電変換素子2が制御される。例えば、膨張膜の温度が35℃から37℃となるように熱電変換素子2が制御される。
提示温度の上昇において、安全性の観点から、温度が40℃より大きくならないように制御される。
【0104】
このように、送信側となる第1のユーザU1が第1の触覚提示装置50aをより強く握って圧力が増加するにつれて、換言すると、検出される圧力値が大きくなるにつれて、受信側となる第2の触覚提示装置50bでの提示温度を上昇させるように第2の提示部9bの熱電変換素子2が制御されてもよい。
これにより、送信側となる第1のユーザU1の握る力が大きくなることによる圧力値の増加に合わせて、受信側となる第2のユーザU2には、圧覚刺激の増加に加え、第2の提示部9bの熱電変換素子2による増加した加熱刺激が提示される。第2のユーザU2は、第1のユーザU1の握る力をより強調して感じることができる。
【0105】
また、熱電変換素子(ペルチェ素子)を用いて温冷提示を行うことにより、速やかに所望の温度を提示することができる。これにより、送信側のユーザが触覚提示装置を握る力を弱めたり離したりといった動作の変化を、受信側の触覚提示装置において速やかに温度変化として提示することができる。
【0106】
尚、ユーザUの年齢や性別、皮膚の硬さなどの個人差によって、圧覚提示や温冷覚提示に対する感度が異なる。このため、例えば、使用時の初期設定で年齢や性別などの個人情報を設定し、年齢や性別に応じて圧迫の度合いや温冷の度合いを微調整するようにしてもよい。
【0107】
第1及び第2適用例では、例えば、孫が、遠隔地にいる祖父母と触覚提示装置50を用いてコミュニケーションを深めたりすることができる。
他には、コンサート会場で、歌手などの講演者が触覚提示装置50を握ることにより、その握った感触を複数の観客に対し観客が把持する触覚提示装置50によって提示することができる。また、有名人との握手会において、遠隔からでも触覚提示装置50を用いて握手をしたりすることができる。このように、1つの触覚提示装置50で検出された検出結果に基づいて、複数の人それぞれに対し、該人が把持する触覚提示装置50を用いて触覚を同時に提示するということもできる。
【0108】
[第3適用例]
図13及び図14を用いて、第3適用例について説明する。ここでは、ゲーム映像に応じた触覚提示を行う例をあげる。
図13は、触覚提示装置を用いるときの様子を示す。
図14は、ゲーム機本体及び触覚提示装置の内部構成を示すブロック図である。
【0109】
図13に示すように、ユーザUは、ゲームコントローラである触覚提示装置60を把持し、テレビジョン装置等のディスプレイ13を見ながらゲームを行うことができる。触覚提示装置60は、ディスプレイ13に映し出されるゲーム映像に応じた触覚をユーザUに提示する。
【0110】
触覚提示装置60は、ゲームコントローラ本体である支持体3と、該支持体3に設けられた提示部9を備える。本実施形態の触覚提示装置60は、触覚提示機能の他、ゲームの入力操作を受け付ける入力装置としても機能する。
支持体3は、例えばプラスチック等の樹脂材料による成型品である。支持体3は、左右両側に、ユーザUが手で持つ凸状の把持部36を備える。支持体3は、ユーザUの操作を受け付ける各種キーパッド37からなる操作部を備える。
提示部9は、ユーザUに触覚を提示する。提示部9は、左右の把持部36それぞれに1つずつ設けられている。
提示部9には、上述の各実施形態で示した提示部を適用することができる。
【0111】
図14に示すように、ゲーム装置38は、単数又は複数のゲームコントローラである触覚提示装置60が接続されるゲーム機本体61を備え、ゲーム機本体61がテレビジョン装置等のディスプレイ13に接続される。
【0112】
ゲーム機本体61は、制御部62と、表示制御部63と、再生部64と、記憶部65と、通信制御部66とを備える。
通信制御部66は、触覚提示装置60が接続される通信手段である。
再生部64は、光ディスク等の記録媒体69に記録されたゲームのプログラムを再生する。該プログラムには、ゲームの映像に紐づけられた映像に応じた触覚提示に係る情報が含まれていてもよい。
表示制御部63は、ディスプレイ13を制御する。
記憶部65は、ROM(Read Only Memory)等で構成される。記憶部65は、制御部62で実行されるオペレーティングシステム(OS)等が記憶される。
制御部62は、CPU(Central Processing Unit)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される。制御部62は、触覚提示装置60でのユーザUの操作で受信した操作内容に応じた操作信号と、記録媒体69から再生されたゲームのプログラムに基づいてゲームを進行する。制御部62は、ゲームの進行に従ってディスプレイ13に画像を表示するとともに、ゲーム映像の内容に応じた触覚をユーザUに提示するための触覚提示装置60のアクチュエータ5及び熱電変換素子2それぞれを制御するための触覚提示に係る情報を出力する。該触覚提示に係る情報は、上述したように、ゲーム映像に紐づけられて予め用意されてもよいし、触覚提示装置60の制御部6が、データベース化された触覚提示に係る情報を用い、ゲーム映像の内容に基づいて、映像に応じた生成してもよい。該データベースには、例えば、爆発の場面といった映像内容毎に紐づけられた、触覚提示に係る情報が格納される。触覚提示に係る情報には、熱電変換素子の制御パターン(制御信号)を含む温冷覚刺激に係る情報と、アクチュエータの制御パターンを含む圧覚刺激に係る情報(制御信号)が含まれる。
【0113】
触覚提示装置60は、制御部6と、提示部9における熱電変換素子2及びアクチュエータ5と、通信部7と、記憶部8とを備えている。
制御部6は、ゲーム機本体61から出力された制御信号に基づき、アクチュエータ5及び熱電変換素子2を制御する。
