(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099096
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法およびハイブリッド四輪駆動車
(51)【国際特許分類】
B60W 20/40 20160101AFI20240718BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20240718BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20240718BHJP
B60K 6/38 20071001ALI20240718BHJP
B60K 6/40 20071001ALI20240718BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20240718BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240718BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240718BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240718BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240718BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240718BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240718BHJP
B60L 58/10 20190101ALI20240718BHJP
【FI】
B60W20/40
B60K6/442 ZHV
B60K6/52
B60K6/38
B60K6/40
B60W10/02 900
B60W10/08 900
B60W10/06 900
B60L9/18 P
B60L15/20 K
B60L15/20 T
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002787
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】月▲崎▼ 敦史
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB01
3D202BB11
3D202BB37
3D202BB66
3D202CC19
3D202CC20
3D202DD01
3D202DD05
3D202DD18
3D202DD20
3D202DD24
3D202DD26
3D202DD38
3D202DD39
3D202EE16
3D202EE23
3D202FF02
3D202FF12
3D202FF13
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA05
5H125BD17
5H125BE05
5H125CA02
5H125CA08
5H125EE08
5H125EE42
5H125EE49
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でもって、シリーズ二輪走行モードとバッテリ二輪走行モードとバッテリ四輪走行モードとを実現する。
【解決手段】リア駆動ユニット3は第1モータジェネレータ5を駆動源とする。フロント駆動ユニット4は、第2モータジェネレータ7と内燃機関8とクラッチ機構9とを有する。クラッチ機構9はドグクラッチからなり、第2モータジェネレータ7の回転軸を前輪2に接続する車輪軸側締結位置と、内燃機関8に接続するエンジン側締結位置と、に切換可能である。エンジン側締結位置とすることで、シリーズ二輪走行モードおよびバッテリ二輪走行モードが可能であり、車輪軸側締結位置とすることでバッテリ四輪走行モードが実現される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪・後輪の一方を駆動する第1モータジェネレータと、
第2モータジェネレータと、
上記第2モータジェネレータを駆動するための内燃機関と、
上記第2モータジェネレータの回転軸を前輪・後輪の他方の駆動系に接続する第1の位置と、上記内燃機関の回転軸に接続する第2の位置と、ニュートラル位置と、を有するクラッチ機構と、
を備え、
上記クラッチ機構を第2の位置もしくはニュートラル位置とするとともに内燃機関の燃焼運転を停止し、バッテリにより上記第1モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第2の位置として上記内燃機関による上記第2モータジェネレータの発電を行いつつ上記第1モータジェネレータによる走行を行うシリーズ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第1の位置としてバッテリにより上記第1,第2モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ四輪走行モードと、
