(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099093
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】フィルター材の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 5/03 20120101AFI20240718BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
D04H5/03
B01D39/16 A
B01D39/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002779
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大矢 康平
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝司
【テーマコード(参考)】
4D019
4L047
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB04
4D019BD01
4D019CB06
4D019DA01
4D019DA02
4D019DA03
4D019DA04
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB07
4L047AB08
4L047AB09
4L047BA04
4L047CA02
4L047CA05
4L047CC12
(57)【要約】
【課題】 除電処理を行っても、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材に使用しうる捕集効率及び通気度を持つフィルター材を得る。
【解決手段】 横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)となっているポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する。ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブを準備する。不織布基材と短繊維ウェブとを積層して積層体を得る。この積層体の短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施して、不織布基材と短繊維ウェブが一体化した複合不織布を得る。この複合不織布から水を除去してフィルター材を得る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であるポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する工程、
ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブを準備する工程、
前記不織布基材と前記短繊維ウェブとを積層して積層体を得る工程、
前記積層体の前記短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、前記分割型短繊維を分割割繊させて前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を生成すると共に、前記不織布基材と前記短繊維ウェブとの境界で、前記ポリエステル長繊維、前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を交絡させて複合不織布を得る工程及び
前記複合不織布から前記高圧水流処理に由来する水を除去する脱水乾燥工程を具備するフィルター材の製造方法。
【請求項2】
横断面形状が略Y字の下端で上下左右に連結した
形状(以下、「略Y4形状」という。)であるポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する工程、
ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブに高圧水流処理を施すことにより、該分割型短繊維を分割割繊させ該ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び該ポリオレフィン極細短繊維を生成させて極細短繊維ウェブを準備する工程、
前記不織布基材と前記極細短繊維ウェブとを積層して積層体を得る工程、
前記積層体の前記極細短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、前記不織布基材と前記極細短繊維ウェブとの境界で、前記ポリエステル長繊維、前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を交絡させて複合不織布を得る工程及び
前記複合不織布から前記高圧水流処理に由来する水を除去する脱水乾燥工程を具備するフィルター材の製造方法。
【請求項3】
脱水乾燥工程の後、さらに除電工程を付加する請求項1又は2記載のフィルター材の製造方法。
【請求項4】
分割型短繊維の横断面は円形であって、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとは各々、横断面が楔形となっている請求項1又は2記載のフィルター材の製造方法。
