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  • 特開-補修材組成物および硬化物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099100
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】補修材組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/63 20060101AFI20240718BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240718BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20240718BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C04B41/63
C08L83/04
C08K5/5419
C08K5/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002791
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】515119789
【氏名又は名称】株式会社OSHIROX
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(74)【代理人】
【識別番号】100174849
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 理生
(72)【発明者】
【氏名】牧野 宰之
【テーマコード(参考)】
4G028
4J002
【Fターム(参考)】
4G028CA02
4G028CB08
4G028CD02
4J002CP03W
4J002CP05W
4J002CP05X
4J002CP06X
4J002CP09X
4J002CP14X
4J002CP16X
4J002DD077
4J002EC038
4J002EC048
4J002EC077
4J002EG017
4J002EG047
4J002EG057
4J002EJ077
4J002EX016
4J002EX036
4J002EX066
4J002EX076
4J002FD038
4J002FD146
4J002FD14X
4J002FD157
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】コンクリートおよびアスファルト用の補修材として、さらなるクラック誘発を抑制でき、現場にて容易にかつ素早く硬化できる補修材組成物およびその硬化物を提供すること。
【解決手段】 本発明の、一液型シリコーンエラストマー:30.0~99.6質量%と、アルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物:0.4~70.0質量%と、を含む、補修材組成物は、コンクリートおよびアスファルト用の補修材として、さらなるクラック誘発を抑制でき、現場にて容易にかつ素早く硬化できる。
【選択図】 図1




【特許請求の範囲】
【請求項1】
一液型シリコーンエラストマー:30.0~99.6質量%と、
アルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物:0.4~70.0質量%と、
を含む、補修材組成物。
【請求項2】
前記アルキルシリケートが、以下の一般式(1)で示すことができるアルキルシリケートを含む、請求項1に記載の補修材組成物。
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は、それぞれ同じかまたは異なり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基であり、R2は、それぞれ同じかまたは異なり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数7~10のアラルキル基であり、aは0~2の整数である。)
【請求項3】
前記アルキルシリケートが、アミノ基含有アルキルシリケート化合物、グリシジル基含有アルキルシリケート化合物、アクリル基含有アルキルシリケート化合物、メタクリル基含有アルキルシリケート化合物、エポキシ基含有アルキルシリケート化合物、およびビニル基含有アルキルシリケート化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、求項2に記載の補修材組成物。
【請求項4】
さらに硬化促進触媒を硬化有効量で含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の補修材組成物。
【請求項5】