の切換を行うハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法。
【請求項2】
上記クラッチ機構は、上記第2モータジェネレータの回転軸上もしくは当該回転軸に連動する中間軸上に設けられたドグクラッチである、
請求項1に記載のハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法。
【請求項3】
走行モード切換に伴うクラッチ機構締結動作時に、第2モータジェネレータを用いてクラッチ機構の同期を行う、
請求項1に記載のハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法。
【請求項4】
シリーズ二輪走行モードでの走行中にバッテリ四輪走行モードへの切換が要求されたときに、クラッチ機構の同期のために第2モータジェネレータの回転速度の低下が必要か上昇が必要かを判定し、
低下が必要な場合は、クラッチ機構をニュートラル位置とした後に第2モータジェネレータの回転速度の同期を行い、
上昇が必要な場合は、クラッチ機構を第2の位置に保ったまま内燃機関のトルクを利用して第2モータジェネレータの回転速度の同期を行う、
請求項3に記載のハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法。
【請求項5】
同期により回転速度を近付けた状態でクラッチ機構の締結動作を開始する差回転範囲を、車速が高いほど大きく設定する、
請求項3に記載のハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法。
【請求項6】
同期により回転速度を近付けた状態でクラッチ機構の締結動作を開始する差回転範囲を、要求駆動力が高いほど大きく設定する、
請求項3に記載のハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法。
【請求項7】
前輪・後輪の一方を駆動する第1モータジェネレータと、
第2モータジェネレータと、
上記第2モータジェネレータを駆動するための内燃機関と、
上記第2モータジェネレータの回転軸を前輪・後輪の他方の駆動系に接続する第1の位置と、上記内燃機関の回転軸に接続する第2の位置と、ニュートラル位置と、を有するクラッチ機構と、
を備え、
上記クラッチ機構を第2の位置もしくはニュートラル位置とするとともに内燃機関の燃焼運転を停止し、バッテリにより上記第1モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第2の位置として上記第2モータジェネレータにより発電を行いつつ上記第1モータジェネレータによる走行を行うシリーズ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第1の位置としてバッテリにより上記第1,第2モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ四輪走行モードと、
の切換が可能なハイブリッド四輪駆動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、比較的に簡単なパワートレインの構成でもってシリーズ二輪走行モードとバッテリ二輪走行モードとバッテリ四輪走行モードとを実現できるようにしたハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法およびハイブリッド四輪駆動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二輪走行と四輪走行との双方が可能な四輪駆動車として、前輪側の駆動機構と後輪側の駆動機構とを実質的に個々に独立させたハイブリッド四輪駆動車が開示されている。前輪側の駆動機構は、主に発電機として動作する第1のモータジェネレータと、この第1のモータジェネレータを動力分割装置を介して駆動するエンジンと、主に走行用モータとして動作する第2のモータジェネレータと、を含んでいる。後輪側の駆動機構は、走行用モータとして動作する第3のモータジェネレータを主体として構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に見られるように、内燃機関の出力により発電を行いながら走行する走行モード(いわゆるシリーズ走行モード)を含むハイブリッド四輪駆動車にあっては、従来、内燃機関のほかに、必ず3個のモータジェネレータが用いられている。すなわち、前輪もしくは後輪の一方の側に、主に発電機として機能するモータジェネレータと主に走行用モータとして機能するモータジェネレータと内燃機関とが配置され、他方の側に走行用モータとして機能するモータジェネレータが配置される。
【0005】
このように3個のモータジェネレータを用いた構成では、インバータ装置等の周辺機器をも含めてコストが高くなり、例えば低価格の小型車等には採用が難しい、という欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るハイブリッド四輪駆動車の走行モード切換方法は、
