(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099098
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法および制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 15/02 20060101AFI20240718BHJP
F02B 75/04 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F02D15/02 C
F02B75/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002789
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 崇志
【テーマコード(参考)】
3G092
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AA05
3G092AA06
3G092AA12
3G092BA03
3G092BA09
3G092BB01
3G092DD06
3G092DD10
3G092DG07
3G092FA24
3G092GA12
3G092HA05Z
3G092HE01Z
3G092HE03Z
3G092HE06Z
3G092HE08Z
3G092HF08Z
(57)【要約】
【課題】低μ路走行のような急加速要求が生じないと考えられる所定の条件下では定常走行時の圧縮比を高くし、燃費の向上を図る。
【解決手段】車両用内燃機関は可変圧縮比機構を備えており、機関負荷と機関回転速度とをパラメータとして定めた目標圧縮比に沿って圧縮比が制御される。基本圧縮比マップは、負荷が高いほど低圧縮比となるように定められている。急加速時の圧縮比変化の遅れによるノッキングを回避するために、基本圧縮比マップは燃費最良の圧縮比よりも低圧縮比側の設定となる。低μ路走行のような所定の非急加速条件が成立しているときは、基本圧縮比マップよりも高圧縮比領域を拡大した非急加速条件時圧縮比マップが用いられ、相対的に高圧縮比となる。これにより燃費が向上する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行駆動源として車両に搭載され、かつ可変圧縮比機構を備え、機関負荷と機関回転速度とに基づいて機関負荷が高いほど基本圧縮比が低圧縮比側に設定される車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法であって、
車両が急加速しない所定の非急加速条件を予め定め、
運転中に上記非急加速条件が成立しているかどうかを判定し、
非急加速条件が成立している場合は、目標圧縮比を上記基本圧縮比よりも高く設定する、
車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法。
【請求項2】
機関負荷と機関回転速度とをパラメータとして基本圧縮比を割り付けた基本圧縮比マップと、
機関負荷と機関回転速度とをパラメータとして非急加速条件成立時の目標圧縮比を割り付けた非急加速条件時圧縮比マップと、
を備え、
上記非急加速条件時圧縮比マップは、基本圧縮比マップに比較して、高圧縮比領域が高負荷側に拡大している、
請求項1に記載の車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法。
【請求項3】
上記非急加速条件は、低μ路走行を含む、
請求項1に記載の車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法。
【請求項4】
上記非急加速条件は、環境条件によって内燃機関の負荷の急増が禁止されている場合、を含む、
請求項1に記載の車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法。
【請求項5】
上記非急加速条件は、車両が通常は急加速要求が生じない走行位置もしくは走行状態にある場合、を含む、請求項1に記載の車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法。
【請求項6】
車両の加速要求が予測される走行位置もしくは走行状態に車両がある場合は、基本圧縮比に沿った通常の圧縮比制御とする、
請求項1に記載の車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法。
【請求項7】
走行駆動源として車両に搭載され、かつ可変圧縮比機構を備え、機関負荷と機関回転速度とに基づいて機関負荷が高いほど基本圧縮比が低圧縮比側に設定される車両用可変圧縮比内燃機関の制御装置であって、
車両が急加速しない所定の非急加速条件が予め定められており、
運転中に上記非急加速条件が成立しているかどうかを判定して、非急加速条件が成立している場合は、目標圧縮比を上記基本圧縮比よりも高く設定する、