さらにアルコールを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の補修材組成物。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の補修材組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートやアスファルトなどを補修するための補修材組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、骨材を結合剤(たとえばセメントやアスファルト)によって固めた複合材料の総称である。セメントを結合剤として用いたコンクリートは、圧縮力に強いため、高い負荷のかかる構造物の構造材料として有用である。そのため、コンクリートは、現代の建築工事および土木工事において欠かすことのできない材料となっている。
【0003】
さて、コンクリート構造物は、圧縮力に強いとは言っても、引っ張り応力には弱く、さらには変形能力が低い材料である。そのため、コンクリートにはひび割れが生じやすい。また、コンクリートの乾燥、セメントの水和熱、コンクリートの中性化などによっても、ひび割れが生じることがある。図1に、コンクリートに生じたクラックの一例の写真を示す。
【0004】
ひび割れを起こしたコンクリートは圧縮力にも劣り、防水性も下がるため、ひび割れは補修しなくてはならない。そこで用いるのが、コンクリート用の補修材である。
【0005】
従来、コンクリートの補修材としては、たとえばエポキシ系等の有機系クラック補修材が用いられていた。しかし、エポキシ系等の有機系クラック補修材は、耐候性に劣り、長期的なコンクリート構造物を保護する補修材としては、問題がある。
【0006】
さらに、エポキシ系をはじめとする高硬度のクラック補修材で補修したコンクリート構造物では、コンクリート構造物の振動減衰により、さらなるクラック誘発が懸念される。
【0007】
従来の補修材の他の例としては、オリゴマーあるいは高分子からなる室温硬化型シリコーンが挙げられる。しかし、室温硬化型シリコーンは、微細なクラックや健全なコンクリートへの浸透には劣る。また、その分子量の大きさからコンクリートとの結合性を有する官能基数が少なく、コンクリートとの化学的な結合力に劣る。そして、硬化性の遅さが問題とされることがある。
【0008】
また、補修材としてたとえば特許文献1~10のようなものが提案されているが、実運用されている構造物におけるクラック補修材には、上記の問題を解決できると共に、現場にて容易にかつ素早く硬化できるものはないというのが現状である。
【0009】
そして、コンクリートと同様に、アスファルトにもひび割れが起こり、補修が必要となることがある。アスファルトは、道路の舗装用材料や、駐車場の床材として、日本全国で用いられている。アスファルト用の補修材としても、上記の問題を解決できると共に、現場にて容易にかつ素早く硬化できるものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016-204586号公報
【特許文献2】特開平11-21430号公報
【特許文献3】特開2017-110474号公報
【特許文献4】特開2007-9672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
現状、コンクリートやアスファルトの補修材として、さらなるクラック誘発を抑制でき、現場にて容易にかつ素早く硬化できるものはなかった。
【0012】
特に、寒冷地(日本でいれば、北海道や東北地方)において、駐車場のコンクリート部分およびアスファルト部分のひび割れの補修には、時間が非常にかかっていた。
【0013】
本発明の目的は、コンクリートおよびアスファルト用の補修材として、さらなるクラック誘発を抑制でき、現場にて容易にかつ素早く硬化できる補修材組成物およびその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、一液型シリコーンエラストマー:30.0~99.6質量%と、
アルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物:0.4~70.0質量%と、
を含む、補修材組成物を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記アルキルシリケートが、以下の一般式(1)で示すことができるアルキルシリケートを含む、上記補修材組成物を提供する。
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は、それぞれ同じかまたは異なり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基であり、R2は、それぞれ同じかまたは異なり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数7~10のアラルキル基であり、aは0~2の整数である。)
【0016】
また、本発明は、前記アルキルシリケートが、アミノ基含有アルキルシリケート化合物、グリシジル基含有アルキルシリケート化合物、アクリル基含有アルキルシリケート化合物、メタクリル基含有アルキルシリケート化合物、エポキシ基含有アルキルシリケート化合物、およびビニル基含有アルキルシリケート化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、上記補修材組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、さらに硬化促進触媒を硬化有効量で含む、上記補修材組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、さらにアルコールを含む、上記補修材組成物を提供する。
