(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024099102
(43)【公開日】2024-07-25
(54)【発明の名称】端子付き導体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/10 20060101AFI20240718BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01R13/10 Z
H01R4/48 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002801
(22)【出願日】2023-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】塚本 有哉
(57)【要約】
【課題】端子金具の撓み領域の長大化を抑制しつつ、端子金具の撓み量を確保することができ、端子付き導体の大型化・長大化を抑制することができる、端子付き導体を開示する。
【解決手段】端子付き導体10が、複数の撓み片18を有する端子金具20と端子金具20に接続される導体22とを備え、端子金具20は、複数の撓み片18のそれぞれの基端側が相互に連結されてなる連結部30と、自由端である複数の撓み片18のそれぞれの先端側が、相互に端子圧入隙間16を隔てて対向配置されて構成された相手方端子接続部14と、複数の撓み片18の少なくとも1つの外面に導体22の端末が接続された導体接続部32と、を含み、連結部30を支点として複数の撓み片18が対向方向と反対方向に撓み変形して相手方端子12の相手方端子接続部14への圧入が許容され、導体接続部32が、連結部30よりも先端側に延び出して設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撓み片を有する端子金具と、
前記端子金具に接続される導体と、を備え、
前記端子金具は、
前記複数の撓み片のそれぞれの基端側が相互に連結されてなる連結部と、
自由端である前記複数の撓み片のそれぞれの先端側が、相互に端子圧入隙間を隔てて対向配置されて構成された相手方端子接続部と、
前記複数の撓み片の少なくとも1つの外面に前記導体の端末が接続された導体接続部と、を含み、
前記連結部を支点として前記複数の撓み片が対向方向と反対方向に撓み変形して相手方端子の前記相手方端子接続部への圧入が許容され、
前記導体接続部が、前記連結部よりも前記先端側に延び出して設けられている、
端子付き導体。
【請求項2】
前記複数の撓み片は、帯状の第1撓み片と、前記第1撓み片に板厚方向で対向配置された帯状の第2撓み片と、を含み、
前記第1撓み片と前記第2撓み片のそれぞれの前記基端側の端縁部が相互に連結されて前記連結部を構成し、
前記第1撓み片と前記第2撓み片のそれぞれの前記先端側が前記板厚方向で前記端子圧入隙間を隔てて対向配置されて前記相手方端子接続部を構成している、請求項1に記載の端子付き導体。
【請求項3】
前記第1撓み片と前記第2撓み片は、一枚の帯状の金属平板の両端部を相互に接近するように板厚方向に折り曲げて、折り曲げ部分を前記連結部とすることにより構成されている、請求項2に記載の端子付き導体。
【請求項4】
前記第1撓み片の前記基端側が、前記第2撓み片の前記基端側に重ね合わされて、前記連結部以外の部分は相互に離隔可能であり、
前記第1撓み片の前記基端側の前記外面に前記導体の前記端末が溶接されている、請求項2または請求項3に記載の端子付き導体。
【請求項5】
前記第1撓み片と前記第2撓み片のそれぞれの前記先端側が、前記相手方端子接続部を構成する第1接触板部および第2接触板部を有し、
前記第1接触板部と前記第2接触板部を互いに接近する方向に付勢するばね部材を備え、
前記相手方端子の前記相手方端子接続部への圧入により、前記第1接触板部と前記第2接触板部が前記ばね部材の付勢力に抗して相互に離隔する方向に変位されて、前記相手方端子が前記相手方端子接続部への圧入端位置まで圧入されるようになっており、
前記圧入端位置において、前記相手方端子に前記第1接触板部と前記第2接触板部が、前記第1撓み片および前記第2撓み片の弾性復元力と、前記ばね部材の弾性復元力により圧接されるようになっている、請求項2または請求項3に記載の端子付き導体。
【請求項6】
前記相手方端子は板状をなし、前記相手方端子接続部への圧入方向に交差する板幅方向の両側に、前記相手方端子の板厚方向の一方側である前記第1接触板部側に傾斜する一対の傾斜部を有し、
前記第1接触板部は、前記相手方端子の前記板厚方向の前記一方側の面に対向し、前記相手方端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部を有し、前記各第1傾斜側縁部には、前記端子圧入隙間に向かって突出する第1接点部が設けられており、
前記第2接触板部は、前記相手方端子の前記板厚方向の他方側の面に対向し、前記相手方端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部を有し、前記各第2傾斜側縁部には、前記端子圧入隙間に向かって突出する第2接点部が設けられており、
前記ばね部材は、前記板幅方向の一方側に配置されて前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第1ばね部材と、前記板幅方向の他方側に配置されて前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第2ばね部材と、を有し、
前記第1ばね部材が、前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入される前記相手方端子の前記傾斜部に押圧し、前記第2ばね部材が、前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記相手方端子の前記傾斜部に押圧するようになっている、請求項5に記載の端子付き導体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子付き導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電線等の導体の端末に接続されて、相手方端子に接続される相手方端子接続部を備える、端子付き電線(導体)が開示されている。端子付き電線を構成する端子金具は、電線の端末が接続される電線接続部を基端側に有し、電線接続部よりも先端側に相手方端子接続部が設けられている。相手方端子接続部は弾性接触片を有し、弾性接触片が相手方端子接続部に圧入された相手方端子に圧接することで、相手方端子と導通接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年の車載機器等の大電流化に伴い、通電抵抗を下げるために端子金具の板厚寸法は大きくせざるを得ない。端子金具の板厚寸法が大きくなると、弾性接触片の可撓性が低減してへたりが生じ易くなる。それゆえ、弾性接触片のへたりを防止するためには、弾性接触片の長さを長くして可撓性を向上させる必要があり、結果として、端子金具および端子付き電線の大型化・長大化を招いていた。
【0005】