前輪・後輪の一方を駆動する第1モータジェネレータと、
第2モータジェネレータと、
上記第2モータジェネレータを駆動するための内燃機関と、
上記第2モータジェネレータの回転軸を前輪・後輪の他方の駆動系に接続する第1の位置と、上記内燃機関の回転軸に接続する第2の位置と、ニュートラル位置と、を有するクラッチ機構と、
を備え、
上記クラッチ機構を第2の位置もしくはニュートラル位置とするとともに内燃機関の燃焼運転を停止し、バッテリにより上記第1モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第2の位置として上記内燃機関による上記第2モータジェネレータの発電を行いつつ上記第1モータジェネレータによる走行を行うシリーズ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第1の位置としてバッテリにより上記第1,第2モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ四輪走行モードと、
の切換を行う。
【0007】
また、この発明に係るハイブリッド四輪駆動車は、
前輪・後輪の一方を駆動する第1モータジェネレータと、
第2モータジェネレータと、
上記第2モータジェネレータを駆動するための内燃機関と、
上記第2モータジェネレータの回転軸を前輪・後輪の他方の駆動系に接続する第1の位置と、上記内燃機関の回転軸に接続する第2の位置と、ニュートラル位置と、を有するクラッチ機構と、
を備え、
上記クラッチ機構を第2の位置もしくはニュートラル位置とするとともに内燃機関の燃焼運転を停止し、バッテリにより上記第1モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第2の位置として上記第2モータジェネレータにより発電を行いつつ上記第1モータジェネレータによる走行を行うシリーズ二輪走行モードと、
上記クラッチ機構を第1の位置としてバッテリにより上記第1,第2モータジェネレータを駆動して走行するバッテリ四輪走行モードと、
の切換が可能な構成となっている。
【0008】
第1モータジェネレータは、基本的に走行用モータとして機能し、前輪・後輪の一方を駆動する。第2モータジェネレータは、発電機および走行用モータの双方として機能し、クラッチ機構が第1の位置にあるときは、走行用モータとして機能して前輪・後輪の他方を駆動することができる。従って、バッテリ四輪走行モードが実現される。
【0009】
またクラッチ機構が第2の位置にあるときは、第2モータジェネレータが内燃機関に接続され、必要に応じて発電可能な状態となる。従って、第1モータジェネレータの力行によるバッテリ二輪走行モードもしくはシリーズ二輪走行モードが実現される。バッテリ二輪走行モードは、クラッチ機構がニュートラル位置にあっても可能である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、2つのモータジェネレータと内燃機関とクラッチ機構とを含む比較的に簡単な構成でもって、シリーズ二輪走行モードとバッテリ二輪走行モードとバッテリ四輪走行モードとを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明に係るハイブリッド車両のパワートレインの構成を示す説明図。
【
図2】バッテリ四輪走行モードにおける動力伝達の説明図。
【
図3】シリーズ二輪走行モードにおける動力伝達の説明図。
【
図4】第2モータジェネレータの回転速度が高い場合のシリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の変化の例を示すタイムチャート。
【
図5】第2モータジェネレータの回転速度が低い場合のシリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の変化の例を示すタイムチャート。
【
図6】バッテリ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の変化の例を示すタイムチャート。
【
図7】シリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換を行う処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明が適用されるハイブリッド車両のパワートレインの一構成例を示した説明図である。この実施例のハイブリッド車両は、二輪走行と四輪走行とが可能な四輪駆動車であって、後輪1を駆動するリア駆動ユニット3と、前輪2を駆動するフロント駆動ユニット4と、を備えており、これら2つの駆動ユニット3,4は、機構的には個々に独立している。
【0013】
リア駆動ユニット3は、第1モータジェネレータ5と、ギア列6と、を含んだ比較的単純な構成からなり、変速機構は具備していない。一つの例では、第1モータジェネレータ5は、後輪1に常に連動している。あるいは、適当な動力遮断機構を具備していてもよい。第1モータジェネレータ5は、主にモータとして動作し、つまり、走行用となるモータジェネレータである。
【0014】