例えば、図13に示す例では、ディスプレイ13にドラゴンが炎を吐いている映像が映し出されている。熱電変換素子2は、温度が上昇するように制御される。これにより、ユーザUに対し炎の熱さが提示される。また、アクチュエータ5は、空間4内に流体を流入するように制御される。流体の流入による膨張膜1(又は、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12)の膨張による圧迫により、ユーザUに対し熱風の強さが提示される。
このように、ゲームコントローラに圧覚刺激及び温冷覚刺激を行う提示部9を設けることにより、ゲーム映像に応じた触覚をユーザに提示することができ、臨場感を更に増すことができる。
【0114】
ここで、ユーザUに対して映像を提示する装置の一例として、テレビジョン装置を例にあげたが、ヘッドマウントディスプレイ、モニタ、プロジェクタ等であっても構わない。
【0115】
[第4適用例]
図15を用いて、第4適用例について説明する。
図15(A)は、ユーザUが触覚提示装置70を使用している状態を示す。
図15(B)は、図15(A)のXVB-XVB線での部分断面図である。
図15(C)は、触覚提示例を説明するための図であり、図上、破線は仮想人物を示す。
【0116】
図15(A)に示すように、触覚提示装置70は、支持体3と、支持体3上に設けられた提示部9とを備える。支持体3は、ユーザUの手首に巻き付けられるリストバンド形状を有し、フレキシブルに変形可能に構成される。
【0117】
図15(B)に示すように、提示部9は、使用時、リストバンド形状の支持体3の内側、すなわち、ユーザUの皮膚と接するように配置される。提示部9は、手首周り全周に配置されてもよいし、部分的に配置されてもよく、用途に応じて適宜設定することができる。また、提示部9は単数又は複数配置することができる。
提示部9は、ユーザUに触覚を提示する。図15(B)では、膨張膜が2枚ある形態を例に挙げているが、提示部9には、上述の各実施形態で示した提示部を適用することができる。使用時、空間4に流体が流入することにより、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12は、ユーザUの皮膚に向かって膨張し、ユーザUに圧迫感を提示する。
【0118】
具体的な適用例について説明する。
例えば、ユーザUの頭部にVR表示、AR表示等が可能なヘッドマウントディスプレイを装着させ、手首に触覚提示装置70を装着させる。
ユーザUに対し、ヘッドマウントディスプレイによって仮想空間の映像を提示する。仮想空間内で仮想人物から手首をつかまれたという状況が発生した場合、図15(C)に示すように、手首をつかまれた感覚をユーザUに提示するようにアクチュエータ5及び熱電変換素子2それぞれが制御される。
熱電変換素子2は、例えば、温度が上昇するように制御される。これにより、ユーザUに対し仮想人物の手の温かさが提示される。
また、アクチュエータ5は、空間4内に流体を流入するように制御される。流体の流入による第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12の膨張による圧迫により、ユーザUに対し仮想人物がユーザUの手首をつかんだ時の圧迫感が表現される。この際、仮想人物の手首の掴む力に応じて、空間4内に流入する流体量を制御し、膨張膜による圧迫の度合いを制御してもよい。
アクチュエータ5及び熱電変換素子2は、例えば第3適用例と同様に、映像情報に紐づけられた触覚提示に係る情報である触覚提示制御信号に基づいて制御される。これにより、ユーザUに対し映像に応じた触覚をユーザに提示することができ、臨場感を増すことができる。
【0119】
[第5適用例]
触覚提示装置は、図16(A)に示す形態をとり得る。
図16(A)は触覚提示装置71の斜視図である。
図16(B)は、触覚提示装置71を用いた触覚提示例を説明するための図である。
【0120】
図16(A)に示すように、触覚提示装置71は、支持体3と、支持体3上に設けられた提示部9とを備える。支持体3は、ユーザUが片手で把持することが可能な程度の大きさを有する。本実施形態では、支持体3は略円筒形状を有し、長手方向中央から一端に向かって径が徐々に小さくなる形状を有し、飲み口から底面に向かって径が小さくなるコップの形状に模した形状となっている。
【0121】
図16(B)に示すように、ディスプレイ13に冷水が注がれたグラスを手に持つ画像が映し出された場合、熱電変換素子2は、温度が下降するように制御される。これにより、ユーザUに対し冷水のコップの冷たさが提示される。
図16(B)に示すように、ディスプレイ13に、手に持った湯飲みに温かいお茶が注がれている画像が映し出された場合、熱電変換素子2は例えば温度が徐々に上昇するように制御される。これにより、ユーザUに対し、湯飲みに徐々に温かいお茶が注がれている感覚と、お茶の温かさが提示される。
【0122】
[第6適用例]
触覚提示装置は、例えば図17(A)及び(B)に示す形態をとり得る。
図17(A)及び(B)は、触覚提示装置72及び73の斜視図である。
図17(A)及び(B)に示すように、触覚提示装置72及び73は、支持体3と、支持体3上に設けられた提示部9とを備える。いずれも、使用時、ユーザUの指が提示部9に接する形態となっている。触覚提示装置72及び73では、提示部9により、ユーザUに対して、圧迫感、硬い、柔らかいといった硬軟感、温かい、冷たいといった温冷感を提示することができる。例えば映像内の仮想物体の硬軟感、温冷感を提示部9によりユーザUに対して提示することができる。
【0123】
<提示部に係る構成例>
以下、提示部9に係る構成について説明する。
熱電変換素子の寸法、数、配置は、触覚提示装置の用途、触覚提示対象部位によって適宜設定され得る。以下、数値をあげて説明するが、これらはあくまで一例であり、これらに限定されない。
【0124】
[膨張膜の熱伝導率]
熱電変換素子2の温冷覚刺激が、ユーザUの触覚提示対象部位に効率よく伝わる観点から、膨張膜1及び第1の膨張膜11の熱伝導率は0.2W/mK以上であることが好ましい。また、このような熱伝導率とすることにより、膨張膜の面内での熱分散を良好なものとすることができ、複数の熱電変換素子2によって触覚提示対象部位全体に温覚又は冷覚が提示されやすい。