【請求項5】
楔形のポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが、各々10個存在する請求項4記載のフィルター材の製造方法。
【請求項6】
ポリエステル長繊維の繊度が6~30デシテックスであり、生成するポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維の繊度が0.1~0.3デシテックスである請求項1又は2記載のフィルター材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気等の気体の濾過に使用するフィルター材の製造方法に関し、特にビル空調に用いる中高性能エアフィルター材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高捕集効率及び低圧力損失(高通気度)を持つフィルター材として、極細繊維層と太繊度繊維層とが積層され、層間で極細繊維及び太繊度繊維が交絡してなる複合不織布を用いることが行われている(特許文献1)。具体的には、ポリプロピレン極細繊維よりなるメルトブロー不織布と、ポリエチレンテレフタレート太繊度繊維よりなるスパンレース不織布とを積層した積層体に、メルトブロー不織布側から高圧水流を噴射して、ポリプロピレン極細繊維とポリエチレンテレフタレート太繊度繊維とを交絡させた後、ハイドロチャージ法により帯電処理を行ってフィルター材を得ることが記載されている(特許文献1、実施例)。
【0003】
しかしながら、かかる方法で得られたフィルター材を長期に亙って使用していると、極細繊維表面の電荷が消失して、捕集効率が低下するという問題があった。このため、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材等においては、フィルター材を除電した後の捕集効率が一定以上の性能を持つものしか採用されず、特許文献1記載のフィルター材は採用できない。また、使用しているポリエチレンテレフタレート太繊度繊維は、横断面が円形のものであり、太繊度繊維相互間の間隙が密となりやすく、高通気度にしにくいという憾みがあった。
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、ハイドロチャージ法による帯電処理を行わなければ、電荷の消失による捕集効率の低下が生じないのではないかと考えた。また、太繊度繊維についても横断面が異型のものを採用すれば、太繊度繊維相互間の間隙を粗くしやすく、高通気度のフィルター材が得られるのではないかと考えた。そこで、ポリプロピレン極細繊維よりなるメルトブロー不織布と、横断面が
なる形状(略Y字の下端で上下左右に連結した形状となっているので、以下「略Y4形状」という。)を持つ太繊度繊維よりなるスパンボンド不織布とを積層した積層体に、メルトブロー不織布側から高圧水流を施して、メルトブロー不織布とスパンボンド不織布間で極細繊維と太繊度繊維とを交絡させ、その後、帯電処理を行わないで、フィルター材を得た。
【0006】
しかしながら、帯電処理を行わなくても、ポリプロピレン極細繊維が電荷を帯びており、除電処理を行うと捕集効率が低下し、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材等には使用できないものであることが判明した。ポリプロピレン極細繊維が電荷を帯びる理由は定かではないが、高圧水流によるポリプロピレン極細繊維相互間の摩擦のためではないかと推定される。
【0007】
本発明の課題は、除電処理を行っても、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材等に使用しうる捕集効率及び通気度を持つフィルター材を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、特定の不織布基材と特定の短繊維ウェブ又は極細短繊維ウェブを用いることにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、横断面が略Y4形状であるポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する工程、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブを準備する工程、前記不織布基材と前記短繊維ウェブとを積層して積層体を得る工程、前記積層体の前記短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、前記分割型短繊維を分割割繊させて前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を生成すると共に、前記不織布基材と前記短繊維ウェブとの境界で、前記ポリエステル長繊維、前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を交絡させて複合不織布を得る工程及び前記複合不織布から前記高圧水流処理に由来する水を除去する脱水乾燥工程を具備するフィルター材の製造方法に関するものである。
【0009】