フロント駆動ユニット4は、出力源として、第2モータジェネレータ7と内燃機関8と、を備えており、さらに、動力伝達経路の切換を行うためのクラッチ機構9と、前輪2の駆動系となるギア列10と、を含んでいる。第2モータジェネレータ7は、基本的に、二輪走行の際には発電機として機能し、四輪走行の際には走行用モータとして機能するものである。
【0015】
好ましい一つの例では、第2モータジェネレータ7の回転軸と内燃機関8の回転軸とが一直線上に整列して配置されており、さらに、ギア列10における第1ギア10aが第2モータジェネレータ7の回転軸と同心状にかつ相対回転可能に設けられている。換言すれば、第1ギア10aの中心を第2モータジェネレータ7の回転軸が貫通している。クラッチ機構9は、一実施例においては、第2モータジェネレータ7の回転軸上にスライド可能に設けられたギアセレクタ9aと、このギアセレクタ9aを軸方向に動かすためのアクチュエータ9bと、を含むドグクラッチからなる。このクラッチ機構9は、第2モータジェネレータ7の回転軸を第1ギア10aに接続する車輪軸側締結位置(第1の位置に相当)と、第2モータジェネレータ7の回転軸を内燃機関8の回転軸に接続するエンジン側締結位置(第2の位置に相当)と、いずれとも締結されていないニュートラル位置と、を有している。
【0016】
つまり、クラッチ機構9が車輪軸側締結位置にあるときは、第2モータジェネレータ7と前輪2とが動力伝達可能な状態にあり、内燃機関8は切り離されている。クラッチ機構9がエンジン側締結位置にあるときは、第2モータジェネレータ7と内燃機関8とが互いに一体に回転するように接続されており、前輪2は第2モータジェネレータ7および内燃機関8から切り離されている。
【0017】
第1,第2モータジェネレータ5,7は、それぞれ、図示しないインバータ装置を介してバッテリに接続される。実施例のハイブリッド車両においては、運転者の要求等に応じてパワートレイン全体の制御を行うパワートレインコントローラ21を備えており、このパワートレインコントローラ21がモータコントローラ22を介して各モータジェネレータ5,7の制御を行う。さらに、パワートレインコントローラ21は、エンジンコントローラ23を介して内燃機関8を制御し、クラッチコントローラ24を介してクラッチ機構9(アクチュエータ9b)を切換制御する。
【0018】
このようなパワートレインの構成により、車両は、複数の走行モードでの走行が可能である。具体的には、発電を行いながら後輪1で走行するシリーズ二輪走行モードと、内燃機関8の燃焼運転を停止した状態でバッテリ電力により後輪1で走行するバッテリ二輪走行モードと、内燃機関8の燃焼運転を停止した状態でバッテリ電力により後輪1および前輪2の双方で走行するバッテリ四輪走行モードと、を実現することができる。
【0019】
図2は、バッテリ四輪走行モードにおける動力伝達の説明図である。クラッチ機構9が車輪軸側締結位置にあり、第2モータジェネレータ7の動力が前輪2に伝達される。つまり、第2モータジェネレータ7が走行用モータとして力行動作する。同時に、第1モータジェネレータ5の動力によって後輪1が駆動される。内燃機関8の燃焼運転は停止している。このようにバッテリ四輪走行モードとした状態においては、燃焼運転を停止している内燃機関8が前輪2から切り離されているため、内燃機関8が走行時の抵抗とならず、走行時の効率が向上する。また、内燃機関8の回転変動が車両駆動力に影響するようなこともない。
【0020】
図3は、シリーズ二輪走行モードにおける動力伝達の説明図である。クラッチ機構9がエンジン側締結位置にあり、第2モータジェネレータ7と内燃機関8とが接続されている。この状態で内燃機関8が発電のために燃焼運転され、第2モータジェネレータ7が発電機として動作する。第2モータジェネレータ7が前輪2から切り離されているので、前輪2は駆動されない。後輪1側では、第1モータジェネレータ5が後輪1を駆動する。これにより、発電を行いながら走行するシリーズ二輪走行モードとなる。
【0021】
バッテリの充電状態つまりSOCがあるレベル以上であるときは、
図3のような状態で内燃機関8の燃焼運転が停止する。これにより、発電を行わずにバッテリの電力で後輪1を駆動するバッテリ二輪走行モードとなる。
【0022】
なお、図示はしないが、クラッチ機構9をニュートラル位置とした状態においても、後輪1によるバッテリ二輪走行モードが可能である。
【0023】
次に、シリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の制御、特に、クラッチ機構9の同期制御について、
図4および
図5のタイムチャートを参照して説明する。なお、以下のタイムチャート等では、「回転速度」を「回転数」と記す。また「ジェネレータ」は第2モータジェネレータ7を意味し、「Rrモータ」は第1モータジェネレータ5を意味する。
図4,
図5は、上から順に、(a)回転数(車輪軸回転数に換算した第2モータジェネレータ7の回転数、および、車輪軸回転数に換算した内燃機関8の回転数)、(b)前輪側トルク(第2モータジェネレータ7のトルクおよび内燃機関8のトルク)、(c)後輪側トルク(第1モータジェネレータ5のトルク)、(d)クラッチ位置、を示している。
【0024】