そこで、端子金具の撓み領域の長大化を抑制しつつ、端子金具の撓み量を確保することができ、端子付き導体の大型化・長大化を抑制することができる、端子付き導体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の端子付き導体は、複数の撓み片を有する端子金具と、前記端子金具に接続される導体と、を備え、前記端子金具は、前記複数の撓み片のそれぞれの基端側が相互に連結されてなる連結部と、自由端である前記複数の撓み片のそれぞれの先端側が、相互に端子圧入隙間を隔てて対向配置されて構成された相手方端子接続部と、前記複数の撓み片の少なくとも1つの外面に前記導体の端末が接続された導体接続部と、を含み、前記連結部を支点として前記複数の撓み片が対向方向と反対方向に撓み変形して相手方端子の前記相手方端子接続部への圧入が許容され、前記導体接続部が、前記連結部よりも前記先端側に延び出して設けられている、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、端子金具の撓み領域の長大化を抑制しつつ、端子金具の撓み量を確保することができ、端子付き導体の大型化・長大化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る端子付き導体を相手方端子との接続状態で示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された端子付き導体を相手方端子との接続状態で示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された端子付き導体を相手方端子との接続状態で示す横断面図であって、
図4におけるIII-III断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された端子付き導体を相手方端子との非接続状態で示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された端子付き導体における横断面図であって、
図3に対応する図である。
【
図7】
図7は、
図5に示された端子付き導体における分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図5に示された端子付き導体を構成する端子金具を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された端子金具を展開状態で示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図5に示された端子付き導体を構成するばね部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の端子付き導体は、
(1)複数の撓み片を有する端子金具と、前記端子金具に接続される導体と、を備え、前記端子金具は、前記複数の撓み片のそれぞれの基端側が相互に連結されてなる連結部と、自由端である前記複数の撓み片のそれぞれの先端側が、相互に端子圧入隙間を隔てて対向配置されて構成された相手方端子接続部と、前記複数の撓み片の少なくとも1つの外面に前記導体の端末が接続された導体接続部と、を含み、前記連結部を支点として前記複数の撓み片が対向方向と反対方向に撓み変形して相手方端子の前記相手方端子接続部への圧入が許容され、前記導体接続部が、前記連結部よりも前記先端側に延び出して設けられている、ものである。
【0010】
本開示の端子付き導体によれば、端子金具において、複数の撓み片の基端側が相互に連結された連結部よりも先端側が自由端とされ、複数の撓み片のそれぞれの先端側が相互に隙間を隔てて対向配置されることで、相手方端子接続部が構成されている。各撓み片は連結部を支点として、連結部よりも先端側が対向方向と反対方向に撓み変形可能となっている。そして、少なくとも1つの撓み片の外面に導体の端末が接続された導体接続部が設けられている。そこにおいて、導体接続部が連結部よりも先端側に延び出して設けられていることから、導体接続部と撓み片の撓み変形領域をオーバーラップさせることができる。これにより、端子金具の撓み領域の長大化を抑制しつつ、端子金具の撓み量を確保することができ、端子付き導体の大型化・長大化を抑制することができる。特に、大電流化に伴って、端子金具の撓み片の板厚が大きくなる場合には、撓み片のへたりを防止するために撓み片の長さを大きく確保する必要がある。本開示の構造は、そのような場合に、端子金具全体の長大化を抑制しつつ、撓み片の撓み領域を確保できるとともに、電流経路を短くすることで、端子付き導体自体の導通抵抗の低減を図ることも可能となる。
【0011】
なお、端子金具に接続される導体としては、金属芯線が絶縁被覆されてなる電線や、バスバー等が採用可能である。
【0012】
(2)上記(1)において、前記複数の撓み片は、帯状の第1撓み片と、前記第1撓み片に板厚方向で対向配置された帯状の第2撓み片と、を含み、前記第1撓み片と前記第2撓み片のそれぞれの前記基端側の端縁部が相互に連結されて前記連結部を構成し、前記第1撓み片と前記第2撓み片のそれぞれの前記先端側が前記板厚方向で前記端子圧入隙間を隔てて対向配置されて前記相手方端子接続部を構成している、ことが好ましい。板厚方向で対向配置された帯状の第1/第2撓み片の基端側端縁部同士を連結して連結部を構成することで端子金具が構成されていることから、簡単な構造で、撓み変形可能な撓み片の部位に導体が接続された端子付き導体を提供することができる。
【0013】
(3)上記(2)において、前記第1撓み片と前記第2撓み片は、一枚の帯状の金属平板の両端部を相互に接近するように板厚方向に折り曲げて、折り曲げ部分を前記連結部とすることにより構成されている、ことが好ましい。一枚の帯状の金属平板の両端部を相互に接近するように板厚方向に折り曲げるだけで、端子金具を構成することができる。これにより、本開示の端子金具を容易に製造することができる。特に、第1/第2撓み片が一枚の金属平板によって構成されていることから、端子金具の導通抵抗の低減を有利に図ることも可能となる。
【0014】
(4)上記(2)または(3)において、前記第1撓み片の前記基端側が、前記第2撓み片の前記基端側に重ね合わされて、前記連結部以外の部分は相互に離隔可能であり、前記第1撓み片の前記基端側の前記外面に前記導体の前記端末が溶接されている、ことが好ましい。第2撓み片の基端側に重ね合わされた第1撓み片の基端側の外面に、導体の端末が溶接されている。これにより、超音波溶接等の任意の溶接技術によって導体の端末を第1撓み片の基端側の外面に溶接する際に、溶接工程を安定して行うことができる。しかも、当該溶接工程を第1撓み片の基端側が第2撓み片の基端側に拡散接合されない入熱量に調整して行うこと等によって、相互に重ね合わされた第1撓み片と第2撓み片の基端側が、相互に離隔可能な状態を維持している。これにより、本開示の導体接続部と撓み片の可撓領域がオーバーラップした端子付き導体を、優れた製造性と端子金具と導体の接続安定性を確保して、提供することができる。
【0015】
(5)上記(2)から(4)のいずれか1つにおいて、前記第1撓み片と前記第2撓み片のそれぞれの前記先端側が、前記相手方端子接続部を構成する第1接触板部および第2接触板部を有し、前記第1接触板部と前記第2接触板部を互いに接近する方向に付勢するばね部材を備え、前記相手方端子の前記相手方端子接続部への圧入により、前記第1接触板部と前記第2接触板部が前記ばね部材の付勢力に抗して相互に離隔する方向に変位されて、前記相手方端子が前記相手方端子接続部への圧入端位置まで圧入されるようになっており、前記圧入端位置において、前記相手方端子に前記第1接触板部と前記第2接触板部が、前記第1撓み片および前記第2撓み片の弾性復元力と、前記ばね部材の弾性復元力により圧接されるようになっている、ことが好ましい。
【0016】
第1撓み片と第2撓み片のそれぞれの先端側に設けられた第1接触板部と第2接触板部が、ばね部材により相互に接近する方向に付勢されている。それゆえ、高い接圧で第1接触板部と第2接触板部を相手方端子に接触させることができ、端子付き電線の相手方端子への導通状態を安定して維持することができる。特に、大電流化に伴って、端子金具や相手方端子の板厚が大きくなる場合には、ばね部材の付勢力を利用して端子金具と相手方端子との間の高い接触圧力を確保することで、導通抵抗の低減等も有利に図ることができる。
【0017】
