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特開2024-99085ドーム型接点部材およびそれを備える押釦スイッチ用部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099085
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ドーム型接点部材およびそれを備える押釦スイッチ用部材
(51)【国際特許分類】
   H01H 13/48 20060101AFI20240718BHJP
   H01H 13/52 20060101ALI20240718BHJP
   H01H 5/30 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01H13/48
H01H13/52 F
H01H5/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002762
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】林 正志
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS33F
5G206AS33J
5G206AS33K
5G206AS33M
5G206BS02F
5G206BS02J
5G206BS02K
5G206BS02M
5G206BS53F
5G206BS53J
5G206BS53K
5G206BS53M
5G206CS04H
5G206CS04J
5G206FS34J
5G206FS34K
5G206FS34M
5G206FU03
5G206JU64
5G206KS15
5G206KS37
5G206KS42
(57)【要約】
【課題】
スイッチを入れたときの音量アップおよび荷重の大きな変化の両方を満たして、より明瞭なクリック感覚を実現する。
【解決手段】
本発明は、基板上の接点の上方から一部を接点に接触させることによりスイッチをオン可能なドーム型接点部材20であって、当該一部からの押圧および当該押圧の解除によって弾性的に変形可能なドーム部22と、ドーム部22の径方向外側に延出する延出部21とを備え、ドーム部22は、一部としての頂部に、ドーム部22の厚さ方向に貫通する貫通孔23を備え、貫通孔23の開口面積を、ドーム部22の面積に対して1.1%以上3.5%以下としているドーム型接点部材20およびそれを備える押釦スイッチ用部材30に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の接点の上方から一部を前記接点に接触させることによりスイッチをオン可能なドーム型接点部材であって、
前記一部からの押圧および当該押圧の解除によって弾性的に変形可能なドーム部と、
前記ドーム部の径方向外側に延出する延出部と、
を備え、
前記ドーム部は、前記一部としての頂部に、前記ドーム部の厚さ方向に貫通する貫通孔を備え、
前記貫通孔の開口面積は、前記ドーム部の面積に対して1.1%以上3.5%以下であることを特徴とするドーム型接点部材。
【請求項2】
前記延出部に、前記ドーム型接点部材を固定部材に固定するためのアーム部を備えることを特徴とする請求項1に記載のドーム型接点部材。
【請求項3】
請求項1に記載のドーム型接点部材と、
前記ドーム部の突出側から前記ドーム型接点部材に固定される前記固定部材であって、前記ドーム部を押圧する方向およびその反対方向に弾性変形可能な押圧部材と、
を備える押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
請求項2に記載のドーム型接点部材と、
前記ドーム部の突出側から前記ドーム型接点部材を覆って前記アーム部を介して前記ドーム型接点部材に固定される前記固定部材であって、前記ドーム部を押圧する方向およびその反対方向に弾性変形可能な押圧部材と、
を備える押釦スイッチ用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム型接点部材およびそれを備える押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スイッチのオンおよびオフを行うために、基板上の接点に接触および非接触可能なドーム型接点部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照。)。従来から公知のドーム型接点部材は、一般的に、回路基板に代表される基板上の接点の上方に配置される。ドーム型接点部材は、当該ドーム型接点部材を構成するドーム部を接点に向けて押圧することによりドーム部を接点に接触せしめスイッチをオンとし、その押圧の解除によってドーム部と接点との接触を解除してスイッチをオフにする機能を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-191418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の出願人に属する発明者は、本発明に先立ち、ドーム型接点部材と、当該ドーム型接点部材の上からドーム型接点部材のドーム部を押圧する押圧部材とを一体にした押釦スイッチ用部材を開発した。以下、その押釦スイッチ用部材について説明する。