【0019】
そして、本発明は、本発明の補修材組成物の硬化物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の補修材組成物は、コンクリートやアスファルト等の構造物に生じたクラックに注入することで簡単に補修できる材料である。本発明の補修材組成物が含む一液型シリコーンエラストマーは、室温および通常の湿気にて硬化可能である。このような一液型シリコーンエラストマーを含む組成物の硬化物は、耐屈曲性に優れ、クラック部に防水性、封止性を与えることが出来る。また、このシリコーンエラストマーを含む組成物の硬化物は、シリコーンエラストマー特有の弾性により、コンクリート構造物およびアスファルト構造物の振動を減衰させることができ、その結果、さらなるクラック誘発を抑制することができる。このようなシリコーンエラストマーを30.0~99.6質量%で含む補修材組成物は、コンクリート構造物およびアスファルト構造物のクラックに対し現場施工にて対応でき、実運用されている構造物におけるクラック補修材として用いることが可能となる。また、本発明の補修材組成物の効果物は、撥油・撥水性を示すシリコーンを含むので、長期にわたり汚染物、汚れも容易に除去可能な性質・性能も併せ持つ。
【0021】
さらに、配合されているアルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物は、組成物がクラックに注入された際に、周囲のコンクリートまたはアスファルト内部へ素早く含浸し、シリコーン成分とコンクリート構造物またはアスファルト構造物との化学的な結合力を増強させると共に、クラック補修部位周辺の強度向上化も同時に果たすことができる。
【0022】
さらに、アルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物は、材料の架橋促進を促す効果も兼ね備えており、補修材組成物の硬化性を促進させ、実運用されている構造物におけるクラック補修材として用いた場合においても、容易にかつ素早く硬化させる機能も果たすことが出来る。
【0023】
したがって、本発明のコンクリート補修材組成物は、コンクリートまたはアスファルト用補修材として、さらなるクラック誘発を抑制でき、たとえ寒冷地であっても、現場にて容易にかつ素早く硬化できる。
【0024】
また、本発明の硬化物は、本発明の補修材組成物の硬化物であるため、さらなるクラック誘発を抑制でき、クラック部に防水性、封止性を与えることができ、長期にわたり汚染物、汚れを容易に除去可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】コンクリートに生じたクラックの一例の写真。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の補修材組成物は、一液型シリコーンエラストマー:30.0~99.6質量%と、アルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物:0.4~70.0質量%と、を含む。このような補修材組成物は、コンクリート構造物またはアスファルト構造物のクラック部へ注入することで、コンクリート構造物またはアスファルト構造物のクラック補修が短時間で可能であると共に、クラック補修部位周辺部(健全部位を含む)の強度向上化を同時に果たすことができ、コンクリート構造物またはアスファルト構造物の長寿命化を果たすことができる。このシリコーンエラストマーを含む組成物の硬化物は、シリコーンエラストマー特有の弾性により、コンクリート構造物またはアスファルト構造物の振動を減衰させることができ、その結果、さらなるクラック誘発を抑制することができる。
【0027】
また、本発明の硬化物は、本発明の補修材組成物の硬化物であるため、さらなるクラック誘発を抑制でき、クラック部に防水性、封止性を与えることができる。
【0028】
以下、本発明の補修材組成物、およびその硬化物を詳細に説明する。ただし、以下は単なる例示であり、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0029】
[補修材組成物]
以下、本発明の補修材組成物の各成分を詳細に説明する。なお、本発明の補修材組成物の各成分を混合せずに含んだ、補修材組成物用キットも可能である。
【0030】
[(I)一液型シリコーンエラストマー]