(6)上記(5)において、前記相手方端子は板状をなし、前記相手方端子接続部への圧入方向に交差する板幅方向の両側に、前記相手方端子の板厚方向の一方側である前記第1接触板部側に傾斜する一対の傾斜部を有し、前記第1接触板部は、前記相手方端子の前記板厚方向の前記一方側の面に対向し、前記相手方端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部を有し、前記各第1傾斜側縁部には、前記端子圧入隙間に向かって突出する第1接点部が設けられており、前記第2接触板部は、前記相手方端子の前記板厚方向の他方側の面に対向し、前記相手方端子の前記一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部を有し、前記各第2傾斜側縁部には、前記端子圧入隙間に向かって突出する第2接点部が設けられており、前記ばね部材は、前記板幅方向の一方側に配置されて前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第1ばね部材と、前記板幅方向の他方側に配置されて前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部と前記第2傾斜側縁部を互いに接近する方向に付勢する第2ばね部材と、を有し、前記第1ばね部材が、前記板幅方向の前記一方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入される前記相手方端子の前記傾斜部に押圧し、前記第2ばね部材が、前記板幅方向の前記他方側に位置する前記第1傾斜側縁部の前記第1接点部と前記第2傾斜側縁部の前記第2接点部をそれらの間に圧入された前記相手方端子の前記傾斜部に押圧するようになっている、ことが好ましい。
【0018】
端子圧入隙間を隔てて対向配置された第1接触板部と第2接触板部によって、それらの間に圧入された相手方端子を挟持する構造において、相手方端子は、圧入方向と交差する方向である板状の相手方端子の板幅方向の両側に、相手方端子の板厚方向の一方側に傾斜する一対の傾斜部を有している。同様に、本開示の端子付き導体においては、第1接触板部は、相手方端子の板厚方向の一方側の面に対向し、相手方端子の一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部(第1接点部)を有し、第2接触板部は、相手方端子の板厚方向の他方側の面に対向し、相手方端子の一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部(第2接点部)を有している。さらに、相手方端子の板幅方向の一方側に位置する第1傾斜側縁部の第1接点部と第2傾斜側縁部の第2接点部は、第1ばね部材により、それらの間に圧入される相手方端子の傾斜部に押圧され、相手方端子の板幅方向の他方側に位置する第1傾斜側縁部の第1接点部と第2傾斜側縁部の第2接点部は、第2ばね部材により、それらの間に圧入される相手方端子の傾斜部に押圧されるようになっている。これにより、相手方端子の板幅方向に外力が及ぼされた場合には、相手方端子の板幅方向の両側において、相手方端子の傾斜部が、同様に傾斜した第1傾斜側縁部の第1接点部や第2傾斜側縁部の第2接点部に押圧されて、板幅方向の内方に向かう分力(第1接点部や第2接点部からの反力)が発生する。その結果、相手方端子の板幅方向の外方に向かう外力に対して相手方端子の変位を阻止する力を大きくすることができ、本開示の端子金具に対する相手方端子の板幅方向での変位を抑制することができる。
【0019】
加えて、相手方端子の板幅方向の両側において相手方端子の傾斜部を、同様に傾斜した本開示の端子金具の第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部の間に挟み込んで、各別のばね部材(第1ばね部材と第2ばね部材)により相手方端子の傾斜部の板厚方向の両側から接圧を付与することができる。その結果、本開示の端子金具における第1接点部と第2接点部を相手方端子の各傾斜部に押圧した状態を、安定した接圧で維持することができ、相手方端子の板幅方向の外力に対する変位抑制性能の一層の向上や、端子間の微摺動摩擦の抑制を有利に実現することができる。さらに、端子金具の第1接点部と第2接点部が設けられた第1傾斜側縁部と第2傾斜側縁部が、相手方端子の傾斜部に沿って傾斜していることから、端子金具の第1接点部と第2接点部の相手方端子への接触面積を大きく確保することが可能となり、端子間の導通抵抗の低減を図ることも可能となる。
【0020】
ここで、一対の第1傾斜側縁部や一対の第2傾斜側縁部について、「相手方端子の一対の傾斜部に沿ってそれぞれ傾斜する」とは、相手方端子の傾斜部に沿うように第1傾斜側縁部や第2傾斜側縁部が傾斜していればよく、必ずしも、相手方端子の傾斜部と第1/第2傾斜側縁部が平行でなくてもよい。例えば、相手方端子の傾斜部の傾斜角度に対して第1/第2傾斜側縁部の傾斜角度が、0~10度程度の範囲内での相違があってもよい。
【0021】
また、相手方端子に対する端子金具の接点部(第1接点部と第2接点部)を一対の傾斜側縁部に分散配置して、各別のばね部材により相手方端子に押圧するようにしたことから、各ばね部材を小型化しつつ、必要な押圧力を分散配置した各接点部に安定して及ぼすことができる。特に、第1/第2ばね部材が、相手方端子と端子金具の第1/第2接点部の間に介在されないことから、相手方端子と端子金具との間の接触抵抗を一層有利に低減することができる。
【0022】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の端子付き導体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0023】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1の端子付き導体10について、
図1から
図10を用いて説明する。実施形態1では、端子付き導体10を構成する端子が雌端子とされているとともに、相手方端子12が雄端子とされており、雌端子(端子付き導体10)が相手方端子接続部14を備えている。相手方端子接続部14は端子圧入隙間16を備えており、端子圧入隙間16に対して相手方端子12が圧入状態で挿入されて相互に接触することで、雌端子(端子付き導体10)と相手方端子12とが電気的に接続されるようになっている。なお、端子付き導体10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上方とは
図3中の上方、下方とは
図3中の下方、左方とは
図2中の上方、右方とは
図2中の下方、前方とは
図2中の左方、後方とは
図2中の右方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0024】
<端子付き導体10>
端子付き導体10は、複数の撓み片18を有する端子金具20と、端子金具20に接続される導体22と、を備えている。実施形態1では、複数の撓み片18が、帯状の第1撓み片18aと、第1撓み片18aに板厚方向(例えば、上下方向)で対向配置された帯状の第2撓み片18bと、を含んで構成されている。
【0025】
<相手方端子12>
上記端子付き導体10に接続される相手方端子12は、
図1や
図5にも示されるように、全体として板状をなしており、例えば図示しない平板金具を用いて構成される。この平板金具は全体として略矩形状を有しており、所定の板幅寸法および板厚寸法を有してストレートに延びている。なお、相手方端子12において、端子付き導体10における端子圧入隙間16への圧入方向先端側(後方側)の端部は先細形状である。相手方端子12は、導電性を有しており、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属により形成される。
【0026】
そして、平板金具の板幅方向(左右方向)両端部分を板厚方向の一方側(上方)に屈曲させて傾斜させることで、相手方端子12の板幅方向両端部分には、一対の傾斜部24,24が設けられている。すなわち、相手方端子12において、端子圧入隙間16への圧入方向(前方から後方に向かう方向)に対して交差する方向、実施形態1では直交する方向である板幅方向の両側に一対の傾斜部24,24が設けられている。相手方端子12の板幅方向で一対の傾斜部24,24の間に位置する板幅方向の中央部分には、平坦に広がる中央平坦部26が設けられている。なお、一対の傾斜部24,24は、相手方端子12の長さ方向の全長にわたって設けられてもよいし、相手方端子12において端子圧入隙間16に圧入される圧入方向先端部分にのみ設けられてもよい。実施形態1では、相手方端子12の板厚寸法が略一定であり、一対の傾斜部24,24および中央平坦部26の厚さ寸法がそれぞれA(