【0005】
図6は、本発明に先立ち開発した押釦スイッチ用部材および当該押釦スイッチ用部材を構成している各構成要素を示す。
【0006】
本発明に先立ち開発した押釦スイッチ用部材130は、ドーム型接点部材120と、ドーム型接点部材120に固定される押圧部材110と、を備える。押圧部材110は、外形を直方体としてその内部に環状の空間を備える足部111と、足部111に連接する薄肉状の弾性変形部112と、弾性変形部112に連接する外方突出部113と、を備える。押圧部材110は、足部111の内側から内方に凹状の空間114を備えると共に、空間114の内底面から足部111の開口側に突出する内方突出部115を備える。また、押圧部材110は、足部111の底面に、ドーム型接点部材120を固定するための凹部116を備える。
【0007】
ドーム型接点部材120は、ドーム形状を有するドーム部122と、ドーム部122の径方向外側に延出する延出部121と、延出部121からさらに外側に位置する2本のアーム部126と、を備える。ドーム部122の形状は、平面視にて略円形である。延出部121の形状は、平面視にて略四角形である。2本のアーム部126は、延出部121に連接されており、ドーム部122の一本の直径の延長方向両端の位置に備えられている。また、延出部121の四つ角には、基板上の外側接点に接触可能な突出接点127が備えられている。
【0008】
押釦スイッチ用部材130は、アーム部126の先端近傍を凹部116に固定して、ドーム型接点部材120と押圧部材110とを一体化した部材である。押釦スイッチ用部材130の足部111側に、外側接点と、その内側にあってドーム部122の頂部の直下位置に内側接点を備えた基板を配置した状態において、外方突出部113を基板側に押圧すると、内方突出部115によってドーム型接点部材120が基板側に押される。この作用によって、突出接点127は、基板上の外側接点に接触する。続いて、ドーム部122が変形して、その頂部がへこんで基板上の内側接点に接触する。この結果、外側接点と内側接点とは、ドーム型接点部材120を介して電気的に接続されて、スイッチはオンとなる。外方突出部113からの押圧を解除すると、内方突出部115はドーム部122から離れる。これによって、ドーム部122は押圧前の状態の形状に復帰する。この結果、外側接点と内側接点とは電気的に非接続となり、スイッチはオフとなる。
【0009】
上述した構成および機能を持つ押釦スイッチ用部材130には、さらなる機能の追加が要求されている。それは、スイッチをオンにしたときの音量をアップして、クリック感覚をさらに明瞭にすることである。一方、音量のアップに伴って、クリック時の荷重の変化を犠牲にすることはできない。
【0010】
本発明は、上記の要求を満たすべくなされたものであり、スイッチを入れたときの音量アップおよび荷重の大きな変化の両方を満たして、より明瞭なクリック感覚を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係るドーム型接点部材は、基板上の接点の上方から一部を前記接点に接触させることによりスイッチをオン可能なドーム型接点部材であって、
前記一部からの押圧および当該押圧の解除によって弾性的に変形可能なドーム部と、
前記ドーム部の径方向外側に延出する延出部と、
を備え、
前記ドーム部は、前記一部としての頂部に、前記ドーム部の厚さ方向に貫通する貫通孔を備え、
前記貫通孔の開口面積は、前記ドーム部の面積に対して1.1%以上3.5%以下である。
(2)別の実施形態に係るドーム型接点部材は、好ましくは、前記延出部に、前記ドーム型接点部材を固定部材に固定するためのアーム部を備えても良い。
(3)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、
前記ドーム型接点部材と、
前記ドーム部の突出側から前記ドーム型接点部材に固定される前記固定部材であって、前記ドーム部を押圧する方向およびその反対方向に弾性変形可能な押圧部材と、
を備える。
(4)上記目的を達成するための一実施形態に係る押釦スイッチ用部材は、
前記ドーム型接点部材と、
前記ドーム部の突出側から前記ドーム型接点部材を覆って前記アーム部を介して前記ドーム型接点部材に固定される前記固定部材であって、前記ドーム部を押圧する方向およびその反対方向に弾性変形可能な押圧部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチを入れたときの音量アップおよび荷重の大きな変化の両方を満たして、より明瞭なクリック感覚を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係るドーム型接点部材および当該ドーム型接点部材を構成要素とする押釦スイッチ用部材を示す。