図4は、シリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換が要求された時間t1時点において第2モータジェネレータ7の回転数(車輪軸回転数に換算したもの。以下同じ)が車輪軸回転数よりも高い場合の同期制御の例を示している。時間t1まではクラッチ機構9はエンジン側締結位置にあり、内燃機関8によって発電が行われている。このような場合は、クラッチ機構9の同期のために、車速に応じて定まる車輪軸回転数に近付くように第2モータジェネレータ7の回転数を低下させる必要がある。そのため、時間t1において、クラッチ機構9をニュートラル位置とし、かつ第2モータジェネレータ7の回転数を車輪軸回転数を目標に低下させる。慣性の大きな内燃機関8が第2モータジェネレータ7から切り離されることで、第2モータジェネレータ7の回転数を速やかに車輪軸回転数に同期させることができる。第2モータジェネレータ7の回転数が車輪軸回転数に近付いて差回転数が所定の差回転範囲a内となったら(時間t2)、クラッチ機構9の締結動作(車輪軸側への締結)を開始する。クラッチ機構9の締結が完了したら、前後駆動力配分が要求に応じた所定の比率となるように第1モータジェネレータ5の駆動力を低下させつつ第2モータジェネレータ7の駆動力を増加させる。時間t3において、一連の走行モード切換が完了する。
【0025】
図5は、シリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換が要求された時間t1時点において第2モータジェネレータ7の回転数が車輪軸回転数よりも低い場合の同期制御の例を示している。時間t1の時点ではクラッチ機構9はエンジン側締結位置にあり、内燃機関8によって発電が行われている。このような場合は、クラッチ機構9の同期のために、車速に応じて定まる車輪軸回転数に近付くように第2モータジェネレータ7の回転数を上昇させる必要がある。そのため、時間t1以降もクラッチ機構9を介して内燃機関8と第2モータジェネレータ7とが接続された状態を継続し、燃焼運転中の内燃機関8のトルクを利用して第2モータジェネレータ7の回転数を上昇させる。図示例では、内燃機関8のトルクを一定に保ちつつ第2モータジェネレータ7の発電量を減少させることで第2モータジェネレータ7の回転数が車輪軸回転数に近付いていく。第2モータジェネレータ7の回転数が車輪軸回転数に近付いて差回転数が所定の差回転範囲a内となったら(時間t2)、クラッチ機構9の締結動作(車輪軸側への締結)を開始する。時間t2から時間t3の間は、一時的にニュートラル位置となる。時間t3においてクラッチ機構9の締結が完了したら、前後駆動力配分が要求に応じた所定の比率となるように第1モータジェネレータ5の駆動力を低下させつつ第2モータジェネレータ7の駆動力を増加させる。時間t4において、一連の走行モード切換が完了する。このように内燃機関8のトルクを利用して第2モータジェネレータ7の回転数を上昇させることで、速やかに同期が完了する。
【0026】
次に
図6は、内燃機関8の回転が停止しているバッテリ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の制御を示したタイムチャートである。(a)~(d)の各欄は、
図4,
図5と同様である。なお、これは、バッテリのSOCがあるレベル以上にあることを前提としている。時間t1まではクラッチ機構9はエンジン側締結位置にあるが、内燃機関8は燃焼運転しておらず、第2モータジェネレータ7とともに回転が静止している。時間t1においてバッテリ四輪走行モードへの切換が要求されたら、クラッチ機構9をニュートラル位置として内燃機関8を第2モータジェネレータ7から切り離し、その後、第2モータジェネレータ7の回転数を車輪軸回転数に近付くように上昇させる。慣性の大きな内燃機関8が第2モータジェネレータ7から切り離されることで、第2モータジェネレータ7の回転数を速やかに車輪軸回転数に近付けることができる。第2モータジェネレータ7の回転数が車輪軸回転数に近付いて差回転数が所定の差回転範囲a内となったら(時間t2)、クラッチ機構9の締結動作(車輪軸側への締結)を開始する。クラッチ機構9の締結が完了したら、前後駆動力配分が要求に応じた所定の比率となるように第1モータジェネレータ5の駆動力を低下させつつ第2モータジェネレータ7の駆動力を増加させる。時間t3において、一連の走行モード切換が完了する。
【0027】
なお、上述した締結動作を開始する差回転範囲aは、固定値であってもよいが、車速に応じて車速が高いほど大きく設定するようにしてもよく、あるいは、車両の要求駆動力(例えばアクセルペダル開度等)に応じて要求駆動力が高いほど大きく設定するようにしてもよい。差回転範囲aが大きいほど締結時のショックや車両の前後加速度変化が大きくなるが、車速が高いときあるいは車両の要求駆動力が高いときには、相対的にこれらの影響が少なくなる。従って、差回転範囲aを大きくすることで、より速やかに走行モードの切換が完了するようになる。
【0028】
このように、上記実施例では、モータジェネレータが2つのみの比較的に簡単な構成でもってシリーズ二輪走行モードとバッテリ二輪走行モードとバッテリ四輪走行モードとを実現することができる。