図3参照)であるが、一対の傾斜部24,24および中央平坦部26の厚さ寸法は相互に異なっていてもよい。
【0027】
一対の傾斜部24,24の中央平坦部26に対する傾斜角度はθ1となっている(
図3参照)。なお、実施形態1では、相手方端子12において、板幅方向の一方側(右側)の傾斜部24の中央平坦部26に対する傾斜角度と、板幅方向の他方側(左側)の傾斜部24の中央平坦部26に対する傾斜角度は、相互に等しい大きさ(θ1)であるが、左右両側の傾斜角度は相互に異なっていてもよい。
【0028】
一対の傾斜部24,24の中央平坦部26に対する傾斜角度θ1は限定されるものではないが、例えば5°以上45°以下とされることが好適であり、より好適には10°以上30°以下とされる。傾斜部24の傾斜角度θ1が5°以上とされることにより、相手方端子12に板幅方向外方への外力が入力された際にも相手方端子12の板幅方向外方への変位を抑制することができる。傾斜部24の傾斜角度θ1が45°以下とされることにより、相手方端子12、ひいては相手方端子12に接続される端子付き導体10の上下方向寸法を小さく抑えることができる。
【0029】
相手方端子12において、圧入方向基端側(前方側)の形状は限定されるものではないが、実施形態1では、ストレートに延びて板厚方向に貫通する貫通孔28が形成されており、貫通孔28を挿通する図示しない締結ボルトによって、図示しない機器の端子部に対して導通接続されて固定されるようになっている。なお、相手方端子12における圧入方向基端側は、そこに導通接続される機器の端子部やコネクタ、電線等の導体の形状に適合する任意の形状が採用され得る。
【0030】
<端子金具20>
端子金具20は、
図4や
図8にも示されるように、複数の撓み片18(第1撓み片18aおよび第2撓み片18b)のそれぞれの基端側(後方側)が相互に連結されてなる連結部30を備えている。また、端子金具20は、自由端である複数の撓み片18(第1撓み片18aおよび第2撓み片18b)のそれぞれの先端側(前方側)が相互に端子圧入隙間16を隔てて対向配置されて構成された相手方端子接続部14を備えている。さらに、端子金具20は、複数の撓み片18(第1撓み片18aおよび第2撓み片18b)の少なくとも1つの外面において、導体22の端末が接続される導体接続部32を有している。実施形態1では、第1撓み片18aの基端側における外面(上面)において、略矩形の導体接続部32が構成されている。
【0031】
なお、端子金具20に接続される導体22は限定されるものではないが、実施形態1では、導体22が被覆電線により構成されている。すなわち、導体22は、芯線34の周囲が合成樹脂製の絶縁被覆36で覆われることにより構成されており、導体22の端末では、絶縁被覆36が剥がされて芯線34が露出している。この露出した芯線34が端子金具20における導体接続部32に溶着(溶接)等により固着されることで、導体22(被覆電線)が端子金具20に対して電気的に接続されている。実施形態1では、導体22における芯線34と導体接続部32とが、超音波溶接により固着されている。
【0032】
特に、実施形態1では超音波溶接による入熱量が比較的小さくされており、導体接続部32を構成する後述する第1後端部46と、第1後端部46に重ね合わされる第2後端部54とが、超音波溶接により相互に固着されないような入熱量に設定されている。これにより、これら第1後端部46と第2後端部54との固着を防ぎつつ、導体接続部32と芯線34との固着がなされるようになっている。この結果、後述するように、導体22が固着される導体接続部32(第1後端部46)と第2後端部54とは、相互に離隔する方向に変位可能とされている。
【0033】
また、実施形態1では、端子金具20が、
図9に示されるような一枚の帯状の金属平板38を板厚方向に折り曲げることで形成されている。すなわち、金属平板38の長さ方向一端側40により第1撓み片18aが構成されるとともに、長さ方向他端側42により第2撓み片18bが構成される。また、金属平板38の折り曲げ部分により、第1撓み片18aと第2撓み片18bのそれぞれの基端側(後方側)を相互に連結する連結部30が構成される。実施形態1では、第1撓み片18aと第2撓み片18bのそれぞれの基端側の端縁部において、それぞれを連結する連結部30が構成されている。これにより、帯状の第1撓み片18aと帯状の第2撓み片18bとが、それぞれの板厚方向(上下方向)で対向配置されるようになっている。
【0034】
ここで、
図4や
図9に示されるように、第1撓み片18aを構成する金属平板38の長さ方向一端側40において、折り曲げ後に第1撓み片18aの先端側を構成する長さ方向外方側の部分(第1接触板部44)と、連結部30側であり第1撓み片18aの基端側を構成する長さ方向内方側の部分(第1後端部46)とは、金属平板38の板厚方向(上下方向)に延びる接続部48により接続されている。これにより、第1撓み片18aにおいて、第1接触板部44と第1後端部46との上下方向位置が異ならされており、
図8に示されるように、金属平板38が折り曲げられた状態において、第1接触板部44は第1後端部46よりも上方に位置している。すなわち、
図2等にも示されるように、金属平板38の長さ方向一端側40において、長さ方向中間部分における幅方向(左右方向)両側には、幅方向内方に延びる切欠部50,50が設けられており、これら切欠部50,50の幅方向間により接続部48が構成されている。そして、接続部48を上下方向に折り曲げることで、第1接触板部44と第1後端部46との上下方向位置が異ならされるようになっている。
【0035】
同様に、第2撓み片18bを構成する金属平板38の長さ方向他端側42において、折り曲げ後に第2撓み片18bの先端側を構成する長さ方向外方側の部分(第2接触板部52)と、連結部30側であり第2撓み片18bの基端側を構成する長さ方向内方側の部分(第2後端部54)とは、接続部56により接続されている。なお、第2撓み片18bにおいては、接続部56が第2後端部54から略平坦に延び出しており、第2接触板部52と第2後端部54との上下方向位置が略等しくされている。また、金属平板38の長さ方向他端側42においても、長さ方向中間部分における幅方向(左右方向)両側に、幅方向内方に延びる切欠部58,58が設けられており、これら切欠部58,58の幅方向間により接続部56が構成されている。
【0036】
そして、
図8に示されるように、金属平板38が折り曲げられた状態では、第1後端部46と第2後端部54とが相互に重ね合わされるとともに、第1接触板部44と第2接触板部52とが板厚方向(上下方向)で離隔して対向配置されるようになっている。これにより、これら第1接触板部44と第2接触板部52との上下方向間の隙間により端子圧入隙間16が構成されるようになっており、第1接触板部44と第2接触板部52とを含んで相手方端子接続部14が構成されるようになっている。また、相互に重ね合わされた第1後端部46と第2後端部54において、第1後端部46上に導体22における芯線34が重ね合わされて固着されることから、第1後端部46における上面により導体接続部32が構成されるようになっている。実施形態1では、第1後端部46における上面の略全面が、導体接続部32とされている。したがって、端子付き導体10では、導体接続部32が連結部30よりも先端側(前方側)に延び出して設けられている。
【0037】
<第1撓み片18aおよび第2撓み片18b>
前述のように、一枚の帯状の金属平板38における長さ方向一端側40により帯状の第1撓み片18aが構成されるとともに、第1撓み片18aの先端側に相手方端子接続部14を構成する第1接触板部44が形成されている。また、金属平板38における長さ方向他端側42により帯状の第2撓み片18bが構成されるとともに、第2撓み片18bの先端側に相手方端子接続部14を構成する第2接触板部52が形成されている。