図2図2は、押釦スイッチ用部材と基板との配置関係を示す。
図3図3は、押圧部材の変形例(3A~3C)を示す。
図4図4は、ドーム型接点部材の変形例(4A~4D)を示す。
図5図5は、押釦スイッチ用部材に対する音量測定試験の結果(5A)および荷重変位測定試験の結果(5B)のグラフを示す。
図6図6は、本発明に先立ち開発した押釦スイッチ用部材および当該押釦スイッチ用部材を構成している各構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲の各請求項に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るドーム型接点部材および当該ドーム型接点部材を構成要素とする押釦スイッチ用部材を示す。図2は、押釦スイッチ用部材と基板との配置関係を示す。
【0016】
本発明の実施形態に係る押釦スイッチ用部材30は、ドーム型接点部材20と、ドーム型接点部材20に固定される固定部材の一例としての押圧部材10と、を備える。押圧部材10は、ドーム型接点部材20の外側を覆うように、ドーム型接点部材20に備えられている。押圧部材10は、外形を直方体としてその内部に環状の空間を備える足部11と、足部11に連接する薄肉状の弾性変形部12と、弾性変形部12に連接する外方突出部13と、を備える。弾性変形部12は、足部11の環状の空間を覆うように形成されている。この実施形態では、弾性変形部12は、半球のドーム形状を有する。外方突出部13は、弾性変形部12の外側天面に突出する略円柱形状の部材である。押圧部材10は、足部11の内側から内方に凹状の空間14を備えると共に、空間14の内底面から足部11の開口側に突出する内方突出部15を備える。また、押圧部材10は、足部11の底面に、ドーム型接点部材20を固定するための凹部16を備える。
【0017】
この実施形態では、押圧部材10は、その全体をゴム状弾性体にて構成されている。ただし、押圧部材10は、少なくとも弾性変形部12をゴム状弾性体で構成して、弾性変形部12以外の任意の構成要素をゴム状弾性体以外の材料、例えば、合成樹脂、金属またはセラミックスで構成しても良い。ゴム状弾性体としては、好適には、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)若しくはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、又は、上記したものの複合物等を例示できる。これらの例示のゴム状弾性体の内、特に、シリコーンゴムが好ましい。
【0018】
本発明の実施形態に係るドーム型接点部材20は、ドーム形状を有するドーム部22と、ドーム部22の頂部からドーム部22の厚さ方向に貫通する貫通孔23と、ドーム部22の径方向外側に延出する延出部21と、延出部21からさらに外側に位置する2本のアーム部26と、を備える。ドーム部22の形状は、平面視にて略円形である。延出部21の形状は、平面視にて略四角形である。2本のアーム部26は、延出部21に連接されており、ドーム部22の一本の直径の延長方向両端の位置に備えられている。各アーム部26の長さ方向の先端近傍は、押圧部材10の凹部16に固定されている。ドーム型接点部材20の各アーム部26の上記先端近傍以外の箇所は、押圧部材10と固定されていない。このため、押圧部材10の外方突出部13を押し込むと、内方突出部15によって押圧されたドーム型接点部材20は、各アーム部26の上記先端近傍を支点に押圧方向に変形可能である。また、延出部21の四つ角には、基板40上の外側接点41に接触可能な突出接点27が備えられている。外側接点41は、基板40上の接点の一例である。
【0019】
貫通孔23は、ドーム型接点部材20のドーム部22の一部としての頂部に、ドーム部22の厚さ方向に貫通する形で備えられている。貫通孔23は、ドーム部22が変形した際に基板40上の内側接点42に接触する。内側接点42は、基板40上の接点の一例である。
【0020】
ドーム型接点部材20の材質は、スイッチ動作を可能とする限り、特に限定されないが、洋白、ステンレススチール、銅、アルミニウム、銀等の導電性材料などが好ましい。ドーム型接点部材20には、貴金属めっき(例えば、金めっき)が施されていることが好ましい。また、ドーム型接点部材20を合成樹脂等の導電性に乏しい材料にて構成し、ドーム部22の凹面側および当該凹面とつながるドーム型接点部材20の片面側を、導電性に富む金属または導電性ポリマーなどでコーティングしても良い。さらに、ドーム型接点部材20を合成樹脂等の導電性に乏しい材料にて構成し、ドーム型接点部材20の外表面全体を、導電性に富む金属または導電性ポリマーなどでコーティングしても良い。