車両用可変圧縮比内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可変圧縮比機構を備えた車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の機械的圧縮比を変更する可変圧縮比機構は、従来から種々の形式のものが知られている。例えば、複リンク式ピストンクランク機構のリンクジオメトリの変更によってピストン上死点位置を上下に変位させるようにした可変圧縮比機構が本出願人らによって多数提案されている(特許文献2)。また、クランクシャフトの中心位置に対しシリンダの位置を上下に変位させることで同様に機械的圧縮比を変化させるようにした可変圧縮比機構も公知である。
【0003】
特許文献1には、可変圧縮比内燃機関を走行駆動源の1つとして車両に搭載したハイブリッド車両が開示されている。ここには、車両全体の効率が高くなるように内燃機関の圧縮比を含む多数のパラメータを最適に設定する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-044433号公報
【特許文献2】特開2004-190590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
内燃機関の圧縮比は、基本的には、高圧縮比である方が効率が高くなって燃費が良好となるが、負荷が高くなるとノッキングが生じて点火時期リタードが必要となる。そのため、可変圧縮比内燃機関においては、機関負荷と機関回転速度とに基づいて、機関負荷が高いほど圧縮比が低くなる特性でもって基本の目標圧縮比が設定される。
【0006】
ここで、この基本の目標圧縮比特性は、過渡時(換言すれば急加速時)の圧縮比変化の遅れを考慮して耐ノック性の上で余裕を有する設定となっている。つまり、急加速により要求トルクが急増したときに、目標圧縮比は速やかに低くなるが、実際の圧縮比変化速度は有限であり、相対的に圧縮比変化の遅れが生じる。そのため、このように急加速時に圧縮比変化が遅れたとしても過渡的なノッキングの発生を回避できるように、目標圧縮比は、ある程度の余裕を有するように低圧縮比寄りに設定されるのである。
【0007】
そのため、定常走行時に燃費最良のレベルにまで圧縮比が高く制御されず、燃費向上の上でなお改善の余地があった。
【0008】
なお、特許文献1は、具体的な圧縮比の制御については、何ら記載がない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、走行駆動源として車両に搭載され、かつ可変圧縮比機構を備え、機関負荷と機関回転速度とに基づいて機関負荷が高いほど基本圧縮比が低圧縮比側に設定される車両用可変圧縮比内燃機関の制御方法であって、
車両が急加速しない所定の非急加速条件を予め定め、
運転中に上記非急加速条件が成立しているかどうかを判定し、
非急加速条件が成立している場合は、目標圧縮比を上記基本圧縮比よりも高く設定する。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、非急加速条件が成立している場合の定常走行時における圧縮比が相対的に高く保たれることになり、それだけ燃費が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】可変圧縮比機構を備えた内燃機関の構成説明図。
【
図3】非急加速条件時圧縮比マップの特性を示す特性図。
【
図4】高μ路走行時と低μ路走行時の加速時の動作を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明が適用される自動車用内燃機関1の構成を概略的に示した説明図である。この内燃機関1は、例えば複リンク式ピストンクランク機構を利用した可変圧縮比機構2を備えた4ストロークサイクルの火花点火内燃機関(いわゆるガソリン機関)であって、走行駆動源として図示しない車両に搭載され、適当な変速機構を介して車両の駆動輪を駆動するものである。図示するように、燃焼室3の天井壁面に、一対の吸気弁4および一対の排気弁5が配置されているとともに、これらの吸気弁4および排気弁5に囲まれた中央部に点火プラグ6が配置されている。
【0013】
上記吸気弁4によって開閉される吸気ポート15の下方には、燃焼室3内に燃料を直接に噴射する筒内噴射用燃料噴射弁16が配置されている。なお、吸気ポート15へ向けて燃料を噴射するポート噴射型の構成であってもよい。
【0014】
上記吸気ポート15に接続された吸気通路14のコレクタ部18上流側には、エンジンコントローラ31からの制御信号によって開度が制御される電子制御型スロットルバルブ19が介装されている。スロットルバルブ19の上流側に、吸入空気量を検出するエアフロメータ20が配設されており、さらに上流側に、エアクリーナ21が配設されている。
【0015】
また、排気ポート17に接続された排気通路25には、三元触媒からなる触媒装置26が介装されており、その上流側に、空燃比を検出する空燃比センサ28が配置されている。
【0016】