【0038】
<第1接触板部44>
第1接触板部44は、相手方端子12の板厚方向の一方側の面(上面)に対向し、相手方端子12の一対の傾斜部24,24に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第1傾斜側縁部60,60を有している。換言すれば、第1接触板部44において、板幅方向(左右方向)の両端部分には、板幅方向中央部分に対して板厚方向の一方側(上側)に屈曲させて傾斜させた一対の第1傾斜側縁部60,60が設けられている。また、これら一対の第1傾斜側縁部60,60の板幅方向の間に位置する、第1接触板部44の板幅方向中央部分は、相手方端子12における中央平坦部26に対向して、且つ沿って平坦に広がる第1平坦部62である。そして、このような第1接触板部44の内面における先端部には、左右方向の略全長にわたって、先端側に向かって上下方向で対向する第2接触板部52から次第に離隔する誘い込み面63が形成されている。
【0039】
各第1傾斜側縁部60は、第1平坦部62に対して所定の傾斜角度θ2(
図3参照)をもって傾斜している。実施形態1では、第1接触板部44において、板幅方向の一方側(右側)の第1傾斜側縁部60の第1平坦部62に対する傾斜角度と、板幅方向の他方側(左側)の第1傾斜側縁部60の第1平坦部62に対する傾斜角度は、相互に等しい大きさ(θ2)であるが、左右両側の傾斜角度は相互に異なっていてもよい。
【0040】
また、各第1傾斜側縁部60の内面(下面)には、下方に位置する端子圧入隙間16に向かって突出する第1接点部64が設けられている。これら各第1接点部64は、各第1傾斜側縁部60の板厚方向に突出しており、第1平坦部62の板厚方向となる上下方向に対して傾斜して突出している。各第1接点部64は、
図9にも示されるように、略矩形(特に略正方形)の外形を有しており、突出先端面が前後方向および左右方向で湾曲する湾曲面とされることで、突出先端面における中央部分が最も突出している。実施形態1では、各第1接点部64が、各第1傾斜側縁部60における前後方向および左右方向の中央部分に設けられている。各第1傾斜側縁部60の外面(上面)において、各第1接点部64と対応する位置には上方に開口する凹部66が形成されており、第1接触板部44においてプレス加工を行うことにより各第1接点部64が形成されるようになっている。
【0041】
さらに、第1平坦部62において、前後方向中央部分には、第1平坦部62を厚さ方向(上下方向)で貫通する貫通孔68が形成されている。実施形態1では、第1平坦部62の前後方向中央部分において2つの貫通孔68,68が相互に離隔して設けられており、各貫通孔68が略矩形断面をもって形成されている。
【0042】
<第2接触板部52>
第2接触板部52は、相手方端子12の板厚方向の他方側の面(下面)に対向し、相手方端子12の一対の傾斜部24,24に沿ってそれぞれ傾斜する一対の第2傾斜側縁部70,70を有している。換言すれば、第2接触板部52において、板幅方向(左右方向)の両端部分には、板幅方向中央部分に対して板厚方向の一方側(上側)に屈曲させて傾斜させた一対の第2傾斜側縁部70,70が設けられている。また、これら一対の第2傾斜側縁部70,70の板幅方向の間に位置する、第2接触板部52の板幅方向中央部分は、相手方端子12における中央平坦部26に対向して、且つ沿って平坦に広がる第2平坦部72である。そして、このような第2接触板部52の内面における先端部には、左右方向の略全長にわたって、先端側に向かって上下方向で対向する第1接触板部44から次第に離隔する誘い込み面74が形成されている。
【0043】
各第2傾斜側縁部70は、第2平坦部72に対して所定の傾斜角度θ3(
図3参照)をもって傾斜している。実施形態1では、第2接触板部52において、板幅方向の一方側(右側)の第2傾斜側縁部70の第2平坦部72に対する傾斜角度と、板幅方向の他方側(左側)の第2傾斜側縁部70の第2平坦部72に対する傾斜角度は、相互に等しい大きさ(θ3)であるが、左右両側の傾斜角度は相互に異なっていてもよい。
【0044】
各第1傾斜側縁部60の第1平坦部62に対する傾斜角度θ2は、相手方端子12における各傾斜部24の中央平坦部26に対する傾斜角度θ1に対して、同一の大きさか、異なる場合でも角度差が10°以内であることが好ましい。これにより、端子圧入隙間16に対して相手方端子12が圧入された際に、端子圧入隙間16内での相手方端子12のがたつきを抑えて、相手方端子12と第1接点部64との接触面積を安定して確保することができる。同様に、各第2傾斜側縁部70の第2平坦部72に対する傾斜角度θ3は、相手方端子12における各傾斜部24の中央平坦部26に対する傾斜角度θ1に対して、同一の大きさか、異なる場合でも角度差が10°以内であることが好ましい。これにより、端子圧入隙間16に対して相手方端子12が圧入された際に、端子圧入隙間16内での相手方端子12のがたつきを抑えて、相手方端子12と後述する第2接点部76との接触面積を安定して確保することができる。
【0045】
実施形態1では、各第1傾斜側縁部60の第1平坦部62に対する傾斜角度θ2と、各第2傾斜側縁部70の第2平坦部72に対する傾斜角度θ3とが略等しくされている。それゆえ、実施形態1では、左方における第1傾斜側縁部60と第2傾斜側縁部70とが略平行に広がっているとともに、右方における第1傾斜側縁部60と第2傾斜側縁部70とが略平行に広がっている。
【0046】
各第2傾斜側縁部70の内面(上面)には、上方に位置する端子圧入隙間16に向かって突出する第2接点部76が設けられている。これら第2接点部76は、各第2傾斜側縁部70の板厚方向に突出しており、第2平坦部72の板厚方向となる上下方向に対して傾斜して突出している。第2接点部76は、第1接点部64と同じく略矩形(特に略正方形)の外形を有しており、突出先端面が前後方向および左右方向で湾曲する湾曲面とされることで、突出先端面における中央部分が最も突出している。実施形態1では、各第2接点部76が、各第2傾斜側縁部70における左右方向の中央部分において相手方端子12の圧入方向となる前後方向で離隔する2箇所に設けられており、第2接触板部52において合計で4つの第2接点部76が設けられている。
【0047】
実施形態1では、
図4にも示されるように、各第2接点部76が、各第1接点部64に対して相手方端子12の圧入方向となる前後方向で異なる位置に設けられている。特に、実施形態1では、第1および第2撓み片18a,18bの左右両側において、各第2接点部76の前後方向間に第1接点部64が設けられている。なお、
図3や
図6にも示されるように、各第1接点部64と各第2接点部76とは、第1および第2撓み片18a,18bの左右両側において、左右方向で略等しい位置に設けられている。すなわち、これら各第1接点部64および各第2接点部76は、相手方端子12の圧入方向の投影(要するに、横断面を示す
図3や
図6の状態)において、第1傾斜側縁部60および第2傾斜側縁部70の各板厚方向で相互に対向している。
【0048】
そして、この相手方端子12の圧入方向の投影において、相手方端子12が端子圧入隙間16に圧入される前の状態では、
図6に示されるように、第1接点部64の頂部と第2接点部76との対向方向の離隔距離はB(
図6参照)である。この第1接点部64の頂部と第2接点部76の頂部の離隔距離Bは、相手方端子12の板厚寸法Aよりも小さくされており、これにより端子圧入隙間16に対して相手方端子12が圧入され得る。
【0049】
また、各第2傾斜側縁部70の外面(下面)において、各第2接点部76と対応する位置には下方に開口する凹部78が形成されており、第2接触板部52においてプレス加工を行うことにより各第2接点部76が形成されるようになっている。さらに、第2平坦部72において、前後方向中央部分には、第2平坦部72を厚さ方向(上下方向)で貫通する貫通孔80が形成されている。実施形態1では、第2平坦部72の前後方向中央部分において貫通孔80が略矩形断面をもって形成されている。