【0021】
押釦スイッチ用部材30は、アーム部26の先端近傍を凹部16に固定して、ドーム型接点部材20と押圧部材10とを一体化した部材である。基板40は、外側接点41と、その内側にあってドーム部22の頂部の直下位置に内側接点42と、を備える。外側接点41は、例えば、平面視にて、環状または多角形の枠状の接点であり、外方突出部13からの押圧によってドーム型接点部材20の突出接点27と接触可能な位置にて基板40上に備えられている。内側接点42は、例えば、ドット状、環状または多角形の枠状の接点であり、外方突出部13からの押圧によってドーム部22の頂部にある貫通孔23の周囲と接触可能な位置にて基板40上に備えられている。内側接点42は、貫通孔23の周囲の部分が接触できるように十分な大きさの面積を有する。押釦スイッチ用部材30の足部11側に隙間を介して基板40を対向配置した状態において、外方突出部13を基板40側に押圧すると、内方突出部15によってドーム型接点部材20が基板40側に押される。この作用によって、突出接点27は、基板40上の外側接点41に接触する。続いて、ドーム部22の頂部が押圧に耐えきれなくなると急激にへこむ。これによって、ドーム部22の頂部は、基板40上の内側接点42に接触する。この結果、外側接点41と内側接点42とは、ドーム型接点部材20を介して電気的に接続されて、スイッチはオンとなる。また、ドーム部22は、変形の際に荷重の急激な低下と共に、音を発する。この荷重の急激な低下および音は、スイッチ動作を行う操作者に、スイッチを確実に行ったというクリック感覚をもたらす。一方、外方突出部13からの押圧を解除すると、弾性変形部12が押圧前の元の形状に回復していき、内方突出部15はドーム部22から離れる。これによって、ドーム部22は押圧前の状態の形状に復帰する。この結果、外側接点41と内側接点42とは電気的に非接続となり、スイッチはオフとなる。なお、上述のスイッチのオンとオフは逆であっても良い。すなわち、外側接点41と内側接点42とが接触したときにスイッチがオフとなり、外側接点41と内側接点42とが非接触となったときにスイッチがオンになっても良い。
【0022】
貫通孔23は、前述したドーム部22の変形の際に生じる音の大きさ(=音量)を上昇させる。ドーム部22の変形時の音量は、貫通孔23の開口面積の大きさに比例して大きくなる傾向がある。また、ドーム部22がへこんだ際の押圧時の荷重変化量は、貫通孔23の開口面積の大きさに反比例して小さくなる。したがって、押釦スイッチ用部材30において音量アップと荷重の大きな変化とを両立するためには、ドーム部22の面積に対する貫通孔23の開口面積の割合が重要となる。
【0023】
貫通孔23の開口面積は、ドーム部22の面積に対して、好ましくは1.1%以上3.5%以下であり、より好ましくは1.6%以上2.9%以下である。
【0024】
図3は、押圧部材の変形例(3A~3C)を示す。また、図4は、ドーム型接点部材の変形例(4A~4D)を示す。なお、これら変形例において、上述の実施形態と共通する部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0025】
押圧部材10における弾性変形部12の形状は、必ずしも図1に示されているような半球のドーム形状でなくてもよい。例えば、弾性変形部12aの形状を図3Aに示すような略円錐台形状とした押圧部材10aを用いても良い。また、弾性変形部12bの形状を図3Bに示すような略角柱形状とした押圧部材10bを用いても良い。さらに、弾性変形部12cの形状を図3Cに示すような略角錐台形状として、かつ外方突出部13cを略直方体形状とした押圧部材10cを用いても良い。
【0026】
ドーム型接点部材20における貫通孔23の形状は、平面視にて、必ずしも図1に示されているような円形でなくてもよい。例えば、貫通孔23aの形状を図4Aに示すような四角形状としたドーム型接点部材20aを用いても良い。また、貫通孔23bの形状を図4Bに示すような三角形状としたドーム型接点部材20bを用いても良い。また、貫通孔23cの形状を図4Cに示すような楕円形状としたドーム型接点部材20cを用いても良い。さらに、貫通孔23dの形状を図4Dに示すような星形状としたドーム型接点部材20dを用いても良い。
【0027】
(その他の実施形態)
先述の実施形態において、ドーム型接点部材20は、押圧部材10に接着されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ドーム型接点部材20は、押圧部材10ではなく、基板40側に固定されていてもよい。その場合、基板40は固定部材となる。
【実施例0028】
次に、本発明の実施例を比較例と比較して説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
1.原料
(1)ドーム型接点部材