第2の実施形態の提示部9のように、膨張膜が2つある場合、2つの膨張膜のうち非皮膚側に位置する第2の膨張膜12の熱伝導率は、放熱部として機能する観点から、0.2W/mK以上であることが好ましい。
熱伝導率を向上させる観点から、カーボンやカーボンナノチューブ等を配合した高分子膜を膨張膜に用いてもよい。
【0125】
[膨張膜の寸法]
膨張膜1(又は、第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12)の平面視での寸法は、触覚提示対象部位によって適宜設定され得る。例えば、図1(B)に示すように、触覚提示対象部位が手の指先である場合、略正円形の膨張膜1(第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12)の直径aは30mmである。例えば、図9(B)に示すように、触覚提示対象部位が掌である場合、楕円形状の膨張膜1(第1の膨張膜11及び第2の膨張膜12)の長軸eは70mmであり、短軸fは30mmである。
【0126】
[熱電変換素子の寸法例]
熱電変換素子2の寸法は、触覚提示対象部位によって適宜設定され得る。例えば、一般的に矩形形状を有する熱電変換素子の縦及び横の寸法は、膨張膜が膨張したときに、ユーザUに対して熱電変換素子の角の存在による違和感を与えにくい程度の大きさとすることが好ましい。身体の部位によって感度が異なるため、違和感を与えにくい大きさは異なる。
ユーザUに熱電変換素子の角の存在による違和感を与えにくいという観点から、図1(B)に示すように、触覚提示対象部位が手の指先である場合、熱電変換素子2の縦方向の寸法b及び横方向の寸法cはそれぞれ6mm以下であることが好ましい。図9(B)に示すように、触覚提示対象部位が掌である場合、熱電変換素子2の縦方向の寸法g及び横方向の寸法cはそれぞれ10mm以下であることが好ましい。触覚提示対象部位が前腕部である場合、熱電変換素子2の縦方向の寸法g及び横方向の寸法cはそれぞれ20mm以下であることが好ましい。
【0127】
[熱電変換素子の配置例]
第1及び第2実施形態において、熱電変換素子2の数及び配置は、図1(B)や図9(B)に示す形態に限定されない。また、熱電変換素子2の数及び配置は、触覚提示対象部位によって適宜設定され得る。以下、図18を用いて配置の一例を説明する。図18の各図は触覚提示装置の平面図である。
【0128】
図18(A)に示すように、縦に3つ、横に3つ、計9個の熱電変換素子2が格子状に配置されてもよい。
図18(B)~(D)に示すように、平面視で略円形の膨張膜1(第1の膨張膜11)の略中央に熱電変換素子2を載置し、該中央の熱電変換素子2を囲むように複数の熱電変換素子2が配置されてもよい。中央の熱電変換素子2を囲んで位置する熱電変換素子2は、例えば膨張膜1(第1の膨張膜11)の中心を中心としたほぼ同心円上に配置されてもよい。
略正円形の膨張膜において、膨張時、膨張膜は曲面を有し、中央部は曲面の曲率が大きく、その周囲は曲率が小さい傾向にあり、中央部から径方向に周縁に向かうに従って、曲率が小さくなっていく傾向にある。このため、中央の熱電変換素子2を囲んで位置する複数の熱電変換素子2は、膨張膜の中心を中心とした同心円上に配置されることにより、膨張時にほぼ同じ曲率を示す曲面上に配置されることになる。これにより、熱電変換素子2が配置された膨張膜面内での膨張による変形の分布の不均一性が生じにくく、膨張時、より自然な形状で膨張膜全体が変形され得る。
【0129】
図18(A)及び(B)に示すように、複数の熱電変換素子2の大きさがいずれも同じ、換言すると、複数の熱電変換素子2において、膨張膜と熱電変換素子との接触面積が同じであってもよい。
また、図18(C)~(E)に示すように、熱電変換素子2の大きさが異なる、換言すると、複数の熱電変換素子2において、膨張膜と熱電変換素子との接触面積が異なるように構成してもよい。図18(C)~(E)において、相対的に大きさが小さい熱電変換素子に符号24を付し、大きい熱電変換素子に符号25を付している。尚、図18(C)~(E)においては、寸法が異なる2種類の熱電変換素子を用いる例をあげているが、寸法が互いに異なる3種類以上の熱電変換素子を用いてもよい。また各種類の熱電変換素子の数は1以上とすることができる。
【0130】
図18(C)においては、中央に位置する熱電変換素子2の大きさが相対的に小さく、この中央に位置する熱電変換素子2を囲んで位置する複数の熱電変換素子2の大きさが大きい。
図18(D)においては、中央に位置する熱電変換素子2の大きさが相対的に大きく、この中央に位置する熱電変換素子2を囲んで位置する複数の熱電変換素子2の大きさが小さい。
ここで、膨張時、膨張膜は曲面を有し、中央部は曲面の曲率が大きく、その周囲は曲率が小さい傾向にある。このため、異なる大きさの熱電変換素子2を用いる場合、図18(B)に示すように、膨張時の曲率が大きい中央部に位置する熱電変換素子2の大きさを相対的に小さくし、曲率が小さい周囲部に位置する熱電変換素子2の大きさを大きくすることがより好ましい。これにより、熱電変換素子2が配置された膨張膜面内での膨張による変形の分布の不均一性が生じにくく、膨張時、より自然な形状で膨張膜全体が変形され得る。
【0131】
図18(E)は、図9で示した支持体3が円筒状の触覚提示装置における熱電変換素子2の配置の一例を示す。
図9(B)においては、平面視で楕円状の膨張膜1(第1の膨張膜11)に、該膨張膜1(第1の膨張膜11)の長手方向に沿って2つの熱電変換素子2を間欠配置する例をあげた。
図18(E)に示すように、3以上の熱電変換素子2を備えていてもよい。また、図に示すように、長手方向に沿って複数の熱電変換素子2が間欠配置されてなる熱電変換素子群が複数(図では3つ)、互いに離間して、短手方向に沿って配置される形態であってもよい。また、図に示すように、短手方向中央に位置する熱電変換素子群を構成する5つの熱電変換素子2の大きさが、両側にそれぞれ位置する熱電変換素子群を構成する4つの熱電変換素子2の大きさよりも小さく構成されていてもよいし、その逆でもよい。また、全ての熱電変換素子2の大きさを同じとしてもよい。