【0050】
<ばね部材82>
端子付き導体10は、第1接触板部44と第2接触板部52とを互いに接近する方向に付勢するばね部材82を備えている。ばね部材82は、相手方端子12の板幅方向である左右方向の一方側(右側)に配置されて、左右方向の一方側(右側)に位置する第1傾斜側縁部60と第2傾斜側縁部70とを互いに接近する方向に付勢する第1ばね部材82aを有している。また、ばね部材82は、相手方端子12の板幅方向である左右方向の他方側(左側)に配置されて、左右方向の他方側(左側)に位置する第1傾斜側縁部60と第2傾斜側縁部70とを互いに接近する方向に付勢する第2ばね部材82bを有している。なお、実施形態1では、第1ばね部材82aと第2ばね部材82bは同じ形状を有しており、左右反転した状態で用いられる。それゆえ、以下の説明では、
図10等を示して第1ばね部材82aについて説明するとともに、第2ばね部材82bについては、図中に、第1ばね部材82aと同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0051】
<第1ばね部材82a(第2ばね部材82b)>
第1ばね部材82aは、第1傾斜側縁部60の外面(上面)に重ね合わされる第1板部84と、第2傾斜側縁部70の外面(下面)に重ね合わされる第2板部86と、これら第1板部84と第2板部86とを連結する連結板部88とを有する板ばねクリップにより構成されている。第1ばね部材82aは、例えばプレス加工が可能な金属により形成されており、金属平板を所定の形状に折り曲げること等により第1ばね部材82aが形成され得る。
【0052】
第1板部84と第2板部86とはそれぞれ、連結板部88の上端および下端から、連結板部88の板厚方向の一方側に延び出しており、第1板部84と第2板部86とが所定距離を隔てて上下方向で相互に対向している。これら第1板部84および第2板部86は、連結板部88との接続部分を基点として、相互に離隔または接近する方向で弾性変形可能である。
【0053】
図10等にも示されるように、第1板部84は略矩形の平板状とされている。第1板部84の長さ方向(左右方向)中間部分には、上下方向で対向する第2板部86側に凸となる円弧状断面をもって第1板部84の幅方向(すなわち、相手方端子12の圧入方向である前後方向)に連続して延びる第1凸部90が設けられている。実施形態1では、第1凸部90が、第1板部84の幅方向全長にわたって設けられている。また、実施形態1では、第1凸部90がプレス加工により形成されており、第1板部84の上面において第1凸部90と対応する位置には、上方に開口する凹部92が形成されている。そして、第1凸部90が円弧状断面をもって直線状に延びる形状とされることで、第1板部84が第1傾斜側縁部60の外面に重ね合わされた際に、第1凸部90の頂部が第1傾斜側縁部60の外面に対して線状に接触して、第1傾斜側縁部60への付勢力を集中的に及ぼすようになっている。なお、第1板部84の突出先端部における前後方向中央部分には、対向する第2板部86や端子圧入隙間16側(下側)に向かって突出する2つの係止爪94,94が、前後方向で相互に離隔して設けられている。
【0054】
同様に、第2板部86は略矩形の平板状であり、第2板部86の略中央部分には、第1板部84との対向方向内方(上方)に突出する第2凸部96が設けられている。実施形態1では、第2凸部96が半球状であり、プレス加工により形成されている。これにより、第2板部86の下面において第2凸部96と対応する位置には、下方に開口する凹部98(
図3参照)が形成されている。そして、第2凸部96が半球状とされることで、第2板部86が第2傾斜側縁部70の外面に重ね合わされた際に、第2凸部96の頂部が第2傾斜側縁部70の外面に対して点状に接触して、第2傾斜側縁部70への付勢力を集中的に及ぼすようになっている。なお、第2板部86の突出先端部における前後方向中央部分には、対向する第1板部84や端子圧入隙間16側(上側)に向かって突出する係止爪100が設けられている。実施形態1では、第2板部86における係止爪100が、第1板部84における各係止爪94,94の前後方向間に設けられている。
【0055】
このような形状とされた第1ばね部材82aおよび第2ばね部材82bは、
図8のように折り曲げられた端子金具20に対して、それぞれ右側と左側から組み付けられる。すなわち、各第1板部84における各係止爪94が第1平坦部62における各貫通孔68に係止されるとともに、各第2板部86における係止爪100が第2平坦部72における貫通孔80に係止されることで、第1および第2ばね部材82a,82bが端子金具20に組み付けられる。そして、第1および第2ばね部材82a,82bが端子金具20に組み付けられた状態において、各第1板部84における第1凸部90が第1傾斜側縁部60の外面(上面)に当接するとともに、各第2板部86における第2凸部96が第2傾斜側縁部70の外面(下面)に当接するようになっている。
【0056】
実施形態1では、端子金具20が
図8に示されるように折り曲げられた状態において、第1接点部64と第2接点部76との対向方向の離隔距離はBであり、端子金具20に対して第1および第2ばね部材82a,82bが組み付けられた状態でも第1接点部64と第2接点部76との対向方向における離隔距離Bが維持されている。なお、端子金具20に対して第1および第2ばね部材82a,82bが組み付けられる前の状態では、第1接点部64と第2接点部76との対向方向の離隔距離はBより大きくてもよい。すなわち、端子金具20に対して第1および第2ばね部材82a,82bが組み付けられることで、第1および第2ばね部材82a,82bが第1接触板部44と第2接触板部52とを相互に接近する方向に付勢して、第1接点部64と第2接点部76との対向方向の離隔距離がBとなるようになっていてもよい。
【0057】
そして、端子金具20に第1および第2ばね部材82a,82bが組み付けられた状態において、第1接点部64と第2接点部76との対向方向の離隔距離が、相手方端子12の板厚寸法Aよりも小さなBとされることで、端子圧入隙間16に対して相手方端子12が圧入されるようになっている。すなわち、相手方端子12を相手方端子接続部14(端子圧入隙間16)へ挿し入れることで、第1接点部64と第2接点部76との対向方向の離隔距離が相手方端子12の板厚寸法と同じAまで押し広げられる。これにより、第1接触板部44と第2接触板部52とがばね部材82(第1ばね部材82aおよび第2ばね部材82b)の付勢力に抗して相互に離隔する方向に変位して、端子圧入隙間16への相手方端子12の圧入が許容される。
図4に示されるように、相手方端子12は、相手方端子接続部14への圧入端位置まで圧入される。この圧入端位置は、例えば相手方端子12の先端が、端子圧入隙間16の圧入方向奥側に位置する接続部48に当接することによって規定されてもよいし、相手方端子12を保持する図示しないハウジング等が端子金具20の先端部(前端部)に当接すること等によって規定されるようになっていてもよい。
【0058】
また、第1接触板部44と第2接触板部52との相互に離隔する方向への変位により、第1および第2ばね部材82a,82bにおける各第1板部84と各第2板部86とが相互に離隔する方向へ押し広げられる。そして、
図4に示されるように相手方端子12が圧入端位置にある状態では、第1接触板部44(第1撓み片18a)と第2接触板部52(第2撓み片18b)との相互に接近する方向への弾性的な復元力と、第1および第2ばね部材82a,82bにおける各第1板部84と各第2板部86との相互に接近する方向への弾性的な復元力によって、第1接触板部44と第2接触板部52が、相手方端子12に対して、圧接されている。
【0059】