【0029】
図7は、二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換を行う制御の処理の流れを示したフローチャートである。実施例のハイブリッド車両は、後輪1のみで走行する二輪走行モード(バッテリのSOCに応じてシリーズ二輪走行モードもしくはバッテリ二輪走行モードのいずれかとなる)を基本(デフォルト走行モード)としており、フローチャートに示す処理の開始時点では、二輪走行モードである。
【0030】
ステップ1では、四輪走行の要求があるかどうかを判定する。例えば車両の要求駆動力や路面状況等に応じて四輪走行が要求される。運転者がモード選択を行うような形態であってもよい。四輪走行の要求がなければルーチンを終了する。四輪走行の要求があれば、ステップ2において、一連の処理を開始すべく締結指令を出力する。そして、ステップ3において、現在、シリーズ二輪走行モードであるかバッテリ二輪走行モードであるかを判定する。
【0031】
バッテリ二輪走行モードであれば、ステップ4へ進み、クラッチ機構9をニュートラル位置とし、ステップ5において第2モータジェネレータ7の回転数を上昇させてクラッチ機構9の同期を行う。ステップ6において差回転が差回転範囲a内となったら、ステップ7へ進み、クラッチ機構9を車輪軸側に締結させ、ステップ8において第2モータジェネレータ7のトルクを上昇させつつ第1モータジェネレータ5のトルクを減少させる。ステップ9において、目標の前後駆動力配分比率となったか判定し、YESであればステップ10へ進む。ステップ10では、四輪走行の要求がまだあるかを再度確認し、YESであれば、この四輪走行の状態を継続する。
【0032】
上記のステップ4~9の処理は、
図6を用いて説明した内燃機関8の回転が停止しているバッテリ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の制御に対応する。
【0033】
ステップ10の判定がNO(四輪走行の要求がなくなった)の場合は、ステップ11へ進み、クラッチ機構9をニュートラル位置とし、さらにステップ12において、第2モータジェネレータ7の回転数を0に近付けてエンジン側締結位置に締結し、一連のルーチンを終了する。上記のステップ10~12の処理は、バッテリ四輪走行モードから後輪1のみで走行する二輪走行モード(バッテリのSOCに応じてシリーズ二輪走行モードもしくはバッテリ二輪走行モードのいずれかとなる)への切換に相当する。
【0034】
ステップ3の判定においてシリーズ二輪走行モードであれば、ステップ13へ進み、第2モータジェネレータ7の回転数(車輪軸回転数換算)を車輪軸回転数と比較する。つまりクラッチ機構9の同期のために第2モータジェネレータ7の回転数の上昇が必要か低下が必要かを判定する。第2モータジェネレータ7の回転数の方が相対的に大きければ、ステップ14に進んで回転数低下を早めるためにクラッチ機構9をニュートラル位置とし、ステップ15において第2モータジェネレータ7の回転数を低下させて車輪軸回転数に近付ける。ステップ16において差回転が差回転範囲a内となったら、ステップ7へ進み、クラッチ機構9を車輪軸側に締結させる。その後、前述と同様にステップ8以降の処理へ進む。
【0035】
上記のステップ13~16,7,8,9の処理は、
図4を用いて説明したシリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の制御に対応する。
【0036】
ステップ13の判定において第2モータジェネレータ7の回転数の方が相対的に小さければ、ステップ17に進んで回転数上昇を早めるためにクラッチ機構9を切り換えることなく内燃機関8のトルクも利用して第2モータジェネレータ7の回転数を車輪軸回転数に近付ける。ステップ18において差回転が差回転範囲a内となったら、ステップ19においてクラッチ機構9をニュートラル位置とした後に、ステップ7へ進み、クラッチ機構9を車輪軸側に締結させる。その後、前述と同様にステップ8以降の処理へ進む。
【0037】
上記のステップ13,17~19,7,8,9の処理は、
図5を用いて説明したシリーズ二輪走行モードからバッテリ四輪走行モードへの切換時の制御に対応する。
【0038】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、第1モータジェネレータ5が前輪2を駆動し、第2モータジェネレータ7が後輪1を駆動する構成であってもよい。また、第2モータジェネレータ7の回転軸と内燃機関8の回転軸との間にこれらと平行な中間軸を備えた構成とすることもできる。
【0039】
さらに、上記実施例ではクラッチ機構9としてドグクラッチを例示したが、クラッチ機構9として摩擦クラッチであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1…後輪
2…前輪
3…リア駆動ユニット
4…フロント駆動ユニット
5…第1モータジェネレータ
7…第2モータジェネレータ
8…内燃機関
9…クラッチ機構
21…パワートレインコントローラ
22…モータコントローラ
23…エンジンコントローラ
24…クラッチコントローラ