導電性材料であるSUS303を用いて、ドーム型接点部材を成形した。ドーム型接点部材の各種寸法については、ドーム部の凹部側開口面の径を6.2mm、延出部の長さを7mm四方、延出部の厚さを0.1mm、アーム部の一端から他端までの長さを5.3mmとした。
(2)押圧部材
信越化学工業株式会社製のシリコーンゴムコンパウンド(品番HG-060-U)を原材料に用いて、押圧部材を成形した。押圧部材の寸法は、押圧部材の足部から外方突出部の先端までの高さを6mm、外方突出部の径を6mm、弾性変形部の径を13mm、足部の一辺を20mmとした。
【0030】
2.押釦スイッチ用部材の製造
成形後のドーム型接点部材を、アーム部を介して押圧部材の凹部に接着剤を用いて固定し、押釦スイッチ用部材を製造した。
【0031】
3.実施例および比較例
(実施例1)
貫通孔の穴径を0.3mmとし、ドーム部全体の面積に対して貫通孔の開口面積が占める割合(以下、穴面積率という。)が0.6%である押釦スイッチ用部材を上記製造方法で製造し、下記の試験に供した。
(実施例2)
穴径が0.5mm、穴面積率が1.0%であること以外は、実施例1と同様とした。
(実施例3)
穴径が0.8mm、穴面積率が1.6%であること以外は、実施例1と同様とした。
(実施例4)
穴径が1.0mm、穴面積率が1.9%であること以外は、実施例1と同様とした。
(実施例5)
穴径が1.5mm、穴面積率が2.9%であること以外は、実施例1と同様とした。
(実施例6)
穴径が2.0mm、穴面積率が3.6%であること以外は、実施例1と同様とした。
(実施例7)
穴径が2.5mm、穴面積率が4.4%であること以外は、実施例1と同様とした。
(比較例)
貫通孔のない押釦スイッチ用部材を穴径0.0mmの比較例とし、上記製造方法で製造し、下記の試験に供した。
【0032】
図5は、押釦スイッチ用部材に対する音量測定試験の結果(5A)および荷重変位測定試験の結果(5B)のグラフを示す。
【0033】
4.音量測定試験
貫通孔の大きさがスイッチ音量に与える影響を評価するため、上記実施例および比較例の押釦スイッチ用部材を上方から押圧し、生じた音量の大きさを株式会社小野測器の精密騒音計LA-5111で測定した。測定は5回行い、平均値を算出した。図5Aは、貫通孔の穴径とスイッチ音量の平均値との関係を表したグラフを示す。
【0034】
5.荷重変位測定試験
貫通孔の大きさがクリック時の荷重変化に与える影響を評価するため、上記実施例および比較例の押釦スイッチ用部材を、アイコーエンジニアリング株式会社製の測定器GT-FL500を用いて上方から押圧し、押下げ時の荷重と変位(ストローク)とを測定した。図5Bは、押下げ時の押釦スイッチ用部材の荷重-変位曲線を示す。試験の評価は、前述のピーク時の荷重の値を用いて行った。ピーク時の荷重が大きい程、ドーム部の変形に伴う荷重変化も大きくなる。この傾向を考慮して、各実施例では、比較例のピーク荷重を100%としたときのピーク荷重の百分率を算出し、評価に供した。
【0035】
6.評価
それぞれの試験において、3段階の評価を行った。具体的には、Aは最も良好(合格)、Cは最も不良(不合格)、BはAとCの中間(不合格)とした。スイッチ音量の評価では、51dB以上のものをA、49dB以上51dB未満のものをB、49dB未満のものをCとした。荷重の評価では、貫通孔のない比較例に対して80%以上のものをA、65%以上80%未満のものをB、65%未満のものをCとした。
【0036】
表1から明らかなように、スイッチ音量は、貫通孔の穴面積率の上昇に伴い比較例より増加した。一方、荷重の変化率は、貫通孔の穴面積率の上昇に伴い低下した。双方が良好なA評価の押釦スイッチ用部材は、表1の太枠で囲んだ範囲であり、貫通孔の穴面積率が1.6%~2.9%の条件であった。これらの押釦スイッチ用部材は、より大きなスイッチ音量と、荷重の大きな変化とを両立し、明瞭なクリック感覚を実現していると考えられる。
【0037】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば、自動車、車載用電子機器、携帯通信機器、パーソナルコンピューター、カメラ、家庭用オーディオ機器、家庭用電化製品等の押圧式のキーを備える各種機器に用いるための押釦スイッチに利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10・・・押圧部材(固定部材の一例)、11・・・足部、12・・・弾性変形部、13・・・外方突出部、14・・・空間、15・・・内方突出部、16・・・凹部、20・・・ドーム型接点部材、21・・・延出部、22・・・ドーム部、23・・・貫通孔、26・・・アーム部、27・・・突出接点、30・・・押釦スイッチ用部材、40・・・基板(固定部材の一例)、41・・・外側接点(接点の一例)、42・・・内側接点(接点の一例)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6