実施形態1では、ばね部材82が左右の第1ばね部材82aと第2ばね部材82bにより構成されている。それゆえ、第1ばね部材82aが、板幅方向の一方側(右側)に位置する第1傾斜側縁部60の第1接点部64と第2傾斜側縁部70の第2接点部76を、それらの間に圧入される相手方端子12における右側の傾斜部24に押圧するようになっている。また、第2ばね部材82bが、板幅方向の他方側(左側)に位置する第1傾斜側縁部60の第1接点部64と第2傾斜側縁部70に第2接点部76を、それらの間に圧入される相手方端子12における左側の傾斜部24に押圧するようになっている。
【0060】
<端子付き導体10の組み立て工程>
続いて、端子付き導体10の組み立て工程の具体的な一例について説明する。なお、端子付き導体10の組み立て工程は、以下の記載に限定されない。
【0061】
先ず、端子金具20を構成する金属素板に対してプレス加工等を施して、
図9に示される金属平板38を形成する。次に、この金属平板38の長さ方向中央部分を折り曲げて連結部30を形成するとともに、第1撓み片18aを構成する長さ方向一端側40と第2撓み片18bを構成する長さ方向他端側42との両端部を相互に接近させる。これにより、端子金具20が、
図8に示されるように折り曲げ状態とされる。
【0062】
その後、
図7に示されるように、端子金具20に対して左右から第1ばね部材82aと第2ばね部材82bとを組み付けるとともに、端子金具20における導体接続部32に対して導体22における端末の芯線34が固着される。実施形態1では、前述のように、超音波溶接により導体接続部32に対して芯線34が溶接されており、上下方向で重ね合わされた第1後端部46と第2後端部54とが相互に固着されないようになっている。この結果、実施形態1の端子付き導体10が完成する。
【0063】
以上のようにして組み立てられた端子付き導体10における端子圧入隙間16に対して、先端側の開口部から相手方端子12が圧入される。その際、前述のように、第1撓み片18aと第2撓み片18bとが対向方向と反対方向(上下方向外方)に撓み変形(弾性変形)して、相手方端子接続部14(端子圧入隙間16)への相手方端子12の圧入が許容される。特に、これら第1撓み片18aと第2撓み片18bとは基端側(後方側)の端縁部における連結部30において連結されており、且つそれ以外の箇所では第1撓み片18aと第2撓み片18bとが連結されていない。それゆえ、第1撓み片18aと第2撓み片18bとの撓み変形時には、連結部30を支点として、先端側(前方側)が拡開するように変形するようになっている。この結果、
図1や
図4にも示されるように、相手方端子12の圧入前には上下方向で相互に重ね合わされていた第1後端部46と第2後端部54との間には、相手方端子12が圧入されることで、隙間102が形成されるようになっている。
【0064】
実施形態1の端子付き導体10によれば、第1撓み片18aと第2撓み片18bとを連結する連結部30に対して、導体22の端末が接続される導体接続部32が先端側に延び出して設けられている。これにより、第1撓み片と第2撓み片との連結部位よりも基端側(後方側)に導体接続部が延び出すことがなく、端子金具20、ひいては端子付き導体10のサイズの小型化が図られる。加えて、第1撓み片18aと第2撓み片18bにおいて、相手方端子12と接触する第1接触板部44と第2接触板部52から導体接続部32までの距離を短くすることができることから、電流経路が短くなり、導通抵抗の低減が図られる。この結果、より大電流に適した雄端子(相手方端子12)と雌端子(端子付き導体10)との接続構造を提供することができる。
【0065】
第1撓み片18aと第2撓み片18bのそれぞれの基端側の端縁部が相互に連結されて連結部30が構成されているとともに、第1撓み片18aと第2撓み片18bのそれぞれの先端側(第1接触板部44および第2接触板部52)が板厚方向で端子圧入隙間16を隔てて対向配置されて相手方端子接続部14が構成されている。このように、連結部30を第1撓み片18aと第2撓み片18bのそれぞれの基端側の端縁部に設けることで、端子金具20の略全体を撓み変形可能な領域とすることができて、端子金具20の小型化を図りつつ端子圧入隙間16への相手方端子12の圧入を安定して実現することができる。
【0066】
一枚の帯状の金属平板38を折り曲げることで、折り曲げ部分により連結部30が構成されるとともに、金属平板38の長さ方向一端側40および他端側42により、それぞれ第1撓み片18aおよび第2撓み片18bが構成されている。これにより、第1撓み片18aと第2撓み片18bとを、例えば溶接等により連結することがなく、端子金具20、ひいては端子付き導体10を容易に製造することができる。また、これら第1撓み片18aと第2撓み片18bとが一枚の金属平板38により構成されることから、導通抵抗の低減も図られる。
【0067】
第1撓み片18aの基端側である第1後端部46と第2撓み片18bの基端側である第2後端部54とが離隔可能に重ね合わされているとともに、第1撓み片18aの基端側(第1後端部46)の外面(上面)に導体22の端末(芯線34)が溶接されている。実施形態1のように、入熱量の小さい超音波溶接等の溶接方法を採用することで、端子金具20を
図8のように折り曲げた状態で導体接続部32に導体22(芯線34)を溶接して端子付き導体10を製造することができて、製造効率の向上を図ることができる。
【0068】
端子付き導体10は、第1撓み片18aの先端側である第1接触板部44と第2撓み片18bの先端側である第2接触板部52とを相互に接近する方向に付勢するばね部材82(第1ばね部材82aおよび第2ばね部材82b)を備えている。これにより、ばね部材82の付勢力を利用して、第1接触板部44と第2接触板部52とを相手方端子12に対して圧接させることができて、端子付き導体10と相手方端子12との導通状態を安定して維持することができる。
【0069】
特に、相手方端子12は板幅方向(左右方向)の両側に一対の傾斜部24,24を有しているとともに、第1接触板部44および第2接触板部52は、それに対応して、それぞれ一対の第1傾斜側縁部60,60および一対の第2傾斜側縁部70,70を有している。そして、各第1傾斜側縁部60は、端子圧入隙間16に圧入された相手方端子12に接触する第1接点部64を有しているとともに、各第2傾斜側縁部70は、端子圧入隙間16に圧入された相手方端子12に接触する第2接点部76を有している。これら各第1接点部64と各第2接点部76とは、それぞれ各傾斜部24における板厚方向に突出している。
【0070】
すなわち、各第1接点部64による押圧力F1(
図3参照)と各第2接点部76による押圧力F2(
図3参照)とが何れも、各傾斜部24における板厚方向と同方向に作用することから、各第1および各第2接点部64,76により各傾斜部24が安定して挟持されて、雄端子(相手方端子12)と雌端子(端子付き導体10)とをより確実に導通させることができる。特に、実施形態1では、各第1接点部64による押圧力F1の作用する方向と各第2接点部76による押圧力F2の作用する方向とは、各傾斜部24の板厚方向で対向しておらず、具体的には、各第1接点部64による押圧力F1は、各傾斜部24の左右方向両端部分に作用しているが、各第2接点部76による押圧力F2は、押圧力F1が作用する部分よりも左右方向内方で作用している。これにより、上下両側からの押圧力F1,F2が各傾斜部24における同じ位置に作用することが回避される。この結果、相手方端子12における各傾斜部24が複数の位置で各第1接点部64と各第2接点部76との間を押し広げることから、挿入抵抗の低減を図ることもできる。
【0071】
また、
図3に示されるように、各第1接点部64による押圧力F1は、下方への分力F1aおよび左右方向外方への分力F1bとして作用するとともに、各第2接点部76による押圧力F2は、上方への分力F2aおよび左右方向内方への分力F2bとして作用する。ここで、例えば相手方端子12に対して左右方向において一方から他方へ(例えば右方から左方)向かう外力が及ぼされた場合にも、反対方向の分力(例えば左方から右方へ向かう分力F1b)や左右方向内方への分力F2bにより入力された外力に伴う相手方端子12の変位が抑制される。特に、各第1接点部64による下方への分力F1aと各第2接点部76による上方への分力F2aとは上下方向で相互に対向していることから、相手方端子12における上下方向の変位もより確実に抑制される。この結果、端子付き導体10に対する相手方端子12の変位が抑制されて、相手方端子12と端子付き導体10との導通状態を安定して維持することができる。