略楕円形の膨張膜において、膨張膜は曲面を有し、膨張時、短手方向及び長手方向それぞれにおける中央部は、その両側部と比較して曲面の曲率が大きい傾向にある。曲面の曲率が相対的に大きい領域には相対的に小さい熱電変換素子を配置し、曲面の曲率が相対的に小さい領域には相対的に大きい熱電変換素子を配置することが好ましい。これにより、熱電変換素子2が配置された膨張膜面内での膨張による変形の分布の不均一性が生じにくく、膨張時、より自然な形状で膨張膜全体が変形され得る。
【0132】
以上のように、膨張時の膨張膜における曲面の曲率の大きさに応じて熱電変換素子の大きさを異ならせてもよく、熱電変換素子が配置されていても、膨張時、より自然な形状で膨張膜全体を変形させることができ、膨張膜の膨張による圧覚刺激を良好なものとすることができる。
【0133】
隣り合う熱電変換素子2間の距離、例えば図1(B)に示す距離dや図9(B)に示す距離iは、2点の空間距離における温覚弁別閾より小さい範囲とすることが好ましい。これにより、隣り合う熱電変換素子で別々に温冷覚刺激を受けているような感覚が提示されにくく、複数の熱電変換素子2によって広面積で違和感のない自然な温冷提示が可能となる。
身体の部位によって温覚弁別閾は異なるため、触覚提示対象となる部位に応じて、熱電変換素子の配置間隔を適宜設定することができる。
例えば、図1(B)に示すように、触覚提示対象部位が手の指先である場合、隣り合う熱電変換素子2間の距離dは、3mm以下程度とすることが好ましい。図9(B)に示すように、触覚提示対象部位が掌である場合、隣り合う熱電変換素子2間の距離iは、10mm以下程度とすることが好ましい。また、触覚提示対象部位が前腕部である場合、隣り合う熱電変換素子2間の距離は、20mm以下程度とすることが好ましい。
【0134】
[熱電変換素子の配置領域面積]
少ない温度変化で温冷を提示する観点から、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の下限面積を設定することが好ましい。以下、図19を用いて説明する。
尚、配置領域とは、膨張膜において、配置される複数の熱電変換素子全体を囲んで得られる領域を意味する。熱電変換素子が膨張膜上に間欠配置される場合、配置領域には、熱電変換素子が配置される配置領域と、配置されない非配置領域とが含まれる。例えば、図1(B)に示す例では、配置領域は十字形状である。図18(A)では、配置領域は正方形状である。図18(B)~(D)に示す例では、配置領域は略正円形状である。
【0135】
図19(A)は、触覚提示対象部位を前腕部としたときの温度変化を感じる閾値と熱電変換素子の面積との関係を示す図である。
図19(B)に示すように触覚提示対象者の前腕部に熱電変換素子2を載置し、しばらく放置する。これにより、熱電変換素子2は触覚提示対象者の前腕部の皮膚温度になる。このときの温度を基準温度とする。基準温度の状態から熱電変換素子2に電力を供給して温覚刺激又は冷覚刺激を触覚提示対象者に与えていき、触覚提示対象者が温かい、又は、冷たいと感じたときの熱電変換素子2の温度を測定する。この測定温度と基準温度との差を、温度変化を感じる閾値とする。大きさの異なる正方形の熱電変換素子を複数用意し、熱電変換素子毎に温度変化を感じる閾値を測定した。図19(A)は、このように測定した結果を示す。図上、10mm、20mm・・・とは、熱電変換素子の一辺の長さを示す。
【0136】
図19(A)に示すように、温度変化を感じる閾値は、温感において、熱電変換素子の平面積が100mmから400mmになるまでは急激に小さくなり、以降は穏やかに小さくなっていき、900mmを超え始めると、あまり変化しなくなる。また、冷感においても、ほぼ同じ挙動を示す。このように、提示面積が大きくなるほど、温度変化を感じる閾値が小さくなる。すなわち、皮膚と熱電変換素子との接触面積が大きいほど、温冷に対して敏感になるといえる。
【0137】
また、例えば、第1の面積の配置領域に、複数の熱電変換素子を間欠配置した場合においても、複数の熱電変換素子の合計の面積が第1の面積(配置領域面積)の70%以上であれば、1つの熱電変換素子の大きさが第1の面積である場合とほぼ同じ温度変化を感じる閾値を得ることができる。
すなわち、図19(A)では、1つの熱電変換素子の面積と温度変化を感じる閾値との関係を示しているが、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の面積と温度変化を感じる閾値との関係についても、複数の熱電変換素子の合計の面積が配置領域面積の70%以上であれば、図19とほぼ同様の傾向を示す。
図19(A)に示すように、触覚提示対象部位が前腕部である場合、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の面積を400mm以上とすることにより、少ない温度変化で温冷を提示することが可能となり、消費電力を低減することができる。
【0138】
触覚提示対象部位によって、好ましい、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の面積は異なるが、いずれの部位においても、前腕部と同様に、皮膚と熱電変換素子との接触面積が大きいほど、温冷に対して敏感になる傾向にある。また、前腕部以外の部位においても、温度変化を感じる閾値と熱電変換素子の面積との関係については図19に示す挙動と類似する挙動を示す。
【0139】
少ない温度変化で温冷を提示する観点から、1つの提示部9において、複数の熱電変換素子2のうち最も面積が大きい熱電変換素子を基準として、該基準の熱電変換素子で測定される温感における温度変化を感じる閾値の50%以下となるように、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の面積、言い換えると皮膚と複数の熱電変換素子全体が接触する接触面積を設定することが好ましい。