一液型シリコーンエラストマーは、室温および通常の湿度(約10%~約95%)で硬化可能な本発明の補修材組成物は、室温・湿気にて硬化可能な(I)を含むことにより、その硬化物が、耐屈曲性に優れ、クラック部に防水性および封止性を与えることができる。また、その硬化物は、コンクリート構造物またはアスファルト構造物の振動を減衰することができ、さらなるクラック誘発を抑制することができる。さらに、一液型シリコーンエラストマーを20.0~99.6質量%で含む本発明の組成物は、コンクリート構造物またはアスファルト構造物のクラックに対し、現場施工にて対応でき、実運用されている構造物におけるクラック補修材として用いることが可能となる。また、撥油・撥水性を示すシリコーンエラストマーの硬化物は、長期にわたって汚染物や汚れを、容易に除去可能な性質・性能も併せ持つ。さらに、透明~半透明性のシリコーンにおいては、クラック補修部位を見極めつつ、材料の注入ができ、仕上がったコンクリート構造物またはアスファルト構造物の美観も損なわず、顔料等の着色によるクラック補修部の美観性維持も可能となる。
【0031】
一液型シリコーンエラストマーの市販品の例としては、信越化学工業社製の一液付加反応型シリコーン(たとえば、KE-1820、KE-1825、KE-1830、KE-1831、KE-1833、KE-1835-S、KE-1850、KE-1854、KE-1855、KE-1880、KE-1884、KE-1885、IO-SEAL-300、KE-1014、KE-1056、KE-1057、KE-1061、KE-1062、KE-1842、KE-1844、KE-1886、KE-1871、KE-1867、KE-1869、KE-1891、KER-6075-F、KER-6020-F、KER-6230-F、KER-3000M2、KER-3200-T7、X-32-2551、SMP-2840、KER-2000DAM、KER-2020-DAM、KCR-H2800、KCR-4000W、FE-61など)、信越化学工業社製の一液縮合反応型シリコーン(たとえば、KE-40RTV、KE-41、KE-42、KE-44、KE-45、KE-347、KE-348、KE-441、KE-445、KE-45-S、KE-3417、KE3418、KE-3450、KE-3466、KE3467、KE-3475、KE-3479、KE-3423、KE-3424-G、KE3247、KE3428KE-3490、KE-3491、KE-3492、KE-3493、KE-3494、KE-3495、KE-3497、KE-3498、KE-3467、KE-3412、KE-4806-W、KE-4890、KE-4895、KE-4896、KE-4897、KE-4898、KE-4901-W、KE-4908-T、KE-4916-B、KE-4918、KE-4961-W、KE-3495、KE-3424-G、KE-4920-T、KE-4921-W、KE-4970、KE-4971、FE-123、FE-2000、G-1000など)(以上、信越化学社製)、旭化成ワッカーシリコーン社製の一液付加反応型シリコーン(たとえば、ELASTOSIL E43N、ELASTOSIL E50N、 ELASTOSIL E92N、ELASTOSIL E4、ELASTOSIL E10、ELASTOSIL E14、ELASTOSIL E47、ELASTOSIL N9111、ELASTOSIL N2010 ELASTOSIL N2034、ELASTOSIL N2189、ELASTOSIL N2199、ELASTOSIL N199、ELASTOSIL 987GR、ELASTOSIL 989/1K、SILRES BS 710、ELASTOSIL N2010、ELASTOSIL N2189、SEMICOSIL 988/1K、SEMICOSIL 989/1K、ELASTOSIL M8520、ELASTOSIL M4600、ELASTOSIL M8641、ELASTOSIL M8645など)(以上、旭化成ワッカーシリコーン社製)の市販品を挙げることができる。以上の例示物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0032】
補修材組成物中の一液型シリコーンエラストマーの含有量が30.0質量%未満である場合、クラック補修したコンクリート構造物またはアスファルト構造物の耐湿潤冷熱繰り返し性が低下する。また、寒冷地での硬化性および凍結安定融解性が低下する。一方、含有量が99.6質量%を超えると、補修材の充填および注入が困難となる。クラック補修したコンクリート構造物またはアスファルト構造物の耐湿潤冷熱繰り返し性が低下する。
【0033】
本発明の補修材組成物中の一液型シリコーンエラストマーの含有量は、30.0~90.0質量%であることが好ましく、45.0~85.0質量%であることがより好ましい。
【0034】
[(II)アルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物]
補修材組成物が(I)一液型シリコーンエラストマーに加えてアルキルシリケート化合物(II-a)およびその加水分解物縮合物(II-b)を含むことにより、補修材の粘度調整が可能となり、コンクリート構造物またはアスファルト構造物のクラックへの充填および注入が容易となる。
【0035】
また、アルキルシリケート化合物(II-a)およびその加水分解物縮合物(II-b)は、硬化によりゲル弾性を示すシリコーンエラストマーを含む補修材組成物に、化学的な架橋による硬度・強度増加を与えることができる。さらに、コンクリート構造物またはアスファルト構造物への含浸することによりコンクリート構造物またはアスファルト構造物と補修材との化学的な結合力を増強させる効果を与える。