また、本発明は、分割型短繊維の分割割繊を予め行った極細短繊維ウェブを不織布基材に積層して実行してもよい。すなわち、本発明は、横断面が略Y4形状であるポリエステル長繊維を構成繊維とする不織布基材を準備する工程、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維よりなる短繊維ウェブに高圧水流処理を施すことにより、該分割型短繊維を分割割繊させ該ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び該ポリオレフィン極細短繊維を生成させて極細短繊維ウェブを準備する工程、前記不織布基材と前記極細短繊維ウェブとを積層して積層体を得る工程、前記積層体の前記極細短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施すことにより、前記不織布基材と前記極細短繊維ウェブとの境界で、前記ポリエステル長繊維、前記ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及び前記ポリオレフィン極細短繊維を交絡させて複合不織布を得る工程及び前記複合不織布から前記高圧水流処理に由来する水を除去する脱水乾燥工程を具備するフィルター材の製造方法に関するものである。
【0010】
本発明で用いる不織布基材の構成繊維であるポリエステル長繊維の横断面形状について説明する。この横断面形状は、
図1に示すような略Y字を四個持つものである。そして、略Y字の下端1で上下左右に連結して、
図2に示すような略Y4形状となっている。この略Y4形状は、四個の凹部2と八個の凸部3と四個の小凹部4とを有している。四個の凹部2は、凸部3間に深く窪んだ形状となっている。なお、かかる横断面形状を持つポリエステル長繊維は、中央の略+字部5と、略+字部5の各先端に連結された四個の略V字部6により、高剛性となっている。したがって、本発明で用いる不織基材は、フィルター材の骨材として機能するものである。また、かかる横断面形状を持っているため、ポリエステル長繊維相互間の間隙が広くなり、高通気度の骨材となる。
【0011】
ポリエステル長繊維の繊度は任意であるが、6~30デシテックス程度であるのが好ましく、8~16デシテックスであるのが最も好ましい。繊度が低くなると、剛性が低下しフィルター材の骨材として不適当になる。ポリエステル長繊維は、一種類のポリエステルからなるものでもよいが、低融点ポリエステルと高融点ポリエステルとを組み合わせるのが好ましい。すなわち、ポリエステル長繊維の横断面形状の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型するのが好ましい。複合型ポリエステル長繊維を集積した後、低融点ポリエステルを軟化又は溶融させた後、固化させることにより、ポリエステル長繊維相互間を低融点ポリエステルによって融着させた不織布基材が得られるからである。不織布基材の目付は任意であるが、一般に50g/m2以上であるのが好ましく、特に50~100g/m2程度であるのが最も好ましい。目付が低すぎると、剛性が低下し、フィルター材の骨材としての機能が低下する傾向が生じる。
【0012】
不織布基材と積層される短繊維ウェブは、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとが分割可能な態様で接合されている分割型短繊維が集積されてなるものである。本発明で分割可能とは、高圧水流が分割型短繊維に衝突することよる物理的衝撃によって、分割割繊して極細短繊維を生成するものを言う。かかる分割型短繊維の横断面は、たとえば
図3のような形状となっている。すなわち、分割型短繊維の横断面は円形となっており、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンとの横断面は各々楔形となって交互に接合されてなるものである。本発明において、ポリエチレンテレフタレートとポリオレフィンで選択されているのは、分割割繊による生成したポリエチレンテレフタレート極細短繊維とポリオレフィン極細短繊維とが混合されていると、高圧水流処理によって両者が摩擦しても、帯電しにくいためである。特に、この観点から、ポリオレフィンとしてはポリプロピレンを選択するのが好ましい。
【0013】
分割型短繊維の繊度は、任意に決定しうる事項であるが、好ましくは1~5デニールであるのが好ましい。分割型短繊維の繊度が1デニール未満であると、生成する各極細短繊維の繊度を、例えば0.05デニール未満という程度に細くしなければならず、現実的に分割型短繊維が製造しにくくなる。また、繊度が5デニールを超えると、生成する各極細短繊維の繊度も太くなり、捕集効率が低下し、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材として不適当である。なお、分割割繊により生成する極細短繊維の繊度は0.05~0.22デニール程度であるのが好ましい。また、分割型短繊維の繊維長は、従来公知の短繊維における繊維長と同等程度でよく、例えば、5~120mm程度であるのが好ましい。
【0014】
分割型短繊維が集積されてなる短繊維ウェブの目付は、20~70g/m2であるのが好ましい、この目付が20g/m2未満であると、生成する極細短繊維よりなる層の繊維密度が低下し、捕集効率が低下し、ビル空調に用いる中高性能エアフィルター材として不適当である。一方、目付が70g/m2を超えると、繊維密度が高すぎて、通気度が低下する傾向が生じる。短繊維ウェブは、分割型短繊維が単に集積されたものであっても、水流処理等によって分割型短繊維相互間が絡合してなるものであってもよい。