尚、ここで、温感における温度変化を感じる閾値を基準としたのは、図19に示すように、温感は冷感と比べて、接触面積に対しての温度変化を感じる閾値の変化が全体的に小さい傾向にあるからである。温感における温度変化を感じる閾値を基準として適切な配置領域面積を算出することにより、冷感においても少ない温度変化で冷感を提示するのに適切な配置領域面積とすることができる。
【0140】
触覚提示対象部位が指先である場合、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の面積を100mm以上とすることにより、少ない温度変化で温冷を提示することが可能となる。
触覚提示対象部位が掌である場合、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の面積を200mm以上とすることにより、少ない温度変化で温冷を提示することが可能となる。
【0141】
このように、複数の熱電変換素子が配置される配置領域の下限面積を設定することにより、少ない温度変化で温冷を提示することができる。これにより、低消費電力で効果的な温冷提示が可能となる。
【0142】
<熱電変換素子の制御例>
以下、制御例について説明する。以下に挙げる制御例は、2以上組み合わせてもよく、より様々な触覚提示が可能となる。
【0143】
[制御例1]
提示部9において、複数の熱電変換素子2は一括して制御されてもよいし、個別に制御されてもよい。以下、図1(B)、図4(A)及び(B)、図20を用いて、個別に制御する例を説明する。
図20(A)及び(B)は、熱電変換素子2C(図上、実線で図示)及び熱電変換素子2S(図上、破線で示す)への供給電力の経時変化を示す。
【0144】
上述したように、図1(B)及び図4(A)に示すように、流体の流入が行われる前の膨張膜1が収縮した状態では、ユーザUの指先の腹部は、膨張膜1を介してX軸方向中央に位置する3つの熱電変換素子2Cに接して位置する。このような場合、図20(A)に示すように、指先と接する熱電変換素子2CはユーザUに対して温冷覚刺激を与えるように電力が供給され制御される。一方、熱電変換素子2Sは、指先と接しておらず、温冷覚刺激を与える必要がないため、制御を行わない。尚、図20(A)において、便宜的に、熱電変換素子2Sに若干電力が供給されるように図示している。
【0145】
図1(B)及び図4(B)に示すように、流体の流入が行われ、膨張膜1が膨張した状態では、ユーザUの指の腹部及び側部は、膨張膜1を介して、X軸方向中央部に位置する3つの熱電変換素子2C及びX軸方向両側部に位置する2つの熱電変換素子2Sに接した状態となる。このような場合、図20(B)に示すように、指先と接する熱電変換素子2C及び2SはユーザUに対して温冷覚刺激を与えるように電力が印加され制御される。尚、図20(B)に示すように、熱電変換素子2Cへの電力供給量と熱電変換素子2Sへの電力供給量が異なるように電力供給が行われてもよいし、同じ電力供給量で電力供給が行われてもよい。
【0146】
図4(A)及び(B)に示すように、膨張膜1の形態に応じて、指先と膨張膜1との接触面積が変化すると、必要な温冷提示面積も変化する。複数の熱電変換素子2を個別に制御することにより、膨張膜1の形態に応じて、指先と接する温冷覚刺激のための駆動が必要な熱電変換素子のみを選択的に制御することができる。これにより、効果的に温冷提示を行うことができるとともに消費電力を低減することができる。
【0147】
[制御例2]
提示部9において、圧覚刺激と温冷覚刺激を行う場合、先に熱電変換素子2に電力を投入して熱電変換素子2を駆動し、その後、アクチュエータ5を駆動して空間へ流体を流入するようにしてもよい。図21は、熱電変換素子の制御信号(破線で図示)とアクチュエータの駆動用制御信号(実線で図示)のタイミングの違いを説明する図である。
熱電変換素子に電力を供給してから該電力供給による放熱又は吸熱が膨張膜を介してユーザUの皮膚に伝わるまでの時間は、アクチュエータを駆動してから膨張膜の膨張による圧覚刺激がユーザUに提示されるまでの時間と比較して、長くなる傾向にある。また、温覚は順応速度が遅いのに対し、圧覚は順応速度が速い。このため、先に熱電変換素子に電力を投入することが好ましい。これにより、ユーザUに対して目的の圧覚刺激及び温冷覚刺激をほぼ同時に提示することができる。
【0148】
[制御例3]
熱電変換素子は、昇温・降温速度が0~±10℃/sの範囲で可変して駆動制御されてもよい。昇温・降温速度を変化させることにより、ユーザに対して提示する温冷覚刺激の強さを変化させることができ、様々な触覚を提示することができる。
図22(A)は昇温パターン例を示す。図上、昇温スピードは、昇温パターン1、昇温パターン2、昇温パターン3の順に上がる。昇温スピードが上がるほど、錯覚でユーザUはより熱く感じるようになる。
図22(B)は降温パターン例を示す。図上、降温スピードは、降温パターン1、降温パターン2、降温パターン3の順に上がる。降温スピードが上がるほど、錯覚でユーザUはより冷たく感じるようになる。
【0149】
[制御例4]
図23は、ユーザUの体感として温感又は冷感を持続させるための熱電変換素子の制御例を示す。実線は温感を、破線は冷感を持続させるための制御信号例である。
ここで、皮膚に対し温刺激を継続して行うと、温刺激に順応し、温刺激を意識しなくなる。また、冷刺激においても同様である。このような順応によって温感又は冷感が継続して感じられなくなってしまうことを回避するために、次のように制御することが好ましい。
【0150】
温感を持続させるために、図23の実線に示すように、次のように熱電変換素子を制御することが好ましい。
すなわち、熱電変換素子を、第1の昇温速度で任意の温度まで昇温した後、第1の昇温速度の1/2以下の速度で降温させる。その後、熱電変換素子の温度がユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら再び昇温するように制御する。これを繰り返すことによって、皮膚が温覚刺激に慣れて温覚刺激を意識しづらくなる状態となることを避けることができる。これにより、温覚刺激が断続的に感じる場合はあるものの、継続して温感を提示することができる。尚、ユーザの皮膚温度は、提示部9の使用前に予め膨張膜1に配置された温度センサにより測定しておく。また、任意の温度は、ユーザの皮膚温度により適宜設定され得る。