【0036】
なお、アルキルシリケート化合物(II-a)よりもその加水分解縮合物(II-b)の方がより、ゲル弾性を示すシリコーンエラストマーへ化学的な架橋により、組成物の硬化物に更なる硬度および強度を与えることができる。一方、アルキルシリケート化合物の加水分解物縮合物(II-b)は、アルキルシリケート化合物(II-a)よりもコンクリート構造物またはアスファルト構造物への含浸速度は劣るものの、含浸することによりコンクリート構造物またはアスファルト構造物と補修材との化学的な結合力を増強させる効果を与える。
【0037】
アルキルシリケート化合物は、たとえば、以下の一般式(1)で示すことができるアルキルシリケートが挙げられる。
(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は、それぞれ同じかまたは異なり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または炭素数7~10のアラルキル基であり、R2は、それぞれ同じかまたは異なり、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数7~10のアラルキル基であり、aは0~2の整数である。)
【0038】
アルキルシリケート化合物の具体例としては、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ-n-プロピルシリケート、テトラ-i-プロピルシリケート、テトラ-n-ブチルシリケート、テトラ-i-ブチルシリケート、テトラ-t-ブチルシリケート、メチルエチルシリケート、メチルプロピルシリケート、メチルブチルシリケート、エチルプロピルシリケート、プロピルブチルシリケートなどのテトラアルキルシリケート類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、などのトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類などのシランが挙げられる。また、これらは1種単独でもよく、2種以上を併用しても良い。
【0039】
アルキルシリケートは、テトラエトキシシランおよび/またはポリエトキシシランを含むことが好ましい。アルキルシリケートは、たとえば(R1O)4-aSiR2 a (1)
(式中、R1は同じかまたは異なってもよいが、炭素数1~3のアルキル基、炭素数6のアリール基、R2は同じかまたは異なり、炭素数4~10のアルキル基、aは0~2の整数。)および/またはその縮合物であることができる。
【0040】
市販品として、たとえば、エチルシリケート28(テトラエチルシリケート:コルコート社製)、正珪酸メチル(テトラメチルシリケート:多摩化学工業社製)、メチルトリメトキシシラン(メチルトリメトキシシラン:多摩化学工業社製)、KBM-202SS(ジフェニルジメトキシシラン:信越化学工業社製)、KBM-103(フェニルトリメトキシシラン:信越化学工業社製)、KBE-3063(ヘキシルトリエトキシシラン:信越化学工業社製)、KBE-3083(オクチルトリエトキシシラン:信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0041】
アルキルシリケート化合物の加水分解縮合化合物としては、上記アルキルシリケート化合物が部分的に加水分解縮合したものが挙げられる。その縮合度は、1~20が好ましく、3~15がより好ましい。
【0042】
市販品としては、たとえば、エチルシリケート40(テトラエトキシシラン部分加水分解縮合物;平均5量体:コルコート社製)エチルシリケート48(テトラエトキシシラン部分加水分解縮合物;平均10量体:コルコート社製)、MKCシリケート MS51(テトラメトキシシラン部分加水分解縮合物:三菱化学社製)、SILRES BS OH 100(テトラエトキシシラン、ポリエトキシシランの混合物:旭化成ワッカーシリコーン社製)、EMS485(エチルメチルシリケート部分加水分解縮合物:コルコート社製)、等が挙げられる。
【0043】
アルキルシリケートは、上記以外の特殊アルキルシリケートと呼ばれるシリケートを含むこともできる。特殊アルキルシリケートとしては、たとえば、前記アルキルシリケートが、アミノ基含有アルキルシリケート化合物、グリシジル基含有アルキルシリケート化合物、アクリル基含有アルキルシリケート化合物、メタクリル基含有アルキルシリケート化合物、エポキシ基含有アルキルシリケート化合物、およびビニル基含有アルキルシリケート化合物などを挙げることができる。
【0044】
アルキルシリケートが特殊アルキルシリケートとして特にアミノ基含有アルキルシリケートを含むことにより、コンクリート構造物の健全部へより深く含浸させることができ、補修材とコンクリート構造物またはアスファルト構造物との結合力をさらに増強させることができる。
【0045】
アミノ基含有アルキルシリケートとしては、たとえば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル3-アミノプロピルトリメトキシシランなど、市販品としてはKBE-903(3-アミノプロピルトリエトキシシラン:信越化学工業社製)、KBM-602(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン:信越化学工業社製)等を挙げることができる。