【0015】
不織布基材と短繊維ウェブを積層し積層体を得る。そして、この積層体に、短繊維ウェブ側から高圧水流処理を施す。高圧水流処理は、高圧の水流を短繊維ウェブに衝突させる処理であり、具体的には、1~12MPaの圧力の水流を短繊維ウェブに衝突させることにより、行うのが好ましい。本発明に係る方法で用いる不織布基材は、横断面が略Y4形状であるポリエステル長繊維を構成繊維とするものであるため、ポリエステル長繊維相互間の間隙が広く、高圧水流が通過しやすいという利点がある。したがって、水流が不織布基材と短繊維ウェブ間に滞留しにくく、高圧水流による、分割型短繊維の分割割繊と繊維間交絡が促進されるのである。水流の圧力が1MPa未満であると、分割型短繊維を分割割繊しにくくなる傾向が生じる。また、水流の圧力が12MPaを超えると、分割割繊により生成した極細短繊維が、不織布基材の反対面(短繊維ウェブが積層されていない面)から流失してしまう傾向が生じる。この高圧水流処理により、分割型短繊維が分割割繊され、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維とポリオレフィン極細短繊維が生成する。また、不織布基材と短繊維ウェブとの境界で、ポリエステル長繊維、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維が交絡する。以上により、不織布基材と極細短繊維層が積層一体化された複合不織布が得られる。
【0016】
不織布基材と短繊維ウェブを積層し積層体を得る前に、短繊維ウェブに高圧水流処理を施して、短繊維ウェブ中の分割型短繊維を分割割繊させて、極細短繊維ウェブを形成してもよい。この極細短繊維ウェブは、分割割繊により生成したポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維よりなるものである。不織布基材に極細短繊維ウェブを積層し、高圧水流処理を施すと、不織布基材と極細短繊維ウェブとの境界で、ポリエステル長繊維、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維が交絡し、複合不織布が得られるのである。
【0017】
以上の複合不織布には、高圧水流処理により水が含有されているので、この水を脱水乾燥工程を経て除去し、フィルター材を得る。脱水乾燥工程は従来公知の方法が採用され、たとえば、複合不織布をマングル等で搾液した後、乾燥機を通すことにより行われる。このフィルター材は、殆ど帯電していないため、このまま、ビル空調用の中高性能エアフィルター材として用いることができる。ただし、現実には、除電して捕集効率及び通気度を測定してから、ビル空調用の中高性能エアフィルター材等として用いることが多い。除電工程を経ずに、捕集効率及び通気度を測定すると、帯電による捕集効率を測定しているかもしれないからである。なお、除電は公知の方法で行えばよく、たとえば、フィルター材を除電器に通せばよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る方法で得られたフィルター材は、特定の不織布基材と特定の短繊維ウェブ又は極細短繊維ウェブを用いて、高圧水流処理によって得られたものなので、不織布基材中のポリエステル長繊維と、ポリエチレンテレフタレート極細短繊維及びポリオレフィン極細短繊維が電荷を帯有しにくくなっており、除電しても、捕集効率が低下しにくいという効果を奏する。
【実施例0019】
実施例1
不織布基材として、ユニチカ株式会社製ポリエステルスパンボンド(製品名:Dilla、太繊度タイプ)を準備した。この不織布基材は、横断面形状が
図2に示す形状のポリエステル長繊維(繊度16デシテックス)よりなるもので、目付は90g/m
2である。また、このポリエステル長繊維は、
図2の略V字部6が低融点ポリエステルで形成され、略+字部5が高融点ポリエステルで形成された複合型ポリエステル長繊維である。そして、この不織布基材は、複合型ポリエステル長繊維相互間が、略V字部6の融着によって結合されてなるものである。
【0020】
分割型短繊維として、
図3に示す横断面形状を持つ繊度が3.3デシテックスで繊維長が51mmのものを準備した。なお、ポリオレフィンとしてポリプロピレンを採用し、ポリプロピレンとポリエチレンテレフタレートの質量比は、ポリプロピレン:ポリエチレンテレフタレート=55:45である。この分割型短繊維綿をカード機に通して、目付30g/m
2の短繊維ウェブを作成した。
【0021】
不織布基材の片面に短繊維ウェブを積層した後、孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を短繊維ウェブに衝突させた。この高圧水流処理によって、分割型短繊維が分割割繊され、約0.16デシテックスのポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維が生成した。また同時に、ポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維とポリエステル長繊維とが交絡し、不織布基材と短繊維ウェブとが複合一体化した複合不織布を得た。この複合不織布をマングルで絞った後、乾燥機に導入し、複合不織布中の水を除去して、フィルター材を得た。