【0151】
冷感を持続させるために、図23の破線に示すように、次のように熱電変換素子を制御することが好ましい。
すなわち、熱電変換素子を、第1の降温速度で任意の温度まで降温した後、第1の降温速度の1/2以下の速度で昇温させる。その後、熱電変換素子の温度がユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら再び降温するように制御する。これを繰り返すことによって、皮膚が冷覚刺激に慣れて冷覚刺激を意識しづらくなる状態となることを避けることができる。これにより、冷覚刺激が断続的に感じる場合はあるものの、継続して冷感を提示することができる。尚、ユーザの皮膚温度は、提示部9の使用前に予め膨張膜1に配置された温度センサにより測定しておく。尚、ユーザの皮膚温度は、提示部9の使用前に予め膨張膜1に配置された温度センサにより測定しておく。また、任意の温度は、ユーザの皮膚温度により適宜設定され得る。
【0152】
このように熱電変換素子の入力電力が変わるように制御することにより、上述したように継続した温感又は冷感の提示が可能となるとともに、消費電力を低減させることができる。また、ヒートシンクや冷却ファン等の放熱構造も必要でなくなる。
【0153】
[制御例5]
図24は、ディスプレイ13に映し出された映像に応じた温冷を提示する例を説明する図である。図24(A)はディスプレイ13に映し出された爆発による熱さを提示するための熱電変換素子の制御信号例である。図24(B)はディスプレイ13に映し出された冷水が入ったコップを持った時の冷たさを提示するための熱電変換素子の制御信号例である。図24(A)及び(B)のいずれにおいても、温感及び冷感を持続してユーザに提示するために、上記制御例4で説明した制御を行うことができる。
【0154】
[基本的な提示部の制御方法]
図25を用いて、提示部9の制御方法の基本的な流れを説明する。提示部9が制御されることにより触覚提示が行われる。触覚提示装置において、制御部6により提示部9の制御が行われる。
【0155】
図25に示すように、制御部6は、温度センサ18により検出された膨張膜の温度情報を取得し、該温度情報からユーザの皮膚温度を推定する(ST1)。
次に、制御部6は、触覚提示に係る情報を取得する(ST2)。この触覚提示に係る情報は、例えば、上記第1適用例においては触覚提示装置で検出された圧力値及び温度値であり、上記第2適用例においては触覚提示装置で検出された圧力値である。また、上記第3~第5適用例においては、触覚提示に係る情報は、映像に応じた情報であり、温冷覚刺激に係る情報と圧覚刺激に係る情報を含む。
次に、制御部6は、ユーザの皮膚温度及び触覚提示に係る情報に基づき、熱電変換素子2の駆動信号及びアクチュエータ5の駆動信号を算出し、熱電変換素子2及びアクチュエータ5に出力する(ST3)。制御部6は、例えば、手を握られたような感覚、爆発のような感覚、温かいお茶入りの湯のみを触ったような感覚等、表現する感覚に応じた駆動信号を算出する。
熱電変換素子2及びアクチュエータ5は、駆動信号に基づき駆動する。これにより、圧覚刺激及び温冷覚刺激がユーザに対して提示される。
【0156】
[具体的な触覚提示例]
次に、上述であげた適用例に沿った熱電変換素子の具体的な制御例について、図26~28を用いて説明する。尚、ここでは、アクチュエータの駆動については説明を省略する。
【0157】
(提示例1)
図26は、手を握られた感覚を提示する例を示す例である。
制御部6は、手を握られたような感覚の表現として、0.4℃/秒で昇温、3秒経過後、0.2℃/秒で降温の制御パターンを有する駆動信号に基づいて熱電変換素子2を駆動する(ST11)。この際、ユーザUに対してはディスプレイ13で、手首を仮想人物によってつかまれている映像が表示されているとする。
次に、映像上、仮想人物が手首を離したか否かが制御部6によって判定される(ST12)。手首を離したと判定すると(YES)、制御部6は、熱電変換素子2を、皮膚温度まで降温するように制御し(ST13)、処理が終了する。一方、手首は離されていないと判定すると、ST11に戻って処理が繰り返される。
【0158】
(提示例2)
図27は、温かいお茶いりの湯飲みを触る感覚を提示する例を示す例である。
制御部6は、爆発の感覚の表現として、0.8℃/秒で昇温、3秒経過後、0.2℃/秒で降温の制御パターンを有する駆動信号に基づいて熱電変換素子2を駆動する(ST21)。この際、ユーザUに対しては、ディスプレイ13で、温かいお茶が入った湯飲みを手にした映像が表示されているとする。
次に、映像上、湯飲みを離したか否かが制御部6によって判定される(ST22)。離したと判定すると(YES)、制御部6は、熱電変換素子2を、皮膚温度まで降温するように制御し(ST23)、処理が終了する。一方、離されていないと判定すると、ST21に戻って処理が繰り返される。
【0159】
(提示例3)
図28は、爆発の感覚を提示する例を示す例である。
制御部6は、爆発の感覚の表現として、1.2℃/秒で昇温、2秒経過後、0.4℃/秒で降温の制御パターンを有する駆動信号に基づいて熱電変換素子を駆動する(ST31)。この際、ユーザUに対してはディスプレイ13で爆発の映像が表示されているとする。
次に、映像上、爆発が終了したか否かが制御部6によって判定される(ST32)。爆発が終了したしたと判定すると(YES)、制御部6は、熱電変換素子2を、皮膚温度まで降温するように制御する(ST33)。一方、手首は離されていないと判定すると、ST31に戻って処理が繰り返される。
【0160】
提示例1~3に示した熱電変換素子における制御パターンは、手を握られた、温かいお茶が入った湯飲みを持つ、爆発、といった、熱電変換素子により表現される温冷覚刺激の種類毎に紐づけられ、予めデータベース化されていてもよい。そして、映像内容に応じて該データベースから制御パターンが読み出され、該制御パターンに基づいて熱電変換素子が制御されてもよい。