【0046】
グリシジル基含有アルキルシリケートを持ったシランカップリング剤としては、たとえば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなど、市販品としてはA-187(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0047】
ビニル基、アクリル基、メタクリル基を持ったアルキルシリケートとしては、たとえば、
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなど、A-151(ビニルトリエトキシシラン:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等があげられる。
【0048】
アルキルシリケート化合物は、1種でもいいし、2種以上の混合物でも良い。アルキルシリケート化合物の加水分解縮合物も、1種でもいいし、2種以上の混合物でも良い。本発明の補修材用組成物は、1種以上のアルキルシリケート化合物と、1種以上のアルキルシリケート化合物の加水分解縮合物との混合物を含むこともできる。
【0049】
本発明の補修材組成物中のアルキルシリケート化合物および/またはその加水分岐縮合化合物の含有量は、0.4~70.0質量%である。0.4質量%未満である場合、コンクリート構造物またはアスファルト構造物と補修材との化学的な十分な結合力を発現できない。80質量%より多いと、組成物の硬化物の高度が高くなり過ぎ、コンクリート構造物またはアスファルト構造物の振動を減衰することができないものとなってしまう。
【0050】
本発明の補修材組成物中の、一般式(1)で示すことができるアルキルシリケート(たとえばテトラエトキシシランおよび/またはポリエトキシシラン)および/またはその加水分解縮合化合物の含有量は、0.4~70.0質量%であることが好ましい。また、本発明の補修材組成物中の上記特殊アルキルシリケートおよび/またはその加水分解縮合化合物の含有量は、0~40質量%であることが好ましい。
【0051】
[(III)硬化促進触媒]
本発明の補修材組成物は、任意成分として、硬化促進触媒をさらに含むことができる。
【0052】
硬化促進触媒は、たとえばスズ化合物であり、好ましくは有機スズ化合物または無機スズ塩であってよい。これらのスズ化合物中のスズは、好ましくは二価または四価である。硬化促進触媒は、特に架橋触媒として組成物に添加される。適切な無機スズ塩は、たとえば塩化スズ(II)および塩化スズ(IV)である。しかしながら、有機スズ化合物(スズオルガニル)が好ましくはスズ化合物として使用される。適切な有機スズ化合物は、たとえば、二価または四価スズの1,3-ジカルボニル化合物、たとえばアセチルアセトナート、たとえばジ(n-ブチル)スズ(IV)ジ(アセチルアセトネート)、ジ(n-オクチル)スズ(IV)ジ(アセチルアセトネート)、(n-オクチル)(n-ブチル)スズ(IV)ジ(アセチルアセトネート);ジアルキルスズ(IV)ジカルボキシレート、たとえばジ-n-ブチルスズジラウレート、ジ-n-ブチルスズマレエート、ジ-n-ブチルスズジアセテート、ジ-n-オクチルスズジラウレート、ジ-n-オクチルスズジアセテートまたは対応するジアルコキシレート、たとえばジ-n-ブチルスズジメトキシド;四価スズの酸化物、たとえばジアルキルスズオキシド、たとえば、ジ-n-ブチルスズオキシドおよびジ-n-オクチルスズオキシド;およびスズ(II)カルボキシレート、たとえばスズ(II)オクトエートまたはスズ(II)フェノラートである。
【0053】
さらに、適切なものは、たとえば、ジ(n-ブチル)スズ(IV)ジ(メチルマレエート)、ジ(n-ブチル)スズ(IV)ジ(ブチルマレエート)、ジ(n-オクチル)スズ(IV)ジ(メチルマレエート)、ジ(n-オクチル)スズ(IV)ジ(ブチルマレエート)、ジ(n-オクチル)スズ(IV)ジ(イソオクチルマレエート);ならびにジ(n-ブチル)スズ(IV)スルフィド、(n-ブチル)Sn(SCHCOO)、(n-オクチル)Sn(SCHCOO)、(n-オクチル)Sn(SCHCHCOO)、(n-オクチル)Sn(SCHCHCOOCHCHOCOCHS)、(n-ブチル)-Sn(SCHCOO-i-C17、(n-オクチル)Sn(SCHCOO-i-C17および(n-オクチル)Sn(SCHCOO-n-C17である。
【0054】
好ましくは、前記スズ化合物は、二価または四価スズの1,3-ジカルボニル化合物、ジアルキルスズ(IV)ジカルボキシレート、ジアルキルスズ(IV)ジアルコキシレート、ジアルキルスズ(IV)オキシド、スズ(II)カルボキシレートおよびそれらの混合物から選択される。
【0055】
特に好ましくは、前記スズ化合物は、ジアルキルスズ(IV)ジカルボキシレート、特に、ジ-n-ブチルスズジラウレートまたはジ-n-オクチルスズジラウレート等のジブチルスズジアセテート類である。
【0056】