上記エンジンコントローラ31には、上記のエアフロメータ20、空燃比センサ28のほか、機関回転速度を検出するためのクランク角センサ32、冷却水温を検出する水温センサ33、運転者により操作されるアクセルペダルの踏込量を検出するアクセル開度センサ34、コレクタ部18内の圧力を検出する吸気圧センサ35、等のセンサ類の検出信号が入力されている。エンジンコントローラ31は、これらの検出信号に基づき、燃料噴射弁16による燃料噴射量および噴射時期、点火プラグ6による点火時期、スロットルバルブ19の開度、等を最適に制御している。
【0017】
一方、可変圧縮比機構2は、公知の複リンク式ピストンクランク機構を利用したものであって、クランクシャフト41のクランクピン41aに回転自在に支持されたロアリンク42と、このロアリンク42の一端部のアッパピン43とピストン44のピストンピン44aとを互いに連結するアッパリンク45と、ロアリンク42の他端部のコントロールピン46に一端が連結されたコントロールリンク47と、このコントロールリンク47の他端を揺動可能に支持するコントロールシャフト48と、を主体として構成されている。上記クランクシャフト41および上記コントロールシャフト48は、シリンダブロック49下部のクランクケース49a内で軸受構造を介して回転自在に支持されている。上記コントロールシャフト48は、該コントロールシャフト48の回動に伴って位置が変化する偏心軸部48aを有し、上記コントロールリンク47の端部は、詳しくは、この偏心軸部48aに回転可能に嵌合している。上記の可変圧縮比機構2においては、コントロールシャフト48の回動に伴ってピストン44の上死点位置が上下に変位し、従って、機械的な圧縮比が変化する。
【0018】
また、上記可変圧縮比機構2の圧縮比を可変制御する駆動機構として、この実施例では、クランクシャフト41と平行な回転中心軸を有する電動アクチュエータ51がクランクケース49aの外壁面に配置されており、この電動アクチュエータ51の出力回転軸に固定された第1アーム52と、コントロールシャフト48に固定された第2アーム53と、両者を連結した中間リンク54と、を介して、電動アクチュエータ51とコントロールシャフト48とが連動している。電動アクチュエータ51は、軸方向に直列に配置された電動モータおよび変速機構を含んでいる。この電動アクチュエータ51は、機関運転条件に応じた目標圧縮比を実現するように、エンジンコントローラ31からの制御信号によって制御される。
【0019】
エンジンコントローラ31は、内燃機関1の運転条件として内燃機関1の負荷Te(換言すれば要求トルク)と回転速度Neとをパラメータとして目標圧縮比を割り付けた圧縮比マップを備えており、このマップに基づいて目標圧縮比を設定する。
図2は、基本的な目標圧縮比である基本圧縮比を割り付けた基本圧縮比マップの特性を概略的に示しており、ここに図示するように、基本圧縮比は、基本的には、低負荷側では高圧縮比であり、負荷が高いほどノッキング抑制等のために低圧縮比となる。
図2には、代表的な圧縮比としてCR1~CR4の4つの圧縮比値の特性が図示されており、「CR1>CR2>CR3>CR4」である。なお、可変圧縮比機構2は、圧縮比を連続的に変化させることが可能であるが、実際の制御においては、制御の簡略化のために、基本圧縮比が複数段階に段階的に設定されている。
【0020】
一方、本実施例においては、エンジンコントローラ31は、基本圧縮比マップのほかに、所定の非急加速条件が成立している場合に用いられる非急加速条件時圧縮比マップを備えている。非急加速条件時圧縮比マップは、非急加速条件が成立している場合つまり急加速が要求されないことを前提とした目標圧縮比を機関負荷Teと機関回転速度Neとをパラメータとして割り付けたものであり、
図3にその一例を示す。
図3の特性図を
図2の特性図と比較すれば明らかなように、非急加速条件時圧縮比マップでは、比較的に高い圧縮比であるCR1の領域やCR2の領域が基本圧縮比マップよりも高負荷側に拡大している。そのため、多くの運転条件において、基本圧縮比よりも非急加速条件時圧縮比の方が高圧縮比となる。つまり、非急加速条件時圧縮比マップは、過渡時の圧縮比変化の遅れによるノッキングを考慮せずに耐ノック性の上で必要となる余裕を小さくして設定されており、全体として、燃費が最良となる圧縮比に近い特性となっている。
【0021】
非急加速条件時圧縮比マップが適用される非急加速条件は、予め1つあるいは複数の条件が定められている。非急加速条件とは、急加速要求が生じることがないあるいは急加速要求が生じる確率が極めて低いと考えられる、環境条件、車両走行条件、車両走行位置、等の条件である。例えば、環境条件の1つとして、雪道や砂利道等の低μ路走行では、人為的な運転であっても通常、急加速が要求されることがない。また、このような急加速が不適当な環境条件(低μ路走行等)に対してシステム的に急加速を制限する(例えばスロットルバルブ19の開度や変化速度を制限する)ような場合は、この急加速の制限と併せて、非急加速条件時圧縮比マップに目標圧縮比マップを切り換えるようにしてもよい。なお、低μ路であることの検出ないし判定は、例えば、二輪走行と四輪走行との切換を自動で行うオンデマンド四輪駆動車に使用される公知の技術を応用することができる。本実施例の内燃機関1をこのようなオンデマンド四輪駆動車の駆動源として利用することも可能である。