【0161】
<その他>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変形例1~3のような構成としてもよい。
【0162】
[変形例1]
図29を用いて、変形例の触覚提示装置34について説明する。
図29(A)は触覚提示装置34の構成を示す模式断面図である。図29(B)は、図29(A)の触覚提示装置34を上からみた模式平面図である。
【0163】
図29(A)及び(B)に示すように、中央に位置する熱電変換素子2と、膨張膜1との間に、薄い板状のヒートスプレッダ35を設けてもよい。
ヒートスプレッダ35は、平面視において、熱電変換素子2内に位置するように、熱電変換素子2よりも平面積が小さい円盤形状を有する。ヒートスプレッダ35は、銅やアルミニウムなどの熱伝導率の高い金属や窒化アルミニウムや窒化珪素等のセラミックス等により構成される。熱伝導率の高い材質でヒートスプレッダ35を構成することにより、熱電変換素子2による温冷覚刺激がユーザUの触覚提示対象部位に効率よく伝わる。
ここで、熱電変換素子は、典型的には正方形や長方形といった多角形状を有する。このため、熱電変換素子を接着配置した膨張膜において、膨張時、熱電変換素子の角部分に対応する膨張膜にテンションがかかり破れる可能性がある。
これに対し、触覚提示装置34においては、円盤状のヒートスプレッダ35を膨張膜1と熱電変換素子との間に介在させることにより、円盤状のヒートスプレッダ35では、角がないため、局所的に膨張膜にテンションがかかることがなく、膨張膜が破れにくくなる。これにより耐久性にすぐれた提示部9とすることができる。
【0164】
[変形例2]
図30を用いて、変形例の触覚提示装置52について説明する。
図30(A)は触覚提示装置52の構成を示す斜視図である。図30(B)は、図30(A)の触覚提示装置52を、長手方向に沿った方向からみた図である。
【0165】
図30(A)及び(B)に示すように、触覚提示装置52は、円筒状の支持体3と、圧力センサ511を有する検出部51と、提示部9と、2つの熱電変換素子19とを有する。
検出部51、提示部9及び熱電変換素子19は、支持体3上に設けられ、互いに別の位置に設けられている。例えば、図30(B)に示すように、検出部51と提示部9とは、支持体3を介してほぼ対向して位置する。2つの熱電変換素子19は、円筒状の支持体3の周囲に沿って検出部51と提示部9との間に位置する。熱電変換素子19は、フレキシブルに変形可能なフレキシブル熱電変換素子であってもよいし、セラミックス基板を備えた一般的な熱電変換素子であってもよい。尚、曲面を有する支持体3に配置するという観点から、熱電変換素子は、曲面に沿って配置しやすいフレキシブル熱電変換素子であることが好ましい。熱電変換素子の構成例については後述する。
【0166】
図30に示す例では、触覚提示装置52をユーザUが握ったときに、検出部51は、人差し指、中指、薬指、小指それぞれの第1関節から指先までの領域に対応する位置に設けられる。提示部9は、ユーザが触覚提示装置52を握ったときの掌(掌の中央)に対応する位置に設けられる。熱電変換素子19は、ユーザが触覚提示装置52を握ったときに、人差し指、中指、薬指、小指の付け根付近に対応する位置に設けられる。
【0167】
このように、圧覚刺激及び温冷覚刺激を行う提示部9とは別に、温冷覚刺激のみを行う熱電変換素子19を有するように触覚提示装置52を構成してもよい。これにより、温冷覚刺激の提示面積をより広くすることができ、わずかな温度変化でも効率よく温冷覚提示をすることができる。また、掌全体において、圧覚刺激や温冷覚刺激といった何等かの刺激が提示される構成となるため、局所的に刺激が行われる違和感が緩和される。
【0168】
また、ここでは、提示部9とは別に温冷覚刺激のみを行う熱電変換素子19を設ける例をあげたが、熱電変換素子19の代わりに薄型抵抗ヒータを用い、該薄型抵抗ヒータによる温覚刺激を行う構成としてもよい。これにより、提示部9と薄型抵抗ヒータの双方を用いて温覚刺激の提示面積を広くすることができ、わずかな温度変化でも効率よく温覚提示をすることができる。
【0169】
[変形例3]
上述の膨張膜を2つ有する提示部9について説明した第2の実施形態では、第2の膨張膜12と支持体3との間の空間4に流体を流出入して圧覚提示を行う例をあげたが、これに限定されない。第2の膨張膜12と支持体3との間の空間4への流体の流出入に加えて、第1の膨張膜11と第2の膨張膜12との間に空間へ流体を流出入が可能な形態としてもよい。この場合、第2の膨張膜12と熱電変換素子2とは接着されない。これにより、より様々な触覚提示が可能となる。
【0170】
[熱電変換素子(ペルチェ素子)の構成例]
図31及び32を用いて熱電変換素子の構成例について説明する。本技術に係る触覚提示装置において、以下に説明する各種の熱電変換素子を採用することが可能である。尚、基本的な熱電変換素子の構成については図3を用いて前述している。
【0171】
図31(A)及び(B)は一般的な熱電変換素子2の斜視図及び模式断面図である。
図31に示すように、一般的な熱電変換素子2は、互いに離間して配置された2枚の基板27と、これら2枚の基板27間に配置された、P型の熱電半導体23p、N型の熱電半導体23n、電極21a及び電極21bを有する。
基板27は、アルミナ等のセラミックスから構成される。セラミックスからなる基板27は、形状保持、冷却対象物との絶縁、面内での熱分散といった機能を有する。
電極21a及び電極21bは例えば銅から構成される。
P型の熱電半導体23p、N型の熱電半導体23nは、例えばBi-Te系化合物半導体から構成される。
【0172】
図32(A)及び(B)はスケルトンタイプの熱電変換素子2の斜視図及び模式断面図である。
図32に示すように、スケルトンタイプの熱電変換素子2は、互いに離間して配置された2枚の樹脂フィルム28と、これら2枚の樹脂フィルム28間に配置された、P型の熱電半導体23p、N型の熱電半導体23n、電極21a及び電極21bと、熱電半導体間に配置されたセパレータ29を有する。