追加的または代替的に、硬化促進触媒として、有機チタネートまたはキレート複合体などのチタン化合物、セリウム化合物、ジルコニウム化合物、モリブデン化合物、マンガン化合物、銅化合物、アルミニウム化合物、もしくは亜鉛化合物またはそれらの塩、アルコキシレート、キレート複合体、または主なグループの触媒活性化合物またはビスマス、リチウム、ストロンチウムもしくはホウ素の塩を含む、これらに限定されない他の金属系縮合触媒を使用してよい。
【0057】
さらに適切な(スズを含まない)硬化触媒は、たとえば鉄の有機金属化合物、特に、鉄の1,3-ジカルボニル化合物、たとえば鉄(III)アセチルアセトネートである。
【0058】
市販品としては、たとえば、SXL-1シリーズ(ジブチル錫ラウレート系:大協化成工業社製)、SX-3000シリーズ(ブチル錫マレート系:大協化成工業社製)、ネオスタンU-200(ジブチルスズジアセテート:日東化成社製)等を挙げることができる。
【0059】
硬化促進触媒の量は、硬化有効量とすることができる。硬化有効量は、例えば0質量%を超え5質量%以下である。
【0060】
[(IV)アルコール]
本発明の補修材組成物は、任意成分として、アルコールをさらに含むことができる。
【0061】
補修材組成物がアルコールを含むことにより、補修材組成物の貯蔵安定性が良好になり得る。なお、本願においては、アルコールとは、少なくとも1つの水酸基を有する化合物を意味する。
【0062】
アルコールとしては、好ましくは、炭素数1~7のアルコールを用いることができる。炭素数1~7のアルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。なお、上記アルコールは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。市販品としては、たとえば、トクソーIPA(イソプロピルアルコール:トクヤマ社製)、ソルミックスHP-1(エタノール、イソプロピルアルコール等の混合アルコール:日本アルコール販売社製)等が挙げられる。
【0063】
アルコールは、揮発乾燥性の観点から、モノアルコールが好ましく、炭素数1~4のアルコールが好ましい。
【0064】
アルコールとしては、補修材組成物の貯蔵安定性の観点も含めると、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールがより好ましい。
【0065】
アルコールは、補修材組成物に対し、好ましくは0.01~10質量%含まれ、より好ましくは0.1質量%以上5質量%未満含まれる。5質量%未満であると材料の肉痩せを低減させることができ無溶剤塗料としても扱うことができる為、更に好ましい。
【0066】
[(V)着色剤]
本発明の補修材組成物は、任意成分として、着色剤をさらに含むことができる。着色剤としては、たとえば顔料を用いることができる。すなわち、本発明の補修材組成物は、着色が可能である。
【0067】
[補修材組成物の製造方法]
本発明の補修材組成物は、上記成分を混合して製造することができる。あるいは、上記成分を混合せず、成分ごとにパックされた補修材組成物キットとして製造することもできる。
【実施例0068】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0069】
[組成物の製造]
実施例1~14および比較例1~4では、以下の表1~表3に示した組成で、補修材組成物を製造した。
【0070】
[組成物の評価]
製造した組成物を、以下の手順で評価した。評価の結果を、以下の表1~表3に示す。
【0071】
[貯蔵安定性]
各組成物を、室温(25℃)で3ヶ月間保管した。保管前と保管後との組成物の粘度を測定し、変化を観察した。粘度の測定はBM型粘度計を用いて行なった。
〇:室温貯蔵において著しい粘度変化なし
×:室温貯蔵において著しい粘度変化あり
【0072】
[構造物クラックへの充填・注入し易さ]
クラック(ひび割れ)のあるコンクリートの構造物に、各組成物を充填した。充填は23±2℃の温度および50±5%湿度の条件で行なった。クラックは、最大幅が5cmのひび割れであった。
◎:非常に充填・注入し易い
〇:充填・注入し易い
△:やや充填・注入し易い
×充填・注入し難い
【0073】
[表面硬化所要時間]
クラックに充填した組成物の表面が硬化するまでの時間を測定した。
◎:3時間以内
〇:9時間以内
△:24時間以内
×:24時間後も硬化せず
【0074】
[硬化したクラック補修材の屈曲性]
組成物の硬化物を90°折り曲げて硬化物の屈曲性を外観観察にて評価した。
〇:弾性を示す硬い補修材の為、硬化物にクラックが入らない
×:弾性に劣る硬い補修材の為、硬化物にクラックが入る
【0075】
[硬化したクラック補修材の凍結融解安定性]
クラックを硬化物で補修した構造物の凍結融解安定性を、以下の手順で評価した。まず、23±2℃の水中に16時間浸漬した。ついで、-20±2℃の気中に8時間放置した。1回の水への浸漬および1回の空気中保持を、1サイクルとした。このサイクルを10サイクル繰り返した。補修材硬化物の状態を観察した。
【0076】
[クラック補修したコンクリート構造物の耐湿潤冷熱繰り返し性]