【0022】
高速道路等において設定速度で走行するオートクルーズモード走行、自動運転機能による高速自動運転、高速巡航走行、前車に追従している追従走行、等も非急加速条件の1つとなり得る。そのほか、カーナビゲーションシステムの渋滞情報に基づき渋滞状態が続くとシステムが判断した場合、カーブ路の進入前の区間、下り坂の進入前の区間、カーブ路や下り坂の走行途中、赤信号や黄信号の直前位置、ETCゲートの直前位置、等も非急加速条件の1つとして予め定めておくことが可能である。
【0023】
一実施例の車両にあっては、このような予め定めた所定の非急加速条件が成立しているかどうかを車両運転中に判定し、非急加速条件が成立している場合は、エンジンコントローラ31で使用する目標圧縮比マップを
図2の基本圧縮比マップから
図3の非急加速条件時圧縮比マップに切り換える。これにより、比較的に高い圧縮比で内燃機関1が運転される時間が長くなり、燃費が向上する。
【0024】
非急加速条件が成立していない場合は、基本圧縮比マップを用いて圧縮比を制御する。
【0025】
また、非急加速条件が成立していて非急加速条件時圧縮比マップが用いられている間に、加速要求が発生すると予測された場合には、ノッキング回避のために基本圧縮比マップに戻すことが好ましい。加速要求が発生すると予測される場合としては、例えば、前車と自車との間の車間距離が所定以上に大きくなった場合、ステアリング操作時、レーンチェンジ時、渋滞終了が予測されたとき、カーブ路の出口区間、登坂路の進入前の区間、ETCゲート出口部、高速道路の合流部、運転者が運転モードとしてスポーツモード(これに準ずるモードを含む)を選択した場合、等を挙げることができる。
【0026】
このような場合に基本圧縮比マップに戻しておくことで、ノッキングの発生を未然に回避することができる。
【0027】
図4は、前半の高μ路走行と後半の低μ路走行とを対比して示したタイムチャートであり、上から順に、(a)路面μ、(b)圧縮比、(c)アクセル開度、(d)スロットルバルブ開度、(e)トルク(駆動伝達可能トルクT1,ノック限界トルクT2、駆動トルクT3)、を示している。駆動伝達可能トルクT1は、路面μから定まるタイヤを介して路面に伝達可能な最大トルクである。ノック限界トルクT2は、ノッキングが生じない限界のトルクであり、圧縮比に応じて算出される。好ましい一つの例では、圧縮比に応じて算出されたノック限界トルクT2を越えることがないように例えばスロットルバルブ19の開度制御を介して内燃機関1の出力トルク(換言すれば実際の駆動トルクT3)が制限される。
【0028】
図4の例では、タイムチャートの前半部分は路面が高μ路と判定されており、基本圧縮比マップに基づいて比較的に低い圧縮比に制御されている。高μ路であることから駆動伝達可能トルクT1は十分に高く、またノック限界トルクT2も十分に高い。図示例では、ノック限界トルクT2よりも駆動伝達可能トルクT1が高いので、基本的にタイヤのスリップは生じない。また、高μ路走行中に急加速(アクセル開度の急増)が見られるが、スロットルバルブ19の開度はアクセル開度に比例して大きくなり、駆動トルクT3も急増する。しかし、圧縮比が比較的に低いことから、ノッキングは発生せず、またタイヤのスリップも生じない。
【0029】
タイムチャートの後半部分は路面が低μ路と判定されており、目標圧縮比マップが基本圧縮比マップから非急加速条件時圧縮比マップに切り換えられることで、圧縮比が高くなる。この圧縮比の上昇に伴い、ノック限界トルクT2は低くなる。駆動伝達可能トルクT1は、低μ路であることから低くなる。図示例では、駆動伝達可能トルクT1がノック限界トルクT2よりも低くなり、タイヤのスリップが生じ得る条件となる。
【0030】
このような低μ路走行中に運転者によって急加速操作がなされたとすると、システムによってアクセル開度の変化に対しスロットルバルブ19の開度変化が制限され、駆動輪から出力される駆動トルクT3が比較的に小さくなる。例えば、駆動伝達可能トルクT1およびノック限界トルクT2を下回るように駆動トルクT3が制限される。従って、比較的に高い圧縮比の下でもノッキングは発生せず、またタイヤのスリップも生じない。
【0031】
なお、路面μが非常に低いなどにより駆動トルクT3が駆動伝達可能トルクT1に達した場合は、スリップが生じるので、内燃機関1の負荷(トルク)はそれ以上には増加し得ず、従って、駆動トルクT3がノック限界トルクT2を越えてノッキングが生じることはない。
【0032】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。上記実施例では、可変圧縮比機構として複リンク式ピストンクランク機構を利用した可変圧縮比内燃機関を例示したが、本発明においては他の形式の可変圧縮比機構であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…内燃機関
2…可変圧縮比機構
19…スロットルバルブ
31…エンジンコントローラ
34…アクセル開度センサ