【0022】
実施例2
分割型短繊維の繊維長を76mmに変更した他は、実施例1と同一の方法でフィルター材を得た。
【0023】
実施例3
分割型短繊維の繊維長を102mmに変更した他は、実施例1と同一の方法でフィルター材を得た。
【0024】
実施例4
分割型短繊維の繊度を2.8デシテックスに変更した他は、実施例2と同一の方法でフィルター材を得た。
【0025】
実施例5
ポリエステル長繊維の繊度を8デシテックスを変更し、分割型短繊維の繊維長を38mmに変更し、かつ、短繊維ウェブの目付を40g/m2に変更した他は、実施例1と同一の方法でフィルター材を得た。
【0026】
実施例6
ポリエステル長繊維の繊度を8デシテックスを変更し、かつ、短繊維ウェブの目付を40g/m2に変更した他は、実施例1と同一の方法でフィルター材を得た。
【0027】
実施例7
ポリエステル長繊維の繊度を8デシテックスを変更し、分割型短繊維の繊維長を76mmに変更し、かつ、短繊維ウェブの目付を40g/m2に変更した他は、実施例1と同一の方法でフィルター材を得た。
【0028】
実施例8
ポリエステル長繊維の繊度を8デシテックスを変更し、分割型短繊維の繊度を2.8デシテックスに変更し、かつ、短繊維ウェブの目付を40g/m2に変更した他は、実施例1と同一の方法でフィルター材を得た。
【0029】
実施例9
ポリエステル長繊維の繊度を8デシテックスを変更し、分割型短繊維の繊度を2.8デシテックスに変更し、分割型短繊維の繊維長を76mmに変更し、かつ、短繊維ウェブの目付を40g/m2に変更した他は、実施例1と同一の方法でフィルター材を得た。
【0030】
実施例10
実施例1で用いた短繊維ウェブに、孔径0.12mmの噴出孔から圧力8.3MPaで噴出する高圧水流を衝突させることにより、分割型短繊維が分割割繊され、約0.16デシテックスのポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維が生成した。これにより、ポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維とが集積されてなる極細短繊維ウェブを得た。
この極細短繊維ウェブを、実施例5で用いた不織布基材面に積層し、極細短繊維ウェブ側から、孔径0.12mmの噴出孔から圧力4.1MPaで噴出する高圧水流を衝突させることにより、ポリプロピレン極細短繊維とポリエチレンテレフタレート極細短繊維とポリエステル長繊維とを交絡させて複合不織布を得た。この複合不織布をマングルで絞った後、乾燥機に導入し、複合不織布中の水を除去して、フィルター材を得た。
【0031】
比較例1
ポリプロピレン製メルトブロー不織布を準備した。このメルトブロー不織布は、繊維径3μmポリプロピレン極細繊維が集積されてなるもので、目付は20g/m2であった。このメルトブロー不織布を実施例5で用いた不織布基材面に積層し、メルトブロー不織布に孔径0.12mmの噴出孔から圧力6.2MPaで噴出する高圧水流を衝突させることにより、ポリプロピレン極細繊維とポリエステル長繊維とを交絡させて複合不織布を得た。この複合不織布マングルで絞った後、乾燥機に導入し、複合不織布中の水を除去して、フィルター材を得た。
【0032】
実施例1~10及び比較例1で得られたフィルター材を、JIS B 9908-4(2019) 9(試験方法)に記載の方法に準拠して除電した後、以下の方法で捕集効率と通気度を測定し、その結果を表1に示した。
【0033】
[捕集効率(%)]
ASTM F 2299記載の方法に準拠して、捕集効率を測定した(ただし、粒子の中和を行った。)。詳細な測定条件は、次のとおりである。試験面積:49.0cm2、試験流量:28.3L/min、粒子径:0.3μm(0.303±0.006μm)、粒子の種類:NANOSPHERE SIZE STANDARDS 3300A(Thermo Fisher Scientific社製)真球状ポリスチレン系標準粒子)
なお、実施例10のみ、詳細な測定条件が次のとおり異なる。試験面積:100cm2、試験流量:32L/min、試験風速5.3cm/s、試験温度:24℃、粒子径及び粒子の種類:JIS11種
【0034】
[通気度(cc/cm2/s)]
JIS L 1096(2010) 8.26.1A法(フラジール形法)記載の方法に準拠して、通気度を測定した。
【0035】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
捕集効率 通気度
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 21.1 37.8
実施例2 19.2 39.6
実施例3 18.6 40.4
実施例4 19.3 30.6
実施例5 21.3 36.0
実施例6 24.5 35.1
実施例7 29.8 26.8
実施例8 23.2 30.5
実施例9 28.2 29.6
実施例10 50.5 40.5
比較例1 13.5 39.1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0036】
実施例及び比較例を対比すれば明らかなように、フィルター材を除電した後において、実施例に係る方法で得られたフィルター材の方が、比較例に係る方法で得られたフィルター材に比べて、捕集効率が高いことが分かる。