クラックを硬化物で補修した構造物の耐湿潤冷熱繰り返し性を、以下の手順で評価した。まず、23±2℃の水中に16時間浸漬した。ついで、-20±2℃の気中に4時間放置した。さらに、60±5℃の気中に4時間放置した。一連の操作終了にて、1サイクルとした。このサイクルを10サイクル繰り返した。
〇:外観等に異常なし
×:外観異常、あるいはクラック補修部が容易に破断
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
上記表に記載した各成分の詳細は、以下の表4の通りである。
【0081】
【表4】
※1 テトラエトキシシラン
※2 ポリエトキシシラン(テトラエトキシシランの平均5量体)
※3 主成分: テトラエトキシシラン:45~55 ポリエトキシシラン:45~55
エタノール0.1~1
※4 オクチルトリエトキシシラン
※5 ジブチルスズジアセテート
※6 ※1~3にもエタノールが混在する材料
※7 エタノール、イソプロプピルアルコール等の混合アルコール
※8 3-アミノプロピルトリエトキシシラン
【0082】
[結果の考察]
本発明の実施例1~14の補修材組成物は、貯蔵安定性に優れ、クラックへの充填・注入が容易であった。特に、実施例2~14は、注入性に極めて優れていた。また、補修材組成物は速やかに硬化し、硬化物は、屈曲性および凍結安定性に優れていた。その中で、実施例2~5および7~14は、硬化性にも非常に優れていた。そして、本発明の実施例1~14の補修材組成物で補修したコンクリートは、防水性および耐湿潤冷熱繰り返し性に優れていた。
【0083】
一方、比較例1の補修材組成物は、アルキルシリケートもその加水分解縮合物も含んでおらず、比較例2の補修材組成物は、アルキルシリケートもその加水分解縮合物の量が少なすぎ、一液型シリコーンエラストマー配合比率が多過ぎた。そのため、比較例1および2の補修材組成物は、粘度が高く、補修材のクラック充填性・注入性に欠け、クラック補修部が脆弱であり、耐湿潤冷熱繰り返し性後にクラック補修部が容易に破断したと考えられる。
【0084】
比較例3の補修材組成物は、テトラエトキシシランおよびポリエトキシシラン配合量が多過ぎたため、硬化した補修材の架橋度が高くなり、シリコーンエラストマー特有のゲル弾性が失われ、硬化後の補修材料が硬脆くなったと考えられる。その為、強度、-20℃下の安定性に乏しくなる。
【0085】
比較例4の組成物は、一液型シリコーンエラストマーを含まなかったので、硬化しなかった。
【0086】
硬化促進触媒を含んでいた実施例7~13の補修材組成物は、クラックへ充填・注入後の硬化速度が高まった。添加量を適量にすることにより、貯蔵安定性および施工性に適したものとなる。
【0087】
実施例1~14の補修材組成物を、アスファルト舗装に生じたクラックに注入し、硬化したところ、コンクリートと同様に、クラックを補修できた。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の補修材組成物は、コンクリートやアスファルト等の構造物に生じたクラックに注入することで簡単に補修できる材料である。本発明の補修材組成物が含む一液型シリコーンエラストマーは、室温および通常の湿気にて硬化可能である。このような一液型シリコーンエラストマーを含む組成物の硬化物は、耐屈曲性に優れ、クラック部に防水性、封止性を与えることが出来る。また、このシリコーンエラストマーを含む組成物の硬化物は、シリコーンエラストマー特有の弾性により、コンクリート構造物およびアスファルト構造物の振動を減衰させることができ、その結果、さらなるクラック誘発を抑制することができる。このようなシリコーンエラストマーを20.0~99.6質量%で含む補修材組成物は、コンクリート構造物およびアスファルト構造物のクラックに対し現場施工にて対応でき、実運用されている構造物におけるクラック補修材として用いることが可能となる。また、本発明の補修材組成物の効果物は、撥油・撥水性を示すシリコーンを含むので、長期にわたり汚染物、汚れも容易に除去可能な性質・性能も併せ持つ。
【0089】
さらに、配合されているアルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物は、組成物がクラックに注入された際に、周囲のコンクリートまたはアスファルト内部へ素早く含浸し、シリコーン成分とコンクリート構造物またはアスファルト構造物との化学的な結合力を増強させると共に、クラック補修部位周辺の強度向上化も同時に果たすことができる。
【0090】
さらに、アルキルシリケート化合物および/またはその加水分解物縮合物は、材料の架橋促進を促す効果も兼ね備えており、補修材組成物の硬化性を促進させ、実運用されている構造物におけるクラック補修材として用いた場合においても、容易にかつ素早く硬化させる機能も果たすことが出来る。
【0091】
したがって、本発明のコンクリート補修材組成物は、コンクリートまたはアスファルト用補修材として、さらなるクラック誘発を抑制でき、たとえ寒冷地であっても、現場にて容易にかつ素早く硬化できる。
【0092】
また、本発明の硬化物は、本発明の補修材組成物の硬化物であるため、さらなるクラック誘発を抑制でき、クラック部に防水性、封止性を与えることができ、長期にわたり汚染物、汚れを容易に除去可能である。
図1