樹脂フィルム28は、例えば、冷却又は加熱対象物が導体である場合、対象物と電極とを絶縁するために設けられる。尚、樹脂フィルム28を用いず、電極が露出する構成としてもよい。スケルトンタイプの熱電変換素子2は、セラミックス基板を用いる一般的な熱電変換素子2と比較して、変形しやすい。
電極21a及び電極21bは例えば銅から構成される。
P型の熱電半導体23p、N型の熱電半導体23nは、例えばBi-Te系化合物半導体から構成される。
セパレータ29は、形状保持のため設けられる。セパレータとして柔らかい材質のものを用いてもよい。また、セパレータを用いない構成としてもよい。
スケルトンタイプの一種であるフレキシブル熱電変換素子は、樹脂フィルムあり又は樹脂フィルムなしの構造を有し得、セパレータが例えばゴムであり、フレキシブルに変形可能な構成となっている。
また、熱電半導体として有機半導体を用いてもよく、フレキシブル性をより向上させることができるとともに、軽量化することができる。
【0173】
本技術は、以下の構成をとることもできる。
(1) 支持体と、
前記支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜と、
前記膨張膜の前記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子と、
前記流体の流出入を制御する駆動部と
を具備する触覚提示装置。
(2) 上記(1)に記載の触覚提示装置であって、
前記膨張膜は、第1の膨張膜と、前記第1の膨張膜よりも前記支持体側に位置する第2の膨張膜を含み、
前記空間は、前記第2の膨張膜と前記支持体との間に形成され、
前記熱電変換素子は、前記第1の膨張膜の前記支持体側の面に配置される
触覚提示装置。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の触覚提示装置であって、
前記複数の熱電変換素子のうち少なくとも1つは、前記膨張膜との接触面積が他の熱電変換素子と異なる
触覚提示装置。
(4) 上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記膨張膜を複数有する
触覚提示装置。
(5) 上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子が配置される前記膨張膜に配置された温度センサ、前記空間に配置された距離センサ、及び、前記空間に配置された気圧センサの少なくとも1つを更に具備する
触覚提示装置。
(6) 上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記膨張膜の熱伝導率は0.2W/mK以上である
触覚提示装置。
(7) 上記(1)~(6)のうちいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記複数の熱電変換素子は個別に制御される
触覚提示装置。
(8) 上記(1)~(7)のうちいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子の駆動後、前記駆動部は前記空間へ前記流体を流入するように制御される
触覚提示装置。
(9) 上記(1)~(8)のうちいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子は、昇温・降温速度を0~±10℃/sに可変して駆動される
触覚提示装置。
(10) 上記(1)~(9)のうちいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記触覚提示装置は、前記膨張膜がユーザの皮膚に接するように配され、
前記熱電変換素子は、第1の昇温速度で任意の温度まで昇温後、前記第1の昇温速度の1/2以下の速度で降温し、前記熱電変換素子の温度が前記ユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら昇温するように制御される
触覚提示装置。
(11) 上記(1)~(10)のうちいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記触覚提示装置は、前記膨張膜がユーザの皮膚に接するように配され、
前記熱電変換素子は、第1の降温速度で任意の温度まで降温後、前記第1の降温速度の1/2以下の速度で昇温し、前記熱電変換素子の温度が前記ユーザの皮膚温度の±1℃の範囲となったら降温するように制御される
触覚提示装置。
(12) 上記(1)~(11)のうちいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子は、前記触覚提示装置を装着するユーザに表示される映像に応じた温冷覚刺激となるように駆動される
触覚提示装置。
(13) 上記(1)~(12)のうちいずれか1つに記載の触覚提示装置であって、
前記熱電変換素子は、予め準備されている、前記熱電変換素子により表現される温冷覚刺激の種類毎の前記熱電変換素子の制御パターンを用いて駆動される
触覚提示装置。
(14) 支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜の前記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子の駆動と前記流体の流出入を制御する
触覚提示方法。
(15) 支持体との間に流体を保持する空間を形成する膨張膜の前記支持体側の面に配置された複数の熱電変換素子の駆動と前記流体の流出入を制御する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0174】
1…膨張膜
2…熱電変換素子
3…支持体
4…空間
5…アクチュエータ(駆動部)
10、30~34、50、52、60、70~73…触覚提示装置
11…第1の膨張膜
12…第2の膨張膜
16…距離センサ
17…気圧センサ
18…温度センサ
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