【0072】
そして、これらの押圧力F1,F2を付与するばね部材82が、右方に配置される第1ばね部材82aと左方に配置される第2ばね部材82bとに分割されている。これにより、右方における押圧力F1,F2は第1ばね部材82aにより得ることができるとともに、左方における押圧力F1,F2は第2ばね部材82bにより得ることができる。それゆえ、ばね部材82(第1ばね部材82aおよび第2ばね部材82b)の小型化を達成しつつ、異なる方向に作用する押圧力F1,F2を左右各別に得ることができる。
【0073】
さらに、
図4に示されるように、各第1接点部64と各第2接点部76とは前後方向で形成位置が異ならされており、相手方端子12は、前後方向の異なる3箇所において各第1接点部64と各第2接点部76により挟持されるようになっている。これにより、端子圧入隙間16内において相手方端子12が上下方向で揺動変位することが効果的に防止され得る。
【0074】
なお、第1撓み片18aと第2撓み片18bとは後端部における連結部30で連結されているのみであり、端子圧入隙間16に対して相手方端子12が圧入された際には、第1撓み片18a(特に第1接触板部44)と第2撓み片18b(特に第2接触板部52)とが相互に交差する方向に傾斜することとなる。ここで、各第1接点部64と各第2接点部76は、突出先端面がそれぞれ略正方形状であるとともに、それぞれの中央部分が最も突出する形状とされている。これにより、相手方端子12と第1接触板部44および/または第2接触板部52とが傾斜する場合にも、相手方端子12に対して各第1接点部64および各第2接点部76を安定して接触させることができる。また、各第1接点部64と各第2接点部76の突出先端面が上記形状とされることで、仮に相手方端子12が端子圧入隙間16内で揺動変位する場合にも、相手方端子12と各第1接点部64および各第2接点部76との接触状態を安定して維持することができる。
【0075】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0076】
(1)前記実施形態では、導体22として被覆電線が採用されている態様を示したが、これは例示に過ぎない。導体は、例えばバスバーであってもよく、バスバーの端末が端子金具における導体接続部に固着されるようになっていてもよい。なお、バスバーは、導体接続部に固着される端末を除く部位の必要箇所において、絶縁被覆されていてもよい。
【0077】
(2)前記実施形態では、金属平板38が折り曲げられて連結部30や第1および第2撓み片18a,18bが構成されていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、例えば相互に別体として形成された第1撓み片と第2撓み片とが、それらの基端側において溶接等により固着されてもよい。この場合、連結部は第1および第2撓み片の基端側の端縁部に設けられる必要はなく、それぞれの基端側の端縁部から所定距離だけ先端側に離隔した位置に連結部が設けられてもよい。また、前記実施形態では、端子付き導体10が、2つの撓み片18(第1撓み片18aおよび第2撓み片18b)を備えていたが、撓み片は複数あればよく、3つ以上であってもよい。例えば、前記実施形態における第1撓み片18aを左右方向で2つに分断して実質的に3つの撓み片を設けるようにしてもよく、このような場合には3つのうちの少なくとも1つの撓み片に対して導体の端末が接続されればよい。
【0078】
(3)前記実施形態では、端子金具20(導体接続部32)と導体22(芯線34)とが入熱量の比較的少ない超音波溶接により溶接されていたが、端子金具における導体接続部と導体の接続方法は超音波溶接に限定されない。例えば、導体接続部と導体との溶接時に、第1撓み片における第1後端部と第2撓み片における第2後端部との間に比較的融点が高い他部材を介在させることで、第1後端部と第2後端部との固着を阻止しつつ、導体接続部と導体とを比較的入熱量の大きい溶接方法(例えば、レーザー溶接や抵抗溶接等)により溶接することも可能である。なお、導体接続部と導体とは、相互に導通された状態で接続されていればよく、溶接以外に、例えばかしめや圧着等の任意の接続方法により接続されて固定され得る。
【0079】
(4)前記実施形態では、第1接触板部44と第2接触板部52とを相互に接近する方向に付勢するばね部材82(第1ばね部材82aおよび第2ばね部材82b)が板ばねクリップにより構成されていたが、この態様に限定されるものではない。すなわち、第1接触板部と第2接触板部とを相互に接近する方向に付勢するばね部材は、例えばコイルスプリングや環状のゴム弾性体によって構成されてもよい。なお、本開示に係る端子付き導体において、このようなばね部材は必須なものではなく、例えば相手方端子の圧入に伴って対向方向外方に弾性変形した第1撓み片および第2撓み片は、それら自体の弾性的な復元力により相手方端子に圧接されるようになっていてもよい。
【0080】
(5)前記実施形態では、相手方端子12において一対の傾斜部24,24が設けられているとともに、第1接触板部44および第2接触板部52においてそれぞれ一対の第1傾斜側縁部60,60および一対の第2傾斜側縁部70,70が設けられていたが、この態様に限定されるものではない。本開示に係る端子付き導体において、上記傾斜部や第1傾斜側縁部、第2傾斜側縁部は必須なものではなく、例えば相手方端子は略矩形断面を有する平タブ状であってもよいし、相手方端子接続部(端子圧入隙間)はそれに対応する略矩形断面であってもよい。なお、傾斜部や第1傾斜側縁部、第2傾斜側縁部が設けられる場合でも、傾斜角度θ1や傾斜角度θ2、傾斜角度θ3の大きさは相互に異ならされてもよい。また、中央平坦部や第1平坦部、第2平坦部は必須なものではなく、両側の傾斜部や第1傾斜側縁部、第2傾斜側縁部は相互に直接接続されてもよい。
【0081】
(6)第1接点部と第2接点部の数や形状等は、前記実施形態に記載の態様に限定されるものではない。例えば、第1接点部や第2接点部は何れも半球状であってもよいし、相手方端子の圧入方向で1つまたは複数個が設けられてもよい。また、第1接点部と第2接点部の数や形状等は相互に異なっていてもよい。
【0082】
(7)第1ばね部材および第2ばね部材に設けられる第1凸部や第2凸部の数や形状等は限定されるものではない。例えば、第1凸部と第2凸部は何れも半球状とされてもよく、それぞれ1つまたは複数個が設けられてもよい。あるいは、第1凸部と第2凸部は、何れも断面が円弧状とされて直線状に延びる形状であってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 端子付き導体
12 相手方端子
14 相手方端子接続部
16 端子圧入隙間
18 撓み片
18a 第1撓み片
18b 第2撓み片
20 端子金具
22 導体
24 傾斜部
26 中央平坦部
28 貫通孔
30 連結部
32 導体接続部
34 芯線
36 絶縁被覆
38 金属平板
40 長さ方向一端側
42 長さ方向他端側
44 第1接触板部
46 第1後端部
48 接続部
50 切欠部
52 第2接触板部
54 第2後端部
56 接続部
58 切欠部
60 第1傾斜側縁部
62 第1平坦部
63 誘い込み面
64 第1接点部
66 凹部
68 貫通孔
70 第2傾斜側縁部
72 第2平坦部
74 誘い込み面
76 第2接点部
78 凹部
80 貫通孔
82 ばね部材
82a 第1ばね部材
82b 第2ばね部材
84 第1板部
86 第2板部
88 連結板部
90 第1凸部
92 凹部
94 係止爪
96 第2凸部
98 凹部
100 係止爪
102 隙間